西住みほ「いつの間にか私が不良として認知されていました」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/13(木) 00:18:35.36 ID:3xMkPYF8o
華「この行動が原因で黒森峰は敗戦しているのですね」

麻子「そうらしい」

華「勝利よりも仲間を選んだわけですか」

沙織「西住さんに問題がないなら、なんで転校してきたのよぉ」

麻子「詳細は本人に聞いてみなければ分からないが、戦車道が関係しているのかもしれないな」

華「戦車道も武芸であり、それぞれに流派があります。きっと学校によっても特色があるはず」

沙織「何がいいたいの?」

華「西住さんは黒森峰の戦車道についていけなくなったために、戦車道から退いてしまったかもしれないということです」

華「もちろん、退いたのは本人の意志かどうかにもよりますが」

麻子「確かに。戦車道を辞めるという条件での転校だったのかもしれないな」

沙織「戦車道したいのにできなくなったってこと?」

麻子「憶測ならいくらでも語ることができる。嫌になって辞めたのか、続けたいのに辞めなければいけなくなったのか」

華「後者だとしたら辛いでしょうね。わたくしも華道を取り上げられてしまうのは悲しいですから」

沙織「西住さん、悩みごとが多いのかなぁ」

麻子「悩みを話せる相手が一人もいない、という悩みもあるだろうしな」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/13(木) 00:31:48.12 ID:JrIw0+14O
麻子が天使だ
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/13(木) 00:33:44.18 ID:3xMkPYF8o
沙織「そうだよねぇ……」

華「大洗にも戦車道が選択授業であれば確かめられるのですが」

沙織「どうやって?」

華「戦車道を一緒に選択しましょうと誘ってみるんです。それで西住さんが嫌だと言えば、転校してきた理由がはっきりするわけですから」

沙織「なるほどね。同じ選択科目を受ければ一緒になる時間も多くなるし、西住さんの女子力も飛躍的にアップするもんね」

華「女子力はどうか分かりませんけど、少なくとも戦車道を完全に断ち切っているかどうかは分かります」

沙織「自分でやめたーって思っても、どこかで後悔しているときってあるもんね。新しい彼氏と付き合ってみたら、前の彼氏のここがよかったなぁって気が付くみたいな」

華「付き合ったことあるんですか?」

沙織「別にいいじゃない!」

麻子「そもそも大洗の戦車道は廃止になって20年以上経過している。今年いきなり復活する可能性はゼロに近いな」

沙織「そっかぁ」

華「戦車道部を作ってみるのもいいかもしれませんね」

麻子「タンカスロンでもする気か」

沙織「なに? そのカンタスロンって」

麻子「タンカスロンだ。タンカスロンというのは――」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/13(木) 01:06:26.21 ID:ZVxYBfH9O
みてるぞ
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/13(木) 02:27:55.92 ID:IxHJYIuGo
期待
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/16(日) 17:59:50.87 ID:TNSMUpf8o
まだかな
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 21:56:56.07 ID:C1X8b+l3o
秋山宅 優花里の自室

優花里「結局、みほさんを終始追跡しただけで終わってしまいましたぁ」

優花里(まともな友達なんて小学校以来いませんし、憧れのみほさんに声をかけるなんて無理かもしれません)

優花里「良い呼称があればいいのですが……」

優花里「何か……」

『今週の戦車ー!! 戦車大好きなテレビの前の君、今週も素敵な戦車を紹介するよー』

優花里「お! もうそんな時間ですか」

『今日の戦車はこれ! 第二次世界大戦における日本軍の主力戦車の一つ、九七式中戦車チハです』

優花里「チハは確かにすごい戦車ですよね」

『マレー作戦などで大活躍。マレーの虎こと山下殿の指揮下でその性能を遺憾なく発揮し――』

優花里「山下……殿……? おぉ!! それですぅ!! その呼び方がありました!!」

優花里「西住殿……。西住殿! いい! 実にしっくりきます!!」

優花里「相手の尊厳を保ちつつ、親しみもあり、尚且つ戦車道を嗜んでいたみほさんを呼ぶときになんの違和感もありません!!」

優花里「西住殿!! にしずみどのー!!」キャッキャッ

好子「ゆかりー? 何さわいでるのー?」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 22:09:51.75 ID:C1X8b+l3o
寮 みほの部屋

みほ「ふぅ……。よし。みんなの名前と誕生日はちゃんと覚えられた」

みほ「あとは……あとは……。どうしよう……」

みほ(結局、転校してから話せたのって、武部沙織さんだけだし)

みほ「そういえば、武部さんはどうしてあのとき声をかけてくれたんだろう)

みほ「困ってるかどうか訊ねてきたけど、私ってあの時困ってるように見えたのかな」

みほ「はっ……!?」

みほ「も、もしかして、私……武部さんと友達になれるチャンスを……不意に……?」

みほ「見ず知らずの相手を気遣えるぐらい優しい人なら、きっと良い友達になれたのに……」

みほ「どうして私っていつもこうなんだろう」

みほ「こんな私だから……戦車道から……」

みほ「ボコ……」ギュゥゥ

みほ「戦車道のことは忘れないと。私はもう戦車に乗ることなんてないんだから」

みほ「そうだよね、ボコ?」

みほ「……おやすみ、ボコ」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/16(日) 22:11:42.14 ID:C1X8b+l3o
訂正

>>38
みほ「も、もしかして、私……武部さんと友達になれるチャンスを……不意に……?」

みほ「も、もしかして、私……武部さんと友達になれるチャンスを……ふいに……?」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 22:19:38.38 ID:C1X8b+l3o
翌日 大洗女子学園 2年A組 教室

みほ「……」


沙織「うーん……」

華「やはり声をかけてみませんか? 沙織さんも西住さんのこと気になるのでしょう」

沙織「そりゃ、麻子の話を聞いた後だし、気になるけどさぁ」

華「怖いのですか」

沙織「だって、まだ確証が……」

華「そんな人には到底みませんよ」

沙織「そんなのわかってるもん」

華「では……」

沙織「まって、心の準備が」

華「沙織さんっ」


みほ(なんだろう……。私のこと噂してるのかな……)

みほ(ボコが好きって言ったのは、逆効果だったなぁ)
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 22:25:17.26 ID:C1X8b+l3o
昼休み 廊下

みほ(今日も食堂の隅で食べよう……)

「あの子でしょ?」

「そうそう」

みほ(え……?)

「黒森峰から転校してきたんだって」

「黒森峰って名門だけど、生徒は不良が多いって聞いたことあるよ」

みほ(わ、私のこと……?)

「知ってる。黒森峰の生徒ってみんなお酒飲んでるとか」

「えー? 完璧に不良じゃん」

みほ(確かにみんなノンアルコールのビールを毎日飲んでるけど……)

「やっぱり西住さんも不良なんじゃない?」

みほ「うぅ……」ダダダッ


優花里「あぁ……」

優花里「西住殿……走り去ってしまいましたぁ……。今日も一人でご飯を食べましょう」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 22:37:44.61 ID:C1X8b+l3o
食堂

みほ(いつの間にか私って不良になってたんだ……)

みほ(益々、友達なんてできないよぉ)

みほ「はぁ……」ピッ

カシャン

みほ「……あれ!? カツ丼!?」

みほ「普通の定食がいいんだけど……えっと……返金はできないのかな……そもそも誰に言えば……」オロオロ

あや「すみませーん。まだですかー?」

みほ「あ、ご、ごめんなさい!!」テテテッ

梓「ちょっと、今の先輩だよ?」

あや「そーなの?」

あゆみ「入学式のとき、あんな人いなかったし」

優季「あゆみすっごーい。一年生の顔、みんなおぼえてるんだぁ」

桂利奈「綺麗な人だったね」

紗希「……」コクッ
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 22:46:41.02 ID:C1X8b+l3o
カエサル「くそっ……!! なんてことだ!!!」ダンッ

エルヴィン「取り乱してどうした。お前らしくもない」

カエサル「我が軍の補給が途絶えてしまったのだ……」

おりょう「それは一大事ぜよ」

左衛門佐「して、何が途絶えたのだ」

カエサル「既に焼きそばパンが……事切れていた……」

エルヴィン「なんだと!!!」

おりょう「くっ……!! どこの藩の仕業ぜよ……!!」

左衛門佐「最後に購入したものを打ち首じゃー!! 皆の者、出会え―!!!」

カエサル「誇りを取り戻せ!!! ローマ帝国の名の下に!!!」


みほ(いいなぁ……。あんな友達がいたらなぁ……)

みほ「はむっ……」


華「結局、間違えた食券で済ませてしまうようですね」

沙織「あそこで返金してもらえるよって言ってあげればよかった……」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 22:52:35.58 ID:C1X8b+l3o
廊下

みほ(次の授業、なんだっけ)

みほ「あ。あの雲、ボコに似てる」

みほ「かわいい」

ドンッ

みほ「あぅ!?」

ナカジマ「おっと」

みほ「いたた……。す、すみません!」

ナカジマ「いえいえ。怪我はないですか?」

みほ「私は大丈夫です。ええと、貴女は?」

ナカジマ「私も大丈夫ですよ。けど、わき見運転には注意してくださいね」

みほ「は、はい」

ホシノ「どうしたのー?」

ナカジマ「ごめん、ホシノー。今行くー」

みほ「私も教室に戻らないと」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 22:56:23.45 ID:C1X8b+l3o
教室

みほ「次は数学……」ゴソゴソ

バサッ

みほ「あぁ……教科書、落ちちゃった……んー……」

みほ「とれた」

バサバサ……

みほ「あぁ……ノートが……」

ガシャン

みほ「あぁ……ペンまで……」

みほ「はぁ……」


沙織「もしかして、西住さんって結構ほっとけないタイプかも」

華「もしかしなくてもそうではないですか」

沙織「……」

華「どうします?」

沙織「わ、私に聞かないでよ」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 23:02:58.53 ID:C1X8b+l3o
放課後 通学路

みほ「今日も誰とも喋れなかったなぁ……」

みほ「はぁ……。最近、溜息ばっかり……」

みほ「あ、黒森峰でも同じだった」

みほ「あはは……。はぁ……」


沙織「一人で帰るみたいだね」

華「声をかけますか」

沙織「……そうだね。よし、行こう!」

華「はいっ」


みほ「……ん? あの、どうしたの?」

紗希「……」


華「あの方は誰でしょう?」

沙織「一年生っぽいね」

華「お知り合いでしょうか?」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 23:06:20.02 ID:C1X8b+l3o
みほ「迷子かな?」

紗希「……」

みほ「ええと、同じ制服だから、大洗の生徒、だよね」

紗希「……」

みほ「なにしてたの?」

紗希「探してる」

みほ「探してる?」

紗希「でも、見つからない」

みほ「大事なもの?」

紗希「……」コクッ

みほ「そうなんだ……。ええと、迷惑じゃなければ一緒に探すけど」

紗希「……」

みほ「一緒に探してもいいかな?」

紗希「……」コクッ

みほ「ありがとう。それで何を探してるの?」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 23:14:13.04 ID:C1X8b+l3o
紗希「……」

みほ「そっちにあるの?」

紗希「あるかもしれない」

みほ「そうなんだ。ええと、形は?」

紗希「これぐらい」

みほ「75mm砲弾ぐらいの大きさ……。それならすぐに見つかるかも」

紗希「……」

みほ「どんな色かな?」

紗希「色々」

みほ「色々? なら、迷彩色なのかな……。それなら分かりにくくなるかも……」

紗希「……」

みほ「とにかく探そう」

紗希「……」コクッ

みほ「大きさが大きさだし、道に落ちていれば誰かが交番に届けてるかも。一度、交番に行ってみましょう」

紗希「……」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 23:21:05.84 ID:C1X8b+l3o
みほ「交番には届けられてないみたい」

紗希「……」

みほ「だったら、大きな道に落ちている可能性は排除してもいい。人目につかない場所を重点的に捜索すれば発見できるかもしれない」

みほ「この辺りに公園はあるかな?」

紗希「……」

みほ「あっち?」

紗希「……」コクッ

みほ「そういえば、名前をまだ言ってなかったね。私は西住みほ」

紗希「さき。まるやま、さき」

みほ「まるやまさん、他に探しているものの特徴は?」

紗希「……」

みほ「名称はある? 俗称でもいいけど」

紗希「……」

みほ「……とにかく、公園に行きましょう」

紗希「……」コクッ
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 23:26:09.30 ID:C1X8b+l3o
公園

みほ「こっちはどうかな」ガサガサ

紗希「……」ガサガサ

みほ「無い、か」

紗希「……」

みほ「こっちかも」ガサガサ

紗希「……」ガサガサ

みほ「うーん……。こっちじゃないのかな」

紗希「……」

みほ「公園じゃないなら……。人目につかない場所……林の中……。この近くに森林エリアはありますか?」

紗希「……」コクッ

みほ「そこへ誘導してください」

紗希「……」

みほ「行きましょう」

紗希「……」コクッ
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 23:35:16.83 ID:C1X8b+l3o


みほ「まるやまさん、そちらはどうですか?」

紗希「……」

みほ「目標物は発見できず……。もう少し、奥へ行ってみるべき? けど、時間をかければ日が落ちて益々捜索が困難になる」

紗希「……」

みほ「奥に進むなら増員しないと流石に効率が悪すぎる……」

紗希「……」

みほ「私には友達がいないから……。まるやまさん、今からお友達を呼べませんか? 応援が可能なら是非加わって欲しいんですけど」

紗希「……」

みほ「ダメですか」

紗希「……」コクッ

みほ「はぁ……。分かりました。次の手を考えます」

紗希「……」


華「話しかけるタイミングを逃してしまいましたね」

沙織「ここで話しかけたらあとをつけてたってバレちゃうよね……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 23:43:13.85 ID:C1X8b+l3o
みほ「いくら考えても、二人だけじゃ作戦は限られてくる。こうなったら時間の許す限りローラー作戦を実行するしか……」

紗希「……」

みほ「ケータイで現在位置を調べて……」ピッ

みほ「まるやまさん」

紗希「……」

みほ「今日は現在地から半径500メートルを捜索しましょう。それが時間的に限界の範囲です」

紗希「……」コクッ

みほ「それではローラー作戦を開始します」

紗希「……」

みほ「はぐれたら困るので一緒に行きましょう」

紗希「……」

みほ「絶対、見つけるから」ガサガサ

紗希「……」ガサガサ


優花里「何を探しているのでしょうか……。今更、声はかけられませんし、不審物を見つけたらそれとなく置いておきましょう」

優花里「私はこっちを捜索します、西住殿」ガサガサ
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 23:51:52.59 ID:C1X8b+l3o
大洗女子学園 正門

「さようならー」

みどり子「はい、さようなら。寄り道せずに帰るよーに」

杏「おつかれー、そど子」

みどり子「名前を略さないでください!! 会長、どこに行くんですか?」

杏「ちょっとねぇ」

みどり子「生徒会のお仕事、まだ残っているんじゃないんですか」

杏「まぁまぁ。小山と河嶋がなんとかしてくれるから」

みどり子「あのですねぇ。会長はこの学園艦を統べる存在であって――」

桂利奈「紗希ちゃーん!! どこー!!」

優季「もう終わりだよぉー」

あや「紗希ちゃーん!!」

杏「どうかした?」

梓「いえ、大したことじゃないんですけど、遊んでいる最中に友達がいなくなって」

みどり子「なにして遊んでいたのよ」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/16(日) 23:59:05.79 ID:C1X8b+l3o
生徒会室

柚子「桃ちゃん、履修選択説明会の資料」

桃「桃ちゃんと言うな。ありがとう、柚子」

柚子「成功するかな」

桃「してもらわねば困る。30名ぐらいは戦車道を履修してもらわねば困るんだからな」

柚子「そうだね」

桃「この学園を失くすわけにはいかないんだ……!」

柚子「そのためにも西住さんが戦車道を履修することは絶対条件なんだよね」

桃「頼るしかない。我々は素人なんだからな」

柚子「協力、してくれるかな」

桃「西住が不良生徒でなければ、いいんだが」

杏「かわしまぁ、こやまぁ」

柚子「会長? 用事があるんじゃあ……」

杏「ちょっと探しものがあるんだけど」

桃「探しものですか?」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 00:05:02.05 ID:agEJZSC8o
大洗女子学園 正門

麻子(保健室で寝過ごした……。今日も殆ど授業をサボってしまったな。また沙織に何か言われる)

麻子「今日は帰るか」

みどり子「冷泉さん」

麻子「なんだ、そど子」

みどり子「その名前で呼ばないで! それはそうと暇そうね」

麻子「帰宅するから暇ではない」

みどり子「ちょっと手伝いなさいよ」

麻子「何をだ」

みどり子「人探しよ、人探し」

麻子「誰か行方不明にでもなったのか」

みどり子「一年生の丸山紗希さんが見つからないのよ。なんでも同学年の子たちと学園内の探検を兼ねてかくれんぼをしていたそうなんだけど」

麻子「そうなのか。がんばれよ、そど子」

みどり子「冷泉さんも一緒に探すのよ!!」

麻子「なぜかくれんぼに付き合わされなくてはならないんだ」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 00:11:40.12 ID:agEJZSC8o


みほ「はぁ……はぁ……」ガサガサ

紗希「……」

みほ「ここもダメ……。もう日も落ちそうだし、これ以上の捜索は厳しい……」

紗希「……」

みほ「まるやまさん。ごめんなさい。今日はもう無理かも」

紗希「……」

みほ「こんなに暗くちゃいくら大きくても見つかりにくくなっちゃうし」

紗希「……」

みほ「だから、明日に……」

紗希「……」

みほ「まるやまさん……」

紗希「ありがとうございます」

みほ「ごめんなさい。力になれなくて」

紗希「西住先輩、ご迷惑をおかけしました」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 00:22:36.33 ID:agEJZSC8o
通学路

紗希「こっちなので」

みほ「うん。また、明日」

紗希「はい」

みほ「……」

みほ(まるやまさん、とても悲しい目をしてた……。きっとすごく大事なものだったんだ……)

みほ(落としたもの、どうしても見つけたかったんだろうな……)

みほ(落としたもの……見つからなかったら……拾えなかったら……)

みほ(拾うことが正しいのか正しくないのか、分からないけど……けど……)

みほ「どうしてだろう、後悔する気がする」

みほ「行かなきゃ……」

みほ「ここで行かないと、諦めたらもう見つけることが出来ない気がする」

みほ「大丈夫。ケータイのライトで照らせばまだ可能性はある」

みほ「バッテリー残量は十分にある。通話とかしないから、100%のまま」

みほ「同じ地点に戻って、半径1キロを捜索してみよう」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 00:28:30.26 ID:agEJZSC8o
大洗女子学園 正門

桃「やはりまだ寮にも戻っていないようです」

杏「これだけ探しても見つからないなんて……」

桂利奈「さきちゃぁぁぁん」

梓「泣かないで」

あや「私が提案しなきゃ……こんなことには……」

あゆみ「そういうの禁止だってば」

優季「どこにいったんだろう……」

柚子「会長。付近の方にも頼んで捜索してもらいますか?」

杏「大事にはしたくなかったけど、万が一も考えられるしな」

みどり子「冷泉さん、ちゃんとさがしたの?」

麻子「当たりまえだろ」

紗希「……」

あゆみ「紗希!?」

梓「い、いつから居たの!?」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 00:35:11.22 ID:agEJZSC8o
紗希「今、戻った」

優季「どこに行ってたのぉ? 心配したんだからぁ」

あや「そうだよぉ」

紗希「ごめんなさい」

桃「丸山。皆と遊んでいる最中に何故、姿を消した」

紗希「外へ探しに」

梓「隠れるのは学園内だけだって言ったじゃない」

紗希「誰も見つからなかったから」

桂利奈「見つかって、よかったぁ!」

杏「いやぁ、一件落着、だね」

桃「人騒がせだな。全く」

柚子「何事もなかったんだからいいじゃない」

麻子「私は帰るぞ」

みどり子「ええ。ありがとう」

杏「丸山ちゃん、結構汚れてるけど、どこ探検したの?」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 00:39:36.79 ID:agEJZSC8o
紗希「森の中」

杏「一人で?」

紗希「西住先輩と」

杏「西住ちゃん?」

麻子「……」ピクッ

紗希「はい」

桃「西住と一緒だったのか」

梓「にしずみ……?」

あや「誰のことー?」

みどり子「ああ、転校してきたっていう。噂ではすごい不良らしいわね。風紀委員の間ではブラックリストに載る直前よ」

杏「その西住ちゃんは今、どこ?」

紗希「……」

桃「時間も時間です。帰ったのでしょう」

杏「質問を変えるか。丸山ちゃん、西住ちゃんとこんな時間まで何してたの?」

紗希「……」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 00:48:05.33 ID:agEJZSC8o


みほ「……」ガサガサ

みほ(生き物かどうか聞けばよかった……。でも、まるやまさんの言い方ならきっと無機物のはず)

みほ(大きさもあるし、虱潰しに探せば絶対に見つけられる)


沙織「……」

華「まだまだ探すつもりのようですね。いえ、きっと見つかるまで探すのでしょう」

沙織「華、ここまで来たら私たちもとことん探そう」

華「西住さんにお声かけはしないのですか?」

沙織「今更、実は一緒にずっと探してたなんて言えないでしょ。そんなの重い女みたいじゃない」

華「そうですか」

沙織「明日は西住さんと一緒にお昼ご飯食べよう。絶対」

華「はいっ」


優花里「はぁ……はぁ……。どこですかぁ……」ガサガサ

優花里「これだけ探しても見つからないのあれば、捜索範囲をもっと拡大させるしかありませんね」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 00:54:50.89 ID:agEJZSC8o
通学路

みほ「……もう0時か」

みほ「ふふ。初めてケータイのバッテリー全部使いきっちゃった」

みほ「でも結局、見つからなかったなぁ」

みほ「明日も探そう。その前にもう一度、交番に行ってみようかな」


沙織「つかれたぁ……」

華「本当に限界まで探し続けましたね、西住さん」

沙織「根性ありすぎよ……」

華「良い人、ですね」

沙織「あと、面白い」

華「そうですね」

桃「お前たち!!」

沙織「は、はい!?」

みどり子「こんな時間までなにしてるのよ。校則違反よ」

華「も、申し訳ありません。事情がありまして……」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 00:58:40.65 ID:agEJZSC8o


みほ「早く寝ないと」

紗希「……」

みほ「まるやまさん!? ど、どうしてここに!?」

紗希「謝りたくて」

みほ「え?」

紗希「探していたもの、見つかりました」

みほ「そうなの!? どこにあったの!?」

紗希「学校に」

みほ「そうなんだ。置いて来ちゃっただけだったんだ」

紗希「ごめんなさい……」

みほ「よかったぁ、見つかって。これで一安心だね」

紗希「……!」

みほ「あ、暗いし途中まで送っていくけど」

紗希「大丈夫です」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 01:04:26.05 ID:agEJZSC8o
みほ「いいの?」

紗希「はい」

みほ「それじゃあ、おやすみなさい」

紗希「……」コクッ

杏「――なるほどねぇ」

柚子「あれが西住さん……」

桃「どこが不良なんだ」

みどり子「西住さんは到底ブラックリストには載らないわね。0時まで外出していたのは問題だけど」

麻子「大目にみてやれないのか」

みどり子「別に問題にするとは言ってないでしょ」

杏「決まりだな」

桃「は?」

杏「どんな手を使ってでも西住ちゃんを引き込む」

柚子「あんなに優しい人を……ですか……」

杏(ごめんよ、西住ちゃん。その優しさに頼らせてほしい)
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 01:11:38.36 ID:agEJZSC8o
翌朝 みほの部屋

みほ「やっぱり……ケーキはいちごショートが……」

ピピピピ……

みほ「うぅん……」

ピピピピ!

みほ「わぁぁ!?」ガバッ

みほ「……」

みほ「そっか。もう家じゃないんだ」

みほ「うーん……ちょっと眠いけど……顔を洗えば……」

みほ「って、もうこんな時間!?」

みほ「あんまりゆっくりしてられない」

みほ「パン焼いて、歯磨きして、着替えて……それから……」ドタドタ

ガンッ

みほ「いっ……!? うぅぅ……足の……小指ぃ……」

みほ「朝から……何やってるんだろう……」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 01:17:02.36 ID:agEJZSC8o
通学路

みほ「うちのほうにはないなぁ、サンク――」

ガンッ

みほ「ぁいたっ!?」

みほ「あうぅ……。あ、ブサかわいい」


沙織「看板に正面からぶつかってるよ」

華「危ないですね」

優花里「あぁぁ……! お怪我はないでしょうか……西住どのぉ……」

沙織「ん?」

優花里「あ!? いえ、なんでもありません!!」ダダダッ

沙織「誰だろう?」

華「さぁ……」

沙織「やっぱり、西住さんってあわあわしてて面白いよね」

華「どのタイミングで声をかけるのですか?」

沙織「やっぱ、お昼休みにナンパするのがいいんじゃない?」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 01:26:12.71 ID:agEJZSC8o
大洗女子学園 正門

「おはよーございまーす」

みどり子「はい、おはようございます」

みほ「……」

みどり子「おはようございます」

みほ「あ、おはようございます」

みどり子「深夜の外出は控えるように」

みほ「え?」

エルヴィン「おはよう」

みどり子「ちょっと!! 制服はちゃんと着なさい!! 校則違反よ!!!」

エルヴィン「悪いがこれが正装だ」

みどり子「何いってるのよ!! あ、こら!! そこ!! そんな大きなマフラーは校則違反よ!!」

カエサル「これは軍神マルスを示すものだ。外すことはできない」

みどり子「何をわけのわかんないこと言ってるのよ!?」

みほ(空耳かな……)
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 01:30:19.57 ID:agEJZSC8o
廊下

優季「紗希ちゃんと一緒に探してくれた先輩ってどんな人なんだろう」

あゆみ「私たちもお礼いいたいよね」

あや「絶対、優しい人だよねぇ」

桂利奈「あってみたーい」

梓「そうだね。名前、なんて言ったっけ?」

あゆみ「梓、聞いてなかった?」

梓「ええと……」

紗希「……」

みほ(あ、まるやまさんだ)

紗希「……」ペコリッ

みほ「……」ペコリッ

梓「紗希? どうしたの?」

紗希「なんでもない」

桂利奈「あの人、昨日食堂でみた人だー」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 01:39:20.58 ID:agEJZSC8o
「今日、小テストだってー」

「ええ!?」

みほ「……」

「ねえ、西住さんのこと、きいた?」

みほ「……」ピクッ

「なになに?」

「昨日、小さい子が落としたものを深夜まで探して、しかもみつけたんだって」

みほ「え……」

「西住さんって不良じゃないの?」

「それ、根も葉もない噂だってさ」

「えぇ……。私、西住さんのこと誤解してたよぉ」

みほ(なんだか事実に尾ひれがついているような……。誰が流したんだろう)

みほ(まるやまさんはそんなことするような人には見えなかったし……)

みほ(けど、昨日のことを知っている人なんて他にいないから……)

みほ(もしかして誰かに見られてたのかな?)
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 01:45:01.09 ID:agEJZSC8o
生徒会室

桃「西住の評判に関してはこれである程度、回復するでしょう」

杏「じゃなきゃ、困るしな」

柚子「昨日の出来事、多少脚色されていますけど……」

杏「いいんじゃない? そのほうが噂っぽいしな」

桃「不良と思い込まれていては、戦車道のイメージが悪くなりかねませんからね」

杏「あと、西住ちゃんの名誉にかかわる」

柚子「西住さん、履修してくれるでしょうか」

杏「……難色は示すだろうねぇ」

桃「やはり、黒森峰の敗戦が原因なのですね」

杏「きっと、西住ちゃんには恨まれる」

柚子「……はい」

桃「覚悟の上です」

杏「あんがと。それじゃ、今日の昼休みにでもいこっか」

柚子「心苦しいですけど……」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 01:55:13.57 ID:agEJZSC8o
昼休み 2年A組 教室

バサバサ……

みほ「はぁ……。またノート落としちゃった……」

みほ「よいしょ……」


沙織「またやってるよ、西住ちゃん」

華「もう待ちきれませんわ。沙織さん」

沙織「まぁまぁ、西住さんが落ち着いてから声をかけようよ」

華「急に後ろから話しかけたら驚くと思いますけど」

沙織「ナンパっぽくていいじゃん?」

華「もう、沙織さんったら」

沙織「ヘイ! 彼女ぉ! 一緒にお昼どう?」

みほ「え? わぁぁ!?」

華「ほら、沙織さん。西住さん驚いていらっしゃるじゃないですか」

沙織「あぁ、いきなりごめんねっ」

華「あの、改めまして、よろしかったらお昼一緒にどうですか?」

みほ「えぇ!? 私と、ですか!?」

沙織「うんっ。ほら、いこっ。西住さんのことたくさん知りたいしねっ」


おしまい。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 01:57:05.41 ID:agEJZSC8o
訂正

>>71
沙織「またやってるよ、西住ちゃん」

沙織「またやってるよ、西住さん」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/17(月) 02:53:02.75 ID:nurEPEfDo
おつ
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/17(月) 13:11:56.74 ID:7Oh5kRqHO
おつ
そこから生徒会ぶっ潰して戦車道なんかしない続きはよ
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/17(月) 13:25:30.76 ID:aQJY5VCzo
おつおつ
この微妙なすれ違い感がよかった
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/18(火) 01:46:00.98 ID:yEBvQC/Lo
乙ー
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/18(火) 07:32:22.52 ID:FoH3jilao
まーだやってたのかこの人wwwwww

まあこの人は
ガルパンSSを書いて他人から褒められないと死んじゃう病
だからね
しょうがないね

お気の毒さまwwwwww
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 03:57:19.10 ID:496WbOEI0
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 19:14:53.91 ID:dwB44y+6o
すごくいいとこで打ち切りやんな
戦車道やらないルートはよ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/21(金) 23:35:04.78 ID:qN+8RPBj0
※77[ピーーー]
57.42 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)