魔女「お眠りなさい、安らかに――」 女騎士「くっ、やめろ……!」

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70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:20:44.38 ID:LgyhbV/T0
都民C「こ、この人、女騎士様だ。『銀顎』騎士団の、団長の……」ヒソヒソ

都民D「げ――……!?!?」



女騎士「……」ニコニコ



都民D「……これはどうも〜」

都民C「大変失礼しました〜……」

女騎士「うむ! 行列に待たされて苛立つのは分かるが、喧嘩はいかんぞ!」

都民C「は、はい……」

都民D「すみませんです、ほんと……」

女騎士「はっはっは!」ニコニコ

都民C(笑ってる……)

都民D(笑ってるけど怖ぇ……)
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:21:19.72 ID:LgyhbV/T0
都民C「……大戦中は、単騎で一個大隊を撃破したらしい……」ヒソヒソ

都民D「……敵国が、国家予算の1割をその首の懸賞金にあてたらしい……」ヒソヒソ

都民C「睨んだだけで熊と虎を倒したらしい……」ヒソヒソ

都民D「本気で剣を振ると海が割れるらしい……」ヒソヒソ



副団長「……」

副団長(尾ひれで空飛べそうなくらい、ウワサが一人歩きしてる……)



女騎士「それにしても、すごい行列だな……」

副団長「……ご存知、ありませんか?」

女騎士「うむ?」

副団長「あそこにある、有名な菓子屋の列ですよ。近頃、王都で大評判の」

女騎士「ほぉ……、知らなかったな」

副団長「王都の者なら誰でも知っているほどです。多分団長以外は」

女騎士「ならばこれで、王都で知らぬ者はいなくなったわけだな! 素晴らしいなぁ!」

副団長「……」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:22:37.38 ID:LgyhbV/T0
店員「あのぅ……」

女騎士「なんだ?」

店員「先ほどは、大変ありがとうございました」ペコリ

女騎士「はは、いやいや、大したことはしていない」

店員「いえ、本当に……。お礼に、こちらを」スッ

女騎士「ん?」

店員「うちのお店の、黄桃のケーキです。店長が、騎士様たちにお持ちしろと……」

女騎士「ははは、気づかいは無用だぞ! 騎士として、当たり前のことをしただけ――……」

店員「でも、いつもお世話になってますから!」

副団長「よろしいのでは? 市民からの支えあっての騎士団ですよ」

女騎士「ふむ……」

店員「あっ、副団長様も」スッ

副団長「恐縮です」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:23:06.55 ID:LgyhbV/T0
副団長「……そういえば、嫌いなんでしたっけ? 甘いの」

女騎士「や、嫌いじゃないけど。普段食べないだけで」

副団長「断るくらいなら、私の方でもらっちゃいますけど」

女騎士「んー……」

女騎士「……」

女騎士「…………」

女騎士「………………」

女騎士「いや、やっぱり頂こう」

店員「はいっ! これからも、王都をよろしくお願いしますねっ」

女騎士「もちろんだっ! はっはっはっは」




74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:23:37.97 ID:LgyhbV/T0

〜都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷〜







魔女「……」

魔女「……」

魔女「……」ポケー

魔女(……畑の棚も作った……)

魔女(……物置の床も張り直したし……)

魔女(……居間の掃除……は、今日2回したっけ)

魔女「……」

魔女「……」

魔女「……暇だわぁ」ポケー
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:24:23.31 ID:LgyhbV/T0
魔女「……」

魔女(……騎士さん)

魔女「……1、2、3、4――……」

魔女「……」

魔女(……やぁね)

魔女(彼女が眠れなくて、辛い方が嬉しいの、私は?)

魔女(違うでしょうに)

魔女「……」

魔女「絵本も渡したし……、しばらくはこない、かも――……」

魔女「その方がいいのよねぇ……」

魔女「……」

魔女「……」

魔女「……!」ピクッ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:25:07.43 ID:LgyhbV/T0





〜「蜘蛛の森」〜







女騎士「……〜♪」フンフーン

女騎士(ちょうど二人分だものな)

女騎士(菓子屋も気が利いているというか……)

女騎士(ふふふ、魔女のやつ、びっくりするかな?)

女騎士「……あ、いや」

女騎士「魔女の喜ぶ顔が見たい、とかではなく……」

女騎士「……お礼、そう、お礼だものな。感謝は大事だからな!」


女騎士「……」

女騎士(……何で言い訳してるんだ、私は……?)

女騎士「……」


女騎士「……ん」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:25:40.82 ID:LgyhbV/T0
女騎士「……」

女騎士(……右に折れた道を、そのまま進めば、魔女の屋敷……)

女騎士「……」

女騎士(けれど、左手に……)

女騎士(……よく見ると、道……? のような……)

女騎士「……」

女騎士「…………?」

女騎士(……気になる)

女騎士「……気になるな!」

女騎士「ちょっとだけ、行ってみようかな!」


ガサガサ

ガサ





78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:26:16.04 ID:LgyhbV/T0





ガサガサ


女騎士(……そういえば)

女騎士(前の戦争のときも、こんな森で戦ったことがあったな)

女騎士「……」ガサガサ

女騎士(……敵の影に怯えながら……)

女騎士(ふと、振り返れば)

女騎士(歩いてきた足取りも、見当たらないほど深い森……)

女騎士「……」クルッ

女騎士(……歩いてきた……足取りも)

女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士(見当、たら、ない――……)

女騎士「……」

女騎士「……アレ?」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:27:25.93 ID:LgyhbV/T0





ガサガサ


女騎士「……むぅ」

女騎士「いかんな、こっちだったか……?」

女騎士「……」ガサガサ

女騎士「違うか」

女騎士「……」ガサゴソ

女騎士「えーと? 確かこっち……」


ガシッ


女騎士「だ……っ、れ……」

魔女「ハァッ……、はぁ――はぁ……っ」

女騎士「ま、魔女……?」

魔女「まに……、まひ、はひ……ハァ」ハァハァ

女騎士「お、落ち着け。深呼吸、深呼吸」

魔女「ハヒー……ハヒー……」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:28:15.62 ID:LgyhbV/T0
魔女「ふぅ、はぁ、はぁぁ……、よか……ったぁぁ」

女騎士「魔女……」

魔女「騎士さぁん……もう、馬鹿ぁ」

女騎士「え、なに? 何かしたか私?」

魔女「うぅぅ……っ」ウルウル

女騎士「あぁっ! すまん! 悪かったから! だから泣かないで!」

魔女「こっちはぁ……、蜘蛛の森の、一番奥深く……、人の子を拒む禁断の地……」ウルウル

女騎士「な、なんだ? ま、魔女の聖地な……?」

魔女「毒蜘蛛のね、繁殖地なの」

女騎士「ヒッ」

魔女「楽に死ぬやつ」

女騎士「ヒィッ」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/16(水) 21:28:59.27 ID:LgyhbV/T0

今日はここまでです
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/16(水) 21:33:30.64 ID:LgyhbV/T0
アッ誤字ッ!
>>69
仕方ねぇじゃねえだろ!

仕方ねえだろ!

です
ごめんなさいです
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/16(水) 21:44:14.30 ID:EQPJfPpp0
おつおつ。さて寝るか
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/16(水) 22:07:49.90 ID:hncwhN/H0
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:00:16.70 ID:FgMnawTA0






女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「……」テクテク

魔女「……」テクテク


ギュッ


女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「あのう、魔女さん……?」

魔女「……何かしらぁ?」テクテク

女騎士「あの、いや、手……」

魔女「手?」


ギュッ


女騎士「つ、繋いでないと、駄目?」

魔女「駄目よ。はぐれたらどうするの」

女騎士「……むぅ、またそうやって、子ども扱いを……」

魔女「あら」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:01:07.43 ID:FgMnawTA0
魔女「知らない道にどんどん入っていって、迷子になったのは、どこの誰かしら?」

女騎士「うぐっ……」

魔女「来た道が分からなくなったのに、ためらいもなく更に進んでいったのは、どこの誰だったかしらぁ?」

女騎士「うぅぅ……っ、わ、私です……」

魔女「小さな子どもだって、迷ったと思ったら、いったんその場に立ち止まるんじゃないかしら? 違う?」

女騎士「おっしゃる通りですぅ……」

魔女「……分かったら、ほら、もっとちゃんと手を掴んでなさい!」

女騎士「はぁい……」ギュ

魔女「まったく……」

女騎士(怒ってる……)

魔女「まったくもう……」

女騎士(怒ってらっしゃる……)

魔女「……」プンプン
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:01:36.53 ID:FgMnawTA0

〜魔女の屋敷〜







魔女「おい――……」

女騎士「……」

魔女「……――っしぃぃ〜!」パァァ

女騎士「美味しいか」

魔女「美味しいわ! すごく美味しいわ!」ハムハム

女騎士「……」

女騎士(喜んでる……)

魔女「んん〜〜〜♪」

女騎士(喜んでらっしゃる……)

魔女「ありがとうね、騎士さん!」

女騎士「どういたしまして」

女騎士(怒ったり、笑ったり……)
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:02:16.85 ID:FgMnawTA0
女騎士(……結構、感情が表に出やすいというか……)

女騎士(……初めて会った時は)

女騎士(物静かで、落ち着いていて――……)

女騎士(まさしく『魔女』の雰囲気、なんて思ったけど……)



女騎士「……」ジー

魔女「はぁ、おいひい……」ウットリ

女騎士(……魔女とは……?)

女騎士「……」ジー

魔女「……? 私の顔に、何かついてる?」

女騎士「あ、すまん、別に何も…………いや! ついてる! クリームすっごいついてる!」

魔女「えっ、やだぁ……」ヌグイヌグイ

女騎士「はは……」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:03:17.56 ID:FgMnawTA0
女騎士(こういうところ見ると……)

女騎士(全然、魔女っぽくないというか)

女騎士(……あ、でも)



女騎士「そういえば、魔女」

魔女「何かしらぁ?」

女騎士「お前、魔法なんて使えないって言ってたけど……、やっぱり使えるじゃないか、魔法」

魔女「?」

女騎士「魔法だろ? 私が森で迷ってるって分かったのも、私の居場所を探り当てたのも」

魔女「あぁ、あれは……うぅん……、魔法を使った、ってわけじゃないんだけどねぇ……」

女騎士「またまた」

魔女「本当よう。しいて言うなら、『森』の魔法かしらね」

女騎士「森の?」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:03:45.70 ID:FgMnawTA0
魔女「そう、森が魔法を使って、騎士さんの居るところを教えてくれたの」

女騎士「…………」

魔女「『メルヘンだぁ』って顔してるわね……」

女騎士「だってぇ」

魔女「本当だってば。人に、みんな不思議な、神秘的な力があるように」

女騎士「……」

魔女「森にだって、隠された神秘がある」

女騎士「……」

魔女「特にここは。『蜘蛛の森』はね」ハムハム

女騎士「むぅ……」

魔女「私は、それを信じてるし、感じてる。だから分かる」

女騎士「……それが魔女?」

魔女「それが魔女よ」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:04:11.14 ID:FgMnawTA0
女騎士「じゃあ、お前本人は……」

魔女「ん?」

女騎士「何か、そういう、魔女らしいことはできないのか?」

魔女「ん〜……」

女騎士「……」

魔女「……おいしいお茄子が作れるわ……」

女騎士「うん、あの、そういうのじゃなくて」

魔女「ん〜〜〜〜……」

女騎士「そもそも茄子、魔女らしさか……?」

魔女「……占い、とかならできるけど」

女騎士「おぉ」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:05:31.24 ID:FgMnawTA0






魔女「……――そう。そうやって五角形にカードを並べて」

女騎士「……」

魔女「時計回りに、愛……知性……知識……」

女騎士「……」

魔女「法、力……、それぞれ対応する絵柄、これが今の貴方……」ペラリ

女騎士「……」ドキドキ

魔女「さぁ、ペンタグラムの中央に、引いたカードを置いて」

女騎士「……」スッ

魔女「このカードが……、貴方の未来を指し示――……」ペラリ

女騎士「……」ドキドキ

魔女「……」

女騎士「……?」

魔女「……」

女騎士「……な、なぁ……、結果は?」

魔女「……御守り」

女騎士「……え?」

魔女「……お、御守りも作れるのよ、私! とってもよく効くやつ!」

女騎士「あの、結果……」

魔女「せっかくだから、騎士さんにも作ってあげるわねぇ! うーんと効くのを! おっきいのを!」

女騎士「ねぇ、だからどうだったのって! ねぇって! ちょっとぉ!」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:06:08.06 ID:FgMnawTA0






女騎士「さて……」

魔女「あ、お風呂用意するわね」イソイソ

女騎士「あ……、あぁ、いやいや、いいんだ」

魔女「……?」

女騎士「大丈夫、今日は別に、寝かせてもらうつもりじゃなくて」

魔女「あら、そうなの?」

女騎士「あぁ……、最近すこぶる、調子が良くて。十分睡眠がとれていてな」

魔女「…………それは、良かったわ」

女騎士「うん、これも魔女のおかげだ」

魔女「そんな、私は別に何も……って」

女騎士「うん?」

魔女「じゃあ、今日はどうして森に?」

女騎士「それは……、いや、何だ。世話になった、お礼に……というか」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:07:01.82 ID:FgMnawTA0
魔女「お礼に、ケーキを?」

女騎士「あ、あぁ」

魔女「そう……」

女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「……、そ、それと……」

魔女「それと?」

女騎士「……魔女に、会いに……」

魔女「……!」

女騎士「ふ、深い理由があってのことでは、ないんだがな! ただ、いつもすぐ寝てしまうから、たまには、と――……」

魔女「そうなのね、騎士さんは私に会いに来てくれたのねっ!」

女騎士「……め、迷惑だったろうか……」

魔女「とんでもない! とっても嬉しいわ! 美味しいケーキよりも、ずっと!」

女騎士「そ……そうか! ならば良かった!」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:09:08.82 ID:FgMnawTA0
魔女「うふふ……、こういう風に、誰かとお喋りするの、ずっとやってみたかったのよねぇ……」

女騎士「あ……」


女騎士(……この森に)

女騎士(足を踏み入れる者は、滅多にいなくて……)


魔女「……あっ、もちろんケーキも、すごい嬉しかったし、美味しかったわよ。ホント」

女騎士「……」



女騎士(魔女は……)

女騎士(この森の、この広い屋敷で、いつもひとりで……)

女騎士(もしも……彼女が王都にいたら……)

女騎士(きっと毎日、怒ったり、笑ったり、忙しくて……)

女騎士(けれど彼女は、この森でいつも……)



女騎士「……あ、あの」

魔女「?」

女騎士「ま……また来ても、いいだろうか」

魔女「……!」

女騎士「その……ベッドを借りるのではなく……、お前と……ええと」

魔女「もちろんよ、騎士さん」

女騎士「あ……」

魔女「楽しみに待ってるわ、また来てくれるのを」ニコ

女騎士「あぁ……、また来るよ。必ず」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:09:45.58 ID:FgMnawTA0
今日はここまでです

つづきます
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 00:13:45.57 ID:9zrVsz/3O
続き楽しみ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 16:10:28.89 ID:Iw2IIQMD0
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:41:17.05 ID:FqTckVnj0

〜夜〜






〜〜〜〜


女騎士『あぁ……、また来るよ。きっと、すぐ』


〜〜〜〜


魔女「ふふ……」

魔女「んふふ……♪」


魔女(楽しかったぁ……)

魔女(一緒にお菓子を食べて、いっぱいおしゃべりをして……)

魔女(ああいうの、久しぶりだったかも……)


魔女「……♪」


魔女(やっぱり独りぼっちよりも……)

魔女(誰かと一緒に過ごすのは、楽しいわ)

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:42:25.96 ID:FqTckVnj0

魔女「……」

魔女「……?」

魔女「……??」

魔女「あ……」


魔女(そうじゃない)

魔女(そうじゃないのね、私……)

魔女(騎士さん)

魔女(彼女が一緒だったから、きっと……)

魔女「あぁ、ふふ、ふふふ」

魔女「今度はいつ来てくれるかしら、騎士さん……」


ポフッ


魔女「ふァ……」

魔女「……おやすみなさい、騎士さん」




101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:42:55.24 ID:FqTckVnj0

〜数日後・王都 王府庁舎内〜







役人「……」

女騎士「……」

役人「……」

女騎士「……ええと」

役人「ヒィ!」ビクー

女騎士「……ひいって」

役人「ごっ、ごめんなさい! ごめんなさい! 使えないヤツで本当ごめんなさい!」

女騎士「言ってない言ってない! まだ何も言ってないから!」

役人「ワタシ……クビでしょうか……」

女騎士「大丈夫だから! 大丈夫だからしっかりして!」





102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:43:26.85 ID:FqTckVnj0

女騎士「まぁ、それじゃあ、やっぱり……」

役人「はい……、騎士団の予算の、追加計上の申請は、今回も却下されました……」

女騎士「……そうか」

役人「お役に立てず、申し訳ありませんです……」

女騎士「いや、君の責任ではないだろう。気を病まないでほしい」

役人「クビですよね……」

女騎士「大丈夫だから! というか、人の話を聞いてくれ!」

役人「……うぅ……、以前であれば、問題なく通ったはずの申請内容なのですが」

女騎士「うむぅ……、何か不備があったのだろうか……」

役人「……、あの……、ここだけの、話なのですが」

女騎士「うん?」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:44:03.85 ID:FqTckVnj0

役人「王府の上層部は、現存の騎士団の解体を狙ってるみたいなんです……」

女騎士「えっ……」

役人「騎士団を潰して、自分たちが裁量を持つ王立軍に吸収しようと考えてるらしく……」

女騎士「うぇぇ……」

役人「中央の会議では、かなり露骨にそういった話題が出ているようです」

女騎士「それはぁー……、えぇー、そっかぁー、どうしよー……」

役人「ごめんなさい……ワタシがこんな無能でなければ、もっとお役に立てたはずなのに……」

女騎士「いやいや! 助かってるぞ! 君にはいつも世話になってるからな!」

役人「自主退職……」

女騎士「大丈夫だって! いやもう、聞いて! 本当に!」ガシッ

役人「ヒャっ」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:44:52.17 ID:FqTckVnj0

女騎士「大丈夫だから。君には心から感謝してるよ」

役人「はっ……」ドキリ

女騎士「いつも君が、私たちのために尽力してくれているおかげで、私たちはやっていけてるんだ」

役人「は……あ……」ドキドキ

女騎士「だからこそ、もっと自分に自信を持ってほしい。なっ!」

役人「ハヒ……」

女騎士「うむ! 人間、前向きなのが何よりだぞ!」ポンポン

役人「ハァァ……」ポヤー

女騎士「はーっはっはっは」



女騎士(……とはいえ)

女騎士(中央からの支援があてにならないとなると……、台所事情はかなり苦しいな……)

女騎士(仕方あるまい……)
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:45:44.56 ID:FqTckVnj0





〜王都・高級住宅街〜







貴族「なるほど、それでパトロン探しを……」

女騎士「ええ、お恥ずかしい話ですが」

貴族「いや、それほどの苦境ならば、当然の行動でしょう。心中、お察しいたします」

女騎士「なにとぞ、お力添えを――……」

貴族「ぜひとも、……と言いたいところなのですが」

女騎士「……」

貴族「近頃は、私の会社に金を出す出資者どもも、色々と文句のつけ方を覚えてしまって」

女騎士「……」

貴族「回収の見込めない投資に金を出すことは、とても認められないでしょう……」

女騎士「そう、ですか……」

貴族「力になれず、申し訳ない……」

女騎士「いえ、お話を聞いてくださっただけでも、ありがたい」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:46:19.73 ID:FqTckVnj0
貴族「戦時中であれば、じゃぶじゃぶ出せたのですけどね! お金!」

女騎士「……当時はさすがに、やりすぎだったかと」

貴族「え? よくなかったですか? 純銀のクワガタ像とか、『オオクワガタ感謝の日』イベント」

女騎士「やりすぎだったかと!」

貴族「はぁ……、またやりたいなぁ……。湯水のように金を遣いてぇ……。有り金まるごとぶちこみてぇ……」

女騎士「お、お気を確かに……」

貴族「そうだ、女騎士さん」

女騎士「はい?」

貴族「私たちの、専属になりませんか?」

女騎士「へ?」

貴族「私設騎士団というやつですよ。会社の警備や要人の警護、そういった仕事を、専任して行う騎士組織です」

女騎士「……」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:48:39.11 ID:FqTckVnj0
女騎士(……そういえば、聞いたことがある)

女騎士(解散した騎士団の中には……)

女騎士(貴族や商社に、組織丸ごと引き受けられたところもあると……)



女騎士「……」

貴族「高名な『銀顎』騎士団が引き受けてくださるのであれば、投資家たちも首を横には振りますまい」

女騎士「……」

貴族「いかがです?」

女騎士「……勿体ないお話です。ですが……」

貴族「……」

女騎士「やはり我らは、国と国の神と……」

貴族「……」

女騎士「そして、すべての民に仕える騎士でありたい……」

貴族「……」

女騎士「この期に及んで、おこがましい話ですが……」

貴族「……いや、実に貴方らしいと思いますよ」

女騎士「……」




108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:49:35.08 ID:FqTckVnj0

〜夜・女騎士宅〜







女騎士「ん〜〜〜〜」カリカリカリ



女騎士(任務以外の時間は、できる限り協力者探しにあてんとな!)

女騎士(残った仕事は、それが終わってから!)



女騎士「……」カリカリ

女騎士「……」カリカリカリカリ

女騎士「……ふぅ」

女騎士「よし、今日はこれくらいだな!」

女騎士「ぐわ……、もうこんな時間に……」

女騎士「……ま、ちょっとは眠れるか」


ポフ


女騎士「父様、母様、おやすみなさい」

女騎士「……」

女騎士「……それから、魔女も」

女騎士「おやすみ……」

女騎士「……」

女騎士「………………むかしむかし、あるとこr」スヤァ
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:50:34.98 ID:FqTckVnj0





〜数日後〜


〜都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷〜







女騎士「ふァ……」

魔女「あら」

女騎士「ぁふ……。あ、すまん……」

魔女「いや、いいのだけど……、久しぶりに眠そうね」

女騎士「……ああ、ここ最近、ちょっとな」

魔女「また、眠れなくなっちゃった?」

女騎士「いやぁ、そういうわけじゃないんだ。ただ……」

魔女「ただ?」

女騎士「忙しくてな。眠る暇もないくらいだ」ファァ

魔女「無理したら駄目よ?」

女騎士「……いや、今が私たちの瀬戸際なんだ。多少無理してでも、できる限りのことはしないと」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:51:04.28 ID:FqTckVnj0
魔女「もう……、あまり心配させないで?」

女騎士「おっ、魔女は私のこと、心配してくれるのか! ははは!」

魔女「当たり前でしょう? 騎士さんの身体に何かあったらと思うと……、もう……」

女騎士「……」


女騎士(……な、なんだろう)

女騎士(恥ずかしいような……、こそばゆいような……)


女騎士「……きょ、極力、無理はしないようにするよ」

魔女「……はぁ。心配だわ……。ちょっと、休んでいったら?」

女騎士「ベッドでか?」

魔女「えぇ」

女騎士「むぅ……、すまんが、あまりゆっくりしていられなくてな。すぐ、行かなければならない」

魔女「そうなのぉ……。残念」

女騎士「残念なのか……」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/19(土) 21:54:00.82 ID:FqTckVnj0
今日はここまでです
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/19(土) 21:55:52.74 ID:VGrUbckl0
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 14:41:23.74 ID:8q9CQ1wy0
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:16:14.38 ID:TlLQuemd0
魔女「あぁ……どうしましょう。適度な休憩とか、絶対取ってないわ、この子……」

女騎士「取ってる! 取ってるから!」

魔女「……」

女騎士「ええと……、い、今とか」

魔女「……」

女騎士「……」

魔女「やっぱり、不安ね……」

女騎士「うぅ……」

魔女「騎士さん、ちょっと寝室まで、付き合ってくれるかしらぁ?」

女騎士「や、本当、今日は……」

魔女「寝て行けってわけじゃないわよぉ。……ただ、ちょっとの時間でいいから」

女騎士「……?」

魔女「……スッキリして、リラックスできること、してあげる」

女騎士「……??」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:16:49.94 ID:TlLQuemd0

〜寝室〜







魔女「さ、どうぞ」

女騎士「……あ、あぁ?」


女騎士(……ちょっとの時間……)

女騎士(スッキリして、リラックス……?)


女騎士「……?」

女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士「……!?!?」ハッ

魔女「さあ、騎士さん……」

女騎士「まっ……! ちょ……魔女! そ、そういうのはだな!」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:17:22.16 ID:TlLQuemd0
魔女「……?」ポフ

女騎士「ま、まだ早いというか、も、もうちょっと、私はだなぁ……!!」

魔女「どうしたの? さ、ここ、どうぞ?」ポンポン

女騎士「……?」

魔女「ど、う、ぞっ」ポンポンポンポン

女騎士「膝枕?」

魔女「ふふふ……、スッキリリラックスと言ったら、これよねぇ……!」シャキ

女騎士「耳かき棒……?」






117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:17:54.77 ID:TlLQuemd0


コショコショ


魔女「……痛くなぁい?」

女騎士「あぁ……」

魔女「……こうしていれば」コショコショ

女騎士「……」

魔女「無理やりでも、横になるし」

女騎士「……」

魔女「体の力も抜かないといけないから、リラックスできるでしょう?」

女騎士「そ、そうだな……」

魔女「……〜♪」

女騎士「気持ちいいよ……」

魔女「でしょ〜♪」コショコショ

118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:18:20.47 ID:TlLQuemd0
魔女「さ、反対側」

女騎士「はぁい……」

魔女「……」コショコショ

女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「……」

魔女「……私」

女騎士「……」

魔女「……一生懸命、がんばってる騎士さんは、好きよ」

女騎士「……」ピク

魔女「動かないの。……でもねぇ」

女騎士「……」

魔女「……やっぱり、無理をして辛そうなところは、見たくないから……」

女騎士「……あぁ」

魔女「私にできることがあったら、何でも言ってほしいわ」

女騎士「……あぁ」

魔女「……〜♪」コショコショ

女騎士「ありがとう、魔女……」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:18:55.12 ID:TlLQuemd0





〜数日後〜


〜都の中心部、騎士団詰所〜







女騎士「えっ、じゃあ……!」

司祭「はい、今年の『王都祭』の警備は、王立軍に依頼することになりまして……」

女騎士「それは……」

司祭「各騎士団が王都中を警備するのが、この国の伝統でしたが……」

女騎士「……」

司祭「王府から、じきじきに依頼があり、教会もそれに押し切られた格好で」

女騎士「王府が……」

司祭「我々も、心苦しい限りです」

女騎士「……いえ、こればかりは仕方のない話でしょう」

司祭「お詫びに、どうか貴方と、貴方の騎士団のために、祈りを捧げさせていただけませんでしょうか?」

女騎士「い、いやいや、そこまでしていただかなくても……」

司祭「いいえ! ぜひとも! 祈らせていただきたい! 2時間弱のフルバージョンで祈らせていただきたい!!」

女騎士「本当に! 本当に結構ですから!」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:19:23.63 ID:TlLQuemd0





女騎士(『王都祭』の任務もか……)

女騎士(王都の大きな仕事は……、どんどん王立軍に流れていくな)


女騎士「むぅぅ……」


女騎士(……いや、腐っていても仕方ない!)

女騎士(今は、私たちの出来ることを――……)


副団長「……団長殿」

女騎士「ん? あぁ……どうした」

副団長「……ハァ」

女騎士「なんだなんだ! 騎士が暗い顔をするな!」

副団長「……団員の一人から、退団届が出されています」

女騎士「え……っ」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:20:09.31 ID:TlLQuemd0





〜夜・女騎士宅〜







女騎士「むぅ……」カリカリ

女騎士「……」パサッ


女騎士(……この事務処理が済んだら)

女騎士(新しい任務の提案を作って……)

女騎士(……新しい団員募集の呼びかけも準備して……)


女騎士「……」カリカリ

女騎士「むむむむむ……っ」


女騎士(魔女にはああ言ったが)

女騎士(休んでいる暇などないなっ!)


女騎士「……」カリ

女騎士「……ふぅ」パサリ


女騎士(私ががんばらなければ……)

女騎士(がんばって、がんばって……)

女騎士(守るんだ、騎士団を――……)



女騎士「……」カリカリ

女騎士「…………」カリカリカリカリ





122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:21:10.64 ID:TlLQuemd0

〜数日後〜


〜都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷〜







魔女「……――それから、火防の護符と、魔女織の織物、蜘蛛避けのお香はたっぷりと、ね」

商人「はい! では、確かに……」

魔女「いつもどうも」

商人「いやぁ、こちらこそ! 魔女さんから仕入れた物は、いつも好評ですからな!」

魔女「それはよかったわぁ」

商人「どれをとっても、見た目も美しく、効果は天下一品!」

魔女「うふふ」

商人「おまけに当人はこんなに妖艶な――……」

魔女「あらぁ、どういう意味かしら?」

商人「あっ! いえいえ、今のは決して、下心があって言ったわけではありませんぞ! なは、なははは!」

魔女「あらあら……」


魔女(ようえん……、ヨウエン……)

魔女(本当にどういう意味かしら)

魔女(……あとで辞書を引きましょう)
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:21:40.08 ID:TlLQuemd0
商人「では、ワタクシはこれで……」

魔女「またお願いしますわ」


キィ


魔女「あら、またお客様――……」

女騎士「……魔女ぉ〜……」

魔女「あ」

商人「……おや」

女騎士「……ハッ」サッ

商人「……?」

魔女「お気をつけて、商人さん」

商人「え、ええ……、それでは」

女騎士「……」コソコソ

商人「……? いや、他人の空似か……」スタスタ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:22:23.09 ID:TlLQuemd0
女騎士「ふぅ……」

魔女「いらっしゃい、騎士さん」

女騎士「あぁ。……気づかれたかな?」

魔女「ん〜……、大丈夫だと思うけど……。だって……」

女騎士「え?」

魔女「クマ、すごいし。ちょっと人相、変わっちゃってる」

女騎士「えぇ……やだぁ……、やめて本当……」

魔女「だって、ほら、見せて。ほら……うわぁ」グイー

女騎士「じっくり見るなぁぁ……」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 22:23:23.47 ID:TlLQuemd0
今日はここまでです

魔女は学校とか行ってないので、知らない言葉が結構多い
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 01:31:49.43 ID:1HCyBEIX0
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 05:38:42.53 ID:sRRk7bLbo
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:24:34.79 ID:wiQBcDZQ0





コショ コショ


女騎士「……――えーと、つまり、妖しいくらい美しいって感じでだな……」

魔女「怪しいの? 私そんな不審かしら……」

女騎士「いや、そうじゃなくてだな……、なんて言うんだろう? 神秘的とか、謎めいた雰囲気とか、そういう意味で……」

魔女「あら、じゃあ私、褒められてたのね」

女騎士「んー……まぁ……」

魔女「そう……んふふ、ヨウエン、妖艶ねぇ……」

女騎士「……」


コショコショ


魔女「……はい、おしまい」

女騎士「……ちょっと、短いぞ」

魔女「ついこの間、やったばかりでしょう? あんまり掻きすぎると、痛くなっちゃうから」

女騎士「そっかぁ……」

魔女「ふふ、そのまま楽にしてていいわよ」ナデナデ

女騎士「あ……」

魔女「んふふ……」ナデナデ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:25:13.09 ID:wiQBcDZQ0

女騎士「……あの商人は」

魔女「え?」

女騎士「よく来るんだ……」

魔女「そうねぇ……、お客様の中では、一番よく来るかしら。いつも私の作るもの、いっぱい買っていってくれてね」

女騎士「ふーん」

魔女「蜘蛛避けのお香も、織物も、どれも素晴らしいっ、なんて褒めてくれて……」

女騎士「ふぅーん……」

魔女「今度、織物上手にできたら、騎士さんにも見せてあげるわね」

女騎士「……」

魔女「……♪」ナデナデ

女騎士「……上機嫌だな」

魔女「あら、そう?」

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:25:44.41 ID:wiQBcDZQ0

女騎士「あの商人に、褒められたからだろ」

魔女「えぇ?」

女騎士「魔女さんは、妖艶だもんな―……」

魔女「あら……」ナデナデ

女騎士「……」

魔女「妬いちゃった?」

女騎士「ちが……っ」ガバ

魔女「だぁめ、じっとしてて……」ナデナデ

女騎士「……、……違うからな」ストン

魔女「クスクス……、別に褒められたくらいで、舞い上がったりしないわよ、私は」

女騎士「……」

魔女「嬉しくなるんだとしたら――……」

女騎士「……」

魔女「……ふふっ」

女騎士「なんだよぉ……」

魔女「まぁ、いいじゃない」ナデナデ

女騎士「むぅ……」

魔女「……〜♪」ナデナデ
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:26:17.64 ID:wiQBcDZQ0

女騎士「……魔女の手、気持ちいいな……」

魔女「そう、よかったわ」

女騎士「はぁ……、ずっとこうしてたい」

魔女「いいわよう」

女騎士「よくないんだよ……」

魔女「よくないの?」

女騎士「あぁ……、行かなくちゃ。起きて、街へ行って……」

魔女「……」

女騎士「騎士団のために、私がやるべきことを、やらねば……」

魔女「……無理してるの、自分でも分かるでしょう?」

女騎士「分かるよ。でも……私は騎士だから」

魔女「……」

132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:26:56.73 ID:wiQBcDZQ0
女騎士「騎士だから、無理を押してだって、やるべきときは、やらなければいけないんだ」

魔女「……」

女騎士「私は、騎士なんだ……。騎士としてしか、生きられないんだ……」

魔女「……」

女騎士「だから……」

魔女「……」

女騎士「私が、がんばらなければ……、がんばって、がんばって……」

魔女「……」

女騎士「がんばって守るんだ……。騎士団を。みんなの居場所を、私の居場所を」

魔女「……騎士さん」

女騎士「騎士としての、私を」

魔女「……」

女騎士「……」

魔女「……ふぅ」ナデナデ


魔女(……固い気持ちで、前を向いて)

魔女(……がんばってる人を、引き留める言葉って……)


魔女「……」ナデナデ


魔女(なかなか、浮かばないものねぇ……)




133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:27:28.19 ID:wiQBcDZQ0





〜数日後〜


〜王都・市街〜


女騎士「……――はい、いえ、こちらこそ」

女騎士「ええ、お心遣い、感謝いたします。……では」ペコリ

女騎士「……」

女騎士「……はぁ」


女騎士(……ここも、協力を断られてしまったか)

女騎士(これで何連続か……)


女騎士「……」フラ

女騎士「…………っと」


女騎士(さすがに……)

女騎士(キツい……か……)


女騎士「……はぁ」


「……――殿、女騎士殿!」


女騎士「ん……」

老騎士「女騎士殿! おお、奇遇であるな。こんなところで」

女騎士「老騎士殿……、お元気でしたでしょうか?」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:28:01.75 ID:wiQBcDZQ0
老騎士「当然である。貴公も……、と言いたいところであるが……」

女騎士「……」

老騎士「……やつれたであるな」

女騎士「……なに、かつての戦の、末期の頃に比べれば……」

老騎士「顔色だけで言えば、あの頃より悪そうであるが……、いや、淑女に向かって失礼な言い分であった。面目ない」

女騎士「ははは……」

老騎士「少し、休んでいかれませい。……折り入って、貴公に話しておきたいこともある」

女騎士「話……?」

老騎士「ううむ……、あぁ、実は……」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:28:46.73 ID:wiQBcDZQ0





女騎士「……」

老騎士「……ふぅ」

女騎士「……では」

老騎士「あぁ、我が『水晶羽のトンボ』騎士団も、解散である」

女騎士「納得、いきません……」

老騎士「……であるか」

女騎士「確かに現状は厳しい! ですが、『トンボ』騎士団は規模でも、質でも、十分にやっていけるだけの力があるはずだ!」

老騎士「……」

女騎士「それなのにっ、どうして……っ!」

老騎士「おっしゃる通りであるな」

女騎士「……」

老騎士「楽な道に逃げたと、そう見られても仕方ないのである……」

女騎士「そうは、言っていません……!」

老騎士「いや、いいや……、儂自身、そのように感じている」

女騎士「……」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:29:15.63 ID:wiQBcDZQ0
老騎士「……しかしな、女騎士殿……」

女騎士「……」

老騎士「儂はもう、老いすぎた……。あと何年……いや、何か月と、この世にあるかも分からぬ身だ」

女騎士「そんな……」

老騎士「……『老兵は死なず、ただ去り行くのみ』……避けられぬ死を前にして、去り時を誤れば」

女騎士「……」

老騎士「結局は、後に残された者が、苦しむことになろう……」

女騎士「……」

老騎士「……というか、儂が後釜育ててなかっただけなんであるがな」

女騎士「……老騎士殿」

老騎士「……がっはっはっは!」
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:29:51.78 ID:wiQBcDZQ0
老騎士「……まあ、そんなこんなでな、団員どもに相談して決めたのである」

女騎士「しかし……」

老騎士「幸い、我が団を引き取ってくれる商社がいくつか見つかってな。みな……」

女騎士「……」

老騎士「バラバラ、には……、なってしまうで、あるがな」

女騎士「……」

老騎士「……失礼」

女騎士「お察し、いたします」

老騎士「いや、なに。いずれ儂の中でも、折り合いのつく時が来るのである」

女騎士「折り合い……」

老騎士「貴公には、以前話したことがあろう……。時が解決するのに、身を任せる」

女騎士「……」

老騎士「年寄りの処世術ではなく、ひとつの真理として」

女騎士「……」

老騎士「そういうことも、あるのだ……」

女騎士「……老騎士殿」

老騎士「……そう……、善かれ、悪しかれな」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:30:23.40 ID:wiQBcDZQ0





〜騎士団詰所〜


女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士(まさか……、老騎士殿のところまで……)


女騎士「……」


女騎士(無理なのか……)

女騎士(やはり、もう……)

女騎士(逆らえない、あらがえない……)

女騎士(流れの中で……、騎士は……、騎士団は……)

女騎士(私は……)



女騎士「……う」

女騎士「うぅぅ……」


女騎士(……まだだ)

女騎士(まだ……やれることはあるはず)

女騎士(私が……、私ががんばらなければ、やらなければ……)


副団長「団長殿」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:30:55.44 ID:wiQBcDZQ0
副団長「……団長殿?」

女騎士「……あぁ」

副団長「大丈夫ですか?」

女騎士「……、……すまんな、大丈夫だ」

副団長「……」

女騎士「何か、話だったか?」

副団長「……退団希望者が一名、来ています」

女騎士「……」フラ

副団長「団長殿っ」

女騎士「……だ」

副団長「……」

女騎士「…………大丈夫だ、通してくれ」

副団長「……」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:31:49.44 ID:wiQBcDZQ0





騎士C「……」

女騎士「そぉーか、そうか! 嫁さんの実家は、糸の貿易商か!」

騎士C「は、はい……」

女騎士「ん? ということは、なんだ? お前が跡取りとかになっちゃうわけか!?」

騎士C「えぇ、まぁ……」

女騎士「はっはっはっ! それはすごい! 未来の社長殿だなっ!」

騎士C「……いやぁ」

女騎士「ん〜、しかしあれだぞ、経営というやつは中々大変だぞ? お前のような無骨で無愛想な男に、果たして務まるか……」

騎士C「……」

女騎士「なんてな! お前なら心配ないさ! あっはっは――……」

騎士C「……本当は」

女騎士「ん?」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:32:21.66 ID:wiQBcDZQ0
騎士C「……本当は、オレ、騎士を続けるつもりだったんです」

女騎士「……」

騎士C「けれど、向こうの家から……」

女騎士「……」

騎士C「騎士の仕事に、この先があるのかと……」

女騎士「……」

騎士C「……今の世の中、騎士の名誉が何になる、って……」

女騎士「お前……」

騎士C「……オレは」

女騎士「……」

騎士C「……なにも、言い返せなかった」

女騎士「……」

騎士C「オレ、騎士失格なんです」

女騎士「……馬鹿者」

騎士C「……」

女騎士「誰が何と言おうと、お前は立派な、我が団自慢の騎士だ」

騎士C「団長……」

女騎士「胸を張れ」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:32:51.36 ID:wiQBcDZQ0





副団長「……――いかがでした」

女騎士「ああ、話は済んだぞ。副団長、彼の退役手続きを頼む」

副団長「……、……はい」

女騎士「退役金もたっぷり弾んでやれ! それから……」

副団長「……」

女騎士「それから――……」

副団長「……」

女騎士「……すまん、外してくれ」

副団長「……団長殿」

女騎士「……」

副団長「……失礼します」

女騎士「……」



パタン





143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/21(月) 23:33:27.39 ID:wiQBcDZQ0





女騎士「……」



――去り時を誤れば――

――結局は、後に残された者が、苦しむことになろう……――



――今の世の中、騎士の名誉が何になる、って――



女騎士「……」

女騎士「う……」



女騎士(……騎士団を、生かし続けることで……)

女騎士(色々なものにあらがって、歯向かい続けることで……)

女騎士(私は、何かを見誤ってしまって、いるのか……?)


女騎士「う、ぅ……」


女騎士(私の居場所――)

女騎士(私の騎士道――)

女騎士(私の……人生――)


女騎士「う、ぅ、ぅぅぅ……」



女騎士(もう……)

女騎士(もう、限界だ……)


女騎士「…………魔女…………」


144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/21(月) 23:33:59.52 ID:wiQBcDZQ0
今日はここまでです
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 23:46:44.13 ID:DMWk3hhMo

世知辛いなぁ
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/22(火) 05:01:03.81 ID:qQ0m9SMFo
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/22(火) 08:23:28.08 ID:frr1pYzd0
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:14:31.20 ID:3mTrz7e70





女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士「……」





149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:15:18.60 ID:3mTrz7e70





女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士「………………」





150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:15:48.06 ID:3mTrz7e70





女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士(……ん)

女騎士(……あれ)

女騎士(…………なんだっけ?)


女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士(……私、何をしてたんだったっけ?)

女騎士(……えっと)





151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:16:16.02 ID:3mTrz7e70





女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士(……忘れた)

女騎士(……忘れたけど、まぁ……)

女騎士(いいや……)


女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士(……何だか、暖かいし、柔らかいし)

女騎士(……すべすべで、いい匂いするし……)

女騎士(……ここにいれるなら、どうでも……)

女騎士(……ここに……)


女騎士「……」

女騎士「……」





152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:16:46.88 ID:3mTrz7e70





女騎士「……」

女騎士「……」



女騎士(……ここ……)

女騎士(……ここは……)



女騎士「……」

女騎士「……」



女騎士(ここはどこだ?)



女騎士「……っ!?」ガバッ


魔女「あら、もう起きちゃったの?」

女騎士「えっ、えっ……?」

魔女「さっき寝付いたばかりじゃないのぉ」ヨシヨシ

女騎士「えぇぇ……?」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:17:22.05 ID:3mTrz7e70





〜都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷〜








魔女「びっくりしたわよぉ、こんな夜更けにフラっとあらわれて……。一瞬、幽霊かと思っちゃったわ」

女騎士「……」


女騎士(……全然覚えていない……)


女騎士「無理がたたると、怖いんだな、人間て」

魔女「他人事みたいに言うんじゃないの」デコピン

女騎士「あたっ」

魔女「ふぅ……」

女騎士「……すまん」

魔女「別に、いいから。ほら……ちゃんと横になって」

女騎士「うん……。……あのさ」

魔女「ん?」

女騎士「あのさ……、私……」

魔女「いいの、何も言わないで」

女騎士「……」

魔女「いいの」

女騎士「……うん」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:17:57.68 ID:3mTrz7e70
魔女「騎士さんが、誰よりも一生懸命だったこと、私がよく知ってるわ……」

女騎士「……」

魔女「よくがんばったわねぇ」ナデナデ

女騎士「……うん」

魔女「……もう、大丈夫だから……」

女騎士「…………うん」

魔女「……目を瞑って、休みなさい……ゆっくり……」

女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「魔女……」

魔女「……」

女騎士「眠れないよ」

魔女「……」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:18:25.98 ID:3mTrz7e70
女騎士「だって、もう、私……」

魔女「……」

女騎士「騎士じゃなくなっちゃう……」

魔女「……」

女騎士「騎士じゃなくなったら、私」

魔女「……」

女騎士「私は……、私って……、なんだ……?」

魔女「……」

女騎士「私は……」

魔女「……」

女騎士「……」

魔女「……怖いのね」

女騎士「……」

魔女「怖くて、寂しくて、眠れないくらい」

女騎士「……」コクン
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:18:54.92 ID:3mTrz7e70
魔女「さっき、ちょっと寝てたじゃない」

女騎士「……あれは、たぶん気絶だし」

魔女「気絶かぁー……」

女騎士「……」

魔女「……ふぅ」

女騎士「……」

魔女「じゃ、お邪魔しま――……」

女騎士「ちょっとちょっとちょっと魔女さん」

魔女「なぁに?」

女騎士「なんで入ってくるの!」

魔女「私のベッドだもの」

女騎士「そうだけども!」

魔女「添い寝」

女騎士「え」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:19:20.57 ID:3mTrz7e70
魔女「……こうして、二人一緒なら」

女騎士「……」

魔女「ちょっとは、寂しくなくなるでしょ?」

女騎士「……」

魔女「ね……?」

女騎士「……うん」

魔女「んふふ……♪」スリスリ

女騎士「近い近い……」


女騎士(でも……)

女騎士(確かに……)

女騎士(暖かくて……、甘い香りがして……)


女騎士「……」


女騎士(抱き着いたら、きっと……とても柔らかいのだろう)

女騎士(……、……怒るかな?)

158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:20:49.76 ID:3mTrz7e70
魔女「初めて、ここに来た時から」

女騎士「……え?」

魔女「騎士さん……、私のベッドでは、グッスリだったでしょう?」

女騎士「……あぁ、そうだった」

魔女「どうしてだったか、分かる……?」

女騎士「……さぁ? やっぱり魔法だったのかも……」

魔女「んふふ、違うったら」

女騎士「んー……」

魔女「きっと」

女騎士「……」

魔女「私の前では、騎士じゃない貴方でいてくれたから……」

女騎士「……」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:21:44.62 ID:3mTrz7e70
魔女「……あ、もちろん、騎士さんは騎士さんなんだけどね」

女騎士「ややこしい」

魔女「……ただ、少しだけ、背負った重荷を下ろして」

女騎士「……」

魔女「……少しだけ、騎士の役目を忘れて」

女騎士「……」

魔女「そのままの貴方で、私と一緒にいてくれたから……」

女騎士「……」

魔女「それできっと、このベッドではいつだって、よく眠れたと思うの」

女騎士「……そうかもな」

160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:22:15.19 ID:3mTrz7e70
魔女「……だからね」

女騎士「……」

魔女「ここは、貴方の居場所のひとつなの」

女騎士「……」

魔女「……騎士じゃない貴方が、安心して憩う場所」

女騎士「……」

魔女「このベッドは、この屋敷は、この森は――……」

女騎士「……」

魔女「私の傍は……」

女騎士「……」

魔女「貴方の場所よ、騎士さん」

女騎士「魔女……」

魔女「ふふっ、しゃべってばかりじゃ、騎士さんも眠れないわね」

女騎士「ねぇ……」

161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 22:23:38.90 ID:3mTrz7e70
魔女「ん?」

女騎士「あの……、えっと……」

魔女「……いいわよ、ギュッてしても」

女騎士「……え?」

魔女「ほら」

女騎士「うん……」


ギュッ


女騎士(なんで分かったんだろう)

女騎士(魔女はやっぱり……)

女騎士(不思議だなぁ……)


魔女「人間の腕って、誰かを抱きしめるような形の造りになってるのよ」

女騎士「不思議だなぁ」

魔女「不思議でしょ?」

女騎士「あぁ……」

魔女「……」ナデナデ

女騎士「………………スヤァ」

162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/22(火) 22:24:34.67 ID:3mTrz7e70
今日はここまでです
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 01:01:17.13 ID:bZy92yco0
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 01:55:45.97 ID:C10gB3GZO
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 04:49:11.11 ID:lYcYX7XXo
ええな
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 16:48:11.19 ID:7V3QsaRDO
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 23:19:03.09 ID:x5aURJXg0





〜朝〜


女騎士「……」

女騎士「……」ムクリ

女騎士「……ん〜」

女騎士「――」ノビー

女騎士「……っはぁ……」

女騎士「……」


女騎士(爽快だ……)

女騎士(爽快すぎる……!)


女騎士「……こんなに軽かったのか、私の身体……!」ノビーッ

女騎士「……」

女騎士「あれ、魔女……」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 23:19:34.52 ID:x5aURJXg0






女騎士「……あ、いた」

魔女「あら、おはよう、騎士さん」

女騎士「おはよう、魔女」

魔女「朝ごはん、準備してたんだけど……、時間あるかしらぁ?」

女騎士「え〜っと、まだ大丈夫……。いいのか?」

魔女「うふふ、もちろん」

女騎士「美味しそうな匂いする……」

魔女「すぐできるわよ〜♪」

女騎士「何作ってるんだ?」

魔女「んー、イモリの黒焼きとねえ……」

女騎士「……………………」

魔女「冗談よ、魔女ジョークよ」

女騎士「お、おう……」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 23:20:03.44 ID:x5aURJXg0





女騎士「……」ムグムグ

魔女「お茶のおかわりは、いかが?」

女騎士「いただこう」

魔女「よく眠れたみたいねぇ」

女騎士「あぁ、まさしく快眠、まるで生まれ変わったみたいな気分だな!」

魔女「ふふ、よかったわ……」

女騎士「……人間って、ちゃんと睡眠取らないと駄目なんだな」

魔女「そうねぇ」

女騎士「なんでだろうな」

魔女「なんでかしらねぇ……お茶のおかわりは?」

女騎士「いただこう」
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