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塩見周子「小早川のお狐さん」
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59 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:11:28.31 ID:3nl487JJ0
お狐さんは笑っていた。
きっとそれは、先生になる者が見たら激怒するような舞いだったと思う。
ペースは千変、体捌きは万化。
もう「再現」の域を超えて、心身に透徹した遊びと雅の論理のまま、自らの舞を描いていく。
「あ――」
思わず声が出た。
いつしか彼女には、驚くほど大きな耳と尾が備わっていて。
舞は佳境に入る。あたしも猫も目が離せない。
着物の裾を翻し、乗りに乗った興のまま、お狐さんは不意にぐぐうっと背を逸らした。
そして、あたしの頭上の桜を見上げて、
「 こんっ 」
鳴いた。
60 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:14:12.03 ID:3nl487JJ0
信じられないことが起こった。
背後の桜の木が声を受け、一本丸々ぶわっと花弁を散らしたのだ。
千万無量の花弁が、まるで地上に生まれた雲みたいだった。
桜吹雪はお狐さんの手の内にあった。
ひらひらはためく扇子に合わせて、生きているようにその模様を変えていった。
やがて彼女は、ぴょんと飛んで。
小さな足を花弁に乗せて、花と一緒に舞い始める。
散る花弁にまた乗って、ひらり。そうかと思えばまた飛んで、別の花弁に、ひらり。
重力さえ無視して、蝶のように風と戯れる。
くるくる踊りながら、彼女は阿呆みたいに笑っていた。
白状しちゃうと、あたしはすっかり見惚れてしまっていた。
銀毛に月光の輝きを湛え、さらりと流れる軌跡で夜陰を払う。
月の泳ぐ川に桜花爛漫を写し取る。
楽しくってたまらないような笑い声が、夜風に乗って天へと届く。
千年不変の無聊に、偶さかの華を添えるように。
61 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:15:11.90 ID:3nl487JJ0
にゃーんと鳴いた猫の声に、あたしはハッと我に返る。
こん、と控えめな返事と共に、お狐さんは扇子を畳み。
過ぎ去った桜霞を惜しむように、深々とお辞儀をするのだった。
62 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:15:39.25 ID:3nl487JJ0
〇
面白きこととは、探さなければ見つからず、作らなければもたらされない。
とうにわかっていた筈のことに、あたしはそろそろちゃんと向き合ってみようと思っていた。
阿呆が一匹、いい加減自分も踊る番なのだ。
〇
63 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:17:57.27 ID:3nl487JJ0
「東京、どすか?」
「うん。ま、なーんも決まってないけどねまだ」
鴨川沿いのベンチに隣り合い、あたしの膝には仔猫。
この構図が一つの定番になっていた。
桜はもう散って、鮮やかな若葉が芽吹きつつある。よく晴れた暖かな日だった。
「あっちで就職しよっかなーって。なんていうか社会経験的な?」
「それはええことや思いますけど……お家の方はどないしはりますの」
「……どうだろね。そこも話してないから、なんも決まってないってことなんよ」
仮にあたしが本当に東京へ行くと言ったら、父さんはどう出るだろう。
何も言わず行かせてくれるだろうか。
それとも、うちを継げ、と言ってくれるんだろうか。
「どっちみち、お狐さんには聞いて欲しくてさ。結構重大な話だし」
「――そらまた、どうして?」
どうしてもこうしても。
京言葉お決まりの迂遠な物言いがわずらわしくて、あたしはたまに意識して率直な物言いを選ぶことがある。
……はっきり言うのは、正直ちょっとハズいんだけど。
「だって、友達やん」
64 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:18:37.87 ID:3nl487JJ0
「ともだち」
お狐さんは何故か、目をまんまるに見開いたまま固まった。
……え。そのリアクション予想外。
「そう、友達」
「ともだちて、誰と誰が」
「いやだから、あたしと、お狐さんが」
「ともだち………………」
彼女はやはり何故か、きょときょと視線を泳がせて。
ようやくあたしの言葉を呑み込んだか、耐えきれないように口元を押さえたのだった。
「…………ぷふっ」
は?
65 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:19:27.41 ID:3nl487JJ0
「ふっ、ぷふふっ、うふふふふっ」
「え、ちょっと待って、何なんいきなり」
「ああ、いえいえ、ちゃうねん。でもな、ふふふふふっ」
「なんやおかしゅうて、うふっ、うふふふふふふっ」
こんなに愉快なことはない。
とでも言うように、お狐さんはころころ笑い続けた。
あたしは何が起こってるのかもよくわからないで、ぽかんとしていた。
「ふふ、ふふふっ! ともだち! うちが、うふふふふふっ!」
「いやいや、どしたんよ!? あたしなんか変なこと言った?」
「うふふふふふふふーっ」
「ああ、ちょっとどこに……って速っ!?」
お狐はんは笑いながら、ぴょいんぴょいんと毬のように跳ねていった。
追いかける術もなく、ただ見送るしかなかった。
膝の上で猫が鳴く。
その日以来、お狐さんはあたしの前から姿を消した。
66 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:44:41.42 ID:3nl487JJ0
なんのことはない。
あたしは盛大にずっこけたのだ。
狐の都合や思惑なんてのは、聞いても聞かんでもさっぱりわからん――いみじくも自分でそう言った通りなんだろう。
つまり、人の尺度で狐を測るべきじゃなかったってことだ。
向こうからしてみればこっちは友達でもなんでもなく、長い長い退屈を潰す小さな玩具だったのかもしれない。
それをあたしが勝手に友情感じちゃったから、おかしくなって大爆笑、といったところか。
怒るようなことじゃない。
あたしは笑われて然るべきド阿呆だったんだと思う。
なんとなれば、こっちは人で、相手は狐なんだもの。
67 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:45:21.10 ID:3nl487JJ0
というか、そのことで予想以上にショックを受けてる自分にこそショックだった。
日常はびっくりするほど元通りに戻った。
変わらない街。変わらない人々。あっちこっちには百年単位で変わらない史跡。
で、変わらないあたし。
東京行こうなんてのはふとした思い付きで、お狐さんの笑い声に吹き消されてしまった。
すっかり気持ちが萎えて、あたしは誰にも何も言わないまま退屈に沈んだ。
学校行って店番して、塩見屋のシューコちゃんは今日も今日とて看板娘だ。
鴨川沿いに行けば、例の仔猫が顔を出す。
一体どこで餌をもらって、どこをねぐらにしているんだろう。こいつもこいつで妙な奴だ。
その喉を撫でてやるのが小さな楽しみで、それくらい。
……ま、いいや。最初っから何かを失ったわけじゃない。
あたしはこのまま、実家でぬくぬく暮らしていくんだな。
68 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:52:13.99 ID:3nl487JJ0
〇
そんな折、店に変わった二人連れが来た。
観光客――という感じでもない。どうも東京から来たようだった。仕事かなんかだろうか。
「いらっしゃーい。適当に見てってー」
言いつつ、ちらっと一瞥する。
あたしはつい、初めて見る相手が「何者か」を見極めようとしてしまう。
お狐さんとやった化けの皮当てゲームが変な癖になっちゃってたのだ。
とはいえまあ、大抵は人。たまに狸。ほんの時たま狐、レアなのが天狗ってパターンだったんで感慨もなく。
さてこの一見さんは、まあ人間だと思うけども。あたしは雑誌で顔を隠し、二人連れを盗み見る。
向かって右の、スーツのお兄さんは普通の人間。
左の女の子は――
何これ?
69 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:53:18.31 ID:3nl487JJ0
いや、見た感じは完全に人間なんだけど。
ちんまりした体に、きちんと着込んだ和服、琥珀色の長い長い髪。
お狐さんと装いこそ似ていても、その気配は人や狐狸や天狗の類とも違い過ぎるほど違う。
なんだか潮と土と、巨きな樹の匂いがした。
え、ちょっと待って、シューコちゃんこういうの初めて見たんだけど。
隣の人は平気なの? ていうか気付いてない? そもそもどういう二人組?
固まるあたしの内心を知ってか知らずか、お二人連れは店の中をのんびり見て回る。
どうも仕事先……仕事仲間? へのお土産を物色しているようだった。
生まれてこのかた変わらない空間に、遠い異国の風が吹き込んだような気がしていた。
70 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 16:58:03.80 ID:3nl487JJ0
声をかけられている。
呼びかけられている。
――――ということに何秒か遅れて気付いた。
「ああ、はいはい、お会計ね。えーっとお土産? 保冷剤入れとく?」
とにかく慌てて看板娘モードに戻り、仕事をこなそうとする。
お兄さんの方はまあとことんフツーに会計を済ませ、領収書を切った。
例の「樹の匂いのする女の子」は、物珍しそうに店の中を見て回っている。
なんだかそれが、数百年ぶりに下界へ降りた神仙の振る舞いのように感じられた。
と――
お兄さんがあたしの顔を見ていることに気付いた。
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 17:17:05.00 ID:tU2ikvmDO
よしのん?
72 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 17:18:45.19 ID:3nl487JJ0
見ている前で、彼は懐から名刺を取り出した。
そこには東京のある芸能プロダクションの名前と、お兄さんの名前があって――
「――――は? アイドル?」
驚くを通り越して意味がわからなかった。
つまりこれって、スカウト?
「いやいやいや。どうしてあたしなのさ。あたし、今、仕事中。忙しい。東京、行けない。オーケー?」
それはまあ面目ないがと頭を掻いて、お兄さんは彼なりの理由を言った。
――寂しそうだったから。
寂しそうな顔を見せたつもりは、全く無い。
だけど、どうして彼がそう感じたのかは、なんとなくわかる気がした。
73 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 17:19:42.86 ID:3nl487JJ0
もちろん、名刺貰ったからハイそーですかと一緒に東京に行けるわけがない。
考えておいて欲しいという旨のことを言って、お兄さんは意外なほどあっさりと店を出た。
――寂しそうだったから。
残されるあたしとしては、たまったもんじゃない。
彼の放った言葉の棘が、心臓の裏っかわに残されたままだった。
「――そなたー」
涼やかな声に顔を上げると、例の女の子が微笑んでいる。
「……なに?」
ていうか、何者? ――とは直球で聞けない。
「そなたの身の内よりー、幽けき糸が見えまするー」
「は? 糸? どこ?」
「ものではありませぬー。これなるはー、そなたが持つ、縁というものー」
74 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 17:20:30.16 ID:3nl487JJ0
縁……って。
オカルトめいた物言いだけど、目の前の相手の言葉には得体の知れない説得力があった。
「とても善くー、とても美しきー、陰陽の隔てを越えし、分かちがたき現世の縁なのでしてー」
「ちょっとちょっと、なんのこと? あたしにはさっぱり……」
「そなたにはー、無沙汰をしているお友達が、おられるのでしょー?」
言葉が出てこない。
穏やかな目を細め、彼女はかわいらしく小首をかしげた。
「縁はまだー、途切れておりませぬー。努(ゆめ)、友の情を捨ててしまわれませぬようー」
「ちょっと! それってどういう……!」
「答えはー、そなた自身で決めることなればー」
「――しかしながらー。わたくし達との縁、これもまた、大事にしてくださればー、とても嬉しいのでしてー」
言って、女の子はふわりと踵を返した。
あたしはそれを、ただ見送っているしかなかった。
「あーそなたー、お待ちくださいー。待ってー。まってーーーーー」
…………あんまり素早い方じゃないらしい。
75 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 18:38:20.77 ID:3nl487JJ0
〇
縁、ったって。
実家の生活のこと、友達のこと、自分のこと、突然舞い込んだスカウトの話。
それら全部が頭の中で引っ張り合って、もうぜんぜんわからん。
っていうか。
こーゆー思い悩むのはあたしのキャラじゃないんだけど。
決めた。
もう一回、お狐さんを探してみよう。
探して探して、それでもどこにもいなくて、今日いっぱい使って会えなかったら、もう諦めよう。
76 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 18:39:09.27 ID:3nl487JJ0
だらだら寝るには人後に落ちない自信のあるこのシューコちゃんが、土曜のなんと7時に起きた。
目を丸くする母さんの前で朝食をしっかり頂いて、とっくに作業場にいる父さんに何も告げないで家を出た。
お狐さんを探す上で、心当たりの場所なんて一つもない。
これまで出会った場所、遊んだ場所、散歩で回った場所――
あるいは、下鴨の小早川屋敷か。
正直、行く発想は今まで無かった。これが腹の括りどころか、と腕まくりをしたのが一時間前。
辿り着かない。
いっくら歩こうが、話に聞く小早川のお屋敷なんてどこにも見えてこないのだ。
同じ場所を堂々巡りしている気がした。
曲がったはずの路地に同じ光景が広がっていた。
北へ行っていると思ったら南に進んでいた。
……これは、お父はんとやらに相当嫌われてるのかもしれへん。
あたしはとうとう、万策尽きた。
77 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 18:39:51.67 ID:3nl487JJ0
〇
「ねー、チビ助や」
にゃーん。
「あたしともあろうものが、街中駆けずり回っちゃったよ。しかも収穫ゼロときたもんだ」
にゃーん。
「……こりゃもう、お手上げってことなんやろね」
にゃーん。
縁、か。
でもそれを手繰り寄せられるのは、ただの人間には難しいのかもしれない。
あたしはどこまでも人だ。
化けらんないし空も飛べないし、縁の巡りは神頼みしかない。
…………潮時かな。
78 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 18:40:57.12 ID:3nl487JJ0
「んじゃね、チビ助。あたしもうここには来ないと思う」
にゃーん。
人の言葉を知ってか知らずか、猫はいつものノリでにゃーすか鳴く。
「これからどうするかは…………まあ、帰ってから考えようかな」
どんな答えにしても、何かしら後悔は残るんだろうけど。
なんとなく、そんな感じがした。
にゃーん。
にゃーん、にゃーん、にゃーん。
「……って、何? やけに食い下がるね今日は」
普段そうしないのに、猫ときたらやたらに足元にまとわりつく。
まるで、行くな、と言っているかのようだ。
……そんなこと言われたって。
「しゃあないでしょ、もう決めたんだから。あんたも自分の人生……猫生? を生きなってば」
にゃーん、にゃーん。
「だからもー、行かせてってば! あんましつこいと蹴っ飛ばすよ!」
にゃーん。
79 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 18:42:00.65 ID:3nl487JJ0
脅かしてみると、猫はさっと茂みに引っ込んだ。
それで行こうとすると、また顔を出してついてくる。
こんなへっぽこ人間一人にどんだけの未練があるというのか。
もー知らん。縁の切れ目だ。
あたしはすっかり維持になって、ポケットに両手を突っ込んだままずんずん進んだ。
猫には縄張りがあって、それを越えたら深追いはしてこないだろうとタカをくくっていたのだ。
それに弱っちい仔猫。街に出て周りが騒がしくなったら、ビビって引き返すのが関の山だろうと。
その目論見は、すっかり外れた。
歩いて歩いて、鳴き声が喧騒にまぎれて聞こえなくなった辺りで、いい加減まいただろと振り返ると。
今しがた通りすぎた横断歩道を、チビがよちよちついてきているところだった。
信号は、とっくに赤だった。
80 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 18:42:46.49 ID:3nl487JJ0
通過する車から見たら、そんなものは小さなビニール袋くらいにしか見えないだろう。
にゃあと鳴く、道路の向こうから真っ赤な車が一台、あたしは何も考えずに踵を返す。
そう、こちとらどこまでも人間だから、不思議な力なんて一つも持ってない。
そういうのに触れてたから、なんとなく自分もちょっと特別なんじゃないかと錯覚することもあったけど。
ひらりとかわすとか、変わり身を作るとか、そんなことできるわけないって当然わかってはいた。
わかってはいたけど、仕方ないじゃんねぇ。
あいつだって、友達なんだもん。
衝撃があって、体の中のいろんなものがひしゃげる感触。
逆さまになった街並みが見えて、どんな花より赤い花弁が視界にちらつく。
意識が途切れた。
81 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 18:56:43.90 ID:3nl487JJ0
〇
「――ほんま、手ぇのかかるお姫(ひい)さまなんやからねぇ」
「狐の仙術いうたかて、万物自在なわけやあらしまへんのに」
「森羅万象よりの霊威をほんのちぃとお借りして、身の内で練って、ぱっと咲かす。それだけの理屈どす」
「全ては自然の御業や。半端もんの狐一匹が大業を成すには、うぅんと背伸びせなあかんのよ」
「せやからな。これはどえらい『貸し』どすえ?」
〇
82 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 18:57:33.10 ID:3nl487JJ0
起きた。
あたしは鴨川沿いの例のベンチに、腑抜けたようにして座っていた。
体には、傷一つありはしなかった。
「……!?」
全身動く。痛みもゼロ。歩き詰めでちょっと疲れてるくらい。
猫は膝の上でピンピンしていた。
わけがわからない。
あたしは猫を抱いたまま、ついさっきの横断歩道に駆けつけた。
何も起こってはいなかった。
喧騒も車通りもいつもと同じ。立ち尽くすあたしの後ろを、邪魔そうな顔でおっさんが通り過ぎていく。
渡らないまま、目の前で信号が赤に変わる。
少し間があって、あの見覚えのある真っ赤な車が、ちょっと危ういくらいの速さで通り抜けていった。
腕の中の白毛玉が、知らん顔でにゃーと鳴いた。
83 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 19:38:32.13 ID:3nl487JJ0
間違っても夢を見たんじゃない。
その証拠を、あたしは持っている。
普通に歩いて家まで帰ると、いつもおっとりしてる母さんが心底びっくりしていた。
お父さん、お父さん、と作業場まで呼びに行って、何事かとやってきた父さんまでが表情を硬くした。
「周子」
自分自身に何が起こってるのか、帰る途中で流石にこっちも気付いている。
「そん髪はどないした」
あたしの髪は、一本残らず雪みたいに真っ白になっていた。
それらしい方便が五つくらい浮かんだものの、すぐ全部却下した。
塩見家ご当代を相手にして、怪力乱神の御業を今さら誤魔化すというのも無いものだ。
「狐に化かされてもうてん」
父さんは、小さくうなずいた。
「…………ほうか」
父さんも母さんも、それ以上何も言うことはなかった。
あたしは翌日、修行の旅に出ることになった。
84 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 19:39:31.25 ID:3nl487JJ0
〇
…………修行ったって、和菓子作りを学ぶでもなし。
塩見の娘は狐に化かされた。
となればこの体には深山幽谷由来の仙気が凝っているわけで、真っ白になってしまった髪はその証左。
まともな人に戻るには、俗世に触れて狐の仙気を落とさなければならない――というのが、建前としての決まりだった。
要するに体よく家からおん出すくらいのノリなんだけども、あたしにはそれがなんだかありがたかった。
キャリーバッグ一個に納まる程度の荷物をまとめて、片手の資料に目を落とす。
例のお兄さんがいるプロダクション。これがまた相当しっかりした会社らしくて、ありがたいことに女子寮まで完備しているそうな。
……あたしは資料請求した覚えはないんだけど。
独りで思い煩わんでも、娘の気持ちなんて両親はとっくによーく承知していたのかもしれない。
85 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 19:40:52.56 ID:3nl487JJ0
慣れ親しんだ自室に別れを告げて居間に降りると、珍しく父さんも母さんと一緒に朝ご飯を食べていた。
あたしも一緒に卓を囲んで、軽い世間話と、これからどうするかをちょっとばかり話した。
いつもと変わらぬ味ともしばしお別れだ。両手を合わせ、ふと額縁を見上げる。
塩見家三訓、
稲荷には手を出すなかれ、
天狗だけは怒らすなかれ、
狸はまあなんでもいいや。
去り際にあたしは言う。
「ねえ、父さん」
父さんは目だけであたしを見る。
「現代っ子の狐やったら、手ぇ出しても案外ヘーキなもんやと思う」
「ほうか」
いつもと変わらない受け答えがなんだかおかしくて、ちょっと笑ってしまう。
車に気ぃ付けるんよ、風邪引いたらあかんよ――といつまでも娘を離そうとしない母さんをなだめて、あたしは塩見の家を出た。
86 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 20:58:16.21 ID:3nl487JJ0
〇
キャリーバッグをころころ引きながら駅へ向かう。
途中、半ば無理やり持たされた塩大福をぱくつく。
塩見屋名物、父さんの自信作のそれは、子供の頃から変わらぬ絶品の味。
朝日に映える餡子の黒が、なんだかひどく懐かしかった。
「あらぁ、えろうおいしそうどすなぁ」
道端に立つ彼女を、あたしは案外驚かずに見返した。
「やんないよ」
小早川のお狐さんは、風呂敷に包んだ行李を背負っていて。
その髪は、つい先日までのあたしとよく似た黒。
87 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 20:59:38.03 ID:3nl487JJ0
「ありがとう…………でいいんかな、この場合」
「お礼なんていりまへん。うちが勝手にしたことやさかい」
狐の仕掛けの常として、やられたこっちは何がなんだかわからない。
けれどこの子が助けてくれたことはわかる。前と同じだ。
……でも、なんでこの子まで旅の装いなんだろうか。
「うちなぁ、勘当されてしもうてん」
「え゙」
「ま、ええどすけど。お父はんうちに駄々甘やから、そのうち泣いて戻って来いー言うてくるに決まっとります」
「いや、そりゃまた、勘当ってのはどうして」
んふ、と彼女はおかしそうに笑う。
「人間風情に仙気を使い尽くしてもうてけしからん、取り戻すまでうちの敷居は跨がせん、いうことどす。髪もこないに黒くなってもぉて」
「いや、まずそっからわかんないんだけど。――だって、なんでそこまでして、あたし助けたん」
お狐さんは大きな目であたしを見返した。
そしてわずかに目を伏せて、ぼそりとこう言う。
「――友達や言うたんは、あんたはんやないの」
88 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 21:01:46.00 ID:3nl487JJ0
「え」
「なんどすか」
「え何、じゃああの時えらい笑ったのは?」
「だってうち、あないなこと言われたん初めてやったから。なんや頭ふあーってなってもうて」
「これまでずーっと姿も見せてくんなかったのは」
「それは」
目を逸らす。長い髪に顔が隠れて見えなくなる。
「…………どないな顔して会うたらええか、わかれへんかったもの」
…………。
……。
……あ! 照れてる!?
「ひょっとして照れてる? ねぇねぇ今照れてる? お狐さん照れてる?」
「やめてんか。今うちの顔見たらあきまへん」
「またまたそんな〜。あっ耳が赤あいたっ!」
扇子で鼻っ面をぴしゃりとやられた。
「知りまへん。勝手にしたらよろしおす」
「……まーまー、そう言わないでさ」
なんだ、じゃあこっちの一人相撲だったってわけか。
なんかアホらしくて笑えてきちゃった。大山鳴動して鼠一匹、正体見たり枯れ尾花、まさにそんな感じだ。
89 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 21:03:12.70 ID:3nl487JJ0
自然、足並みは揃い、京都駅が見えてくる。
「……それじゃ、昨日あたしを助けてくれた時は、たまたま近くにいたん?」
「なんやうちのことえらい探してはるから、いい加減顔見せたろかなと思ったらあれや。そそっかしいんやから」
「それはまあ、面目次第もない」
「で、そっちはこれからどうすんの?」
「仙気を取り戻せぇいうんがお父はんの言いつけやけど、それはまあどうでもええかな思とります」
「……ちなみにその取り戻すってのはどうするわけ?」
「さぁ〜。あんたはんの命取ってしもたら手っ取り早いんやないどすやろか」
うげ。
「ちょっとやめてよ、そう何度も死にかけたりできないって」
「当たり前や。せっかく拾うた命なんやから、簡単に捨てられたら困ります。――ああ、せや」
「決めました。うち、あんたはんを祟らしてもらいます」
90 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 21:04:16.93 ID:3nl487JJ0
「は?」
「祟って憑いて、注いでもうた仙気をゆっくりゆっくり取り戻すんや。ええ、そうしまひょ。もう決めましたさかい」
「いやでも、あたし東京行くんだけど。東京行って――」
「あいどるにならはるんやろ?」
京都駅の大階段を見上げ、彼女はその向こう、ずっとずっと先にあるものを見通しているようだった。
「うちもついてって、あいどるになってみよかな思うんどす」
マジか。
という顔を見返して、本気どすえ、と笑ってみせる。
「狐の東下りや。命の恩人の一世一代の大決心、よもや止めますまいな?」
「…………はぁ、なるほど。長い付き合いになるってわけだ」
「んふふ。これからもよろしゅうにな、人間――――」
と、ここで言葉を切る。
裾で口元を隠し、何やらもごもご言葉を転がして、上目にあたしを見た。
「――周子はん、とお呼びした方が、ええどすやろか?」
その初々しい様子が、またなんだか変に新鮮でおかしい気持ちになる。
「せやね。この先、人間はんになんて山ほど会うんだから。それに……友達だもんね、紗枝ちゃん?」
この期に及んで初めて名前で呼び合い、目を見合わせて笑った。
さて、電車の時間が近い。
あたしらは京都に背を向けて、大階段の最初の一段を踏み出すのだった。
「…………っていうか紗枝ちゃん、切符持ってるの? 唐突に決めたっぽいけど」
「なんですのん切符って。手形じゃあきまへんの?」
「そっからかぁ〜〜〜〜〜〜〜〜…………!!」
91 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 21:14:13.08 ID:3nl487JJ0
〇
紗枝「――うちはあんたはんを祟っとるんどす」
紗枝「せやから、あんまし勝手なことされてもろたら困りますえ」
周子「それ前から言ってるけどさー、全然実感ないんだよねぇ。だいたい祟って具体的に何するん?」
紗枝「あら、そんなん決まっとるやない。まずは、またぞろ何処かで逝ってしまわへんよう監視してな?」
周子「監視して?」
紗枝「それで、あんたはんがヨボヨボに老いさらばえて往生しはる時、枕元で大爆笑してやるんどす♪」
周子「うわ地味に嫌」
紗枝「そうそうその顔、そないなお顔が見たいんよ〜♪」コンコン
ブロロロロ…… バタンッ
周子「あー来た来た。まったく、乙女二人を待たせて何してたんだか」
紗枝「そないなこと言うもんやありまへんえ。おおかた、迷子にでもなってはったんやろ」
周子「いやそれも結構酷いこと言ってるからね? ――さて、じゃあまあ、昔話はこの辺にしとこか」
紗枝「はいな。あいどるのお仕事、始めまひょか〜」
〇
92 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 21:14:48.48 ID:3nl487JJ0
「周子はん」
「んー? どったの、紗枝ちゃん」
「長生きしたってな」
「まかしとき。200まで生きてやるっての」
「せやせや、その意気やで〜。ふふふ♪」
93 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 21:15:18.70 ID:3nl487JJ0
ちなみに、例の白い猫に関して言えば――
あいつは「大福」と名付けられて、今も塩見家でふくふく暮らしている。
〜オワリ〜
94 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 21:15:58.25 ID:3nl487JJ0
以上となります。
以下、ちょっとオマケを投下します。
95 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 21:38:11.25 ID:3nl487JJ0
〇 オマケ
美穂「――それで、この先がレッスンルームで、その向かいがシャワールーム。シャワーはいつでも使っていいから」
周子「ほうほう」
紗枝「えろうすまへんなぁ、案内までお任せしてしもて……」
美穂「ううん、全然大丈夫! わからなかったら何でも聞い……て……」
周子「…………」ジー
美穂「ど、どうしたの……?」
周子「…………いやぁ、やっぱ可愛いなぁと」
美穂「えぇえっ!? そそそそんなことないよ!! 二人の方がずっと綺麗だし、か、可愛いよ!?」
紗枝「あらあら〜、真っ赤になってしもて。かいらしなぁ」
美穂「あわわわわわ……」プシュゥ
<……オーイ
<ミホー?
周子「お? あの声……」
紗枝「美穂はん、呼ばれとるんちゃいます?」
美穂「あ、ほんとだ……! ごめんね、私行かなきゃ」
周子「おっけおっけ。寮でまた色々教えてねー」
美穂「うん! ――――プロデューサーさんっ!」タッ
96 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 21:39:07.52 ID:3nl487JJ0
周子「う〜〜む」
紗枝「どないしはりました、周子はん? 美穂はんとプロデューサーはんのお二人に、そない熱い視線……」
紗枝「…………あぁ〜〜〜〜〜〜♡」ニタァ
周子「いやなんか勘違いしてるっぽいけど、とりあえず違うからね?」
紗枝「ええんよええんよ、うち応援しますさかい。周子はんも大きうなってぇ」
周子「どういう立場からの物言いかっつの。じゃなくて、美穂ちゃんよ、あの子って多分――」
楓「やっぱり気になります?」ヒョイッ
周子「うわびっくりした。え? あ! ど、どうも?」
紗枝(……えらい別嬪はんやなぁ。京にも万に一人おるかおらへんかやない? どちら様どすやろ?)ヒソヒソ
周子(いやいや、高垣楓だって。この事務所の最古参で、今でもトップの稼ぎ頭)ヒソヒソ
楓「ごめんなさい、びっくりさせてしまったかしら」
周子「や、そういうわけじゃ。えーっと、高垣楓、さん?」
楓「はい、高垣楓です♪ あなたたちは、最近ここに来た子かしら?」
紗枝「この春からお世話になります、小早川紗枝いいます。不束者やけど、よろしゅうおたのもうします〜」ペコリ
周子「塩見周子です。どうぞよろしく」ペコリ
楓「これはご丁寧に。こちらこそ、よろしくお願いしますね」ペコリ
97 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 21:40:04.87 ID:3nl487JJ0
楓「それで、美穂ちゃんのことなんですけど」
楓「あなたたちもあの子を見たということは、もう察しているんでしょうけど。あの子――」
周子(まさかこの人も、気付いて……?)
楓「――プロデューサーに、ホの字なんじゃないかしら?」
周子「ホの字て」
楓「うふふ、若いって素敵ですねぇ。隠しきれない恋、好意は行為に表れる……ふふっ」
楓「あら、もうこんな時間。引き止めてごめんなさい。私も行きますね」
周子「いやいや、こっちこそ。行ってらっしゃい〜」
紗枝「おつかれさんどす〜」
楓「ぽんぽこ〜♪」ヒョイヒョイ
周子「……おっどろいた。どこまでわかってはんねやろ、あの人……」
紗枝「…………」ジー
周子「紗枝ちゃん? どしたの変な顔して」
紗枝「いやぁ――」
紗枝「ここは退屈せぇへん、ええとこやなぁ思いまして」
周子「…………せやね。それにはまったく同意だわ」
〜オワリ〜
98 :
◆DAC.3Z2hLk
[saga]:2017/11/10(金) 21:44:17.87 ID:3nl487JJ0
おしまいです。長々とお付き合いありがとうございました。
依頼出してきます。
以下に現行までの過去作をまとめましたので、よろしければどうぞ。
小日向美穂「こひなたぬき」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1508431385/
アナスタシア「アナスタシ屋」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1508770866/
小日向美穂「プロデューサーさんinプロデューサーくん」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509333785/
五十嵐響子「甘えんぼのきょーこちゃん」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509646836/
緒方智絵里「ちょっぷ軍隊」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509815585/
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 21:46:52.68 ID:qQJzS161O
乙
全部読んだけど全部面白かったよ
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 21:54:42.10 ID:AIAX4TWwo
おつおつ。ハッピーエンドは良いものだ
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 22:03:04.20 ID:5wvI/rcSo
楓さんは天狗?
乙
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 22:04:36.85 ID:rusj2vv10
おつおつ、楓さん何者なんだw
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 22:30:20.94 ID:OsIfEj6Mo
楓さんはどうしようもない人ですwwwwww
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 23:08:58.25 ID:fxxNYzbG0
おつおつ
楓さんこわい
天狗なのかはたまた
今回も面白かった
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 23:26:16.47 ID:AuoPAVecO
乙
こういうの待ってたから読めて嬉しい
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 23:39:26.88 ID:p4iqL3sG0
乙
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 23:53:14.84 ID:2PMBGcxzO
おっつおっつ
演舞のシーンすこ
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/11(土) 11:59:38.10 ID:mcnAe1Hc0
乙乙
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