【ミリマス】その仕事場は(プロちゃんにとって)タブー

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26 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/10/20(金) 06:35:48.77 ID:BDU4dsSw0

「だから男の人なのにこのお店に……。お兄さんも大変なんですね」

ああだめだ、この子は疑うってことを知らない!

そしてエセ関西人なプロちゃんにすっかり騙された星梨花ちゃんは、
「分かりました!」と頷くと口元にそっと手を当てて。

「……実はさっき、お店の人に言われたんです。挙動不審な二人だから、それとなく注意するようにって」

「えっ、お嬢ちゃんそれホンマ?」

「ホンマです! ……あ、いえ本当です! だから私、それとなくお二人を注意しに」

なるほど。それで星梨花ちゃんから声をかけて来たってワケか。

……って、待った待った。それって「注意」の意味が違くなーい?
きっと店員のそのお姉さんは、「不審者だから近づくな」って意味で星梨花ちゃんに釘を刺したんじゃ?

他所から預かってる人手。それも現役のアイドルなんだから!
おまけに彼女がここにいる理由はテレビ番組の収録だし、何かあれば全てカメラに収まっちゃうワケで。

お店の側からすれば星梨花ちゃんを、それはもう箱入り娘のように大事大事に扱って――ん、カメラ?

「あっ!? カメラ!」

「は、はい? お客様どうしました?」

「な、何でもないです! なんでもなーい……。あ、アニキ、アニキ、ちょっとちょっと!」

私は急いでプロちゃんの腕をひっつかむと星梨花ちゃんから少し距離を取った。
それから内緒話のボリュームで、たった今思い出した問題についての確認をとる。
27 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/10/20(金) 06:36:55.60 ID:BDU4dsSw0

「すっかり忘れてたんだけど、このお店カメラあるんだよね?」

するとプロちゃんは事も無げに、「ああ。場所は知らんが定点と、スタッフが撮影だってしてるハズだ」

「スタッフ!?」

「ほら、あそこで下着見てる客だよ。さっきから星梨花の動きに合わせて自分の立ち位置変えてるだろ?」

言って、近くに立ってた他のお客――ではなくスタッフのことを小さく顎でしゃくって見せる。
そこには確かに一人の女性客がいて、不自然に構えた荷物の位置をしきりに気にしてるように見えた。

……多分今、星梨花ちゃんのことを撮ってるよね?

「それ、マズいじゃん。カメラが狙ってるってことは、茜ちゃんたちもバッチリ収録されてるでしょ?」

「だから"マズい"って俺も言っただろう? 声だって拾われてるかもしれないし、茜、ここからはコソコソ話も厳禁な」

「プロちゃん、その目は本気の目。……じゃ、じゃあじゃあもしかしなくても二人とも――」

「ああ! このまま大阪から来たナニワの兄妹を演じ切る。ついでに星梨花の客として、彼女の仕事をサポートだ」

まさかまさかの展開に、サッと血の気が引くのを感じたよ。
そりゃテレビには映り慣れてるけど、あくまで普段はお仕事だし。
28 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/10/20(金) 06:38:00.81 ID:BDU4dsSw0

「それに、気に入らんことがもう一つ」

「なに?」

「変装してる茜にスタッフが気づいてないのが腹立たしい。まるでウチのシアターアイドルの知名度が無いみたいじゃないか」

そういうプロちゃんの表情はすっかりお仕事の時の顔だった。
それを見て茜ちゃんだって腹を決める。

そうお仕事。誰かに"観られて"いる間は例えオフだろうとどこだろうと私が立ってる場所が舞台。
ステージの上の茜ちゃんは、いつでもカンペキパーペキなアイドルだから!

「このまま収録終わらせて、後でスタッフを笑い者にしちゃる」

「プロちゃんってば動機が不純……。でも乗った!」

新しい目的を胸に抱いて、二人同時に振り返る。
それから星梨花ちゃんに詰め寄ると、茜ちゃんたちはー言いました!

「ちょっと頼むわ店員さん」

「ウチに合うブラ選んだって〜?」
29 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/10/20(金) 06:38:59.42 ID:BDU4dsSw0
>>28訂正
〇「ほんなら頼むわ店員さん」
×「ちょっと頼むわ店員さん」
30 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/10/20(金) 06:40:17.27 ID:BDU4dsSw0
===

そして時が過ぎること数十分。茜ちゃんたち二人は今、
最初に出会ったフードコートの隅の席に座ってぼんやり人混みを眺めてた。

テーブルの上には冷めたポテトに丸められたハンバーガーの包み紙。
それから新しく増えた紙袋も。

緩慢な動作で食後のコーヒーを一口すすり、プロちゃんがポツリと呟いた。

「しっかし……驚いたな」

「うん、驚いたね」

「星梨花が真っ赤なブラを持って来た時は――」

「茜ちゃんもとうとう勝負下着の一つや二つ、持つべき時が来たと思ったよ」

「……結局買ったし」

「断れないじゃん」

「お金も俺が払ったし」

「ホンマ、アニキおおきにやでっ♪」

「全くこいつにはかなわんわー……」

でもプロちゃん、参ったように頭を掻くとスッと椅子から立ち上がって。

「あれ? プロちゃんどこ行くの?」

「トイレ。そろそろ星梨花が上がりだから」
31 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/10/20(金) 06:41:26.17 ID:BDU4dsSw0

リュックサックを手に持って、その場を離れて行っちゃった。
置き去りにされて待つこと数分、戻って来たプロちゃんはいつものスーツ姿になっていて。

「着替えて来たんだ」

「ちょちょいとな」

「いけないんだー、トイレなんか使っちゃって」

「大目に見ろよ。それに俺、クラークケントのファンなんだ」

トイレから出て来るスーパーマン? それはちょっと様になってないような。

「それより茜、帽子と眼鏡返せよな。後、そのジャンパーだってしまっとけ」

「はいはい。星梨花ちゃんに気付かれないように……ね?」

「そういうこと。察しがよくて助かるよ」

「当然! 茜ちゃんはいつだって、プロちゃんの相方なんだから」

言って、最後のポテトを口に運ぶ。

帽子と眼鏡もプロちゃんに返してジャンパーを紙袋にしまっていると、
件のお店の入り口から星梨花ちゃんが丁度現れた。

鞄からスマホを取り出して辺りを見回すと、プロちゃんを見つけて駆けて来る。
32 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/10/20(金) 06:42:40.37 ID:BDU4dsSw0

「プロデューサーさん! お迎え、ありがとうございます」

それから一緒に座ってる私を見つけると、「あれ? 茜さんもご一緒なんですか?」なんて不思議そうな顔で首を傾げ。

「茜さん、今日はお休みだったんじゃ」

「うん、そうなの。で、ここに買い物にやって来たらたまたまプロちゃんと会っちゃって」

「俺もちょっと早めに着いたからな。星梨花の仕事が終わるまで、二人でお茶してたってワケさ」

私とプロちゃんの息の合った説明を聞いて、星梨花ちゃんが少しだけつまらなそうな顔になる。

「そうなんですか……。私もお仕事じゃなかったら、お茶をご一緒したかったです」

「いやいや星梨花。仕事が無いと俺たちここに居ないからね?」

「まぁまぁプロちゃんそんなこと言わず。星梨花ちゃんもお仕事終わりでしょ?
飲み物一杯ぐらいなら、ここで喋って帰ればいいよいいよ」

結局、それからさらに十数分。

茜ちゃんたちは星梨花ちゃんの語る職業体験の感想を「ふんふん」「なるほど」
「大変だったね〜、星梨花ちゃん」なんて感じで聞いていき、最後はプロちゃんが彼女の頭に手をやって。

「うん! 俺がついてなかったのに一人でよく頑張ったな、星梨花」

星梨花ちゃんの頭をなでなでなで……。
そうして、「えへへ」と照れ臭そうに笑う彼女の笑顔に胸がキュン。

う、ん……これは、この気持ちは、決してほんわかとしたトコから来てる感情じゃなくて。
その正体を知ってるから、私も顔に出すワケにはいかなくて。
33 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/10/20(金) 06:48:27.39 ID:BDU4dsSw0

「ねぇ、プロちゃん」

「ん? どうした茜、改まって」

「……大切なこと、忘れてない?」

そう、そうだぞこのヤボめ。
星梨花ちゃんを褒めるよりもまず先に、労う相手がいるでしょーが!

……茜ちゃんは、そう思って言ったつもりだったのに。

「おっ、そういえばもうこんな時間なのか。そろそろ事務所に戻らないと、次のお迎えに遅れるな」

プロちゃんったら、時間について訊かれたんだと勘違い。バカ! バカバカバカバカバカバーカっ!!
星梨花ちゃんにバレちゃダメな手前、こっちからおねだりするわけになんていかないのに……気づいてくれたっていいじゃんか!

でもそんな私の葛藤を知らないプロちゃんに「じゃ、行くぞ」と急かされて、
星梨花ちゃんが慌てた様子で紙コップのジュースを飲み干した。

それから二人は一緒になって席を立つと。

「それじゃ、俺次の現場だから。茜もオフを楽しめよ」

「また明日、劇場で会いましょうね茜さん」

そのまま、二人仲良く事務所に戻るために歩き出す。

「うんうん、じゃあまた劇場でねー!」……なんて笑顔であげた手をフリフリ、
二人が見えなくなるまで目で追う私はなんなのさ。

急に騒がしさを増したフードコート。
雑踏の喧騒に紛れながら、自分で自分の前髪をそっとひと撫で呟いた。

「ん、もう! プロちゃんめぇ〜……今に見ろぉ!」」

もうホントにあったま来たんだから!これからの茜ちゃんはもっーともーっとワガママに。

その手を焼かせて焼かせて焼かせまくって――それこそ拒めど逃げども行けどもだ――
私から目を離す暇なんて無いぐらい、アナタを困らせてやるんだからっ! もぉーっ!!
34 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/10/20(金) 06:50:06.47 ID:BDU4dsSw0
===
今回の話はこれで終了。以上、速やかに帰りなさい。
35 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2017/10/20(金) 08:13:01.67 ID:RtDAv2PM0
他の現場でもこんなめんどくさいことしてるのかな……
乙です

>>25
箱崎星梨花(13)Vo/An
http://i.imgur.com/eGjqKgM.jpg
http://i.imgur.com/OvxOq2E.jpg
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 12:02:51.39 ID:erhGXKBdO
茜ちゃんナデナデ乙
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 13:05:32.68 ID:SXw2cVOGO
茜ちゃんの下着見たい乙
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 13:13:54.07 ID:vkSw49umO
星梨花も大胆になったんだな…乙
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 16:12:38.96 ID:Til/9q3qO
つづきはよ
茜かわいいぞ
おつ
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 23:20:45.19 ID:IuqkYLJ5o
乙レイヨロレイヨロ
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