P「泣いた赤鬼」

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54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:07:37.71 ID:OgZG+FJaO

赤鬼「ち……千早ちゃんっ!!」ダキッ

青鬼「うぅっ……うぁぁ……!」

赤鬼「会いたかった……! 会いたかったよぉ……!」

青鬼「わた……しも、会いたかった……!」



緑鬼「あーあ、二人ともボロ泣きじゃない。しょうがないんだからもう……」グスッ


唯一無二の親友同士の再会に思わずもらい泣きしてしまう緑鬼でしたが、すぐに表情を改めます。

これで問題が解決したわけではないのです。



緑鬼「私はいつでも見守っているから。頑張りなさい、二人とも」


55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:09:05.03 ID:OgZG+FJaO

その日の夜、赤鬼は青鬼を自分の家へ招きしました。


青鬼「春香、さっきはその……。みっともないところを見せてごめんなさい」

赤鬼「あ、謝らないでよ〜。私だってたくさん泣いちゃったんだし、おあいこだよ、おあいこ!」

青鬼「でも、旅に出ると言っておきながら私は結局どこへも行けなくて……」

赤鬼「ううん、千早ちゃんがまだお家にいてくれて良かったよ」

青鬼「春香の家、なんだか久しぶりだわ。少し人間の匂いがするのね」

赤鬼「…………うん」


56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:11:15.80 ID:OgZG+FJaO

青鬼「春香、あのね……」

赤鬼「言わないで、千早ちゃん」


真面目な顔になった青鬼の言葉を、赤鬼は遮りました。

赤鬼にも何の話かは分かっていたからです。

そして、そのことに対しての考えもすでに赤鬼の中で固まっていました。


赤鬼「私、人間のみんなに本当のことを話すよ」

青鬼「春香、でも」

赤鬼「うん……。せっかく出来たお友達だけど、仕方ないよね。やっぱりずっと嘘をついてるのはイヤだから」

青鬼「……そう」

赤鬼「あっ……。ごめんね、千早ちゃんが私のためを思ってしてくれたことなのに、こんな結果になっちゃって……」

赤鬼「それに私、あの時のお礼もまだ言ってなかったし……」

青鬼「いいの。私は春香が笑っていてくれれば、それだけで満足だから」

赤鬼「千早ちゃん……」


57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:13:06.05 ID:OgZG+FJaO

赤鬼「千早ちゃん、ありがとう」

青鬼「えっ?」

赤鬼「今のありがとうは、人間と友達になるきっかけを作ってくれたことと、私の側にまた戻って来てくれたこと。二つの意味でありがとう、だよ?」ニコッ

青鬼「それなら、私もありがとう。私に会いに来てくれて。おかげでまた春香の近くにいることができる」

赤鬼「……えへへっ♪」

青鬼「ふふっ」


58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:16:33.23 ID:OgZG+FJaO

それから二人は、またひとつの布団に入りました。


赤鬼「……あったかいね、千早ちゃん」ギュッ

青鬼「ええ、そうね」ギュッ


人間と仲良くなる方法を青鬼が提案した日。

その日と同じように二人は寄り添います。

二人であの夜と同じようにたくさんの話をしました。

橙鬼がせっせと育てていたもやしを双子の黄鬼たちがつまみ食いした時のこと。

それを知った桃鬼に黄鬼たちがしばかれたこと。

なんやかんやあって気づいたら紫鬼が行方不明になっていたこと。

そして紫鬼を探して世界中を大冒険するはめになったこと。

どの話の時も、赤鬼だけでなく青鬼も心から笑っていました。

それはもしかしたら、二人の心の距離があの夜よりも近くなっていたからなのかもしれません。

それから赤鬼と青鬼は、とても幸せな気持ちで眠りにつきました。


59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:21:50.92 ID:OgZG+FJaO

次の日、赤鬼はいつかのように早起きして外に出ました。

青鬼も一緒に起きて、赤鬼の行動を見守っています。


赤鬼「よいしょっ……と」ザクッ

青鬼「……本当にいいのね?」

赤鬼「うん。いいんだよ、これで」


赤鬼は以前家の前に立てた看板を壊し、新しく看板を立てます。

新しい看板にはこう書かれていました。





看板『心の醜い、嘘つきで可愛い鬼の家』






60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:28:24.23 ID:OgZG+FJaO

しばらくすると、いつものように人間たちが訪ねて来ました。


人間2「リボンちゃん、遊びに来たよ!」

人間3「今日のお菓子はなんだろうな〜」

人間1「あれ、この看板……?」


人間たちは家の前の新しい看板を読み、不審に思いました。


人間3「心の醜い……」

人間2「嘘つきの鬼……?」

人間1「どういうことだよ、天海……?」



人間が集まったのを見計らって、赤鬼は青鬼を伴って人間たちの前に現れます。


61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:29:55.95 ID:OgZG+FJaO

人間1「! お前は……!」

人間2「これは……」

人間3「春香さん、どういうこと?」

赤鬼「見ての通りです。私、本当は千早ちゃん……青鬼と仲良しだったんです」

赤鬼「今までみんなを騙してました。本当にごめんなさい!」

人間3「うわぁ、そうだったんだ……」

人間2「…………」

人間1「お前……」

人間1「そうかよ。結局お前もそいつと変わらない悪い鬼だったってことかよ」

青鬼「待って。春香は悪くないわ。全て私が考えて無理やり春香に演技をさせたの。だから……」

赤鬼「ううん、騙したのは私の意思だよ。悪いのは私」

人間1「うるせえ! どっちも変わらねえよ!」

人間1「オレたちを騙して面白かったか? ……へっ、やっぱり鬼なんか信用するんじゃなかったぜ」

人間1「行こうぜ、北斗、翔太」

赤鬼「あっ…………」

青鬼「…………」


人間が帰ろうとしたその時、一迅の風が吹き抜けました。

そしてその風が止むと、そこには緑鬼が立っていました。


62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:33:13.17 ID:OgZG+FJaO

赤鬼「り、律子さん!」

青鬼「律子……」


緑鬼はゆっくりと人間の方を向いて言いました。


緑鬼「赤鬼はあなたたち人間と友達になりたいっていう純粋な気持ちを持っていた。青鬼はその赤鬼の願いのために自ら悪役を買って出た」

緑鬼「正直にあなたたちに話したのだってそう。本当のことを隠し通すことだってできたのに、嘘をついたままじゃ本当に仲良くなれないから、だからこの子は正直に話したの」

緑鬼「鬼だから悪い存在? 人間とは違う? この子たちはね、相手を思いやる優しさを持っているわ」

緑鬼「あなたたちにだって大切な人がいるならそれが分かるはずよ」

人間1「…………」

人間2「…………」

人間3「…………」


63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:35:45.84 ID:OgZG+FJaO

緑鬼の威圧感に気押された人間たちは、反論することができません。

いえ、もしかしたら反論ではなくて口にするべき答えがあったのかもしれません。

ですが、あまりの迫力に人間たちには押し黙ることしかできなかったのです。



緑鬼「言うべきことは言ったわ。どう考えるかは、あなたたち次第……」



再び風が吹き、緑鬼は姿を消しました。

しかしその後も、人間たちは上手く言葉が出てきませんでした。


64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:37:39.32 ID:OgZG+FJaO

それから数日後、赤鬼と青鬼は山から姿を消してしまいました。

いたたまれなくなったのか、それとも人間を憎むようになってしまったのか。

残された人間たちには、もう鬼たちの真意を知る術はありません。

わかっているのは、あの時の緑鬼の言葉だけです。



人間1「…………」チラッ




看板『心の醜い、嘘つきで可愛い鬼の家』ボロッ




65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:41:31.38 ID:OgZG+FJaO

人間2「……またここに来てたのか」

人間3「探したよ、冬馬くん」



人間1「北斗、翔太……」



人間2「彼女たちのことを考えてたのか?」

人間1「……いまだによくわかんねぇんだ。あいつらのこと」

人間1「青鬼のやつには確かにひどいことされたし、あの時は許せねぇって思った。けどよ、あの緑鬼の言葉を信じるならそれも全部天海を思ってのことだったんだよな」

人間1「そんで天海は天海で、なんかバカっていうかバカ正直っていうか……」

人間2「……残念だけど、今さら言っても仕方ないさ。あの子たちはもういないんだ」

人間3「そうだよ。……帰ろう? ほら、レッスンだってサボっちゃったしさ」

人間1「…………」

人間2「ちょっと待っててくれねーか。……いや、お前らも手伝ってくれ」

人間2・3「えっ?」


66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/08(日) 23:43:30.20 ID:OgZG+FJaO

ザクッ ザクッ

人間1「…………よし、こんなもんか」

人間1「サンキュ、助かったぜ二人とも」

人間3「それは別にいいんだけど……これ、見てもらえる日は来るのかな?」

人間2「どうだろうな。でも、今出来る最大限の償いなのかもしれないな」

人間1「……さて、戻るか。また黒井のおっさんにどやされちまう」



赤鬼の家の前に立てられたボロボロの看板は破棄され、その代わりに新しく石碑が立てられました。

そしてその石碑には、もう書き直されることがないように人間たちによってこんな文が刻まれたのです。




石碑『ドジでおっちょこちょいで、可愛いかは知らねぇけどなんか変なやつの家。いつでも帰って来いよ。待ってるからな!』




おしまい


67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 23:44:43.04 ID:OgZG+FJaO
おわり
99%パクリで申し訳ない
ただはるちは鬼を見てみたかったんだ
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/09(月) 18:30:54.03 ID:CHoyqnDmo

はるちはわっほい
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 18:33:02.68 ID:s4ArgKxZo
>>53


>律子「いいえ、全然。だって、千早なら最初からずっとあなたの目の前にいるんだもの」

亜美「律子と書いて鬼と呼ぶ」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 19:56:00.41 ID:hH3RqBwBo
乙乙最高だった
鬼ヶ城くんもイイ味出してる
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