国王「さあ勇者よ!いざ旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」完結編

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455 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:11:02.11 ID:+njJv4Yc0








456 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:11:47.48 ID:+njJv4Yc0








魔王「!!」



炎獣「ッ!!」




遊び人(な)



遊び人(なんだ、こりゃあ………)



遊び人(あたりが、ま、真っ白になっちまった)




457 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:12:39.57 ID:+njJv4Yc0


魔王「………これが、扉を潜るということ」

魔王「どうやらそれを許されたのは、加護の名残をもつ者………私と、炎獣」

魔王「それに鍵を持つ彼だけ」

遊び人「い、いい、一体何がどうなって………」

魔王「神々…いや、それを名乗る古代人の居場所にきた。この白い無の世界こそが管理者たる者の居所なんだ」

魔王「そして私達と一緒にこの場に立っているということは――」


魔王「あなたが………その古代人だったのね?」









少年「はは」

少年「そういうことだよ」

458 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:18:04.99 ID:+njJv4Yc0

少年「"鍵"」

少年「あれはそれ自体が気紛れな代物で、ひとたび持ち主が手放すようなことがあれば、誰の手に渡るか分からないんだよ」

少年「古代王朝の終わりに創られた"鍵"もやはりそうだった」

少年「本来の"鍵"の持ち主は醜い争いの憂き目にあって命を落とした…。その後誰の手に"鍵"が渡るか、世界は緊張に包まれた」

少年「狂ってしまった世の中を正そうと希望を持ち続ける人徳者もいたな。彼の手に"鍵"が渡れば、古代王朝にも先があったのかもしれない」

少年「選民思想のもと、ノアの方舟のようなものを作ってある一定の人々を生き残らせようとした人もいた」

少年「いずれの手に渡っていたとしても、こんな小さな、魔王と勇者の世界は創らなかっただろうね」


少年「でも、"鍵"は僕の手に渡った」

少年「僕が幸運だった。理由はそれだけだ」

459 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:18:49.56 ID:+njJv4Yc0

少年「僕はね。ウンザリしていた」

少年「先の見えない争いの世界も。何もかも科学の力で証明された夢のない世の中にも」


少年「――僕は永遠に、ファンタジーを見ていたいと思ったんだ」

少年「だから世界をリセットして、勇者と魔王の冒険譚だけがある、閉じた場所を作った」


少年「友情と愛と、危険に満ちた戦いがあって」

少年「ひとかけらの希望を胸に、剣と魔法のワクワクするような戦いが繰り返される」


少年「科学の力なんて持ち出す不粋な輩は永劫現れない。そこまで進化する必要がない」

少年「ある時は勇者が勝って、ある時は魔王が勝つ。その綱引きが行われるたび、胸を踊らせる夢物語が紡がれる」


少年「どうだい? 飽きないだろ?」

少年「だから僕はこうして、今まで邪神の役と女神の役をこなし、魔王と勇者をつくりながら――」

少年「この美しい世界を………悠久とも言える時間眺め続けてきたんだよ」


少年「たった一人でね」



460 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:19:47.55 ID:+njJv4Yc0

遊び人(おい…なんだってんだ?)

遊び人(こいつらは何の話をしている…!?)


魔王「………………」



少年「怖い顔をしないでよ、魔王。君の物語も僕はずうっと見ていたさ」

少年「今回のお話は本当に刺激的だった!」

少年「本来は魔王城で鎮座しているはずの魔王が、自ら人間の王国へ攻めてくるんだ…! 凄いよねっ」

少年「本来、一人一人撃破されるはずの四天王が、一致団結して勇者一行を各個撃破するんだ!」

少年「倒される勇者一行にも、様々な想いが胸にあって、美しかった…!」

少年「僕が一番気に入ったのは赤髪の少女が僧侶となってしまったお話だなあ………」



魔王「………あなたは」

魔王「子供でいられたその一瞬に"鍵"を身に宿らせて」

魔王「――そのまま時を止めてしまったのね」

461 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:20:38.86 ID:+njJv4Yc0

魔王「絶対的な力に溺れて、玩具のように生命の希望を生んでは壊し」

魔王「そうしていつの間にか」


魔王「そんな風に、狂気に満ちた醜い存在になってしまった」


少年「…酷いな。傷つくよ」

少年「僕は何も間違ってない。このまま勇者と魔王に世界が依存し続ければ、みんな本当の地獄を見ることはないんだよ」

少年「あの、幻想を欠片も抱けないような、おぞましい終焉をね」

少年「そして希望と絶望が流転する今の世の在り方こそが、永遠のロマンであり…健全な状態なのさ」



遊び人「お、おい」

遊び人「おいおいおいおいおい」

遊び人「ちょ、ちょっと待てよ、おいっ。黙って聞いてりゃよ、好き勝手に言いやがって」

462 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:21:23.11 ID:+njJv4Yc0

遊び人「それじゃあ、なにか? こ…この気の遠くなるほど馬鹿げたドンパチは全部、てめぇのでっちあげた台本だったってのかよ!?」


少年「…僕はあくまで結末を見越したきっかけを与えるだけさ。動き出した魔王と勇者がどんな道程を経るかは、分からない」

少年「白紙のページにドラマが描かれてゆく様を見るのが、僕の楽しみだからね」

少年「僕の作った世界を、僕が選んだ英雄たちが駆け巡る………ふふ!」

少年「でも、それを邪魔しようって奴らもいた」

少年「魔法使いはこの摂理を壊し、あまつさえ僕を倒そうとしてたみたいだけど、残念だったよね。…それに今回はもっと重要なこともあった」

少年「あの"女神"は、魔王勇者大戦の筋書きを書いてくれたんだ…! それは熱中してしまうような面白さで…はは!」

少年「誰かが意図してドラマチックな魔王勇者大戦を作ってくれるなんてさ! 刺激的な体験だったなぁ!」


遊び人「………じょ…っ」

遊び人「冗談じゃねぇぞおい…!」

463 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:22:20.83 ID:+njJv4Yc0

遊び人「ガキの戯言にどいつもこいつも振り回されてたってかぁ!? どっ、どうりでおかしいと思ったんだよ、魔王だの勇者だの………」

遊び人「俺の生きてきたしみったれた街角じゃあ、そ、そんなもんはクソの役にも立たない絵空事だったからなぁ!」

遊び人「おっ、俺に言わせりゃあな…! てめぇのおままごとなんか、ちゃんちゃら可笑しい三文芝居――」

少年「ねえ、遊び人」

遊び人「!」ビクッ

少年「大声でわめきたてるのは、認めて欲しいから?」

遊び人「………な、何を…」

少年「君にだって勇者に憧れた子供時代はあった」

少年「英雄のきらめきの虜になっていた瞬間が確かにあった…けれど」

少年「君は知ってしまった。自分はその器ではない。誰からも選ばれない。能力も心の強さもない」


少年「"自分は惨めな端役でしかない"。そう認めるしかなかった。そうでしょ?」


遊び人「………っ」

464 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:23:09.98 ID:+njJv4Yc0

少年「でも、今君が一歩前に出たのは、どうして? そう。もしかしたら認めてもらえるかもって思ってしまったんだよね?」

少年「この大詰めに居合わせて、その他大勢に甘んじるためにひた隠しにしていた感情が顔を出した」

少年「………君、諦め切れていないんだよね?」

少年「どんなに大人の顔をしてみせたってさ、遊び人。君の心の奥にまだ燻っているんだ」

少年「あは! ………残酷なまでの、勇者への憧れが…!」


遊び人「や、やめろ…」


少年「君は運命のイタズラでここに居合わせただけ! もうここで君にできることなんてひとつもないんだよ!」

少年「でもそれでいい。思い出してごらん」

少年「本来は通行人みたいな役どころだったろう? 元々、勇者なんてものには届きようがないんだ」

少年「それが、本当の君なんだ。だから、何もできなくていいんだよ」

少年「何もできない君で、いいんだよ…」クスクス



遊び人「だ…っ」

遊び人「だまれっ!!」


――バリバリッ!


遊び人「ひっ!?」

465 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:24:51.56 ID:+njJv4Yc0

少年「おやおや。逃げ出してしまいたい気持ちになるのも分かるけど、あんまり興奮すると危険だよ?」

少年「気をつけてね。ここは現世から遥かな距離を持つところ。僕が神として管理を行ってきた席なんだから」

少年「俗にいう天国みたいな場所とも言い表せる。死した亡者の魂も君のすぐ側にいる」

少年「そういう場所だよ」


遊び人「ふ、ふ、ふざけんじゃねぇっ…!」

遊び人「お、俺には関わるつもりなんてこれっぽっちもねぇ! 俺を巻き込むな…っ!」

遊び人「世界だの、生命がどうだの、知ったこっちゃあねぇんだよ!」

少年「ふふふ。今度は必死で知らんぷりかい?」

少年「うん。でも君はそれでいい。それでいい…」

遊び人「俺は、俺は………」

遊び人「俺はただ逃げのびて………酒にさえありつければそれで………!」

――バリッ

遊び人「うひぃっ!?」


商人『たく、使えない男だね。これくらいで悲鳴を上げるんじゃないよ』

466 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:25:31.79 ID:+njJv4Yc0

遊び人「しょ、商人…っ!?」

遊び人「………? だ、誰もいない。今の声は一体どこから聞こえてきやがった………」

――バリバリッ

魔王「!?」

魔王(頭のなかに映像が浮かんでくる…っ!)

魔王(どこかの…平野…?)

魔王(数人の男女がそこに………これは…っ!)


商人『フラフラ動くな、軟弱者』

盗賊『無茶言うんじゃねーよ、アネゴ!』

盗賊『新型の鉄砲の試し撃ちに、なんで俺が的を持っていなきゃならねーんだよ!』

戦士『盗賊。貴様少し静かにしろ。こちらは食事中なんだぞ』

盗賊『っざっけんな猪野郎! じゃあテメェが的になってみやがれコルァ!』

商人『ショット』パンッ!!

盗賊『うひょおおおっ!!』

武闘家『はっはっはっ。なかなか面白い見せモンだのぉ』


467 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:26:06.62 ID:+njJv4Yc0

魔王「………今のは」

少年「ふふ。君達が倒してきた勇者一行だよ」

少年「彼らがもし、力を合わせることに成功したら………想像すると、ちょっとドキドキしないかい?」

少年「それが、あれさ。あの変わり者だらけの英雄達が、足並みを揃えて魔王城を目指すところだ」

魔王「…」

少年「あはは。彼らが同じ食卓を囲んでいるなんて、なんだか可笑しいよね」

少年「魔法使い達には採用されなかった未来だ。けれどそんなことが現実に起こりうれば何かが変えられたもかもしれない………今でもそんなことを夢見る哀れな魂がいるんだよ」

少年「死してなお、彼女はその呪縛のごとき夢から逃れられずにいる。………おいで」



僧侶《………ああ》

僧侶《もし、世界が優しかったなら………》

僧侶《…私は…………私がこんなに、苦しまずに済んだのよ》

僧侶《………どうして………どうして…》


468 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:27:02.14 ID:+njJv4Yc0

魔王「………彼女は…」

少年「元々、今回の勇者一行だったひとだよ。君に相対する前に死ぬことになってしまったけどね」

少年「死した生命は、死後の国に迎えられることなどなく、この"無の空間"で果てのない放浪を味わう。聖女と呼ばれた彼女であっても例外ではない」

少年「…死は、楽になんてなれない」

少年「極楽浄土みたいなものは存在しない。許される余地も、転生なんて都合のいいものもない」

少年「ただ、この場所………限りない無を漠然と漂うだけ。それが"死"の正体さ」

少年「僧侶も生前は高潔で気高い女性だった。でもね、死という事実の前では生きている間に得たものなんかこれっぽっちも役に立たない」

少年「死は、あらゆる生命のメッキを剥がす――」

少年「見果てぬ無の空間。そいつを前にした時、あらゆる魂は等しく絶望するのさ」

少年「ねえ、魔王。あそこを見てごらん」

魔王「………っ」




木竜《………助けて》

木竜《助けてくれんか………》



469 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:28:11.90 ID:+njJv4Yc0

魔王「………」ギリッ

少年「どんなに穏やかに死を迎えた者だって」

少年「いざここにやってきたら………誰一人、この孤独には耐えようがないんだよ」




木竜《………誰か、楽にしてくれ………》

木竜《………こんなに苦しいのならば》


木竜《――儂は、この世に生まれ落ちるべきではなかった》











魔王(爺)

470 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:28:52.23 ID:+njJv4Yc0

少年「死別した相手に安らかであって欲しいっていうのは、生者の勝手な願望でしかない」

少年「君達のために死んだ木竜は、未来永劫こうして苦しみ続ける運命だ」

魔王「………」

少年「――震えてるね?」

魔王「っ…」

少年「魔王四天王…ここまで辿り着いた君達の力は称賛に値する。けど」

少年「その英傑を包み込んできた木竜でさえ、よるべなく慈悲のない無の前に、苦しむことしか出来ない」

少年「…君の足はすくんでいる。君にとって大切な存在である木竜が、見たこともない悲痛さで屈服しているのを目の当たりにしたからだね」

魔王「…」

少年「命すら投げ出して僕を討つつもりでいたんだろう?」

少年「仮にも神を名乗る僕を相手取って、生きて帰るつもりは最早なかった…その生涯を終わらせてしまうことすら厭わないつもりでいた」


少年「しかし、君は知ってしまった」

少年「死は終わりではなく、救いのない永遠の始まりだと」


少年「ねえ、魔王」

少年「僕を倒そうとすれば君はただでは済まない。例え成功したとしても、引き換えに君は死ぬだろう」

少年「その時君の身に降りかかるのは、想像を絶する事象だ」

少年「希望が最初からない無限の世界。そこに君は飛び込めるの?」


少年「命を、投げ捨てられるかい?」

471 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:30:04.35 ID:+njJv4Yc0


魔王「………」


魔王「私は――」

魔王「私は、それでもあなたを倒す」



少年「ふふ。揺るがない決意というやつ?」

少年「そんなことはないよね。ここでは心は隠せないよ」

少年「君………怯えきってるじゃない」


魔王「………」

472 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:31:06.18 ID:+njJv4Yc0

魔王「ええ」

魔王「ここにきて、私」

魔王「恐怖にすくんでる。それに、迷ってる」

魔王「あまりも矮小な生命よ…私は。情けないし………とても愚か」

魔王「………」


魔王「それでもね」


魔王「言葉では説明できないものが、私を前に向かせるの」




魔王「――私は、あなたを倒すわ」






少年「………」

473 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:32:00.37 ID:+njJv4Yc0

少年「へえ。これは驚いた。どうやら本気だね」

少年「心にこわばりが見られない。静かだけど、かといって折れてしまったわけでもなく…」

少年「それは使命感とか自らの希求の念とか………そういう思考の外の感覚…」

少年「今までの歩みの全て――…純度の高い魂の発露。そういうものが、ぎりぎりの所で君の意思を形作っている。そして…」

少年「………長らくこの世界の命の物語を眺めてきたつもりだったんだけどね。なんだろう、この違和感は」

少年「君はこの世の果てを目にしたはずなのに、その感情は、まるで」

少年「そう、言ってしまえば………まるで今日の畑仕事をこなしにかかる農夫のような」

少年「魔法もなく…特別でもなく…ある意味退屈な…」

少年「………その感情は、なんだ?」


魔王「不思議なことなんてひとつもない」

魔王「私のこれは、きっと誰にでもある気持ちだから。…為さなきゃならないことを為そうとする気持ち」

魔王「心踊る冒険も、幻想的な世界も、命懸けの闘いも、関係なく」


魔王「ありふれた勇気よ」


少年「………」

474 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:37:15.53 ID:+njJv4Yc0

少年「へえ。これは驚いた。どうやら本気だね」

少年「心にこわばりが見られない。静かだけど、かといって折れてしまったわけでもなく…」

少年「それは使命感とか自らの希求の念とか………そういう思考の外の感覚…」

少年「今までの歩みの全て――…純度の高い魂の発露。そういうものが、ぎりぎりの所で君の意思を形作っている。そして…」

少年「………長らくこの世界の命の物語を眺めてきたつもりだったんだけどね。なんだろう、この違和感は」

少年「君はこの世の果てを目にしたはずなのに、その感情は、まるで」

少年「そう、言ってしまえば………まるで今日の畑仕事をこなしにかかる農夫のような」

少年「魔法もなく…特別でもなく…ある意味退屈な…」

少年「………その感情は、なんだ?」


魔王「不思議なことなんてひとつもない」

魔王「私のこれは、きっと誰にでもある気持ちだから。…為さなきゃならないことを為そうとする気持ち」

魔王「心踊る冒険も、幻想的な世界も、命懸けの闘いも、関係なく」


魔王「ありふれた勇気よ」


少年「………」

475 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:38:16.39 ID:+njJv4Yc0

少年「ふっ…ふふふ」

少年「本当に君は、楽しませてくれるなあ…!」

少年「"ありふれた勇気"? はは! そんなものが、本当に僕を倒せると思うのかい!?」

少年「絶対的な管理者である神を相手にして、そんなものが通用するか…試してみるがいいよ!」

少年「いずれにせよ、僕の見たことのない展開さ…わくわくするね!」


少年「君がそれを否定したとても、君の冒険は例えようもなくとびっきりだった!」


少年「そのクライマックスが、ついに紐解かれる!!」


少年「ああ………こんな興奮は久しぶりだ!!」


少年「僕は今、見たこともないステージを体験してる!!」



少年「おいでよ!! 魔王! 決戦の時だ!!」




少年「君は僕に創られた世界の中で終わるのか!?」




少年「それとも定めを打ち破り、神を倒すのか!?」





少年「今こそ見せてくれ!!!」






少年「――君の辿り着く、結末を!!!」






476 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:39:12.96 ID:+njJv4Yc0


魔王(絶対的な存在だ)


魔王(直感がそう告げる。例え相手が子供のような見かけであったとしても)

魔王(敵うはずのない相手だと知らしめるような分厚い壁を、感じる)

魔王(この世界の制作者………。根本的な存在の差を魂で感じる)


魔王(それでも私は)


魔王「やらなくては」




炎獣『魔王』

炎獣『魔弓を使え。――俺が、その矢になる』

477 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:40:30.00 ID:+njJv4Yc0

炎獣『奴がお前に与えた強大な邪神の加護………その化身である俺が、刃となってもろとも奴にぶち当たる』

炎獣『そうすれば、可能性はある。奴自身から生み出た力なら…奴を傷つけられるかもしれない』

魔王「………っ」

炎獣『これしか方法はねぇ。多分な。それに』

炎獣『神を倒せても、その力の化身になっちまった今の俺が残れば後の世では脅威になっちまう』

炎獣『どのみち俺の体は』

炎獣『ここで消えるのが一番良い』

478 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:41:30.45 ID:+njJv4Yc0

炎獣『………長いこと続いてきた魔人との因縁も、これでようやく終わりだな』

炎獣『俺の旅も、これで終わり』


炎獣『でもさ。――こうして別れを告げられただけマシな最期だよな』


炎獣『………』

炎獣『無になるってのは』

炎獣『どんな気分なんだろうな?』

炎獣『あの爺さんが参っちまうくらいだし…俺にも到底耐えられそうにないや』

炎獣『きっと、情けなく泣きわめくのかもしれねぇな………』

炎獣『はは。なあ魔王。頼むからさ』

炎獣『死んだ後の俺の姿は見ないでくれよな』

炎獣『ちょっとくらい、格好つけたいんだよ。頼むよ』

炎獣『…』

炎獣『魔弓で俺を放つ…。そんな大技、こんな不安定な場所で使ったら一体どうなっちまうのか…』

炎獣『もしかしたらとんでもないことになって、お前だって無事じゃ済まないかもしれない』

炎獣『でもさ。何とか生き延びれるよ、お前は』

炎獣『なんとなくそんな気がする』

479 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:42:25.35 ID:+njJv4Yc0

炎獣『そうなったら、お前を一人で残すようなことになっちまうな』

炎獣『俺には、お前を………もう守ることが出来なくなる』

炎獣『ごめんな。守るって言ったのに』

炎獣『でもさ』

炎獣『お前はもう、大丈夫だよ』

炎獣『俺がいなくても』

炎獣『きっと』

炎獣『…』

炎獣『ぐだぐだ言ってても仕方ないよな』

炎獣『終わりにしよう、もう』

炎獣『…』




炎獣『…』




炎獣『あ、あはは! なんかさー、俺さ!』


炎獣『畜生、格好つけて終わろうと思ったのにさ!』


炎獣『はは!』













炎獣『――………き』


炎獣『消えるのが、怖いみたいだ…っ』



480 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:43:24.93 ID:+njJv4Yc0

炎獣『…あれだけ沢山殺したくせに………っ』

炎獣『何度も何度も死にかけてきたってのに…!』

炎獣『いざ、本当のおしまいを前にしたら、俺………!』


炎獣『はは…マジかよ………』

炎獣『い、いまさら』


炎獣『消えてなくなるのが………怖い………』





炎獣『怖い』




481 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:44:10.00 ID:+njJv4Yc0

炎獣『俺が殺した連中も、きっと…嫌、だったろうな』

炎獣『怖かった、ろうな』

炎獣『そして、今も、ここで苦しん、で』

炎獣『俺を、恨んでるんだろうなぁ』


炎獣『――生きてぇよ…っ!』

炎獣『一人になりたく、ねぇよ!』

炎獣『本当は俺、まだ、生きて…!!』

炎獣『………お前と一緒に――』




炎獣『………』






炎獣『なあ』


炎獣『魔王』



炎獣『ちょっとでいい。ほんの少しでいいんだ』

炎獣『俺に』





炎獣『………………勇気を、くれ』






482 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:45:03.40 ID:+njJv4Yc0



魔王「――炎獣っ!!!」

ギュウッ…!


483 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:45:55.57 ID:+njJv4Yc0


炎獣『…っ』


魔王「炎獣、炎獣、炎獣!!!」

魔王「ううううう…っ!」


魔王「炎獣ぅっ!!!」







炎獣『………』



炎獣『あたたかい』



炎獣『燃えさかる、俺の身体よりも』



炎獣『魔王の、涙が――…』






炎獣『………………』





炎獣『ありがとう』



炎獣『魔王』



484 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:46:42.86 ID:+njJv4Yc0


炎獣『勇気が沸いた、気がするぜ』


炎獣『はは』


炎獣『………』


炎獣『そいじゃ、いっちょ』


炎獣『行くとするか』


485 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:47:22.92 ID:+njJv4Yc0








【勇者】








486 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/08/04(土) 22:48:37.18 ID:+njJv4Yc0
今日はここまでです。
次回の投下で最後となる予定です
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/05(日) 08:03:35.06 ID:gQ2LaVpBO
いつも見てます
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 01:53:15.26 ID:z8OcslRDO

489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/10(金) 18:40:47.23 ID:v+/G+lEso
つチェーンソー
490 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/10/15(月) 12:17:17.81 ID:WMvbdsn6O
最終回投下前にサーバー落ちて大変キツい思いをしてましたが良かった
11月中には終わらせられると思います
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 14:53:08.30 ID:LZnclbMlO
まっていた‼
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 20:40:04.19 ID:UwfhnuhA0
災難だったな
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/19(月) 21:27:01.85 ID:BnuV2ujA0
494 : ◆EonfQcY3VgIs [sage]:2018/11/20(火) 19:00:14.33 ID:xe81Ada50
ようやく時間が取れたので、今週末11月24日(土)に最終回を更新します
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/21(水) 23:29:41.19 ID:5xrxCmrtO
待ってる
496 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:03:44.87 ID:ma21ZHtA0


遊び人(………魔族の女が、ゆっくりと構える)

遊び人(泣きじゃくるような顔のまま、まるで弓を引き絞るような動作で、腕を引く)

遊び人(とんでもない衝動が、あいつらの回りに集まり始める…。恐ろしいほどの力が弾け飛ぶ予感だけを、感じることができる)

遊び人(………俺はこんなところで、何をやってんだ…?)

遊び人(つまりは、なんだ。こんなもん、神話の世界の出来事だろうが)

遊び人(どう考えたって場違いだ。全部夢だって言われた方がまだ、現実的だ)

遊び人(………)

遊び人(そうだ…そうだよな)

遊び人(俺には関係のないことだ。俺はただひたすら、夢が醒めるのを待っていれば、そうすればきっと)

遊び人(あのロクでもなくて、クソみたいにつまらない現実に戻れるはずだ)

遊び人(きっとそうなんだ)


遊び人(ああ………いよいよ矢が放たれる)

遊び人(でも………俺には………)

遊び人(なんら関係のないことだ)






魔王「これが」



魔王「私の最後の」


497 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:12:07.77 ID:ma21ZHtA0






魔王「――魔弓だッ!!」




炎獣「 グ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ! ! ! 」






     ピ  シ  ッ  …



498 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:13:14.08 ID:ma21ZHtA0

遊び人(っ!?)

遊び人(な、なんだ!? 体が動かねぇ!!)

遊び人(化け物が矢のように放たれたその爆発的な反動で)

遊び人(時間が止まったようになっちまって…)



遊び人(………な)

遊び人(何かが)

遊び人(来る――!!)



















魔k王「…帝「魔…間ypもな雷










帝「海人間7uの王の炎uo獣「大し俺9.たち敵戦力gの大部666分氷姫「いよp0uい6よ…ってワ炎il獣「でも、そ王国9o軍の本体をru壊…。だその....甲.前だ」ぉしっの4ジ木竜「やってiお持yちま


















すかii竜「hdjfほdほっから氷姫「無理すうとt言う儂kらおるとい兵士「qし、王「…今は何兵士陛、ちらの状…。町のら、急の報のこと」「町…いう、器商会か」上げてみよ」はっ」゚サ?い、倉モンは部せ!い!おい、こっちねぇ!めェらしがれ!!」…」員「社。大配完てやす」人「ああ、ご苦「る」 うのじゃ…そうねd」「姫う少魔王「…魔王「無理をこれしビュオ獣「おっ!gえ2た帝t「…fさ「そうったもんじ」「そろそyp0ろていて獣「ドンと来――み王「こうとう人魔王「fあ…と少して…!城 謁国…!?3 それ者「…!」゙ワザワ 獣「港て伝「はっ!王fが…鹿な…! 勇うgことだ…っ」?しく申せd」?令「はっ!令「8我らわずました…!王「な、…!?令「新うやら、魔ですら…!」伝の後直ましまnじく…刻…!!にっ!ガタ」?う…嘘だ…港港町うこの王城お、? って…の半分最送ら滅…町以降を類の戦は…!!」「そん…そん王「……でば子供のきー!れが、港町氷姫「随雷帝「今まっきたもなり明をじてまが…こまで王「え…)?炎獣「え事? 魔王」王「ん、かせてく」魔王…」私たちはまでh類をすめに必ってきた「の作能力特高私鋭による点突肝」氷「かってるわよ。したちで、すhe3d


499 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:14:39.35 ID:ma21ZHtA0


遊び人「ッ!!?」


遊び人(がっ?! な、なんだ………!!)

遊び人(頭に………っ、流れ込んでくる………!!)




獣「勇者を倒さtyえすれ間側y6魔倒すて8て、伏せる4をいっよなi!」雷帝はま神6ti得て…。″いう組q織成化のにる、す」魔王「う。のうり。ま、族軍の方は、今、べてちにねれる人」員「王はどうやkラゴンってiちらtyjましていちらうtyいっか、詳ない。…王国y8士連解析待全れたからなh」」「「「へうなっ員「倉のありっ岸に並べりhjやす砲yuの扱中員こにつ00ぎんでがyた瞬砲弾雨をせkられまぜ?




遊び人(頭が、破裂する………!!)

遊び人( わけの分からない言葉の洪水…っ! 圧倒的な密度の、何か…!!)

遊び人(これ、は…っ、まさか魔王の………!?)

遊び人(――………魔王と炎獣の…)



王「で01ののtを6の化水高驚かされuiけた…生活を実現出」魔王「は、の化を収す必があわ」炎獣…??」うですjかに。争に勝文p0化に術を魔族の職m65人7i層がにられれ…」姫「魔界はますypますてわn?」魔王「うんだiらにもそつもでしの」炎獣「まり…どっbbばよ?氷姫アンぇ…――――――――――――――――――――――――――――俺には難しいことは分からねえけどさ、でも、魔王!!

――炎獣《俺、きっとお前の理想の世界を実現してみせるからな!》

――炎獣《その為に、一番に突っ込んでいくのは俺だっ! 絶体!》


――炎獣《約束する!》


――魔王《……ふふ。ありがとう、炎獣》


500 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:16:15.05 ID:ma21ZHtA0
遊び人(い、今、僅かに聞き取れた)

遊び人(こいつらの声が…。やっぱり、そうだ…!)

遊び人(こいつらの感情が溢れかえって…っ、この空間を伝播してきやがるんだ…!!)

遊び人(あまりにも濃密なエネルギーの暴走に………まるで時間が止まってしまったかのようになっちまって)

遊び人(思い出が、押し寄せる――!)





炎獣^:6さjくそれでj戦?」魔王「、ご帝おyuい、氷!?―――――――――炎獣、珍しいね。そんな顔。         

獣「…゙ュッ?獣「i邪れhるら8oい―――――――――…何だかさ、変な気分なんだ。どうしたらいいか、分かんないんだよ。

501 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:17:56.38 ID:ma21ZHtA0

――炎獣《………なあ、魔王。俺は、どうしたらいいと思う? 俺、悩むの苦手だ》

――魔王《身体動かしてみる、とか?》

――炎獣《お! それいいかもな!》

――魔王《あ、でも。あまり遠くにいかないでね?》

――炎獣《…ああ、うん。…俺の戦いを…しなくちゃ、だもんな》




遊び人(なんだよ、これ)

遊び人(なんだってんだよ…!)

遊び人(魔王と炎獣の絆………。多くの葛藤を乗り越えてきた思いの濁流)

遊び人(やめてくれよ…! 俺に、そんなもんを見せつけないでくれ)

遊び人(俺には関係ないんだ…)

遊び人(手の届かない世界の話なんだ…そうだ)

遊び人(俺には関係ない…っ)




――炎獣《魔王もさ。魔王も不安なのにさ。俺たちを勇気づけてくれて》

――炎獣《ありがとな》

――魔王《っ…》

――炎獣《必ず勝とうな!》

――魔王《………うん。そうだね。一緒に、勝とう!》

502 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:19:00.65 ID:ma21ZHtA0

遊び人(やめてくれって言ってるじゃねえか…っ!)

遊び人(どうあっても、俺の頭のなかに入ってくるつもりかよ!?)

遊び人(俺にどうしろってんだ…放っておいてくれよっ)

遊び人(過酷な運命を切り開いてきた英雄がいるってんなら、そっちで話をつけてくれ!)

遊び人(もう、俺に………見せつけないでくれ)




――炎獣《さあ、行こうぜ。悲しくても、進まなきゃ》

――魔王《炎獣…。…うん! 行きましょう!》




遊び人(炎獣があのガキに近づくにつれて想いの圧が増してきやがる…っ!)

遊び人(こんなもん見せられて、どうしたらいいんだよ!?)

遊び人(分からないんだよ…っ、俺はとっくに諦めちまったんだっ!)

遊び人(俺はそんな風には出来ねぇんだ!! やろうと思ったって出来なかったんだよ!!)

遊び人(負け犬だって居ていいだろうっ!! 俺に求めるなッ!!)





――炎獣《魔王。俺と友達でいてくれて………ありがとう》

――魔王《私をずっと守ってくれて》

――魔王《ありがとう、炎獣》


503 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:20:05.34 ID:ma21ZHtA0


遊び人(怖い…っ)

遊び人(分かってるんだ………俺はこんなところにいるような役どころの人間じゃねぇ…)

遊び人(結局、何もかも誰かの支配の下だったってことだろう。俺はそこで燻り続けて、最後に死ぬ…)

遊び人(その支配を打ち砕くなんて大それたこと、恐ろしくてできやしない。飼い慣らされながら、惨めに生きていて、それでもいいんだ)

遊び人(俺は、俺は…っ、ただの遊び人なんだ! どこにでもいるクソ下らない人生の敗北者なんだよ!)

遊び人(放っておいてくれよ………!!)



――炎獣《俺、きっと守るからっ!》

――炎獣《魔王のこと、守るから………!!》

――魔王《炎獣…! 炎獣っ! 死なないで、お願い…っ!》

504 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:25:19.77 ID:ma21ZHtA0

遊び人(ああ)

遊び人(炎獣と、神が、ぶつかる)

遊び人(途方もない感情が弾ける――)






――魔王《ね、ちょうちょつかまえるあそび、しよっ!》

――炎獣《ちょうちょ?》

――魔王《うん! あ、ほら、とんできた!》

――炎獣《…つかまえ王「こ、いでi…




万がo0一と、わ風jうてましととき54ま王(こ魔王わい!)?(だか、!!)―…』?王()?――ッ







鬼「ッ!y6?ん!?は――」ス!!mw「」王(…、に?が、てる風p1「ッ…ぁ、はぁ」ェ…」?゙ォオォ…魔『……(、イツのは!?ったいらん)(…か、れも王の品ケな! こ加護の正っ魔人『…イそのの尋3b常やい。てもい刀打ちるルやないば、)?とく、ラけて"分!」ュゥウ…


505 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:26:21.47 ID:ma21ZHtA0
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506 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:28:03.11 ID:ma21ZHtA0
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507 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:32:29.22 ID:ma21ZHtA0


遊び人(やめろ!! もう入ってくるな!!)



「いは、自分を1が来る」ろ」魔人『…』「あ、や、物…!」んか…!?」?人』ス――ュッ鬼「んならそ決めさもうでいなrボッ………(…? な、動か))?(か………半身がれ…シャ人『…』…』ル…魔王「ひっ王(ここっ…!!』(あ……ゅうに、むく…)」ドッ魔人』゙ワ…「めに!!バッ?炎獣るなっ!!゙カッ!!『


遊び人(やめろっ!! やめろッ!!)


もい!)…』ズ…?獣(だ、。る――)?雷帝「""…!!」バァッ!!人『』」木「ォオォオッカッゥン…――…』ッ…帝」炎獣「、はあ…魔……タ…や、った、木竜「…様中、か?ええ」「が…神の加がをvした。…儂、い」雷帝「質をがそtにす護。の器らい、っ言れが」「の小な、の6gをめypていと??「、ううことう。なな…、ななる9はもあまppいて「る種、うす。どはに、意をて」……。すが、うくを」む。し、お。よのう」炎獣「」?竜「むん?んじゃ、ってる」…翁。は反。でさえのはきう。んをのくど」雷8帝凰供何かい。…」「…ふうむ「て、うやららっ、竜「なしおる」…

遊び人(やめろぉおぉおッ!!)

力gの大部分氷姫「い 』「あ、や、物…!」んか…!?」?人』ス――ュッ鬼「んならそ決めさもうでいなrボッ… !y6?ん!?は――」ス!!mw「」王(…、に?が、てる風p1「ッ…ぁ、はぁ」ェ…」?゙ォオォ…魔『……(、イツのは!?ったいらん)(…か、れも王の品ケな! こ加護の正っ魔人『…イそのの尋3b常やい。てもい刀打ちるルやないば、)?とく、ラけて"分!」ュゥウ ……(…? な、動か))?(か………半身がれ…シャ人『…』…』ル…魔王「ひっ王(ここっ…!!』(あ……ゅうに、むく…)」ドッ魔人』゙ワ…「めに! よいよ…ってワ炎獣「でも、そ王国軍の本体をru壊…。だその甲前だ」ぉしっのジ木竜「やってお持ちますか竜「hdjfほdほっから氷姫「無理すうとt言う儂kらおるとい兵士「qし、王「…今は何兵士陛、ちらの状…。町のら、急の報のこと」「町…いう、器商会か」上げてみよ」はっ」゚サ?い、倉モンは部せ!い!おい、こっちねぇ!めェらしがれ!!」…」員「社か。大配完てやす」人「ああ、ご苦「る」うの
508 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:33:52.83 ID:ma21ZHtA0
」雷帝「質をがそにす護。の器らい、っ言れが」「の小な、のをめていと??「、ううことう。なな…、ななるはもあまいて「る種、うす。どはに、意をて」……。すが、うくを」む。し、お。よのう」炎獣「」?竜「むん?んじゃ、ってる」…「炎タタ「! ぬしじゃ 「                  」 そjくそれでj戦?」魔王「、治竜「う6j帝「!?…あれス…?姫「もyu……ん雷!」魔王かった…倒のね竜「全無をしおヒュィイ炎獣「…獣「がko0で倒し「何?」「――






遊び人(――え?)







「         」





遊び人(………お)


遊び人(お前は)




































 ――――ゴ――――ゥ――ン――――ッ――!!!――――













509 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:35:27.94 ID:ma21ZHtA0




















魔王(………)




魔王(終わった)






510 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:37:10.43 ID:ma21ZHtA0



魔王(出し尽くした)



魔王(私の全てを)



魔王(全てを引き替えに、私は)



魔王(ーーあの子供を倒した)



魔王(そうして私は今度こそ失ったんだ)








魔王(炎獣を)




511 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:38:49.48 ID:ma21ZHtA0



魔王(隣には、誰もいないし)


魔王(私の体はもう動かない)


魔王(――私の旅は終わった)


魔王(もうこれ以上、どこに行きようもない)


魔王(そうして私は、何を得たのだろう?)


魔王(分からない。………けれど確かなことは)


魔王(神は死んだ。もう勇者も魔王も生まれない)


魔王(こんな苦しみを味わう者は、もう現れない)


魔王(だからこれでいい。どこへ行く必要もない)



魔王(ただゆっくり)



魔王(ここで朽ちてゆこう)



魔王(………炎、獣)



512 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:49:23.76 ID:ma21ZHtA0



魔王(私も………そっちに、行く…)



魔王(………よ…)











魔王「」




































少年「はは。まだ死ぬには早いよ、魔王」

513 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:50:25.23 ID:ma21ZHtA0

少年「いやあ、危なかった」

少年「思いのほかダメージを受けてしまったなぁ…まさか、君達がここまでやるとは…」


少年「ふっ、くくく。ねえ」

少年「本当にさ、僕は信じられないんだよ…」


少年「まさかただのいち生命が、この世界の管理者である僕を、ここまで追い詰めるなんて…!」

少年「こんなスリリングな戦いが、描かれることになるなんて………っ!」


少年「魔王には今回人類へ大きなダメージを与えてもらうために、今までにないほど強大な加護を授けていた…それがそのまま我が身に返ってきたことで思わぬ被害を…」

少年「いや! そんな無粋なことはどうでもいい! それよりも炎獣の決死の覚悟! そして溢れだす美しい想い出たちっ!」

少年「ああ…っ、本当に胸を打たれたよ! 言葉に出来ないくらいっ!」


少年「…そうして魔王。君自身も最早空っぽになるほど自らを犠牲にして魔弓を放った――」

少年「けれど僕は倒れなかった。この身に一握りの力を残してこうして立っている」

少年「惜しかった…! あと一歩で君達は成し遂げられず………そして全ての努力は水泡に帰す」


少年「そう。――心地の良いバッドエンドだ」

514 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:27:53.29 ID:ma21ZHtA0

少年「魔王…そして四天王」

少年「それに魔法使いの思惑。国王の策。………管理者である僕を倒そうという謀の全ては、敗北したんだよ」


少年「ふふ。上質な悲劇って、なんて甘美なんだろう………うっとりしてしまうよ」

少年「ああ…たまらないなぁ。いつだって僕の作り上げた魔王と勇者は情感豊かな物語を紡いでくれる」

少年「僕の美しい友人であり、想い人であり、ママのような理解者さ」

少年「今回のお話も心に染み入るね…。………でも、これだけの幕引きを見てしまった今」


少年「――更に情熱的なストーリーを見てみたくなってしまうよね…?」


少年「…ふふふ!僕に良いアイディアがあるんだ………!」

少年「僕の身に残る力を、全てまとめて君に与えよう、魔王!」

少年「今や脱け殻同然の君には、抗う力はない。…今度は純粋な殺戮兵器になってしまうだろう」

少年「そうなった君は、あの荒廃した世界に現世の地獄を形作ることとなる…!」

少年「ああ、わくわくしてきた! 君は恐ろしい残忍さで破壊の限りを尽くし、そして人々にこう呼ばれるんだ」


少年「"大魔王"、ってね!」


少年「ふふふっ! 誰一人として君に立ち向かえる力の持ち主などいないのだ! きっと夢のような混沌に陥るだろう!」

少年「世界は暗黒の時代を迎えることになる………ふふふ。けれど安心して」

少年「また僕の力がこの身に戻ったら、今度は大きな力を宿した黄金の勇者を作り上げてあげるから」

少年「そうして、希望を切り開く夢の冒険が、再び始まるのさ」

515 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:29:22.25 ID:ma21ZHtA0

少年「ただ、君に力の全てを与えてしまったら、次に勇者を作れるのはいつになってしまうかな…君達の感覚で言えば百年近く後になるかも」

少年「大魔王たる君を見ていれば退屈しなさそうだけど、出来れば今の君にももう少し楽しませて欲しいなぁ………」

少年「………いや、どうやらここから君の逆転はなさそうだね。少しばかり、寂しいよ」

少年「人々の祈りが君に届いて奇跡の復活、とかさ。最後の最後の想いの力で再起、とかさ。そんな展開もちょっと見てみたかったかもね」

少年「…でも、まあ」

少年「これで終わりだね」


少年「…魔王。楽しませてくれて、ありがとう」

少年「さあ、改めて君に邪神の加護を与えよう」

少年「大丈夫。圧倒的な力に任せていれば、君に約束されるのはただ至福の感覚のみだ」


少年「僕に残されたこの力の全てを吸いとって、絶大な力に身をゆだね――」

少年「人の世の地獄の物語を紡ぐ、偉大なる存在に――」




少年「大魔王になるがいい!!」




516 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:30:08.03 ID:ma21ZHtA0



――ォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォォオォオォオォォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオ…!!!




少年「…ふふ。そうだ」

少年「空っぽで、感情さえ抱けない君はもはや受け入れるしかない」

少年「逆らうことも許されない全ての生命は、畏怖を持って君に従うだろうね」

少年「…ああ、でも彼女がいたな。そう、冥王」

少年「けれどさしもの冥王も、この力には敵わないだろうね。…ふふ。いよいよ自分に死期が迫ったら、果たして彼女はどんな思いを胸に戦うのかな…っ?」

少年「楽しみだなぁ…! 冥王すら敵わない崇高なる大魔王………!」

少年「ふふふ! 君はこの後百年、世にも恐ろしい修羅の物語を刻むんだ!」

少年「さあ………新たなストーリーの幕開けだ!!」



















魔王(――――――)

517 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:31:17.64 ID:ma21ZHtA0

少年「…ん?」

少年「なんだ…? 魔王に…」



魔王(――――――)



少年「感情の、揺らぎ?」

少年「いや。まさかそんなはずないよね」

少年「あの魔弓と引き替えに、魔王は全てを失ったんだから」



魔王(――――たい)



少年「!?」



魔王(――――――苦しい――)


魔王(――痛い――――)



518 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:32:03.29 ID:ma21ZHtA0

少年「なんだ、これ」

少年「感情が………芽生えている…?」


魔王(――――やめて――)


魔王(もう――――戦え――ない――――のに――)



少年「…苦痛?」

少年「痛みのようなものが、魔王の自我を呼び覚ましている」

少年「そんな…まさか。何故………!?」

少年「一体、誰がこんなことを………」



魔王(――や――めて――――)

魔王(――――もう――休ませ――――て)



『ふざけんじゃねぇ』

『てめぇみたいな悪人を、楽にさせてたまるか』

『俺はお前が憎い』

『俺の全てを奪ったお前が』

『俺の愛しい仲間も、愛しい女も、全て全て…!』


『お前が殺したんだ!!』


519 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:32:53.10 ID:ma21ZHtA0

魔王(――あ――ああ――)


魔王(あなたは――――)



『覚えてくれていなくて結構だ。どうせ俺は、お前が蹴散らした虫けらに過ぎねぇんだからな!』

『くそ! くそ! くそ!』

『何が勇者一行だ!! 俺はまんまと操られて、お前に全てを奪われた!!』


盗賊『呪ってやるぞ、魔王――!!』

520 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:41:36.91 ID:ma21ZHtA0

盗賊『お前のせいだ!!』

盗賊『お前が攻めてきたせいでみんな死んだ!!』

盗賊『剣士も、エルフも、斧使いも、騎士も、魔女も、狩人も、吸血鬼も!!』

盗賊『軍師も………っ!!』

盗賊『お前の…お前のせいで!!』


魔王(――――痛い――)

魔王(――苦し――――い)



少年「これは………っ、死者の念…!?」

少年「この無の世界に蠢く亡者の意識が…」

少年「魔王に向かって集まり始めている、のか…!」


魔王(――焼けるようだ)

魔王(助けて――)



戦士『…助けて?』


戦士『助けて、だと? お前が?』

戦士『あれだけ殺しておいて、自分だけ楽になりたいと?』

戦士『笑わせるな。もっと苦しめ』

戦士『死よりも激しい辛苦こそ、お前に相応しい………魔王』

521 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:42:45.60 ID:ma21ZHtA0

戦士『ふふ…滑稽だ。死んでしまえば生者を恨むことしか出来ない』

戦士『しかしそれが許されるのならば、甘んじよう』

戦士『何より目の前に仇がいるのだ』

戦士『――苦しめ』

魔王(………く、首が)

戦士『苦しめ!』

魔王「や、め………かふッ!!」

戦士『苦しめ!!』




少年「………憎悪」

少年「この物語の犠牲者の魂が…自らを葬った根源を嗅ぎ付け」

少年「その怨嗟が、魔王に感覚を呼び起こしている…!」

少年(死後の気の狂うような静寂を漂う者にとって………死にかけの仇など、格好の餌食だ)



武闘家『おぬしはまだそんな所にいるのか?』

武闘家『悠々と生者を気取って?』

武闘家『…許せぬ』



武闘家『許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ』

522 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:43:31.92 ID:ma21ZHtA0

魔王「うぐっ…!! あっ、ぐぁっ!!」


商人『魔王!! 貴様が!!』

商人『貴様が全てを奪ったッ!!』

商人『今こそその代償を払えッ!!』



少年(ゆ、勇者一行………!)

少年(無惨に散った彼らの途方もない怨嗟が吹き出してくる――)


少年(いや、それだけじゃない!)




女勇者『お前さえいなければ…!!!』

523 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:44:30.69 ID:ma21ZHtA0


教皇『苦しめ!!!』


軍師『憎い…!!! あなたが、憎い!!!』


虚無『苦痛を味わえ!!!』


兄『もがき懺悔しろ!!!』


『お前のせいで………』

『お前のせいで………!!』




魔王「うガっ、ゴッ」

魔王「や、メテ」

魔王「おっ、ネガ、いッ………」


524 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:45:32.08 ID:ma21ZHtA0

少年(物語を動かした人物だけじゃない…名もなき兵士から…犠牲になった町民に魔族まで)

少年(この大戦のために死した数えきれない魂が怒号を上げている)

少年(それらがもたらす無数の苦痛は、魔王に意識を取り戻し――)

少年(膨れ上がった呪力は、僕の支配を拒む………!!)



魔王「ぐぁあッ…!!」



魔法使い『――本当は僕がそこに立っているはずだった』

魔法使い『何故僕ではなく、お前がそこにいる?』

魔法使い『…死の苦しみよりもずっと狂気に満ちた悪意を、お前に』


魔法使い『苦しめ』



魔法使い『苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ』



魔王「うぎッ、がっ!!」

魔王「た、たすっ」

魔王「助け――」


先代『………お前………ば………』


魔王「!!」

魔王(お、お父さ)






先代『お前さえ生まれなければ』


525 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:46:27.12 ID:ma21ZHtA0


魔王「そ」

魔王「んな」




魔王「あああ」



魔王「あああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああっ!!!」





魔王「あ――――――」













木竜『あなたの』









炎獣『お前の』








526 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:47:12.17 ID:ma21ZHtA0








炎獣『お前のせいだ』
















魔王「――――――――――――」







   バ  チ  ッ !!



527 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:48:08.93 ID:ma21ZHtA0




少年「っ!!」


少年(は………弾かれた………っ!)




シュゥウウウウ………




魔王「………」 ユラ…





少年「………ま、魔王」


少年「一体………何が、どうなったんだ」


少年「僕の干渉は及んでいない。それなのに君は」


少年「――君は、立っている………!!」



魔王「………」


528 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:49:19.01 ID:ma21ZHtA0


少年「その原動力は僕の与えた力では、ない………」

少年「僕の力を、押し退けた上で君は…――君は甦ってみせた」

少年「それを可能にしたのは、生者の祈りでも、希望の力でもなく…」



魔王「………ふふ」



少年「!」


魔王「どうして?」

魔王「どうして私は生きてるの?」


529 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:50:03.07 ID:ma21ZHtA0

魔王「私は…沢山の人々を死に追いやった」

魔王「…戦場の片隅で事切れた兵士の一人に至るまで」

魔王「その呪いは今、私に返ってきた」

魔王「ああ。きっとこうなって然るべきだったのかもしれない」


少年「ま、魔王………」


魔王「苦痛が疼く。それは片時も私から離れることはない」

魔王「これは永遠の呪い。私に与えられた罰」

魔王「分かっていた。私がどんなことを成し遂げようと、多くを殺めた罪人に他ならないということ」


魔王「――けれど、目の当たりにしたくはなかった」

魔王「お父様にも、爺にも………炎獣にも」


魔王「死の世界の苦痛を前にしたその時には、もう」



魔王「私は………許されるはずがないんだ」


530 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:50:55.63 ID:ma21ZHtA0

魔王「私さえ、いなければ」

魔王「彼らは今も生きていたはずだった」

魔王「………炎獣も」

魔王「ねえ」


少年「!」


魔王「私が愛していたはずの命の怨恨が、血となって巡っているかのように、私を責め立てるの」

魔王「ずっと、ずっと、ずっと………絶え間なく」


少年「………」


魔王「あのまま、あなたの力で自我を消し去ってしまった方が、ずっと楽だった…」

魔王「………今の私にあるのは、身を切るような痛み」

魔王「心臓が鼓動するたびに身体を内から食い破ろうとする、怨念」

魔王「ねえ、どうして?」




魔王「どうしてあのまま私を支配してくれなかったの?」







少年「ふっ、ふふふ」


少年「あはははははははははははははは!!」

531 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:51:45.47 ID:ma21ZHtA0


少年「これは、凄い!! 君は素晴らしいよ、魔王!!」


少年「君は絶体絶命のピンチを切り抜けた…! それを可能にしたのは死した者の恨み!」


少年「魔王を名乗る者に相応しい復活だ!! 僕の力に明け渡すこともなく、君は生き延びることに成功したんだ!」


少年「けれど、呪いによって得た生に、君はもはや喜びを感じられない…!」


少年「多くの者の憎しみを一身に受けて………大切だった仲間にすら恨みを向けられて」




少年「――君の気高さは、失われてしまった…!!」





魔王「お願い」

魔王「もう私を殺して」

532 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:52:55.04 ID:ma21ZHtA0

少年「くくくくく…!」

少年「君の"意思"は、最後の最後のところで君を支えていた光だった!!」

少年「君を君たらしめていた大事なものを、失ってしまったんだ…!!」


魔王「………」


少年「ああ…! なんたる美しい絶望だろう」

少年「ふふふ…。魔王。傷心の君をさらに突き放してしまうようだけどね」

少年「君を殺そうにも、僕にはもうそんな力は残っていないんだよ?」

魔王「…どう、して?」

少年「残った力の全てを君に授けるつもりだったからねぇ。それが弾き飛ばされてしまって、僕には何の力も残っていない」

少年「力の復活までには時間を要する。力を失ってしまったのだから、それまでは僕も取るに足らない非力な子供と一緒さ」

魔王「そんな………」

少年「悲しいよね。辛いよね。ごめんね?」

少年「でも、逆に考えてごらん? 僕は今なんの力もないただの子供なんだよ?」


少年「今なら、首を絞めてでも僕を殺してしまえるんだよ」

少年「君がここに来た望みは、そういうことだったはずだろう?」


魔王「………」

魔王「私には」

魔王「もう、どうすることも出来ない」

魔王「何かを為そうなんて気持ちは」

魔王「欠片も沸いてこない…」


533 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:54:12.74 ID:ma21ZHtA0

少年「あはっ!」

少年「あははははははははははは!! 魔王! 僕を倒そうとやって来た君には、絶好のチャンスなのに!!」

少年「当の君は、ただ生きているのでやっと!!」

少年「――僕らは生きているのに、互いに命を奪い合うだけの力がないんだよ…!!」

魔王「………」

少年「こんな形のゲームオーバーが今までにあっただろうか!!」

少年「引き分けを迎え、お互いに手を出せないまま茫然としているしかない結末…!」

少年「ふふふ! 僕ひとりでは到底思い付かなかったシナリオだ…!」

少年「賢者………本当にありがとう。君のお陰で今までにない展開を楽しむことが出来た」

少年「興奮が、収まらないよ…!」

魔王「………」

少年「魔王が港町より人間の王国に攻め入った、今回の魔王勇者大戦」


少年「その結末は………」

534 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:55:08.32 ID:ma21ZHtA0



少年「――"静寂"だったんだ」




少年「魔王………君はこの物語の主役だった」

少年「仲間と協力し、押し寄せる強敵と困難を退け、世界の謎に挑みかかった」

少年「けれど、最後に僕と引き分けた」

少年「この世の管理者たる僕のことは、やはり倒すことなど出来なかった」

少年「君は所詮、作られた物語の登場人物に過ぎなかった。つまりはそういうことさ」

少年「これで、幕引きだ」



魔王「………………」


535 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 20:44:50.43 ID:ma21ZHtAo

少年「…ふふ! これは次の魔王勇者大戦も楽しみだなぁ」

少年「今回の悲劇ほどのお話にはならないかもね。でも、この戦いを越えてまた新たな英雄が生まれると思うと…ふふふ」

少年「そう、次だ。この余韻に浸るのも良いけど、もう僕は次の準備へ取り掛からないと」

少年「今回は、これ以上展開のしようもないからね…」


魔王「………」

少年「…表情のない人形のようだね。魔王。つまらないや」

少年「そんな顔をしていたって、誰も君を殺してはくれないんだよ、もう。あっちに行ってよ」

少年「僕は次のお話を考えるのに忙しいんだ。ふふ」


少年「…」

536 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 20:58:44.15 ID:ma21ZHtA0

少年「僕が力を取り戻して次の魔王勇者大戦を始めるまでには長い時間がかかる。それまでに次のお話を…」

少年「………」

少年「うん。時間はいっぱいあるんだ。いくらでも考えられる」

少年「…そう。いっぱい………」

魔王「………」

少年「いや、少しの間の出来事だ。力を取り戻すまでなんて。永い時を過ごしてきた僕にはあっという間だよ」

少年「そう。少しの間………」

少年「………いや、でも」

少年「あれ?」



少年「………」


537 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 20:59:41.20 ID:ma21ZHtA0

少年「そうだ…! ね、ねえ魔王!」

少年「君、僕の話し相手になってよ。一緒に物語を考えようじゃないか!」

少年「どうせすることもないんだし、さ。いいだろう? 魔王」

魔王「………もう」

魔王「私を殺して」

少年「………」

少年「…ちぇ」

少年「なんだい。話し相手にもなってくれないのか…」

少年「…どうやって時間を潰そうか」

少年「今まで、いつだって僕の作った英雄達の物語が側にいてくれた」

少年「勇者と魔王を巡る夢の冒険が…僕を楽しませてくれた」

魔王「………」

少年「でも次のお話を始めるまで………」


少年「――あと、百年もかかる」

538 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:00:22.26 ID:ma21ZHtA0

少年「………」

少年「…百年…」

少年「………百年も」


少年「………………」


少年「………ど」



少年「どうしたらいいんだ?」


539 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:01:13.55 ID:ma21ZHtA0



少年「今の僕は完全に力を失ってしまって、例え小さな勇者でさえ作ることは出来ない」

少年「こんなことは………こんなことは、今までになかった」


少年「ここは無の空間。元々なんにもない場所なんだ。だから」

少年「こ…困ったな。物語があったからこそ、僕は時間を忘れて没頭していられたのに」

少年「こんな空白、し、知らない………」


少年「――…空白?」

少年「空白が、百年も続く………?」



少年「は、はは。想像しただけで………」

少年「ど、どうしたらいいんだ…? も、物語がないなんて、僕は…」

少年「そもそも僕は………この無の空間で」

少年「無の空間に、たった一人で…」

少年「………あれ」

少年「あれ。…あ、あれ?」

少年「どうしよう」




少年「物語を失った僕は」

少年「生きているといえるのか?」

540 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:02:00.17 ID:ma21ZHtA0

少年「あれっ。あれっ?」

少年「どうしよう、どうしようどうしよう」


少年「ど、どうしたらいい?」


少年「ねえ」


少年「ねえ、ねえ!」


少年「ねえってば!!」




魔王「………」


魔王「私には」



魔王「どうすることも出来ない…」






少年「――!!」

541 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:02:38.90 ID:ma21ZHtA0

少年「は、ははは…!」

少年「そん、な…あまりに酷いじゃないか」

少年「そうだ………これはあまりに酷すぎるよ」

少年「…おい」

少年「おいっ!」

少年「ふざけるなよ!!」

少年「君がっ、君が僕の力を拒んだりするからっ!!」

少年「こんなこと、ありえないはずだったんだ……!! 亡者の思念を引き寄せて、僕の力を寄せ付けないなんて…っ」

少年「僕は、この世界の制作者であり管理者だぞっ…!! それを、それを――」



魔王「………」

魔王「あなたは、狡猾で老獪なようで」



魔王「その実」


魔王「本当にただの子供でしかないのね」






少年「…ッ!!」

542 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:03:25.15 ID:ma21ZHtA0

少年「黙れッ! 黙れよッ!」

少年「お前がこんなところまで攻めてきたから、こんなことになったんだろ!?」

少年「お前がいなければ、こんなことにはならなかったんだっ、魔王っ!!」

少年「なんとかしなきゃいけないんだよ!! そうじゃなきゃ、く、空白が来るんだっ!!」

少年「君なら何とか出来るはずだろっ!?」

少年「………そ、そうだ。そうだよ」

少年「き、君はあれだけの困難を乗り越えてきたんだ。多くのことを、成し遂げたじゃないか」

少年「僕は見ていた。君は主人公なんだよ、この物語のさ…。だ、だから」

少年「僕のことだって助けてくれてもいいだろっ…!?」

少年「ねえっ!!」

少年「おいっ!! なんとかいえよッ!!」


魔王「………」



少年「こんなのって」

少年「こんなのってないよ!!」

543 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:04:18.54 ID:ma21ZHtA0

少年「あ、あんまりだ!!」

少年「も、物語が、ないなんて」

少年「あまりにもひどすぎるよ!!」

少年「ああ………ああ!!」

少年「く、空白がやってくる!! 物語のないっ、空白が!!」

少年「そんなの、耐えられないんだよう、僕には!!」

少年「だからお話がいるんだ!!」

少年「ずっと、それがあったから僕は………っ」

少年「なのにっ、なのに!!」

少年「こ、こんなこと!!」

少年「物語がなくなっちゃったら、僕っ!」


少年「ひっ…一人きりなんだよぉっ!!」

544 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:05:01.05 ID:ma21ZHtA0

少年「だ、誰か!!」

少年「誰か、お願いだ!!」

少年「ママ!!」

少年「ママ!! どこ!?」

少年「たっ………助けて!!」

少年「お願いだ!!」

少年「僕に…っ」

少年「お話を………っ。ねぇ!」


少年「聞いているんだろう!? 賢者…っ!!」


少年「――………まさか」




少年「まさか、こうなることまで全て分かってて僕を………っ」




















遊び人「………おい」

545 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:05:52.18 ID:ma21ZHtA0

少年「ああ」

少年「ああっ、そうだ…」

少年「君がっ、君がいたじゃないか!! 遊び人!!」

少年「ねえ、お話を、お話を聞かせてよ!!」

少年「君なら面白可笑しい話をたくさん知ってるはずだ!! そうでしょう!?」

少年「何でもいいっ、話して聞かせてよ!!」

少年「例えば、例えばさ!!」

少年「そう、そうだなぁっ、えっと」

少年「ああそうだ…! 全ての冒険を終わらせた勇者が、その後どうなったのか、とかさ!!」

少年「ぼ、僕知らないんだよ! ひとつお話が終わったら次のお話作りに取りかかっちゃっていたからさ!!」

少年「ねえっ、君ならそういう」

少年「そういうさ、面白い話を知ってるはずだよね!?」

少年「ねえ、ねえ、ねえ」

少年「ねえってば!!」


遊び人「………」ス…


少年「………え?」

少年「何? それ………?」

546 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:06:43.47 ID:ma21ZHtA0

少年「君、そんなもの持っていたっけ?」

少年「ふふ、はは。おかしいね。君がそんなものを持っているなんて」

少年「だって君は、何も出来ない遊び人なのにさ。不釣り合いだね、なんかさ」

少年「でも、どこかで見たことある形だな」

少年「ああ、そうだ! それは"どうのつるぎ"じゃないか!」

少年「その剣は確か、勇s

547 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:07:31.31 ID:ma21ZHtA0


ズブッ…

548 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:08:13.80 ID:ma21ZHtA0

少年「………?」

少年「………は………ふ」

少年「あ………ああ…」

少年「こ…これは………ど」

少年「どういう………こと…?」

少年「なん…で、君………が…こん………なこと………?」

少年「君、に…は………大それ…た………事………なん…て」

少年「こ…れっ…………ぽっちも…………」


少年「…………あ…………あ…………」


少年「痛い…!!」

少年「痛い痛い痛い痛い痛い!!」

549 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:08:55.95 ID:ma21ZHtA0

少年「痛いっ!!」

少年「痛いィっ!!」

少年「痛いよぉッ!!」

少年「いたいいたいいたいッ!!」

少年「た、助けてッママ!!」

少年「いたいいたいいたいいたいいたいいたいィッ!!」

550 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:09:36.20 ID:ma21ZHtA0

少年「あ"あ"あ"ッ!! くそっ!!」

少年「なん"っ、でッ!!」

少年「痛いよォッ!!!」

少年「あは!!!」

少年「あはははははははははははははは!!!」

551 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:10:20.20 ID:ma21ZHtA0

少年「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」




少年「アハハはははっははッははハハハははハハハははハははははハハはっはははハハハはハハハハハハハハハハハハは!!!!」








少年「はは………ッ」




少年「………か、ふ………」

552 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:11:06.85 ID:ma21ZHtA0


少年「………け」


少年「………賢、者………」


少年「賢…者………。ね、え………賢…」


少年「………助け…て…よ………」



少年「………さ」


少年「さむ………い………」

553 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:12:29.91 ID:ma21ZHtA0


少年「………か………は………」


少年「………い………たい………」


少年「………さむ………い………」





少年「………死に…たく………」


少年「………………ない」



少年「…ま…だ………僕の………作っ、た………世…界………で」


少年「………僕…の………ため………だ…け………の」



少年「………物………語………を」

554 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:13:11.91 ID:ma21ZHtA0


少年「………………死………にたく」



少年「………ない………………」





少年「………?」



少年「………なん、だ………」


少年「………ぼ…く………は………」








少年「――ちゃん…と………………」



少年「………………生きて………た………………」







少年「………………のか………………」


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