緒方智絵里「あなたと過ごす、特別で怠惰な一日」

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45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:48:06.04 ID:rHT/Celd0
恐る恐ると智絵里は尋ねる。Pの目を真っ直ぐと見つめつつで。


それを聞くとPはばつの悪そうな顔をした後、後頭部を乱雑に掻き毟った。


「……一応言っておくが、胸だとかそういう部分じゃないぞ」


「は、はい。じゃあ、どこを……?」


「まぁ、目だな。智絵里の目をジッと観察したかったんだ」


お前の目を見ていたい。きっぱりとPは悪びれもせずにそう言い切った。


意外なその答えに、智絵里はきょとんとして目をぱちくりとさせた。


「あの、私の目なんて見て……楽しい、ですか……?」


「楽しいかどうかは分からないが……多分、良いと思った。だから、やってみたかったんだ」


多分、良いと思った。素直なまでの彼からの言葉。


確かに、楽しいかどうかはPの言う通りで分かりはしない。


けど、何となく……響きは良い感じに聞こえてしまう。


そんな風に、智絵里も思えてしまった。


46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:48:39.23 ID:rHT/Celd0
「中々こういう機会も無ければ、じっくりと目を見つめるなんてできそうに無いからな」


「……確かに、そうですね。普段のアイドル生活だと、できないですね」


「そうだろ。だからこそ、現実にしたいじゃないか」


そう言うと、Pは左手をスッと動かし、今度は智絵里の右頬にへと触れる。


両頬をPの手で固定され、こうなった以上は彼からは逃げる事はできない。顔も逸らせない。


そんな状態の智絵里に、Pは顔をグッと近づけて迫った。


彼女の目をより見やすい位置で観察する為に。


「という訳だから、辛いかもしれないが……目は開けたままでいてくれ」


「……分かりました。プロデューサーさんがそうしたいのなら、私はいいですよ」


智絵里が微笑みながらそう言うと、Pは彼女の目を、その瞳の奥底まで見てしまいたいという思いで見つめる。


視界いっぱいに広がる智絵里の目の中。普段の生活の中ではまず見られない景色。


黒く淀んで濁った色を見せ、その中に僅かに灯った淡い光。


この世にあるどんな宝石よりも、Pは今見ている彼女の目の方が綺麗だと思えた。


47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:49:08.16 ID:apSscRn50




















































































48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:49:30.67 ID:rHT/Celd0
智絵里の感情に合わせてころころと変化する色合いも素晴らしい。


まさに、これはPにとってすれば芸術品の一種だと言っても過言ではなかった。


「あの、どう……ですか?」


「うん?」


「私の目を見てみて……楽しい、ですか?」


智絵里はそう言って、二度目の問い掛けをPに向けて口にする。


実際に見てみてどうなのかと気になっている様子だった。


「あぁ、楽しいな」


そしてPは当然だと言わんばかりにそう答えた。


「こうして観察しているだけでも、かなり楽しいよ」


「……なら、良かったです」


「ただ、一つだけ……」


49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:49:55.11 ID:apSscRn50




















































































50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:50:01.15 ID:rHT/Celd0
「……?」


「こうして俺が観察している間、智絵里を暇にさせてしまうのが欠点だな……」


そう言うとPは一旦自分の顔を智絵里から離し、明後日の方角にへとため息を吐いた。


「何もできないで見られているだけじゃ、つまらないよな?」


「……そうでも、無いですよ」


「……えっ?」


Pからの言葉を、智絵里はふるふると首を横に振って否定した。


「プロデューサーさんが私の目を見ている間、私も……じっくりとプロデューサーさんを観察できますから」


Pが智絵里の目を見ていたのと同様に、彼女もまた、間近に迫ったPの目を見ていた。


いや、目だけに留まらず、彼の顔の細部まで隅々と眺めていたのだった。


「だから、こうして座っているだけでも、楽しめてます」


51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:50:17.18 ID:apSscRn50




















































































52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:50:42.10 ID:rHT/Celd0
「……そうか」


しかし、Pは考える。果たしてこのまま続けていて良いものかと。


観察をしているのは、確かに楽しい。このまま何時間でも眺めていたいぐらいに。


だが、今日一日をこれだけに費やしてしまうというのは、いささか不毛に感じてしまう。


せっかくの智絵里と二人きりで過ごせる時間というのなら、尚更の事だった。


「そうだよな、うん」


「……? どうか、しました?」


「あぁ、いや……この後の事をちょっと考えていてな」


「この後の事……何か、良い事でも思いついたんですか?」


「うーん……良い事、というよりもいつも通りになってしまうかもしれないが……外にでも行かないか?」


「お出掛け……」


「そう。ずっと部屋の中にいる訳にもいかないし……どうだ?」


53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:50:55.82 ID:apSscRn50




















































































54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:51:11.84 ID:rHT/Celd0
「あっ、大丈夫です。どこだろうと、プロデューサーさんといられるのなら、私は楽しいですから」


「……分かった。ありがとう、智絵里」


「よし、じゃあ、そうしようか」と、予定を決め終えると、Pは再び自分の顔を智絵里に近づけて観察を再開する。


まだ観察したのはたったの数分程度。これではまだ彼は満足し切れなかった。今すぐに出掛ける事はできない。


そして智絵里にしたってまだ満足していない。


いつもは近くに他の誰かがいて見れない分、この場で十分にと見ておきたかった。


こうして、二人が満足して納得するまで、この観察のし合いは続けられた。


それまでに掛かった時間は、優に一時間を超えたという……。






55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:51:18.58 ID:apSscRn50




















































































56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:51:40.25 ID:rHT/Celd0



「あの、プロデューサーさん……そろそろ、休んだ方が……」


「いや、まだまだ大丈夫。それに、ゴールまであと少しだからな」


Pの事を心配してか、彼の背中に背負われた智絵里は気遣ってそう声を掛ける。


彼の家を出てから数分以上も、Pは動けない智絵里を背負ったまま、歩き続けていたから。


しかし、Pは『大丈夫』、『平気だ』と言って彼女の気遣いを黙殺した。


二人はこんなやり取りをしながらも、ある場所を目指していた。


ちなみに、流石に外出するとあってか、Pと智絵里もしっかりと着替えをしてから出掛けている。


Pはいつものきっちりとしたスーツ姿では無く、ラフなTシャツとジーンズという簡素な組み合わせ。


智絵里はというと、清純な白のワンピースで身を包み、日除けの為の麦わら帽子を被っていた。


57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:52:07.69 ID:rHT/Celd0
彼女を着替えさせたのは言うまでも無くPであるが、髪型は普段通りのツインテールでは無くて、下ろしたままのストレートの状態。


セットをしていない訳では無くて、出掛ける前に長い時間を掛けてとかしている。


一応、周りに智絵里だと気づかれない様にという変装の意味であった。


が、主な理由としては『Pがそのままの彼女を見ていたかった』と、いう意味合いの方が大きい。


「しかし……周りから見たら俺達、どんな風に見えるんだろうな」


「恋人同士……には、見えませんね。せいぜい、仲の良い兄妹でしょうか」


「それか、あれだ。親子に見えてるかもな」


「……えいっ」


「いたっ」


Pの言葉を咎めるかの如く、彼の頭頂部に智絵里のチョップが振り下ろされた。


非難の気持ちが籠っているせいか、それなりのダメージをPは受ける。


58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:52:31.30 ID:apSscRn50




















































































59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:52:44.39 ID:rHT/Celd0
「私が幼く見えるからって、意地悪な事を言わないで下さい」


「わ、分かった、分かった。ごめんな、智絵里」


自らの不満を表す様に、智絵里はそう言った後、ぷくっと頬を膨らませる。


背負っている為にそれを見る事は叶わないが、恐らくはそうしているだろうと思いつつ、Pは謝罪の言葉を口にした。


そして彼の家を出てから十分以上経った頃、二人は目的の場所にへと辿り着く。


その場所はPと智絵里、二人が良く足繁く通う事務所の近くにある公園だった。


「やっぱり、ここは静かでいいな。適度な広さもあるし」


「そう、ですね。私も……この公園はお気に入りです」


「俺達以外にも、結構来るみたいだぞ。……いつかファンの出待ちで溢れかえる公園にならないといいが……」


「……そうなったら、もう利用できませんね」


60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:53:11.46 ID:rHT/Celd0
「そうだな。そうならない事を切に願っておくか」


そんな会話をしつつ、二人は公園の奥にへと向かって歩いていく。


道中、ここまでで何人かの人々に擦れ違う事もあったが、誰もPが背負っている少女をアイドルの緒方智絵里だと気づいた者はいない。


『疲れてしまったのか、兄の背中で休んでいる妹』と、そんな風に二人を微笑ましく思って過ぎ去るだけだった。


そうした事もあって、大した騒ぎも起こさずに二人は公園の奥にある原っぱにへとやって来た。


「あの……ここで、何を……」


「……まぁ、いつも通りの事を、な」


そう説明すると、Pは原っぱの中にへと足を踏み入れた。


草花を踏まない様にと、なるべく土の部分を選んでゆっくりと歩いていく。


彼が目指すのは、原っぱの中央付近に立っている木の根元。


ちょうど日が当たらず、木陰になっている場所に辿り着くと、Pは背負っていた智絵里をそこにへと下ろした。


61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:53:14.73 ID:apSscRn50




















































































62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:53:41.53 ID:rHT/Celd0
「暑いだろうから、智絵里はここで待っててくれ」


「え、あっ、はい」


Pはそう指示を出すと、智絵里の側から、木から離れて原っぱにへと戻る。


そして膝を屈めて姿勢を低くし、地面にある何かを探し始めた。


「……」


「……」


「……ふぅ」


「……」


黙々と、Pは静かに何かを探す。その後ろ姿を、智絵里も静かに見守っていた。


彼が今、何を探しているかなんて薄々と理解はしている。


63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:53:46.12 ID:apSscRn50




















































































64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:54:10.98 ID:rHT/Celd0
けれども、それを言ってしまうのは野暮だろうと。


そう思って彼女は口にはせずに、ただただ見守っているのだった。


だが、数分が経過しても探し物は見つからない。


その探し物は直ぐに見つかる時もあれば、全然見つからない場合もある。


今回は後者の方だったのか、Pは地面とにらめっこを続け、悪戦苦闘していた。


「……良い、天気」


ふと、空を見上げてみると、そこは雲一つない晴れ晴れとした世界が広がっている。


最近は夏も本番になってきて暑くなってきているが、この日はぽかぽかとした陽気の良い日だった。


辺りは喧噪も無くて、都内にいる事を忘れさせるそんな穏やかな世界。


それを確認すると、彼女はその視線を再びPにへと向ける。


65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:54:36.90 ID:rHT/Celd0
彼は腕で額の汗を拭いつつ、まだ探し物を続けている。


「……お散歩とか……したい、な」


こんなに陽気の良い日だったら、Pと並んで散歩をして、色々な場所を辿ってみたい。まだ知らない場所を巡ってみたい。


その方がPへの負担も少なく、選べる選択肢は今よりも多くなる。


しかし、今の自分は自らの意思で動く事のできない人形。


例えそう願っても、ルールを捻じ曲げなければ叶わなかった。


「……どうしよう」


自分から言い出した我が儘。自分自身で選んだ道。


ここまでの人形としての生活。不便な事が多かったけれども、悪い事ばかりでは無い。


少なくとも、ここに至るまでは十分に満足して、幸せだった。


しかし、これ以上の幸せを求めるとなると、人形でいる事は彼女にとって足枷にしかならなかった。


66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:54:41.52 ID:apSscRn50




















































































67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:55:02.39 ID:rHT/Celd0
だが、『ルール違反は許さない』と言った手前、それを口にするのは憚れた。


「今日は……うん、我慢しよう」


他ならぬ自分で選んだ道なのだから、貫き通そう。


そう思ってか智絵里は小さく、誰にも聞こえない様に口にした。


そして更に数分が経過し、それでも尚、Pは探し物を継続していた。


流石の智絵里も座り続けた為か、うつらうつらと眠気が差してくる。


気が抜けて、眠りに落ちてしまいそうになった、その時、


「智絵里。おい、智絵里」


「……ふぇ?」


側まで戻ってきていたPが彼女の肩を揺らし、眠ってしまいそうだったのを阻止したのだった。


「あれ……? いま、わたし……」


「ちょっと寝掛けてたな。もしかして、疲れたりでもしたか?」


68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:55:31.39 ID:rHT/Celd0
「い、いえ……そんな事は、無いです。ただ、ちょっと……」


「ちょっと?」


「……えっと、何でも……ないです」


寝てしまいそうだった理由を言おうとするも、そう言って智絵里は口を噤む。


ずっと座っていて退屈になり、眠気に負けそうになったとは言えなかったのだ。


「それよりもさ、ようやく見つけたんだよ。探してたアレをさ」


「見つ、けた……?」


「あぁ。ほら、手を出して」


そう言うも、Pは智絵里が手を動かせないのを思い出し、彼女の右手を取ってその上に探していた物を乗せる。


「あっ……四つ葉の、クローバー……」


彼女の小さな手の平の上、そこにはPがやっとの思いで見つけ出した四つ葉のクローバーがあった。


69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:55:45.48 ID:apSscRn50




















































































70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:56:02.24 ID:rHT/Celd0
「いやぁ、中々見つからなくてな。探すのに、結構な時間が掛かったよ」


Pはそう言いつつ、智絵里の横の空いている場所に腰を下ろす。


それからポケットからハンカチを取り出して、流れ出る汗を拭き取っていった。


「しかし、智絵里は凄いよな」


「えっ?」


「これだけのクローバーの中から四つ葉を探すのは大変なのに、それでもめげずに探し続けて、何本、何十本も集めるんだからな」


「そ、そんな事は……無い、です」


凄くなんてないと、智絵里は首を横に振って否定する。


四つ葉のクローバー探しは自分の趣味でしているから、大変になんて思いはしない。苦痛になんてならない。


だって、それに……


「あっ……」


71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:56:29.71 ID:rHT/Celd0
そこまで考えた所で、智絵里はある事に気づいた。そして思い出した。


今まで自分がどんな思いで、四つ葉のクローバー探しをしていたのかを。


「……ねぇ、プロデューサーさん」


「ん? どうした?」


「何で……私の我が儘に、これ程まで付き合ってくれるんですか?」


「何で……って」


「別に、無視して切り捨てても良かったのに……」


目を合わせず、少し俯き気味になって、智絵里はPに訴えかける。その様は、昔の彼女の姿を彷彿させた。


それを見てか、Pは一度ため息を吐いた後、


「切り捨てるとかは論外だな。そもそも、命令権を渡したのは俺だし」


と、はっきりとそう言った。


72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:56:55.99 ID:rHT/Celd0
「それにな……俺は智絵里の事が好きだからさ。どんな我が儘だろうと、お前の為なら叶えてやりたいんだ」


「プロデューサーさん……」


『あぁ、やっぱりか』と、智絵里は心の中でそう思った。


自分が四つ葉のクローバーを探し集めていたのは、自分の……自分以外の誰かの幸せを願っての事だった。


最近で言うのなら、Pの為を思って集めて、そしてしおりや色々な形にして渡していたのだ。


しかし、今回の我が儘―――人形にしてというのは、自分の為でも、Pの為のものでも無い。


そこに思いが込められてなければ、内容が伴わないのは必然だった。


それに智絵里は、今更ながらも気づいたのであった。


73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:57:21.61 ID:rHT/Celd0
「……ごめんなさい、プロデューサーさん」


「……何で、謝るんだ?」


「私……実は試したかったんです」


「試す……?」


「はい。私が何を言っても……プロデューサーさんは見捨てないでいてくれるのかを」


それを言うと、智絵里は顔を上げてPの目を真っ直ぐに見た。


「怖かったんです。いつかはみんなみたいに……プロデューサーさんが私を置いて、どこかに行ってしまうんじゃないかって」


「……だから、私を人形にしてなんて、無茶なお願いを?」


「……ごめんなさい」


智絵里はそう言ってから、ゆっくりと頭を下げた。


自分で決めた、自らに課したルールを破って、でだ。


74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:57:45.69 ID:apSscRn50




















































































75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:57:52.65 ID:rHT/Celd0
「でも、私……分かったんです。甘えているだけじゃ駄目なんだって。いつまでも、誰かを頼ってばかりじゃいけないって」


「智絵里……」


はっきりと自分の想いを吐露した智絵里。


そんな彼女を褒めるかの如く、Pは智絵里の頭を優しく撫でた。


「智絵里は偉いな」


「……え、えへへ」


撫でられた事で、智絵里は表情を緩ませてはにかんだ。


その屈託の無い笑顔に、Pも釣られて笑みを零してしまう。


「だから、その……プロデューサーさん」


「うん、何だ?」


「今からは……普通に接して下さい。私も……普段通りに戻りますから」


76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:58:26.39 ID:rHT/Celd0
そう宣言すると、智絵里はスッとその場に立ち上がる。


数歩ばかし歩いて木陰を出ると、振り返ってPを見て、


「人形の私は、ここで卒業します」


と、そう言ったのだった。


「……よし、分かった」


彼女の言葉を聞き、Pはそれを受け入れて強く頷く。


そして同様に立ち上がると、智絵里の側にへと駆け寄っていった。


「それじゃあ、ここからはどうする? クローバー探しを続けるか?」


「……いえ。今は、その……プロデューサーさんと、お散歩がしたいです」


「お散歩か、いいだろう。なら……」


Pは智絵里の左側に立つと、彼女の手を取ってギュッと握る。


ちょっとやそっとで離れてしまわない様に、互いの指を絡めてしっかりと手を繋いだ。


77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:58:31.19 ID:apSscRn50




















































































78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:58:54.51 ID:rHT/Celd0
「せっかくだし、これで行こうか」


「……はいっ」


その提案を、智絵里は満面の笑みで受け入れた。花が咲いた様な曇りの無い笑顔で。


それから二人は手を繋いだまま、何処かに向かって歩き出す。


目的地も無い、自由気ままなぶらり旅。


その先にある幸せを求めて、二人は並んで歩いていくのであった。






「あっ、そうだ、プロデューサーさん。あとで写真を撮ってもいいですか?」


公園を抜けた後、智絵里は上目遣いの目線でそう問い掛ける。


「ん? あぁ、いいけど……」


写真を取るぐらいなら別に構わない。


そう思って許可を出すも、どうにも嫌な予感がしてならなかった。


絶対に何か、悪い風に使う……そんな感じに思えてしまった以上、その使い道を聞かねばならなかった。


79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 14:59:02.86 ID:apSscRn50




















































































80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:59:19.16 ID:rHT/Celd0
「その写真、何に使うつもりだ?」


「もちろん、思い出として残しておきたくて」


「あぁ、そうか」


その答えを聞いてPはホッと安堵する。


自分が思い抱いたのは思い過ごしであり、杞憂であったのだと。


「それと……」


「えっ?」


しかし、智絵里の言葉はそれで終わりでは無かった。


「まゆちゃんに、自慢する為です」


ニヤリと、智絵里は先程とは性質の違う、あくどい笑みを浮かべてそう告げるのだった。


81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 14:59:46.38 ID:rHT/Celd0
「秘密にはしたくは無いので……今日一日であった事の全て、包み隠さず伝えておきたいんです」


「……送ってもいいけれど、あんまり煽り過ぎない様にな。そんな事すれば、後が怖いから」


「あははっ、分かってますから、それぐらい。安心して下さい」


「(……凄く、不安だ)」


智絵里のどす黒く淀んだ目を見て、Pはひっそりとそう思った。


そして、その予感は的中してしまう。


この日の夜、智絵里は事細かな詳細をメールに書き記し、何十通にも渡ってまゆにへと送付する。


それを見たまゆが嫉妬して、翌日に智絵里と同じ目の色をしてPに迫ったのは、言うまでも無かった。


まぁ、それでも……満更では無いと思えてしまうPなのであった。






終わり


82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 15:00:39.18 ID:apSscRn50




















































































83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 15:01:56.56 ID:apSscRn50




















































































84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 15:03:16.87 ID:rHT/Celd0
以上になります

時間が無いのと、文字制限もあって、何か中途半端な感じは否めませんね

制限さえなければ、延々と五万字ぐらいは智絵里とのいちゃラブを書いていたかもしれない

やっぱり智絵里は可愛い、最高

85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 15:04:16.83 ID:apSscRn50




















































































86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/14(金) 15:06:56.49 ID:rHT/Celd0
本当ならこれ以外にも着替えとかをじっくりと書いていたかったけど、

全てを注ぎ込むと絶対に制限を越える為、あえなくカットする事に

そもそも時間がギリギリすぎる計画だったので、次回があるのならもう少し、余裕を持って参加しようと思います

それでは依頼を出してこようと思います

ここまで読んで下さった方々、ありがとうございました

87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 15:07:05.66 ID:apSscRn50




















































































88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 15:07:57.31 ID:apSscRn50




















































































89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 15:09:09.14 ID:apSscRn50




















































































90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 15:09:54.95 ID:apSscRn50




















































































91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/14(金) 15:10:30.41 ID:apSscRn50




















































































92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/14(金) 15:48:02.56 ID:lQ1HcZj/O
おつ
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/14(金) 17:06:30.72 ID:m+k7T9gXo

まゆの誕生日は智絵里へのリベンジかな?智絵里とまゆのドロドロの抗争良いな
今の所名前が出ていて誕生日が未だなのは凛、まゆ、加連、夕実、ありす、文香、藍子…ほぼ全員か

この世界観でmasqueradeは冗談抜きで死よりも悲惨なことになりそう、李衣菜が…R-18とか好きにしても良い気も
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/14(金) 17:58:36.96 ID:RlaMPKgKO
乙かわいい

夕美ちゃんは一体なんなんだ
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