ミリオンデイズ

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318 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:20:36.19 ID:SKk6W+iM0

「あ……っと、そうなんです! 実は社長さんがプロデューサーさんをお呼びでして」

「なるほど。その言伝を青羽さんに頼んだと」

「またいつもみたいに、次の企画のお話だって思いますよ?」

「ええ、きっとそうでしょうね。……となれば、今すぐにも顔を出さなくっちゃあ」

話を聞いたプロデューサーさんは「分かりました」と頷くと、
デスクでやっていた作業を中断して外出の準備を始めました。

これには私も分かりますよと頷きます。

だって呼び出し相手が社長さんじゃ、長時間待たせるワケにはいきませんものね。

「じゃあ青羽さん、留守番よろしくお願いします」

「はーい。プロデューサーさんもお気をつけて」

そんな彼を「行ってらっしゃ〜い」と送り出せば、無事に連絡できたと一安心。

私は広くなった事務室に少しの寂しさを覚えながら、
自分に任せられているお仕事に――アイドル達の衣装作りに――再び着手するのでした。
319 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:21:33.28 ID:SKk6W+iM0
===

けれども、それから数分と経たないうちに事務室の扉が開かれました。

そうしてひょっこりと顔を覗かせたのは、劇場所属アイドルの七尾百合子ちゃんと望月杏奈ちゃんです。

「失礼しまーす。百合子ですが、こちらの部屋にプロデューサーさんは――」

「……いないみたい。入れ違った?」

キョロキョロと辺りを見回す二人……何か用事があったみたいですね。
ですから、私はそんな彼女達に「プロデューサーさんならついさっき」と数分前のことを伝え。

「――そうですか、プロデューサーさんは事務所の方に」

「んと……ちょっと残念、です」
320 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:22:16.45 ID:SKk6W+iM0

言いながらも、百合子ちゃんは手にしていた鞄から一冊の本を取り出しました。

隣では杏奈ちゃんが彼女と同じように、自分の荷物をしばらくごそごそした後で。

「なら、おすすめする予定だったこの本はプロデューサーさんの机の上に」

「杏奈のゲームも、一緒に」

そうして二人は声を揃え、プロデューサーさんに伝えておいて貰えますか? と。

「うん、しっかり伝えておくね!」

当然、事務員である私には伝言を伝え届ける義務があります!

二人は私の返事に満足したようで、お願いします! と頭を下げると笑顔で戻って行きました。
321 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:23:21.12 ID:SKk6W+iM0
===

さらにそれからしばらく経って。

「おはようございまーす! プロデューサーさーん……って」

「……はれ? いないみたいですね」

元気よく扉を開けて入ってきたのは横山奈緒ちゃんと矢吹可奈ちゃん。
それから、プロデューサーさんの姿を探す二人の後ろからスッと静かにもう一人。

「……だから言ったじゃないですか。駐車場に車が無かったから、きっと劇場の中にはいないって」

呆れたように首を振って、腕を組みながら言うのは北沢志保ちゃんです。
322 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:24:11.86 ID:SKk6W+iM0

「いやいやいや、そんなん言うても車が無いだけやったら大人組かもしれへんやん?」

「そうだよ志保ちゃん。万が一ってのがあるんだから!」

「その万が一のチャンスを使ってやることが、たまたま取れたお菓子の差し入れなの?」

反論した可奈ちゃんに志保ちゃんがサクッと言い返します。

すると、わざとらしく彼女の肩に腕を回した奈緒ちゃんが。

「志保〜? たまたまやない、実力やで」

そう言う奈緒ちゃんの握った手には、ゲームセンターで見かけるような景品袋がありました。

中からはこれまたクレーンゲームで取れるような、大きな大きなお菓子の箱が覗いています。
323 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:25:41.75 ID:SKk6W+iM0

「だとすれば、随分安く買える実力ですね」

そうして、肩を抱かれた志保ちゃんが心底鬱陶しそうに口を開けば。

「安く……? 奈緒さん結構使ってたよ」

「可奈、今のは捻くれ屋流の皮肉やから」

「皮肉じゃなくて嫌味ですよ」

「……ホンマに志保は可愛げのない」

言って、奈緒ちゃんは袋の中から取り出した巨大なチョコバント

(っていう名前のお菓子があるんです。バットに見立てたサクサクスナックの表面に、
チョコレートがコーティングしてある駄菓子ですよ)をプロデューサーさんのデスクに置き。

「ほな、私らここに差し入れ置いて行きますから、
後は美咲さんからあの人に伝えて貰っていいですかね?」

「……あっ、私がいたの気づいてたんだ」

「そりゃあ、部屋に入った時からじーっと見つめられとったら」
324 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:26:20.32 ID:SKk6W+iM0

結局、私は奈緒ちゃんから飴玉も余分に手渡されて、
プロデューサーさんへの伝言をしっかりよろしくお願いしますと。

……当然私は事務員なんですから、連絡事項はきちんとお伝えするのが義務であります。

「勿論、ちゃんと伝えておくね!」

奈緒ちゃん達は私の返事に満足したようで、ペコリと頭を下げると笑顔で戻って行きました。
325 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:27:18.96 ID:SKk6W+iM0
===

そうして、貰った飴玉を舐めながら衣装作りを続けていると。

「おやぶん!」

「お兄ちゃん!」

「プロデューサーさん!」

――なんて、一斉に事務室へ飛び込んで来たのは小学生組の三人です。

その、扉を開ける勢いがあまりに凄くって、私はもう少しで飴を喉に詰めちゃうところでした。

……とはいえそんな私のことは余所に、
「あれ? みさきしかいないぞ」とおやぶんの姿を探し始めるのは大神環ちゃん。

「環? いくらお兄ちゃんでも机の下にはいないって」と、呆れ顔なのは周防桃子ちゃんで、

そうして最後に、「ねぇ美咲さん、プロデューサーさんどこに行ったの?」

そう質問してきたのは三人の中でも最年少の中谷育ちゃんです。
326 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:28:31.44 ID:SKk6W+iM0

だから私は、そんな三人にごめんねと前置きした後で。

「プロデューサーさんは今、社長さんに呼ばれて事務所の方に出かけてるの」

すると、環ちゃんは不満でいっぱいという風に顔をしかめ。

「えぇ〜、また社長ぉ〜!?」

「……お仕事の話で行ってたら、暗くなるまで帰ってこないよね?」

困ったように育ちゃんが言うと、桃子ちゃんがやれやれと溜息をついて続けました。

「別に直接渡さなくたっていいんだよ。……お兄ちゃんが忙しいのはいつものコトなんだし、
皆分かってるから机の上に色々置いてってるみたいだし」

だけど、そう言う彼女が一番残念そうに見えるのは単なる私の気のせいかな?

――作業の手を止めて三人の様子を眺めていると、
環ちゃんがまず、ズボンのポケットから両手いっぱいのどんぐりを机の上に広げました。

「なら、たまきもどんぐり置いとこーっと! くふふっ♪ おやぶんビックリするかなぁ?」

次に、育ちゃんが可愛らしい帯のついた栞を本の上へ。

「学校の授業で作ったんだよ」と、押し花の挟まった栞を置いてにこやかに笑います。
327 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:29:20.30 ID:SKk6W+iM0

「美咲さん、桃子たちからの伝言できる?」

「任せて! 伝えるのは私得意だから」

そうして最後は桃子ちゃんの番。

「この前お仕事の時に貰ったんだけど、お兄ちゃんの勉強にちょうど良いかなって」なんて、
彼女がランドセルから取り出したのは映画の優待券でした。

それも二枚、折り目がついたりしないように、クリアファイルでしっかり保管された。

「じゃあ、無くならないようにこれごと机に置いて行くから」

「分かってる。プロデューサーさんにはちゃんと桃子ちゃんに返すよう言っておくね」

私は自分の胸を叩き、自信満々に三人へ答えました。
328 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:30:32.01 ID:SKk6W+iM0
===

でも、本日の来客は彼女達で終わりじゃありません。

それからも劇場のアイドル達が入れ替わり立ち代わり事務室まで足を運んで来ては、
プロデューサーさんの留守に「なんだ」と一度は肩を落とし、けれども「それじゃあこれを」と何かしら机にのせていきます。

そうして、その度に私は誰それが何それを持ってきたという言伝を頼まれていくのでした。


「うーん、弱っちゃうなぁ」

気づけばデスクの上はお土産で一杯。

一見乱雑に見えるようで、けれども緻密なバランスを保つ黒山に妙な感心を覚える私。

一人っきりの事務室の中、チクチクと針仕事を進めながら小さく呟きます。
329 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:31:27.17 ID:SKk6W+iM0

「私、プロデューサーさん宛ての伝言を任されるのには慣れてるつもりだったけど、今日は特別多い気がしちゃうなぁ。

……あの山もいつ崩れたっておかしくなさそうだし、一旦衣装作りは中断して、
整頓したり伝言をメモに書いたりしておいた方がいいのかも――」

だけど、それを完璧にこなすのには大分骨が折れちゃいそう。

どうしようかなと迷っていると、今日何度目になるか分からない「失礼します」の声が響き、
扉を開けて二人の少女が廊下から――田中琴葉ちゃんと高山紗代子ちゃんが――堂々と入って来たのでした。


彼女達は部屋の中をぐるりと見回すと、目が合った私にぺこりと頭を下げて。

「お疲れ様です美咲さん。ところで、プロデューサーはまだ劇場に――」

「戻って来てないみたいですね」と、デスクを一瞥してから紗代子ちゃん。
330 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:32:30.64 ID:SKk6W+iM0

「そろそろ戻って来ても良い頃かなって私も思ってるんだけどね」

夕陽に染まり始めた外の景色に視線をやって、私は肩をすくめました。

今しがたお仕事を終えて来たという二人は、
そんな私に今日あった出来事の報告を伝言として話し終えると。

「それじゃあ、美咲さんは伝言の方をまとめてください」

「プロデューサーの机の上は、私たち二人がやっつけます!」

言うが早いか、プロデューサーさんのデスクの上をテキパキ片付け始める二人。

その手つきは実に慣れたもので、「よいしょ」と琴葉ちゃんが一声、
ショベルカーのように山を削り取ったならば。「よいしょ」と応えた紗代子ちゃんが地面を平らにならしていきます。

そうして二人がよいしょよいしょ。

私がメモを完成させるよりも早く机の上は綺麗になって、ぴっちりトン! 
なんて音が聞こえてきそうになるほど整理整頓された机の上はどこの都の姿かと。
331 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:33:09.06 ID:SKk6W+iM0

「ありがとぉ〜、すっごく助かっちゃった!」と私が感謝を伝えれば、二人は小さく首を振ってから笑顔で答えました。

「そんな! お礼を言われるようなことじゃ……」

「そうですよ! 私たちが好きでやってることですから!」

ああ、なんて頼りになる。この素晴らしい二人の活躍は、プロデューサーさんにしっかり伝えておかなくっちゃ!
332 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:33:58.40 ID:SKk6W+iM0
===

さて――こうしてデスクの上は綺麗になり、応対の合間を縫って進めていた私の仕事もひと段落。

外もすっかり日が暮れて暗くなって、お腹も空いてきた頃にようやくプロデューサーさんが劇場へ戻って来たんです。

「なるほど。留守の間の仔細がこれで大まかに分かりました」

「はい! しっかり全部伝えましたよ〜……えへへ♪」

でもいけない! 役目を全うしたことで気持ちが緩んでしまったのか、
思わずにやけてしまった頬を両手でぴちっと押さえつけます。

幸い、プロデューサーさんは持っていた荷物を机に置いてる最中で、
そんな恥ずかしい私の姿は見られてなかったようですけど。

……しっかりしなくちゃ、私! まだまだ今は勤務時間――。
333 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:34:53.57 ID:SKk6W+iM0

「それにしても食べ物系が結構あるな……。青羽さん、良かったらこの辺でお茶でも飲みませんか?」

「へっ!?」

「一人で広げる量じゃありませんから。この後に向けての休憩がてら」

だけどプロデューサーさんに誘われて、一瞬どうしようかなと視線が迷う。
そうして次の瞬間には、返事より先に私のお腹がくぅっと鳴って。

「……それじゃあお茶を淹れてきます」

「い、いえいえ私っ、私が行きます!」

そそくさと回れ右をして歩き始めるプロデューサーさん。
その原因となった醜態の言い訳がしたいが為に私が思わず腕を掴んだなら。
334 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:36:24.67 ID:SKk6W+iM0

「おーほっほっほっほっ、御機嫌よう! プロデューサーは劇場に帰ってまして――?」

劇場で過ごす人間にとってはお馴染みとなっている高笑い。

その行く手を遮るように事務室へ姿を現したのは、小さな紙袋を片手に提げた二階堂千鶴さんでした。

その登場に驚いたプロデューサーさんの歩みが止まります。
そうして、後を追いかけていた私も流れで彼の背中にぶつかって二人はそのまま床の上へ。


「……わたくしお邪魔だったかしら?」

まるで見てはいけないものを見てしまった貴婦人のように、
扉の陰へと戻っていく困り顔の千鶴さんへ私たちは揃って言いました。

「行っちゃダメですっ!」

「きちんと説明させてくださぁ〜いっ!!」


……ともあれ劇場におけるある日の一幕は、これでおしまいどっとはらい。
335 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/12/09(日) 23:38:05.71 ID:SKk6W+iM0
===
以上おしまい。美咲ちゃんにはもっと注目が当たっていいと思ってます。
336 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2019/02/08(金) 23:41:26.27 ID:3Bz7WrAj0
【短さよ話』

折しも時は冬休みの、冷え込んだ風が人々を嘲笑う明るい午後だった。

劇場へと続く一つの通り。

かじかむ両手を口に当て、紗代子が温かな吐息を手の平に擦り込み込み悠々歩いていたところ、
彼女の気を引く商い屋一軒、視界の先に現れてはそのつま先を見事に向けさせた。

端的に説明するならば、そこはいわゆる一つの定食屋。飯屋、食堂、お食事処。

なんと呼んでもサービスの質は変わらぬ店はある種のコンクリ砦でもあり、
付近にはハングリーの化身とも呼べる学生達がぎゅうぎゅうに押し込められた高等学校の影もあり、
つまりは若さに任せた無尽蔵の食欲を持つ餓鬼の群れが押しては返す荒波の如く攻め込んで来る間食最前線がここだ。

その戦いの歴史は実に古く、誕生から今日に至るまでの時の流れによって経年劣化した店の外装、
時代に取り残された古き良き昭和臭の漂う内装、カウンター奥の調理場にはエプロン姿の店員が常時二人以上。

そのどちらも歳は五十を過ぎ、訪れる者達から「おばちゃん!」と呼ばれるにふさわしい粗めの皺が肌に浮かぶ。

しかしながらそのひと刻みづつが彼女らの歩んできた軌跡、歴戦の勲章だと言えよう。
337 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2019/02/08(金) 23:42:11.13 ID:3Bz7WrAj0

そこに、紗代子は入店した。

長年変わらぬ音色を奏で続ける自動ドアはスムースに横へ身を避けると、
この制服姿の女学生を恭しく中に迎え入れた。

外界との温度差に彼女のかけた眼鏡が曇る。

石油ストーブの燃える匂い、スポンジで磨いてもこそぎ落とせず、
消臭剤を振りまいても誤魔化し切れない料理屋特有の油の匂い。

カウンターとして使われている面の日焼けした長テーブル、
並べられた色味のくすんだ丸椅子にもそれはこってり浸み染みついていた。

奥には小さな座敷もある。鉄板の乗った机がある。

いずれ来たるべき時が訪れれば、
ジュウジュウと熱せられた生地の上で鰹節らが乱痴気騒ぎを起こすだろう。
338 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2019/02/08(金) 23:43:10.75 ID:3Bz7WrAj0

しかしながら、紗代子が求めるのはソースと青海苔で彩られた熱々の焼き円盤ではない。

和食の王道鯖定食、男子に人気のカツカレー、パラッと炒られた炒飯でも、大盛りボリュームな丼物でも当然無い。

彼女の視線は壁に貼られたそれらのメニューを通り過ぎ、
色紙に書かれた野太い文字、黒マジックの描く荒々しい筆跡の上にて停止した。

「すみません、たい焼き一つ貰えますか?」

凜とよく通る声は紗代子の自慢の一つである。

人差し指を一の形にちょんと伸ばし、彼女はカウンターに立つ顔見知りの女店員に自身の要求を願いあげた。

すると老婆と呼ぶには絶妙に歳足らずな店員は愛想の良い笑顔を浮かべ。

「ちょうど今、焼き上がったの」

おばちゃんの言葉にしめしめしめ、紗代子は内心ほくそ笑んだ。
339 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2019/02/08(金) 23:44:06.57 ID:3Bz7WrAj0

なぜならば、だ。

彼女はこの時間に店を訪れれば、出来立てのたい焼きにありつけることを知っていた。

昼食時のピークを過ぎて、作り置かれたホットスナックがあらかた捌けたこの時間に、
店側が新たな商品を用意することを度重なるリサーチで分かっていた。

そうして一度に作られるたい焼きの数は決まって五匹。

カウンター横の陳列ケースに並べられるこのたい焼き焼き置き連隊は、
来たるべき三時のおやつ会戦を見越して送られる期待の補充部隊である。

その、着任ほやほやの顔ぶれを見回すと紗代子は二本目の指を立てた。
340 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2019/02/08(金) 23:45:03.09 ID:3Bz7WrAj0

「ああ、やっぱりもう一つ。たい焼き二つお願いします」

この言葉に今度は店員がしめしめしめ――なぜか?

答えは明快、このたい焼き好きな少女が部隊に古兵を見つけたからだ。

二段に分けられた陳列ケースの上段右、
たこ焼きパックの隣に場所をとるたい焼き置き場には六匹の鯛が並んでいた。

もうお分かりのことであろう、そのうちの一匹は以前からの売れ残りである。

そうして「はぁ、今日はついてないな」……と小さく溜息をついた紗代子。

鯛一匹分余計な出費を出さねばならない小遣い事情を憂いたか?

否! 彼女の本音はこうであった。


「どうせならもう二、三匹余ってても良かったのに」
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