【ガルパン】西絹代の無邪気な魅力 と 邪気な人々

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1 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:23:26.52 ID:Nq27nfbX0
※ 天然ジゴロな西隊長を、西隊長自身の目線で語るだけのSSです。
  私も天然ジゴラーな西隊長を書きたかったんや……。


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2 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:24:06.46 ID:Nq27nfbX0

勢い良くパンと合わせた両手に、皆の視線が集まる。

「いたーだきーます!」

私の号令の後に続く、隊員達の元気な声。

「いたーだきーます!」


「やった! 今日はシャケであります!」
「おおい! 急須を取ってくれ!」
「早速、豚汁のおかわりに吶喊!」

隊員達による賑々しい空気が、食堂に満ちていく。

私はいつもと変わらないその喧騒に苦笑しながら、箸を手に取った。

銀シャリと豚汁、漬物、焼き鮭。

今日の夕飯のメニューだ。
3 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:24:42.08 ID:Nq27nfbX0

「ふむ、今日の漬物は野沢菜か」

まずは漬物を口の中に放り込む。

身体が塩分を欲していたので、この野沢菜は私の人生史上、最高に美味い気がした。

戦車道の授業で散々汗を流し、空腹をこらえながら風呂に入った後の、この夕食である。

美味く感じないワケがない。

野沢菜の程よい塩味と酸味が、私の空腹中枢をさらに刺激した。

急いで白米を掻っ込みたくなる……が、隊長である私が隊員達の前で無作法な姿を見せるわけにはいかない。

米は八十八回噛んで食べろとも言うしな。

私は静々と白米を口に運んだ後、豚汁を手に取った。
4 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:25:14.18 ID:Nq27nfbX0

夕食開始、5分後。

気が付いたら茶碗を手にもって、白米を掻っ込んでいた。

ううむ、今日もダメだったか。

豚汁に焼き鮭の組み合わせで、自制心を保てと言う方がおかしいのだ。

……なんて言い訳を毎回している気もするが、まあ早飯食いは我が知波単の伝統であるし、それに今日はこの後、私から皆へ連絡事項があるしな。

このまま飯を掻っ込んで、ちゃっちゃか満腹になってしまった方が良いか。


そう思って再度、豚汁の椀を手に取ろうと視線を前に向けたら、

真正面に座る玉田が私の方を見ていた。 赤い顔して。


「ん? どうした玉田?」

「ふぁ!? いっ、いえ! 西隊長の見事な食べっぷりに見とれておりました!」

「ああ、いやぁ、食い意地を張った姿を見せてしまったな。はは」


あらら、案の定みっともなかったか。
5 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:25:48.78 ID:Nq27nfbX0

私は羞恥心を誤魔化したくて、斜向かいに座る細見に視線を向けた。

細見も私の方を見ていた。 玉田と同じく赤い顔をしていた。


「んん? なんだ細見?」

「ふぇ!? いやっ、あのっ、そのっ! 」

「確かに隊長たる者が、ガッついて飯を喰らうのはよろしくなかったかな。ははは」

「いえいえ! そうではなくて! ……その……隊長の御髪が……」

「私の髪?」


うーん、風呂から出て髪を拭いたときに、糸くずでも付いたのかな?

それとも、寝間着代わりの浴衣を着た際に、髪に何か付いてしまったのだろうか?

いや、ゴミじゃないのかもしれない。

首元が蒸れるのが嫌だったので、髪を後ろで束ねたのがおかしかったか?

確かに、馬の尾のような髪型になってしまっているが、そんなにおかしいかなコレ?

うなじが涼しくて良いんだけどなぁ。
6 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:26:19.87 ID:Nq27nfbX0

玉田と細見が、私の髪に何か気になることがあるのは分かった。

しかし、場所が頭部であるだけに、自分では何がおかしいのか確認が出来ない。

なので、別の誰かに確認してもらおうと右隣に座る福田を見た。

福田も赤い顔で私を見ていた。熱にうなされたような顔をしている。

なんだろう? そんなに私の髪がおかしいのだろうか。

私は馬の尾のように垂れている自分の髪の束を巻き上げて、福田に近づいた。


「すまん福田、私の髪に何かおかしいところはあるだろうか?」

「ふぬぁぁ!? とぅあっ、隊長殿!? いけないであります!」

「え、いけないってなにが?」


いったい何だというのだろう?


そういえば以前から、この風呂上がりの夕飯時になると、隊員達の視線をチラチラ感じていた。

まあ私は隊長だし、夕食の号令も私が掛けるから、皆が気にするのは当たり前なんだが、

それにしても今日は特に皆の視線を感じる……気がする。
7 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:26:57.31 ID:Nq27nfbX0

そんなふうに私が訝しんでいると、何やら目線で語り合った玉田・細見・福田の三人が、意を決したような顔でうなずき合った。

そして福田が高らかに右手を挙げた。 左手には握り飯を持ったままだ。

「不肖、福田! 西隊長殿に具申いたします!」

「お、おう、福田、どうした?」

「我が知波単は女学園であります!」

「?? そ、そうだな? それで?」

「我々は殿方に対する免疫力が皆無であります!」

「うん、私もそうだけど……どうして急に殿方の話なんだ?」

「特に、益荒男のような凛々しさと、かつ、艶やかな色気も持っている御仁には、イチコロであります!」

「お、おう……うん?」

「今の西隊長殿は、あたかも五条大橋の欄干に立ち、月を背にする牛若丸のごとしであります!」

「う…うしわか…?」

「凛々し過ぎであります! 艶やかさがゴボゴボ漏れ出ているであります!!」
8 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:27:32.36 ID:Nq27nfbX0

髪の話をしていたはずなんだが、なぜか牛若丸が出てきた。

私が脳内を「???」で埋めていると、今度は玉田が手を挙げた。

「不肖、玉田! 私も隊長に具申いたします!」

「お、おう?」

「西隊長殿の八面六臂なご活躍ぶりは今更語るまでもなく、そのお姿は我々隊員にとって眩く輝く一条の光であります!」

「あ、ありがとう…?」

「それでっ、隊長の射干玉(ぬばたま)色の御髪が、そのような素敵な髪型に整えられると、憧れ指数が二次関数並に跳ね上がるのであります!」

「あこがれ、え? なに?」

「さらに、白く細いうなじが露わになっているせいで、凛々しさの中にで艶やかさが完璧な形で同居しているのであります!」
9 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:28:21.75 ID:Nq27nfbX0

「不肖、細見! 私だって西隊長殿に具申いたします!」

今度は細見が手を挙げた。

「加えて、西隊長殿は現在、風呂上がりの浴衣姿であります!」


私は自分の浴衣姿を見た。 もうすぐ10月になるとはいえ、風呂上がりには蒸し暑さを感じる夜だ。

寝間着代わりの浴衣でおかしい所など無いはずだが…。


「西隊長殿は、そんな胸元の防御力が低下している状態で石鹸の香りを振り撒くという、魅惑の金床作戦を無意識に展開しているのであります!」

「え? 胸元だらしない? そ、そうかな?」


確かに今着ている浴衣は寝間着代わりの物なので、薄手で、しかも胸元がちょっと開いている。
(※ 中にタンクトップ的な物は着ています)


「そっ、そんな状態でっ、飯を掻っ込む仕草なんてされた日にはっ、

 うなじ−首筋−鎖骨−胸元に至る黄金路が顕現し、我々の視線を集めてしまうのは道理……いや、必定であります!」

「ちょっ、何を言っておるのだ?」

「いいえ! 西隊長にはご自覚がないのです! 我々だからいいものの、これが他の学園艦の女生徒らであったら、いらぬ面倒を引き起こすことになりますぞ!」
10 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:29:07.08 ID:Nq27nfbX0

いつの間にか、謂れのない罪で裁かれてる私。

なんで私が他校の女生徒をたぶらかすことになるのだ。

隣を見たら、福田が口を半開きにして私をガン見しているし、玉田は両手で目を覆っているが、指を少しだけ開いてこちらを覗いている。

ううむ、さすがにこれは無罪を主張せねばなるまい。

そう思ってまずは福田に反論しようと思ったら、福田の口元に何か付いているのに気付いた。 ご飯粒だ。


「もう。 私もだらしないと言えばだらしないが、お前だって口元がだらしないではないか」

そう言って、福田の口元に着いたご飯粒を取って、そのままパクリと食べた。


「ふぁっ!?」

真っ赤になる福田。 カチンコチンになった。

私はそんな福田の顎に左手でツイと持ち上げ、右手の親指で福田の下唇をなぞるように拭ってやった。

「まったく……まあ、これはこれで福田の可愛いところでもあるか」

その親指を、福田の目の前でペロッと舐めた。


「くふぁっ」バタン


福田がテーブルに突っ伏すようにして倒れ込んだ。
11 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:30:03.03 ID:Nq27nfbX0

それで慌てたのが玉田と細見だった。

「福田!?」

「衛生兵! 衛生兵はいるか!?」

慌てて立ち上がった二人。 その拍子に、細見の前にあった湯呑が倒れてしまった。

「あっちぃい!?」

細見の太ももに、熱い緑茶がこぼれてしまったようだ。

これはいかん。

私はすぐに細見のそばへと移ると、緑茶が引っかかった部分を検めた。


「ひゅあぁ!? にっ、西隊長殿!? 何を!?」

「ヤケドはないか細見!? すぐ冷やさなければ!」


緑茶が掛かった部分は、細見の足の付け根部分、太腿の内側に近い辺りだった。

私は患部に顔を近づけ、ヤケドの具合を確かめる。


「大丈夫か細見!」

「にゅぁぁぁ! たっ! 隊長殿! 大丈夫でありますからそんな近くでそんなとこを見な……あ、胸の谷間」コポリ


細見が鼻血を吹いて倒れた。 えぇぇ?

なんでヤケドで鼻血を吹くんだ? しかも凄い良い顔してるし。

なにはともあれ、まずは患部の冷却をしなければならん。

私は細見を横抱えすると、そのまま食堂を出て風呂場へと走った。


玉田(屈んだ体勢の西隊長殿を上から見下して、うなじから胸元への黄金路を直視しちゃったんだろうなぁ……)
12 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:30:53.05 ID:Nq27nfbX0

20分後。

食堂に戻ってくると、福田は復活したようで「西隊長殿……(ハート)」と呟きながら中空を見上げていた。

福田は何事もなかったか。 うむ、良かった。

その他の隊員達は、食事を終えて律儀に待っていたようだ。

そうだな。 まだ御馳走様の号令を掛けていないもんな。


私は一旦席に着き、夕食終了の号令を掛けた後、細見の処置内容と、細見はまだ目を覚まさないので保健室に寝かしてきたことを皆に伝えた。

まあ処置といっても、衣服を剥いで風呂場の冷水で患部を冷やしただけだし、ヤケドの具合も全然大したことなかったし、

あとはただの失神だから、まぁ心配するまでもないのだがな。
13 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:31:33.71 ID:Nq27nfbX0

「……それで諸君。 ここからは連絡事項、というか、皆と相談したいことがあるのだが」

私は、ようやく今日のメインイベントとも言える話題を引っ張りだした。

隊員達は緊張の面持ちで、私の声を聴く体勢に入った。


「先の大学選抜戦の後、私は皆にこう言ったと思う。“ これからは安易な突撃はしない ” と。

 これは、知波単の伝統であり、知波単魂の顕れとも言える突撃戦法を否定するものではない」

皆の表情に少しの不安感と、それよりは多くの安堵感が見てとれた。


「しかしながら、苦境に立つたびに突撃のみで活路を切り開いてきた我らが、敗北の苦汁を舐め続けてきたことも事実。

 その責任は、不出来者である私にあることは重々承知している」


「そんなことありません! 隊長!」
「西隊長殿以外に、知波単の隊長は務まりません!」

そんな声が隊員達から飛んできたが、私は慰めの言葉が欲しくてこんな話を振ったワケではない。

本題はここからだ。
14 : ◆OBrG.Nd2vU :2017/06/25(日) 14:32:41.31 ID:Nq27nfbX0

「でな、私も不出来なりに、ちゃんと隊長としての責務を果たしたいと思うのだ。

 つまりは勝ちたい。 皆の努力が報われる、そんな勝利を得たいのだ」


「隊長!」「だいぢょう!」「お慕い申し上げております!」


「(なんか最後に変な声が混じった気がするな…)そこでだ!

 私はあの大学選抜戦後から、突撃に限らず多彩な戦法を訓練に取り入れてきたことは、皆の知っての通りだ!

 皆の不屈の精神ゆえか、その習熟の早さには私も驚いているぞ!」


「隊長!!」「だいぢょう゛!!」「今晩お部屋に行ってもいいですか!」

  
「(やっぱり最後に変な声が混じった気がするな…)そんな皆の練度を、そろそろ試合で確認したいと思う! 玉田! 福田!」

「「はっ!!」」

私が両名の名を呼ぶと、元気な返礼が返ってきた。


「私は来週月曜から1週間、学校を公休させてもらう。

 訓練メニュー等は事前に書置きしていくが、私が留守の間は車長であるお前達に知波単を任せる。よろしくな」


「なんと隊長殿!?」

「我らを置いてどちらへ行かれるのでありますか!?」

「他の学園艦を回って、練習試合を組んでくるよ」
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