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【艦これ】北方のとある鎮守府の話・改二
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34 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:37:13.81 ID:Mzva3VoV0
大和「・・・はぁ」
大和「・・・わかりました。提督を信じます」
提督「・・・!」パアッ
提督「ほんとっ!?」パッ
大和「ええ」
スッ
大和「提督である貴女が覚悟を決めたんです。なら、貴女の部下である私が続かずして、なにが艦娘ですか」
提督「や、大和ぉ・・・」
大和「・・・提督。どうか、この大和も貴女とご一緒させてください」ニコッ
提督「ぁ・・・」
提督「うぅ・・・」グッ
提督「わあぁ〜ん!ありがとー!大和ー!」ダキッ!
提督「大好きだよー!ずっと一緒だよー!」ギュギュ-
大和「はいはい」グイッ
提督「うぇ〜ん!」ビエエエ
大和(もう・・・調子が良いんだから・・・)フッ
35 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:40:26.51 ID:Mzva3VoV0
大和「提督」ツンツン
提督「うぅ・・・ん・・・?」グスッ
大和「その・・・」
大和「・・・」ン...
大和「・・・期待、していますから」ニコッ
提督「!」
大和「ですから私も、提督のご期待に応えられるよう、全力で戦います」
大和「一緒に、頑張りましょうね」グッ
36 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:41:02.31 ID:Mzva3VoV0
提督「・・・う、うん、任せてよ!完璧な作戦を立てて、相手をボッコボコのギッタギタにしてやって、絶対に大本営のほっぺたを落としてやるんだから!」グッ
大和「ほっぺたは落とさなくていいです・・・」
37 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:41:58.77 ID:Mzva3VoV0
・・・・・
提督「あ・・・」
大和「?」
大和「どうしたんですか?」
提督「ん・・・今更だけど、その・・・」チラ
大和「・・・?」キョトン
提督「・・・行き先が」
大和「・・・はい」
提督「えと、その・・・」
提督「・・・ごめん」
大和「・・・」ジッ
大和「・・・どうして謝るんですか?」
提督「だって・・・」
提督「・・・」
提督「・・・横須賀鎮守府は、大和にとって、あんまり、その・・・」
大和「・・・」スッ
大和(・・・本当、感が良いのか、悪いのか・・・)
38 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:43:32.83 ID:Mzva3VoV0
大和「・・・ええ、そうですね。確かに、あの場所には、良い思い出はあまりありません」
大和「ですが・・・それも私の中ではある程度区切りがついたことですから・・・他でもない、貴女のお陰もあったから・・・」
提督「大和・・・」
大和「・・・」ニコッ
大和「ですから、提督は何も気にしないでください」
大和「・・・私も、提督にご迷惑はおかけしません」
提督「・・・」ジッ
提督(大和・・・やっぱり、まだ・・・)
提督(・・・)ギュッ
提督(私に・・・今の私にできることは・・・)
39 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:44:03.63 ID:Mzva3VoV0
スッ
提督「・・・わかった。大和がそう言うなら、私からは何も聞かないことにするね」
大和「・・・ありがとうございます」
提督「ううん、いいのいいの」パタパタ
提督「・・・でも、何か困ったことがあったら、遠慮なく言ってね?」ヒョコッ
提督「いつだって、力になるんだから」フンスフンス
大和「・・・」フッ
大和「・・・はい。では、その時は遠慮なく言わせてもらいますね」ニコッ
提督「ん、どんとこい」ニコッ
40 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:44:41.98 ID:Mzva3VoV0
大和「・・・それに、向こうでいくつか確認しておきたいこともありますし・・・」ボソッ
提督「・・・?何か言った?」
大和「・・・」ジッ
提督「・・・?」ポカン
提督(顔に何かついてるかな・・・?)ペタペタ
大和(やっぱり、自覚は無いみたいね・・・)
41 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:46:19.34 ID:Mzva3VoV0
大和「・・・いえ。なんでもありません」フルフル
提督「・・・なんか、気になるんだけど・・・」ム-
大和「大したことではないですよ・・・ただ、今朝からずっと提督の顔に引っ付いているワカメがなんだか面白おかしいな、と」
提督「ええっ!?ワカメ!?嘘っ!?」
バッバッバッ
提督「・・・付いてないじゃん!」
大和「冗談です」ジ-
提督「だ、だよね〜・・・さすがの私でも、顔にワカメなんて付いてたら気がつくもんね・・・」
提督「も、もう!急に変なこと言わないでよ〜!」
大和「すみません」ジ-
提督「む〜!」
大和「・・・」ジ-
大和「・・・本当は提督の頭に乗っている昆布のことが面白かったんです」ツイッ
提督「へへーん!今度は騙されないよー!」ベ-
提督「大体、海に潜ってもいないのに、頭に昆布なんて乗っかるわけないんだから!」
大和「そうですよね・・・」ジ-
提督「ふふん。残念だったね大和。私をそう甘く見ないことだよ」フンスフンス
大和「・・・」ジ-
42 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:47:09.21 ID:Mzva3VoV0
大和「・・・そうですね」ジ-
提督「・・・?」
43 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:48:14.42 ID:Mzva3VoV0
・・・・・
提督「・・・あっ!もうこんな時間だ!」
提督「それじゃあ私、そろそろ見回りに行くから。大和は留守番お願いね〜」ガタッ
大和「私も行かなくて大丈夫ですか?」
提督「大丈夫大丈夫。何かあったら、すぐに逃げ帰ってくるから!」パタパタ
大和(それはそれで、なんだかなあ・・・)
ガチャ
提督「じゃ、行ってきま〜す!」
大和「あ、はい。気をつけてくださいね」
提督「は〜い!」
バタン!
44 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:48:40.10 ID:Mzva3VoV0
シン...
大和「・・・」
大和「ふぅ・・・」
大和「・・・」トットットッ
ギシッ
大和「・・・」
大和「・・・」
大和「・・・あ」ポン
45 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:51:07.02 ID:Mzva3VoV0
大和「・・・せっかくだから、今日の晩御飯はあの昆布を使わせてもらおうかな」クスッ
46 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:55:17.22 ID:Mzva3VoV0
こっから短編3つ
《レポート2》
《西方のとある鎮守府の話》
《やっぱり駆逐艦は…》
今日は一つだけかも
47 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:55:58.43 ID:Mzva3VoV0
《レポート2》
48 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:56:32.94 ID:Mzva3VoV0
ー1月15日ー
あれから一週間ほど経った。この日、私は鎮守府周辺の哨戒にあたっていたのだが、夜の帳も下りた頃に帰投してみれば、私の妹が件の施設に転属になったとのことだった。それを聞いては、私はもう居ても立っても居られず、すぐさま鎮守府を飛び出して彼女の元を訪ねた。
49 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:57:05.91 ID:Mzva3VoV0
数ヶ月振りに会う彼女は、以前と変わらず明るく元気一杯な様子で私を迎えてくれたが、当の私は以前ここで見たあの兵器とやらのことが気がかりでしょうがない。あれは危険だ、あってはならないものだ、と本能が警告している。例え上層部の指示であっても、そんなものがある場所へ妹を預けるのは、やはり抵抗があった。
その後、妹と別れて早々に私は旧友に再度会い、彼女の処遇について再考するよう頼みこんでみた。だが、成果は芳しくなかった。旧友も私の気持ちは十分に理解してくれたようだったが、上からの命令である以上どうしようもないようだ。結局、何度かしつこく掛け合ってみたものの、色よい返事が返ってくることはなかった。
仕方のないこととはいえ、どうにもやりきれない。私はこんな時でさえ、彼女の力になってあげることができないのか。
50 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 22:58:13.98 ID:Mzva3VoV0
帰り際、旧友はすっかり肩を落とす私に対し、励ますように明るい口調で声をかけてきた。
心配ない。運が良ければ、君も同じ場所に来れるはずだ、と。
それはあくまで昔馴染みの友人にかけるような気楽さを感じさせながら、どこか虚ろな声音にも思われた。
51 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/28(木) 23:00:13.52 ID:Mzva3VoV0
今日はここまでかも
もし読んでくれた人がいたら、感謝感謝かも
そろそろ色々と見えてくる…はずかも
52 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/09/29(金) 09:46:05.53 ID:ej9ae/2p0
あ、そういえば、こないだ最初っから改めて読み直して気付いたんですけど、ラスボス的なの既に出てました
書いたの忘れてた…なんかすみません
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/30(土) 13:14:00.68 ID:Tbryp8+2o
おちゅん
54 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:12:12.47 ID:0iqDdIct0
《西方のとある鎮守府の話》
55 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:13:07.53 ID:0iqDdIct0
二月某日・昼
【西方のとある鎮守府・執務室】
提督「なあ、松風」
松風「うん」カリカリ
提督「唐突で悪いんだけどな」
松風「なんだい、司令官?」カリカリ
提督「脱いでくれないか」
松風「・・・」カリカリ
提督「・・・」
提督「服を、脱いでくれないか」
松風「言い直さなくていいから」
56 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:13:48.80 ID:0iqDdIct0
カタン
松風「知らなかったな・・・キミはロリコンだったんだね」
提督「ああ。誰にも話したことはないんだが、実はそうなんだ」
松風「妙高さんとケッコンまでしているのにかい?」
提督「ああ。小さな女の子を見ていると、無性にムラムラしてくるんだ」
松風「・・・僕でもかい?」
提督「勿論だ。松風のクセのある髪や勝気な瞳、男勝りな口調だが優しげな声音、未発達ながら女性らしさを感じさせる体つき、わずかに漂う爽やかな香り、それに可愛らしい山高帽・・・」
提督「魅力的な君を見るたび、いつも私は君に対して抑えきれないほどの興奮を覚えているんだ」ハアハア
松風「そうだったのかぁ・・・」
57 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:14:20.04 ID:0iqDdIct0
松風「だ、そうだよ?妙高さん?」チラ
提督「え?」
ガチャリ
妙高「・・・」ニッコリ
提督「あっ・・・」
58 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:15:12.35 ID:0iqDdIct0
・・・・・
【西方のとある鎮守府・食堂】
カチャ
松風「ふぅ・・・ごちそうさま。今日も美味しかった」
伊良湖「はい。お粗末様でした」
松風「本当、伊良湖さんが来てくれて助かったよ。キミが来る前は、それはもう酷いものだったからね・・・」
伊良湖「そうなんですか?」
松風「ああ・・・初めて磯風の料理を食べた時には、僕は深海棲艦になった気分だったよ・・・」ハハッ
伊良湖「は、はあ・・・?」キョトン
59 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:16:14.25 ID:0iqDdIct0
松風「いや、でも・・・久し振りに姉貴や間宮の料理も食べたいなあ・・・」
伊良湖「松風さんのお姉さんと言えば・・・神風さんや春風さんですか?」
松風「そうだよ。特に春風の姉貴の作る料理は絶品でね。どうやら川内さんに仕込まれたみたいだけど、それはもう料理人顔負けの出来さ」
伊良湖「へぇ〜」
松風「うん・・・」
松風「・・・」
松風「姉貴たち、今頃何してるかなあ・・・」フゥ
60 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:17:00.13 ID:0iqDdIct0
ドタドタドタ...!
松風「ん・・・?」
バタン!
足柄「提督はどこっ!?」
松風「いきなり騒がしいな・・・」ハァ
61 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:18:12.65 ID:0iqDdIct0
伊良湖「足柄さん。いらっしゃいませ!」ニコッ
松風「司令官なら執務室さ。今頃、キミの姉さんにこってり絞られているところだろうね」
足柄「妙高姉さんに・・・?なに、またなんかしでかしたの?」
松風「いやなに、大したことじゃないんだけどね。ただ、僕が提督から軽いセクハラを受けただけさ」
伊良湖「え、ええっ!セクハラ!?」
足柄「またあ!?」
伊良湖「またっ!?」ガビ-ン
62 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:19:18.97 ID:0iqDdIct0
足柄「あんのクソ提督ー!まだ懲りてなかったのねー!」ギリギリ
伊良湖「ま、前にも同じようなことがあったんですか・・・?」
足柄「そうよ!それも何度も何度も!」
足柄「あのクソ提督ってば、ことあるごとに妙高姉さんや私の布団に潜り込むのよ!かと思ったら、占守や駆逐艦の子たちに言い寄って・・・ほんっと、節操がないなんてもんじゃないわ!」
松風(すっかりクソ提督呼びが馴染んでるね・・・誰かさんの影響かな?)クスッ
63 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:19:49.18 ID:0iqDdIct0
松風「それにしても、そうか・・・」フム
伊良湖「とても真摯な方ですし、そんな風には見えませんけれど・・・」
足柄「伊良湖は来たばっかりだから、あいつのことがわかってないのよ。もうしばらくもしてみなさい。すっかり化けの皮が剥がれて、貴女の下着の色を毎日のように聞いてくるようになるから」
伊良湖「え、ええっ!?し、下着・・・」ワタワタ
伊良湖「そんな・・・下着の色だなんて・・・は、恥ずかしいですっ!」カアッ
足柄「・・・今時珍しいくらいウブな子ねえ・・・」ハァ
64 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:20:32.27 ID:0iqDdIct0
松風「・・・まあ、心配ないさ。彼には妙高さんという、頼れるパートナーがいるからね」
松風「彼女がいる限り、滅多なことはないと思うよ」
足柄「楽観的ねえ・・・」ム-
松風「そうかい?だって、ほら。キミの姉さんはとても優秀じゃないか。艦娘としては勿論だけど、一人の女性としてもね」
松風「あんなに仕事が出来て、優しくて甲斐甲斐しくて、それでいてしっかり厳しいところもあるんだから、いわゆる大和撫子とは少し違うかもしれないけど、添い遂げるにはこれ以上ない人だと思うよ」
足柄「まあ、そこは否定しないけどね・・・」ハァ
65 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:22:50.79 ID:0iqDdIct0
松風「それに・・・僕は司令官もああ見えて、一途な人だと思うよ」
足柄「はあー?一途?あれが?どこが?」
松風「伊良湖さんも言ったろう?彼は元々そういう人だよ。だって現に、彼は今まで一度も、妙高さん以外の女の子に対して『そういったこと』を本当にしたことは一度もないんだからね」
足柄「もう十分アウトなことやりまくってるわよ」
松風「それはまあ・・・彼なりの愛情表現みたいなものだろうさ。あまりそう目くじらを立てないであげてよ」
足柄「そこまで寛容になれる人間はそういないわよ・・・というか、なんで貴女はそこまであいつを庇うのよ?」
松風「理由かい?簡単なことだよ。僕は彼を好ましく思っているからさ」
足柄「え」
伊良湖「きゃあ」パッ
66 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:23:37.21 ID:0iqDdIct0
松風「・・・なんだい?そんなにおかしなことかい?」ムゥ
足柄「・・・やー、そんなことはないんだけど・・・いやでもなんか、びっくりというかなんというか・・・」ポリポリ
伊良湖「ま、松風さん・・・そうなんですか・・・?」ポワポワ
松風「二人して失礼だなあ・・・ま、でも本当のことさ」
67 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:25:56.44 ID:0iqDdIct0
松風「僕も司令官との付き合いはそう長くないけど、ここに着任した当初は姉貴もいなかったからね。駆逐艦は僕一人だけで、周りにはあまりよく知らない人ばかりで・・・結構不安だったのさ」
伊良湖「そうだったんですか・・・」
足柄「あら。私には全然そんな風には見えなかったけど?」
足柄「むしろ、自信満々って感じ?駆逐艦なのに凄く堂々としてるって、みんな感心してたのよ」
松風「そうか、そんな風に思われてたのか・・・初めて知ったな」アハハ
松風「・・・でも、本当にそんなことなくって。誰かと一緒にいる時でさえ、僕は一人ぼっちだったんだ。食事の時も寝る時も、いつも一人。寂しかったけど、それを誰かに相談できるほど、僕は強くなかった」
68 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:26:43.69 ID:0iqDdIct0
松風「そんな時にさ、司令官が助けてくれたんだ」
伊良湖「提督さんが、ですか?」
松風「うん。僕が遠征から帰った時だったかな。その日は長旅で結構疲れていたから、一人でお風呂に入ってゆっくりしていたんだけどね。そこに司令官がやって来たんだよ」
伊良湖「え、ええっ!?」
足柄「やっぱり変態じゃない」ハァ-
松風「そうだね。僕も初めはそう思って、すぐに憲兵を呼ぼうとしたんだ」クスクス
松風「そうしたら司令官、なんて言ったと思う?」
69 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:27:11.75 ID:0iqDdIct0
提督『松風。明日からは私と一緒に食事を取り、私と一緒に風呂に入り、私と一緒に寝るんだ。これは命令だ』
70 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:27:56.96 ID:0iqDdIct0
足柄「犯罪ね」
松風「まあ、そうだね」
足柄「通報しなくっちゃ」
松風「僕もそのつもりだったさ。当然、司令官の命令は聞き入れなかったし、すぐにお風呂から出て行ってもらったよ」ハハハ
松風「・・・でもね。その少し後で、妙高さんが僕にこっそり教えてくれたんだ」
71 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:33:32.05 ID:0iqDdIct0
・・・・・
妙高『提督のこと、あまり悪く思わないであげてください』
松風『そう言われても・・・』ムスッ
妙高『・・・』
妙高『・・・あの人、いつも貴女のことを見ていたんです』
松風『・・・僕を・・・?』
妙高『ええ。提督は心配していました。貴女がいつも悲しそうだって。私たちにはよくわからなかったんですけど・・・あの人はきっと、どこかで感じ取っていたんでしょうね。ずっと貴女のことを気にかけていました』
松風『ぁ・・・』
松風『・・・』
松風『もしかして、さっきのは・・・』
妙高『・・・照れ隠しというか、素直ではない人ですから。勿論、人一倍女性が好き、というだらしのない部分もありますけど』
妙高『小さな子を安心させる方法を教えて欲しい、なんて、私に何度も聞いてきて・・・私が、一緒にいてあげること、と言ってしまったから、きっとそんなことを言い出したんでしょうね』
松風『そうか・・・』
妙高『・・・』フッ
妙高『提督には後で私の方からちゃんと叱っておきますから、今回のことは私に免じて、どうか大目に見てあげてください』ペコリ
松風『・・・』
72 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:34:16.16 ID:0iqDdIct0
松風『・・・わかったよ。妙高さん』
妙高『・・・ありがとう、松風』
松風『うん・・・』
松風『・・・』
妙高「・・・松風?」
松風『うん・・・でも、一つだけ・・・』
・・・・・
73 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:35:52.18 ID:0iqDdIct0
松風「・・・といったわけで、僕は司令官のことを少しだけ見直したんだ」
伊良湖「松風さん・・・そんなことが・・・」
足柄「ふーん、全然知らなかったわ・・・それで?結局その後、どうなったの?」
松風「いや?別に何もないよ。ただ、少しだけ僕が司令官のことを頼りにするようになっただけさ。それ以上でもそれ以下でもないな」
松風「とは言っても、結局それからしばらくもしない内に姉貴や磯風が着任してくれたから、今ではわざわざ司令官にお世話になることも少なくなったけどね」
足柄「なるほどねー」
74 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:36:25.26 ID:0iqDdIct0
足柄「でも、ま、良かったじゃない?」
松風「ん?」
足柄「ほら。身近な頼れる仲間なんて、多ければ多いほど心強いに決まってるんだから」
松風「・・・」
松風「そう、だね・・・」フッ
伊良湖「はい!」ニコッ
75 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:37:14.67 ID:0iqDdIct0
足柄「・・・よしっ、辛気臭い話はここでおしまい!」パンッ
足柄「伊良湖!カツカレー持ってきて!」
伊良湖「えっ、カツカレーですか?でも、メニューにはありませんけど・・・」
足柄「勝利のためにはカツカレーが欠かせないのよ!いいから、お願い!厨房に材料はあるはずだから!早く!」
伊良湖「は、はい!わかりました!」
パタパタ
76 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:37:45.10 ID:0iqDdIct0
松風「・・・そういえば、キミは司令官になにか用事があったんじゃないのかい?」
足柄「ん?あー・・・」
足柄「・・・ま、いいわ。妙高姉さんが一緒にいるなら、私がどうこう言うことでもないでしょうし」
松風「・・・?それは、どういう・・・」
足柄「気にしなくていいわよ。どうせ、大したことじゃないんだから・・・」
松風「ふぅん・・・?」
77 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:38:43.16 ID:0iqDdIct0
・・・・・
松風「さて、それじゃあ僕も行こうかな」ガタッ
足柄「もう行っちゃうの?せっかくなんだし、もう少し付き合いなさいよ」
松風「悪いね。この後すぐに遠征に出ないといけないんだ」
足柄「あらら。ざーんねん」
松風「ああ、すまないね。また別の機会によろしく頼むよ」
足柄「はいはい。それじゃあ遠征頑張ってねー」ヒラヒラ
伊良湖「松風さん。お気をつけて!」パタパタ
松風「ああ。行ってくる」
バタン
78 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:39:41.68 ID:0iqDdIct0
【西方のとある鎮守府・廊下】
トットットッ
松風「・・・ん?」チラ
松風(あれは・・・)
磯風「む・・・松風か」
松風「磯風・・・?どうしたんだい、そんなところで」
磯風「いやな。先ほど執務室の前を通りがかった時に、妙な物音が聞こえたものでな。あれはなんだったのかと少し気になっていたところだ」
松風「妙な物音・・・?」
磯風「司令に用事があったから外から呼びかけたのだが、返事もなかった。もしや大変な事態になっているのではないか?」
松風「・・・」フム
松風「・・・ああ・・・」
79 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:40:21.86 ID:0iqDdIct0
松風「・・・うん。まあ、ある意味大変なことというか、なんというか・・・」
磯風「・・・?どういうことだ松風?なにか知っているのか?」
松風「・・・」ムゥ
松風「・・・まあ、問題ないさ・・・それよりも磯風。キミも今から遠征に行くんだろ?」
磯風「え?あ、ああ。そうだが・・・」
松風「なら、早くしよう。姉貴は多分先に行ってるだろうからな」
磯風「え、いや、だが・・・」
松風「いいから。ほら、行こう」ガッ
磯風「お、おい?ちょっと・・・!」
松風(二人とも・・・今回は貸しにしておくよ・・・)チラ
80 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:40:56.96 ID:0iqDdIct0
磯風「わ、わかった!自分で歩く!歩くから、そんなに強く引っ張るな!おい、松風!?」ズルズル
松風「・・・僕はキミを前にすると、どうにも深海棲艦になってしまうみたいだよ」グイグイ
磯風「お前は一体何を言っているんだ!?ええい、離せ!離せー!」ズルズル
松風「ツイテオイデー」グイ-
バタバタ...
81 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/10/01(日) 03:44:24.54 ID:0iqDdIct0
《西方のとある鎮守府の話》
おしまい
読んでくれた人いたら、ありがとうございます
ちなみにこの提督、別にロリコンなわけではないです
そんなことより柚と関ちゃんの声がどハマりしててヤバい…この調子でダチャーンにも声がつくと嬉しいなあ
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 20:33:35.04 ID:MAFw9wfTo
オツカーレ
83 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/08(水) 15:31:18.61 ID:ExLozlMp0
すんません、私用でしばらく忙しくしてました
近いうちに残りの分も少しずつ投下してこうと思います
見てくださっている方がもしいたら、ほんと申し訳ないです…
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/08(水) 16:06:39.79 ID:NvLyVQMS0
了解です
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/08(水) 18:20:18.14 ID:WhOLIopzo
ういー
86 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:00:55.65 ID:tnQWc7JV0
五月某日・昼
【鎮守府・寝室】
神風「えっと・・・この書類は・・・こっちかしら」ガサガサ
神風「それで、これは・・・うん。大丈夫ね」フッ
神風「あっ・・・そうだ、これも忘れたらダメよね・・・」カサッ
神風「もうっ、しっかりと一箇所にまとめておかないと、どこに何があるのかわからないのに・・・」ム-
神風「・・・」ガサガサ
ドサッ
神風「ふぅ・・・これでよしっ」
神風「さて、それから次は・・・」トットットッ
神風「〜〜〜♪」
87 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:01:57.75 ID:tnQWc7JV0
・・・・・
提督「・・・」ジ-
提督(神風ちゃんがこの鎮守府に来てから、はや数日・・・)
提督(凄く礼儀正しくて真面目な彼女はこんな環境の中でも文句一つ漏らすことなく、力仕事でも事務作業でも、何でも精一杯働いてくれていた)
提督(今日は寝室に散らばっていた諸々を片付けてくれるというので、彼女に任せたんだけど・・・)
コソコソ...
提督「・・・」ジ-
神風「〜〜〜♪」フンフン
提督(これは一体・・・)ムムム
88 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:03:43.37 ID:tnQWc7JV0
大和「・・・何やってるんですか、提督?」
提督「・・・」
大和「・・・提督?」トットットッ
ポン
提督「・・・ぅぇっ!?」ビクッ
提督「や、大和・・・!?」クルッ
大和「寝室の前でコソコソして・・・」ジト-
提督「しーっ!しーっ!」グイ-!
大和「・・・?」キョトン
提督「・・・」ウヌヌ...
グイッ
大和「あっ、ちょっ・・・!?」
提督「いいから!ちょっとこっち来て!」グイグイ
大和「い、一体なんなんですか、もう・・・」ハァ
89 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:04:16.06 ID:tnQWc7JV0
ゴソゴソ...
大和(・・・で、何してるんですか?)コソコソ
提督(中を見ればわかるよ。ほら)ヒョコ
大和(中・・・)ヒョコ
〜〜〜〜〜
トタトタトタ
神風「〜〜〜♪」ゴソゴソ
トタトタトタ
90 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:05:18.23 ID:tnQWc7JV0
大和(・・・)ジ-
提督(・・・ね?わかった?)
大和(・・・神風さん、普段と違って随分生き生きとしていますね)
提督(うん・・・)
大和(・・・)
提督(・・・)
大和(・・・やっぱり、提督が原因なんでしょうか・・・)
提督(いやいや、まさかそんなわけ・・・)ハハハ
大和(・・・)
提督(はは・・・)
大和(・・・)
提督(・・・)
提督(そこは否定してよ〜!)ガクガク
大和(じょ、冗談ですからっ!冗談!)ガックンガックン
大和(だから、ちょっと・・・ゆ、揺らさないでっ・・・!)グイ-
提督(ふえぇぇぇん!)ビエ-
ドタンバタン...!
91 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:06:08.25 ID:tnQWc7JV0
バタン!
提督・大和「!?」ビクッ
神風「・・・」ジ-
神風「・・・なにしてるんですか、そんなところで」ジト-
提督・大和「」
92 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:07:40.90 ID:tnQWc7JV0
神風「・・・遊ぶくらい暇なら、外の掃除でもお願いします」
提督「あ、はい・・・」ヘコヘコ
大和「ご、ごめんなさい・・・」ペコリ
神風「・・・謝る必要ありません。それに、提督の言うことは絶対ですから」
提督「う、うん・・・?」
大和「・・・?」ジッ
神風「・・・」チラ
神風「休息が必要でしたら、申し訳ありませんがもうしばらくお待ちください。すぐに片付け終わりますから」
提督「う、うん。何から何までごめん・・・」
神風「いえ、当然のことです」
提督「そ、そう」
神風「はい・・・」
大和「・・・」フム
大和(やっぱり、この子・・・)
93 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:08:15.61 ID:tnQWc7JV0
神風「・・・では、私は寝室の片付けを続けます。何かあれば、すぐに呼んで下さい」クルッ
提督「あ、うん。よろしくね」
神風「はい」スッ
バタン
94 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:08:43.65 ID:tnQWc7JV0
提督「・・・」
大和「・・・」
提督「・・・大和」
大和「・・・はい」
提督「・・・掃除、行こっか」
大和「・・・はい」
提督「・・・」
大和「・・・」
提督・大和「はぁ・・・」ガクッ
95 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:09:42.10 ID:tnQWc7JV0
同日・夜
【居酒屋・鳳翔】
鳳翔「・・・それで、今日はお一人で来られたんですね」
提督「うん・・・これ以上余計な気をつかわせても、かわいそうだし。たまにはゆっくりさせてあげたいなー、って」
鳳翔「あの子は気にしないと思いますけど・・・」ン-
提督「そういうわけにもいかないよ。大和にはいつも苦労をかけてばっかりだし」パタパタ
提督「それに・・・私も鳳翔さんにちょっと聞きたいことあったから」
鳳翔「はあ・・・私に、ですか?」
提督「うん」
96 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:17:55.77 ID:tnQWc7JV0
提督「・・・あのさ。鳳翔さんは神風って子のこと、知ってるかな?」
鳳翔「神風ちゃん・・・ですか?はい、よく知っていますよ」
提督「え、そうなの?」キョトン
鳳翔「ええ。以前、私は長く呉鎮守府に所属していましたけれど、そこには神風ちゃんもいましたから」
提督「へぇ、そうなんだ」
鳳翔「はい・・・でも、どうして急にそんなことを?」
提督「あ、うん。えっとね、その神風ちゃんが私たちの鎮守府に来たんだよ」
鳳翔「まあ。そうなんですか」
提督「うん・・・ただ、どうにも上手くいかなくて・・・」
鳳翔「・・・?」
鳳翔「あの、何かあったんですか・・・?」
提督「うぅ〜ん・・・いや、何もないはずなんだけど・・・なんだか妙に距離を感じるというか・・・」
鳳翔「距離・・・ですか?」
提督「うん・・・なんて言うかその、彼女、私の前ではやけにかしこまってるっていうか、肩肘張ってるって感じで・・・」
提督「会ってからまだ数日だし、特に何かあったわけでもないはずなんだけど・・・」ムムム
鳳翔「・・・」フム
鳳翔(あの子が・・・?)
97 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:20:23.87 ID:tnQWc7JV0
提督「・・・鳳翔さん?どしたの?」
鳳翔「あ・・・いえ、その・・・」
提督「?」
鳳翔「・・・」ウ-ン
鳳翔「・・・すみません。私も心当たりはありません」フルフル
提督「そっかあ・・・ま、そりゃそうだよね」ホヘ-
鳳翔「ごめんなさい。お力になれず・・・」ペコリ
提督「あっ、ううん。全然そんなことないよ。話を聞いてもらえただけでも、だいぶ気が楽になったから」パタパタ
98 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:21:53.49 ID:tnQWc7JV0
提督「ま、しょーがない。明日にでも直接本人に聞いてみようかな」
鳳翔「そう、ですね・・・そうした方がよろしいかと思います」
鳳翔「けれど・・・そう、神風ちゃんが・・・本当に珍しいですね・・・」
提督「珍しい?」キョトン
鳳翔「ええ・・・あの子、神風型駆逐艦のネームシップですから、昔からよく下の子たちの面倒を見ていたんです。それこそ、頼り甲斐のあるお姉ちゃん、といった感じに」
提督「そうなんだ」
鳳翔「はい。それに、旧型の駆逐艦でも、神風型は信頼性や経験では他の駆逐艦に遅れを取らないって、いつも自信に満ち溢れていました。はっきりとした物言いもそういった心根の表れかもしれませんね」
鳳翔「前の提督からも凄く信頼されていて・・・とてもしっかりしていて、巡洋艦や空母の子たちも感心しきりでしたよ」
提督「ふぅん・・・」
99 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:23:12.45 ID:tnQWc7JV0
・・・・・
提督「・・・今日は色々とありがとうございました」ペコリ
鳳翔「こちらこそ。提督とお話できて、私も楽しかったです」
鳳翔「是非、またいらして下さい」
提督「うん。それじゃ・・・」
ガラガラ
提督「ぁ・・・っと」
提督「鳳翔さん。最後にもう一つだけ聞かせてもらってもいいかな?」クルリ
鳳翔「あ、はい。なんでしょう?」
提督「えと、知らないなら別にいいんだけど・・・鳳翔さんは『ぷりんつ』って名前、聞いたことあるかな?」
鳳翔「ぷりんつ・・・」
鳳翔「・・・あ。もしかして、プリンツ・オイゲンさんのことですか?」
提督「知ってるの?」
鳳翔「ええ。ドイツの巡洋艦の方ですね。以前、一度だけお会いしたことがありますよ」
提督(どいつ・・・?)ポワポワ
100 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:25:20.39 ID:tnQWc7JV0
提督「そ、そうなんだ・・・巡洋艦ってことは艦娘なのかな。どんな人なの?」
鳳翔「可愛い子ですよ。明るくて、笑顔が素敵で、優しくて・・・それでいて強い子です」
提督「そっか〜・・・」フムフム
鳳翔「プリンツさんがどうかなさったんですか?」
提督「ん・・・?あ、ううん。大したことじゃないんだけどね。こないだ名前を小耳に挟んだから、少し気になって」パタパタ
鳳翔「あら、そうなんですか?」
提督「うん。わざわざ教えてくれてありがと」ニコッ
鳳翔「いえいえ。では、お気をつけてお帰りくださいね」ニコッ
提督「は〜い」
ピシャン
101 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/10(金) 09:29:18.96 ID:tnQWc7JV0
とりあえずここまでで
わざわざ読んでくれた人いたら、ありがと
正直このペースだと終わらなさそうだから、ちょっと考えときます
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 09:41:34.00 ID:mJDVikGA0
乙です
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/10(金) 18:29:44.35 ID:wD0begDmo
おちゅん
104 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:31:40.47 ID:7P72JQHN0
【鎮守府・寝室】
ガチャ
神風「お風呂、お先に頂きました」
大和「ええ」
ギッ
神風「ふぅー・・・」
大和「今日もお疲れ様。まだ来て間もないのに、色々と任せてしまってごめんなさいね」
神風「あっ、いえ、そんな・・・私は片付けをしていただけですから」
大和「それも大切なことよ」
神風「はい・・・」
大和「よかったらなにか飲む?・・・といっても、ここにはお茶もラムネもないけれど・・・」
神風「・・・じゃあ、お水を頂けますか?」
大和「わかったわ。ちょっと待っててね」ギッ
105 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:32:20.96 ID:7P72JQHN0
・・・・・
大和「はい。どうぞ」スッ
神風「・・・ありがとうございます」
神風(濁ってる・・・)
神風「・・・」コクリ
神風「ぅ・・・」
神風「・・・不味い」ボソッ
大和「一応雨水を煮沸はしているんだけれど・・・ごめんなさいね。こんなものしかなくて」
神風「あっ、いえ、その・・・」ワタワタ
神風「こ・・・こちらこそ、すみません」シュン
大和「・・・」ジ-
106 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:32:54.64 ID:7P72JQHN0
大和「・・・ねえ、神風さん?以前から聞きたかったんだけど・・・貴女、どうしてそんなに落ち着きがないのかしら?」
神風「え・・・お、落ち着きがない・・・?」
大和「そう。まるで、ずっとなにかに怯えているように見えるけれど」
神風「・・・」
神風「そんなこと、ないです」
大和「そうなの?」
神風「・・・そうです」
大和「そう。なら、いいけれど」
神風「・・・」
神風「・・・大和さんの気のせいですよ。きっと」
大和「そう」
神風「・・・」
107 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:33:23.14 ID:7P72JQHN0
カタン
大和「・・・そう言えば、さっき貴女に出したお水ね・・・私も以前初めて飲んだのだけれど、その時は大変だったわ」
108 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:33:59.89 ID:7P72JQHN0
大和「ここに来て間もない頃にね、提督がわざわざ出してくれたの。この鎮守府には飲み物が桶に貯めた雨水しかないっていうから、のども渇いていたし、しょうがなくそれを飲んだのだけれど、金属とか埃が凄く混じってて、酷い味でね」クスクス
神風「はあ・・・」
大和「でね?提督が私に『美味しい?』って聞いてくるの。すっごく目を期待に輝かせて。だからかな、私、咄嗟に『美味しいです』って答えてしまったの。吐き出して、海水で口をゆすぎたくなるのを必死で堪えながら」フフッ
大和「そうしたら提督ってば。『なら私も飲もーっと!』って言いながら、そのコップの水を一息に飲み干したの」
神風「え・・・それ、大丈夫だったんですか?」
大和「ううん、当然その後は大騒ぎ。提督が色々と口から戻したせいで床は吐瀉物だらけになって、挙句『なんで嘘ついたの〜!』って泣き喚いて」クスクス
大和「ほんと、あの時は大変だったなあ・・・」ハァ
109 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:34:29.03 ID:7P72JQHN0
神風「・・・」
神風「・・・大和さんは、その」
大和「ん?」
神風「・・・」
神風「怖くないんですか・・・?」
大和「怖い?」
神風「その・・・司令官に怒られたり、嫌われたり・・・」
神風「・・・」ギュ
神風「自分が・・・必要とされなくなることが」
大和「・・・」フム
神風「・・・」チラ
大和「・・・」ン-
大和「・・・これは、あくまで私の考えなんだけどね」
大和「きっと貴女は、自分にもっと正直になった方がいいわね」
110 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:35:05.10 ID:7P72JQHN0
神風「自分に・・・正直に・・・」
大和「・・・」
大和「・・・さっきのお水の話の続きだけどね。片付け終わって後、提督がすっごく怒った様子で私にこう言ったの」
111 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:35:33.59 ID:7P72JQHN0
提督『大和。誰かを幸せにする嘘をつくのはいいけれど、誰も幸せにならない嘘をつくのは、絶対に私が許さないからね』
112 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:36:05.79 ID:7P72JQHN0
大和「・・・ってね」
神風「嘘・・・」
神風「・・・」
大和「まあ・・・私もどうしてあの人があんなに真剣な様子でそんなことを言ったのか、その時は理由がよくわからなかったんだけど・・・今思えば、きっと見抜かれていたのね。色々と」
神風「・・・大和さん?」チラ
大和「・・・」
大和(多分、あの時から・・・ううん。むしろ、最初に会った時から、ずっと・・・)
113 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:36:33.42 ID:7P72JQHN0
神風「・・・」
大和「・・・」チラ
大和「貴女は・・・少し、頑張りすぎね」
神風「っ・・・」ギリッ
神風「あ、貴女に・・・!」
ダンッ!
神風「貴女にっ・・・戦艦の貴女に、私の何がわかるのっ!」
114 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:37:11.43 ID:7P72JQHN0
大和「・・・」
神風「貴女は、貴女は戦艦じゃない!大和型戦艦じゃない!私たち艦娘の中で、一番強いじゃない!」
神風「誰からも必要とされている貴女に、この私の・・・」ガタガタ
キッ
神風「燃費だけが取り柄の、旧型駆逐艦と罵られる私たちの、何がわかるって言うのよっ!」
115 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:37:38.75 ID:7P72JQHN0
神風「・・・」ハァハァ
大和「・・・」
神風「っ・・・」ギリッ
ギイッ
神風「・・・すみません。八つ当たりみたい真似をして・・・」
大和「・・・ううん、いいの」
116 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:38:15.70 ID:7P72JQHN0
大和「・・・あのね。正直に言うと、私も貴女と同じなのよ」
神風「・・・」
神風「・・・同じ?」
大和「そう。いつだって、また不要になるんじゃないかって。また捨てられるんじゃないかって。そんな不安で一杯なんだもの」
神風「・・・そんなはず、ないです。だって大和さんは、戦艦で、大和型で・・・」
神風「・・・私たちとは、違って・・・」
117 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:38:52.61 ID:7P72JQHN0
クスッ
神風「・・・?」
大和「ふふっ、ごめんなさい」クスクス
大和「どうやら神風さんは随分と私を高く評価してくれているようだけれど・・・私だって実際には、そんなに大層なものでもないのよ?」
神風「え・・・?」
大和「だって、ほら。私、燃費は最悪でしょ?以前は出撃する度に呆れたため息があちこちから聞こえていたから、本当に辛かったわ。それに身体が大きいから、敵の攻撃も当たりやすいわね。毎回毎回小さな傷を作っては、それを修理するのにすっごく時間がかかっていたわね。おまけに今の私には、艤装が何一つとないもの」
大和「ほら。しっかり鎮守府を片付けてくれた貴女より、よっぽど使えないでしょ?」
神風「そ、そんなことないです!だって、今は装備や資材がないから活躍する機会がないだけで、そうじゃなかったら・・・」
大和「そうね。もし私が万全の状態だったら、少なくとも同じ戦艦の子たちに遅れを取るつもりはないわ」
神風「だ、だったら・・・!」
大和「でも、だからなに?」
神風「えっ・・・?」
118 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:39:33.48 ID:7P72JQHN0
大和「もし装備が揃っていれば?もし資材が十分にあれば?そんな今ありもしないことを考えたところで、何の意味もないわ」
大和「私たちが向き合わなければいけないのは、この『今』だけなのよ。仮定や空想の中でなら、確かに私は最強の戦艦かもしれない。けれど、実際はどう?」
大和「満足に出撃することもできない、ただのお荷物でしかない。ご立派な名前をぶら下げただけのこんな『今』の戦艦大和を、一体誰が必要としてくれると言うのかしら?」
神風「そ、それは・・・」
神風「ぅ・・・で、でも・・・そ、それなら、大和さんはどうしてそんなに、堂々としてるんですか・・・?」
大和「それは・・・」
大和「・・・」フゥ
大和「ほんとはそれほどでもないんだけれど・・・そうね。もし私がそう見えるなら、それは私が提督を信じているから・・・それだけ」
神風「そんな・・・」
大和「あ、でもね。もちろん、提督なら誰でもいいっていうわけではないのよ?」パタパタ
119 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:40:03.71 ID:7P72JQHN0
大和「あの人が以前言ってくれたの。大和は大切な部下で仲間だもん、って。私たちにできることを、一緒に考えていこうって」
大和「口先だけの言葉なら、今まで色んな人からいくつも貰ってきた。けれど、あの人の目を、口を、心を見て、言葉を交わす中であの人が本当に、心の底からそう言っているんだってわかった」
大和「だから・・・私もあの人を信じて、あの人と一緒にいたい。私の信じる、私が信じることを願ったあの人だったから、私はそんな自分を少しだけ信じられるようにったの」
120 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:40:30.79 ID:7P72JQHN0
神風「・・・」
神風「私は・・・」
神風「・・・私には、信じられない。うわべだけの言葉なんて、私には信じられない」
大和「・・・そう」
神風「・・・はい」
大和「・・・」フム
神風「・・・」
121 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:41:23.45 ID:7P72JQHN0
大和「そういうことなら・・・うん。きっと、問題ないわ」
神風「・・・?」
大和「ふふっ。だって・・・」
122 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:41:49.65 ID:7P72JQHN0
大和「だって、この鎮守府には、間違いなく貴女が必要だもの」
123 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:42:24.08 ID:7P72JQHN0
神風「・・・」
神風「・・・そんなことないです。たまたま今はこの鎮守府に艦娘が少ないから、私でも必要だって思ってくれるかもしれない」フイッ
神風「けれど時間が経って、他の艦娘がたくさん来たら、私なんて、きっと・・・」
124 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:42:54.64 ID:7P72JQHN0
大和「待って」
神風「・・・」
大和「・・・この先、とか今だけ、なんて貴女は言うけれど・・・それって、悪いことかしら?」
神風「えっ・・・?」
神風「だ、だって・・・そりゃそうでしょ?要らなくなったら、捨てられるかもしれないのよ?私たちは」
大和「まあ、それはそうかもしれないわね」
神風「なら・・・!」
大和「でもね・・・」
125 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:43:42.49 ID:7P72JQHN0
大和「でも・・・私たちにとって一番大切なのは、今この時でしょう?」
神風「・・・!」
126 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:44:31.10 ID:7P72JQHN0
大和「もちろん貴女の言うように、未来のことや過去のことも踏まえて行動することも大事なことよ?」
大和「けれど・・・けれど、私たちは艦娘。今この時、私たちが必要とされている場所で、私たちを必要としてくれる人たちのために全力で戦うことが、私たちの役目じゃないかしら」
神風「それ、は・・・」
大和「・・・」
大和「貴女はずっと長い間、辛い思いをしてきたのかもしれない。それを私や提督が、全て理解してあげることはできないのかもしれない」
大和「けれど・・・その痛みも苦しみも、一緒に背負うことはできるわ」
神風「・・・」
大和「ただし、貴女が本当に思っていることを話してくれたら、だけど・・・ね」
神風「・・・」
127 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:45:22.69 ID:7P72JQHN0
神風(背負う・・・痛みを、苦しみを・・・)
神風(私の・・・千切れかかった、この想いを・・・)
神風(誰、が・・・?)
128 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:46:05.09 ID:7P72JQHN0
神風(・・・)
神風(私は・・・)
神風(私は・・・神風型駆逐艦の一番艦・・・)
神風(私が、私が皆を、守らないと、いけないのに・・・)
神風(皆が、妹たちが私の背中を見ている・・・)
神風(私が・・・私だけは、折れるわけにはいかない・・・)
神風(そうじゃないと・・・)
129 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:47:01.33 ID:7P72JQHN0
・・・・・
『神風型なんて古い駆逐艦、うちには必要ねえよ』
『燃費が他の駆逐艦よりちょっとばかしいいだけだもんなあ』
『ボロいし、古くせえし、なにより弱っちいんだよ』
『おまえ、もう出撃しなくていいから』
『邪魔だなあ』
・・・・・
130 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:48:15.12 ID:7P72JQHN0
『何か困ったことがあったら、いつでも私に相談しなさいよ』
こっちの台詞。私は貴女が心配よ。
『神風お姉様、大丈夫ですか・・・?』
全然平気よ。貴女が私の心配なんて、五年は早いわ。
『姉貴?疲れてるように見えるな。僕がいつでも交代してやるから、遠慮するなよ』
あんたに任せるのはすっごく不安だから、遠慮しておくわ。
『姉さん・・・』
そんな不安そうな目で見ないでよ。大丈夫。私に任せておきなさい。
131 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:49:15.45 ID:7P72JQHN0
私が全部、受け止めてあげるわ
だって、私は神風型の一番艦
妹たちの、たった一人の長女
私が彼女たちを導く
私が彼女たちを守る
私が彼女たちを救う
今度こそ、必ず
だから、嫌なことも、辛いことも、苦しいことも、悲しいことも
全部ぜんぶ、私が受け止めてあげる
必ず
私が
132 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:49:48.26 ID:7P72JQHN0
・・・・・
神風「うっ、うぅ・・・」グスッ
神風「く・・・ぅ・・・ううう・・・」
大和「・・・」ポンポン
神風「うぅぅぅ・・・ごめ、ごめんなさいぃ・・・みんなぁぁぁ・・・」ギュウ
大和「大丈夫・・・大丈夫・・・」
神風「うっ・・・ひうっ、ぅ・・・」
大和「・・・大変だったわね・・・自分に嘘をつくのは・・・」
神風「ぅ・・・ぅっ・・・」
大和「でも・・・もう、一人じゃないからね・・・」
神風「っ・・・」
神風「ぅ、ぅぅ〜・・・!」ギュ-
大和「・・・」ナデナデ
133 :
◆PhE6LVcl/M
[sage]:2017/11/13(月) 22:50:28.72 ID:7P72JQHN0
翌日・朝
【鎮守府前】
神風「〜〜〜♪」サッサッサッ
〜〜〜〜〜
提督「・・・」コソコソ
提督(う、うぅ・・・いざとなると、少し緊張するなぁ・・・)
提督(で、でも、このままじゃダメだし・・・聞き辛いことでも、提督の私からちゃんと聞いてあげないと・・・!)グッ
提督「よ、よぉ〜し・・・!」イソイソ
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