いろは「手つないでもいいですか?」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 15:33:43.39 ID:CZ3E5ga70


材木座「ふえっ!?」

いろは「ですから、手つないでもいいですか?」

材木座「えっ? なっ、て、てて手って、手? この手…?」

いろは「その手以外にどの手があるんですか」

材木座「ハムッ、す、すまない…」

いろは「それでー、いいんですか? ダメなんですか?」

材木座「だ、駄目というか…………どうして我と…?」

いろは「理由は聞かないでください」

材木座「えっ、そ、そう……」




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1502865223
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 15:35:34.57 ID:CZ3E5ga70


材木座(おおお落ち着け、落ち着くのだ材木座義輝、突如目の前に現れたおなごは何と言った?)

材木座(手をつなぐ、確かにそう言った。だが何故なのだ?)

材木座(理由は聞くなと言われたが、理由を聞かずしてそのような不埒な行為を認めるわけには……ここはひとつ、此奴の目を見て真意を…)

いろは「……」ジー

材木座(くうっ! なんだその仔犬の様な丸い目は!? まともに視線を合わせては吸い込まれてしまうのではないか!?)

材木座(ゼヒュー、ゼヒュー……一旦呼吸を整えるのだ。鎮まれ我が心臓よ、この程度の相手に焦る必要はない!)

いろは「はあーもういいです。失礼しましたー」スタスタ

材木座(な、なあに。ただ手をつなぐ、所詮はそれだけのこと。殊に理由などなくとも一瞬にして済ませてしまえば良いではないか)

材木座(怖れることはない! そりゃあ異性と触れ合うなど幼少以来殆ど無かったとはいえ、全くの初めてではないのだ!)

材木座(過去の我に出来て今の我に出来ぬはずがなかろうぞ! コヒュウコヒュウ……そうだ、落ち着け材木座義輝。今こそこの手を伸ばす時…!)


材木座「も、もももちろんボクでよければ……!!」



材木座「…………あるえ?」


3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 15:36:19.10 ID:CZ3E5ga70
本編おわり
以下おまけ
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 15:39:57.11 ID:CZ3E5ga70


いろは「わたしとしたことが、何かにあやつられてましたね」


コンコンコン


八幡「…!」ピク

いろは「失礼しまぁーす」ガララ

結衣「いろはちゃん! やっはろー」

雪乃「こんにちは一色さん」

いろは「こんにちはー。おじゃましますね」

結衣「どうかしたの?」

いろは「あー、ちょっと先輩に頼みがあるんですけどー…」

八幡「……」zzZ

いろは「……先輩、机で寝ちゃってますね」

結衣「あれ? ホントだいつの間に」


5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 15:42:05.74 ID:CZ3E5ga70


いろは「おつかれなんですかね?」

結衣「そうなのかな。でも確かついさっきまで本読んでた気がするんだけど…」

いろは(うーん、ムリに起こすのはかわいそうかなぁ)

雪乃「その通り、その男はつい先ほどまで黙々と読書に耽っていたわ」

結衣「だよねだよね」

雪乃「けれど、一色さんの足音とノックの音に気がついた瞬間、本を閉じてその体勢に切り替えた」

いろは「へっ? それってつまり…」

八幡「……ぐー、ぐー」

結衣「ヒッキー…」

雪乃「狸寝入りね」

八幡「…………」

いろは「せーんーぱぁーーい???」ギロ

八幡(雪ノ下め……黙っててくれりゃいいものを)


6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 15:46:52.05 ID:CZ3E5ga70


八幡「ふああ、よく寝たー」ムク

いろは「なにがよく寝たーですか! なんでわたしがきた瞬間に寝たふりしたんですか!?」

八幡「さてなんのことやら」

雪乃「此の期に及んで白々しいわよ狸ヶ谷くん」

八幡「後ろに谷つければ何でも俺になると思ったら大間違いだぞ雪ノ下。そういうのは比企谷以外にも沢山あるだろ、世田谷とかな」

いろは「あーもーそんなことはどうでもいいです。それよりわたし先輩にお願いがあるんですよぅー」

八幡(そうなると思ったから寝たふりしたんですよぅー……)

結衣「お願いって生徒会の手伝いとか?」

いろは「んー、まぁそれとかですね」

結衣「そっか。ならヒッキー行ってあげないとだね」

八幡「えぇ…」

いろは「責任……取ってくれないんですか?」ウルッ

八幡(ぐっ、その台詞毎度別の意味に聞こえるからやめてくれませんかね)


7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 15:50:46.54 ID:CZ3E5ga70


八幡「分かった分かった、やりゃいいんだろ」

いろは「ありがとうございまぁーす♪」

雪乃「その手伝いというのはどのくらいかかるのかしら?」

いろは「今からですと、下校時刻までかかるかもですねー」

結衣「あたし達も手伝おうか? みんなでやれば早く終わると思うし、今日はもう依頼も来なそうだし」

いろは「いえいえ! 結衣先輩や雪ノ下先輩のお手をわずらわせるわけにはいきませんので」

八幡「俺のお手を煩わせるのはいいのかよ」

いろは「ほら、男手が必要っていうかー」

八幡(つまり重労働ってことか……ますますやりたくねぇ)

いろは「それに結衣先輩に手伝ってもらうと余計時間かかるかなって…」

結衣「い、いろはちゃん? それどーゆー意味かな?」

雪乃「賢明な判断ね」

結衣「ゆきのんまでっ!?」



8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 15:54:09.16 ID:CZ3E5ga70



八幡(とまあ、なんやかんや一色に生徒会室に連れて来られたわけだが)

いろは(とまあ、うまいこと先輩を生徒会室に連れてこれましたね)


八幡「……誰もいないんだけどどういうこと?」

いろは「当たり前ですよ、今日は活動日じゃないですし」

八幡「え、でも手伝いって……一色、まさかお前」

いろは「……わかっちゃいました?」

八幡「ハブられてるのか、生徒会内で」

いろは「えっ」

八幡「他のメンバーに無理やり仕事を押し付けられて……1人じゃとても終わらず俺たちを頼って…」グス

いろは「せ、先輩? あのっ、ちがいますよ? わたしハブられてなんかいませんし…」

八幡「まあそうだろうな」

いろは「って今度はウソ泣きですか!!」ポカッ!



9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 15:56:31.97 ID:CZ3E5ga70


八幡「おま、グーで殴るなよ」ジンジン

いろは「先輩が悪いです。わたしの心を弄んだ先輩が十悪いです」

八幡「悪かったよ。で、俺は何を手伝えばいいんだ? 男手が要るってことは荷物運びかなんかだと踏んでたんだが」

いろは「あー、それなんですけど、手伝ってほしいことはべつに生徒会の業務じゃないんですよ」

八幡「は?」

いろは「さっきのは先輩を連れ出す方便です。ただ男手が必要っていうのはほんとですけどね」

八幡「はあ。生徒会の手伝いじゃないなら何なんだ?」

いろは「ええと、あのですね…」


いろは「先輩と……手つないでもいいですか?」


10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 15:57:45.95 ID:CZ3E5ga70


八幡「は? 手?」

いろは「手、です」

八幡「手って、この手?」

いろは「その手以外にどの手があるんですか」

八幡「あるだろ……孫の手とか」

いろは「そんないまどきおばあちゃん家にしかないようなグッズが生徒会室にあるとでも思ってるんですか…」

八幡「いや、ねえ。いきなり手つないでいいかなんて言われても困惑するだろ普通」

いろは「そうかもですけどー、先輩って普通じゃないじゃないですかぁ」

八幡「人のこと真顔で異常扱いするのやめてくれませんかね……まず理由を教えろ、理由を」



11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:03:40.72 ID:CZ3E5ga70


いろは「理由ですか。ふふふ、乙女のヒミツって言ったらどうします?」

八幡「いやぁいい仕事した。戻るわ」

いろは「あーちょっと先輩! ひどいですぅー!」グイー

八幡「服引っ張るなよ。破けちゃうだろうが!」

いろは「こんなのでビリビリ破ける服なんて現実にありませんよ。先輩エロ同人の読みすぎじゃないですか? うわードン引きです」

八幡「え…?」

いろは「な、なんですかその腐ったような目は」

八幡「そこは腐ったものを見るような目って言おうね」

八幡「それより一色お前、なんでそんなこと知ってるんだ?」

いろは「なんでって、だってわたしの見た本では……あ」

八幡「……」

いろは「わー! わーーっ!! 今のナシです!! 見てません! 見てませんから!!」

八幡「この後輩エロ同人の読みすぎじゃないですか? うわードン引きですぅー」

いろは「ちがいますからぁ! 薄い本なんてぜんぜんまったく持ってませんからぁー!!」ポカポカ!

八幡「わ、分かったから! 叩くなって!」

八幡(しかも持ってるのか…意外すぎる。ま、まさか腐ってらっしゃるんじゃ…?)


12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:08:10.40 ID:CZ3E5ga70


いろは「うー、先輩にけがされました。もうお嫁に行けません」

八幡「んなわけないだろ」

いろは「……そこは『なら俺が貰ってやんよ』くらい言ってあげるのが男ってもんですよ」

八幡「そんなこと言ったらまたお前に早口でフラれるに決まってるからな。流石に学習したわ」

いろは「むう、これが巷で噂の人工知能ってやつですか」

八幡(え、俺ってばAIだったの? やだかっこいい)

八幡「それで結局なんで手を繋ぐだなんて言い出したんだよ」

いろは「そうでした。理由はまぁ、その……練習といいますか」

八幡「……練習?」

いろは「ほら、葉山先輩といざデートってなったときに失敗したくないっていうか…」

八幡(あれ? なんかまさにエロ同人で見たことあるような展開じゃね?)


13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:13:07.95 ID:CZ3E5ga70


八幡「練習って、手繋ぐのを練習するのか?」

いろは「はいっ! そのとおりです」

八幡「そんなの必要なくね? ただ繋ぐだけだろ」

いろは「ありますよ。いざデートのときにうまくできなかったらダサいじゃないですか」

八幡「だから上手いも下手も無いと思うんだが…なに? 一色レベルになると手の繋ぎ方にまでランク付けするの?」

いろは「別にそこまで求めてませんよ。うまいとかヘタっていうか、慣れです慣れ」

八幡「慣れ、ねぇ」

いろは「手つなぐだけで緊張してたら……ほら、手汗とかかいちゃうじゃないですか」

八幡「そういうことなら余計無意味じゃないか? 別人で練習したところで本人相手じゃまた違うだろうし」


14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:16:43.49 ID:CZ3E5ga70


いろは「それはそうかもですけど、ちょっとでも慣れときたいんですよ」

八幡「そんなもんなのか?」

いろは「わたし、見た目こんなですし……なのに手すらまともにつなげないってわかったら、相手も冷めちゃうじゃないですか」

八幡(見た目がこんなって自覚はあるんだな。というか一色の場合は分かっててやってるんだったか)

八幡(でも外見に反して初々しいってのは、寧ろ好感が持てるんじゃないのか? そう思うのは俺が童貞だからなのか…?)

いろは「だから男の人で練習したかったんです。こんなこと頼めるのって先輩しかいなくって…」ウル

八幡「そ、そうか」

八幡(ちょっ、そんな泣きそうな顔しないで! 抱きしめたくなっちゃうから!)


15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:20:34.46 ID:CZ3E5ga70


八幡「まあ、俺で良いなら全然構わないが」

いろは「ほんとですか!? やった! うれしいですっ」パァッ

八幡(なにこの天使のような天使の笑顔…)

八幡「けど、他にも頼めばやってくれそうな奴はいくらでもいるんじゃないの? 同級生とか」

いろは「え? だって、クラスの男子とかに頼んだらぜったい自慢して回るじゃないですかぁ。勘違いされても困りますし。その点先輩は心配ないですからね」

八幡「あー、そうだな。俺なら勘違いしないしな」

いろは「いえ、自慢するような友達がいないって意味ですよ?」

八幡「そっちかよ…」

いろは(……勘違いはしてほしいんですけどねー)


16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:23:13.87 ID:CZ3E5ga70


いろは「それじゃ先輩、始めますね。手出してください」

八幡「お、おう」スッ

いろは「あっ、手出すっていってもやらしい意味じゃないので勘違いして襲わないでくださいね?」

八幡「そんな勘違いするか! 早く握れ!」

いろは「は、早く握れって、先輩わたしに一体なにをにぎらせるつもりですか…?」

八幡(一体ナニを握らされるつもりなんですかねぇこの後輩…)

八幡「今すぐやめてもいいんだぞ」

いろは「もぉー冗談ですよぅー。ええと……」ギュ

八幡「…!」

いろは「……ど、どうですか?」

八幡「ど、どうって言われてもな」

八幡(小さくて…やわらかいです…)

いろは「あは、それもそうですね」

いろは(先輩の手、意外とおおきい…)



17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:24:20.82 ID:CZ3E5ga70


八幡「……」

いろは(先輩の手…)ニギニギ

八幡「…で? これからどうするの?」

いろは「へっ? あ、そうですね」

いろは「これじゃただの握手ですし、次のステップに進みましょうか」

八幡「と、言うと?」

いろは「先輩、横に立ってください」

八幡「……こうか?」

いろは「はい……あーっと、もう少し寄ってください」

八幡「ん」

いろは「このくらいですかね。それではどうぞ」

八幡「……んっ?」


18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:26:56.17 ID:CZ3E5ga70


いろは「なにしてるんですか。早く手つないでください」

八幡「お、おう。えーっと…」サワ

いろは「ひゃっ! ちょっ、なんで脚さわるんですか!?」

八幡「っ!? わ、悪い! わざとじゃなくてだな」

いろは「わかってますけど…気をつけてくださいね? 危うく先輩を痴漢で通報するところでした」

八幡「ああ、俺も線路があったらすでに飛び降りてるところだった」

いろは「チキンハートすぎませんか…」

八幡(いろはすのすべすべ太もも……やばいなんか興奮してきた)

八幡(落ち着け八幡、天上のシミを数えてやり過ごすんだ。あれこれなんか違うな)


19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:29:25.27 ID:CZ3E5ga70


八幡「じゃあ、改めて」ギュ

いろは「っ!」

八幡「……これでいいのか?」

いろは「いいんじゃ、ないですか?」

八幡「…そうか」

いろは「…はい」

いろは(先輩と並んで、手つないでる……)

八幡(それだけだってのに、なんだか本当にアレみたいに思えてくるな……)


八幡(っていやいやアホか俺は!)

八幡(中学じゃよく話してただけで気があると勘違いして破滅したんだ。高校生ともなれば手つなぐ程度で勘違いしちゃいけない)

いろは(このまま、次のステップに…!)



20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:32:43.37 ID:CZ3E5ga70


いろは「先輩、次は、あれしてください」

八幡「えっ? アレ?」

いろは「はい」

八幡(どれ…?)

いろは「……先輩? わかってますよね?」

八幡「あ、ああ。当たり前だろ」

八幡(やべ、反射的に肯定しちゃったよ)

いろは「ならいいですけど」

八幡(今さらやっぱり分かりませんはちょっとな……手繋いだら次はなんだ?)

八幡(くそっ、まともなソースが無い。せめてギャルゲーを豊富にプレイしていれば!)

いろは(先輩、ぜんぜん手が動かないけど本当にわかってるのかな)

八幡(手の次は……足? 二人三脚とか? いやいやそんなわけあるか)


21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:37:17.86 ID:CZ3E5ga70


八幡(思い出せ、世の忌々しいカップルどもが俺に見せつけてきた情景を。えーっと公園のベンチで確か暑苦しい口づけを……)

八幡(ば、バーロー! んなことできるか! 相手は一色だぞ? んなことした日には即通報即周知即退学まっしぐらだ!)

いろは「せーんぱーい、まだですかぁー?」

八幡「あ、ああ、今やる」

八幡(落ち着け、ひとまず一色の顔を見るんだ。そうしたらキスだとかそういう馬鹿な妄想は現実的に不可能ってことが認識できるはずだ)

いろは「? な、なんですか先輩?」

八幡「……」

八幡(決して厚みがあるわけじゃなく小ぶりな……されどちょこんと出ていて艶のある唇)

八幡(なんだこれ、不思議と吸い込まれるような……)スッ

いろは「………へっ?」

いろは「あの、ええっ!? せ、せんぱ……」


八幡「……はっ!?」


いろは「っ……!?」


22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:39:01.16 ID:CZ3E5ga70


八幡「はあ、はあ……」

八幡(な、なんだ今の? 俺は一体何をしようとしてたんだ? まるで一色に吸い寄せられたみたいに体が…)

いろは「…………」

八幡(ギリギリのところで気がついた。気がついてよかった。おかげで最悪の事態は回避できた)

八幡(ん? それから俺はどうしたんだっけ?)

いろは「せ、先輩…?」

八幡(あれれ〜? なんか一色の声が耳の後ろから聞こえるぞぉ〜?)

いろは「あのっ……は、ハグだったんですか? 次って…」

八幡「……」ギュー

いろは「……」

八幡「違いますよね……」

いろは「いえ、その……わたしとしては恋人つなぎのつもりで言ったんですけど」


23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:44:51.43 ID:CZ3E5ga70


八幡(あ、ああー、恋人つなぎね。アレね、相手が逃れられないようにガッチリホールドするやつね)

八幡「悪い……本当は次が何なのか分かってなかった」

いろは「あ、あー。そうなんですかぁ。それならそうと言ってくれればいいのに」

八幡「なんか妙なプライドに邪魔されてな…」

いろは「先輩にもプライドなんてあったんですね。この前プライドレスとか言ってたくせに」

八幡「言ったことねぇよ。仮に言ったとしたらプライスレスだ」

いろは「そうでしたっけ」

いろは(先輩の体、がっちりしててなんか安心する……)

八幡(てかどうすんだこの状況……)

八幡(いや、さっさと離れるべきなのは分かってるよ? でもなんつーか取り返しのつかない状態から進むも退くもできないっつーか)

いろは「あの、先輩…?」

八幡「ちょっと待ってくれ、今俺は山道で出会った熊と対峙してる気分なんだ」

いろは「どういうイミですか!? 抱いてみたらクマの筋肉みたいにかたかったってことですかっ!?」


24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:47:48.49 ID:CZ3E5ga70


八幡「そうじゃねぇよ、やわらかいし抱いてて心地いいし」

いろは「っ! そ、そういう発言はセクハラですよ…」

八幡「つってもこの状況が既にセクハラ確定なんだよな…」

いろは「ま、まあたしかに」

八幡「それだけにここからどうしていいのか分かんないんだ。放したら人生終わるからな……ハハッ、どうしてこうなった」

いろは「……」

八幡(どうせ同じアウトなら、やるとこまでやって人生終了したほうが得か?)

いろは「…先輩」

八幡(いや、俺はよくても一色が更なる傷を負うのか。そういうのは駄目だな)

いろは「先輩、聞いてますか?」

八幡「え? な、なんだ?」



25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:50:08.47 ID:CZ3E5ga70


いろは「えと、セクハラって、好きでもない人にされて嫌な気分になるからセクハラなんですよね?」

八幡「は? まあ、ハラスメントっていうんだからそんな感じだとは思うが…」

いろは「ですよね」

八幡「なに? 時事ネタの勉強的な? 一色ってそんな意識高い系だったっけ」

いろは「ちがいますよ……あとそのダジャレは死ぬほど寒いです」

八幡「え?」

八幡(あ、『一色』と『意識』か……そんなつもりじゃなかったんですが……)

いろは「……」

いろは「寒くなっちゃったので……先輩があっためてください」

八幡「…………え、なんだって?」



26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 16:51:38.78 ID:CZ3E5ga70


いろは「で、ですから! 先輩のせいで寒くなったので! そのぶん先輩があっためてください!」

八幡「…………え、なんだって?」

いろは「あーもうなんで全く同じ反応なんですか!! ガチな難聴系なんですか!?」

八幡「いや聞こえちゃいるんだけど、温めるの意味がよくな」

いろは「っ!! そ、そこまで言わないとわかんないんですか先輩は」

八幡「分からんだろ普通…ストーブでも持ってくるか?」

いろは「ちがいます! だから、あのっ……」


いろは「もっと強く……ぎゅってしてください……」


八幡「…………」



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