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【ガルパン】西「四号対空戦車?」 後期型
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47 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 15:46:39.53 ID:LpreklqI0
アッサム「ふふっ。ダージリンが後輩にそのような酷いニックネームをつけることはあり得ませんわ」
みほ「ですよね。ダージリンさんは仲間想いな優しい方ですから」
ルクリリ「確かに仲間想いなお方だけど、何処かしら抜けてるというか…天然というか変人
ツネッ!
ルクリリ「あいたっ! な、何で今ツネったの!?」ヒリヒリ
ヴェニフーキ「おイタが過ぎますワヨ」シレッ
オレンジペコ「…ダージリン様のモノマネですか?」
ルクリリ「うぇぇ…」ヒリヒリ
アッサム「概ね同意ですが、指導とはいえ鉄拳制裁は如何なものかと」
― もしも、もしもですよ? 私が聖グロの生徒だとしたら、どの様な名前を頂けるのだろうかと思っただけです
― そうね。紅茶に因んで
― "茶番"なんてどうかしら?
― ………。
呼ぶんだなーそれが。
まさに"しょーもない"私の為にあるような名前だ。
― む。
― そうね。あなただったら ――― ベニフウキなんていかがかしら?
― ベニフウキ?
― 漢字で書くと"紅富貴"。アッサムに近い日本の品種よ。
あのやり取りが無かったらベニフウキから転じた"ヴェニフーキ"なんて偽名は誕生しなかった。
そうだとしたら、私は今頃どんな名前をつけられていたのだろうか…。
48 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 15:50:03.12 ID:LpreklqI0
ルクリリ「それで、冷泉さんがオレンジマコと名乗るなら、ペコはどうしようか?」
オレンジマコ「どうもなりません」
沙織「モコはどうかな?」
麻子「ネコがいい」
華「動物ならタコとかいかがでしょう?」
エミ「ゲコ」
ヴェニフーキ「セコで」
みほ「ボコ!」
オレンジ●コ「はいぃ?!」ムカッ
優花里「…オコですね」
ヴェニフーキ「怒ってるフリして実は喜んでます。根っからのマゾっ子でして」
オレンジペコ「まっ…! そんなわけないじゃないですかっ!!」
ヴェニフーキ「はいはい。落ち着いて」ナデナデ
ルクリリ「そそ。短気は損気」クシャクシャ
オレンジマコ「ぁぅ…」フニャ
麻子「まさにネコだな」
華「ふふ。オレンジペコさんも先輩に恵まれていますね」
優花里「思わず嫉妬しちゃいそうです」
オレンジペコ「!」ハッ
ルクリリ「お、赤くなってる」ニシシ
オレンジペコ「なってません!!/////」
アハハハハハハ!
大洗(もとい、あんこうチーム)の皆さんとは身長のことでやたら盛り上がった。
本当はこのまま皆さんと雑談を楽しんでいたかったが、あまり溶け込むとそのうちボロが出るので、名残を惜しみつつ一旦席を外すことにした。
〜
49 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 15:53:24.34 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「そうですね…映画といえば007は面白かったです」
梓「あっ、聞いたことがある! ジェームズ・ボンドだよね!」
オレンジペコ「はい。イギリスの小説が原作のスパイ映画です」
あゆみ「おー! 先輩たちが好きそうだなぁそういうの」
オレンジペコ「アクション系やミリタリー系が好きな方には好まれます」
桂利奈「あれ? 007ってサイボーグのアニメじゃなかったっけ?」
オレンジペコ「えっ?」
紗希「………」ボー
あや「それは009だよ桂利奈ちゃん」
桂利奈「あ、そうだったー!」
アハハハハハハハ!
ペコは今度はウサギさんチームの人たちと雑談をしているようだ。
ちょっとだけ会話を盗み聞きしてみよう。
先輩に囲まれて活動する事が多い彼女にとって、同い年であるウサギさんチームの皆さんは良いお友達だ。
うちのペコをどうかよろしくお願いします。…と、少しだけ先輩面してみる。
50 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 15:56:10.44 ID:LpreklqI0
優季「ねぇーねぇー、007ってイギリスの映画だよね?」
オレンジペコ「はい、イギリス映画です」
優季「ということは聖グロの人たちはみんな知ってるのぉ?」
オレンジペコ「うーん、知ってる人もいればそうでもない人もいますね」
あや「へぇー、そうなんだー」
梓「ちょっと意外かも」
オレンジペコ「題材が題材ですから抵抗のある人もいらっしゃいますからね」
優季「そうなんだー」
あゆみ「あとは濡れ場もあるしねー」
桂利奈「濡れ場って?」
ペコ・梓「ぅ…////」カァァ..
どうやら『007』の話題で盛り上がっているようだ。女子高生にしてはなかなか渋い。
かくいう私も007は過去に観たことがある。
あの時はスパイって凄いな格好良いなー。なんて思っていたけど、そんな私が今では身分偽って他校に潜伏するというスパイさながらな行為をしてるから皮肉な話だよ。
あの時の自分に教えてやりたいな。『現実のスパイはジェームズ・ボンドみたいに格好良くはない』ってね。
他人も自分も疑い騙し、常に正体がバレないか冷や冷やしながら毎日を生きている。
実を言うと今この瞬間もボロが出てしまわないかと、神経をピンピンに張り巡らしている。
だから、架空の物語だとわかっていても、どうしても自分と重ね合わせてしまう。
スパイ映画を楽しめない、数少ない内の一人だ。
51 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 15:58:51.50 ID:LpreklqI0
「まるであなたですね。007」
ヴェニフーキ「彼にしてみれば、私達がやってる事なんて御飯事かと」
「あはは。そう卑屈にならないで下さい」
ヴェニフーキ「…」
もう一人のジェームズ・ボンドこと、GI6部長のグリーンさんが来やってきた。
…ということは他のGI6も近くにいるのだろうかと会場を見回してみたら、三号突撃砲の乗員たちと雑談をしているようだ。
彼女たちは表向きは『小説部』だから話が合うのかもしれない。
ヴェニフーキ「ご用件は?」
グリーン「こういう機会ですから腹の探り合いはナシにして、のんびり雑談でもと思いまして」
ヴェニフーキ「…」
コトッ
グリーン「どうぞ。今回は…というより今回も私の奢りですよ」
ヴェニフーキ「ありがとうございます」
52 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:11:32.10 ID:LpreklqI0
グリーン「…良いですね。戦車道も」
ヴェニフーキ「はい?」
グリーン「今までは隊長の指示の下で情報を集めたりしていたのですが、こうやって自ら参加するのも悪くありません」
ヴェニフーキ「戦車道からは色んなことを学ばされますからね」
グリーン「ええ」
ヴェニフーキ「お嬢様学校でありながら、戦車道にかける各々の情熱は並々ならぬもの。そして戦車道によって家族のような強い結束力が生まれる」
グリーン「全くです。願わくば、もっと早く戦車道と出会いたかった」
ヴェニフーキ「…だから」
グリーン「ん?」
ヴェニフーキ「この中から"裏切り者"を見つけ出すのが、つらいですね」
グリーン「…身内、ですからね」
ヴェニフーキ「これが赤の他人だったらどれだけ良いことか…」
グリーン「我々が手を下す前に名乗り出て頂きたいものですね」
ヴェニフーキ「ダージリン様を叩き落とすような下衆共が簡単に自首するでしょうか」
グリーン「わかりません」
ヴェニフーキ「…」
しばらくグリーンさんと他愛のない話をした。
といっても、やっぱり件の反・聖グロ派や連中に媚びを売る内通者のことばかりだけど。
聖グロに来て、皆と少しずつ交わるようになって、ここが第二の故郷のように感じ始めた。
そして、そんな故郷から"裏切り者"が出る…。
53 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:13:03.95 ID:LpreklqI0
「あの、ヴェニフーキさん…」
ヴェニフーキ「…ん?」
「そ、その…お隣、いいですか?」
ヴェニフーキ「ああ。立ち話も何ですからテーブルに移動しましょう」
沙織「あ、ありがとうございます…!」
グリーン「おっと、では私はここで。長話に付き合って下さってありがとうございます」
ヴェニフーキ「こちらこそ。色々とお話ありがとうございました」
「…」
グリーンさんの次は武部さんがいらっしゃった。
今日は色んな人に話しかけられる。
交流会だからというのもあるかもしれないけど。
54 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:15:41.80 ID:LpreklqI0
沙織「あ、あの…」
ヴェニフーキ「はい。何でしょう?」
沙織「その、聖グロリアーナでの生活は慣れましたか…?」
ヴェニフーキ「ええ。皆様が親切にしてくれるお陰で、打ち解けることが出来ましたよ」
沙織「そ、そうですか。良かった…!」
ヴェニフーキ「もしかして、心配して下さってたのですか?」
沙織「えっ? ええ…その、ちょっと聖グロにはいなかったタイプの人でしたから…」エヘヘ
ヴェニフーキ「聖グロにいないタイプ…?」
沙織「何と言うか…こう、聖グロってお嬢様! って印象がありますよね?」
ヴェニフーキ「ええ」
沙織「その中でヴェニフーキさんは……クールビューティー? っていうのかな?」
ヴェニフーキ「クールビューティー…」
沙織「ノンナさんやナオミさんみたいな冷静沈着な感じで……あっ、ごめんなさい。ノンナさんというのはプラウダ高校の…」
ヴェニフーキ「お二人ともよく知っていますよ。有名な砲手ですですよね」
沙織「はい…!」
ヴェニフーキ「まぁ…確かに最初はアッサム様を含め、皆に怖がられていました」
ヴェニフーキ「けれど、日が経つにつれて少しずつ私に接して下さるようになりました」
沙織「ですよね! ヴェニフーキさん知的だし戦車詳しくて優しいから、皆に頼られるお姉さんって感じですもん!」
ヴェニフーキ「恐縮です」
55 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:28:30.72 ID:LpreklqI0
「ヴェニフーキ様」
ヴェニフーキ「ん…ペコ?」
オレンジペコ「紅茶のおかわりはいかがでしょう?」
ヴェニフーキ「ああ。…武部さんもいかがでしょう?」
沙織「そ、そうですね。お願いします」
オレンジペコ「かしこまりました」コポコポ
沙織「ありがとうペコちゃん」
オレンジペコ「どういたしましてです。…ところで、どんなことをお話されてたのですか?」
沙織「ヴェニフーキさんが転校してから生活に慣れたかな〜ってね」
オレンジペコ「大丈夫ですよ。ヴェニフーキ様は表情こそあまり変えませんが、色々と気を遣って下さるとっても優しい方ですから」
沙織「うん。クールで、その…カッコ良いです…!」
ヴェニフーキ「恐縮です」
ふたりとも持ち上げすぎだ。
気を遣ってるのも"クール"なのも、いらんことを喋ると正体がバレるから自重しているだけ。
自分を偽っているだけなんだ。元の"西絹代"はこの5倍は喋るやかましい女だよ。
オレンジペコ「それにヴェニフーキ様って意外にイタズラ好きですし」
沙織「えっ!? そうなんですか!?」
ヴェニフーキ「誤解です」
オレンジペコ「誤解じゃありませんもん」
ヴェニフーキ「強いて言うならば、誰かさんのポケットにカエルの模型を放り込むくらいです」
オレンジペコ「アレやったのヴェニフーキ様ですかっ!!?」
ヴェニフーキ「いい反応でしたね。しみじみ」
沙織「あはははっ」
オレンジペコ「わ、笑い事ではありません! 本当にビックリしたんですからねっ!」
56 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:32:14.01 ID:LpreklqI0
沙織「あ…そうだ」
ヴェニフーキ「何でしょう?」
沙織「ありがとうございました」ペコリ
ヴェニフーキ「えっ?」
沙織「みぽりんから聞きました。決勝戦のこと」
ヴェニフーキ「ああ…」
オレンジペコ「私も驚きました。あの完全試合はヴェニフーキ様の助言によるものだったなんて…」
沙織「うん。私もビックリだったよ。でもそのお陰で私達優勝できたからね!」
ヴェニフーキ「お役に立てたのでしたら光栄です」
沙織「う、うん…!」
…どうしたんだろう?
急に俯いてしまわれた
ヴェニフーキ「武部さん?」
沙織「ふぁいっ?!」
ヴェニフーキ「もしかして、体調が優れないのですか?」
沙織「い、いえそんなことは…!」アセアセ
ヴェニフーキ「…」
ピタッ
沙織「ひゃうっ!!?」
ヴェニフーキ「…熱は無さそうですね」
沙織「は…はいぃ………」
オレンジペコ「…ヴェニフーキ様」
ヴェニフーキ「ん…?」
その後も皆が皆、雑談に花を咲かせたり料理に舌を打ったりして祝賀会を満喫していた。
一旦距離をおいてた(にも関わらず色んな人に話しかけられる…)私も小腹が空いてきたのでそばにあった『ジェリードイール』という料理を食べてみた。
余談だけど、知波単にいた頃は和食以外の料理を食べることは無く、ここに来て久々に"洋食"とやらを味わう機会を得られた。
当然ながらナイフやフォークの使い方も知らず、テーブルマナーについてはダージリンやアールグレイさん直々の指導の下で身につけた。
『箸を持参してもいいですか?』と言えば『何のために聖グロに行くの…』と呆れられる始末だ。
何のためって、食事をしに行くわけじゃないんだぞ!
57 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:35:14.59 ID:LpreklqI0
ヴェニフーキ「………っぐ…!?」
ローズヒップ「およ? どうされましたの?」
ヴェニフーキ「ぐ………」
ローズヒップ「…ヴェニフーキ様???」
ヴェニフーキ「」
ローズヒップ「げぇっ!? ウナギのゼリー寄せですのっ!!」
ヴェニフーキ「」
『ジェリードイール』が何か知らず興味本位で食べたのがいけなかった…。
口に入れた瞬間、泥臭さと生魚特有の生臭さが広がり、吐き出したい衝動に駆られる。
かといって公衆の面前で吐くわけにもいかんので、必死に飲み込もうとする。
だが、一秒でも早く飲み込もうと噛み砕けば小骨が口内に刺さるし、生臭くてヌルヌルしたゼリーが暴れまわる。
口の中で戦でも始まったような阿鼻叫喚っぷりには思わず涙が出そうになる。
い、一体何なんだこのゲテモノは!!
そしてこんなものを大洗の皆さんに食わすつもりか聖グロは!!!
〜〜〜
〜〜〜
58 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:37:09.30 ID:LpreklqI0
「……フゥ…」
…死ぬかと思った。
持ち前の気合と根性でなんとか奴さんを飲み込んだが、あやうく"素"が出るほど酷い代物だった…。
生まれてこの方様々な料理を食べてきたが、あのような破壊力のある料理は初めてだ。納豆とかクサヤとかの比じゃない。
口の中に清涼剤を詰め込んでようやく持ち直した。…もう当分食べたくない。
ヤツのおかげで気分が悪くなったので、今はこうして会場から離れた場所で風に当たって涼んでいる。
頭が痛い…。
59 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:40:31.05 ID:LpreklqI0
「あっ! ヴェニフーキさん!」
ヴェニフーキ「!」
「あはは…その、姿が見えなかったので探しちゃいました」
ヴェニフーキ「…私を?」
「うん…」
ヴェニフーキ「お心遣い感謝致します。武部さん」
沙織「えへへ…」
会場にいないことを察したのか、武部さんが心配して探してくれた。
こんな私にまで気を遣って下さるなんて、本当に優しい方だ。
彼女を先輩に持つ大洗の1年生は本当に幸せだろうな。
沙織「でも、やっぱり気分悪そうですね…」
ヴェニフーキ「実は先ほど、ジェリードイールという料理を食べたのですが、口に合わなかったようで」
沙織「それって魚の切り身が入ったゼリーみたいなのですか?」
ヴェニフーキ「ええ」
沙織「やっぱり…。みぽりんもそれ食べたら涙目になっちゃって……あっ、みぽりんというのは私達の隊長で…」
ヴェニフーキ「心得ております。西住さんですよね」
沙織「うん。ひと口食べたら白目向いちゃって、ポロポロ涙流しながら必死に飲み込んでました…」アハハ
ヴェニフーキ「心中察します。私も初めて食べた時は気を失いそうでした」
沙織「あはは、そうなんですか」
その初めてというのは、ほんの数分前の話。
誰の仕業か知らんが、何の注意も無しにあんな下手物を場に出しおって。
しかも西住さんまで人柱にしやがって!
訴えられても知らんからな。
60 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:41:56.19 ID:LpreklqI0
沙織「…」
ヴェニフーキ「…」
沙織「すっかり…寒くなりましたね…?」
ヴェニフーキ「そうですね。もうすぐ今年も終わります」
沙織「年が明けたら先輩も引退して、今度は私達が3年になって…」
ヴェニフーキ「ええ」
沙織「ちょっと寂しいなぁ…って」
ヴェニフーキ「…」
そうだ。もうすぐ三年生は卒業してしまう。
お世話になった先輩も、試合でご一緒した他校の方々も。
カチューシャさん、ノンナさん、ケイさん、ナオミさん、まほさん、アッサムさん、
そして、ダージリンも…
寂しいな。
卒業後もどこかで会えないかな…。
61 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:42:59.60 ID:LpreklqI0
沙織「聖グロは来年からはどうされるんですか?」
ヴェニフーキ「三年生が引退されるので、我々の中から隊長と副隊長が選ばれるかと思われます」
沙織「ヴェニフーキさんが隊長じゃないんですか?」
ヴェニフーキ「えっ?」
沙織「あれ? てっきり…」
ヴェニフーキ「どうでしょう」
沙織「私がもしも、聖グロの三年生の人だったら…ヴェニフーキさんを推薦します!」
ヴェニフーキ「私を?」
沙織「ええ。私達に的確な助言をしてくれるほど優れた能力を持ってますし」
ヴェニフーキ「…」
沙織「それに…とっても仲間思いで優しくて、素敵な方ですから…」
ヴェニフーキ「ありがとうございます」
62 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:44:42.07 ID:LpreklqI0
沙織「だけど…どうして…」
ヴェニフーキ「ん?」
沙織「どうして…ヴェニフーキさんは…」
沙織「いつも悲しそうな顔をしてるんですか………?」
ヴェニフーキ「…!」
沙織「…今にも泣き出しそうな…そんな悲しい表情………」
ヴェニフーキ「そう見えますか?」
沙織「うん…」
怯えられたり、心配されたり。
私の顔は皆にはどの様に映っているのだろう…。
63 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:47:02.22 ID:LpreklqI0
ヴェニフーキ「それは恐らく…人それぞれだと思います」
沙織「人それぞれ…?」
ヴェニフーキ「私を見てものすごく怯えた人がいました」
ヴェニフーキ「また別の人は私を見て"間抜け面"と言う」
沙織「間抜けだなんてそんな…」
ヴェニフーキ「そして武部さんは悲しそうな顔と仰った」
沙織「…」
ヴェニフーキ「その人の感性が反映されているのかもしれませんね」
沙織「で、でもっ! 私は…ヴェニフーキさん好きですよ! 優しくて仲間思いですし…!」
ヴェニフーキ「私も武部さんのような方は好きです。世界中の人がみんな武部さんのようになればいいと思うほどに」
沙織「!」
決してお世辞なんかじゃない。
本当に世界中の人間が武部さんのようになって欲しい。
そうだったら私はこんな真似をすることも無かった。
きっとダージリンも退学することなく今ごろパーティー会場の中心にいたに違いない。
64 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:47:38.71 ID:LpreklqI0
沙織「あ、あの…、ヴェニフーキさん…」
ヴェニフーキ「何でしょう?」
沙織「………」
ヴェニフーキ「どうされました?」
沙織「その………」
65 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:50:28.94 ID:LpreklqI0
沙織「…好きな人って、いますか……?」
ヴェニフーキ「えっ?」
沙織「き、急に変なこと聞いてごめんなさい…!」
ヴェニフーキ「好きな人…ですか」
沙織「ええ…」
ヴェニフーキ「たくさんいます」
沙織「たくさん……?」
ヴェニフーキ「聖グロの皆や、大洗を始め、お世話になってる人たちですね」
沙織「あのっ! …そ、その……恋愛としての好きな人は?」
ヴェニフーキ「恋愛…?」
沙織「も、もしいないのでしたら…その…」
っ…!
武部さん………!?
66 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:51:34.88 ID:LpreklqI0
沙織「私と、付き合ってください………………!!」
67 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:56:40.91 ID:LpreklqI0
ヴェニフーキ「武部…さん………?」
沙織「…お会いしてそんなに長くはないけど……」
沙織「一目惚れ…でした…」
沙織「ヴェニフーキさんのことが好きです」
どうして………?
どうしてこんな私なんかを…
私には………
68 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 16:59:48.17 ID:LpreklqI0
ヴェニフーキ「………申し訳、ありません…」
沙織「えっ………」
ヴェニフーキ「…私にはもう、心が通じ合う人がいます」
沙織「…………」
ヴェニフーキ「ごめんなさい…」
沙織「………」
沙織「…………そう…だったんですね」
沙織「……私の方こそ……ごめんなさい」
謝らないといけないのは私の方です。
本当に、ごめんなさい。
私にはもう、守らないといけない人がいます。
今こうやって、姿や名前を偽ってここにいるのも、全部その人の為。
だから武部さんのお気持ちに応えることは出来ない。
それでも、こんな愚か者に好意を寄せて下さって、本当にありがとう。
とても嬉しかった………。
〜〜〜
69 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:02:56.25 ID:LpreklqI0
「どうでしたか?」
「…あはは…好きな人がいるって………」
「…そうか…まぁ…他を探そう。沙織…」
「そだね…あははっ……っ…」
「先輩…次がありますよぉ…」
「うん…そうだよ……ね………」
「…ヴェニフーキ
「いっ、いいのいいの!」
離れた場所から武部さんたちの会話が聞こえる。
辛い。
武部さんの想いを踏み躙ったことが辛い…。
私にはもう決めた人がいるから、その人を押し退けて他の誰かを好きになることなんて無い。
だから、武部さんの気持ちに応えることはできなかった…。
武部さんに出来るせめてもの罪滅ぼしとして、私は会場を後にした。
少しでも彼女の心の傷を抉らないように。
私はもう、そこにいるだけで彼女を傷つけてしまうから…。
誰よりも明るくて、誰よりも優しい武部さんの想いを私は抉ってしまった。
私のせいで………
70 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:14:56.82 ID:LpreklqI0
【聖グロリアーナ学生寮 廊下】
ヴェニフーキ「ッぐ………グゥゥ………!」
「ヴェニフーキさん? だ、大丈夫ですの…?」
ヴェニフーキ「ダ…イ…ジョウブ…」
「フラフラですわよ! 何方が見ても異常ですの!」
「早くお医者様を…!」
ヴェニフーキ「……いい…」
「…ですが」
ヴェニフーキ「……しつこいなァ………!」ギロッ
「ひッ!?」
ヴェニフーキ「………私のことなんて……放っといてくれッ!!!」
反・聖グロ派や内通者に対する怒り
武部さんへの罪悪感
ダージリンを助けられないまま時間が経つことへの焦り
姿を偽ってることへの嫌悪、プレッシャー、不安
私という存在への憎悪
色んなものが頭の中へ出ては入ってを繰り返す。
私が壊れたあの日のように頭の中でグチャグチャとかき混ぜられる。
頭が痛い。どうかなってしまいそうだ……。
あの時は薬を飲んで誤魔化していたけれど、ダージリンと約束したからもう薬は無い。
だからひたすら耐えるしかない………。
だけど、今日はもう頑張れそうにない。
だから休もう…。
ベッドに入って…ダージリンに電話して
「おやすみなさい」って言って…
そして…そして…そのまま眠りにつこう。
そうすれば明日からまた…きっと、頑張れるから………。
早く…ダージリンに会いたい…
ダージリン………
71 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:16:11.08 ID:LpreklqI0
『--様です』
部屋へ戻る途中、誰かの話し声が聞こえた。
そしてその人は"ヴェニフーキ"と呼んだ気がする…。
誰か私の事でも話しているのか?
ここへ来てからと言うもの、私は揉め事ばかり起こしてきたし、皆からの評価は散々だろう…。
本当ならもうこれ以上余計なことを考えずにいたかった。
だけど、私の名前を出されたせいで会話の内容が気になってしまった。浅ましい…。
だから、その会話に聞き耳を立てた。
そして、
72 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:17:15.72 ID:LpreklqI0
「はい…アッサム様ではなく…ヴェニフーキ様です」
「そうです。ブラックプリンスを導入すると提案した方です」
「…いえいえ。こちらこそ」
オレンジペコ「ええ。OG会の皆様にはこれからも…えへへ………」
見つけたよ。内通者。
73 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:20:24.08 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「ええ。この事は誰にも…はい…」
オレンジペコ「ですので…どうか、よろしくお願いします」
オレンジペコ「…はい。私の方からも…」
オレンジペコ「ええ。クルセイダー会やマチルダ会の皆様にもよろしくお伝え下さい」
オレンジペコ「…では、失礼します」
ヴェニフーキ「…そういうことだったんだね………」
74 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:24:27.70 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「ひッ!!?」
ヴェニフーキ「…やっと見つけた…"内通者"……」
オレンジペコ「べ、ヴェニフーキ様…!?」
ヴェニフーキ「…OG会の人、何て言ってた………?」
オレンジペコ「ち、違う…違うんです…は、放してください!」
ヴェニフーキ「私の事…何と言った?」
オレンジペコ「…やめて…放して…!!」
ヴェニフーキ「何て、報告した…?」
オレンジペコ「だ、大丈夫ですっ! お、OG会の方……怒ってませんでしたので……ですから…!」
西/ヴェニフーキ「…"ペコ太郎"」
75 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:29:00.66 ID:LpreklqI0
― ペコ太郎があまりに面白くてついつい
― ぺ、ペコ太郎…
― あはは。他にもラーメンペコとかペコ煎餅とかペコ饅頭とかクールペコとか
― ラーメンペコ…美味しそうね
― ダージリン様も悪ノリしないで下さい
― あはは。ペコさんのあだ名は色々浮かび上がるので、また面白いの出来上がったら発表しますぞ
― 結構です。西さんが名前を悪用するなら私も悪用しますもんね
― あはは。どんなのが出来るか楽しみですなぁ。"絹おねーちゃん"とか大歓迎ですぞ!
― 呼 び ま せ ん
オレンジペコ「えっ………」
西「信じてたのに………」
オレンジペコ「っ!!」
西「…アッサムさんか、他の人だって思ってた…」
西「ペコ太郎は、絶対ありえないって思ってた……」
西「OG会と共謀して、ダージリンを追い出したのは別の誰かだって」
オレンジペコ「う、うそ…うそ…そんな………!」
あの時と同じ。
病院でペコに牙を剥くことから始まって、
聖グロでペコに牙を剥いて終わる………
76 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:30:43.98 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「違うんです…ヴェニフーキ様、ヴェニフーキ様! 私は…!」
西「…裏切り者め………」
オレンジペコ「お、お願いです…信じてください………!」
西「どう信じろっていうのさ…私やダージリンを裏切ったあんたを……」
オレンジペコ「ち、ちがうんです! ヴェニフーキさま…私は…そんな」
西「あの時のこと、覚えてるな…?」
オレンジペコ「あのとき…?」
西「病室で、ダージリンが退学したって教えてくれた日」
オレンジペコ「!!!」
77 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:33:02.36 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「ヴェニフーキさま? …えっ…えぇぇぇぇぇ!!!?」
西「もう私が"ヴェニフーキじゃない"って、わかってるはずだよね…?」
オレンジペコ「うそ……うそ………き、絹代さま……!?」
西「…」
オレンジペコ「……ぁ…ぁ……いやぁぁぁ……!」
西「どうしても許せなかった…ダージリンを"潰した"OG会が……」
西「そしてそいつらに尻尾振るクズが」
西「だから、誰が犯人なのか突き止めたかった」
オレンジペコ「違うんです…これには……わっ、私は……!」
西「聖グロに来て、OG会と繋がる"内通者"を探した」
西「そしたら」
西「あんただった…」
78 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:38:27.94 ID:LpreklqI0
聖グロ内部に裏切り者がいるんだから、犯人は私と関わる聖グロの誰か。
そんなことは最初からわかってた。わかっていたさ…。
一日でも早く裏切り者を捕まえたいと思う一方で
その日が来ないことを願った。
こんな私に親身に接してくれた人を、心の底から憎む日が来るのを。
それが嫌だったから、なるべく聖グロの人たちと距離を置こうとした。
無愛想で根暗で無機質な雰囲気を纏って誰も寄せ付けないようにした。
そうすれば誰が裏切り者だったとしても私は容赦しなくても済むから。
なのに、皆は私を案じて世話を焼く。部外者なのに。偽物の転校生なのに。
だからいつか、その日が来ることが怖かった。
私なんかにお節介を焼く優しい人を私は攻撃しないといけないから。
でも…
よりにもよってペコ、あんたなの………?
79 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:39:39.37 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「ま、待って絹代さm
西「来るなッ!!」
オレンジペコ「っ!!」
オレンジペコ「…き、聞いてください…お願い……!」
西「聞いたところでどう信じろって言うんだ?」
オレンジペコ「っ…!」
西「何を言ってももう無理。あんたのことなんて信用できない」
オレンジペコ「そ……そんな………」
西「私達があんたに何した………」
西「私達に何の恨みがあるって言うんだッ!!!」
80 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:41:27.02 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「お、お願いします!! 何でもしますからっ!!」
西「じゃぁ、もう私の前に現れないで」
オレンジペコ「えっ………」
西「あんたのせいで私もダージリンも死ぬほど苦しんだ」
オレンジペコ「そんな…!」
西「もうあんたの顔なんて見たくない……吐き気がする」
西「…だから、消えてくれ」
妹のように可愛がっていたペコも、今では嬲り殺してやりたいほど憎い。
どうやったらこの女を少しでも傷つける事は出来るか、どうすれば最大級に苦しめることは出来るか。
私やダージリンが味わった苦痛を、どうやったらこの女に刻み込めるか。
脳裏に浮かぶのはそればかり。
81 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:42:45.06 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「…ヒッグ…ゥッ………」
西「あんたは良いさ。そうやって泣けばいい…」
西「そしたらOG会が助けてくれる」
オレンジペコ「……ひどいよ……絹代様…︙…」
西「あんたの大嫌いな私も"退学"する。ダージリンみたいに」
オレンジペコ「…そんなこと…言わないでよ………」
西「OG会に媚びてる限り、あんたを責める人はいない」
西「だから、あんたは
オレンジペコ「私のこと何も知らないのにッ!!!」
82 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:43:49.59 ID:LpreklqI0
西「なんだと?」ギロッ
オレンジペコ「ッ! …わ、私だって好きでこんな事やってませんっ!!!」
オレンジペコ「大好きなダージリン様や絹代様をこんな目に遭わせて!! それでも平然といろなんて言われて!!」
オレンジペコ「でも逆らったら何もかもオシマイだからずっと!!!」
西「なに…?」
オレンジペコ「………ずっと………皆にウソついてた…………」
あれ?
83 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:45:26.82 ID:LpreklqI0
西「………は???」
オレンジペコ「私が……OG会に逆らったら………」
オレンジペコ「…お家が……壊れちゃうから………」
…あれ?
オレンジペコ「……OG会には逆らえない……絶対……」
オレンジペコ「…そんなことしたら……お父さんの会社、潰されちゃう…」
西「…」
オレンジペコ「そしたら…学校にも行けなくなるし…生活も出来なくなっちゃう………」
………あれ?
84 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:46:33.53 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「だから…」
西「自業自得。クズに手を貸せばそいつもクズだ」
オレンジペコ「だから………」
オレンジペコ「あの時、 "助けて" って」
西「………」
オレンジペコ「……でも…もう無理だよね………ごめんなさい………」
オレンジペコ「さようなら。絹代さん。…お世話になりました………」
85 :
◆MY38Kbh4q6
[saga !red_res]:2017/10/22(日) 17:50:32.29 ID:LpreklqI0
あれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれ????????
86 :
◆MY38Kbh4q6
[saga !red_res]:2017/10/22(日) 17:52:32.34 ID:LpreklqI0
西「…待て」
オレンジペコ「…」
西「それ、本当なんだろうね…?」
オレンジペコ「……うん…」
西「…証拠は?」
オレンジペコ「これ…お父さんの会社…」
西「…」
オレンジペコ「OG会が…お父様の会社の株を買い占めて…」
西「…」
オレンジペコ「私が下手なことをすれば、それを暴力団に売却するって…」
オレンジペコ「そしたら生活出来なくなって、学校にもいけないし、家族がバラバラになるって…」
オレンジペコ「だから私…守らなくちゃって……」
西「…その割には随分平然と過ごしていたよね?」
オレンジペコ「"バレたらどうなるかわかるよね?"…って………ううっ………!!」
西「あははははは」
オレンジペコ「…絹代様…?」
もうだめだ。
87 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:54:14.24 ID:LpreklqI0
「あーっはははははははっはっはははははははっはははははっっははははっっはっっははっっはっはははっっははっっははははははははっはっははははっはっはっっはっははっはっっはは!!!!!!!!!!!!!」
「っ!!」
負けたよ負け! 参りましたぁ! 完敗ッ!!
私なんかよりお前たちのほうがずぅーーーーっと邪道だ!!
なんせダージリンを退学にさせただけじゃなく、傍にいたペコにまで片棒を担がせたんだ!!
「き、絹代様!? 落ち着いて下さい!! 落ち着いて!!!!」
当然、本人は嫌がったはずだ! 猛反対した!!
だけど家族を人質にすりゃ嫌ですなんて言えんよなぁ!!?
だから退学してからその日までずーーーっとお前たちの奴隷になった!!
88 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 17:56:51.27 ID:LpreklqI0
「誰か!! 誰かいませんか!! 助けてください!!」
「ペコ…? どうしたの?」
「き、ヴェニフーキ様がぁ…」
「ヴェニフーキさん? ………!!」
しかも悪事がバレぬように何事もなく"平然としてろ"って命令した!!
だから誰ひとりペコがそんなことを抱えてるなんて知らんわけだ!!
ペコが独り苦しんで、誰もそれに気付かず、そしてお前たちは笑い続けるッ!!
羽もぎ取ったスズメを足で転がすように!!
あはははははははははははは!!! ってなァ!!
「なっ! 落ち着いて! ヴェニフーキさん!!」
「ヴェニフーキ!!」
「あはははははははははは!! あーっはっっははははははははっはあっっははっはははははっはっっは!!!!!!!!」
「どうしちゃったんですかヴェニフーキさん?!!!」
「いいからヴェニフーキを押さえて!! 早くッ!!!」
完璧だ! 完璧な邪道だ!!!
お前たち何処で何を食えばそんな邪道になれるんだ?!
教えてくれ!! 同じ邪道"初心者"の私にッ!!!!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
89 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:01:04.43 ID:LpreklqI0
「ぅ……………」
「…目が覚めたようね?」
「…」
「過度の寝不足やストレスが原因で、今まで溜まってた不満が一気に爆発したのよ」
「…」
「聞いた話だと貴女は一人で色々抱え込んでるそうだから、もう少し周りを頼るなりして負担を減らしたほうが良いわ」
「…」
「それじゃ、私は保健室に戻るから、ゆっくり休んで頂戴」
西「………」
ここは………私の部屋?
90 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:04:17.12 ID:LpreklqI0
コンコン
西「…」
『私です。入りますよ…?』
西「…」
頭がボンヤリする…。
私はまたあの時のように発狂して皆に取り押さえられて
また精神安定剤を打たれた。
あの時と全く同じだ…。
……畜生。
91 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:07:33.56 ID:LpreklqI0
ガチャ
西「…」
オレンジペコ「…」
西「…」
オレンジペコ「絹代様…気分、落ち着きました…?」
西「…」
オレンジペコ「…絹代様?」
西「………悪かった」
オレンジペコ「えっ…?」
西「…ペコが、そんな目にあってるなんて知らなかった。………ごめん」
私やダージリンと同じように、いや、私達以上にペコは苦しんでいた。
奴らの言いなりになって、先輩であるダージリンを陥れるしかなかった。
誰にも相談できず、ただ笑顔を偽って罪を背負い続けるしかなかったんだ…。
『私達に強力しろ。でなければお前の家を崩壊させる』
そう脅されて、一高校生ごときにどう抵抗しろという…。
その日からペコは反・聖グロ派に首輪をかけられ、奴らの工作に強制的に参加させられた。
工作が終わってからも黙秘を強いられ、誰にも助けを求められずただ一人、罪を背負い続けた…。
だからあの時、ペコは私のところに来た。
聖グロではなく、外部の人間である私のところに…。
そして、『助けて』って………。
私が心の底から憎んだ"内通者"もまた、私と同じだった。
92 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:12:17.33 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「…許してあげません」
西「…じゃぁもう良いですよ。……一生許してくれなくても…」
オレンジペコ「むぅ…。普段の絹代様だったら"許してくださーい! 何でもしますからッ!"って言うのに…」
腕に打たれた薬のせいで許しを乞う気力も沸かない。
ベッドに仰向けになって、天井を眺めて返事をするので精一杯だ。
西「"普段の絹代様"なんてもう何処にもいない。とうの昔に死んだ」
オレンジペコ「縁起の悪いこと言わないでください…」
西「それに私は許されないことを沢山してきた。今さら許しを請う方がおかしい」
オレンジペコ「そんな事ないですよ…。絹代様は聖グロリアーナや私達の為に一生懸命頑張ってました」
西「憎い奴、気に食わない奴を叩き潰したかっただけ」
オレンジペコ「むぅ。ダージリン様はともかく、絹代様を不幸にさせるはずなんて無いのに…」
西「何故"私"なんですか…」
オレンジペコ「…好きだったからですよ。絹代様のこと…」
西「私には
オレンジペコ「知ってますよ。ダージリン様にゾッコンですもんね」
93 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:17:35.92 ID:LpreklqI0
西「………」
オレンジペコ「だからあのとき、武部さんをお断りしたんですよね?」
西「…だったら」
オレンジペコ「ええ、私は他の人を探します。絹代様なんかよりもず〜っと素敵な人を!」
西「ひどい言われよう…」
オレンジペコ「お互い様です」
西「私に抱きついて言うセリフじゃないですよね。それ」
オレンジペコ「…今だけはこうさせて下さい…じゃないともう頭おかしくなっちゃいます………」
西「…」
私は頭がおかしくなったけど。
本当に死ぬんじゃないかと思うくらいだった。あの時と同じように…。
だけど、ペコは自分の意志で奴らに加担していたわけじゃないと知って
"そうせざるを得ない理由があった"と知って、肩の力…というより身体全体の力が抜けた。
…違うか。精神安定剤の効果だろうな。
いずれにせよ私は憎む相手を失った。
やり場のない怒りはいつの間にか虚無感に変わって私に襲いかかる。
グニャグニャと視界がぼやけ、ベッドにヘナヘナと倒れ込む。
…もう動けない。
そんな私の隣にはどういうわけかペコがいる。
散々傷だらけにしたにもかかわらず、ベッドに仰向けの私に抱きついて顔を埋めている。
…念のため言うと、この子が勝手にへばりついているだけ。
94 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:19:03.94 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「…ダージリン様とは今もお付き合いを?」
西「…ええ」
オレンジペコ「キス、しました…?」
西「………した」
オレンジペコ「…その先も…ですか?」
西「…その先?」
オレンジペコ「その先はその先ですよ」
西「何のことか判らないから答えようが無いです」
オレンジペコ「…オトナな事です」
西「…」
オレンジペコ「そうですか」
西「…まだ何も言ってないですけど?」
オレンジペコ「沈黙は肯定と捉えます」
西「…もうそういう事でいいよ」
95 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:21:41.29 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「…ふふっ。絹代様は色男ですもんね」
西「人を不設楽みたいに言わないで下さい。…あと私は男じゃない」
オレンジペコ「でも男の子みたいなところありますし」
西「どこに男要素があるんですか…」
オレンジペコ「大雑把なところとか」
西「女でも大雑把な人いるじゃないですか。…ルクリリさんとか」
オレンジペコ「ルクリリ様が聞いたら怒りますよ」
西「怒ったら怒り返せばいい」
オレンジペコ「それ、"逆ギレ"って言うんですよ」
西「はは…」
オレンジペコ「あとはボーイッシュなところですとか」
西「…」
オレンジペコ「一年生にも絹代様に好意寄せている人、結構いますしね」
オレンジペコ「密かにファンクラブなんかも出来ちゃってます。ご存知でした?」
西「知らない。…それに、そのファンクラブは"ヴェニフーキ"っていう赤の他人です。私じゃない」
オレンジペコ「ヴェニフーキ様は私にも優しくして下さいました。でも、絹代様は…助平ですね。男の人みたいに」
西「色恋沙汰を覗き見したがる人に言われたくないですねハレンチペコ。…いや、もうスケベコでいいや」
オレンジペコ「むぅ、それ酷いです…」
96 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:23:19.76 ID:LpreklqI0
西「よく似合ってますよ。なにせ私の部屋に盗聴器仕掛けるんですから」
オレンジペコ「ちっ、違います…!」
西「盗聴して何を知りたかったんです?」
オレンジペコ「それは…その…OG会の人から"アイツは怪しいから徹底的に調べ上げろ"って渡されて………」
西「………」
オレンジペコ「で、ですから私はそんなつもりじゃ…!」
西「本当に、それだけなんですかね…」
オレンジペコ「ど、どういう意味ですか?」
西「私の私生活を覗こうとしたかったのでは?」
オレンジペコ「そ、そんなことは…!」
西「…どうだか」
97 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:25:54.42 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「…絹代様、だいぶ変わっちゃいましたね…」
西「こんなこと続けてたら誰だって心病んで性根も腐りますよ」
ペコの言う通りだ。どんどん性格が歪んできているのが自分でもわかる。
あの日、ダージリンが退学させられたと知った日も性格…人格が壊れていると実感したけど、その時以上に壊れてきている…。
オレンジペコ「目つきも悪くなっちゃいましたし、まるで別人です」
西「実際"別人"になってここに来ているわけですからね」
オレンジペコ「…今でも信じられないです。ヴェニフーキ様の正体が絹代様だなんて…」
西「あはははは。ダージリンやアッサムさんも気づかなかった程ですからね」
オレンジペコ「声真似だけでなく変装まで特技になっちゃったんですか…」
西「この変装は私がやったんじゃない。アールグレイさん」
オレンジペコ「そうなんですか」
98 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:26:43.99 ID:LpreklqI0
西「…で」
オレンジペコ「で…?」
西「ペコ太郎に首輪はめた畜生連中について」
オレンジペコ「えっと…それは………」
そう。ペコがどういう意図で加担していたにせよ、"内通者"として奴らとは繋がっている。
だからペコから奴らの情報を引き出して、それをアールグレイさんに伝えれば私の役目は終わる………。
「なるほど。あなたがウワサの"ヴェニフーキ"ね」
………はずだった。
99 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:32:46.14 ID:LpreklqI0
「初めまして転校生さん。我が校での学園生活は充実しているかしら?」
西「………」
オレンジペコ「…ぁ…ぁぁぁ………!」
ヴェニフーキ/西「…失礼ですが、どちら様で?」
わざわざ自己紹介なんてしてくれなくともわかる。こいつが"黒幕"だ。
こいつがダージリンを退学させたクズだ。
本来なら飛びかかって喉笛を噛み千切るほど憎い相手だけど、薬が回っているせいで何の感情も沸かない。
こんな状態では意味が無いかもしれないけど、一応"ヴェニフーキ"としてお相手する。
起き上がろうともせず、ベッドに仰向けになったまま。
「あら。OGの顔を知らないなんて残念ね…」
ヴェニフーキ「一言にOGと言えど、大勢いらっしゃいますので」
OG「仰る通り。でも、自己紹介の必要は無さそうね」
ヴェニフーキ「…?」
OG「ご苦労様。オレンジペコ」
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/22(日) 18:34:48.62 ID:2BqPjJ2SO
ハッキョーセッ☆
101 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:34:48.74 ID:LpreklqI0
オレンジペコ「はい………!」
ヴェニフーキ「ペコ?」
オレンジペコ「………」
OG「感謝するわオレンジペコ。あなたのお陰でまた一人、不良生徒を見つけることが出来た」
ヴェニフーキ「…」
OG「私、見てしまったわ。自室に後輩を呼び出して淫らな行為をするあなたを」
ヴェニフーキ「…」
OG「オレンジペコ、彼女に何をされたの?」
オレンジペコ「………押さえ付けられて…そのまま………服を………」
ヴェニフーキ「………」
OG「そう。可哀想に…。もういいわよ。彼女には素行不良として本日付けで学園を去ってもらうから、あなたは心配しなくても良いのよ?」
オレンジペコ「………はい………安心です………」
ヴェニフーキ「………」
102 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:37:07.32 ID:LpreklqI0
OG「そういうことだから。出ていってもらうわ」
ヴェニフーキ「…嫌だと言ったら?」
OG「嫌とは言わせないわよ?」
ヴェニフーキ「生憎、今は起き上がる気力すらありませんので」
OG「その点なら心配ないわ」
ヴェニフーキ「?」
ザッ....
黒服「…」
ヴェニフーキ「力づく…と?」
OG「手荒な真似はしたくないけれど、あなたがどうしてもと言うのであれば…ねぇ?」
ヴェニフーキ「………わかりました」
OG「話が早くて助かるわ。なら速やかに
ヴェニフーキ「ただ…」
OG「なに?」
103 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:40:57.00 ID:LpreklqI0
ヴェニフーキ「先日、アッサム様に私物を没収されてしまったので、それを回収したいです」
OG「私物?」
ヴェニフーキ「パソコンや携帯電話を使う関係で、コンセントが1つでは足りず、増設するために買ったものです」
OG「あら? この部屋にはパソコンなんて無いわよ?」
ヴェニフーキ「"夜更かしをするな"という理由でアッサム様に没収されました。もっともパソコンは学校支給なので問題ありませんが」
OG「良いわ。それはどこにあるのかしら?」
ヴェニフーキ「隊長室です」
OG「なら隊長室に案内してくれるかしら。部外者さん」
ヴェニフーキ「…」
こんなヤツのために体を動かすのは面倒くさい。
だけど、ここで動かないと、もうこのクズを捕らえられない。
幸か不幸か、少しずつ薬が切れてきている。
104 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/22(日) 18:45:31.70 ID:LpreklqI0
【聖グロ 隊長室】
ヴェニフーキ「…」
OG「見つかったかしら?」
ヴェニフーキ「いえ。アッサム様は用心深いので、すぐ見つかるような場所には置かないはずです」
OG「関係ないわ。さっさと探しなさい」
ヴェニフーキ「…」チラッ
OG「聞いているの?」
反・聖グロ派の女は露骨に苛立ちを見せる。
早くしないと後ろにいる無駄にがっしりした体格の取り巻きたちにつまみ出されそうだ。
かといって、さっさと回収して撤収というわけにもいかない…。
ヴェニフーキ「失礼。時計があったのでその近くにあると思ったのですが…ん?」
OG「何かしら?」
ヴェニフーキ「この時計、日付が12月8日のまま止まっていますね」
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/22(日) 23:37:13.67 ID:X3GvB3vzo
お前まだこれ続けるのか……
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/22(日) 23:49:09.67 ID:dWgcrR5uO
待ってたんだ続けてくれ
107 :
◆UYlhnKrxEE
[saga]:2017/10/23(月) 00:01:21.25 ID:aelQPEwX0
待ってた!
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/23(月) 01:52:20.92 ID:tp6vXCjQ0
よかった、結末気になってたんだよ。
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/25(水) 11:46:31.84 ID:UNsrq7Z+0
乙
かなり話が進んでてなにより
桜花のときもそうだけど、赤文字は本当にびっくりするw
110 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 10:47:31.24 ID:9R9XbWYA0
OG「それは困ったわねぇ? ……」チラッ
オレンジペコ「ぅ!」ビクッ
ヴェニフーキ「…」
オレンジペコ「…私が…時計…なおします……」
ヴェニフーキ「申し訳ない」
オレンジペコ「………あれ…?」
OG「どうしたのかしら? オレンジペコ」
オレンジペコ「あの…時計、別に壊れて
ヴェニフーキ「珍しいですね」
OG「は?」
ヴェニフーキ「山が見えますね。…今まで洋上にいたので、見るのは久々です」
オレンジペコ「はい…?」
ヴェニフーキ「結構高い山ですね。玉山でしょうか?」
オレンジペコ「あの…玉山って台湾の山では…?」
ヴェニフーキ「そうでしたっけ。何にせよ一度、登ってみたいですね」
オレンジペコ「はぁ…」
OG「私は早くしろと言ったけど?」
オレンジペコ「ひっ!! ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!!!」
ヴェニフーキ「失礼」
OGの女は誰が見てもわかるほど苛立っている。
聖グロの卒業生とは思えない短気で下品な奴だ。
111 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 10:49:00.82 ID:9R9XbWYA0
ヴェニフーキ「…っと、見つかりました」
OG「鈍いわね。探しもの一つにどれだけ時間かけるのかしら」
OG「それに、コンセントのタップなんて幾らでも手に入るものよ」
ヴェニフーキ「すみません。これが一番使いやすかったので」
OG「あっそ」
ヴェニフーキ「…ああ。一つ、質問よろしいですか?」
OG「自分の立場をわきまえているのかしら?」
オレンジペコ「べ、ヴェニフーキ様…」
怯えた目でペコがこちらを伺っている。"あまり刺激を与えないで…"って。
確かに一つ判断を誤れば私じゃなくてペコとペコ家庭が終わってしまう。
かといって、ここでこの女を野放しにするわけにも行くまい…。
112 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 10:50:23.97 ID:9R9XbWYA0
ヴェニフーキ「申し訳ありません。OGの方と話す機会が今まで無かったもので…。あなたも、戦車道を?」
OG「それが何か?」
ヴェニフーキ「実を言うと、ブラックプリンスに続き、新しい戦車の導入を考えていました」
OG「そう」
ヴェニフーキ「…先日、黒森峰という優勝常連校と練習試合をしまして、そこで黒森峰が使っていた強力な戦車…」
ヴェニフーキ「ティーガーI、キングタイガー、ヤークトティーガーといったあたりを」
OG「随分我が校風とはかけ離れたものを選ぶのねぇ?」
ヴェニフーキ「ええ。様式ばかりに拘っていても勝てなければ意味が無いので」
OG「…ほう?」
オレンジペコ「…」
ヴェニフーキ「私は転校してまだ間もないですが、聖グロリアーナの校風には色々不満がありまして」
ヴェニフーキ「古い仕来りに拘るような思考停止ならば、いっそ廃校になれば良いとすら思ったほどです」
オレンジペコ「………」
113 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 10:52:16.01 ID:9R9XbWYA0
OG「あらあら。なかなか面白いことを言うのね? 退学させるには勿体無い」
ヴェニフーキ「ええ、残念です。折角
OG「…とでも言うと思った?」
オレンジペコ「えっ…?」
ヴェニフーキ「…」
OG「あんたのソレがお芝居だなんて最初からお見通しよ?」
オレンジペコ「ぁ………」
OG「私に媚でもすれば退学を免れるなんて、甘いわねぇ」
ヴェニフーキ「ぐっ…」
OG「それに、…残念ね。オレンジペコ?」
オレンジペコ「えっ…!!」
OG「あなたは裏切らないって思っていたけど、その小娘に何か吹き込まれたみたいね?」
オレンジペコ「…ゎ…私は………!」
ギロリと睨みつけてきた。
人間こんなに醜い顔をすることが出来るのかというくらいに。
…まずい。
OG「あなたが私を裏切るのなら、仕方ないわよね?」
オレンジペコ「…ぃゃぁ………!」
ヴェニフーキ「…」
くそ………
ここまでか……………。
114 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 10:52:56.95 ID:9R9XbWYA0
「ええ。本当に仕方ないわね」
115 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 10:54:48.11 ID:9R9XbWYA0
ヴェニフーキ「!」
OG「誰だっ!!」
「良からぬことを企んでるだろうとは思っていたけれど、邪道は他にもいるみたいね?」
OG「その制服………」
「アンタに自己紹介なんてしないわよ。邪道の知り合いなんて私には不要」
OG「あらあら…他校の生徒は随分と礼儀を知らないものねぇ?」
「それはお互い様よ。あえて言っておくなら…」
「すごい数ね?」
OG「なに…?」
OG「なっ!!?」
どうしたんだろう?
先程まで余裕かましてたOGの表情が一変したぞ…?
116 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 10:59:34.56 ID:9R9XbWYA0
オレンジペコ「!! 港がパトカーだらけです…!」
ヴェニフーキ「!」
オレンジペコ「こ、こっちにも船がたくさん来ています!」
「誰かが通報したのでしょうね。…まぁ、簡単に逃げられるとは思わないことね?」
OG「ぐっ…」
サイレンが近づく音が聞こえる。
そうか。アールグレイさん、やってくれたんだね。
だけど…
OG「ふふ…」
「何がおかしいのかしら?」
OG「これで終わりじゃないわよ」
「そう。あなたはもうオシマイでしょうけどね」
「警察だ! 動くな!!」
OG「覚えていなさい。こんな学校、必ず潰してやる………!」
そう言い残して、女とその取り巻きは駆けつけた警官に連行された。
反・聖グロ派との会敵からその終焉まで、本当に呆気ないほど早く終わってしまった。
にしてもあの反・聖グロの女は何ゆえあそこまで聖グロを目の敵にしていたのだろうか…。
そして…
117 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:02:53.28 ID:9R9XbWYA0
「"なんでお前がここに?" って顔してるわね?」
ヴェニフーキ「ええ。全く見当違いな人がいらっしゃったので」
てっきり、アールグレイさんか聖グロの誰かが来たものだと思っていた。
しかし、実際にここにいるのは、そのどちらでもなく、逸見エリカという、全く無関係な人。
彼女は何故ここに来た?
何故このやり取りを知ってたかのようにここへ来た!?
エリカ「…ふん」
ヴェニフーキ「それで、何故こちらに?」
エリカ「…"みほ"よ」
ヴェニフーキ「西住さん…?」
エリカ「ええ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『もしもし…?』
「…私よ。みほ」
『エリカさん…?』
「あなた、聖グロリアーナ女学院にお呼ばれされたそうね?」
『えっ? う、うん。大会の優勝をお祝いしてくれるからって…』
「…フン」
『…でも、どうしてエリカさんがそのことを?』
「聖グロのWebサイトを見たら誰だってわかるわよ」
『そっか…』
118 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:04:26.18 ID:9R9XbWYA0
「そんなことより、あなたに頼みたいことがあるの。聞いてくれるわよね?」
『え、えっ? 頼みたいこと?』
「ええ」
「ヴェニフーキとかいう女、徹底的に監視して頂戴」
『えっ、ヴェニフーキさんを?!』
「あの女がどういうヤツかは、あなたもよく知ってるでしょう?」
『そ、そうだけど…!』
「アイツは何をやらかすかわからない。だから、あの女が少しでも不審な行動を取ったら即座に私に連絡して」
『え、ええ…?!』
「聞こえた?」
『わ、わかった…!』
「それと、この事は誰にも口外はしないこと。大洗はもちろん、聖グロの連中にも」
『う、うん…』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
119 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:06:23.14 ID:9R9XbWYA0
ヴェニフーキ「…」
エリカ「アンタのただならぬ雰囲気から、"訳アリ"なんてのは誰でもわかる」
エリカ「だから、粗相を起こす前にとっちめてやろうってね」
エリカ「偶然にも大洗が聖グロに行くから、みほの手を借りたわけ」
ヴェニフーキ「私をとっちめるられるんですか? ポンコツのあなたに」
エリカ「お黙りなさい。…まあ、テロや殺人でもするのかと思ったけど、違うみたいだからそれは安心したわ」
ヴェニフーキ「…」
こっちは薬打たれるまで反・聖グロに対する怒りで頭が壊れそうだったんですけどね。
それこそ学園艦の一つや二つ爆破出来るんじゃなかろうかってぐらい怒り爆発ですよ。
ああ、また薬が切れて苛々してきた…。
120 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:08:35.13 ID:9R9XbWYA0
エリカ「…それで?」
ヴェニフーキ「は?」ギロッ
エリカ「わ、私にまで牙を向けないでよ」
ヴェニフーキ「失敬。今は気が立ってるので誰かれ構わず喉笛を噛み千切ってしまうかもしれません」
エリカ「相変わらず物騒ね。…で、アンタは一体なんの為に、どういう理由でここに来たの?」
ヴェニフーキ「また同じことを言わせるんですか?」
エリカ「何度でも言ってやるわよ」
ヴェニフーキ「私が
プルルルル プルルルル
エリカ「チッ…」
ヴェニフーキ「…」ピッ
121 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:10:16.04 ID:9R9XbWYA0
アールグレイ『御機嫌よう。ヴェニフーキ』
ヴェニフーキ「…御機嫌よう。部屋は綺麗にしてあります」
アールグレイ『結構。こちらも先ほど、"秋の歌"を聞いて"柱をかじる鼠"の捕獲が無事終了したわ』
ヴェニフーキ「了解です」
この部屋でのやり取りは隊長室に仕掛けた盗聴器によってアールグレイさんも聞いている。
どうやら、"裏切り者"は無事に引き渡されたようで一安心だ。
…で、ここでの電話は"柱をかじる鼠の捕獲"だけでなく、部外者…逸見さんに内情を知られるなって事だろう。
言われなくても教えてやらんから心配しなさるな。
122 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:13:28.35 ID:9R9XbWYA0
アールグレイ『ご名答よ。これはあなたと私だけの秘密』
ヴェニフーキ「心得ております」
アールグレイ『なら話が早いわ。恩人を見送るついでに、港へ来て下さるかしら?』
ヴェニフーキ「港に?」
アールグレイ『ええ。あなたも疲れているでしょうし、ダージリンも会いたがってるわよ』
ヴェニフーキ「そちらにいらっしゃるのですか?」
アールグレイ『いいえ? そろそろ帰宅している頃かしら?』
ヴェニフーキ「…」
アールグレイ『それでは、後でお会いしましょう』
ヴェニフーキ「…」
エリカ「部外者は口出すなって?」
ヴェニフーキ「ええ。当事者だけの話ですから、何人たりとも教える訳にはいきません」
エリカ「……そう。仕方ないわね」
何ゆえ逸見さんが私の事を知りたがるのか知らないが、これは他人に教えられるようなことじゃないし、教えたところで面白いような話でもない。
無関係な人を"当事者"にして面倒事に巻き込んでしまうだけだ。
そうなるくらいなら冷たくあしらって遠ざけた方がずっと良い。
123 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:14:49.21 ID:9R9XbWYA0
エリカ「…さて、それじゃ私はお暇しようかしらね」
ヴェニフーキ「ん?」
エリカ「やることが終わった以上、ここに長居する理由は無いでしょう?」
ヴェニフーキ「何でしたら大洗の祝賀会にゲスト参加されてはいかがです? まだやっているでしょうから」
エリカ「…私達をコテンパンにした相手を祝うパーティーに参加しろと?」
ヴェニフーキ「美味しい料理が沢山ありますよ? ジェリードイールとか」
エリカ「ジェリードイール?」
ヴェニフーキ「ウナギのゼリー寄せとも呼ぶそうです。トロッとしたゼリーと魚の風味が別格ですので、あなたにピッタリですよ」
エリカ「そう。気が向いたら頂こうかしら」
ヴェニフーキ「なるべくお早目に」
エリカ「…まぁそんなことより、出口まで案内しなさい」
ヴェニフーキ「カナヅチだけでなく方向音痴なんですか?」
エリカ「うるさいわよ」
124 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:18:00.43 ID:9R9XbWYA0
オレンジペコ「あ、あの…」
ヴェニフーキ「ん?」
エリカ「アンタまだいたの?」
オレンジペコ「ずっといましたよ…」
ヴェニフーキ「申し訳ありません。コレに気を取られて存在を忘れてました」
オレンジペコ「むぅ。ひどいです」
エリカ「コレって何よ失礼ねっ!」
ヴェニフーキ「隊長室にいても怪しまれるでしょうし、一旦会場に戻っては?」
オレンジペコ「そうですね。き…ヴェニフーキ様はどうされるんですか?」
ヴェニフーキ「彼女をつまみ出します」
オレンジペコ「つまみ出す……」
エリカ「あんたホントに失礼ねっ!」ガァァ!!
ヴェニフーキ「はいはい。行きますよ」シレッ
エリカ「ち、ちょっと! 襟を引っ張るなッ!」
オレンジペコ「あはは…。」
そんなわけで逸見さんを港まで送り届けることにした。
突っ慳貪な態度をとってはいるけど、あの時助けに来てくれたことは嬉しかったし、感謝もしてる。
だからもう少し逸見さんには友好的に接した方が良いのかもしれないな。
…と思ったけど、それを本人に言うとつけ上がりそうだからやめておく。
125 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:19:57.78 ID:9R9XbWYA0
【学園艦 甲板】
エリカ「それで?」
ヴェニフーキ「はい?」
エリカ「アンタはいつまでそのヴェニフーキってヤツを演じてるのよ?」
ヴェニフーキ「何の事でしょう?」
エリカ「アンタの正体は前にわかったでしょう…」
ヴェニフーキ「…どうやら、針と糸が必要みたいで」
エリカ「物騒なこと言わないで頂戴」
ヴェニフーキ「"私"がバレたら困ると前にも言ったはずですが?」
エリカ「そんなこと言ったかしら?」シレッ
ヴェニフーキ「針と糸はいらないか。このまま海に落とせば勝手に沈むでしょうし」ガシッ
エリカ「ちょ、ちょっと! は、離しなさいっ!!」
ヴェニフーキ「やれやれ」パッ
エリカ「…まったく。…この周辺には誰もいないから安心しなさい」
ヴェニフーキ「…」
エリカ「…」
西/ヴェニフーキ「こちらが全くと言いたいですね」
エリカ「…言い出しっぺが言うのも何だけど、本当にガラッと雰囲気変わるわね」
西「雰囲気だけですよ。姿は何ら変わっておりませんので」
エリカ「これで姿まで変わるものなら戦車道より魔術道でも目指した方が良いわよアンタ…」
126 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:21:44.08 ID:9R9XbWYA0
西「逆にお尋ね申しますが、何ゆえ私のことを執拗に知りたがるんです? 性癖ですか? うわ…」
エリカ「うっさいわねぇ! 何が性癖よ!!」
西「ここまで執拗ですと"そういうの"を疑うのは無理もないかと思いますが?」ヒキッ...
エリカ「うるさいわよ…。あの突撃バカが豹変して聖グロをコテンパンにして、更にはみほにまで白旗を揚げさせた」
西「私は大洗に破れましたけど?」
エリカ「知ってるわよ。けれども、みほの戦車を撃破したのは確かだし、あれは誰が見ても大戦果よ」
西「…」
エリカ「何がどうなればそれ程までに至るのかしらってね」
西「それも前に申し上げた通りですけどね」
― 何がアンタをそこまで強くさせたの?
― まほさんやみほさんと同じ。
― 隊長やみほと?
― 戦わないといけない理由があった。勝たないといけない理由があった。 それだけ。
127 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:23:14.54 ID:9R9XbWYA0
エリカ「"勝たないといけない理由" ねぇ…」
西「尤も、それは私がここに来る以前の話なので、私が今こうしてる理由とは何ら関係ありませんけど」
エリカ「ええ。…それとは別にもう一つ、」
西「ん」
エリカ「…"借り"。ちゃんと返したからね?」
西「………借り?」
エリカ「…ありがと」
西「はい?」
エリカ「…二度は言わないわよ」
西「すみません。よく聞き取れなかったのであります」
エリカ「………ありがと、って言ったのよ」
西「どう致しまして?」
エリカ「なんで疑問形なのよ…」
西「憎まれることはあれど、お礼を言われる事など何一つしておりませんので」
128 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:25:58.42 ID:9R9XbWYA0
エリカ「…一応だけど、あの時アンタは私を助けてくれた」
西「あの時?」
エリカ「あの練習試合よ」
西「はぁ。確かに溺れてるところを助けはしましたね。あのまま死んで貰っても寝覚めが悪いので」
エリカ「…それもだけど、その後よ」
西「何かありましたっけ?」
エリカ「とぼけるのも大概になさい。あの時アンタは…」
西「心得ておりますよ」
エリカ「…」
西「あんな事を言った手前、凋落の運命を辿る人を見過ごすも如何かと思っただけで」
エリカ「そう…」
西「後で闇討ちでもされかねないでしょうから」
エリカ「…そうかもしれないわね。容赦なくアンタの顔面に刃物を突き立てたかもよ? 墓石のように」
西「顔より胸ぐらの方が突き刺さりやすいですよ?」
エリカ「…真顔で物騒なこと言わないでよ」
あの時、私は逸見さんを丸裸にした。
…いや、すっぽんぽんにしたという意味ではなく、彼女の硬い殻の中にある本心を引きずり出した。…同時に私も"本当の姿"を見られてしまったけど。
人を見下す態度も、厭味ったらしい言動も、全ては敬愛する西住まほさんを引き止めるためだった。
大切な人を失わないために、どんな手段を使ってでも繋ぎ止めようとする。逸見さんなりの。
それは私だって同じ。ダージリンを守るために私は私を捨てて、何もかも偽って今ここにいるから…。
129 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:33:55.45 ID:9R9XbWYA0
西「それにしても」
エリカ「ん?」
西「随分と早かったですね。あの場に駆け付けるまで」
エリカ「…ああ。元々学園艦はそう遠くない場所に浮いていたからコレで行けばすぐよ」
西「"コレ"…?」
エリカ「ヘリコプター」
西「…他校の無人機と比べると随分貧相ですな」
エリカ「これは移動用。試合で使うヤツは別にあるわ」
西「ふむ」
逸見さん曰く、ヘリコプター(Fa233と呼ぶらしい)で飛んできたそうだ。
確かに自走砲ならぬ自走"島"こと学園艦の性質上、何処かしらへ行くにはこの手の航空機が便利だろう。
知波単でも導入しようかな? この間試合で使った無人機…一式陸攻を改造すれば人くらいは運べそうだ。
130 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:34:59.74 ID:9R9XbWYA0
エリカ「それじゃ、そろそろ行くわ」
西「お世話になりました」
エリカ「…次の大会、簡単に負けるんじゃないわよ?」
西「ん…」
エリカ「アンタは私が倒す相手よ。忘れないことね」
西「逸見さんも努々西住さんのお尻ばかり追いかけて警察のお世話になりませぬよう」
エリカ「なるわけないでしょーがっ!!」
西「どうだか」シレッ
エリカ「…全く。口だけは達者ねアンタは」
西「お互い様」
エリカ「まぁいいわ。…そうそう」
131 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:38:34.14 ID:9R9XbWYA0
西「ん?」
エリカ「ここに来る途中、プラウダの学園艦を見つけたわよ」
西「プラウダ?」
エリカ「ええ。特にどこかに行く様子も無かったから、恐らく年始に向けてメンテナンス中でしょうけど」
西「もう12月ですし、年始に向けて点検やら郷里に帰る生徒やらの為に停泊しているのでしょうな」
エリカ「そうね。…無人機もだけど、学園艦というのも面倒な代物よねぇ」
西「確かに。泳げないと大変です」
エリカ「余計なお世話よ。…まぁ、アンタもあまり変なことには首を突っ込まないほうが身のためよ? それじゃ」
西「ええ。良いお年を」
ブロロロロロロ........
そう言って逸見さんはヘリコプターに乗って行ってしまった。
…"借りは返した" かぁ…。
私のやった事はお節介だったけど、彼女にとっては転機にでもなったんだろうか。
まぁ、野良犬よろしく誰かれ構わず吠えたりするよりかは良くなった。初めて対面した時は引っ叩いたろかコイツと思ったくらいだったもんなぁ。
そんな事を考えながら、だんだん小さくなっていくヘリコプターを眺める。
西住さん達が乗る対空戦車であのヘリ撃墜したら逸見さんどんな反応するかな? …と、しょうもないことを思い浮かべながら。
………ん?
よく考えてみれば駆け付けたは良いが、あの場にはOGの女だけでなく、それを警護する殿方も複数いた。
警察が来なかったらあんたどーするつもりだったんだ?
警察を出動させたのはアールグレイさんだし、ドヤ顔でやって来て一言二言会話しただけだよな………?
………。
なぁにが "借りは返した(キリッ" だ馬鹿もんがッ!!
今度会ったら覚えておけ! 本当に土佐衛門にしてやるからなァ!!!
132 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:41:05.22 ID:9R9XbWYA0
【港】
「御機嫌よう。身なりは綺麗かしら?」
西「っ!」
アールグレイ「…役目を終えて気が抜けたのかしら?」
西「何も背後から現れることは無いでしょうに。吃驚したのであります」
アールグレイ「はいはい。続きは車の中でしましょう」
西「…かしこまりでございます」
〜〜〜〜
133 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:42:45.08 ID:9R9XbWYA0
アールグレイ「本当に、お疲れ様ね。絹代さん」
西「本当に、疲れましたよ…」
アールグレイ「でも、そのお陰で裏切り者を拘束できた。…なかなかやるわね。見直したわ」
西「偶然ですよ。たまたま向こうからやってきて、たまたま捕まってくれた」
アールグレイ「違うわ。隊長室でのやり取り」
西「…ああ、アレですか」
アールグレイ「12月8日は真珠湾攻撃の日」
アールグレイ「玉山は当時の新高山。つまり"ニイタカヤマノボレ"ね」
アールグレイ「そして最後の戦車のは」
西「"トラトラトラ"ですね。ここまで言えばアールグレイさんでもわかるかなと」
アールグレイ「失礼ね。最初のでわかったわよ」
西「あの時、自室にOGがいらっしゃったので、盗聴器のある隊長室までお連れして」
西「そこで上手いことやり取りすれば何かしら得られるかと思った次第です」
アールグレイ「そして実際に"獲物"を得られたと」
西「仰る通りでございます」
アールグレイ「ふふ。面白かったわよ。なんだかスパイ映画を観ている気分で」
西「観てる人は気が楽で良いですね。私なんか実際にスパイを…」
アールグレイ「冗談よ。拗ねないで」
134 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 11:45:00.37 ID:9R9XbWYA0
アールグレイ「ところで、あれから体調を崩したりはしなかった?」
西「…ええ。ちょっと発狂したぐらいですかね」
アールグレイ「えっ…?」
西「内通者が誰かわかった時に、その子の加担する理由を聞いて」
アールグレイ「…詳しく聞かせてくれるかしら」
アールグレイさんにあれからのことを話した。
内通者の正体がペコだったこと。
そのペコは反・聖グロ派によって強制的に聖グロ弱体化工作の片棒を担がされていたこと。
私が発狂し、また暴れ回ってまた精神安定剤を打たれたこと。
………思い出すだけでまた、腸が煮えくり返りそうだ。
西「…といったところです」
アールグレイ「………」
西「思い出すだけでも発狂しそうですね」
135 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:01:35.84 ID:9R9XbWYA0
アールグレイ「…もう大丈夫よ。裏切り者は駆除したから」
西「そうですね…。やっと私の役目が終わります………」ノビー
アールグレイ「本当に、ありがとう」
西「どういたしまして」
アールグレイ「あとは私が全部やっておくから、あなたはゆっくり休んで頂戴」
西「かしこまりでございます」
こうして、私の"ヴェニフーキ"としての聖グロのスパイ大作戦は無事に幕を閉じた。
長いようで短い聖グロでの学園生活は私に色んなことを教えてくれた。
だけど、全てが解決して、ダージリンが聖グロに帰って、皆が今まで通り生活を送るだろうし
私もまた知波単学園で戦車道を存分に満喫できるだろう。
久々に太陽が眩しく…
アールグレイ「太陽どころか雪降ってるじゃない」
西「…ものの喩えですよ。それより滑って事故起こさないで下さいよ?」
アールグレイ「はいはい」
136 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:03:26.06 ID:9R9XbWYA0
アールグレイ「それより、どうだった?」
西「ん? 何がです?」
アールグレイ「聖グロリアーナでの生活は?」
西「そうですね…。知波単には無いものが沢山ありましたので、良い勉強になりました」
アールグレイ「ふふ。それは良かった」
西「ただ、ジェリードイールとやらはもう二度と食べたくないですけどね」
アールグレイ「げっ、あなたも食べたのね、アレ…」
西「ええ。聖グロに来て辛かったことの五本指に入る出来事でしたよ…」
アールグレイ「5本指?」
西「急な交流試合で朝早く起きなければならなかったことや、GI6の面々に監視されたことやら」
アールグレイ「確かにそれは大変だったわね」
西「全くです」
アールグレイ「アッサムやGI6の皆にはお小言を言っておくべきかしらね」フフッ
西「水責めの刑でお願いします」
137 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:04:12.28 ID:9R9XbWYA0
【ダージリン宅の前】
アールグレイ「さて、奥様の家についたわよ」
西「奥様…良い響きですなあ」シンミリ
アールグレイ「そうね。挙式をするなら呼んで下さいな」フフッ
西「良いのですか?」
アールグレイ「良いのよ?」
西「後輩に先を越される先輩って結構心に来そうですが…」
アールグレイ「お黙りなさい」
西「けけけ」
アールグレイ「…全く。それじゃぁ、ね」
西「ええ。また何かありましたら」
アールグレイ「そうね。じゃぁ、またね。…絹代さん」
ブロロロロロロロロ.....
138 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:05:32.33 ID:9R9XbWYA0
【ダージリンの部屋】
西「ただいま。ダージリン」
ダージリン「お帰りなさい。絹代さん」
西「…ダージリン」ギュッ
ダージリン「ふふっ、甘えん坊さん」
ここに来てようやく渦中の人物である私のダージリンのご登場だ。
今日に至るまで私はずっとダージリンに助けられてきた。
ダージリンがいたから私は頑張れた。
そんなダージリンとは今では愛し愛される関係にまで進展した。
悲しいこと苦しいこと腹立たしいこと色々あったけど、ダージリンと恋人関係になれた事だけは感謝したいな。
…もう絶対ダージリン離さない。
139 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:06:29.48 ID:9R9XbWYA0
西「何というか…またお会いすることが出来て良かったと思っております」
ダージリン「…大袈裟ね。ついこの間会ったばかりよ」
西「そうなんですけど、会う度にこれが最後なんじゃないかなぁって思ってしまうんですよ…あはは…」
ダージリン「…おばか」
西「恐縮です」
ダージリン「まったくもう」
西「えへへ…」クンクン
ダージリン「この子ったら。また私の匂いを嗅いで…」
西「ダージリンの匂い好きですもん」クンクン
ダージリン「あなたの場合、それだけでは済まないでしょう?」
西「…」
ダージリン「助平」
西「むぅ…」
ダージリン「っ………きぬよ…さん………」
西「ダージリンの大事なところ…見たいです……」
私達は本能の求めるにお互いの体を弄んだ。
優しく撫でたり、少し強く摘んだり、舐めたり、指を入れてみたり。
触っても触られても快感物質がドロドロ溢れ出すばかりで、気持ちいいのが欲しくて触り続けた。
体の中に指を入れると指にドロッとしたものが纏わり付いて
体の中に入れられるとぬるぬるした感覚と指の熱が体全体に行き渡る感覚に溺れる。
布団が汚れてしまうとまたまずいので、こぼれないよう舐めてみた。
おしっこの様なしょっぱい味と苦い味がする。美味しくなんかないけど、私の好きな人が興奮している時に漏れ出す好きな味。
だからもっとたくさん欲しい。身体中に塗りたくって全身で味を知りたい。
なので、執拗に舐め続けた。痙攣してもう出てこなくなるまで………。
140 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:13:48.64 ID:9R9XbWYA0
ダージリン「ハァ…ハァ…」
西「……今更…ですが……」
ダージリン「……?」
西「…ダージリンと、こんな風に繋がるとは思ってもいませんでした」
ダージリン「私だって……」
西「…あはは」
ダージリン「…どうしたの?」
西「ダージリンの体の中に指を入れたとき」
ダージリン「うっ…なによ…」
西「すごい勢いで指が締め付けられてて、離してくれなかったんですよね」フフッ
ダージリン「…っ……」
西「ダージリンが私の体を受け入れてくれて嬉しかったです」
ダージリン「あなただって指が千切れそうなくらいだったわよ」
西「ええ。ダージリンの身体も心もみんな全部好きですもん」
ダージリン「…ばか」ギュッ
西「あはははは」
会うたびに契りを結んでいる。結んで結んで簡単には解けないくらい。
だってダージリンいい香りがするし、柔らかいし、その……まぁ、かうばしきこと限りなし。
ダージリンもダージリンで私の身体が興味津々のようで耳に齧り付いたり尻に指を入れたりして私の反応を楽しんでる。……えっち。
141 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:16:19.77 ID:9R9XbWYA0
ダージリン「…ふふっ」
西「ん?」
ダージリン「あなたは私といる時だけは女の子ですものね」
西「む。私は生まれた時からずっと女ですぞ」
ダージリン「どうかしら。あなたってボーイッシュなところがあるからねぇ?」フフッ
西「…ダージリンまでボーイッシュって仰る」
ダージリン「あら? 誰かに言われたの?」
西「ペコ太郎に大雑把で男みたいって」
ダージリン「あらあら」
西「大雑把なのはフグリリさんだけで十分ですよ」
ダージリン「フグリリじゃなくルクリリよ。あの子が聞いたら激怒するからやめなさい」
西「他にも密かにファンクラブ作ってるとか…」
ダージリン「あらあら。それはそれは」
西「…嫉妬してます? <ツネッ!> いだぁっ!!?」
ダージリン「あなたが他の女の子を誑かさないか心配なのよ」
西「む…私はダージリン一筋ですってば」ヒリヒリ
ダージリン「本当に?」
西「ええ」
色々勘違いされそうだけど、私は別に女が好きなんじゃない。ダージリンが好きなんだ。
好きな人が偶然にも同性だっただけ。
だから仮に私がダージリンとお付き合いをしていなかったとして、同性に好意を持たれようがそれに応えようとは思わない。
…まぁ、好意を抱かれるのは嬉しいけれど。
142 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:18:08.02 ID:9R9XbWYA0
プルルルル プルルルル
ダージリン「電話、鳴ってるわよ?」
西「む。またアールグレイさんからですな…」
ダージリン「アールグレイ様?」
西「どうしてあの人はダージリンと一緒にいる時に限って電話するのでしょうかね…」ハァ...
ダージリン「それだけあなたのこと心配しているのよ」
西「私をですか?」
ダージリン「ええ。この前も "絹代さん、疲れてるからそろそろ終わらせないと" って言ってたわ」
西「…」
ピッ
アールグレイ『御機嫌よう。絹代さん』
西「不機嫌よう。おばさん」
ダージリン・アールグレイ「『なっ!!』」
ダージリン「あなたアールグレイ様に何てこと言うの!?」
アールグレイ『全くよ! これでもまだピチピチの10代なんですからねっ!!』
西「…年増」ボソッ
ダージリン「」ギチッ!!
西「おンぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ジタバタ
143 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:20:49.23 ID:9R9XbWYA0
ダージリン「先輩に失礼な態度を取らないの! 怒るわよ?!」
西「も、もう怒っているではありませんかっ!!」ヒリヒリ
ダージリン「もっと怒るわよ!」
西「ええー…」
アールグレイ『電話に出て第一声でケンカ売ってくるところは相変わらずね…』
西「だってだって! ダージリンと一緒にいる時に限って電話かけて来るんですもん!」シクシク
アールグレイ『それは偶然よ』シレッ
西「えー…。それで、ご用件とは何でっしゃろ?」
ダージリン「でっしゃろ…?」
アールグレイ『ん…、大した用事では無いのだけれども』
西「…」
アールグレイ『体調は良くなったかしら…ってね?』
西「? まぁ、今のところは問題ないであります」
アールグレイ『そう。良かったわ』
西「それだけですか?」
アールグレイ『そうよ。それだけ』
西「そうですか…?」
144 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:22:22.70 ID:9R9XbWYA0
アールグレイ『ええ。…この間、あなたが頭痛いだの月のものが来ないだの不調訴えてたから、心配になってたのよ』
西「それはご心配おかけしました」
アールグレイ『ええ。やってる事がやっている事ですもの。実際の諜報部員でも任務終了後にPTSDを発症することだってあるくらいよ?』
西「それはそれは…まぁ、今のところは大丈夫ですよ」
アールグレイ『そう。なら良かったわ』
西「ええ。ご心配かけてすみません」
アールグレイ『そうね。あなたが大丈夫なら問題ないわ。それじゃ、またいつかね』
西「またいつか…か」
アールグレイ『ん?』
西「…………嘘つき」
145 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:23:52.88 ID:9R9XbWYA0
アールグレイ『…!』
西「…ちゃんと、話して下さいよ……」
アールグレイ『………そうね…』ハァ...
電話の向こうから溜息が聞こえる。
私は今の今までずっと神経張り巡らして色んな人を観察してきた。
…だから、港で会ってからあなたの様子がおかしい事だってわかる。
146 :
◆MY38Kbh4q6
[saga]:2017/10/28(土) 12:25:46.80 ID:9R9XbWYA0
アールグレイ『…仕方ないわね。またいつものカフェに行きましょうか』
西「ええ…」
アールグレイ『それじゃぁね』
ツー ツー ツー ツー
西「………」
ダージリン「………絹代さん…?」
西「…一難去ってまた一難…ですね」
ダージリン「えっ…!?」
西「………ごめん。ちょっとアールグレイさんの所に行ってきます」
ダージリン「そう………」
反・聖グロ派とつながる内通者は見つかった。
そして聖グロを裏切ったOGの女は警察に連行された。
これで聖グロに絡みつく脅威が消え去って、ダージリンも復学。
私も西絹代と再び名乗って終劇になれば良かった。
良かったのに。
私の本能が『まだ終わってない』って、ずっと叫び続けていた。
それもそのはず。
ダージリンを強制退学させるべく、聖グロOGの大多数から賛同を勝ち取るような手練が
あんなにもあっさり現れてあっさり逮捕されるはずがない…。
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