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京太郎「死んでも生きる」良子「死んでも一緒」
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198 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/15(火) 15:20:32.01 ID:y2PTvyFP0
よーやく時間が取れた
結構空けてしまったので昼間からひっそりと開始
イッチの書いてた非安価の中ではなかなかに早く終わりそう
199 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/15(火) 15:37:14.90 ID:y2PTvyFP0
京太郎「俺は……悪霊、なんですね?」
良子「ちがっ!」バッ
京太郎「こ、この状況でこれ以外にないでしょう!?」
トシ「……」
京太郎「なにが、助けたって……あんなん、ただのマッチポンプじゃねぇかっ!」クワッ
バチンッ
良子「きゃっ」
トシ「電気が……」
京太郎「っ!」
トシ「……ま、大体はあってるね。京ちゃんの言う通り、京ちゃんは現在、存在するだけで周囲のものを」
良子「熊倉さん!」
トシ「知らないままも残酷だよ。それになにかあってからじゃ、京ちゃんがまたこうなる」
京太郎「っ……話して、くださいよ」
トシ「ああ」コクリ
良子「す、須賀君はっ」
京太郎「……」
トシ「まぁ簡単に言えば悪霊……生命が輪廻転生する狭間」
京太郎「意味が、わかんないんですけど」
トシ「だろうね。結局、根本を説明したところですべて無意味。今の現状を再確認すべき、かね」
良子「な、なにを一人で納得しているんですかっ!」
トシ「私もこういう“パターン”は初めてだからね。困ってんだよ」
京太郎「つまりっ、俺はどうすれば、悪霊は、消えればさっさと成仏のプロセスを教えろって言ってんです!」
トシ「……戻る方法はさっき言ったろう。あんたが、未練を“思い出す”のさ」
京太郎「……そうじゃなくて」
トシ「戻る方法だよ京ちゃん」
良子「須賀君、なんで……死ぬんですよ? 体は生きている! まだあきらめるのはっ」
京太郎「……一人で、どうやって見つけるんですか、なら成仏させてもらったほうが」
良子「私がっ、私がいるじゃないですか!」
京太郎「それが嫌なんですよ!」
200 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/15(火) 15:50:51.55 ID:y2PTvyFP0
良子「え……」
京太郎「……戒能さん、優しいから、きっと生身に戻れるように俺のために、だからっ」
トシ「……」
京太郎「誰かを不幸にするぐらいなら、俺は」
トシ「本来の霊であるなら未練をなくして輪廻転生の輪に還す。だけど京ちゃんの場合は“肉体に帰る”ことになる」
京太郎「成仏、っていうか……その場合」
トシ「ああ、無理矢理に祓うっていう形であの世、というか輪廻転生に乗せるってことになるね」
京太郎「負の無限力」
良子「え、須賀君、なにを?」
京太郎「っ、いま……なにを?」
トシ「思い出さなくていい。ただタイムリミットは近いんじゃないかい」
京太郎「そ、そのタイムリミットがあるってのがわかんないんですよ!」
トシ「簡単さ、あんたはふつうじゃないからね。せいぜい二週間が限度、だろうね」
京太郎「なっ!?」
良子「た、タイムリミットになった場合、どうなるんです?」
トシ「さぁ、そこまでは……還るのか、それともその狭間で合一されるのか」
京太郎「っ……つまり、まともな状態ではいられない、と?」
トシ「そういうことさ」
京太郎「……」
トシ「でも、他人を不幸にするぐらいならそっちを選ぶんだろう?」
京太郎「っ……なんでも、知ってる風なことを言いますね」
トシ「さて、どうだったか」
201 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/15(火) 16:07:48.81 ID:y2PTvyFP0
良子「須賀君、まだ、二週間……」
京太郎「二週間っ! 二週間も一緒にいてみろ! 戒能さん、あんたがっ」」
良子「いいんです!」
京太郎「いいもんか! 俺がよくないっ! いやだ!」
トシ「京ちゃん……」
京太郎「いやなんですよっ、自分が無力なのも嫌だけど、それ以上にもっといやなのは!」
良子「すがくっ」
京太郎「誰かに迷惑かけてっ、その癖に期待に応えられなくてっ」
トシ「……」
京太郎「っ!」ダッ
良子「京太郎っ!!」
ダダダッ ガチャッ バタンッ
良子「っ……なんで、あんなことっ」
トシ「私だって言いたくなかったけど、しょうがないだろ。どうしようもない」
良子「どうかしようがっ」
トシ「いいや、答えはノーだ」
良子「っ……」
トシ「あの子、本来のルートなら結構ナイーブだからね。今回はあんたがしっかりやりな」
良子「え?」
トシ「あの子のこと、もうちょっと成長したらさ、いい男になるよ。外も内も……」
良子「……」
トシ「悪霊になっても悪霊を使っても……麻雀も、さ」
良子「熊倉さん、あなたは」
トシ「頼んだ」
良子「……thank you」
202 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/15(火) 16:56:35.97 ID:y2PTvyFP0
―――【交差点】
京太郎「ごめん咲、みんなっ……」
ガクリッ
京太郎「いつもいつもっ、俺は……!」
ガンッ
京太郎「みんなに迷惑かけてっ、弱くて、それでっ」
「迷惑だなんて、思ったこと、ありもしませんっ」
京太郎「……なんでっ!」バッ
良子「はぁっ、はぁっ……なんでなんで、今更、聞きますか……?」
203 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/15(火) 17:05:59.06 ID:y2PTvyFP0
京太郎「そりゃっ」
良子「なんで、なんてっ……関係、ないんです」
京太郎「ありますよ!」
良子「貴方は私を助けようとしてくれたっ」
京太郎「なにが!」
良子「電車でのことでしょう!」
京太郎「ひ、人を具合悪くするぐらいなら、あんなことっ」
良子「でもあなたは、あの時、本気で怒ってくれたでしょう?」
京太郎「マッチポンプですよっ」
良子「でも、あの感情と行動は、本物ですよね?」
京太郎「っ」
良子「……わかりやすい」クスッ
京太郎「ッ!!?」カァッ
204 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/15(火) 17:19:18.47 ID:y2PTvyFP0
京太郎「俺は、それでもっ」
良子「須賀君、ユーは……他人のために怒れる。他人を大事に思える」
京太郎「な、にを?」
良子「他人のために悲しめる。立派な人間です」
京太郎「そんなわけっ」
良子「しかし」
京太郎「っ」
良子「他人のために自分を卑下してしまう。少し、困った人です」クスッ
京太郎「戒能、さんっ」
良子「ですから、だからっ……それでもっ、私に、もうちょっとだけ付き合って、くれませんか?」
京太郎「……」
良子「なぜだかなんてわからない。それでも、あなたと一緒にいたいし、あなたと一緒に、あなたの生きる道を」
京太郎「戒能さんはっ!」
良子「……」
京太郎「戒能さんは、なんで……怖くないんですか? その先に、俺と一緒にいた先に、なにがあるかわかんないんですよ?」
良子「怖くありません」フッ
京太郎「っ」
良子「……一緒に、見つけませんか?」
京太郎「それはっ」
良子「未練、わかりませんが……見つけて、一緒に」
京太郎「なんでっ、俺なんかのためにっ」
良子「わかんないですよっ、それでも私はあなたに、なにかしてあげたいと思ってしまったんです」クスッ
205 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/15(火) 17:31:22.96 ID:y2PTvyFP0
京太郎「……そんなこと、言われたら、甘えますよ?」
良子「ええ」コク
京太郎「そんなこと言ったら、二週間つき合わせますよ?」
良子「ええ」コクリ
京太郎「そんなこと言ったら!」
良子「……」
京太郎「っ……俺、またこうやって逃げだすかもっ」
良子「そのたびに、私はこうやって追いかけて、何度でも……」
京太郎「っ」
良子「あなたを苦しめて、それで……幸せにしてあげたいと思います」ニコッ
京太郎「っ」
良子「まぁ、それはもとに戻してからの話になり、ますか」フフッ
京太郎「なんでっ」
良子「仕方ないじゃないですか、助けてあげたいって思っちゃったんですから」
京太郎「っ……助けて、もらって……いいですか?」
良子「オフコース もちろんです」ニコリ
206 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/15(火) 17:36:42.14 ID:y2PTvyFP0
ここまで!
ちなみに京ちゃんが見えないので見られたらやべーやつ扱いの戒能さんだよ!
最近になって怜読みだしたけどいいねあれ
とりあえず近々またやるーできれば明日か明後日にでもー
そんじゃまたー
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/15(火) 21:20:58.27 ID:3YtfN4m60
かいのーさんマジ天使おつ
Tokiは小学生時代の泉が結構好き
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/16(水) 02:11:54.02 ID:hiQdNd6F0
ヒャッハー!京良だー!乙です!
やっぱりもう終盤なのか…生きがいが…
209 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/17(木) 16:05:57.22 ID:xVrXBpxw0
とりあえずちょっとだけやってくー
Tokiの泉いいよね、わかる
210 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/17(木) 16:20:09.07 ID:xVrXBpxw0
―――【ホテル】
トシ「で、仲良く手をつないで帰ってきたわけだけど」
京太郎「っ」カァッ
良子「あ、あれはなんというか、そう! え、エスケープされないための処置!」
トシ「あの感じじゃそれはないだろ、とかは言わないでおくけど」
良子「シャラップ!」
トシ「はいはい、それで協力して乗り切ろうってなったのはいいけども……いいんだね?」
良子「はい」コクリ
京太郎「それと、あの……」
トシ「わかってる……忘れるって話、だろ?」
良子「っ……」
京太郎「助けてもらうつもりです。それでもやっぱり……そんなの」
良子「私は見返りなんて求めな」
京太郎「そうじゃなくて、俺が……いやなんですよ」
良子「須賀君……」
京太郎「忘れるのは、絶対ですか?」
トシ「高確率、って話さ」
京太郎「絶対じゃ、ない?」
トシ「少なからず京ちゃんみたいに死の淵を漂いつつその時の記憶を持ってるなんてのは知らないね。園城寺でさえそうはなってない」
良子「園城寺怜……知り合いでした?」
トシ「“知り合いだったこともある”ってのが正確」
京太郎「えっと、と、とりあえずなんとかする方法とかは?」
トシ「知らない」
京太郎「……」
良子「とりあえず、それは須賀君がもとに戻れるようになってから考える。じゃあダメですか?」
京太郎「……わかり、ました」コクリ
211 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/17(木) 16:36:33.16 ID:xVrXBpxw0
トシ「さて、あと二週間と仮定して動き方を決めようか」
京太郎「俺の未練……」
トシ「不可能でなければなんでもいいよ。女の子にもてたいとか」
京太郎「そりゃこの状態じゃ無理ですね」ハハッ
良子「真面目に」
京太郎「ソーリー……えっと」
トシ「とりあえず今日一日はそれを熟考する日としようか」
京太郎「……良いんですか?」
トシ「焦ってもしょうがないだろ」
京太郎「……」コクリ
良子「では今まで通りで?」
トシ「いや、京ちゃんはあたしが連れてく」
京太郎「あ、はい」コクリ
良子「え、ど、どうして? なぜ? ホワイ?」
トシ「残酷だけど悪霊の類だからね、あんたとずっと一緒ってわけにも」
良子「わ、私のほうが体力ありますし! 熊倉さんマストダイですよ」
トシ「あたしそういうの無効にするから」
良子「!!?」
京太郎「えっと……戒能さん?」
良子「す、須賀君も私と一緒のほうが良いんじゃ!?」
京太郎(まぁ無効ならトシさんとの方が良いよなぁ、それに)チラッ
良子「ね!?」
京太郎(前までみたいに戒能さんと一緒にいて、大丈夫だろうか俺ってのもあるし)
京太郎「やっぱトシさんといきます。戒能さんになにかあってからじゃ遅いし」
良子「!?」
トシ「なに焦ってんだい戒能」ニヤ
良子「べ、別に!?」
212 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/17(木) 17:03:24.93 ID:xVrXBpxw0
―――【帰り道】
京太郎「ほんとに大丈夫なんですか?」
トシ「大丈夫だよ。いっとくけどそういう力の前じゃ戒能よか強い自信もあるし」
京太郎「そりゃ、すげーっすね」
トシ「まぁね、それに」
京太郎「ん?」
トシ「いやなんでも、なにはともあれ……あの場じゃああは言ったけど」
京太郎「……」
トシ「未練、そろそろピンときた?」
京太郎「……きてますよ。ずっと」
トシ「そっか」
京太郎「……トシさんってなんでも知ってますよね」
トシ「なんでもは知らない識ってることだけさ」ハッ
京太郎「その、修行つけてもらっていいですか?」
トシ「もちろんさ、そのためにあんた連れてきたんだから」
京太郎「うわ〜抜け目ないなぁ」
トシ「……」
京太郎「強くなっても、どーせ忘れるんですけどね」ハハッ
トシ「わかんないだろ?」
京太郎「ですけど、なんかそんな気がするんですよね」
トシ「そっか……」
ザッ
京太郎「大沼プロ」
秋一郎「おせぇよ悪霊とババァ」
トシ「うっさいよジジィ」
??「まるで妖怪大戦争ですね」
秋一郎「毒吐くんじゃねぇよ」
京太郎「あれ、そちらの方は?」
トシ「なんて説明しようか」
京太郎「あ! 松実さん! あれ、でもこないだの?」
トシ「あんたの同類」
京太郎「え?」
??「松実露子です♪」ニコッ
京太郎「……えぇっ!!?」
213 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/17(木) 17:20:18.48 ID:xVrXBpxw0
―――【どこかの雀荘】
京太郎「個室の雀荘……」
トシ「さてと」
秋一郎「よそから見たら二人ってのは笑えんな」
トシ「ま、なんでもいいけどね」
秋一郎「とりあえずどうすんだ。手加減したほうがいいか?」
露子「どうする?」
京太郎「えっと……そりゃもちろん」
トシ「いや、手加減は次から……少なからず一局目は全力、ただし飛ばさないように」
京太郎「鬼! オニババァ!」
トシ「祓うよ」
京太郎「ひぇ」
露子「山姥って言った方が妖怪感」
トシ「あんたも乗るんじゃないよ」
露子「はぁい」
京太郎「えっととりあえず……松実さんのお母さん」
露子「露子でいいのよ?」
京太郎「で、では露子さんも……お強い感じで?」
トシ「かなりね」
京太郎「俺にどうせいと」
秋一郎「まぁ死ぬほどしんどいかもしんねぇけど、死んでるし問題ないだろ」
京太郎「この人めっちゃ鬼!」
露子「じゃ、お見せしちゃおうかしら……龍神の力」ゴゴゴゴ
京太郎「ひぇっ」
トシ「大丈夫大丈夫、露子と京ちゃん戦わせれば吉って攻略本に出てたから」
京太郎「なんの!?」
トシ「ファ〇通」
京太郎「大丈夫!?」
露子「まぁ、お手並み拝見、かしら?」ニコニコ
京太郎(美人でおっぱい大きいけど……こえー!!!)
214 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/17(木) 17:21:49.64 ID:xVrXBpxw0
とりあえずここまでー
シリアス続きだったのでちょっと明るめに
また近々やりたい
そんじゃまたー
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/17(木) 22:10:45.99 ID:UwH0rwGJ0
乙
かいのーさんのヒロイン力高い
てか松実母絡むの珍しいな
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/18(金) 22:53:30.44 ID:Pptc8XQ+o
おつ
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/18(金) 23:55:08.79 ID:i+KbLSl20
乙です
露子さんだあぁぁぁぁ!!(歓喜)
なんか読んでていつも以上にテンション上がっちゃった
京ちゃんと一緒にいたくて食い下がるノーウェイさんかわいい
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/19(土) 05:35:14.11 ID:hu5q/U1FO
乙乙
読み返したらそういや確かに以前出てたんだなw
219 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 00:24:47.10 ID:qsRQPJR80
ご唱和ください!スレの名を!
ってことで開始してく所存ー
220 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 00:35:42.61 ID:qsRQPJR80
―――【雀荘】
京太郎「ぐへぇ〜」グテェ
トシ「まだ一局目、だろ」
京太郎「いやぁ、しんどいですって……」
トシ「なぁに、まだ十分力を出し切ってないだろう?」
京太郎「ええ〜戒能さんと鍛えた力、出し切りましたよ?」
トシ「いいやまださ、あの子と鍛えたならこの程度なわけないだろ」
京太郎「うぅ〜才能ないんですって」
秋一郎「才能がないってのは才能だ。こと麻雀に至ってはな」
京太郎「……皮肉っすか?」ジト
秋一郎「ちげぇよ。才能がないってのがまた別の力になるって話だ」
トシ「それに京ちゃんの場合、また違ってくるからね」
京太郎「?」
トシ「可能性は“幾らでもあった”んだから、そこから拾ってくればいいのさ……」
露子「トシさんってたまにわけわからないこと言うわよね」
京太郎「同感っす」
トシ「まぁわからなくてもいいよ。可能性は無限ってことさ」
京太郎「え〜なんか意味ありげで投げやり〜」
トシ「京ちゃん次第だから投げやりにもなるさね」
京太郎「……やりますか」
露子「あら、急にやる気」
京太郎「心配かけっぱなしってわけにもいかないっすからね、みんなにも……」
露子「ん、かっこいいぞ男の子〜」ナデナデ
京太郎「ちょっ、やめっ」カァッ
秋一郎「で、ほんとにやれんのか?」
トシ「まぁどっかの世界からなにかしら拾ってこれるか、それとも……」
秋一郎「ま、付き合ってやるけどよ」
トシ「優しいねぇ」
秋一郎「こういうガキは嫌いじゃねぇ」ハッ
221 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 00:42:25.54 ID:qsRQPJR80
―――【その後】
京太郎「っ!」タンッ
トシ「ん……普通にやってて振込はほとんど回避してるね」
秋一郎「上等だな」
露子「え、それじゃあまた本気でやって良い?」
京太郎「俺、殺されます?」
露子「やだもう人聞き悪いんだから……ちゃんと半生のままにしておくから、ね?」ニコッ
京太郎「こえーんですけど」
トシ「ん〜もうすぐな感じなんだけどねぇ」
京太郎「……っし、もう一回!」
露子「ん、私に似た感じが一回した感じがしたんだけど」
トシ「あんたに? いや、そっちは違う……だから発現しなかった?」
京太郎「えっと……」
トシ「いや、であれば……やはり別口の力」
秋一郎「おい熊倉」
トシ「え……ああ、すまないね。やろうか」
京太郎「ん〜」
トシ(悪霊、霊……纏ろわぬ霊、ねぇ)
トシ「あ、そっちか」
京太郎「へ?」
トシ「ああいや……じゃ、本気でいくよ」ゴゥッ
秋一郎「はぁん、そこまでやんだったらこっちも」ドゥッ
露子「ん、京太郎くんのかっこいいとこ、みせてね?」ズォンッ
京太郎「ふえぇ」
222 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 00:53:48.96 ID:qsRQPJR80
―――【三時間後】
トシ「ほう」
秋一郎「ったく」
露子「ふふっ」
京太郎「……16000オール!」
トシ「まぁこの一発はよかったかもね」
秋一郎「なにがきっかけだったんだ?」
トシ「自覚だろうね。歴とした自覚。死の淵を見るとわかる」
露子「現在進行形で見ている気が」
トシ「そっちとは別でさ……多元宇宙から力を呼び寄せるなんて“この京ちゃん”にはできなかったのさ」クスッ
京太郎「なに言ってんっすか」ゼェハァ
トシ「つまりこれはあんたが自ら呼び寄せた力。この世界のあんたはあんたが自ら悪霊の力をものにした。そういうこと」
京太郎「……意味がわかんないんっすけど」
トシ「今はいいよ。わかるときは……あんたが戻るとき、それでいい」
京太郎「?」
トシ「さて、雀荘を変えようか」
京太郎「まだやるんっすか!?」
トシ「なんてね、とりあえず解散……あんたは娘たちのとこ戻るといいよ」
露子「はぁ〜い……あ、京ちゃんにも私の娘たち、しっかり紹介しようかしら?」クスッ
京太郎「いやいや」
トシ「いいかもよ?」
京太郎「いやいやいや!」
露子「え〜そんなにいやぁ? 玄ちゃんも宥ちゃんもかわいいのに」
京太郎「知ってますけど、親に似てかわいいですね」ハァ
露子「お上手なんだから〜」ペシペシ
京太郎「?」
トシ「それじゃまた明日、いくよ京ちゃん」
京太郎「はーい……え、明日?」
223 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 01:09:03.66 ID:qsRQPJR80
―――【さらに数時間:ホテル:トシの部屋】
京太郎「まさか宮守の宿泊しているホテルに来ることになろうとは」
トシ「そりゃまぁね……初めてだっけ?」
京太郎「え、そりゃまぁ」
トシ「そっかそっか、なんかあたしもボケはじめてるかも」
京太郎「ずっとそう思ってますけど」
トシ「祓うよ」
京太郎「いやいや冗談ですって!」アハハ
トシ「さてと、それじゃまずはおさらい」
京太郎「麻雀!?」
トシ「当然……戒能に良いとこ見せたいだろ?」
京太郎「え、まぁいやそりゃ……」メソラシ
トシ「……なら頑張るしかないだろうね。それに記憶さえ持ち越せるならば」
京太郎「あっ」
トシ「まぁその可能性は極めて低いけどやってみるか」
京太郎「……うっす!」ニッ
トシ(デッドエンドかバットエンドかビターエンドしか見えてないのに、よくやる……)
京太郎「頑張るぞー!」
トシ「さぁ京ちゃんそしたら質問だ」
京太郎「はい!」
トシ「あんたは悪霊、YESかNO」
京太郎「YES!」
トシ「……よし、やるか」
京太郎「え、なんの質問でした?」
トシ「心構えさ、心構え……」
224 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 01:14:59.05 ID:qsRQPJR80
―――【そして昼】
京太郎(こんな麻雀漬けってのも久しぶりだなぁ)
トシ「ん、ほら」
京太郎「え、あ……!」
良子「須賀君……!」
テクテクテク
京太郎「え、えっと……」
良子「その、元気でした?」
京太郎「いやぁ、き、昨日の夜に別れたばっかですよ?」アハハ
良子「そ、ソーリー、確かにそうでした」カァッ
京太郎「……その、が、頑張ります!」
良子「へっ!? な、なにが、ですか?」
京太郎「あ、いや……」
トシ「なにやってんだい」
京良「!?」ビクッ
トシ「戒能はこのあとオフらしいし、京ちゃんは夜に伝えた場所ね」
京太郎「りょ、了解っす!」
トシ「……仲良いね」
225 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 01:21:47.68 ID:qsRQPJR80
京太郎「えっと……どっか、いきます?」
良子「それじゃあやっぱり」
京太郎「?」
良子「帰り、ましょうか」クスッ
京太郎「……はい!」ニコッ
良子「えっと」モジモジ
京太郎「?」
良子「ま、また須賀君が逃げないように……て、手を、出してください」カァッ
京太郎「え、あ、に、逃げないですよもうっ」
良子「い、いいからっ、はりー!」
京太郎「う、うすっ」スッ
良子「ん」
ギュッ
良子「……さ、さぁ、帰りますよ」
京太郎「……はい」コクリ
良子「……」マッカ
京太郎「……」マッカ
226 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 01:30:39.31 ID:qsRQPJR80
―――【ホテル】
京太郎(帰ってきたはいいが……なぜにいまだに手を繋いで!!)
良子(た、タイミングを逃しました!)
京太郎「……手を、洗ったほうがいいのでは?」
良子「確かに!」
パッ
京太郎「えっと、俺はいいよな」
良子(うぅ、私は一体なにをしてるんでしょう……)バシャバシャ
キュッ
良子「ふぅ……」ストン
京太郎(座るの、近くないだろうか……)
良子「……」
京太郎「……」
良子(しまった、なにも考えていない……)
良子「ま、麻雀、は?」
京太郎「あ、いやその……トシさんに猛特訓されてまして、今はちょっと」アハハ
良子「く、熊倉さんですか……」
京太郎(しまった! バッドコミニケーション!)
良子「それでは……」
京太郎(どうする俺ェ!)
良子「その、お話でも、しましょうか……」
京太郎「あ、はいトークですね」
良子「……」
京太郎(なにを……?)
良子「須賀君のこと、教えてください」
京太郎「へ?」
227 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 01:33:26.13 ID:qsRQPJR80
京太郎「俺のこと、ですか?」
良子「はい、麻雀部でのことやなんでもない日常のこと、で」
京太郎「そんなことで、いいんですか?」
良子「そんなことでもいいんです」
京太郎「なんでまた」
良子「私が須賀君のこと知りたいから、じゃ……ダメ、ですか?」
京太郎「い、いや……そ、それじゃあ、あ、あれは去年の!」
京太郎(うわぁぁっ! 勘違いしてしまうぅぅ!!)マッカ
良子(わ、私はなにを恥ずかしいことを言って! うぅっ……)マッカ
228 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 01:55:48.76 ID:qsRQPJR80
―――【数時間後】
京太郎「それじゃ……また、ですかね」
良子「はい、また明日、ですね」フフッ
京太郎「はい」
良子「なんだか、明日だっていうのに、寂しく、感じますね」
京太郎「……えっと」ポリポリ
良子(……また恥ずかしいこと言っちゃいました!!?)
京太郎「お、俺も、です」カァッ
良子「っ」
良子(うぅっ、か、かわいい……)
京太郎「ま、まぁ明日、また明日きますから!」
良子「約束、ですよ?」
京太郎「はい!」
良子「では、明日」
京太郎「また明日!」ニッ
バタンッ
良子「……でも麻雀、プレイしたかったです」ムゥ
229 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 01:59:18.42 ID:qsRQPJR80
―――【雀荘】
京太郎「にしても、なんで今日もまた雀荘?」
トシ「まぁいいだろ」
露子「いろんな雀荘いけて楽しいわね」クス
京太郎「それなんすよ、なぜに別の雀荘?」
秋一郎「まぁいろいろな場所で色々経験するってのは大事だわな」
京太郎「なんとなく納得できないでもない」
露子「ふわふわした返答だね、幽霊だけに」
京太郎「え〜、まぁでも……今日もいいとこ見せますよ!」グッ
秋一郎「じゃあ最初は本気でいくか」
トシ「だね、そうじゃなきゃ意味ないし」
露子「ふふふっ、かっこいいとこ見せてね京ちゃん♪」
京太郎(俺は、生き残ることができるか……)トオイメ
230 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/09/24(木) 02:00:19.04 ID:qsRQPJR80
今回はここまでー
じわじわと最後の時が迫ってきたようでございます
思ったよりは長くなりそうなのだけれども
そんじゃまたー
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/24(木) 02:51:48.10 ID:5ImdSmfD0
乙です!
京良の初々しい感じとか手探りな感じがもう本当好き
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/24(木) 05:39:09.77 ID:dZFXvoj60
ふー!戒能さんとのやりとり甘酸っぺえたまんねえ!
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/28(月) 15:56:21.40 ID:NtXNaaqi0
ムラムラします
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/30(水) 04:36:11.97 ID:wCpmL1Zt0
乙
イッチの書くトシさんは全ての世界線の記憶持ってそうでこのスレの京太郎よりも普通に化け物感がやばい
235 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/05(月) 23:59:01.25 ID:vyxqLRD00
デスシウム投下!
正直思ったよりも長くなっている
とりあえずまこめしいいよまこめし
236 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/06(火) 00:14:33.29 ID:BlCY1y+r0
―――【雀荘】
京太郎「ぐへー」グテー
トシ「ま、こんなもんかね」
秋一郎「こいつぁ驚いたな」
露子「あれ、大沼プロがそんなこと言うなんて」
秋一郎「いやまぁ……“一週間”でここまでくるなんざ大したもんだろ。実際あったんだろ、才能が」
京太郎「……複雑ですけどね、才能って言葉を嫌っていた身としては」
秋一郎「才能ってのにも上下があるからな、それに伸ばし方なんかも」
京太郎「……」
秋一郎「まぁ上の下ってとこだなこの感じじゃプロレベルに勝つなんじゃ絶対無理だろ」ケラケラ
京太郎「ぐぅ、鬼じじぃ」
秋一郎「鬼じじぃの上を目指せよ若造」
京太郎「目指しますよ。目指しますとも……絶対ポイント上回っちゃる」
秋一郎「俺がくたばる前には頼むぜ?」ハハッ
露子「くたばってるのは京ちゃんだけれどね」クス
京太郎「うまいこと言った!」
トシ「はいはい、でも一週間よく食いついてきたよ……それでこそ京ちゃん」フッ
京太郎「いやトシさんはトシさんでなんなんっすか」
トシ「まぁ親切なおばあちゃんだよ」
京太郎「親切なおばあちゃんってレベルじゃねぇ気が」
トシ「なにはともあれいくつもの雀荘でやりあってはみたけど、どう?」
京太郎「ん……別に変化はなかったっすね。いや、なかったわけじゃないけど」
露子「“成長”って意味での変化だし、あまり場所は関係なさそう?」
京太郎「イエス!」
トシ「なら十分」コクリ
秋一郎「ん、十分ってことは」
トシ「京ちゃん……そろそろ、覚悟はしとこうか」
京太郎「……俺の未練わかってるんですか?」
トシ「ああ、今ならわかるよ……なんなら、京ちゃんよりもハッキリと」フッ
京太郎「俺の予想じゃ無理なんですけど」
トシ「無理じゃないさ、あと二日……いや三日、やりあおうか」
露子「大丈夫?」
京太郎「……オフコース、上等っす!」ニッ
237 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/06(火) 00:27:15.70 ID:BlCY1y+r0
―――【ホテル:良子の部屋】
京太郎「ん〜もうみんな帰っちゃうのかぁ」
良子「みたいです。あなたの須賀君のご両親も来ていて、本当にあと数日でボディも長野に」
京太郎「数日、ですか」
良子「ん?」
京太郎「いや、二日か三日、ですかね」
良子「ホワイ? どうして、そう思うんです?」
京太郎「トシさんがそう言ってたんで」
良子「あ〜イエス、納得しました」
京太郎「なるほどね、これは本格的にってことか」
良子「必ず、未練を見つけてもとに」
京太郎「未練はわかったんですよ。たぶん」
良子「ほんとですか!?」バッ
京太郎「うぇっ!? ま、マジです! リアルに!」
良子「……よかった」ホッ
京太郎「たぶんですけど、まぁなんとかなりそうな」
良子「もぉ、あんな良いご両親を心配かけてはだめですよ?」
京太郎「……えっ!? 会ったんですか!!?」
良子「え、ええまぁ……でないとボディのほうの話も聞けませんし」
京太郎「そ、そうっすよね、ね……」アタマカカエ
良子「あ、会ってはバットでした?」
京太郎「いや、いいんですけど……」
京太郎(起きたらめっちゃからかわれそう……)
238 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/06(火) 00:40:51.94 ID:BlCY1y+r0
良子「そういえば、個人戦のチャンプについてですけども」
京太郎「いや! まだ幸い耳に入ってきてないんで聞かないっす!」
良子「……リアルボディに戻ってから、ですか?」クスッ
京太郎「イエス! その時まで楽しみにしますよっ」ニッ
良子「ええ」フフッ
京太郎「まぁどーせ咲だろうけど」
良子「なぜそう?」
京太郎「そりゃ、俺の一番の親友……相棒?」
良子「男女で?」
京太郎「男女間の友情は成立するんっすよ? ジョージョーユウジョーっす!」グッ
良子「へ?」
京太郎「ですよね、そうなりますわ」
良子「むぅ……」
京太郎「な、なんっすか」
良子「なんだか、宮永さんには敵わないようで」ムゥ
京太郎「ど、どういうことで?」
良子「いいえ」
京太郎「え〜」
良子(うっ、私は私が思っているより面倒くさい性格っ!)
京太郎「な、なんか嫌なこと言っちゃいました?」
良子「いえ、別に……」
良子(だめです! ダメ! 嫌われてしまう! しっかり、ただでさえ最近、須賀君を熊倉さんにバンデッドされて……って!!!?)
良子「盗られてってなんですか!?」
京太郎「ひゃわっ!?」ビクッ
良子「あ……失礼」コホン
京太郎(顔赤いな)
239 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/06(火) 00:51:33.69 ID:BlCY1y+r0
京太郎「えっと、それでですね」
良子「ん、どうしました?」
京太郎「明後日、戒能さんって一日オフって聞いたんですけど」
良子「イグザクトリィ、そうですが」
京太郎「えっとですね……」ポリポリ
良子「?」
京太郎「その……」
良子「どうしました? なんでも言ってください」フフッ
京太郎「では」コホン
良子「はい」
京太郎「……デート、しませんか!?」
良子「グッド!」
京太郎「……え、マジですか!!?」
良子(……え!!!!!?????)
京太郎「よかったぁ……」エヘヘ
良子(ソゥ、キュート……じゃなくて!!)
良子「デートですか!!?」
京太郎「ひゃっ、そ、そうですけど……や、やっぱダメっすか?」
良子「だ、ダメじゃないです! 全然!」
京太郎「そ、そっか、よかった」アハハ
良子(でーと、でーと……デート! デート!!? デート!!!!)
良子「……」
京太郎「え、ほんと大丈夫ですか?」
良子「ゆあうぇるかむ!」
京太郎「よかったぁ」ニヘラ
良子(かわいい!!!)
240 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/06(火) 01:04:35.18 ID:BlCY1y+r0
京太郎「そ、それじゃあ明後日、ですからね?」
良子「もちろんです!」
京太郎「はぁ〜ドキドキしたぁ」フゥ
良子「……私が断るわけ、ないじゃないですか」クスッ
京太郎「へ? それって……」
良子「っ……もちろん、元の体に戻してあげるのが目的ですからね」フフッ
居太郎「……ありがとう、ございますっ」ニッ
良子「ええっ」フフッ
―――【〜〜ランド駅前】
良子(あれから二日!)
良子「……」ソワソワ
良子(う〜おかしいところはないでしょうか!? というよりデートとか初めて!?)ワタワタ
良子「リラックス……深呼吸です」フゥ
良子(にしても待たすなんて、と言いたいところですが一時間も前に来てしまいました)ハァ
良子「浮かれすぎ、でしょうか」
???「あれ!?」
良子「ひゃわっ!?」ビクッ
京太郎「早くないっすか!?」
良子「そそそ、そちらこそ!」
京太郎「いや、俺は誘った手前……」
良子(しまった!)
良子「い、今来たところです」キリッ
京太郎「え、あ、はい」
良子(ミステイク!)
241 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/06(火) 01:11:36.74 ID:BlCY1y+r0
良子(開幕、バッドコミュニケーション!)
京太郎「えっと、そのですね……へへっ」
良子「?」
京太郎「い、いや……一時間ですけど、戒能さんと一緒に入れる時間、増えるなって」ハハッ
良子( か わ い い )
京太郎「その、俺ほかの人には見えないんで戒能さんには迷惑かけると思うんですけど」
良子「気にしませんよ、一人遊園地だと思われようと私は……行きましょう、須賀君」フフッ
京太郎「はいっ!」ニッ
良子(というよりそんなとこ気にしてたんですね……気にしぃですね)
良子「というより周囲に目は配してたつもりだったんですが」
京太郎「なんと、飛べるようになりまして」
良子「……それはまぁ」
京太郎「あはは、そろそろやべぇっすけど……ま、気にしません。今日で、いや明日で全部終わらせますから」ニッ
良子(でもそれは……いえ、今は考えるべきじゃない)
京太郎「……たぶん」
良子「不安ですね」
京太郎「まぁ」アハハ
242 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/06(火) 01:25:30.57 ID:BlCY1y+r0
テクテクテク
京太郎(当然のように……)
良子(手を、つないでしましました……)
京太郎「暑いですね」
良子「ま、まぁ夏ですから」
京太郎「ですよねー陽が沈んできたとはいえさすがにっすね」
良子(にしても、デートには遅い時間ですが……まさか、このままホテルへ!?)
良子「っていつもホテル」
京太郎「へ、なにがですか?」
良子「あ、ああいえ……邪念を消し飛ばそうと」
京太郎「なにかありました?」
良子「いえいえ」
京太郎「……あ、あれ乗りましょうよ、ゆっくりできるし」
良子「え、ええ」
良子(邪念は捨てなくては! 今は須賀君とデート! デートです……これでは!)
京太郎(うぅっ、いつにもましてドキドキしてしまう……これでは!
京良(手汗が!!)
243 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/06(火) 01:35:58.53 ID:BlCY1y+r0
京太郎(結局、一個とはいえアトラクションに乗ったあとでも手をつないでしまっている……)
良子(むぅ、しかし手を離すのはその……いや、ですし)
京良(いっか!)
考えるのを止めた
京太郎「えっと、そういえばなんですけど」
良子「え、はい」
京太郎「その、またうちの両親とかとかちあったりとかは……」
良子「あ、はい昨日」
京太郎「昨日!!?」
良子「え、ええ」コクリ
京太郎「なんか、言ってました?」
良子「えっと……」カイソウ
須賀父「うちの京太郎、必ず起きると思いますので!」
須賀母「起きたらぜひ家へ来てくださいね!」
良子「え、あ、はい」コクリ
須賀父「やったー! 京太郎にこんな美人な知人がいるなんてな!」
須賀母「しかも絶対京ちゃんは好きなタイプ!」
良子「ふぇっ!? そ、そうなん、ですか?」カァッ
須賀母「はい!」
須賀父「俺と同じでおっぱいせいじ……母さん顔が、顔がこわい」
須賀母「……コホン、すみません変なことを」ペコリ
良子「の、ノープログレム、もーまんたいです」
須賀母「京ちゃんのこと、お願いします」
良子「へ、そ、それは?」
須賀母「あれ、そういう感じじゃ? 咲ちゃんとは全然違う雰囲気だったし」
良子「……そ、そのっ」マッカ
須賀母「……京ちゃん早く起きれ!」
良子「……な、なんでもありません」メソラシ
京太郎(あ〜なんかあったなぁこれ……うちの親、変なことしてないよなぁ……)
244 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/06(火) 01:41:12.82 ID:BlCY1y+r0
良子「あ、次はあれにしましょう」
京太郎「……ぜ、絶叫系、ですか」
良子「ええ、ダメ、ですか?」
京太郎「ああいや、全然……」
良子「怖いですか」クスッ
京太郎「ぜ、全然!」
良子「怖いならハンドでも握っていてあげましょうか」クスッ
京太郎「だから全然! っていうか、手はその……握りっぱなしじゃないですかぁ」
良子「あぅっ、た、確かに」カァッ
かと言って、離すわけでもない
京太郎「……い、いきますか」カァッ
良子「い、イエスっ」コクリ
245 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/06(火) 01:44:30.96 ID:BlCY1y+r0
とりあえずここまでー
中途半端だけどもここまでで、少し要点以外は端折っちゃっているけども
そろそろクライマックス! と言い続けてる気もする
そんじゃまた近々ー
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/06(火) 02:13:03.78 ID:GA7Jq7qL0
乙です!
デートに誘われてるときめっちゃ戒能さん百面相してるんだろうなあ
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/06(火) 04:46:15.13 ID:WBNDrU1I0
乙!
この世界線の須賀父はしっかり父親してるようでよかった
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/06(火) 04:53:38.65 ID:pUWRGBs80
おつー
はー戒能さんかわいい
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/10/07(水) 13:55:09.39 ID:yuX/0Nfh0
良いね
結末が気になるぜ
乙でした
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/07(水) 14:10:08.45 ID:hOb3jgx1O
希望が見えた
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sega]:2020/10/07(水) 14:14:14.74 ID:GA9zcL2YO
ヒノカミ神楽
252 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 00:33:47.81 ID:iYX4OPw+0
まさかこんなペースで投下してくるとは思うまい!
多少雑把なとこは大目にみてやってつかぁさい
253 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 00:38:19.22 ID:iYX4OPw+0
―――【その後】
京太郎「っ!」ゼェハァ
良子「っ……そ、そんなにっ」プルプル
京太郎「ひ、ひぇ……しょ、正直侮ってました」
良子「ふふふっ、空もフライできるのにっ」クスクス
京太郎「そ、そりゃあんな速度じゃっ……」
良子「また須賀君の新しいところを発見できました」フフッ
京太郎「っ」カァッ
良子「さて、次はどうしましょうか……もう一回乗ります?」
京太郎「い、いや次は死にます。もう死んでるけど」
良子「……」
京太郎(しまった! ブラックジョークが過ぎたか!?)
良子「……やっぱりやめましょうか」
京太郎「えっ」
良子「次は、ボディに戻った時に一緒に……ですね」フフッ
京太郎「う……うっす!」ニッ
254 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 00:49:30.58 ID:iYX4OPw+0
良子「のんびりとしたのもグッドですね」
京太郎「そうっすね、ドールが動いたりとか退屈かと思ってましたけど、案外楽しい」
良子「須賀君、こういうのはその……経験あるんですか?」
京太郎「え、遊園地っすか?」
良子「いえ、そ、そうでなくて……その」
京太郎「?」
良子「で、デートです」カァッ
京太郎(なにこの初心な二十歳! かわいい!)
京太郎「ま、まさかぁ……」
良子「ほ、本当ですか?」
京太郎「なんで嘘つくんっすか」アハハ
良子「なんだか、慣れているように見えたので」
京太郎「こ、これでも緊張してるんっすよ?」
良子「……そ、そうですか」ウツムキ
京太郎(あれ、なんかミスった?)
良子(な、なぜかうれしい……なんででしょう、この感じ……)
京太郎「あ、そろそろ時間だ」
良子「え?」
京太郎「えっと……観覧車でも、乗りません?」
良子「い、いえす……」
良子(ロマンチック……というより完全にデート、デート……デートでした!)マッカ
255 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 01:09:52.85 ID:iYX4OPw+0
―――【観覧車】
京太郎「おー高い、てか街が綺麗だ」
良子「本当ですね」クスッ
京太郎「さすがにこんな高さまでは飛べないしなぁ」
良子「そうなんですか?」
京太郎「……飛びたくない、ですかね。正確には」
良子(人というものから外れすぎた力への恐怖、ですか……)
京太郎「好きなんです」
良子「ふゅえっ!?」ビクッ
京太郎「うおっ!? あ、いやそうじゃなくて! そうじゃなくて!」マッカ
良子「ななな、なにがですか!? ワイッ!」マッカ
京太郎「す、すみません自分で勝手に完結しちゃったもんで……その、別のことです」
良子「え、えっと……コホン、どうぞ」
京太郎「……自分語りみたいで、恥ずかしいんですけど」
良子「言ったじゃないですか、私は須賀君のことをもっとたくさん、知りたいんです」ニコリ
京太郎「……その、麻雀やめようかなって思ってたんです」
良子「え?」
京太郎「いや今思えば馬鹿なって思いますけど……幼馴染の咲と一緒に麻雀できるようになって仲間に囲まれて」
ユラユラ
京太郎「正直、浮かれてて……なんの根拠もなしに俺はやれるって思って失敗して、その結果お情けで来させてもらってなんて」
良子(仲間たちはそうは思っていないんでしょうけれど、ナイーヴになっていたせい、でしょうね」
京太郎「結果こんなことになっちゃって、起きたらどうしようとか考えてて、やっぱりみんなから離れたほうがいいのかなと思って」
京太郎「そうやって考えたけど、やっぱり謝って許してもらって一緒にいたいんです」
良子「……」
京太郎「麻雀やって、青春して……みんなのこととか、麻雀とか好きなんだなって」
良子「……その」
京太郎「?」
良子「私とはどうですか?」
京太郎「え?」
良子「その、清澄のみんなが、仲間が大事というのはわかりました……それでは、私は?」
京太郎「か、戒能さん、は……」
良子「貴方にとって私は……」
256 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 01:16:34.17 ID:iYX4OPw+0
京太郎「仲間とか、そういうんじゃないんですよ」
良子「っ」
京太郎「俺にとって戒能さんって……」
良子「……」ウツムキ
京太郎「短い間だったけど、一緒にいて……もっと、大事な人、です」
良子「……え?」
京太郎「っ、す、すみません! やっぱなんでもっ」
良子「聞かせてっ!」
京太郎「っ!」
良子「お願い、します」
京太郎(ゆ、夕日のせいか? 顔、赤い気が……)
良子「……」ジッ
京太郎「……」スーハー
257 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 01:34:06.62 ID:iYX4OPw+0
そっと、胸を押さえて深呼吸
伝えるべきこと、伝わってほしいこと、頭の中で整理して吐き出すような器用な真似は今の京太郎にはできない
故に、対面に座る戒能良子を見つめて、言葉を紡ぐ
「戒能さんは俺の唯一なんです」
「唯一……?」
「はい、俺のことを知って助けてくれて、受け止めてくれて、一緒に考えてくれて」
半周を周り終えて、下るだけの観覧車
その風景など一切視界に入ることもなくただお互いがお互いの瞳を見つめあう
「それだけじゃなくて一緒に麻雀しようなんて言ってくれたり教えてくれたり、親身になってくれたり」
京太郎の膝の上の拳が握りしめられる
今までのことを思い出して感極まった、というのもあるがそれだけではなく
「そんな、そんなことしてもらって……逃げ出した俺を追いかけて、手を引っ張って連れてってくれて」
まっすぐに、それでも須賀京太郎は戒能良子の瞳を見続ける
彼女の潤んだ瞳、紅潮している頬、それらを視界にしっかりと焼き付けつつ、言葉を放っていく
悪霊として受け止められたのは彼女がいたからならば―――
「俺が生きたいって思うのは戒能さんといたいから、なんです」
「っ……」
「きっと、俺は戒能さんのこと……」
先ほど“違う”と言ったが結果的にはなにも相違なかった
事実は自分の中にあった。前からも、今も、きっとこれからも……
「ラブです……大好き、です」ニッ
「ッ〜! わ、私―――!」
ガタン、と揺れると同時に扉が開かれる
笑顔で迎えてくれる従業員になんとも言えぬ感情を抱く良子
しかし時間は戻らないし、これ以上は進めない
「降りましょう?」
「……はい」コクリ
そうして“一人で乗った観覧車”から降りて、“良くないモノ”の後ろを着いていく
繋がれていた手はすでに離れていて、手を何度か伸ばすが掴むに至らない
そしてそのまま、出口から遊園地を出る
「……帰りましょうか」フッ
「……はい」フッ
258 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 01:43:12.71 ID:iYX4OPw+0
―――【ホテル】
良子(普通に電車に乗って帰ってきましたが……熊倉さんたちは?)
京太郎「戒能さん」
良子「はい?」
京太郎「……」ユビサシ
良子「え……あれ、なんで部屋の前に熊倉さんたちが?」
トシ「待ってたよ」
秋一郎「たく、いつまで待たせんだ」
トシ「まだ十分も経ってないだろ」
秋一郎「余命が十分減った」
トシ「変わんないよ」
良子「え? ああ、須賀君のお迎えですか?」
トシ「言ってないのかい?」
京太郎「ええ、まぁ」アハハ
良子「え?」
秋一郎「……打つぞ」
良子「……麻雀ですか?」
トシ「それ以外ないだろう」フッ
京太郎「……お願いします」
良子「……はい」コクリ
259 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 01:51:17.77 ID:iYX4OPw+0
―――【ホテル:良子の部屋】
良子「それにしてもどうして麻雀を?」
トシ「京ちゃんが打ちたいんだって」
良子「須賀君が?」
京太郎「すみません、やっぱり……デートの〆と言ったら麻雀かなって」
トシ「たしかに」
秋一郎「同意」
良子(私の思ってるデートと違う)
トシ「ていうか大沼、あんたそこは禿げ上がるほど同意って言いなさい」
京太郎「元々禿げてるよってツッコミですか」
秋一郎「悪霊小僧、飛ばしてやらぁ」
京太郎「ひぇっ」
良子(仲、いいんですね)
京太郎「っし……勝つ!」ズゥッ
良子(ッ……なんでしょう、妙な感覚?)
秋一郎「開幕から使えるようになってらぁ」ハッ
トシ「さすが、だね」クスッ
良子(これはいささか本気でいかなくては、ですか……)ゴッ
260 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 02:14:46.91 ID:iYX4OPw+0
良子(なっ、なにも……どの力も感じないっ!)バッ
京太郎「……」タンッ
良子(これが、須賀君の力?)
トシ「……悪霊たちの力さ」タンッ
良子「え?」
良子(引いても、ただの一片も私自身の、いえ背後の力を感じない……降ろせない!)タンッ
秋一郎「曰く、生命が輪廻転生する際の狭間の力……」タンッ
京太郎「まつろわぬ霊たちの力を完全にコントロールするには至りませんけどね……だからせいぜいできて、無力化」タンッ
トシ「それでも十分さ、まぁ悪霊の身だからこそできていることではあるんだろうけど、ね」タンッ
良子「……そうですか、それがあなたの」
京太郎「ええ、勝ちます。あなたに……」
良子「望むところです。ここからは真っ向勝負、私の力……いつまでもバインドさせてはおきません」フッ ゴォッ
京太郎(たしかに……ずっとは無理か、それでも勝機をつかむ、そのために……っ)
良子「さぁ、ここからがスタートです」タンッ
京太郎「ポン!」
秋一郎「……」
京太郎「見せますよ……かっこいいとこ」フッ タンッ
トシ(やってみせな―――霊帝)
261 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 02:35:11.55 ID:iYX4OPw+0
良子(まぁやはり……“オカルトそのもの”を相手にしているというだけあって格が違う)
トシ(それでもまぁ、限定的とは言えここまでコントロールできるのも才能かね、いや因果か……)
秋一郎「チートだな」タンッ
京太郎「いや俺からしたらチート3人相手にしてるようなもんっすよ。封じるぐらいにしかこの力使えないし……」タンッ
トシ「この三人封じるってのもすごいけどね。しかもあんたはあんたで」タンッ
京太郎「おっとそこまでっす」
トシ「まぁいいけど」
良子「強い……」
京太郎「戒能さんに褒められると素直にうれしいです……先生みたいなもん、だから」
良子「しかし、まだまだ甘いですね」
京太郎「えぇっ!?」
良子「当然です。封じているだけなら素の力でやりあうことになるんですから、能力特化のプレイング相手でないと意味がない」フフッ
京太郎「う〜痛いところつきますね。いやわかってはいましたけどぉ」
良子「さて、それでは次はどうします?」タンッ
秋一郎「ま、見せ所だわな……限界超えるか? それとも別のなにかでくるか?」タンッ
京太郎「さて……こっからは俺も運次第、悪霊なりに悪運強いかもしんないですけ……ど!」タンッ
262 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 02:45:31.64 ID:iYX4OPw+0
―――【ホテル:清澄高校部屋】
咲「……ん」ピクッ
久「どうしたの?」
咲「なんか、懐かしい感覚が……」
優希「早く寝ようじぇー」
まこ「さすがに疲れたからのぉ」ハァ
和「帰るの明日ですもんね……」
まこ「京太郎を置いて、な」
咲「京ちゃん……そっか、京ちゃんの感じに似てたんだ」
久「え?」
咲「ん、もう寝ましょうか、明日……また会いに行きましょう」フフッ
和「?」
咲「……」
263 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 02:59:26.28 ID:iYX4OPw+0
京太郎「……やっぱ危険かぁ」
トシ「やっぱし」ハァ
良子「え?」
秋一郎「手、薄れてんぞ」
京太郎「……まぁ見ていてくださいよ」
良子「なっ! 中止です中止っそんな状態で!」
京太郎「いや、これでいい……勝てなきゃ結局」
良子「消えればおしまいでしょうっ」
京太郎「タイムリミットも近いんでしょう?」
トシ「ああ、元々身体との繋がりが薄れ始めてるからね……明日か明後日には同じだよ」
京太郎「なら」タンッ
良子「なんでっ!」
京太郎「……お願いします、どーせ消えるなら麻雀やりながらが、いいんですよ」ハハッ
良子「っ〜〜!!」
トシ「聞いて、やりなよ」タンッ
良子「……ほんと、会ったときから、私を助けてくれた時から、私のために出て行こうとしたときから……」タンッ
秋一郎「……」タンッ
良子「知ってましたけど、バカ、なんですから……」
京太郎「……すみません、俺も自分がここまでバカとは思ってませんでした」ハハッ タンッ
トシ「さて、そろそろ拘束が切れるかい?」
京太郎「いえ、切らせません……これで、終わります」
トシ「南四局、どっちにしろだね」タンッ
良子(点数差……私が一位、二位は大沼プロ、次点で熊倉さん……須賀君は最下位、どうやっても)ダンッ
秋一郎「……見せてみろよ悪霊。負の無限力をもって超えて見せろ」タンッ
京太郎「悪霊としての力、それと俺の……俺と戒能さんでクリエイトした力」スッ
良子「っ」ザワッ
トシ「ほう……」
京太郎(戒能さん……!)
―――ダンッ
京太郎「ツモ! ジャックポット!」
ズラッ
良子(7が並んでっ!)
秋一郎「演技良いな悪霊」
トシ「さすが京ちゃん」クスッ
京太郎「四暗刻ッ!」
264 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 03:09:58.43 ID:iYX4OPw+0
トシ「索子萬子筒子の7ばっか集めて……はじめて見た」
秋一郎「麻雀歴、長いのにそんなことあるか?」
トシ「あるでしょ、ていうか……京ちゃんがやるのを初めてみた」
秋一郎「?」
トシ(どこの因果……いや、自ら発現した? 稀少も稀少……)
良子「須賀君……」
京太郎「って言っても、二位ですけど」アハハ
良子「私の、勝ち、ですよ」
トシ「ありゃ、ラスだ」
秋一郎「余裕ぶってたのにな」
トシ「いや、これはまさかだった……」
京太郎「……悔しいなぁ」ハァ
秋一郎「残念だったな、未練って勝つことだろ?」
京太郎「……たぶん」
良子「っ……ごめんなさぃっ」
京太郎「いや、本気でやってたんだからそりゃそうっすよ。俺は本気で勝ちに行って、それで勝てなかった」
トシ「……」
京太郎「それはもうしょうがないことなんです。だって今、俺……すっげぇ麻雀楽しかった!」ニッ
フワッ
良子「え?」
京太郎「な、なにこの感じ……」
秋一郎「お前光ってんぞ」
京太郎「うわー!? 人体発光! いや霊体発光! プラズマ!?」
トシ「……やっぱね」フッ
良子「え?」
トシ「……そんな気がしてた」
京太郎「知って、たんですか?」
トシ「気がしてた、だけだって」
265 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 03:20:20.24 ID:iYX4OPw+0
京太郎「俺は俺の未練……勝つことだと思ってた」
トシ「今の今まで、一度も勝てなかったわけじゃないだろ?」
京太郎「そうですけど、でも強い相手と」
トシ「あんたの言う強い相手って?」
京太郎「そりゃ戒能さんとかトシさんとか、大沼のおっさんとか」
秋一郎「おいこら」
良子「しかし、私には……」
トシ「いやあんたの未練は違うね」
京太郎「え?」
トシ「京ちゃんの未練は……もっと簡単で難しいことさ、ハンドボールやってただろ?」
京太郎「まぁ、なんで知ってるのか知らないけど」
トシ「後悔ある?」
京太郎「……ないわけじゃないっすよ。でも一生懸命練習して、みんなと何度も打ち合わせて、それで県大会でいい結果残して」
トシ「満足したろ?」
京太郎「はい、別に嫌になったからやめたとかでもなくて俺……あっ」
トシ「満足できた?」
京太郎「っ……俺、死ぬ気でやりました」
トシ「ああ……」
京太郎「今、死ぬ気で戦って、死ぬ気でここまで練習して、それで負けて、それでも俺っ、俺はっ……」
良子「……っ」
京太郎「戒能さん、俺……」
良子「須賀君、あなたは……立派でした。よく、がんばりました」
京太郎「っ……ああ、そっか、こんなことだったんだ」
秋一郎「死ぬ気で戦って負けるなら本望か……才能しか感じねぇな」
トシ「おや高く買ってるね」
秋一郎「たりめぇだ、俺の“弟子”でもある」
トシ「だね」フッ
266 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 03:43:53.06 ID:iYX4OPw+0
仄かに輝く体、徐々にあふれる粒子は魂なのか別のなにかか
輝く手を見つめ、京太郎は瞳を僅かに潤ませる
強くあったつもりだった。それほど気にせずいたつもりだった
「戻れる、帰れる……みんなの、とこに……」
「須賀、くんっ……」
呼ばれた声に、意識が引っ張られる
忘れていたわけではない。忘れるということを、可能性を
「か、戒能さん……俺っ、最後に戒能さんにいいとこみせれたかな?」
「見せてもらいましたっ、でも、それでも……またもう一度っ」
「わ、忘れないから絶対!」
京太郎のすぐ傍に寄って、良子はそのまま胸に飛び込む
抱き合うようになる京太郎と良子
ギュッと握ればその感触はしっかりとお互いに届く
「忘れないっ、忘れてたまるかっ……忘れるなこの気持ちっ」
言い聞かすように、言葉にする
「いかないでっ、いやですっ……まだ、まだ返事もっ」
「必ず、会いに―――」
「待ってなんてあげませんっ、私がいきます!」
強いそんな言葉に面食らって、言葉を失う
「私は、我慢弱いんですっ……それに約束っ」
「あっ」
「須賀君とは沢山あるんですからっ、麻雀やるって言いましたし、もう一度、遊園地……行くって言いましたっ!」
「も、もちろんですよ。絶対いきましょう……絶対」
抱きしめる。約束を噛み締めるように、良子を抱きしめる
そして、徐々に感覚が抜け落ちていくのも同時にわかってしまう
僅かに力が緩んで、京太郎がふらつく
「須賀君っ」
「か、戒能さんっ……良子さんっ!」
「っ」
お互いの瞳を見合う
あの観覧車でのときのように、ハッキリと
そうして、笑みを浮かべた京太郎が頷く
「俺は、生きますからっ、これで最後じゃ……ないからっ」
薄れゆく意識の中、しっかりと言葉にする
「必ず、死んでも生きる―――約束します、からっ」
267 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 03:48:17.36 ID:iYX4OPw+0
「当然です! 約束、全部守ってもらいますから、京太郎っ!」
会えるとわかっている。わかっていても、どうしても抑えきれない
溢れる涙がぽろぽろと落ちていく
京太郎はそんな良子を見て、穏やかな笑みを浮かべる
「ありがとう、良子さん……」
その瞬間、京太郎の視界いっぱいに良子の顔が広がった
まつ毛が長いなだとか、肌がきれいだなとか、髪がサラサラだなとか余計なことを考える
柔らかな唇の感触を唇で受け止めながら、京太郎はことを徐々に理解していく
「……〜〜〜!!!??」
「っ」
離れる良子、その顔は真っ赤で
うるんだ瞳も紅潮した顔も、羞恥でどうにかなってしまいそうと訴えるような表情も
リアルな体であれば京太郎自身、自分がどうしていたかわからない
「なっ……!」
「京太郎っ」
すでに時間はない
驚愕だとかすらかき消すような感覚
徐々に落ちていく感覚
戻ろうとする意識、体が足元から急になくなっていく未知なる感覚
「私も貴方のことがラブで……大好きですっ!」
そして―――
268 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 04:03:33.35 ID:iYX4OPw+0
―――【翌朝:病院:???の病室】
ふと、眼が覚めて視界に映るのは天井
知らないがなにがあったのかはわかる
ここが天国でもないことが、はっきりとわかった
「あ……あ、あ……こんな、声、だっけ?」
少し不安になりながらも、動かしにくい体を動かす
腕につながっている点滴のチューブが抜けないように、ゆっくりと上体を起こそうとしたところで、気づく
横に、誰かがいた
「……よう、おはよう」
「……京ちゃん」
幼馴染、宮永咲がそこにいた
ハッキリと自分の―――“須賀京太郎”の名を呼んだ親友
抱きしめていた“優勝トロフィー”を見て笑みを浮かべる京太郎
「おめでとう」
「っ……遅いんだよぉ、いうのがぁ」ポロポロ
笑顔を浮かべるも、彼女の瞳からこぼれる涙
いつも明るい親友にそんな表情をさせた罪悪感に苛まれながらも、それでも京太郎は笑顔を浮かべた
上体を起こして、手を伸ばしてそっとその涙をぬぐう
「ま、たせた」
「ん……待たせすぎだよ! バカ京ちゃんっ!」ニコッ
269 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 04:15:52.89 ID:iYX4OPw+0
―――【それから少しして】
咲が連絡し、検査と診断をした後にまた病室に戻される京太郎
その時にはすでに両親や久や和、優希にまこも揃っていた
全員に言葉をかけられつつ、京太郎は謝罪をしつつ、少しばかりの時間を過ごす
それぞれ出ていき、今病室に残るのは京太郎と咲の二人
「にしても、心配かけたなぁ」
「本当だよ、バカ京ちゃん」
「お前それやめれ」
「バカはバカだから、他人助けて自分がってバカ、ほんと京ちゃん」
猛烈に罵る幼馴染はおそらく、先ほど泣き顔を見られた照れ隠し
そんな親友の言葉に、心配かけたなと思いつつ軽口で返す
いつも通りのそんな光景の中、病室の扉がノックされた
「あれ、どうぞー」
「あっ! しまった!」
咲が駆けていき扉を開く、咲と入れ違いで一人の女性が入ってくる
薄紫の髪、豊満なボディ、そんな女性と視線を交わす京太郎
フッと笑みを浮かべた女性に、京太郎が目を見開く
「―――あ」
「……ハロー」
直後、京太郎は―――小首をかしげた
「戒能、良子さん?」
270 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2020/10/08(木) 04:16:39.26 ID:iYX4OPw+0
ここまでー
だいぶ進んだめっちゃ進めた!
終わりと見せかけて、もうちょっとだけ続くんじゃ
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/08(木) 04:43:55.03 ID:9Upt1NMq0
乙!
中高生の甘酸っぱい恋愛みたいで見ててニヤニヤしてしまった
ラストの感じだと京太郎はやっぱり幽体離脱?中の記憶を忘れてしまったのかな?この後の展開もすごく気になるなぁ
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/08(木) 07:03:13.11 ID:wqhrbQ360
乙
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/09(金) 06:33:48.81 ID:EEEoqZAc0
遊園地デートも真剣勝負もお別れでの約束とキスも病院での咲とのやりとりもどれもめっちゃ良い…
そして素晴らしい密度からのここで引きとは
次がとても楽しみ
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/10(土) 04:06:12.66 ID:FU5JvHRJ0
乙です!
「忘れないっ、〜この気持ちっ」の台詞すごい好き!
泣いちゃう親友咲ちゃんも可愛くて好き!
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/16(金) 00:12:50.61 ID:WWddZrqC0
乙です
結構王道のラスト直前の記憶消失
会って思い出すのか、何かの契機に思い出すのか、忘れたままだけどそこから関係を築くのか
どうなるのか楽しみです
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/12/21(月) 02:12:20.66 ID:0PxT4HEZ0
忙しいのかな
277 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/27(金) 21:29:45.50 ID:PwFEEC+p0
よっし、なんとかやってくぞーい!
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/27(金) 21:46:05.12 ID:+AL7LT520
うおおおおおおおおおお!
279 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/27(金) 21:48:02.88 ID:PwFEEC+p0
―――1週間後【病院】
京太郎「……変わり映えしない景色だなぁ」
窓から外の景色を見る京太郎は私服
顔色等も前までの京太郎に戻って、ほぼ変わらなくなった
憂いを帯びた表情で眺める外になにを想っているのか……。
京太郎「あ、戒能さん!」
良子「ハロー―――須賀君」フッ
京太郎「みんなは?」
良子「帰りましたよ、でもソーリーです。わざわざ残ってくれて」
京太郎「良いですよ別に、やることもありませんし……俺が戻ったところで、ね?」
笑う京太郎に、良子はそっと笑みを浮かべた
理解はしているのだ。彼女とて彼の気持ち、思っていることは
そして二人は歩き出す。今日は―――退院日だ
京太郎「にしても、俺が戒能さんと会ったことあるなんてなぁ」
良子「ま、まぁ小さい頃の話ですから」
京太郎「んーでもこんな美人と会ってるのに忘れてるなんてぇ」
良子「上手ですね」フフッ
今ここで大事なのは、須賀京太郎の記憶について
結論だけならば―――記憶は“失っていた”
身体から魂が、霊魂が抜けていたその数週間の記憶を彼は憶えていなかった
予測していた結末でもある。不本意ではあるが、良子はそれを受け入れた
その上で、熊倉トシも大沼秋一朗も戒能良子も、再び彼と出会ったのだ
280 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/27(金) 22:17:02.10 ID:PwFEEC+p0
―――【街中】
京太郎(こ、これってデートか!? 麻雀プロと昔会ったことがあってデートってなにこれ!?)
良子「……新鮮ですか?」クスッ
京太郎「え、あ……そうですね。東京歩くことなんてないし」
良子「そう、ですね」フフッ
シンプルに、彼にとっては初めてだった
しかして、彼女にとっては彼と歩く道は別段、初めてではない
故に歩いていたのだがなんでもない
諦めてはいたのだ。彼にとってのファーストコンタクトの時点で
良子「トシさんにも言われてはいたんですけどね」
京太郎「ん、熊倉さんっすか?」
良子「え、ええ……少し」
京太郎「麻雀のあれこれ聞きたいんですよねぇ」エヘヘ
そんな彼の笑顔を見てから、彼女はふと笑みを浮かべた
色々な思い出が脳裏を駆け巡るが―――彼であって彼でない
良子「私で良ければいくらでも、教えますよ」
京太郎「ホントっすか!?」
良子「オフコース」フフッ
京太郎「俺は幸せ者だなぁ」
良子「……それじゃぁ、さっそく一局行きますか?」
京太郎「……えっ!?」
良子「あと三日はあるでしょう?」
京太郎「まぁ、でも良いんですか? 忙しいんじゃ」
良子「チルドレンは、大人に甘えるものです」フフッ
281 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/27(金) 22:40:16.23 ID:PwFEEC+p0
―――【雀荘】
京太郎「え、ええ〜!!」
あれから歩いて雀荘までやってきたものの、まず個室に通された
その時点でおかしいとも思ったのがそれが吹っ飛ぶほどの衝撃
良子「さ、やりましょう」フフッ
京太郎「こ、このメンツですか?」
座っているのは熊倉トシと大沼秋一朗の二人
そこに良子と自分が加わって四人
京太郎「いやー勝てるわけないっすよぉ!」
良子「やれば良い所まで食い付けるかもしれませんよ?」クスッ
京太郎「えー」チラッ
秋一郎「ほら、さっさとつけよ……悪霊使い」
京太郎「言われてますよ?」
良子「そうですね」クスッ
トシ「ん、来年は自力で来るんだろ?」
京太郎「……はい!」コクリ
良子「ようやく、約束が果たせますね」
京太郎「え?」
良子「なんでも、さて……はじめましょう?」
京太郎「……お、お手柔らかに」
282 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/27(金) 22:51:29.52 ID:PwFEEC+p0
それから、何度も対局をくりかえす
良子もトシも秋一郎も辞めようとはしない
それ以上に―――京太郎は、楽しんでいた
京太郎「ふぃ〜やった三位!」
トシ「上手く漁夫の利を得たねぇ」
京太郎「偶然でしょうけど」アハハ
秋一郎「偶然を導くのも雀士の力だろ」
そう言って、手元のタバコを灰皿に押し付ける秋一郎
意外そうな顔をする京太郎は、秋一郎の援護に驚いたからだろう
良子「やはり、素質を感じますね」クスッ
京太郎「そうっすか?」
良子「ビコーズ、伸び代ですね」
京太郎「……そっかぁ」エヘヘ
良子(うっ、かわいい……)
京太郎「にしても、もう6回も雀荘変えてますけど」
トシ「まぁまぁ、環境は変えてった方が調子よくなったりもするからねぇ」
京太郎「……まぁ、確かに」
トシ「ほら京ちゃん、次行くよ」
京太郎「あ、うっす!」
283 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/27(金) 23:14:45.02 ID:G6VvULo20
―――しばらくして【雀荘前】
京太郎「だぁ〜疲れたぁ!」
トシ「お疲れさん」
京太郎「死ぬかと思った」ハァ
秋一郎「いいジョークだ」ハッ
京太郎「死にませんけど、死んでも生きるんで」ハァ
良子「っ……」
京太郎「まぁなにはともあれこれで強くはなった……んですか?」
トシ「まぁ間違いなく」
京太郎「……なら、いっか」
心底嬉しそうに、俯きがちに言う彼を見て良子は顔をしかめる
本当はもっと強かったと、数週間で君はもっと強くなれると
そして―――
京太郎「……戒能さん?」
良子「ふぁっ!? あ、なんでもないです!」
京太郎「?」
良子「ナイスでしたよ?」フフッ
京太郎「……ん、よかった」ニッ
良子「今日は麻雀漬けでしたけど、良かったんですか?」
京太郎「しばらくこういう日、なかったから嬉しいっすよ!」
本心からの言葉だと理解できた
付き合いは数週間でも、それがわかるぐらいには密度は濃かった
京太郎「もしかして明日も?」
トシ「んー明日はせっかくだしデートでもしてくれば?」
京太郎「えー誰とっすか」
トシ「戒能と」
良子「へ?」
京太郎「……ふぇっ!!?」
284 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/27(金) 23:38:52.81 ID:G6VvULo20
―――翌日
良子(わざわざ待ち合わせとは……私も、若いですね)ハァ
タッタッ
京太郎「あれ、戒能さん!」
良子「ひゃわっ!?」
京太郎「早くないっすか!?」
良子(こ、ここは……)フゥ
京太郎「えっと、いつからいました?」
良子「今来たところです」フフッ
良子(今回はエクセレントですね!)
京太郎「さすが! 霊能力っすか!?」
良子「ああいえ、普通に」
京太郎「あ、そ、そうですか」
良子「ええ……でも」
京太郎「?」
良子「楽しみには、してたんですよ?」
京太郎「!」パァッ
良子「まぁ一時間も早いんですけど」
京太郎「へへっ」
良子「?」
京太郎「一時間ですけど、戒能さんと一緒に入れる時間、増えるなって」
良子「っ」
京太郎「あ、くさかったっすね」アハハ
良子「いえ、嬉しい、ですよ……」フッ
京太郎「ホントっすか!?」
良子「明日で、いや今日で終わらせる……」
良子(この未練……)
285 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/28(土) 00:03:03.52 ID:aQEKPzKt0
良子「せっかくですし、手でも繋ぎましょうか」フフッ
京太郎「ふぇっ!?」
良子「ほら、デートなんですから」フフッ
京太郎「っ……はい」スッ
ギュッ
良子「ん……大きいですね」クスッ
京太郎「ま、まぁタッパも違いますからっ」カァッ
良子「では、行きましょうか」
テクテク
京太郎(うっ、めっちゃリードされてしまっているぅ)
良子「絶叫系は、まだ早いですか……前回の記憶をリボーンしなくては」キョロキョロ
京太郎(てか俺、手汗大丈夫か!?)
286 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/28(土) 00:22:25.71 ID:WKBOFqSy0
―――【その後】
京太郎「っ!」ゼェハァ
良子(色々乗ったし絶叫系と思ったのですけども……)
京太郎「ひ、ひぇ……しょ、正直侮ってました」
良子「ふふふっ、か、変わらないっ」クスクス
京太郎「へ……?」
良子「い、いえっ、そりゃそうですよねっ」クスクス
京太郎「む、むしろ戒能さんはなんで平気なんですかぁ」カァッ
良子「私は二回目でっ」クスクス
良子(本当は須賀君もですけど)
良子「約束は守れましたけど、もう一回乗っておきますか?」クスクス
京太郎「い、いや次は死にます。死にかけましたけど」ゼェハァ
良子「っ、そこまで一緒、なんですね」ボソッ
京太郎「?」
良子「いいえ、観覧車でも……乗りましょうか」フフッ
京太郎「あ、はい!」
287 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/28(土) 00:27:01.56 ID:WKBOFqSy0
とりあえず今回はここまで
長らくお待たせしましたー
ラストスパートだから頑張るよー
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/28(土) 09:13:08.29 ID:HG0g3K6w0
オッケー
こっちもやってたか
前の遊園地の再現みたいなのあっていいな
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/28(土) 09:13:40.87 ID:HG0g3K6w0
間違えた乙
290 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/28(土) 21:41:39.64 ID:UMeEkN+e0
やってくでー
一応臨海の方も終わりを迎えたのでこちらも頑張るゾイ!
また、なんか建てて書くつもりではあるけどもー
291 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/28(土) 22:01:26.45 ID:cL3zM8lG0
―――【観覧車】
京太郎「おー高い、てか街が綺麗だ」
良子「っ……」
京太郎「へー」
良子「……好きです、か」フッ
京太郎「へっ!?」カァッ
良子「え、ああすみません……少しセンチメンタルです」
京太郎「?」
良子「須賀君は麻雀、好きですか?」
京太郎「も、もちろんっすよ。昨日一日麻雀してやっぱ好きだなって」ニッ
良子「……仲間は、好きですか?」
京太郎「もちろんです。沢山迷惑かけちゃったけど……それでも、俺が起きて喜んでくれて、泣いてくれた」
良子「……」
京太郎「」
良子「っ」ビクッ
京太郎「一緒にいたい、大事な仲間です」
良子「そう、ですか……」
京太郎「もちろん、戒能さんともっ」ニッ
良子「え」
292 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/28(土) 22:15:14.27 ID:1xgoMmmA0
―――【どこか】
大きな陸橋の上、ベンチに座っている熊倉トシ
その隣にいるのは大沼秋一朗
二人の視線の先には―――遊園地
「なんてことない話さ」
「ん?」
「アイツの、京ちゃんのこと」
「……」
徐々に赤くなってきている空
視線の先の遊園地で観覧車が回っている
「因子と因果……因子さえそろえることができればこそ、できることもある」
「再現か?」
「それに近い。けどね、それとはまた違う」
語ることは一つ。語りたいことは一つ。
ただそれを真っ直ぐに伝えるのは簡単だが、それを真っ直ぐ実現する難しさ
それでも彼のため、彼女は出来うる限りのことはした
それが失敗に終わろうと結果としては、それほど変わりはないと熊倉トシは理解している
「それでもね、私は京ちゃんと―――京ちゃんを愛したアイツに幸せになって欲しい」
「……溺愛だな」
「こんなあたしに付き合ったあんたも大概だよ」
「弟子だからな、それなりに世話してやんねぇと」
そう愚痴るように言う秋一郎の顔には、確かに笑みが浮かんでいた
故に、熊倉トシもふっと笑みを浮かべて空を見上げる
因子は揃っているのだ。“悪霊の残した残滓-因子-”は拾い上げた
あとは―――因果と成すだけなのだ。
293 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/28(土) 22:36:59.37 ID:zsCwlIW10
―――【観覧車】
半周を周り、頂点を過ぎ下る観覧車
景色を見ている暇もなく、良子と京太郎はお互いの瞳を見あう
戒能良子は“彼”といた時のことを脳裏に思い浮かべあがらせながらも、激しく動悸する胸の前で手をぎゅっと握る
「……貴方は、私の唯一です」
「え、唯一……?」
すでに、景色は視界に入っていない
戒能良子に熊倉トシの思惑も計画も、関係などないのだ
ただ純粋に戒能良子は、目の前の少年に感情をぶつけるのみ
「っ」
あの日々を零にすることなどできなくて、足掻いている
諦めるつもりだった。彼は彼じゃないと、でも彼は彼と同じことを言うのだ
故に、良子は滲む視界を振り払って最後の言葉を紡いでいく
「私はっ、貴方のことがラブで……大好きです!」
ハッキリと口にして、ハッと気づく
自分が言っている言葉を、まだ彼にとっては出会って数日
そんな自分が口走った言葉の意味と、結果を
「戒能さん……」
「っ」
ビクリと震える良子
膝の上に置かれたその手に―――そっと手が重ねられる
「え」
顔を上げれば、そこには京太郎
先ほどより近いその目の前に、京太郎の顔が映る
優しい笑みを浮かべる京太郎
「遅れたけど、約束……守るから」
「きょう、たろぉ?」
「死んでも生きる……生き返る、かな?」
「ッ!」
笑顔を浮かべる京太郎の前で、堪えていた涙がぽろぽろとこぼれる
下っていく観覧車
京太郎は、そこに“存在していた”
294 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/28(土) 22:47:16.16 ID:zsCwlIW10
「……ごめん」
「っ」
頭を横に振る良子の瞳からは涙がこぼれ続ける
スカートにシミが広がっていく
そっと、片手を離した京太郎がハンカチを取り出してその目元を拭った
「色々……トシさんがしてくれたんだと思う。きっと大沼さんとか……も」
協力してくれたのはきっと、松実露子もだ
彼女は自分と同じ霊だ。本質こそ違うものの、きっと彼女もまた
「一つ一つ、色々な場所に俺を“呼び戻すナニか”を散らせて、きっと」
「京太郎、なんですか?」
「イエス、俺は須賀京太郎……」
そっと、良子の手を自分の頬に寄せる
ひんやりとした手の平を頬で感じつつ、彼女の顔を見れば、夕焼けに照らされてかほんのりと赤い
なにがどうだとか、細かく考えるのは性に合っていない
ただ目の前の現実を噛みしめるのみだ
「戒能さん、いや良子さん……」
「は、はい」
「俺は」
ガチャリと、音がすると同時にゴンドラの扉が開く
「え?」
京太郎と良子の二人と、係員の眼が合う
295 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/28(土) 23:04:20.06 ID:zsCwlIW10
泣いた女の手を握る青年
(面倒の予感しかしない)
係員は口にも顔にも出さず、即座に判断する
だが、しかし―――ふと、京太郎はウインク一つをしながら人差し指を立てた
そして音に出さずに唇のみで言葉を伝える
『もういっかい!』
(なるほど)
「ごゆっくり〜! いってらっしゃ〜い!」
営業的な営業文句と共に営業スマイルでゴンドラの扉を閉めた
そして再び密室、息をつく京太郎が咳払いをして良子の方を見る
水を差されたけれども、その気持ちがおさまることもない
「良子、さん」
「あ、はい」
涙が止まった良子の眼をしっかりと見つめる
その赤い顔、お互いわかっているのだ
しっかりと―――伝え合ってはいるのだから
「俺も貴方がラブで……大好きです。愛してます」
ニッと白い歯を見せて笑みを浮かべる京太郎
良子は再び瞳一杯に溜めた涙を流しながら、京太郎の頬に両手を添えた
彼だって理解している。二度目だが今回は違う
切羽も詰まっていなければ、気持ちの余裕の無さも意味が違ってくる
京太郎も手を良子の背に添えて、すぐそばに近づいてくる感覚を受け入れた
二度目のキスの味―――きっと二度と忘れないだろう。その夕焼けも、瞳も
296 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/28(土) 23:31:25.82 ID:mauixQKk0
京太郎たちの乗ったゴンドラは、頂点へとたどり着く
椅子に隣同士で座る京太郎と良子の二人
指を絡めてしっかりと手を握る。二度と離さないと言うように
「ようやく、見れましたねー景色」
「……でも、ドキドキしすぎてそれどころではありませんけど」
そんな言葉に、京太郎の頬がほんのりと染まる
繋いでいる手の力を少し強めつつ、抗議するように良子の顔を見る
しかし、いたずらっぽく笑う彼女を見て笑みを浮かべつつ再び景色に視線を移す
二人の視界に映る夕焼け空と街
「あそこらへんですね、京太郎と出会った交差点」
「それで、あそこらへんですか、良子さんの泊まっているホテル」
「……なんか、変なこと思い出してません?」
「へっ!? な、なにが!?」
下って行くゴンドラ
ゆっくりと過ごせるこの半周、心の余裕に二人が笑顔を浮かべながら会話を弾ませる
地上へとゆっくりと降りて行き、今度こそしっかりとゴンドラの扉が開く
「楽しんでいただきましたか〜! お気をつけて!」
先に降りた京太郎が、良子の手を取りそっと降りるのをエスコートする
両足で地に足をつける良子、そして京太郎
二人で顔を見合わせて笑みを浮かべると歩き出す
ただ帰るだけの道。だが特別なお互いの帰るべき場所へと―――
「良子さん、帰りましょ」
「はいマイダーリン♪」
―――向かうべき場所、帰るべき場所はただ、一つ
「……てかダーリンってさすがに恥ずかしくないっすか?」
「う゛っ」
297 :
◆Bc4KZX4MNU
[saga]:2021/08/28(土) 23:45:22.39 ID:mauixQKk0
―――1週間後【長野・清澄高校】
麻雀部部室で、京太郎は囲んでいた雀卓を前に背を伸ばす
結果としては上々であり2位、1位は親友こと宮永咲
原村和と片岡優希を退けてなのだから今までと比べたら著しい成長だ
「まだ勝てないかぁ」
「京ちゃんにはまだまだ負けないよっ♪」
「……何度でも挑むよ」
「何度でも受けて立つよ」
好戦的な笑みを浮かべる親友に、京太郎は苦笑を返す
そんな時、扉がノックされる音がして全員がそちらを見やる
「そろそろ下校の時刻よ」
「全員、帰り支度しんしゃい」
竹井久と染谷まこの声に頷いて立ち上がる
「のどちゃん帰ろー!」
「あ、寄っていきたいところが、咲さんと須賀君も」
「いこー!」
「あ、悪い、俺は……」
誘いの言葉に、バツが悪そうに返事を濁す
そんな様子を見て三人がニヤニヤと笑みを浮かべた
顔を赤くして京太郎は後頭部を掻く
「ほっとけ」
「か〜おんし大概にしとかんとあかんぞ」
「わかってますよ〜」
「須賀君、今度は私を東京に連れてってね」ニコッ
「全員まとめて」フッ
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