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【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」完結編
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44 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/21(金) 20:13:39.65 ID:CDK467qC0
----------
「プロデューサー!」
ロビーを歩いていると、背中に声がかかった。
「……比奈か」
俺は後ろを振り向く。ジャージ姿の比奈がこちらに走ってきていた。
比奈にレッスンの予定はなかったはずだ。 というか、比奈にレッスンの予定が入っていない日を選んだ。
ほかの四人は日中、学校があるから、プロダクションから出ていく俺と鉢合わせすることはない。
比奈にレッスンの予定がないにもかかわらずここにいるということは、自主的なレッスンか。
タイミングが悪い。
「メール、見たっス。……行っちゃうんスか」
比奈は真剣な眼をして俺の前に立つ。
「あー、まぁ、ちょっと、メールの通りでな、親が――」
「どのくらいで帰ってくるっスか?」
比奈は俺の言葉を遮るように言う。
「病状見てからだな」
「……戻ってこないつもりっスね?」
「……いや、そんなつもりじゃ……」
「あのとき」比奈はうつむく。「サマーフェスのとき、アタシたちのユニットのこと、ちゃんと責任取ってくれるって言ってたじゃないっスか、あれは……嘘だったんスか?」
比奈の声は、すこし震えているように聞こえた。
「そんなことはないさ。責任を取る」
「じゃあ」
「大丈夫だ。先輩は敏腕だからな。必ずお前たちを輝かせてくれる」
「そうじゃないっス!」比奈はうつむいたまま若干語勢を強め、首を横に振る。「そうじゃないっスよプロデューサー……プロデューサーは、それでいいんスか……?」
「……お前たちが活躍するのがいちばんだよ」
「茜ちゃんも春菜ちゃんも裕美ちゃんもほたるちゃんも、プロデューサーは、置いていっちゃうんスか」
「……」
「そんなの、責任取るって言わないっス……このままじゃアタシ、ほんとうに共犯者になっちゃうっスよ……みんなになんて説明したらいいか」
「……」
「お休みから戻ってくる人が敏腕だから任せるって、プロデューサーはアタシたちと最後までやりたいと思ってはくれないんスか」
「……俺は、お前たちが高いところまで行けるほうを選ぶ」
「ほんとに、そう思ってるんスか」
「……ああ」
「……」
「お前たちなら……お前たちと先輩ならできるって確信してるよ」
「アタシ、まだあのとき借りた五千円返してないっス」
「ああ、あれな」思い出して、俺は笑う。スカウトのときの買い出しで立て替えていた五千円だ。「……いいよ、出世祝いの先払いだ」
「……」
比奈はうつむいたまま、小さく肩を震わせていた。
俺は黙って、比奈に背を向けて、歩き出す。
「プロデューサーは、嘘をついてるっス」
俺の背中に向かって比奈が低い声で言う。俺は足を止めた。
「言ったでしょう。アタシ、マンガ描いてるくらいっスから、人間観察力は高いんスよ……プロデューサー、アタシと話してるあいだ、一回もアタシのこと見てないっス」
最後のほうは、ほとんどかすれ声だった。
これ以上はだめだと俺は思った。
「比奈、お前たちが思っている以上に芸能界は厳しい。だから一番近道を行け。それが、お前たちにとって一番いいことなんだ。……またな。比奈」
俺は比奈に背中を向けたまま言い、歩き出した。比奈はもう、俺を引き留めなかった。
45 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/21(金) 20:14:47.82 ID:CDK467qC0
----------
「……と、ここだな」
窓側に取った新幹線の指定席。荷物を棚に乗せて、俺は席につく。
平日の昼間、乗客はまばらだった。
想像していたよりも、実感がないと思っていた。もうすこし気分が沈むかと思っていた。
自分で自分の感情に蓋をしているのかもしれないと思う。
もともと、感情に蓋をするのは得意だったしな、と心中で自分を皮肉った。
座席のリクライニングシートを少し倒す。長い息をついた。
俺としては、少なくとも合理的な選択であったと思う。
茜、比奈、春菜、裕美、ほたるの五人が活躍するためなら、俺一人の感情は抑制する。
そうして、俺よりも優れたプロデューサーに渡す。それが、俺ができる最良のプロデュースだ。
発車ベルが鳴って、ドアが閉まった。新幹線がゆっくりと走り出す。
売店で買っておいた缶ビールのプルタブを起こす。小気味いい音が響いた。
ビールを喉に流し込む。
こんなに味のしないビールを飲んだのははじめてだった。
46 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/21(金) 20:18:21.54 ID:CDK467qC0
----------
茜は自室のベッドの上で、スマートフォンの画面を見つめて眉間にしわを寄せていた。
プロデューサーから、実家の都合でしばらくお休みするという連絡をもらってからまる二日間、ユニットのメンバーのあいだではグループメッセージのやり取りが続いていた。
最初、みんな一様にプロデューサーのことを心配していた。茜も同じ気持ちだった。
茜にとってすこし嬉しかったのは、ほたるがプロデューサーに起こったことを自分の不幸のせいだと落ち込んだりすることがなかったことだった。
プロデューサーのいないあいだ、頑張って活動を続けようと最初にみんなをはげましてくれたのはほたるで、ほたるがそう言うならとみんなが奮起した。
いいユニットに参加することができたと、茜は素直に嬉しく感じていた。
それから話題は、プロデューサーが不在の間を引き継ぐことになっているという、新しいプロデューサー――今までのプロデューサーにとっての先輩プロデューサー――のことに移っていった。
『これまでも数々のユニットをプロデュースしてきたすごく実力のあるプロデューサーらしいっスから、お任せしちゃって大丈夫だと思うっス。病み上がりなのはちょっと心配っスけど』
比奈から茜を含む四人へのグループメッセージが届く。
『新しいプロデューサーからのメールには心配しないでいいって書いてありましたけど、やっぱり最初のほうは私たちもあまり負担をかけないようにしたほうがいいですよね』
すぐに、春菜からのメッセージが返ってくる。
茜は仰向けになったまま、むー、と唸った。
「どうしてまだ私にだけ、その新しいプロデューサーさんからのメールが、こないんでしょう……」
茜はスマートフォンの画面を見ながらつぶやいた。
47 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/21(金) 20:20:47.86 ID:CDK467qC0
茜以外の四人には、すでに先輩プロデューサーからの挨拶と、引継をしたこと、顔合わせの日程を伝えるメールが届いていた。
ユニットのメンバーでメッセージのやり取りをしているあいだに、茜にだけその連絡がきていないことがわかった。
四人は茜に、メールアドレスを間違えたんじゃないのかとか、なにかのエラーじゃないか、送り忘れなど可能性をあげて、気にする事はないと励ましてくれていた。
茜はそれに同意をしつつ、どこかで不安がぬぐえずにいた。
もともと、茜たち五人のユニットは、これから引き継ぐ先輩プロデューサーが企画したもので、先輩プロデューサーが過労で倒れたことによって、今は実家に戻っているプロデューサーが急遽担当することになったと聞かされていた。
当初のメンバーは、春菜、裕美、ほたると、スカウト予定だった比奈、それに当時未定だった新メンバーを加えての五人で、その新メンバーが茜ということだった。
つまり、茜だけは、これから引き継ぐ先輩プロデューサーが想定していなかったメンバーということになる。
そのことを思い出したときから、茜の心に不安が生まれた。
もし――もし、先輩プロデューサーが、茜のことを気に入らなかったのだとしたら。詳しいことは茜には想像も及ばなかったが、もともとのコンセプトや、想定していたユニットのカラーが先輩プロデューサーの意向に合わなくて、それで連絡がもらえていないのだとしたら。
茜だけ、みんなと一緒にアイドルを続けることが、できなくなるかもしれない――
そう考えて、茜は自分の胸のあたりに手を当てた。不安で鼓動が早くなっている。
「なんだか、不思議ですね」
茜はぼんやりと天井を見つめて呟いた。
数か月前まで、アイドルになるなんて考えたこともなかった。
人前に出て歌ったり踊ったりするなんて、やってみたいかどうかすら考えたこともなかった。
それがいつのまにか、スカウトを受けて、アイドルとして活動することになって、レッスンや仕事を繰り返し、ライブに出て、今はこれからもアイドルをやりたいと思っている。
「私、こんなにアイドルやりたかったんですね……」
皮肉にも、アイドルを続ける道が危ういかもしれないという想像を通して、茜はそれを実感していた。
一人の時に、一度考えが沈みだすと、悪いほうへ、悪いほうへとずぶずぶ引きずられていく。
みんなと一緒にユニットができなくなるかもしれない。そもそもアイドル自体続けられなくなるかもしれない。
いや、本当は自分はアイドルなんかじゃなくて、アイドルであると勘違いしていただけなのかもしれない――
茜はスマートフォンを置いてベッドから体を起こし、悪い想像を追い出そうと頭をぶんぶん左右に振った。
それから、気合を入れようと、両手で自分の頬を軽く叩く。
「悪いように考えちゃいけませんね! しっかりしましょう! ボンバー!」
茜は右手を振り上げ自分を鼓舞して、練習中のユニット曲を口ずさみながら、振りを確認する。
しかしそれは長くは続かず、茜は部屋の真ん中に立ったまま肩を落とした。
「プロデューサー、早く戻ってきてください……」
茜はスマートフォンのメールボックスを開いた。
実家に帰ったプロデューサーからユニットのメンバーに届いた、最後のメールを開く。もう何度読み返したかわからなかった。
メールには一時的に実家に帰ると書かれている。
だけど、茜には、なぜだかプロデューサーがもう戻ってこないんじゃないかという不安があった。
スマートフォンがメッセージの着信を振動で知らせる。比奈からだった。
『まー、明日は新しいプロデューサーとの顔合わせっス、色々不安っスけど、みんなしっかり打ち合わせしてこれからに臨みましょう』
茜はその文面を見て、そのとおりだと思う一方で、比奈が少しドライなようにも感じた。
けれども、すぐにそれは茜の不安がそう思わせるのだと考え直した。
茜はもう一度、歯を食いしばって、さっきより強く両側の頬をはたいた。
48 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/21(金) 20:22:38.22 ID:CDK467qC0
----------
「それじゃー、いろいろバタバタして悪いんだけど、とりあえずユニットのプロデュースはアイツが戻ってくるまでのあいだボクが引き継ぐから、みんなよろしくね」
すこし軽い感じの声で、先輩プロデューサーはそう挨拶した。
プロデューサールームに集まっていた比奈、春菜、裕美、ほたるの四人はそれぞれに「よろしくおねがいします」と言いながら頭を下げた。
茜は学校ですこし遅れるという連絡が入っていて、まだ到着していない。
比奈はプロデューサールームを見渡した。
もともと、実家に帰ったプロデューサーの私物は多くはなかったが、部屋の中は綺麗に片付いていて、プロデューサーがここにいた痕跡が消えてしまっている。
「手口、鮮やかっスね」
比奈は誰にも聞こえないようにつぶやいて、溜息をついた。
「病み上がりってのもあるんだけど、入院してるあいだは仕事のことはシャットアウトしろってんで、この数か月間のプロダクションのこともこのユニットのこともぜんぜん教えてもらってなくってね。みんなにはちょっと迷惑かけるけど、できるだけ早く追いつくよ。アイツはボクがもともと立ててたスケジュールにだいたい沿ったかたちで進めてくれてたみたいだから、ちゃんと把握するまでそんなに時間はもらわないで済むと思う。改めて、メンバーは……」
先輩プロデューサーは四人を見渡す。
「っ、あの、プロデューサー」
比奈は先輩プロデューサーのことを『プロデューサー』と呼ぶことに若干の違和感を覚えながら、片手をあげる。
「まだ、茜ちゃんが到着してないっス」
先輩プロデューサーは笑顔で頷いた。
「荒木比奈さんだよね。参加してくれてありがとう。アイツ、ちゃんとスカウトにも行ってくれたんだな。ほんとはボクがスカウトにいくはずだったんだけど、倒れちゃったからさ。ごめんねー」
「あ、その……」
比奈はいろいろな想いをいっぺんに飲みこんだ。
比奈にとっては、目の前にいる人物は、本来書類選考で落選になっていたはずの比奈に魅力を見出し拾い上げた人物である。
しかし同時に、この人物が戻ってきたことによって、比奈を実際にスカウトしに来た人物は会社を去ることを決めた。
どちらも比奈の人生を左右した大切な人物。
もし先輩プロデューサーが戻らなければ、という想像が不謹慎だということも理解している。
比奈は自分の気持ちに折り合いがつけられないまま、口を閉じた。
「それで……」先輩プロデューサーが困ったような顔で頭を掻く。「その、いま言ってた茜って子なんだけど……それ、誰なのかな?」
「えっ?」春菜が驚きの声をあげる。「誰って、日野茜ちゃんですよ、このユニットのメンバーの……ね?」
春菜はほかの三人のほうを見る。比奈、裕美、ほたるはそれぞれ春菜に頷いて、先輩プロデューサーを見る。
「うーん、まだ全部資料観れたわけじゃないし、茜って子の名前は報告書にちょいちょい出てくるんだけど……」先輩プロデューサーは腕組をした。「日野茜って名前の子、そもそも美城プロダクションにはいないんだよね」
先輩プロデューサーの言葉を理解できず、全員が固まる。
「ちょっと、それって、どういうこと!?」
直後に、裕美が大きな声をあげた。
49 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/21(金) 20:24:03.08 ID:CDK467qC0
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茜は美城プロダクションの廊下を早歩きで進んでいた。
学校の授業が終わり、いくつかの用事を終えてから到着したので、集合時刻に少し遅れてしまっている。
茜の胸にはずっと不安が残ったままだった。結局、先輩プロデューサーからの連絡はないまま。
今日の顔合わせも、比奈から時間と場所を教えてもらっている。
それでも、顔合わせの場、プロデューサールームに行けば、大切な仲間たち、ユニットのメンバーがいる。だから、大丈夫。
茜は自分にそう言い聞かせていた。
廊下の角を曲がると、プロデューサールームの扉が見えた。
茜は入館証のストラップを持った右手をぎゅっと握る。
何度も訪れたプロデューサールーム。茜をスカウトしてくれた人は、いまはあの部屋には、いない。
扉の前に立って、茜は胸に手を置いて、呼吸を整える。
それから、右手をドアノブに伸ばした。
そのときだった。
「ちょっと、それって、どういうこと!?」
部屋の中から裕美の大きな声が聞こえてきた。
茜はドアノブに手をかけたまま、その場に固まる。
「えーと、だから……」
茜の知らない人の声が聞こえた。
おそらく、この声の持ち主が先輩プロデューサーなのだろうと茜は想像する。
茜はドアの内側に聞き耳を立てた。
「その日野茜って子は、プロダクションの所属アイドルのデータベースには登録されていないんだよ。美城プロダクションには、日野茜って名前のアイドルは、在籍していない」
「――っ!」
茜は息を呑んだ。心臓を潰されたような気がした。呑んだ息が吐きだせない。
身体が震えているような気がした。心のなかに残っていた不安が一気に広がって、頭から足の先まで真っ黒に覆いつくす。
茜はドアノブを掴んでいた右手を、そろそろと離した。カチャ、とごく小さな音がする。
その音を立ててしまったことに茜は怯えた。
次の瞬間には、茜はその場から逃げ出していた。手から入館証のストラップが滑り落ちる。
茜は入館証を落としたことに気づいたが、戻ることはしなかった。
なにが起こっているのかわからなかった。
茜はただただ恐怖にとらわれ、廊下の角を曲がり、階段を駆け下りて美城プロダクションを飛び出していた。
50 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/21(金) 20:25:08.12 ID:CDK467qC0
----------
「……なにか、音がした気がするっス。茜ちゃんでしょうか」
比奈はプロデューサールームの扉を開けて、廊下の左右を眺めた。
誰かが角を曲がって、去っていくのが見えた。
顔も体の大部分も見えなかったが、一瞬だけ目に映った足と革靴から、比奈はそれが茜だと予想した。
「茜ちゃん!」
比奈は部屋から飛び出し、小走りに廊下の角まで向かう。だが、そこにはもう人の姿はなかった。
比奈は首を傾げた。見間違いだったのかもしれないと思い、プロデューサールームに戻ろうとし――足元に、なにかが落ちていることに気づく。
入館証だった。そこには確かに、日野茜と元気な文字で書かれている。
「……茜ちゃん……!」
比奈はそれを拾い上げると、プロデューサールームに戻った。
話の途中で部屋から出て、また戻ってきた比奈を、春菜、裕美、ほたる、先輩プロデューサーの四人が不思議そうな顔で迎える。
「……茜ちゃんの入館証、そこに落ちてたっス。アタシたちの話をドアのところで聴いて、登録されてないって知ったとしたら……驚いて、いなくなっちゃったのかもしれないっス」
「そんな……」
ほたるが青ざめる。
「追いかけたほうがいいんじゃないかな」
裕美が言うが、先輩プロデューサーが一歩前に出た。
「ちょっと、待って……それ、見せてもらっていいかな」
比奈はうなづくと、入館証を手渡した。
「これは……」先輩プロデューサーは首をかしげる。「アルバイト証?」
51 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/21(金) 20:27:49.62 ID:CDK467qC0
「はぁ、はぁ、はぁっ!」
茜は走り続けていた。
美城プロダクションを飛び出して、大通りを一キロ近く疾走していた。
夕方の大通りは人も多く、ぶつからないように気をつけなければいけなかった。
それでも走り続けた。茜は怖いと思っていた。いま走るのをやめたら、そのまま押しつぶされてしまう。
先輩プロデューサーには自分のことを認めてもらえなかったのかもしれない。
そもそも、自分はユニットのコンセプトに合っていなかったのかもしれない。
もしかすると、自分はアイドルだと思い込んでいただけったのかもしれない。
ずっとずっと、自分の勘違い、思い上がりだったのかもしれない。
恐怖に呑まれて、茜の頭の中をたくさんの考えがぐるぐる巡っていった。
走りながら、茜は驚いていた。思った以上に、疲労を訴えてこない自分自身の身体に。
こんなに長く、早いスピードで走り続けているのに、まだ余裕がある。
たくさんレッスンをして、体力がついたからだ。――アイドルをするために。
体育会系の茜にとって、基礎体力が向上することはうれしいことのはずなのに、今はそれさえも茜の心を黒く塗りつぶそうとするものとして襲い掛かってくる。
「あっ!」
瞬間、雑念にとらわれた茜の足がもつれ、茜はアスファルトの歩道に転んだ。
膝と右の肩を地面にぶつける。通学鞄が転がっていった。
「う、う……!」
茜は痛みを感じながら、身体が傷ついていないか心配した。
活発によく動く茜は、いつもプロデューサーから言われていた。
顔はもちろん、肌が見えるところに傷をつけないように気をつけろと。
目立った傷がついていないことにほっとして、それからすぐに、もうその心配に意味がないかもしれないことを思い出す。
「ううっ……」
茜の視界がにじんだ。
それでも茜は立ち上がる。腕で両目を乱暴にぬぐって、大股で地面を歩いて転がった鞄を拾い、また走り出す。
止まってしまったら、なにかに飲みこまれてしまうと思っていた。
それから茜はさらに走り続け、河川敷までたどり着いていた。プロデューサーと出会い、スカウトを受けた河川敷に。
秋の日は早く、河川敷は夕日を受けてオレンジに染まっていた。
ついに走り続ける体力も尽き、茜はスピードを落とす。
エネルギーを使い果たしたのと一緒に、茜の中の暗い考えもどこかに霧散していた。
とぼとぼと芝生の上を歩きながら、茜は涙をこぼして自分を笑った。
「あはは、逃げて、きて、しまいました」
茜は肩で息をしながら、今度は、どうして逃げてしまったんだろうと不思議に思っていた。
ユニットのみんなと出会ってから数か月は、ドキドキとワクワクの連続だった。
なにもかもがはじめて体験することばかりで、毎日が輝いていた。
数か月のあいだに、みんなはどんどん強く、かっこよく、きれいに、可愛くなっていった。
比奈も、春菜も、裕美も、ほたるも。
……プロデューサーも、最初に会ったときよりも頼れるようになったと思う。
自分はどうだったろうかと、茜は考えた。考えて、涙がこぼれた。
自分には強さが足りなかったから、逃げ出してしまったんだ。
「……もっと、強くならなくちゃいけなかったですね」
茜はお気に入りの真っ赤なポロシャツの胸元をぎゅっと握って、はぁっと熱い息を吐いた。
強くなりたいと思った。
けれど、ほんの少し、そう願うのが遅かった。
プロデューサーにスカウトしてもらって、こんなにアイドルをやりたいと思っているのに、目の前に、その道はもうなくなってしまっている。
どうしてこんなふうに思うようになったのか、茜自身にとっても、不思議だった。
「アイドル、もっと、やりたかったです……」
茜はそう口に出して、ついに歩みを止める。
それから空を見て、大粒の涙をぼろぼろ流した。
「うわあああああああああああああああああん!」
茜の大きな泣き声は、秋の空へと吸い込まれて行った。
第十話『こんな私に誰がした』
・・・END
52 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/21(金) 20:29:47.19 ID:CDK467qC0
次回は7月28日、23時から更新したいと思います。
次回が最後の更新となります。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
あたたかいレス、誠にありがとうございました。
あともう少し、お付き合いくださいませ。
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/21(金) 21:00:21.14 ID:wnziFGMzO
乙
ハッピーエンドだって信じてるけどしんどい
最後の投下すごく楽しみに待ってます
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/21(金) 21:02:33.62 ID:xK9GI0Zyo
パイセンがチャラいなww
55 :
◆Z5wk4/jklI
[sage]:2017/07/21(金) 22:28:26.48 ID:CDK467qC0
>>53
ありがとうございます、いましばらくお待ちくださいませ
>>54
パイセンはプロデューサーとの差別化もあって正反対のネアカっぽいキャラづけにしてます。
56 :
◆Z5wk4/jklI
[sage]:2017/07/24(月) 18:12:10.09 ID:q4sQ3JaZ0
ほたるSSRが実装になって五人全員SSRにする夢が出来ました。ありがとう。まだ比奈しかいない。
57 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/27(木) 21:32:53.10 ID:DRC2p5kQ0
明日は予告通り23時から更新いたします。
もしお時間に余裕がありましたら、これまでのお話をざっと振り返っていただけるとよりお楽しみいただけると思います。
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/27(木) 22:44:54.68 ID:yEd64hquO
楽しみ
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/28(金) 10:57:05.05 ID:ZWJRPUbmo
茜の件は情報伝達や書類の間違いだと良いな
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/28(金) 12:06:06.60 ID:VCTOV49UO
登録のときに良かれと思ってやっていたことがここにきてひびくか
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/28(金) 20:15:21.42 ID:40lkHwEe0
待ってるぜ!
62 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:00:28.69 ID:23vyEUVD0
比奈、春菜、裕美、ほたるの四人はそれぞれ、美城プロダクションから走り去った茜に連絡を試みた。
しかし結局応答はなく、四人は不安を抱えながらその日を終える。
翌日の日中、比奈はプロデューサールームを訪れていた。
先輩プロデューサーは比奈を快く招き入れる。
応接セットのテーブルの上には一枚の書類が置かれていた。
「見てよ、それ」先輩プロデューサーは比奈に書類を示す。「人事に聞いたら見つかったんだ、日野茜さんの書類。アイツ、なぜか茜さんをアルバイトとして登録していたみたいなんだよね。ドラマのエキストラとか、ほんとに単発で終わっちゃうような仕事ならその扱いもわかるんだけど……アルバイトだと美城のデータベースには登録しないから、それでボクは茜さんを見つけることができなかったんだ」
比奈は応接セットのテーブルの上に置かれた書類を見る。茜の登録書類だった。
「アタシは正式に登録されてたんスか?」
比奈の問いに、先輩プロデューサーは頷く。
「たぶん、比奈さんはボクがもともとスカウトする予定だったから、アイツもそのまま正規の所属アイドルとして登録したんだろうね。茜さんのほうはアイツがスカウトしたから、ボクの意向を確認しようとしたのかも。もともと、このユニットはボクが立ててた企画だったからなぁ」
先輩プロデューサーは溜息をつく。
「そのことなんスけど」
比奈は、茜の書類を机に置いて、姿勢を正して真剣な表情で先輩プロデューサーを見つめる。
「今日は、お願いがあって来たっス」
63 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:03:34.56 ID:23vyEUVD0
----------
年代物のレジを乗せた年代物の机、年代物の椅子、年代物の酒屋。……実家。
俺は頬杖をついて、店内から外を眺めていた。
幼少の頃から代わり映えしない景色、ただ俺の背が伸びるにつれて視点だけが、あの頃よりも高くなっている。
高くなりきったあとは、視界が少しずつ古くなっていくだけだ。
最寄りの新幹線の駅からさらに在来線、バスと乗り継ぎ、都心の借家から片道およそ七時間。
時の止まったような地元に、俺は帰ってきていた。
しばらく仕事を休むと言って急に帰ってきた俺を、両親は特に疑問を呈するでもなく受け入れてくれた。
仕事を辞めて店を継ぐ話はそのうちするつもりだった。
そのまま、何事もなく二日間が過ぎた。
次の日の昼間、お袋が買い物に行くからと俺に店番を命じ、出かけて約二時間。
こうしてずっと店の中から外をぼーっと眺めていた。親父は近所に将棋を指しに出かけている。
外は殆ど人も車も通らない。犬や猫のほうが多く通り過ぎるくらいだった。
都会とは時間の流れ方がまるで違う。
この景色が嫌になる前に、なにか趣味か副業を見つけたほうがいいな、と俺はぼんやり考えていた。
何もしないでいると、このままこの店と一緒に一気に歳をとりそうだと思った。
スマートフォンを取りだし、真っ暗なままの画面を見て、すぐにまたしまう。
この場所に座ってからもうこの動作を五回ほど繰り返していた。
スマートフォンをチェックするのは手癖になっている。取り出しては電源をオフにしていたことを思い出し、またしまう。ずっとこんな調子だった。
店番をしていても客が来るわけでもない。
この店の主な収入は年末年始をはじめとした祝い事の注文のほかは飲食店のタンクの補充だ。
俺は居間に戻り、朝刊を取ってくる。番組表を眺めた。番組編成は都会とは大きく違う。
ぼんやりと考えていた。茜たちの出演するような番組は見れるだろうか。
関東ローカル局の番組は難しいだろう。ネット配信でやっていればいいのだが。
――と、そこまでを考えて、俺は新聞を畳んで置いた。
プロダクションから物理的な距離は置いた。精神的な距離も置いて、それに慣れたほうがいい。
俺はもうプロデューサーではない。茜たちのことを考えられる立場ではない。……考えてはいけない。
――茜ちゃんも春菜ちゃんも裕美ちゃんもほたるちゃんも、プロデューサーは、置いていっちゃうんスか――
比奈の言葉が頭に蘇る。茜たちを置いて行った。
それは決してネガティブな感情からではないが、置いて行ったことは確かだ。
比奈は俺の思惑をみんなに明かすだろうか。あいつらに、嫌われるだろうか。
……嫌われるだろう。それを覚悟してやったことだ。俺は溜息をついた。
覚悟してやったはずなのに、俺の頭からは五人の顔が消えない。
……仕方がない。これでよかったんだ。
何度頭の中で繰り返したかわからない言葉を、もう一度自分に言い聞かせた。
「はー、つかれた」
店先から声が聞こえて、机に突っ伏していた俺は体を起こして姿勢を正す。お袋だった。
客ではないとわかり、俺は姿勢を崩し、頬杖をつく。
「ただいまー」
お袋は買い物袋――花柄のエコバッグを店先のボックスの中に降ろす。
お袋は財布以外は持たずに出て行ったと思ったが、あんなバッグ持っていただろうか、と俺はぼんやり考えていた。
「なーに、辛気臭い顔して。せっかく休んだんだからもう少し明るい顔しなさいよ」
お袋は俺のほうへと歩いてくる。
「……たまに帰った実家でくらい気を抜いてたっていいだろ、ほっといてくれよ」
俺は言ったが、お袋は俺の顔を覗き込む。
「あんた、なんか悩みでもあるんじゃないの?」
「……ほっといてくれ」
同じ言葉を繰り返して、否定はしていなかった自分に気づく。
「隠したって判るのよ? あんたの母親なんだから。それでね? いいものがあるのよ。さっき駅前で、買い物袋がやぶけちゃってねー、困ってたところを通りすがった人に助けてもらったの。そのとき、一緒にこんなのもらったのよ」
「……は……?」
64 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:05:07.42 ID:23vyEUVD0
お袋が目のまえに差し出してきたものを見て、俺は間抜けな声を漏らした。
自分の顔が頬杖から零れかける。
「は……はは……」
俺の口から笑いが漏れた。
まさか、こんなことがあるなんて、いったい誰が想像するだろうか?
「ほらこれ、悩みを解決してくれるお人形なんですって」
お袋は得意げに言う。
俺の目のまえに差し出されたものは、曇ったような銀色の先割れスプーン。
スプーンの先と柄の間の部分に、てるてる坊主のように端のほつれたハンカチが巻かれ、ハンカチが外れないよう、細い紐で縛って固定してある。
「名前も聞いたんだけど……なんていったかしら……そう、タイの……ワラ人形?」
「……さいきっく・わらしべ人形……」
俺の声は震えた。
「そう、たしかそんな名前ね!」お袋は空いている方の手のひらで腰を打つ。「あんた知ってるの? 都会で流行ってるのかしら。困ってる人の悩みが解決したら、つぎの誰かに渡すんですって。あたしの悩みは解決したから、それ、あんたにあげるわ」
差し出された人形を、俺は受け取る。
手が震えた。
間違いなかった。
スプーンの先に油性ペンで書かれた顔はほとんど剥げ落ち、結んでいた紐は別のものに代わっている。
だけれどそれは間違いなく、あの日、ショッピングモールで茜と堀裕子、それと迷子の子供が一緒に念を送り、迷子の子供の手に渡った、裕子のスプーンで作られた人形だった。
「ははははは……」
俺は人形を握り締めて、もう片方の手で腹を抱えて笑い続けた。
ここまでくれば、誰も追いかけて来れないだろうと思っていた。
距離を離せば、嫌でも縁は切れてしまうだろうと。
それがどうだ。縁は切れないどころか、こんなところまで追いかけてきた。
時に信じられないような奇跡だって起こしてみせる。それが、アイドル。
「はー……」ひとしきり笑い終えて、俺は立ち上がる。「ありがとう、お袋」
ありがとう、茜。裕子。迷子の子ども。そして人形をここまで継ぎ続けた、心優しき人達。
「俺さ、帰るわ」
「……え、今からかい?」
お袋は目を丸くする。俺は頷いた。
「ああ、親父によろしく」俺は居間に戻り、自分の荷物が入ったリュックサックのジッパーを開くと、乱暴に放り込んでいたスーツを引っ張り出す。「大事な仕事が、あるんだ」
「……そう」お袋は、俺の背に穏やかに声をかける。「がんばんなさいよ」
65 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:07:13.51 ID:23vyEUVD0
しわくちゃのスーツを着て、さいきっく・わらしべ人形を片手に握りしめたまま、俺は実家からバス停に向かって走りだす。
新幹線の終発には間に合わないだろうが、今からならターミナル駅までは行けるはずだ。今夜はそこで一泊して、翌朝の新幹線で戻ればいい。
春菜の言葉を思い出す。
――がんばります。眼鏡に恥じないために。いつか、眼鏡のフレームとレンズの向こうに、ファンのみなさんでいっぱいの、きらきらした、私の……私だけの景色を見ることができるように――
俺は強く地面を蹴った。春菜だけの景色を、見せてやらなきゃいけない。
比奈の言葉を思い出す。
――ま、そんなに心配はしてないんスけどね。プロデューサーはたぶん、そこまで無責任にも悪人にもなれないヒトっスから――
俺は腕を振った。比奈には、最初からすべて見抜かれていた。
裕美の言葉を思い出す。
――私が私に自信を持てないだけだったんだ。いまは、ぜんぜん違って見える。前を向くだけで、こんなに世界って、きらきらして見えるようになるんだね――
俺はもっとスピードが出るように、上体をもっと前へと傾ける。
俺の世界は、裕美たちのおかげで輝いて見えるようになったんだ。
ほたるの言葉を思い出す。
――いつかきっと、この幸せをみんなにも届けられるように、頑張ります。お返ししなくちゃ……勇気、幸せ、想い出、たくさん、大切なものをもらったから――
俺は走る。
俺も、たくさん大切なものをもらっている。ほたるの出した勇気に足るものを、俺はまだ返しきれてない。
茜の言葉を思い出す。
――ライブ! すごく熱くて! すごく楽しかったです! ぜんぶ、私をスカウトしてくれたプロデューサーのおかげです、ありがとうございました!――
俺は走り続ける。
まだここからだ。もっと、もっと熱くなってもらう。もっと高いところへ行ってもらう。
世界が全部繋がっているように思えた。
早く帰ろう。
俺は、あいつらのプロデューサーなんだから。
66 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:09:11.46 ID:23vyEUVD0
翌日午前。俺はプロデューサールームの扉を勢いよく開けた。
朝早くだというのに、プロデューサールームには先輩と、比奈、春菜、裕美、ほたるが揃っている。
茜だけがその場に居なかった。
「おはようございます! 不在にしてすみませんでした!」
俺が挨拶をすると、全員が目を丸くした。
「プロデューサー!? どうしたんですか!?」
「すまない、いろいろ説明しなきゃいけないのはわかってる。……けど、ちょっと待ってくれ」
駆け寄ってきた春菜を、俺は片手を出して制した。
先に、一番大事なことの筋を通しておきたかった。
「先輩!」俺は先輩プロデューサーの前に立つ。「すいませんでした!」
「あー、いいからさ、顔あげて」
先輩は頭を下げた俺に軽い口調で言った。
「比奈さんから大体の事情はきいたよ。親御さんの容態は、心配しなくていいんだよね?」
「はい」
「そっか、良かった」
先輩は穏やかに微笑む。
このやりとりを聞いている春菜、裕美、ほたるが顔に疑問を浮かべていないところを見ると、俺が親の介護と言って実家に帰ったのは先輩にユニットのプロデュースを引き継いでもらうための嘘だということを、比奈からすでに知らされているのだろう。
「先輩」
俺は先輩の目を見つめる。先輩は射貫くような目で俺を見つめ返した。
俺の心の底がひるんだ。だけど、もう小細工はしない。
しないと決めた。
「このユニットのプロデューサー……俺に、最後まで続けさせてください。もともと先輩が企画したユニットだし、先輩みたいにはできないかもしれない、けど……俺は、こいつらのプロデューサーをやりたい。絶対、こいつらを最高のユニットにします!」
俺は一礼して、ふたたび先輩を見据える。
先輩はしばらくのあいだ、俺のことを見定めるかのように、真剣な眼で見ていた。
それから、ふっと表情を崩して、俺のほうへ近づく。
すれちがうようにして、先輩は右手で俺の右肩をぽんと叩いた。
「あたりまえだろ? ボクは病気で抜けた身なんだから、そもそもボクがどうこう言える立場じゃない。お前がここまで育てたユニットだよ。最後まで面倒を見るんだ」
「はい!」
「残してくれてた記録や資料を読んだ。それから比奈さんたちユニットメンバーからもきいたよ。立派な仕事っぷりだ。ほんとによくやってくれていたと思う。ボクの企画したユニット、プロデュースは、お前に任せる。よろしく頼んだよ。……『プロデューサー』」
「はいっ!」
二度目の返事は、声が上ずった。
67 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:10:35.60 ID:23vyEUVD0
「ま、ちょうどそのお願いを、ユニットのみんなからも聞いてたところなんだけどねー」
先輩は比奈たちを見渡す。
比奈は少し恥ずかしそうに笑い、春菜、裕美、ほたるはほっとしたような顔をしていた。
「彼女たちに言われたんだ。ユニットのプロデュースは、引き続きいままでのプロデューサーにやってもらいたいってね。そのとき、お前がボクにプロデュースを引き継がせて辞めるつもりだっていう話も、比奈さんから聞いたんだ」
「みんな……」俺は比奈たちのほうに向きなおる。「心配かけてすまなかった」
「おかえりなさい」
ほたるが目じりに涙を光らせて言う。
「心配したんだからね。でも帰ってきてくれてよかった」
裕美が微笑んだ。
「アタシの目に狂いはなかったってことにしとくっスよ」
比奈がやれやれといった顔で言った。
「生みの親より育ての親。これだけユニットのメンバーに慕われてるんじゃ、ボクの出る幕なんて最初っからなかったって感じだよね」
先輩は悪戯っぽい目と口調で言った。
「そうすると、あとは……」春菜は言いながら比奈と目を合わせて、頷き合う。「茜ちゃんのこと、ですよね」
「茜? ……なにかあったのか?」
俺が尋ねると、その場にいた全員が真剣な表情になった。
先輩が手を挙げて、話し始める。
「発端はボクだね。ボクがユニットのプロデュースを引き継ぐにあたって、最初にメンバーのみんなに連絡をしたときに、茜さんへの連絡が漏れていたんだ。記録を見て、ユニットに茜さんが加わっていたことを知って連絡先を探したけど、茜さんは美城のデータベースに登録されていなくて、見つけることができなかった。あとから、アルバイトとして登録されてたから、データベースでは検索できないことがわかったんだけどね。そもそも、なんでアルバイトで登録したの?」
「あ、そうか……」
俺は茜をアルバイトで登録していたことを思い出す。
あのときは、先輩が帰ってきたときに正式登録するかどうか決めればいいと思っていた。
先輩の復帰が遅くなったことで、すっかり頭から抜け落ちてしまっていた。
先輩は続ける。
「結局顔合わせの日まで茜さんには連絡をすることができなかったんだ。それでもユニットメンバーが顔合わせの日程を伝えてくれたみたいだから、そのときに挨拶をすればいいと思っていたんだけど……この部屋で茜さんがデータベースに登録されていない、という話をしているところを、部屋の外にいた茜さんに聞かれてしまったみたいでさ。それで、茜さんは自分がユニットから外されたと誤解して、居なくなってしまったみたいなんだよね」
「居なく……? 連絡はとれていないんですか?」
俺が言うと、比奈たちユニットメンバーはみんな首を横に振った。
「茜ちゃんのアルバイト証がこの部屋の前の廊下に落ちてたっス。それからみんなで連絡を取ろうとしたんスけど、ケータイの電源も切っちゃってるらしくて、どうしたものか……」
「……なるほどな」
俺は後ろ頭を掻いた。
「プロデューサー、どうしましょう」
春菜に聞かれて、俺はしばらく考え、頷く。
「戻って早々で悪いが、ちょっと出かけてくる」
「へっ?」比奈が間の抜けた声をあげた。「どこ行くんすか?」
「決まってるだろ、茜を探してくる」
「茜ちゃんを……って、ちょっと、プロデューサー!?」
俺は戸惑う表情の先輩と四人を尻目に、プロデューサールームを後にした。
68 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:14:02.14 ID:23vyEUVD0
----------
プロダクションを出た俺は、さっそく茜の電話番号に発信してみた。応答はない。
二度目のコールも留守電への接続になってしまい、俺は電話での接触を諦める。
プロダクションの前で暫く考えたあと、俺は街中を河川敷へと向かうことにした。
茜が河川敷に来る、ということに、確信があったわけではなかった。
しかし、茜は家に閉じこもって冷静に考えるようなタイプではない。
それなら、きっと普段の生活で使う場所を探すのがいい。
今日は休日だから、学校に行くとは思えない。
それなら走り込みのコースになっている、あの河川敷で待つのがいいだろう。
俺が走った河川敷へ向かう道は、まだ未熟だった数か月前の俺が辿った道だった。
急にプロデューサーをやることになって、やる気なく形だけのスカウトを行っていたあの頃の。
もしも――もしも、あのとき茜に出会わなかったら、きっと今も俺は、あの頃のまま、適当に仕事をしていただろう。
それはそれで楽な人生なんだろうが、もうその頃に戻りたいという気はしなかった。
プロデュースすることの愉しみを、知ってしまったから。
河川敷に到着した俺は、記憶をたどり、以前にも通った芝生をのぼって土手の上の遊歩道に立つ。
午前の涼しい時間。散歩する人々や、自転車に乗る子ども、眼下に見えるグラウンドではサッカーの試合が行われている。
俺の不安な心中とは裏腹に、さわやかな光景だった。
俺は遊歩道の遠くを見て――俺の心臓が大きくひとつ鳴った。
土手の向こうから、近づいてくる人物。真っ赤なポロシャツを着ている。
ツイている。これも、いまも胸元のポケットに入っているさいきっく・わらしべ人形のご利益だろうか?
堀裕子。ひょっとすると、本物のエスパーなのかもしれない。
走ってくる赤いポロシャツの少女――茜は、俺の姿を認めると、そこで急激にスピードを落とし、クールダウンのためか、ゆっくりと歩いてこちらに近づいてきた。
「茜!」
俺は茜に向かって手を振る。
しかし、茜は俺から十五メートルほどの距離をあけて、止まった。
「茜……?」
俺の姿を見て、茜は辛そうに笑って、目を細める。
「プロデューサー……かえって、きてくれたんですね」
「ああ!」俺は茜の表情と開いた距離を疑問に思いながらも声をかける。「茜、みんな心配してるぞ、美城プロダクションに戻ってこい!」
俺の呼びかけに、茜はぎゅっと目をつぶって、両手を降ろしたまま握り締めて、首を横に振った。
俺は茜のほうに一歩、歩み寄る。
「……茜? どうしたんだ、ユニットのことなら」
「来ないでください!」
遮るように茜に言われて、俺は立ちどまった。
茜は両手で顔を覆って、また首を横に振る。
「私、行けないです! ……行けません!」
茜は悲痛な声をあげた。泣いているみたいだった。
69 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:15:36.97 ID:23vyEUVD0
俺はその場に立ちすくんだ。
俺と茜のあいだの十五メートルが、やけに遠く感じられた。
ジョギング中の若い男性が、怪訝そうな顔をして俺たちの横を走り抜けていく。
「茜」穏やかな声になるよう努めて、俺は言う。「茜はユニットから外れたりはしない。茜が美城のデータベースに登録されていないのは、俺の連絡ミスだったんだよ。だから、茜が気にする事じゃない。正式な登録のし直しをする。だから、みんなのところに戻ろう」
茜は黙って俺の話を聞き、やがてゆっくりと顔を覆っていた両手を降ろした。
茜は涙でくしゃくしゃになった顔で、しかしやはり首を横に振る。
「違うんです、プロデューサー。私、逃げちゃったんです。みんな私のことも心配してくれてたのに、私が弱くて、みんなのことを信じきれなくて、それでみんなの前から逃げちゃったんですよ」
茜は力なく微笑む。右の頬を、涙が流れていった。
「怖かったんです。私は……私には、元気なことくらいしかとりえがありません。だから、私がアイドルじゃなくなったって聞いたとき、私、みんなといっしょに居る資格がなくなっちゃったって思っちゃったんです。みんな、強くて、かっこよくて、きれいで、キラキラしてて……私は、アイドルじゃなくなったら、みんなと並んで立てないんじゃないかって。それで、怖くて」
「そんなことは……」
「そんなこと、皆は気にしたりしないって、私もわかってます。でも、元気が取り柄で、何でも素直に信じて、バカ正直に突っ走る私が、私がみんなのことを信じられなくて、それで怖がって逃げちゃうなんて、そんなこと絶対にしちゃいけなかったんです! アイドルじゃなくなって、元気もまっすぐさもなくなっちゃったら……私には……みんなに合わせる顔がないんです……」
茜の声の最後のほうは、ほとんど掻き消えるように弱々しくなった。
俺は立ち尽くして、茜を見つめた。
ようやく、事態を理解できた。茜はユニットから外されたことをショックに思っているのではない。
自分と戦っているんだ。
アイドルであることが危ぶまれたときに自分がしてしまった行動と、これまで保ってきた自分とのギャップに苦しんでいる。
アイドルという称号も、仲間も『日野茜』が獲てきたものだ。
しかし『日野茜』が『日野茜』でなくなってしまったら、そもそもの前提が崩れる。
どんなアイドルでも、いやアイドルでなくても、誰にでも起こりうる、自分自身と向き合う、嫌でも向き合わされる機会。
これはピンチでもあり、チャンスでもある。もし乗り越えれば、茜はさらに大きく、強い輝きを持てるだろう。
でももし、くじけてしまったら、自分が自分であることをやめてしまったら、そこで途絶えてしまう。
俺の幼なじみが、そうなってしまったように。
俺は目を細めた。こんなとき先輩ならどうするか――と、一瞬考えて、俺はすぐにその考えを頭の外に追い出した。
俺は俺のやり方で、茜をサポートする。もう、なにもしないで、大切な人が喪われるのは嫌だ。
俺はひとつ深呼吸をして、背中に土手の下り坂を背負うかたちで、遊歩道の端に立つ。
70 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:18:46.68 ID:23vyEUVD0
「茜」
俺が声をかけると、茜がこちらを見た。
「俺にタックルしてこい」
「……えっ?」脈絡のないことを言われて、茜は困惑した表情になる。「で、でも」
「ここがどこだか、覚えてるか?」
俺は茜に微笑みかける。
茜はあたりを見回して――泣きそうな顔で頷いた。
そう、ここは俺が初めて茜と出会い、そして茜をスカウトした場所。
アイドルとしての茜が始まった場所だ。
そして、プロデューサーとしての俺が始まった場所でもある。
「あの時のことを、思い出したいんだ」
「で、でも! 危ないですよ!」
「大丈夫、受け身はちゃんと取る」
「……」
茜は迷ったような顔をする。俺はもう一押しすることにした。
「頼むよ」
「……わかりました」
「全力で来いよ」
「はーッ、はーッ、はーーーーー……」
茜は深く、深く息をつく。俺は直立して茜を待った。
茜は目を閉じ、祈るように天を仰ぐ。そして――
「……ボンバーーーーッ!」
茜は空に向かって叫ぶ。
この声だ。鼓膜を破られそうなほど、強くて大きくて元気な声。
あのときより、さらに声量が大きくなったんじゃないだろうか。
レッスンの成果だと、俺はうれしくなった。
直後、茜は俺とのあいだ、約十五メートルの距離を疾走し、その全体重をかけて俺にタックルした。
衝撃。
小柄で体重の軽い茜とはいえ、人一人が全力でぶつかってくれば、衝撃は相当なものだ。
重心を落として身構えることすらしていなかった俺は、そのまま斜め後ろ方向へとバランスを崩す。
俺は土手をごろごろと転げ落ちた。視界の上下左右が激しく入れ替わって、地面に身体のいろんなところをぶつける。
もちろん、頭は両腕でガードしている。二度目なら慣れたものだ。
転がっているあいだ、たくさんの想い出がフラッシュバックする。
茜との出会い、比奈との出会い、春菜、裕美、ほたるとのたくさんの想い出。
どれも、愛おしいものばかりだ。
土手の下で体はとまり、俺は河川敷の芝生に両手を投げ出して、大の字に寝転がった。
71 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:20:30.35 ID:23vyEUVD0
「プロデューサー! 大丈夫でしたか!?」
声のする方を仰ぎ見る。あの日は夕日で逆光だった。今は昼前、太陽が反対側の位置だ。茜の顔がよく見える。
「はー……ああ、大丈夫だ。ケガもしてない」
「スーツ、汚れませんでしたか!」
茜は土手を降りて、俺のところまで走ってくると、膝をついて、寝転がる俺の顔を覗き込んだ。
「ああ、濡れてもいない。それに、どうせこの前適当にスーツケースにしまってシワだらけだし、そろそろ――」
そこまで言うと、茜ははっとした顔をした。
「……クリーニングに出そうと思っていた、ですか?」
「ああ、その通りだ。……ははっ」
俺は笑う。それでようやく、茜も微笑んだ。
「懐かしいですね」
「俺もそう思う。でも、たった数か月前のことなんだよ。すごくいろんなことがあったな。茜がアイドルになって、皆でいろんな仕事して……濃かったよな、この数か月」
「はい」
「……楽しかった」
「……はい」
茜は穏やかに肯定する。
「……茜たちに、言ってなかったことがあるんだ」俺は茜を見た。茜は不思議そうにしている。「俺、茜たちのプロデューサーやるって言っといて、ずっと自分から逃げてたんだよ。幼なじみとの小さいころの約束が果たせなくてさ。幼なじみとはもう会えなくなって、それがトラウマになった。ずっと適当に、自分から逃げたまま生きてた。お前たちのプロデュースも、最後に先輩に任せて逃げようとしてたんだ。怖かったんだよな、昔に俺自身がした喪失を繰り返すのが」
「そんな、プロデューサーは私たちをすごくサポートしてくれています!」
「そう思うか? でも実際は、実家に逃げ帰って、結果、茜にも辛い思いさせてさ。茜はみんなに合わせる顔がないって言ってたけど、俺のほうがずっとダメだったんだよ。みんなに本当の顔を見せずに仕事してたんだからな。でも……実家に引きこもってたら、こいつに、再会した」
俺は胸のポケットから、さいきっく・わらしべ人形を取り出す。茜があっと驚きの声をあげた。
「これ、ユッコちゃんの!」
「信じられないよな。お袋がもらってきた。そのとき思ったんだよ。最後までお前たちのプロデュースをしたいって。実家に帰って、こんな奇跡に出会うまでそんな自分の気持ちにすら向き合えなかったんだからな。笑えるよ、自分の弱さに」
俺は茜にさいきっく・わらしべ人形を握らせる。
「俺もみんなにも、茜にも合わせる顔はないけど、頑張るよ。失敗した分はこれから取り返す。茜はどうだ、アイドル、続けたいか?」
「私……」
茜はさいきっく・わらしべ人形を握り締めて、涙を流した。
熱い雫が俺の顔にかかる。
茜はふうう、と震えた熱い息を吐いて、それから目を見開く。
「私、アイドル、やりたいです! みんなといっしょに! 沢山迷惑をかけてしまいました! でも、やっぱりみんなと一緒にやりたいんです、こんどこそ、元気な私で、最後まで!」
俺は目を閉じて、茜の言葉を心に刻んだ。
「ああ。それで十分だと思う」俺は体を起こして、茜の前に立つ。「みんなに申し訳ないと思った分は、二人ともこれから挽回しようぜ。辞めるのはいつでもできる。でも、辞めてしまったら、取り戻したいものも二度と取り戻せないんだ」
言って、俺はポケットから名刺入れを取り出し、茜に名刺を差し出す。
「日野茜さん。貴女を、スカウトします。アイドル、やりましょう」
俺が差し出した名刺を、茜は目に涙を溜めて、けれども、晴れやかな笑顔で受け取った。
「はいっ!」
河川敷に、茜の大きな声が響いた。
第十一話『君といた未来のために』
・・・END
72 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:22:10.27 ID:23vyEUVD0
「一体何がどーなったら、そんなボロボロになれるんスか」
茜を連れてプロデューサールームに戻った俺を見て、比奈が呆れたような声で言った。
たしかに、もともとしわくちゃだったスーツで土手を転がったものだから、枯草がまとわりついて、俺は事故にでもあったかのような悲惨な姿になっている。
「でも、茜ちゃんが帰ってきてくれて、よかったです!」
春菜が嬉しそうに言うと、裕美、ほたるも大きく頷いた。
「へへへ……ご迷惑とご心配をおかけしました」
茜は恥ずかしそうに頭を掻くと、丁寧に礼をした。
裕美とほたるが駆け寄り、茜に抱き着く。
「ま、一件落着、かな? あとは新曲のリリースだね。みんな、頑張って。応援してるよ」
先輩が穏やかな顔で微笑んだ。
「はいっ!」
俺たち六人は、そろって大きな声で返事をする。
----------
翌週のための準備を終えた俺は、美城プロダクションのエントランスから外に出た。
夕日がまぶしく差し込んできて、目を細める。
――と、プロダクションの前に、なにやら迷っているような表情の女性を見つけた。
細身にショートヘアで、年のころは比奈よりすこし上だろうか。
「美城プロダクションになにかご用事ですか?」
俺は女性に話しかける。
「あ、えっと……用事っていうか、ちょっと悩んでいることがあって」
「プロダクションにご用事なら、中に受付がありますが……」
「えっと、その……」
そのまま、女性は口ごもって、視線を落とした。
俺は困った。事情が見えないが、見ず知らずの人物にこのまま付き合い続けることもできない。
どうしたものか――そのとき、俺の頭にひらめきが浮かんだ。
「なにか、お悩みですかね。もしお悩みのようなら、いいものがあります」
俺はポケットからさいきっく・わらしべ人形を取り出す。手渡すと、女性は目を丸くした。
「……なんですか、これ?」
「悩みを解決してくれるという人形です。俺の悩みは解決してもらいましたから、あなたにお渡しします。もしあなたの悩みが解決したら、また次の誰かに渡してあげてください。では、申し訳ないですが、これで」
「あ、はい、あの、ありがとうございます」
女性の返事を聞いて、俺はその場を後にする。
女性は不思議そうに、さいきっく・わらしべ人形を見つめていた。
願わくば、彼女の悩みが解決されますように。
73 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:23:38.07 ID:23vyEUVD0
ここまで長い間お付き合いいただき、誠にありがとうございました。
次が最終話です。23:35から投稿いたします。
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/28(金) 23:24:46.78 ID:40lkHwEe0
うぽつ
誰だろ?
75 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:35:13.95 ID:23vyEUVD0
――上条春菜さんは、どういう経緯で今回のユニットに参加することになったんですか?
「私は、新しいユニットをやるから、と呼ばれて参加することになりました! プロダクションの偉い人のお眼鏡に叶ったってところでしょうか!」
言いながら、春菜は得意顔で眼鏡のテンプルをつまんでみせる。
「今回のユニットは、初めてアイドルとして活動する人もいて、活動期間も長めに取られていましたし、最初はいろんな不安があったんですけど、今はとっても楽しく活動しています! 一緒に活動したみんなもどんどん素敵になっていって、私自身もなんだか、すごく成長できたって実感していて、その……」春菜は少し恥ずかしそうにする。「とっても、いい仲間になれたって、思っています!」
――荒木比奈さんは、このユニットがアイドルとしてのデビューとなるそうですね。
「そうっス。周りはみんなアタシより年下っスけど、アイドルとしてはみんな先輩っスから、最初は肩身が狭いっていうんでしょうか、はやくしっかりしなくちゃって思ってたんスけど……すぐに、気にならなくなったっス。ってああ、もちろんテキトーにやるとかそういうことじゃないっスよ? 気負わず頑張ればいいって思えるようになったってことっス」
比奈はゆるく微笑む。その表情に緊張は感じられない。
――どうして、アイドルをやることになったんですか?
「えーと……この業界に興味はなかったんスけど、友達が勝手に応募したのがきっかけっス。えへへ、虚実入り混じってるっスけど、これ言ってみたかったんっスよね。そーいうことにしといてくださいっス。え、ダメ? あはは……引きこもってたところを、スカウトしてもらったッス。日向に出てきたからには頑張るっスよ」
――白菊ほたるさんは、この活動でなにか、得られたものはありましたか?
「得られたもの……ほんとうに、数え切れないくらいたくさん、大切なものをいただきました」
ほたるは胸元でぎゅっと拳を握る。
「これまでアイドルとして活動していて、いろんな大変なこと、辛いことがありました。けれど、手を差し伸べてくれる人達が、仲間たちがいて……きっと、これまでの辛いことはぜんぶ、これからのために必要なことだったんだって思えるようになったんです。辛いことが十あっても、幸せなことを百、ううん、もっともっと、私を支えて下さっているファンのみなさんに差し上げられたらいいなって、いまは思っています」
――あっ!? ……すいません、機材のトラブルが発生していて、撮れてなかったみたいです……
「ああ、やっぱり……すいません、こちらこそ……でも、大丈夫です。もう一度、お願いします」
そう言って、ほたるは微笑んだ。
76 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:37:17.95 ID:23vyEUVD0
――関裕美さんは、最初、このユニットに参加することになったとき、どう感じましたか?
「最初は、不安だった……知らない人と関わるのも苦手だし、人前に出ないお仕事のほうがやりたいって思っていたから。きっと、スタッフさんやメンバーのみんなにも、幻滅されちゃうだろうって、思ってた」
裕美は昔を懐かしむみたいに、空中を見つめていた。
「今は、あの時はどうしてあんなに不安に思ってたんだろうって、不思議に思ってるの。ううん、いまでも不安に思うことはたくさんあるけど……ええと、不安でも、大丈夫って思えるようになったのかな。不安なことは悪いことじゃなくて、できるようになる一歩前なんだって。それに、支えてくれる人達もいっぱいいるし、頑張れる……頑張らなきゃ、頑張りたいって思えるようになった、かな」
裕美ははにかむ。
「このユニットをやれてよかったって思ってる。だから、応援してくれる皆にもその気持ちが届くといいな」
――日野茜さんは、
「はいっ!」
――おおっと、すごく元気ですね。日野茜さんもこのユニットがアイドルとしてのデビューになるそうですね。なにがデビューのきっかけだったんですか?
「私も、スカウトしていただきました! 最初に声をかけてもらったときは驚いて、逃げ出してしまいました。家に帰って、落ち着いて考えたら、ちょっとやってみたいなって思って、それで参加してみることにしたんです! それからは毎日が楽しくって、きらきらしていて! レッスンも、お仕事も、ぜんぶ初めてのことばっかりで、とっても充実していました!」
――ユニットのみなさんとはどうですか?
「とっても素敵な仲間に巡りあえました! 本当に感謝しています!」
茜は姿勢を正し、凛とした表情で答えた。それから表情を崩す。
「ユニットのみんなも、それからプロダクションのみんなも、本当に友達がたくさん増えて、毎日が楽しいんです! そんな私の、私たちの楽しい、嬉しいっていう気持ちを、みなさんに届けられたらいいなと思っています! 新曲、応援、よろしくおねがいします!」
----------
「はあーっ、緊張しました!」
茜はスタジオから出ると、ほっと胸をなでおろす。先に撮影を終えた比奈たちが茜をねぎらった。
「よし、ばたばたしてすまないが、次はストアイベントだ、表のマイクロバスに乗ってくれ」
俺は時計を見ながら五人に指示をする。
今日はついに、五人のユニットの曲が発売される日だった。
収録は概ね順調に終わり、事前の告知でも反応は上々。
先輩のアシスタントをしていた時期の経験からすれば、準備しただけの成果が出ている、といったところだろう。
今日は複数の店舗でサイン会、そのうち一つではインストアライブ。ライブはネット配信も行われる。
今は配信のための映像素材としてメンバーのコメントを収録していたところだった。
「それじゃ、ありがとうございました、あとはよろしくおねがいします!」
残っているスタッフに挨拶をして、俺もスタジオを飛び出す。
「みんな忘れ物ないな? よし、すんません、出発してください」
俺はマイクロバスの助手席に乗り込むと、ドライバーに言いながら扉を閉めた。
マイクロバスが走り出す。
「いやー、忙しすぎてこれからライブって実感がないっスね……本番、大丈夫でしょーか」
「サマーフェスのときみたいに大きな会場というわけじゃないですから、お客さんとの距離も近いですし」
「近いほうが逆に緊張しそうっス……」
春菜と比奈が談笑している。
その後ろの席では茜とほたるが真剣な眼で歌詞カードを見つめていて、さらに隣の席では裕美が刷り上がったCDを手に取り、感慨深そうな目で見つめていた。
77 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:40:45.83 ID:23vyEUVD0
「はい、今日はこちらの五人に来ていただいています、美城プロダクションの新しいアイドルユニットの皆さんです! 本日ユニットソングがリリースということで、記念すべきレコ発、インストアライブ! ということになりましたー! 聴いたところによると、本当に今日までユニット名も秘密だったんですって?」
インストアライブ会場。司会の女性にマイクを向けられ、春菜が困ったように笑う。
「あはは、ええと、ちょっと成り行きみたいな感じなんですけど、私たちのユニット名、なかなか決まらなくて……ギリギリでようやく、メンバーのみんなでこれしかないねって言って決まったんですけど、いろんなところで未定って言っちゃったから、もうこうなったら発売日まで秘密にしておこう! ってことになったんです」
「なるほど! それなら、せっかくですからユニット名も、私からお伝えするより、みなさんから発表していただいたほうがいいですよね! それでは、さっそく曲からいっちゃいましょうか! 歌っていただきましょう! お願いします!」
「はい!」
五人はそろって椅子から立ち上がり、ステージに立つ。
茜がマイクを握る。
「ユニットが結成されてから、色んなことがありました! 楽しいこと、大変だったこと、ぜんぶ、この五人で分かち合ってきました! この五人だからできたこと、乗り越えられたこと、たくさん、たくさんあります! 私たちの曲を、どうぞ、聴いてください! 私たちは!」
茜は、大きく息を吸い込む。
―――――――――――――――――――
最終話『FIVE』
―――――――――――――――――――
「お客さん、みんな楽しそうにしてくれてたね」
移動するマイクロバスの中、裕美は嬉しそうに微笑んだ。
「本当に。でも、緊張しました……無事に終わって、良かったです」
ほたるがほっと息をつき、ペットボトルの水を口にする。
「ここからはサイン会だ。次の会場でイベント開始前に軽食が取れるから、腹が減ってるだろうがもう少し辛抱してくれ」
俺が言うと、はーい、と五人の返事が返ってくる。
「茜ちゃんのMC、ハキハキしててすごくよかったっスよ」
「そうですか? ありがとうございます」
比奈が褒めると、茜は恥ずかしそうに頭を掻いた。
「でも、なんだか……『五人』って言うのがちょっと変な感じでした。ずっと、プロデューサーさんも……プロデューサーさんだけじゃなくて、今日のドライバーさんもそうですし、トレーナーさん、スタッフさん、プロダクションのアイドルの皆……いろんな人たちに支えられてきましたから、五人って言ったけど、もっとたくさんだなって」
「私もデビューしたての時に、同じことを思いました」春菜が会話に入る。「ふだん私たちが観ていたアイドルの姿は、ほんとうにたくさんの人の手で支えられてるんだって」
比奈が大きく頷く。
「漫画も、原作と作画で分かれたりしますし、仮に一人で両方やってても、本にしてくれる印刷所さんや、読んでくれる人が居ないと成り立たないっス。アタシたちアイドルも、アタシたちだけじゃなくてプロデューサー、スタッフさん、ファンの皆さん、みんなで物語を作ってるんスね」
「そう思ってくれてるだけで十分だ。裏方は裏方で、見えてなくたってプライドもってやってるからな」
助手席に座った俺は、前を見たまま言って、それから一瞬だけ、となりのドライバーに目を向け――目が合った。
お互いに笑って頷き合い、また前を向く。
晴れた空が眩しかった。
シートに体重を預け、俺もペットボトルの水で喉を潤す。
ここまで、とにかくすべてが激動だった。
それでもなんとか、五人をCDデビューまで連れてくることができた。
肩の荷が下りた、とはさすがにまだ言えないが、ここまでこれたことに、充実感を感じるくらいは許されてもいいだろう。
比奈の言ったように、アイドルは一人ではできない。
同時に、プロデューサーも、一人ではできなかった。
茜も、比奈も、春菜も、裕美も、ほたるも、そして俺も。
たくさんの人々に支えられて、いまここに立っている。
自然と、俺は感謝していた。
先輩プロデューサーに。茜たち、ユニットの五人に。両親に。これまで関わってきたすべての人に、感謝したかった。
ゆっくり恩返しをしていこう。そう考えながら、俺はペットボトルをドリンクホルダーに戻す。
「よーっし! 次のお仕事もがんばりましょう!」
「おおーっ!」
茜が大きな声で言うと、比奈、春菜、裕美、ほたるがときの声をあげる。
マイクロバスは、次の目的地に向けて走っていった。
五人の活躍は、続いていく。
78 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:42:20.46 ID:23vyEUVD0
----------
季節はめぐり、冬がやってきた。
年末のウィンターフェスで、五人のユニットとしての活動はピリオドを迎える。
ウィンターフェスの舞台袖で出番を待つ五人の顔には、それぞれにさわやかな充足感が見て取れた。
俺はそれを少し離れたところから眺める。
茜と比奈は、新曲リリースから今日まででいくつものステージを経験し、もう新人アイドルだった夏の頃のような緊張は見られない。
春菜、裕美、ほたるも、夏に比べて一段と魅力を増している。
その頼もしい姿を見ながら、ふと、俺は自分の心に寂しさのようなものが去来していることを自覚する。
「……どうしたんですか?」
声をかけられてとなりを見ると、千川ちひろさんが俺の顔を覗き込んで不思議そうにしていた。
「なんだか、昔を懐かしむような、そんな顔をしていましたよ?」
そう言って、ちひろさんは笑う。
きっと、俺の思っていたことを判っているのだろう。
「このユニットの活動も、これで終わりと思うと……少し、寂しいですね」
「プロデューサーとしては初仕事でしたものね。親心みたいなものでしょうか? ……お疲れ様でした、プロデューサーさん」
「ありがとうございます」
「よくやってくれたよ、おつかれさま」壮年の社員がこちらに近づいてくる。「けれど、これからだ。これからも、彼女たちの道は続いていく。彼女たちの物語は終わりじゃない。けれど、プロデューサーの作った道があるからこそ、彼女たちは走り続けられるんだ。ここまで、ありがとう」
「はい」
俺は舞台袖の五人を見る。もうすぐ前の曲が終わり、五人の出番だ。
「さあ、送りだしてやってくれよ」
壮年社員に促され、俺は五人のところへ歩いていく。
「プロデューサー!」
茜がぱっと顔を輝かせた。
「ついにここまで来たな。俺からはもう何も言うことはない」そう言いながら、俺は心の内で五人に向けてありがとうを唱える。「全力で楽しんでこい」
俺が言うと、茜は右手を前に出し、そこに五人が手のひらを重ねる。
「全身全霊、全力でやりましょう! ファイヤー!」
「さすがにもう、リア充じゃないなんていえないっスね。やりきりましょー」
「今日の眼鏡は特別です! いつも特別ですけど、特別中の特別なんですよ!」
「この五人でやれてよかった! そう思うの、心から!」
「幸せです……本当に!」
舞台袖のスタッフが片手を挙げる。
「よし、時間だ。行ってこい!」
俺の声で、五人の手のひらはぐっと沈み。
「おおーっ!」
そして、高く掲げられた。
曲のイントロが始まる。
スピーカーの音が胸を打つ。
ステージのライトが明滅し、客席のライトは茜達の色になる。
そして、五人は茜の掛け声に乗って光の海、歓声の波の内、輝くステージへと飛び出していく。
俺はその姿を見つめていた。
涙は流さない。きっと二度とは訪れないこの瞬間を、涙でぼかして観るなんて、勿体ないことをするわけには行かない。
俺は五人の一挙手一投足を、一生忘れないように瞼に焼き付けた。
79 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:44:43.11 ID:23vyEUVD0
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そしてさらに季節はめぐり、また次の春がやってきた。
「おい、寝るな、起きろ、おい」
「んがっ……」
声をかけながら何度か肩を叩いて、俺のとなりで船を漕いでいた同僚はようやく目を覚ました。
午後一番、どうしても集中力に欠け眠くなるのは、理解はできる。というか、身に覚えがある。
眠たげに目をこする同僚に、俺は自分の過去の姿を重ねて苦笑いした。
俺はプロダクションの全体会議に出席していた。
美城プロダクションの社内は新しいセメスターを目前に迎え、にわかに騒がしくなっている。
いくつかの新企画、人事異動が発表され、いまはどうにも表情の読みづらい社員がかなり大規模な新プロジェクトについての発表をしていた。
それからもいくつかの発表、連絡が続き、最後に役員から檄が飛び、会議は終了した。
俺は配布された資料をクリアファイルにまとめると、人事異動で新たにプロデューサーになった同僚と、その同僚にドリンクを渡している千川ちひろさんを見て、微笑ましく思いながら大会議室を後にした。
80 :
◆Z5wk4/jklI
[saga]:2017/07/28(金) 23:47:03.78 ID:23vyEUVD0
----------
プロデューサールームに戻った俺は、デスクに置いてあるデジタルフォトフレームの電源を入れると、コーヒーを一口飲んで、パソコンの画面に向き合う。
茜、比奈、春菜、裕美、ほたるの五人は、それぞれの新しい道を歩んでいる。
比奈と春菜は、川島瑞樹らとの新しいユニットでの活動を始めた。
瑞樹が多忙なため、なかなか全員が揃うことがないようだが、ユニットとしてはうまく回っているらしい。
裕美とほたるも、新たなメンバーと次のステップへと進んだ。
先日の仕事で同じ現場になったときには、驚くほど成長した姿を見せてもらった。
出会った頃に感じた危うさは、二人からはもう感じられなかった。
そして、茜は。
「おはようございますっ!」
プロデューサールームの扉が開き、元気な声が飛び込んでくる。
トレードマークの赤いポロシャツを着ている、見慣れた姿の茜だった。
「おはよう、相変わらず早いな」
俺は茜に声をかける。
茜は「はいっ」といつものように元気に言うと、応接用のチェアに座る。
「茜、連絡してあった今日のスケジュールだが、ひとつ変更がある」
「え? そうなんですか?」
茜は意外そうにこちらを見る。
「ふふ」
俺はめいっぱい期待させるように意味深に笑ってみせてから、パソコンを操作する。
プリンターが動いて、A4サイズの紙を一枚吐きだした。
俺はそれを取り、茜に向かって突き出してやる。
「おめでとう。この前受けてた、怪獣映画のヒロインのオーディション、通ったぞ」
茜は俺の突き出した書類を見て。
俺の目を見て。
もう一度書類を見つめ、それから顔をぱっと輝かせた。
「ほんとうですか!」
「ああ。今朝にオーディション通過の連絡が来た。ってことで、この打ち合わせを入れた新しいスケジュールがこれだ」俺は茜に変更されたスケジュールのプリントアウトを渡した。「これから忙しくなるぞ。覚悟しておけよ」
「はいっ!」茜の瞳に、炎のような闘志が灯る。「ううー、燃えてきました! ちょっと、気合を入れるために走り込みを!」
「これから仕事だ、我慢しろ」
言って、俺は笑う。
「次の夏のフェスにもソロの出番がある。かなりのハードなスケジュールだが、体調には十分気をつけろよ。俺もできるだけサポートする」
「頑張りますっ! やりますよっ!」茜は腰を落とし、両手を握り締めて、それから天を衝くように拳を突き上げる。「ボンバーーーーッ!」
プロデューサールームに、窓が割れるんじゃないかと思うほどの元気な声が響いた。
茜もまた、新しい道を全力で突き進んでいる。
日野茜。
荒木比奈。
上条春菜。
関裕美。
白菊ほたる。
彼女たちの活躍は、これからも続いていく。
一つの物語が終わっても、また次の物語へ。
アイドルたちは、これからも力強く、輝いていく。
「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
〜喪失Pと五人のアイドル〜
・・・END
81 :
◆Z5wk4/jklI
[sage]:2017/07/28(金) 23:50:26.86 ID:23vyEUVD0
以上です。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
これからもこの五人と、登場した素晴らしきアイドルたちをどうぞよろしくお願いいたします。
82 :
◆Z5wk4/jklI
[sage]:2017/07/28(金) 23:56:26.36 ID:23vyEUVD0
なんとか最後まで終えることができました。
HTML化依頼しましたが、もしご感想や作中の不明点、そのほかご質問等ありましたらスレに書いていただければ可能な限りお返事させていただきます。
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/29(土) 01:00:18.87 ID:NfbD/Can0
ほたるのSSRひけんかったけど
このSSはいい王道でした乙
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/29(土) 01:02:00.19 ID:wtPxOH7o0
乙
蘭子のSSR出なくて荒んでた心が浄化されたわ
結局あの女性はわくわくさん?
85 :
◆Z5wk4/jklI
[sage]:2017/07/29(土) 07:37:42.12 ID:1DNd/xCa0
>>83
ありがとうございます! 自分もほたるのSSRは引けてないのでいつか……いつか……!
>>84
ありがとうございます。「あの女性」は11話タイトル後にPから人形を受取った女性でしょうか。
この女性については今のところ謎のままにさせていただきます。
あんまりしっかり予定立ててないですが、また作品を投下するときのために入れたパートです。
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/29(土) 11:13:59.79 ID:58+tEqkR0
お疲れ様でした!
本当に真摯な作品で、心打たれてしまいました。
次回作も楽しみにしてます(`・ω・´)ゞ
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/07/29(土) 19:28:14.16 ID:WeMURu5y0
乙です
とても自分の好みにあったssでした
また新たなssの構想が出来たら投稿してください
88 :
◆Z5wk4/jklI
[sage]:2017/07/30(日) 00:12:41.69 ID:Hz/QIdii0
>>86
ありがとうございます! 書き切れてほっとしています!
また何らかの形で!
>>87
ありがとうございます! むしろ「こういうのが読みたい」みたいなのがあると、想像が掻き立てられて次回が早いかもです!
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/30(日) 02:40:09.47 ID:fVFG+C0zo
夢破れて消えたPの幼馴染は今どうなっているのだろうか
嫌な想像が浮かぶ
90 :
◆Z5wk4/jklI
[sage]:2017/07/30(日) 10:17:49.17 ID:Hz/QIdii0
>>89
まだ20代前半ですし、きっと大丈夫だと思います。
プロデューサーが究極的に「いい人」だったのは、彼の周りの人物が「いい人」だったからで、
幼馴染もきっと立ち直って、別の道を元気に歩んでいる事でしょう。
もしくは、メールのやりとりが途絶えただけで、連絡自体はつくので、プロデューサーが何か接触しているかもしれませんね。
91 :
◆Z5wk4/jklI
[sage]:2017/07/30(日) 23:11:29.49 ID:Hz/QIdii0
そういえば、どのくらいの方がどこに気づいたかわかりませんが、
作中に色々引用、オマージュ、もろもろ入れましたのでお気づきの方はニヤっとしていただけたかと思います。
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/31(月) 23:15:02.33 ID:Ovg58JIMo
おつ
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/08/06(木) 04:15:22.50 ID:ztbo6PQR0
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