エリカ「姉さん」

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159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 12:50:28.98 ID:29Xyto/RO
支援
160 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:39:11.18 ID:3c2e7IRd0


エリカ「姉さぁぁぁん!!」

まほ「うるさいな。今度は何だ」



部屋を出たエリカが血相変えて引き返してきた。

昼食に人肉でも出たのかと冗談を言ってみたら『その方がずっとマシよ…』と震えながら言う。

食卓に人肉が並ぶことほど怖い事などそう無いと思うが、どうやらエリカは人肉以上に怖いものを見たようだ。



エリカ「廊下が…廊下がぁぁ………」

まほ「そんなこと気にする歳でもないだろ」

エリカ「老化じゃなくて廊下よ!!」

まほ「…うるさいやつだな全く」

161 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:47:35.94 ID:3c2e7IRd0


【廊下】


まほ「なんと…」

エリカ「」ガタガタガタガタ



そうだ、忘れていた。

先ほどエリカがテストをサボろうとするので、制裁としてみほに『部屋中をボコまみれにしたい』とお願いをしたのだった。

私の部屋がボコまみれになることはなかったが、代わりに廊下がボコまみれになっていた。

いつの間にこんな設営作業をしたのかわからないが、ボコは廊下の両脇に向かい合うように設置されている。なんだか神秘的な光景だ。

そしてそれはみほにとっては花道だがエリカにとってはグリーンマイルのようで、私にしがみついてガタガタと震えている。デジャブ。


162 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:50:57.55 ID:3c2e7IRd0


まほ「こら離れろ」

エリカ「い、嫌よ! 離れたら私殺される!!」ガタガタ

まほ「誰に殺されると言うんだ」

エリカ「コイツらによ!!」

まほ「動かないから心配するな。そしてさっさと歩け。私は腹が減った」

エリカ「う、嘘よ! 絶対動くから!!」

まほ「なら動いた時に考えろ」

エリカ「な、なんで姉さん平気なのよ!? ちゃんと脳ミソ入ってんの!?」

まほ「当然だ。お前のより高性能なやつがギッシリ詰まっている」

エリカ「嘘おっしゃい!!」



兎にも角にもピーピーやかましいやつだ。ぬいぐるみが並んでいるだけだというのに。

これが17ポンド砲ならば話はわかるが、モコモコのぬいぐるみ相手に何を怯えろというのだ。

163 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:52:30.70 ID:3c2e7IRd0


カチッ...


まほ「ん?」



オイラボコダゾォォォォォォォォォォォォ!!!!!

ヤーッテヤルヤーッテヤルヤーーーッテヤルゾ!!

パンパカパンパンパーン!!

カーモン!カーモン!カーモン!ユーキャンデス!!

ジャラジャラジャラ



まほ「お」


エリカ「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」



歩いた振動でセンサーが反応したのだろうか。

ボコロードを半分ほど渡ったところで、急にぬいぐるみに内蔵されていた機械が作動して音が鳴り出した。

音声だけでなくブルブルと振動したり、ライトがピカピカ光ったりするようだ。近頃のぬいぐるみはなかなか多機能である。子供にプレゼントしたらきっと喜ぶだろう。

ただ、ぬいぐるみが賑やかであるかどうかより、エリカが相当まずいことになっている。

腹の底から悲鳴をあげたと思ったら泣き出して、私にしがみついて万力のようにギチギチと締め上げてくる。痛い。腕が痛い。


164 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:55:41.49 ID:3c2e7IRd0


まほ「…というわけです」

まほ「ええ、みほが…いえ、私も悪いんです。いえ全て私の責任です」

まほ「はい…。今以上に厳しく取り締まろうと思っています」

まほ「…では、失礼します」


まほ「………」



エリカのただならぬ悲鳴にお母様がかけつけた。

そして結論を言うと、諸悪の根源であるみほはお母様に叱られた。私まで一緒に怒られた。


"長女としての自覚を持て"

"いい年して妹を泣かすな"

"早くご飯食べなさい"

"ぬいぐるみは後でちゃんと片付けろ"


私が気を抜くことなど無いと思っていたが、このような大失態を犯すのだから、何処かに気の緩みがあったのだろう…。

私としたことが………


エリカはというと、接着剤で貼り付けたかのように私にベッタリと引っ付いたまま離れようとしない。

「怖い」、「食われる」、「おヘソ取られる」といったうわ言をボヤきながらガタガタ震えている。

そんなにくっつくな。ご飯が食べれないだろう。


ちなみに昼食はキャベツとモヤシが山のように入ったラーメンだった。

菊代さん曰く、お母様が作したとのことで。修行をしていた学生時代によく食べたラーメンとのこと。

大蒜の匂いがすごい。

165 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:56:59.82 ID:3c2e7IRd0


みほ「…」ズルズル

まほ「みほも手伝ってくれ。このままではラーメンが食べれない」

みほ「しぃらない」シャキシャキモグモグ

まほ「おい…」

みほ「…」ズズ...

まほ「お前もだエリカ。いつまでもしがみついてないで離れろ。ラーメンが伸びてしまう」

エリカ「…む、無理に決まってるでしょ…!」

みほ「…」ズゾゾー



自分が撒いた種とはいえ、こういう形で返ってくるとは思わなかった。

エリカの記憶がおかしくなってからというもの、私の作戦はことごとく裏目に出てしまう。

166 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:23:26.76 ID:3c2e7IRd0


みほ「早く食べないとラーメンのびちゃうよ?」

まほ「私だって早く食べたい。しかし動けんのだ」

エリカ「」ガタガタブルブル

まほ「こいつのせいでな」

みほ「そう」ツーン



みほは機嫌が悪い。

何故なら『部屋中をボコまみれにしたい』と頼まれ、いざ注文通りにしたらお母様に叱られたわけだ。

それは"カレーだと思って要塞を構築させたらノルマンディーに上陸した"というくらい予想外で頭に来ることだ。みほの気持ちも理解できる。

しかし、空腹時にラーメンが目の前に置かれ、それを食べることが出来ないこの状況は、それらよりも理不尽だと私は思う。

167 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:25:41.54 ID:3c2e7IRd0


まほ「エリカ、いい加減離れろ」

エリカ「い、嫌よ…だってクマが…!」ガタガタ

まほ「…」


まほ「クマのぬいぐるみに襲われない方法、知りたいか?」


エリカ「なんですって!?」

まほ「クマのぬいぐるみに襲われない方法だ。それを会得すればお前も安全だろう?」

エリカ「そんなモンあったら苦労しないわよ! バカじゃないの!?」

まほ「私は長年この家に住み着いてるが、今の今まで一度も襲われたことなんて無い」

エリカ「!!!」

まほ「それは何故だかわかるか?」

エリカ「………姉さんに魅力が無いから?」

まほ「もう知らん。お前なんかボコに襲われて爪先から頭蓋骨まで残さず食われてしまえばいい」



なにが"魅力が無い"だ。失礼にも程がある。

自惚れではないが戦車道に関しては他の追随を許さぬ実力を持っている。

そしてそれはお母様も高く評価して下さっている。

私に魅力がないわけ無いだろう。

168 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:26:58.89 ID:3c2e7IRd0


エリカ「嫌よ!! そんなの絶対イヤ!!」ギチギチ

まほ「んごがっがあがごげっんががっ…ぐ、ぐるじ……はな…れろ…」パンパン

エリカ「で!! どーして姉さんは襲われないのよっ!!?」

まほ「…それは…だな………」ゼェゼェ...



まほ「ごはんを食べることだ」



エリカ「…」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…」

みほ「ごちそうさまでした」

まほ「…」

エリカ「…馬鹿なの?」

まほ「…」


169 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:30:45.59 ID:3c2e7IRd0


まほ「…エリカ、お前はニンニクくさい奴は好きか?」

エリカ「は?」

まほ「ニンニクくさい奴は好きか?」

エリカ「…そんなの嫌に決まってるでしょ」


まほ「それはボコも同じだ」


エリカ「え」

みほ「大丈夫だよ。ボコはニンニクのニオイなんk

まほ「幸いにして今日の昼食はニンニクがたっぷり入ったラーメンだ!」

エリカ「そうね…?」

まほ「これ食べればお前は瞬く間にニンニク臭くなれる」

エリカ「はぁ」


まほ「つまり、ボコがお前を避けるようになる」


エリカ「!」

まほ「さぁ、食べよう」

エリカ「」パッ



ようやくエリカは私から離れた。

そして自分の席に戻り、ニンニクがふんだんに入ったラーメンを黙々と食べ始める。

モグモグ作戦いや、モクモク(黙々)作戦の成功だ。

170 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:34:30.04 ID:3c2e7IRd0


みほ「む…」

まほ「どうしたみほ?」

みほ「モクモク作戦はこんなのじゃないよ」

まほ「黙々と食べるから黙々作戦なのだ」

みほ「違うもん!」



モクモク作戦。

それはかつてみほが我々黒森峰と戦った時に敢行した作戦の一つ。

我々の攻撃を回避し距離を取るため、一斉にスモークを焚いて視界を遮るというものだ。

シンプルな内容ではあるが、チームの連帯が取れてなければ失敗する極めて高度な作戦であり、その効果は凄まじい。

結果としてみほたち大洗の戦車は、我々の戦車部隊が繰り広げる猛攻撃をいとも容易く回避し、次の作戦である山頂の要塞構築に成功した。

あの作戦は敵ながら見事と言わざるをえない。さすが私の妹だ。素晴らしいの一言に尽きる。

171 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:37:13.75 ID:3c2e7IRd0


みほ「いい? モクモク作戦というのはね」

みほ「ただ単に姿を隠すだけじゃなくて」

みほ「時間稼ぎからの反撃につなげるための作戦なんだ」

プゥーン

まほ「う…うむ……」



話をするみほから強烈なニンニク臭が漂ってくる。

前回の戦訓により、モクモク作戦を打ち破るために徹夜で対抗策を考えたにもかかわらず、私はまたしてもみほのモクモク作戦を前に悪戦苦闘する。

さすがだよ…みほ…。


だが清楚で純粋無垢な我が愛すべき妹が中年オヤジよろしく悪臭をモクモク放出するのは如何なものかと思う。

切実に対処法を考えねば…。



〜〜〜〜
172 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:39:17.61 ID:3c2e7IRd0


エリカ「ふぅ。満腹満腹」

まほ「それ以上近寄るな」

エリカ「…わかった」サッ

まほ「? やけに素直だな?」

エリカ「だって姉さん臭いんだもん」

まほ「…」



腹が膨れてボコの事などすっかり忘れたエリカが満足そうに腹をさする。まったく現金なやつだ。

お前のせいで私はのびたラーメンを食わねばならんかったというのに。

そしてみほに続いてエリカまでニンニク臭い。これではボコどころか鬼も悪魔も近寄らん。

…と思っていたが、居場所がないエリカは私の部屋に居座り、先ほどと同じようにくつろいで本を読んでいる。

部屋と本がニンニク臭くなるから勘弁してほしいのだが。

173 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:41:24.74 ID:3c2e7IRd0


エリカ「姉さん…」

まほ「なんだ。トイレならさっさと行ってこい」

エリカ「違うわよ!」

まほ「じゃぁ何だ」

エリカ「…ちゃんとお風呂、入ってるよね?」

まほ「お前、昨日一緒に入ったの忘れたのか?」

エリカ「そう言えばそうだったわね」

まほ「まったく」


エリカ「お風呂入ってるのにクサいって相当だと思うけど…?」ヒキッ


まほ「…お前も同等あるいはそれ以上に臭いのだが?」

エリカ「そんなことないわよ。姉さん鼻までおかしくなったの?」

まほ「その言葉、そっくりそのまま返そう」



それにしてもこいつは減らず口を叩く。かつて私の右腕として従順だった頃の面影など無かったかのように。

隊長・副隊長の関係から姉妹に変わった(と思いこんでる)今のエリカが"素"の姿なのかもしれないが、こうも距離感を詰められると対応(扱い)に困る。

174 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:42:34.13 ID:3c2e7IRd0


エリカ「姉さんくさい…」ゲッソリ

まほ「何度も言わせるな。私がくさいのではない。ニンニクがくさいのだ」

エリカ「でもニオイは姉さんの方から来てるわよ…」

まほ「私も先程からお前の悪臭を嗅がされ続けているのだが?」

エリカ「…」クンクン

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…」

エリカ「お風呂、入りましょう?」

まほ「………仕方あるまい」





175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/16(木) 12:49:23.89 ID:OLtvaGL6O
一緒に入るんですよね分からります
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/16(木) 13:17:07.75 ID:bGfZWH8eo
菊代→他人なのでイヤ
しほ→精神的、物理的(直視)に怖い
みほ→ボコグッズで洗われるのが怖い
まほ→消去法
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 14:25:27.22 ID:JXPaKLMy0
はよ
178 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:16:59.27 ID:LGEFd4u10


【脱衣所】


みほ「あ、お姉ちゃんとエリちゃん」

エリカ「みほもお風呂に入るの?」

みほ「うん。さすがにニンニクのニオイを落としたいからね」

まほ「全くだ。臭くてかなわん」

エリカ「そうね。さっさと入りましょう」


みほ「えっ?」

エリカ「ほら、入るわよ」

みほ「え、あ、ちょっと…! エリちゃん平気なの…?」

まほ「エリカは腕が使えない。だから昨晩も私がエリカの髪やら何やらを洗ってやった」

みほ「そうなんだ」

エリカ「お風呂広いから3人くらい平気よ」



どうやらみほも我々と同じことを考えていたようで、体中に染み渡るニンニクのニオイを落とすために風呂に入るところだったようだ。

そんなわけで姉妹(とエリカ)水入らずの裸の付き合いをする。

みほのやつ。また大きくなったな。



179 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:26:08.39 ID:LGEFd4u10


【風呂】


エリカ「悪いわね、みほ」

みほ「ううん、仕方ないよ。エリちゃん片腕使えないんだから」シャカシャカ

エリカ「」ホヘー

まほ「みほのシャンプーは気持ちが良い。私も昔はよくやってもらった」

みほ「あはは懐かしいね。気持ち良いってお姉ちゃん気絶しちゃったもんね」モショモショ

まほ「はは。マッサージの途中に寝るようなものだろう」

みほ「風呂場で全裸のまま朝を迎えたもんねー」モチャモチャ

まほ「…そこは起こしてくれよ」


エリカ「腕の方はまだまだ時間かかるから、暫くはお世話になりそうね…」

みほ「カルシウム摂ると早く治るかもしれないよ?」ワシャワシャ

エリカ「カルシウムねぇ…」

みほ「私が頼んでるボコ印ミルク飲む?」ワシャワシャ

エリカ「絶対イヤ。そんなもん飲んだら死ぬわよ」

みほ「むっ! 私毎日飲んでるけどピンピンしてるよっ!」ゴショゴショ

エリカ「姉さんは"鯛の天ぷらを食べすぎて死んだ"って言ってたけれど?」

みほ「お姉ちゃん…徳川家康じゃないんだから、もっとまともな死因にしてよ…」モシャモシャ

まほ「すまん…」

エリカ「肥溜めにハマって死ぬとか?」

みほ「もっと嫌だよ!!」クシャクシャ

まほ「そうだぞエリカ。みほを何だと思っている」



〜〜


180 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:38:51.03 ID:LGEFd4u10


みほ「痒いところはありませんか〜?」ワシャワシャ

エリカ「はぁ?」

みほ「えへへ。一度言ってみたかったんだ」

エリカ「…そう。今は無いわ」

みほ「えー」



それは勿体無い。みほが痒いところを掻いてくれるんだぞ?

戦車で例えるならティーガーIIがもう1輌貰えるくらい喜ばしいことなのに。

心なしか体中が痒くなってきた。みほ、掻いてくれないか?



エリカ「強いて言えばギプスの中が痒いわね」

みほ「あー、ずっと付けてないとダメだもんね…」

エリカ「ええ。外したら即・掻き毟ってやるわ」

みほ「あはは。ほどほどにね」



私は骨折などしたことがないので詳しいことは分からないが、ギプスを装着すると不具合でもない限り、基本的に装着したままとのこと。

そうなるとエリカのようにギプスをはめている部分が"痒い"といったことも起きうる。

『そんなことか』と思うかもしれないが、痒いところを掻けないというのは意外に辛いものだ。

あとは濡らすのも良くないので、エリカはギプスの上にタオルを巻いて、更にビニル袋をかぶせている。

動かせない以外にもギプス生活はいろいろ不便なので、そうならないようケガには十分気をつけたい。

181 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:46:36.48 ID:LGEFd4u10


ザパーン


エリカ「…ふぅ」

みほ「こっちのお風呂は大きいから良いね」ノビー

まほ「そうだろう。風呂が恋しくなったらいつでも帰って来ると良い」

みほ「でも帰宅するってメールしたらお姉ちゃん気付かなかったじゃない」ジトー

まほ「あれはだな…」


エリカ「姉さんもお母さんもどういうわけか機械オンチなのよね…」

まほ「うるさいな」

みほ「あはは。パソコンは難しいから」

まほ「それが普通だ。心配しなくていい」

エリカ「姉さんもそろそろパソコン使えるようにした方が良いと思うわよ?」

まほ「パソコンなら使える。この間電源の入れ方および切り方を覚えた」

エリカ「…そう。ところでみほ」

みほ「なーに?」


エリカ「もしインターネット使えるのなら良いサイト教えてあげる」

みほ「なになに?」

エリカ「"フューリーを探さないで"って検索してみると出て来るページ。なかなか面白いわよ」

みほ「…なにそれ?」

エリカ「見てのお楽しみ」

182 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:49:34.19 ID:LGEFd4u10

〜〜〜


みほ「この入浴剤いい匂いがするね。どこのだろう?」

まほ「ああ。いい香りだ。ニンニクのニオイも消してくれる」

みほ「そうだね。あとで菊代さんに聞いてみるよ」

まほ「それがいい」

エリカ「」プニプニ

みほ「あっ、それ私のII号!」

エリカ「この子触り心地良くて気に入ってるのよ」

みほ「む。あげないからねー」

エリカ「…ねぇみほ」

みほ「ん?」

まほ「!!! エリカやm


エリカ「チ●ポ」ボロン


みほ「!!?」

まほ「よさんか!!!」バコッ!!

エリカ「いだぁっ!?」



コイツまたやりやがった!

II号をプニプニ弄ってる時から嫌な予感がしたが、妹にまで卑劣な真似を!

私に向けてやるなたまだいい。だが、みほはまだウブで清純な乙女なんだぞっ!!!


183 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:00:10.65 ID:LGEFd4u10


みほ「…前にね、そういうのネットで見たことがあるよ」

まほ「え」

エリカ「そうなの?」ヒリヒリ

みほ「うん。5%の確率でボロンするっていうので、普段はごく普通の投稿なんだけど、たまにね」

まほ「」

エリカ「なんだ。みほも知てるんじゃない」

みほ「他にもサオリスクタイムとかネットには色々面白いのが色々あるよね!」

エリカ「そうね。しょーもないと思いつつもクスッってなるわ」

まほ「」



お、おい…みほ…お前なんてものを見てるんだ…


184 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:01:07.59 ID:LGEFd4u10


みほ「それでね? ボロンするとゲームでレアキャラゲット出来たり色々ご利益があるんだって」

まほ「」

エリカ「ある種のパワースポット的なものかしら?」

みほ「そうかもしれないね。…でも」

エリカ「ん?」

みほ「お股にII号あてるのはどうかと思うんだ…」

エリカ「そうかしら?」

まほ「み、みほの言う通りだ…下品にも程があるぞエリカ…!」


みほ「そんなにおっきくないから」


まほ「なぁっ!?」

エリカ「へぇー」



お、おい…みほ…おまえは一体何を言っているんだ………?!

どうして全てを知っているかのように語るんだ……?!

おまえ…まさか………!!!

185 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:02:16.13 ID:LGEFd4u10


みほ「だって昔、お父さんと一緒に入ったときに見ちゃったもん」

みほ「大人のお父さんでもあんなだから、きっと皆それくらいなのかなぁ…って」

エリカ「あ、姉さん沈んだ」

まほ「」

みほ「え?! ど、どうしたのお姉ちゃん?!」

まほ「」ブクブクブクブク



良かった…みほはまだ純潔だった…。お父様のは残念だと思うが、今はそれで良いんだ…。

世の中には知らなくて良いことだってたくさんある。別に知らなくたって死にはしないんだ。だから知らなくて良い。

…私も知らないが、みほは特に知らないでいて欲しい。


186 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:06:19.69 ID:LGEFd4u10


【再び脱衣所】


みほ「お、お姉ちゃん、大丈夫…?」オロオロ

まほ「……大丈夫…だ…クルスクに…比べたら………」

エリカ「行ったことないクセに…」

まほ「…だま…れ……」

みほ「とりあえずお水飲んで?」

まほ「…すまん…みほ………」ゴクゴク



私はいつの間にかみほの作戦に完膚なきまでに打ちのめされるようになっていた。

それは私が弱くなったからではない。みほが私を上回るほどの実力者になったという動かぬ証拠だ。

西住流だの黒森峰隊長だと驕り高ぶっているせいで、いつのまにか妹に追い抜かれてしまっている。

やはり週明けからは気を引き締めて今まで以上に厳しく鍛えなければなるまい…。

意識が遠のく中で私は誓った。


〜〜〜〜

187 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 18:51:13.47 ID:ei8K93cA0


まほ「…う…ん…?」パチッ

まほ「ここは…私の部屋…か…」

シーン

まほ「…みほと…エリカは…?」



どうやら私はその後気を失ったようで、目が覚めたら自室の布団の中にいた。

…黒森峰の隊長が風呂で逆上せて気を失う事などあってはならないが、今はそんなことはどうでもいい。

それよりも、妙に部屋が静かだと思ったらあいつ(エリカ)がいない。

一体どこへ行ったというのだ。


188 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 18:53:32.02 ID:ei8K93cA0


菊代「あら、まほお嬢さま。お体の方はもう良いのですか?」

まほ「ああ、もう大丈夫。それより菊代さん、みほとエリカは?」

菊代「つい先程みほお嬢様と一緒に出られましたよ」

まほ「なに?」

菊代「え? みほお嬢様とお出かけに…」

まほ「…」


まずい。

今のエリカが、外部の人間と接触して余計なことを喋ったりしたら大変なことになる。

早く探しに行かなければ明日の朝刊の一面記事に"西住流家元 隠し子疑惑"と横向きの見出しがついてしまう。

そんな流派の危機的状況にあるというのに、お母様もみほも随分悠長なことをしている。

菊代さんも菊代さんでどうして止めてくれなかったんだ。

189 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 18:54:58.19 ID:ei8K93cA0


「ただいま」

菊代「お帰りなさいませ奥様」

しほ「ええ。ただいま」

まほ「お帰りなさいお母様…?」

しほ「どうしたのですか。鳩に豆鉄砲食らったような顔をして」

まほ「いえ…あの…」

しほ「言いたいことがあるのなら、ハッキリと言いなさい」

まほ「…その、」



カチューシャ「」ガタガタガタガタ



まほ「何故、プラウダ高校の隊長を肩に乗せておられるのですか…?」



ありのまま今、起こったことを話そう。

『エリカを探そうとしたら、肩にプラウダの隊長を乗せたお母様が帰宅した』

何を言っているのか分からないかもしれないが、私も何が起きたか分からなかった。

頭がどうにかなりそうだった。

副隊長のノンナだとか、大学選抜戦のエリカだとか、そんなちゃちなものでは断じてない

もっと恐ろしいものの片鱗を味わった…。

190 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 18:55:53.55 ID:ei8K93cA0


しほ「帰宅途中のドブ川で見つけたので拾ったのです」

まほ「どうしてプラウダ高校の隊長が、ドブ川などに落ちているのでしょう…」

しほ「私にもわかりません」

まほ「私はこの光景の一切がわかりません」

菊代「プラウダ高校といえば東北の方の学校ですが、何故こちらへいらしたのでしょう?」

カチューシャ「く、黒森峰に行ったらあなたがいないから、お家の住所教えてもらったの!」

カチューシャ「そして行ったてみたら途中でノンナが迷子になるしカチューシャは川に落ちるしでもう最悪よっ!!」

まほ「それはご足労かけたな…」


191 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:00:08.89 ID:ei8K93cA0


頭の処理が追いつかないが、一つ一つ整理していこう。


まず、プラウダ高校の隊長であるカチューシャは、何かしら私に用があって黒森峰を訪れた。

しかし、黒森峰には私がいなかったので、わざわざこちらへ来たという(幸い学園艦は熊本港に停泊しているので遠くはない)。


ところがカチューシャ曰く、プラウダの副隊長であるノンナが道中で迷子になり(お前が迷子になったのでは?)、更には自身もドブ川に落ちてしまったという。

それも"片足がハマった"というような生易しいものではなく、ドボンと"体単位"で沈んだようで、某探偵アニメの犯人よろしく全身灰色になっている。

その他ヘドロや堆肥などが混ざった形容し難い悪臭が彼女から漂っていて近寄りがたい。お母様もよくこんな汚いものを担ごうと思ったものである。


…と言った具合に、本来なら見知らぬ田舎で全身ヘドロまみれという絶望的な状況だが、幸いにも(不幸にも)お母様が偶然通りかかり、捨て猫よろしく拾ってきたという。肩に担いで。


余談だが、母というものは子に対し「お前はうちの子じゃない。ドブ川から拾ってきた」と言うが、あれは何故だろう。

私も幼少期にお母様に訪ねたところ、『ドブ川ではなくライン川から拾ってきました』などと意味不明なことを宣う。

そのような得体の知れん場所から発掘されるくらいならドブ川のほうがまだマシである。

192 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:03:30.76 ID:ei8K93cA0


まほ「…それで、彼女をどうするのですか?」

しほ「くさいので風呂に入れます」

まほ「妥当かと思います。くさくてかないません」

カチューシャ「レディに向かってくさいくさい失礼ねっ!!」


しほ「菊代。風呂の用意はしてありますか?」

菊代「はい。ご用意出来ております」

しほ「ご苦労様。行くわよ、かほ」

まほ「…」

カチューシャ「私はカホじゃなくカチューシャよ!!」

しほ「何か?」ギロッ

カチューシャ「な…ナンデモアリマセン……」オロオロ



そう言い残すとカチューシャは風呂場へ連れて行かれた。

…かほ? カチューシャの「カ」をとって"かほ"なのだろうか。よくわからないが下手をすると西住家にまた一人、娘が出来そうだ。

エリカの件で隠し子云々と危機感を抱いているのに、カチューシャまで認知しては隠し子どころの騒ぎではない。

しかし、カチューシャを肩に乗せるお母様は、まるで幼かった頃のみほを散歩に連れて行く時のようにも見える。思えば私も幼い頃はお母様によく肩車をしてもらったものだ。

だが、肝心の搭乗者ならぬカチューシャは尋常でないほど怯えており、元来チビである彼女がますます小さくなってしまっている。

193 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:09:24.14 ID:ei8K93cA0


「ただいまー」

「ただいま」

「お邪魔します………」



カチューシャが浴室送りにされて数分後に入れ替わりでエリカとみほが帰ってきた。

しかし声は3人分なので二人の他に誰か客人を招いたようだ。



まほ「戻ってきたか…!」

菊代「お帰りなさいませ。みほお嬢様。エリカお嬢様。…そちらの方は?」

みほ「うん。戦車道でお世話になってる方なんだ」

まほ「おいエリカ、お前どこをほっつき歩いてい……た?」


ノンナ「………こんにちは……」


まほ「」

みほ「ノンナさん、カチューシャさんを探してたみたい…」アハハ...

ノンナ「…恐縮です………」



そんな予感はしていた。

先ほど浴室送りにされたカチューシャは、本来なら今私の目の前にいるノンナという女の肩の上に収まるものだ。

肩の重みを失った彼女は、"乗せるもの"を探すべく彷徨っていたのだろう。

失ったのは"乗せるもの"だが、彼女の生気のない顔を見ると、このまま魂まで失ってしまわないか心配になる。

194 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:10:45.17 ID:ei8K93cA0


まほ「それで、お前で一体どこをほっつき歩いていた」

エリカ「みほが久しぶりに実家に帰ってきたのだから近所を散歩してたのよ」

まほ「何故私に言わずに勝手に出ていった」

エリカ「だって寝てたじゃない」

まほ「…」

エリカ「それで、帰る途中に、この…ブリのノンナ? って人が探し物をしていたから、家まで案内したのよ」

まほ「私の記憶が正しければ彼女は"ブリザードのノンナ"だ。ブリは魚だ」

エリカ「そのブリブリノンナがカチューシャを探してたけれど、見つけられなかったそうよ」

ノンナ「…あの、ブリブリではなく、ブリザードです………」

195 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:12:17.75 ID:ei8K93cA0


まほ「まあ、その…ノンナ」

ノンナ「…はい……」

まほ「そう気を落とすことはない。必ず見つかるだろう」

ノンナ「はい…命に代えてでも…」

まほ「そう気を張るな。きっと腹が減ったらお前のところに戻ってくる」

ノンナ「そうだと良いのですが……」

まほ「彼女だって伊達にプラウダ高校の隊長をやっているわけではない。きっと無事だ」


196 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:13:37.41 ID:ei8K93cA0


ノンナ「ああ…カチューシャ…一体どこへ………」ズーン

まほ「心配するな。彼女はいつだってお前のそばにいるさ」

ノンナ「変な人に誘拐されていないか心配です………」



厳密に言うと半径10m以内にいる。

そして変な人よりも数倍厄介なお母様に連れて行かれた。



エリカ「…姉さん、実は居場所知ってるでしょ」ボソッ

まほ「知ってるどころかお母様が先ほど持って行った」ヒソッ

エリカ「じゃぁどうして教えてあげないのよ…」ボソッ

まほ「これ以上面倒事が増えるのは勘弁願いたい」ヒソッ

エリカ「これ以上何か面倒なことあったかしら?」モソッ



私の目の前にいるお前が最大の"面倒事"だ。



〜〜〜


197 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:15:16.02 ID:ei8K93cA0


「あら。またお客かしら?」トコトコ


まほ「お母様…?」

エリカ「お母さん家にいたのね?」

しほ「ええ。かほをお風呂に入れていました」

エリカ・みほ「かほ?」



ノンナ「カチューシャッ!!」ガタッ



カチューシャ「」カタカタカタカタ


そう。"かほ"というのはカチューシャの頭文字"カ"と、西住家の女の"ほ"を合わせたものだ。…西住かほ。無駄にしっくり来るのが腹立たしい。

そんな"西住かほ"ことカチューシャは、相変わらずお母様の肩に乗っている。替えの服が無いので彼女はタオル一枚だ。

お母様もそこそこ背が高いので、カチューシャにとっては良い眺めだとは思うが、当の本人はそんなことを思う余裕など恐らく無いだろう。

心なしか更に萎縮しており、そろそろ2桁台に突入しそうだ。風呂場で一体何があったのだろう?


198 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:16:22.21 ID:ei8K93cA0


しほ「まほ、こちらの客人は?」

まほ「プラウダ高校の副隊長です。お母様の肩に乗っているカチューシャを探しておりました」

エリカ「え? カチューシャってあのチビなの?」

カチューシャ「誰がチビよっ! このカチューシャ様を侮辱するなら許さないわよ!!」

まほ「カチューシャはカチューシャでも頭にはめるアレではない。プラウダ高校の隊長のコレだ」

カチューシャ「コレって言うなぁぁ!!」ガーッ



人様の肩の上でお構い無しに叫びながら、ぐわんぐわん体を揺らすのがプラウダ高校のカチューシャである。ロデオマシーンにでも跨っているかのようだ。

しかし、本来の持ち主であるノンナはともかく、お母様もあれほど激しく動き回るカチューシャを搭載しているのに平然としておられる。

その安定感たるや、ティーガーの車体にII号戦車の砲塔を載せたようである。

199 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:17:33.57 ID:ei8K93cA0



しほ「プラウダ高校…?」チラッ

ノンナ「っ…!」

しほ「…」

ノンナ「…」

カチューシャ「」ブルブル



ノンナとお母様…。

ものすごい組み合わせだ。

一方は肩に少女を乗せ、もう片方はその少女を『私のものだ。返せ』と言わんばかりに対峙する。

もう何が何だか分からなくなるほど無茶苦茶な構図だ。


200 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:21:53.50 ID:ei8K93cA0


みほ「…お姉ちゃん、なんだか胃のあたりが痛くなってきたよ」

まほ「ああ…。私も同じだ」

みほ「どうしよう…」



色んなことが起こり過ぎたせいで感覚が麻痺してきているが、ノンナとお母様という組み合わせは実は相当洒落にならない。例えるならメントスとコーラである。

何しろみほが黒森峰を去る原因となった"あの決勝戦"の相手がプラウダ高校だ。ノンナ(及びカチューシャ)が直接関与していないとは言え、プラウダ高校の代表が目の前にいる。

まさに因縁の相手なわけで、西住家の一角は冷戦期のように緊迫した空気へと一瞬で変わる。



しほ「この子の服がありませんが、娘が昔使っていた着ぐるみを代わりに着せようと思います」

ノンナ「…それは、どういうものでしょう」

しほ「クマの着ぐるみです」スッ

ノンナ「!!」

しほ「ジャストフィットでモコモコがなかなか暖かそうです」

ノンナ「Это замечательно」



…と思っていたら独ソ不可侵条約が成立した。これで両国は未来永劫良好な関係を築き続けるだろう。

些細な争いごとなど話し合い一つで幾らでも解決できるのだ。エリカがみほとお母様の軋轢を修正したように。

201 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:22:30.72 ID:ei8K93cA0


カチューシャ「そ、そんなことより早くおろしなさいシホーシャ!!」

まほ「シホーシャ?」

カチューシャ「そうよ! 西住しほだからシホーシャ。何か文句ある?」

まほ「お母様はその件について何と言った?」

カチューシャ「"シホーシャ…悪くありません"だって」



ネジが数万本外れた今のお母様なら言いかねん。

202 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/22(水) 19:24:31.50 ID:ei8K93cA0



エリカ「ところでお母さん、その肩の上に乗ってる子、どうするの?」

しほ「それを今から考えようと思います。まずは役所に出向いて出産育児一時金の申請を」

まほ「お母様。その肩の上に乗ってる子は腐っても高3です。確実に役場で笑われます」

カチューシャ「腐ってもってどういうことよ!!!」

しほ「そうですか。困りましたね」


エリカ「そのまま軒下に吊るしておけば良いんじゃないかしら?」

まほ「そうだな。渋みが無くなって丁度いい塩梅になるだろう」

ノンナ「カチューシャは渋柿ではありません」

カチューシャ「そうよノンナ! もっと言ってやりなさい!!」

ノンナ「同志はそのままでも甘くてジューシーです」

カチューシャ「ノンナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


しほ「家族とは良いものです」

エリカ「ええ」

みほ「賑やかで楽しいわね」

まほ「その通りだな。みほ」


ワッハッハッハッハ!



何か重要なことを幾つか忘れている気もするが、思い出したところでこのメンツで解決するとは到底思えないので今は忘れよう。



〜〜〜〜〜
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/22(水) 20:29:10.48 ID:/4izVAV/0
事態がますますカオスなことに…
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 05:16:46.48 ID:gySZZ/VNO
エリカのお母さん呼びはスルーですか(笑
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 08:37:19.32 ID:wFw+LQYbO
カチューシャが隊長になったのは、カチューシャ車が黒森峰のフラッグ車を撃ったからってのは公式だっけ
206 :なんか最終章の公式サイト誤字多くない?  ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:33:24.74 ID:N46VW/iU0

【居間】


グツグツ グツグツ....


まほ「ところでカチューシャ」

カチューシャ「なーにー?」フーフー

まほ「こちらまで用があって来たとのことだが…?」

カチューシャ「そうよ! 思い出したわ!」モグモグ

ノンナ「カチューシャ。口に食べ物を入れたまま喋ってはいけません」

しほ「かほ。頬に付いてます」フキフキ

カチューシャ「モガガガ...」


みほ「あむっ」パクッ

エリカ「あっ、それ私が育ててた鶏肉よ!」

みほ「はひゃいほほはひはひょへひひゃん」ホフホフ

エリカ「何言ってんのかわかんないわよ…」

菊代「エリカお嬢様、お肉はまだ沢山ありますよ」

エリカ「…じゃぁ次はハンバーグをお願いね」

まほ「鍋にハンバーグ放り込むやつがどこにいる」モグモグ



新たに増えた客人を招いて鍋を囲んでいる。西住流は戦車道だけでなく鍋もまた豪快である。

炊き出しで使うような巨大な鍋に味噌ベースのスープを満たし、そこにぶつ切りにした肉だの野菜だの魚といった具材を投入して煮込む。

また、肉や野菜だけでなく、小麦粉を練って千切って平らに丸めた団子も入っている。いわゆる"だご汁"風だ。

それにしてもあまりにダイナミックな鍋なので、相撲部屋にでもいるような気分になる。

207 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:34:55.49 ID:N46VW/iU0


エリカ「このお鍋大きいからカチューシャならスッポリ入りそうよね」

みほ「あはは、カチューシャさん専用のお風呂に出来そう」

エリカ「光熱費が節約できそうね。あとで試してみようかしら?」

カチューシャ「ちょっと! カチューシャを何だと思ってんの?! それにお風呂はさっき入ったばっかりよ!!」

エリカ「良いじゃない。再入浴なんて旅館じゃ普通よ?」

菊代「温泉も良いですけど、久々にサウナに入りたいですね」

ノンナ「私は薬風呂というのが好きです。ここ最近肩こりが酷いもので」

しほ「近くに健康ランドが出来たそうです。一度行ってみようかと思います」



こんな調子で、鍋をつつきながら三者三様談笑に花を咲かす。

カチューシャを鍋のシメにするだの健康ランドがどうのこうの。こういうのもたまには悪くない。

208 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:38:41.96 ID:N46VW/iU0


まほ「…カチューシャ、話を戻そう。黒森峰に来た用とは?」

カチューシャ「モグモグゴックン。…用件も用件よ。今日練習試合するっての忘れてるじゃない!」

まほ「ふむ。練習試合」

エリカ「悪かったわね。ここ最近姉さん物忘れが激しいみたいで」

しほ「その年で物忘れでは困ります。しっかり食べて栄養つけなさい」ヒョイヒョイ

まほ「はい…肝に銘じます…」モグモグ

みほ「お母さんとお姉ちゃんの会話なのに、妙にほんわかしてるね」

エリカ「堅苦しい会話してるのに小鉢に次々と野菜放り込むのがなかなかシュールよね」

まほ「あの…お母様、できれば肉も…」

しほ「好き嫌いは許しません」ヒョイ

まほ「はい…」



お母様はやたら野菜ばかりよそうので、椎茸だの葱だのに舌鼓を打ちつつ、行われるはずだった練習試合のことを振り返る。

確か…、カチューシャが『久々にドンパチやりたい』などと言い出したので、私が『他校も誘ってはどうか』と提案してみた。

実際のところ、黒森峰が他校と練習試合をするのは久し振りで、サンダースや聖グロ、知波単学園、アンツィオ、継続高校、そして大洗女子といった面々も招いた。

今までにない規模の練習試合を兼ねた合同演習なので、(頭がおかしくなる前の)エリカも張り切っていたな。

209 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:41:08.37 ID:N46VW/iU0


カチューシャ「しっかし、港に学園艦が勢揃いってのも凄いことよねぇ?」

ノンナ「これほどの大規模な集まりは先の大学選抜チーム戦以来でしょうか」

エリカ「学園艦だけで街一つくらいの面積があるし、船というより埋め立て地とでも呼んだ方が良いくらいね」

みほ「うん。そんな大きな学園艦を一つの港に大集合だから凄いことになるよね」

まほ「全くだ。見物客も相当…」


まほ・みほ・カチューシャ「あ゛っ!!」


エリカ・ノンナ「?」

カチューシャ「何ノンn…ノンキなこと言ってんのよ!! 他校の子たちそっちのけじゃない!!」

まほ「のんびり鍋など突いている場合ではない。ダージリンや安斎に小突かれてしまう」

みほ「も、もしもし会長?! え? 今ですか? じ、自宅ですっ!!」アセアセ



エリカにかまけていたせいで今日が練習試合、それも複数校参戦型の大規模演習の日だということをすっかり忘れていた。

きっと今頃各校の隊長たちは各々の学園艦でカンカンになっているに違いない…。

210 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:44:13.03 ID:N46VW/iU0


みほ「どうしよう…会長が物凄く怒ってたよ…」オロオロ

まほ「会長というのは角谷か?」

みほ「うん…」

カチューシャ「あの小さいヤツも怒るときは怒るのね。カチューシャくらい寛大な心を持てば良いのに」


みほ「74アイスクリーム食べ放題券を没収するぞーって言ってた…。明日から節約しなきゃ…」ズーン

ノンナ「何という横暴なのでしょう…!」

エリカ「ハッ! 生徒会って何様のつもりかしら!」

カチューシャ「まずは大洗の生徒会をボッコボコにするべきよ!!」

ノンナ「同意です。悪政がまかり通る学校など教育機関としての価値はありません」

しほ「邪道は跡形も残らず叩き潰すべきです」

エリカ「いっそ文科省に頼んで廃校にしたらどうかしら?」

みほ「ま、待ってよ! 廃校になったら私中卒になっちゃう!!」



皆好き放題言ってくれるが、その学校の廃校を阻止する為にみほは奮闘したんだぞ?

その結果、みほは二度に渡る廃校の危機から見事大洗を守り抜いた。

それら輝かしい功績を知る私(ここにいる全員が知ってるはずだが…?)は、軽々しく大洗を廃校しろなど口が裂けても言えない。



エリカ「廃校になったら黒森峰に戻って来れば良いじゃない」

まほ「おっ、そうだな」

カチューシャ「黒森峰は一度追い出したでしょ! ミホーシャはプラウダに来るの!」

ノンナ「次期隊長の席を用意してお待ちします」

みほ「」


ギャーギャー ワーワー

211 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:47:58.20 ID:N46VW/iU0

♪ オープスシュテュルムオーダーシュナイトオプディゾーンネーウンスラハト...


まほ「ん」ピッ


まほ「…私だ」

『御機嫌よう"私"さん』

まほ「…私は"私"という名前ではない。西住まほだ」

『そうですわね。ご機嫌よう西住まほさん。聖グロリアーナのダージリンですの』

まほ「その気持ち悪い声とお嬢様言葉を聞けば名乗らずともわかるさ」

ダージリン『…私があなたに電話をする理由、ご存知ですわよね?』イラッ

まほ「あ、ああ。すまない…」


ダージリン『すまんで済んだら戦争は起こりませんのことよ?』

まほ「そうだな…。嫌な予感しかしないが、そっちはどうなってる?」

ダージリン『まほさんやカチューシャが来ないから演習が出来ないと、』

まほ「重ねておわびs


ダージリン『黒森峰の学園艦を的に砲撃演習をしておりますの』


まほ「やめんか!」


212 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:52:04.56 ID:N46VW/iU0


『お! 私の砲撃が黒森峰の校舎に命中しましたぞ!』


ダージリン『おやりになるわね絹代さん。でもあなたの戦車では校舎を破壊するには火力不足ですの』

『じゃ、今度はナオミのファイアフライ使ってみる?』

ダージリン『17ポンド砲さんに"一番いい場所を頼む"とお伝え願いますの』

『な、なぁダージリン…流石にカモ撃ちはどうかと思うぞ…?』



安斎の言う通りだ。。

学園艦を的に砲撃練習という発想が理解できん。お前たち聖グロは日頃どんな練習をしているんだ。

その頓珍漢っぷりたるや、例えるなら空母同士の戦いで艦載機ではなく艦載砲で叩き合うようなもの。そんな指揮をする馬鹿提督がいるなら即刻クビにすべきだ。

それに学園艦には多くの人が住んでいるのだから直ちにやめさせろ。

213 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:54:10.47 ID:N46VW/iU0


ダージリン『そうですわね。アンツィオさんの仰る通りですわ』

アンチョビ『アンツィオじゃなくてアンチョビだー!』

まほ「分かったならさっさと」

ダージリン『今なら黒森峰の重戦車を鹵獲できますわよ』

まほ「おい」

アンチョビ『そ、そうか?! …P40のパーツとか置いてあれば…』

まほ「おい」

ダージリン『そんなケチ臭い事仰らずに、ティーガーあたりを拝借しては如何ですの?』

まほ「おい!!」

アンチョビ『ティーガーかぁ。後輩が乗りたがっていたなぁ…』



待て。ティーガーを持って行かれては私の乗る戦車が無くなってしまう。

ティーガーは黒森峰を象徴する戦車なんだぞ。そうやすやすと誰かに託せるものではない。

ましてや安斎の部下、特にマカロニとかいう奴に乗せようものなら車内がチーズまみれになってしまう。

あいつは戦車とオーブンの区別がつかんのだからな。

214 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:56:02.56 ID:N46VW/iU0


ダージリン『あなたの学校には強力な戦車が目白押しですもの。一つくらい無くなったって問題ありませんわ。かくいう私もエレファントを』

まほ「エレファントはやめとけ。色んな意味で地雷だ」

西『でしたら私もタイガー戦車を一輌頂きたいのですが…』

まほ「お前の学校は大日本帝国の戦車で編成されているはずだ。そこにティーガーを混ぜてはおかしなことになるだろう」

西『"盟友都々逸国から賜った"ということで手を売って頂けないでしょうか? …"福"が逆さまになったやつが…』

まほ「まず都々逸は落語だ。それに倒福は中華民国だ」

西『む…』


まほ「埒が明かん。ダージリン、取り急ぎで済まないが、ひとまず日程を…」

ダージリン『それまでに黒森峰の学園艦が耐えられるかどうかですわね』

まほ「だから人の学園艦を的にするのはよせと言ってるだろう!」


『黒森峰には、人生の大切なすべての事がつまってるんだよ』モグモグ

まほ「その声は継続高校のミカ隊長だな? お前何を食べている?」

ミカ『ヴァイスヴルストが私を呼んでいたからね』



ふむ。ヴァイスヴルストを選ぶとはなかなかお目が高い。さすが継続の隊長だけある。

ヴァイスブルストとはその名の通り白いソーセージで、主に茹でて食すのだが、この時沸騰する直前のお湯あるいは白ワインに10分ほど温め、色がねずみ色になるのが丁度良い茹で加減なのだ。

私も好きでプレッツェルやノンアルコールビールと一緒に囓っている。

ただ、しっかり茹でないと食あたりを起こすから気をつけろ。


…ではなくて。

215 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:57:36.07 ID:N46VW/iU0


まほ「貴様どうして人の学校の食料庫を漁っているんだ!!」

ミカ『さぁ。彼女に聞いておくれ』

まほ「彼女? アホのダージリンのことか?」

ダージリン『まぁ、随分な言われようですわね』

まほ「カチューシャがそう言ってた」

ダージリン『ほう…?』

カチューシャ「そっ、そんなこと言ってないわよバカーっ!!」

西『あはははは。…彼女を侮辱するなら、流石の私も黙ってはいませんよ?』

カチューシャ「ひぃっ?!!」ビクッ

ダージリン『絹代さん、落ち着いて! 今回はそういうのじゃないのよ…!?』

ケイ『ま、マホ! キヌは一度火がつくと手がつけられないから刺激したらダメだよー!』

まほ「ぐ…それは悪かった。謝罪する」

安斎「に、西! 西住だって悪気があっていってるわけじゃないんだ! 落ち着け! な?」


ワーワーガヤガヤ

216 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 21:59:26.62 ID:N46VW/iU0


まほ「…良くわからんが、とにかく学園艦を的にするのと倉庫内を漁るのをすぐに辞めさせてくれダージリン」

ダージリン『仕方ありませんわね』

アンチョビ『…何というか…凄いことになってるぞ…?』

まほ「凄いこと…?」

アンチョビ『ノリと勢いのウチらですら不安になるレベルで各校自由気ままに動いてて…』

まほ「は?」

アンチョビ『もう食べたい放題』

ダージリン『やりたい放題』

まほ「何してくれとんねん」


217 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:00:16.30 ID:N46VW/iU0


みほ「お姉ちゃん、ダージリンさんと話してるの?」

まほ「ん。そうだが?」

みほ「じゃあちょっと代わって」ハイ

まほ「わかった」ホイ


みほ「もしもし…ダージリンさん?」

ダージリン『その声はみほさんね?』

みほ「その、ごめんなさい。私も久々の帰省だったので…」

ダージリン『そうでしたの。お母様とはよろしくされているのかしら?』

みほ「ええ。おかげで無事に和解しました」

218 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:02:27.98 ID:N46VW/iU0

ダージリン『まぁ、それは良かったですわ』

みほ「ダージリンさん達に色々助けて頂いたおかげです。本当にありがとうございます」

ダージリン『あらあら、お上手ですわね。それで演習のことですが、日程を変更することにしますわ」

みほ「良いんですか?」

ダージリン『良いんですのよ。他でもないみほさんのことすもの。ご家族と団欒なさってくださいな』フフッ

みほ「あ、ありがとうございます!」

ダージリン『その代わり次の日程では』


ダージリン『黒森峰・プラウダ・大洗 vs それ以外 にしますので』ウフッ


みほ「え」

ケイ『おー、ミホが相手か! 楽しみだなぁ〜。今のうちにカール導入しちゃおうかな!』

みほ「え。え」

西『今日まで積み重ねてきた努力の成果を試せるなんて光栄の極みでございます!』

みほ「え。え。え」

『また、みほさんと戦える…』

みほ「その声って…愛里寿さん!!?」


219 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:04:55.81 ID:N46VW/iU0


ダージリン『お聞きの通り、"被害者の会"の皆さんがみほさんと戦いたがっておりますの』フフッ

ケイ『ミッホー! 今度は負けないからねーあははっ☆』アハハッ

西『またご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い致しますっ!』

ミカ『みほとミカは一文字違いだね』

アンチョビ『黒森峰とプラウダもいると手強いけど、こっちだって全力でやるからな!』

愛里寿『あれからいっぱい頑張ったから、今度こそ…』

220 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:06:56.71 ID:N46VW/iU0


みほ「…一言、良いでしょうか?」


ケイ『おおっ! ミホの"アレ"が聞けるのかー!』

ダージリン『ふふっ。久しぶりですわね。みほさんの"アレ"』

西『なんだか私、胸が躍り高ぶって参りました!』

愛里寿『私は初めてだから…ちょっと緊張する…!』

ミカ『西住さんの"アレ"には大事なものが詰まっているんだ』

アンチョビ『全くだ。"アレ"を聞くために戦車道をやってるようなものだからな!』

みほ「あはは。…では、お言葉に甘えて」スゥー
























     みほ「異議ありっ!!」




















              逆転ガル判

      おしまい

221 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:08:53.17 ID:N46VW/iU0




まほ「待ったぁー!!」




エリカ「…うるさいわね」

しほ「食事中は静かにしなさい」

カチューシャ「はしゃいじゃって。まるで子供ねぇミホーシャ」

ノンナ「日頃の鬱憤を晴らしたかったのです。カチューシャ」

みほ「お姉ちゃん、さすがにはしたないよ…」

まほ「…」



流石に大声を出したことについては反省しよう。

だが、お前たちがあまりにわけの分からん話ばかりをして、挙句の果てに何も解決しないまま終わろうとするから、こちらとして異議申し立てをしたくなった。

茶番はその辺にして、いい加減演習ついて真剣に話し合うべきだ。

222 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:10:22.30 ID:N46VW/iU0


ダージリン『そうですわね。さすがにおイタが過ぎましたの』

まほ「頼むぞダージリン。お前がトチ狂ったら話が進まなくなる」

アンチョビ『それで西住。先程言った通り、黒森峰、プラウダ、大洗女子 vs それ以外というチーム分けの件だが』

まほ「ああ。随分とざっくりした編成だとは思った」

カチューシャ「良いじゃないの。優勝校vsそれ以外って分かりやすいでしょう?」

まほ「それはそうだが…」

ケイ『私たちとしては相手は強い方がHEAT UPするわ!』

ミカ『向かい風に逆らうのも悪くはないさ』

西『腕がなりますよ!』
223 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:12:22.41 ID:N46VW/iU0


まほ「うむ。…だが、聖グロ、サンダース、継続、そして知波単に島田流までいるとなれば戦力に偏りが出ないか?」

アンチョビ『ほう…アンツィオは戦力外と?』

まほ「そんなことはない。安斎の偵察は大学選抜戦にて大いに脅威と判断した」

まほ「重装甲・高火力だけが取り柄のチームには無い、小回りの聞く戦車による煽動、撹乱、そして偵察は決して馬鹿には出来ん」

エリカ「…」

みほ「…」

アンチョビ『その通りだ。アンツィオ高校だってやればできる。我々は決して弱く…じゃなくて』


みほ「でもお姉ちゃんの言うとおり、戦力差出そうだよね」

まほ「恐らくはな。だがそれは同時に我々にとっても良い訓練となる。それにどうしても差がありすぎるならその都度修正すれば良い」

エリカ「そうね。最も修正が必要かどうかは怪しいけれど」フフン

まほ「油断するなと言っているだろう」

ダージリン『楽しみですわね…"実現するのが"』

まほ「そうだな。だが"期待し過ぎる"のも良くないぞ」

ダージリン『?』

224 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:13:37.55 ID:N46VW/iU0



〜〜〜〜



ダージリン『…さて、大方お話は決まりましたし、そろそろお開きと致しましょう』

まほ「そうだな。長々と付き合わせて済まなかった」

ダージリン『構いませんの。こうやって他校を交え和気藹々とするのも良いものですから』

まほ「ああ。その通りだ。和気藹々しすぎて通常の5倍ほど時間が掛かった点を除けばな。それでは、よろしく頼むぞ」

ダージリン『ええ。御機嫌よう』


ツーツーツー


225 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/24(金) 22:14:41.03 ID:N46VW/iU0


まほ「…というわけだ」

カチューシャ「面白いことになってきたわね」

まほ「全くだ。きっと誰かが演習について詳しくレポートしてくれる者が現れるだろう」

みほ「レポート?」

まほ「うむ。この演習について書いてくれる人だ。少なくとも私は現状で手一杯だからな」

エリカ「そう…」

カチューシャ「…どういうこと? ノンナ?」

ノンナ「カチューシャ、触れるべきでない情報もあります」

まほ「全くだ。いらん事を言い過ぎたせいで話がどんどん脱線している」



今の心境を語るなら、夏休みの最後の日に、宿題を1つもやっていなかった事に気が付いた時に似ている。

素直に『練習試合は中止だ』とでも言っておけば丸く収まったものを、いらん話をしたせいでどんどん拡大してしまった。

戦線を拡大しすぎて物資も人員も足りないジリ貧のドイツそのものだ…。

226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/25(土) 11:53:23.92 ID:hfgtkpRo0
話を広げ過ぎてエリカが西住家の一員と化してることに誰も突っ込まなくなってるw
227 :訂正です ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/27(月) 04:08:45.58 ID:LdRMzVtw0
>>221

誤) カチューシャ「はしゃいじゃって。まるで子供ねぇミホーシャ」

正) カチューシャ「はしゃいじゃって。まるで子供ねぇマホーシャ」

228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/27(月) 12:29:18.54 ID:c+5xXZNKO
しえんしえん
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/29(水) 11:07:40.49 ID:QWBGpTGW0

いやいや、>>1の試合(演習)描写は好きだぞ
ちなみにこれは対空戦車シリーズの続編かな?
ダージリンに対する西の描写が気になった
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/29(水) 19:07:06.52 ID:jypLknCQo
待ってますよ
231 :訂正です ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 19:58:14.84 ID:iWsjbRHN0


【まほの部屋】


エリカ「…あれ? ちっちゃいのとブリブリの人は?」

まほ「…カチューシャとノンナのことか。二人ならもう帰ったぞ。何でも"ほっとくと部下のロシア人が餓死する"らしい」

エリカ「ロシア人ねぇ…」

まほ「プラウダ高校はソビエトを模倣した学校だ。ロシアやウクライナから留学する生徒もいるだろう」

エリカ「ふーん。そう考えるとウチには留学生は一人しかいないわね」

まほ「そういえばツェスカの事を忘れていたな」

エリカ「ツェスカで思い出したけど、別のヤンキー学校にも日独混血の生徒がいわね。…ツェスカとは仲が悪いらしいけど」

まほ「そうか」



念の為補足すると、『ツェスカ』というのは黒森峰に留学しているドイツ人生徒だ。簡単に言えば今のエリカを更に喧しくしたようなやつである。

以前はドイツの名門校にいたとのことだが、同じ学校のエースだった生徒と一悶着あったらしく、来日してから偶然再開したそうだ。

しかし、ドイツでの出来事が原因で、日本でもギクシャクした関係にあるという。


その生徒と私は面識がある。何しろ彼女はみほの幼馴染だ。何年も前の話だが(大洗にいる角谷の妹かと思うほど欲にているが、どうやら無関係のようだ)。

そして、彼女もまた私と同じティーガーIに乗る女。もしかしたら…いつか、何処かで彼女とは手合わせをする時が来るかもしれない。

232 :↑「訂正です」ってあるけどミスです…  ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 19:59:50.72 ID:iWsjbRHN0


まほ「そろそろ寝るか」

エリカ「もう寝るの? 明日は日曜日なのに」

まほ「日曜日だとしても夜更かしは健康に悪い。早寝早起きを心がけろ」

エリカ「ふーん」

まほ「…何だ?」

エリカ「いや、姉さんって年寄り臭いな…って」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…寝る」ゴロン

エリカ「あ! ちょっと! 私の布団無くなるじゃない!」

まほ「知るか。お前などダンボールと新聞紙で上等だ」

エリカ「それじゃホームレスじゃない!!」

まほ「犬みたいにキャンキャンはしゃぐな」


233 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:07:50.18 ID:iWsjbRHN0


今日もまた色々あった。…いや、昨日以上に色々あったかもしれない。


エリカに枕にされて叩き起こされ、みほが家に帰ってきて、お母様とみほが和解した。

デパートへ買い物に行ったら赤星と直下と遭遇し、二人を副隊長補佐に任命した。

帰ってからはみほによって部屋の外をボコまみれにされた。エリカがまた発狂してた。

昼食のラーメンがやたらニンニクがキツく風呂に入り、エリカのしょーもない一発芸を見せらた。

風呂で気絶して目が覚めてからは、カチューシャやノンナが家にやってきた。

そして皆で鍋を囲いながら談笑に花を咲かせ、練習試合のことをすっかり忘れる。


色々ありすぎた。良い意味でも悪い意味でも。

いずれにせよ、ここまで充実した一日は本当に久し振りだ。

何しろ、つい先日まで私はひたすら戦車道に没頭していた。高みを目指すことだけを目標に過酷な訓練を繰り返す日々だった。

それだけに、これほど和気藹々とした温もりある生活を肌で感じたのが遠い昔のことに思える。

戦車道で心身を鍛える日々も良いが、その一方で、心身をリラックさせられる居場所を築くのも大事だろう。

…そんな風に、一日の出来事を振り返りながら私は寝床に就いた。



就いたのだが…

234 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:10:09.85 ID:iWsjbRHN0


エリカ「」スヤァ

まほ「…」グゥゥ

エリカ「」スヤァ..

まほ「…」グゥゥ

エリカ「」スヤァ...


まほ「…」グゥゥゥゥゥ....



寝れん。

…いや、寝れないことは無いとは思うが、こんな時間に腹が減ってしまった。

夕食はみんなで鍋を囲ったのだが、ダージリンから電話が掛かってきたせいで禄に手を付けなかった。

そして彼女の相手が終わり、さあ飯だと思ったら鍋の中身はすっからかんだったという。

おかげで食事の席に着いていたにも関わらず、満足に食事を摂っておらず、今この時間になって猛烈な空腹感に襲われている。

ああ…腹減った…。

235 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:11:20.74 ID:iWsjbRHN0


まほ「…」パサッ

エリカ「」スピー

まほ「…」

エリカ「」スピー



さすがに我慢ならんので、食卓で何か軽くつまもう。

確か買い置きのレトルトカレーがあったはず。

ボンカレーはどう作ってもうまいのだ。

236 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:14:46.88 ID:iWsjbRHN0


エリカ「姉さん………」

まほ「っ…」

エリカ「……プラウダの……シャが………」

まほ「"シャ"って誰だ?」

エリカ「…プラウダ……たいちょう………?」クカー

まほ「…。プラウダの隊長はカチューシャだ」

エリカ「……あいえすつー……」スヤァ

まほ「IS-2に乗ってるのはノンナだろう。お前がさっきブリブリと呼んでた女だ」



急にエリカが喋りだすので驚いたが、どうやら寝言のようだ。

その内容から察するに、プラウダ高校との練習試合の夢でも見ているのだろう。

それはそれで結構。睡眠学習は大いに歓迎しよう。

かくいう私もプラウダと戦う夢をよく見る。昨晩は川に転落した。

237 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:17:01.65 ID:iWsjbRHN0


エリカ「………あぁ……小梅……落ちた……えだめ…」モガ....

まほ「なんだ? 赤星のやつ今度は肥溜めに落ちたのか?」

エリカ「………」クカー

まほ「…」グゥゥゥゥゥゥ



そこでエリカの寝言は終わった。

部下を肥溜めに叩き落とすとはなかなかの邪道である。どんな夢を見ているのだろうか。

夢の内容も些か気にはなるが、それよりも腹が鳴り出してやかましい。

早くカレーを食べよう。

238 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:18:16.40 ID:iWsjbRHN0

【台所】



まほ「確かこのあたりに…」ガサゴソ

まほ「うむ? おかしいな」ゴソゴソ

まほ「参ったな。残しておいたはずだが…」


エリカ「探してるのってコレのこと?」つ[Von Calais]


まほ「ああそれだ。悪いなエリカ」

エリカ「どういたしまして」

まほ「………ん」

エリカ「?」


まほ「うっ!?」


エリカ「」ビクッ

まほ「どうしてお前がここにいる。背後から現れるから驚いただろうが」

239 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:19:14.90 ID:iWsjbRHN0



エリカ「どうしてって…私の家なんだから私がいても別におかしくないでしょう?」

まほ「そういう意味ではない。つい先程までお前は私の部屋で寝ていただろう」

エリカ「ええ寝てたわよ。寝てたけど、急に姉さんの匂いがしなくなったから目が覚めたのよ」

まほ「お前は犬か」



ああ犬だな。

キャンキャン吠え、クンクン甘えて、ゴロゴロくつろぐ。紛うことなき犬だ。

オマケにそこら中に糞尿まで垂れ流す



エリカ「だぁから糞尿は

まほ「静かにしろ。今何時だと思っている」

エリカ「ぐ…」


240 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:21:43.23 ID:iWsjbRHN0


まほ「そもそもここへ何しに来た?」

エリカ「お腹がすいたから何か食べようかなと思って」

まほ「ならば良いものがある」

エリカ「良いもの?」

まほ「庭に沢山草が生えている。今年は菊代さんが帰省の関係で草刈りが遅れたからまだ残っている。マヨネーズをつけて食べるといい」

エリカ「ヤギじゃないんだから食べれるわけ無いでしょう!!」

まほ「静かにしろと言ったはずだ。何度も言わせるな」

エリカ「…姉さん、いい根性してるわね……」

まほ「根性なくして黒森峰の隊長は務まらん」


241 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:23:23.72 ID:iWsjbRHN0


まほ「さて」

エリカ「…」ジー

まほ「…」

エリカ「…」ジー

まほ「…なんだ」

エリカ「姉さん、作れるの? ソレ?」

まほ「なに?」

エリカ「レトルトカレー。作れるの?」

まほ「は?」

エリカ「作れるの?」



…こいつは何を宣っているのだ?

レトルトカレーが作れるか、だと?

馬鹿にするな。レトルトカレーの一つや二つ作れないようで西住流が名乗れるか。


242 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:26:00.78 ID:iWsjbRHN0


エリカ「…いや、西住流以前に、作れないと人としてどうかと思うわよ…」

まほ「案ずるな。レトルトカレーなど作り方を誤る方が難しい」

エリカ「そうよね…?」

まほ「うむ。まずは箱からパウチを出す」

エリカ「ええ」

まほ「そしてパウチを開け口から開封する」

エリカ「そうね」

まほ「そして、鍋に中身をあける」

エリカ「うん」



エリカ「………ん?」



まほ「…どうした?」

エリカ「こっちがどうしたって聞きたいわよ! 姉さん頭打っておかしくなったんじゃないの?!」



頭を打っておかしくなったのはお前だろうが。

…まったく。今のエリカは人に対するモノの言い方を知らんから困る。

良いかエリカ。戦車道というのはな、『乙女の嗜み』として古くから伝わる武芸だ。

そこには礼節あり淑やかで慎ましく凛々しい婦女子の育成を目指すという目的がある。

故に女子高生のように下品にギャーギャー騒ぐような女でいては戦車道をやる者として不適格だ。

243 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:29:37.87 ID:iWsjbRHN0


エリカ「いや、だって…」

まほ「だってもラーテも無い。戦車道を嗜む者ならば品行方正を心がけよ」

エリカ「姉さん、一つ良い?」

まほ「なんだ?」

エリカ「あのね、戦車道は大事よ?」

まほ「うむ」

エリカ「けれども」


エリカ「レトルトカレーひとつ満足に作れないと、婦女子どころか人として失格レベルよ?」


まほ「私がレトルトカレーを作れないとでも?」

エリカ「」コクリ

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…なに?」

244 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:30:59.77 ID:iWsjbRHN0

エリカ「レトルトカレーって、中身を鍋に放り込んだりしないわよ?」

まほ「は? ならばどう作れと言う」

エリカ「お鍋に水を入れて、火にかける」

まほ「…」

エリカ「そこにレトルトカレーのパウチを入れて温める」

エリカ「そして温まったら封を切って、お皿に盛り付ける」

エリカ「…以上」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…ちょっと待ってろ」ピポパ

エリカ「?」



真相を確かめるために、私はこの手の情報に詳しい人物と連絡を取った。


245 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:33:56.48 ID:iWsjbRHN0


『…も、もしもし……?』

まほ「私だ」

『……わたしさん……? …こ、こんな時間に何よ……』

まほ「………まず私の名前は私さんじゃない……」

『おお…?』


まほ『西 住 ま ほ だ』


『A゛hhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!』バタン ゴン!!



電話の先でケイが絶叫している。

どうせあいつのことだ。ポップコーンでも貪りながらホラー映画でも見ていたのだろう。

こちらが緊急事態だというのに呑気なやつだ。

そして名乗っただけで絶叫するとは失礼なやつだ。

246 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:36:02.05 ID:iWsjbRHN0


ケイ『ま…マホっ! "Orgy of the Dead"観てる時に脅かさないでよっ! ビックリしたじゃない!』ヒリヒリ

まほ「それは悪かった。しかし"死霊の盆踊り"とはまた渋いチョイスだな」

ケイ『…そんなことより、こんな時間に電話して何かあったの? 他の学校の皆はもう寝ちゃってるよ?』

まほ「実はだな、ケイ。お前に頼みたいことがある」

ケイ『へ? 頼みたいこと?』


まほ「ああ。お前にしか聞けないことだ」


ケイ『!! …私に…だけ…?』

まほ「ああ。ケイにだけ」

ケイ『…そ、そう……内緒話…?』


まほ「私とケイだけの"秘密"だ」


ケイ『う、うん…なんでも聞いて…まほ……』ドキドキ

まほ「済まないな」

ケイ『い、良いのよ! 他でもないまほの頼みだもん…!』ドキドキ


247 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:36:54.92 ID:iWsjbRHN0





まほ「レトルトカレーの作り方を教えてくれ」






ケイ『……………………は?』




248 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:40:54.89 ID:iWsjbRHN0

まほ「その、なんだ…」

まほ「私は今までレトルトカレーは、パウチの中身を鍋に入れて加熱するものだと思っていた」

ケイ『…』

まほ「しかし、うちの副隊長が言うには、パウチは開封せず、そのまま水の張った鍋に入れて加熱するのだと言う」

ケイ『…』

まほ「もしかしたら、私は今の今まで重大な過ちを見過ごしていたのかもしれない…」



エリカはレトルトカレーひとつ満足に作れぬ者など人間失格だと言う。

しかし私としては、そのような輩は人間どころかミジンコ以下であり。

そして、その"ミジンコ以下"に私は今まさになろうとしている。

このままでは西住ジンコ流などと罵られてしまう。

だから今ここで名誉を挽回するのだ…!

ちなみに、何故ケイなのかというと、こいつはハンバーガーやフライドチキンといったジャンクフードばかり食べている。

なのでレトルトカレーにも詳しいだろうと思っての選定だ。髪の毛もカレーみたいな色してるしな。

249 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 20:43:09.89 ID:iWsjbRHN0


まほ「…というわけだ」

ケイ『………』

まほ「…おい、ケイ? 聞いているのか?」







ケイ『ファァァァキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!』







まほ「え」

ケイ『なぁにがカレーだ!! 私の純情返しやがれバーーーーーカ!!!!!!』

まほ「お、おい…?」



よくわからんが、ケイが煮込まれたカレーのように沸騰している。

『ポジティブ』という単語を擬人化したかのように開放的で明るいやつだけに珍しい事もあるものだ。


…もしやケイ、お前も腹を空かせているのか?

250 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 21:48:03.40 ID:iWsjbRHN0


ケイ『うっさいうっさい!! 私はお腹なんか空いてないよっ!!』

まほ「そ、そうか。とりあえず落ち着け…」

ケイ『ビークワイエッ!! ちょっとでもドキッとした私がバカだったぁぁぁぁぁぁぁ!!』ウワーン

まほ「そ、それは悪かった…すまん」

ケイ『ダージリンのヤツがドヤ顔でカレシ自慢するからアッタマ来てた矢先にコレよジーザス!!』

まほ「いや、カレシじゃなくカレーを…ん?」

ケイ『何よ…?』

まほ「ダージリンのやつ、男がいるのか?」

ケイ『ええ!いるわよっ! あんにゃろう私の前でイチャコラしやがってぇぇぇぇぇ!!』

まほ「それは知らなかった」

ケイ『なぁにが、"キヌヨさんは私だけの白馬の王子様ですの♥"だ!! ふざけやがってぇぇぇぇ!!!』ウガー



話を要約すると、ケイはカレーではなく"カレ"がいないことに憤慨しておられるようだ。

その憤慨ぶりたるや元の性格が思い出せなくなる程である。女の嫉妬というものは恐ろしい。

だが恋人がいないのは何もケイに限った話ではない。むしろ恋人がいる人の方が少数ではないだろうか。

私もそうだし、ダージリンを除く他の隊長も恐らく恋人などいたことがないはず。少なくとも安斎は確定だ。

ティーガーが鹵獲されたというなら腹が立つのもわかるが、惚気話如きに何をそんなに腹を立てることがあるというのだ。



………ん?
251 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 21:51:41.63 ID:iWsjbRHN0


まほ「キ"ク"ヨさん…?」


ケイ『そうよ キ"ヌ"ヨ! まぁ私はキヌって呼んでるんだけどさ! ダージリンのヤツ年下の子捕まえやがってぇぇぇぇ!!』グギギギ

まほ「なに?! 彼女はダージリンと付き合っているのか?!」

ケイ『そうよ! ダージリンのヤツ、私の前で "普段は騒がしいけれど、二人きりになると…ふふっ♥" ってノロけやがって!!』ガァァァァ!!

まほ「………」



とんでもないことを知ってしまった…。

菊代さんは我が西住家の家政婦だが、まさかダージリンと関係を持っていたとは…。

…いや、驚くべき事実ではあるが、考えてみればそれほど突飛な話でもない。


菊代さんには私やみほが幼い頃から身の回りの世話をしてもらっていた。

その他にも西住流の門下生や来客の応対、家事全般をこなしている。

そんな多忙極まりない家政婦という境遇に息苦しさ、そして虚無を感じていたのかもしれない。


だから、ダンケルクよろしく西住家を飛び出して、思い切って羽根を伸ばしたかったのだろう。

そんな矢先に聖グロのダージリンと出会い、恋に落てしまったのだ。


…菊代さんのことだ。どうせ玉の輿でも狙っていたのだろう。


252 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 21:58:16.80 ID:iWsjbRHN0


まほ「ケイ」

ケイ『な、何よぉ…?』


まほ『彼女は私たちの家で暮らしている』


ケイ『What's!!?』

まほ「それも何年も前からだ」

ケイ『ちょ、ちょっとマホ! それ本当なの!? Really!?』

まほ「ああ。朝は起こしてくれるし、美味しいご飯を作ってくれる』

ケイ『うそ!?』

まほ「嘘なんかじゃない。私たちにとって生活の一部だ」

ケイ『…oh…そうだったんだ………』

まほ「こんな事になっていたなんて、知らなかった…」

ケイ『………』



さすがのケイも黙り込んでしまった。

何しろダージリンの交際相手は菊代さん、つまり"西住流の使者"だ。

このまま両者の関係が深まれば、ダージリンは西住流の女としてその敷居を跨ぐことになる。

そしてそれは、西住流の次期家元は私ではなく、ダージリンが選ばれる可能性があるということを意味する。

家元の座を誰にも渡すつもりはないが、ここに来て新たなライバルが現れたこととなる。

私か、あるいはダージリン、どちらが西住の名を受け継ぐに相応しいか………!


西住流の今後を決める話だ。

今電話をしているケイはともかく、菊代さん交際相手であり私の宿敵となったダージリンにも話しておくべきだろう。

253 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 22:01:31.03 ID:iWsjbRHN0


まほ「…どうやら、泥沼の争いになりそうだな」

ケイ『わ、私…知らなかったよ…あの子がそんな事してるなんて………』

まほ「私も明日、ダージリンに改めて宣告するとしよう」

ケイ『ま、マホ…?』

まほ「なんだ?」

ケイ『その、さっき…私"たち"って言ったよね?』

まほ「ああ、そうだが?」

ケイ『じゃ、じゃぁ他にも?!』

まほ「うむ。私だけでなく、みほもお世話になっている」

ケイ『ミホも!?』

まほ「みほだけじゃない。最近では副隊長のエリカも世話になっている」

ケイ『え゛っ!!?』

まほ「実際に昨夜は一緒に風呂に入っていた。エリカ曰く」




まほ「"気持ちよかった"とのこと」



ケイ『〜〜〜〜〜〜〜〜!!////////////』ポシュッ!



エリカは腕を骨折しているため、一人で体を洗うことができず、菊代さんに手伝ってもらった。

かくいう私やみほも幼い頃は菊代さんに体を洗ってもらうことが何度もあった。

家事をそつなくこなす菊代さんだけに人の体を洗うのもまた上手いのだ。あの絶妙な力加減は病み付きになる。


…ところで、電話の向こうから撃破判定装置が作動する音がしたのだが、ケイは一体何をしているのだろうか?

254 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 22:03:16.65 ID:iWsjbRHN0


ケイ『マホのおバカ〜〜〜〜〜ッ!!/////』


まほ「なっ、何故私が馬鹿なんだ!」

ケイ『そそそそんなの言っちゃダメでしょーがぁ!!//////』

まほ「何をだ?」

ケイ『ききき、気持ちいいいだなんて、はは破廉恥だよっ!/////』プシュゥゥゥゥゥゥゥ

まほ『む…』



確かに。人様の風呂事情を赤裸々にしたのは不味かった。

さすがの私も入浴中に何処をどう洗うかなど暴露されて良い気はしない。

私としたことが軽口を叩きすぎたようだ。気をつけなければ…。


…ところで、電話の向こうから蒸気が噴き出すような音が聞こえるが、ケイは一体何をしているのだろうか?

255 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 22:05:12.11 ID:iWsjbRHN0


ケイ『わ、私…あの子に会ったらどう接すれば良いか分かんなくなっちゃったよ…』

まほ「実を言うと私もだ。明日どんな顔をして接すれば良いか迷う」

ケイ『…ダージリンにちょっぴり嫉妬してたけど、こんな事になってたなんて…ダージリンが可哀想だわ…』

まほ「それでも変えられない事実だ。だから私は明日ダージリンに改めて宣告する」

ケイ『だ、ダメよマホ! ダージリンあんなに幸せそうにしてたんだから!』

まほ「だが言わなければ何時までたっても解決しないだろう?」

ケイ『ダメだって! 絶対ダメっ!!』

まほ「しかし…」


256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/11/30(木) 22:08:14.80 ID:Qv730hDSO
>>229
死ね特定厨
西ダジくらい普通だろ
257 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 22:10:11.83 ID:iWsjbRHN0


ケイ『考えてもみなさいマホ! 恋人ができて幸せ絶頂なあなた自身を!』

まほ「出来たことが無いから考えようがないが、まま幸せなのだろうな」

ケイ『そんな毎日超ハッピーなタイミングで、その恋人が色んなヒトと浮気してたって知らされたらマホはどんな気持ちになるの!』

まま「そうだな。履帯の染みにする程度では恐らく気が済まないだろう」

ケイ『でしょう? ダージリンにとってもそれくらいショッキングな出来事なんだから簡単に言っちゃダメよ!』

まほ「…しかし、ダージリンとは西住流家元の看板を懸けたライバルだ。宣言無しで戦うのはフェアじゃない」

ケイ『浮気にフェアもアンフェアも無いわよっ!!』

まほ「まぁそうだが………うん? 浮気?」

ケイ『まずは私がキヌに"女の子を悲しませるような事しちゃダメ"って話すよ!』

ケイ『それでキヌに謝罪させるの!』

まほ『そうか。…ところでケイ』

ケイ『なに?』











まほ「キヌって誰だ?」




258 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/30(木) 22:10:53.89 ID:iWsjbRHN0




ケイ『へ?』

まほ「急に知らぬ人物の名が出てきて困惑しているのだが」

ケイ『なに言ってんのよ。今までずーっとキヌのことでお話してたじゃない』

まほ「えっ」

ケイ『あ、私がキヌって呼ぶからいけなかったわね。キヌヨよキヌヨ』

まほ「キヌヨ? 知波単学園の西絹代か?」

ケイ『そうよ?』

まほ「…」

ケイ『…』

まほ「…」

ケイ『…?』



…どうやら、盛大な勘違いをしていたようだ。



〜〜〜

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