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北上「我輩は猫である」
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518 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/14(木) 02:20:01.75 ID:4oCXpnXN0
谷風「私達はとても人に近いけど、裏を返せば決定的に人と違うという事になる。ホームズ君も言っていたんだろ?そりゃあその通りだろうね。
私達は所謂八百万の神。付喪神というやつだ。船に込められた想いや思い出を模倣し人の形にしたものだ。
それはどこまでも模倣でしかなくコピーにしかなれなく贋作としか生きられない。
でもそれって本物とどう違う?三つ子の魂百までとはよく言ったものだよね。
人の心とはそれまで出来事や出会い、周りの事象や人間から少しずつ寄せ集めて出来るものだ。子供なら家族。少年なら友達や先生。まあ大体そこらで人格は出来上がるかね。
一方私達はどうだい?思い出の寄せ集め。様々な思いの集合体。それは人とどう違う?
それにクローン的な存在とはいえ私達はその環境において様々な個性を会得するじゃあないか。
確かに世の中にはたくさんの谷風(わたし)がいるだろう。私と寸分違わぬ谷風が。でも住む鎮守府は違う。提督を主軸に鎮守府事に様々な個性がある。
私達にも個性がある」
519 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/14(木) 02:20:48.03 ID:4oCXpnXN0
谷風「人の模倣でコピーで贋作だが人とそう相違はなく、でもやはり決定的に違う。
それは繋がりだ、と私は考えるね。
魂とは繋がりだ。
親兄弟、親の親、親の親の親。血ではなく連なる思いの問題だ。
艦娘にそれはない。思い出は残るが続かない。思いはその時点で繋がらないんだ。
だからこそ君が出会ったそれは君の魂、猫の魂が間違いなく繋げた何がだろう。
私はそう考えるね」
北上「…これ以上私に長いセリフを聞かせないで。ホントに耳が死にそう」
谷風「かぁーなっさけない。耳耳ってどんだけ敏感なのさ。猫かってんだ」
北上「だから猫なんだってば。元ね」
谷風「そういやそうか」
北上「そうだよ」
520 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/14(木) 02:21:18.60 ID:4oCXpnXN0
谷風「今夜は、三日月のはずなんだけどね。生憎の曇り空だ。こうも暗いと慣れ親しんだ鎮守府もなんだか不気味に見えちまうねぇ」
北上「いつだってここは変わらないよ。人が変わるんだ」
谷風「およ?なんだか含みのある言い方だねえ」
北上「別に大した意味は無いよ」
谷風「そうかい。でもそのセリフに則って言うなら、君は変わったよ。今日を境に」
北上「かもね」
谷風「その2人組が気になるのかい」
北上「うん…」
谷風「安易に考えれば既に君の飼い主は覆水となっている、となるね」
北上「だとしても妙だよ。ここは日本だし。見た目も少し違った。あの女の人を私は知らないよ」
谷風「でも知っていた。そうだろう?」
北上「まあ、ね」
521 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/14(木) 02:21:52.87 ID:4oCXpnXN0
北上「でも一つわかった事があるんだ」
谷風「ほうほう。そいつは?」
北上「今までなんとなく探してたけど、これからは違う。前に言ってたじゃん。こうして生まれ変わったのには意味があるって。だから私は私の恩人たる飼い主を探す。探して恩返しする」
谷風「猫の恩返しかあ。ベタだけど、それってつまり素敵って事だよね」
北上「どうだろうね。でもこうして日本にいる意味は、やっぱりちゃんとあるんだと思う」
谷風「そうかい。まっ、頑張る事だね。ちなみにだけどさ、参考までにその2人ってどんな見た目だったんだい?」
北上「内緒。これは私の問題だもん」
谷風「そりゃ残念。でも相談にはいつでも乗るからね」
北上「ありがと」
谷風「どうも〜」
522 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/14(木) 02:22:39.17 ID:4oCXpnXN0
北上「あ、それなら早速相談が」
谷風「早速過ぎるね。いいよ、なんだい?」
北上「お墓に添える花って何がいいかな」
谷風「お墓?いったい誰のだい」
北上「会ったこともない友達に」
谷風「…なら、花じゃないけどエノコログサなんていいんじゃないかな」
北上「あ〜。ははっ、そりゃいいね」
523 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/14(木) 02:24:31.07 ID:4oCXpnXN0
艦娘ってこういう雰囲気の話合うよね。この手のSSもっと増えて
524 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/14(木) 05:09:09.88 ID:Tkb2hNjc0
乙です。
増やしたいがいささか苦手な書き方だな、他の人に期待しよう。
525 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/14(木) 07:54:47.35 ID:b+1+hMFlo
乙
素晴らしい
526 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/14(木) 21:23:19.10 ID:EHQUjcVB0
唯一の心配は重い方向に舵を切ったら纏まらなくなってしまった前作の轍を踏まないかだ
527 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/15(金) 23:32:41.67 ID:WJCAiSZV0
おつ
528 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/18(月) 00:05:36.56 ID:61oqffctO
面白かった、ここまで一気読みしちゃったんだけどこの作者さんの過去作あったら教えてほしい
529 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:09:55.64 ID:i3ZTT8gu0
36匹目:猫なで声
北上「ね?お願い球磨ね〜ちゃん」
球磨「…ダメクマ」
北上「ちっ」
多摩「諦め早いにゃ」
北上「球磨姉一度ダメって言ったら絶対変えないじゃん」
球磨「球磨をそんな意見をコロコロ変える様な軟弱者と一緒にするなクマ」
北上「柔軟な対応ができないとも言う」
球磨「うるせークマ。無理なものは無理クマ」
多摩「こればっかりは北上が悪いにゃ」
北上「えー多摩姉ちゃんまで…」
530 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:10:42.15 ID:i3ZTT8gu0
北上「お願い多摩えも〜ん。あのジャイアントパンダにガツンと言ってやってよ〜」
多摩「何うまい事言ってんだにゃ。そんな猫なで声出してもダメにゃ」
球磨「借りてくりゃいいのに何でそんなに買うんだクマ」
北上「手元に欲しいものってあるじゃん」
球磨「自分のキャパシティを超えて買う方が悪いクマ」
多摩「とりあえず
その本をどけるにゃ」
北上「いや他に置く場所ないから本棚置かせてって言ってるんだよ」
球磨「これ以上この部屋狭く出来るわけないクマ!」
北上「そこはほら〜共有すべき知的財産として」
多摩「半分近く外国語にゃ…」
北上「だってそういうの貴重なんだもん」
球磨「読ませる気ないクマ…」
531 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:11:13.67 ID:i3ZTT8gu0
北上「お〜ね〜が〜〜い球磨姉さまぁ」
球磨「まったく。都合のいい時だけそうやって、そんなとこまで猫っぽくなくていいクマ」
ううむ、人間の体では猫なで声の効果は半減か。そりゃそうか。
しかし部屋が狭いのは事実だ。
何せ元々四人部屋のところに五人いるのだから。
532 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:11:59.20 ID:i3ZTT8gu0
鎮守府の部屋の大きさは全部屋同じ。違うのは部屋に寝泊まりしている人数。
駆逐艦は6。毎日が修学旅行状態。半端な数なので姉妹艦で綺麗に別れないため、寝る時は日毎に部屋のメンバーを変えているらしい。マジ修学旅行。
軽巡3~4。5なウチはちょっと特殊。逆に3は広い。
重巡は4。軽空母も。
正規空母、戦艦となると二人部屋だったり二部屋ぶち抜いて四人部屋だったり。
大まかにいえばこんな感じ。
533 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:13:04.41 ID:i3ZTT8gu0
多摩「とりあえずいくつか手放すしかないにゃ」
北上「そんな!」
球磨「取捨選択クマ。何かを得るには何かを失う必要があるクマ」
北上「むむ…」
しかしこの部屋をこれ以上圧縮出来ないのも事実。
はてさて
北上「どうしたものか」
日向「どうしたとはどうした?」
北上「いやちょっと深刻な悩みが」
提督と球磨型を除けば実はこの鎮守府でもっとも古い付き合いである日向さん。
要するに読書仲間である。
534 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:13:57.91 ID:i3ZTT8gu0
日向「なるほどな。コレクターにおける最大の悩みはその収納場所である、と言うやつだな」
お昼前に倉庫にいた日向さんに話を聞いてみた。
北上「誰の言葉ですかそれ」
日向「さあ。でもどこかの偉人が何か言ってそうな感じはしないか?」
北上「確かに」
日向「まあそれはともかくとしてだ。本の収納に関しては私も他人事ではいられないな」
北上「日向さんも?」
この人は2人で一つの部屋を使ってるからスペースはそれなりに確保出来てるはずだが。
日向「収集に際限などないからな。極端な話自分の図書館が欲しい」
北上「あー」
すごく納得。
535 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:14:27.90 ID:i3ZTT8gu0
神風「それで私に?」
北上「そそ、どーしてるのかなって」
神風「どうと言われても、普通に本棚ですよ」
日向「足りてるのか?」
神風「いやもう全然全く微塵に皆無にこれっぽっちも足りてません」
ここに鎮守府読書家三人衆の意見が揃ったのであった。
ランチタイムと洒落こもう。
536 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:15:00.53 ID:i3ZTT8gu0
神風「電子書籍とやらを試したりもしましたね」
北上「あースマホで見れるやつだ」
鎮守府では基本的に連絡目的でスマホを1人1台持っている。
軍事機密的なあれやこれやで制限は多いけど基本的には一般的なスマホと同じである。
日向「タブレット端末なら私も使っているが、資料などを読む際に拡大で小さい文字が見やすいのは確かに便利だった」
北上「電子書籍かぁ。確かに収納スペースの問題は一気に片付くね」
537 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:15:38.29 ID:i3ZTT8gu0
神風「いえでもやっぱり紙媒体がいいなぁって…」
日向「まあそうなるな」
北上「そっかあ…だよねぇ…」
神風「1枚1枚手でめくるのがいいんです…」
日向「ざっとめくってこの辺りにあのシーンが見たいな事が出来ないからな…」
北上「読みながら自分が今物語のどの辺にいるかわからないもんね…」
神風「挿絵のページが本を開かなくても黒い線で分かったり」
日向「栞を挟む楽しみがな」
北上「あれ?これってさっきの!とかでページ戻す時の感覚とかさ」
以下、紙媒体の良さ。は流石に割愛。
538 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:16:19.38 ID:i3ZTT8gu0
北上「提督に頼んでみよっかな〜」
神風「頼むって、何をどうするんですか」
北上「んー…床下収納できるようにとか?」
神風「私達はみんな1階より上ですし…」
北上「工事にお金も時間もかかるからねえ」
日向「…ふむ、提督に頼むか」
北上「え、なにか妙案が?」
日向「2人とも。付いてきてくれ」
539 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:17:04.05 ID:i3ZTT8gu0
鎮守府の建物の中でも端っこの端っこ。恐らく訪れた事が無いどころか多くの者が存在すら知らないであろう空き部屋。
日向「ここを図書室とする」
神風「え?」
北上「そんな急に」
日向「まあ聞いてくれ。私も以前に1度、本の置き場に悩んだことがある。その時に提督に提案したんだ。図書室を作ろうと」
北上「本置き場じゃなく図書室?」
日向「私的な理由で部屋を一つ使うわけにもいくまい。あくまで皆が利用できるようにという建前だ」
神風「なるほど。でも以前提案した事があるってことは、無理だったってことじゃ」
日向「その通り。だが私は諦めなかった。副秘書艦という立場を利用しこの部屋を何にも使われないように守ってきたのさ」
この鎮守府、ろくな権力者がいない。
540 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:17:43.11 ID:i3ZTT8gu0
日向「さて。今回は私が勝算があると思う理由は三つある。一つは最近の鎮守府でのスマホ事情だ」
北上「最近?」
神風「ここ2.3年で一気に鎮守府での利用が広まったんですよ」
日向「連絡手段として便利なのは確かだからな。セキリュティと法律関連が整備され鎮守府でも利用されるようになった」
北上「へえ」
生まれたての私には当たり前のものだと思っていたが。これが世代の差というわけか。
日向「ところがだ。今では多くのものがスマホに夢中になり日がな一日画面とにらめっこという状況も珍しくない」
それは艦種によっては本当にただただ暇でやる事が無いからというのもあるので、一概に言えるものではない。一応。
541 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:18:28.12 ID:i3ZTT8gu0
スマホのアプリ。つまりゲーム。セキリュティのなんちゃらかんちゃらで監視はされてるけど利用は可能となっている。
妙な事をしたり情報を漏らさなければ普通の人と同じようにスマホを使えるのだ。
一応そこら辺は鎮守府事に提督が使用の是非を決めていい事になっているが、ほとんどOKを出しているとか。
何故か。暇つぶしのためというのもあるが一番はお金の使い所らしい。
外にはなかなか出れず、物を買っても置く場所は限られる。なのに命懸けの仕事でお金だけがふえていく。
そんな私達が経済にしっかり貢献できる手段が所謂ソシャゲ。有り体に言ってガチャである。
言ってて悲しくなるよねこれ。
542 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:19:04.73 ID:i3ZTT8gu0
日向「提督もダメとは言わないが決してよくも思っていないからな」
神風「それで図書室を作って読書を勧めようと?」
北上「理由としては、うん、問題はなさそうだね」
日向「提督は割と古い型の人間だからな。スマホは悪だと適当に言い含めておけば大丈夫さ」
何故こうも提督の周りには一癖も二癖もある者が多いのか。
日向「二つ目はラノベだ。最近夕張の熱心な布教活動で随分流行っている」
北上「スマホゲームのおかげでキャラは知ってるみたいだからね。原作を勧めやすいって聞いたよ」
543 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:19:33.85 ID:i3ZTT8gu0
日向「うむ。なのでラノベなんか読まずにちゃんとした本を広めようとか説いてやればいい」
神風「うわぁ…」
北上「えぇ…」
普段なら聞いた瞬間「あ゛?」とか言いたくなるセリフをこうもサラリと使うとは。
しかも分かって言ってるだけにタチが悪い。
神風「でも図書室にもラノベ置くつもりなんですよね?」
日向「部屋の使用許可さえ降りればこっちのものさ」
神風「デスヨネー」
544 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:21:31.36 ID:i3ZTT8gu0
書きたいものに時間も体もついていかない。
やたらと長くなってきましたが行き当たりばったりなのでちゃんと締まるかは、なんとも
545 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/19(火) 01:22:23.19 ID:i3ZTT8gu0
北上「なりふり構わずって感じですね」
日向「ない袖だって振ってやるさ」
神風「それで最後は?」
日向「君だよ。北上」
北上「え?」
神風「北上さんが?」
私がなんだというのか。
546 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:46:36.25 ID:ffvQcam00
北上「ってさ。私にお国よりも大事な本を捨てろって言うんだよ?」
所変わって提督室。
提督「おおよそ在りし日の船の魂が言うとは思えない発言だな。それにその件に関しては全面的にお前が悪い」
北上「え〜提督からもなんか言ってよ〜」
提督「言ってもいいが俺は球磨達に付くぞ。第1部屋の問題は部屋の者で解決しろ。そういうルールだろ」
北上「まあそうだけどさあ。じゃあじゃあ、床下に倉庫とか作ってよ!」
提督「お前の部屋2階じゃねえか!」
北上「ん〜提督はなんかアイディアない?」
547 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:47:11.75 ID:ffvQcam00
提督「そうだな。他の部屋に置いてもらうとかはどうだ?」
北上「他の部屋、夕張とかか」
提督「後日向も結構本を置いてるぞ」
北上「へ〜そりゃ知らなかった」
大嘘である。
猫を被る、ではなく皮を被るである。
しかし驚く程スムーズな流れ。逆に怖い。
北上「でもさ、私英語の本とか多いからあんまり他の娘に預けるのはね」
提督「なんで?」
北上「読めない物渡されても困るじゃん」
提督「それもそうか」
548 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:47:46.26 ID:ffvQcam00
北上「他にしまえるところないの〜」
提督「…本ねぇ」
北上「おや?何か心当たりがある様子」
提督「いやあ違う違う。あっそうだ!部屋ってんならいくつか空きがあるぜ」
北上「ああ三階の奥のヤツとか?」
提督「そうそう。なんだかんだで使わずじまいでな」
北上「じゃあさ、あそこ図書室にするのはどう?」
提督「図書室?」
549 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:48:26.29 ID:ffvQcam00
そう、図書室。全てはそのための布石。
あくまで自然な流れで、さも今しがた思いついたかのように図書室計画を進めるのだ。
私が。
理由の三つ目。私、というか大井っち。
提督は私に甘いのだ。
その甘さを素直に大井っちに向けてればいいのに、というのはこの際どうでもいい。
意中の人の大親友という立場を今日は存分に使おう。
日向さんから言われた通り。ここからは一つ目、二つ目の理由をさりげなく会話に盛り込み図書室計画を楽しげに語っていく。
もちろん要所要所で大井っちの名前を出すのは忘れないようにしなくては。
我ながら悪い事してるなあと思いつつもちょっと楽しんでたり?
550 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:48:59.36 ID:ffvQcam00
北上「そそ。学校みたいに、って私学校なんて知らないんだけど。まあそんな感じでさ」
提督「いいんじゃね」
北上「ほら、最近みんなスマホとか…え?いいの?」
提督「あそこどうせ使ってないしな。ただしやるなら自分でやれよ。部屋は貸す。だがそれ以外は一切関与しない」
北上「…」
提督「なんだよその顔は…」
いやこの人私に甘すぎでしょ。日向さんに何されても知らないよ。
551 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:49:39.23 ID:ffvQcam00
提督「お前駆逐艦や軽巡にやたら好かれてるしな。人は集めやすいだろ」
北上「別に好きで好かれてるわけじゃないしー」
提督「いーじゃねえか。どちらにせよ嫌じゃないんだろ?」
北上「まあね…」
駆逐艦は神風を中心に、軽巡は阿武隈繋がりだが最近は妙に寄ってこられる。何故だ。
提督「さて話は決まりだな」
日向「よしでは」ガチャ
吹雪「細かいところを詰めてきましょう」ガチャ
提督「は?」
今回の仕掛け人たちが入室してきた。
扉の前で待ってただけなんだけどね。
552 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:50:18.04 ID:ffvQcam00
日向「部屋の採寸は終わっている。必要な棚、机、椅子等はこれから調達する。詳細はこの資料を見てくれ」
吹雪「本の管理システムですが夕張さんがスマホのアプリを使った物を開発してくれるそうなのでそれを使います」
日向「予算は私と北上、神風、夕張で出す。腐らせていた金だ、たっぷり使うさ」
吹雪「業者の人を入れるのは許可とか申請が面倒なんで人手がある日に鎮守府に届けてもらって私達で設置します。スケジュールの方はこっちの資料に候補をあげといたんで目を通しておいてください」
提督「え、いや、あの、ごめん、もっかい言って」
日向「それじゃ」
吹雪「それでは」
バタン。
台風一過のような静けさが訪れた。
553 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:50:54.37 ID:ffvQcam00
提督「北上…」
うわぁ、すごく恨みがまし〜い目で見られた。
北上「提督」
提督「なんだ」
北上「ありがとね」
提督「はぁ…」
北上「えーため息つかないでよぉ。いや悪い事したとは思ってるけどさあ」
提督「素直に言ってくれよだったら…というか怖いからあいつら巻き込むな」
そっちが本音か。
554 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:51:22.17 ID:ffvQcam00
北上「感謝してる。ホントだよ?」
提督「知ってるよ。で、さ。図書室出来たらそこに入り浸りか?」
北上「あーどうだろ。入り浸りって事はないんじゃないかなぁ」
提督「そうか。そっか」
北上「?」
提督「ま、アイツらがいるから大丈夫だろうか、頑張れよ」
北上「うん」
555 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:52:01.77 ID:ffvQcam00
北上「いいねぇ、痺れるねえ」
神風「出来てしまった」
日向「まあ、そうなるな」
計画開始から僅かに1週間。
私達の牙城が出来上がった。
四方を取り囲む本棚はまだ半分ほどしか埋まっていないがそれはこれから増えていくから問題ない。
部屋の中央には背の低いテーブルが二つ。座布団や椅子が周りに置かれている。基本は床に引いたマットに座る想定だ。
もちろん寝転んで読むことも出来る。
556 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:52:29.09 ID:ffvQcam00
北上「受付とかってやる?」
日向「それは私がやろう」
神風「え?でもお仕事があるんじゃ」
日向「ここに持ち込めばいいさ。持ち込めないものはさっさと終わらせるか他に回せばいい」
優秀だもんね、この人。
北上「では」
日向「お楽しみと」
神風「いきましょう!」
557 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:53:03.68 ID:ffvQcam00
ゴロンと寝転ぶ。場所は窓から入る陽の光で暖められている場所の隣。
隣というのがポイントでつまり直射日光ではなく陽の光を吸った干したての布団の温もりの上ということである。
よく寝ながら読書は読みにくいという話を聞くが私はこの方が落ち着く。何故だろう。猫だったから?
神風「んっと」
神風は人をダメにするというクッションチェアに深々と腰掛け、お臍の上辺りに本を広げている。いつもの姿勢だ。
この時いつも足を伸ばすのではなく膝を折り曲げるため行燈袴から太ももが、というかもうパンツまで見える時は見える。
558 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:53:44.04 ID:ffvQcam00
ブーツを脱ぐとだらしなくなるのが彼女の特徴である。意外とふとましいというかむちむちとした太ももには是非とも膝枕をして欲しいのだが一向に首を縦に降ってくれない。
ちなみに一番は大井っち。阿武隈は細いのでダメ。
まあこのだらけ具合は完全にプライベート空間だし周りも女だけ、本人も気にしていないようなので特に何も言わないけど。
日向さんは入口に設置されたカウンターで椅子に座って読んでいる。
なんでもゲーミングチェアと言って角度や姿勢が色々調節できるらしい。
5万円もしたというがホントか嘘か。
559 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/09/20(水) 02:54:42.19 ID:ffvQcam00
基本的に駆逐艦は守備範囲外だけど神風だけはえっちぃと思いましたマル
560 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/20(水) 04:50:38.25 ID:7jPtKaSgO
乙です。
私も話に加わらせて頂いても構わないかな?(ラノベ中心に諸諸紙媒体派提督)
561 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/22(金) 16:43:05.80 ID:c8vmu/EAo
大正ロマンのかほり
562 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:37:25.80 ID:hlST7fwS0
壁にかけられた時計の針の音だけが響き渡る空間。なんとも素晴らしい。
本の収納に留まらずこんな癒し空間まで手に入るとは、いやほんとに素晴らしい。
大井「お邪魔しまーす」
多摩「うわ、マジにダラダラしてるだけにゃ」
北上「やほ〜」
神風と日向さんは本にのめり込んでいるのか2人の来訪者に眉毛一つ動かさない。
いや受付は受付しなよ…
563 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:37:56.88 ID:hlST7fwS0
大井「ここが北上さんの牙城ですか」
あっ、発想が同じだ。
多摩「本関係なく過ごしやすそうな場所にゃ」
北上「2人は何しに?」
大井「夕張さんにこれを渡すようにと」
日向「お、端末か。これで正式に本の貸し借りができるな」
多摩「ビックリしたにゃ。急に会話に入るんじゃないにゃ」
日向「酷いことを言う。私が受け取らねばそちらも困るだろ」
多摩「なら最初から反応するにゃ」
日向「善処しよう」
多摩「した試しがないけどにゃ」
あれ?この2人なんか知り合いというか、気の置けない仲って感じが。
あんまりそういうイメージないけど、私みたいになにか趣味とかで繋がりがあるのかな。
564 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:39:50.77 ID:hlST7fwS0
日向「さてそろそろ行くか」
北上「いずこへ?」
日向「仕事さ。ついでに神風も起こしてくれ」
起こしてとは決して神風が寝ているという意味ではない。ようは目を覚まさせろという事だ。
というわけで、
北上「おりゃあ〜」
神風「ひゃあっ!?」
袴を思いっきり捲ってやる。慌てて抑えてるけどさっきから丸見えなんだよねえ…
大井「桃色」
多摩「桃色にゃ」
神風「北上さん゛!」
くりんとした目を僅かに潤わせながら睨みつけてくる様はなんというかこう加虐心を擽られる。
北上「あーほらほら呼んでるから」
神風「呼んでる?」
565 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:40:27.67 ID:hlST7fwS0
日向「これから遠征だろ?そろそろ向かうべきだ」
神風「はっ!忘れてた!」
慌てて本を棚に戻す。神風はリアクションが大きくて面白い。
神風「では皆さん、ごゆっくり!」
日向「ごゆっくり?ごゆっくり…うん。ごゆっくり」
走り去る緋色とぬらりと消える白。
大井「と言われても、届けに来ただけなのよね」
多摩「せっかくだしゆっくりしてくにゃ」ゴロン
北上「いらっしゃ〜い」
大井「も、もう。しょうがないですね」
とか言いつつ顔がにやけてる大井っち。
566 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:41:02.54 ID:hlST7fwS0
多摩「結構ふかふかにゃ」
大井「流石です北上さん!」
選んだのは神風とは言わない。
しかしこれは、チャンスだ。
読みかけの本を閉じ棚に戻す。変わりにある本を手に取る。
多摩「これ部屋にもひくにゃ」
大井「テーブルありますよ?」
多摩「畳めるようにしとくんだにゃ」
大井「それなら、いやめんどくさそうです」
多摩「えーそんな事ないにゃきっと」
大井「いえ、多摩姉さんが面倒くさがります絶対確実に間違いなく」
多摩「むぅ」
567 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:41:39.26 ID:hlST7fwS0
あくまで自然な形で本を開き、しばらく読み進め、ふと思いついたかのように口を開く。
北上「ねえねえ、ライ麦畑って見た事ある?」
大井「麦、 畑?」
多摩「どうしたんだにゃ急に」
大井「あぁCatcher in the Ryeですか」
北上「うん。実際麦畑ってどんな感じなのかーって」
多摩「見た事はないにゃ〜。第1日本じゃ、無いこともないのかにゃ?でもほとんど無いはずにゃ」
大井「それこそアメリカみたいな広い国でないと」
568 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:42:07.40 ID:hlST7fwS0
多摩「知識というかイメージなら分からなくもないにゃ」
大井「そうですね。ともかく広くて大きくて」
多摩「ん、麦畑、にゃあ」
大井「日本語訳は確かライ麦畑でつかまえて、でしたよね」
北上「そうそう」
実はそっちはまだ読んでなかったり。
大井「でも実際麦畑で追いかけっこなんかしたら絶対捕まえられませんよね。お互いに全身スッポリ覆われてしまいますから」
北上「それもそうだねぇ」
ん?
多摩「…」
北上「多摩姉?」
569 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:42:48.98 ID:hlST7fwS0
多摩「見た事あるにゃ」
北上「え!?」
多摩「いや、ハッキリとは覚えてないにゃ。ただこう、まるで一枚の写真みたいな感じにぼんやりと絵が浮かぶにゃ」
大井「ど、どういう事ですか!?」
北上「何か他に思い出せないの!」
多摩「お、おうにゃ。ただ小麦色の背景に、人にゃ。えーと、なんだろにゃ、金色の…どこで見たんだったかにゃ」
北上「…まあうろ覚えじゃしょうがないか」
多摩「そんなに麦畑見たいのかにゃ?」
北上「いや、そんなんじゃないよ。まさかホントに見た事あるとは思わなかったから驚いただけ」
多摩「なんか悪いにゃ。変な期待させて」
北上「気にしないでよ。そう大した事じゃないからさ」
570 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:43:29.17 ID:hlST7fwS0
多摩「あ、そろそろ風呂の時間にゃ」
北上「じゃあ先行っててよ。私ちょっと夕張んとこ寄ってくから」
多摩「おっけーにゃ。大井ーいくにゃー」
大井「へ?あぁはい。行きましょうか」
図書室を出て別れる。
少し1人で考える必要がある。
571 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:43:58.48 ID:hlST7fwS0
一つ可能性を忘れていた。
多摩姉に記憶が全部あるとは限らないのだ。
それは生まれ変わる過程で失われたのか、それとも今はまだ思い出せていないだけなのか。そこら辺ら判然としないけど、ともかくあまり根掘り葉掘り聞いても仕方ない。
とは思うのだけど、焦る気持ちはやはりある。
自分の記憶だけだと現状私の飼い主を見つけるのはほぼ不可能だ。あまりに情報が少ない。
多摩姉の記憶にヒントになるものがあるという保証はないけど、それでも現状は唯一の突破口だ。
北上「一回頭冷やすか」
冷たい水でもかぶりたい気分だった。
572 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:45:09.49 ID:hlST7fwS0
多摩「そういや図書室って鍵かけたりしなくてもいいのかにゃ?」
隣でシャンプーのついた頭を洗い流す多摩姉が聞いてくる。
多摩姉も含めて多くの艦娘がそうなのだが頭を流す際、目をつぶって頭の上からドバっとシャワーをかける。
私はこれが苦手である。目に水が入るのがいや、というわけではなく目に水が入るような感覚がダメなのだ。
あと髪が長いからそれが顔にひっついたりそこを水が伝ったりというのも嫌だ。
例えゴーグルをしていても顔の上から水が垂れてくるのがどうにも気持ち悪い。ので頭を後ろに少し倒しオデコから後ろにお湯を流すように洗っている。
北上「鎮守府内ならどうせ取るやつもいないしいいんだって日向さんが」
多摩「まあそれもそうだにゃ」
蛇口を捻り、シャワーでお湯をかぶる。
573 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:45:50.60 ID:hlST7fwS0
北上「ねー大井っち〜」
大井「なんですか〜」
いつものように髪を乾かしてくれる大井っち。
いつものように腰に手を当てて風呂上がりの牛乳を飲む木曾。
いつものように謎のストレッチを開始する多摩姉ちゃん。
北上「球磨姉どこいったの?」
大井「あー、それがですねえ…」
気まずそうに目を伏せる。
何かあったのか?
574 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:46:29.43 ID:hlST7fwS0
北上「うわっ!」
球磨「 」
部屋に戻ると球磨姉ちゃんが死んでいた。
いや生きてはいるけど、なんいというか死んでいた。うつ伏せに。
北上「いつから?」
多摩「今日の午後からにゃ」
木曾「具体的に言うと図書室完成の連絡が回ってきた時からだな」
北上「図書室?」
なぜ図書室。
575 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:47:20.14 ID:hlST7fwS0
大井「北上さん北上さん」
北上「な、なにさ」
大井「アレです、アレ」
北上「アレ」
大井っちが部屋のある場所を指さす。
そこは私の買った本が積んであった場所だ。
なのだが。
北上「本棚?」
部屋の邪魔にならない細くて長い本棚が床から天井まで伸びていた。
棚は1/4ほどしか埋まっていないが、きっとこれなら私が図書室に運んだ分も合わせて全部収納出来ただろう。
576 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:47:50.34 ID:hlST7fwS0
北上「でも何でこんなのが」
球磨「クマガカッタクマ」
北上「え゛」
うつ伏せのまま妖怪球磨雑巾が喋る。
球磨「オトトイノアサトドイタクマ」
一昨日の朝、というと図書室の家具が届いた時と一緒か。その時一緒に届いたのだろう。
球磨「ケサクミオワッタクマ」
北上「う、うん…」
流石に読めてきた。非常にわかりたくない真実が。
球磨「図書室なんて聞いてないグマ゛アァァ!!」ガバッ
北上「えぇ〜…」
577 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:48:21.89 ID:hlST7fwS0
つまるところ私達が図書室なんて用意してるとは知らずに私の為に本棚を、しかも完成まで見つからないように1人で作っていたという事だ。
確かにサプライズ的な意味も込めて私達も図書室の件はあまり触れ回らなかったけどさあ。
球磨「 」チーン
多摩「うむ、球磨はよくやったにゃ」ヨシヨシ
木曾「なんだろうな。この誰も悪くない感じは」
大井「不運としか」
北上「嫌な事件だったね…」
578 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:48:53.30 ID:hlST7fwS0
球磨「」
球磨姉は後ろから見ると良くわかるが、本当に髪が長い。それでいてフワフワとしていて触り心地がよい。それこそ毛皮のように。
なので
北上「とうっ!」
球磨「ぐえ゛っ!」
その毛皮に思いっきり飛び込んでみた。
球磨「何すんだクマ!死ぬところだったクマ!」
北上「う〜ん、やっぱ球磨姉の毛皮気持ち〜」
球磨「球磨は熊じゃないクマ!毛皮にしないで欲しいクマ!」
579 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:49:26.01 ID:hlST7fwS0
北上「まあまあ良いではないか〜」
球磨「良くねえクマぁ!」
チラとほかの3人にアイコンタクトを取る。
木曾と大井っちは一瞬2人で顔を見合わせたが直ぐに察したのかニヤっと笑うと、
木曾「おらっ!」
大井「よっと!」
球磨「ギャーー!!」
さらに覆いかぶさってきた。
球磨「や、ヤメロクマー!ちょそこは違うクマ!くすあはははは、くすぐったいクマァ!」
580 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:50:00.98 ID:hlST7fwS0
実際のところ球磨姉の上に3人なんて乗れるはずもなく、私が頭らへん、大井っちが背中、木曾は下半身となった。
でも、なんだか包み込まれているような気分だった。
北上「ありがとね」
球磨「へ?って木曾!何靴下取ってあはははは足!足裏はダメクマァ!」
大井「…」パチッ
北上「え、何外したの」
大井「ホックです」
球磨「何とんでもねえ技披露してんだクマ!」
北上「よし、球磨姉のを揉んで大きくしてあげよう」
大井「承知。木曾、足をお願い」
木曾「え、マジで?」
球磨「クマアァ!!多摩あ!助けろぉ!」
多摩「いい揉み方を知ってるにゃ」
球磨「多摩ああああ!!??」
581 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:50:48.56 ID:hlST7fwS0
突如、バタン!と扉が叩き開かれる音が部屋の時を止める。
各々揉むのや抑える、脱がす暴れるなどを辞め一斉に扉に向く。
彼女は扉からぬらりと部屋に入ってきてこう言った。
神通「皆さん…もう少し静かに。下の子達から苦情が来てます」
「「「「「アッハイ」」」」にゃ」
棚の余った段には現在、球磨型の写真が飾られていて、日に日にその数を増やしている。
582 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/01(日) 16:54:31.94 ID:hlST7fwS0
秋刀魚漁には間に合った…間に合った?
なんでも何かと幼女から奪うイベントが改修のために園児を集めるイベントになったとか
話が年内に終わる気がしない
583 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 18:23:37.12 ID:xGSMU+RKo
当の幼女は無いぞと手を振ってるらしいが
584 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/01(日) 20:44:28.57 ID:Fj4g0i1j0
お持ちでないとわかっていても挨拶代わりに一度はぶちのめされるほっぽちゃんであった
585 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:32:52.75 ID:fUizg0w/0
37匹目:本の猫
本の虫とは、本が好きな人のことを指す。
しかしこれよく考えなくても害虫呼ばわりである。
物好きなって意味合いもあるんだろうけどもう少し言い呼び方はなかったもんかね。
まあいいけど。
趣味に熱中しすぎる人間は往々にして奇怪な目で見られがちである。
実際異質な行動をとりがちだし。
例えば鎮守府にも、
586 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:33:48.87 ID:fUizg0w/0
明石「記憶が蘇る方法?」
北上「そうそう。何かきっかけとかタイミングってあるのかなーって」
明石「もしかして記憶結構思い出したり?」
北上「あーうんまあ」
明石「ほほ〜う、それはそれは中々興味深いわねえ」
明石の目が怪しく光る。
大丈夫と分かっていてもこの手の人種の知的好奇心溢れる目はなんというか身構えてしまう気迫がある。
明石「あはは、何もしないってば。本人の許可なく」
北上「だよねー」
許可したら何するつもりだおい。
587 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:34:43.53 ID:fUizg0w/0
場所は工房。明石とはお仕事中にも関わらずこうして相談に乗ってくれるくらいの仲だ。
消して私という存在への好奇心じゃなく。多分。
明石「そーね。きっかけと言えば、変わる時、ね」
くるりとイスごと回転して作業に戻る。
私と話しながら行える程度の作業という事らしい。
何となく私もイスで回ってみる。
北上「変わる?」
明石「そうそう」
ちなみに彼女の服装はツナギにタンクトップ。
危ないだろと思ったが防護服とかで防げるようなものなら艦娘には何の影響もないという話である。
彼女曰く「この長ったらしい髪の方がよほど危険」だとか。自分で言っちゃあおしまいでしょ。
588 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:36:16.16 ID:fUizg0w/0
明石「一つは生まれ変わる時。これはまあ私達が生まれる時ね」
北上「船から艦娘へってことか」
明石「前にも言ったけど、艦娘って色々なものが混ざって交わって合わさって出来てるのよ。だから生まれる過程で異物、って言い方はアレだけどそういったものが入る事はまれによくあるのよ」
どっちだよ。
明石「もう一つは改造で変わる時」
北上「改造も?」
明石「ええ。私達の力の源は基本的に船の記憶。船としての機能の模倣。ありし日の戦いの投影なの。ほら!艤装もこうフワッて出せるでしょ!トレースオンって感じ!」
北上「お、おう」
急に振り向いたかと思うと凄く楽しそうに喋る。
わざわざ書く事でもないけど彼女は既に夕張によって染められている。何とは言わないが、色々と。
589 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:36:50.93 ID:fUizg0w/0
明石「改造による強化や艦種の変更はその船の記憶をより定着させたり、違う記憶を入れたりするものなんだけど。それもきっかけになったりはするわね」
何事も無かったかのように作業に戻る明石。切り替えが早い。
北上「そっか〜、改造かぁ…」
多摩姉は球磨型でも最高練度だ。当然改造済。う〜んまいった。頭でもどつきゃいいのかな。
明石「何か不備があるならとりあえず叩いてみる?」
そう言ってスパナ(?)を右手でヒラヒラとさせる。技術者がまず第1にそれを言ってどうする。
北上「遠慮しとくよ。でもありがと」
明石「お役に立てたかしら?」
北上「いやもう全然まったく」
明石「ひどい!」
北上「んじゃね」
軽口を叩きつつ席を立つ。
590 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:37:27.90 ID:fUizg0w/0
明石「あー待って待って」
北上「どったの?」
明石「さっき夕張が呼んでたの忘れてた」
北上「夕張が?なんだろ」
明石「アレでしょアレ」
明石が、多分スパナじゃなさそうな何かの工具を拳銃のように持ちパァンと効果音をつける。
北上「あーアレね」
明石「アレよ」
思わずニヤついてしまった。
591 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:38:37.15 ID:fUizg0w/0
パァン、と言うのが一般的に銃が弾丸を放つ時の効果音として用いられる。
がこれは猫がにゃあと鳴くと言われるのと同じで実際にそう聞こえなくてもそう言う意味、状況を表す一つの記号として存在するものだ。
つまり何が言いたいかというと私は発砲音はタァン派という事だ。
とか何とか考えながら4発を的に撃ち込む。悪くない命中率だ。
右人差し指でセミオートからフルオートに切り替える。
子気味いい音とともに数十発の弾丸が発射される。
うん、これはたまらん。
北上「パーフェクトだ夕張」b
夕張「感謝の極み」b
592 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:39:29.07 ID:fUizg0w/0
P-90もどきを棚に戻す。名前はまだ決めてないらしい。
北上「やっぱこのくらいの大きさのが好きだなあ私は」
夕張「えーアサルトライフルとか機関銃とかもいいじゃ〜ん。ヒャッハーって弾丸ばら撒くの!」
北上「トリガーハッピーめ」
夕張「化物狩るのが日常の艦娘が何を今更」
北上「そりゃそうだ」
以前に言ったが工房でちょくちょく消える改修資材ことネジ。え、逆?
まあともかくそのネジの行方がこれである。
ズラリと並んだ銃火器。
アメリカンな映画のような風景だ。
593 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:40:00.25 ID:fUizg0w/0
自身が軍所属の兵士であり軍所有の兵器であり化物を倒す生きた軍艦でありながら、意外にもこうした銃火器に触れた事がないのが艦娘である。
理由は反乱とかを恐れてだとか。
いやいや見た目が小学生低学年の駆逐艦ですら戦車とやり合えるというのに何を今更という話だが、実はちゃんと効果がある。
それは私達の燃費の悪さだ。
この大きさで軍艦同様の力を発揮するというのは末恐ろしい話だが、残念ながら自身で持てる燃料弾薬は人の大きさ基準なのだ。
便宜上「燃料」「弾薬」と呼ばれるそれは実に特殊なもので艦娘が身体に保有する以外での持ち運びが非常に難しい。
大規模な海域戦でこちらがジリ貧になったりするのはそれが原因だ。
補給艦なる者もいるが相応のリスクを伴う。
594 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:40:32.96 ID:fUizg0w/0
鎮守府に立て篭もるならともかく、私達は長期的な外部戦闘が難しいのだ。
簡単に言えば私達が人類を滅ぼしてやるーと意気込んでも守りに徹していれば勝手に息切れするのである。
弾丸がきれれば砲塔は飾りだし燃料がきれれば艤装は動かない。
残るのは身体能力のやたらと高いだけの少女である。
銃火器以外にも反乱等の対策は色々されているらしいがそこまでは夕張は教えてくれなかった。
なんて知ってるのとは聞かない。怖いし。
595 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:41:10.56 ID:fUizg0w/0
夕張「それじゃ今度はこいつね」
北上「うわごっつ。何それ」
夕張「名付けて、バレットY35!」
Yは夕張のYかな。35はなんの数字だろう。
北上「私の身長とあんま変わんないし…」
夕張「スナイパーだしね〜対物だしね〜」
北上「もどきならそこは私用にコンパクトにしてもいいじゃん」
夕張「そこにロマンはない」キリッ
北上「アッハイ」
銃を手に持つ。重い長いデカい。
こんな所までHELLSINGリスペクトしなくていい。
まあ実際は艤装の方が対化物用であり、こんなものは今の時代無用の長物なのだが。
596 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:41:46.06 ID:fUizg0w/0
北上「撃っていい?」
夕張「ちゃーんと海の方に的を浮かべといたから。音は作業音って言っときゃ大丈夫大丈夫」
北上「ならいいけど」
いいのかな。フラグにも聞こえるが。
艤装と銃をリンクさせ弾薬を装填する。
これがもどきの理由。
艦娘専用の銃。
作者、明張コンビ。
弾も艤装からなので深海棲艦にも効く、と言うと偉大な発明のようだがだったら戦艦が砲撃した方が手っ取り早いのでやはり趣味の範囲。
ちなみに先に述べたようにれっきとした銃なのでバレたら、どうなるのかね。
夕張「一応踏ん張っといてね。一般の女子中学生が撃ったら肩イくから」
北上「そこは流石に艦娘だし」
何せ普段は軍艦の砲撃を体で受け止めているのだから。
597 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/05(木) 02:45:41.82 ID:fUizg0w/0
艦娘の活動域、燃料等の扱いは人によって大きく解釈の分かれるポイントではないでしょうか
遠征などで燃料弾薬を持ち帰ったりもする辺り、持ち運びは簡単だけど補給方法が特殊なため基本的に鎮守府外で補給出来ないという設定もいいですね
598 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/05(木) 12:11:11.33 ID:JLNi6zaa0
35…バストだな(無慈悲)
599 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/05(木) 13:26:29.30 ID:q/r1jLA5O
肋骨以下のバストかよ
胸窪んでるじゃん
600 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/10(火) 17:26:47.85 ID:SYfXOo7I0
以上が工房で消えるネジと資源の理由である。
無駄遣いどころの騒ぎじゃない。
元々は夕張と明石でコソコソやってらしい。
私が夕張に借りた本に影響され銃に興味を持ったのを切っ掛けに色々とはっちゃけだした。
そこへいくともしバレた時私も責任がなくはないのだが。
止めた方がいいかな。
とかなんとか考えながら自室へ戻る途中、提督に出くわした。
提督「おーいたいた。探したぜ」
北上「んー?どったの提督」
提督「いや、そのな。工房の、というか夕張と明石の話でな」
北上「うんうん」
あれ、何か嫌な流れが。
提督「ここ最近資材の減りが妙に増えてんだよ。お前アイツらと仲いいだろ?なんか知らないか」
OH…
601 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/10(火) 17:27:30.26 ID:SYfXOo7I0
夕張「燃やそうか」
明石「事故装って爆破しよう」
北上「落ち着いて落ち着いて」
提督からの頼みをとりあえずは引き受け工房へとんぼ返りしてきた。
私にも責任の一端はあるからと対策を一緒に練ろうと思っていたのだが、二人がまず出したのは後処理だった。
北上「きっぱり切り捨てるんだねそこは」
明石「そりゃあ、まあねえ」
夕張「内容が内容だし」
自覚があるからなおタチが悪い。
明石「これが未来ガジェットとかなら誤魔化すとこなんだけどねぇ」
夕張「流石にこれはバレたら死ぬ」
北上「今更でしょそれは…」
602 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/10(火) 17:27:57.63 ID:SYfXOo7I0
とは言え冷静な判断ではある。爆破焼却はともかく無かった事にはすべきだろう、とりあえずは。
明石「いやでも拳銃とかなら隠せるか」
夕張「あズルい!私だって1丁くらいなら」
北上「はいはいストーップ」
まあそうなるな。
ちなみに明石はリボルバー拳銃大好きっ子。
ファニングショットも出来る。
手先器用だからとの事。いやそういう話じゃないでしょ。
603 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/10(火) 17:28:23.50 ID:SYfXOo7I0
北上「とにかく、早いとこ決めないとホントにバレるよこれ」
夕張「と言っても、ねえ」
明石「感情を殺したとしても後処理、フェイクの理由、色々と用意しなきゃだし…」
吹雪「あまり時間はないですよね〜」
んーと黙り込む4人。
4人?
北上「吹雪?」
夕張「アイエエエ!」
明石「ブッキー!?ブッキーナンデ!?」
吹雪「その呼び方やめて下さい…」
604 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/10(火) 17:29:11.16 ID:SYfXOo7I0
吹雪「皆でしかめっ面して、もしかしてチャカの事バレました?」
北上「チャカって…」
夕張「まあそんな感じかなあ…相変わらず鋭いね」
吹雪「司令官が資料と睨めっこしてましたから。内容から予想しただけです」
明石「さすふぶ」
吹雪「なんですかそれ」
北上「アレ、ブッキーってこの事知ってたの?」
吹雪「その呼び方やめて下さい」
夕張「ブッキーにバレると怖いので早めに打ち明けて交渉しました」
明石「やり過ぎない限りは不干渉という事に」
吹雪「…まあそんなところです」
北上「ほう」
これはやり過ぎに入らないというのか。
605 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/10(火) 17:29:51.85 ID:SYfXOo7I0
吹雪「私がしたいのはこの鎮守府の維持ですから。多少の無駄遣いや違法な武器製造に興味はありません。でも司令官の方は戦力の増強や施設の拡張など色々とやりたいらしくて。だからこそこの件も無視出来なくなったんでしょうね」
真面目な話をする時の彼女はおおよそその稚い容姿からはは想像もつかないような独特の雰囲気を発する。
駆逐艦といえど、何十年とここで秘書艦をやってきているのだ。年季が違う。
吹雪「とはいえこれがバレるのは私としても避けたいですね」
夕張「沈めよう」
明石「魚雷に詰めて深海に届けよう」
北上「堂々巡りだこれ」
606 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/10(火) 17:30:18.83 ID:SYfXOo7I0
夕張「えー秘書艦さまなんとかしてよ〜得意の書類偽装とかなんとかでさ〜」
吹雪「そんな特技ないですよやった事も無いですよ。欲しいとは思いますけど」
明石「提督が北上に頼んだ以上あまり時間もないのよねぇ」
夕張「もうだめぽ」
吹雪「仕方ないですね。ここは助っ人を呼びましょう」
夕張「助っ人?」
明石「ダンス?」
北上「あ」
察しがついた。
607 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/10(火) 17:31:01.86 ID:SYfXOo7I0
吹雪「……あ、むらむら、くもくも? うわっ!」
もしもし感覚で妙な事を言ったかと思うとさっと携帯を耳から遠ざける。
電話の相手、なんて言うまでもなく叢雲なんだろうけど、彼女が大声で何を言ったのかは想像に難くない。
吹雪「ゴメンゴメンそんなにムラム、イライラしないでよっ」
言い終わると同時に今度は予め携帯を離しておく。
なんで息をするように妹を煽るのだろうか…
吹雪「いやいやちょっと真面目な話でね。そう!さっすが分かってるじゃん。うんお願い。工房のとこ。うん、うん。じゃね」
携帯を切る。
吹雪「オッケー」b
夕張「ナイスゥ」b
明石「おk」b
誰かいたわって上げて…
608 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/10(火) 17:31:53.15 ID:SYfXOo7I0
叢雲「で、私に頼ってきたわけ?」
夕張「このと〜り」
明石「何卒何卒」
ジャパニーズ土下座。この2人に物作り以外のプライドはない。
吹雪「やっぱこの手の事は叢雲が1番頼りになるから。貸一つって事で、ね?」
叢雲「はぁ…まあいいわ。やったげる」
不承不承、という感じを醸し出しているが口元が僅かに緩んでいる事を誤魔化しきれていない。
あー吹雪が凄く、こう、生暖かい目というか、可愛いなコイツみたいな目で見てる。もう少し普通に可愛がって上げればいいのに。
叢雲「それで、その「趣味で作ったオモチャ」は隠し通せる前提でいいのよね」
夕張「イェスマム!」
明石「ノープロブレム!」
嫌味な言い方をするあたりこの件に賛成はしていないようだ。
609 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/10(火) 17:32:38.94 ID:SYfXOo7I0
叢雲「となると必要なのはカバーストーリーね。「 無 駄 遣 い 」が増えたのはいつから?」
夕張「に、2ヶ月ほど前ですサー!」
明石「北上が来た辺りですサー!」
サー、は男性に対するものである。と言う場面ではないか。
叢雲「二ヶ月前ねぇ。えっと…」
スマホを弄り始める。カレンダーとか予定表などを参照しているのだろう。
叢雲「あっ」
夕張「い」
明石「う」
吹雪「え」
叢雲「お゛!」ダンッ
夕明吹「」ビクッ
怒りのこもった足で工房の床を踏み鳴らす。
北上「ビビるならやらなきゃいいのに…」
610 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/10(火) 17:33:11.08 ID:SYfXOo7I0
吹雪「何か思いついた?」
叢雲「これよこれ、これでいいじゃない」
夕張「これって?」
明石「端末何も写ってないけど」
叢雲「中身もそうだけれど、これ自体よ」
吹雪「あーなるほど」
夕張「ワケワカメ」
明石「二ヶ月前?スマホ…?」
叢雲「だからー
611 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/12(木) 20:10:05.77 ID:ILSc/AHFo
乙カレー
612 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/13(金) 02:17:59.65 ID:5HydsKiY0
提督「端末の開発に?」
北上「うん。図書室のもそうらしいんだけど、勝手に色々と開発してたんだって」
提督室で作業中だった提督に今回の件の報告(偽)をする。
提督「でも資源はともかくネジは使うか?」
北上「いくらあの二人でも携帯は専門外でしょ?分からないところはネジと妖精パワーで無理やり作ってたんだって」
提督「妖精さんも共犯か…まったく、科学の結晶かと思ってたのにオカルトが混じってたとは」
やれやれとスマホを眺める提督。大丈夫、ちゃんと化学の力100%だから。
北上「本の貸出のアプリとかも前から作ってたらしくてさ。私が図書室欲しいって言ってたのに聞いてたみたい」
提督「それでここ最近消費が増えたのか」
北上「その通り」
ではない。こうして嘘を並べるのは2度目だけど、上官に対してそれってどうよ。
613 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/13(金) 02:18:36.15 ID:5HydsKiY0
北上「今回の事話したら暫くは自重するってさ」
これは本当。
提督「暫くかよおい。まあいいかぁ、結果役に立ってるんだし」
北上「あははーソダネー」
提督「何はともあれこれでようやく計画通りに進める」
北上「何か目標とかあるの?」
提督「そりゃあるさ。その為にやってんだから」
北上「何目指してんのさ」
提督「内緒だ」
北上「ちぇー」
614 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/13(金) 02:19:08.51 ID:5HydsKiY0
ふと机の上の書類を見る。
北上「ん?これが無駄遣いってやつ?」
提督「そ。大した量じゃないんだけどな。うちはまだまだ小さいから貴重なんだよ」
北上「へー」
おかしい。こんなに少ないわけがない。どういう事だ?
北上「それじゃ、北上撤退しま〜す」
提督「おう、ありがとな」
藪蛇な気がしたので無視して部屋を出る。
夕張に聞いてみようかな一応。
吹雪「その様子だとバッチリ見たみたいですね」
北上「うおっ、びっくりさせないでよ…」
吹雪「北上さん、取引です。夕張さんや明石さんと同じく」
北上「え」
同じく?
吹雪「他言無用、ですよ」
北上「…イエスサー」
615 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/13(金) 02:20:00.23 ID:5HydsKiY0
吹雪「鎮守府にある資材。それは司令官も把握してます。なのに計算が合わない。司令官の知らない所から消費されている。さてどうしてか」
北上「…」
10あるものから2使われた。と思ってたら実際は4だった。なのに残りの8という計算は合ってる。2はどこから来たのか。
いやそもそも10はどこから来ているのか。
北上「抜いたな…」
つまり任務の報酬から、という事か。
10ではなく12あったのだ。
吹雪「ええ、提督に届く前に」
北上「書類の偽装はやったことないんじゃなかったの」
吹雪「得意じゃないだけです」
いけしゃあしゃあと。たいした秘書艦だこりゃ。
616 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/13(金) 02:20:39.20 ID:5HydsKiY0
北上「そこまで夕張達に協力するのはなんでさ」
吹雪「協力はついでです。私の目的は取ったものの活用ではなく取ることで提督に届かなくさせる事」
北上「…」
吹雪「…」
野生の勘、と言うやつかもしれない。
北上「他言無用ね」
吹雪「はい」
私は引いた。
617 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2017/10/13(金) 02:21:06.38 ID:5HydsKiY0
現状が維持できれば鎮守府の拡大は不要。
そう言っていたが実際は
現状を維持するには鎮守府の拡大の阻止が必要、という事らしい。
一体吹雪と提督はどんな関係なのか。
鬼嫁?どっちかというと怖い小姑みたいな。
前任者、提督の前の提督ってどんな人だったんだろう。
自分にはあまり関係のない話だが、段々と頭の中でその事が少しずつ、確実に忘れられなくなってきていた。
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