相良宗介「HCLI?」

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/02(金) 19:15:07.70 ID:FJPDfUmY0

「――このコンセプトは、各国軍部が切り捨てたXM3までのASと全く同じものじゃないか!」

「……はっ!? そうか、それか!? ……ところでココ、お前の護衛、なんでみんな床で寝てるんだ?」

「え? あ、ほんとだ。ちょっとみんな! はしたないからそんなところで横にならないでってば!」

 ココの言葉に、よろよろと私兵たちが起き上がる。ふらふらと気力を振り絞るようにして手を上げたのはワイリだった。

「あのー……ココさん。XM3というのは……」

「うん? ああ、今でこそASは8メートルの大型兵器だが、最初期のコンセプトは3メートル以下のパワードスーツ染みたものだったんだよ。
 とはいえ、それじゃ火力も装甲も貧弱だからってことで、いまの方向に転換したんだけどね」

「……形、とかは」

「形? 形はこれで問題ないでしょ。脅威性の判別が難しくなるし、いいチョイスだと思うよ。個人的にはミッキ○の方がいいと思うけど」

「そうか、じゃあディズ○ーに掛け合ってみるかな」

「それはやめた方がいいと思いますけど」

 ワイリの突っ込みは、盛り上がる武器商人たちに聞き流された。

「それはともかく、軍受けしないのはコンセプトの問題だと思うよ。いまの技術を流用してるから、XM3よりはましだとしてもさ。
 一度切り捨てたコンセプトを軍部が受け入れようとしないのは、君もよく知ってるだろ?」

「確かにな。そういや、売れたのは軍とのつながりが薄い警察関係だけだった……だが、そこもほとんど買わなかったぞ?」

「安い買い物じゃないからねぇ。ちょっと調べればXM3の事例は出てくるわけだし、そのせいじゃない?
 べアールは若い世代だし、おそらくその傭兵も第一世代以前のASを知らない世代でしょ?
 XM3の件が思い浮かばなくても仕方がないとは思うが……」

「うーむ。ということは、あと20年も待って軍上層部の入れ替えを待てばあるいは……?」

「ああ、可能性はあるね! つまり数十年後の戦場では、大量のボン太君が闊歩しているかもしれないというわけだ!」

「我がブリリアント・セーフテック社製のボン太君がな! わっはっは、未来は明るいぞぅ!」

 そんな戦場は絶対に嫌だ。

 戦争に携わる私兵たちは、心の中で声を揃えた。
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/02(金) 19:16:36.32 ID:FJPDfUmY0
 だがそんな心中をよそに、べアール社長がとんでもない発言をする。

「ありがとう、ヘクマティアル。これで秘書にも言い訳がたつ。あいつ、売り切るまで戻って来るなとカンカンでな。
 そうだ! お礼にひとつ、ボン太君を差し上げよう! お前のところの護衛に使わせると良い!」

『え゛っ』

 濁った声を上げる私兵たちとは別に、ココは自身の顎に手を添えて唸って見せる。 

「ふぅむ。広告塔代わりというわけかい? 相変わらずやり手だな、べアール」

「はは、おだてるなよ――で、誰に着させる?」

「そうだな、それじゃあ――」

「おじさんはパスしとくぜ。狙撃することの方が多いし、ポイントマンに持たせてやんな」

「あっ、レームのおっさんずりぃ……お嬢、俺もいいや。狙撃するから」

 レームとルツが一抜けする。他の面々も我先にと続いた。

「私も砲兵なので……」

「アクセルやブレーキに足が届きそうにないので……ていうか運転席に座れそうにないです」

「爆弾を見つける時に、勘が働かなくなりそうで」

「ナイフ格闘はリーチが重要です。その短い腕はちょっと……」

 ぐるぐるとたらい回しにされるボン太君。(遥か後方で死んでいるトージョは、幸いにして標的から免れた)

 その中で、小さな手が自己主張するように挙げられた。手の持ち主は、口の中のストロベリー・キャンディーをかみ砕き、飲み込んでから、

「じゃあ、僕が貰ってもいい?」

 なんて、驚天動地の発言を口にした。

 その場にいた全員の視線がその人物、ヨナに集中する。

「え、ヨナが着るの? そんなの、そんなの……絶対に可愛いに決まってるじゃないか!」

「お、そっちの坊やか? ふむ、まあサガーラが着てたしサイズは大丈夫か……」

 あれよあれよという間に進んでいく話し合い。それを心なしかわくわくした表情で見つめるヨナに、バルメが心配そうに声を掛けた。

「よ、ヨナ君? 本当にいいんですか? あれを着て戦うなんてこと……」

「? なんで戦うんだ?」

「え?」

 きょとん、とした顔でそう返してくる少年兵に、私兵たちも疑問符を浮かべる。

「前から思ってたんだけど、ココの船は大きすぎて、たまに手が届かないところがあるんだ。
 あれを着れば、きっと届くと思うんだけど。それにちょっと楽しそうだ」

「……あー、ヨナ君。でもべアール社長は、あれを着て戦って欲しいと思ってるんじゃ」

「でも、ココは『受け取る』って言っただけだ」

「それはそうですけど……まあ、ココもヨナ君の頼みならそっちを優先するでしょうしね」

 というわけで。

 それからしばらくの間、HCLIのタンカー船では、ふもふもと歩き回る少年兵の姿が、本人が飽きるまで見られたという……
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/02(金) 19:17:39.62 ID:FJPDfUmY0
今度こそ本当に終わり
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/02(金) 21:05:29.05 ID:q/B3VB6qo
おつおつ
素晴らしかった
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/03(土) 09:30:56.99 ID:yhwZpbCpo

流石ボン太くんだ

でもかなり性能いいんだけどねボン太くん、工業AS相手なら普通に鎮圧できるし
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