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【ガルパン】ゆめおち
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2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:05:30.01 ID:1QTXd7kI0
しほ(胡蝶夢丸……良い夢を見れる薬だと、ストレスを和らげてくれると、貴方はそう言ってそれをくれたのに。こんな夢の一体どこが……)
……ガシャァン!!
しほ(という音がして……トラックがガードレールに激突したらしかった。けれどそのまま突き破って歩道に乗り上げている。マンションの壁に衝突して、やっと止まる)
しほ(『交通事故だ』、ひしゃげたトラックの姿がそれを連想させてくれた)
しほ(交通事故だと理解できたからだろうか。道路に横たわるみほの姿を、ようやく私は認めた。ちゃんと、みほの形をしていた。だが、うつ伏せに横たわったまま動かない。足や腕がおかしい。だけど、首が動いた。私は、駆け寄る)
みほ「……痛、い……痛、い……」
しほ(もちろん、これが夢だという事を、私はちゃんと理解してる)
みほ「おか、さ……ゴボボッ……」
しほ(理解しているから、これは、私の見ている夢。けして現実ではない。それをきちんと分かっている)
みほ「ズヒュー……ズヒュー……」
しほ(あんな轢かれ方をした人間は『こんなふうな苦しみ方はできない』私はそれを知っている。テレビでみた。即死のはずだ。だから、これはやっぱり夢なのだ。このみほは『私を苦しませようとしている』。おそらく……私自身が?)
みほ「……ガッ、アァー……」
しほ(……っ)
しほ(もし、現実にこんなことが起こったら、私は何を思うだろう。悲しみのあまり、正気を失うだろうか)
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:06:12.42 ID:1QTXd7kI0
しほ(私は……みほを追い出したことを後悔しているのだろうか。だから、私は自分にこんな夢をみせて……戒めをしているのだろうか……)
しほ(わからない。けれど、みほが、私の娘がトラックに轢かれる瞬間が、目に焼き付いて離れない。私はなんども何度もそれを繰り返してみる。)
しほ(何度も何度も、何度も何度も)
しほ(私はどうして、これを見るのをやめられないのか)
しほ(分からない。でも、やめられない)
しほ(みほが、私の娘が)
しほ(いなくなる。突然。何の前ぶれもなく。そんなことがあるのだろうか。それがわからない。信じられない。受け入れられない)
しほ(だからか。みほがいなくなるその瞬間を私は何度も何度も振り返る。何度も何度も。それが理解できるまで。みほがいなくなるということが理解できるまで)
しほ(何度も何度も何度も何度も。たぶん、永遠に、何度も何度も)
しほ(みほ)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:06:39.83 ID:1QTXd7kI0
みほ「……ん、あ……?」
みほ(……。)
みほ(……あぁ、そうか、いまの、夢……)
みほ「……。」
みほ「……お母さん……」
杏「やぁ、どうだった西住ちゃん」
みほ「あ……会長……」
杏「おはよ。まぁ、もう夕方だけど」
みほ(ん……生徒会室の窓、すごい夕焼け空……)
みほ「会長、だけですか。お二人はもう……」
杏「うん。もう下校時間は過ぎてるからね。この校舎に残ってる生徒は……私と西住ちゃんだけだよ」
みほ「そうですか……」
杏「で……どう? よい夢は見れた?」
みほ「……。」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:07:15.74 ID:1QTXd7kI0
みほ「……どうなんでしょう……?」
杏「ありゃだめだった?」
みほ「……うーん」
杏「……んー……私は、つらいことがあったときは、よくその薬を飲んでる。」
みほ「……」
杏「中国住みのおじさんが送ってくれた怪しげな薬……胡蝶夢丸」
みほ(胡蝶夢丸……あぁ、夢の中でお母さんも言ってた……)
杏「それを飲むと、一時だけ楽しい夢を見ていられる、現実のつらいことを、忘れていられるんだ」
みほ「……」
杏「まぁ、乱用はあんまり良くないんだけね……にひ、戦車道の大会で優勝した後のことなんだけど、さ」
みほ「?」
杏「あの頃は毎晩のように飲んでたからねぇ。だから、優勝した後、もしかしてこれも夢じゃないだろーねって、ドキドキしてた。こっそり死ぬほど頬っぺたを引っ張ってみたり!」
みほ「あはは」
杏「……ほんと、あの頃は、すっごくつらくて……毎晩薬を飲んでたから」
みほ「会長……」
杏「みんなには秘密だよ。かーしまにも。こんな情けない姿は見せられないよ。この薬を教えるのは、西住ちゃんにだけ」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:07:41.30 ID:1QTXd7kI0
みほ「私には、いいんですか?」
杏「私、西住ちゃんに感謝してるからね。それに、ていうか、だからこそ……西住ちゃんの苦労も、私だけは分かってるつもり。それを押し付けたのは、私なんだけど……私、西住ちゃんには、言っちゃいたい……西住ちゃんにしか、言えない。負い目があるからこそ、言える……ね、西住ちゃん……」
みほ「……」
杏「だから、ね、二人の秘密だよ」
みほ「わかりました」
杏「で、どんな夢だったの? 教えてよ」
みほ「うーん、それが……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:08:20.56 ID:1QTXd7kI0
杏「……ふうん。西住ちゃん、死んじゃうんだ」
みほ「はい」
杏「で、それをお母さんの視点から眺めてる、と」
みほ「そんなところです」
杏「フロイトなら、なんて分析するんだろうね。結局さ、お母さんは悲しんでたの? 西住ちゃんがトラックに轢かれて」
みほ「うーん……それが、よくわからないんですよね」
杏「そうなの?」
みほ「はい。私が説明したとおり、お母さんはこれが夢だってことに気づいてて」
杏「うん」
みほ「いろんなことを考えてるんです」
杏「みたいだね」
みほ「これが現実だとしたら、『みほ』が本当に死んでしまったら自分は何を考えるだろう、とか。戸惑ってるみたいで、ただ、感情まではよくわからなくて」
杏「うーん……。じゃあ……西住ちゃんは、お母さんに戸惑ってほしい、のかな?」
みほ「戸惑ってほしい……?」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:09:19.73 ID:1QTXd7kI0
杏「この薬は飲んだ人の願望を夢の中でかなえてくれる。てことは……こじつけかもしれないけど、西住ちゃんはもっとお母さんに、関心を持ってほしいって……そーいう願望だったり、とか」
みほ「関心……」
杏「それか、もっとはっきりとお母さんに号泣したり発狂してほしかった?」
みほ「う、うーん……お母さん、あんまりそういうイメージないです……」
杏「自分の娘が事故にあったら、さすがに泣くと思うけど」
みほ「泣くのかなぁ……。あ、でも……」
杏「?」
みほ「お母さんが、私のことを夢に見てくれてたのなら……うれしいかな?」
杏「ふぅん?」
みほ「私が死んだらどうしようって、お母さんがそーやって考えてくれてるとしたら……。うーん、ていうことは、会長のいう通りなのかなぁ……。私、お母さんにもっと気にしてほしいって……思ってるのかなぁ……」
杏「ふむ……。……。よしっ!」
みほ「きゃあ、会長、どうして急に私を抱っこするんです?」
杏「にひひ、西住ちゃんがかわいくてねぇ。よしよし」
みほ「えぇ……?」
杏「西住ちゃん、いい感じにひねくれてるよ。歪んでる。熊本で苦労してたんだねぇ。にひひ」
みほ「う、うーん……」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:09:46.94 ID:1QTXd7kI0
杏「この薬は飲んだ人の願望を夢の中でかなえてくれる。てことは……こじつけかもしれないけど、西住ちゃんはもっとお母さんに、関心を持ってほしいって……そーいう願望だったり、とか」
みほ「関心……」
杏「それか、もっとはっきりとお母さんに号泣したり発狂してほしかった?」
みほ「う、うーん……お母さん、あんまりそういうイメージないです……」
杏「自分の娘が事故にあったら、さすがに泣くと思うけど」
みほ「泣くのかなぁ……。あ、でも……」
杏「?」
みほ「お母さんが、私のことを夢に見てくれてたのなら……うれしいかな?」
杏「ふぅん?」
みほ「私が死んだらどうしようって、お母さんがそーやって考えてくれてるとしたら……。うーん、ていうことは、会長のいう通りなのかなぁ……。私、お母さんにもっと気にしてほしいって……思ってるのかなぁ……」
杏「ふむ……。……。よしっ!」
みほ「きゃあ、会長、どうして急に私を抱っこするんです?」
杏「にひひ、西住ちゃんがかわいくてねぇ。よしよし」
みほ「えぇ……?」
杏「西住ちゃん、いい感じにひねくれてるよ。歪んでる。熊本で苦労してたんだねぇ。にひひ」
みほ「う、うーん……」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:10:12.57 ID:1QTXd7kI0
杏「ともあれ、お母さんに、電話、してみたら?」
みほ「え、ええ?」
杏「夢の内容の正確な解釈は置いとく。それでも、夢に見るくらいなんだから、お母さんのことやっぱり気にしてるんだよ」
みほ「……うー……それはそうかもしれませんけど……」
杏「それに、前にも言ったはずだよ。西住ちゃんのお母さんは大洗を助けようとしてくれた。西住ちゃんのことだって、きっと見てくれてる」
みほ「……」
杏「さ……、電話、しよ?」
みほ「……。わ、わかりました……電話、します!」
杏「いえーいっ!」
みほ「う、うぅ…………!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:11:41.18 ID:1QTXd7kI0
しほ「という夢だったわ」
菊代「えぇ……」
菊代「なんですかその歪曲した愛情表現……」
しほ「別に歪曲はしてないでしょう」
菊代「いやいや……この胡蝶夢丸はしほさんの願望を夢に表すのですよ? それは理解していますよね?」
しほ「分かっているけれど」
菊代「じゃあ改めて言いますけど……しほさんはみほお嬢様に、『みほお嬢様死んでしまったという夢をしほさんが見ている』という夢を見させて『お母さんがそういう夢を見てくれていたらいいな』『私のことを考えてくれてるといいな』というような願望をみほお嬢様に抱いていてほしいという願望がしほさんにはあるという事ですよ」
しほ「……わざと分かりにくくいってるでしょう」
菊代「とにかく、歪みすぎです。それに角谷さんという方にても、本当にそういう方なんですか?都合よく改変してませんか?」
しほ「お黙り。そもそもあなたこそ、なんという夢を私に見させるのです。夢の中の夢とはいえ、わが子が交通事故にあっている場面など、不愉快極まりない」
菊代「いや、あれですかね、昨晩一緒にテレビでみてた『決定的瞬間ベスト100』の影響ですかね。ショッキングな映像だったですもんね。お嬢様が交通事故にあったら、、って、しほさん想像しちゃったんじゃないですか?」
しほ「……」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:12:14.54 ID:1QTXd7kI0
菊代「……よし! お嬢様に電話しましょ!」
しほ「えっ」
菊代「お嬢様とお話ししたいんでしょ! 夢のあれはそーいう願望でしょ! だったら、しほさんから電話してください。大人なんだから」
しほ「む、むぅ…………!」
おわり
菊代「……という夢だったらどうします? 実はお嬢様は本当に事故にあってしまっていて、しほさんは悲しみのあまり胡蝶夢丸を乱飲して夢の世界へ逃避して……」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/07(火) 21:12:42.75 ID:1QTXd7kI0
しほ「ッ……」
菊代「ぎゃ!? いたたたたた! 頬っぺたをつねらないでください! 痛い痛い痛い!!!」
しほ「夢かどうか確認をしなくては。このままちぎってみましょう」
菊代「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 調子にのって不謹慎なことを言いました!」
しほ「まったくです。少し、私は怒っている」
菊代「……えへへ、ほら、やっぱり。早くお嬢様に電話をしてさしあげてくださいな」
しほ「……っ」
菊代「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ホントにちぎれますー!」
〜完〜
14 :
1
[saga]:2017/11/07(火) 21:15:21.45 ID:1QTXd7kI0
ありがとうございました。
死亡描写があったことについて、最初に注意書きしておくべきだったかもしれません。
タイトルで『ゆめおち』と明記しているし不要かなと思いましたが、やっぱり必要だったかも。
不快な思いをさせてしまっていたら、申し訳ありません。
15 :
1
[saga]:2017/11/07(火) 21:20:27.90 ID:1QTXd7kI0
>>9
はミスです。重複投稿です。
>>8
とまったく同じ文章です。失礼しました。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/07(火) 21:36:47.96 ID:BRlfX60SO
胡蝶の夢
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