勇者「遊び人と大罪の勇者達」

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165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:36:48.92 ID:ypTt4u9i0
〜夜〜

勇者「ふぅー、今日も1仕事終わった。宿に帰って飯でも……」

「勇者様よ!!」

「キャー!!素敵!!」

遊び人「…………」

「私達のお店にいらっしゃらない?」

勇者「で、でも」

「今夜はバニーガールのダンスショーもあるの。せっかくだから観に来てくださいよ!」

勇者「なっ!!?」

遊び人「…………」

遊び人「行ってくれば。私眠いから先に帰る」

勇者「遊び人?」

「ささ、行きましょ!!」

勇者「ちょ、ちょっと!!」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:37:54.06 ID:ypTt4u9i0
〜宿屋〜

勇者「遊び人が心配で途中で抜けてきちった。普通の病気は神官でも治せないからな」

ガチャ

勇者「遊び人、具合は大丈夫か?飯も食べなかったって宿屋のおっちゃんから聞いたけど」

勇者「おーい」

勇者「…………」

スースー…

勇者「寝息が聞こえる。もう寝てるのか。まだけっこう早い時間だけどな」

勇者「それにしても、いい夜だったなぁ。ご飯もスパイシーでうまかったし、バニーガールのダンスショーもすごかったなぁ」ポワーン

勇者「自分でも、いつからバニースーツ姿のとりこになっていたか思い出せないな。俺の故郷の連中は、みんな僧侶だの賢者だの、真面目な職業の女の子にばかりエロイ妄想ぶつけてたし」

勇者「明日もやるから来てねって言われちゃったよ。困ったな。大罪の装備も探さなくちゃいけないのに」

勇者「まあ、あしたのことはあした考えればいいか」

勇者「風呂入ってこようっと」



遊び人「…………」

遊び人「馬鹿勇者」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:42:05.32 ID:ypTt4u9i0

〜数時間後〜

コンコン

勇者「んっ?ノックされてる。こんな時間に誰だ?」

「宿屋の店主です。勇者様にお見えになりたいという方が来ています」

勇者「わかりました!今でます!」

イソイソ…

ハキハキ…

ガチャリ!

勇者「今下着姿だったので、ズボン履いてました!!それで時間がかかったんです!!」

宿屋「はて?それはさておき、お客様がお見えです」

勇者「お客様?」

宿屋「この谷の警護を司る方です。最近の勇者殿の活躍に、褒美を与えたいという人がおるんです」

勇者「クエスト報酬なら既に受け取ってるけど?」

宿屋「直々にとのことで……」

「まだか。あがらせてもらうぞ」

宿屋「す、すみません!勇者殿が一人で営み中だったようで……」

勇者「ほらーやっぱり!内心そう思ってたんじゃん!わざわざ予防線はったのに!!」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:43:53.70 ID:ypTt4u9i0
遊び人「んもう……なんなのよ。こんな遅くに」

「冒険者殿。ここのところの活躍ぶりは王宮にも知れ渡っている。よくぞこの街に住む変態を成敗してくれた」

遊び人「ぎゃあー!!!変態がいる!!兜と軽装の鎧身に付けてるけど絶対中身全裸の変態がいる!!裸メイルよ!!」

「変態とは失敬な。鎧を身に着けてる時点で全裸ではあるまい」

宿屋「失礼ですぞ、遊び人殿。この方は元々この国の罪人だったが、改心されて、今ではこの谷を魔物の残党から守ってくださっている」

「そういうことだ。人をみかけで判断するとは」

遊び人「……そうね、ちゃんと中身まで見なきゃ……!?」

遊び人は裸メイルの男をしっかりと見た。

遊び人「見える!!勇者、この人付いてるわ!!」

勇者「馬鹿!!何言ってんだよ!!」

遊び人「勇者にも付いてるものよ!!」

勇者「や、やめろって!!///」

宿屋「私にもついているものかな?」ニヤニヤ

遊び人「いや、あんたには付いてない」

宿屋「    」

宿屋の主は黙って部屋を去った。

勇者「おい、いくらなんでも暴言過ぎるぞ」

遊び人「何言ってんのよ。私には見えるって言ったじゃない!」

遊び人「あなた!!精霊を宿しているわね!!」

「ほほう、変わった能力の持ち主だな」

遊び人「ということは……」

色欲「ご明察の通り。元勇者だ」

色欲の勇者があらわれた。
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:46:44.16 ID:ypTt4u9i0
【TIPS】

処刑の王国は、他国から嫌われている。

勇者の通報に賞金がかけられた後になっても、勇者を処刑の王国に差し出そうというものは現れなかった。

世界を救うために人生を犠牲にしていた勇者を差し出したことが知れたら、裏切り者のレッテルを貼られることになり、処刑の王国以外では生きられなくなってしまう。

富豪の家に侵入して金品を奪う盗賊も、勇者を捕まえて大量の賞金を得ようなどと、割に合わないことは考えることもなかった。

勇者は、魔王の支配無きあとも世界の役に立つ、

元々戦闘能力が高いため、警護の仕事につく。

冒険で得た人脈や知識やルートを利用し、店を開く者もいる。

処刑の王国に正体を知られぬよう、勇者は己の身分を隠しながら生きるが、周囲の者は只者ではないと薄々気づくことになるのだった。

身を隠しながら生きる勇者もいれば、勇者であることを親しい住人に認めながら生きる勇者もいる。

いかなる場所においても、勇者が勇者であると、真に正体を知る存在は1人。

教会の神官である。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:48:20.85 ID:ypTt4u9i0
暴食の勇者達を襲った男を、処刑人(仮)としばらく呼びます。
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:54:15.41 ID:ypTt4u9i0
〜とある町にて〜

処刑人「ここに勇者は運び込まれていませんか」

神官「…………」

処刑人「僕の友人がこの付近でなくなったと聞いていて。死体を蘇らせたいのです」

神官:ようけんはなんですか。どくをちりょうしますか。のろわれたそうびをかいじょしますか。

処刑人「聞き飽きたよそのセリフは。勇者に関することを聞くと途端に目が虚ろになりやがる」

処刑人は神官の頭を掴んだ。

神官の頭は混乱した。

処刑人を仲間だと思い込んだ。

処刑人「話せ。精霊の加護で復活させたものはいるか」

神官「御霊を身体に呼び戻したものはおります。勇者と、踊り子と、魔法使いと、僧侶のパーティです」

処刑人「いつだ」

神官「4年前です」

処刑人「くそが」

神官は気絶して倒れた。

処刑人「俺はな、お前ら神官を皆殺しにしたってかまわないんだぜ」

処刑人「お前らは無知だ。神官という職業に選ばれながら、神官のことを何も知らない。精霊殺しの陣を敷かれている魔王城であろうが、神官の元で復活できる方法さえある。お前らは死んだ勇者とメンバーをを蘇らせることしか考えようとしない」

処刑人は教会を去った。

処刑人「王国の魔術師どももまるで使い物にならん。対人間用の洗脳呪文を覚えてるやつなどろくにいない。勇者に限定した感知呪文ともなると、家ひとつ分の距離しか測れないやつもいるざまだ」

処刑人「この俺様が、いつまでこんなことを続ける必要がある」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:55:23.67 ID:ypTt4u9i0
色欲「さぁ。好きなだけ食事を取ってくれ」

色欲「それとも、あっちのほうがお好きかな?」

長テーブルには、大勢の美女が座っていた。

遊び人「…………」

勇者「こ、これは一体」

色欲「君たちの活躍ぶりは有名だよ。お礼をしないといけないとみんな思っていてね。特に僕達防衛師は、谷の近くに住む危険な魔物の残党処理に手がいっぱいで、町中の治安まで守りきれないのさ。谷の魔物はめんどうくさいのが多いんだ」

色欲「僕個人も興味がある。君たちの話を聞きたい。何のために冒険していて、どうしてこの谷にたどり着いたのか」

勇者「なるほど」

遊び人「この女性の方々は?」

色欲「3人だけというのも味気ないだろう。みんな勇者様をひと目みたいと言っていた」

「勇者さまぁ!!」

「本物に会えるなんて!!」

勇者「えへ、えへへ」

遊び人「…………」ゴホン

勇者「…………」

色欲「さあ、宴のはじまりだ!!今夜は誰も寝かさないぞ!!」

裸メイルの元勇者は立ち上がり、乾杯をした。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:56:03.35 ID:ypTt4u9i0
遊び人「裸メイルやめてほしいなぁ。目のやり場に困るよ。バニーガールもきわどいかっこうしてるし」

勇者「まったくだ。命を守る装備を舐めてるのか。ムカムカして腹がタちそうだ」ムラムラ…ムクムク…

遊び人「(どうして道具袋をひざの上に置いてるのかしら)」

踊り子「勇者者さまぁ!お話を聞かせて!」

勇者「ええー!聞きたい!?」

踊り子「やーん、こっちの女の子もかわいー!」

遊び人「ど、どうも……」

色欲「女ばかりで退屈か?呼べば男もいるぞ。屈強な男、細身の男、肥えた親父。どれがお好みかな」

勇者「こいつは脂ぎった肥えた親父が好みでしてね」

遊び人「何言ってんのよ!!けっこうです!!」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:56:37.29 ID:ypTt4u9i0
バニーガール「ちょっといい?おとなり失礼しまーす!」

勇者「バ、バ、バババ!!」

勇者「バー!!!!」

勇者「バニーガールだぁああ!!!!」

バニーガールA、B、C、D、Eがあらわれた!

バニーガール「お飲み物お注ぎしますわ」

バニーガールのこうげき!

勇者は胸元に見惚れている。

勇者「すぅううーーーーー」

勇者は大きく息を吸い込んだ。

甘い香りが体内に入っていくのを感じた。

体力が15回復した!

遊び人「あ、あのやろう……」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 13:57:26.13 ID:ypTt4u9i0
踊り子「今夜はありがとう。またお話しましょうね」

遊び人「うん。またね」

バニーガール「おやすみ、勇者様」

勇者「にへ……にへへ……」

遊び人「こいつは」

色欲「満足いただけたようで何よりだ。僕も君たちの話が聞けて楽しかった。君たちの馴れ初めの話なんか特にね」

遊び人「馴れ初めというか!!腐れ縁のはじまりといいますか」

色欲「もう夜も遅い。君たちもここに泊まっていったらどうだい?部屋もあいてるよ」

遊び人「宿屋に大事な荷物とかもあるので。今日は帰ります」

色欲「そうか。それじゃあ、手短に。最後に本題に入ろう」

遊び人「本題?」

色欲「優秀な君たちに、頼みがあるんだ」



色欲「大罪の装備というものが盗まれた。君たちに、それを見つけて欲しい」

色欲「褒美として、その『色欲の鞭』をそのままわたそう」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:00:27.34 ID:ypTt4u9i0
遊び人「色欲の鞭、というものに選ばれたあの色欲の勇者様だったのね」

遊び人「それを信頼できる神官に預けていたけど、盗まれたとのことだった」

遊び人「こんな簡単に大罪の装備にたどり着くとはね」

勇者「ああ。でも、元勇者が見つけられないとなると、どうやって探せば良いのか」

遊び人「この谷が性欲に溢れるようになったのは、大罪の装備の影響からだと聞いたわ。元々は戒律の厳しい谷だったって」

遊び人「まだ影響が色濃く残っているということは、この谷に住む誰かがずっと所持しているのよ」

遊び人「色欲の勇者様はその鞭を神官様に預けていたというわ。でも、神官様がある日倉庫の中に入ったら、鞭はなくなっていたそう」

遊び人「鞭は高級な装備の1つだからね。大罪の装備と知らずに盗んだ住民がいるのかもしれないわ」

勇者「どうして色欲の勇者は神官に預けたんだ?暴食の勇者だって大罪の装備との出会いは餓死寸前の時だった。きっと印象深い出会いがあったであろうものを、そう簡単に他人に預けるのか」

遊び人「きっと、遠ざけたかったのよ。それも、色欲とは1番無縁そうな神官様にね。邪な心に溢れてるものは神官という職業につけないもの」

勇者「それは世界のイメージにすぎないと思うけどな」

遊び人「そうかしらね。なんにせよ、色欲の勇者が鞭を手元に置かなかったのは、装備の誘惑に駆られないようにするためだったに違いないわ」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:01:03.65 ID:ypTt4u9i0
遊び人「暴食の鎧はあらゆるものを飲み込み自分の糧とする力を備えていた。色欲の鞭は……」

勇者「色欲の鞭は?どんな効果がある?」

遊び人「なんだろう。色欲を司るくらいだから……」

遊び人「…………」

遊び人「…………」カァァ///

勇者「どうした?今何を想像した?」

遊び人「し、してないわよ!!この変態!!」

勇者「変態?腰を打ったら子宝に恵まれるんだろうなとか、そんな想像をした俺が変態?」

遊び人「あんたにしてはまともな想像を……」

勇者「君は何を想像したんだい!?色欲の鞭は何の効果をもたらすと思ったんだい!?」

遊び人「うるさいなぁ!!もう寝る!!」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:06:28.70 ID:ypTt4u9i0
勇者「それにしてもさ、今回はすぐに手に入りそうでよかった」

遊び人「そうね」

勇者「探すのに10年もかかっちゃったら、この冒険の意味がなくなってしまうからな」

遊び人「…………」

勇者「俺も世界各地の異変を自分の冒険で味わって。冒険譚を自分で書いて。故郷のやつらから尊敬の眼差しを集められる日が待ち遠しいよ」

勇者「この谷に隠れている色欲の鞭を隠し持った犯人を、明日にでも暴いてやらないとな」

遊び人「勇者……」

勇者「ということで、明日もお互い元気に張り切っていこう!おやすみ!」

遊び人「うん!おやすみ、勇者」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:07:05.25 ID:ypTt4u9i0





アン…

アンアン!


アンアンアン!

勇者「…………」

遊び人「…………」

勇者「(気まずい)」

勇者「(両隣の部屋からすごい音が……)」

勇者「(遊び人、起きてんのかな。寝てたらいいんだけど)」

遊び人「…………」

遊び人「…………」グゥ〜…

遊び人「あっ…」ボソ

勇者「(なんでお腹鳴ってんだよ。絶対起きてるじゃん。お腹空いちゃってんじゃん。あっ、とか言っちゃってんじゃん!)」

遊び人「…………」

遊び人「グ、グゴ〜」

勇者「(うわっ!!いびきのモノマネへたくそ!!)」

勇者「(自分が寝ていることをアピールすることと同時に、さっきの腹の音はあくまでもいびきの音だと誤魔化そうとしはじめた!!いびきの音もたいがい恥ずかしいからな!!)」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:07:37.58 ID:ypTt4u9i0
〜翌朝〜

宿主「きのうは おたのしみでしたね」

冒険者カップル「えへへ///」

宿主「きのうは おたのしみでしたね」

街人カップル「どうも///」

宿主「きのうも おあずけでしたね」

遊び人「…………」

勇者「…………」
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:09:59.84 ID:ypTt4u9i0
勇者、遊び人、色欲、踊り子の四人は広場を歩いていた。

勇者「……だめだ」

遊び人「鞭の持ち主は見つかりそう?」

勇者「変態感知にひっかからない。いつもなら『ピキン!』っていう音が脳内に響くのに」

遊び人「持ち主はただの鞭目当てで、変態な人ではなかったりして」

色欲「そんなことはない。どんなものでもあんな鞭をそばにおいておけば性欲をコントロールされる」イチャイチャ

色欲「やたらと急速に人気が出ている店を中心に見張りを送っている。女性がSMプレイに使っているのであれば、必ず男はその女性のとりこになる。女性があくまで仕事のために使用しているのならば、勇者殿の変態感知には引っかからないかもしれない」イチャイチャ

勇者「その場合はお役にたてなさそうだ」

色欲「消去法の手がかりになるだけでも大いに助かっているよ」イチャイチャ

勇者「どういたしまして」

遊び人「…………」

色欲「今日はここまでだ。明日また捜索を手伝ってくれ」イチャイチャ

踊り子「うふふ、またね」イチャイチャ



遊び人「ずっと踊り子さんのお尻触ってたわね」

勇者「ここにいると性の倫理観がおかしくなりそうだ」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:10:40.41 ID:ypTt4u9i0
〜宿屋〜

勇者「提案。俺もたまには窓際で寝たい」

遊び人「そうしたら夜トイレで起きたときなんか私のスペース通るじゃん」

勇者「通って悪いかよ」

遊び人「寝顔とか寝相見られるじゃん」

勇者「俺もたまには物憂げに夜の窓の外の景色を見たりしたいよ」

遊び人「まあ、たまにはいいけど。じゃあ今日はチェンジで」

勇者「やったー!」

遊び人「子供じゃないんだから。私お風呂行ってくるわね」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:11:14.70 ID:ypTt4u9i0
遊び人「はぁー。浴槽が修理中だなんて。身体だけ洗ってはやくでてきちゃったよ」

ガチャリ

遊び人「ねえー、聞いてよ。お風呂がさ……」

勇者「……くっ」

勇者「んっ…はぁ、はぁ…」

遊び人「(えっ、えっ?)」

遊び人「(勇者、何してるの?)」

勇者「はあ!……んあ!」

勇者「くっ!!!」

勇者「はぁ……!!はぁ……!!」

勇者「ふぅ……」

バタン

勇者「ん?今ドアの音が聞こえたような。気のせいか」

勇者「最近魔物と戦ってなかったし。鞭の持ち主と戦うことになったときに体力切れはまずいからな。気持ちだけでも身体を鍛えておかないとな」

勇者「さて、俺も風呂に入ってくるか」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:12:04.02 ID:ypTt4u9i0
〜翌朝〜

遊び人「昨晩はお楽しみでしたね」ニヤニヤ

勇者「ん?」

遊び人「精気も養ったし出発しますか。それとも失ったのかな?」

勇者「何のはなしだ?」

遊び人「ささ、今日も張り切っていきましょ!」




〜街中〜

勇者「怪しいやつもいない。今日も見つからなかったな」

遊び人「怪しいやつがいすぎてわからなかったわ」

勇者「こんなに目を凝らして探してるのに」

遊び人「勇者はバニーガールのお尻ばっかり見てたじゃない」

勇者「なっ!!尻じゃねえ!!俺は網タイツをだな……」

遊び人「…………」

勇者「いや、これは男の性というか」

遊び人「本能っていう言葉で何でも許されると世の殿方はみんなお思いのようですね」

遊び人「まったく。どうして男性はこうも……」

遊び人「…………」

遊び人「…………」

勇者「ん?どうした?」

遊び人「え、いや、べつに」

勇者「今通り過ぎた書店に見入ってたよな?なんか欲しい書物でもあったのか?」トコトコ

遊び人「いや、ちょ!べつに!」

勇者「…………」

勇者「ガチムチの戦士(♂)と武道家(♂)がいちゃついてる表紙の娯楽書があるんだが」

勇者「えっ?今まで散々まともなキャラでこちらの批判をしてきてたのに?ええー、そうなんですかー」

遊び人「ち、ちがうって!!」

遊び人「な、なんだろ。ちょっと気になっただけよ!魔が差したというか!今までの街にはなかったじゃない!」

勇者「こんやはおたのしみですね」

遊び人「買わないわよ!!」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:13:07.40 ID:ypTt4u9i0
〜宿屋〜

遊び人「お風呂入ってさっぱりしたぁ。今日は勇者にいじられて散々だったからなぁ」

遊び人「勇者だってチラチラ大人の書物を見てたくせに。私が気を遣って黙ってあげてたっていうのに」

遊び人「バニーガールがそんなに好きなのか」

遊び人「…………」

遊び人「やっぱり勇者も男の子だし、いろいろ我慢してるのかなぁ」

遊び人「この谷にいる時くらいは、お風呂上がりに半裸でいることくらい多めに見てあげようかな」

ガチャ

遊び人「おまたせ。浴槽の修理も終わってていい湯だったわ」

勇者「えっ……」

遊び人「勇者もお風呂入ってきなよ。なんだかスースーして涼しくて気持ちいいよ」

勇者「あの……」

勇者「その姿……」ボッ///

遊び人「えっ?」

遊び人「べつに、ただの下着姿じゃない」

遊び人「…………」

遊び人「えっ!!!??」

遊び人「わたし!!なんで!!!?」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:14:17.53 ID:ypTt4u9i0
勇者「おーい。布団にくるまって、大防御のつもりか」

遊び人「……ほっといて」

勇者「混浴に入ったものだと思えばいいだろ。薄手のタオル一枚よりはよっぽど厚着だ」

遊び人「女心も知らないで!!」

勇者「だったら水着だと思えばいいだろ」

遊び人「水着でも恥ずかしいのよ!!」

勇者「じゃあバニースーツを着れば……」

遊び人「なんで慰めに乗じてバニースーツ着せようとしてんのよ!!」

勇者「まあまあ。俺の半裸姿もあとで見せてやるから」

遊び人「それでおあいこみたいな雰囲気ださないでよ!!はやくお風呂でもいってきて!!」

勇者「そう怒るなって。俺もわるかったよ。じゃあ行ってくる」

ガチャ…

勇者「…………」

勇者「俺は悪くないよな……」

勇者「…………」

勇者「あいつ、あんな下着身に付けてたのか……」



ゆうしゃは レベルアップ した!
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:18:00.70 ID:ypTt4u9i0
〜翌日〜

勇者「今日も色欲の勇者は魔物狩りで来れないらしい」

遊び人「また?大罪の装備が盗まれてるのよ?何が起きるかわからないわよ。わたしだってこの場所の影響を色濃く受けちゃってるみたいだし……」

勇者「元からそうしたかったとかではなく?」

遊び人「…………」ギロ

勇者「なんでもないです」

2人は捜査のためにあるき出した。

勇者「大罪の装備は持ち主を選ぶんだよな」

勇者「その持ち主以外が使用したら、どうなるんだ?」

遊び人「ふさわしいと思う持ち主の場所に飛んでいくだけみたいなの。使用は誰にでもできるわ」

勇者「そうだよな。だとしたら、新しく手に入れた者こそ、持ち主としてふさわしいとも言えるのかもな」

遊び人「どういうこと?」

勇者「本当に大事なものだったら最初の持ち主は手放さないし」

勇者「それを奪うってことは、最初の持ち主よりもそれを必要としてるってことだから」

勇者「人間でいう、略奪愛みたいなもんじゃないか」

遊び人「勇者の口からそんな言葉が出る日が来るとは思わなかった」

勇者「ふさわしいものはふさわしいところへたどり着く。運命の人は最初じゃなくて最後に出会う。これが俺が、過去の恋愛経験から学んだことだ」

遊び人「なにそれ、初耳なんだけど。どんな恋愛経験したのよ」

勇者「俺だって色々あるぜ。気になってた女の子から、回復呪文をかけて貰ったり。落とした短剣を拾って貰ったり」

遊び人「あちゃー……」

勇者「そんな哀れんだ目で見るなよ!」
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:19:02.74 ID:ypTt4u9i0
〜宿屋〜

遊び人「今日も成果なしだったね」

勇者「ああ」

勇者「そろそろ日にちが経ちすぎてるな。遊び人、俺達の他に大罪の装備を探しているやつは、この谷に近づいてるか?」

遊び人「……まだ大丈夫みたい。全然検討違いの場所を探していると思う」

勇者「そっか。よかった」

勇者「いつまでもってわけにはいかないからな。その特殊な呪いの正体もいつ相手にばれるかわからないんだろ」

遊び人「うん」

勇者「大丈夫。明日こそ、俺が探し出してやるから。今日はもう寝よう」

遊び人「勇者、ありがとう」

勇者「気にすんなって。おやすみ」

遊び人「おやすみなさい」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:20:12.30 ID:ypTt4u9i0
勇者「…………」

遊び人「…………」

勇者「あのさ、質問があるんだけど」

遊び人「私もあるんだけど」

勇者「なんで俺の布団の中に入ってんの?」

遊び人「あんたこそなんで私の布団の中にはいってんのよ!!」

勇者「俺が窓際で寝ていいってことになってたじゃん!」

遊び人「それはあんたが寝たいって言った日限定でしょ!!」

勇者「しかも!!」

遊び人「なによ!!」

勇者「お前、また下着姿なのな」

遊び人「…………えっ」カァァ///

遊び人「ギャー!!」

勇者「ふ、服着ろって!」カァァ///

遊び人「あんたに言われたくないわよ!!」

勇者「じゃあ着ないのかよ!」

遊び人「着るわよ!!てかあんたも半裸じゃない!!」

勇者「えっ?」

勇者「あっ、まじだ。でも俺はいいだろ」

遊び人「よくないわよ!!」

勇者「俺は遊び人がどうしてもと言うならそのままでもいいけど」

遊び人「よくないわよ!!!」

アンアン!!ギシギシ!!アンアン!!

勇者・遊び人「(しかも今日も隣の部屋がうるさい!!)」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:23:25.62 ID:ypTt4u9i0
〜隣の部屋〜

色欲「ふふっ、結局勇者の皮をかぶってもただの雄じゃないか」

色欲「精霊の加護なんてものに守られて、命を永遠に感じているから異性に手を出さないだけだ」

色欲「男が死の際で考えることなんか、性のことだけだ」

色欲「なのに、普段からそうやって、性に無頓着なふりをしていると、今はの際でも自分の性欲に忠実になれない」

色欲「純情なんかを守って。純愛なんかを崇拝して。そうして、肉欲に塗れることを選ばなかった過去を後悔すればいいのさ」

色欲「かつての、僕のように」

「はぁ…色欲さまぁ……もっとご褒美を……」

「わたしもいじめてくださいませぇ……」

色欲「ああ。抱いてやるさ。とことんな」

色欲の勇者は腰を振り続けた。
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:25:30.83 ID:ypTt4u9i0
遊び人「えっ!?見つかった!?」

色欲「ああ。冒険者から情報を集めた。まだ回収はしていないが、持ち主は確実に特定した」モミモミ

踊り子「ああん///」

遊び人「(また踊り子さんのお尻を……)」

勇者「(色欲の勇者さん。今は真剣な話し合いの場ですよ。謹んでください)僕も先日遊んでくれたバニーガールさんのお尻を拝借してもよろしいですか?」

遊び人「はっ?」

勇者「えっ?」

勇者に30のダメージ
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:26:28.29 ID:ypTt4u9i0
遊び人「誰が持ち主だったんですか?」

色欲「それは教えられない」

勇者「俺たちに色欲の鞭をくれる約束じゃ?」

色欲「君たちが色欲の鞭にふさわしい存在ならと言ったはずだ。」

色欲「探す猶予期間を与えたのに、君たちは僕より早く見つけることができなかった」

色欲「そんな者達が、色欲の鞭の誘惑に耐えられるとは思えない」

遊び人「耐えられますよ。大罪の装備の力を封じ込める壺があるんです。それに入れれば……」

色欲「そこの勇者が、その壺を割る可能性は本当にないのか?」

勇者「俺が?なんで?」

色欲「色欲の鞭で叩かれた人間は、性の喜びに忠実となる」

色欲「現在の持ち主も随分楽しんでいるようだよ。自分に忠実な女性を増やしてね」

勇者「!?」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:27:18.16 ID:ypTt4u9i0
遊び人「い、一刻もはやくとめないと!!女性がそんな目に遭ってるのに放置できないわ!!」

色欲「大丈夫だ。相手は老人だ。女性を従えるのに夢中になっているが、直接触れたりはしていない。全く新しい形の、性欲に塗れたプラトニックラブだ」

遊び人「だからって許されるわけないでしょ!!」

勇者「そうか!!」

遊び人「何かわかったの?」

勇者「俺の感知の『ピキン!!』という感覚だが」

勇者「何が『ピキン!!』となっていたか、今わかった気がする」

勇者「その犯人の息子は、もう引退をしていたんだ!!」

勇者「だから俺の感知が反応しなかったんだ!!」

遊び人「…………」

遊び人「あんた確か街中歩いてる時に自分に対して……」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:49:58.86 ID:ypTt4u9i0
勇者「心配なのは女性だけじゃない」

勇者「大罪の装備は使用者の寿命を削る。それは持ち主ならわかってるはずだ」

色欲「寿命を……削る?」

勇者「他に使用したことがある者も言っていた。そんな感覚を覚えなかったのか?」

色欲「鞭を初めて振るった時のあの消え行く命の感覚は、そういうことだったのか……。てっきり、過去を思い出しただけかと……」

勇者「今の持ち主はそのことに気づいていないかもしれない。一刻もはやくとめないと」

色欲「…………」

色欲「俺が一人で取りに行く」

勇者「なんでだよ!!」

色欲「色欲の鞭に選ばれたのは俺だからだ」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:51:05.67 ID:ypTt4u9i0
遊び人「あなた、何が目的なのよ。やってることがいったりきたり」

色欲「質問は終わりだ。教えてほしかったら持ち主としてふさわしいことを示してくれ」

勇者「どうやって」

色欲「禁欲で勝負をするんだ」

色欲「より長い時間、射精を堪えた者が勝利とする」

遊び人「    」

勇者「なんだよそれ……」

踊り子「んふふ///」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:55:13.93 ID:ypTt4u9i0
〜怪しい大人のお店〜

遊び人「…………」ソワソワ…

遊び人「……ああ!!」

遊び人「落ち着かない!!なによこの馬鹿げた勝負!!」

遊び人「いやらしい格好をした女性と密室で二人きりになって、性欲を呼び起こすやくそうを飲み込むなんて!!」

遊び人「暴食の勇者といい!!色欲の勇者といい!!自分たちが大好きなものを耐える勝負をどうして持ち出そうとするのかしら!!」

遊び人「この扉に入ってから8分……中はどうなってるんだろう」

遊び人「ああ!!やっぱりこんな谷に来るんじゃなかった!!」

遊び人「勇者は暴食の勇者との断食勝負に、水も飲まないで6日間も耐えたわ。精霊の棺桶に入れられるぎりぎりまで耐えた」

遊び人「一体、この部屋で何日間耐えられるのかしら」

遊び人「こんな気分でずっと勇者が耐えるのを待ってないといけないなんて!!」

遊び人「はやくこんな勝負終わればいいのに!!」

ガチャ…

勇者「…………」

遊び人「えっ?」

勇者「世界を、救えなかった」

勇者のせいしはぜんめつした。
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:55:50.48 ID:ypTt4u9i0
遊び人「…………」

勇者「ごめん……」

遊び人「別にいいよ」

勇者「本当ごめん」

遊び人「怒ってないって」

勇者「媚薬の効き目がものすごくて」

遊び人「どうでもいいってば!!!」

勇者「…………ごめん」

遊び人「だから、謝らなくてもいいって」

勇者「殺してくれ……」

遊び人「蘇らせるのにお金かかるからいいよ」

勇者「……ごめん」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:57:17.01 ID:ypTt4u9i0
色欲「情けない勇者だ。10分経たずにでケリがつくとは思わなかった」

踊り子「私の魅力が凄かったことは疑わないのかしら?」

色欲「ふふ、それは言えるかもな」

色欲「シャワーを浴びてきてくれ。あんな雑魚に君を抱かれたかと思うと嫉妬で興奮が収まりそうにない」

色欲「勝つものが抱く。これが自然界の摂理だ。さあ、今日は存分に楽しもう」

踊り子「シャワーを浴びる必要はないですよ」

色欲「なんだって」

踊り子「あの人、私に指一本触れてませんもの」

色欲「触れてない?」

踊り子「私の誘惑も、全部拒絶したんですもの。おしゃべりをして、あの人が自分で自分の性欲を部屋の隅で処理しただけよ」

踊り子「私があの勇者に迫って、生まれてから守ってきたものを奪ってあげようとしたの。そしたら言われちゃったのよ」

色欲「なんて」

踊り子「それを すてるなんて とんでもない!」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 14:59:15.40 ID:ypTt4u9i0
踊り子「ねえ、勇者様。性欲って悪いことじゃないわよね」

色欲「当たり前だ。楽しむためだけの性欲が認められていいに決まってる」

踊り子「そうですよね。でも、その楽しむためだけの性欲以上に。大切なことが、まさか男性の中にもあったりするみたいです」

色欲「…………」

踊り子「際で見せるのがその人の真の姿なら」

踊り子「敗北を確信した時の姿と、勝利を確信した時の姿を比べてもいいのでは?」

踊り子「性欲に勝ち負けなんてないですけどね。それでも、禁欲という勝負においては。たとえあの勇者は勝利していたとしても、そのまま私のところに戻って身体を求めようとはしなかったでしょう」

踊り子「あの勇者にね、私の仕事を否定する気かって尋ねたの。そしたら首を振ってね」

踊り子「あの子に馬鹿にされる自分のままがいい、って言ってきたの」

踊り子「穢れなき性欲に対して、罪悪感を感じてしまうその心」

踊り子「戒律の厳しかったこの谷で、私の身体を買って捕まって、パーティメンバーに泣いて詫びていた」

踊り子「かつての色欲の勇者様、そっくりじゃないですか」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:01:45.50 ID:ypTt4u9i0
(宿屋)

勇者「ムラムラして、すみません」

遊び人「…………」

勇者「バニーガールならともかく、踊り子にムラムラして、冒険の目的を見失ってしまってすみませんでした」

遊び人「…………」カチン

遊び人「もう……ほんと馬鹿」

遊び人「そりゃあ、かなりかなり思うところがあるけどさ」

遊び人「しょうがないわよね。女だからよくわからないけどさ。男の子って大変なんでしょ?」

遊び人「他に手段を考えましょう。四六時中尾行するとか、私達も聞き込みするとかしてさ」

勇者「ごめん……」


コンコン

遊び人「ん、ノック?」

ガチャ

色欲「支度を整えろ」

遊び人「何の用よ!!」

色欲「色欲の鞭が欲しいんだろ。俺が預けた神官が所有している。あの神官が乱用しはじめただけで、誰からも盗まれちゃいなかったんだ」

勇者「えっ……」

色欲「奪いにいくぞ。よりふさわしい者が持つべきものだからな」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:04:08.40 ID:ypTt4u9i0
〜外〜

遊び人「しまった!部屋の中にやくそう袋忘れた!!ちょっと待ってて!」

トットット…

色欲「外で交尾が許される国を俺は知らない」

勇者「二人きりになった時の第一声がそれですか」

色欲「交尾は愛し合うパートナーがいるものであれば誰もがやっている。しかも開放的な場所でやりたいことだろう」

色欲「俺も色んな国をまわってきたが、そこまで性に開放的な国はなかった。獣が外で交尾をするこの世界で、人間が太陽の下で交尾をすることが許される場所は俺は見つけられなかった」

色欲「性欲は、どうして隠されてしまうのだろう。誰もが興味あることなのにもかかわらず、公では隠されてしまうのだろう」

色欲「好きな女の子のためにしか性欲を捧げたくないという気持ちや、好きな女の子だけには性欲を押し付けたくないという男もいる」

勇者「男は四六時中女性の裸を考えているだとか、息子を穴に挿れることばかり考えて生きているとか、それは辞めて欲しいですよね」

勇者「確かにそういうことだけを考えている男は多いし。いや、たしかに全ての男はそういうことを1日中考えているんだろうけど」

勇者「そういうことを考えている男でも、1日のうちのいくらかの時間は、性を完全に拒絶するような純愛を心の中であたためていたりしますからね」

勇者「性欲さえ拒絶する男の子の魂があることを、この世界はあまりにも知らなさすぎますよ。女も知らないし、そして、知らない男もいる」
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:06:48.65 ID:ypTt4u9i0
色欲「俺は、純愛を諦めたつもりになっていた。いや、諦めたふりをしようとしていた」

色欲「かつて、パーティメンバーに愛している女がいた。踊り子だった」

色欲「俺はその踊り子に性欲を向けるようなことを決してしなかった」

色欲「ある時この谷にたどり着いて、女性を買ったことがあった。踊り子という職業だ。それがばれて、仲間の踊り子がどんなに悲しそうな顔で無理して笑ってきても、俺はこれが最善の選択だと思っていた」

色欲「性欲をぶつけないことで、性欲以上の美しい感情があることを示したかった」

色欲「その女を抱きたいと、心の奥底では思っていたさ。けれど決して認めなかった。拒絶されることを恐れたからかもしれないし。今楽しく笑っていられる美しい時間を壊すことを自分で許せなかったのかもしれない」

色欲「やがてこの谷に再び戻ってきた。そして、この谷を魔物から守った。そんな俺を慕う女はたくさん現れた。食事や睡眠を毎日とるように、俺は女を抱き続けた」

色欲「自分の性欲についてさえ、俺は、よくわかっていない。ましてや、女の性欲についてなどわからない。俺が惚れていた女は、どういう性欲を抱えていたのか。性欲をどう認識していたのか。美しい純情を求めすぎていたせいで、何もわからずじまいだった」

色欲「今も答えを探し続けているが、わかりそうにない。女に直接尋ねてみても。美しき女たちと身体を重ねて、何度腰を振っても。何度喘ぎ声を聴かされても。俺は、女を理解してやれない」

勇者「俺もだ」

童貞は頷いた。

色欲「冒険に性欲は付き物だ。なのに、誰も真摯に向き合おうとはしない」

色欲「俺は答えを出せそうにない。だから、勇者。お前がお前なりの答えを出してくれ」

色欲「まずは、色欲の鞭に打ち勝て」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:08:11.06 ID:ypTt4u9i0
〜教会〜

色欲「神官よ!!戻っているか!!」

信徒A「あぁん///神官様ぁ///」

信徒B「強く説教してくださいまし///」

信徒C「あの鞭でもっと強くおしかりになって///」

色欲「なんだこの有様は。ここまで洗脳が強いものだったのか」

遊び人「きっと、色欲の鞭の使い方に慣れてきたのよ。取り憑かれたというべきかもしれないけど」

色欲「神官だけは信じていた。教会に立ち寄った冒険者から噂を聞きつけた時はまさかと思ったが……」

色欲「今はどこにいるんだ……」

勇者「…………」

――ピキン。

ピキピキ……

バキバキバキバキ!!!!!

勇者「!!!!??」

遊び人「どうしたの!?」

勇者「ま、まずいぞこれは!!!」

勇者「神官の神官が蘇った!!!」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:17:52.08 ID:ypTt4u9i0
遊び人「はぁ!?」

勇者「最近まで教会の秩序が最低限保たれていたのは、モノがなかったからだ。だからこそ、女性は手出しをされずに、鞭で叩かれるだけで済んでいた」

勇者「これからは本当の大罪人になりかねないぞ!!こんなブツ、今まで感じたことがない!!!」

色欲「……非常事態だな。わかった。隣街から最強の魔術師と僧侶を連れてこよう」



〜隣町〜

魔法使い「なによ、今更呼び出して」

僧侶「はぁ。私達を側室にでもする気でしょうか」

色欲「突然すまない。でも、命がけのことなんだ」

魔法使い「命がけねぇ。それで、死んでも精霊の加護で蘇るパーティメンバーの私達を呼んだってわけ?」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:18:49.61 ID:ypTt4u9i0
【TIPS】

『パーティメンバー』

勇者と魔王撃退の契を結んだもの。

精霊が人間から勇者を選ぶように、勇者が人間から仲間を選ぶ。

勇者は、勇者が認めたものとパーティメンバーを組むことができる。

しかし、魔王が死したという噂が流れてからは、パーティメンバーを組むことができなくなった。

勇者という職業は、魔王撃退のために存在しているようなものだった。

魔王がいなくなったと知った勇者達は、『魔王を倒すために結束する』ことができなくなった。

救いは、契約の更新は効かなくなったが、魔王が消える以前に結んだ契であれば継続することであった。
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:21:56.71 ID:ypTt4u9i0
僧侶「でもそれは、私達があなたをまだ勇者と認めている場合に限りますわ」

色欲「でも君らはこうして来てくれた」

僧侶「…………」

色欲「死んでも教会で復活するという理由だけで君たちを選んだんじゃない」

色欲「今の僕の乱れぶりに君たちがどんなに失望しているかはわかっているつもりだ。それでも、君たちの力が必要なんだ」



僧侶「…………」

僧侶「私は、いけないわ」

色欲「……そうか」

僧侶「あかちゃんが、できたの。」

色欲「なっ!」

僧侶「け、結婚したのは知ってたでしょ!」

僧侶「私自身に精霊の加護があるにしても、お腹の中の子供が刺されたら……」

色欲「おめでとう!!」

僧侶「あ、ありがとう」

色欲「幸せそうで何よりだ」

魔法使い「うう……かつての仲間に嫉妬しそうだわ。私もいい年なのに……」

僧侶「かつての仲間と結婚したらどう?」

魔法使い「やりちんはパス」

色欲「あはは……」

魔法使い「まあ、ちょっくら手伝ってやるくらいならいいけどね」

色欲「魔法使い……」

魔法使い「……あの子のためにもね」ボソ…
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:22:43.07 ID:ypTt4u9i0
勇者「精霊の加護で蘇るかぁ」

遊び人「何か気になるの?」

勇者「今倒そうとしている神官は、まさにこの谷の神官なんだろ?俺達が死んで蘇生したら、どこで蘇るんだ?」

遊び人「あっ……」

遊び人「うーん、運が良ければ、谷からもっとも近い場所であるこの街の教会で蘇るわね」

魔法使い「運が悪ければ?」

遊び人「変態神官の目の前で蘇る」

魔法使い「嫌よ!!」

遊び人「全滅しても蘇るのは勇者だから大丈夫よ」

遊び人「色欲の鞭に支配されていたら、オスメス見境なく何をするかはわからないけど……」

勇者「…………」ゾワッ

遊び人「迷っている時間はないわ。早く捕まえに行きましょ」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:24:40.22 ID:ypTt4u9i0
――ピキン!!ビキビキ!!

勇者「こっちだ。この道を登りきった先にいる」

魔法使い「なんでわかるの?感知呪文も使ってないのに」

勇者「無口詠唱してるのさ」

魔法使い「本当に!?感知呪文ってかなり精神力と集中力を必要とする魔術よ!それを無口詠唱だなんて、あなたすごいのね」

勇者「おだててもポロリしかないぜ」

遊び人「嘘ばっか……」

魔法使い「私はすっかりできなくなっちゃったわよ。誰かさんのせいで」

色欲「…………」

魔法使い「魔王討伐を果たせず、この地にたどり着いて。魔王より遥かに弱い魔物倒して有名になって、モテたら女囲いまくって。まぁモテたのは、あの薄気味悪い鞭のせいだとは思ってたけど」

魔法使い「あんたへの信頼が薄れてから、無口詠唱できなくなっちゃったのよ。元々呪文は得意だったけど、やはり、精霊の加護の恩恵をかなり受けていたみたい。杖無しで呪文なんてもってのほか。右手だけで火炎の玉を出せてたあの頃が懐かしいわ」

色欲「何も言えない……」

勇者「静かに。近いぞ。すぐそこにいる」

谷を登ったさきにあったひらけた地の上に、一人の老人が鞭を持ちながら立っていた。

星明りの綺麗な夜だった。
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:26:50.42 ID:ypTt4u9i0

魔法使い「作戦通り、いきなり仕留めるわよ」

魔法使いは精神を集中し始めた。

魔法使い「『夜の頂きで数えられし無数の羊達よ。朝日を疎いし人間をそのまどろみの誘惑の中に再び引きずり戻し給へ』」

魔法使い「『ネムリン』」

羊の形をした淡いピンク色のシャボン玉が現れ、神官に向かって進み始めた。

神官は気付かず、頬を赤らめながら上の空のままだった。

神官の背後から、泡の羊がぶつかる直前のことだった。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:27:26.47 ID:ypTt4u9i0
バチン!!

勇者「なっ!」

突如、鞭が勝手に動き出し、泡を弾いた。

勇者「弾かれた!」

魔法使い「その程度の防御、散々経験してきたわよ!」

割れた泡は無数に分裂し、無数の小さな羊の群れとなった。

眠りの泡は四方から神官に向かって進み出した。

魔法使い「エロジジイは大人しく寝てなさい!!」

しかし、鞭は物凄い勢いで動き回り、羊の群れをすべて撫でるようにさわった。

小さな無数の泡をつなぎ合わせ、1つの大きな泡の塊をつくりだした。

キノコの形をしていた。

遊び人「ぶふっ!!」

勇者「おい、なぜ笑った」

魔法使い「なによそれ!魔法をそんなに繊細に操れる武具なんて他にないわよ!!」

神官は振り返った。

目が血走っていた。

神官「俺ト……交ワレ!!」

キノコの泡がとんできた。
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:28:12.67 ID:ypTt4u9i0
魔法使い「『マハンシャ!』」

魔法使いはバリアを張った。

神官「ハァ……ハァ……フン!!」

神官の振るった鞭が魔法の鏡の表面をなぞると、震えながらへなへなと崩れ落ちた。

魔法使い「な、なに感じてんのよ!!私のバリアは!」

神官が魔法使いに鞭を叩きつけた。

魔法使い「きゃっ!!」

遊び人「大丈夫ですか!!」

魔法使い「痛い……けど、ダメージは薄いわ」

色欲「次は俺達の番だ」

勇者「ああ!」

2人は飛び出した。

勇者が右足を出した時には、色欲の勇者は神官の目の前にまで迫っていた。
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:29:12.87 ID:ypTt4u9i0
色欲「気絶させる!!」

鞭を払いのけようと、色欲の勇者が凄まじい速度で剣を振るう。

神速のような攻撃を、鞭は全て弾き返した。

色欲「持ち主の寿命を喰らって好き勝手に動いているのか」

魔法使い「準備できたわ!かけるわよ!」

色欲「頼む!!」

魔法使い「『オナモミン!!』」

色欲の勇者の剣に無数の毛が生えた。

勇者「戦いの最中になんつーシモネタを……」

遊び人「敵の装備を絡め取る効果付与呪文だってば!!」

色欲の勇者が剣を振るうと、色欲の鞭が絡みついた。
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:32:14.71 ID:ypTt4u9i0
色欲「このまま鞭を奪い取る!!持ち主から離れれば動けまい!!」

しかし、鞭は必死で抵抗し、持ち主を色欲の勇者の攻撃から避けさせようと抵抗した。

色欲「しつこいやつだな。エロオヤジというよりも、女王様のそれに近い」

色欲の鞭がぶるぶると身体を震わせると、くっついた魔法のトゲがばらばらと落ちだした。

色欲「魔法使い!!追加で呪文をかけてくれ!!もうひと押しだ!!」

魔法使い「…………」

魔法使い「……いや」

色欲「どうした?」

魔法使い「私、あの人攻撃できない……」

色欲「何を言ってる?」

魔法使い「恋の魔法にかかっちゃったみたい……」トロォン///

魔法使いの足には、さきほど鞭で叩かれた痣の跡が残っていた。
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:33:19.43 ID:ypTt4u9i0
勇者「呪文を好きなようにあやつり、結合させたり、離したり」

勇者「鞭の攻撃をくらったものを虜にさせる」

勇者「なるほどな、”愛のムチ”ってわけか!!」

魔法使い「ねえねえ、あんたらもこっちおいでよ///」

魔法使い「『ヌメリン』」

魔法使いの杖の先から、ぬるぬるとした液体が流れ出した。

遊び人「キャー!!」

遊び人の全身と、術者の魔法使いの全身にぬめぬめとした液体がかかった。

勇者「いいぞ!もっとやれ!!」

遊び人「ぶっ飛ばすわよ!!」

勇者「はっ…!鞭の魔力に一瞬洗脳されてしまった!」

遊び人「そんくらいの煩悩いつも抱えてるくせに!」

液体は色欲の勇者のところまで飛び、足元を不安定にさせた。

色欲「くそ。魔法使い相手では分が悪い。一度退くぞ!」

遊び人「逃げるの!?」

色欲「魔法使いは俺がどうにかする!!」

色欲の勇者は神官から距離をおき、魔法使いのもとへと近づいた。

色欲「くそ、ぬめぬめしやがる……」

色欲「勇者!!移動呪文を唱えろ!!全員で谷に飛ぶぞ!!」

勇者「覚えてないけど?」

色欲「なんだと!?勇者の基本呪文だぞ!!」

勇者「移動の翼持ってるからいいだろ!!」

勇者はどうぐぶくろを取り出した。

ベチン!

勇者「いってぇ!!」

どうぐぶくろが地面に落ちた。

色欲の鞭が勇者の腕にあたった。
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:33:46.50 ID:ypTt4u9i0
遊び人「勇者!!」

勇者「…………」

勇者「……あっ」

勇者「あっ、あっ、やばい。これはまずい」

勇者はだんだん前屈みになり、座り込んだ。

遊び人「何ふざけてんのよ!!はやく立ち上がって!!」

勇者「もうタってんだよ!!」

遊び人「いいからふくろを持ってこっちへ!!」

勇者「できないんだって!」

遊び人「なによ!!頭の堅いやつね!!」

勇者「硬いのは頭じゃねえんだよ!!」
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:37:08.21 ID:ypTt4u9i0
勇者「確かに頭といえば頭だけどさ!!」

遊び人「何を言ってるのよ!!」

勇者「いいから俺のことは置いていけ!!3人で移動の翼を使え!!」

勇者は遊び人に道具袋を投げた。

勇者「エロジジイにドキドキする日が訪れるとはな!!」

勇者「どうせする恋なら、2人で添い遂げる恋だ!!心中しやがれ!!」

勇者はすてみで神官にとっしんした。

鞭で強烈に叩かれつつも、神官を転倒させた。

勇者「ぐはっ!」

勇者は力尽きた。
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:38:49.83 ID:ypTt4u9i0
遊び人「いっつも無茶するんだから……」

遊び人「あんた蘇らせるために私は心中しないからね。あの神官が復活地点だったらまずそうだし」

魔法使い「キャー///何すんのよ///やっぱり昔から私の事そういう目で見てたのね」

色欲の勇者は魔法使いを後ろから羽交い締めにしていた。

色欲「早く飛べ!!この絵面はまずい!!」

遊び人「逃げるわよ!!!パーティ2つ分の翼よ!!」

遊び人達は道具袋から翼を取り出した。

神官「……マテ」

遊び人「えっ?」

鞭が遊び人の足首に絡まっていた。

神官「交ワレ……」

遊び人「うそでしょ!!」

遊び人「いやだ!!いやだ!!そんなの絶対イヤだ!!」

遊び人は混乱した。

遊び人はつばさをばらまいた。

色欲「落ち着け!!」

遊び人の周りにすさまじい風が起きた。

鞭はほどけた。

遊び人達は逃げ出した。

色欲の勇者と魔法使いは隣街に飛んでいった。

遊び人と勇者の棺桶は隣街に飛んでいった。
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:42:48.85 ID:ypTt4u9i0
〜隣町〜

遊び人「うぇええん……怖かったよぉお……」ポロポロ

魔法使い「糞野郎!あのおっさんに捧げる羽目になりそうだったじゃんか!!」

魔法使い「変態どもに関わるんじゃなかったよ!!」

色欲「すまない……」

魔法使い「あとは谷の兵士にでも援軍を頼んで。命が関わるような危険はなかったし」

魔法使い「わたし、もう帰るから……」ウズウズ…

遊び人「?」

色欲「わるかった……」

魔法使い「でもまぁ」

魔法使い「最後は助けに来てくれてありがとう」

魔法使い「……じゃ」

魔法使い「さよなら、女性の目も見れなかったウブな勇者様」

ガチャン

色欲「なっ!!!!」

遊び人「えっ!?」

色欲「な、なんでもない!!今のは違う!!」
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:46:01.06 ID:ypTt4u9i0
色欲「俺達も谷に戻ろう。俺の仲間を全軍要請する。こうなったら数で抑えるしか無い」

色欲「神官が動き出す前に。また他の犠牲者が出たらまずい」

遊び人「そうですね」

色欲「この谷史上、最悪の性犯罪者となりかねん。勇者の棺桶もはやく復活させてやれ」

遊び人「気になったんですけど。状態異常って死んだら全部治るものなのかな」

色欲「基本はそうだと思うが」

遊び人「でも、さっきのって状態異常っていうのかな……」

色欲「何が言いたい?」

遊び人「勇者はまだ、ムラムラしたままなのかな……」

色欲「…………」

遊び人「…………」

2人は棺桶を街の教会に残し、谷へと向かった。
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:46:58.66 ID:ypTt4u9i0

カンカン!カンカン!!

ドタバタ!!

色欲「なんだ!この騒ぎは!!」

兵士「色欲殿!!大変です!!」

色欲「何があった!?」

兵士「谷中の女どもが、神官様から鞭で叩かれておかしなことに……」



バニーガール「うふふふふ///」

女戦士「あはははは///」

武道家「誰があそんでくれるのかしら///」

神官「ハハハハ!!ハハハハ!!」

神官「交ワレ!!交ワレ!!」

神官「俺は世界中の女を俺のものにする!!」

神官「男の欲望の全ては女を手に入れるためにある!!強くなるもの!!賢くなるのも!!それが目的ではない!!」

神官「良き女が欲しいからだ!!」

神官は歩きながら、すれ違う女という女に鞭をぶつけていく。

神官が歩く度に神官のとりこになる女が増えていき、巨大な軍団となった。

兵士「くそ、うかつに手をだせん!」
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:48:51.84 ID:ypTt4u9i0
神官「私は、望んでいた!!若き頃の私は、性欲の魔物であった」

神官「教会に祈りに来た美しき女性と、交わることを想像した!!」

神官「私は確かに敬虔深き信徒であった!!誓って言おう!!私は私の穢れた心に常に罪の意識を感じていた!!」

神官「にも関わらず、私は女性の身体を頭の中で求め続けていた!!」

神官「すれ違う女性!初めて見る女性!!いつも見る女性!近くにいる女性!!」

神官「同じ人間として生まれ、違う性別として生まれ。女性という神秘的な存在は、一人一人に神の魂が宿っているほどに価値のあるものだった。美人はやまほどいれど、同じ美人は一人としていない。それだけで、この世界は私に苦悩をもたらすほどに魅力的なものであった」

神官「魔王を倒す喜びなど、この世で1番愛する女と結ばれた喜びには勝らないと、若き頃の私は思っていた」

神官「今思えば、貞操感など馬鹿げていた。何の抵抗もなく、女性と身体を重ねるものがいる。酒を交えながら話す盗賊の色話なんかを聞いていると、私は私が何と戦っているのかわからなくなった。戦う必要のないものと戦っているんじゃないかと」

神官「そんな馬鹿げた潔癖を求めたまま、老人になった。そして、性欲の葛藤という呪縛は解かれないまま、ただひたすら遠ざかっていった」

神官「そんな私に、この鞭は、女王様は、教えてくれた」

神官「禁欲のバカバカしさを!!この世は性であるということを!!」

神官「私は私を捨てる!!あの頃叶えられなかった欲望を今夜満たすのだ!!」

神官「さあ、全ての女よ!!!」

神官「私の身体を、求め……!!?」

遊び「神官の様子が!」
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:50:05.38 ID:ypTt4u9i0
神官「ぐっ……」

神官「うぐっ……」

神官「ううっ…………!!」

神官はうめき声をあげ、倒れた。

色欲「何が起きた?」

遊び人「選ばれしものでもないのに、鞭を多用しすぎたのよ。以前からこっそり使っていたし、今日あまりにも力を借りすぎたのね」

遊び人「寿命が尽きたのよ」

神官は力尽きた。
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:51:00.45 ID:ypTt4u9i0
谷の騒動はなかなか収まらなかったものの、女性たちは時が経つに連れ段々とわれにかえり始めた。

数時間もした後には、悶々とした男たちが、また女性に酒を振る舞う歓楽地の光景がもとにもどっていた。

遊び人「1つ、お聞きしてもいいですか」

色欲「ああ」

遊び人「あの神官の叫びは、全ての男性の叫びですか」

色欲「そうだと思うか」

遊び人「わかりません」

色欲「ならば、まず、そうだと言っておこう」

遊び人「…………」

色欲「理由は細かく述べない。性へのタガを外したこの谷の人々を見ればわかるはなしだ」

色欲「そのうえで、1つ気になったことを言っていこう」

色欲「どうして神官は、あの谷の上にいたのか。女性どころか、魔物も通らぬような開けた地で。何をしていたのか」

遊び人「…………」

色欲「あそこには、神官の亡くなった妻の墓がある」

遊び人「……!?」

色欲「男が死んでもいいと思う瞬間は、美しい女を抱いている時かもしれないが」

色欲「男が生きることを思う瞬間は、好きな女と唇を重ねている時だ」

色欲「男は汚いが、男もちゃんとその汚さを克服しようとする心もあるのだと思う」

色欲「連戦連敗だがな」
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:51:32.18 ID:ypTt4u9i0
〜大人の個室〜

踊り子「どうしたんですか!!!」

色欲「なにがだ」

踊り子「鎧の下に服を着てるじゃないですか!!裸メイルをおやめになったんですか!!」

色欲「服は脱ぐためにあると気づいたんだよ。俺は、より変態に近づいたわけさ」

色欲「お前はあの鞭に叩かれたか」

踊り子「いいえ。魅力もない男に抱かれるなんて嫌ですもの」

色欲「魅力がある相手ならいいのか」

踊り子「そうですね。だから、私には一人しかお客様がいないんですの」

色欲「それは難儀なことだ」
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 15:52:15.53 ID:ypTt4u9i0
色欲「魅力があればよくて、なければダメか」

色欲「関係性によって、善悪はいとも簡単にかわってしまうんだろうな」

色欲の勇者は踊り子の頭をなでた。

踊り子「うふふ。どうしたんですか」

色欲「初対面の女の頭をなでたら殴られるか牢獄に送り込まれるかのどっちかだ」

色欲「しかしお前は笑ってくれる」

踊り子「笑ってあげます」

色欲「あの神官は自分の言葉を、もっと綺麗な飾ってもよかったのかもしれないな」

色欲「自分は、許される人になりたかったのだと」
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:04:55.65 ID:ypTt4u9i0
踊り子「勇者様自身、許される人になりたかったですか」

色欲「ああ。でも、もう無理だ」

色欲「俺の愛していた人は死んでしまった」

踊り子「勇者様と一緒に冒険をされていたお方。職業は、私と同じ踊り子」

踊り子「この谷で、私の身体を買ったのも、あの人にぶつける性欲を逸らしたかったからですか」

色欲「……魔が差した。そうとしかいいようがなかった」

踊り子「性欲をぶつけないくらいにあの方を愛されていたんですね。それでも、勇者様の身体にも心にも惹かれてしまった私はこう思ってしまうんです」

踊り子「あなたの初めての相手が私でよかった。あなたが人生で1番愛していた人と、身体を交えていなくてよかった」

踊り子「それが性欲を超えるほどの愛情だとしても、やはり実際に身体を交えていたほうが嫉妬していたでしょう」

色欲「女もそうなのか」

踊り子「男は身体の浮気を、女は心の浮気を許さないなんて魔王が人間界を滅亡させるためについたうそっぱちです。女も、身体の浮気の方がよっぽど許せないですよ」

踊り子「絶望的な鬱になりますよ。激鬱です。私みたいな、軽いお尻の女でも。憧れの男性が持つ、他の女性との肉体の夜の思い出は」

踊り子「そろそろ、本命にしてくれないかなぁと思います。二番目でもいいので、世界一大切な二番目にしてくれませんか」

色欲「…………」

色欲「俺だけの女でいてくれるか」

踊り子「はい。あなたも、私だけの男でいてくれますか」

色欲「ああ」

谷中の女を抱いた元勇者。

しかし、この踊り子に対しては、身体をまさぐりあうことはあっても、決して鎧を脱がなかった。

この踊り子も、彼が谷から帰ってきてからというもの、一度も服を脱いだことはなかった。

二人は初めてベッドに入り込んだ。



自分で自分を許す、というのは、口にするのはたやすくとも、実際にできることではない。

それを可能にする方法を、俗世からひとつだけ挙げるとしたら。

自分が認める異性から、身体を許してもらうことだ。

色欲の勇者は、この夜、初めて自分に性欲を許した。

しあわせな一夜。

こんなにも美しい魔法があるのかと、初めて知った夜だった。
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:07:04.11 ID:ypTt4u9i0
勇者「目が覚めたら、全ての問題が解決していた」

勇者「そして、教会で目覚めたときに、何故か遊び人がはるか遠くから見守っていたことがなんだかショックだった」

色欲「世話になった」

踊り子「この人を救ってくれてありがとう」

遊び人「私たちは何もしてないですよ」

色欲「君たちの持つ壺に色欲の鞭も封印された。これからこの谷は、もとの戒律の厳しい谷に戻っていくのであろう」

遊び人「嫌ですか?」

踊り子「もう関係ないしね。この人と旅に出るし」

色欲「俺は良いが、嫌がる連中のほうが多いだろうな。性欲は戦争の引き金になるほど強烈な人間の欲望だからな」

色欲「だが、戒律が厳しいからこそ守られるものもある。俺のいなくなったこの谷を魔物から守る兵士が、鼻の下をのばしているわけにもいかないだろう」

遊び人「そうかもしれないですね」

色欲「それと、言い忘れていたことがある」

色欲「俺も、お前たちを試すような真似をしてわるかった」

遊び人「私達の何を試していたんですか?」

色欲「何もしないことを試していたんだ」

遊び人「?」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:18:00.89 ID:ypTt4u9i0
勇者「色欲の鞭……」

遊び人「何ものほしそうに壺の中見てんのよ」

踊り子「勇者様、その鞭を取り出せたら何に使いたいですか?」

勇者「そりゃあ、バニースーツを意地でも着たがらない女の子に着衣の命令をするだろうなぁ」

踊り子「着せることに使うなんて、さすが勇者様ですわ……」

遊び人「あんたも壺に封印できたらいいんだけど」


別れの際まで、4人は笑いあった。


遊び人「それじゃあ、私達、もう行くわ」

踊り子「…………」モジモジ…

勇者「お前らも気をつけてな」

踊り子「……あの、こんな時にごめんなさい……」

色欲「トイレだろう。行ってこい」

踊り子「すみません。勇者様、遊び人さん。本当におせわになりました」トットット…

遊び人「さような……もう行っちゃった」

色欲「お腹を下しやすいんだ。生まれつきらしい。自分の身体を呪い、苦労もしたらしいが、そこもまた魅力的に思う。誰もが持っているような悩みで、自分しか持っていないと錯覚する類の悩みだ」

遊び人「ふふ、やさしいですね」

色欲「生理現象だし仕方ないだろう」

勇者「…………」

勇者「生理現象だから仕方ないか」

遊び人「ん?」

勇者「七つの大罪も同じじゃないのかな。生理現象だから仕方ない」

遊び人「色欲に溺れてお尻触って生理現象だから仕方ないなんて言ったら怒るよ?」

勇者「まさか」サッ

遊び人「ねえなんでいま手降ろしたの?ねえ?」

勇者「暴食、色欲、傲慢、憤怒、怠惰、強欲、嫉妬」

勇者「大食いのやつと、すけべなやつと、偉そうなやつと、怒りっぽいやつと、サボりがちなやつと、金好きなやつと、ヤキモチ焼くやつがパーティだったら楽しそうに思うけどな」

遊び人「そんな甘い欲望じゃないことは知ってるはずでしょ」
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:18:30.75 ID:ypTt4u9i0
遊び人「色欲の勇者様。何度も言っておきますけど、今夜にでも出発してください。色欲の鞭の持ち主を探して、追ってが必ず来ますから。」

色欲「わかってる。お前たちも気を付けて冒険しろよ」

遊び人「目下の敵は隣にしかいませんから」

勇者「うう、バニーガールよさよなら……」

遊び人「はぁ」

暴食「…………」

暴食「ちょっといいか。男だけで、話がしたい」

勇者「俺と?」

遊び人「お好きにどうぞ。私もトイレ行ってきます」
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:23:59.13 ID:ypTt4u9i0
色欲「抱きたかった女がいた」

勇者「二人きりになった時の第一声が今度はそれか」

色欲「ずっと後悔していることがある」

色欲「死に追い込まれた、あの星降る夜。幻想的な時間。命の制限時間に迫られたときに、俺は、好きだった踊り子の身体を求めることをせず、純愛を守った」

色欲「なのに、こうしてこの谷に住み着いている今。もしもあの時、生涯で1番好きになったものと肌を重ねていたらどんな感触だったのだろう毎晩考えてしまっていたのだ」

色欲「俺は俺が大嫌いだ。性欲なんて軽んじてしまおうと思った。性欲を吐き出して生きようと思った。自分に宿る力でこの谷に貢献した。魔王がいた時は元犯罪者だったのに、魔王がいなくなってからは一転英雄となった。それも、この大罪の装備の影響のおかげなのだろう」

色欲「あの夜、俺はどうすればよかった。最後の最も輝かしい時間を、腰をふるのに使うべきだったんだろうか」

色欲「お前だったら、どうしていた」

勇者「…………」

勇者「後悔すると、心底理解していながらも」

勇者「手を繋いでいたと思う」

色欲「所詮は俺と同じ綺麗事か」

勇者「なあ、どうして穢らわしい方が人間の本能だとか、本音だとか、欲望だってことになっちまうんだよ」

勇者「性欲よりも、もっと深いところに性に対する考え方っていうのが人間にはあるんじゃないのか。お前は、その本能に従ったんだ」

勇者「禁欲という本能に色欲という本能が負けたんだ。禁欲は、理性なんかじゃ抗えない、人間に与えられた欲望の1つなんだ」

勇者「どうしようもなかったんだ。お前はそういう人間に生まれついて、そういう選択を取るような環境で育ってしまった」

勇者「そんなお前だからこそ、その子とたった一部でも人生を共有することができたんだ」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:29:12.11 ID:ypTt4u9i0
遊び人が遠くから向かってくるのが見えた。

勇者「男同士の話はここまでだな。お前もこれから、愛を知っていけばいいさ」

色欲「お前は……素晴らしい勇者だ」

勇者「勇者ねぇ。そんなものにふさわしい俺ではないよ」

色欲「何を言う!勇者にふさわしくないとしたら、お前は一体……」

勇者「俺は」

勇者は青空を見つめながら言った。

勇者「通りすがりの、魔法使いさ」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:32:44.07 ID:ypTt4u9i0
【色欲の勇者の思い出】

愛情は基本的に、伝えるものであり、見せるものであるが。

時として、わざとみせないものである。



踊り子「女の子3人との冒険はいかがだった?」

満点の星空を見上げながら、踊り子と色欲の勇者は寝転んでいた。

色欲「気を遣ったよ」

踊り子「私と初めて会った時も、噛み噛みだったからね。ろくに目も合わせてくんなかったし」

色欲「女の子と接したことがろくになかった。厳しい親の元で育って、勇者の素質を持っていることがわかって、ますます厳しく育てられた」

踊り子「そのおかげで私達みたいな高度な術士と冒険に出れたじゃない。めでたしめでたし」

色欲「何がめでたしだよ」

色欲「この夜が開けると、君が死ぬというのに」




色欲「夢を司る魔王の四天王の一人」

色欲「ここは奴が過去に訪れた場所」

色欲「孤島のような場所に、風が運ぶ花の香り。広がる草原に、夜空に浮かぶ満点の星」

色欲「間違いなくここにあいつの弱点があるはずなんだ」

色欲「ヤツが目覚める前に見つけないと、君だけが夢の中から出られなくなってしまう。僕の精霊との繋がりを、断ち切られた君だけが」

色欲「一生を独りここで過ごさなくてはいけなくなる。そんな生き地獄があるか」

色欲の勇者は立ち上がろうとした。

踊り子「ダメって言ってるでしょ」

色欲「どうして!!」

踊り子「星が見れなくなるからよ」

色欲「そんなことを言って……」

踊り子「どうせ、ここで永遠の時を過ごすのならさ」

踊り子「永遠に回顧する価値のあるだけの時間を、今つくっておきたいの」

踊り子「二人きりになれる時間なんて、なかったんだもの」

色欲「…………」

踊り子「私のこと、どう思う?」

色欲の勇者は口を開いた。

色欲「愛して」

踊り子に唇を塞がれた。
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:33:19.90 ID:ypTt4u9i0
色欲の勇者は教会で目覚めた。

覗き込む顔は、魔法使いと、僧侶だけで、踊り子はいなかった。

消滅したのよ、と魔法使いは言った。

あの満点の星空が広がる夢の世界の中で。

踊り子は、永遠に近い時を過ごすことになったのだ。

目覚めた勇者が手に握っていたのは。

見たこともない、妖艶な魅力を持つ鞭だけであった。
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:35:46.04 ID:ypTt4u9i0
〜思い出A〜

巨大な球体が割れた。

かつて歯が立たなかった四天王の一人を、いとも簡単に陵辱し、倒した。

右手に持っていた鞭を投げ捨て、冒険者の積み重なった死体をまたいで歩いた。

眠れる姫をそこに見つけた。

変わらぬ姿で眠っているように見える、好きな人の亡骸を抱えた。
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:42:23.83 ID:ypTt4u9i0
あと数十分で世界が閉じてしまうという極限状態の中。

あの夜、何故踊り子の身体に手を伸ばさなかったのか、正直今でもわからない。

恥じらいなんかで動けなかったわけでもない。

踊り子は、身体を受け入れてくれたかもしれない。

踊り子は、身体を求めていたのかもしれない。


世界で1番好きな人と、世界で1番したいことを、あえてしない。

それが、愛していることの証明だと思っていたのだ。


この世の半分なんていらなくていいから。

この世の全てよりも大切なたった1つのものを大切にしたかった。

今後、生きていく間、世界で1番愛した女を抱きしめておけばよかった後悔するという、最大の性的欲望に苦悩すると頭の中ではわかっていても。

俺は、星空ごときを選びとってしまったのだ。
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:44:25.86 ID:ypTt4u9i0
世界一の美女と同じベッドに入るより。

そばかすのある踊り子と、夜の星空を見上げるほうがずっとしあわせだ。

たとえこれからの自分が、純愛というものを憎み、極端に性というものを軽んじるようになってしまうとしても。


あの子と生きていた時は。


世界で1番愛おしい人とセックスする以上の快楽が、喜びが。

この世界のここには、あると思って生きていたんだ。



色欲の勇者達 〜fin〜
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:55:44.61 ID:ypTt4u9i0
続きはまた明日以降投稿します。

投稿文字数はここまでで、76,035文字だそうです。
(お墓の話で73,403文字くらい)

長文なのに読んでくださって、本当にありがとうございます。
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 17:02:09.45 ID:CnIAUNhGo
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 18:07:35.80 ID:cqS5SLQPo
大量乙
色欲が暴食になっとるとこあったでー>>229
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 19:03:17.14 ID:KjFdVUkyO
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:36:33.39 ID:x1j5tBVa0
暴食、色欲、傲慢、憤怒、怠惰、強欲、嫉妬。

7つの大罪の中で自分が最も何に該当するかを考えた時に、傲慢、であることを思い浮かべる者は最も少ないのではないだろうか。

なぜなら、傲慢である者こそ、こう考えてしまうからだ。

「私は、謙虚な存在である!!」

傲慢であるがゆえ、傲慢であることを自覚しない。

だが、どうだろう。

「私は大した存在ではない」と思っている大多数の人間こそ、この欲望に該当しているのではないだろうか。

自分より社会的身分の低い者に丁寧に接する者はみな謙虚とは限らない。

地道に愚直に生きている人にだけ敬意の言葉をかける人は謙虚とは限らない。


“自分が手に入れたくても、手に入れられなかったモノを手にした上々の人にも謙虚でいられるか”


謙虚な人は、1番手に入れたかったものだけは手に入れた人である。

傲慢な人は、2番目までに好きなものはほとんど手にしてきた人である。

傲慢な人は、1番手に入れたかったものにかぎって、手に出来なかった人である。

虚栄心に塗れた者は何かにしがみつく。

2番目に理解できた知識を見せびらかす。

2番目に好きだったパートナーを自慢する。

嫉妬が上にいるものを引きずり落とそうとする欲望であれば。

傲慢は下にいると思っているものに自分を押し上げさせようとする欲望である。

周囲の人間は3番目以降のものしか手にしていないと決めつけかわいがる。

1番欲しかったものを手にしているものには胸を張って威嚇をする。

戦いの優勝者に表彰として盾が与えられるのは、2番目以降の者から1位の座を守るためではない。

勝者自身の満たされなかった思いを、その盾が守ってくれるからである。

【第3章 傲慢の町 『自尊心を守る盾』】

一人ぼっちの夜の部屋で傲慢は叫んだ。

誰か、あたしを認めておくれ。



242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:38:24.90 ID:x1j5tBVa0
案内人「この街は世界で1番凄い街さ!!」

案内人「どのくらいすごいかって?手で表現すると」

案内人「こんっっっのくらいさ!!!」バン!!

勇者「…………」

案内人「えっ?お前らがどんなにちっぽけな存在かって?」

案内人「爪先で表現すると」

案内人「こんんんんっっっっのくらいさ……」シュン…

勇者「すてみしてもいいか?」

遊び人「誰も見てないところでね」

勇者「はぁ」

遊び人「どうやら、『傲慢の街』についたみたいね」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:40:19.22 ID:x1j5tBVa0
勇者「宝石店、装飾屋、飼育用魔物売り場、変わった店が多いな」

遊び人「資格取得の店も多いね。呪文知識検定。農場経営スキル検定。かっこいいなぁー。私もなんか資格取ろうかなー。遊び人検定はないのかな」

勇者「遊び人検定8段とかになったら、もうそいつはすでに遊び人じゃないだろう」

遊び人「私はまだまだあまちゃんの遊び人だな。見た目は普通の旅人ガールだし」

勇者「そろそろバニーガールの格好をしたいという振りか!?」

遊び人「しないよ!!まだ遊び人検定4級だもん!!」

勇者「8段になってはちきれんばかりのバニースーツとうさみみをつけてくれ!」

遊び人「似合わないよ!!」

勇者「傲慢の街で謙虚になってどうする!」

遊び人「傲慢の街で色欲に塗れてどうする!」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:41:02.23 ID:x1j5tBVa0
勇者「それにしてもなんだか騒々しい街だなぁ」

遊び人「たしかにおしゃべりの声が大きいね」



主婦A「おほほ。私は子供にこの都1番の家庭教師をつけているわ」

主婦B「おほほほ。私は子供にこの都1番の家庭教師を2人もつけているわ」

主婦C「おほほほほ。私は逆にこの都で最弱と言われる家庭教師をつけていますわ」

遊び人「それ子供かわいそうでしょ!」


男A「ふはは。俺の筋肉はどうだい!この前は牛を押し倒したぜ」

男B「ふははは。俺なんか象を押し倒したぜ」

男C「ふはははは。俺なんかのれんに腕押しだぜ?」

遊び人「何も倒せて無くない?」


占い師A「ふふふ。私なんか魔王が倒される未来を予言していたわよ」

占い師B「ふふふふ。私なんか魔王が倒される未来を予言していたという今言うあなたまで予言していたわよ」

占い師C「ふふふふふ。私なんか、魔王が砂場で井戸掘ってると思ったら、黄金の仏像がでてくる夢を見たんだった……」

遊び人「なに荒唐無稽な夢の話をしてるのよ!」


ブルジョワ娘A「ほほほ。私なんかまた別荘たてちゃいましたよ」

ブルジョワ娘B「ほほほほ。私なんか犬のために家をたてちゃいましたよ」

ブルジョワ娘C「ほほほほほ。わたしなんかお城をたてちゃいましたの」

勇者「ふひひひひ。ぼくなんか君たちみておっ勃てちゃいましたよ……」

ブルジョワ娘ABC「ギャー!!!!」

遊び人「なにあんたも混じってんのよ!!」
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:42:02.68 ID:x1j5tBVa0
勇者「なーにが私は俺は僕はだよ!鼻もちらないなあ!大罪の装備を2つも手に入れたこの吾輩が聞き耳をたててやってるともしらずに!」

遊び人「この高等で麗しき気高き乙女も聞き耳を立ててるとも知らずにね」

勇者「…………」

遊び人「何よその目は」

勇者「やんのかこら?」

遊び人「望むところよ」



勇者「昨日寝てないわ―!ぜんっぜん寝てないわ―!3時間しか寝てないわ―!!」

遊び人「昨日めっちゃ寝たわ―!13時間は寝たかなー?ロングスリーパーだからさー!」

遊び人「だから、まじっ、昨日ぜんっぜん勉強してないわ!!ぜんっぜんだわ!!今日のテストやばいわ!!絶対アカデミー留年するわ!!」

勇者「もう今週で5回飲み会あったわー!!武器屋と道具屋と防具屋と宿屋と酒場の店主と飲み会したわー!!」

遊び人「ふん、それがなによ!私なんてもう今週入って……」



〜夕暮れ〜



勇者「13体は魔王倒したわ!!もう倒しすぎて慣れちゃって、装備無しで戦ったことあるわ!!全裸で倒したこともあるわ!!放尿しながら倒したこともある!!」

遊び人「子供の頃10は人格持ってたかな!エミナ、マキナ、サラサル、チーナ……大人たちは私に巣食う10の人格に怯えてたわ!!同じ年頃の子供はままごとの延長上だと思ってたみたいだけど。ふふっ、今もまた私の中に巣食う少女の魂が……コラコラ、マキナ、落ち着いて。ここで暴れちゃだめよ……」

子供A「なにあの人達」

親A「みちゃダメ!!」
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:43:03.87 ID:x1j5tBVa0
遊び人「はあ、はあ。いつの間にか暗くなってたわね。ひとまず道具屋にでもいきましょう」

勇者「色欲の谷で俺が大活躍して稼いだからな」

遊び人「はいはい。もう自慢ごっこはおしまい」

勇者「いいじゃねえか。俺だって珍しく活躍できたんだから。俺も老後はバニーガールに囲まれてあそこに住もうかな」

遊び人「大罪の装備は封印されて変態性は薄れてきているはずよ。暴食の村の食べ物も普通に戻ったって噂で流れてきたでしょ。色欲の谷でも一人だけ変態になっちゃうよ」

勇者「……………」

勇者「そうか……」

勇者「…………」

勇者「…………変態、か」

遊び人「何くだらない単語で思索にふけってるのよ」

勇者「だれが自慰にふけってるだ!!」

遊び人「……誰も言ってないけど、きっとあんただと思う」
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:43:42.52 ID:x1j5tBVa0
勇者「ふと思ったんだけどさ。大罪の装備は人の心を変えてしまう装備、というわけではなかったりして」

遊び人「どういうこと?」

勇者「人の理性を外す装備なんじゃないかな」

勇者「人間には元々、罪の意識があるだろ?夜中に油の乗ったご飯を食べ終わって罪悪感に駆られたり。夜中に油汗を垂らしながら自分の分身をしごいて罪悪感にかられたり」

遊び人「そ、それはよく知らないけど……」

勇者「そういう、してはいけない、という気持ちを取り外してしまうものなんじゃないかな」

勇者「食べたい、変態したい、と思わせる装備ではなくて」

勇者「食べてはいけない、変態してはいけない、という理性の蓋を外す装備」

遊び人「外す装備、か……」

勇者「…………」

遊び人「…………」

勇者「変態、か……」

遊び人「なんでまたそのワードで感慨にふけろうとするのよ」

遊び人「でも、確かにそうかもしれないね。暴食、色欲、傲慢、憤怒、強欲、嫉妬、怠惰の気持ちは誰にでもあるものだからね」

遊び人「大罪の装備をそんな風に考えたことなかったな」
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:44:25.74 ID:x1j5tBVa0
遊び人「この街の人も、傲慢を司る装備によってタガを外されているのかな」

遊び人「私は大した存在である。この街にいる人は、みんなそう思ってるのかな」

勇者「ちなみに俺はどういう存在だ?」

遊び人「大した変態である」

勇者「ふふん」

遊び人「威張ることじゃない」

勇者「えー」

遊び人「さて、夕食も兼ねて、情報収集に行きましょう。この世で最も寛大な心の持ち主の勇者様」

勇者「仕方あるまい。今宵は少し贅沢なものを食べよう」

遊び人「やったー!」
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:44:56.37 ID:x1j5tBVa0
遊び人「コンテストが開かれるんですか」

酒場「ああ。エントリーの締め切りは間近だよ。試しに出てみると良いよ」

酒場「ちから、まもり、かしこさ、はやさ、あとなんだったかな。それぞれの優勝者には景品と栄誉が与えられるのさ。面白いことに、冒険者よりもこの街に住んでるものの方が入賞しやすいんだ。これのために人生注いでるやつもいるからね」

遊び人「昔からあったんですか?」

酒場「つい数年前だよ。魔王が倒される前くらいだ」

酒場「その前もコンテストをやってたみたいだが、小さなイベント程度だった。種目も主婦とか子供向きのものだった」
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:45:36.21 ID:x1j5tBVa0
酒場「話はそれるが、ずっと前のことで、面白いはなしがあってね」

酒場「子供自慢コンテストが開かれたことがあったんだが。優勝者は、なんと子供を誘拐してきた女性だった」

酒場「その子のことなんてなにも知らないはずなのに。饒舌に語ってね。子供もそれを聞いて喜んで、凄くなついていたそうだ」

酒場「子供を溺愛している親に圧倒的な差をつけ、実の子供をもたないその人が優勝した」

酒場「他の街の出身者で、普段は誰とも交流を取らないらしい。なぜそんなことをしたのか、結局わからないままだった。きっと、子供と過ごす生活を夢見ていたんだろうな」

遊び人「なんだか切ないお話ですね」

酒場「空想は現実を超えることがあるみたいだ」
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:46:19.68 ID:x1j5tBVa0
酒場「この街では、数年前から偉そうに自分を語りだすやつが増え始めた。俺は魔王がいなくなって、人々が恐れを失ったせいだと思うんだが。俺は良いことだと思った」

酒場「夢と傲慢の何が違うっていうのさ。夢が許されるなら傲慢も許されよう。俺も故郷の人間に散々とめられながら、この街で自分の店を持った」

酒場「俺はこのままでは終わらない。俺はこんなんじゃない。特別な存在だ。選ばれた存在だ。そんな気持ちがあったから、努力することもできた」

酒場「見てみろ、様々な商売の中心になったこの夜も光輝く街を」

酒場「虚栄心がこの街を強くしたんだ」
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:48:38.02 ID:x1j5tBVa0
〜食後〜

勇者「数ある職業の中でさ」

遊び人「うん」

勇者「最も謙虚な職業って何だと思う?」

遊び人「賢者じゃない?」

勇者「本物の賢者ならそうかもな。でも王宮直属で働いてる賢者なんかになってみろ。傲慢にならずにはいられないと思うぞ」

遊び人「ちょっとは威張っちゃうかもね」

勇者「最も傲慢な職業はなんだと思う?」

遊び人「勇者じゃないかな」

勇者「そう。俺もそう思った」

遊び人「10年で数百人しか選ばれないと言われてるからね」

勇者「魔王を倒すのに最も近い職業から傲慢な傾向があるならさ」

勇者「遊び人こそ最も謙虚な職業なのかもしれないな」

遊び人「うふ、なによ急に」

勇者「この街に染まる前に、他人のことを誉めておこうと思ってな」

遊び人「褒められてるのかなぁ」

勇者「褒めてるよ。これからも立派に遊んでくれ」

遊び人「わーい!」ガシ

勇者「まて、財布を掴んでカジノを見るな」
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:49:45.55 ID:x1j5tBVa0
勇者「コンテストにエントリーするぞ。こういう時の展開として、優勝商品が大罪の装備だって相場は決まってんだ」

遊び人「違うみたいよ。どの部門も一律賞金だもん」

勇者「なんだよ。じゃあいいよ、めんどうくさい。ちなみにいくらだよ」

遊び人「5000G。勇者の命1000個分くらい?」

勇者「よし、出よう。大罪の装備は後回しだ」




【部門一覧】

・ちから自慢コンテスト

・すばやさ自慢コンテスト。

・かしこさ自慢コンテスト。

・みのまもり自慢コンテスト。

・うんのよさ自慢コンテスト。



勇者「遊び人は運のよさ自慢コンテストにでろ」

遊び人「はい」

勇者「俺はかしこさ自慢コンテストに出る」

遊び人「いいえ」

勇者「じゃあ何に出ればいいんだよ」

遊び人「みのまもり自慢コンテストは?死ぬぎりぎりまで粘れる唯一の人じゃん。死んでも蘇るし」

勇者「なんだよその命の軽さ。それに街人の前で急に棺桶に入ったら勇者だってばれるだろ」

遊び人「5000G」

勇者「やるよ」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:50:25.52 ID:x1j5tBVa0
司会「2日目!午後の部!みのまもり自慢コンテスト!!」

司会「厳正なる検査の結果、次の4名に決まりました!!」

司会「バニーガールのムチシゴキ地獄に耐え抜いた猛者達を紹介しよう!!」

遊び人「(予選を勝ち抜いた話を何故かしたがらないと思ったら……!誰かさんにとってはご褒美じゃないの!)」


大男A「俺はあらゆる痛みに動じない!!岩が頭に落ちた時も立ち続けた時のように!!」

大男B「俺はあらゆる痛みに屈しない!!雷が俺を撃ち抜いたときに気絶しながらも立ち続けた時のように!!」

大男C「俺はあらゆる痛みに耐え抜く!!盗賊に拷問されても宝の在処を吐かなかった時のように!!」

勇者「僕は、痛みを快感と捉えます」

司会「さぁー!最強の男たちが出揃った―!!この世界最強の街で、最強の座を手にするのはだれだー!!」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:53:12.90 ID:x1j5tBVa0
司会「準決勝の競技はこちらだー!!」

準決勝

「ちょう我慢大会」

司会「さあ、下剤入りの氷を食べて下さい!!」

ザワザワ…

遊び人「な、なにが始まるというの?」


司会「全員食べ終えたようです!!」

司会「それでは、勝負開始!!」

大男A「ああ!!敗退すりゅぅうううう!!!」ブリリイビチイチ!!

司会「おっとー!?開始1秒で大男Aが脱落したぁー!!勝負本番で胃が痛くなる体質が祟ったかー!?」

大男B「くっそ……臭いやがる……」

大男C「貰い下痢してしまいそうだ……」

司会「全員顔が青いぞー!!」


〜数分後〜

司会「残るはあと1名!!」

勇者「…………」

遊び人「(勇者、ずっと目を瞑ってる。がんばって!!)」

大男B「……っ!?待たれよ!!」

司会「どうした大男B!?」

大男B「お前は誰だ!!!!」

大男B「私はガスです」

大男B「よろしい!!ならば通れ!!」

大男B「はい」ビチチチブリュリュリュリュ!!!

大男B「ぬぉおおおお!!!!らめぇえええ!!!!」

司会「1試合目終了!!勝ち残ったのは大男C、そして勇者だー!!」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:53:46.31 ID:x1j5tBVa0
勇者「…………」

遊び人「(なによ、表情1つ変えないじゃない。普段からへんなもの食ってるから頑丈なのかな)」

勇者「うぼろぇえええ!!」

遊び人「ええっ!?」

司会「おっと!!勇者あまりの汚物の臭いに吐いてしまった!!ポーカーフェイスは吐き気を堪えていただけだったようだ!!」

大男C「おうぇええええ!!!」

大男B「うぼろぉおおええええ!!!」

司会「おっとー!他の選手ももらいゲロだぁうぼろろろろ!!」

遊び人「汚い!!!!」
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:54:55.07 ID:x1j5tBVa0
遊び人「最後の戦いはどんなものになるんだろう」

遊び人「対戦相手は大男Cね」

遊び人「勇者も、普段はふざけてるけど。こんなことあなたの前で言うと、笑われちゃうかもしれないけど」

たとえあなたが倒れても。

地面に倒れたあなたに、私が王冠を被せてあげる。



遊び人「(大男Cと勇者の頭の上に水の入ったお盆が乗せられたわ。一体何を……)」

司会「決勝戦!!『美女我慢コンテスト!!』」

バニーガール「しつれいします!」

大男C「ん?」

勇者「えっ?」

司会「ルールの説明です。これはバニーガールに背後からはがいじめにされ、甘い言葉をささやかれても頭の水をこぼさずにいられるか……」

勇者「ああでりゅううううう!!!!もうらめぇええええ!!!!」ビクンビクン!!

司会「勇者脱落!優勝、大男D!!」

遊び人「こらぁああああああ!!!!何が出たの!!?何がでたのよ!!!!!?」
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:55:52.65 ID:x1j5tBVa0
遊び人「こんのっ馬鹿!!!!変態勇者!!!色欲の谷からやり直してこい!!!」

遊び人「1回戦で負けるならまだしも!!こんちくしょお!!!私は予選敗退っていいたいのかよ!!!」

勇者「いててて!!何のはなしだ!!?」

勇者「恥ずかしくて言えなかったけど、小便ずっと我慢してて……」

遊び人「そんなにバニーガールがいいのかよぉおおお!!!バニーガールでも転職しろよぉおおお!!!!」

勇者「わ、わるかった!転職するから!バニーガールに転職するから!!」

遊び人「するんじゃないわよっ!!!!」

勇者「ええっ!?」
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:56:56.88 ID:x1j5tBVa0
司会「さて、みさなま。最後に、この戦いへと移りましょう」

司会「唯一予選がない部門があったことを皆様ご存知のことと思います」

遊び人「運のよさの部ね」

司会「なぜなら、この勝負は、皆様全員が決勝で戦うからです」

司会「全ての応募者のなかからくじ引きで選びました」

遊び人「そういうこと!?」

司会「優勝者は……」




司会「遊び人!!!」

遊び人「わたし!?」

司会「今宵、彼女が最も運の良い人物です!」
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:57:53.55 ID:x1j5tBVa0
遊び人「うそでしょっ!?ギャンブルは負け越してるのに!!今まで使い果たした運は今日という日のためだったのね!!!」

遊び人「やったわ!!勇者!!5000Gよ!!」

勇者「まじかよ……」

遊び人「お金は後日指定の場所で受取だって。楽しみだなぁ。またこの街でもたくさんお金稼いじゃったね」

遊び人「ということでさ。勇者様」

勇者「はぁー、しょうがねえなあ」

遊び人「勇者も遊びたいくせに」

勇者「まあな。カジノにでも行くか」

遊び人「やった!!!!!!!」




「運の良さなんてくだらないわ。自分に不相応な幸せを手に入れた人間こそ、最も不幸な目に遭うというのに」

「ちから、みのまもり、すばやさ、かしこさ、全てにおいてこの街最強の座に君臨した私でさえ、甚だしい思い違いをしていたと気づかされたのよ」

「あなた達も、束の間の勘違いを楽しんでいればいいわ」

傲慢「自惚れを、この元勇者様が踏みにじってあげるから」
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 22:59:25.50 ID:x1j5tBVa0
遊び人「うう……」

遊び人「頭が痛い。昨日カジノで遊んで、いけないと思いつつ店員の人から貰ったお酒を飲んじゃったせいかな。慣れないことをしちゃだめだな」

遊び人「それで、確か、急に具合が悪くなって、休める部屋に案内されて、そこで寝て」

遊び人「えーっと、ここはどこ?」

傲慢「不正行為をした客を、罰するための地下室よ」

遊び人「あなたは!?」

傲慢「この街を、誇るに足る街に育て上げた者よ。昨日の大会や、このカジノの経営も、私の権力が及ぶ範囲にあるの」

遊び人「責任者さんですか。あの、私、不正行為なんてしていません。その証拠に、昨日は見事な負けっぷりでしたもん。賞金がなかったらこのまま餓死してしまうほどですよ」

傲慢「あら、それは運が悪かったわね」

遊び人「ホントですよ。遊び人だというのにギャンブル運わるいんです」

傲慢「おまけに賞金も貰えないしね」

遊び人「はぁ!?」

遊び人「はぁあ!?どういうことですか!!?あなた自分が何を言ってるかわかってますか!?」

遊び人「というか、なんで私ここいいるんですか!?賞金くれるっていうのは嘘だったんですか!?勇者はどこよ!?賞金は何故貰えないの!?なんでこの街のお偉いさんと一体一になってるのよ!?賞金はどうなるのよ!?詐欺!?盛大な詐欺だったの!?賞金はどうなのよ!!」

傲慢「…………」
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 23:05:37.57 ID:x1j5tBVa0
遊び人「はぁ…はぁ…」

遊び人「あの、手始めにひとつ」

傲慢「どうぞ」

遊び人「あなたの職業、勇者なんですね」

傲慢「……恐れ入ったわ。街のうわさでも聞いたのかしら」

遊び人「そんなところです」

遊び人「(精霊が宿ってるのが見えるだけだけど)」

遊び人「(やっぱりそう。暴食の村、色欲の谷、そして傲慢の街。大罪にまつわる場所に勇者という職業の者がいる)」

遊び人「(そしておそらく、大罪の装備の所有者として選ばれるのも……)」

傲慢「何を遠い目をしているのかしら」

遊び人「…………」

遊び人「この部屋、不正行為をした客を罰するための部屋だって言ったのに。トロフィールームじゃないですか」

遊び人「金色の盾が数多く陳列されてる。これは、あなたがこの街で権力を握った軌跡ですか?」

傲慢「……関心しちゃうわね」

遊び人「こんなの洞察のうちにも入りませんよ」

傲慢「洞察の問題じゃないの。だって、他人の栄誉に関心をもつこと自体、奇跡的なことなんだから」
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 23:06:58.62 ID:x1j5tBVa0
傲慢「私は、私が育った街のアカデミーで、期待されていた生徒だった。先祖が勇者だと言われている家系に生まれ、実際に私は幼い頃からその頭角を表しはじめた」

傲慢「勇者特有の戦闘センスがあり、勇者にしか唱えられない呪文を覚え、他の生徒と圧倒的な実力差があった。そして、ある日精霊が私に降り注ぎ、私は完全に勇者として選ばれたことが証明された」

傲慢「アカデミーの校長先生にも何度も部屋に呼び出されたわ。元冒険家だったというその人の部屋にも、たくさんの盾や杯が飾ってあったの」

傲慢「そんな輝かしい表彰の数々を見て、私は何を思ったと思う?」

遊び人「自分はこれを超えられる?」

傲慢「ふふ。反対よ」

傲慢「何とも思わなかったの。それが、ほとんどの人間の、正常な反応だと思うわ」

傲慢「数ある盾のうち、ひとつだけ手に入れるのもすごい苦労を伴うことなのに。『ドラゴニクスレース 銅賞』と書かれている盾を見ても、普通の人なら数秒もしないうちに興味を失うでしょう。全国から選ばれし魔物使いが大勢集まって、命を懸けて目指すものにもかかわらず」

傲慢「魔物使いでもない者までが、その盾欲しさに、栄誉のために命を落とすのよ」

傲慢「自分は他人のことを見ないくせに。自分は他人に見られていると思い込む人がどれだけ多いことか」
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 23:12:23.23 ID:x1j5tBVa0
傲慢「話が逸れたわね。私があなたに聞きたいことがあるのに」

遊び人「何をでしょうか」

傲慢「暴食の街と色欲の谷で、棺桶を引きずって歩く冒険家の目撃情報があったの」

傲慢「加えて、今その2つの場所では、最近起きていた怪奇現象がなくなっている。食物の異常な成長は止まり、性文化に対する過剰な許容は規制されつつある」

傲慢「おそらくこれは、大罪の装備がその場所から失われたことによるもの」

遊び人「(やっぱり、大罪の装備について知ってるんだ)」

傲慢「あなた達が二人の勇者を処刑の王国に突き出し、大罪の装備を奪ったからでしょうね」

遊び人「はぁ!?」

傲慢「暴食の村の勇者、色欲の谷の勇者、彼らはあの国で死んだと聞いたわ」

傲慢「そして次は、傲慢の街の私が殺される番なんでしょう?」

遊び人「し、死んだ?」

傲慢「しらばっくれてもいいわよ。これから全てを吐いてもらうから」

傲慢「昨日の試合。本当に厳正なる抽選の結果、あなたが選ばれたと思う?賞金を受け取らせるために都合よく呼び出すために仕組んだのよ。まさか、カジノで浮かれて捕まえられるとは思ってなかったけど。あなた、最高に運が悪いわね」

傲慢「暴食の村で栽培されていた真実草はもう手にはいらないけど。力づくで全てを吐かせることならできるわ」

遊び人「うぐっ…!!」

傲慢の勇者は遊び人の頭を掴んだ。

傲慢「さあ。勇者にひざまづきなさい」

遊び人「……うぐっ!!!!???」

傲慢の勇者は、白目を剥いた女を掴みながらほくそ笑む。

勇者のみに授けられる雷撃の力を、拷問・洗脳として利用した。

とても繊細な呪文で、脳の中にある情報をそのまま話せば苦痛が与えられることはない。

脳の中にある情報を秘匿しようとし続ければ地獄のような苦しみを浴びる。



それでも、遊び人は、話すことをためらい、激痛を味わい続けた。

どうして話していけないかを理性で判断することはできなったが。

どうしてかわからないものこそ、守らねばならないと本能は感じていた。

盾も持たずに、遊び人は守った。

自分の、大切な生い立ちを。
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