善子「祈りも恋も」

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1 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 22:35:18.56 ID:82VEg7fQ0
善子「っ………………!!!」


無理やり意識が引き起こされたように目が覚めた。
時計を見れば、アラームより1時間も前に起きてしまったみたい。

霞む視界には、ただ暗い部屋の天井が広がっているだけで、思考も回らない。


脳裏に張り付いた夢の中の私が、延々と頭の中に居座っている。



しばらくの間二度寝を試みたけど、下着が張り付くほど汗をびっしょりとかいているのに気がついた。


善子「――はぁ……お風呂入っておこうかしら」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1506864918
2 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 22:41:09.66 ID:82VEg7fQ0
よしりこです。多分シリアス。
よろしくお願いします。
3 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 22:44:10.47 ID:82VEg7fQ0
―――シャワーを浴びながら、最近見る悪夢について考える。


実のところ、今日のようなことは今回が初めてではない。
むしろ今日で連続3日目の新記録よ。


何回目かどうかは数えていないけれど、多分、両手でも足りないくらい。

流石にこんな夢を見続けて、堪えてきてる。
4 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 22:48:58.26 ID:82VEg7fQ0
……私が泣いている。たったそれだけの夢。


声を押し殺して、顔を手で覆って、その目からただ涙が溢れてくる。


その姿は、懺悔しているようにも、逃避しているようにも見えた。



それ以上のことは、自分でも分からない。

というのも、起きてから夢のことを思い出そうとしても、思い出せるのは泣いている自分だけなの。


不気味すぎて気持ちが悪いわ。


善子(堕天使に与えられた試練だとか、ふざけて言ってられなくなってきたわね……)

不幸体質のレベルなんて、とっくに超えてるもの。
5 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 22:54:21.37 ID:82VEg7fQ0
いつになったら、どうしたら、この悪夢は止むんだろう。


どうしようもない不安に駆られ続けるのは、もううんざりよ……


一日中、咽び泣く自分が脳裏に張り付いて離れないなんて、あんまりよ……



身体がだるい。


学校、行きたくないなぁ…………





―――それでも、Aqoursの皆に迷惑はかけられないもの。
練習しなくちゃ。



善子「よし、今日も行くわよ」



善子「頑張るのよ、堕天使ヨハネっ!」
6 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 23:15:32.63 ID:82VEg7fQ0
結局あの夢のせいで、最近Aqoursの練習にも身が入らなかった。

私にとって、それが一番避けたい事態だったのだけれど。



曜「ワン、ツー、スリー、フォー!ワン、ツー……」


曜「千歌ちゃん少し走り気味!善子ちゃん遅れてるよ!」


千歌「うんっ」タッタッ

善子「分かったわっ」 アトヨハネ!



ステップの練習も、私は本調子には程遠い。
それはみんなの目にも明らかみたいで……


果南「善子ちゃんどうしたの!全然振りにキレがないよ!」

善子「ご、ごめんなさい……」
7 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 23:20:03.32 ID:82VEg7fQ0

ラブライブ本選が近いせいか、みんな練習に熱が入って、少し雰囲気がピリピリしてる気がする。

でも、それも全部、みんなの夢のためなんだ。


このままじゃだめ、頑張らなきゃ。


迷惑、かけっぱなしじゃないの………っ





善子「ふっ……はっ…………ぅわっ!!」

梨子「善子ちゃん!大丈夫?」
8 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 23:23:19.15 ID:82VEg7fQ0


足がもつれて転んでしまった。みんなの視線が私に集まる。

ダイヤ「………3分休憩しましょう。これでは効率も良くないですわ」


千歌「っはあぁああ、今日もハードだねぇ」




休憩時間だというのに、果南や曜は振り付けの確認をしている。


ほかのメンバーも全く集中は切れていないみたい。




みんな、本気なんだ。


私も……頑張らなきゃ……。
9 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 23:28:40.09 ID:82VEg7fQ0



善子「っ、はぁっ……はぁ…………」ガクッ


立ち上がろうとして、膝から崩れ落ちるように体勢を崩した。


何もない地面でつまずくなんて、今日もヨハネはアンラッキーね……





―――絶対、よく寝られなかったせい、分かってる。

それでも、悪夢程度で揺らいでいたら、みんなに迷惑をかけてしまう。

今が一番大事な時期なの。そうでしょう?


屈してはいけないわ、ヨハネ……
10 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 23:31:13.62 ID:82VEg7fQ0
梨子「ちょっと、よっちゃん大丈夫!?」


善子「だっ、大丈夫よ……気にしないで」


花丸「全然大丈夫じゃないずら!!」


ルビィ「よしこちゃん、休んだほうがいいよぉ」


曜「顔色もかなり悪いし、保健室のベッドを借りた方がいいかも。連れていくよ!」


みんなが駆け寄ってくる。
これも、一度目なんかじゃない。
11 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 23:39:36.96 ID:82VEg7fQ0


善子「ダメよ、本選が近いんだから、まだ」


ダイヤ「だからこそですわ!!身体を壊してラブライブに出られなくなったら本末転倒でしょう!」


善子「……っ!わ、分かったわよ」



曜「じゃあ善子ちゃん、おぶってくよ。保健室まで、ヨーソロー!」


善子「流石にそれはいいわ………」


ダイヤの剣幕に圧されて、やっぱり心配だとついてくる曜と渋々保健室へと向かう。
12 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 23:44:13.13 ID:82VEg7fQ0
梨子「――よっちゃん!!」

善子「っ……?なに?」



背中越しに声をかけられた。
声色から不安が漏れてる。


梨子「……ううん、なんでもない。今はゆっくり休んで?」


善子「ええ、ごめんなさい」






梨子は何か言いかけて、飲みこんだ。


また、みんなに迷惑かけちゃったなぁ……
13 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/01(日) 23:45:18.33 ID:82VEg7fQ0
今回はここまで。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 00:28:52.20 ID:MOtGiUTqO
楽しみ
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 12:26:28.72 ID:nd4OEes3o
シリアス期待
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 14:11:16.80 ID:51L3W2HQO
期待
17 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/02(月) 19:59:55.93 ID:d4Eah32H0
再開します。
18 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/02(月) 20:08:51.45 ID:d4Eah32H0


保健室に着くとすぐ眠ってしまったらしい。
ドアを開けたあとの記憶がなかった。



気づくと、時間的にはまだ練習中のはずのリリーがベッドの横にいた。


梨子「あ、目が覚めたのね。ほんとに心配したんだから!」


善子「……ごめんなさい」
19 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/02(月) 20:11:17.32 ID:d4Eah32H0


リリーは本当に心配そうに私を見つめて、しばらくしてやっと少し安心したようにため息をついた。




善子「練習は、どうしたの?」


梨子「ダイヤさんが、今日はもう終わりだって。最近かなりハードだったから、明日もオフにするみたい」


梨子「多分、自分が練習詰めすぎてるせいだって、責任感じちゃったんじゃないかな」
20 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/02(月) 20:15:44.89 ID:d4Eah32H0


梨子「まったくよ、調子が悪いときはちゃんと言わなきゃダメ。いい?」


善子「はい」


梨子「よろしい」 ニコッ



頷いて、リリーはいつもの、本当に優しい微笑みでゆるしてくれた。


目を細めて、ちょっとだけ困り顔の眉で、どんな私も受け入れてくれる、そんな気さえする。




思えばこの笑顔に、私はいつも救われてきた。






そう、いつだって。
21 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/02(月) 20:36:42.57 ID:d4Eah32H0


……だから、無意識にも私は、彼女に助けを求めてしまったのかもしれない。



梨子「――ねぇ、よっちゃん。何か心配事があるんじゃない?」


梨子「ずっと、様子が変だったから」


梨子「私もだし、Aqoursのみんなも。どうしたのって、何度も聞いてくれたんじゃない?」


善子「それはっ………」




梨子「何か、言えない理由があるの?」


善子「…………」
22 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/02(月) 20:56:23.32 ID:d4Eah32H0


梨子「―――私ね、ほんとに不安なの。」



……泣きそうな顔、しないでよ。




梨子「話しかけても、上の空なんだもん。何処かにいっちゃうんじゃないかって、そんな気までして」




私は、あなたにそんな顔をさせるために……?
23 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/02(月) 21:02:08.60 ID:d4Eah32H0



梨子「ねえよっちゃん」



梨子「私に、話してみて。それにみんな、迷惑なんて思わないよ?」



梨子「私は……ううん。私達は、いつでもあなたの味方なのよ?」



梨子「お願い……っ、よっちゃん」









善子「…………あのね」
24 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/02(月) 21:07:53.41 ID:d4Eah32H0
私はね……? リリー。



本当はもっと、言うべきことがあるの。


いえ、正確には、ある“ 気がする ”の。






私の心の、ずっとずっと奥に押し込んでしまったもの。


私が、目を背け続けてきたもの。







―――――あなたに、隠し事をしているの。
25 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/02(月) 21:12:32.45 ID:d4Eah32H0
>>20

まったくよ→まったく


ミスです。すみません、気をつけます。
26 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/02(月) 21:16:00.62 ID:d4Eah32H0
今回はここまで。

文面的に違和感のあるところがあるかもしれません
が、一部は私の不出来で、残りは伏線です。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 21:36:28.14 ID:d4Eah32H0
おつ
28 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/02(月) 21:44:45.39 ID:d4Eah32H0
↑私です。すみません!反応なくて不安で……
IPアドレスって回線によるんですね……
無知と不躾をお詫びします。良ければ応援お願いします。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 22:07:18.02 ID:BQq9jfreO
おつ
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 22:16:39.31 ID:HhJ/d4xYO
見てるよー
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 00:33:44.06 ID:lpwrvJQT0
期待
32 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 21:46:36.93 ID:cheqrU4L0
再開します。今日は多めの更新。
視点の切り替わりがあります。
33 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 21:49:49.95 ID:cheqrU4L0



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




梨子「――泣いている、夢………」


善子「ええ」



思っていたより、話は深刻みたい。


というより、そんなことってあるんだ。




よっちゃんは怯えているように、保健室のベッドの上で膝を抱えている。
34 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 21:55:29.67 ID:cheqrU4L0


話の途中で、

『ふふ、ついに鍛錬を積んできた黒魔術の効果が出てきたのかしら』

なんて言っていたけれど……




やっぱり、不安そうな表情は隠せていなかった。



みんなを心配させないように、よっちゃんはこうして、ずっと無理してきたんだ。





梨子(よっちゃん…………)

35 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:05:01.05 ID:cheqrU4L0


怖かったよね。


そんな夢を見続けて、たった独りで耐えていたなんて。




――――私に、出来ることは。





梨子「…………それなら、」


善子「なに?」
36 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:12:07.75 ID:cheqrU4L0





梨子「今日はうちでお泊まりにしよっか!!」


善子「ふぇ?い、いいの……?」



戸惑った表情で私を見つめる。



梨子「いいに決まってるでしょっ。今のよっちゃん、放っておけないもん」





善子「……ありがとう、リリー」
37 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:14:50.63 ID:cheqrU4L0


梨子「ううん。私に出来ることは、これぐらいしかないから」






善子「―――ほんとはね、夜が来る度に不安だったの」




梨子「うん、よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」






そう言って頭を撫でてあげると、よっちゃんは安心したように笑った。
38 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:17:01.23 ID:cheqrU4L0






お泊まりの用意をするために、よっちゃんは一度家に帰った。


私はよっちゃんを迎える準備をしつつ、今日の話を思い出して考える。



……ただ泣いている夢、か。


梨子(ほんとに黒魔術の効果、なわけないし)



―――やっぱり、なにか嫌なことがあって、そのせいなのかな。

39 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:19:23.86 ID:cheqrU4L0


お風呂を沸かして、お布団を敷いて、お母さんと夕ご飯を作っていると、インターフォンが鳴った。



善子「お、おじゃまします」ペコリ



梨子「はいっ、どうぞあがって?」ガチャッ



こういうのには慣れていないのか、キョロキョロと頭のお団子を揺らしながら、私の部屋までの階段を登っていく。
40 : ◆/dCcy0t.c. [saga]:2017/10/03(火) 22:22:33.24 ID:cheqrU4L0


善子「なんだかいい匂いがするわね」



梨子「今日はシチューなの。もうすぐできるから、荷物置いたらリビングに行こうね」



善子「悪いわね、夕ご飯までいただいちゃって」



梨子「変なところで気を使わないのっ」



善子「はーい」
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