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北上「我輩は猫である」

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118 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 02:15:26.83 ID:o3y+tRZF0
谷風「でも高いところが好きなのはホントだよ?何故かね」

北上「…」

高いところ。やはりコイツも猫か?

谷風「別にスカートの中を覗かれることに抵抗がないわけじゃないんだけどね。まあこんなところを見る人もいまいよ」

特にそんな感じはしないけど。いや私だってパッと見は普通だけどね。

谷風「しかしこんな格好で毎日戦場に赴けば妙な思考を植え付けられても不思議じゃないよね。初めて被弾した時なんかこれはもういっそ下着だけでいいと思ったよ」

しかし何ていうか、この娘、

谷風「全部含めて艤装だし仕方ないんだけどね。それで言ったら一番可愛そうなのは提督になるのかねえ。心配で駆け付けたら目に映るのは露出した太股、お尻、お腹に、胸。お互い辛いもんだよ。誰が考えたんだかね。神様かな?なら納得だけど」

…よく、いや非常に、あまりに非常識になレベルで喋る。

北上「それは、今話す事?」
119 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 02:16:01.63 ID:o3y+tRZF0
谷風「ふむ…では本題だ。キミ、猫の記憶があるんじゃないか?」

北上「え!?なんで!」

谷風「よしよし、合ってたみたいでホットしたよ。もっとも間違ってたところで何が変わるわけじゃないのだけどね。誤魔化すのは簡単だし」

北上「気づいてたんだ」

谷風「そりゃそうだ。だからキミがここに来るように仕向けたんじゃないか」

北上「仕向けた?」
120 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 02:16:33.25 ID:o3y+tRZF0
谷風「キミが夜中にここに来てると知ってね。昼に私がはしごを降りるとこを提督に目撃させて私の事を話したんだ。そうすればキミはここに来る、かも知れない」

思わず構える。

仲間に出会えたのは嬉しいが、これは少しばかり予想外だ。

谷風「ここで大事なのはキミは来るか来ないか選べるってとこさ。もし記憶があるならきっと来る。なければ来ないだけだし」

北上「私に記憶が混じってるのを知ってたんじゃないの?」

谷風「確証はなかった。確信はあったけどね。だから待つつもりだったんだここで。最低1ヶ月は待つつもりだったかな。提督が話すか、いつ話すかは運任せだし」

北上「さっきの早かった、はそういう意味か」

谷風「そういう意味さ。まあ来てくれてよかったよ。キミの言う通りここは熱いからね」

北上「高いところが好きってのも私の反応を見るための嘘って事ね」

谷風「ん〜まあそれもあるかな。好きなのは本当さ」
121 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 02:17:02.29 ID:o3y+tRZF0
谷風「私はここの古株でね。今の提督の一つ前から。もう50年はここにいる」

北上「ご、ごじゅう?」

谷風「そう。だから色々知ってるし顔も利く。だから監視してるんだ。自分と同じ艦娘がいつか合われるんじゃないかって」

北上「猫ってのも人に聞いたわけだ」

谷風「うん。実験もしたけどね。爆竹流行らせて反応見たり色々。猫の反応だったよ」

北上「あれ意図的だったんだ。手の込んだことで」

谷風「人にはバレない方がいいからね。なんとなくだけど。回りくどいのもそのためさ」

北上「でももし私が来なかったらどうするつもりだったの」

谷風「記憶があった上で来なかったら、それはそういう意味だと理解して今後関わるつもりはなかったよ」

北上「へえ、優しいんだね」

谷風「気持ちは分からなくもないからね。こんな記憶忘れて、ただの艦娘として生きた方が楽ではあるんだろうしさ」
122 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 02:17:29.80 ID:o3y+tRZF0
北上「他には、いないの?」

谷風「知る限りは。これまでも怪しい艦娘にはアプローチをかけてたけど来たのはキミだけ。だから認識上この鎮守府には私達しかいないと思っていいかな」

北上「そっか、残念。ってわけでもないのかな」

谷風「そうだね」

北上「でも、なんでそんなに必死に探してたのさ」

谷風「そんなの当たり前だろ?独りぼっちは寂しいんだ」

北上「それは、まあそうねえ」

谷風「秘密ってのは2人以上で抱えて初めて面白いものになるんだよ。1人じゃ負担にしかならないのさ。もっとも誰かに話すとその時点で戸が建てられなくなるんだけど、

とこんな話は今はいいか。ともかく私は話し相手が欲しいのさ」

北上「…お喋りが好きってわけだ」

長い。話がさっきから長い。

私とのセリフ量に差がありすぎる。

しかも途中に呼吸を入れずに一気に話すもんだからついていくのも大変だ。
123 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 02:17:55.37 ID:o3y+tRZF0
谷風「そうなんだよ。この口ときたら頭で考えるよりも早く動くもんだから歯止めが効かなくてねえ。歯止め、なんてまさに書いて時の如くだね。

でも普段は抑えてるんだ。谷風ってのは別にそうお喋りなキャラじゃないからね。それ自体は別に構わないしむしろ谷風という自由なキャラは中々気に入ってんるんだ。人間関係の構築という点でも大いに役立つ。

さて私、つまり谷風でもなく海猫でもない今の私がこうなったのはまさにその海猫の部分が原因なのさ。視点がズレたと言うべきなのかなあ。そのせいか一つのことに対して思うところが次々と湧いてくるようになっちゃってね。こうして「ウェイト!」ん?」

北上「え、今なんつった」

谷風「今?」

北上「う、うみねこ?」

谷風「そうだよ」

北上「猫じゃないの?」

谷風「そんな事は言ってないはずだけど」

北上「えぇ…」
124 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 02:18:39.28 ID:o3y+tRZF0
谷風「あるときふと気がついた。空を飛んでいた、と。ビックリしたよ。そうして色々必死に思い出すうちに、自分がどうやら鳥であったことに気がついた。

そして悩んだ。

そりゃそうだよね?何故に鳥ってね。徐々に翼やくちばしの感覚を思い出していった。

すると面白いものでね。価値観が大きく変わった。さっきも言ったけど、そうだね、当たり前が当たり前じゃなくなるって感じかな。

それがいい事かはともかく、周りとズレているというのはしかし想像以上に辛いものでね。悩みの種というわけだ。話し相手が欲しいというのはそういう事さ」

少しセリフの長さを抑えろと言った矢先にコレだ。諦めよう。
125 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 02:19:06.36 ID:o3y+tRZF0
北上「つまりこれから仲良くやっていこうってわけね」

谷風「そゆこと。悩み事は共有した方が気が楽だろ?」

北上「同感」

谷風「さてと。ならこんな暑っ苦しい所にとどまる理由はないね。次からは夜にしよう。そうだね…毎週火曜と金曜に私はここに来るよ。キミも会いたければ来るといい」

北上「りょーかい。それ以外であった時はどうする?一応秘密なんでしょ」

谷風「そこは、ん〜。キミに任せるよ。それじゃね」

北上「え〜、ちょっと」

タッタッタッと振り向きもせずハシゴに駆けていく。

一瞬飛ぶのかと思ったが普通に降りていった。

さて、

北上「面白いことになっちゃったな」

ついにやけてしまう。

なんだかいい気分なのでニャーと言ってみた。
126 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 02:21:02.77 ID:o3y+tRZF0
谷風のあの声をずっと聞いていたいと思ったらこうなった

誤字チェックをする気力は、あまりない
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 02:30:37.80 ID:7rZftrgkO
乙です。
まぁ誤字については気づいたら直せばいいのさ、指摘されない限りはね、意味が分かれば十分……よほど笑えるのとかは指摘するけども。
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 02:37:18.24 ID:3a1i1UmPo
乙カレー
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 07:32:38.13 ID:x46T6Pf+o

ニャーニャー鳴くのがウミネコだ(ブチャラティ並感)
130 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 22:57:23.46 ID:o3y+tRZF0
14匹目:好奇心は猫を殺す



イギリスのことわざ。

しかし好奇心とは大切なものだ。

それこそ、命を懸けてもいいくらいに。

やりすぎると馬に蹴られるかもしれないけどさ。
131 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 22:57:59.88 ID:o3y+tRZF0
夕張「ズバリ、ツンデレよ!」

北上「うえ〜?」

工房。

近代化改修と点検の真っ最中。

北上「なに、つんでれって」

夕張「あれ?知らない?本読むって言うから知ってるものかと」

読書家なら知ってるような単語なのか。

皆目見当がつかない。

永久凍土の上にある雨の少ない土地の知り合いかなにかかと思ったが。
132 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 22:58:37.38 ID:o3y+tRZF0
夕張「ツンデレってのは略称で、最初ツンツン後デレデレって意味よ」

美味しいお米の炊き方かよ。

夕張「今は天邪鬼って意味に使われる事が多いかな」

天邪鬼。それならわかる。

北上「あ〜確かに、うん。ツンデレだ大井っちは」

夕張「鎮守府の皆そう思ってるよ多分。絶対に言わないけどさ」

北上「鬼とはよく言ったもんだよね」

夕張「あはは、確かにそうね」

なんて喋りながらも作業スピードが一向に落ちない。プロや…
133 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 22:59:10.86 ID:o3y+tRZF0
夕張「でも大井さんって北上さんが好きよね」

北上「ん〜まあそうだよねえ」

夕張「やっぱ提督<北上さんなのかな〜。せめてイコールを入れたいわね」

北上「難しい話だよ。私達は特に、命がかかってるしね。どちらもとはいかないし」

夕張「ケッコンの話もあるもんね。提督もあまり私達を異性として意識しないようにはしてるみたいだけど、そうも言ってられないんじゃないかな」

北上「命短し恋せよ乙女、って?」

夕張「寿命で言えば提督の方が短いけどね」

北上「戦場だもの、私達の方がきっと、短いよ」
134 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 22:59:58.29 ID:o3y+tRZF0
夕張「ハイ終わりっ!」

北上「ん、ありがとね」

夕張「そうそう、最初の話に戻るけどさ。北上さん本読むのよね」

北上「まあそれなりに」

夕張「ツンデレをより理解してもらうために、私の秘蔵のコレクションを貸そうじゃないか!」

北上「お、おう」

目がキラキラしてる。

デジャヴ?

日向さんの時と同じだこれ。

夕張「さあさあ着いてきたまえ〜」
135 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 23:00:32.71 ID:o3y+tRZF0
自室に帰宅〜っと、

大井「あら北上さん、改修は無事ああーーーー!!」

北上「うわっ、何何どうしたの大井っち!」

大井「き、北上さんが、エッチな本を!?」

北上「えっち?」

エロ、18禁、性的表現。

手に持ったらいとのべるとやらの表紙絵と夕張の言葉を思い出す。

「どんな本もジャンルもまず読む事よ!好き嫌いは構わないけど偏見はダメ」

無茶を言う。

北上「いやでも昔の本とか性的表現ガバガバだし表紙に裸体とかザラだし」

大井「うっ…」

北上「というか私らの格好も大概、それ以上じゃん」

大井「グハッ」

WIN!
136 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 23:01:15.65 ID:o3y+tRZF0
大井「いえ。北上さんの読書を邪魔するつもりは無いんです…はい…」

北上「なんかごめん」

大井「お気になさらず…」

どうしよう、何か触れてはいけないことに触れてしまった気が。

北上「大井っちは服破けるのいやなの?」

大井「それは誰だってそうでしょう!」

そうかな、そうかも。

いや普通はそうだけど。

北上「慣れるしかないじゃん」

大井「でも、北上さんの、北上さんのあられもない姿があの唐変木に見られるかと思うと…」

唐変木。提督の事か。

北上「私の姿、ねえ」

とりあえず1冊目を開く。
137 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 23:01:49.69 ID:o3y+tRZF0
読書とは、

知識を得られる、

見聞が広がる、

語彙力が上がる、

エトセトラ

でも一番に好きな部分は、他人の価値観を得られることだ。

色々な作者の、そして作者の様々な価値観がそこには登場人物として描かれる。

それらを読み、理解したり、出来なかったり、そうして自分の中に蓄積していく。

それがいい事かどうかは賛否両論ありそうだが、猫なんてぶっ飛んだ価値観が混じってる私には今更だ。
138 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/30(日) 23:02:15.46 ID:o3y+tRZF0
北上「いやでもさ、これはキツいわ」

夕張「ありゃ、ダメだった?」

北上「面白かったけど、そのね、大井っちを見る目が、変わりました…」

夕張「ほ、ほら!フィクション!フィクションだから!」

北上「小説より奇なりが現実だよ…」

私がそれを証明してる。

夕張「でも百合は少し理解出来たでしょ。まだまだ序の口よこれでも」

北上「マジかぁ」

愛の種類というのはこれほどまでに多彩に、深く広がっているのか。

私にはまだ早いようだ。

私は賢いので、好奇心を少し抑えることにした。
139 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 02:01:48.61 ID:+4O7U4Ke0
16匹目:猫と子猫






数。それは圧倒的な力の差をも覆す。

一つ一つは弱くても、膨大な数が集まるととてつもない強さへと変わる。

生き物は知っている。

本能的に。

数の暴力を。



北上「でさ、助けてくれない?」ヒソヒソ

谷風「私も涼みに来たくちだからねえ。そいつぁ無理かな」ヒソヒソ

日に日に熱くなる。そんな季節。

私は、

駆逐艦たちに襲われていた。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/31(月) 03:01:09.28 ID:coz3SQ5Zo
長門さんが羨ましそうに見てる
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/31(月) 08:09:59.67 ID:eOoAiNK7O
アツゥイ!
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/31(月) 10:58:45.23 ID:OhNtpldO0
文章の書き方が好きだわ
更新お疲れ様です
143 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:42:33.56 ID:MkHi9DRM0
谷風「襲われてるとは随分ないいようじゃあないか」

北上「似たようなもんでしょ」

谷風「見解の相違だね」

北上「なんでコイツら私の所に寄ってくるのさ」

谷風「君のいる所は涼しいからね」

北上「私がいる所が涼しいんじゃないよ。涼しい所に私が来てるだけ」

谷風「いかにも猫って感じじゃあないか」

夕立「…ポイ~」スヤスヤ

谷風「あまり喋ると起こしちゃうかな」

北上「起こしたいからいいよ」
144 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:43:01.19 ID:MkHi9DRM0
工房と母校の渡り廊下。

この時期いい感じに風が吹き込む日陰を見つけたのでここで読書と洒落込むつもりだったんだけど。

最初は遠征帰りの六駆。今は私の向かい側で壁を背に座って寝てる。

真ん中が響で皆そこにもたれかかる形になっている。誰が姉だか分かりゃしない。

次に工房から出てきた夕立と神風。

神風も本が好きらしく、最初は私の横に座って本を除いていたがライトノベルは合わなかったのか、そのまま眠ってしまった。寝るなよ…長い髪が少しこそばゆい。

夕立。こいつはもうストレートに寝た。横に座る神風を見て「私も!」と言って座って、「ここ涼しいっぽい」と言った次の瞬間には寝てた。のび太か。

こうも両手を固められちゃ本を読むのも一苦労だ。
145 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:43:39.24 ID:MkHi9DRM0
谷風「なるほどね。そこで転がってるのは?」

北上「工房からあち゛〜って出てきて倒れ込んだっきりだよ」

タンクトップにホットパンツほぼ下着みたいな姿で倒れ込んでるのは夕張。鎮守府内のエアコンゾーンまで行く気力は無かったらしい。

谷風「確かにここは涼しいね。妙に風が吹くし」

北上「海からの風がここを通るみたいなんだ。この時間なら日も当たらないし」

浦風「な〜にしとるんじゃこんな所で」

谷風「あれ、浦風。工房に用かい?」

浦風「そうやったけど、今は無理みたいじゃね」

夕張「」

返事が無い、ただの屍のようだ。
146 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:44:21.03 ID:MkHi9DRM0
浦風「それで、この子らは何しとるん?」

谷風「そりゃもちろん、おや?」

スッーと、少し強めの海風が吹き抜ける。

うわ神風の髪が。この子髪の毛サラッサラだな。同じく髪の長い球磨姉なんか結構くせっ毛なのに。

谷風「まあ、こういうことさ」

浦風「なるほどね。確かに、いい風じゃぁ」

北上「言っとくけど私の所はもう定員オーバーだよ」

当然のように膝枕に寝てる谷風を見下ろす。

谷風「そうかい?頑張れば2人は寝れそうじゃないか」

北上「それは私の負荷を考慮してないよね」

浦風「じゃあ谷風を枕にしようかねえ」

谷風「いいねえ。日が沈む頃には廊下に列ができそうじゃないか」

北上「いいわけないでしょ…」
147 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:45:11.23 ID:MkHi9DRM0
浦風「浜風もそうやけど、浦風も浜辺を吹く風っちゅう意味なんやよ」

北上「艦娘、というか船の名前は海にちなんだものが多いよね。当たり前だけど」

谷風「海風なんてそのまんまだしね。でも私は谷だよ谷。海でも割れってのかねえ」

モーゼかよ。

浦風「そこら辺はもうただの風繋がりやろうね。他は、潮に波に、雲かいな」

谷風「月と雪」

北上「後は気象現象?とか」

谷風「ところで不知火ってどういう意味なのかね」

浦風「知らぬいってね」


北上「冷えるね」

谷風「涼しいなあ」

浦風「ちょっと」

谷風「ほらほら起きちゃうから静かに」
148 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:45:52.30 ID:MkHi9DRM0
髪が、揺れる。

浦風「ほんにいい風じゃ…」

谷風「面白い話だよね。私達がこうして陸で風を感じているなんて」

浦風「ウチらは必要だから造られた。ウチは求められたからここにおる。次は、空かもしれんね」

次、か。

北上「空ねえ。空ってどんなところだろうね。ねえ谷風」

谷風「…空もなかなか大変なところだよ。鳥は、自由に飛んでいるわけじゃないんだ」

浦風「あら、随分知ったふうに言うんやね」

谷風「そうかい?」

北上「そうだよ」
149 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:46:53.95 ID:MkHi9DRM0
神風「ん……はっ!き、北上さん?ごめんなさい!私」

北上「あ〜いいよいいよ。それより私じゃなくて夕立何とかしてくんない?」

神風「…もしかして私達ずっと?」

北上「神風の髪の毛サラサラで気持ちよかったよ」

神風の顔が服の色と同じになる。

北上「ほら、谷風も起きる」

谷風「ぶぇ〜、もう疲れたってのかい?なっさけないなぁ」

北上「寝転がってるだけのくせに。よっと」

夕立を神風に任せて立ち上がる。

北上「うわっと」
浦風「ほれ」ガシッ

北上「はは、悪いね。足腰がガチガチだよ。私も歳かねぇ」

浦風「何言うとるんじゃ。一番の新米じゃろうに」
150 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:47:38.82 ID:MkHi9DRM0
谷風「さぁて帰るかね」

北上「谷風はそっち」

谷風「ああ、響型か」

浦風「暁じゃ」

谷風「爆竹やったらどうなるかな」

北上「まだ持ってたんだ…」

神風「谷風」

谷風「ん?」

神風「お願い」

夕立「スピー…」

谷風「あぁ…」

北上「じゃあ」

浦風「ウチらは退散やね」
151 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:48:11.30 ID:MkHi9DRM0
北上「気楽なもんだね」

浦風「この分だと、暑い日は毎度寄ってこられそうやね」

北上「はぁ…駆逐艦ウザイ」

浦風「でもさっきの、まるで親猫と子猫みたいに見えとったよ」

北上「親猫って、それは」

小さな破裂音、と悲鳴。

浦風「ホントにやったみたいじゃね」

北上「まあやるでしょうよ」

提督「おい、なんだ今の音は」

北上「うわっ!」

浦風「提督さん!」
152 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:48:44.22 ID:MkHi9DRM0
渡り廊下から建物内に入った直後。横の壁にいたのは、

座り込んでる提督と、

提督にもたれ掛かって寝てる大井っちだった。

北上「親猫はこっち。私らは姉妹でしょ」

浦風「ん〜それもそうやね」

提督「何の話だ」

北上「そっちこそ、それは一体どういう状況?」
153 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:49:49.77 ID:MkHi9DRM0
提督「どうもこうも、夕張から連絡がこねえから見に行こうと思ったら大井に足止めされてな。ここで待ってろって」

北上「見守ってたんだ…」

提督「見てはいないけどな。ここで言い合いしてるうちに寝やがったからな」

浦風「なるほどね〜。こりゃお邪魔じゃったみたいやのう」

北上「さっさと退散しますかね〜」

提督「あっおい!ちょ、ちょっとまって〜」ヒソヒソ


浦風「父猫と、母猫になるかもしれんよ」

北上「それは悪くない。でも提督モテモテだしなあ」

泥棒猫が、はたして何匹いることやらね。
154 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/07/31(月) 22:51:29.73 ID:MkHi9DRM0
セリフ調じゃないと長い文章が読めない自分に優しい書き方になってます。読みにくく無ければ幸いです


メンテ終わったし嫁のレベリングしなきゃ(使命感
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/31(月) 23:13:49.46 ID:xsMVMWBV0
いい感じだよ
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/01(火) 00:24:00.42 ID:1ojpoum9o
ぽいちゃんさすが
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/01(火) 00:32:09.61 ID:zR8MeRhSO
響型の詳細な陣形が気になる
158 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/01(火) 21:26:41.76 ID:BpQoKXQz0
18匹目:猟ある猫は爪を隠す


と言ってピンとくる人はあまりいないかな。

能ある鷹は爪を隠す、のほうが一般的だし。

何故鷹の方が有名なのか。

そりゃまあ強いし、カッコイイしね。
159 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/01(火) 21:27:16.51 ID:BpQoKXQz0
北上「猫であることを隠す人間と、人である事を隠す猫ならどっちがいいかな」

谷風「そりゃ後者だね。絶対的な基準がない以上は、外見と中身の差がプラスに大きい方がいいだろうさ」

北上「人間の方が上?」

谷風「一般論さ」

北上「私も逆だったらなあ」

谷風「キミは別じゃないか。確かに猫だけど、人間でもある。中身がね。猫だけならこうしてお喋りだって出来ないじゃないか」

北上「それもそうか」

谷風「もっと視野を広く持たなきゃ。文字通り上から目線になってしまうけど」

北上「そうだったね、海猫さん」

月明かりの屋根上。

谷風はチェシャ猫のように笑う。
160 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/01(火) 21:27:48.58 ID:BpQoKXQz0
北上「ぶっ飛んだ発想が必要か」

谷風「それはダメだよ。着地のことも考えなきゃ。いずれどこか終着点を見つけるために飛んでるんだから。変に高く飛んでも見えにくいだけさ」

北上「雲の上くらい?」

谷風「雲の上から見てるのは神様くらいさ。私達はそこまで高く飛ぶ必要は無い。雲のある空は、私達が飛んでる空より高いところにあるんだ」

北上「含蓄ある言葉だなあ」

谷風「実体験だからね」
161 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/01(火) 21:28:26.49 ID:BpQoKXQz0
北上「ならさ、谷風はどこに向かってるのさ」

谷風「何処とは?」

北上「飛んでるって言うなら、どこを目指してるの?」

谷風「…目指してなんかいないよ。偉そうに言っといてなんだけど」

北上「目指してない?」

谷風「私はキミを見つけるために積極的に行動した。これまでもそうだし、これからもそうするだろう。でもそれはどこまでも見つめるため、飛び続ける為であって、着地点はない。

キミもこう思ったはずだ。こうして記憶があるのには意味がある。

世の中にそんなに必然性を求めるには、夢見る少女を名乗るには少々歳を取りすぎてる気もするけど、悪い考えじゃないさ。

でもだから怖いんだ。

もしかしたら意味が、目的があるのかもしれない。でもそれを見つけて、それが終わったらどうなるかな。

ここでの楽しい暮らしが、輝ける日々が、こうしてキミと話す時間が、空を飛んでいた時の記憶も、海を駆け回る今も、消えてしまうかもしれないじゃないか。

海面を歩けるガラスの靴は、鐘がなったら消えてしまうのさ。

なんの合図かは知らないけどね」

北上「…相変わらずよく喋るね」
162 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/01(火) 21:28:58.18 ID:BpQoKXQz0
谷風「性分でね。主人公じゃなくて語り部が向いてるのさ。だからこうしてここにいる。

例えばキミがここに留まるなら私は大歓迎だよ。話し相手が欲しかったと言ったろ?

でももし君が、何かを目指すと言って、どこかへ向かうなら、私は全力で応援する。協力する。そして、見届ける。

私はその為にここにいる」

北上「白雪姫か…白猫の私にはピッタリかもね」

谷風「ガラスの靴はシンデレラだよ」

北上「ありゃ、そうだっけ」

谷風「どちらにせよキミにピッタリさ」

北上「なんで?」

谷風「へへっ。猫灰まみれ、って事さ、お姫様」

スッと立ち上がり、手を伸ばしてくる。

でも

北上「いいよ。今はまだ、ここにいるから」

谷風「ならこの手はしっかりとっておこう」

北上「お願いね」


手も爪も、まだ隠しておかなきゃ。
163 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:17:11.14 ID:Bwj3I3Vg0
19匹目:猫と熊としりとり



猫。ネコ目ネコ科の動物。

人間はやたらと分類するのが好きだ。

球磨。じゃない熊。ネコ目クマ科。

えネコなの?マジか。マジだ。

まあ種を明かすとネコ目の意味が違うのだが。

しかし暇だ。そして暑い。涼みたい。

こんな時は愛する姉妹達の力を借りよう。



北上「あー、あ、雨だね」

大井「ね、ね〜、嫌になっちゃいます」
木曾「それは流石に無理y「す!」はいはい、すー、すっかり梅雨だな」

多摩「なんだか今年は妙な雨ばかり降るにゃ」

球磨「や、や?やっぱり地球温暖化が関係してるクマ?」
164 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:17:46.21 ID:Bwj3I3Vg0
北上「全く振らないところもあるらしいよ」

大井「よもや四季が崩れる日が来るとは思いませんでした」

木曾「例えば梅雨が消えたら」

多摩「ラッキーだにゃ。ジメジメが無くなるにゃ」

球磨「ゃ…やーそもそも梅雨は指揮じゃないクマ」
165 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:18:37.22 ID:Bwj3I3Vg0
北上「まあそうだね。しれっと混ざってるけど」

大井「どうも夏とセットで四季の中にうまいこと入り込ん出るように思います」

木曾「すっかり騙されたぜ」

多摩「絶対いらないにゃ。夏でいいにゃ」

球磨「やっかいな時期クマ」
166 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:19:23.76 ID:Bwj3I3Vg0
北上「うわっ!…また雷だ」

大井「大気がずっと不安定ですからね。ゲリラ豪雨ばかり」

木曾「理解不能なレベルだよな。最近の異常気象は」

多摩「破壊の限りを尽くしてるにゃ。洪水はいやにゃ」

球磨「…やめて欲しいもんだクマ」
167 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:19:57.60 ID:Bwj3I3Vg0
北上「毎年ひどくなってる気が」

大井「がー、ガッカリですね。来年はどうなることやら」

木曾「落雷は勘弁だ」

多摩「だからと言って降るなとも言えんにゃ」

球磨「やはり梅雨は必要だ」
168 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:20:29.01 ID:Bwj3I3Vg0
北上「ラッキー」
球磨「あっ」
北上「ダムの所にだけ降るとかできたらいいよね」

大井「念力で動かすとか」

木曾「科学の力を信頼してやれよ…」

多摩「妖精頼りの私達が言えるセリフじゃないにゃ」

球磨「や、や〜しかしよく降る、クマ」
北上「またそれ?」
球磨「マ」
北上「はいはい」
169 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:20:57.57 ID:Bwj3I3Vg0
北上「毎日こうだと洗濯物も乾かない」

大井「いい加減太陽がみたいですよね」

木曾「ネットリとした暑さが戻ってくるぞ」

多摩「そいつが日本の夏だにゃ。諦めるにゃ」

球磨「やだクマ認めたくないクマ」
170 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:21:37.11 ID:Bwj3I3Vg0
北上「真夏日と変わらないくらい暑いよね。体感温度は」

大井「はい。できればエアコンを入れたいところですが」

木曾「簡単に言うなよ。電気代も大変らしいし」

多摩「しかし今の日本の気候を考えたら夏に入ってからじゃないとダメってのは改める必要があるにゃ」

球磨「……」

多摩「にゃ」

球磨「やはり球磨もそう思うクマ。この暑さには何か対策が必要クマ」
171 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:22:19.44 ID:Bwj3I3Vg0
北上「巻く?ひんやりシートとか」

大井「身体を冷やす以外にもなにか無いでしょうか」

木曾「辛いもの食べるってのはどうだろう」

多摩「うんにゃ、それは夏バテ防止にゃ。これはまた別の問題にゃ」

球磨「…ヤケクソクマ。裸になれば涼しくなるクマ」
大井「賛成です!」
北上「大井っち」
大井「はい」
172 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:23:01.55 ID:Bwj3I3Vg0
北上「まあそのうち近い事にはなりそうだけどさ」

大井「流石にそれは」

木曾「分かった。着替えの不足か」

多摩「掛け布団なんかも最近干せてないにゃ」

球磨「厄介な問題クマ」
173 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:24:02.03 ID:Bwj3I3Vg0
北上「稀に晴れたと思ったらすぐ降り出すし、僅かな晴れ間も信用出来ないよ」

大井「よく考えたら着替えの不足って深刻な問題ですよね」

木曾「寝て起きたら着替えがない、なんて事になる」

多摩「る!…ぅ……」

球磨「さーん、にーい、いーち」

多摩「類例がない以上何が起こっても不思議じゃないにゃあ!」

球磨「チィッ!」
多摩「にゃは」

木曾「あそこだけ熱いな」

大井「これ以上熱くされても困るのだけれど」

北上「私も大概辛いんだけどねえ」
174 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:24:44.70 ID:Bwj3I3Vg0
球磨「夜間の暑さだけでもなんとかして欲しいクマ。寝不足はマズイクマ」

北上「まだ不明だけどさ、着替え乾かなかったらホントに下着で過ごすハメになるよ」

大井「良い事ですよ」

木曾「良くはねぇだろ流石に」

多摩「にゃ」


球磨「え?」

多摩「にゃ」
球磨「いやダメだろ」
175 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:25:38.48 ID:Bwj3I3Vg0
多摩「にゃ、はにゃにゃ。うんとかハイとかと同じにゃ。そこになんの違いもありゃしねぇにゃ」

球磨「うんもハイもダメだクマ!にゃーなんて言語道断だクマ!」

多摩「そっちだってクマクマ言ってるクマ!」

球磨「クマはなんかこう丸い感じだからセーフだにゃ!や より ま の方が優しいからセーフだにゃ!たまに取れるからセーフだクマァ!」

大井「やはり自覚はあったんですか」

木曾「確信犯かよ。しかも色々混じってるよ」

北上「よく言うよ。 ま もそれなりに苦労するんだけどね」
176 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:26:37.56 ID:Bwj3I3Vg0
多摩「いっつもつけ忘れるくせにこんな時だけやたらクマクマ言ってる癖に何言ってんだにゃ!これは勝負にゃ!」

球磨「そっちこそたいして猫っぽさも無いくせににゃーにゃーうるせークマ!」

北上「ねぇ、なんかヒートアップしてきた」

木曾「体感だが、心なしか部屋の温度も上がってるような…」

大井「なんとかしないと、とは言え有効な手段が思い当たりませんね」
177 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/03(木) 02:27:32.32 ID:Bwj3I3Vg0
球磨「クマァ!」
多摩「にぁあ!」

ジリリリリリリチンッ

タイムアップのベルを止める。

北上「ハイおしまい」

大井「2人の奢りという事で」

木曾「バニラ、チョコ、ストロベリーで」

球多「「あ」」

多摩「いやいや3人も普通に喋ったにゃ。ノ、ノーカンにゃ!」

球磨「つい熱くなったことは謝るクマ。でもこれはもうひと勝負すべきクマ!」

北上「いやウチら続けてたしね」

大井「暑いので早く買ってきてください」

木曾「やっぱ俺は練乳で」

球磨「クマァァァァ!!」ダッ
多摩「うにゃぁぁぁぁ!!」ダッ

しりとりが、その後禁止になった。
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/08/03(木) 06:15:20.10 ID:RQS+i+Ff0
会話をしりとりでさせるか
1さんすげぇなぁ、お疲れ様です
更新の度に読んでいます、これからも待ってます
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 08:26:43.39 ID:8cs0LxR6O
何か作風違うなーと思ったらそういうことかw。上手い!
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 22:25:18.44 ID:h9fC4uCs0
語尾でズルした二人が敗北 インガオホー
181 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:02:25.73 ID:rL+1COZK0
20匹目:猫舌





北上「暑いねぇ」

大井「ええ、ホントに…」

季節は夏、と言うには少し早いけど日本の暑いとは国外のそれとは違った意味合いを持つ。

この湿度。

温度自体は30度にも届かないというのにまとわりつくように、締め付けるようにジワジワと体感温度を上げるコヤツが原因だ。

戦争ということもあって環境問題なんか二の次三の次。結果地球温暖化とやらが進んでるのも問題だ。

戦争さえなければこんなに暑くなかったというのに。え、そんなことない?またまた〜。
182 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:03:01.15 ID:rL+1COZK0
蛇口を捻ってホースから水を出す。

冷たい水を浴びてキラキラと輝く花たちがなんとも風流だ。

いいなあ涼しそうで。まあ彼らにも彼らなりの苦労があるのだろうけど。

北上「でなんで私達が花壇の手入れを」

大井「暇ですからね、私達」

その通りなんだけどさ。

北上「このままじゃ私達の方が枯れちゃうよ〜」

真上から降り注ぐ容赦のない太陽光線は急降下爆撃のそれとなんら変わらない脅威だ。

艤装を纏えば温度は緩和されるが黙ってるだけで燃料を消費するのでダメと言われた。
183 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:03:50.92 ID:rL+1COZK0
北上「それに大井っちはこの後演習でしょ?」

大井「ええ、残念ながら」

心の底から残念そうだ。

北上「んじゃ後は私に任せてよ。テキトーにやっとくから」

大井「休憩はしっかり取ってくださいね!あと水分も!塩分は取ればいいというものではありませんから。少しでも身体に異変を感じたら」
北上「あーはいはい大丈夫だから」

過保護な妹をなんとか送り出して花壇には向き直る。

私より大井っちの方が心配だよ。心労で倒れそうで。
184 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:04:33.93 ID:rL+1COZK0
北上「これは、陽炎型か」

花壇にはそれぞれ名前の入ったプレートが刺さってる。

なんでも各々好きな花を植えたとか。実際生えてる葉はバラバラ、既に蕾のあるものや、なんか蔦がわらわら出てきてるものもある。

北上「こんな一緒くたに植えてどうするよ」

夏休みの自由研究って感じがする。

北上「これが全部アサガオなら良かったんだけどさ」

まあいい。とりあえず適当に水を。

ん?この花は。

北上「やれやれ」

後で谷風に鉢に植え替えて日陰に置けと伝えてもらおう。

植物はやたらと水を撒けばいいというものでは無いのに。
185 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:05:14.33 ID:rL+1COZK0
提督「お疲れさん。ほれ報酬だ。食え食え」

北上「どう考えてもワンコイン以内だよねこれ」

提督「カレーは夏バテ防止になんだぜ」

北上「部下への健康の配慮を報酬として出すってどうよ」

提督「モノは言いようだな」

北上「まったくね」

さて、

「「いただきます」」
186 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:05:55.12 ID:rL+1COZK0
北上「あっち!」

提督「その暑さがいいんじゃねえか。猫舌か?」

北上「大体の生き物は暑いものが苦手でしょ。猫に限らず」

風評被害もいいとこだ。なぜ猫だけ。

提督「それはほら、熱いもの嫌いな人がスープなんかをチョビチョビっと飲む感じが猫が舌で水を飲むのとかに似てたからだろ」

北上「あー、あー!」

提督「おぉ、そんなに驚く話か?」

北上「いやいや、これは革命だよ。衝撃だよ提督。誉めてつかわそう」

提督「そりゃどーも」

ほんとにそうかは知らないが妙に納得できた。
187 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:06:28.82 ID:rL+1COZK0
北上「それ貸して」

提督「ほいよ」

北上「サンキュ」

鎮守府の辛い食べ物は基本的に甘い方に寄せてある。辛いのが好きな人は自分で調整する必要があるのだ。

提督「…振りかけすぎじゃね?」

北上「辛くないカレーなどカレーにあらず」

提督「熱いのダメで辛いのはいいのか」

北上「夏バテ防止なんでしょ?ほら提督も1口」

提督「…おう。かっら!なんらこへ!!」

北上「え、そんなに?」

もちろん嘘。スプーンで掬ったところには辛い粉を沢山ふりかけただけだ。
188 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:08:34.29 ID:rL+1COZK0
北上「やれやれ。美少女との関節キッスにそんな反応をしている様じゃあケッコンできんぞ〜」

提督「あぁどうやら刺があるらしい。ったく、熱いの苦手でなんでこの辛さがいけんだよ」

北上「そりゃ熱いのは苦手だけど人並みだよ。特別苦手ってほどじゃない」

提督「みたいだな、少なくとも猫舌じゃなさそうだ…ふぅ、ちょっと水もらってくる」

北上「いってら〜」

無様に敗走する提督を眺めつつカレーを咀嚼する。辛いもの食べるとホントに顔も辛く、いや赤くなるんだな。

汗は健康によいぞ〜私はかきたくないけど。

実際最初は刺激物に対しての警戒心が解けなかった。猫的には毒物も同然だし。

でも慣れてみるとこれが中々癖になる。これだけ色々なものが食べれるとは人間って便利だねえ。
189 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:09:09.53 ID:rL+1COZK0
提督「花壇の方はどうだった?」

北上「あ〜あれね、もう少し植物に関して教えてあげた方がいいと思う」

提督「なんか不味かったのか?」

北上「色々と」

提督「マジか、じゃあ頼むわ」

北上「報酬を弾め報酬を〜」

提督「子供たちを育てる事は仕事ではなく責務である」

北上「それ場所が場所なら炎上発言だよ」

提督「これ以上熱くなられちゃ敵わんな」

北上「鉢とか諸々の道具とアイス人数分を要求する」

提督「考えとくよ」
190 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:09:43.31 ID:rL+1COZK0
提督「何だかんだで好かれてるな、駆逐艦達には」

北上「何でだろうねぇ。原因が分からないと対処できないよ」

提督「対処って」

北上「群がられるのはウザイ」

提督「読書の邪魔だもんな。でも退けとは言わない」

北上「幼さは武器だよ。大体の動物は小さい時可愛いと思わせる造形をしてるんだ。そうする事で保護欲を掻き立てるわけ」

提督「守護らねばってか、なるほどね。上手いこと出来てるもんだ」

北上「…まあ邪魔とは言えないよね」

提督「そうだなあ。俺も仕事邪魔されてもなんか許しちゃうし」

北上「提督はむしろ仕事邪魔してほしいんでしょ〜に」

提督「おっとそれ以上は口にするべきじゃないな。命に関わるぜ〜」

北上「おぉ怖い怖い」
191 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:10:09.16 ID:rL+1COZK0
「「ごちそうさま」」

提督「さって、そろそろ演習が戻ってくる頃か」

北上「よかったの?提督が指揮しなくて」

提督「俺が指揮できない時の為の演習さ」

北上「なるなる。じゃあ向かいに行ったら?大井っちもいるし」

提督「…何で、あいつの名前が出てくんだよ」

北上「またまたぁ〜」
192 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/04(金) 01:10:36.86 ID:rL+1COZK0
北上「さて、邪魔者は消えましょう」

提督「なんだよ」

北上「大井っちにパフェでもご馳走したら?」

提督「それは、まあ悪くはないな」

北上「でしょ」

提督「でもお前がいた方がもっといいだろ」

北上「そのいいじゃダメでしょ〜に。んじゃね」

提督「はいはいわあったよ」

まったく素直じゃないね2人とも。

私の舌は、もっと甘い物を求めているのだよ。
193 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:35:49.01 ID:1hZo0SAP0
21匹目:猫と糸玉



猫は動くものが好き。

コロコロと転がるものが好き。

ところで糸玉ってちょっと引っ掻いたらすぐバラバラになりそうな気がするけどそこんとこどうなの?



球磨「いいものを買ってきたクマ」

多摩「出オチすぎるにゃ…」

球磨「糸玉クマ」

多摩「見りゃわかるにゃ」

球磨「人間にも程よいサイズのものにしたクマ」

多摩「無駄な気遣いすぎるにゃ」

球磨「600円もしたクマ」

多摩「どこで買ったんだにゃ…」
194 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:36:25.57 ID:1hZo0SAP0
球磨「まあ私が何をしたいか、薄らとわかってきたと思うクマ」

多摩「薄れ用がないほどにハッキリくっきりと見えるにゃ」

球磨「前々から思っていたクマ。多摩は猫成分が足りない、と」

多摩「猫じゃないにゃ」

球磨「え、今そこを否定するクマ?」

多摩「いや割と最初から言ってるにゃ」
195 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:37:19.06 ID:1hZo0SAP0
多摩「多摩はあくまで言動からほのかに感じる猫っぽさを目指してるんだにゃ。そんな露骨にあざとい反応はしないにゃ」

球磨「サラッととんでもねえ事カミングアウトされたクマ」

多摩「和の美にゃ。奥ゆかしさにゃ」

球磨「語尾ににゃーとか付けといてよくそんな事が言えるクマ」

多摩「ちなみに私が語尾をとると見た目は若いけど3桁は生きてるような妖怪的な印象を受けると言われた。妙に納得した」

球磨「確かに納得したクマ」
196 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:38:05.26 ID:1hZo0SAP0
球磨「なぜ私は語尾をとるとイケメンと言われるのだ」

多摩「球磨姉は元からイケメンにゃ。クマが邪魔でそう言えないだけにゃ」

球磨「複雑な気分クマ」

多摩「私は球磨姉と違って語尾を忘れたりしないにゃ」

球磨「私はこんなものに特に思い入れはない。出来れば無視したい」

多摩「そうもいかんにゃ」

球磨「何故だ」

多摩「さぁにゃ。妖精さん辺りの仕業じゃないかにゃ」

球磨「難儀な事だ」

多摩「語尾」

球磨「クマ」
197 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:38:42.83 ID:1hZo0SAP0
球磨「ではこれを放ってみよう」

多摩「そこに戻るのかにゃ」

球磨「原点にして頂点クマ」

多摩「意味がわからんにゃ」

球磨「玉はお気に召さないクマ?多摩なのに」

多摩「なんかすっげぇイラッとしたにゃ」

球磨「そんなあなたにこれクマ!」

多摩「だからいらねーにゃ」
198 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:39:30.05 ID:1hZo0SAP0
球磨「糸の方がいいクマ?」

多摩「そういう事じゃないにゃ」

球磨「ちなみに球磨が1番興奮する糸は水着の糸クマ」

多摩「それは紐にゃ。というか去年その大好きな糸を引いたせいで大井に半殺しにされたの忘れたかにゃ」

球磨「大丈夫クマ」

多摩「何がにゃ」

球磨「今年は大井は狙わないクマ」

多摩「そういう事言ってんじゃねーにゃ。エロ親父かにゃ」
199 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:40:31.85 ID:1hZo0SAP0
球磨「さあ見せてやるクマ。球磨の豪速球を」

多摩「そんなもん猫は追わないにゃ」

球磨「そうなのか?」

多摩「緩やかに曲線を描くように放るか転がすのがいいにゃ」

球磨「ほほ〜う随分詳しいクマァ。なんでだろ〜クマ」

多摩「…ちょっとそれ貸すにゃ」

球磨「おやおや、何だかんだ言っても興味しんしンッ!」バシッ

多摩「これが豪速球にゃ」
200 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:41:50.91 ID:1hZo0SAP0
球磨「痛てぇクマ。糸なのに全然柔らかくなかったクマ」

多摩「豪速球を猫が追わないのはわかったと思うにゃ」

球磨「砲撃くらい恐ろしいクマ」

多摩「分かったらそれは鳳翔さん辺りに譲ってさっさと「オラァ!!」にゃんのぉ!!」

球磨姉が投げた不意打ちの豪速球は、残念ながら多摩姉に躱された。

さてこの場合何が残念かと言うと先程から二人の微笑ましくもやかましい応酬を聞かされながら座って本を読んでいた私がその軌道上にいる事なのだ。

直前にオラァとか聞こえたおかげで目で捉えてはいるので防ぐのは容易なんだけど、

まあ今は丁度と大井っちが、詳しく描写するとそれこそ目にも留まらぬ早さでサッと魚雷を1本、まさしくバッターのように構えた大井っちが、隣にいるので

後は任せてしまおう。
201 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:42:24.62 ID:1hZo0SAP0
提督「ねぇ、何この報告書」

吹雪「壁の修繕費だそうです」

提督「いや、だそうです って言われてもさ。はい出しますってならないでしょ」

吹雪「何でも壁に穴が空いたとか。3枚ほど」

提督「え、何。しかも3枚なの?」

吹雪「貫通したんですって。隣の部屋まで」

提督「いや、なんなの?俺の知らない所で内乱とかあったわけ」

吹雪「これでも私達戦艦ですし。ちょっとした喧嘩もまあ内乱みたいなものですよね」
202 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:43:19.26 ID:1hZo0SAP0
提督「何怖い事サラッと言ってんの。怖いよ。あとこのバケツ2個はどこに消えたの」

吹雪「球磨さんと多摩さんにぶっかけときました」

提督「アイツらかよ!だと思ったよ!書類に球磨型と阿賀野型の部屋の壁って書いてあるもん!その時点でほぼ分かるもん!つか大井だろもう!」

吹雪「さっすが司令わかってるぅ↑」

提督「なんでお前は楽しそうなの!」

吹雪「初期艦ですから」フンスッ

提督「慣れすぎだよ環境に!剛の者だよ流石鋼鉄少女だよ!」

吹雪「ところでネジが尽きました」

提督「いやもう今はそれどころじゃえ…マジで?」

吹雪「夕張さんから探さないでくださいって書いた手紙を預かってます」

提督「」



なんて会話が、扉の向こうから聞こえるのだが。

北上「…入りにくいなぁ」

ネジの行方は、実は心当たりがあったりするし。
203 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/05(土) 01:45:17.93 ID:1hZo0SAP0
熟れたというか、擦れた吹雪好き

猫にした意味が薄れてきてので何とかしたい
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 02:02:57.13 ID:gSjkqhiI0
そこはあれだな、皆出払ってて一人でいるときにふと目に入った糸玉をたしたしやる北上さんとかをだな。
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 14:50:35.99 ID:tgfgbmMx0
1さん1さん
駆逐艦を戦艦って間違ってますよ(小声)
せめて軍艦に……

いつもすてきな更新乙ですよ
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 21:28:40.26 ID:y0LBX9oJo
おつにゃん
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 21:34:20.59 ID:+aHIT7il0
水着シーズンですよ
引っ張る紐には困らない
208 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 02:16:44.90 ID:d9g64t8s0
戦闘艦の略という事で…

起きたら、起きたらいっぱい書くんだ
水着はまたいずれ
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 13:51:37.06 ID:nx3y2GHTo
>>205
駆逐艦は軍艦じゃないんだなぁ、これが。
少なくとも旧帝国海軍における「軍艦」は
・戦艦
・巡洋艦
・練習戦艦
・練習巡洋艦
・航空母艦
・水上機母艦
・潜水母艦
・敷設艦
で、駆逐艦や潜水艦は軍艦じゃなく「艦艇」。
なお昭和17年までは海防艦も軍艦だったので「子日敬礼事件(子日タメ口事件)」のようなことも起こっている。
210 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:27:33.89 ID:0jHACIMi0
はえー、リアル艦コレの知識なんて瑞雲が崇め奉られてるくらいしか知らないので勉強になる
211 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:28:19.07 ID:0jHACIMi0
22匹目:猫の目

22

ニャンニャン。猫の数字だ。

さて少し長い話になる。

猫の尻尾に例えるとシャム猫くらい。

分かり辛い?


212 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:28:59.58 ID:0jHACIMi0
北上「眩しいなぁ」

海上。それは不思議な空間だ。私達にとって。

人では決して理解できない。提督ですらも、それを分かってはいないだろう。

無理もない。

例えば、猫の見ている世界を想像してみろ、と言われて何を思うだろう。

視線を低くしてこれだと思うだろうか。

それは違う。

猫としての記憶がある私だから言える。それは説明も、理解も出来ないものだ。

目に写り、耳に入り、髭で感じ、鼻で嗅ぎ、脳が認識し作り上げるその世界はその生き物だけの世界だ。

そこには理解も変換も互換もない。ただその世界がその世界として存在するのみだ。
213 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:29:53.36 ID:0jHACIMi0
一体どれだけの人間がそれを想像したことがあるだろう。

私達艦娘は、1人で一つの船なのだ。

本来は幾百人もの人間が必死になって動く事で初めて機能する巨大な建造物を僅かに1人の体で体現している。

電探で感知し艦載機で見て通信機で話し動力源を作動させ舵を切り砲塔を動かし弾丸を装填し魚雷を発射し、

敵を討つ。

それら全てを1人で行う。

北上「おっと」

少し波に足を取られる。

この体制を保つ動作ですら、本来どれほど大変な作業なのか。

一体どうしてこれを人が理解できるというのだろう。

別にどちらが優れているとか、同じ姿をしていても結局は兵器であるということを嘆いているとか、そういう話ではない。

ただ、違うんだ。

だから、私が私達と、艦娘と違うのもまた、当然の事なのだろう。
214 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:30:47.48 ID:0jHACIMi0
瑞鶴「翔鶴姉ぇ、やるよ!艦首風上、攻撃隊…」
翔鶴「全航空隊!」

「「発艦始め!」」


2人の弓から放たれた矢はすぐさま無数の艦載機となり編隊を組みながら敵機との交戦に入る。


瑞鶴「ちっ、取りこぼした!」

制空権は確保。だが残った敵機がこちらに攻撃を仕掛けてくる。

秋月「まかせて!やらせは、しません!」

対空の申し子の射撃がそれらを正確に撃ち落とす。

僅かな数では彼女の弾幕を超えることは出来ない。

瑞鶴「よし!重巡、軽巡撃破!」

遠くで水柱が幾つか上がる。彼女の放った艦載機が敵を撃破したようだ。

大井「こっちも負けてられないわね。北上さん!しっかり見ていてくださいね」

大井っちが敵に向かって魚雷を放つ。
215 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:31:24.55 ID:0jHACIMi0
大井「敵空母沈黙。MVPはいただきよ!」

瑞鶴「なっ!誰が渡すもんか!翔鶴姉いくよ」

翔鶴「ちょっと瑞鶴、落ち着いてキャァっ!」

ズドン、すぐ近くで水柱が上がる。

例え小さくても戦艦の放つ砲弾による衝撃、音は死を予感させるには十分なものだ。

そのはずだ。

瑞鶴「わあびっくりした」

大井「まったく。お喋りなんてしてるからよ」

瑞鶴「アンタが言うなアンタが!」

秋月「皆さん集中してくださ〜い!」

でも、そんな事は無い。
216 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:32:25.14 ID:0jHACIMi0
金剛「オーケー!次はこっちの番ネ、ファイヤー!!」

流石は1軍戦力。確実に敵を沈めていく。

金剛「テイトクゥ!見ていてくれましたかー!」

提督『見てねえ、つか見れねえよ。後うるさい、砲撃も声も』

金剛「なぁ!?」

北上「ちょ、金剛さん!」

金剛「ハイ?」

ガインと嫌な金属音がした。今のは直撃じゃ…

金剛「シット!テイトクとの通信を邪魔するなんて、許さいネ!」

北上「だ、大丈夫なの?」

金剛「こんなものサッカショウデス!」

サムズアップ。

しかしサッカショウ?あぁ擦過傷か。何故かすり傷じゃなくそっちを覚えているのか。
217 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2017/08/06(日) 16:32:59.09 ID:0jHACIMi0
大井「やりましたよ北上さん!」

北上「あ〜はいはい見てたよ、ん?」

耳がピクッと動く、なんてのは今じゃ比喩表現になってしまうのか。

でも感覚は覚えてる。

二時方向からだ。敵の砲撃音。

北上「あれか」

目を望遠レンズから人間の目に戻す。

あの軌道なら…

北上「大井っち、右に迂回して!」

大井「は、はい」

こちらも大井っちと対象に動く。

丁度、二人の真ん中に砲弾が落ちる。

大井「流石です北上さん!」

北上「いいから敵敵…」
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