善子「祈りも恋も」

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41 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:24:15.51 ID:cheqrU4L0



梨子「お母さん、善子ちゃんが来たよ」



梨子母「あら!こんばんは〜。善子さんね。いらっしゃいっ」


善子「ど、どうも。こんばんは。おじゃまします」ペコ




リビングに入ると、お母さんが明るく迎え入れた。


よっちゃんはだいぶ緊張してたみたいだけど、ひとまず落ち着いたみたい。
42 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:26:10.02 ID:cheqrU4L0


梨子「それじゃあ、夕ご飯にしよっか」


善子「ええ。このシチュー、とっても美味しそうね!」




梨子母「ふふっ。今日はね、善子ちゃんが来るからって、梨子が張り切って作ったのよ」


善子「えっ、……そうなの?」


梨子「ちょっとお母さん!いつもみたいに手伝っただけでしょ!?」カァ///

43 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:28:19.14 ID:cheqrU4L0


梨子母「なによ〜、恥ずかしがることないじゃない。何度も何度も味見して、よっぽど気合が入ってたのね〜っ」


梨子「うぅぅううう」////





善子「そうだったのね……ありがと、リリー」


梨子「う、うん。どういたしましてっ」
44 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:30:19.96 ID:cheqrU4L0


梨子母「あら、梨子ったらそんな風に呼んでもらってるの?可愛いじゃない」


梨子「もう!からかわないでよっ」//


善子「っ!!」///



今度はよっちゃんも一緒に赤くなって、なおのことシチューが白く見えました。



お母さんったら、からかい過ぎなんだから。

45 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:47:38.02 ID:cheqrU4L0


―――よっちゃんが美味しそうにシチューを食べてくれてる、よかったぁ。



あなたの幸せそうな顔をみるだけで、私も幸せなんだよ。


スプーンがお皿を撫でる音が、まるで福音みたい。





………………でもね。





あのね、よっちゃん。



私ね。



46 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:50:43.73 ID:cheqrU4L0






梨子(ほんとは全部知ってるんだ。って言ったら)



――――――どうする?
47 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:55:00.06 ID:cheqrU4L0
>>40
使わない→遣わない
変換ミスです

続きます。
48 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:11:31.37 ID:4kXr7mid0


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


談笑をしながら夕ご飯を食べていると、すぐに時間は過ぎていった。


少しずつ、気持ちが楽になってきたような気がする。



善子(リリーの作ってくれたシチュー、ほんとに美味しかったなぁ……)


照れていたけど、リリーはやっぱり優しい。


お風呂も先に入らせてもらっちゃったしね。
49 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:13:30.74 ID:4kXr7mid0


リリーの部屋で彼女がお風呂から上がるのを待ちながら、物思いに耽った。




リリーや美味しかった夕ご飯のことを考えると、胸があったかくなる。




―――あったかい、はずなのに。


50 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:14:35.35 ID:4kXr7mid0


このざわめきは何だろう。


リリーの家に来てから、ずっと感じていた。



彼女の優しさを、温もりを感じるほど、胸が痛くなった。



今だってそう。



チクチクと、拍動の度に胸が針に刺されるように痛む。




何か、大事なことを忘れてしまっている。
そんな気がする。
51 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:16:42.72 ID:4kXr7mid0

梨子「――よっちゃーん、お待たせ」



善子「っええ」ビクッ



ぼーっとしていたせいで、リリーが部屋に入ってきただけなのにかなりびっくりしてしまったわ……



梨子「どうしたの?よっちゃん」


善子「ううん、少し考え事してただけ。リリーのシチュー美味しかったなぁって」




梨子「そ、それならいいんだけど……」///





……ちょろい。将来が心配になってくる。
52 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:17:46.78 ID:4kXr7mid0


梨子「……そういえばよっちゃん、結構長風呂だったけど」


善子「そうだったかしら?」



梨子「もしかして、一緒に入りたくて待ってたの?」



善子「違うわよっ!」





いきなりなんてこと言うのこの子!?

53 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:27:47.02 ID:4kXr7mid0


梨子「えぇ……そんなに強く言われたらちょっと傷つくなぁ」



善子「えっ、ちょっと、あの、恥ずかしかっただけだってば。だから………」







梨子「―――っもう、冗談だってば」クスクス


善子「なんなのよぉもう!」



仕返しのつもりかしら。


ちょっと心配して損したわ。

それに、リリーって意外と大胆なのね。
54 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:28:37.86 ID:4kXr7mid0


梨子「それより、まだ寝るまで時間あるよ。なにする?」



善子「そうねぇ……ゲームくらいなら持ってきたわよ。マ〇オとか」



梨子「うん。それじゃあ、ゲームにしよっか!私すごく久しぶりだけど」



そういってリリーは携帯ゲーム機を引き出しから取り出した。
55 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:30:00.92 ID:4kXr7mid0


善子「だいぶ昔のやつだけどいい?」


梨子「いいよ。私もそれやってたし、懐かしいなぁ」


善子「へぇ、梨子もゲームやるのね」


梨子「まあねー」



2人でベッドに並んで寄りかかってゲームを始める。
56 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:31:01.53 ID:4kXr7mid0

――対戦するモードにしたけど、ほとんど一方的にやられてしまっている。




善子「もう、リリー上手すぎ!」ポチ


梨子「よっちゃんが下手すぎるのよ」ポチポチ




リリーめ、さてはこのゲーム極めたな……



リリーは楽しそうに画面を見つめて、一生懸命に綺麗な指を動かしていた。
57 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:35:04.18 ID:4kXr7mid0

負けっぱなしじゃいられないわ。


リリーがうとうとしてる今がチャンス!




善子「……よしっ!やっと勝てた!」フフン



梨子「ああっ!……うーんまあ、仕方ないか」


善子「ふふん、堕天使は最後に勝つのよ」


梨子「はいはい、よく出来ました」



善子「うんっ。……あ、もうそろそろ寝る時間よね」
58 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:37:05.27 ID:4kXr7mid0

梨子「そうね、眠くなってきたし、寝よっか」


梨子「それじゃあ、私はこの布団で寝るから、よっちゃんは私のベッド使っていいよ」



善子「なんかいろいろ悪いわね。お世話になってばかり」



梨子「そういうものでしょ?」



善子「そうなの?」



梨子「そうなのっ」
59 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:50:18.22 ID:4kXr7mid0

リリーが電気を消して、部屋は真っ暗になった。




梨子「それじゃあ、おやすみ。よっちゃん。」




善子「ええ、おやすみなさい、リリー。」




……目を閉じると、私の世界は一面真っ黒になる。
60 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:52:32.80 ID:4kXr7mid0


やっぱり怖いな。


またあの夢をみるんじゃないかって思うと、体が震えてくる。


私が、泣き崩れているだけの、それだけの夢。





……情けないわよヨハネ。

しゃんとしなさい、しゃんと。
61 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:55:13.08 ID:4kXr7mid0


善子「……、はぁ…………っ……」






梨子「よっちゃん」




善子「っどうしたの?リリー」



梨子「―――大丈夫だよ。大丈夫」



善子「……ええ、ありがと。リリー」

62 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 00:56:39.49 ID:4kXr7mid0


リリーは、そっと私の手を握ってくれた。


それだけで体の震えはすぐにやんじゃったみたい。


やっぱりすごいのね、リリーは。









私の意識は、静かに遠のいていった――――――
63 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/04(水) 01:00:33.14 ID:4kXr7mid0
今回はここまで
呼称ミス多くて申し訳ないです。気にしないで読んでくださると助かります。

今回は穏やかパートも混ぜましたが、次回から佳境です。是非最後までよろしくお願いします。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 01:47:26.65 ID:v/f0UgHk0

Aqoursは公式からしてμ's以上に呼称安定してないし、呼ばれたことないコすらいるんだし大丈夫だよ
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 01:50:26.74 ID:6yzOp3oZo
大丈夫じゃないぞ
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 02:11:22.83 ID:rA5xiWdRO
乙〜
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 20:06:55.96 ID:1AkN6sbSO
>>28
ちょっと引いたけど無知ならしかたないね
68 : ◆/dCcy0t.c. [sage saga]:2017/10/04(水) 23:05:33.85 ID:4kXr7mid0
今日は更新ありません。
反応ありがとうございます!応援でも批評でも、私が書いたものを読んでくれている人がいるのが分かるだけで本当に嬉しいです。
なんとか2期放送開始までには完結させます。よろしくお願いします。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 23:10:56.18 ID:NxR1Kie8o
おつ
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 00:43:16.47 ID:kFp3PZxlo
続きはよ
71 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 21:42:02.94 ID:vJwqBb4D0
更新します!今回で完結の予定です。
昨日は1日、物語の根幹を吟味してました。書き溜めはほとんどありませんが、全力で書ききります。
よろしくお願いします。
72 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 21:44:14.77 ID:vJwqBb4D0




「―――――――――――ん」




「――――――ちゃん」





「―――よっちゃん」







頭がぼーっとする。



誰かが、私を呼んでいるのが聞こえた。




視界は真っ暗で、声だけが水の中を彷徨うみたいに響いている。
73 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 21:58:31.87 ID:vJwqBb4D0



「…………リリー?」





「おはよう、よっちゃん」





「リリー。私、何も見えないわ」




「ううん、よっちゃん、ちゃんと見えてるよ」


74 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 22:15:29.13 ID:vJwqBb4D0


どういうことだろう。




不思議に思っていると感覚が徐々に戻ってきた。





足が地面についている感じ。私は、立っているのかな。
75 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 22:18:01.25 ID:vJwqBb4D0



「やっぱり、何も見えないわよ」




「よっちゃん、目を開けて?」




リリーがそう言うと、一瞬で視界が開けた。
けど……


ここは………………音楽室?




真っ暗で、リリーがピアノの椅子に座っている以外はほとんど分からない。




なんだか、根拠はないけど、嫌な予感がする。



私の、不幸だけは的確に射抜く直感が、そう告げていた。
76 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 22:29:51.92 ID:vJwqBb4D0



善子「訳が分からないわ、なんで私は音楽室にいるの?」




善子「それとも、また夢を見ているの?あの悪夢じゃ、ないみたいだけど」





梨子「うん。よっちゃんはね、ずっと夢を見ていたんだよ」





善子「ずっと?それじゃあなんで、私は音楽室にいるの?」




梨子「よっちゃんが、ここに来たいと願ったからだよ。ここは、“貴女の夢の中”だから。」




会話になっているようで、なっていない。
77 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 22:43:49.07 ID:vJwqBb4D0


善子「私は、リリーのお家でお泊まりをしていて、部屋で寝ていたわ」



梨子「そうね、でもここは夢の中だもの。」



善子「なんでもありってこと?」



梨子「あなたがそう思うならね」





さっきから、リリーの言っていることの意味がいまいちわからない。



それに、彼女のいつもの穏やかな表情は、そこには無かった。



何かを決意したような、そんな固い表情。
78 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 22:54:26.25 ID:vJwqBb4D0



善子「ここが夢なら、もうすぐ私は夢から醒めるの?」



梨子「―――きっとね」




リリーは少し言葉に詰まったあと、頷いた。





梨子「よっちゃん、少し私とお話しよっか」




善子「急に改まって、なに?話くらいなら、いくらでも付き合うけど」


というか、



善子「これが私の夢の中なら、あなたは誰なの?」


善子「私の中のリリーってこと?」




梨子「ううん、多分私は私だよ」


ますます分からない。
79 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 23:01:22.97 ID:vJwqBb4D0


梨子「だって私は、今こうしていろんなことを考えて、感じているもの」



善子「私から見たら、そんなこと分からないわ」




梨子「そうかもね。でも、そうなの」




善子「ふーん。それで、話って何?」





得体の知れない焦りが、私の言葉尻を尖らせた。



話を聞きたいと思うけれど、同時に心のどこかが、聞いてはいけないと叫んでいる。
80 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 23:15:06.09 ID:vJwqBb4D0



梨子「どうしてよっちゃんは、あんな悪夢を見ていたんだと思う?」



善子「分からないわ。貴女は知っているの?」



梨子「知ってるよ。よっちゃんは知りたい?」



善子「わたしはっ………………」





知ってはいけない。でも、知らなければならない。



自分でも不思議なほど、意識とは関係ないところで思考が駆け巡る。
81 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 23:25:25.06 ID:vJwqBb4D0


善子「私は、きっと知らなきゃいけない」




梨子「うん。よっちゃんなら、そう言うと思ってたよ」



リリーはそう言って、今度は儚げな笑みを浮かべている。




梨子「……それじゃあ、これを話したら、お別れになっちゃうね」
82 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 23:56:52.48 ID:vJwqBb4D0


善子「――――――は?」



善子「ち、ちょっと待って、なんでそんなこと言うのよ」



善子「なんで?あの夢の話をするだけなんでしょ!?」



善子「なんでそうなるのよ!」




言ってることは支離滅裂なのに、頭に入ってきてしまう。


リリーは淡々と続けた。
83 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/05(木) 23:59:07.43 ID:vJwqBb4D0


梨子「それはきっと、お話を聞いたら分かるよ」



善子「だって今、貴方がお別れって言っ」




梨子「やっぱりよっちゃんは、とっても優しい子なんだよ」



善子「やめて」




梨子「あの夢はね」




善子「やめなさいッ!!!」




梨子「……」
84 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 00:06:00.34 ID:ChffUwC00



梨子「ひどいなぁ、よっちゃんが知りたいって言ったんだよ?」




善子「そっちこそ、どうしちゃったの?全然いつものリリーじゃない。」




梨子「……そうだね。私らしくない」




梨子「ごめん、あんな言い方しちゃって」




善子「……」

85 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 00:12:31.77 ID:ChffUwC00



善子「でも、今リリーが言ってること、嘘だなんて思いにくい」


リリーの嘘にしては上手すぎるもの。



善子「きっと、覚悟が必要なのは私の方」





私がしていた隠し事。



リリーにも、自分にも秘密にしていたこと。




そう思っていたけれど、きっとそれを、リリーは始めから知っていたんだ。



善子「こっちこそごめん。話してくれる?リリー」
86 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 00:17:25.90 ID:ChffUwC00


梨子「……やっぱり、よっちゃんだね」ニコッ



そう言って、リリーはやっと、いつもの笑顔で笑ってくれた。





梨子「あのね、よっちゃん」



善子「…………」ゴクリ




静寂が訪れ、そしてそれは、私にとって永遠にも思えた。
87 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 00:27:31.17 ID:ChffUwC00


リリーは一つ息を吐いて立ち上がった。

ゆっくりと私の元へ歩いてくる。




私はそれを、何も言わず見つめるしかなかった。


そして、リリーは私の目の前に立った。

88 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 00:31:49.93 ID:ChffUwC00



梨子「……やっぱり、お話はおしまい」



善子「ええ、そうね」








梨子「――――今までありがとう、ばいばい」



梨子「愛してるよ、よっちゃんっ」スッ









――――――リリーは私に、顔を近づけて……






唇が触れ合う。



とっても、優しいキスね。
89 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 00:32:39.13 ID:ChffUwC00







……………………そして、私は。




すべてを思いだした。
90 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 00:49:49.06 ID:ChffUwC00


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




夏の終わりのある日、リリーは、私を庇って死んだ。




二人で一緒にバスを待っている途中、運転手が発作を起こして歩道に突っ込んだのだ。



本当に、いっそ死んでしまいたいと思うほどの不幸体質。




でも、死んだのは一人、リリーだけだった。





私たちはバス停で、話すのに夢中になっていた。


私より先にバスの異常に気づいたリリーは、すぐ目の前に迫るそれを見て


もう二人で避けることは出来ないと察したのかもしれない。




私を突き飛ばして、間抜けな私が気づいたときには、リリーは道路の随分離れたところで倒れていた。
91 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 00:57:24.67 ID:ChffUwC00


駆け寄った時には、全てが遅かった





なけなしの意識で救急車と警察を呼び、

呆然と立ち尽くす。





リリーのお母さんが通報を聞いてすぐに駆けつけた。

耳を裂いたのは、悲痛な叫びだった。





無力な私は、目の前の出来事がどうか夢であるようにと祈ったけれど、



時間は無常にも、私達を置き去りにしていった。
92 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 01:00:29.12 ID:ChffUwC00


――――みんな泣いていた。



Aqoursはバラバラになった。


本選を目指していた輝きは、とうの昔のことのように感じた。



私は学校に行かなくなった。




お母さんは、何も言わず私の頭を撫でた。




私には、泣くことなんて出来なかった。




そんな権利、私にはきっとないと思ったから。









全部、私のせいだから。
93 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 01:07:16.28 ID:ChffUwC00




この世界はきっと、



一瞬の儚い白昼夢なんだ。



私がそれを自覚した瞬間に、

つまり、ただの空想だと気づいたときに




シャボン玉が割れるようにあっけなく消える




それだけの、夢。
94 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 01:14:40.43 ID:ChffUwC00



本選を目指してみんなで頑張るのも。


リリーのお母さんと仲良くなるのも。


リリーと一緒に遊んで、楽しく喋るのも。




私のわがままな望みの虚像。


後悔からの逃避、苦し紛れの懺悔だった。
95 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 01:16:23.75 ID:ChffUwC00



そして、ただ声を押し殺して泣いていた


あの時夢で見ていると思っていた私こそが、


夢なんかじゃない、




心の一番奥の、本物の私だったんだ。


96 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 01:25:15.15 ID:ChffUwC00


そして、リリーは私を信じていた。




私が、現実を受け止められること、


この夢を、終わりにできることを。




彼女は、それで本当に、もう二度と戻れなくなるというのに。




リリーはあのとき、どんな気持ちで笑っていたのかな。

97 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 01:32:08.26 ID:ChffUwC00




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





目の前に、もうリリーはいなかった。



どこを探しても、音楽室だと思っていたそれは、ただ闇が広がるばかり。





善子「ねぇっ……リリー」



善子「返事、しなさいよっ…………」グスッ





善子「消えないでよ!まだ私は」




善子「一番伝えたいこと、あなたに伝えられてないのにっ!!」ダッ
98 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 01:37:46.89 ID:ChffUwC00



闇の中を、ただがむしゃらに走る。




頭では分かっている、もう彼女はいないんだと。


それでも、体はいつの間にか動いていた。
99 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 01:51:40.61 ID:ChffUwC00

彼女の名前を叫びながら、私は必死に走った。



でもその声は、届くことなんてない。




「リリーーっ!!!―――うぐっ」ドゴッ



……走り続けていると、壁にぶち当たった。



どうやら不幸なのは徹底されてるみたい。
100 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 01:53:40.94 ID:ChffUwC00



私は考える。

善子(どうして、あなたに出会えたのかな)




きっとあなたと繋がってるって、信じていたから?


それが嘘じゃないって、そう信じていたかったけれど。



結局、幻は幻なのね。






あの日に戻りたいって、たった一つの願いも叶わないなら…………
101 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 01:56:41.10 ID:ChffUwC00



善子(自らの手で、終わりにしよう)
102 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 02:00:15.45 ID:ChffUwC00



そこにあったのは、黒い扉


きっとその向こうにあるのは、本物の運命






………………行かなくちゃ。



彼女の為に。
103 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 02:05:13.39 ID:ChffUwC00



……扉に手をかける。



一度だけ振り向いて、声の限り叫んだ。




善子「私も、リリーのこと!」




善子「――――大好きよっ!!!!」





扉を開けたとき、彼女の声が聞こえた気がした。


104 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 02:08:34.45 ID:ChffUwC00
おわりです!
最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!

今回初めてSSを書いてみて、想像以上に大変なんだと知りましたが、同時にとても楽しかったです。

絶対また書きます。そのときは、是非また読んでいただければ嬉しいです!
105 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/06(金) 02:11:34.63 ID:ChffUwC00
あと、敢えて答えを出さなかったところがいくつかあるので、よかったら自分なりの答えを考えてみてくださいね。

お気づきかと思いますが、タイトルやストーリーは、
「Daydream Warrior」をもとに考えました。

以上あとがきです。
ありがとうございました!
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/07(土) 01:52:22.09 ID:CD7NIupSO
本編と後書きのノリが違いすぎて引く
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 21:05:31.47 ID:DAkUZ6r60
1回読み直すとすんなり入ってくる感じかな
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