P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL3

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170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:40:59.27 ID:l+ivFJemO

小鳥「のんびりなんてさせません。私は、みんなを倒さなければならないんですから……!」ボゥ



美希「!」

律子「……建前よ。本心じゃない」チャキッ

美希「……うん」

律子「悪役の演技もすっかり板に付いてきましたね、小鳥さん? 今から女優も目指せるんじゃないですか?」



小鳥「………」

小鳥「建前なんかじゃないってこと、証明してあげます……!」ボゥ



貴音「来ます……! 美希!」

美希「わかってるの!」

美希・貴音「シェル!!」バッ

ポワーン…



小鳥「ここまできたら防御なんてもう意味ないわ……! 貫いてあげるっ……!」

小鳥「……合わせて、メガフレア!」バッ



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!

171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:44:20.41 ID:l+ivFJemO

美希「ぅ……」

律子「く……!」

千早「はぁ、はぁ……!」ヨロッ

貴音「……み、美希……魔法は使えますか……?」

美希「う、うん……今……回復するのっ……!」ヨロッ



…ザッ

小鳥「……その前に、全滅コースね」ボゥ



美希「こ、小鳥……!」

貴音「魔法が、間に合わない……!」

律子「みんなは……私が……守るっ……!」チャキッ

千早「はぁ、はぁっ……!」チャキッ



小鳥「私のメガフレアに三度耐えるのは、スタミナのある千早ちゃんや魔法防御の高い貴音ちゃんでも不可能だと私は踏んでる」ボゥ

小鳥「……残念だったわね。あなたたちはここでゲームオーバーよ」

小鳥「…………合わせて、メガフレアッ……!!」








「ふぃ〜……やっととーちゃくだよー」

「待たせたなみんな! 自分たちが来たからにはもう安心だぞ!」



小鳥「えっ……!?」

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:45:36.95 ID:l+ivFJemO

ブゥゥゥゥゥン…



亜美「……って、うあうあ〜! なんかくるよ〜!」

響「うぎゃ〜!!」



バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!



173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/17(日) 09:42:48.55 ID:4owirf1Oo
半年以上経っちゃったな

ひっそり待ってるからいずれ戻ってきてほしい
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:46:58.70 ID:91IMrmsjO

亜美「うぇ……」グッタリ

響「うぅ……」グッタリ



律子「あ……亜美!?」

貴音「響……!」

千早「二人とも、大丈夫……!?」

美希「っ……!」ヨロッ

美希「……ケアルガ!」バッ

シャララーン! キラキラキラ…!



亜美「うぅ……せっかくカッコよく登場しようと思ったのに〜」

響「だからちゃんと様子見てから行こうって言ったんだ。亜美が『勢いが大事』とか言うからだぞ!」

亜美「ひびきんだってノリノリだったじゃんかー!」

美希「なんかモメてるの」

千早「緊迫していたはずなのに、二人を見てると気が緩んでしまいそうになるわね」

貴音「ともかく、二人が考えなしに突撃してくれたおかげで全滅の危機は免れたようです。助かりました」

律子「まったく、タイミングがいいんだか悪いんだか……」

亜美「いやあ、それほどでもあるよ〜!」

響「褒められてるのか微妙なところだぞ……」

175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:48:45.87 ID:91IMrmsjO

P(今のは……かなり危なかったと思う。響と亜美が割り込んでこなければどうなっていたか……)


小鳥(完璧にとどめになると思ったけど……)

小鳥(律子さんたち、亜美ちゃんと響ちゃんに救われたわね)

小鳥(………)

小鳥(救われたのは、律子さんたち?)

小鳥(それとも……)




亜美「ていうかみんなボロボロじゃん! もしかしてホントにピンチだったの?」

千早「ええ、状況的にはかなり劣勢と言ってもいいと思う」

亜美「ほほーう……」

亜美「ひびきん、こりゃカツヤクするチャンスかもしんないよ?」

響「へへ、どうやらそうみたいだなっ!」

響「みんな、少し休んでてよ。ここは自分と亜美でなんとかしてみせるっ!」グッ

律子「な、何言ってるのよ!?」

美希「二人だけじゃキケンなの!」



小鳥「………」



亜美「ねえねえ、ピヨちゃんも亜美たちがどんだけ強くなったか知りたいっしょ?」



小鳥(無謀……というか、きっと二人とも今のシリアスな空気を読めていないのね)

小鳥(早いところ格付けを済ませてしまいましょうか)

176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:51:10.97 ID:91IMrmsjO

小鳥「……いいわ。それじゃあお姉さんの怖さを思い知らせてあげる……!」ゴゴゴゴ



亜美「おおぅ……ビリビリくるよ……!」

亜美「まさに最終決戦ってカンジだね!」

響「……なんだかピヨ子、ちょっとおっかないぞ」



P(亜美と響……黒魔道士に飛空艇技師)

P(亜美は音無さんと同じで魔法を複数同時に出すっていう技があるが、さっき音無さんも言っていたとおり、魔法の威力そのものに差があるだろう)

P(亜美が簡単に音無さんより優位に立てるとは思えないが……)

P(でも亜美のことだ、何か秘策があるのかもしれない)

P(響は足技メインの格闘術だけど、速さはともかく攻撃力はそこまで高くなかったはず)

P(ただ、親衛隊との戦いで響が使っていたあのよくわからない技のポテンシャルが未知数だ)

P(もしかしたら、もしかするのか……?)



亜美「そんじゃひびきん、プランBでいくよっ!」

響「いや、だからそんな打ち合わせしてないってば!」

タタタ…

律子「あっ、こら! 待ちなさい!」

貴音「……あの二人ならば、もしかしたら……」

律子「えっ……?」

177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:53:33.03 ID:91IMrmsjO

亜美「へへん! ピヨちゃんの魔法なんてこわくないもんねっ!」



小鳥「そう言っていられるのも今のうちだけよ……?」



亜美「えっ、そうなの? じゃあ今のうちにイッパイ言っとかなきゃ!」

亜美「ピヨちゃんなんてこわくないピヨちゃんなんてこわくないピヨちゃんなんてこわくない……」

亜美「ホラ、ひびきんも!」

響「えっ? じ、自分はいいよ」



小鳥「すぐに生意気な口を聞けないようにしてあげるわ……」



亜美「……ひびきん、まずは亜美から行くよ!」

響「わかった。フォローは任せて!」

178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:54:49.72 ID:91IMrmsjO

小鳥「……右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



亜美「……右手にファイガ、左手にファイガ……」ボッ



律子「フレアとファイガじゃ、どっちが強いかなんて明白じゃない……!」



亜美「追加でもういっちょファイガ……!」ボッ



美希「三つ目……。でも、それでもまだ小鳥にはゼンゼン敵わないの……」



小鳥「合わせて、メガフレア!」バッ



亜美「くらえ〜〜!! 鳳翼天翔〜〜っ!」バッ



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!


ゴオオオオオッ!!



ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!

179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:56:32.03 ID:91IMrmsjO

小鳥「そんなレベルの魔法で私と張り合うつもり?」

小鳥「正直、負ける気がしないわね」ボゥ



亜美「くっ……そぅ……!」ヨロッ

響「ううっ……!」ヨロッ

響(め、めちゃくちゃな強さだぞ……)

響(これ、本当にどうにかできるのか……?)



美希「亜美、響、回復するの!」ダッ



小鳥「……フレア」バッ


ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!


美希「あぅ……!」

ドサッ

千早「美希!」



小鳥「これは私と二人の勝負よ。水を差すような真似はやめてね?」

小鳥「さあ、続けましょう」



律子「こっちは行動すらままならない……。こんなのどうしろっていうの……」

貴音「……大丈夫です。二人を信じましょう」

貴音「それに、わたくしには一筋の光明が確かに見えました」

律子「貴音……?」

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:58:23.45 ID:91IMrmsjO

亜美「へ……へへっ、ピヨちゃんもなかなかやるね……」

亜美「でも、亜美の方がもっともっとスゴイってこと、教えたげるかんねっ……!」バッ

響(亜美、強がりなのか……?)

響(でも、そうだな。雰囲気で負けたらダメな気がする)

響(強気でいかなきゃ!)

響「亜美、まだ行ける?」

亜美「トーゼン! 亜美の実力はこんなもんじゃないんだよ!」

響「次またダメだったら、今度は自分が行くからね!」

亜美「うん、わかったよ」

亜美「あとさっきはサンキュ、ひびきん」

響「当たり前のことをしただけだぞ。だって自分たちはチームなんだから!」

亜美「……へへ、そーだったね!」




小鳥「右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



亜美「ブリザガ…………×3!」コオォ



小鳥「……メガフレア!」バッ




亜美「オーロラ・エクスキューションッ!!」バッ

キラキラキラ…!

コオオォォ…!!



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!

181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:00:40.42 ID:91IMrmsjO

亜美「……く……ぬぬぅ…………」ヨロッ

響「だ……大丈夫か、亜美……」ヨロッ

亜美「ぜ、ゼンゼンヘーキだよー! 亜美はまだまだ元気モリモリだかんね!」



P(どういうことだ……?)

P(魔法防御が高い貴音ですら一撃を耐えるのに苦労していたのに、亜美と響はもう音無さんのメガフレア二発分を耐えている……)

P(二人もそれだけ強くなったってことなのか……?)



千早「……美希、今の見えた?」

美希「うん、ギリギリ。びっくりなの」

律子「……なるほど、貴音が見えた光明って『これ』のことだったのね」

貴音「ええ……」



貴音(……流石は響、765プロ最速です)

貴音(まさか、小鳥嬢のめがふれあの速度に反応するとは……)

182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:02:44.53 ID:91IMrmsjO

小鳥(……確かに見えたわ)

小鳥(私がメガフレアを撃つタイミングに合わせて響ちゃんが亜美ちゃんを抱えて跳んだのを)

小鳥(完全に回避できたわけじゃないみたいだけど、直撃は外されたってところかしら)

小鳥(それを狙ってやったんだとしたら、恐るべき反射神経、瞬発力……)

小鳥(………)




響「……約束だ、亜美。次は自分が行く」スクッ

亜美「任せたぜぃひびきん……。とっておきの技、期待してるよ!」

響「……うん」

響(はっきり言ってピヨ子のメガフレアに対抗できるか自信はない)

響(でも、やらなくちゃ……!)



小鳥(響ちゃんの技って……)

小鳥(確かプリンちゃんたち相手に使ってたナントカ砲っていうやつだったわよね)

小鳥(なんであんなことができるようになったかは謎だけど、そこまで強そうな感じはなかった)

183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:05:09.36 ID:91IMrmsjO

響(もしピヨ子のメガフレアに負けちゃったら、その時は……)

響(ナンクル砲を撃ったあとじゃ素早く動けないし、そうなると直撃を避けるのは不可能になる……)

響(せめて亜美だけでも安全なところに逃したいけど……)

響(……ダメだ。考えがまとまらない)

響(……あ〜もうっ! ごちゃごちゃ考えるのはやっぱり自分には合わないぞ)

響(負けちゃったらその時また考えればいいんだ!)



響「来い、ピヨ子!!」




小鳥「………」



小鳥「……右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



響「………」スッ



律子「響が構えた……けど、何をするつもり? 魔法は使えないはずだし……」

美希「………」

貴音(響……)

千早(我那覇さんは、きっとあの時身につけた技を使うつもりなのね)

千早(あの技がどれだけの威力なのか。この戦いの行く末はそれに懸かっている気がする……)




小鳥「…………合わせて、メガフレア!!」バッ



ブゥゥゥン…



響「…………ナンクル砲ッ!!」


ピカッーー!


キュイイイイイイイン…




小鳥(…………え!?)



響「はあッ!!」バッ




ズドオオオオオオオオオオオンッッ!!!

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:07:02.27 ID:91IMrmsjO

小鳥「………」



響「………」



律子「……!?」



律子「響の技が……」

美希「小鳥のメガフレアとカンペキに相打ちなの……!」

千早「すごい、我那覇さん……!」

貴音「…………流石です、響」ニコッ




響「あ、あれ…………?」



亜美「ひびきんかっけえええええ! なに今の技ー!?」

響「ウソ……? ナンクル砲ってこんなに強かったのか……?」ボソッ

亜美「……ひびきん?」

響「あ……う、ううん! なんでもないぞ!」

響「ふ、ふふーん! 見たかピヨ子! これが自分の実力さー!」ビシッ



P(やったな、響……!)


小鳥「………」

185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:09:29.49 ID:91IMrmsjO

小鳥(……そっか。考えてみれば、物理攻撃には無敵のあのプリンちゃんたちを何度もノックアウトし続けてきた技だものね)

小鳥(あの驚きようだと、自分でもここまでの威力だと思っていなかったみたい)

小鳥(それと、相殺したという事実もそうだけど、注目すべきは技の発動までの時間)

小鳥(ほとんどタメなしのノータイムだった。それであの威力……)

小鳥(まるで私の万能メガフレアに対抗するためにあるような技ね)

小鳥(思わぬところに伏兵がいたわ)



小鳥(……でも、それでも私には勝てない)

小鳥(どんなに上手く立ち回ったとしても、私には絶対に勝てないのよ)

小鳥(私とみんなには、『根本的な違い』があるんだから……)

186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:40:45.07 ID:91IMrmsjO
ー 次元のはざま ー


春香「……大気満たす力震え、我が腕をして
閃光とならん……!」チャキッ



春香「無双……稲妻突きッ!!」ブンッ



クルーヤ「……聖光爆烈破ッ!!」ブンッ



キラキラキラ…!!

ズドオオオオオオンッ!!!



春香「うぁっ……!」

ズザザザ…!




クルーヤ「……その程度かい?」



春香「……まだまだですっ!」チャキッ

春香「死兆の星の七つの影の……経絡を断つ!」

春香「……北斗、骨砕打ッ!」ブンッ



クルーヤ「……聖光、爆裂破!」ブンッ


キラキラキラ…!

ズドオオオオオオンッ!!!




春香「……うっ……」

ドサッ

187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:42:10.71 ID:91IMrmsjO

クルーヤ「啖呵を切った割にはお粗末だね」

クルーヤ「さっきは確かに君のことを褒めた。ボクは褒めて伸ばす主義だからね」

クルーヤ「けど、この程度だったとは。……ボクは君のことを少し過大評価していたのかもしれないな」



春香「……はぁ、はぁっ……」

春香(……ダメだ、私の剣は全部お父さんの聖光爆裂破に負けちゃう……)

春香(これでも全力なのに……)



クルーヤ「さて、ボクもそんなに時間に余裕があるわけじゃない」

クルーヤ「世界の敵である君には……そろそろ消えてもらおう」チャキッ



春香(ダメ、ここで負けるわけにはいかない……)

春香(ここで倒れちゃったら、なんのためにここまで来たのかわからないよ……!)

春香「……!」チャキッ

188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:43:33.96 ID:91IMrmsjO

クルーヤ「……誰だって死にたくはない」

クルーヤ「志半ばにして果ててしまうことほど無念なことはないのだから」

クルーヤ「でも君の思い通りにはさせない」

クルーヤ「この世界の平穏のために、コトリさんには眠ってもらう」
  


春香「私は……」

春香「絶対に小鳥さんを救ってみせるッ!」チャキッ

春香「命脈は無常にて惜しむるべからず……葬るッ!」

春香「……不動、無明剣ッ!」ブンッ



ゴオオオオオッ…!!



クルーヤ「まだわからないのか……」

クルーヤ「……聖光、爆裂破ッ!」ブンッ


キラキラキラ…!

ズドオオオオオオンッ!!!



春香「…………う……」

…ドサッ



クルーヤ「………」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:45:32.57 ID:91IMrmsjO

春香「…………ぅ……」



クルーヤ「………」

クルーヤ「……ハルカ、君はわがままだ」



春香「…………え……?」



クルーヤ「君がコトリさんを救ったとして、その先には何が待っている?」

クルーヤ「人々はコトリさんを受け入れるだろうか? いや、簡単に受け入れられはしない」

クルーヤ「悪を許したところで、この世界の人々が失ってしまった大切なものは戻ってこないのだから」



春香「!」




クルーヤ「人々の疑念はやがて確執へ変わり、コトリさんは孤独を知り、いずれ再びこの世界に危機が訪れる。悲劇は繰り返される。悪とはそういうものだ」

クルーヤ「たとえコトリさんがどんなに優しくていい人だからって、例外はないんだよ」



春香「…………ち、違う……」



クルーヤ「君は君の想いを叶えるため、世界中の人々を危機に陥れようとしている」

クルーヤ「それをわがままと言わずに何と言う?」



春香「…………そ、それは……」



クルーヤ「ボクは見過ごせない。悲劇を繰り返させやしない」

クルーヤ「自分の娘だからといって……容赦はしない……」チャキッ



春香「く……!」ヨロッ



クルーヤ「聖光爆裂破を三度受けてもまだ立つその精神力は流石だ」

クルーヤ「それだけ君の想いもまた、譲れないってことなんだろう」

クルーヤ「でもそれなら……」

クルーヤ「ボクはそのさらに上をいく想いを剣に乗せるだけだ……!」ゴオオッ…!

190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:47:28.92 ID:91IMrmsjO

春香(今までの技じゃきっとお父さんには勝てない……)

春香(だったら、やってみるしかないよね……!)



春香「はあああああっ……!」ゴゴゴゴ



クルーヤ「!」

クルーヤ「使うつもりなのか……」

クルーヤ「いいよ。君の想いの強さ、見せてごらん」

クルーヤ「…………ハルカ!」チャキッ



春香「……天の願いを胸に刻んで心頭滅却……!」

春香「……聖光、爆裂破ッ!」ブンッ


クルーヤ「聖光、爆裂破!!」ブンッ



キラキラキラキラ…!


ズドドドオオオオオオオオンッ!!!



クルーヤ「………」



春香「…………う……」ガクッ

…ドサッ



クルーヤ「一流の聖騎士は技を一度見ただけで覚えてしまう。確かにそれはそうだ」

クルーヤ「しかし、覚えた技の真価を発揮できなければ、それは何の意味もない」

クルーヤ「君の聖光爆裂破は……」

クルーヤ「君の想いはボクの想いすら超えられない、その程度のものだったってことだ」



春香「………」グッタリ

191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:48:59.53 ID:91IMrmsjO

春香(私の想いは……お父さんの想いすら超えられない……)

春香(わがまま……なのかな……)

春香(そうだよね……。やっぱりそういうことになっちゃうよね……)

春香(ゲームをクリアして私たちがこの世界からいなくなったら、その後はどうなるんだろう)

春香(……ううん、違う。お父さんが言ってるのはきっとそういうことじゃないんだ)

春香(だって、お父さんやこの世界の人たちにとっては、このゲームの世界が全てだから)

春香(だから守りたいものを守って、それを脅かすものと必死で戦うんだよね)

春香(それに対して、私たちは違う。帰るべき場所がこの世界とは別にある)

春香(だからこそ、考え方にすれ違いが生まれちゃうんだ……)

春香(お姉ちゃんが言ってたっけ。『お父さんはお姉ちゃんの目的を邪魔する敵でしかない』って)

春香(あの言葉も、もしかしたら間違っていなかったんじゃ、って思えちゃうよ……)

192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:50:33.16 ID:91IMrmsjO

クルーヤ「……さて」チャキッ

ブンッ!



ズドドドドドオオォォン!!



春香「うあっ……!」

ドサッ



クルーヤ「そろそろ休憩は終わりだ、ハルカ」




春香「……はぁっ、はぁ……!」



クルーヤ「……天の願いを刻んで心頭滅却……」ゴゴゴ



春香「来る……!」チャキッ

春香(もう一度、やってみるしかない……!)ゴゴゴ



クルーヤ・春香「聖光、爆裂破ッ!!」ブンッ



キラキラキラ…!!


ズドドドオオオオオオオオンッ!!!

193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/24(土) 22:27:57.64 ID:9T7P1WuA0
いよいよ終わりが近いな・・・
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:08:15.81 ID:AAdq5sgSO
ー 回想 月の地下渓谷 B9F ー



真美「ぜぇ……ぜぇ……」

真美「ど……どうだ、全力の10倍エスナ……。これが今の真美にできるせいいっぱいだよ……!」

やよい「おねがいしますっ……!」ギュッ




パァァァーー!!



真美「うおっまぶしっ!!」




「……誰のでこがまぶしいですって……!?」




真美「その甘いボイスは!」

やよい「伊織ちゃんっ!!」



伊織「……待たせたわね、スーパー忍者アイドル伊織ちゃんの復活よっ♪」

195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:09:26.09 ID:AAdq5sgSO

真美「……ふぃ〜、なんとかなった〜」

やよい「うー、よかったです〜!」

伊織「………」

やよい「……伊織ちゃん、どうかしたの? まだどこか痛い?」

伊織「ううん、そうじゃないの」

伊織「あんたたちが、私を助けてくれたのよね?」

真美「あーいやいや。真美は当たり前のことしただけなのだよ。そんなのぜーんぜん気にしなくていいから」

真美「ゴージャスセレブプリンとか気にしなくていいからね?」

伊織「私のせいで、迷惑かけてごめんなさい」ペコリ

真美「……あり?」

伊織「それとありがとう。助かったわ」

真美「むぅ……そう素直にお礼言われちゃうと調子狂うな〜」

伊織「ま、ゴージャスセレブプリンくらい帰ったら飽きるほど食べさせてあげるわよ」

真美「よっしゃ!」グッ

やよい「真美、おつかれさま!」

196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:11:46.98 ID:AAdq5sgSO

伊織「……で、状況はどうなってるの? 確か私は響と一緒にいたはずだけど」

真美「うむ。話せば長くなるのじゃが……」

やよい「えっと、かくかくしかじかかなーって」

真美「その言葉ホント便利だよね」



伊織「……そうなのね。響と亜美が……」

真美「で、やよいっちに手伝ってもらっていおりんを治療して今に至るってカンジだね」

真美「あ、そーいえば魔物くんは……」チラッ



魔物「………」グッタリ



真美「魔物くん!?」

タタタ…

197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:13:40.93 ID:AAdq5sgSO

真美「魔物くんしっかり!」ガシッ

魔物「が、ガル……」グッタリ

伊織「なんで魔物が……? やよい、これどういうこと?」

やよい「あのね、まものさんはまものさんなのにまものさんからわたしたちをまもるためにまものさんとたたかってくれて……」

伊織「え、えーと……つまり味方してくれたってことでいいのよね?」

真美「魔物くん、死んじゃダメだ! ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…!

魔物「ガ……グ……ガルル……」

真美「なに……? なんて言ってるの……!?」

やよい「………」

やよい「『ボクはもう、長く生きられない』って……」

真美「そ、そんなのダメっしょ!」

魔物「が、ガル……ガルル……」

やよい「『こんなボクでも、最期に真美ちゃんの役に立ててよかった』って……」

真美「そんな……!」

真美「ダメだ! 目を開けてよ!」

魔物「ガ……ル……」

魔物「」ガクッ




真美「魔物くうううぅぅぅぅぅんッ!!!」

198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:15:30.94 ID:AAdq5sgSO

真美「なんで……! なんでいっちまったんだよ〜!」

真美「メッチャ気のいいヤツだったのに……!」グスッ

伊織「真美……」

やよい「………」

やよい「泣かないで、真美。だいじょーぶだから」

真美「えっ……?」グスッ

伊織「やよい……?」

やよい「……翔太くん、おねがいしますっ!!」バッ


スゥゥゥーー…



翔太「へへ、ようやく僕が活躍できる時が来たんだね!」

翔太「生命をもたらしたる精霊よ……今一度我等がもとに!」

翔太「……レイズ!」


キラキラキラ…! パァァ…!

199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:16:58.01 ID:AAdq5sgSO

魔物「………」

魔物「っ……!」ドクン

伊織「!!」

真美「ま……魔物く〜ん!!」ダキッ

魔物「ガ……ガルル……?」

真美「よかった〜!」

伊織「生きかえっ……た……?」

伊織(……前に貴音が生き返ったって話は聞いていたけど、本当にあったのね、こんな夢みたいな魔法が……)

伊織(そういえば、御手洗翔太ってここまでの冒険で活躍したの見たことがなかったけど、まさかこんな力を持っていたなんて……)





真美「魔物くん、これからも真美のせくちーさを魔物たちに広めてね!」

魔物「ガルッ!」シュタッ

伊織「えっ、まさか真美が泣いてたのってそういう理由なの?」

200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:18:44.20 ID:AAdq5sgSO

翔太「せっかく初の活躍なのに生き返らせたのが魔物って……」

北斗「ドンマイ、としか言えないな……」

冬馬「気にすんなよ翔太、な?」

翔太「僕の存在意義って一体……」ズーン



伊織「………」

伊織「……いいえ、ちゃんとあるわよ、あんたの存在意義」

翔太「えっ?」

伊織「っていうかもう、あんたのその力は私たちの最後の切り札と言っても過言ではないわね」

翔太「だ、だよね! うん、僕もそう思ってたんだよー!」

冬馬「……ちょっと待てよ水瀬、お前まさか最後の戦いで死人が出るとか考えてるのか?」

伊織「…………さあ、どうかしらね」

冬馬「お、おい、マジかよ……」

冬馬「そんなことあり得るのか? 現実の世界じゃないからって、リアルに痛みとかはあるんだぜ? そんな世界で仲間に殺されるかもしれないとか……」

冬馬「実行する方もその可能性を考慮する方も理解できねぇよ……」

真美「いや〜、甘いねぇあまとうは。縄タイムアラベスクってやつだねぇ」

伊織「名は体を表す、ね」

冬馬「確かに甘いものは嫌いじゃねえけどそういうことじゃねえよ!」

冬馬「あとあまとうって呼ぶな!」

201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:20:34.43 ID:AAdq5sgSO

冬馬「ていうか、お前らそこまで複雑なことになってたんだな……」

真美「フクザツ? ゼンゼン単純っしょ?」

真美「だってここ、ゲームの世界だし。真美たちはその登場人物なんだからさ」

真美「ラスボス戦で死んじゃうことだってそりゃーあるわけさ」

やよい「わたしは誰かが死んじゃうの、ほんとならぜったいにいやですけど……」

やよい「でも、翔太くんがいるのでへーきです!」

伊織「……もちろん、誰かを死なせるなんて最優先で忌避すべき事態ではあるけどね」

伊織「天ヶ瀬冬馬。あんたの不安は分かってるわ」

伊織「簡単に人を殺したり、生き返らせたり。そういう事に私たちが慣れを感じちゃうんじゃないかって事よね?」

冬馬「………」

伊織「なんて顔してんのよ。大丈夫に決まってるじゃない」

伊織「私はみんなを信じてるし、小鳥のことも信じてる」

伊織「その信頼さえあれば、何があっても大丈夫なのよ」

伊織「仲間って、そういうものでしょ?」

冬馬「………」

202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:23:30.23 ID:AAdq5sgSO

冬馬「……だったらさ、俺も信じさせてくれねえか」

冬馬「お前たちの絆、俺にも信じさせてくれ」

翔太「僕も信じたい。だって、やよいちゃんたちを見てると本当に何があっても大丈夫なんじゃないかって思うし」

北斗「俺たちも、君たちの仲間に入れてほしいんだ」

真美「おお……」

やよい「みなさん……!」

伊織「………」



伊織「……まったく、何寝ぼけたこと言ってるのかしらね」

伊織「あんたたちは、もうとっくに私たちの仲間よ?」

伊織「あんたたちがいてくれて心強いって思うし、その信頼は私たちの更なる力になるのは間違いないわ」

伊織「私の方こそお願い。私たちのこと、最後までちゃんと信じなさいよね」

冬馬「水瀬……」

翔太「へへっ……!」

北斗「……ありがとう」



真美「思ったんだけどさ、いおりんちょっと急激にデレすぎじゃない?」

伊織「う、うるさいわね! いいでしょ別に!」

やよい「えへへっ、みんな仲良しが一番です!」

伊織「そんな事より、グズグズしてないで出発よ!」

伊織「伊織ちゃんの華麗な活躍はこれからなんだから!」

203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:26:56.60 ID:AAdq5sgSO
ー 次元のはざま ー


春香「…………っく……」

春香「はぁ、はぁっ……」




クルーヤ(……もう何度剣を合わせただろう)

クルーヤ(ハルカの聖光爆裂破はまだまだ未熟で、ボクのそれには到底敵うものではない)

クルーヤ(これだけ何度も打ちのめされれば、肉体に蓄積するダメージも相当な量になる)

クルーヤ(今彼女を奮い立たせているのは、精神力だ)

クルーヤ(コトリさんを救いたいという想いがハルカを支えている)

クルーヤ(もし心が折れてしまえば、いくらここまでしぶとく粘ったハルカと言えど、もう……)



クルーヤ「………」チャキッ



春香「はぁ、はぁっ……!」チャキッ



クルーヤ「君たちが役に立ってくれないのなら、ボクは他に英雄を立てなければならない」



春香「………」



クルーヤ「ボクも暇ではないんだ。この辺で終わりにしようか」



春香「……っ」

春香「はあああああッ……!」

ゴオオオオッ…! 



クルーヤ(……足りない)

クルーヤ(おそらく……)



春香「天の願いを刻んで心頭滅却……!」ゴゴゴ



クルーヤ(……心に迷いがあるんだね)

204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:29:02.59 ID:AAdq5sgSO

春香「聖光……爆裂破ッッ!!」


キラキラキラ…!!



クルーヤ(それでは、ボクには勝てない)



クルーヤ「聖光、爆裂破ッ!!」


キラキラキラ…!!


ズドドドオオオオオオオオンッ!!!




春香「……う……」

ドサッ

春香「………」グッタリ




クルーヤ「………」

クルーヤ(……終わるのか、ハルカ……?)

205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:30:57.59 ID:AAdq5sgSO

春香(私は……)

春香(間違ってたのかな……)

春香(この世界からみんなで帰るためにやってきた事……)

春香(全部、間違ってたのかな……)

春香(今まで出会った人たちは、私たちのやろうとしてた事を知ったらどう思うかな……)

春香(私、この世界のことをどこかで他人事って考えてる……)

春香(私は……)



春香(…………プロデューサーさん……)










…キラーン!



春香「!」

206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:32:33.72 ID:AAdq5sgSO


『……春香。お前はここまでよくやってくれたよ』



春香「クリスタルの首飾りから声が……! プロデューサーさん……!?」



『辛い役目を背負わせてしまってすまない。本当はこんなつもりじゃなかったんだけど……』



春香「いえ、いいんです。プロデューサーさんが私たちのことを考えてくれたのは、とっても嬉しかったですから!」



『春香。お前のやること、進む道に文句を言う人もいるかもしれない。でも、そんなのは本当に些細な問題なんだ』



春香「え……?」



『なぜなら、お前は……』

『天海春香は、どんな時でも笑顔を忘れず前を向いていて、どんな時でも決して諦めることをしない、とっても素晴らしい人間だから』



『俺の、自慢のアイドルだから』



春香「っ……!」

207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:34:34.72 ID:AAdq5sgSO


『誰の意見を気にする必要なんてない。お前はお前の信じた道を行け』

『春香が選んだ道の先は、絶対に光が満ち溢れている。……少なくとも俺はそう信じてるんだ』



春香「プロデューサーさん……」



『さあ、みんなが待ってるぞ』


『「正義よりも正しいことよりも大切なもの」は、今お前と共にある!』




春香「………」



春香「…………はいっ!」

208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:35:49.12 ID:AAdq5sgSO

キラーン!


クルーヤ「!」

クルーヤ(……ハルカのクリスタルが光って……)

クルーヤ(……そうか、これは恐らく彼の仕業だな)

クルーヤ(彼は……)




春香「ううっ……!」ヨロッ

春香「…………はぁ、はぁ……!」ザッ



クルーヤ(……まるで、ハルカたちの守護神のようだ……)

クルーヤ(彼がいる限り、ハルカたちは何度でも立ち上がる……)

クルーヤ(やれやれ……まったく、さすがは未来のハルカの旦那様だね)




クルーヤ「……流石にしぶといね。まだ諦めないのか」



春香「………」

春香「私、ようやくわかったんです」



クルーヤ「ボクの言っていることをようやく理解してくれたのかい?」

クルーヤ「ならば、コトリさんを倒してくれるね?」



春香「はい、倒します。そのためにみんなで頑張ってここまで来ましたから」



春香「……けど、私たちは小鳥さんを救います。……絶対にっ!」

…ザッ



クルーヤ「コトリさんを倒し、救う……」

クルーヤ「そんなことは不可能だ」



春香「不可能なんかじゃありません。きっとできます! 私たちなら!」



クルーヤ「………」



春香「………」



クルーヤ「……君が折れるのは、どうやらもう期待できないみたいだね」



春香「…………はい」

209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:38:48.66 ID:AAdq5sgSO

春香「ひとつ、お父さんに伝えたいことがあるんです」



クルーヤ「……なんだい?」 
 


春香「今まで、ありがとうございました。私、お父さんと出会えて本当に良かったです!」ニコッ



クルーヤ「!」



クルーヤ「……そんな手には乗らない。ボクは心を揺さぶられたくらいで戦意を失ったりはしないさ」チャキッ



春香「そ、そんなつもりはありませんよぅ!」



春香「……ただ、最後にどうしてもそれだけは伝えたかっただけですから」チャキッ

春香「……!」ゴゴゴゴ



クルーヤ「来るか……!」



春香(私の聖光爆裂破はさっきお父さんに負けちゃった)

春香(でも、それならそれ以上に威力を引き上げればいい)

春香(お父さん。お父さんはずっと私の味方でいてくれたんですね)

210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:40:52.18 ID:AAdq5sgSO

春香(聖光爆裂破の威力を引き上げるには……)

春香(奥義として完璧なものにするには……)

春香(そのために必要なものは……)




『それは、明確な意思。決して折れることのない心』





春香「…………誰にも負けないくらい……」




春香「……強い、想いッ……!」

ゴオオオオオオオオオッ…!!





クルーヤ「……!」

クルーヤ(かつてない剣気っ……! これがハルカの……)

クルーヤ「……!」ゴゴゴゴ




春香「私の想いを……全部この剣に注ぎ込みますっ……!」



クルーヤ「来い、ハルカ……!」




春香「……天の願いを胸に刻んで……」



クルーヤ「……心頭滅却……」



春香「聖光……!」



クルーヤ「……爆裂破ッ!!」



キラキラキラキラ…!


ズドドドオオオオオオオオンッ…!!!


211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:46:19.02 ID:AAdq5sgSO


春香「………」グッタリ





クルーヤ「く……」ガクッ

クルーヤ「はぁ、はぁ……」



クルーヤ「…………よく頑張ったね、ハルカ」



クルーヤ「それでいいんだよ」



春香「………」




クルーヤ「周りの何にも影響されずに自分を貫くことは、時にわがままと言われる。けれど、大切なものはいつでも自分の中にあるものなんだ」

クルーヤ「そしてそれは、一般的に正義と言われるものよりも、正しいとされている考え方よりも、はっきりとした道標になる」

クルーヤ「だからハルカ。君は自分の道を行き、自分を貫き通しなさい」

クルーヤ(ボクが出来なかったことを、君が……)


グニャ…


クルーヤ「空間が歪みはじめた……。もう魔法すら維持できなくなってるのか……」

クルーヤ「……時間みたいだね。ボクはもうここを去らなければならない」

クルーヤ「今度こそ正真正銘、さよならだ」


春香「ぅ…………」



クルーヤ「………」

212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:48:07.49 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「……最後に、一つだけ忠告しておこう」

クルーヤ「君はコトリさんを救いたいと言ったけれど、おそらくそれは君たちだけの力では成し遂げられないだろう」

クルーヤ「彼女の優しい心を救いたいのならば……」




春香「……うぅ……」ピクッ



クルーヤ「………」

クルーヤ「……いや、やっぱりそれは君が自分で考えて答えを見つけるんだ」

クルーヤ「お父さんからの、最後の宿題だよ」ニコッ



クルーヤ「……悠久の時を経て、ここに時空を超えよ。我にその扉を開け……!」



クルーヤ「…… デジョン!」バッ



ーーシュンッ



クルーヤ「…………さよなら、ハルカ。愛しい娘」




「……親子の別れは済んだようだな」




クルーヤ「!」



バハムート「……ククッ!」



クルーヤ「………………バハムートか」

213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:50:23.89 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「やれやれ、すっかり油断していたよ」

クルーヤ「ボクたちの戦いをずっと見ていたのかい?」

バハムート「冥府への道中退屈すると思ったのでな。お前の用事が終わるまで待っていたのだ」

クルーヤ「そうか……そういえば君も死んだんだったね」

クルーヤ「ボクも長いこと現世に留まり過ぎた。きっと長い輪廻が待っているんだろうなぁ……」

バハムート「如何に我でも六道輪廻に干渉することは出来ぬ。次に人間界へ生を受けるのは、百年先か、或いは千年先か……」

クルーヤ「はぁ…………。まあ、仕方ないか」



バハムート「しかし、とんだ三文芝居だったな」



クルーヤ「……何がだい?」

バハムート「世界を守るのが自分の信念、か。……クククッ!」

バハムート「惚けているつもりだろうが敢えて言わせてもらう。それはお前の信念などではない」



バハムート「聖騎士となった者が等しく背負う宿命だ」



クルーヤ「………」

214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:52:31.47 ID:AAdq5sgSO

バハムート「クルーヤよ。お前がこれまで世界を守り続けてきたのは、それが自分の意思を差し置いてでも聖騎士として成すべきことであったからだ」

バハムート「だからお前は、生前も死後も、他の全てを棄てて世界を守るため行動してきた」

バハムート「……そう、家族との時間すらも棄ててな」

クルーヤ「………」

バハムート「お前の心は揺れ動いていた。先程の戦いの最中の話ではない。それ以前……お前が生きていた頃、聖騎士として活躍し始めた時から既にだ」

バハムート「もっと正確に言えば、お前の心に迷いが生じたのはお前が家族を持ってからなのであろう。今ならば我にもそれは理解できる」

バハムート「お前は迷っていたのだ。家族への愛と、聖騎士としての宿命との狭間で」

クルーヤ「………」

バハムート「やがてお前は、自分の心を騙すことを思いついた。『世界を救うのは自分の信念だ。自分が望んだことだから、家族やその他のことを犠牲にするのは仕方がないことなのだ』とな」

バハムート「だが、その様に気持ちを誤魔化し続けてきたお前の剣が、純粋で真っ直ぐな想いの剣に勝てるはずもない」

バハムート「お前とハルカの実力の差以前に、戦いの勝敗は火を見るよりも明らかだったというわけだ」

クルーヤ「………」

215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:55:08.57 ID:AAdq5sgSO

バハムート「あの娘も……ハルカもお前と同様に聖騎士だ。世界を背負う義務はあっても悪であるコトリを救って良い道理は無い」

バハムート「世界に破滅を持たらさんとする悪を助けるつもりならば、即ちそれは世界を脅かすということだ。確かにハルカたちは世界の敵というお前の表現は間違っていない」

バハムート「だが、お前は最初から理解していた。ハルカには勝てぬということを」

バハムート「お前は最初から敗けるつもりで、ハルカの聖光爆裂破を完成させるために……ハルカの助けとなるためだけに戦いを挑んだのだ」

バハムート「ハルカたちが世界の敵ならば、それを助けたお前もまた世界の敵、ということになろう」



クルーヤ「………」

クルーヤ「…………ふぅ」

クルーヤ「悔しいけど、概ね君の言うとおりだ。でも一つだけ違うところがある」

クルーヤ「ボクは別に負けるつもりでハルカに戦いを挑んだわけじゃない。もちろんハルカを倒すつもりだった」

バハムート「……ほう?」

クルーヤ「でも……」

クルーヤ「最後に彼女がボクに剣を向けた時、お礼を言って笑ったんだ」

クルーヤ「ボクにはその笑顔がとても哀しく見えてしまって……。『ハルカはどんな風に笑っていたんだっけ』って一瞬考えた」

クルーヤ「あの子の心からの笑顔を思い出した時には、もうボクにはハルカを倒そうとする意思も、世界のためにコトリさんを眠りにつかせようという想いも残っていなかった」

クルーヤ「やっぱりハルカには心から笑っていてほしい、ハルカの願いを叶えてあげたいって、そう思ってしまった」

クルーヤ「その瞬間にボクは聖騎士としての宿命を……今までずっと貫いてきたものを、完全に手放したんだ……」

バハムート「………」

クルーヤ「前言を撤回しなきゃいけないね。ハルカたちは世界の敵なんかじゃない」

クルーヤ「だって彼女たちは、世界の人々だけじゃなく、世界そのものにすら愛されているんだからさ」

バハムート「…………フン、随分と難儀な親子愛よな」

216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:58:15.82 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「ま、でも、悔しいからボクも言わせてもらうよ」

クルーヤ「バハムート、君は一人の女性への愛を貫いたために神である資格を失った。その身勝手な行動は幻獣という一種族を統べる者としてどうなのかな?」

クルーヤ「ボクと同様、君の行動もまた守られるべき摂理というものを無視した行為だ」

バハムート「……何故それを知っている」

クルーヤ「ふふん、ボクの精神波を見くびらないでもらいたいね。君とタカネちゃんのラブラブな戦いは全てお見通しさっ」

バハムート「フン……出歯亀はお互い様、ということか」

バハムート「だが、『我が儘と言われようと大切なものは己の中に在るもの』なのであろう?」

バハムート「先刻お前が独りごちた言葉だぞ」

クルーヤ「うっ……それは……」

バハムート「我は躰の底から湧き上がる衝動に身を委ねただけだ」

バハムート「後悔も罪悪感も無い。在るのは、愛という至上の喜びを知ることができた感謝のみだ」

クルーヤ「……ちぇっ、いい顔ですっかり開き直っちゃって」

217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 18:03:08.83 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「……ねえ、バハムート。変なこと聞くけどいいかな?」

バハムート「……なんだ」

クルーヤ「彼女たちは一体何者なんだろう?」

バハムート「………」

クルーヤ「この世界のほとんど全ての人が彼女たちを支持してるって言ってもいいくらい、今や世界は彼女たちの味方だ。おそらく、魔物でさえも」

クルーヤ「こんなにも他者を魅了する人間には、ボクは今まで出会ったことがない」

クルーヤ「自分の娘なのに変な話なんだけどさ」

バハムート「………」

クルーヤ「本当に、不思議な娘たちだった……」

218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 18:05:06.53 ID:AAdq5sgSO

バハムート「説明は出来ぬ。が、その問いの答えならば我らは既に持ち合わせているのかもしれぬぞ?」

クルーヤ「えっ、そうなのかい?」

バハムート「彼女たちが他者を惹き付ける理由。それは……」

バハムート「彼女たちが、あいどるだからだ」

クルーヤ「!」

バハムート「以前、タカネから聞いたことがある。あいどるとはどういった生態を持つ生物なのかを」

クルーヤ「それで、あいどるってどんな生き物なんだい?」

バハムート「分からぬ」

クルーヤ「…………は?」

バハムート「タカネが話してくれた内容は、我には何一つ理解が及ばなかったのだ」

バハムート「だが、短き時間をタカネと共に過ごし、我は思い至った。あいどるとはつまり、愛すべき存在なのだ、と」

クルーヤ「それって答えになってるのかな……」

バハムート「……さてな」

バハムート「只一つはっきりとしているのは、我もお前もあいどるを愛した、という事実だけだ……」

クルーヤ「うーん、結局何一つわかっていないような……」



バハムート「さて、そろそろ逝くぞ。最早我らは舞台を降りたのだ。これ以上現世に未練を残すのは無粋というものだ」

バハムート「世界の行く末も、コトリのことも……全てはあいどるたち次第であろう」

クルーヤ「……ああ、そうだね」



クルーヤ(ハルカ、リツコ……。キミたちがコトリさんを救えること、地獄の底から願っているよ……)

219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/22(水) 00:53:05.73 ID:riGmT2Lx0
続きはまだかなー
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