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北上「我輩は猫である」

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149 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:46:53.95 ID:MkHi9DRM0
神風「ん……はっ!き、北上さん?ごめんなさい!私」

北上「あ〜いいよいいよ。それより私じゃなくて夕立何とかしてくんない?」

神風「…もしかして私達ずっと?」

北上「神風の髪の毛サラサラで気持ちよかったよ」

神風の顔が服の色と同じになる。

北上「ほら、谷風も起きる」

谷風「ぶぇ〜、もう疲れたってのかい?なっさけないなぁ」

北上「寝転がってるだけのくせに。よっと」

夕立を神風に任せて立ち上がる。

北上「うわっと」
浦風「ほれ」ガシッ

北上「はは、悪いね。足腰がガチガチだよ。私も歳かねぇ」

浦風「何言うとるんじゃ。一番の新米じゃろうに」
150 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:47:38.82 ID:MkHi9DRM0
谷風「さぁて帰るかね」

北上「谷風はそっち」

谷風「ああ、響型か」

浦風「暁じゃ」

谷風「爆竹やったらどうなるかな」

北上「まだ持ってたんだ…」

神風「谷風」

谷風「ん?」

神風「お願い」

夕立「スピー…」

谷風「あぁ…」

北上「じゃあ」

浦風「ウチらは退散やね」
151 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:48:11.30 ID:MkHi9DRM0
北上「気楽なもんだね」

浦風「この分だと、暑い日は毎度寄ってこられそうやね」

北上「はぁ…駆逐艦ウザイ」

浦風「でもさっきの、まるで親猫と子猫みたいに見えとったよ」

北上「親猫って、それは」

小さな破裂音、と悲鳴。

浦風「ホントにやったみたいじゃね」

北上「まあやるでしょうよ」

提督「おい、なんだ今の音は」

北上「うわっ!」

浦風「提督さん!」
152 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:48:44.22 ID:MkHi9DRM0
渡り廊下から建物内に入った直後。横の壁にいたのは、

座り込んでる提督と、

提督にもたれ掛かって寝てる大井っちだった。

北上「親猫はこっち。私らは姉妹でしょ」

浦風「ん〜それもそうやね」

提督「何の話だ」

北上「そっちこそ、それは一体どういう状況?」
153 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:49:49.77 ID:MkHi9DRM0
提督「どうもこうも、夕張から連絡がこねえから見に行こうと思ったら大井に足止めされてな。ここで待ってろって」

北上「見守ってたんだ…」

提督「見てはいないけどな。ここで言い合いしてるうちに寝やがったからな」

浦風「なるほどね〜。こりゃお邪魔じゃったみたいやのう」

北上「さっさと退散しますかね〜」

提督「あっおい!ちょ、ちょっとまって〜」ヒソヒソ


浦風「父猫と、母猫になるかもしれんよ」

北上「それは悪くない。でも提督モテモテだしなあ」

泥棒猫が、はたして何匹いることやらね。
154 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:51:29.73 ID:MkHi9DRM0
セリフ調じゃないと長い文章が読めない自分に優しい書き方になってます。読みにくく無ければ幸いです


メンテ終わったし嫁のレベリングしなきゃ(使命感
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/31(月) 23:13:49.46 ID:xsMVMWBV0
いい感じだよ
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/01(火) 00:24:00.42 ID:1ojpoum9o
ぽいちゃんさすが
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/01(火) 00:32:09.61 ID:zR8MeRhSO
響型の詳細な陣形が気になる
158 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/01(火) 21:26:41.76 ID:BpQoKXQz0
18匹目:猟ある猫は爪を隠す


と言ってピンとくる人はあまりいないかな。

能ある鷹は爪を隠す、のほうが一般的だし。

何故鷹の方が有名なのか。

そりゃまあ強いし、カッコイイしね。
159 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/01(火) 21:27:16.51 ID:BpQoKXQz0
北上「猫であることを隠す人間と、人である事を隠す猫ならどっちがいいかな」

谷風「そりゃ後者だね。絶対的な基準がない以上は、外見と中身の差がプラスに大きい方がいいだろうさ」

北上「人間の方が上?」

谷風「一般論さ」

北上「私も逆だったらなあ」

谷風「キミは別じゃないか。確かに猫だけど、人間でもある。中身がね。猫だけならこうしてお喋りだって出来ないじゃないか」

北上「それもそうか」

谷風「もっと視野を広く持たなきゃ。文字通り上から目線になってしまうけど」

北上「そうだったね、海猫さん」

月明かりの屋根上。

谷風はチェシャ猫のように笑う。
160 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/01(火) 21:27:48.58 ID:BpQoKXQz0
北上「ぶっ飛んだ発想が必要か」

谷風「それはダメだよ。着地のことも考えなきゃ。いずれどこか終着点を見つけるために飛んでるんだから。変に高く飛んでも見えにくいだけさ」

北上「雲の上くらい?」

谷風「雲の上から見てるのは神様くらいさ。私達はそこまで高く飛ぶ必要は無い。雲のある空は、私達が飛んでる空より高いところにあるんだ」

北上「含蓄ある言葉だなあ」

谷風「実体験だからね」
161 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/01(火) 21:28:26.49 ID:BpQoKXQz0
北上「ならさ、谷風はどこに向かってるのさ」

谷風「何処とは?」

北上「飛んでるって言うなら、どこを目指してるの?」

谷風「…目指してなんかいないよ。偉そうに言っといてなんだけど」

北上「目指してない?」

谷風「私はキミを見つけるために積極的に行動した。これまでもそうだし、これからもそうするだろう。でもそれはどこまでも見つめるため、飛び続ける為であって、着地点はない。

キミもこう思ったはずだ。こうして記憶があるのには意味がある。

世の中にそんなに必然性を求めるには、夢見る少女を名乗るには少々歳を取りすぎてる気もするけど、悪い考えじゃないさ。

でもだから怖いんだ。

もしかしたら意味が、目的があるのかもしれない。でもそれを見つけて、それが終わったらどうなるかな。

ここでの楽しい暮らしが、輝ける日々が、こうしてキミと話す時間が、空を飛んでいた時の記憶も、海を駆け回る今も、消えてしまうかもしれないじゃないか。

海面を歩けるガラスの靴は、鐘がなったら消えてしまうのさ。

なんの合図かは知らないけどね」

北上「…相変わらずよく喋るね」
162 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/01(火) 21:28:58.18 ID:BpQoKXQz0
谷風「性分でね。主人公じゃなくて語り部が向いてるのさ。だからこうしてここにいる。

例えばキミがここに留まるなら私は大歓迎だよ。話し相手が欲しかったと言ったろ?

でももし君が、何かを目指すと言って、どこかへ向かうなら、私は全力で応援する。協力する。そして、見届ける。

私はその為にここにいる」

北上「白雪姫か…白猫の私にはピッタリかもね」

谷風「ガラスの靴はシンデレラだよ」

北上「ありゃ、そうだっけ」

谷風「どちらにせよキミにピッタリさ」

北上「なんで?」

谷風「へへっ。猫灰まみれ、って事さ、お姫様」

スッと立ち上がり、手を伸ばしてくる。

でも

北上「いいよ。今はまだ、ここにいるから」

谷風「ならこの手はしっかりとっておこう」

北上「お願いね」


手も爪も、まだ隠しておかなきゃ。
163 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:17:11.14 ID:Bwj3I3Vg0
19匹目:猫と熊としりとり



猫。ネコ目ネコ科の動物。

人間はやたらと分類するのが好きだ。

球磨。じゃない熊。ネコ目クマ科。

えネコなの?マジか。マジだ。

まあ種を明かすとネコ目の意味が違うのだが。

しかし暇だ。そして暑い。涼みたい。

こんな時は愛する姉妹達の力を借りよう。



北上「あー、あ、雨だね」

大井「ね、ね〜、嫌になっちゃいます」
木曾「それは流石に無理y「す!」はいはい、すー、すっかり梅雨だな」

多摩「なんだか今年は妙な雨ばかり降るにゃ」

球磨「や、や?やっぱり地球温暖化が関係してるクマ?」
164 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:17:46.21 ID:Bwj3I3Vg0
北上「全く振らないところもあるらしいよ」

大井「よもや四季が崩れる日が来るとは思いませんでした」

木曾「例えば梅雨が消えたら」

多摩「ラッキーだにゃ。ジメジメが無くなるにゃ」

球磨「ゃ…やーそもそも梅雨は指揮じゃないクマ」
165 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:18:37.22 ID:Bwj3I3Vg0
北上「まあそうだね。しれっと混ざってるけど」

大井「どうも夏とセットで四季の中にうまいこと入り込ん出るように思います」

木曾「すっかり騙されたぜ」

多摩「絶対いらないにゃ。夏でいいにゃ」

球磨「やっかいな時期クマ」
166 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:19:23.76 ID:Bwj3I3Vg0
北上「うわっ!…また雷だ」

大井「大気がずっと不安定ですからね。ゲリラ豪雨ばかり」

木曾「理解不能なレベルだよな。最近の異常気象は」

多摩「破壊の限りを尽くしてるにゃ。洪水はいやにゃ」

球磨「…やめて欲しいもんだクマ」
167 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:19:57.60 ID:Bwj3I3Vg0
北上「毎年ひどくなってる気が」

大井「がー、ガッカリですね。来年はどうなることやら」

木曾「落雷は勘弁だ」

多摩「だからと言って降るなとも言えんにゃ」

球磨「やはり梅雨は必要だ」
168 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:20:29.01 ID:Bwj3I3Vg0
北上「ラッキー」
球磨「あっ」
北上「ダムの所にだけ降るとかできたらいいよね」

大井「念力で動かすとか」

木曾「科学の力を信頼してやれよ…」

多摩「妖精頼りの私達が言えるセリフじゃないにゃ」

球磨「や、や〜しかしよく降る、クマ」
北上「またそれ?」
球磨「マ」
北上「はいはい」
169 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:20:57.57 ID:Bwj3I3Vg0
北上「毎日こうだと洗濯物も乾かない」

大井「いい加減太陽がみたいですよね」

木曾「ネットリとした暑さが戻ってくるぞ」

多摩「そいつが日本の夏だにゃ。諦めるにゃ」

球磨「やだクマ認めたくないクマ」
170 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:21:37.11 ID:Bwj3I3Vg0
北上「真夏日と変わらないくらい暑いよね。体感温度は」

大井「はい。できればエアコンを入れたいところですが」

木曾「簡単に言うなよ。電気代も大変らしいし」

多摩「しかし今の日本の気候を考えたら夏に入ってからじゃないとダメってのは改める必要があるにゃ」

球磨「……」

多摩「にゃ」

球磨「やはり球磨もそう思うクマ。この暑さには何か対策が必要クマ」
171 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:22:19.44 ID:Bwj3I3Vg0
北上「巻く?ひんやりシートとか」

大井「身体を冷やす以外にもなにか無いでしょうか」

木曾「辛いもの食べるってのはどうだろう」

多摩「うんにゃ、それは夏バテ防止にゃ。これはまた別の問題にゃ」

球磨「…ヤケクソクマ。裸になれば涼しくなるクマ」
大井「賛成です!」
北上「大井っち」
大井「はい」
172 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:23:01.55 ID:Bwj3I3Vg0
北上「まあそのうち近い事にはなりそうだけどさ」

大井「流石にそれは」

木曾「分かった。着替えの不足か」

多摩「掛け布団なんかも最近干せてないにゃ」

球磨「厄介な問題クマ」
173 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:24:02.03 ID:Bwj3I3Vg0
北上「稀に晴れたと思ったらすぐ降り出すし、僅かな晴れ間も信用出来ないよ」

大井「よく考えたら着替えの不足って深刻な問題ですよね」

木曾「寝て起きたら着替えがない、なんて事になる」

多摩「る!…ぅ……」

球磨「さーん、にーい、いーち」

多摩「類例がない以上何が起こっても不思議じゃないにゃあ!」

球磨「チィッ!」
多摩「にゃは」

木曾「あそこだけ熱いな」

大井「これ以上熱くされても困るのだけれど」

北上「私も大概辛いんだけどねえ」
174 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:24:44.70 ID:Bwj3I3Vg0
球磨「夜間の暑さだけでもなんとかして欲しいクマ。寝不足はマズイクマ」

北上「まだ不明だけどさ、着替え乾かなかったらホントに下着で過ごすハメになるよ」

大井「良い事ですよ」

木曾「良くはねぇだろ流石に」

多摩「にゃ」


球磨「え?」

多摩「にゃ」
球磨「いやダメだろ」
175 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:25:38.48 ID:Bwj3I3Vg0
多摩「にゃ、はにゃにゃ。うんとかハイとかと同じにゃ。そこになんの違いもありゃしねぇにゃ」

球磨「うんもハイもダメだクマ!にゃーなんて言語道断だクマ!」

多摩「そっちだってクマクマ言ってるクマ!」

球磨「クマはなんかこう丸い感じだからセーフだにゃ!や より ま の方が優しいからセーフだにゃ!たまに取れるからセーフだクマァ!」

大井「やはり自覚はあったんですか」

木曾「確信犯かよ。しかも色々混じってるよ」

北上「よく言うよ。 ま もそれなりに苦労するんだけどね」
176 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:26:37.56 ID:Bwj3I3Vg0
多摩「いっつもつけ忘れるくせにこんな時だけやたらクマクマ言ってる癖に何言ってんだにゃ!これは勝負にゃ!」

球磨「そっちこそたいして猫っぽさも無いくせににゃーにゃーうるせークマ!」

北上「ねぇ、なんかヒートアップしてきた」

木曾「体感だが、心なしか部屋の温度も上がってるような…」

大井「なんとかしないと、とは言え有効な手段が思い当たりませんね」
177 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:27:32.32 ID:Bwj3I3Vg0
球磨「クマァ!」
多摩「にぁあ!」

ジリリリリリリチンッ

タイムアップのベルを止める。

北上「ハイおしまい」

大井「2人の奢りという事で」

木曾「バニラ、チョコ、ストロベリーで」

球多「「あ」」

多摩「いやいや3人も普通に喋ったにゃ。ノ、ノーカンにゃ!」

球磨「つい熱くなったことは謝るクマ。でもこれはもうひと勝負すべきクマ!」

北上「いやウチら続けてたしね」

大井「暑いので早く買ってきてください」

木曾「やっぱ俺は練乳で」

球磨「クマァァァァ!!」ダッ
多摩「うにゃぁぁぁぁ!!」ダッ

しりとりが、その後禁止になった。
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/08/03(木) 06:15:20.10 ID:RQS+i+Ff0
会話をしりとりでさせるか
1さんすげぇなぁ、お疲れ様です
更新の度に読んでいます、これからも待ってます
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 08:26:43.39 ID:8cs0LxR6O
何か作風違うなーと思ったらそういうことかw。上手い!
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 22:25:18.44 ID:h9fC4uCs0
語尾でズルした二人が敗北 インガオホー
181 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:02:25.73 ID:rL+1COZK0
20匹目:猫舌





北上「暑いねぇ」

大井「ええ、ホントに…」

季節は夏、と言うには少し早いけど日本の暑いとは国外のそれとは違った意味合いを持つ。

この湿度。

温度自体は30度にも届かないというのにまとわりつくように、締め付けるようにジワジワと体感温度を上げるコヤツが原因だ。

戦争ということもあって環境問題なんか二の次三の次。結果地球温暖化とやらが進んでるのも問題だ。

戦争さえなければこんなに暑くなかったというのに。え、そんなことない?またまた〜。
182 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:03:01.15 ID:rL+1COZK0
蛇口を捻ってホースから水を出す。

冷たい水を浴びてキラキラと輝く花たちがなんとも風流だ。

いいなあ涼しそうで。まあ彼らにも彼らなりの苦労があるのだろうけど。

北上「でなんで私達が花壇の手入れを」

大井「暇ですからね、私達」

その通りなんだけどさ。

北上「このままじゃ私達の方が枯れちゃうよ〜」

真上から降り注ぐ容赦のない太陽光線は急降下爆撃のそれとなんら変わらない脅威だ。

艤装を纏えば温度は緩和されるが黙ってるだけで燃料を消費するのでダメと言われた。
183 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:03:50.92 ID:rL+1COZK0
北上「それに大井っちはこの後演習でしょ?」

大井「ええ、残念ながら」

心の底から残念そうだ。

北上「んじゃ後は私に任せてよ。テキトーにやっとくから」

大井「休憩はしっかり取ってくださいね!あと水分も!塩分は取ればいいというものではありませんから。少しでも身体に異変を感じたら」
北上「あーはいはい大丈夫だから」

過保護な妹をなんとか送り出して花壇には向き直る。

私より大井っちの方が心配だよ。心労で倒れそうで。
184 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:04:33.93 ID:rL+1COZK0
北上「これは、陽炎型か」

花壇にはそれぞれ名前の入ったプレートが刺さってる。

なんでも各々好きな花を植えたとか。実際生えてる葉はバラバラ、既に蕾のあるものや、なんか蔦がわらわら出てきてるものもある。

北上「こんな一緒くたに植えてどうするよ」

夏休みの自由研究って感じがする。

北上「これが全部アサガオなら良かったんだけどさ」

まあいい。とりあえず適当に水を。

ん?この花は。

北上「やれやれ」

後で谷風に鉢に植え替えて日陰に置けと伝えてもらおう。

植物はやたらと水を撒けばいいというものでは無いのに。
185 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:05:14.33 ID:rL+1COZK0
提督「お疲れさん。ほれ報酬だ。食え食え」

北上「どう考えてもワンコイン以内だよねこれ」

提督「カレーは夏バテ防止になんだぜ」

北上「部下への健康の配慮を報酬として出すってどうよ」

提督「モノは言いようだな」

北上「まったくね」

さて、

「「いただきます」」
186 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:05:55.12 ID:rL+1COZK0
北上「あっち!」

提督「その暑さがいいんじゃねえか。猫舌か?」

北上「大体の生き物は暑いものが苦手でしょ。猫に限らず」

風評被害もいいとこだ。なぜ猫だけ。

提督「それはほら、熱いもの嫌いな人がスープなんかをチョビチョビっと飲む感じが猫が舌で水を飲むのとかに似てたからだろ」

北上「あー、あー!」

提督「おぉ、そんなに驚く話か?」

北上「いやいや、これは革命だよ。衝撃だよ提督。誉めてつかわそう」

提督「そりゃどーも」

ほんとにそうかは知らないが妙に納得できた。
187 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:06:28.82 ID:rL+1COZK0
北上「それ貸して」

提督「ほいよ」

北上「サンキュ」

鎮守府の辛い食べ物は基本的に甘い方に寄せてある。辛いのが好きな人は自分で調整する必要があるのだ。

提督「…振りかけすぎじゃね?」

北上「辛くないカレーなどカレーにあらず」

提督「熱いのダメで辛いのはいいのか」

北上「夏バテ防止なんでしょ?ほら提督も1口」

提督「…おう。かっら!なんらこへ!!」

北上「え、そんなに?」

もちろん嘘。スプーンで掬ったところには辛い粉を沢山ふりかけただけだ。
188 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:08:34.29 ID:rL+1COZK0
北上「やれやれ。美少女との関節キッスにそんな反応をしている様じゃあケッコンできんぞ〜」

提督「あぁどうやら刺があるらしい。ったく、熱いの苦手でなんでこの辛さがいけんだよ」

北上「そりゃ熱いのは苦手だけど人並みだよ。特別苦手ってほどじゃない」

提督「みたいだな、少なくとも猫舌じゃなさそうだ…ふぅ、ちょっと水もらってくる」

北上「いってら〜」

無様に敗走する提督を眺めつつカレーを咀嚼する。辛いもの食べるとホントに顔も辛く、いや赤くなるんだな。

汗は健康によいぞ〜私はかきたくないけど。

実際最初は刺激物に対しての警戒心が解けなかった。猫的には毒物も同然だし。

でも慣れてみるとこれが中々癖になる。これだけ色々なものが食べれるとは人間って便利だねえ。
189 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:09:09.53 ID:rL+1COZK0
提督「花壇の方はどうだった?」

北上「あ〜あれね、もう少し植物に関して教えてあげた方がいいと思う」

提督「なんか不味かったのか?」

北上「色々と」

提督「マジか、じゃあ頼むわ」

北上「報酬を弾め報酬を〜」

提督「子供たちを育てる事は仕事ではなく責務である」

北上「それ場所が場所なら炎上発言だよ」

提督「これ以上熱くなられちゃ敵わんな」

北上「鉢とか諸々の道具とアイス人数分を要求する」

提督「考えとくよ」
190 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:09:43.31 ID:rL+1COZK0
提督「何だかんだで好かれてるな、駆逐艦達には」

北上「何でだろうねぇ。原因が分からないと対処できないよ」

提督「対処って」

北上「群がられるのはウザイ」

提督「読書の邪魔だもんな。でも退けとは言わない」

北上「幼さは武器だよ。大体の動物は小さい時可愛いと思わせる造形をしてるんだ。そうする事で保護欲を掻き立てるわけ」

提督「守護らねばってか、なるほどね。上手いこと出来てるもんだ」

北上「…まあ邪魔とは言えないよね」

提督「そうだなあ。俺も仕事邪魔されてもなんか許しちゃうし」

北上「提督はむしろ仕事邪魔してほしいんでしょ〜に」

提督「おっとそれ以上は口にするべきじゃないな。命に関わるぜ〜」

北上「おぉ怖い怖い」
191 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:10:09.16 ID:rL+1COZK0
「「ごちそうさま」」

提督「さって、そろそろ演習が戻ってくる頃か」

北上「よかったの?提督が指揮しなくて」

提督「俺が指揮できない時の為の演習さ」

北上「なるなる。じゃあ向かいに行ったら?大井っちもいるし」

提督「…何で、あいつの名前が出てくんだよ」

北上「またまたぁ〜」
192 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:10:36.86 ID:rL+1COZK0
北上「さて、邪魔者は消えましょう」

提督「なんだよ」

北上「大井っちにパフェでもご馳走したら?」

提督「それは、まあ悪くはないな」

北上「でしょ」

提督「でもお前がいた方がもっといいだろ」

北上「そのいいじゃダメでしょ〜に。んじゃね」

提督「はいはいわあったよ」

まったく素直じゃないね2人とも。

私の舌は、もっと甘い物を求めているのだよ。
193 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:35:49.01 ID:1hZo0SAP0
21匹目:猫と糸玉



猫は動くものが好き。

コロコロと転がるものが好き。

ところで糸玉ってちょっと引っ掻いたらすぐバラバラになりそうな気がするけどそこんとこどうなの?



球磨「いいものを買ってきたクマ」

多摩「出オチすぎるにゃ…」

球磨「糸玉クマ」

多摩「見りゃわかるにゃ」

球磨「人間にも程よいサイズのものにしたクマ」

多摩「無駄な気遣いすぎるにゃ」

球磨「600円もしたクマ」

多摩「どこで買ったんだにゃ…」
194 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:36:25.57 ID:1hZo0SAP0
球磨「まあ私が何をしたいか、薄らとわかってきたと思うクマ」

多摩「薄れ用がないほどにハッキリくっきりと見えるにゃ」

球磨「前々から思っていたクマ。多摩は猫成分が足りない、と」

多摩「猫じゃないにゃ」

球磨「え、今そこを否定するクマ?」

多摩「いや割と最初から言ってるにゃ」
195 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:37:19.06 ID:1hZo0SAP0
多摩「多摩はあくまで言動からほのかに感じる猫っぽさを目指してるんだにゃ。そんな露骨にあざとい反応はしないにゃ」

球磨「サラッととんでもねえ事カミングアウトされたクマ」

多摩「和の美にゃ。奥ゆかしさにゃ」

球磨「語尾ににゃーとか付けといてよくそんな事が言えるクマ」

多摩「ちなみに私が語尾をとると見た目は若いけど3桁は生きてるような妖怪的な印象を受けると言われた。妙に納得した」

球磨「確かに納得したクマ」
196 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:38:05.26 ID:1hZo0SAP0
球磨「なぜ私は語尾をとるとイケメンと言われるのだ」

多摩「球磨姉は元からイケメンにゃ。クマが邪魔でそう言えないだけにゃ」

球磨「複雑な気分クマ」

多摩「私は球磨姉と違って語尾を忘れたりしないにゃ」

球磨「私はこんなものに特に思い入れはない。出来れば無視したい」

多摩「そうもいかんにゃ」

球磨「何故だ」

多摩「さぁにゃ。妖精さん辺りの仕業じゃないかにゃ」

球磨「難儀な事だ」

多摩「語尾」

球磨「クマ」
197 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:38:42.83 ID:1hZo0SAP0
球磨「ではこれを放ってみよう」

多摩「そこに戻るのかにゃ」

球磨「原点にして頂点クマ」

多摩「意味がわからんにゃ」

球磨「玉はお気に召さないクマ?多摩なのに」

多摩「なんかすっげぇイラッとしたにゃ」

球磨「そんなあなたにこれクマ!」

多摩「だからいらねーにゃ」
198 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:39:30.05 ID:1hZo0SAP0
球磨「糸の方がいいクマ?」

多摩「そういう事じゃないにゃ」

球磨「ちなみに球磨が1番興奮する糸は水着の糸クマ」

多摩「それは紐にゃ。というか去年その大好きな糸を引いたせいで大井に半殺しにされたの忘れたかにゃ」

球磨「大丈夫クマ」

多摩「何がにゃ」

球磨「今年は大井は狙わないクマ」

多摩「そういう事言ってんじゃねーにゃ。エロ親父かにゃ」
199 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:40:31.85 ID:1hZo0SAP0
球磨「さあ見せてやるクマ。球磨の豪速球を」

多摩「そんなもん猫は追わないにゃ」

球磨「そうなのか?」

多摩「緩やかに曲線を描くように放るか転がすのがいいにゃ」

球磨「ほほ〜う随分詳しいクマァ。なんでだろ〜クマ」

多摩「…ちょっとそれ貸すにゃ」

球磨「おやおや、何だかんだ言っても興味しんしンッ!」バシッ

多摩「これが豪速球にゃ」
200 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:41:50.91 ID:1hZo0SAP0
球磨「痛てぇクマ。糸なのに全然柔らかくなかったクマ」

多摩「豪速球を猫が追わないのはわかったと思うにゃ」

球磨「砲撃くらい恐ろしいクマ」

多摩「分かったらそれは鳳翔さん辺りに譲ってさっさと「オラァ!!」にゃんのぉ!!」

球磨姉が投げた不意打ちの豪速球は、残念ながら多摩姉に躱された。

さてこの場合何が残念かと言うと先程から二人の微笑ましくもやかましい応酬を聞かされながら座って本を読んでいた私がその軌道上にいる事なのだ。

直前にオラァとか聞こえたおかげで目で捉えてはいるので防ぐのは容易なんだけど、

まあ今は丁度と大井っちが、詳しく描写するとそれこそ目にも留まらぬ早さでサッと魚雷を1本、まさしくバッターのように構えた大井っちが、隣にいるので

後は任せてしまおう。
201 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:42:24.62 ID:1hZo0SAP0
提督「ねぇ、何この報告書」

吹雪「壁の修繕費だそうです」

提督「いや、だそうです って言われてもさ。はい出しますってならないでしょ」

吹雪「何でも壁に穴が空いたとか。3枚ほど」

提督「え、何。しかも3枚なの?」

吹雪「貫通したんですって。隣の部屋まで」

提督「いや、なんなの?俺の知らない所で内乱とかあったわけ」

吹雪「これでも私達戦艦ですし。ちょっとした喧嘩もまあ内乱みたいなものですよね」
202 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:43:19.26 ID:1hZo0SAP0
提督「何怖い事サラッと言ってんの。怖いよ。あとこのバケツ2個はどこに消えたの」

吹雪「球磨さんと多摩さんにぶっかけときました」

提督「アイツらかよ!だと思ったよ!書類に球磨型と阿賀野型の部屋の壁って書いてあるもん!その時点でほぼ分かるもん!つか大井だろもう!」

吹雪「さっすが司令わかってるぅ↑」

提督「なんでお前は楽しそうなの!」

吹雪「初期艦ですから」フンスッ

提督「慣れすぎだよ環境に!剛の者だよ流石鋼鉄少女だよ!」

吹雪「ところでネジが尽きました」

提督「いやもう今はそれどころじゃえ…マジで?」

吹雪「夕張さんから探さないでくださいって書いた手紙を預かってます」

提督「」



なんて会話が、扉の向こうから聞こえるのだが。

北上「…入りにくいなぁ」

ネジの行方は、実は心当たりがあったりするし。
203 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:45:17.93 ID:1hZo0SAP0
熟れたというか、擦れた吹雪好き

猫にした意味が薄れてきてので何とかしたい
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 02:02:57.13 ID:gSjkqhiI0
そこはあれだな、皆出払ってて一人でいるときにふと目に入った糸玉をたしたしやる北上さんとかをだな。
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 14:50:35.99 ID:tgfgbmMx0
1さん1さん
駆逐艦を戦艦って間違ってますよ(小声)
せめて軍艦に……

いつもすてきな更新乙ですよ
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 21:28:40.26 ID:y0LBX9oJo
おつにゃん
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 21:34:20.59 ID:+aHIT7il0
水着シーズンですよ
引っ張る紐には困らない
208 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 02:16:44.90 ID:d9g64t8s0
戦闘艦の略という事で…

起きたら、起きたらいっぱい書くんだ
水着はまたいずれ
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 13:51:37.06 ID:nx3y2GHTo
>>205
駆逐艦は軍艦じゃないんだなぁ、これが。
少なくとも旧帝国海軍における「軍艦」は
・戦艦
・巡洋艦
・練習戦艦
・練習巡洋艦
・航空母艦
・水上機母艦
・潜水母艦
・敷設艦
で、駆逐艦や潜水艦は軍艦じゃなく「艦艇」。
なお昭和17年までは海防艦も軍艦だったので「子日敬礼事件(子日タメ口事件)」のようなことも起こっている。
210 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:27:33.89 ID:0jHACIMi0
はえー、リアル艦コレの知識なんて瑞雲が崇め奉られてるくらいしか知らないので勉強になる
211 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:28:19.07 ID:0jHACIMi0
22匹目:猫の目

22

ニャンニャン。猫の数字だ。

さて少し長い話になる。

猫の尻尾に例えるとシャム猫くらい。

分かり辛い?


212 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:28:59.58 ID:0jHACIMi0
北上「眩しいなぁ」

海上。それは不思議な空間だ。私達にとって。

人では決して理解できない。提督ですらも、それを分かってはいないだろう。

無理もない。

例えば、猫の見ている世界を想像してみろ、と言われて何を思うだろう。

視線を低くしてこれだと思うだろうか。

それは違う。

猫としての記憶がある私だから言える。それは説明も、理解も出来ないものだ。

目に写り、耳に入り、髭で感じ、鼻で嗅ぎ、脳が認識し作り上げるその世界はその生き物だけの世界だ。

そこには理解も変換も互換もない。ただその世界がその世界として存在するのみだ。
213 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:29:53.36 ID:0jHACIMi0
一体どれだけの人間がそれを想像したことがあるだろう。

私達艦娘は、1人で一つの船なのだ。

本来は幾百人もの人間が必死になって動く事で初めて機能する巨大な建造物を僅かに1人の体で体現している。

電探で感知し艦載機で見て通信機で話し動力源を作動させ舵を切り砲塔を動かし弾丸を装填し魚雷を発射し、

敵を討つ。

それら全てを1人で行う。

北上「おっと」

少し波に足を取られる。

この体制を保つ動作ですら、本来どれほど大変な作業なのか。

一体どうしてこれを人が理解できるというのだろう。

別にどちらが優れているとか、同じ姿をしていても結局は兵器であるということを嘆いているとか、そういう話ではない。

ただ、違うんだ。

だから、私が私達と、艦娘と違うのもまた、当然の事なのだろう。
214 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:30:47.48 ID:0jHACIMi0
瑞鶴「翔鶴姉ぇ、やるよ!艦首風上、攻撃隊…」
翔鶴「全航空隊!」

「「発艦始め!」」


2人の弓から放たれた矢はすぐさま無数の艦載機となり編隊を組みながら敵機との交戦に入る。


瑞鶴「ちっ、取りこぼした!」

制空権は確保。だが残った敵機がこちらに攻撃を仕掛けてくる。

秋月「まかせて!やらせは、しません!」

対空の申し子の射撃がそれらを正確に撃ち落とす。

僅かな数では彼女の弾幕を超えることは出来ない。

瑞鶴「よし!重巡、軽巡撃破!」

遠くで水柱が幾つか上がる。彼女の放った艦載機が敵を撃破したようだ。

大井「こっちも負けてられないわね。北上さん!しっかり見ていてくださいね」

大井っちが敵に向かって魚雷を放つ。
215 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:31:24.55 ID:0jHACIMi0
大井「敵空母沈黙。MVPはいただきよ!」

瑞鶴「なっ!誰が渡すもんか!翔鶴姉いくよ」

翔鶴「ちょっと瑞鶴、落ち着いてキャァっ!」

ズドン、すぐ近くで水柱が上がる。

例え小さくても戦艦の放つ砲弾による衝撃、音は死を予感させるには十分なものだ。

そのはずだ。

瑞鶴「わあびっくりした」

大井「まったく。お喋りなんてしてるからよ」

瑞鶴「アンタが言うなアンタが!」

秋月「皆さん集中してくださ〜い!」

でも、そんな事は無い。
216 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:32:25.14 ID:0jHACIMi0
金剛「オーケー!次はこっちの番ネ、ファイヤー!!」

流石は1軍戦力。確実に敵を沈めていく。

金剛「テイトクゥ!見ていてくれましたかー!」

提督『見てねえ、つか見れねえよ。後うるさい、砲撃も声も』

金剛「なぁ!?」

北上「ちょ、金剛さん!」

金剛「ハイ?」

ガインと嫌な金属音がした。今のは直撃じゃ…

金剛「シット!テイトクとの通信を邪魔するなんて、許さいネ!」

北上「だ、大丈夫なの?」

金剛「こんなものサッカショウデス!」

サムズアップ。

しかしサッカショウ?あぁ擦過傷か。何故かすり傷じゃなくそっちを覚えているのか。
217 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:32:59.09 ID:0jHACIMi0
大井「やりましたよ北上さん!」

北上「あ〜はいはい見てたよ、ん?」

耳がピクッと動く、なんてのは今じゃ比喩表現になってしまうのか。

でも感覚は覚えてる。

二時方向からだ。敵の砲撃音。

北上「あれか」

目を望遠レンズから人間の目に戻す。

あの軌道なら…

北上「大井っち、右に迂回して!」

大井「は、はい」

こちらも大井っちと対象に動く。

丁度、二人の真ん中に砲弾が落ちる。

大井「流石です北上さん!」

北上「いいから敵敵…」
218 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:33:38.29 ID:0jHACIMi0
私の訓練も兼ねた実戦。敵のレベルに対してこちらは過剰戦力だ。そりゃ負ける事もなかろうさ。

それにしたって皆あまりにも死への認識が低い。

私達は頑丈だ。バケツをかければ治る。

提督は優秀だ。私たちを沈めるような指揮はしまい。

でも、それにしたってだ。

この艤装が次も私を守ってくれる保証がどこにある。

敵の強さが想定通りである確証がどこにある。
219 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:34:11.60 ID:0jHACIMi0
私は怖い。

死が怖い。

生物としての当たり前の反応だろ、それは。

それは、

北上「魚雷、か」

波の間に僅かだが軌跡が見える。

あのコースなら金剛さんかな。

まあどうせ当たっても擦過傷なんだろうけど。

艤装の感覚を少し減らし、生身に委ねる


砲を構えてイメージする。動き回るネズミを、捕まえる!
220 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:36:12.89 ID:0jHACIMi0
瑞鶴「へへん、いっただき〜」MVP

大井「く、次こそは」

翔鶴「もう、2人とも喧嘩しないの」

金剛「瑞鶴も翔鶴も、随分強くなりマシタ。私もうかうかしてられないネー」

翔鶴「そんな、私達なんてまだまたですよ」

瑞鶴「いいや!このままどんどん強くなって加賀のやつにギャフンと言わせてやるわ!」

秋月「ギャ、ギャフン…」

ちなみにこの艦隊の最高練度は秋月である。

大井「金剛さんは大丈夫だったんですか?最後の魚雷」

金剛「ヘーキヘーキ。ノープロブレムデース」

北上「あはは…」

やれやれ。目や体は昔の感覚を思い出してきてるけど、やはり砲撃は上手くいかないや。

そりゃ猫は武器なんて持たないので当たり前だけどね。
221 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:36:48.54 ID:0jHACIMi0
提督「よーし、とりあえずあ号は終わり。各自休憩だ」

「「「「「「はーい」」」」」」

帰投後報告を終え、さて何をしようか。

提督「あー北上、大井。2人は少し残ってくれ」

大井「え?」

北上「私達?」

2人で目を合わせる。

なんだろうか。
222 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:37:49.43 ID:0jHACIMi0
提督「とりあえずはお疲れさん」

北上「ど〜も」

大井「そう思うなら早く休ませてくださいよ」

提督「まあそう言うなって。この調子だと、北上は二三日で改造できそうだな」

北上「おっ、ついに雷巡か」

大井「ようやくお揃いですね北上さん!」

提督「でな、大井ももう少しで改造できそうなんだ」

大井「私も?」

北上「改二かぁ。いいね〜しびれるね〜」

提督「そこでだ、せっかくだし二人一緒に改造しようと思ってな。どうだ?」

北上「どうって、ねえ?」

大井「それが提督の判断なら、反対はしませんよ」

提督「よっし決まりだ。3日後に決定。明日からはもちっと気合入れて訓練だ」

北上「うぇ…」

大井「……はっ!?」
223 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:38:21.71 ID:0jHACIMi0
北上「え、なになに」

提督「どうしたよ」

大井「か、改造したら…」

北上「したら?」

大井「北上さんとお揃いの服装じゃなくなる!?」

北上「そうなの?」

提督「そうだな。ほれ」

提督が見せてくれた本には大井っち、別の大井っちの写真が乗ってる。

ホントだ。白い。あと露出度が高い。

というかなんだこの本は。タレント紹介見たいなデザインだ。もっとこう真面目に作れなかったのかね。
224 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:38:56.94 ID:0jHACIMi0
大井「提督」

提督「おう」

大井「反対です」

提督「お前さっき反対しないっつったろぉぉ!?」

大井「だってぇ!せっかくお揃いになれると楽しみにしてたんですよぉぉぉ!!」

提督「知るかぁぁぁ!!」

うんうん、今日も平和だねぇ。

毎日これ程に特定の相手のためにエネルギーを使えるというのも、また愛の形なのだろうか。
225 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:39:43.82 ID:0jHACIMi0
北上「まあまあ、私としても強くなった大井っちの活躍を見たいな〜なんて」

提督「そ、そうだぞ。強くなれば北上を守ることにも繋がるんだ!」

大井「…なるほど。そういった考えもありですね」

それ以外の考えとかねぇよ。って提督の顔に書いてある。

同感だよ。

北上「いいじゃんいいじゃん。大井っちは私の1歩先をゆくんだよ。目標がある方が私もやりがいがあるってもんだよ」

大井「北上さんがそういうなら」

提督「(無言のサムズアップ」

まったく、こりゃ
226 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:40:19.88 ID:0jHACIMi0
北上「提督も大変だねぇ」

提督「これも含めて提督よ。でも大井のアレはもちっとなんとかならんかね」

北上「無理、かな…」トオイメ

提督「そうか…」トオイメ

夜。草木も眠る丑三つアワー、なんてことは無くまだ日付も回っていない。

いつもの屋根上。

提督「ほれ、どうだこいつは」

北上「それは」

一升瓶。何やら達筆で読めないが強そうな漢字が書いてある。つまり、

北上「高いお酒!」

提督「そうよ!よく分からんけど値段は高かった、つまり高いお酒だ!」

「「わはは」」


北上「で、美味しいの?」

提督「美味しいから高いんじゃねえの?」

どうだろう。
227 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:41:48.41 ID:0jHACIMi0
提督「いやな、お前ら、つまり北上と大井の改造祝にと思って買ったんだよ。この前言われた事思い出して」

雑に開けた酒をおちょこに注ぎながら言う。

北上「覚えてたんだ。さては根に持つタイプだな」

高いお酒ってあんな扱いでいいのかな。

いいのかも。

提督「でだ。割と後先考えず買ったんだがお前が酒を飲めるか分からんだろ?だから事前に試してみようと思って。ほれ」

匂いを嗅いでみる。うん酒だ。

北上「サプライズとかは考えないんだ。まあ有難い配慮だけどさ」

手に取ってみると分かるが、改めておちょこって小さいな。まさにおちょこ。
228 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:42:24.14 ID:0jHACIMi0
提督「さてと」

北上「あれ、提督も飲むの?」

提督「お前1人だけ飲ませてもな」

北上「じゃあ、まあ、なんとなく」

提督「高いお酒に」

「「乾杯」」

ビビりながら1口。

提督は、おーイッキか。

提督「ん〜」

北上「どう?」

提督「なんつーか、高いお酒だな」

北上「あ〜」

提督「北上は?」

北上「高い、お酒だね」

提督「だよな」

うまいマズイで語る子供の飲み物ではないという事だ。
229 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:42:59.69 ID:0jHACIMi0
北上「大井っちはいける口だし、提督も少しは慣れといたら」

提督「マジかよ、艦娘の胃についていける気がしねぇな」

北上「そこまでは飲まないよ。多分」

飲みつぶれる提督を想像して思わず笑ってしまう。

提督「気楽に言ってくれる」

北上「ところでそのお酒どうするの」

提督「蓋閉めてしまっときゃ大丈夫だろ」

北上「そうなの?」

提督「そうだろ」

そうかな、そうかも。
230 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 17:41:52.26 ID:0jHACIMi0
提督「さて本題に入ろう」

北上「え、今の前座?」

提督「大切な話だがあくまでついでだ」

北上「ほほう」

提督「お前。今日魚雷に向かって砲撃したらしいな」

ゲッ…

北上「いや〜なんかの勘違いじゃない?私まだ砲撃下手くそだしさ」

提督「らしいな。事実魚雷には当たらなかったらしいし。まあ当てる方が難しいわけだが」

狙った前提で話が進んでる。確信してるくせに聞いたなコノヤロ〜。
231 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 17:42:22.35 ID:0jHACIMi0
提督「以前から大井がお前の目の良さについては色々言ってたんだよ。ただ北上の事だから大袈裟に言ってんだと思っててな」

オオカミ少年みたいな扱いを受けてるんだな…

提督「だが今回は金剛からの報告だ。もしかしたら、と思ってな」

流石に信頼度が違う。

提督「北上、何を怖がってる」

おっと…いきなり核心を突いてきたね。

提督「どうやら中々センスは良いらしいが、それをやたらと隠してる。逃げるみたいにな」
232 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 17:43:08.47 ID:0jHACIMi0
北上「いつからカウンセラーになったのさ」

提督「こんな職場だからな。悩みを抱えてるやつは多い。自然とカウンセリング紛いの事をする機会は増えてったよ」

北上「納得」

提督「生まれたばかりの艦娘にとって、悩むってのは自然な事だよ。そういう奴は沢山いた。だがほっとくわけにゃいかんだろ」

北上「まあ、そうねえ」

悩みか。

北上「私は怖いんだ。死ぬのが」

提督「死ぬ?何言ってんだよ。沈ませねーよ。そんなに信用ないか俺?」

そうじゃない。

そうではない。
233 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 17:43:34.36 ID:0jHACIMi0
確かに沈まないだろう。

きっとそうだ。

大破進軍なんてこの人はしまい。

どんなに傷ついてもバケツを被ればいい。

そうなんだ。

だから正確には死ぬのが怖いんじゃない。

その事実を受け止めるのが怖い。

艦娘を受け止めるのが怖い。

それを認めたら、私は生き物じゃなくなる気がする。

猫としての、生物としての私が、死ぬ。
234 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 17:44:02.54 ID:0jHACIMi0
提督「お前はなんつーか、掴みどころがないよな。飄々としててさ」

北上「そお?勝手気ままって言われたらそうかもしれないけど」

提督「北上が来る前から、お前の事は大井がよく口にしてたよ。だから知ってはいたさ」

北上「ちなみにどんな風に言ってたの?」

提督「ひたすら褒めちぎってたよ。同時に北上を迎えられない俺をなじってきた」

北上「…なんかゴメン」

提督「俺としても早く北上に会いたかったが、そこは妖精さんのせいだな」
235 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 17:45:04.07 ID:0jHACIMi0
提督「マイペースなやつ。そう聞いてたし、そう思った。その印象が変わったのが初めてここで会った時だよ」

北上「黒猫みたいって言われた時だ」

提督「今でもそう思ってるよ。解くと髪の量多いもんなお前」

北上「そだね〜。お陰で中々乾かなくってさ」

提督「時々感じるんだ。北上はここにいるのに、なんか妙に距離を感じる事が」

北上「なんか拗れた恋人同士みたいな会話だね」

提督「茶化すなよ。文字通りこうしてお前に触れていても、なんだか掴めてない、掴みどころがない。そう感じちまうんだ」

提督が、私の頭に手を載せる。

みんなと違うその大きな手は、なんだか妙に心地よい。
236 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 17:45:42.94 ID:0jHACIMi0
艦娘になる事を怖がってるくせに、艦娘でなくなる事も怖がってる。

居場所が無くなることを恐れてる。

ワガママなんだろうな、これは。

まったく、どうして私はこんな妙な境遇にあるのやら。

提督「北上さん?」

北上「…ん?」

提督「いや、その…どうしたのかなーって…」

北上「…あ」

気がつくと私は提督の体に寄りかかりか頬をすり寄せていた。

しまった猫の癖でうっかりと。

頭を撫でられたあたりで何かスイッチが入ってしまったようだ。
237 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 17:46:21.35 ID:0jHACIMi0
北上「あはは、ごめんごめん。なんか気持ちよくって」

提督「ああいや、別に構わないけどさ」

こんなとこ大井っちに見られたらなんて言われるだろう。私に嫉妬とかするのかな大井っちは。

提督「ダメだな。お手上げ」

北上「ん?」

提督「俺じゃ無理だ。悔しいけど」

北上「無理って、何が?」
238 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 17:46:49.69 ID:0jHACIMi0
提督「今すぐここを降りろ。そうすりゃ分かる」

北上「はあ…」

なんだと言うんだ。

提督「俺はここでヤケ酒してるからよ。でも次はこうはいかねぇって覚えとけ」

北上「お、おう」

いやほんと何なんだ。

有耶無耶にされたまま仕方なくハシゴを降りると、確かに答えはあった。


大井「待ってましたよ。北上さん」

北上「大井っち…」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 21:19:27.01 ID:nNY+lcSJo
修羅場きた?
240 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/07(月) 01:09:51.21 ID:Z54/mzoS0
大井「あの人が、俺が北上の悩みをスパッと解決してやるぜー、なんて意気込んでたんですよ」

廊下を歩きながら大井っちはとても楽しそうに経緯を語ってくれた。

北上「それで賭けをしたと」

大井「賭け、と言う程じゃありませんよ。どうせ無理だから私はここで待ってますって言っただけです」

北上「バッサリだね」

大井「当たり前ですよ。あんなヘタレに北上さんは渡しません」

北上「渡すって…」

それにしても二人とも気づいていて、行動も同じとは。似た者夫婦め。
241 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/07(月) 01:10:27.61 ID:Z54/mzoS0
自動販売機を見ればその一帯に住む人々の生活が分かる。

なんて言葉があるかどうかは知らないけど案外的外れじゃないのではと思いながら適当に言ってみる。

例えば鎮守府の食堂にあるこの自販機は3割が炭酸、3割ジュース、後はコーヒーアルコールスポーツドリンクと、栄養ドリンク?かな。

お茶は食堂で貰えるのでない。

鎮守府のメンバーを考えれば妥当といった感じだろう。

ちなみに私のソウルドリンクはカルピチュソーダである。

大井「はいどうぞ」

渡されたのはカルピチュ。夏だからと炭酸ばかり飲むなというメッセージである。

北上「奢り?」

大井「前祝いという事で」

北上「なるほどね、それじゃ」

ジンジャーエールと乾杯。
242 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/07(月) 01:10:59.07 ID:Z54/mzoS0
食堂のすぐ外にあるベンチ。

屋根上とは違った景色が妙に新鮮に見える。

大井「私は北上さんの悩みがよくわかりません」

北上「えっ」

乾杯して一息ついての開口一番がこれだ。

なんというか面食らった。

大井「ですから私の話をします」

北上「大井っちの?」

大井「ええ。これは、提督には出来ない事ですから」

そう得意げに微笑んだ。
243 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/07(月) 01:11:35.40 ID:Z54/mzoS0
大井「まだあの部屋が四人部屋だった時です。私は早く北上さんに会いたいと思っていました。不思議と会ったことのないのに、北上さんのことをよく知っていました」

北上「提督からも聞いたよ。虐めてたんだって?」

大井「違いますよ。多分…」

そこで自身なくさないでよ…

お互いに手に持った飲み物を一口飲む。

大井「そうして北上さんとようやく出会えて、私は知りました。私は北上さんの事なんか何も知らないんだって」

北上「それは…」

私が多分、北上とは違うからじゃないのか。

私が異物だから。
244 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/07(月) 01:12:10.40 ID:Z54/mzoS0
大井「それから、何故か色々な事を考えました。何で生まれてきたのか。何で戦いっているのか。不思議とそれは艦娘としては非常に逸脱した思考でした」

当たり前の考えなのに、艦娘はそれを考えることは無い。

大井「当たり前の何かが壊れて、色々迷ってしまったんです」

私のせいで、ズレてしまった。

大井「だから決めたんです。私は北上さんのために戦います。アナタを知るために生まれてきたんだと。それが1番私のためになるって」

北上「自分のため?」

大井「はい。だってそうでしょう?自分の事も考えられない人が他人の事を理解できるわけないじゃないですか」

なんだか、お母さんの説教見たくなってきた。

大井「どうせ私達戦うしかないですからね。でも戦う理由くらい自分で見つけます。生まれた意味くらい自分で探します」

北上「そっ、か。なんか意外だなあ。そんなふうに思ってたなんて」
245 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/07(月) 01:12:57.46 ID:Z54/mzoS0
大井「北上さん」

北上「なぁに」

大井「私は北上さんが好きでした」

北上「過去形だねえ」

大井「今は大好きです」

北上「そう来たか」

大井「これからもっと好きになります」

北上「愛が重いなぁ」

大井「変わっていきますから。みんな」

北上「私が変わったらどうするの?」

大井「好きでいるかもしれませんし、そうでないかも知れません」

北上「ハッキリと言うね」

大井「でも多分、好きになろうと努力します」

北上「そっか」

そうか。
246 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/07(月) 01:13:32.05 ID:Z54/mzoS0
大井「さて、私の話は以上です。部屋に戻りましょうか」

北上「え、もういいの?」

大井「はい。それとも北上さんはまだ何か話したいことがありますか?」

北上「…いや」

話すような悩みは、もう無くなってた。
247 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/07(月) 01:14:04.73 ID:Z54/mzoS0
球磨「第3回!球磨型家族会議ー!!」

多摩「にゃー!」

木曾「き、キソー…」

北上「えぇ…」

大井「何やってるんですか」

部屋の扉を開けたら、何かが始まっていた。

球磨「ふふっ、球磨にはすべてお見通しだクマ!」

多摩「さあ難しい悩みも恥ずかしい思い出も隠さず誤魔化さず全てさらけ出すにゃ!」

木曾「趣旨が違ってきてないか」

大井「恥ずかしい思い出なら去年の夏に球磨姉さんが「あーなしなし!恥ずかしいのはなしクマァ!」」「恥ずかしい思い出ならおい姉の方が」「あぁ?」「大井の下着は痛い痛いギブギブにゃあ゛!」「木曾は「なんで俺に向くんだよ!」

あーもうほんとにこの人達は。

まったく。

北上「ありがとね」

多摩「イタタタタ!ん、何か言ったかにゃ?」

北上「いや」

ただの恥ずかしい思い出だよ。
248 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/07(月) 01:15:27.24 ID:Z54/mzoS0
谷風「やあ、ご無沙汰振りだね」

北上「なにその挨拶」

谷風「なんかお洒落じゃないかい?」

北上「私達はセンス合わなさそうだよ」

谷風「そりゃ残念」

北上「…何その手は」

谷風「手を、仮に来たんだろ?」

北上「まあね」

前とかわらない夜の屋根上。でも少し、広く感じた。

北上「なんで私が生まれてきたかを、知りたいんだ」

谷風「そいつは重畳。それに、いい目になった」

北上「見た目は変わってないよ。見えるものが変わっただけ」

お互いにニヤッと笑った。


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