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【ミリマス】期限付き、田中琴葉
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9 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/08/05(土) 04:58:26.79 ID:DkEnKQtk0
「えぇーっ!? なんでなんで? どうして二人がいるんですかー!」
嬉しいという名の感情を、隠すことすらしない笑顔。
一瞬呆気にとられた琴葉だが、すぐに気がつき彼女に叫ぶ。
「危ないっ! プールサイドを走ったりしたらダメじゃない!!」
怒られた少女が「ひゃっ!?」と驚きの声を上げ、その場でピタリと立ち止まった。
それから、今度はゆっくり歩いて二人のところへやって来ると。
「ご、ごめんなさい。つい、嬉しくなっちゃって……」
謝る少女の両手には、宝石のように輝くアイスクリームが1、2、3。
一つは食べかけ、残り二つは手つかずであるソレを見て、美也が「むーん」と小首を傾げて言う。
「未来ちゃん、一人だけじゃないんですか〜?」
「えへへ、それがねー」
少女、春日未来がなにやら意味ありげな笑顔で勿体ぶる。
が、答えは未来のすぐ後ろに。
「未来ちゃん、置いてかないで〜……あら?」
どたぷーんと、音が聞こえてきそうなボディだった。
未来と同じく、両手にアイスを一つずつ持った豊川風花の出現に
「ふ、風花さんまでいるんですか?」と、琴葉も動揺の色を隠せない。
10 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/08/05(土) 05:00:03.63 ID:DkEnKQtk0
「琴葉ちゃんに、美也ちゃん? 奇遇ね、こんなところで会うなんて」
「ふうかー、みらいー! おーいっ!」
「あっ、環も居る! おーい!」
互いを呼び合う環と未来の二人を横目に、琴葉が風花に問いかける。
「私たち、プロデューサーからここの招待券を頂いて」
「招待券?」
「はい、期限が今日までの……。それと、環ちゃんの保護者役も兼ねてこのプールに」
琴葉の説明に、風花が「なるほど」と小さく頷いた。
「だったら、私たちも似たようなものかな。この前のCD……ほら、新しく出る」
「『THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 01』のことですね〜」
「そうなの。八月二十三日発売で」
「価格はお手頃二千円」
「私たち待望の、新ソロ曲が五曲も入っていて〜」
「それで、お値段なんと二千円」
「秋に開催されるフリーライブ、『THE IDOLM@STER MILLION LIVE!
EXTRA LIVE MEG@TON VOICE!』の応募用シリアルチラシもついてくるの」
「なんと〜! それは大変お得ですね〜」
「なのに、お値段はたったの二千円です。……以上、新CDシリーズの宣伝でした」
11 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/08/05(土) 05:03:24.64 ID:DkEnKQtk0
こうして未来たち五人のCD組と合流を果たした琴葉たちは、その後も存分に水遊びを楽しんだ。
具体的にはボートに乗ったり溺れかけたり、途中で風花の水着がズレて
『あふ〜ん』なんてアクシデントも発生したが、おおむね全員が楽しんで、そろそろ帰ろうかと話し始めた頃である。
『琴葉? アタシアタシ、今ちょうど仕事が終わってさー。ヒマならいつものトコ集合!』
それはアフターワークのパーリータイム。
呼び出されたならばいつものファミレスに即集合の女子会で。
琴葉が事情を話すや否や、
「ファミレス? パフェ! 私パフェ食べたいっ!」
「たまきもいっぱい遊んだから、お腹ペコペコー!」と自身の空腹を訴える者。
「うふふ〜。遊んだ後の食事ですか〜」「こういうのも、外遊びの醍醐味の一つよね」と一定の理解を示す者。
「こ、このまま大勢で行くんですか?」「お店の迷惑になるのでは?」と不安と難色を見せる者。
「人数は、大丈夫だと思うよ。合わせて十人ぐらいだし」
「面子がスッゴク不安だけど……。桃子もいるから、安心していーよ琴葉さん」
「ふふっ、頼りにしてるよ? 桃子ちゃん」
自分がシッカリしておかないとと、プールでのはしゃっぎっぷりから打って変わった表情を見せる者などなど。
そして何より忘れてならないのは、その全てのしわ寄せを喰らった者のことである。
12 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/08/05(土) 05:04:52.68 ID:DkEnKQtk0
===
「あのさ、琴葉」
「……うん」
「物事にはなんだって、限度ってのがあるんだよ?」
「うん、そう……私も、分かってたつもりだったんだけど」
親友琴葉の突飛な行動。まさかの人数で押しかけられて、
空いてるテーブルが無いと店を追い出されてしまった所恵美たち。
急遽移動した別のレストランで、恵美は今、
申し訳なさそうに項垂れたままの親友に苦言を呈す真っ最中。
「プールっ!? プール行ってたの? いいなー、私も思い切り泳ぎたいー!!」
「そうですよ〜。今度は海美ちゃんたちお二人も、一緒に行けたらいいですね〜」
その隣では恵美とペアで仕事だった海美が、恵美特製オリジナルジュースを片手に
美也から今日の出来事を聞いては大げさに羨ましがっており。
「紬さ〜ん。あんみつの生クリーム、一口分けてくれませんか〜?」
「お断りします。未来さんには、自分の分がちゃんとあるじゃありませんか」
「がーんっ!!」
「そ、そんな顔しても……あげませんよ!」
「うぅ〜……ももこのホットケーキも美味しそう……」
「あ、あげないからね! 違うの頼んだ環が悪いよ」
さらに隣では二人のおねだり光線を浴び、心揺らぐ少女たちの姿もあり。
13 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/08/05(土) 05:06:30.78 ID:DkEnKQtk0
「昼間にいくら泳いだって、コレを食べたら意味ないなって」
「百合子ちゃん……それは分かってても言わないお約束だよ」
そして最後には、ウェストを取るか料理を取るかで悩む非常に乙女らしい会話をする二人が。
……かくして夏の夜は更けて行き、姦しい時間も過ぎ去って。
一人、また一人と家路につくと、店内に最後まで残っていたのは琴葉と恵美の二人だけ。
「まっ、アレだね。琴葉が楽しかったんなら、アタシもとやかく言わないけどさー」
ほんのわずかに残っていたジュースを空にして、
恵美がいつものように屈託ない笑顔を琴葉に向ける。
「優等生は、ハメを外しやすいから。夏だからこそ、気を引き締めなくちゃーダメなワケ」
「ハイハイ、分かってるって言ってるのに」
「にゃはは♪ 言わせてよー。いつもと逆で、滅多に無い機会なんだからさー」
それでも、琴葉の顔は笑顔であった。
恵美の絡み酒ならぬ絡みドリンクを受けながら、
彼女は時間を確認するために携帯を見る。
14 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/08/05(土) 05:08:33.39 ID:DkEnKQtk0
「あっ」
その画面には、メールが一件。差出人はプロデューサー。
「恵美、ちょっとゴメン」
「おっと浮気ー?」
「もう! そんなんじゃないってば」
からかう恵美をあしらって、開いたメールを確認する。内容は琴葉に向けた労いの文面。
彼女の方も環がプールを堪能したこと、思わぬ偶然の出会いから、予定以上にみんなが休日を楽しんだこと。
それらを簡潔な文章でまとめて綴り、送信ボタンを押そうとした直前で……
携帯を操作する指を止め、琴葉が少し考え込む。
「……ねぇ恵美」
「ん、なーに?」
「夏って、何か嬉しいことが起きそうな……そんな季節だと思わない?」
恵美がキョトンとした顔になる。
「なに? アバンチュールとかの話?」
「そういうことじゃないけど……。サプライズ的な?」
「まっ、よく分かんないけど楽しい季節ではあるんじゃない? ほら、『待ちに待ってた』とかつくし」
「やっぱり? そうよね!」
「冬にもつくけどっ♪」
「……台無しよ」
苦笑しながら、琴葉は改めて編集したメールを送信した。
プールで撮ったみんなの写真。その中から選んだ数枚を添付したとっておきの一通が、
仕事に疲れたプロデューサーに爽やかな憩いをもたらすようにと願いを込めて。
15 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/08/05(土) 05:09:26.65 ID:DkEnKQtk0
===
「へっくし! ……夏でも夜は冷えるねー」
「恵美の場合、恰好の問題もあるんじゃないかな?」
そんな風に、他愛のない話を交わしながら歩く夜の道。
駅が近づく。二人が分かれる時が来る。
「じゃねー、琴葉。また明日」
「うん、また――」
いつものように別れの挨拶を交わそうとして、ふと、琴葉は上げかけた片手の動きを止めた。
色々とあった今日という日は、ある意味特別な一日で。
けれども、それは長い人生から見れば、ある夏の日の一日以上の意味は無い。
楽しかった、そして思い出に残ったのは事実だが、
それ以上の付加価値を見出すことができるような、そんな一日では決してないと言う事実。
現に今、彼女はこの"特別だった日"を普段通りに終わらせようとしていたのである。
いつものように分かれる駅前、決まって口にする言葉は……。
16 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/08/05(土) 05:12:15.56 ID:DkEnKQtk0
「……どったの、琴葉?」
気づけば、恵美が不安そうな表情で自分のことを見つめていた。
上げかけていた手を降ろし、琴葉が「ううん、なんでもない」と首を振る。
大切なのは、重要なのは、人生と言う期限が切れるその日までに、
この他愛のない日々――日常を――どれだけ積み重ねていけるかではないだろうか?
『よかったら、このままカラオケに行ってみたりとか……ダメかな?』
そう言って無理に、今日と言う日を特別な日にして終わらすこともできただろう。
だが、琴葉はそれを選ばない。その気になればいつでも言えるワガママより、
いつも口にしているからこそ、大切な約束もあるんじゃないか……?
軽く手を振り、家路につく親友の背中を見送って……。琴葉もまた、歩き出す。
今日は柄にもなくはしゃぎ遊んだので、ぐっすりと眠れることだろう。
そして目が覚めた彼女が向かうのは、仲間が待っている劇場なのだ。
明日も、明後日も、そのまた明日も。
期限が切れるその時まで、続けていければ良いなと思う。
……だからこそ彼女はいつも通り約束し、今日と言う一日を終えることにした。
それが一体、どんな約束だったかと言うと――。
「また明日、劇場で会おうね!」
実に他愛のない約束である、守るのも容易い約束である。
けれども、日々叶えるだけの価値がある。
日焼けした肌を夜風にさらし、道行く琴葉は上機嫌。
見上げた夜空に鼻歌を添え、それは彼女が家に帰るまで、決して途切れなかったそうだ。
17 :
◆Xz5sQ/W/66
[saga]:2017/08/05(土) 05:15:06.11 ID:DkEnKQtk0
===
以上、おしまい。劇場で五人揃った灼熱少女を見れる日が今から楽しみでしかたないです。
では、お読みいただきありがとうございました。
18 :
◆NdBxVzEDf6
[sage]:2017/08/05(土) 05:45:20.60 ID:HzqsRJbB0
琴葉の人復帰するし楽しみだね
乙です
>>1
田中琴葉(18) Vo/Pr
http://i.imgur.com/6IgGD11.jpg
http://i.imgur.com/BwZOzJW.jpg
http://i.imgur.com/dW4tyd1.jpg
http://i.imgur.com/517V6iR.jpg
>>2
大神環(12) Da/An
http://i.imgur.com/rqBdbx1.jpg
http://i.imgur.com/NsXaoYl.jpg
>>5
宮尾美也(17) Vi/An
http://i.imgur.com/FPmoOrB.jpg
http://i.imgur.com/ZKq9jjd.jpg
>>9
春日未来(14) Vo/Pr
http://i.imgur.com/91Qpv1T.jpg
http://i.imgur.com/vZOB6Zf.png
豊川風花(22) Vi/An
http://i.imgur.com/oqAl6Ec.jpg
http://i.imgur.com/sYqJF1L.jpg
>>11
周防桃子(11) Vi/Fa
http://i.imgur.com/VmcaclC.jpg
http://i.imgur.com/ENKoU11.jpg
>>12
高坂海美(16) Da/Pr
http://i.imgur.com/rzLkPNw.jpg
http://i.imgur.com/m9VYe4I.jpg
所恵美(16) Vi/Fa
http://i.imgur.com/TG2Uv46.jpg
http://i.imgur.com/u5BIMFc.jpg
白石紬(17) Fa
http://i.imgur.com/Gr28eIH.png
http://i.imgur.com/mWVrTMQ.jpg
>>13
七尾百合子(15) Vi/Pr
http://i.imgur.com/x7dqS4l.png
http://i.imgur.com/lZ6eO6P.jpg
THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 01予約受付中!
http://www.lantis.jp/imas/release_LACA-15671.html
試聴動画
「瑠璃色金魚と花菖蒲」
http://www.youtube.com/watch?v=RKqrA_dZO4c
「地球儀にない国」
http://youtu.be/RKqrA_dZO4c?t=102
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/06(日) 03:02:46.46 ID:Jyi0YwSso
琴葉が帰ってくる、少し遅れたが明日思い返せば僅かな差だ
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/07(月) 09:25:20.20 ID:9kwy0uO7O
また琴葉の声が聞けるうれしさよ
おかえり、種ちゃん
乙
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