魔女「お眠りなさい、安らかに――」 女騎士「くっ、やめろ……!」

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:13:07.76 ID:+UMJIFc20
魔女「ほうら、大人しく横になりなさい?」

女騎士「くぅ……! 負けん! こんなフカフカのベッドなんかに私は……」

魔女「はい、お行儀よくしましょうね〜?」

女騎士「フカフカの枕になんかぁー!」

魔女「ちゃんと肩までお布団かけないと駄目よ」

女騎士「……お布団いいにおいするぅ……」

魔女「ほら、目を閉じて?」

女騎士「くっ、勝手に瞼が落ちて……!? どういうことなんだ……!」

魔女「さ、ご本を読んであげましょうねぇ」

女騎士「駄目だ、身体が……!? なんて恐ろしい魔法なんだ……。だが私は決して負けない! 魔女の思い通りになど、騎士の誇りにかけても絶対に――」

魔女「むかーしむかし、あるところに……」

女騎士「……スヤァ」

魔女「あらあら」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:14:24.07 ID:+UMJIFc20
〜都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷〜







女騎士「熟睡してしまった……」

魔女「おめざのお茶はいかが?」

女騎士「ああ、いただこう……」

魔女「はい、……よく眠れたかしら?」

女騎士「そうだな、五日ぶりくらいに」グビー

魔女「もう……、駄目よう、ちゃんと寝ないと」

女騎士「それができれば、怪しげな魔女になど頼ったりするものか」

魔女「大変ねぇ」

女騎士「……た、他人には話すなよ。国と国の神に仕えるべき騎士が、異端の……」

魔女「おかわりいる?」

女騎士「いただこう。……異端の魔女のもとに出入りしているとなれば」グビー

魔女「一族郎党八つ裂き火あぶり?」

女騎士「あ、いや、そこまでじゃないかな……」

魔女「おかわりいる?」

女騎士「いただこう」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:15:14.47 ID:+UMJIFc20
魔女「別にしないけどねぇ、人に話したりなんて」

女騎士「ならいいんだが……」

魔女「というか、私はただ、ベッドを貸してるだけだし」

女騎士「嘘だ! 絶対嘘だ!」

魔女「えぇ……」

女騎士「いつも不思議な魔法で眠らせるくせに! 私は! 私はそういうのはやだって言ってるのに、いっつも!」

魔女「だから、魔法なんて使ってないって言ってるじゃない……」

女騎士「嘘だぁ……、あんな簡単に眠らされるの……絶対普通じゃないもん……、絶対おかしいもん……」

魔女「もん、って」

女騎士「魔法だもん……」

魔女「……おかわりいる?」

女騎士「いただこう」

魔女「……魔法だと嫌なの?」

女騎士「それは、嫌だろう。なんか怖いし……」

魔女「じゃあ、もう来ない?」

女騎士「それは……」

魔女「……」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:15:59.27 ID:+UMJIFc20
女騎士「ま、また世話になる、かも……。眠れないようだったら……」

魔女「嫌なんじゃないの?」

女騎士「……魔法じゃないんだよな? 本当に」

魔女「魔法じゃないけど。魔女は魔法なんて使えないし」

女騎士「なら、まぁ……」

魔女「……」

女騎士「嫌ってわけじゃ、ない……かな……」

魔女「……おかわりいる?」

女騎士「いただ……すごい飲ませてくるなお前!」

魔女「作りすぎたのよう」

女騎士「たぷたぷなんだが!?」







6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:17:13.84 ID:+UMJIFc20


〜翌日・都の中心部、騎士団詰所〜







副団長「それでは、騎士団長の女騎士殿より、訓示をたまわる!」

女騎士「……コホン、みn――」

副団長「諸君は清聴するよう!」

女騎士「………………」

副団長「では団長殿」

女騎士「あ、うん」

女騎士「えー……、みなも知っての通り、先の大戦から5年。我らが王都はかつてない平和を享受している」

女騎士「民は増え、街は大いに賑わっている」

女騎士「それに伴い、国の矛であり盾である騎士の役目も、変わりつつある……」

女騎士「近年では、いくつもの騎士団が解散、残る騎士団も縮小を余儀なくされているが……」

女騎士「戦場ばかりが騎士の舞台ではない!」

女騎士「今の平和な世こそ、人々が心安く暮らせるよう尽力する!」

女騎士「これこそが騎士の矜持であり、我らが『銀顎のオオクワガタ』騎士団の誇りである!」

女騎士「おのおの、そのことを深く、心に留めておくように!!」




「「「「ハイ!!」」」」





7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:18:11.22 ID:+UMJIFc20


〜訓練所〜


騎士A「団長さぁ……」

騎士B「ん?」

騎士A「今日は元気そうだったな」

騎士B「な。最近何だかキツそうだったけど」

騎士A「クマとか作ってなー」

騎士B「悪い話ばっかりだもんな、ここんとこ」

騎士A「背負いこむもんねぇ」

騎士B「背負い込むもんなぁ」

騎士A「……でも、たまーにあるよな、良さそうな日」

騎士B「たまにあるな」

騎士A「何だろうねぇ」

騎士B「何だろうなぁ」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:19:12.67 ID:+UMJIFc20
騎士A「良さそうな日の団長さぁ……」

騎士B「ん?」

騎士A「良いよねぇ」

騎士B「……良いよなぁ」

騎士A「パァっとさぁ、花みたいでさぁ、あの顔で『がんばったな!』なんて言われた日にはさぁ! 俺はさぁ!!」

騎士B「落ち着いて。分かるけど落ち着いて。すごい分かるけど」

騎士A「毎日良さそうだといいんだけどねぇ」

騎士B「そうだなぁ」

女騎士「なーんだぁーお前たちぃー」

騎士A「あっ」

騎士B「ひっ」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:19:53.97 ID:+UMJIFc20
女騎士「私の考えた訓練メニューじゃ、しゃべりながらでも余裕ってわけだなぁー!?」

騎士A「い、いや、そそそういうわけではぁ……」

女騎士「いいだろう! 特別に! 私が! みっちりと! 稽古をつけてやるからな!」

騎士B「あ、ぁ……」

女騎士「優秀な我らが騎士二人相手だー! これは私も手加減できんなぁー! はーはっはっは!!」

騎士A(いい笑顔だ……)

騎士B(いい笑顔だ……)







10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:20:29.78 ID:+UMJIFc20


〜夜・女騎士宅〜


女騎士「……ふぅ」

女騎士「今日の分の作業は、これで終わりかな」

女騎士「明日の準備も済んだ……」

女騎士(今日は特にいい汗流したし)

女騎士(よく眠れそうだな……!)

女騎士「さて……、父様、母様、おやすみなさい」

女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士「…………」

女騎士「………………」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:20:56.36 ID:+UMJIFc20


女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士(明日は他所の騎士団との公開演習……)

女騎士(……)

女騎士(そういえば……)

女騎士(万が一の時の、救護の手順は大丈夫だったろうか……)

女騎士「……」

女騎士(……念のため、最寄りの医療施設を調べ――……)

女騎士(いや、明日の朝、事前に連絡を入れて……)

女騎士「……」モンモン
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:21:54.41 ID:+UMJIFc20

女騎士(……演習中の補給は、ちゃんと準備していただろうか?)

女騎士(公開イベントだ、市民にも、もし何かあったら……)

女騎士「……」モンモンモン

女騎士(支度のこと、スケジュールのこと、予算のこと)

女騎士(騎士団のこれから、団員の状態は、モチベーションは――……)

女騎士「……」モンモンモンモン


女騎士「……」

女騎士「…………」



女騎士「………………」ガバッ

女騎士「……明日の準備も、再点検しておこう……」




13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:22:20.39 ID:+UMJIFc20





女騎士「……」カリカリカリカリ

女騎士「……」ペラ

女騎士「……」カリカリ

女騎士(……駄目だ)

女騎士(全然眠気が来ない……)

女騎士「……」

女騎士(まあ、いいか)

女騎士(どうせやることは、山のようにあるんだ)

女騎士(そうだ、眠くなるまで去年の出納帳の整理も――……)

女騎士「…………」カリカリ

女騎士「………………」カリカリカリカリ

女騎士「……………………」





14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/12(土) 19:22:49.28 ID:+UMJIFc20





チュン

チュンチュン


女騎士「……!」ハッ

女騎士「……あれ」

女騎士(なんか、もう……)

女騎士(微妙に明るい……)

女騎士「……」

女騎士「……」ハァ

女騎士(少しだけでも……)

女騎士(眠らないと、いや、休まないとな……)

女騎士「……」

女騎士「おやすみなさい……」


チュンチュン

チュン


15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/12(土) 19:23:19.49 ID:+UMJIFc20
今日はここまでです

つづきます
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/12(土) 19:24:24.25 ID:Z4IA8XuUO
この魔女さんに眠らせてほしい
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/12(土) 19:36:11.56 ID:+6DblcTJ0
かわいい
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/13(日) 01:49:11.14 ID:NY149mdQo
とても良い
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 16:08:27.82 ID:RtCOUatc0





〜数日後〜


〜都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷〜







魔女「……」

少女「……」

魔女「……」

少女「……」ジーーー

魔女「……ええと」

少女「……」

魔女「……」

魔女(……とんがり帽子、とんがり帽子)

魔女(……)ゴソゴソ

魔女(あった)

魔女「……」カブリカブリ

少女「……!」

魔女「……はい」

少女「魔女だ……!」

魔女「魔女よう」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 16:09:03.53 ID:RtCOUatc0
少女「えっとね、おばあちゃんのね、あのね、腰の……、えっと、飲むやつ? 粉の?」

魔女「……ああ、あのお婆さんの。ちょっと待っててね……」

少女「……」

魔女「ええと……」ゴソゴソ

少女「……ほうきは?」

魔女「今は使わないわねぇ」ゴソゴソ

少女「………………」ガッカリ

魔女「……あった。はい、これね」

少女「ありがとー!」

魔女「どういたしまして」

少女「ばいばーい」

魔女「一人で帰れるかしら?」

少女「帰れるー!」トタタタ

魔女「気を付けてねぇ」ヒラヒラ
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 16:10:34.38 ID:RtCOUatc0
魔女「……ふぅ」

魔女「……」

魔女「……あ」

魔女(……そういえば……)

魔女「……1、2、3、4、5……」

魔女(……あれから、五日)

魔女「……」

魔女「そろそろ来るかしらねぇ……」

魔女「……」

魔女「シーツ、新しいの出そうかしら」

魔女「……」

魔女「……ふふっ」





22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 16:11:07.32 ID:RtCOUatc0
〜都の中心部、騎士団詰所〜







副団長「それでは、騎士団長の女騎士殿より、訓示をたまわる!」

女騎士「…………」

副団長「諸君は清聴するよう!」

女騎士「…………」

副団長「……団長殿」

女騎士「……」ハッ

女騎士「コホン……、うん、うむ、えーと」

女騎士「みなの日ごろの尽力に、とても満足しー、また感謝しておりぃー、そしてー――……」


女騎士「――くれぐれも健康に注意しー――……」


女騎士「特に朝晩冷えやすい時間帯などはー――……」


女騎士「――」クドクド

女騎士「――――」クドクド



騎士A(クドクドしてる……)

騎士B(クドクドしてるけど内容はフワフワしてる……)

騎士A「良くなさそうだな」

騎士B「な」






23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 16:11:53.95 ID:RtCOUatc0





女騎士「……うぅぅ」


女騎士(結局あの日から、ろくに眠れていない……)

女騎士(こんなに眠たいのに、ベッドに入ると眼が冴えるのだものな……)

女騎士(不思議だ……)


女騎士「不思議だなぁぁ……」

副団長「何がです」

女騎士「……や、何でもない。気にしないでくれ」

副団長「はぁ」

女騎士「……」

副団長「……」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 16:12:32.89 ID:RtCOUatc0
副団長「……今日はもう、帰られた方がよろしいかと」

女騎士「む……、だがまだ、残務があって――」

副団長「私の方で、あらかた片付けましたから」

女騎士「あ。……そうだ、訓練場の整理も……」

副団長「若手がすべて済ませています」

女騎士「……夜警の」

副団長「班割りは来月分まで、全部終わらせてしまっています。貴方が」

女騎士「えーと、再来月分を……」

副団長「団長殿」

女騎士「うん」

副団長「お疲れさまでした」ペコリ

女騎士「…………はい」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 16:13:47.82 ID:RtCOUatc0

女騎士「……ふぅ」

女騎士(ふがいない……。体よく追い払われてしまった……)

女騎士(だが、確かにこのままでは……、団員にも迷惑をかけてしまう)

女騎士(どうにか休息を取らなければ……)

女騎士(騎士団のためにも……!)

女騎士「……」

女騎士「……」ハァ

女騎士「……やむを得ない」

女騎士「また世話になるか……」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 16:14:33.57 ID:RtCOUatc0





〜王都のはずれの路地裏〜


女騎士「……」コソコソ

女騎士「……」コソッ



都民A「なあ、聞いたことあるだろ、お前も」

都民B「あぁ、『東の蜘蛛の森の魔女』だろ?」


女騎士「……!」ビクッ


都民A「残酷で恐ろしい怪物らしい……」

都民B「化け物じみた姿らしい……」



女騎士「……」

女騎士「…………」

女騎士(……美人だったぞ、普通に)



都民A「身の丈3メートルで腕が8本」

都民B「正体は蜘蛛の化身で人間を食べる」



女騎士(食べ……えぇ)



都民A「あと火を吐く」

都民B「火か……」



女騎士(火かぁー…………)

27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 16:15:02.88 ID:RtCOUatc0



――都の東は蜘蛛の森――


――獣も恐れる深い森――


――そこには魔女が住んでいる――


――怖い魔女が住んでいて――


――森に迷った子を捕まえて――


――醜い蜘蛛に変えてしまう――


――蜘蛛の森には近づくな――


――小さい子供は気をつけろ――




女騎士「……」

女騎士「……」コソコソ





28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 16:15:51.85 ID:RtCOUatc0





カラン カラン


魔女「……あら、いらっしゃい」

女騎士「邪魔をす――……おぉ」

魔女「?」

女騎士「魔女だ……」

魔女「魔女よう」

女騎士「いや、というか、なんだ、見た目が」

魔女「?」

女騎士「あの、帽子……とんがり帽子」

魔女「あ……」

女騎士「ああ、いや、似合ってる――け――」

魔女「……」ハズシハズシ

女騎士「ど――……」

魔女「……あらあら」シマイシマイ

女騎士「……」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/13(日) 16:16:26.16 ID:RtCOUatc0
魔女「あらあらあら」

女騎士「……」

魔女「見なかったことにしてちょうだいねぇ」アセアセ

女騎士「……」

女騎士(照れてる……)

女騎士(普通に可愛く照れてる)

魔女「ね?」

女騎士「あ、あぁ……」

女騎士(なんか……)

女騎士(普通だよなぁ……)

女騎士「火は吐かないよなぁ……」

魔女「え? 何の話?」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/13(日) 16:17:04.34 ID:RtCOUatc0
今日はここまでです

つづきます
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/13(日) 16:21:38.02 ID:cATJRAT8O
なにやら不穏な雰囲気が…かわいい(逃避)
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/13(日) 17:02:00.77 ID:NY149mdQo
読んでる側もぬくぬくしてくるわ
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/14(月) 09:36:21.52 ID:dwdisI5lO
期待
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 21:58:59.44 ID:pkrjxQxe0
女騎士(……なんとなく、雰囲気で年上だと思っていたが)

女騎士(照れてはにかむと、まだ少女のようにも見えるし……)

女騎士(不思議だ……)

女騎士「……」フワフワ

魔女「……?」

女騎士(もしかしたら……)

女騎士(私のほうが、おねえさんなのかなぁ……)

女騎士「でも3メートルだしなぁぁ……」フワフワ

魔女「……あの、騎士さん? 大丈夫かしら? すごいフワフワしてるけど」

女騎士「……ん? あ、あぁ? 何?」ハッ

魔女「大丈夫? って言ったの。もう……、ふらふらになるまで起きてることないじゃない」

女騎士「望んでそうしてるわけじゃないし……」

魔女「クマもこんな……、うわ……え? わぁ、え……?」マジマジ

女騎士「近い近い近い近い」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 21:59:33.61 ID:pkrjxQxe0
〜寝室〜







魔女「おふろ、ちゃんと温まったかしら?」

女騎士「あぁ……」ショボショボ

魔女「あら……もうおねむ?」

女騎士「おかしい……やっぱり絶対おかしい……っ」

魔女「ふふ、まだ言ってる」

女騎士「こんなに強い眠気……、尋常ではない! いつだ!? いったいいつの間に魔法をかけた……っ!?」

魔女「魔法じゃないって言ってるのにぃ」

女騎士「だったらなぜ!? なぜこんなに眠くなるというのだ!」

魔女「寝てないからじゃないかしら」

女騎士「なーるほどなぁー!!」ウトウト

魔女「おしゃべりしてないで、ほら……横になりなさい?」

女騎士「うん……」ウトウト
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 22:00:07.91 ID:pkrjxQxe0
魔女(前より素直ね……)

魔女「……」

魔女(それだけ眠いのかしら)

女騎士「……うぅん」モゾモゾ

魔女「ほうら、お手々かたづけて」

女騎士「シーツすべすべできもちいい……」

魔女「おろし立てですからね。ほら、目を閉じて」

女騎士「……すっかり就寝の体勢になって、完全に術中に嵌っているように見えるだろう? だが、甘いな! なぜこうして無駄口をたたき続けているか? そう、こうして口を閉じずにしゃべり続けていれば、意識を保て決して眠りに落ちることはないっ!」

魔女「ご本を読んであげましょうねぇ」

女騎士「ふふふ、私とて騎士の端くれ、いつもそうやすやすと手玉に取られると思ったら大間違いだ! さあ、今日こそ見極めてやるぞ! いったい私に何をしているのか、どうやって眠りに誘っていr――……」

魔女「むかーしむかし、あるところに、悪い魔女と良くない魔女が……」

女騎士「スヤァ」

魔女「あらあら」




37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 22:00:48.25 ID:pkrjxQxe0





女騎士「むぅぅ……」

魔女「お茶、苦すぎたかしら」

女騎士「ちょうどいい! おいしい!」グビー

魔女「あらそう……、まだ寝足りない?」

女騎士「いいや、じゅーうぶん眠れた! 快眠だった!」

魔女「ならどうして、そんな難しい顔してるのよ」

女騎士「よく眠れてしまうからだ!」

魔女「えぇ……」

女騎士「どうして普段はちっとも寝付けないのに、お前のベッドだとぐっすりなのか……!」

魔女「知らないけど……」

女騎士「やっぱり魔法……」

魔女「違うったら」

女騎士「……そうじゃなければ、他に何か理由があるはずだ」

魔女「まあねぇ」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 22:02:07.35 ID:pkrjxQxe0
女騎士「それを突き止めなければ、私はこの先もずっと睡眠不足のまま……っ」

魔女「考えすぎよぉ」

女騎士「だからこそ、ギリギリまで意識を保って、眠気の正体を探ろうとしたのだが……」

魔女「すぐ寝たじゃない」

女騎士「すぐ寝ちゃったんだよなぁ」

魔女「いいじゃない、よく眠れたんだったら」

女騎士「いいや、何か安眠の決定的な方法があるはずなんだ……、それを手に入れないと……」

魔女「……」

女騎士「私の騎士団は……、今が正念場なんだ。団長の私がフラフラで、だらしない状態では……」

魔女「……」

女騎士「みなに迷惑をかけてしまう……」

魔女「……」

女騎士「団のためにも、みんなのためにも……」

魔女「……頭」

女騎士「……え?」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 22:02:38.88 ID:pkrjxQxe0
魔女「寝癖、ついてるわ」

女騎士「えっ、うそ……? どこ? こっち? ここ?」

魔女「じっとしてて」カタン

女騎士「あっ」

魔女「……〜♪」


シュッ シュ


女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士(花の香り……)

女騎士(何かの精油だろうか……?)

女騎士(甘いような、辛いような……)

女騎士(不思議な香り……)


魔女「〜♪」


女騎士(……魔女の指先と、硬い櫛の感触が)

女騎士(交互に頭を撫でて……)

女騎士(何だろう……)

女騎士(気持ちが……)
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 22:03:41.64 ID:pkrjxQxe0
魔女「……はい、直ったわ」

女騎士「……ハッ」

魔女「はい、鏡」

女騎士「あ、あぁ……、ありがとう……」

魔女「……♪」ナデナデ

女騎士「……?」

魔女「……ねえ、騎士さん」

女騎士「ん?」

魔女「人はねぇ、夢の世界に入るのに、あんまり沢山の現実の荷物は、持ち込めないのよ」

女騎士「……へ?」

魔女「人は誰でも、夜になれば神秘の大海を渡って、幻想に満ちた夢の世界を訪れる……」

女騎士「……あの」

魔女「けれどその海を渡る小舟は、本当に、とても小さくて……、人ひとりを運ぶのがやっとなの」

女騎士「……あ、あの、ちょっと、魔女さん?」

魔女「何?」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 22:04:12.09 ID:pkrjxQxe0
女騎士「……メルヘンの話?」

魔女「魔術の話よ」

女騎士「まじゅ……」

魔女「人間は、みんな少なからず、不思議な力を持っていて」

女騎士「……」

魔女「知らず知らず、その力を使っていて」

女騎士「……」

魔女「たとえば、夜毎に、見たこともない異世界を訪れることができる」

女騎士「……」

魔女「眠りとは、その力を使うための、瞑想に深く入った状態のことよ」

女騎士「嘘ぉ……」

魔女「うふふ、ひとまず信じておきなさないな」

女騎士「……」

魔女「何事も、信じることが大切よ」

女騎士「……うん」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 22:04:52.70 ID:pkrjxQxe0
魔女「けれど、あまり現実を背負い込んでいると、その力が衰えてしまう」

女騎士「……」

魔女「だからね、騎士さん……。ベッドの中にまで、沢山の現実を持ち込んじゃ、いけないの」

女騎士「だがな……、考えまいとしても、頭が勝手に……」

魔女「何か浮かんだら、すぐに手放す。小舟に知らず上がってきた魚を、海に放してあげるみたいに」

女騎士「……」

魔女「まあ、訓練よ」

女騎士「訓練かぁ……」

魔女「……難しそう?」

女騎士「心配は残る」

魔女「心配性なのねぇ……」

女騎士「生まれつきな」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 22:05:19.44 ID:pkrjxQxe0
魔女「うーん……、……あっ」

女騎士「うん?」

魔女「じゃあ、ね、騎士さん。貴方にこれ、貸してあげるわ」

女騎士「これ?」

魔女「はいっ」


『3人の魔女と塔の姫』


女騎士「……童話?」

魔女「童話!」

女騎士「……」

女騎士(やっぱりメルヘンだ……)

女騎士「いや、魔女、私はこういうのはあまり――……」

魔女「うふふ、馬鹿にしたらいけないわよ。こういうお話って、意外と夢中になるんだから!」

女騎士「……」

女騎士(……こういうの好きなんだ……)

女騎士「……」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 22:05:58.59 ID:pkrjxQxe0
魔女「騎士さんの寝物語にも使ってるけど……、いつもさわりのところで寝ちゃうからねぇ」

女騎士「むぐ」

魔女「せっかくだから、どんなお話か、寝る前に読んでごらんなさいな」

女騎士「ううむ……まぁ、せっかくだしな……」

魔女「そうそう」

女騎士「……やっぱり、お前は不思議だなぁ……」

魔女「そう?」

女騎士「なんかさっきの話は、ちょっと、魔女っぽかった」

魔女「魔女よう……」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/14(月) 22:07:42.16 ID:pkrjxQxe0
今日はここまでです
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/14(月) 22:44:41.23 ID:iQ7ABEIG0
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/15(火) 00:46:49.15 ID:DhvZmVSCo

これは尊い
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 20:52:37.27 ID:DwdTGXAK0





〜翌日〜


〜王都・訓練所〜








女騎士「……――であるからして、合同訓練いただく老騎士殿と――……」

老騎士「……」

女騎士「彼の『水晶羽のトンボ』騎士団は、国王褒章にも輝いた誉れ高い騎士の集まりであり――……」



騎士A「……今日は元気そう」

騎士B「そうな」



女騎士「……――ということだ! 諸君らは胸を借りるつもりで、訓練に臨むよう! いいな!」



「「「「ハイ!!」」」」

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 20:53:24.04 ID:DwdTGXAK0





老騎士「ふぅむ……まぁ……」

女騎士「……」

老騎士「眠れなくなるほど、深く思い悩む。うむ、儂にもそんな頃があったのである」

女騎士「老騎士殿も、ですか」

老騎士「……特に若い時分などは、儂も悩み多き青年だったのであるな……」

女騎士「ははぁ……」

老騎士「嗚呼、恋の炎に身をやつした、今は遠き、わが青春の光――……」

女騎士「……」

老騎士「……冗談であるぞ」

女騎士「……」

老騎士「がっはっはっは」

女騎士「は、ははは、はは……」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 20:54:12.99 ID:DwdTGXAK0
女騎士「……それで、老騎士殿はどのようにして、眠りを妨げるものを振り払ったのでしょうか」

老騎士「はは、時が解決するに身を任せたまで」

女騎士「時、ですか……」

老騎士「いつの間にか、色々なものと、折り合いがつく」

女騎士「……」

老騎士「そういう時期が、人には必ず来るのである」

女騎士「……そういう、ものでしょうか」

老騎士「善かれ悪しかれな。望んだ形ではなくとも」

女騎士「……」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 20:55:02.33 ID:DwdTGXAK0
老騎士「……しかしまぁ、儂くらいの歳になれば、深く眠りすぎるのは、かえって不安になるものである」

女騎士「え? それはまた、どうして……」

老騎士「目が覚めた時、『あれ、儂さっきちょっと死んでた?』ってなって怖いのである」

女騎士「……」

老騎士「……冗談であるぞ」

女騎士「……」

老騎士「がっはっはっはっは!!!!」

女騎士「は、……あはは、ははは」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 20:55:36.84 ID:DwdTGXAK0
老騎士「しかし、今日はそれほど、やつれて見えないのである」

女騎士「ええ、昨日はまj――……!?」

老騎士「まじ……?」

女騎士「……ま、じ……マジでがんばって寝ましたので!」

老騎士「おお、若者言葉であるな」

女騎士「あは、ははは……」

老騎士「がはははは……。……、コホン……時に、女騎士殿」

女騎士「……? なんでしょう?」

老騎士「今のうちに、貴公の耳にも入れておこうと思うのだが……」

女騎士「……」

老騎士「……――……」ボソボソ
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/15(火) 20:56:12.42 ID:8BwgzTXwo
魔女討伐かな?
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 20:56:41.62 ID:DwdTGXAK0





女騎士「な……っ、『金冠のオオカブト』騎士団が、解団……!?」

老騎士「……確かな情報である」

女騎士「そんな……、王都最大の騎士団が……」

老騎士「最近では、団内の派閥争いが、激しくなっていたそうである」

女騎士「それにしても、こんな突然とは……」

老騎士「……何か、大きな動きがあるのかも知れないのである」

女騎士「大きな?」

老騎士「……儂等も他人事ではいられないかもしれない、王都全体を覆うような、一つの流れがな……」

女騎士「……」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 20:57:45.75 ID:DwdTGXAK0
老騎士「はっはっは、暗い顔をなさるな! 何とかなるである! 騎士はいつでも元気でなければ!」

女騎士「そ……、そうですな! まったくその通り!」

老騎士「がっはっは!!」

女騎士「はっは……、そうだ、『オオカブト』のところで扱っていた公務は……」

老騎士「……次回の定例会で、各騎士団に割り振られるはずである……」

女騎士「……」

老騎士「……」

女騎士(……きっつ)

老騎士「きっつい……」

女騎士「声に出して言わないでください……」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 20:58:35.65 ID:DwdTGXAK0





〜夜・女騎士宅〜








女騎士「ふぅ……」

女騎士「……もう、こんな時間か」

女騎士「父様、母様、おやすみなさい」

女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士(……まさか『オオカブト』のところが……)

女騎士(老騎士殿は、他人事ではないと言っていたが……)

女騎士(……確かに最近、騎士団を取り巻く環境は……)

女騎士(これまで以上に、厳しい……)


女騎士「……」

女騎士「……」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 20:59:11.16 ID:DwdTGXAK0
女騎士(……公務は増え、予算は減り……)

女騎士(……問題は増え、人員は減り……)

女騎士「……」モンモン

女騎士「……」

女騎士「……うぅ」モンモン



〜〜〜〜


魔女『ベッドの中にまで、沢山の現実を持ち込んじゃ、いけないの』


〜〜〜〜


女騎士「……」ハッ


58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 20:59:53.67 ID:DwdTGXAK0


〜〜〜〜


魔女『何か浮かんだら、すぐに手放す』


魔女『小舟に知らず上がってきた魚を、海に放すみたいに』


魔女『まあ、訓練よ』


〜〜〜〜


女騎士「……むぅ」

女騎士(……)

女騎士(……かんがえなーい、かんがえなーい……)

女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士(……もし魔女が、すぐそこにいたら……)

女騎士(どんなふうに言うだろうか……)



〜〜〜〜


魔女『もう……ちゃんとお行儀よく寝ないと駄目よ』

魔女『はい、ちゃんとお布団かけてねぇ』

魔女『いい子にできたら、ご本を読んであげましょうね』


〜〜〜〜


59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 21:00:30.79 ID:DwdTGXAK0
女騎士「……」

女騎士(なんか……)

女騎士(人のこと赤ちゃん扱いしてなかったか、あいつ……)

女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士(今度会ったら……)

女騎士(文句言ってやろう……)

女騎士(……ふふふ)

女騎士「……」ウトウト

女騎士「……そうだ」ウト

女騎士「……絵本」


ペラ


女騎士(……ええと)

女騎士(むかしむかし、あるところに……)

女騎士(悪い魔女と良くない魔女がいましt……)


女騎士「……スヤァ」





60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/15(火) 21:01:28.94 ID:DwdTGXAK0


〜朝〜







チュン

チュンチュン


女騎士「……」

女騎士「……」ハッ

女騎士「……っ!?」ガバッ


チュン

チュン


女騎士「……朝」

女騎士「……」

女騎士「ね……」

女騎士「眠れた……」

女騎士「……」

女騎士「眠れたぞー!!」



カイミンダー!!

ヤッター!!!!


チュン!!

チュンチュンチュン!!

バサバサバサ…


61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/08/15(火) 21:04:46.25 ID:DwdTGXAK0

今日はここまでです

なお、本SSはフィクションであり

作中の不眠の対策も、完全な創作です

眠れない、眠りが浅いといった症状にお悩みの方は

無理をせず、専門機関にご相談ください



ねるまえに、スマホでSSよんでると、ねむりがあさくなりますよ!!
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/15(火) 21:11:15.92 ID:vZcBy7seo

マジかよ騙された!!
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/15(火) 21:28:30.57 ID:8d+wHvD/0

これもぜんぶまじょってやつのしわざなんだ
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/16(水) 12:26:38.74 ID:SOqMlZv50
眠れない時はMtGのwiki見るわ
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:16:25.40 ID:LgyhbV/T0
〜数日後〜


〜都の中心部、騎士団詰所〜







女騎士「……〜♪」フンフーン

副団長「……」

女騎士「おーい、装備品の確認は済んだか―!? 今日の備品当番誰だー!」

騎士A「ああっ、すみませんっ! 俺です!」

女騎士「ほら、もうすぐ警ら業務の時間だぞーっ! 急げ―!」

騎士A「はいッス!」

女騎士「がんばれー! 走れー!」

騎士A「はいっ!」タタタ

女騎士「ははは、元気で結構だ!」

副団長「……」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:17:03.28 ID:LgyhbV/T0
女騎士「う〜ん……今日は私も、久しぶりに見回り行っちゃおうかな!」

副団長「……」



副団長(……団長殿)

副団長(ここのところ、元気そうなのは良いのだけど……)



女騎士「いいかな!? いいよな!!」

副団長「はぁ……」

女騎士「よし、決まりだー! はっはっはっは!!」ガシッ

副団長「えっ、いや、ちょ……」

女騎士「出発だーっ」ノッシノッシ

副団長「痛い痛いはやい、速い速いです団長殿」

副団長(元気がダダ漏れてる……)




67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:18:22.42 ID:LgyhbV/T0

〜王都・市街〜







女騎士「う〜む……」

副団長「……」

女騎士「……」

副団長「……」

女騎士「何も変わりないな!」

副団長「王都の治安状況は、非常に良好な状態を保っています……」

女騎士「重畳だ!」

副団長「……」

女騎士「……」

副団長「……」

女騎士「……やることがないな!」

副団長「身も蓋もない……」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:19:20.40 ID:LgyhbV/T0
副団長「われわれの出番がないということは、それだけ平和ということです」

女騎士「そ、それはもちろん!」

副団長「それに、われわれ騎士が、日ごろから市中に目を光らせている。それだけで犯罪行為の抑止効果が望めます」

女騎士「わ、分かってるぞ。私とて当然――……」



ナンダコラー!!

ンダテメー!!



女騎士「むっ……!」

副団長「怒鳴り声が……」

女騎士「もめ事か!? ……こっちだなっ! 行くぞー!」

副団長「はぁ」

女騎士「急げ副団長ぉー!」

副団長「……やれやれ」




69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:19:52.25 ID:LgyhbV/T0






都民C「この野郎、人の足踏んづけといて、何だその態度は!」

都民D「手前がそんなすぐ側に突っ立ってやがったのが、悪いんじゃねぇか!」

都民C「行列なんだから仕方ねぇじゃねえだろ!」

都民D「隙間開けて並べや! ちょっと考えろ手前ぇ!」

都民C「なんだとぉ!?」

都民D「やんのかぁっ!!」


ザワザワ


女騎士「あ〜、こらこら君たち。よさないか、こんな天下の往来で」

副団長「……」

都民C「あ? ……――っっ!?」

都民D「誰だぁ、アンタ! 関係ねぇやつは黙って…………」

都民C「おお、お、おい、お前……悪いことは言わないから、やめとけって……」ヒソヒソ

都民D「あぁ?」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:20:44.38 ID:LgyhbV/T0
都民C「こ、この人、女騎士様だ。『銀顎』騎士団の、団長の……」ヒソヒソ

都民D「げ――……!?!?」



女騎士「……」ニコニコ



都民D「……これはどうも〜」

都民C「大変失礼しました〜……」

女騎士「うむ! 行列に待たされて苛立つのは分かるが、喧嘩はいかんぞ!」

都民C「は、はい……」

都民D「すみませんです、ほんと……」

女騎士「はっはっは!」ニコニコ

都民C(笑ってる……)

都民D(笑ってるけど怖ぇ……)
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:21:19.72 ID:LgyhbV/T0
都民C「……大戦中は、単騎で一個大隊を撃破したらしい……」ヒソヒソ

都民D「……敵国が、国家予算の1割をその首の懸賞金にあてたらしい……」ヒソヒソ

都民C「睨んだだけで熊と虎を倒したらしい……」ヒソヒソ

都民D「本気で剣を振ると海が割れるらしい……」ヒソヒソ



副団長「……」

副団長(尾ひれで空飛べそうなくらい、ウワサが一人歩きしてる……)



女騎士「それにしても、すごい行列だな……」

副団長「……ご存知、ありませんか?」

女騎士「うむ?」

副団長「あそこにある、有名な菓子屋の列ですよ。近頃、王都で大評判の」

女騎士「ほぉ……、知らなかったな」

副団長「王都の者なら誰でも知っているほどです。多分団長以外は」

女騎士「ならばこれで、王都で知らぬ者はいなくなったわけだな! 素晴らしいなぁ!」

副団長「……」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:22:37.38 ID:LgyhbV/T0
店員「あのぅ……」

女騎士「なんだ?」

店員「先ほどは、大変ありがとうございました」ペコリ

女騎士「はは、いやいや、大したことはしていない」

店員「いえ、本当に……。お礼に、こちらを」スッ

女騎士「ん?」

店員「うちのお店の、黄桃のケーキです。店長が、騎士様たちにお持ちしろと……」

女騎士「ははは、気づかいは無用だぞ! 騎士として、当たり前のことをしただけ――……」

店員「でも、いつもお世話になってますから!」

副団長「よろしいのでは? 市民からの支えあっての騎士団ですよ」

女騎士「ふむ……」

店員「あっ、副団長様も」スッ

副団長「恐縮です」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:23:06.55 ID:LgyhbV/T0
副団長「……そういえば、嫌いなんでしたっけ? 甘いの」

女騎士「や、嫌いじゃないけど。普段食べないだけで」

副団長「断るくらいなら、私の方でもらっちゃいますけど」

女騎士「んー……」

女騎士「……」

女騎士「…………」

女騎士「………………」

女騎士「いや、やっぱり頂こう」

店員「はいっ! これからも、王都をよろしくお願いしますねっ」

女騎士「もちろんだっ! はっはっはっは」




74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:23:37.97 ID:LgyhbV/T0

〜都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷〜







魔女「……」

魔女「……」

魔女「……」ポケー

魔女(……畑の棚も作った……)

魔女(……物置の床も張り直したし……)

魔女(……居間の掃除……は、今日2回したっけ)

魔女「……」

魔女「……」

魔女「……暇だわぁ」ポケー
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:24:23.31 ID:LgyhbV/T0
魔女「……」

魔女(……騎士さん)

魔女「……1、2、3、4――……」

魔女「……」

魔女(……やぁね)

魔女(彼女が眠れなくて、辛い方が嬉しいの、私は?)

魔女(違うでしょうに)

魔女「……」

魔女「絵本も渡したし……、しばらくはこない、かも――……」

魔女「その方がいいのよねぇ……」

魔女「……」

魔女「……」

魔女「……!」ピクッ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:25:07.43 ID:LgyhbV/T0





〜「蜘蛛の森」〜







女騎士「……〜♪」フンフーン

女騎士(ちょうど二人分だものな)

女騎士(菓子屋も気が利いているというか……)

女騎士(ふふふ、魔女のやつ、びっくりするかな?)

女騎士「……あ、いや」

女騎士「魔女の喜ぶ顔が見たい、とかではなく……」

女騎士「……お礼、そう、お礼だものな。感謝は大事だからな!」


女騎士「……」

女騎士(……何で言い訳してるんだ、私は……?)

女騎士「……」


女騎士「……ん」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:25:40.82 ID:LgyhbV/T0
女騎士「……」

女騎士(……右に折れた道を、そのまま進めば、魔女の屋敷……)

女騎士「……」

女騎士(けれど、左手に……)

女騎士(……よく見ると、道……? のような……)

女騎士「……」

女騎士「…………?」

女騎士(……気になる)

女騎士「……気になるな!」

女騎士「ちょっとだけ、行ってみようかな!」


ガサガサ

ガサ





78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:26:16.04 ID:LgyhbV/T0





ガサガサ


女騎士(……そういえば)

女騎士(前の戦争のときも、こんな森で戦ったことがあったな)

女騎士「……」ガサガサ

女騎士(……敵の影に怯えながら……)

女騎士(ふと、振り返れば)

女騎士(歩いてきた足取りも、見当たらないほど深い森……)

女騎士「……」クルッ

女騎士(……歩いてきた……足取りも)

女騎士「……」

女騎士「……」

女騎士(見当、たら、ない――……)

女騎士「……」

女騎士「……アレ?」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:27:25.93 ID:LgyhbV/T0





ガサガサ


女騎士「……むぅ」

女騎士「いかんな、こっちだったか……?」

女騎士「……」ガサガサ

女騎士「違うか」

女騎士「……」ガサゴソ

女騎士「えーと? 確かこっち……」


ガシッ


女騎士「だ……っ、れ……」

魔女「ハァッ……、はぁ――はぁ……っ」

女騎士「ま、魔女……?」

魔女「まに……、まひ、はひ……ハァ」ハァハァ

女騎士「お、落ち着け。深呼吸、深呼吸」

魔女「ハヒー……ハヒー……」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/16(水) 21:28:15.62 ID:LgyhbV/T0
魔女「ふぅ、はぁ、はぁぁ……、よか……ったぁぁ」

女騎士「魔女……」

魔女「騎士さぁん……もう、馬鹿ぁ」

女騎士「え、なに? 何かしたか私?」

魔女「うぅぅ……っ」ウルウル

女騎士「あぁっ! すまん! 悪かったから! だから泣かないで!」

魔女「こっちはぁ……、蜘蛛の森の、一番奥深く……、人の子を拒む禁断の地……」ウルウル

女騎士「な、なんだ? ま、魔女の聖地な……?」

魔女「毒蜘蛛のね、繁殖地なの」

女騎士「ヒッ」

魔女「楽に死ぬやつ」

女騎士「ヒィッ」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/16(水) 21:28:59.27 ID:LgyhbV/T0

今日はここまでです
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/16(水) 21:33:30.64 ID:LgyhbV/T0
アッ誤字ッ!
>>69
仕方ねぇじゃねえだろ!

仕方ねえだろ!

です
ごめんなさいです
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/16(水) 21:44:14.30 ID:EQPJfPpp0
おつおつ。さて寝るか
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/16(水) 22:07:49.90 ID:hncwhN/H0
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:00:16.70 ID:FgMnawTA0






女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「……」テクテク

魔女「……」テクテク


ギュッ


女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「あのう、魔女さん……?」

魔女「……何かしらぁ?」テクテク

女騎士「あの、いや、手……」

魔女「手?」


ギュッ


女騎士「つ、繋いでないと、駄目?」

魔女「駄目よ。はぐれたらどうするの」

女騎士「……むぅ、またそうやって、子ども扱いを……」

魔女「あら」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:01:07.43 ID:FgMnawTA0
魔女「知らない道にどんどん入っていって、迷子になったのは、どこの誰かしら?」

女騎士「うぐっ……」

魔女「来た道が分からなくなったのに、ためらいもなく更に進んでいったのは、どこの誰だったかしらぁ?」

女騎士「うぅぅ……っ、わ、私です……」

魔女「小さな子どもだって、迷ったと思ったら、いったんその場に立ち止まるんじゃないかしら? 違う?」

女騎士「おっしゃる通りですぅ……」

魔女「……分かったら、ほら、もっとちゃんと手を掴んでなさい!」

女騎士「はぁい……」ギュ

魔女「まったく……」

女騎士(怒ってる……)

魔女「まったくもう……」

女騎士(怒ってらっしゃる……)

魔女「……」プンプン
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:01:36.53 ID:FgMnawTA0

〜魔女の屋敷〜







魔女「おい――……」

女騎士「……」

魔女「……――っしぃぃ〜!」パァァ

女騎士「美味しいか」

魔女「美味しいわ! すごく美味しいわ!」ハムハム

女騎士「……」

女騎士(喜んでる……)

魔女「んん〜〜〜♪」

女騎士(喜んでらっしゃる……)

魔女「ありがとうね、騎士さん!」

女騎士「どういたしまして」

女騎士(怒ったり、笑ったり……)
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:02:16.85 ID:FgMnawTA0
女騎士(……結構、感情が表に出やすいというか……)

女騎士(……初めて会った時は)

女騎士(物静かで、落ち着いていて――……)

女騎士(まさしく『魔女』の雰囲気、なんて思ったけど……)



女騎士「……」ジー

魔女「はぁ、おいひい……」ウットリ

女騎士(……魔女とは……?)

女騎士「……」ジー

魔女「……? 私の顔に、何かついてる?」

女騎士「あ、すまん、別に何も…………いや! ついてる! クリームすっごいついてる!」

魔女「えっ、やだぁ……」ヌグイヌグイ

女騎士「はは……」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:03:17.56 ID:FgMnawTA0
女騎士(こういうところ見ると……)

女騎士(全然、魔女っぽくないというか)

女騎士(……あ、でも)



女騎士「そういえば、魔女」

魔女「何かしらぁ?」

女騎士「お前、魔法なんて使えないって言ってたけど……、やっぱり使えるじゃないか、魔法」

魔女「?」

女騎士「魔法だろ? 私が森で迷ってるって分かったのも、私の居場所を探り当てたのも」

魔女「あぁ、あれは……うぅん……、魔法を使った、ってわけじゃないんだけどねぇ……」

女騎士「またまた」

魔女「本当よう。しいて言うなら、『森』の魔法かしらね」

女騎士「森の?」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:03:45.70 ID:FgMnawTA0
魔女「そう、森が魔法を使って、騎士さんの居るところを教えてくれたの」

女騎士「…………」

魔女「『メルヘンだぁ』って顔してるわね……」

女騎士「だってぇ」

魔女「本当だってば。人に、みんな不思議な、神秘的な力があるように」

女騎士「……」

魔女「森にだって、隠された神秘がある」

女騎士「……」

魔女「特にここは。『蜘蛛の森』はね」ハムハム

女騎士「むぅ……」

魔女「私は、それを信じてるし、感じてる。だから分かる」

女騎士「……それが魔女?」

魔女「それが魔女よ」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:04:11.14 ID:FgMnawTA0
女騎士「じゃあ、お前本人は……」

魔女「ん?」

女騎士「何か、そういう、魔女らしいことはできないのか?」

魔女「ん〜……」

女騎士「……」

魔女「……おいしいお茄子が作れるわ……」

女騎士「うん、あの、そういうのじゃなくて」

魔女「ん〜〜〜〜……」

女騎士「そもそも茄子、魔女らしさか……?」

魔女「……占い、とかならできるけど」

女騎士「おぉ」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:05:31.24 ID:FgMnawTA0






魔女「……――そう。そうやって五角形にカードを並べて」

女騎士「……」

魔女「時計回りに、愛……知性……知識……」

女騎士「……」

魔女「法、力……、それぞれ対応する絵柄、これが今の貴方……」ペラリ

女騎士「……」ドキドキ

魔女「さぁ、ペンタグラムの中央に、引いたカードを置いて」

女騎士「……」スッ

魔女「このカードが……、貴方の未来を指し示――……」ペラリ

女騎士「……」ドキドキ

魔女「……」

女騎士「……?」

魔女「……」

女騎士「……な、なぁ……、結果は?」

魔女「……御守り」

女騎士「……え?」

魔女「……お、御守りも作れるのよ、私! とってもよく効くやつ!」

女騎士「あの、結果……」

魔女「せっかくだから、騎士さんにも作ってあげるわねぇ! うーんと効くのを! おっきいのを!」

女騎士「ねぇ、だからどうだったのって! ねぇって! ちょっとぉ!」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:06:08.06 ID:FgMnawTA0






女騎士「さて……」

魔女「あ、お風呂用意するわね」イソイソ

女騎士「あ……、あぁ、いやいや、いいんだ」

魔女「……?」

女騎士「大丈夫、今日は別に、寝かせてもらうつもりじゃなくて」

魔女「あら、そうなの?」

女騎士「あぁ……、最近すこぶる、調子が良くて。十分睡眠がとれていてな」

魔女「…………それは、良かったわ」

女騎士「うん、これも魔女のおかげだ」

魔女「そんな、私は別に何も……って」

女騎士「うん?」

魔女「じゃあ、今日はどうして森に?」

女騎士「それは……、いや、何だ。世話になった、お礼に……というか」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:07:01.82 ID:FgMnawTA0
魔女「お礼に、ケーキを?」

女騎士「あ、あぁ」

魔女「そう……」

女騎士「……」

魔女「……」

女騎士「……、そ、それと……」

魔女「それと?」

女騎士「……魔女に、会いに……」

魔女「……!」

女騎士「ふ、深い理由があってのことでは、ないんだがな! ただ、いつもすぐ寝てしまうから、たまには、と――……」

魔女「そうなのね、騎士さんは私に会いに来てくれたのねっ!」

女騎士「……め、迷惑だったろうか……」

魔女「とんでもない! とっても嬉しいわ! 美味しいケーキよりも、ずっと!」

女騎士「そ……そうか! ならば良かった!」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:09:08.82 ID:FgMnawTA0
魔女「うふふ……、こういう風に、誰かとお喋りするの、ずっとやってみたかったのよねぇ……」

女騎士「あ……」


女騎士(……この森に)

女騎士(足を踏み入れる者は、滅多にいなくて……)


魔女「……あっ、もちろんケーキも、すごい嬉しかったし、美味しかったわよ。ホント」

女騎士「……」



女騎士(魔女は……)

女騎士(この森の、この広い屋敷で、いつもひとりで……)

女騎士(もしも……彼女が王都にいたら……)

女騎士(きっと毎日、怒ったり、笑ったり、忙しくて……)

女騎士(けれど彼女は、この森でいつも……)



女騎士「……あ、あの」

魔女「?」

女騎士「ま……また来ても、いいだろうか」

魔女「……!」

女騎士「その……ベッドを借りるのではなく……、お前と……ええと」

魔女「もちろんよ、騎士さん」

女騎士「あ……」

魔女「楽しみに待ってるわ、また来てくれるのを」ニコ

女騎士「あぁ……、また来るよ。必ず」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 22:09:45.58 ID:FgMnawTA0
今日はここまでです

つづきます
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 00:13:45.57 ID:9zrVsz/3O
続き楽しみ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 16:10:28.89 ID:Iw2IIQMD0
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:41:17.05 ID:FqTckVnj0

〜夜〜






〜〜〜〜


女騎士『あぁ……、また来るよ。きっと、すぐ』


〜〜〜〜


魔女「ふふ……」

魔女「んふふ……♪」


魔女(楽しかったぁ……)

魔女(一緒にお菓子を食べて、いっぱいおしゃべりをして……)

魔女(ああいうの、久しぶりだったかも……)


魔女「……♪」


魔女(やっぱり独りぼっちよりも……)

魔女(誰かと一緒に過ごすのは、楽しいわ)

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:42:25.96 ID:FqTckVnj0

魔女「……」

魔女「……?」

魔女「……??」

魔女「あ……」


魔女(そうじゃない)

魔女(そうじゃないのね、私……)

魔女(騎士さん)

魔女(彼女が一緒だったから、きっと……)

魔女「あぁ、ふふ、ふふふ」

魔女「今度はいつ来てくれるかしら、騎士さん……」


ポフッ


魔女「ふァ……」

魔女「……おやすみなさい、騎士さん」




101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 21:42:55.24 ID:FqTckVnj0

〜数日後・王都 王府庁舎内〜







役人「……」

女騎士「……」

役人「……」

女騎士「……ええと」

役人「ヒィ!」ビクー

女騎士「……ひいって」

役人「ごっ、ごめんなさい! ごめんなさい! 使えないヤツで本当ごめんなさい!」

女騎士「言ってない言ってない! まだ何も言ってないから!」

役人「ワタシ……クビでしょうか……」

女騎士「大丈夫だから! 大丈夫だからしっかりして!」





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