少女「コミケ行くので泊めてください!」男「は……?」

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340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:18:20.52 ID:Rg3u98mHo


友人「んんwwwまさか、ゴキホイが変形するとはwwwwww」

友人「不覚にも男のロマンをくすぐられてしまいましたぞwww」

友人「それもゴキホイにwwwwww」


待機列「うおお、涼しいー……!!」

待機列「ゴキホイ最高ォォォーーー」


少女「皆さん、換気の雄叫びを上げています!」

男「その漢字で間違いないんだな? ……と。来るぞ!」
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:18:49.06 ID:Rg3u98mHo


アナウンス『お待たせしました。ただいまより、COMIKE 92――――』

アナウンス『二日目を、開催します!!』


ババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

待機列「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」

ババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


少女「おおっ、これは! 昨日は、外で聞いていた……!」パチパチパチ

男「ああ。スゴいだろう、間近で見る拍手は」パチパチパチ

友人「奇跡のカーニバル    開     幕     だ    」
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:19:19.50 ID:Rg3u98mHo


待機列「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」ドドドドドド

待機列「突撃だああああああああああああ」ドドドドドド


少女「あっ、皆さん一斉に走り出しました! 私も……」

男「待て! 動くな!!」

少女「え……!?」

友人「んんwwwこんな光景を、つい最近、どこかで見かけませんでしたかなwww」



スタッフ長「―――走らないでください」ザッ
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:19:47.52 ID:Rg3u98mHo


スタッフ長「―――ゆっくり。ゆっくり、ご移動お願いします」



      | |
      | |                      _、rセ州州h、
      | |                 Z州州州沁
      | |                 Z州州州;沁
      | |                       Z州州;州;沁
      | |                       Z州;州;州;沁              Λ
      | |                Λ     Z;州;州;州;沁            | |
      | |               | |    { ̄{  ̄ 寸jijハ            | |                 /|
      | |               ∨      ∨ ^'く   寸ij:i,             | /                | |
      | |    Λ            |::|     ./    \  寸}           | |                  |/
      | |    | /             |::|    /   |     \.  寸.           | |                ||
 ̄^\   | |    | |    j{       |::|.   |   |     \ |     Λ     | |                ||
   :.∨ | |    | |    j{       |::|.   |   |  __  ∨{    |/      | |          |    ||
_   V| |    | |    j{       |::|.   | i'丐| |丐,ノ    |Λ     ||  i   | |  │      |    ||
云]    }| |    | |    j{       |::|     ∨___|_〉 |    「/Λ  .||   |)  | |  ┼  |  |    ||
厂    ノj| |    | |    ||       |::|     ∨ |双双|     //从乂  ||   |   | |  |  |  ,.|.___    ||
   / |(\    | |    || j{     .|::|     .」 |Τ⌒|  /ノヘ/⌒  ||   |   | |  |  | / |  \ .||
 /ノ\ノ⌒Y \ | |    || j{ /Λ |::|  _/ 人|爻爻L//´ ̄ ̄二=- _ |   | |  |  ||  |    l ||
イ// { 二 }  } | |    || j{/ { ∨:|. <  /⌒\                ニ=- _ | |  |  || 云 云  l ||
/´ ̄ { 二入,.ノΛ |    || |||〒〒 L|/ \{  ┘| |______      \.|  |_|| |Ln「  | || /
    \|  | / / / \   .|| ||「.云/´⌒ / /^ー―┘―<__     _    \ /´ `\,.|示| /⌒∨ /
<´ ̄~~~~|  i\      \_| _/     { /          ⌒^''< _   `ヽ    /  >―く ', /   / /
    _|  |_\    / / Y^{   ノ  }/    | |            {::::{>x  Λ  / /       'こ)二二/ /
.  /  .|  |.  ̄∨         __彡  八    | |            }::::{   \ Λ/ /        ', ∨/ /
/    |  |    ∨     }      >'' ∨ッ  ノ八   r  ......::::::::::VΛ      / /           ',  / /
      |  |     \ \/   >''´  二Γ¨´   `:::::::....^::::::::::::::::::::{ ∨    / /          ', { {
      |  |       ⌒''冖''"´ \二二二乂 ノ八 _  ノ:::::::::::::::::::::{   ∨  / /           } { / ̄
      |  |                 ∨二二√     ⌒:::::::::::::::::::::::: {   ∨./ /                } ∨
      |  |               |二二乂  八_   }:::::::::::::::::::{   ∨ /                } {
      |  |               |二二√     ⌒  }:::::::::::::::::::{     { {                 }  \
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:20:16.24 ID:Rg3u98mHo


少女「あ、あれは。……こ、国際展覧場駅の……!」

男「300人の、スタッフ兵……!!」


待機列「うおおおおおお俺が一番乗りだああああああ」ドドドドドド

待機列「どけどけどけェェェェェェェェェェェェ」ドドドドドド


スタッフ長「我らは参加者を守るために存在する」

スタッフ長「そのためならば、参加者を害するという、ムジュンさえ呑み下そう」ジャキン

スタッフ長「選ばれし300人の精鋭よ!! 武器を取れ!!」

スタッフ「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:20:42.58 ID:Rg3u98mHo



          コ ミ   ケ ッ ト
スタッフ長「 C o m e G e t (来たりて取れ) !!!!!!」



スタッフ「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」ドドドドドド



待機列「「「「「「うああああああああああああああああああ!!!!!!」」」」」」

待機列「徹夜で並んだのに、こんなところでぇぇぇぇぇぇ」グサグサグサ

スタッフ「ルールを守らぬからだ……」ビチャァ!!

待機列「なのはは!!! 永遠です!!!!!!」バタッ
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:21:11.85 ID:Rg3u98mHo


少女「血祭り!! アレは完全に血祭りですよ!!」

男「いや……。あの最前列に並んでいるならば、おそらく歴戦の徹夜組だろう」

男「徹夜組は、ああ見えて精強だ。槍の十突きや二十突きでくたばりはしまい」

友人「しかし傍目には、コレで徹夜組が制裁を受けているように見えるwww」

友人「一種のプロレスですなwwwwww」

少女「そ。そーなんですか……」


スタッフ長「仕留めた徹夜組の首は、逆三角形の前に晒せぇぇぇぇぇぇ」

スタッフ「「「「「「うおおおおおおおおおおおお」」」」」」
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:21:38.55 ID:Rg3u98mHo


男「そんなコトより、早く黒ずくめさんのサークルに向かうぞ」

少女「は、ハイ! ええと、どっちに……」

友人「コチラですなwwwゴキホイを通りぬけて、通路に出ますぞwww」


――東館 館内 2階

友人「東ホールへの入口は、ココの1階ですなwww」

少女「わあ、もうスゴい人の数……!!」

男「降りるぞ! 乗り遅れるな!」

友人「エスカレーターへフリーフォールですぞwwwwww」
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:22:12.53 ID:Rg3u98mHo


――東館 ホール内

黒ずくめ「新刊2部ですね。ありがとうございます」

売り子「コチラ黒ずくめ、限2となっておりまーす」


少女「ありました! あのサークルですよね!?」

男「ああ、そうだな。……だが」


                                            /:::::::::::::::::\
                                           i|::::::::::::::::::::::::::}
                                          八从人从八__}
                                            |      } )
              r-‐‐- 、                        ヽ    /.|/
   -‐‐┐    {:::::::::::::::::}                    __   \_/ |  r―‐- 、
   ::: : {¨',     ({.:::::::::::::::::}                       /::::::::::|/ ̄`‐---‐´ ̄\:::::::::}
   ::: : }_'ノ    ヽ:::::::::::/                   |:::::::::::::: |.           /ヽ:::::|
.   =r'〉 \⌒ ___r==┐              ,-‐‐、  ゝ::::::::/ヽ|          /  ∨
    |¨ ̄\ v  ̄   ̄ ̄\/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ . {:: : / }⌒'.__r=={   |           |    |ニ、
    |     /. }      |/. |/⌒ヽ:::::::::::: . /⌒ヽ}-┘ノ  {|.  |   |           |    |
.     ノ . \/  |      |  |.::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ̄ ̄\/⌒ヽ. !____|           |__|ニニ
       7 ̄|      |____}::::::::::::::::::::::::: : ∧      | ̄ | }. |  |         |  |
.         /__|      | | |:::::::::::::::::::::::::::::::| |     {  | }. |  |         |  |==
.          |      | | |:::::::::::::::::::::::::: : ヽ|     r===ih |. |  |         |  |
    ======={.        |/ /.:::::::::::::::::::::::::::::: : |    〔二二}i:」|. |  |         |  |二二
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:22:40.13 ID:Rg3u98mHo


少女「ものすごく、並んでいます……!!」

男「くっ……。壁というからには、人気なのはわかっていたが……」

男「これほどか!? さすがに異常だ……!!」


友人「…………」

男「おい、友人!!」

友人「……んん、なんですかなwww」

男「この行列の最後尾はどこだ? まったく見えんぞ……!」

少女「最後尾には何か目印とかないんですか!?」
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:23:07.33 ID:Rg3u98mHo

友人「最後尾なら、サークル名が書かれたカンバンを持っている者がいるハズですがwww」

少女「わかりました! カンバンですね、探してきます!」タタッ


友人「…………」

男「……おい。さっきからどうした」

男「ホールに入ったとたん、黙りこくって」

友人「……男氏、悲報ですぞ」

男「は?」

友人「“悪いニュース”と、“もっと悪いニュース”。どっちから聞きたいですかなwww」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:23:36.08 ID:Rg3u98mHo

男「……ふん。ヤケに洋画みたいな訊き方だな」

男「じゃあ、あえて“もっと悪いニュース”から聞かせてもらおうか」


友人「……待機列の途中で、我らが立てていた仮設がありましたなwww」

男「ああ。今日はチケット入場者が多いとかいう……」

男「……まさか」

友人「結論から言って大アタリですなwww」

友人「ホールに入ってから、注意深く観察しておりましたがwww」


友人「明らかに列の長さがおかしい」
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:24:06.03 ID:Rg3u98mHo

男「……!」


友人「いくら大手といっても、最初に並ぶチケット組は100人もいませんな」

友人「だが見る限り、一列あたり、そのおよそ倍の人数……」

友人「それが、何ヶ所も」

男「……さすがに、偶然じゃ済ませなくなってきたな」

男「ハナシが本当なら、チケット組の動員数は、1000人近いというコトになる」

男「それらが、カモフラージュが目的でも、あるいはそれ以外の目的でも」

男「示し合わせもしないのに集まれるハズが無い」
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:24:33.28 ID:Rg3u98mHo

男「つまり、コレは……」

友人「ああ。マチガイありませんな」

友人「組織的な犯行。彼らは打ち合わせた上で、今日、この場に集まっている」


友人「何者かが背後にいる、と考えるべきですな」

男「……スケールが大きくなってきたな」

友人「悔しいですが、我らにどうこう出来るハナシではありませんな」

友人「死神氏ほどの、実力者なら、また別かもしれませんが……」

男「…………」
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:25:00.70 ID:Rg3u98mHo

男「……これだけ大規模に人間を動かしての、目的はなんだ?」

友人「パっと思いつくのは、転売価格のつり上げですな」

友人「同じグループで頒布物を独占し、一定の金額で出品するコトで、相場のインフレを図る」

友人「転売の一回あたりの利益を増やそうとしているワケですな」

男「……コメの買い占めや、出し渋りみたいなモンか」

友人「原理的には。一種の寡占ですからな。ギルド制にも近いモノを感じますな」


友人「……ですが、コレは、黒幕が目先の利益に囚われている場合のハナシ」

友人「もっとタチが悪ければ。あるいは……、…………」

男「…………」
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:25:27.11 ID:Rg3u98mHo


友人「……いや、考えても仕方ありませんな」

友人「今は目先の問題に取り組むべきですぞ」

男「……! そうだ、少女……!」


少女「男さーん! 友人さーん! 最後尾、コッチみたいですよー!!」


男「いたか……! わかった、今行く!!」

友人「…………」

男「……それで、友人。もう一つだけ質問だ」
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:25:54.00 ID:Rg3u98mHo



男「“悪いニュース”、というのはなんだ?」


友人「…………」

男「……当ててやろうか」

友人「……構いませんぞ」

男「…………」


男「今から黒ずくめさんの列に並んだところで、新刊は買えない」


友人「…………」
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:26:23.31 ID:Rg3u98mHo


――行列 先頭部分


係員「黒ずくめ完売! 黒ずくめ、完売しましたー!!」


少女「え……っ。ちょ、ちょっ。黒ずくめさんとこの係員さん!!」

少女「完売したってどういうコトですか!?」

係員「す、すいません。予想外に、並んでいる方が多く……」

係員「新刊は、すべて売れてしまったのです」

少女「……!!」

男「…………」
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:26:49.85 ID:Rg3u98mHo

係員「だ、だが、既刊ならまだあるので!」

係員「良ければ、お買い求めいただければ、と……!」

少女「……ハイ。わかりました……」

友人「…………」


男「……予想通りか」

友人「そのようですな」

男「これが、組織的なファンネルのチカラか」

友人「死神氏もファンネルのチームを組んでいますが……」

友人「さすがに一つの大手を全滅させるほどではありませんな」
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:27:25.89 ID:Rg3u98mHo

男「……さすがに完売したと聞いて、列を抜けるヒトも多いな」

友人「…………」

男「お前はどうする?」

友人「……正直言って、他にも狙っているサークルはありましたが……」

友人「このまま男氏と少女氏を置いていくのも夢見が悪いし、ココに残りますなwww」

男「…………」


男「……いや、なら行ってこい」

友人「…………」

友人「男氏……」
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:27:53.28 ID:Rg3u98mHo

男「ほら、こう話している間にも、他の列には人が並んでる」

男「加えて組織的なファンネルの攻撃があったなら」

男「ウカウカしてるヒマは無いんじゃないか?」

友人「…………」

友人「……そうですな。ありがとう」


友人「……少女氏、少女氏」

少女「…………なんですか?」

友人「申し訳ないが、我、他のサークルも回らざるを得ない」

友人「ついては、ひとまずココでお別れ、というコトに……」
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:28:20.63 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」

少女「……そうですよね。友人さんには、友人さんのCOMIKEがありますもんね」

友人「本当に、申し訳ない」

少女「いいんですよ。友人さんが謝るコトじゃありませんって」

男「…………」


男「……それじゃあ、俺たちはとりあえず、黒ずくめさんのところまで並んでみる」

男「そのあとの予定は特に決めていない。また、縁があれば会うとしよう」

友人「……どうか、黒ずくめ氏によろしく、と」

友人「それでは……、また会いましょうぞwwwwww」タタタッ
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:28:48.09 ID:Rg3u98mHo


少女「…………」

男「…………」

少女「……行っちゃいましたね」

男「ああ。第一の目的がダメになっても、すぐに第二、第三に頭を切り替えなきゃいけない……」

男「それが、COMIKEという戦場でもある」

少女「…………」

少女「……本当に、戦場なんですね」

男「…………」
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:29:15.89 ID:Rg3u98mHo


ザワザワ ガヤガヤ


少女「……なんか、列、ガランとしちゃいましたね」

男「ほとんどが新刊目当てのヒトだろうからな」

男「それに、友人のように、複数の目的を持っているほうが普通だ」

少女「…………」

男「…………」

男「……薄情だなんて、思わないでやってくれ」

少女「わかってますよ」
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:29:42.47 ID:Rg3u98mHo



少女「……スイスイ、進めちゃいましたね」

男「そうだな。……おっ、どうやら先頭みたいだぞ」


黒ずくめ「あっ……。少女ちゃん、男さん。来てくれたのですか」

男「ああ。いちおう、約束だったからな」

少女「…………」

黒ずくめ「……あの。少女ちゃん……」

男「ああ、すまん。コイツやっぱ、熱さにやられて疲れちまったみたいでな」
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:30:09.59 ID:Rg3u98mHo

男「ああいや、黒ずくめさんのせいじゃないよ。俺たちが勝手に疲れただけだ」

黒ずくめ「…………」

少女「…………」

男「……すまん。既刊はまだあるか?」

黒ずくめ「あ……。はい、3種類ほどありますよ」

男「では、一冊ずつ、お願いする」

黒ずくめ「ありがとうございます。1500円です」

男「はい、コレで」チャリン

黒ずくめ「……たしかにいただきました。良かったら、楽しんでくださいね」ニコ
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:30:40.15 ID:Rg3u98mHo

少女「…………はい」

男「…………」

黒ずくめ「…………」


男「……友人のヤツも、並んでたんだがな」

黒ずくめ「すいません。新刊無いなら、並ぶ意味無いですよね」

黒ずくめ「僕が、もっと正確に、需要を読めていれば……」

男「……いや。少なくとも今回は、黒ずくめさんの責任じゃないかもしれん」

黒ずくめ「……?」

男「まあ友人のヤツにでも、会ったら尋ねてみてくれ」
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:31:06.79 ID:Rg3u98mHo

男「それとアイツ本人も、黒ずくめさんによろしく、と言っていた」

黒ずくめ「……そうですか」

男「まだ二日目は始まったばかりだ」

男「俺なんかが、エラそうに言うのも、ナンだが……」

男「頑張ってください」

黒ずくめ「あ……。……ありがとう」


少女「…………」

黒ずくめ「…………」
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:31:38.39 ID:Rg3u98mHo

黒ずくめ「…………そうだ、少女ちゃん!」

少女「は!? え、えっと、ハイ!?」

黒ずくめ「コレ、僕の連絡先です」

黒ずくめ「その、厚かましいかもしれないけど……」

黒ずくめ「今日並ばせちゃったコト。お詫びがしたいので」

黒ずくめ「また夕方にでも。かけてくれると、嬉しいな」

少女「……わ。わかり、ました……」

黒ずくめ「…………」

男「…………」
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:32:28.90 ID:Rg3u98mHo

男「……それじゃあ、これで」

黒ずくめ「ありがとうございましたー。次の方ー……」

少女「…………」



男「…………」

少女「…………」


男「……アソコの日陰で休むか」

少女「……ハイ」


ドサ
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:32:57.36 ID:Rg3u98mHo

男「ふーっ、やっぱ荷物重いな……」

少女「…………」

男「なんだかんだで、二日目、始まってまだ30分か」

男「みんな忙しそうだなー」

少女「…………」


男「……そんなに、気、落とすなよ」

男「既刊は買えたんだしさ」

少女「…………」
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:33:24.94 ID:Rg3u98mHo

男「別に、黒ずくめさんのサークルのコト、前から知ってたワケじゃないし」

男「新刊も既刊も似たようなモンだろ?」

少女「…………」

少女「……そうじゃ、ないんです」

男「…………」

少女「……なんて、いうか。なんて言ったら、いいんだろう。この気持ち」

少女「ゴチャゴチャしてて、うまくコトバに言い表せません」

男「…………」

男「ムリに、口に出す必要は、無いんだぞ」
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:33:52.03 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」

少女「……そうですね」


男「…………」

少女「…………」


男「スポーツドリンク……、飲むか?」

少女「……ありがとうございます」


ゴクゴク
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:34:19.38 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」

男「…………」


チャポン


少女「……ああ、そうだ」

少女「ちょうど、このスポーツドリンクみたいなモノなのかもしれませんね」

男「……? 何がだ」


少女「今の私です」
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:34:48.44 ID:Rg3u98mHo

少女「スポーツドリンクって、冷たいほうがオイシイじゃないですか」

少女「ぬるくても、飲めるけど、オイシくなくなる」

男「…………」


少女「それと一緒ですよ」


少女「たしかに私は、既刊を買えました」

少女「あの黒ずくめさんが作った本なんだから、きっと面白いモノだと思います」

少女「……だけど、新刊は買えなかった」

少女「私は、黒ずくめさんの新刊を買うために、朝起きて、ココまで来たのに」
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:35:17.65 ID:Rg3u98mHo

少女「……たしかに、目的のモノは、そこにあるけれど」

少女「正直、満足なんて出来ないです」


男「…………」

少女「…………」


少女「あー、私、なんでこんな苦労してるんだろう……」

少女「なんで私が、こんなしんどい思いしなきゃならないんだろう……」

少女「なんて、思いますね。正直言って」

男「…………」
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:35:45.44 ID:Rg3u98mHo

男「……腹立つか?」

男「俺たちの前に買っていったヤツらが」

少女「いいえ。そんなコトはありません」

少女「これは、競争ですから」

少女「勝つ者がいれば、負ける者がいる」

少女「生きる者がいれば、死ぬ者がいる」

少女「そこに善も悪も関係ありません」

少女「ただ、私が劣っていた、ってだけですから」

男「…………」
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:36:13.81 ID:Rg3u98mHo

少女「…………でも」

少女「常識とか、摂理とか、理屈とか」

少女「そんなの全部抜きにして言うと」



少女「悔しいなぁ…………」



男「…………」



                                    バタン
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:37:00.19 ID:Rg3u98mHo

少女「!?」

男「……? なんだ、今の音……」


参加者「おい、ヒトが倒れたぞ!!」

参加者「ど、どうしよう。まずは119番か……?」


男「お、オイ!! COMIKEで救急車なんて呼ぶ奴があるか!!」

参加者「なっ?」

男「ここで呼んだところで広いビッグサイトのどこに探しに来てくれるんだ!」

男「まずは救護室だ!! どこにある!?」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:37:27.58 ID:Rg3u98mHo

参加者「きゅ、救護室なら、逆三角形のところに……」

男「なら救護室行って、車イスかタンカ持ってこい! コイツは俺が何とかする!!」

参加者「わ、わかった……!」ダダッ


徹夜組「う、うーん……」ビクッ

男「おい、大丈夫か……。ちっ、アワ吹いていやがるな」

男「しかも大量の汗……」

男「どう考えても熱中症だな。急に晴れてきたからか」

男「少女! 俺はコイツを運ぶ。お前はコイツの荷物を……」
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:37:57.43 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」


男「……? おい、少女!!」

少女「えっ? あっ、ハイ……!」

男「俺はコイツを日陰まで運ぶから、お前はコイツの荷物を持ってきてくれ!!」

少女「は、ハイ……。わかりました!」


男「ぐっ……。しかし、体臭がスゴいな。昨日風呂入ってないな、コイツ」

男「しかも、目の下のクマ。さては徹夜組か……」

徹夜組「…………」ズリズリ
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:38:23.37 ID:Rg3u98mHo


少女(病人か。私も、ちょっと、チョーシ悪かったしな……)

少女「はっ。それよりも、荷物、荷物……」


少女「あった! この紙袋かな……」


少女「…………」

少女(……中身、何が入ってるんだろう)チラッ


少女「…………、……!!」


少女(……これ、黒ずくめさんの、新刊……!?)
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:38:56.05 ID:Rg3u98mHo


少女「…………」ゴク


少女「……」キョロ

少女「……」キョロッ

少女「……」キョロ


少女「……、……」ドクッ

少女「…………」ドクッドクッ


少女(……今なら、誰も見てない)ゴクッ
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:39:23.84 ID:Rg3u98mHo

少女(……今なら、バレない)

少女(今なら、この本を取っても、誰も気づかない)

少女(…………)

少女(……な、何を考えてるんだ、私は……)

少女(……でも、一冊くらい)

少女(私だって、並んだんだし、買えてもオカシくなかった……)

少女(そうだ。今なら誰も見てない。誰も、誰も……!)



男「―――おい」
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:39:51.62 ID:Rg3u98mHo

少女「あっ……」


男「…………」


少女「…………」


男「……お前、いま何をしようとしていた」

少女「…………」ガチガチ

少女「ち、違う。これは、これ、は……」

男「…………」
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:40:18.93 ID:Rg3u98mHo

男「その袋を貸せ」

少女「……!」

男「いいから、早く」

少女「……うん」ガサ

男「…………」


男(黒づくめさんの本……)

男(そういうコトか)


スタッフ「すいませーん! このあたりで倒れたヒトはどちらですか!?」
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:40:45.73 ID:Rg3u98mHo

男「あ、コッチです!!」

スタッフ「うわ、これはヒドい……。とにかく、アワを拭いて……」

スタッフ「ひとまずタンカに乗せます。手伝ってくれますか?」

男「ええ。わかりました」


少女「…………」


男「……少女。ついてこい」

少女「え……っ。あっ、ハイ……」


男「…………」
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:41:13.41 ID:Rg3u98mHo


――救護室

スタッフ「天使さん! 急病患者です!!」

天使「またですか。どうせ熱中症でしょう」

スタッフ「え、ええ……。おそらく」

天使「そこのベッドに転がしておいてください。え、ベッドが足りない……?」

天使「ならばマットで構いません。とにかく汗をふき、氷で体温を下げるように」

スタッフ「は、ハイ……!」


男「す、スゴいテキパキしてる……」
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:41:49.18 ID:Rg3u98mHo

白い死神「スゲーだろ? アレであのヒト、“ビッグサイトの天使”って呼ばれてるんだぜ」

少女「し、死神さん!! いつの間に……」

白い死神「よう。なんかタイヘンだったみてーだな」ビッ

男「死神か。どうした、もう引き揚げか?」

白い死神「半分そうだな。なんと、この時間でもう、めぼしい大手が全滅しちまってな」

白い死神「これから数時間、並び続けるつもりだったんだが、やるコトも無し」

白い死神「仕方ないから、島中を回る前に、逆三角形に涼みに来たってワケだ」

男「なるほど……。今日は大荒れのようだな」

白い死神「おっ、わかるかい? まあ、さすがにここまでロコツじゃあねぇ」
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:42:20.46 ID:Rg3u98mHo

白い死神「それはそうと、あんたら、黒ずくめさんトコのは買えたかい?」

男「…………」

少女「……、……」

男「…………」フルフル

白い死神「おっと。アソコも、先発で行ったのに、ヤラレちまったか……」

白い死神「まあ、COMIKEに来たらそういうコトもあるって。落ち込むな」


男「そういう死神。お前の首尾はどうだった?」

白い死神「俺か? 俺はまあ、予定通りさ」
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:42:50.18 ID:Rg3u98mHo

白い死神「各自ファンネル、分担して、一つ目の狙いの獲物は仕留めた」

白い死神「だが、まあソコまでだな。二つ目を並ぶ余裕は無かった」

白い死神「なんでも大手や準大手が一瞬で根こそぎヤラレたってハナシだ」

白い死神「こりゃ、今日のオークション……。荒れるぜ?」

男「やはり転売目的だと思うか」

白い死神「そりゃそうだろ。俺たちみたいに、身内でシュミを分担してるだけならまだしも」

白い死神「ここまで大規模で組織的なのは、そうとしか思えねえ」

白い死神「しかしヤッコさん。ここまでハデにやれば明日警戒されると、わからんのかね」

白い死神「いや。今日、目立つコト、それ自体が目的というセンもあるか……」
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:43:28.07 ID:Rg3u98mHo

男「陰謀の考察はソッチでやってくれ」

男「俺たちは純粋にCOMIKEを楽しみに来てるだけなんだからな」

白い死神「おや。その割には、面倒ゴトに巻き込まれたみてーだが?」

男「ふん……。黒ずくめさんトコの、帰りにな。タマタマだ」

少女「…………」


白い死神「お前が持ってる紙袋は、ソコでぶっ倒れてるあんちゃんのか?」

男「ああ。置いていきたいんだが、どうにもタイミングが無くてな……」

白い死神「いいじゃねえか。どうせこの後の予定も無いんだろ?」

白い死神「しばらくジャマにならないココで涼んでようぜ」
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:43:54.99 ID:Rg3u98mHo

白い死神「ん……。ちょっと、その袋の中身、見せてもらってもいいか?」

男「…………」

白い死神「ははっ、盗りゃぁしねーよ」

少女「……、……」


白い死神「どれどれ。……げ、黒ずくめ持っていやがるのか」

白い死神「何コイツ、チケット組?」

男「いや……。俺が確認したところ、クサかったし、クマも出来てた」

男「たぶん、昨日の夜から並んでる徹夜組じゃないかな」

白い死神「徹夜か……。成仏しろよ」
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:44:23.65 ID:Rg3u98mHo

男「死んではいないと思うけどな」

白い死神「いや、わからんぜ? 比較的涼しいとはいえ、灼熱の夏コミだ」

白い死神「……もっとも、ビッグサイトにあの天使ある限り、死人は出さないだろうが」


天使「氷が溶けてきました。至急、冷凍庫から新しいモノを取り出してください」

天使「起きましたか。保護者に連れていってもらいなさい、救護室のスペースは有限なのです」

天使「また徹夜組ですか。ルールを破った畜生の治療は後回しです」


男「……天使?」

白い死神「はっは。あの無慈悲な働きも含めて、神の使い、“天使”と呼ばれてるのさ」
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:44:52.02 ID:Rg3u98mHo

白い死神「対となる死神の二つ名を持ってる俺としては、どうしても意識しちゃうね」

男「勝手に意識しておけ……」

白い死神「まあ実際、あの女がCOMIKEに赴任してから」

白い死神「ビッグサイトからの病院送りの数は劇的に減っている」

白い死神「病院に行かせず蹴り出しているだけ、ともいうが……」

白い死神「対処は的確で、治療は確実だ」

白い死神「野戦病院さながらの、この地獄じゃあ、崇め奉られような」

男「野戦病院か……。たしかに、そんな感じだな。ココは」

男「ベッドにも置かれず、ザコ寝してる患者が多いのが、特に」
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:45:19.91 ID:Rg3u98mHo

白い死神「“戦場”の病院なんだから、野戦病院でマチガイないね」

白い死神「俺の仲間も何度かお世話になったコトがある」

白い死神「チケット組だとバレたら、白い目で見られたがな! はっはっは!」

男「ふーん。チケット組とか、関係あるのか?」

白い死神「ああ、関係大アリだ。あの天使、ルール違反者には、かなり厳しい」

白い死神「チケット組の患者はすぐに追い出され、徹夜組の患者は対処を後回しにされる」

白い死神「根っからのレイシストってヤツだぜ、アイツぁ」

男「それは、ある意味で公平ともいえるような気がするが……」

白い死神「違いない! あれほどの正義の執行者は、あとはスタッフ長くらいだね!」
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:45:49.28 ID:Rg3u98mHo

白い死神「ほら、徹夜組のあんちゃんも。ソコに転がされていやがる」


徹夜組「…………」


男「まだ起き上がらないか」

男「よほど、ムリをしていたんだな……」

白い死神「徹夜組なら、ただの善良な被害者ってワケか」

白い死神「まあ、今日に当たった運が悪かった、としか言いようが無いな」

少女「…………」

男「善良、ねえ」
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:46:17.02 ID:Rg3u98mHo

白い死神「おや。男も、徹夜組差別主義かい?」

男「そこまでポリシー持ってるワケじゃないが……」

男「まあ、徹夜はいけないコトなんじゃないか?」

白い死神「はん。俺に言わせれば、身勝手に徹夜組を叩くヤツこそ、本当の悪だね」

少女「……どういうコトですか?」


男「少女……」

白い死神「おや、少女ちゃん。復活かい? さっきからずいぶん、おとなしかったが」

少女「キョーミのある話題だったので」

少女「身勝手に徹夜組を叩くヤツこそ、本当の悪……って、どういうコトですか?」
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:46:58.63 ID:Rg3u98mHo

白い死神「いやあ、深い意味は無いがね」


白い死神「―――事情も知らないで、準備会という公式が禁止しているのをいいコトに」

白い死神「安全な立場から、無責任に、正義をかざして非難する」


白い死神「そういった行為は、ムショーに腹が立つんでな。小市民的には」ギリ

少女「…………」

少女「……その、“事情”っていうのは?」

白い死神「…………」


白い死神「……ちと、深いハナシになるがね」
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:47:32.44 ID:Rg3u98mHo

白い死神「徹夜組が、なんで徹夜行為を行うのかは、知ってるか?」

少女「え……。そりゃ、欲しい頒布物があるからですよね」

少女「でも、だからってルールを破るのは、ダメだと思います」

白い死神「ああ、そうだな。実際ダメだ」

白い死神「だが徹夜組だって、ルールを破らずに、欲しいモノが手に入るなら」

白い死神「はじめから徹夜なんてしないさ。そうだろう?」

少女「……。そりゃ、まあ……」

白い死神「どう考えてもルールに問題があるんだよ。準備会の標榜する、な」

白い死神「だから徹夜組は、いくら禁止しても、無くならない」
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:48:00.72 ID:Rg3u98mHo

白い死神「そして、ルールを破って並んで、頒布物を手に入れようとした、徹夜組の末路が」

白い死神「そこのあんちゃんだ」


徹夜組「…………」


少女「…………」

白い死神「俺としても、さすがにいたたまれないね」フルフル

白い死神「黒ずくめは辛うじて手に入れているが、他にも欲しいモノがあったろう」

白い死神「だが、ココでぶっ倒れたせいで、その計画はオジャンだ」

男「たしかに徹夜組のほうが、俺たちなんかより、よほどCOMIKEに真剣なのかもしれないな」
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:48:29.09 ID:Rg3u98mHo

白い死神「あんたら、黒ずくめを手に入れられなかったんだろう」

少女「……!」ドキッ

少女「……は。ハイ」

白い死神「始発と同時に行ったのに、徹夜組に先を越されている」

白い死神「ルールを守って、ルールを破った奴に出し抜かれた」

白い死神「さぞ悔しいだろうなァー」

少女「…………、……」


白い死神「だったら、盗っちまいなよ」
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:48:56.48 ID:Rg3u98mHo

少女「……!!」

白い死神「コイツらはルールを破った悪だ。誰も咎めやしねえぜ?」

白い死神「むしろ、コレは正義の鉄槌だ」

白い死神「キマリを守らず、COMIKEを存亡のフチに追いやる、徹夜組へのな」

男「おい、死神……!」

白い死神「くっくっく。だが、俺の言ったコトは間違っているか?」

男「…………」


少女「……ええ。ソレはマチガイです」
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:49:23.89 ID:Rg3u98mHo

男「……!」

少女「いくらルールを破ったヒトだからって、目の前で頒布物が売り切れたからって」

少女「他人の“戦利品”を奪ってはならない」

白い死神「ほう……」

少女「私が頒布物を手に入れられなかったのは、私のチカラが劣っていたから」

少女「彼が頒布物を手に入れたのは、私よりも情熱が勝っていたから」

少女「ソレを我欲に濡れた願いで覆そうとするコトこそ、マチガイです」

白い死神「…………」

白い死神「嬢ちゃん……」
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:49:51.41 ID:Rg3u98mHo


白い死神「なかなか良いガッツ持ってんな」ポン


少女「え……」

白い死神「男よぅ。良い女、捕まえたじゃねえか?」

男「だから、ホントそういうんじゃないから……」

白い死神「かっかっか。よきかな、よきかな」


白い死神「ホント、準備会にこんな公平な人間がもっといれば、良かったんだがねえ」

男「何……? どういうコトだ?」
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:50:30.91 ID:Rg3u98mHo

白い死神「ん? 準備会がもっと公平なら、こんなルール」

白い死神「とっくにもっと違うモンにすり替わってるだろ」

男「いや……。単に良いアイデアが無いだけなんじゃないのか?」

男「10000人にもなる徹夜組を排除するのは、難しいだろうし……」

白い死神「…………」


白い死神「あんた、本当にそう思うかい?」


男「……!」

少女「え……?」
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:51:02.43 ID:Rg3u98mHo

白い死神「さっき、このあんちゃんは黒ずくめしか手に入れられなかったと言ったが」

白い死神「そんなのは氷山の一角だ」

白い死神「場合によっては、行列に並んだ挙句、何も手に入れられなかった……」

白い死神「そんな始発組と変わらないような徹夜組だって、現れる」

少女「な……。そ、それはどういうコトですか?」

少女「徹夜組のヒトは、確実に頒布物を手に入れられるから、並んでるんでしょう?」

白い死神「んっんー。その言い方には、ちと語弊がある」


白い死神「正確には、“頒布物を手に入れられる可能性が高い”から、並ぶんだ」
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:51:30.54 ID:Rg3u98mHo

少女「……そ。それは……」

少女「徹夜をしても、頒布物を手に入れられないコトがある……?」

白い死神「ご名答! さすが、聡い嬢ちゃんだ」


白い死神「そう。徹夜組だって、無敵じゃあない」

白い死神「ツラい思いして、前の夜から並んでも……」

白い死神「さらに別のヤツに、出し抜かれるかもしれねえんだ」

少女「べ。別のヤツ、って……?」

男「…………」

白い死神「考えてもみろ。いくつか、方法があるだろう?」
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:51:57.89 ID:Rg3u98mHo

白い死神「始発組よりも、徹夜組よりも。早くに会場に入れる、“魔法のチケット”が」

少女「……!!」


白い死神「そう。始発組は徹夜組に、徹夜組はチケット組に、さらに出し抜かれる」

白い死神「チケットを手に入れた者こそが、真の絶対正義なのさ」

男「……そして、そのチケットを発行しているのが」

白い死神「そう。まぎれもなく、準備会の連中」

白い死神「モチロン、チケットも理念通りに使えば、正しいアイテムだが」

白い死神「哀れかな。使う人間が悪ならば、アイテムも悪に成り下がる」
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:52:40.28 ID:Rg3u98mHo

白い死神「そして。この二種類のチケットの通称。その名前を、なんと言った?」

少女「え……。たしか、片方がサークルチケット。ソレと……」


少女「……!!」

白い死神「……そういうコトさ」

白い死神「準備会は身内の特権を守るために、スタッフチケットを発行している」

白い死神「ソレ自体がマチガイだとは言わん。事実、当日スタッフは頒布物を買えないからな」


白い死神「だが、準備会が発行したチケットが存在するために」

白い死神「準備会が提示したルールは守られず、徹夜組があふれ出す」
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:53:12.54 ID:Rg3u98mHo

白い死神「しかも、結局徹夜組も、チケット組には敵わない」

白い死神「どうだ? コレがCOMIKEの現実だ」

少女「……そ。ん、な……」

男「…………」


男「一つ、いいか」

白い死神「おう。なんでも」

男「死神。お前は、今日もファンネルと協力して、頒布物を手に入れたようだが……」


男「その頒布物を手に入れるために、お前たちはどうやって入場した?」
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:53:41.42 ID:Rg3u98mHo

白い死神「…………」

少女「……!」


少女「ま、まさか……」

白い死神「……ああ、そうさ」

白い死神「俺たちだって、一般参加者より早く入場したよ。サクチケを使って、な」


男「お前、やっぱり……」

白い死神「おっと、カン違いするなよ」

白い死神「俺たちは、転売だけは大嫌いなんだ」
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:54:11.83 ID:Rg3u98mHo

白い死神「サクチケは、転売で手に入れたモノじゃなく」

白い死神「友人をはじめとした、当日のサークル参加者と協力して手に入れているし」

白い死神「頒布物を買うのは、ファンネル仲間と、サクチケを提供してくれたサークルのためだ」

白い死神「けっして頒布物を転売するためじゃない」


男「だとしても、お前たちも、一般参加者の列には並ばず」

男「サークル参加者でもないのに、先に入場しているのは、たしかだろう」

白い死神「ああ。その通りさ」


白い死神「目には目を。歯には歯を。悪には、悪をもって制す」
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:54:39.33 ID:Rg3u98mHo

白い死神「それが、俺たちのやり方だ」

少女「…………」

白い死神「というより、チケットというシステムが存在する以上、それが最善手だ」

白い死神「結局のところ。準備会が内部改革しないコトには、どうしようもないんだよ」


男「…………」

白い死神「……おしゃべりが過ぎたな」

白い死神「ジューブン涼んだし、そろそろ俺は島中の絨毯爆撃に行くぜ」

白い死神「その紙袋は、ちゃんと徹夜組のあんちゃんに返しておけよ」

白い死神「じゃあな。男、聡い嬢ちゃん。機会があったら、また会おうぜ」
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:55:05.78 ID:Rg3u98mHo


――ビッグサイト 入口

男「…………」

少女「…………」


男「……なあ、このあと、どうする?」

少女「…………」

男「まだ島サークルでも見に行くか」

男「友人でも探しに行くか。それとも……」


少女「……いや」
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:55:33.19 ID:Rg3u98mHo

少女「……今日は、もう帰りたいです」

男「…………」


少女「死神さんのおハナシ……」

少女「まさか、COMIKEの現実が、そんなだなんて、思いませんでした」

男「おいおい。アイツのハナシを本気にしてるのか?」

男「そんなの、アイツが言ってるだけだぞ」

男「もっと他の見方だってあるだろう」

少女「ハイ。でも、彼の言うコトも、真実の一端だと思います」
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:56:02.25 ID:Rg3u98mHo

少女「……それに、私は、徹夜組のヒトのモノとはいえ」

少女「一度、尊敬すべき戦士の“戦利品”を盗もうとしました」

男「…………」

少女「恥ずかしいです。今すぐ、消えてしまいたいくらい」



少女「……私に、もう、COMIKEを楽しむ資格なんて……、ありません」



男「…………」

男「…………そうか」
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:56:30.09 ID:Rg3u98mHo

男「……じゃあ、今日はもう、帰ろうか」

少女「……はい」


男「その前に、コレを食っておけ」

少女「……? エナジーバー、ですか……?」

男「この暑さだ。家に帰るまでに、あの徹夜組のように倒れるとも限らん」

男「家に帰るまでが、COMIKEだぞ」


少女「…………」

少女「……、ハイ」
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:56:58.91 ID:Rg3u98mHo


――ビッグサイト 周辺

魔法陣「17歳♂暇だから全レスします☆」

魔法陣「おっさんネロ。……おっさんだったわ」

魔法陣「年齢2ケタはオッサン(キリ」


魔法陣「BIPで本格的にRPG作ろうぜ」

魔法陣「未完乙、クソスレ乱立すな」

魔法陣「死ね。氏ねじゃなくて死ね」


男「……。あれは……」
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:57:32.65 ID:Rg3u98mHo

男「すまん。ちょっと待っててくれ」

少女「……? ハイ」


男「すみません、BIPの魔法陣ですよね?」

魔法使い「はい、そうですよ。あ、ヘンなヤツばっかでスミマセン」

魔法陣「これぞ馴れ合いスレwwwwww」

魔法陣「股の名をBIPヌクモリティ」


男「あ、あはは……。あの、チャームって、まだあります?」

魔法使い「ええ、ありますよ。BIPPERのヨシミで、一つどうぞ」
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:58:00.82 ID:Rg3u98mHo

男「ありがとうございます!」

魔法使い「いえいえ。スレのほうでは、またよろしくお願いしますね」

男「BIPも、結構仲良いですよね。罵詈雑言もあんま飛ばないし」

魔法使い「あなたCOMIKEの期間中だけBIP来てるでしょう」

男「……バレましたか」


男「すまん。お待たせ」

少女「何やってたんですか?」

少女「あそこ、なんか人が輪になって集まってるみたいですが……」
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:58:28.40 ID:Rg3u98mHo

男「ああ。アレは、通称“魔法陣”」

男「とある、ネット掲示板の住民の集まりでな」

男「なんとなく仲間で集まってケータイいじってる姿から、そんな名前がついたんだ」

少女「……は、はは……。まあ、集まるのは自由ですよね」


少女「……あれ。ってコトは、男さんも、その掲示板を?」

男「まあな。COMIKEの情報とか、けっこう書き込まれるし」


男「そうじゃなくって。ハイ、これ。あげるよ」

少女「あれ? ……、コレって……」
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:58:56.17 ID:Rg3u98mHo

男「チャームのアクセサリーだ。魔法陣では、毎回タダで配ってるんだよ」

男「どうだ? オレンジの輪切りみたいで、けっこうカワイイだろう?」

少女「ええ……。ソレは、そうなんですが……」

少女「私、同じの持ってますよ?」


男「……え?」

少女「ほら、この首のとこ。ネックレス」

男「……あ。ホントだ、同じだ……」

男「……同じの二つは、いらないよな……」ガックシ
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:59:25.56 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」

少女「……なら、ソレは、男さんが持っていてください」フフッ

男「へ? ……俺が?」

少女「それで、もしビビっとくる女性に出会ったら、ソレを渡す」

少女「……と、いうのはどうでしょう」

男「えぇー。俺、女には縁が無いからな……」

男「あ、今ならお前がいるけど」

少女「ふふ。私はノーカンで」

少女「男さん良いヒトですし、良い女のヒトに出会えますよ。ええ、必ず」
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 19:59:54.69 ID:Rg3u98mHo

男「そのコンキョはどっから出てきたんだ」

少女「へへ。私、カンは良いほうなので」

少女「きっと良い出会いが、すぐ近くに待っていますよー」

男「……そうか。だと、いいんだがな」


男「ていうか、そのネックレス、ホントにこのチャームとソックリだな」

男「ソレも魔法陣産か? 毎回、チャームにCOMIKEごとの連番を押してくれるんだが……」

男「その番号も今回と同じだし」

少女「えぇ!? そ、そーですね。私のコレは貰いモノなので」

少女「元の持ち主が、COMIKEに参加していたのかもしれませんねー」
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:00:22.10 ID:Rg3u98mHo


――アパート前の道路

パタン

少女「ありがとうございましたー」

運転手「今回もどうも。三日目も、お願いしますね」


少女「……、…………」

男「ええ。モチロンですよ」

運転手「では」

ブロロロロロ…
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:00:48.93 ID:Rg3u98mHo


――居間

男「……はあ。けっこう、早く帰ってきちまったな」

少女「…………」

男「まだ昼か。ビッグサイトは忙しそうだな……」


男「昼飯はどうする? どっか、食べに行くか?」

少女「…………」


少女「じゃあ、ちょっとワガママ言ってもいいですか?」
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:01:17.10 ID:Rg3u98mHo

男「…………」

男「……いいぞ。大学生のフトコロの深さというのを、見せてやろう」

少女「…………」フフ


少女「では、男さんの手料理が食べたいです」

男「…………?」


男「お、俺の? 料理?」

少女「ええ。昨日の口ぶりだと、作れますよね?」

少女「コンダテは問いません。ぜひ、よろしくお願いします!」
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:01:44.29 ID:Rg3u98mHo

男「…………」ボリボリ


男「……マッタク。弱ったな」

少女「あれ? 作れないんですか?」

男「いや、作れるがな」


男「材料が無い」

少女「…………、あー」

男「まずソコから調達しなきゃならん。弱った」

少女「……そうですか」
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:02:11.54 ID:Rg3u98mHo

少女「じゃあ、一緒に買いに行きましょうよ! 食材!」

男「……へ? 今からか?」

少女「そうです。東狂では、どこで食材買うんですか? やっぱスーパー?」

男「そうだな。……いや、かなりの田舎でもない限り、そうだと思うが」

少女「よっしー!! それじゃあキマリですね、レッツショッピンショッピン!」


男「…………」

男「……はあ。やれやれ」

男「わかった。だが、今日の戦利品くらい片付けておけ」

少女「…………」
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:02:39.24 ID:Rg3u98mHo

男「戦場から帰った戦士としての、当然のタシナミだぞ」

少女「……。そう、ですね……」

少女「わかりました。といっても、黒ずくめさんの既刊、3冊だけですが」

男「それでもリッパな戦利品だ」


男「……そういえば、いったいどんな本だったんだ?」ガサ


男「……!!」

男「……こ、コレ、は…………」

少女「ん……? どれどれ」
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:03:07.16 ID:Rg3u98mHo

少女「男のヒトが二人、見つめ合っている表紙ですね」

少女「男さん、これはいったい?」

男「…………、…………」

少女「ちょっと、私には知識が無いので、わかりません……」

少女「少なくとも、おじいちゃんはこういうの、持ってなかったですね」

男「…………」


男「……まだ早い。というか、一生早い」

少女「えー。いったいどういうコトなんですか」グラグラ
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:03:33.97 ID:Rg3u98mHo

男「揺らすな……」ガクガク


パサ


少女「あ……」

男「ん……? この紙は……」

男「黒ずくめさんの連絡先だな」

男「ああ、そういえば……。今日並ばせたコトへの、お詫びがしたいと」


男「……どうする?」

少女「…………」
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:04:04.79 ID:Rg3u98mHo

少女「…………」

男「…………」

少女「…………」

男「…………」

少女「…………ええ。かけてみてください」

男「そうか。……って、俺のケータイで?」

少女「ハイ。私のは、繋がりませんから」

男「俺のだって繋がる保証は無いが……」

男「まあ昼ならちょっとは空いてるだろうし、サークルもヒマしてるだろう」
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:04:32.38 ID:Rg3u98mHo


男「やれ。この電話番号だな」タタターン


ケータイ「プルルル! プルルル! プルプルプル!」

ケータイ「プルルル! プルルル! プルプルプル!」

ケータイ「ぼく悪いケ……」


黒ずくめ『はい、もしもし』

男「良かった、繋がった。もしもし、黒ずくめさん?」

黒ずくめ『あ……。男さんですか?』

男「そうだ。タイミング悪かったか?」
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:04:59.35 ID:Rg3u98mHo

黒ずくめ『いいえ、とんでもない。既刊もハケて、設営の撤収中だったんです』

黒ずくめ『お二人は、今、どちらに?』

男「ああ……。実は、もう家に帰ってきちまってな」

黒ずくめ『そうですか……。まあ、暑いですからね』


黒ずくめ『それで、少女ちゃんは、今ソコにいますか?』

男「うん。たしかにいるが」

黒ずくめ『……伝えたいコトがあります。良かったら、代わってもらえませんか?』

男「……わかった」
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:05:27.63 ID:Rg3u98mHo

男「おい、少女。黒ずくめさんが、代わってほしいそうだ」

少女「え……」

男「ご指名だぞ。まさか、ここで居留守使う気か? もういるって言っちまったぞ」

少女「……いや。出ます」


少女「お電話代わりました。少女です」

黒ずくめ『ああ、少女ちゃん。今日はゴメンね。気分悪くさせて』

少女「いえ……。黒ずくめさんのせいじゃありませんよ」

黒ずくめ『ありがとう。でも、元は僕が言い出したコトだから……』

黒ずくめ『だから、代わりと言っちゃナンだけど、僕から提案があるんだ』
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 20:05:56.10 ID:Rg3u98mHo

少女「提案……?」

黒ずくめ『そう。僕は、明日の三日目は一般参加で入るんだけど……』

黒ずくめ『一日目と同じように、コスプレをしようと思うんだ』

黒ずくめ『だから……』




黒ずくめ『少女ちゃんも。コスプレ、やってみませんか?』




少女「は……?」



 
438 : ◆mclKiA7ceM [saga]:2017/08/26(土) 20:06:43.02 ID:Rg3u98mHo
第二章は以上になります。
最終章は、現在鋭意制作中です。もう少々お待ちください。
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/26(土) 20:15:03.45 ID:8AnhUeue0
謎が解けてきたなー!
しかし話の構成ほんと上手だね。
最終章も楽しみにしてます。
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