バットマン「グランド……オーダー?」

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527 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 20:50:59.67 ID:JSdIgYqK0

リドラー「なぞなぞだ。仲間を大切にしない男を信じられる奴は誰だ?」

マシュ「…………」

リドラー「誰も居ないのさ! 信頼できるとしても、それは騙されているからだ! 目を開けてみろ、キミにあの男はどう見える!?」

マシュ「……私は、」

マシュ「……私、は……」


(おとう、さん……おかあさん……)

(安心しろ。すぐに霊脈へ連れて行ってやる)

(……大丈夫だ)

(必ず生きて連れて帰る。約束だ)

(清姫は死んだ)


マシュ「……私は……」
528 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 20:52:12.97 ID:JSdIgYqK0

リドラー「時間をやろう。難しいなぞなぞだ、考えておいて損はないだろう。キミの答えを楽しみにしておこう……」コツ、コツ……


マシュ「……」

マシュ(……私は、何を信じれば……)



リドラー「……踊る子らを止める事はできないし、止める必要もない……冷たい心があるなら、うなだれる事も無い……朝が来たら、忘れなさい……何事も、いつかは終わるのだから」コツ、コツ……

コンピューター『通信機の電波発信源を特定。周波数をロック、レーダーに表示します』ピッピッ

リドラー「……だから、もう子供のせいにはできないぞ。楽しくなってきたなバットマン……さあ、次は彼女に繋げ」ニヤリ

コンピューター『了解しました』
529 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 20:54:42.68 ID:JSdIgYqK0



………………





荊軻『……そうか。清姫が……』


バットマン「……ああ。そちらの状況はどうだ?」

荊軻『マッシリアまで後退してる。兵士の疲労も大きい。相手にサーヴァントが居てな』

バットマン「真名は判明したか?」

荊軻『ああ。アレはカエサルと名乗っていた。見事な兵指揮と奇抜な計略、まず間違いなく本人だろう』

バットマン「……私も、この島を脱出した後にマッシリアへ赴く。それまでは兵を休めさせておいてくれ」

荊軻『分かった。……ブルース』

バットマン「何だ」

荊軻『……気を落とすな』

バットマン「……ああ、分かっている。そちらで会おう」

荊軻『ああ、またな』プツッ

530 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 20:56:16.81 ID:JSdIgYqK0

サア……サア……


バットマン(雨か……)


バットマン「……」スッ

ブルース「……」


ブルース(……)


(どうか、お逃げ下さい。ブルース様)

(死ぬ時は一緒に、です)


ブルース「……」


ザアザア……ザアザア


531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/11(木) 20:57:42.61 ID:JSdIgYqK0

ドクター『ブルースくん、その島周辺の解析が終わった。どうも強い神性が島の中心から発されていて、ジャミングじみて通信が妨害されていたが……
サーヴァント反応が二騎、少し離れた海岸に確認できたよ』

ブルース「そうか。島を出る算段を立てつつ、サーヴァントに接触を試みる」

ドクター『……大丈夫かい? キミを守ってくれるサーヴァントはそこには……』

ブルース「大丈夫だ。幸いこちらは雨、夜も近い。隠密には丁度良い」スッ


バットマン「グランドオーダーを続行する。引き続きサポートを頼む、ドクター」


532 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 20:59:50.38 ID:JSdIgYqK0

………………

ザアザア……ザアザア……


???「……キャットは雨が嫌いなのだ……」

???2「アタシだって嫌いよ、もー! もうちょっとそっち詰めらんないの!?」

???「無理だ。というか、このキャットアンブレラはキャットのもの。まずは図々しくも傘下の割合を占めるその体積をどうにかするのだな」

???2「キィー、何よそれ! アイドルのアタシが太ってるっての!?」

???「……フッ、胸は太れていないがナ」

???2「ジョートーよこのクソ猫! ぶっ潰してやるわ……は、はっくち!」

???「うわ、きちゃな」

???2「ズズ……ホントにお願いだから、ちょっと詰めてよ……」

???「……モー、しょーがないナ……一分五百円」

???2「ちょっと何よソレ!」


バットマン「……」


バットマン(聞き覚えがある声が一つ。聞いた事のない声が一つ)
533 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:01:11.34 ID:JSdIgYqK0

バットマン(……接触か、回避か。どうしたものか……一旦退いて考えるか)ジリッ

枝「」パキッ

バットマン(! しまっ……)


???「オノレ何奴ーーーー!!!」ブゥン‼

バットマン「っ」バッ

包丁「」ガァン‼


エリザベート「何よ!? ……あ」

バットマン「……」

???「む? 知り合いカ?」

534 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:02:48.11 ID:JSdIgYqK0

エリザベート「ちょっとちょっと、何よ小鹿。もしかしてアタシの追っかけになっちゃっ……」

バットマン「違う」

エリザベート「……そう」


???「……よく分からないガ、シリアスとそうでない空気は見分けもとい嗅ぎ分けがつくアタシ。今回のそれは後者と見た」

バットマン「敵意はない。邪魔をするつもりもない。ただ、島を出る手段が欲しい」

???「その前に自己紹介だナ。微妙にキャラ被りしている感じがするが、アタシはタマモキャット。よろしくだワン」

バットマン「ブルース・ウェインだ。で、手段だが」

キャット「焦るなネコミミ、冷静な行動こそが勝利のカギだ」

バットマン「……」

キャット「ここはそう、水泳を極めたキャットに任せるが良い。水が苦手だが」

バットマン「…………」

535 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:04:14.04 ID:JSdIgYqK0

バットマン「……実質、脱出手段は無いと」

エリザベート「そんなものがあったらアタシが逃げ出してない訳ないじゃない。誰が好き好んでこんな猫と一緒に居るもんですか」

キャット「む、それはこちらの台詞なのだナ。というか、そろそろキャットアンブレラから出るのダ」グイグイ

エリザベート「ちょ、やめなさいよぉ」グイグイ

バットマン(……進退極まったか。いや、この辺りの木を伐採してイカダを……)


「ネロォォォォォォォオオオ!!!」ゴォッ


バットマン「……!」

536 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:05:58.63 ID:JSdIgYqK0

エリザベート「もー、今度は何よ!?」

バットマン「伏せろ」バサッ

キャット「むー、アレは……」

バットマン(……以前見たことがある。アレは確か……カリギュラ。兵を率いてここに来たようだ)



カリギュラ「探せ……黒き、衣装の……男を。そして、捕縛……せよ」

敵兵達「「「はっ!!!」」」



バットマン(……成る程、私を探しに来たのか)

バットマン(……船で来たらしい。上出来だ)


エリザベート「うわー、あんな大量の兵を引き連れちゃってる……アタシパス、帰るわね」ゴソゴソ

キャット「何処へ帰るのダ、男らしく腹をくくれ」ガシッ

エリザベート「うわーん! アタシ女だし、だいたい戦う理由が無いわよぉー!」

キャット「助太刀するぞ、黒猫よ。弱きを助け強きを挫くは一匹オオカミ……いや、一匹猫の使命。猫同盟と行こうではないカ」

バットマン「……恩に着る。しかしアレだけの物量相手となると、ジャングルへ引き込みながらのゲリラ戦になるが」

キャット「それこそキャットの本領発揮。飼いならされた野生を解放し、兵士全員をズタズタのミネストローネに変えてやるのだワン」

バットマン「……分かった。だが殺しは無しだ。
兵士を少しずつ倒して島の中心へ退きつつ、罠も仕掛ける。そして船を奪い、大陸へ移る。準備をしろ、行くぞ」

エリザベート「ちょ、ホントにアタシもやんの!?」

537 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:08:06.51 ID:JSdIgYqK0

プシュ-……ギコギコギコ


カチャカチャ、ガチャリ


敵兵A「……? 森の中からか?」ガサガサ

プツッ

ヒュオンッ!!


敵兵A「グワァッ!?」ドガァッ



敵兵B「なんだ、どうした!?」

ガサガサ

敵兵B「……! 敵を発見! 森の中へ退却して行くぞ、追え!!」


敵兵達「「「オオーーー!!!」」」ドドドドドッ

538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/11(木) 21:09:39.43 ID:JSdIgYqK0

敵兵B「何処だ……ん?」ガサガサ

敵兵B「何だこれは……何か見つけたぞ!」

敵兵C「なんだ」ガサガサ

敵兵D「これは……」

敵兵E「ニンジン?」


「獲ったりィーーーーー!!!」シュイン!!!


敵兵B「ぐわっ!?」ドサッ

敵兵C「ぎゃっ!?」ドシャッ

敵兵D「のごっ!?」ドッ

敵兵E「うげっ!?」ゴシャッ


キャット「……ふふ。キャットにかかればこの程度、晩飯前。しかしこのニンジンは返してもらうのだナ!」ガサガサ
539 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:11:22.61 ID:JSdIgYqK0

敵兵F「奴らめ、何処に……なんだこれは?」

敵兵G「土くれで作られた……舞台か?」


エリザベート「フッフーン! 今日はアタシのリサイタルによく来たわね豚共!」


敵兵H「見つけたぞ! あそこだ!」

敵兵I「行くぞ、ひっ捕らえろ!」


エリザベート「ちょちょ、アタシアイドルなのに全然友好的じゃないんですけど!?」

バットマン「急げ!」

エリザベート「わ、分かったわよぉ! 歌えば良いんでしょ! スゥーーーッ……」ググッ……

エリザベート「ボォエエエエエーーーーーーーーーーーーーー♪」ドドドドドドドドドドドドドガガガガガッ!!!!!!

敵兵達「「「うぎゃあああがああああああああああ!?!?」」」ゴォォォォォッ!!!


バットマン(……やり過ぎたかもしれないな……)

バットマン「よくやった。もっと奥へ退却するぞ」ガサガサ

エリザベート「なーんか複雑……」ガサガサ

540 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:12:44.99 ID:JSdIgYqK0

バットマン(……)ガサガサ……ピタッ


バットマン(前方に敵兵士……3人。いける)スッ


バットマン「……」ゴッ

敵兵J「うご……」ドサッ


バットマン「…………」シュドッ

敵兵K「ごあ!?」ドササッ


敵兵L「なんだ!? どうし……なっ、貴様!?」

バットマン「……」シュポッガシッ

敵兵L「うわぁぁぁぁぁ!?」ギュルギュルギュルッ


バットマン「フッ!」ド ゴ ォ !!

敵兵L「あっぐ……」プラ-ン……


エリザベート「アンタ、なんか怖いわね……」ガサガサ

バットマン「……行くぞ、合流地点へ急ぐ」ガサガサ

541 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:13:25.96 ID:JSdIgYqK0

キャット「おお、無事だったカ」ガサガサ

バットマン「ああ、そちらも」

エリザベート「良かった、無事……い、いや! 別に無事で居て欲しかったとかそんなの全然ないけど!!」


キャット「……嬉しくないツンデレであるナー。ま、キャットは野生の使徒。そう簡単には……!!」


「ネロォォォォォォォオオオ!!!」ドッゴォォォォオオオオオ!!!


エリザベート「あぶなッ!」ババッ

キャット「ぬお!?」ガバッ

バットマン「くっ……来たか。正念場だ」

542 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:14:07.97 ID:JSdIgYqK0

パラパラ……ザアザア……

カリギュラ「我が、愛しき、妹の、子。その、同盟者よ」ポタ……

カリギュラ「たとえ、光射さぬ森の中に、逃げ込もうとも。たとえ、我が兵を、幾百倒そうとも……」

カリギュラ「……我が名は、カリギュラ。ローマの礎を、築かんとする者。月の光を、見上げる者……」ググ……

カリギュラ「その美しさ! その永遠に!」グワァッ!

カリギュラ「すべてを!! 捧げよ!!」


543 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:15:09.26 ID:JSdIgYqK0

キャット「--なるほど、月に魅入られた男であるカ。狂ってしまったのだナ」

バットマン(……カリギュラ。ローマ皇帝。初めは優れた統治を行っていたが、狂気に飲まれ……その治世は長続きせず、暗殺された)

エリザベート「……なんか、親近感というか……」


敵兵達「「「…………」」」ゾロゾロ

バットマン「……撤退戦になるが、良いか」

キャット「構わんのだワン」

カリギュラ「逃が、さん!!」グォォッ!!

544 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:16:26.88 ID:JSdIgYqK0

キャット「むっ!!」ガギィィィ!!

カリギュラ「ネロォォォォォォ!!!」ドゴォォォ!!

キャット「ワンッ!?」ズシャァァァ!!


エリザベート「ちょっ、何なのよコイツ!?」

カリギュラ「愛しき! 皇帝よ!!」ゴァッ!!

エリザベート「アタシはアイドルだけど皇帝じゃないっつーの!」ガガァン!!


敵兵M「オラァ!」ブゥン!!

敵兵N「そらっ!」ヒュン!!

敵兵O「どりゃああ!!」シュオン!!

バットマン「くッ!!」ガギィィィィン!!


バットマン(敵の数……数十。森の奥でも陣形を維持しつつ攻め立ててくるか……
仕掛けたトラップを踏み壊し、進んで来るほどの人数。……駄目だ、押し切られる。このエリアからも撤退するしかない)


バットマン「退くぞ! この数ではまともにやり合えない……シッ!」ズドドドドッ!!

敵兵達「「「うがあ!?」」」ドシャアアアアッ!!


エリザベート「しつこいわね!!」ギャリィン!

カリギュラ「ウォォォォォ!!!」ゴゴァ!!


敵兵達「「「ウォォォォォ!!!」」」ドドドドドドッ

キャット「ぬおーー!! 舐めるな人類!!」ガァァァッ!!


バットマン(ここから考えられる最悪のシナリオは……分断、各個撃破の流れだ。それは避ける……)スチャ……


バットマン「フッ!」ドシュウゥゥゥゥゥ……


545 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:17:30.55 ID:JSdIgYqK0


敵兵Q「なっ……煙幕!?」


キャット「これは……」

エリザベート「けほっ、こほっ! なにこの煙、纏わりついてくる!?」


バットマン「行くぞ! 全員C地点へ向けて走れ!」ダダッ

キャット「む、心得た!」

エリザベート「アイドルなのに、何でこんなことぉ!!」

バットマン(スモークペレット、残数……少し心もとないか。だがこの場を切り抜けるにはじゅうぶ……)


「逃が、さん」ブゥン!!


546 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:18:45.63 ID:JSdIgYqK0

バットマン「!!」ガガッ、ゴロゴロッ

バットマン(馬鹿な……天候は雨、既に夜、しかも森で視界は最悪な中、さらに煙幕まで炊いたというのに……ここまで正確に追撃を!?)

ザアザア……ゴロゴロ……ピシャアッ!

カリギュラ「闇夜の、戦士よ。月の祝福を、受けぬ、者よ」

カリギュラ「貴様の、覚悟を、聞かせよ。ローマを打倒する、その覚悟を聞かせよォ!」

バットマン「ローマを……打倒だと!? 逆だ、私達はローマを守る為に……」

カリギュラ「否で、ある! 覚悟を、定めよ! 守るべきものを、自らの手で滅ぼす、その覚悟を!」グワッ!!

バットマン「ぐっ……」ガガァン!!



キャット「黒猫! 注意するのダ、森の奥から何か……!」


ガサガサガサガサッ!!

???「「「フシュルアアアアアアッ!!」」」

バットマン「なっ……」

バットマン(人間の上半身、蛇の下半身……ラミア!?)

547 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:19:16.41 ID:JSdIgYqK0

バットマン(大量の、ラミアの群れ? 今でさえ撤退しつつの戦いだというのに……!)

バットマン「タマモキャット! エリザベート! プランFだ!」ゴガガッ!!


ラミアA「ギャアッ!?」ドッシャアアアアア!!

エリザベート「プランF!? ってなんだったっけ!?」

キャット「敵に構わず逃走だワン!」ダッ


カリギュラ「逃が、すな……!」グッシャア‼

ラミアB「ギャアアアア!!?」ドサッ


548 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:20:28.25 ID:JSdIgYqK0

ラミア達「「「フシュルアアアアアアアッ!!」」」

敵兵達「「「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」

ガァン‼ギャァン‼ギィン‼



バットマン(……ラミア達は見境なく襲っている? これならまだ、勝機はあるか?)

ラミアC「フシャアッ!」ブンッ! 

バットマン「フッ!!」ガシィ‼


バットマン(……当然、そう甘くはないな。無差別な襲撃は混沌を産むだけだ、むしろこちらのコンビネーションが崩れる可能性もあり得る……やはり撤退するしか)


キャット「黒猫! 気を付けるのダ、そっちは……!」

バットマン「何? ……!?」ガラガラッ

バットマン(しまった、こんなところに大穴が……!!)ヒュウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……



エリザベート「ちょ、洞窟の中に落ちたァーーーーーー!?」

キャット「む……仕方ない、あのカラーリングなら洞窟の暗闇はむしろ好都合のハズ。放っておいて我々は逃げるべしだワン!」ダッ


カリギュラ「ウォォォォオオオオ!! 待てェェェェェェェェェ!!!」

549 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:21:25.63 ID:JSdIgYqK0


バットマン(落ちる……深い)バッ、バサササササササ……

バットマン(暗い……地面が、見えない……)バサササササササ……

バットマン(!!)ドシャアッ


バットマン「っぐ……」ゴロゴロ……

バットマン(……深さ、数十メートル……遥か上方に落ちて来た穴が見える……)

ピチャッ……ピチャッ……

バットマン(水の気配。天井から垂れて来る水が跳ねて……地底湖か?)

バシャッ


バットマン(……何か居る)

バットマン「誰だ」


550 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:22:51.99 ID:JSdIgYqK0

???「あら、落ちて来て早々に生意気な口がきけるのね。でも、まずはそちらが名乗るべきではなくて?」

バットマン(少女の……声? だが、暗さで見えない……)

バットマン「……ブルース・ウェイン」

???「へえ、面白い名前ね。良いわ、その愉快な名前に免じて土足でこの領域を踏み荒らした事は許してあげる。
……でも、頭が高いようね? 跪いたらどう?」フアァァァ……

バットマン(……? なんだ、これは……)ググググ……


バットマン(まるで、本能が、跪けと言っているかのような……)


???「あら? ……妙ね、貴方」


551 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:24:53.71 ID:JSdIgYqK0

バットマン「……」ググググ……

???「……あらそう、つまらない人。良いわ、立ってなさい」

バットマン「……」ガクッ

バットマン(一体何だ? 消耗が激しい……息が乱れる)

???「……理性だけで生活してきて本能が衰弱してるのね、怪物みたい。素直でない殿方は嫌われるのに」

バットマン(……たった一言で、精神に働きかけてきたのは確か……つまり、見えないこの相手も、サーヴァントか)

ドクター『ザザ……ルースくん、今そこは何処だい!? キミの目の前にとんでもない反応があるんだけど!?』

バットマン「……ドクター、今恐らく『それ』と対話している。解析を頼めるか」

ドクター『解析なんてするまでもない、これは神の力だよ! キミの目の前には神霊が居る! どの伝説に属しているかは知らないけど……ぼ、防護策を……!』

552 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:25:55.74 ID:JSdIgYqK0

バットマン「神……?」

バットマン(……不味い。相手の正体を掴まなければ、無策のままここに居れば相手の掌の上だ……)

???「あら、私の事を話しているのかしら? ふふ……美しいモノを見たら、誰だって驚くものね。構わないわよ」

バットマン「……」

バットマン(……)

553 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:30:19.25 ID:JSdIgYqK0

???「クスクス……ふふふ……でも、気を付けてくださる? 聞こえない会話というのは、苛立つものなの」

???「特に、目の前でされるとね……思わず、微笑んであげたくなってしまうほどに」

???「女神を苛立たせたら……その気が無くても、殺してしまうかもしれないのよ?」

554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/11(木) 21:32:22.79 ID:JSdIgYqK0

ザワザワ……ザワザワッ


バットマン(……逆鱗に触れたか? 周囲に蠢く気配。三つ。不味いか)


???「クスクス……私は死んでほしくないけれど、この暗闇でどうするつもりでしょうね?」

バットマン「……」スッ


バットマン(……五感を、研ぎ澄ます)


ザワザワ……ピチャン……ジャバッ


555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/11(木) 21:33:04.76 ID:JSdIgYqK0

バットマン「……」

バシャリ……バシャバシャバシャッ‼

バットマン「フッ!」ガシッ、ドゴォ‼

ゴギャアアアアアアアアア‼

ドシャッ


バットマン(残り気配……二つ。足元に水。下手に動かず、相手を待つ)ジリッ

フシュルルルル……シャァァァァ……

バシャッ‼

バットマン「!!」

バットマン(顔面に冷たい感触……!)

シュドッ‼

バットマン「うぐ……!?」バッシャアン……

556 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:34:27.28 ID:JSdIgYqK0

バットマン(……水だ。水を顔にかけられ、動揺した所に鳩尾へ一撃……)

バットマン(だが、位置は特定)チャプ……


バットマン「……」チャキ、ヒュンッ

ドシュッ‼

ゴギャアアアアアアアアア!?

バットマン「シッ!」ヒュドッ‼

ドッシャアアアア……


ヒュンッ!


バットマン「ッ!!」バシッ‼


バットマン(次の奴は間髪を入れずに来たか……手練れだ)

ヒュンッヒュンッヒュンッ‼

バットマン(だが)バシッ、ザザッ……スッ

バットマン(甘い)ザシッ……


ヒュンッ‼


バットマン「フン!」ギュドォッ‼


ドバッシャァァァァァァン‼


557 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:38:01.15 ID:JSdIgYqK0

???「……へえ、やるのね」

バットマン「……」

バットマン(さて、どうする)


???「暗闇では目が見えない、と思っていたけど……そうね、訂正しておきましょう。貴方は見えるのね、闇の中が」

バットマン「……」

???「ふふ、勇者にはそれなりの敬意を払うわ、私は女神ですもの」パチンッ

ボ、ボ、ボボボ……


バットマン(洞窟が、明るく……三体のラミアが倒れている。つまり、暗闇で襲い掛かって来たのは奴等か)

???「私の名はステンノ。……ほら、跪きなさい? 見下ろされるのは嫌いなの」

558 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:38:56.71 ID:JSdIgYqK0

バットマン(そして、ラミアを操っていたという事は……このステンノも、上の兵達を少なからず疎ましく思っているハズ)


バットマン「……ここから出たい。可能か?」

ステンノ「あら、出る必要があるの? むしろ美しい私と二人きりになれる栄光に浸れるのよ、動きたくないんじゃなくて?」

バットマン「……上に兵達が来ている。彼らの蹂躙は恐らくこの地下洞窟にまで及ぶぞ」

ステンノ「脅しかしら? 私は構わないわよ、無粋な連中は指先ひとつで従わせられるもの」

バットマン「……いや。このまま何もせずに居れば、人理が焼かれる。人が滅ぶぞ」

ステンノ「ふふ……それがどうかして? 私に関係、あるかしら?」

バットマン「その美しさを理解できる者が少なくなる。お前もそれは本望ではないだろう」

ステンノ「……何が言いたいの?」

バットマン「手を貸して欲しい。後悔はさせない」

ステンノ「……」

559 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:39:47.04 ID:JSdIgYqK0

………………

ザアザア……ザアザア……


キャット「うむむ、こっちカ……?」ガサガサガサ

エリザベート「もーサイアク……きゃっ!?」ドッターン‼


敵兵「!! 今あっちから音が!」


キャット「ええい、走るのだ!!」

エリザベート「ぐすっ……もう無理よぉ……」

キャット「……諦めるという選択肢は野生には無いのだ! さあ立つが良い!」グイッ

エリザベート「うぅ……」


カリギュラ「ウォォォォオオオオ!!!」


キャット「む……」


560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/11(木) 21:40:30.50 ID:JSdIgYqK0

ザアザア……ザアザア……

キャット「……先に行け、ドラゴン娘。ここはアタシが引き受ける」

エリザベート「えっ……あ、アンタ何言ってんの……」

キャット「行け。共倒れは御免だワン」

エリザベート「だって、あんなに沢山……いるのに。あ、あのイカれた男だって居るのよ?」

キャット「……心配するな、猫は気まぐれなのだ。今日はたまたまそういう気分だったから、ここに残るに過ぎないのだワン。
……ああ、だが。お前と過ごした時間は、鬱陶しかったが……悪くなかったと言っておくぞ」

エリザベート「……」

キャット「さあ行け。デレタイムはもはや終了、ここからは血みどろの酒池肉林大騒ぎ。イヌまっしぐらの大激闘である。お前だけなら逃げられるだろう」

エリザベート「……」

561 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:41:28.03 ID:JSdIgYqK0

エリザベート「……んなのよ……」

キャット「む?」

エリザベート「……なんなのよっ、そんなのでアタシが逃げる訳ないでしょ! 一緒に戦えば勝てるわよ!!」

キャット「……ふむ、ではやる気は起きたか?」

エリザベート「あったりまえでしょ! あんなに言われてへこたれてるような尻尾してないわよ!」ピョンッ‼

キャット「ではやるぞ。アタシも逃げにはうんざりなのだ、ここで一発反撃の狼煙をぶち上げようではないカ」

エリザベート「……ええ、やってやるわ!」


ドッサァァァァァァァァァン……

カリギュラ「……見つ、けたぞ」パラパラ……

ザアザア……ザアザア……


562 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:42:14.08 ID:JSdIgYqK0


キャット「月に魅入られた男よ。そろそろしつこいナ、決着といこう」

カリギュラ「……!!」ブォン‼

キャット「フン!」ガガァン‼


エリザベート「こんにゃろー!! 吹っ飛びなさい!」ブンブンブンッ!

敵兵S「ぐわああっ!?」ドッシャア‼

敵兵T「おらあっ!」ブゥン‼

エリザベート「このっ!」ガァン‼


563 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:42:53.77 ID:JSdIgYqK0

キャット「やはり貴様を抑えれば勝機はあると見た!」

カリギュラ「不可能、だ!」ドッゴォォォ!

キャット「ちぃっ!」ガガッ


エリザベート「ボォォォォエエエエエエエエ〜〜〜〜〜♪」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ‼

敵兵達「「「ぐわああああああああ!?」」」ドシャシャシャシャシャシャッ


キャット(ドラゴン娘の調子はかつてないほどに良い……だが森の向こう、続々と兵達は来ている。ここで一気にこの男を片付けねば駄目なようだナ!)

キャット「やはりここで決める!」

カリギュラ「……ネロ……ネロォォォォォォ!!!」ドドッ、ドッガァァァァァァ‼

キャット「なっ……」ズサァァァァァ

キャット(この上に、更に膂力が上昇するとは……いや!!! 違う、これは)


564 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:45:06.82 ID:JSdIgYqK0


 タマモキャットは気付く。上空、雲の切れ目より、月が顔をのぞかせている事に。

(まさか、月の光が……)

 呪いじみて、彼女の力を奪っている。その事実に気付いた時、カリギュラは既にタマモキャットの懐に飛び込んでいた。

「しまっ」

 防御姿勢を取ろうとし、よろめいた彼女の鳩尾に蹴りがめり込んだ。一瞬遅れて衝撃が胴体を貫き、吹き飛ばす。

「キャットっ!!!」


 エリザベートは我を忘れて叫び、カリギュラへ……狂った男目掛けて駆け出す。だが、雨粒を滴らせ、彼は笑った。

 エリザベート渾身の槍の振り下ろしは、いともたやすく腕甲で止められる。反撃の裏拳が脇腹に叩き付けられ、彼女は横ざまに吹き飛んだ。

「ネロォォォォォォ!!」


 叫ぶ。それは彼にとって、自分が人間であった最後の記憶。美しい皇帝。華のような。だが月の美しさには敵わない。あの輝きには。彼は歯を食い縛る。

 とどめを。カリギュラは目付きを鋭くし、倒れたタマモキャットへ歩いて行く。


 その時、輝きが降り注いだ。月の輝き……ではない。それはもっと神々しい、何かだった。


 カリギュラは飛び退いた。森の奥、小さな少女がクスクスと笑っていた。

「このステンノの誘いを断るなんて……無粋な人」


 カリギュラは本能的にそれを恐れた。

 月より美しいものなど無い。あってはならない。彼の存在理由が汚されてはならない。狂気が汚されてはならない。

 彼は月を見上げた。すがるように。だがその視線は、無情にも遮られる。


 月の光を背に受け、巨大な蝙蝠のシルエットが飛来した。


「やめろ」


 カリギュラは呻く。黒い騎士が降り立つ。雨が月光を湿らせる。


 力無く振られた腕を止め、バットマンは蹴りを繰り出した。まともに受け、カリギュラはよろめく。そこへ光球が着弾、爆発。ステンノ。


「っぐぅ……」


 カリギュラは転がり、起き上がろうと……力が籠らない。狂気が、消えてゆく。彼の存在理由が。月より美しいモノを、見つけてしまったのだ。


「……ネロ……」

 小さな呟きが、雨音に呑まれる。月光はもはや曇天に包まれ、わずかの輝きを灯す雨粒が降るのみである。

「……必ずローマを救う。約束する」

 雨に打たれ、ブルースは、死に行く彼を見下ろしていた。

 カリギュラは消えながら、笑みを浮かべた。その輝きの最後の一片が消えた時、彼の永遠もまた途絶えた。


565 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:47:03.92 ID:JSdIgYqK0

ザアザア……ザアザア……


バットマン「……」

エリザベート「はあ、はあ……ようやく終わった、かしら……」

キャット「うーん……ここは? む、黒猫! 無事だったのカ!?」ガバッ

バットマン「ああ、無事だ。……ドクター、海岸の船の位置を探してくれ」ピッピッ


ステンノ「行くの?」

バットマン「……ああ。船を奪い、あちらに戻る。力を合わせれば可能なハズだ」

ステンノ「残念だけど、私はここまでよ。これ以上はついていけない」

バットマン「……そうか。世話になった。必ず世界は救う」

ステンノ「くすっ……期待してるわ、勇者さん。それじゃあね」

バットマン「ああ、さらばだ」


566 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/11(木) 21:48:19.58 ID:JSdIgYqK0


バットマン(…………雨は未だにやまず、だが皇帝の一人は仕留めた)

バットマン(どこまでが奴の計算通りかは知らないが、マシュを助け出し、必ずこの世界を救う……)

バットマン(その為にはまず、荊軻達と合流。可能ならばブーディカを救出し、ガリア砦を奪取する……)

バットマン(……絶対に、やり遂げる)


バットマン「……覚悟しろ」


バットマン(ローマを、救う)


567 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/01/11(木) 21:50:07.20 ID:JSdIgYqK0
今日の更新はここまでです。
第二部が始まってもともと矛盾だらけだった私の脚本が致命的な穴だらけになったのでもうこれはFGOに似た何かだと思っといて下さい(半ギレ)
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/11(木) 22:00:48.94 ID:ZCaA8MUZo

安心しろ
運営も第二部の超展開についていけなくて北斎イベがあんなのになったし
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/11(木) 22:56:55.51 ID:mdgU/rUSo
うーんカッコ良すぎるブルースだ
ここまで覚悟をもって物事を言い切れるキャラクターには惚れてしまう
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 07:20:53.57 ID:bz5aAZxC0
待ってた…

ラインバレルの人たちが描いてるアイアンマンっぽいウルトラマンと
FGOの相性ってどうなんだろう
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 08:51:30.65 ID:GXq+UKQEO
>>570
まずアラヤとガイアは敵対的な宇宙人が嫌いだから全力で排除しにくるって所で詰む
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 01:01:51.99 ID:RN4DtKDno
何故いきなりウルトラマンの話題が…?
573 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 00:56:50.25 ID:p3VFfcpc0

 世界に取り残されるのは、初めてではなかった。


 何かを守ろうと伸ばした手は、アタシじゃ決して届かない。


 戦争だから、仕方ない事なんだ。手を伸ばせば、届かぬ痛みも必ず返る。覚悟していたハズだ。アタシは自分に何度も言い聞かせた。そうして、自分の世界が蹂躙されたのを許容した。


 たとえ、娘達の悲鳴が聞こえたような気がしても。それはとっくの昔に終わった事だった。


 終わった事、だった。

574 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 00:57:20.02 ID:p3VFfcpc0

…………



ブーディカ「……うーん……」ガチャガチャ


ブーディカ(硬い鎖……これは解けないかな。全く、捕まるなんてね……さしずめここはガリアの砦ってとこかな?)


???『ハローハロー、聞こえるか?』

ブーディカ「! 誰だ!」

???『キミは確か……ブーディカ、だったかな? 声だけで失礼するよ』

ブーディカ「……」

???『おっとすまない、まずは自己紹介だったな。私はリドラー、ここでの役割は優秀な頭脳の戦士と言ったところかな?』

ブーディカ「……あっそ。で、その頭脳の戦士が何の用?」



575 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 00:57:47.64 ID:p3VFfcpc0

リドラー『まあそうカリカリしてないで、遊ぼうじゃないか。なぞなぞだ』

ブーディカ「……なに?」

リドラー『なぞなぞだよ、キミにとってはとても簡単なハズだ』

ブーディカ「……何かは知らないけど、お遊びなら付き合ってらんない……」

リドラー『では一問目! プラスタグス王の死に便乗してブリタニアを蹂躙したのは何処の国だ?』

ブーディカ「……!」

576 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 00:58:14.18 ID:p3VFfcpc0

ブーディカ「何が言いたいのか知らないけど……!」

リドラー『おやぁ、本当かな? 答えは……古代ローマ! 少し簡単すぎたかもしれないが、許してくれ。では次の問題!』

ブーディカ「ふざけんな! 何が言いたいんだ!」

リドラー『その古代ローマを率いていたのはだーれだ?』

ブーディカ「この……」ギリィ


リドラー『……そう、ネロ皇帝だ』



577 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 00:58:47.65 ID:p3VFfcpc0

ブーディカ(……まだ、悲鳴が聞こえる。涙が見える。ローマに蹂躙しつくされる郷土が見える。
違う、幻だ。それはとっくに終わった、過去の幻だ。飲まれては駄目だ。飲まれては……)


リドラー『不思議でならなかったよ、キミがネロの側についたと知った時は……だが合点がいった。どうやらキミも、自分を誤魔化して生きるのが好きなようだ。
何故自分を誤魔化す? 人理を守る為か? 自分の故郷すら守れなかった者が?』

ブーディカ「……うるさい……」

リドラー『キミは誇り高き女王だった。そしてその誇りが、更に故郷を追い詰めた……にも関わらず、何故こんな状況に甘んじている? 仇も討たずに』

ブーディカ「黙れ! やめろ!」

リドラー『キミは気付いているな? その自制心も長くはもたない。キミは永遠に自責の念から逃れられない……ネロを討つ、その時までは』

ブーディカ「そんな事は……」


ブーディカ(……無い、なんて、言えない。言えるわけがない。だって……)



ブーディカ(まだ、終わってないんだもの。アタシの中じゃ、あの戦争はまだ続いてる)



リドラー『……キミに良い事を教えよう。未来から来たあの男はまだ生きている』



578 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 00:59:42.75 ID:p3VFfcpc0

ブーディカ(未来から来た男……マシュのマスター。ああ、生きていたのか……)


リドラー『奴は必ずキミを助けに来るだろう。チャンスをあげよう、ブリタニアの女王よ』

ブーディカ「チャンス……?」

リドラー『なに、簡単な事だ。奴を殺せ。そうすればキミをこちらに迎え入れよう。ネロの処分もぐっと楽になる』

ブーディカ「そんな事……!」

リドラー『できない? 触れる事もできない未来がそんなに大事か? ……ならもう一つ、教えてやろう。人理焼却が完遂した後も、この世界は残る』

ブーディカ「え……?」

579 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:00:26.18 ID:p3VFfcpc0

リドラー『残るのだよ。時が満ちれば、この世界は聖杯の力によって正式な時流の中に食い込み、歴史を阻む異物として永遠に残る。
……さあ、考えてみろ。ブリタニアを救うチャンスだ。キミがただの妻に戻り、娘と夫に出会う事も出来るだろう。全て順調な世界を作れるのに、何故今の世界を救う必要がある? この永遠の中に身を浸そうじゃないか』



ブーディカ「…………あ……」

リドラー『……返答は要らない。時間はやる。バットマンが助けに来るその時まで、じっくりと考えるがいい』プツッ

580 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:01:19.97 ID:p3VFfcpc0


ブーディカ「……」


ブーディカ(……アタシは、王国に永久の繁栄を祈っていただけだった)

ブーディカ(ローマが来て、蹂躙されて。それでも、故郷の永遠は取り返せると思っていた)

ブーディカ(そんな自分の身の程知らずな願いが、故郷を追い詰めて……)

ブーディカ(でも、今、贖罪のチャンスが目の前にある。今度こそ、ブリタニアを救えるかもしれない。
……それどころか、あの頃の幸せが、取り戻せるかもしれない。夫娘二人と暮らしてた、あの頃の……)

ブーディカ(……)


581 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:03:41.68 ID:p3VFfcpc0

ザアザア……ザアザア……

ジャバッ、ジャバ……バシャッ……

エリザベート「もー無理、もー限界。腕動かない」ダラー

キャット「だらしない奴だワン。黒猫を見習え、ずっと漕ぎっぱなしでも文句ひとつ言わないではないカ」

バットマン「……陸までもう少しだ、気張れ」ジャバッジャバッ

エリザベート「だってぇ……大体、キャットの役目だっておかしいでしょー!? 何よ、船尾に座って微動だにしてないじゃないの!」

キャット「風を読むのだって立派な役目だワン。……む、そろそろ帆を張るぞ。手を休めろ、黒猫よ」ゴソゴソ

バットマン「分かった……」

エリザベート「休めるー!!」

キャット「休みっぱなしだったクセに……」


582 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:04:10.94 ID:p3VFfcpc0

帆「」ブワァッ‼

キャット「おおおおお、良い勢いで進むナ……」ユラユラ

エリザベート「はー、チョー快適……」

バットマン「……すぐに陸に着くが、お前達二人はどうする?」

キャット「……んー、気分次第で」

エリザベート「アタシは街でちょっと休むぅー……」

バットマン「分かった。なら、今までの礼を言っておく……手を貸してもらった事、感謝する」

キャット「構わんワン……ん? 構ワン? え?」

エリザベート「お礼はファンクラブの拡張で良いわよ! ええ!」

バットマン「……前向きに検討する」


バットマン(……あのリドラーの事だ。今まで通りにいくとは思えない……何か仕込んでいるハズだ。用心しなければ)

583 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:04:46.45 ID:p3VFfcpc0

ザザーン……ザアザア……

エリザベート「とぉ〜ちゃくっ!!」

バットマン「……よし。私はマッシリアへ」

キャット「アタシもついて行くぞ。街に行かねば猫缶も無い」

エリザベート「あ、アタシもアタシも!」

バットマン「……街に行っても猫缶は保証できないが」


584 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:05:16.29 ID:p3VFfcpc0


………………

ザアザア……ザアザア……

呂布「■■■■……■■■■■■■―!!」

荊軻「……」ハァ……


荊軻(……マッシリアへの駐在、二日目。ガリアの戦線が崩れた事は未だに知らせていないが……勘のいい兵士は気付き始めている、か)

荊軻「……」

荊軻(こんな時、ブーディカが居れば。呂布も上手く扱いつつ、兵士も綺麗に纏め上げただろうに……)

コン、コン

荊軻「どうした?」

兵士A「失礼します! ブルース様がこちらにいらっしゃいました!」

荊軻「!! ブルースが!?」

585 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:05:45.09 ID:p3VFfcpc0

………………

バットマン「……荊軻」

荊軻「ブルース、ようやく会えたな。で……あの話は本当なのか? マシュが囚われ、皇帝とブーディカ、スパルタクスも行方不明と……」

バットマン「……残念だが、本当だ。戦力は半減したと言っても過言ではない」

荊軻「……それでは、我々の勝ち目が……」

586 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:06:25.01 ID:p3VFfcpc0

バットマン「いや、ある。ガリア砦へと少数精鋭で攻め込み、そこに囚われているであろうブーディカとスパルタクスを救出する」

荊軻「救出……と言っても、二人は生きているか死んでいるかも分からないのに」

バットマン「必ず生きている。アイツは……リドラーとはそういう男だ。
自分の知性を証明するために、敵の存在を利用したがる。殺せば、それが不可能になる。歴史に残っているような人物が相手なら、なおさらその性質は強く出るハズだ」

荊軻「……何と言うか」

バットマン「異常だ」

荊軻「……だな。それか、極めて正常か」

バットマン「…………」

587 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:06:57.21 ID:p3VFfcpc0

荊軻「それで、いつ行く?」

バットマン「……早い方が良い。明日か、行けるなら今からでも」

荊軻「随分と急ぐな……何故だ?」

バットマン「通信機の位置を探知されている。私が川から流された時、精確な追撃を寄越して来た。可能性としてはそれしか考えられない」

荊軻「成程な……では、稲妻のように速く攻めるとするか」

バットマン「それが望ましい」

荊軻「好みだ」

バットマン「頼りにしている」

588 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:07:28.78 ID:p3VFfcpc0

荊軻「しかし、問題もある……キミたちが遭遇したというサーヴァント、レオニダスの事だ」

バットマン「……」

バットマン(炎門の守護者、レオニダス。三日に渡り、三百の兵で三千のペルシア軍を堰き止めていた英雄)

バットマン「……そちらについても、対抗策はある」

荊軻「本当か?」

バットマン「……『本来は守りに使う宝具』。奴はそう言った」

荊軻「……?」

バットマン「そのままの意味だ」

589 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:08:03.22 ID:p3VFfcpc0

バットマン「ガリア奪還メンバーは私、呂布、荊軻、それと大隊を一つ。これで行く」

荊軻「随分……少ないな?」

バットマン「あれだけ派手に敗北した以上、もう戦力は過剰には注ぎ込めない。最低限の戦力で、最高の戦果を納めるしかない」

呂布「■■■■■■■……」

荊軻「……ふむ。兵士には伝えておこう」

バットマン「頼んだ。それと、通信機を兵に渡しておいてくれ。連絡は常に取り合いたい」

荊軻「了解した。では」

バットマン「ああ」

バットマン(……雨も止み始めた。太陽も昇り出した。決行のタイミングは今を置いて他にない……さあ、この挑発に食いつくか、リドラー)


590 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:08:29.71 ID:p3VFfcpc0


………………

ネロ「むむ……マッシリアを目掛けて戻って来たつもりが、ここは全く違う都市か……」

ネロ「……しかし、四の五の言ってはおれんな。ここに潜伏し、あわよくば連合ローマ帝国の事も探らねば!」

敵兵A「待て! この先はパレードの最中だ、身分証を!」

ネロ「……ってしまったァー!!」ダダッ

敵兵A「なっ……」


591 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:09:56.77 ID:p3VFfcpc0

ガヤガヤ……ワイワイ……

ネロ「……はあ、はあ。何とか逃げきれたか……」

ネロ「……布で顔を隠しておいた方が良さそうだな。ブルースと微妙にキャラが被るが、致し方なし!」クルクル、キュッ

ネロ「それにしても、なんと活気に満ち溢れた通り! 余の統治していたローマでもここまでは……これほどの大きな都市とは、いったいここは何処だ……?」


果物屋の店主「いらっしゃい、いらっしゃい! とれたての果実が美味いよ!!」

ネロ「む、丁度良い。店主、この都市はいったい何と言う街なのだ?」

果物屋の店主「なんだ、見ねえ顔だな! ここは連合ローマ帝国の首都だよ、こんなでけえ都市なんてそうそうねえだろ!」


ネロ「……え?」


果物屋の店主「今、そこで皇帝様がパレードもやってる! どうせなら見て行ったら……あれ? どこ行った?」


592 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:10:54.15 ID:p3VFfcpc0

ガヤガヤ……ガヤガヤ……

ネロ「……」

ネロ(なんという事だ。敵をまくために都市に逃げ込んだというのに、ここは敵の本陣だったというのか)

ネロ(……いや、そんな事より、この活気。余が統治していたローマの……何倍の活気だ? 
人の表情は生き生きと輝き、通りの犬は元気に吠え、子供達は喜んで聖職者の説教を聞き……熱量が、違い過ぎる。
余の、ローマでは、こんな……)

ネロ「……まるで……」

ネロ(まるで、余は皇帝として……間違っていたかのような)

593 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:11:25.69 ID:p3VFfcpc0

ドドォン‼ ジャァァァァン‼


ネロ「!?」

『これより、ローマ神祖様が凱旋なされる! 花弁の用意をせよ!』

子供「ろむるす様だ!!」
聖職者「おお、偉大なる神祖……」
店主「凱旋だー!! 捧げる料理を用意しろー!!」

ガヤガヤガヤ……ウォォォォォォォォォ‼‼


ネロ「神祖……ロムルス!?」

594 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:12:04.46 ID:p3VFfcpc0

花弁「」ブワァァァァァァァッ‼‼


ウォォォー‼ ロムルスサマ‼ ロムルスサマバンザイ‼


???「民よ!」

ネロ(あの声が……神祖? 人だかりで見えぬ……)

ネロ「すまぬ、どいてくれ……すまぬ」グイグイ……グイグイ


???「全ての民よ! 命ある者達よ! 聞くがよい!」

シーン……

ネロ(ようやく抜けた……)

ネロ「……あれが、」


595 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:12:46.06 ID:p3VFfcpc0

ロムルス「我が名はロムルス! 私こそはローマ!」


ロムルス「民よ! 果てぬ欲望を持つ者よ! 満たされて尚、乾く者よ!」

ロムルス「手を伸ばすが良い! このローマでは、それが許される! たとえ世界が果てようとも、ローマの先に果てはない!」


ロムルス「民よ! 永遠の安寧を望む者よ! 潰えぬ国を望む者よ!」

ロムルス「地を、空を、隣人を見るが良い! それこそがローマ! お前達のひとりひとりが、絶対に失わぬ光!」


ロムルス「民よ! 苦難の時を迎える者よ! 歩みを止め、下を向いた者よ!」

ロムルス「前を向け! 歩き出せ! たとえどんな歩みであろうと、すべての道はローマに通ず! 胸を張れ! 此処こそ、ローマである!!!」


ウォォォォォォォォォ‼‼ ロムルスサマ‼ バンザーイ‼ ローマ、バンザーイ‼


596 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:13:23.79 ID:p3VFfcpc0

ネロ「……あ……」

ネロ(……何処かで、望んでいた。ローマ皇帝を名乗る偽物の軍団が、この件を操っているという筋書きを)

ネロ(だが、同時に分かっても居た。偽物が皇帝を名乗ったとして、民や兵までもが移っていくはずもない。だが……)

ネロ(だが、余は……)


『ロムルス様は暫く休まれる! 供物は兵達に預けるように!』


ネロ「……」

ネロ(……思い出せ、ネロ・クラウディウス。ローマを取り返すのだ。今、ここで神祖を尾行し、暗殺できれば。形勢逆転が可能になる……)


597 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:14:10.32 ID:p3VFfcpc0

………………

ロムルス「……良い凱旋であった」

???「そうかな? アレは派手すぎだと思わないでもないが……まあ良いさ、民衆は馬鹿だ。馬鹿をまとめるのはキミに任せる」

ロムルス「お前は変わらんな、リドラー。民衆こそ至高の宝だ。忘れてはならん」

リドラー「あーあー、聞き飽きた。僕には興味が無い。この世に頭脳以上の宝など存在しえない」

ロムルス「……ゆえに、今回の敵にこだわるか」

リドラー「……それはとても繊細かつ腹立たしい質問だ、回答は控えさせてもらうよ」

ロムルス「ふふ……世界は広いぞ」

リドラー「狭いさ」

598 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:14:37.27 ID:p3VFfcpc0


ウワッ!? ダレダ……ウグッ!?

ドサッ……ドシャッ


ロムルス「……」

リドラー「……来たか。お客様だ、一体どっちの客かな?」

ロムルス「先程私が凱旋していたのだ。私だろう」

リドラー「んー、簡単すぎるなぞなぞだったか」



敵兵A「ろ、ロムルス様! お逃げ下さい、敵襲……っぐ」ドシャッ

ネロ「……」スタスタ

ロムルス「……」

リドラー「おやおや、なんとまあ」

ネロ「……神祖」

ロムルス「ふむ……」

599 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:15:23.65 ID:p3VFfcpc0

ロムルス「来たか、ローマ皇帝よ」

ネロ「……」

ロムルス「……」


ロムルス(……やはり、迷いがあるか。しかし、乗り越えてみせよ)

ネロ(……これは、絶好の、機会! ここで躊躇う事は許されぬ!)


ネロ「ここで首を獲る……! 今は余の時代だ!」チャキッ

リドラー「ふっふふ、言うね。流石暴君様」

ネロ「……何?」

600 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:16:10.23 ID:p3VFfcpc0

ロムルス「リドラー!」

リドラー「何だ、聞かせてやれば良いじゃないか。辛い事は一度に済ませた方が良いだろう?」

ネロ「何の事だ!? 何故余が暴君などと呼ばれねばならぬ!?」

リドラー「おっとっと、怒らないでくれよ。ただ、キミが後世でそう呼ばれてるだけさ……最悪の弾圧、暴政。悪名高きローマ皇帝、ネロ・クラウディウスとね」

ネロ「弾圧……暴政?」


ネロ(馬鹿な……余は、そんな……)


リドラー「ふふふ……キミは今まででも我儘で人を苦しめた事があるはずだ。暴政なんてその延長線上、気にする事は無いだろう?」

ロムルス「リドラー、もうよせ!」

リドラー「ああ、ロムルスが言う『至高の宝』である『民衆』だったかな? そいつらが自分のせいで苦しんで死んでも、気に病む事はない。世界にとっては小さな誤差で、それがキミの正しい姿だ」

ネロ「……余の……」


ネロ(……では、余は……本当に、民衆から必要とされなくなる……?)

ロムルス「……リドラー」

リドラー「……おっと、そろそろ黙るかな。味方に殺されちゃあ不味い」


601 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:17:24.79 ID:p3VFfcpc0

ロムルス「ネロ・クラウディウスよ。たとえ未来でその言葉が本当になったとしても、お前はローマの御子。今はなすべき事をなせ」

ネロ「……ひとつ、聞かせて欲しい」

ロムルス「……」

ネロ「神祖、ロムルス……貴方は、永遠のローマを作る気なのか」

ロムルス「……」


ロムルス「……ああ、そうだ」

602 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:17:52.74 ID:p3VFfcpc0

ロムルス「私とて、その魅力には抗えん。その熱には」

ロムルス「永遠に続くローマ帝国。事実、私はそれを夢見た」

ロムルス「神祖としてのロムルスではなく、一人の男として」

ロムルス「理性の対極にあるそれは、浪漫だ。私の胸で燃え盛る、世界への挑戦だ」

ロムルス「……私も、永遠のローマへ辿り着きたい。祖でありながら、私は未だにその頂点を欲している」


603 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:18:31.96 ID:p3VFfcpc0

ネロ「……」

ロムルス「……だが、世界が燃え尽きれば、ローマが消えるのもまた事実。さあ、ネロ・クラウディウスよ。私を斬るのだ。斬ってこの夢を終わらせてくれ」


敵兵B「……なんだ!? テント前の護衛が倒れているぞ、応援を呼べ! 敵襲、敵襲―!!」

ザワザワ……


ロムルス「急げ。あと30秒もあれば、我が兵達が突入してくるだろう。さあ、やるのだ」

ネロ「……」チャキ


ネロ(……余に、斬れるのか。神祖を)

ネロ(斬って、どうするというのだ。神祖が死に、望まれぬ皇帝としてまた玉座に座るのか)

ネロ(誰が幸せになれる? 誰が望む? このような、半端な皇帝など……)

ネロ(……やはり……)


ネロ「……やはり、余には斬れぬ……」ガチャンッ

ロムルス「……」

604 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:19:29.59 ID:p3VFfcpc0

敵兵達「「「ご無事ですか、ロムルス様!!」」」ゾロゾロ

ロムルス「……ああ、心配は要らぬ。侵入者があった……あちらの皇帝だ。処遇は追って伝える、今は牢に入れておけ」

ネロ「……」


リドラー「くくく……僕の事を悪く言うが、キミもなかなか良い性格をしてるじゃないか。斬れ、だって?」

ロムルス「……」

リドラー「できる訳がない。分かってただろ? 自分で止まるしかないんだ。それをキミは」

ロムルス「……」

リドラー「……こうなったらもう止まれない。まっしぐらに、永遠めがけて落ちて行く」

ロムルス「望む所だ。それならば、浪漫を追求してやろう」

リドラー「……結局、キミには負ける選択肢なしか。羨ましいね」

ロムルス「お前と同じ、負けず嫌いなのだ」

リドラー「ふっ……」


605 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:20:09.29 ID:p3VFfcpc0

………………

ガシャンガシャン、ガシャンガシャン

マシュ「……?」ムクリ

ガゴーン‼

敵兵B「入れ!」ドサッ

ネロ「うぐっ……」

ガシャン‼


マシュ「……ネロ皇帝!?」

ネロ「……ましゅ……ましゅうううううううううう!!!」ダキッ

マシュ「え、えええええ……」


606 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:20:45.52 ID:p3VFfcpc0

………………

ピピピ‼ ピピピ‼

バットマン「……もしもし、マシュか。どうした?」スタスタ

マシュ『あの……ネロさんも捕まってしまいました』

バットマン「何? ネロ……ネロ・クラウディウスがか?」ピタッ

マシュ『はい、その……すごく心を折られてて……泣き喚いています』

ウワァァァァァァァン‼ ヨハイラナイコニナッテシマッター‼

バットマン「……生きている事が確認できて良かった。こちらは今、ガリアへ向けて進行中だ。砦を奪還した後、可能な限り速くそちらへ向かう」

マシュ『は、はい。その、ネロさんはどうしたら?』

バットマン「……好きにさせてやれ」プツッ


607 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:21:27.29 ID:p3VFfcpc0

荊軻「どうかしたか?」

バットマン「ネロの生存が確認できた」

呂布「■■■■■■■―――――!!!!」

荊軻「朗報じゃないか。よし、希望が見えてきたな」

バットマン「……ああ」


バットマン(心を折られた……か。厄介な事をする)

バットマン(誰がやったかは、大方の想像がつく)

バットマン「やってくれたな……」

荊軻「どうした?」

バットマン「……いや。必ずガリア砦を取り戻そう」

荊軻「……ああ、勿論だ」

608 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:21:55.47 ID:p3VFfcpc0

ドクター『その辺り一帯の地雷は一時停止状態とはいえ、気を付けてくれ。派手な衝撃が加われば危険だ』

バットマン「ああ。……ドクター、敵性反応は未だに無いか?」

ドクター『……それもそろそろ、だね。戦闘の準備をしておいてくれ』

バットマン「了解した……」

通信機『』ピーッ‼ ピーッ‼

バットマン「……緊急だ。すまないドクター、少し切る……」ピッピッ

兵士A『もしもし! こちらマッシリア駐留部隊! 大変です、敵の首都より大部隊がこちらへ……!』

バットマン「……」


バットマン(やはり、来たか)


609 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:22:31.10 ID:p3VFfcpc0

荊軻「どうした? 緊急か?」

バットマン「連合首都から、敵の大部隊がマッシリアへ向けて進行中だ」

荊軻「……どうする? 戻るか?」

バットマン「いいや、計算通りだ。もしもし、そちらで出来得る限りの時間稼ぎを。ガリア砦を取り戻し次第、こちらもすぐに加勢する」

兵士A『了解! 武運を!』

バットマン「そちらも」プツッ


荊軻「成程、素早く攻め落とす必要がある訳だ」

バットマン「行くぞ……隠密状態解除! 砦奪取へ動け!」

兵士達「「「おおおおおおーーーー!!!!!」」」

呂布「■■■■■■■―――!!!!」


610 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:23:09.50 ID:p3VFfcpc0

レオニダス「……来ましたな。あの数、あの気迫。速攻戦に違いなし」

レオニダス「ならば、我が三百の宝を見せるまで。たとえ十倍の数が相手であろうとも……」

レオニダス「スパルタとしての意地! 誇り! 今度こそ守り抜いてみせる!!!」


敵兵達「「「おおおおおおおおおおお!!!!」」」

611 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:23:40.21 ID:p3VFfcpc0


バットマン(相手も三百の兵を展開済み! 全速力でこちらへ突っ込んで来る!)

バットマン「良いか、教えた通りの戦法をとれ!」

兵士達「「「うおぉぉぉぉぉーーーー!!!」」」ドドドドドドド

呂布「■■■■■■■――!!!」

バットマン「別れるぞ! 武運を祈る!」

荊軻「キミも! 無事を祈るぞ、ブルース!!!」

612 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:24:13.66 ID:p3VFfcpc0

バットマン「フッ!」ドシュゥゥゥゥゥゥ……

レオニダス「……?」

レオニダス(煙幕? あんな小規模な……)


レオニダス「!!」ガガァン‼


レオニダス(これは……シュリケン?)


レオニダス「ああ、バットラングというヤツですな! 報告はあがってきており……」

荊軻「そらっ!」ヒュンッ

レオニダス「おおう!?」ガァン‼

荊軻「ちっ、一撃で上手く行かないのはもはやお約束か!」

レオニダス「成程、兵に構わず私を潰しに来たか! 賢明ですが、そう上手く行きますかな!?」ブゥン‼

荊軻「舐めるなッ!」ギィン‼


613 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:24:50.15 ID:p3VFfcpc0

兵士B「矢を撃て! 放て! 狙うのは大将だ!」

兵士達「「「おおおおおーーーー!!!」」」ヒュンヒュンヒュンヒュンッ‼


敵兵「ぐっ……」ギギィン‼ ギャァン‼

レオニダス(厄介な……三百の兵の『防衛的性質』を見抜いた者が居たのか。私が狙われれば、この兵達は私を守る……反撃に転ずる事が出来ない!)

レオニダス「……なんの、この程度の逆境で泣きが入ってはスパルタの名も傷付くというもの! ここからですぞおおおおおおお!!!」

荊軻「くっ……」

荊軻(うまくやってくれ、ブルース……!)



614 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:25:24.01 ID:p3VFfcpc0

………………

バットマン「……」タタタタ……


バットマン(砦の内部に潜入したは良いが……見張りが居ない?)

バットマン(嫌な予感がする……)


バットマン「……」スタスタ……

バットマン(この下が地下牢か。ブーディカ達が居るのか、それとも……)


615 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:26:22.70 ID:p3VFfcpc0


バットマン(鍵は……これか。よし、あとは牢を見つけるだけだ)ジャラリ

バットマン(……それにしても、この砦は静かすぎる。……外敵が攻め入ってくる事を想定していないとでも?)

バットマン(いや……成程な。最初から、私達をおびき寄せるためだけの餌だったという事か)



「おーーーい!!! こっち!! 誰か居るんでしょーーー!!!」


バットマン「!!」

バットマン(あの声は……)


616 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:26:53.42 ID:p3VFfcpc0

バットマン「見つけたぞ、ブーディカ」


バットマン(……? 何故だ、違和感が……)


ブーディカ「えへへ、ごめんね。ドジ踏んじゃってさ、捕まっちゃった」

バットマン「……心配いらない。すぐに出してやる」ジャラ……ガチャガチャ

ブーディカ「……本当に、ごめんね……」

バットマン「敵の策を予測できなかった私の責任だ。……開いたぞ、外に出ろ」

ブーディカ「……いいや、謝ったのは、それに対してじゃなくてね」

バットマン「何に対してだ?」


バットマン(……何に対してだ? 何故さっき、私は違和感を抱いた? 何がおかしい?)


617 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:27:31.85 ID:p3VFfcpc0

バットマン(リドラー。心を折る。ブーディカ。ブリタニアの女王)

(((引っ掛け問題の味はどうだ、バットマン?)))

バットマン(引っ掛け問題。……ああ、そうだ、なんて単純な答えなんだ)

バットマン(牢の中に繋がれていたのに、何故武装が解除されていない?)



ブーディカ「ふッ!!!」ブゥンッ‼

バットマン「っぐ!?」ガギィィィィ‼


618 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:28:23.48 ID:p3VFfcpc0

ブーディカ「……やっぱり、一瞬じゃ無理か。キミ、手練れっぽいもんね」ギリッ

バットマン「くっ……」ヨロ


バットマン(何故? ……ああ、考えるまでもない。この裏切りは想定できていた)

バットマン(ブーディカ。ブリタニアの女王。ローマに……ネロ・クラウディウスに蹂躙された地を取り戻そうと戦った、誇りの女王)

バットマン(……なら、こうなる方が自然か)


619 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:29:00.91 ID:p3VFfcpc0

ブーディカ「ごめんね。死んでほしいんだ」

バットマン「……」


バットマン(大方、あちらにつけばブリタニアが取り戻せるとでも言われたのだろう)


ブーディカ「っ!」ヒュッ‼

バットマン「フッ!」ガギィン‼

ブーディカ「やあっ!」ヒュンヒュンヒュンヒュンッ‼

バットマン「……!!」ババッバッバッ‼

ブーディカ「逃がさないよ……! アタシはブリタニアを……!」グォンッ

バットマン「!! しまっ……!」

620 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:29:31.10 ID:p3VFfcpc0


………………

荊軻「そこ!」シュンッ‼

レオニダス「甘いッ!!」ガギィィィ‼


呂布「■■■■■■■―――!!!!」

兵士達「「「うおぉぉおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」ヒュンヒュンヒュンヒュン

敵兵達「「「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」ガガガガガガガ……


ドガァァァァァァァァン……

荊軻「何!?」

荊軻(砦の壁が……)


バットマン「ぐっ……」ゴロゴロッ

荊軻「ブルース!?」


ブーディカ「……」スタスタ


荊軻「ブーディ……」

荊軻(違うな。アレは私の知っていたブーディカではない)


621 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:30:15.47 ID:p3VFfcpc0


レオニダス「形成逆転のようですな!!」ギャリィィィ‼

荊軻「ちぃっ!?」ガガッ‼


荊軻(こいつを抑えておかなければ……だが、それではブルースが)


ブーディカ「……」ヒュンッ

バットマン「うぐっ……」ギィン‼

ブーディカ「フンッ!」ドゴォッ‼

バットマン「っぐあ!?」ドシャアアッ


呂布「■■■■■■■―――!!!!」ドスドスドスドス

バットマン「!? 駄目だ、来るな! 戦線を維持しなければ……!」

敵兵B「今だ! 攻撃が緩んだぞ、反撃ィ!!!」

敵兵達「「「ウオォォォォォォーーー!!!」」」ドドドドドドド‼


兵士達「「「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!」」」ドドドドドドドッ‼


呂布「■■■■■■■―――!!!!」ダッ



バットマン(駄目だ、総力戦では絶対に打ち負ける!)


ブーディカ「まだだ……!」ブゥン‼

バットマン「くっ……」ギャァン‼


622 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:30:50.35 ID:p3VFfcpc0

バットマン「ッ……お前はそれで良いのか、ブーディカ……!」

ブーディカ「……良い悪いなんて単純な動機じゃ、人間は片付けらんない時もあるんだ。アタシは絶対に負けられない! 今度は、絶対に!」ヒュンッ

バットマン「……お前は何を誤魔化している。何を恐れている。誰の為に戦っている!?」ガギィ‼

ブーディカ「アタシは! 何も! 誤魔化していない! アタシはブリタニアの為に戦ってんだ!」

バットマン「嘘を吐くな!」

ブーディカ「吐いてない!」

バットマン「目を見れば分かる!」

ブーディカ「うるさいっ!!!」ギャリィン‼


623 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:31:35.34 ID:p3VFfcpc0

ブーディカ「アンタに分かるのか! 愛してた人が、郷土が蹂躙されて、どうにかしようと立ち上がって!! そのせいで、もっとひどい事になったのに!!」

ブーディカ「アタシが黙ってあの世界を許容していれば、娘達は生きていられたのに! ブリタニアはそのままでいられたのに!!」


ブーディカ(まだ、まだ聞こえる。あの泣き声が。耳を塞いでも、謝っても、泣いても、何をしたって消えてくれないあの声が)


ブーディカ「ローマさえ居なければ! ネロさえ居なければ! アタシさえ居なければ!」

ブーディカ「だから……! だから、これはチャンスなんだ! アンタを殺して、ブリタニアを取り戻して、今度こそ……! 今度こそ、アタシは……!」ブォン‼


624 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:32:43.09 ID:p3VFfcpc0

バットマン「っっ……!」ガガッ、ドサッ


バットマン(しまっ……!)


ブーディカ「……!」グワッ


バットマン(ガードが、間に合わない……)


625 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:33:15.22 ID:p3VFfcpc0

(((わ、私、は……)))

(((戦いが、怖い。人が死ぬのを見るのが怖い……)))


ブーディカ「…………」グ……ピタッ

バットマン「……?」

ブーディカ「…………」


626 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/01/20(土) 01:33:47.56 ID:p3VFfcpc0

(((大丈夫。アンタは十分強いし、頑張ってるんだ。盾の後ろが重くなったら、他の奴だって支えてやれるんだから……)))


ブーディカ「……ちくしょう……」ドシャリ

ブーディカ「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょう!!
あああああ!!!!! あああああああああ!!!!」ドスッ、ドスッ……ドッ……

ブーディカ「ああ……あああああ……」ポロポロ


ブーディカ(できる、わけがない。マシュの声だって、聞こえてるのに)


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