モノクマ「オマエラにはノナリーゲームをしてもらいます!」

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1 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:33:47.62 ID:ZyM4NS/40
このSSは「ダンガンロンパシリーズ」「善人シボウデス」のネタバレを多分に含みます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1503383627
2 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:36:07.18 ID:ZyM4NS/40
「……ねぇ……聞こえる?」

……

「ねぇ、大丈夫?」

……

「……だいぶ参ってるみたいだね?」

……

…………

………………


日向(わからない……)

日向(頭が……痛い……)

日向(……?)

日向(俺は……どうした?)

日向(何をしていた?)

日向(……ここは……何処だ?)

日向(一体……何が……?)
3 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:37:47.30 ID:ZyM4NS/40
日向(痛む体を無理やり起こして、辺りを見回す)

日向(どうやら俺は、綺麗で柔らかいベッドに横たわっていた、などという事はなく……)

日向(狭い四角い部屋の冷たい床に投げ出されるような体勢で突っ伏していたようだが)

日向「……部屋、じゃないな。エレベータか?」

?「そうみたいだね」

日向「っ……!?」

日向「誰だ、お前は!」

?「……」

日向「……? おい聞いてるのか?」

?「……」

日向「いや、お前が誰かはどうでもいい。ここは何処なんだ?」

日向「どうして俺はこんな場所にいる?」

?「……」

日向(無視かよ……けど、さっき俺に話かけてきたのってこいつだよな?)

日向(まあいい。とにかくいつまでもこんな床に座っている訳には……)

日向「っ……なんだ……? 頭が重いような……」


――
4 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:39:26.92 ID:ZyM4NS/40
カチッ カチカチッ

日向「エレベータのボタンは反応なし。非常ボタンもダメか……」

?「無駄だよ。その扉はこちら側からは任意に開けられないんだ」

日向「どうしてそんな事が解る?」

?「……」

日向「まただんまりか……」

日向「じゃあ、改めて聞くが、ここが何処なのかお前は知っているのか?」

?「いいや……ゴメン、知らないよ」

日向「……そうか」

日向「これももう一度聞くが、お前、名前は?」

?「……【ヒナタ ハジメ】」

日向「それは俺の名前――って、お前、どうして俺の名前を知っているだ!?」

?「……。どうしてかな? ハハッ、不思議な事もあるものだね」

日向「もしかして、俺が気付いていないだけで昔の知り合いとか?」

?「いや、特に面識は無かった……筈だよ」

日向「じゃあ、どうして……」

?「うーん。あっ、もしかしてキミ、超高校級の『何か』だったりする?」

日向「超高校級……そ、そうだ! 俺は確か、希望ヶ峰学園の入学式に行こうと学園の中に足を踏み入れて……それで……」

?「なるほどね。それで気付いたらこの場所にいた、と。ボクと一緒だね」

日向「お前も?」

?「うん。ボクの名前は狛枝凪斗だよ。自己紹介が遅れてしまってごめんね」

日向「俺は、もう言うまでもないかもしれないが、日向創だ」

狛枝「日向クン。……うん、日向クン、か」

日向「? なんだ」

狛枝「いいや、気にしないで」

日向(気にしないでとは言っても……不思議な奴だな……)
5 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:41:12.67 ID:ZyM4NS/40
狛枝「ボクは超高校級の幸運として入学する予定で希望ヶ峰学園まで訪れていたんだけれど……」

日向「超高校級の幸運、ね」

狛枝「そういうキミは?」

日向「え?」

狛枝「キミだって人類の希望の一人として超高校級に選ばれたから希望ヶ峰学園に入学予定だったんだよね」

狛枝「キミの才能はなんだったのかな?」

狛枝「申し訳ないけど、ボクの記憶にはキミの名前しかうっすらと残っていなくて……あ、おそらくね、ボクがキミの名前を知っていたのは同じ超高校級の仲間だったからだと思うんだけれど、肝心の才能の方は覚えていなかったみたいでさ」

狛枝「普段ならこんな事は無いんだけれどね。ボクとした事が希望の象徴である一人の才能も覚えていないだなんて……! 本当にゴミクズでどうしようもないよ……!」

日向「は、はあ……」

狛枝「それで? キミの才能は?」

日向「俺は……」

日向(狛枝はまるで小さな子供が憧れのヒーローと直面しているかの様に、目を輝かせながら俺に問いかけてくる)

日向(けど……)

日向「俺は……超高校級の……超……高校級……の……」

狛枝「日向クン?」

日向「……」

日向「っ、ダメだ……頭が痛くて……思い出せない……!」

狛枝「大丈夫? いきなり変な場所に連れてこられて混乱しているのかな?」

日向「た、たぶん……」

狛枝「顔色も良くないし、少し休んでいた方がいいかもしれない」

狛枝「って言ってあげたいのはやまやまなんだけどね。キミにも少し確認して欲しい事があるんだ」
6 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:43:00.50 ID:ZyM4NS/40
狛枝「これ、なんだと思う?」

日向(そう言って狛枝は、自分の左手首を俺の目の前まで突き出した)

日向「腕輪……いや、時計か? それにしては時間はおおざっぱにしか表示されていないみたいだけど」

日向(狛枝の腕時計には大きく【3】と【赤】で表示されている)

狛枝「これ、キミの腕にもついているんだけれど」

日向「え? ……あっ! ほ、本当だ! なんだこれ!?」

日向「いつの間にこんな……ぐっ……外れない……!」

狛枝「ボクも引っ張ってみたり色々してみたんだけど、外れる気配が無いんだよね」

狛枝「それから……数字の下に書いてある【PAIR】ってなんだろう?」

日向「俺のものにも同様の表示が出てるが……」

日向(一体なんの事だかわからないな)

日向「この両側についてるボタンでどうにかならないのか?」

狛枝「それも適当に押してみたけどダメだった。無反応だよ」

カチッ カチカチカチッ

日向「なるほど……」

日向「……くそっ、なんなんだよ! 一体誰が、何をしたくてこんな事を……!」

狛枝「! 日向クン! 見て!」

日向「今度はなんだ!?」

狛枝「モニターに……何か映ってる」

日向(狛枝の言葉に反応して、俺は勢いよく後ろを振り返った。すると、そこには……)
7 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:44:38.59 ID:ZyM4NS/40
「やあ! 目覚めの気分はどう?」

日向「な、なんだ……?」

狛枝「たぬきかな」

「ちっがーう!」

「ボクの名前は、【モノクマ】――この学園の学園長なのだ!」

狛枝「モノクマ……?」

日向「それより……おい、今……【この学園】って言ったか?」

モノクマ「聞きたい事は沢山あると思う。だけどまあ、こんな形で長話するのもなんだし……」

モノクマ「さっそくだけど、オマエラにはゲームをしてもらおうと思ってる」

モノクマ「名付けて……」

モノクマ「のなりーげぇぇぇむ!」

日向「……」

狛枝「……」

モノクマ「詳しい事はそこを出たら教えてあげるよ」

モノクマ「それじゃあ、待ってるからね」

日向「お、おい! ちょっと待てよ! おまえは一体――」

モノクマ「ああ、そうそう、大事な事を言い忘れてた」

モノクマ「今オマエラが乗ってるエレベータだけど……しばらくしたら、自動的に墜落するようになってるから」

日向「つ……墜落!?」

狛枝「……」

モノクマ「まあ、せいぜい急ぐ事だね。ほいじゃあまた後で! Have a nice trick〜!」

日向(そう言いたい事を言いたい事だけ言って、モノクマと名乗った謎の生物?はモニターの中から姿を消した)
8 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:46:30.84 ID:ZyM4NS/40
日向「ちっ……ふざけやがって。何が良きイタズラを、だ」

狛枝「トリップとトリックをかけてたね」

日向「感心してる場合じゃない! ……とにかく、話は後だ!」

日向「まずは、一刻も早くここから出ないとっ……!」

狛枝「うん、そうだね。しばらくしたらって言ってたけど、具体的な時間は言っていなかったから出来るだけ早く出る方法を見つけた方がいいだろうね」

日向「お前……言ってる割になんだかやけに冷静だな?」

狛枝「そうかな? まあ、エレベータの中に閉じ込められるなんて経験は初めての事じゃないからね」

日向「そ、そうなのか……いや、なんでもいい。とりあえず急ぐぞ!」

狛枝「了解だよ。よく見てみると何やら物が色々あるみたいだから、手始めにそれを片っ端から調べていけばいいんじゃないかな」

日向「そうだな。とりあえず目立って気になる物といえば……後ろの方にあるATMの機械のようなものだが」

狛枝「下の方に金庫まであるね。パスワードを入力する画面があるからそう簡単には開きそうにないと思うけど」

日向「まさか、この金庫の中に出る為のヒントが……?」

狛枝「どうだろう。とにかくこの金庫の謎から解いてみようか?」
9 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:48:06.04 ID:ZyM4NS/40
日向(そうして、俺と狛枝は協力してエレベーターの中を隅々まで調べギミックを暴いていった結果、思ったよりも早く金庫を開く事が出来た)

日向(そして、その金庫の中には……)

日向「鍵だ!」

狛枝「エレベーターのボタンの上に小さな鍵穴らしきものがあったらから多分そこの鍵じゃないかな?」

日向「これで扉を開くボタンをどうにか出来るのかもしれないな。すぐに鍵を使おう」

ガチャッ

日向「これは……赤いボタンがあるな」

狛枝「えいっ」ポチッ

日向「うわっ!? ば、馬鹿! そんな警戒もなしに押すなんて……」

ゴウン

日向・狛枝「!?」

ガチャッ

日向「な、なんだ? 今の音は……」

狛枝「日向クン、上を見て」

日向「上……? あっ!?」

狛枝「今ので天井のハッチが開いたみたいだよ」

日向「ハッチって……どうしてそんなものがエレベーターに……」

狛枝「けど道はひらけたのは確かだよ。早いところここから出よう」

日向「それもそうだな」

狛枝「日向クン。さあ、ボクを踏み台にして先に上まで登って」

日向「お、おう? ……なんだか悪いな」


――
10 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:50:02.71 ID:ZyM4NS/40
日向(俺たちは協力して開いたハッチから外へ出た。その先は……)

日向「なんだ、ここは……」

狛枝「エレベータシャフトの中、ではなさそうだね」

日向「……俺の目には体育館に見えるが」


モノクマ『ボクの名前は、【モノクマ】――この学園の学園長なのだ!』


日向(やはりここは……)

狛枝「どうやらボクたちは動かないエレベータの中に閉じ込められていたようだよ」

狛枝「……いや、動かないし落ちない、かな」

日向「墜落するっていうのはただのハッタリだった訳か」

狛枝「みたいだね」

狛枝「それより、見てごらんよ。あそこ」

狛枝「人がいる」

日向「……!」

狛枝「全員で5人かな。見る限り、ボクたちと同じ腕輪を嵌めているようだけど」

日向「本当だ。敵……ではなさそうか」

狛枝「どうかな。けど、とりあえず行ってみようか」

日向(俺たちはその場から降りて急いでその人が固まっている場所へと走っていった)
11 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:52:37.35 ID:ZyM4NS/40
日向「おい! 教えてくれ! 一体なにがどうなっているんだ……!?」

眼鏡の少女「わかんない……。私たちもついさっき出てきたばかりなんだ。あのエレベータから」

スーツの若い男「キミたちもさらわれてきたんだよね?」

日向「さらわれて……きた?」

スーツの若い男「おそらくは……という話だけど」

パーカーの少女「私は希望ヶ峰学園の入学式に行くところだったんだけど、気付いたら何故か意識を失ってエレベータの中に……」

狛枝「ボクや日向くんと一緒だね。というとキミも超高校級の……?」

パーカーの少女「君たちもなの?」

日向「5人一緒にいたのか?」

セーラー服の少女「ううん。私と【モナカ】ちゃんは同じエレベータの中にいたけど、他の3人は……」

日向「モナカちゃん?」

セーラー服の少女「あっ、私がおぶってるこの子の事だよ」

おぶられた子「モナカはね、モナカって言うんだー。よろしくなのじゃー」

モナカ「モナカをおんぶしてくれているお姉さんは【こまる】さんっていうの」

こまる「よろしくね」

日向「あ、ああ……よろしく……」

狛枝「他の3人は?」

モナカ「【苗木】さんと【五月雨】さんと【七海】さんはそれぞれ別のエレベータの中で目が覚めたんだって」

スーツの若い男「うん、そうだね」

日向「ええと、貴方が……?」

苗木「ボクが苗木だよ。【苗木誠】――それで、眼鏡の女性が……」

五月雨「私が五月雨――【五月雨結】 で、隣の彼女が……」

七海「【七海千秋】でーす。【超高校級のゲーマー】でーす」
12 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:54:21.91 ID:ZyM4NS/40
七海「君たちの名前は?」

狛枝「ボクは狛枝凪斗。超高校級の幸運だよ。話からして、ボクと……そして日向くんも七海さんの同期になるんじゃないかな」

日向「日向創だ。よろしく」

モナカ「日向さんの才能はなんなのかにゃー?」

日向「それは……」

狛枝「日向くんは精神的なショックからか記憶の一部を思い出せないらしいんだ」

五月雨「つまり、自分の才能を覚えていないって事?」

日向「あ、ああ……そうなるな」

モナカ「ふーん?」

苗木「無理も無いよ……いきなりこんなわからない場所につれてこられて、平気な方がどうかしてる」

狛枝「ところで、五月雨さんとこまるさん、それから苗木クンも……キミたち歳が近そうに見えるけど、この流れからするとキミたちも超高校級の……?」

五月雨「あー、私は違うんだよね。残念ながら」

こまる「わ、私も違います……」

苗木「ボクは……ええと……」

日向(……そうやって、各々の自己紹介を進めていると)


ガコンッ

日向(俺たちが出てきたエレベータの方から不意に音がした)
13 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:56:34.64 ID:ZyM4NS/40
日向(一同が揃って振り返る)

日向(真後ろには俺たちが閉じ込められていたエレベータが並んでいるのがすぐ目に映るが……)

日向(その一番左端のエレベータの天井のハッチがゆっくりと開いていくのが見えた)

日向(そして……)

日向「な、なんだ……アイツは……」


?「……」


日向(そこから異様な姿をした人型の何かが何かを抱えて出てきたのだ)

日向(何故そんなまどろっこしい表現をするのかといえば……それは本当に異様な恰好で、見ただけで性別の特定も本当に人間だと断定していいのかどうかさえわからなかったからだ)

日向(金属製の仮面に同じ金属製の……ボディースーツとでも言えばいいのだろうか)

日向(とにかく、重々しい格好をしたその人型はエレベータの屋根を蹴るとすとんと軽々しく俺たちの立っている体育館の床へと降り立ったのだ)


五月雨「霧切ちゃん!?」

日向(知り合い……なのか?)

日向(五月雨が仮面の人物に走り寄っていく)

日向(けれどどうやら、俺の見当は外れたようだった)

日向(五月雨の目当ては仮面の方ではなく……その仮面の両腕に収まっている小さな人間の方だったらしい)

五月雨「霧切ちゃん! しっかりして! 霧切ちゃん!」

霧切「……」

日向(小さな少女は眠っているのか気を失っているのか……五月雨の声に返事を返さない)

日向(名前を呼んでいるという事は知り合いなのだろうか?)

日向(見たところ、霧切という名の少女の見てくれは中学生ほどに見える)

日向(制服を着ていなかったらもしかしたら小学生と思ってしまうかもしれない。そんな華奢で小さな少女だ)

日向(五月雨の同級生……というようにはみえないが……)
14 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 15:58:43.84 ID:ZyM4NS/40
五月雨「ちょっと! あなたこの子に何をしたの!?」

?「僕は何もしていません。僕が意識を取り戻した時には、既にその様な状態だったのです」

?「大丈夫。心配には及びません。息もしっかりしています。おそらく眠っているだけでしょう」

苗木「連れ去られてきてからまだ目を覚ましていないってことか」

?「連れ去られて……きた? すみません。おっしゃっている意味がよくわからないのですが」

?「そもそもここは何処なのでしょう? あなたたちは一体……」

日向「待て。その前に、お前の正体を教えろ。お前は誰だ? どうしてそんな恰好をしている!」

?「僕は……」

?「……僕は一体……誰なんでしょう……?」

日向「な……なんだって?」

?「覚えていないのです。なにも……」

?「ここがどこで、今がいつで、僕は一体何者なのか……」

?「逆に教えていただきたい。僕は本当に……誰なんです?」

日向「……」

モナカ「えー? あなたも日向さんと同じパターンなのかなぁ?」

?「日向……さん……?」

こまる「というか、その恰好は一体……?」

五月雨「金属製の仮面にボディスーツ。誰かに無理やり着せられた……とでも言うつもり?」

?「おそらく……。それ以外に考えられません。なにしろ、目覚めた時にはすでにこの状態でしたから」

苗木「それにしてはやけに落ち着いて見えるけど……」

?「見える? その表現は適切ではないでしょう。僕の顔はこの仮面に覆われていて見えない筈です」

狛枝「その口ぶりが不自然だって話なんだと思うけどね」


霧切「……ん……んん……」

五月雨「霧切ちゃん!? 目を覚ましたの!?」

霧切「……」

五月雨「霧切ちゃん! 大丈夫!? しっかりして!」

霧切「……結……お姉……様……? ……ここ……は……?」

……

…………

………………
15 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:00:41.97 ID:ZyM4NS/40
日向(霧切が少し落ち着いてから、五月雨は彼女にこれまでの事を軽く説明し始めた)

日向(霧切は黙ってそれを聞き、一区切りつくと短く『そう』とだけ呟いて、少し間を置いてから再び口を開いた)

霧切「再度確認させてもらってもいいかしら?」

五月雨「確認?」

霧切「ええ。まず……最初にあのエレベーターからこの場所に出てきたのは誰だったのか、覚えている人は?」

五月雨「あ、それは私だよ?」

霧切「なら話は早いわ。結お姉様、貴女は何処のエレベータにいたの?」

五月雨「【右から3番目】のエレベータだったかな」

霧切「その後、誰がどの部屋から出てきたか結お姉様は確認している?」

五月雨「ん? うん、見てるよ? ええとね……」

五月雨「次に出てきたのは苗木くん……でいいかな? 呼び方は」

苗木「好きに呼んでくれて構わないよ」

五月雨「苗木くんが【左から2番目】のエレベータから出てきたんだよね」

五月雨「3人目は七海ちゃん。【一番右】のエレベータから出てきて……」

五月雨「続けて出てきたのが、こまるちゃんとモナカちゃんのペアだった。それが【右から2番目】のエレベータ」

五月雨「それで……」

狛枝「ボクと日向クンが【左から3番目】のエレベータだよ」

五月雨「そうそう」

霧切「……そして、そこの仮面の人が私を連れて【一番左】のエレベータから姿を現した。そういう事ね」





霧切/仮面
苗木
日向/狛枝
五月雨
こまる/モナカ
七海

16 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:03:26.01 ID:ZyM4NS/40
霧切「続けてみなさんの腕輪を確認させてもらってもいいかしら?」

日向「腕輪の確認?」

霧切「ええ。どうやら私の腕輪と結お姉様の腕輪とで表示が違ったようだったから、きっとみなさんのものも比べてみたら違うのかと思って」

日向(霧切の言葉に一同はその腕輪のついた左腕を前へと出していく。その結果……)

霧切「なるほど」

霧切「七海さんは【青】の【SOLO】」

霧切「こまるさんとモナカさんは【青】の【PAIR】」

霧切「結お姉様は【赤】の【SOLO】」

霧切「日向さんと狛枝さんは【赤】の【PAIR】」

霧切「苗木さんは【緑】の【SOLO】」

霧切「そして、私と仮面の人は【緑】の【PAIR】」

霧切「表示されている数字は全員【3】になっているようね」

狛枝「へぇ、【三色】の色と【SOLO】と【PAIR】の組み合わせで少しずつ違っているんだね」

苗木「それにしても、キミもこの腕輪を嵌められていたのがボクは驚きだよ」

日向(彼が驚いているのは仮面の人物に対してだ)

日向(仮面の人物はその不審なボディスーツの隙間から俺たちと同じ腕輪の表示を覗かせていた)

日向(……つまり、素性が知れず怪しい人物である事に違いは無いが、この人物もまた俺たちと同じ状況に立たされている人物の一人であるという事)

日向(少なくとも、俺たちを拉致してきた側の人間ではないのだろうという事だ)

七海「けど、どうしてこんな風に表示がわかれているのかな?」

霧切「それは……話を聞く限りはおそらく……」




「ゲームのためだよ!」
17 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:05:26.82 ID:ZyM4NS/40
日向「今の声は……!」

モノクマ「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」

日向(いつの間にか、あのモノクマとかいう訳のわからない物体が体育館の壇上に姿を現していた)

こまる「だ、誰も呼んでなんかいないよね……?」

霧切「もしかしてあなたが、結お姉様が話していたモノクマなのかしら?」

モノクマ「さすが霧切さん! 察しが良くていらっしゃる!」

モノクマ「それでは……オマエラにはここで改めてゲームの説明をしたいと思います!」

日向「ゲームなんかどうでもいい! 早く俺たちをここから出せ!」

モノクマ「だーかーらー、これは【ここから脱出する為のゲーム】なんだって」

日向「なっ……脱出する為……!?」

狛枝「何故わざわざボクたちを捕らえてまでそんな事を?」

モノクマ「それが必要な事だからだよ」

モノクマ「人類の【希望】の為に……ね」

モノクマ「とでも言えば納得してくれる?」

狛枝「希望の為……」

日向(何を言っているんだ、コイツは……!)

モノクマ「話を先に進めたいからちょっと黙っててね」

モノクマ「えー、それでは、これからこの【ノナリーゲーム】のルールについて話すよ!」
18 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:09:11.35 ID:ZyM4NS/40
モノクマ「まずオマエラの腕輪……以降、【バングル】と言わせてもらうよ」

モノクマ「そのバングルの数字を改めて確認してくれるかな?」

モナカ「それならついさっきみんなで確認したばかりだよ? 【3】だよね?」

モノクマ「そう! では次に向こうの扉を見て貰えるかな」

苗木「【9】って大きく書かれているけど……」

モノクマ「実はその【9の扉】がオマエラが目指すべきゴールなんだ」

日向「なっ……! それじゃあ一刻も早く……」

モノクマ「ただぁーし! あの扉を開くには、オマエラがつけているバングルの数字――【バングルポイント】、略して【BP】が【9以上】にならないと開けられない仕組みになっているんだクマ」

モノクマ「しかも、あの扉は【一度しか】開く事が出来ないんだ。そのうえ、9秒間しか開かないからね!」

こまる「その【BP】はどうやったら【9】になるの?」

モノクマ「そこで再びあのエレベータの出番です!」

モノクマ「あのエレベータの名前は【ファイナルデッドルーム】、長いから【FDルーム】と呼ばせてもらうけど……」

モノクマ「【FDルーム】の中である事をしてもらいたいんだ。それについては、その時が来たらまた詳しく説明するから」

五月雨「けど、あの部屋の扉ってどうやって開くの? またハッチから入ればいいって話?」

モノクマ「あのハッチはキミたちが話している間に閉じさせてもらったよ。もう開かないようにしちゃったからそれは出来ない」

モノクマ「ボクはこの施設を統括しているAIでもあるからね! それくらいは朝飯前なんだ」

モノクマ「けど大丈夫。部屋の扉の横にはカードリーダーがあるんだ。つまり専用のカードキーさえ手に入れば扉は開くって事」

モノクマ「そのカードキーの在処は、あっちにある色のついた三枚の扉――カラードドア、【CD】の先にある」

モノクマ「【CD】の【第一扉】ついては時間で開く様になっているんだけど……バングルの両脇のポッチを同時に押してみてくれる?」

日向「あのボタンか……」
19 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:11:29.53 ID:ZyM4NS/40
カチッ


00:10


七海「時間が出てきたね。今は、0時10分って事?」


00:09

七海「あれ? 時間が減った?」

七海「……そっか、つまりあと9分で【CD】が開くって事だね?」

モノクマ「ご名答! これは【CD】の【第一扉】があとどれくらいで開くのかを現わしているんだ」

モノクマ「ここで注意してもらいたいのが、この【第一扉】は【5分】で自動的に閉まっちゃうって事。その時に扉を通らずに残っていた人には【オシオキ】が待っているから気を付けるように!」

こまる「【オシオキ】……? って、な、何……?」

モノクマ「うぷぷ。それはね……」

モノクマ「死んじゃうって事だよ」

日向「っ……!?」

こまる「し、しんじゃう……!?」

モノクマ「実は、オマエラがつけているバングルにはオマエラを死に至らしめる為の薬剤が装填されているんだ」

霧切「……クスリ?」

モノクマ「ルール違反を犯すとバングルの中から注射針が飛び出して【2つの薬剤】を順番に投与する仕組みになっているんだよ」

モノクマ「その薬剤っていうのは……ひとつは【マンドレインβ】っていう麻酔薬」

モノクマ「もうひとつは、【ハイメトリン】っていう筋弛緩薬」

モノクマ「まずは【マンドレイン】で意識を失わせて、その9分後に【ハイメトリン】を注入して呼吸筋を麻痺させる」

モノクマ「文字通り、『息の根を止める』ってやつだよ! うぷぷぷ……」

モノクマ「まあ、今はまだ時間があるから大丈夫大丈夫! 時間ギリギリにならない様にする為にもさっさと先を説明しちゃうね」

日向(ルール違反を犯すと死ぬだって……? そんな……そんな馬鹿な……)
20 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:13:49.57 ID:ZyM4NS/40
モノクマ「で、今まで【第一扉】っていうワードが出てきてたと思うんだけど、CDの先には【第二扉】が存在するんだ」

モノクマ「この【第二扉】は【第一扉】が閉じるまでは開かない仕組みになっていて……」

五月雨「随分面倒くさい手順を踏むんだね……」

モノクマ「それはオマエラを分断させる為だよ」

日向「分断……」

モノクマ「では、【第二扉】を開く為のルールついて話そうか」

モノクマ「ここでは【CD】の【色】とオマエラが嵌めているバングルに表示された【色】が重要になってくる」

モノクマ「さて、ここには【紫色】と【黄色】と【水色】の【CD】がある訳なんだけど……」

モノクマ「オマエラは【光の三原色】って知ってるかな?」

狛枝「【赤・緑・青】の三色のことだね?」

モノクマ「イエス! その三色の組み合わせによってほとんど無限の色が表現できるんだ」

モノクマ「じゃあ【紫色】は、何色と何色を組み合わせればいい?」

狛枝「【赤】と【青】」

モノクマ「【黄色】は?」

狛枝「【緑】と【赤】」

モノクマ「【水色】は?」

狛枝「【青】と【緑】……そうか、なるほどね」

霧切「つまり、【バングルの表示色の組み合わせ】によって【組み合わせた色の扉】を開く事が出来る。……そういう事かしら?」

モノクマ「ピンポーン! 大正解!」
21 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:15:56.86 ID:ZyM4NS/40
モノクマ「けど、ちょっとだけ補足をさせてもらうよ」

苗木「同じ色の人同士が組んだ場合の事か」

モノクマ「そういう事! その場合は例外的にその色の補色――反対色の扉を開く事が出来るんだクマ」

苗木「という事は……」

苗木「【赤】と【赤】なら【水色】」

苗木「【青】と【青】なら【黄色】」

苗木「【緑】と【緑】なら【紫色】」

苗木「こんな感じになるのかな?」

モノクマ「これまた大正解ー!」

モノクマ「ところで、話はオマエラのつけているバングルの話に戻るんだけど……」

モノクマ「そのバングルには、数字と色の他にも表示されているものがあったね?」

日向「【SOLO】と【PAIR】……だったな」

モノクマ「それについてなんだけど、簡単に言えば【同じ色のPAIRのバングル】――【ペアバン】同士の人たちは一心同体の運命共同体、一緒に行動しなければならないというルールが課せられるんだクマ」

日向「つまり、【赤のペアバン】である【俺】と【狛枝】――」

日向「【青のペアバン】である【こまる】と【モナカ】――」

日向「【緑のペアバン】である【霧切】と……ええと」
22 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:17:44.46 ID:ZyM4NS/40
日向「お前の事、なんて呼べばいいんだ?」

仮面「僕……でしょうか? そうですね……」

仮面「それでは、『K』とでも呼んでいただければ」

モナカ「記憶喪失なんじゃなかったのかにゃー?」

K「ええ……ですが、ふと頭をよぎったのです。『K』という文字が」

モナカ「ふぅん? なんだか怪しいなぁ」

日向「……じゃあ、【緑のペアパン】は【霧切】と【K】」

日向「この組み合わせ同士で行動しなければ……必ず同じ色の扉に入らなければならない。という事になるんだな?」

五月雨「【SOLO】の人についてはどうなるの?」

モノクマ「【SOLOのバングル】――【ソロバン】の人にはこれといった制約はないよ」

モノクマ「ただ、【CD】を通る際の最後のルールがある」

モノクマ「それは【一つのCDを通るためには3つのバングルが必要になる】って事」

モノクマ「これは、2以下じゃダメだし4以上でもアウト。きっかり3つのバングルを使わないといけないんだ」

苗木「という事は、【ペアバン一組】と【ソロバン一人】の三人でひとつのCDを通れって事か」

モノクマ「ま、大体はそういう事だね」
23 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:19:43.22 ID:ZyM4NS/40
日向(ここまでの話をまとめてみよう)


▼ここから脱出する為には?
【9】の扉を開けばいい

▼【9】の扉を開くには?
【BP=バングルポイント】を【9】以上にしなければならない

▼【BP】を【9】以上にするには?
具体的に何をすればいいのかはわからないが、とにかく【FDルーム=ファイナルデッドルーム】に入る必要があるらしい

▼【FDルーム】に入るには?
カードキーを見つけなければならない

▼カードキーは何処にある?
モノクマは【CD=カラードドア】の先にあると言っていた

▼【CD】の第一扉を開くには?
所定の時間になると自動的に開くようだ
(バングルの左右ののボタンを同時に押すと、残り時間はわかるようになっている)

▼【CD】の第二扉を開くには?
まずは人数制限が3人
その3人のバングルの表示色を合成したものが、扉の色と同じであれば、その扉を開く事が出来るという
(基本:赤+青=紫色 緑+赤=黄色 青+緑=水色)
(例外:赤+赤=水色 青+青=黄色 緑+緑=紫色)
24 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:21:30.38 ID:ZyM4NS/40
ぴんぽんぱんぽーん


モノクマ「カラードドアが開放されました! カラードドア閉鎖まで、残り5分です!」


日向「……えっ!?」

日向(モノクマのアナウンスと共に、CDが開いていく)

日向(つまり、あと5分以内にここから出なければ……)


モノクマ「悪いけど、時間がきちゃったみたいなんだクマ」

モノクマ「それじゃあ、まったねー! Have a nice trap〜!」

日向(モノクマはそう言って、またいつの間にかその姿を消していた)

日向(この腕輪の中に毒薬が仕込まれているだなんてにわかには信じ難い)

日向(……けど……俺たちはどうすれば……)

七海「みんな、ぐずぐずしている時間はないよ。とにかく動こう。第二扉の先に進むんだよ」

こまる「進っていっても誰がどの扉に入ればいいのか……」
25 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:23:52.34 ID:ZyM4NS/40
狛枝「時間がないからボクから手短に説明するよ」

狛枝「さっきのモノクマの説明はわかりにくかったかもしれないけど、実は考えられる組み合わせは、たったの3つしかないんだ」


狛枝「ここではボクのバングルの色を基本に説明させてもらうけど……」

狛枝「まずパターンA――【赤ペアのボクと日向クン】が【青ソロの七海さん】と組んで、【紫色の扉】を開く」

狛枝「この場合、必然的に【緑ペアの霧切さんとK】は【赤ソロの五月雨さん】と組んで【黄色の扉】を開く事なって――」

狛枝「残った【青ペアのモナカさんとこまるさん】は【緑ソロの苗木クン】と組んで【水色の扉】を開けばいい」


狛枝「次、パターンB――【赤ペアのボクと日向クン】が【緑ソロの苗木クン】と組んで【黄色の扉】を開く」

狛枝「この場合、必然的に【緑ペアの霧切さんとK】は【青ソロの七海さん】と組んで、【水色の扉】を開く事が決まる」

狛枝「残った【青ペアのモナカさんとこまるさん】は【赤ソロの五月雨さん】と組んで【紫色の扉】を開くんだ」


狛枝「そして最後、パターンCは補色を使った組み合わせになる」

狛枝「【赤ペアのボクと日向クン】は【赤ペアの五月雨さん】と組んで【水色の扉】を……」

狛枝「【緑ペアの霧切さんとK】は【緑ソロの苗木クン】と組んで【紫色の扉】を……」

狛枝「【青ペアのモナカさんとこまるさん】は【青ソロの七海さん】と組んで【黄色の扉】をそれぞれ開くのがこのパターンだね」


狛枝「問題は、これらの3つの組み合わせのうち、どれを選ぶかだけど……」
26 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 16:25:42.45 ID:ZyM4NS/40
七海「日向くん、君が決めてよ」

日向「え……ええっ!? なんで俺が……」

七海「誰が選んでもいいだよ。とにかく、誰かが決めれば自ずと残りは決まるんだからさ」

日向「だから、日向くんでも誰でもいい。早く決めよう」


モノクマ『カラードドア、閉鎖まで、残り1分です!』


日向(姿の見えないモノクマが俺たちを急かしてくる……その勢いに、俺は負けた)

日向「わかった! わかったよ! 俺が決めればいいんだろ!?」

日向(タイムリミットが迫っているからか異論を唱えるものもいなかった)

日向(俺は――俺と狛枝のペアは――)



1:七海と組んで【紫色の扉】に入る
2:苗木と組んで【黄色の扉】に入る
3:五月雨と組んで【水色の扉】に入る

安価下

一度ここで終わります
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/22(火) 16:27:57.09 ID:dlRfKrWiO
1
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/22(火) 20:14:58.69 ID:4o0K4bu4o
ノナリーゲームのSSは前もあったけどそっちはエタっちゃったんだよね
こっちは頑張って欲しい
29 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:34:51.55 ID:ZyM4NS/40
日向「俺は七海と組んで【紫色の扉】の先へ行こうと思う。狛枝もそれでいいか?」

狛枝「ボクは異論ないよ」

七海「私もそれでいい。みんなは?」

霧切「構わないわ」

五月雨「私は霧切ちゃんのペアと一緒に行く事になるんだよね? それなら文句はないよ」

K「僕も問題はありません」

モナカ「って事は、モナカたちは苗木さんと一緒かぁ」

こまる「そういう事だね」

苗木「今更決めなおしている時間も無いし、それで賛成だよ」

日向「よし。じゃあ、行こう!」


……
…………
………………
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/22(火) 23:35:55.19 ID:tP2LFU/iO
うおシボウデスとか懐かしいな
期待
31 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:36:31.88 ID:ZyM4NS/40
日向(紫色の扉を抜けて真っ直ぐ行くと、辿り着いたのは……)


日向「ここは……食堂か?」

七海「無人みたいだけどね。料理の匂いもなにもしない。比較的綺麗ではあるみたいだけど」

日向「最近まで誰かが使っていたのか?」

七海「どうなんだろう……?」

狛枝「けど、ここはただの食堂じゃないよ」

日向「ただで食える食堂なんて普通ある訳ないだろう?」

狛枝「そういう意味じゃ無くてさ……ここは食堂は食堂でも【学生食堂】だと思う」

日向「学生……食堂」

狛枝「二人とも、モノクマの言っていた言葉を覚えているかい?」

狛枝「モノクマは自分の事を【この学園の】学園長だとそう言った。それはつまり……」

日向「ここは【学校】だって言いたいんだろう?」

狛枝「そういう事」

日向「その学校っていうのは……」

狛枝「ボクは希望ヶ峰学園の可能性が高いんじゃないだろうかって、そう思ってる」

日向(……狛枝もか)
32 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:38:35.34 ID:ZyM4NS/40
七海「それはどうして?」

狛枝「だって、ボクも日向クンも七海さんも希望ヶ峰学園の入学式に向かう途中で意識を失った」

狛枝「ボクは校門をくぐった所の記憶まであるんだけど……キミたち二人は?」

日向「俺もそうだ。けど校門に足を踏み入れたその先からの記憶はあやふやで……」

七海「……私もそうだね」

狛枝「でしょ? もしかしたらこれは、希望ヶ峰学園の才能テストの一環なのかも」

日向「けど、希望ヶ峰学園は入学試験は行わなかったはずだぞ?」

狛枝「そうじゃなくて。ボクたちは入学条件は満たしている事に間違いは無いけれど、その希望ヶ峰学園に才能研究をさせられているのかもって事」

日向「才能研究!? け、けど、モノクマは言っていたぞ!? ルール違反を犯したら死だって……」

日向「希望ヶ峰学園が俺たちをそんな危険な目に合わせるのか!?」

狛枝「もしかしたら、ボクたちを極限状態に追い込む事で才能をより高めさせようって事なのかもしれない」

日向「な、なんだよそれ!」

狛枝「ほら、火事場の馬鹿力って言葉あるじゃない? それと同じ原理で……」

日向「だからってそんなっ……」

七海「ねえ、二人とも。憶測でアレコレ言うのはいいけれど、まずこの食堂を調べてみない? 何か手掛かりが見つかるかもしれないよ?」

日向「あ……そ、そうだな」

七海「それにほら……あれを見て」

狛枝「ん? あれは……エレベータの中にあったのと同じ金庫のようだね」

七海「それとその近くに、もうひとつ扉があるみたい」

日向「扉か……けどロックがかかってて先には進めないみたいだ」

七海「ここまでは一本道だったから、おそらくここを調べてその扉のロックを解除する必要がある……と思うよ」

日向「なるほど。そうと決まれば探索開始だな」


――
33 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:41:11.62 ID:ZyM4NS/40
日向「……ん? テーブルの上に紙切れが……なんだこれは」ペラ

日向「一枚の紙が半分に割かれてる状態になっているが……」

日向「『第七十八期』『超高校級のアイドル』『超高校級の軍人』『超高校級の野球選手』……」

日向「これは……『才能』がずらずら書かれているのか? ええと、続きは……」

日向「『超高校級のプログラマー』『超高校級の暴走族』『超高校級の風紀委員』『超高校級の同人作家』『超高校級のギャンブラー』『超高校級の格闘家』『超高校級のギャル』『超高校級のスイマー』『超高校級の占い師』『超高校級の御曹司』『超高校級の文学少女』『超高校級の探偵』……」

日向「『超高校級の幸運』……?」

狛枝「何を見てるんだい?」ヒョイッ

日向「うわぁっ!?」

狛枝「あ、ゴメン。ボクなんかが急に声かけちゃって……びっくりした?」

日向「い、いや……それより、狛枝もこれを見てくれ!」

狛枝「どうしたの?」

日向「ここに『超高校級の幸運』って書いてあるんだが」

狛枝「え? ……これは……『超高校級の』という事は希望ヶ峰学園が関係している資料……いや、名簿なのかもしれないけれど」

日向「名簿……?」

狛枝「うん。半分に割かれているから、おそらくもう半分にこの才能を持った人物の名前が書かれているんじゃないのかなって」

日向「なるほどな。じゃあ、これは俺たちの学年の名簿の半分になるんだろうか」

狛枝「うーん……けど、ここに『超高校級のゲーマー』という才能は書かれていないようだけど」

日向「あ、七海の才能か。じゃあ、これは学年全体の名簿じゃなくてひとつのクラスの名簿で、七海は別のクラスなのかもしれないな」

狛枝「……そうなのかな」

日向「ん? どういう意味だ?」

狛枝「そもそもこれは、ボクたちの学年の名簿ではないかもしれないという事だよ。だって……」
34 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:43:30.02 ID:ZyM4NS/40
七海「おーい、二人とも! 金庫が開いたよ」

日向「へっ!? は、早いな!?」

七海「このくらいのゲームは画面の中で日常的にやってるんだから楽勝楽勝」ドヤァ

狛枝「素晴らしいよ! 流石は『超高校級のゲーマー』だ。このゲームは七海さんにとってはうってつけだという事だね!」

日向(凄いな……俺にもこんな才能があれば……)

日向(……才能が『あれば』?)

日向(何を言っているんだ。俺は才能があるから希望ヶ峰学園にやってきた……そうじゃないか……その筈だ……)

日向(もしかしたら、この名簿の半分が見つかれば、俺の名前が書かれてあって……俺の才能がなんだったのかもわかるのかもしれない)

日向「なあ、七海。学食を見て回った時に半分になった紙切れは何処かに落ちていなかったか?」

七海「半分の紙切れ? 食堂の謎を解くヒントのメモならあったけど……」

七海「金庫の中にも紙があるみたいだけど、それの事?」

日向「どれだ?」

七海「はい、どうぞ」ピラッ

日向「ありがとな。ええと……」


【ルールの補足】……なんだクマ
一度開いた扉は、内側からでも外側からでも自由に開く事が出来るんだクマ
【CD=カラードドア】も同様。一度開きさえすれば、何度でも出入りする事ができる
またこの時には、人数制限や色の制限も解除されるんだクマ
ただし、CDの先にある部屋を抜けた後じゃないと、この自由解放ルールは適用されないんだクマ
部屋の出口を開ける前に来た道を戻ろうと思っても扉は一方通行になったままだから注意するように、なんだクマ
35 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:45:10.39 ID:ZyM4NS/40
狛枝「要するにこの部屋を抜け出しさえすれば、体育館から引き返す事も可能になる。そういう事だね?」

七海「そうみたい」

日向(名簿の半分ではなかったか……)

七海「他に金庫にあるのは、マップと……」

狛枝「カードキーが三枚あるね」

七海「FAINAL DEAD ROOMって表に書いてあるからこれがきっと……」

日向「FDルームを開く為のカードキーか!」

七海「そして最後は、小さなカギだね。これが多分、ロックのかかっている扉のカギ……と思うよ?」

日向「お手柄だ、七海! さっさと先へ進もう!」

狛枝「日向クン……キミ、何か焦ってないかい?」

日向「そ、そんな事はないぞ」

狛枝「そう?」

七海「けど、ここに居たままじゃどうしようもならないし、行こう?」

日向「ああ」


……
…………
………………
36 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:47:21.69 ID:ZyM4NS/40
日向(俺たちはロックを解除した扉の先へと進んで歩いて行った。そこには……)

日向「エレベータ、か。今度は本物のみたいだが……」

七海「動きそう?」

日向「わからない。ボタンを押してみない事には……」

狛枝「あれ? 通路の向こう側から誰か来るよ?」

日向「ん……? あれって……五月雨と霧切とKじゃないか?」

七海「それから、こまるさんとモナカさんと苗木くんもいるみたいだよ」

五月雨「あっ、日向くんたちもいる!」

日向「どういう事だ?」

五月雨「すぐそこで会ったんだよ。ばったりとね」

モナカ「運命的な再会ってやつじゃなさそうだけどねー?」

狛枝「七海さん。さっき金庫にあったっていうマップを見せてもらえる?」

七海「うん」

狛枝「……へえ、なるほど。どうやら3つのルートに分かれて進んでも、結局はここで合流するようになってたみたいだね」

K「そのマップ、【保健室】にあったものと同じですね」

日向「保健室……?」

こまる「あ、それだったら私たちも見つけたよ。【学生寮】で」

日向「そっちは学生寮か……俺たちが入ったところは学生食堂だったが……」

苗木「どうやら情報交換をした方がよさそうだね」

狛枝「待って。そこのエレベータを調べてからでも遅くはないよ」


――
37 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:49:47.85 ID:ZyM4NS/40
モナカ「んー? 上の階と殆ど変わらないねー?」

七海「けど、扉に色が着いているみたいだよ」

七海「エレベータを背にして、左手が【緑】、正面が【青】、右手は【赤】に塗られてる」

こまる「これってもしかして……新しいCD?」

日向「表示からしてLOCKがかかっているみたいだけどな」

苗木「どうやら力尽くでは開きそうにないようだね」

五月雨「霧切ちゃん、どうしたの? バングルなんか眺めて」

霧切「ええ、ちょっとね。……やっぱりだわ」

五月雨「何? どうかしたの?」

霧切「残り時間が変わっているのよ」

日向「残り時間って……ああ、そういう事か」

日向(俺は、バングルの両端のボタンを同時に押してみた)

カチッ


02:06


日向「2時間6分……」


モナカ「ええー? こんな狭苦しいところであと2時間も待たないといけないのー?」

苗木「仕方ない。ここはひとまず引き返すしかなさそうだね」

苗木「こまる、さっき見つけたメモの事、みんなに教えてあげて」

こまる「あ、うん、そうだね」

K「それはもしかして、ルールの補足と書かれたメモの事でしょうか。だとしたら、僕たちも持っています。それからカードキーも。保健室で見つけたので」

日向「俺たちもだ。七海が食堂にあった金庫の中から見つけてくれて……」

苗木「じゃあ、もしかして部屋分のカードキーもみんな所持してるって事かな」

七海「これが本当だとすると、全員おなじルートを通って最初にいた体育館まで戻れる事になるけど」

狛枝「戻れるというよりも、戻ってこいと言っているんじゃないのかな、モノクマは」

狛枝「そうでなければ、例のカードキーの意味がなくなるからね」

七海「……とにかく、戻ってみようか」


――
38 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:52:52.64 ID:ZyM4NS/40
モノクマ「ふあーあ……待ちくたびれちゃったよ」

日向(ちっ……いっちょまえにあくびなんかしやがって)

モノクマ「さて……全員ここに戻ってきたという事はカードキーを見つけたという事だろうから、さっき保留にしていた話の続きをしようかな」

モノクマ「【BP=バングルポイント】を【9以上】にするにはどうしたらいいか」

日向「あそこにある【FDルーム=ファイナルデッドルーム】に入ればいいんだろ?」

七海「けど、どの部屋に入ればいいのかな?」

モノクマ「えーと……特に決まってないよ。誰がどの部屋に入ってもいいんだ」

モナカ「じゃあ、モナカは最初に入っていた部屋がいいな。あそこにモナカの車椅子が置き去りになってるから」

日向「車椅子?」

こまる「モナカちゃん足が悪いの。だから一人で歩くことが出来なくて」

こまる「ハッチから脱出する時に車椅子までは一緒に持ってこられなかったから……」

日向「ああ、なるほど。だからこまるがずっとモナカの事をおぶっていたのか」

五月雨「けど、部屋は6つしかないよ?」

モノクマ「だから言ったじゃん。表示が同色のペアバンの2名は一心同体の運命共同体なんだよ」

K「つまり、ペアバンの2名は一緒に同じ部屋に入ればいいという事ですね」

モノクマ「そういうこと」

こまる「それで、部屋に入ったらどうすればいいの?」

モノクマ「投票をしてもらいます」

霧切「投票?」

モノクマ「詳しい説明は後でしよう。その方がわかりやすいと思うからさ。とにかく、部屋に入った入った!」

日向(モノクマの言いなりになるのは癪に障るが、今はそうするしかなかった)

日向(誰がどの部屋に入ってもいいという事だったので、俺たちはモナカの要望を聞く以外は適当に分かれて扉の前に向かった)

日向(俺と狛枝が流れに任せて辿り着いたのは、一番左端の部屋だった)

日向(俺は手にしたカードキーを部屋の脇にあるカードリーダーの通し、部屋を開け……)

モノクマ「FDルームが解放されました! 投票の締め切りまで残り45分です!」

日向「なんだ……このゲームにもタイムリミットが……って」

日向「……え?」

狛枝「え……」
39 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:54:48.87 ID:ZyM4NS/40
日向「な……なんだ……部屋に誰かが倒れて……誰なんだよ、コイツは!」

日向(部屋のど真ん中に髪の長い知らない女性がうつ伏せになって倒れている……)

狛枝「とにかく、早くみんなを呼ぼう!」

日向(俺よりも先に動いたのは狛枝だった)

日向「あ、ああ……!」

日向(俺はそのあとに続き……)

日向「おい! みんな来てくれ! 人だ! 人がいる!」

日向「部屋の中に女がひとり倒れているんだ!」

日向(みんなが集まるのを待たずに、俺と狛枝は部屋の中へと飛び込んだ)

日向(女性のかたわらに駆け寄り、その体を仰向けに倒す)

日向(すると目に飛び込んできたのは――)

日向「血……血だ……!」

日向(慌てて女性のくちもとに耳元を添える)

日向(続けて首筋に手を伸ばし、頚動脈を探った)

日向(ひんやりとした感触が指先にしみる……)
40 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:57:27.61 ID:ZyM4NS/40
こまる「な、なに? どうしたの……!?」

モナカ「もしかして……その人……」

日向「見るな、モナカ! こまるはモナカを連れてここから離れろ!」

こまる「う、うん……!」

K「ということは、その人はやはり……」

狛枝「……息もないし、脈もないみたいだね」

狛枝「すでに冷たくなっているから、だいぶ前に――殺されていたんじゃないのかな?」

日向(俺と同様に女性の安否を確認していた狛枝が静かにそう告げた……)

五月雨「殺された……!?」

霧切「事故や事故死には確かに見えないわね」

日向「霧切! お前も向こうへ……」

霧切「胸を何かで突き刺されているようね。けれど、室内に凶器は見当たらない」

霧切「という事は、犯人がそれを持ち去ったか、あるいは肉体の一部が凶器だったという可能性も……」

日向「お、おい!」

日向(霧切はなるべく現場を踏み荒らさないように気を付けたような足取りで部屋の中と女性の様子を軽く調べる)

日向(その様子はなんだか手慣れたようにも見えるが……)

五月雨「肉体の一部……?」

霧切「たとえばその人物が怪力の持ち主で、指先が鋼鉄に覆われていたりすれば、胸を貫くのも不可能ではないでしょう?」

K「霧切さん。それはどういう意味でしょう」

霧切「ただのジョークよ。真に受けないでちょうだい」

日向(と言っても、半分は本気で……少なくとも可能性のひとつとして考慮している事は確かなような口ぶりだった)

霧切「いずれにせよ、凶器がなんなのかくらいは傷口をあらためればすぐにわかる事だわ」

霧切「とりあえず、保健室へ運びましょう。女性だもの。こんな場所で胸元をさらすわけにはいかないわ」

霧切「それに、保健室には検死に適した機材もそろっていたようだし……」

日向「け、検死……!? けど、そんなこと出来る奴は……」

霧切「軽くなら私にも出来るわ」

日向(検死が出来る中学生って……な、なんなんだよ、こいつは……!)
41 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/22(火) 23:59:16.02 ID:ZyM4NS/40
霧切「では、男性のみなさん。手伝ってもらえるかしら?」

日向(かくして、女性の遺体は俺と狛枝とKで保健室へと搬送することになった)

日向(苗木も『男性のみなさん』の中に含まれているはずだったが、彼は一切手を貸そうとしなかった)

日向(それどころか遺体に近付こうとさえせず、ただ遠巻きに俺たちの事をじっと見ていただけだった)

日向(その瞳はどんよりと濁り、ほのかな熱を帯びていた)

日向(こちらを睨みつけているようでもあり、しかし同時に俺たちのことなどまるで見ていないようでもあった)

日向(そういえば、苗木は死体を発見してからまだ一度も口を開いていない)

日向(呼吸さえもしていないのではないかと思うほどだった)

日向(血の気の失せた顔はとても人のものとは思えず、そのぎこちない足取りは鉄球を引きずる囚人のように重かった)
42 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/23(水) 00:01:05.09 ID:9e6j4OsE0
日向(女性の遺体は驚くほど軽かった)

日向(俺たちはその体が折れてしまわないように、そっと優しく保健室のベッドに横たえた)

日向「安らかな死に顔だな……今にも起き上がってきそうだ」

狛枝「あまり苦しまずに亡くなったのかもしれないね」

七海「それだけが唯一の救い……なのかな」

霧切「さて、申し訳ないけれど、ご遺体をあらためさせてもらう事にするわ」

日向「いくらなんでも、こんな子供に遺体を調べさせるのにはやはり抵抗があるんだが……」

霧切「……」ムッ

五月雨「あ、あー、えーっと、大丈夫大丈夫! 私も一緒についてるからさ! ね?」

日向「五月雨は検死が出来るのか」

五月雨「えっとね……そこにあるの、小型の医療用のスキャナなの」

狛枝「そういえば、五月雨さんはこの保健室を調べていたんだったね」

五月雨「うん。でね、詳しい説明は省くけど、あれって生体の自動診断解析装置なんだよ」

五月雨「それを使えば、検死のような事も出来る。……はず」

日向「そうなのか」

日向(五月雨が説明をしている間に、霧切がその小型の医療用スキャナで女性の全身をスキャンし始めていた)

日向(結果は瞬く間に表示された)
43 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/23(水) 00:04:02.27 ID:9e6j4OsE0
性別:女性
推定年齢:10代後半から20代前半
状態:死亡
死因:失血死
死亡推定時刻:3時間〜4時間前
損傷個所:左胸部第4肋間から心臓(左心室内腔)にかけて刺創あり
創の性状:創縁=整 創角=鋭・鈍 創洞長=150mm 創口長=30mm 鈍側創端幅=3o
所見:上記創の性状から、刺創は有尖片刃器によるものと推察される


日向「うーん……よくわからないな。有尖片刃器ってなんだ?」

霧切「先の尖った刃物の事よ。ナイフや包丁みたいな」

日向(中学生より知識量が無いって若干ショックだな……)

狛枝「要するに鋭利な刃物で心臓を一突きされたって事かな?」

K「これでひとまず、僕への嫌疑は晴れた事になるでしょうか」

霧切「いいえ、悪いけどそういう訳にはいかないわ」

K「何故です?」

霧切「この女性が発見されたのは、6つあるうちの一番左端にあるFDルームだった」

霧切「ここに閉じ込められていたのは言うまでもなく……」

霧切「私とあなた」

霧切「けど、私は外に出るまで意識を失っていた。それはあなた自身が証明してくれる筈よ」

霧切「でも私は気を失っていたからあの部屋の最初の様子は確認していない」

K「待ってください。断言しますが、僕とあなたがあの部屋にいた時は彼女はいなかった」

K「おそらく何者かが、あとで運び込んだのでしょう」

モナカ「けど、正面の扉にはロックがかかっていてカードキーがなければ開かなかったんだよ? それはどう説明するのー?」

K「確かにそうですが……」

七海「天井のハッチももう開く事は出来ないって言ってた。だとすると、死体を室内に運び込むのは不可能……と思うよ」

モナカ「じゃあ、やっぱりKさん。あなたが殺しちゃったんじゃない?」

K「……」

日向(室内に緊迫したムードが漂う……しかし、そこに底抜けに明るく不快な声が響いた)
44 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/23(水) 00:06:01.27 ID:9e6j4OsE0
モノクマ『投票の締め切りまで、残り10分です!』

モノクマ『プレイヤーはすみやかに投票を済ませてください!』

モノクマ『所定の時刻までに投票を行わなかった場合、未投票者の選択は【希望】に設定されます!』


日向「なんだ今のアナウンスは……」

こまる「さっぱり意味がわからないね……」

霧切「けど、ひとつだけ確かなことがあるわ」

霧切「どうやら、10分以内に『投票』を済ませないと、何かまずい状態になりそうだってこと」

霧切「……気になる事はあるけれど、この女性の事についてはひとまず置いておきましょう」

日向「……そうだな」


――


【体育館】

日向「この場所に入るのか……なんだか気が引けるな。さっきまで死体が横たわっていた場所だし……」

日向「って狛枝はどこだ?」

狛枝「上だよ」

日向「上……? って屋根の上か! 何やってんだよ、お前!」

日向「他の連中はとっくにFDルームの中に入っちまったんだぞ!」

狛枝「うん、ちょっとね。一応確かめておこうと思って」

日向「確かめるって……まさか、ハッチの事か?」

狛枝「その通り。開いてみようとしてもびくともしない」

狛枝「という事は、やっぱりこのFDルームは密室状態だったって事だよ」

日向「あの女性が発見された時の事か?」

狛枝「うん」

日向(ならば、Kの容疑はますます否認出来ない事になる訳か……)


モノクマ『投票の締め切りまで、残り5分です!』


狛枝「おっとごめん。行こうか」

日向「ああ」


――
45 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/23(水) 00:07:33.40 ID:9e6j4OsE0
狛枝「見てみなよ。奥のモニターに何か表示されてる」

日向「確かに……」


投票を開始します
投票を行う場合は画面下にある
【START】ボタンに触れてください

このとき入り口の扉は自動的に閉鎖されます
閉じた扉はこのラウンドが終了するまで
開放されないので注意してください


【START】



狛枝「えいっ」ポチッ

日向「うわー! 馬鹿! お前またそういう……」


ガシャン


日向「扉が……」

狛枝「閉まったね」
46 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/23(水) 00:11:36.10 ID:9e6j4OsE0
モノクマ「やあやあ、やっとそろったみたいだね。待ってたよ」

日向(モノクマが最初に映った時と同じモニター内に姿を現した)

モノクマ『時間がないから手短にルールの説明をするよ。ちょっと黙っててね』

モノクマ「さて……オマエラにはこれから【投票】を行ってもらいたい訳なんだけど、これって実は選挙なんかにある投票とは少し勝手が違うんだ」

モノクマ「ラウンドごとに対戦相手が存在し、ひとつひとつのラウンドは個人戦になっている」

モノクマ「と言っても、【ペアバンの二人は一人とみなした上での個人戦】だけどね」

モノクマ「だから正確に言うと【2対1の戦い】って事になるね」

モノクマ「さて、その対戦相手は誰なのかっていうと、【さっきチームを組んで同じ色の扉に入った人物】がそれになる」

日向「という事はつまり……」

狛枝「ボクたちの対戦相手は七海さんっていう事だよ」

狛枝「逆に、七海さんの対戦相手もボクと日向クンという事になるだろうね」

モノクマ「ではここで、奥のモニターにちゅーもーく!」


A:希望
B:絶望


モノクマ「表示は見えたかな? オマエラがする事はたったひとつ――【希望か絶望、そのうちのどれかを選ぶこと】」

モノクマ「その結果によって、オマエラの【BP=バングルポイント】は増えたり減ったりする事になるんだ」

モノクマ「結果は以下の通りになるよ」

モノクマ「たとえば、自分が【希望】を選び相手も【希望】を選んだ場合――このケースは【自分も対戦相手も+2点される】」

モノクマ「次に、自分が【絶望】を選び相手も【絶望】を選んだ場合――このケースは【自分も対戦相手も点数は加算されず、±0点】だ」

モノクマ「じゃあ、自分が【希望】を選び相手が【絶望】を選んだ場合だけど――このケースは【自分の点数は−2点になり】そして【対戦相手の点数は+3点】される事になるんだ」

モノクマ「その逆で、自分が【絶望】を選び相手が【希望】選んだ場合――このケースは【自分の点数は+3点になって】そして【対戦相手の点数は−2点】になるんだよ」

モノクマ「……で、ペアバンの場合はどうなるのかって話だけど……ここでも二人で一人のルールは適用されるから、二人が投じる事の出来る票は一票のみなんだ」

モノクマ「だからと言って、今話した増減値が二分の一になったりする事はないから安心していいよ!」

モノクマ「とまあ、こんな感じで基本的な説明は終了だよ。本当はもっと言わなきゃいけないことがあるんだけど……時間が無いから仕方ないよね。だって……」

モノクマ「投票の締め切りまで、残り1分です!」

モノクマ「ということだから、またあとで! Have a nice trouble〜!」


シュンッ
47 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/23(水) 00:13:38.14 ID:9e6j4OsE0
日向「あっ……くそっ! またか!」

狛枝「……」

狛枝「日向クン。時間が無いよ」

日向「だがっ……!」

狛枝「日向クン。ボクはキミの決定に従おうと思っている」

日向「……え?」

狛枝「キミがどちらを選ぼうと、ボクは文句を言わないと言っているんだよ。つまり……」

狛枝「投票権をキミに委ねると言っている」

日向「ど、どうしてだ……?」

狛枝「……。それはね。キミの【希望】を見たいからだよ」

日向「は……? それはどういう事だ? 俺に希望に投票しろと言っているのか?」

狛枝「そういう事じゃない。キミがどちらに投票しようと……それが【キミの希望】であるのなら、ボクは構わないって言っているんだよ」

日向「い、意味がわからない……」

狛枝「ふぅん……。じゃあ、ひとつだけ助言しておこうかな」

日向「助言……?」

狛枝「この投票、ボクは【絶望】に投票するべきだと思っている」

日向「なっ……なんでだよ!? 七海を裏切れっていうのか!?」

狛枝「七海さんが【希望】を選ぶとは限らないからね」

狛枝「もしも、ボクたちの選択が【希望】で彼女の選択が【絶望】だったら……ボクたちのBPからが2点が引かれる事になる」

狛枝「……BPが【1】になったら、もう後がないんだ。だから」

日向「待てよ。『後がない』って……どういう意味だ?」
48 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/23(水) 00:15:09.48 ID:9e6j4OsE0
モノクマ「投票の締め切りまで、残り30秒です!」


狛枝「いいから早くしなよ」

日向「お前……なにか隠しているのか!?」

日向「俺の名前を知っていたのもそうだし、その後だってお前は動じる素振りをあまり見せなかった!」

日向「まるで初めから、何もかも知っていたかのように……」

日向「まさかとは思うが、お前……」

狛枝「……」

日向「答えろ! 『後がない』ってなんの事なんだよ!」


モノクマ「投票の締め切りまで、残り10秒です!」

狛枝「……」

モノクマ「9……8……7……」

日向「……」

モノクマ「6……5……4……」

狛枝「……」

モノクマ「3……2……」
49 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/23(水) 00:16:35.19 ID:9e6j4OsE0
狛枝「BPが【0以下】になれば」




狛枝「死ぬ」




モノクマ「1――」




A:希望
B:絶望

選択
安価下
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 00:22:03.84 ID:nxcPKb+K0
希望
51 : ◆UZpiB8bc8Q [saga]:2017/08/23(水) 22:50:14.29 ID:9e6j4OsE0
モノクマ「第1ラウンド終了ー! 結果は体育館内のディスプレイに表示されます!」

モノクマ「FDルームの扉を開放します!」



日向(俺と狛枝はFDルームを出た)

日向(他の者たちも次から次へと飛び出してきて、我先にとばかりにディスプレイの前に群がっていく)

日向(ただひとり、苗木の足取りだけは相変わらず重かった)

日向(一体なにを思っているのだろう、苗木は……)


狛枝「ふふっ……」

日向「何をひとりで笑ってるんだよ……お前は」

狛枝「【BPが0以下になれば死ぬ】と聞いた上で、自分の意志で【希望】に投票した日向クンに心を打たれただけだよ」

狛枝「それが【日向クンの希望】……七海さんを信じるというその希望は果たして……あははっ」

日向「お前はいいのかよ」

狛枝「何が?」

日向「もしこれで七海が絶望に投票していたら……俺だけでなく、お前のBPも【1】になるんだぞ!?」

狛枝「だから、言ったじゃないか。ボクは日向クンに委ねる、文句は言わないって」

狛枝「それは、結果も含めての事なんだよ?」

狛枝「仮にBPが【1】になったとして……キミが【真の希望】であるのなら、そのくらいの絶望は乗り越えられるとボクは信じている」

狛枝「だから、あまりボクをガッカリさせるような言動はしないで欲しいな」

日向「狛枝……お前は……」

狛枝「それよりも、少し気になった事があるんだけど」

日向「そ、それよりもって……!」

狛枝「日向クンはどうして、【七海さんが希望を選択する】と思ったのかな?」

日向「……は?」

狛枝「ボクが絶望を選択するべきだと思うと告げた時、キミは言ったよね?」

狛枝「『七海を裏切れっていうのか!?』……ってさ」

狛枝「これって、日向クンは七海さんが希望を選択するって確信していたようにも聞こえるんだけど?」

日向「そ、それは……七海がこの状況下で絶望を選択するような奴には見えなかったというか……」

狛枝「出会ったばかりの人間の何がわかるっていうんだい?」

日向「お前なぁ……!」
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