京太郎「死んでも生きる」良子「死んでも一緒」

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285 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 00:03:03.52 ID:aQEKPzKt0

良子「せっかくですし、手でも繋ぎましょうか」フフッ

京太郎「ふぇっ!?」

良子「ほら、デートなんですから」フフッ

京太郎「っ……はい」スッ

ギュッ

良子「ん……大きいですね」クスッ

京太郎「ま、まぁタッパも違いますからっ」カァッ

良子「では、行きましょうか」

テクテク

京太郎(うっ、めっちゃリードされてしまっているぅ)

良子「絶叫系は、まだ早いですか……前回の記憶をリボーンしなくては」キョロキョロ

京太郎(てか俺、手汗大丈夫か!?)
286 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 00:22:25.71 ID:WKBOFqSy0

―――【その後】


京太郎「っ!」ゼェハァ

良子(色々乗ったし絶叫系と思ったのですけども……)


京太郎「ひ、ひぇ……しょ、正直侮ってました」

良子「ふふふっ、か、変わらないっ」クスクス

京太郎「へ……?」

良子「い、いえっ、そりゃそうですよねっ」クスクス

京太郎「む、むしろ戒能さんはなんで平気なんですかぁ」カァッ

良子「私は二回目でっ」クスクス

良子(本当は須賀君もですけど)


良子「約束は守れましたけど、もう一回乗っておきますか?」クスクス

京太郎「い、いや次は死にます。死にかけましたけど」ゼェハァ

良子「っ、そこまで一緒、なんですね」ボソッ

京太郎「?」

良子「いいえ、観覧車でも……乗りましょうか」フフッ

京太郎「あ、はい!」
287 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 00:27:01.56 ID:WKBOFqSy0

とりあえず今回はここまで
長らくお待たせしましたー

ラストスパートだから頑張るよー
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 09:13:08.29 ID:HG0g3K6w0
オッケー
こっちもやってたか
前の遊園地の再現みたいなのあっていいな
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/28(土) 09:13:40.87 ID:HG0g3K6w0
間違えた乙
290 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 21:41:39.64 ID:UMeEkN+e0

やってくでー
一応臨海の方も終わりを迎えたのでこちらも頑張るゾイ!

また、なんか建てて書くつもりではあるけどもー
291 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 22:01:26.45 ID:cL3zM8lG0

―――【観覧車】


京太郎「おー高い、てか街が綺麗だ」

良子「っ……」

京太郎「へー」

良子「……好きです、か」フッ

京太郎「へっ!?」カァッ

良子「え、ああすみません……少しセンチメンタルです」

京太郎「?」

良子「須賀君は麻雀、好きですか?」

京太郎「も、もちろんっすよ。昨日一日麻雀してやっぱ好きだなって」ニッ

良子「……仲間は、好きですか?」

京太郎「もちろんです。沢山迷惑かけちゃったけど……それでも、俺が起きて喜んでくれて、泣いてくれた」


良子「……」

京太郎「」

良子「っ」ビクッ

京太郎「一緒にいたい、大事な仲間です」

良子「そう、ですか……」

京太郎「もちろん、戒能さんともっ」ニッ

良子「え」
292 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 22:15:14.27 ID:1xgoMmmA0

―――【どこか】


大きな陸橋の上、ベンチに座っている熊倉トシ

その隣にいるのは大沼秋一朗

二人の視線の先には―――遊園地


「なんてことない話さ」

「ん?」

「アイツの、京ちゃんのこと」

「……」


徐々に赤くなってきている空

視線の先の遊園地で観覧車が回っている


「因子と因果……因子さえそろえることができればこそ、できることもある」

「再現か?」

「それに近い。けどね、それとはまた違う」


語ることは一つ。語りたいことは一つ。

ただそれを真っ直ぐに伝えるのは簡単だが、それを真っ直ぐ実現する難しさ

それでも彼のため、彼女は出来うる限りのことはした

それが失敗に終わろうと結果としては、それほど変わりはないと熊倉トシは理解している


「それでもね、私は京ちゃんと―――京ちゃんを愛したアイツに幸せになって欲しい」

「……溺愛だな」

「こんなあたしに付き合ったあんたも大概だよ」

「弟子だからな、それなりに世話してやんねぇと」


そう愚痴るように言う秋一郎の顔には、確かに笑みが浮かんでいた

故に、熊倉トシもふっと笑みを浮かべて空を見上げる

因子は揃っているのだ。“悪霊の残した残滓-因子-”は拾い上げた


あとは―――因果と成すだけなのだ。


293 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 22:36:59.37 ID:zsCwlIW10

―――【観覧車】


半周を周り、頂点を過ぎ下る観覧車

景色を見ている暇もなく、良子と京太郎はお互いの瞳を見あう

戒能良子は“彼”といた時のことを脳裏に思い浮かべあがらせながらも、激しく動悸する胸の前で手をぎゅっと握る


「……貴方は、私の唯一です」

「え、唯一……?」


すでに、景色は視界に入っていない

戒能良子に熊倉トシの思惑も計画も、関係などないのだ

ただ純粋に戒能良子は、目の前の少年に感情をぶつけるのみ


「っ」


あの日々を零にすることなどできなくて、足掻いている

諦めるつもりだった。彼は彼じゃないと、でも彼は彼と同じことを言うのだ

故に、良子は滲む視界を振り払って最後の言葉を紡いでいく


「私はっ、貴方のことがラブで……大好きです!」


ハッキリと口にして、ハッと気づく

自分が言っている言葉を、まだ彼にとっては出会って数日

そんな自分が口走った言葉の意味と、結果を


「戒能さん……」

「っ」


ビクリと震える良子

膝の上に置かれたその手に―――そっと手が重ねられる


「え」


顔を上げれば、そこには京太郎

先ほどより近いその目の前に、京太郎の顔が映る

優しい笑みを浮かべる京太郎


「遅れたけど、約束……守るから」

「きょう、たろぉ?」

「死んでも生きる……生き返る、かな?」

「ッ!」


笑顔を浮かべる京太郎の前で、堪えていた涙がぽろぽろとこぼれる

下っていく観覧車

京太郎は、そこに“存在していた”
294 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 22:47:16.16 ID:zsCwlIW10


「……ごめん」

「っ」


頭を横に振る良子の瞳からは涙がこぼれ続ける

スカートにシミが広がっていく

そっと、片手を離した京太郎がハンカチを取り出してその目元を拭った


「色々……トシさんがしてくれたんだと思う。きっと大沼さんとか……も」


協力してくれたのはきっと、松実露子もだ

彼女は自分と同じ霊だ。本質こそ違うものの、きっと彼女もまた


「一つ一つ、色々な場所に俺を“呼び戻すナニか”を散らせて、きっと」

「京太郎、なんですか?」

「イエス、俺は須賀京太郎……」


そっと、良子の手を自分の頬に寄せる

ひんやりとした手の平を頬で感じつつ、彼女の顔を見れば、夕焼けに照らされてかほんのりと赤い

なにがどうだとか、細かく考えるのは性に合っていない

ただ目の前の現実を噛みしめるのみだ


「戒能さん、いや良子さん……」

「は、はい」

「俺は」


ガチャリと、音がすると同時にゴンドラの扉が開く


「え?」


京太郎と良子の二人と、係員の眼が合う
295 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 23:04:20.06 ID:zsCwlIW10


泣いた女の手を握る青年


(面倒の予感しかしない)


係員は口にも顔にも出さず、即座に判断する

だが、しかし―――ふと、京太郎はウインク一つをしながら人差し指を立てた

そして音に出さずに唇のみで言葉を伝える


『もういっかい!』

(なるほど)

「ごゆっくり〜! いってらっしゃ〜い!」


営業的な営業文句と共に営業スマイルでゴンドラの扉を閉めた


そして再び密室、息をつく京太郎が咳払いをして良子の方を見る

水を差されたけれども、その気持ちがおさまることもない


「良子、さん」

「あ、はい」


涙が止まった良子の眼をしっかりと見つめる

その赤い顔、お互いわかっているのだ

しっかりと―――伝え合ってはいるのだから


「俺も貴方がラブで……大好きです。愛してます」


ニッと白い歯を見せて笑みを浮かべる京太郎

良子は再び瞳一杯に溜めた涙を流しながら、京太郎の頬に両手を添えた

彼だって理解している。二度目だが今回は違う


切羽も詰まっていなければ、気持ちの余裕の無さも意味が違ってくる

京太郎も手を良子の背に添えて、すぐそばに近づいてくる感覚を受け入れた

二度目のキスの味―――きっと二度と忘れないだろう。その夕焼けも、瞳も


296 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 23:31:25.82 ID:mauixQKk0


京太郎たちの乗ったゴンドラは、頂点へとたどり着く

椅子に隣同士で座る京太郎と良子の二人

指を絡めてしっかりと手を握る。二度と離さないと言うように


「ようやく、見れましたねー景色」

「……でも、ドキドキしすぎてそれどころではありませんけど」


そんな言葉に、京太郎の頬がほんのりと染まる

繋いでいる手の力を少し強めつつ、抗議するように良子の顔を見る

しかし、いたずらっぽく笑う彼女を見て笑みを浮かべつつ再び景色に視線を移す

二人の視界に映る夕焼け空と街


「あそこらへんですね、京太郎と出会った交差点」

「それで、あそこらへんですか、良子さんの泊まっているホテル」

「……なんか、変なこと思い出してません?」

「へっ!? な、なにが!?」


下って行くゴンドラ

ゆっくりと過ごせるこの半周、心の余裕に二人が笑顔を浮かべながら会話を弾ませる

地上へとゆっくりと降りて行き、今度こそしっかりとゴンドラの扉が開く


「楽しんでいただきましたか〜! お気をつけて!」


先に降りた京太郎が、良子の手を取りそっと降りるのをエスコートする

両足で地に足をつける良子、そして京太郎

二人で顔を見合わせて笑みを浮かべると歩き出す


ただ帰るだけの道。だが特別なお互いの帰るべき場所へと―――


「良子さん、帰りましょ」

「はいマイダーリン♪」


―――向かうべき場所、帰るべき場所はただ、一つ



「……てかダーリンってさすがに恥ずかしくないっすか?」

「う゛っ」

297 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 23:45:22.39 ID:mauixQKk0


―――1週間後【長野・清澄高校】


麻雀部部室で、京太郎は囲んでいた雀卓を前に背を伸ばす

結果としては上々であり2位、1位は親友こと宮永咲

原村和と片岡優希を退けてなのだから今までと比べたら著しい成長だ


「まだ勝てないかぁ」

「京ちゃんにはまだまだ負けないよっ♪」

「……何度でも挑むよ」

「何度でも受けて立つよ」


好戦的な笑みを浮かべる親友に、京太郎は苦笑を返す

そんな時、扉がノックされる音がして全員がそちらを見やる


「そろそろ下校の時刻よ」

「全員、帰り支度しんしゃい」


竹井久と染谷まこの声に頷いて立ち上がる


「のどちゃん帰ろー!」

「あ、寄っていきたいところが、咲さんと須賀君も」

「いこー!」

「あ、悪い、俺は……」


誘いの言葉に、バツが悪そうに返事を濁す

そんな様子を見て三人がニヤニヤと笑みを浮かべた

顔を赤くして京太郎は後頭部を掻く


「ほっとけ」

「か〜おんし大概にしとかんとあかんぞ」

「わかってますよ〜」

「須賀君、今度は私を東京に連れてってね」ニコッ

「全員まとめて」フッ

298 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/28(土) 23:56:30.44 ID:mauixQKk0


軽い駆け足で校門から出て、さらに少し

そんなところに立っている彼女は、やはり輝いて見えた

惚気と言われればそうだが、それでも自分の感性がおかしいとも思えない


「お待たせ、良子さん」

「ん、今来たところですよ。京太郎」


ニコリと、輝くような笑みを浮かべる

二人揃って、歩き出す


「今日はまたどうして?」

「もちろん……貴方と会うついでにワークを」

「そっちがついでなんだ」

「当然です」


笑みを浮かべる彼女の隣を歩く京太郎

この関係をどう表現しようか、恋人と言えばそうなのだけれどそれでは軽すぎる気もする

もっと重いナニカだ。でなければ説明がつかない

お互いの人生をゆだねて生きている。そんな関係


「良子さん」

「はい」

「俺が死んだらどうします?」

「……死んでも一緒です」


笑みを浮かべて手をつなぐ

本気だが、無邪気。歪んでいると言えばそうだが

京太郎も良子も、そもそもの出会いも別れも、歪んでいたのだ

だが至って健全、やはりそれ以上でも以下でもない


「だったらやっぱ……死んでも生きないだ」


笑う京太郎の隣で、良子もまた笑う

地に足をつけて歩き出す

同じ歩幅で、一歩一歩を踏み出す
299 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/29(日) 00:00:00.96 ID:lP+0NotN0
>>298
ミス
〇「だったらやっぱ……死んでも生きないとだ」
300 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/29(日) 00:25:48.99 ID:lP+0NotN0


繋いだ手と手、感じる体温

しっかりと生身でお互いを感じて、しっかりと心で感じる

魂もなにもかもを文字通り全霊でかける関係

そんな慣れないロマンチスト的発想に、苦笑する京太郎


「それでも、一生に一度の関係、なんでしょうね」

「……ビコーズ、“一死に一度”じゃないですか?」

「変な理屈ですね」

「熊倉さんの影響ですかね」


クスリと笑う良子を見て、京太郎もまた笑みを浮かべた

ただ穏やかな日々

夏も終わりが近づいてきたのか、蝉の声も聞こえなくなってきていた


「これから何度も、こんな風にシーズンを過ぎていくんですよ……二人で」

「楽しみです。これからが……一年一年が」

「はい、まだまだ長いんですよ。人の生は」


死んだからこそ出会えた

そして生きているからこそ、今こうしていられる

二人でただ、生きていく


―――喜びも悲しみも苦しみも抱えて、それでも幸せを手に


「京太郎……今、ハッピーですか?」


笑顔を浮かべる愛した者に、問われる

そんな言葉に握る手の力を軽く強めて、京太郎はめ一杯の笑顔を浮かべた

手の温かみと胸の熱さを感じ、愛しき者を視界一杯に


「もちろん」

「……私も、今が最高にハッピーです」


そう言う彼女を抱きしめて、そっと唇を重ねる

少し強い風が、葉を揺らす音だけが響く

顔を離すと、京太郎は少し赤らんだ顔で、眩いばかりの笑みを浮かべる



―――ラブで、愛してます。



-カン!-

301 : ◆Bc4KZX4MNU [saga]:2021/08/29(日) 00:30:34.13 ID:lP+0NotN0

くぅ疲!

終わったー! 何年後しかの完結!
そんな長いわけでもなかったのに長かった

まぁ一種のオカルトエンドというかなんというか
個人的な解釈いれまくりだからわかりにくみかもしれんけど雰囲気で読んでもらえれば僥倖
またすぐに京太郎SS書くとは思う

そんじゃまたどこかでー
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/29(日) 00:46:39.96 ID:psurOz/C0
乙です
最後の方まさにイッチって感じの雰囲気だ
重いけど二人が幸せそうでホッコリした
また書くなら着いてくからやってくれ
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/29(日) 08:58:41.86 ID:qsSekiJV0
乙です
こっちも完結見れて本当に嬉しい
単品ヒロインものもいいものだからまた読んでみたい
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/29(日) 15:59:39.87 ID:SHZYC4n6o
乙!
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/29(日) 21:07:21.83 ID:+ih0+F5k0
乙です
少し寂しいけどしっかり完結してくれてありがたい
次回作も期待してます
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/09/02(木) 20:44:08.06 ID:Hpe5UP5Z0
完結してた!超乙です!
王道のラスト、素晴らしく良かった
戒能プロかわいい
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/21(月) 19:20:44.70 ID:ToO50Y7W0
完結してるのに今気が付いて読んだ…練られた展開に独自の世界観で咲キャラを描いていてとてもよかった…
今更ですが乙でした
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