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真姫「アイリスのはなことば」
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2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:26:06.69 ID:Z4CMpj7Yo
「…………」
ゆらりと影が動く
瞳から光を失っていく様を見下ろしていた影が動く
恐ろしい空間を生み出した人物が振り返ろうとしている
それに気づいた少女は血だまりからその人物へと視線を動かしていく
「……ッ!」
少女はその横顔を見る
「きゃぁぁあああああああああ」
少女の後方から悲鳴が響く
「……」
ザッザッザ
悲鳴と同時にその人物は走り出した
現場からの逃走
「……――」
その後姿を見て
倒れているその姿を再認識する
腰のあたりに突き刺さったナイフと
黒く色を付けた血だまりを凝視してしまう
「――――……」
目の前で横たわる人物の命が今まさに消えようとしていた
助けなければ――
と思うが体は動かない
非現実的な光景と匂いが少女を縛り付ける
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:27:11.74 ID:Z4CMpj7Yo
ふと思い返すのはつい先刻のこと
屋上で聞いた話
三人の幼馴染が楽しそうにしていた幼少時代の話
なぜこんなことを――
と、疑問に思うが
少女はその現実と非現実が混ざり合ったまま
「――」
意識を閉じてその場で倒れた
立ち去った人物
その犯人の顔を忘れようとするように
それが本能であるかのように
自分の日常を守るために
大切な仲間を守るために――
……
…
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:29:25.57 ID:Z4CMpj7Yo
―― 深夜:高坂邸
『――近くの病院に搬送され、意識不明の重体』
「まぁ……」
『現場から逃走した犯人は未だ捕まっておりません』
「事件現場の近くの病院って、西木野病院よね……」
「……」
「明日、穂乃果に注意するよう伝えておかないとね……お父さん」
「……」コクリ
……
…
―― 朝
「それじゃー、行ってきまーす!」
「あ、ちょっとまって穂乃果!」
穂乃果「え、なに? おかーさん?」
母「あのね――」
……
…
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:31:28.89 ID:Z4CMpj7Yo
―― 神社
「おはようございます」
「おはよう〜」
「あ、海未ちゃん、ことりちゃん」
「おはよ〜!」
海未「花陽と凛の二人だけですか?」
花陽「ううん、穂乃果ちゃんもいるよ」
凛「あっちで、電話してるにゃ」
ことり「でんわ?」
花陽「う、うん……真姫ちゃんに連絡するって……」
ことり「ふぅん……」
海未「待っていれば来るのでは?」
凛「うん、そうだと思うんだけど……。あ、絵里ちゃんたちも来たにゃ!」
海未「……にこは居ませんね」
ことり「いつもはもう来てる時間なのにね」
穂乃果「おかしいなぁ」
海未「どうしたのですか?」
穂乃果「真姫ちゃんが電話に出ないんだよ」
ことり「メールは?」
穂乃果「してはいるんだけど、返事はまだ……」
花陽「どうしたのかな……?」
凛「真姫ちゃんにしては珍しくお寝坊さんだにゃ〜」
希「みんな、おまたせ〜」
絵里「おはよう」
海未「おはようございます」
希「あれ、真姫ちゃんとにこっちがまだみたいやね」
絵里「あら、本当……珍しいわね」
凛「かよちん、準備体操しとくにゃ」
花陽「うん……そうだね」
ことり「それじゃ私たちも」
絵里「えぇ、体をほぐしておきましょうか」
海未「ほら、穂乃果も」
穂乃果「あ、みんなちょっと待って」
希「どうしたん?」
穂乃果「ねぇ、みんなはさ……昨日の事件って知ってる?」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:33:54.37 ID:Z4CMpj7Yo
花陽「じけん?」
絵里「……」
海未「確か……警察官が……」
凛「うぅっ、怖い事件だよねっ」
花陽「???」
希「……?」
ことり「えっと?」
穂乃果「さっき、お母さんから聞いたんだけど――」
絵里「西木野病院の近くで人が刺されたのよね」
花陽希ことり「「「 えっ!? 」」」
穂乃果「うん、そう……」
希「ひ、人が……?」
海未「はい……それも警察官が……背後から刺されたとか……」
花陽「ひ、ひぃっ」
凛「そ、その人はどうなったの!?」
絵里「意識不明の重体って……今朝のニュースで言ってたわ」
ことり「え、えぇぇ……」
凛「は、犯人は……?」
絵里「……まだ逃走中」
凛「こ、怖いにゃ……ッ」
花陽「うぅぅっ」
希「二人とも、大丈夫やから」
海未「……穂乃果、電話してたのって…?」
穂乃果「う、うん……なんだか嫌な予感がして」
希「ひょっとして……真姫ちゃんが……なにか……ってこと?」
穂乃果「うん……外れてほしいから電話してるんだけど……」
ことり「や、やめようよ。きっとすぐ来るよっ」
凛「そうだよ! いつもの澄ました顔を見せてくれるにゃ!」
絵里「そうね、言霊という言葉もあるし……」
穂乃果「…………」
海未「ほ、ほら、穂乃果……いつものように体力トレーニングを始めますよ」
穂乃果「……うん」
ことり「そ、そうだっ、にこちゃんと真姫ちゃん、一番最後に来た人に罰ゲームをするってのはどうかな!?」
海未「そうですね! 校庭10周というのはいかがでしょう!」
凛「ポテトもごちそうになろうかな〜?」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:35:12.09 ID:Z4CMpj7Yo
絵里「ついでに、草むしりも追加しちゃおうかしら」
希「時間が無くて手が付けられなかったとこやね」
花陽「そ、それはちょっと……」
凛「かわいそうすぎるにゃ〜」
ことり「だから、みんなで一緒にしようっ」
海未「みんなで校庭を走って、ポテトを食べて、草むしりですか……」
希「おかしな集団になるね」
絵里「……そうね」
凛「なんだかバカみたいにゃ〜」
花陽「それでもいい……っ」
ことり「だから……はやく来て……っ」
海未「……」
希「……」
凛「……」
絵里「……」
花陽「……」
ことり「……」
穂乃果「……もう一回」
ピッピップ
trrrrrrrr
プツッ
『もしもし』
穂乃果「あ――、出た!」
希「ほっ……」
凛「もぅ、びっくりした〜」
絵里「ふぅ……」
花陽「よかったぁ」
ことり「あ、にこちゃんも来た……!」
海未「思い過ごしでよかった――」
穂乃果「えっ、真姫ちゃんの……お母さん……?」
……
…
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:36:29.88 ID:Z4CMpj7Yo
―― 昼休み:学校
「……で、なんで私なのよ」
穂乃果「にこちゃん、暇でしょ?」
にこ「暇っていうか……練習はどうするのよ」
穂乃果「中止だよ。真姫ちゃんが気になるもん」
にこ「行きたいなら一人で行きなさい。私はこれでも忙しいの」
穂乃果「じゃあ、帰りのホームルームが終わったら校門で」
にこ「話聞いてた?」
穂乃果「だって……花陽ちゃんも凛ちゃんもあの付近怖がってしまって……にこちゃんしかいないんだよ」
にこ「絵里は?」
穂乃果「生徒会、希ちゃんも生徒会。ことりちゃんバイト。うみちゃん部活」
にこ「にこにーは部室でアイドル研究☆」
穂乃果「それじゃ、よろしくね」
にこ「会話が成り立ってない!」
……
…
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:37:59.59 ID:Z4CMpj7Yo
―― 放課後:校門
にこ「おっそ! 人を待たせておいておっそーい!」
……
…
にこ「……」
穂乃果「ごめんごめん、待った?」
にこ「13分も待ったわよ。もう帰ろうかと思ったわよ」
穂乃果「ホームルームが終わらなくて」
にこ「花陽と凛も行くの?」
花陽「う、うん……心配だから」
凛「付いて行きます」
にこ「別にいいけど……。どうせ風邪かなんかじゃないの?」
穂乃果「電話で聞いた時、そんな風じゃなかったけどなぁ……」
にこ「私達の顔を見て、『別に、お見舞いなんかこなくてもいいのに……』っていうわよ」
凛「真姫ちゃんの真似? 似てないにゃ」
にこ「『ふ、ふんっ、別に嬉しくないんだからっ』」
穂乃果「……」
にこ「『で、でも……ありがとう』」
花陽「……」
にこ「『お礼をいうのは当たり前でしょっ』」
穂乃果「それ、いつまでやるの?」
……
…
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:39:27.41 ID:Z4CMpj7Yo
―― 西木野病院
にこ「え、病院……?」
穂乃果「うん……」
花陽「おうちの方じゃないの?」
穂乃果「真姫ちゃんのお母さんがこっちに来てくれって」
凛「あれ……?」
「……」
凛「……あの人…」
キィィィィイイイ
穂乃果「――!?」
ィィィィィイイイン
穂乃果「う――!?」
にこ「穂乃果……?」
穂乃果「耳鳴りが……っ」
ぞわぞわっ
花陽「〜〜っ!?」
凛「かよちん……?」
花陽「うぅっぅっ」
凛「うわっ、鳥肌が凄いよ、かよちん!」
「……」
スタスタスタ......
穂乃果「……ふぅ、収まった」
花陽「な、なんだろう、今の……」
にこ「なによ、あんた達……やめてよねぇ」
凛「……」
凛「さっきの男の人……なんだったんだろう……?」
……
…
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:41:36.58 ID:Z4CMpj7Yo
―― 病室
看護師「こちらです」
穂乃果「ありがとうございます……」
にこ「個室……」
花陽「……」
凛「なんだか落ち着かないよぉ」
スーッ
看護師「どうぞ」
穂乃果「失礼しまぁす……」
にこ「……」
花陽「……っ」
凛「えっと、真姫ちゃんは――」
「……」
凛「あ、いた……!」
にこ「なんだ、見た感じ普通じゃない」
花陽「よ、よかった……」
穂乃果「真姫ちゃん、お見舞いに来たよ」
真姫「……」
凛「顔色はそんなに悪くないみたい」
にこ「まったく、心配させないでよねぇ」
花陽「真姫ちゃん、今日は……どうしたの?」
穂乃果「そうだ、リンゴを買ってきたんだよ」
真姫「……だれ?」
凛「?」
にこ「え?」
花陽「真姫…ちゃん……?」
穂乃果「ん?」
真姫「だれ……?」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:42:46.60 ID:Z4CMpj7Yo
凛「だ、誰って……凛だよ?」
にこ「……」
花陽「……」
穂乃果「穂乃果だよ?」
真姫「……っ」
凛にこ「「 えッ!? 」」
真姫「ぐすっ」
花陽穂乃果「「 えぇ!? 」」
真姫「うぅっ……ぅぅぅっ」
凛「な、なんでっ!?」
にこ「ま、真姫っ!? 落ち着いて!?」
真姫「うわぁぁんっ」
花陽「どどどどうしようっ!?」
穂乃果「ええっとあれっどうしたの?!」
「あなたたち、こっちに――」
穂乃果「え……?」
真姫「うわぁぁぁああん」
……
…
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:44:07.94 ID:Z4CMpj7Yo
―― 診察室
看護師「ようやく落ち着いたようです」
「そうですか、分かりました」
凛「泣いてたよねっ、とっても泣いてたよねっ!?」
にこ「大粒の涙こぼしてたわよね!?」
花陽「あれっあれっ!? あれれ!?」
穂乃果「なんで、なんでどうしてっ」
「あの、話を……いいですか?」
凛「は、話!?」
にこ「なにがっ!?」
花陽「どうなってるのっ!?」
穂乃果「お、落ち着こうっ、みんな落ち着こうっ」
凛「そ、そうだにゃ」
にこ「し、深呼吸よっ」
花陽「ひぃぃふぅぅぅ」
穂乃果「すぅぅぅはぁぁぁ」
穂乃果「よしっ、落ち着いた」
「よろしいですか?」
穂乃果「は、はい」
「私は……真姫の母です」
……
…
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:47:03.14 ID:Z4CMpj7Yo
―― 逢魔が時:公園
にこ「はぁ……」
凛「こんなことになるなんて……」
花陽「嘘……っ」
穂乃果「……」
「穂乃果……!」
穂乃果「あ……」
希「はぁっ、はぁ……」
海未「どうしたんですか、いきなり話があるって……!」
絵里「な、何があったの?」
花陽「希ちゃん、だ、大丈夫……?」
希「ちょっと息切れが……ふぅ、大丈夫……」
穂乃果「え、えっと……なにから話せばいいのか……」
にこ「順に話しましょ。私たちも心の整理が必要だわ……」
穂乃果「そうだね……うん、わかった」
海未「……」
絵里「……」
希「……」
穂乃果「ことりちゃんには明日話すとして……」
にこ「私たち、4人で真姫のところに行ったのよ」
海未「……はい」
絵里「朝、穂乃果が電話したのよね」
穂乃果「うん、そう。……真姫ちゃんのお母さんが出て……その時は今日は休むって」
希「……」
穂乃果「それと、話したいことがあるから、放課後に来てくれって」
にこ「でも、行ったのは……真姫の家じゃなくて、病院だったのよ」
希「風邪……とか……?」
花陽「う、ううん……風邪じゃない……」
海未「なんだったのですか?」
穂乃果「待って、ちゃんと順序立てて話すから……」
海未「は、はい……」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:48:53.53 ID:Z4CMpj7Yo
穂乃果「それで、真姫ちゃんの病室に入ったら……様子がおかしかったの」
絵里「様子?」
凛「凛たちの顔を見ても反応しなかった。ぼんやりしてたみたいだけど……そうじゃなかった」
希「……?」
花陽「わたし達のこと、忘れてたの」
絵里「え……!?」
海未「き、記憶喪失ですかっ!?」
にこ「違う……みたい」
希「じゃ、じゃあ――」
穂乃果「幼児退行、だって」
海未「え……」
絵里「……」
希「……」
穂乃果「精神年齢が……7歳から、9歳くらいに戻ってるって」
にこ「真姫のお母さんが言ってたわ」
海未「よ、幼児退行……?」
絵里「どうして……そんなことに?」
穂乃果「昨日、事件があったでしょ」
絵里「え、えぇ」
穂乃果「真姫ちゃん、犯人の顔を見てる……のかもしれない」
希「――!!」
にこ「医者の話では、防衛反応でそうなったのではないかって言ってたわ」
花陽「……」
凛「……」
にこ「事件現場で真姫は倒れてて……通報した人が言うには、走り去った人物を見て倒れたって」
絵里「そんなことが――」
「ちょっと、君たち」
海未「っ!?」ビクッ
花陽「きゃっ!?」
「な、なんだ、どうかしたのか!?」
海未「い、いえ……すいません」
穂乃果「お巡りさん……?」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:50:26.86 ID:Z4CMpj7Yo
警官「もう陽が暮れたから、はやく帰りなさい」
絵里「は、はい……わかりました」
希「そうやね、もう帰らんと」
警官「決して一人で出歩かないように。いいね?」
花陽「は、はぃ」
希「あ……」
警官「うん?」
希「いえ、なんでも……」
警官「今はこのあたり、パトロールを強化しているから同僚に家まで送らせるけど」
希「いえ、おかまいなく」
警官「安心しなさい、相手は女性だから」
絵里「そうしてもらいなさい、希」
凛「そうだよ」
希「それでは、お言葉に甘えて」
ガガッ
『本部です』
警官「帰宅途中の女子生徒を送りたいので要請を」
『了解』
穂乃果「にこちゃんは大丈夫?」
にこ「大丈夫よ、人通りの多い場所だし」
海未「それじゃ、話の続きは……」
絵里「明日、ね。ことりにもその時に話しましょう」
穂乃果「うん、分かった」
穂乃果「それじゃ、みんな明日ね――」
……
…
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/23(金) 23:51:31.26 ID:Z4CMpj7Yo
―― 西木野病院
真姫「……ぐすっ」
母「……」
父「……」
真姫「おうちに帰りたい……ぐすっ」
……
…
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:52:43.23 ID:Z4CMpj7Yo
―― 夜:高坂邸
「お姉ちゃん、醤油取ってー」
穂乃果「うん……、はい、雪穂」
雪穂「ありがと……」
穂乃果「……もぐもぐ」
雪穂「ねえ、お母さん……お姉ちゃんどうしたの?」
母「さぁ……」
雪穂「帰ってくるなり、ずっとあんな感じでしょ」
母「……」
穂乃果「……もぐもぐ」
雪穂「ピーマンもちゃんと食べてるし……」
穂乃果「ねぇ、お母さん」
母「なに?」
穂乃果「朝聞いた……昨日の事件って犯人捕まったの?」
母「ニュースになってないから、まだなんじゃないかしら」
穂乃果「そっか……」
雪穂「早く捕まって欲しいよね」
穂乃果「うん……本当に……」
父「……」モグモグ
穂乃果「……ごちそうさま」
雪穂「え、もう?」
母「明日もトレーニングするんでしょ?」
穂乃果「ううん……。明日は、休むよ」
母「そう……。しばらくはそうした方がいいかもね」
穂乃果「……」
父「……?」
母「どうしたの?」
穂乃果「でも、明日は早く登校するから」
雪穂「なにかあるの?」
穂乃果「うん、ちょっとね」
母「朝も言ったことだけど、本当に気を付けてね」
穂乃果「うん、分かってる」
……
…
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:54:03.90 ID:Z4CMpj7Yo
―― 朝:西木野病院
穂乃果「あ……!」
にこ「あ……!」
穂乃果「おはよう、にこちゃん」
にこ「おはよう……」
穂乃果「にこちゃんも気になったんだ?」
にこ「まぁね……。昨日のあの様子を見たら気になるわよ」
穂乃果「昨日の朝は寝坊したのにね。今日はちゃんと早起きできたんだね」
にこ「うるさいわね。……そんなことより、ちゃんと会えるの?」
穂乃果「どうかな……。とりあえず、真姫ちゃんのお母さんに話し聞けないかなって」
にこ「……そうね。探してみましょ」
穂乃果「うん」
……
…
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:55:55.45 ID:Z4CMpj7Yo
―― 病室
穂乃果「真姫ちゃん、おはよう〜」
にこ「おはよ〜」
真姫「……」
穂乃果「う〜ん……警戒されてるね」
にこ「まぁ、それも当然よね。真姫からしたら見知らぬ人なわけだし」
穂乃果「じゃあ、自己紹介しようか……?」
にこ「してみましょ」
真姫「……」
穂乃果「えっと、初めまして? 高坂穂乃果です」
にこ「矢澤にこ、にこにーだよ♪」
真姫「?」
穂乃果「あ、にこちゃんに興味持ったみたい」
にこ「えっとぉ、職業はアイドルでぇ、あ、間違えちゃった☆ 本業は学生なんだけどぉ」
真姫「……」
穂乃果「あ、外向いた。興味なくした」
にこ「なんでっ? 女の子ってアイドルに興味持つものじゃないの?」
穂乃果「だって、真姫ちゃんだし……。
私が最初に誘った時も『興味ありません』って言ってたし」
にこ「あ、そう……」
真姫「……」
穂乃果「ねぇ、真姫ちゃん」
真姫「?」
穂乃果「私とお友達になろう」
真姫「ともだち……?」
穂乃果「うん。なってくれたら嬉しいな」
真姫「……」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/23(金) 23:57:36.80 ID:Z4CMpj7Yo
穂乃果「ほのかの好きな食べ物はいっぱいあるけど、嫌いなのはピーマンなんだ」
にこ「お子様ね」
穂乃果「だって、苦いんだもん」
にこ「じゃあ、ゴーヤーもコーヒーも嫌いってことだよね☆」
穂乃果「はいはい。それで、真姫ちゃんの好きな食べ物ってなにかな?」
にこ「流さないで!」
真姫「……」
穂乃果「今度、ほのかと一緒に食べようよ」
真姫「……」
穂乃果「みんなで食べるとね、もっとおいしい――」
キィィィィイイイ
穂乃果「――!?」
真姫「?」
にこ「どうしたの、穂乃果?」
穂乃果「ま、また耳鳴りっ」
にこ「え……?」
ィィイイイイイン
真姫「……だれ?」
にこ「???」
穂乃果「なにこれっ」
……
…
―― 病院の外
……。
男「……」
……。
男「そうか、分かったよ、アイリス」
……
…
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 00:40:35.38 ID:WaUNN6Q5o
―― お昼:校庭
穂乃果「今は精神状態がとても不安定なんだって」
希「そうなんや……」
ことり「……」
絵里「実際に見て、どうだったの?」
穂乃果「退屈そうにしてた……かな」
海未「家にも帰れないのですか?」
穂乃果「うん……。小さいころの記憶が今に跳んで来てるでしょ、
部屋の模様も違うし、両親も少し違うから……とても混乱してるって」
絵里「ご両親の小さな変化ですら不安なのね……体の変化もあるだろうし」
希「…ある意味、孤独なんやね……」
穂乃果「その話を聞いたから、私は友達から始めたいなって思った」
海未「……」
穂乃果「記憶を戻すのは、それからじゃないかな……」
絵里「記憶を取り戻す方法はあるの?」
穂乃果「ううん、まだ分からないみたい」
ことり「私たちに出来ることはあるかな……」
穂乃果「今までと同じだよ。ただ、友達としてやり直さなきゃだけど」
海未「その点は、穂乃果が頼りですよ」
ことり「そうだね」
海未「精神的なものでは特に……」
穂乃果「なんだかちょっとひっかかるけど、うん、分かった」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 00:41:44.60 ID:WaUNN6Q5o
「あーー!!」
穂乃果「ッ!?」
絵里「ど、どうしたの凛?」
希「そんな大声出して……」
凛「思い出した! 昨日、病院の前に変な人がいた!!」
花陽「へ、変な人……?」
凛「うんっ! 病院に入るのかなって思ったけど、そのまま引き返していったんだよ!」
絵里「それは怪しいわね……」
希「報告する?」
絵里「そうね、一応しておきましょう」
ことり「誰に?」
希「昨日、帰りに送ってくれた人で、何かわかったら連絡してくれって言われてるんよ」
穂乃果「ところで……にこちゃんは?」
絵里「今日は早起きしたから、昼休みは部室で眠るって言ってたわ」
穂乃果「しょうがないな、にこちゃんは……」
海未「授業中に寝ているあなたが言えた台詞ではありません」
……
…
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 00:45:05.71 ID:WaUNN6Q5o
―― 放課後:公園
「どうも、伏見といいます」
凛「警察の人……?」
伏見「えぇ。ほら警察手帳」
凛「わぁ、初めて見た」
伏見「ふふ、学生さんには縁のないものだからね」
凛「見て、かよちん」
花陽「おぉぉ……」
絵里「もう、凛ったら……」
伏見「それで、話を詳しく聞かせてくれるかな」
凛「はい。凛は見ました! 病院のまえで怪しい人を!」
伏見「ふむふむ。外見的特徴は?」
凛「男の人でした!」
伏見「背格好は?」
凛「えっと……太ってはいなかったかな? チラってみただけだから……あんまり」
伏見「そっかぁ……。身長は大体でいいからわかる?」
凛「170くらい?」
伏見「不審に思ったのは、病院の敷地内に入らなかったから、だよね?」
凛「うん。じっと中を見てたのに、くるっと引き返して行っちゃったから」
伏見「ふぅむ。確かに変だね」
花陽「あ、あの……そ、その人が犯人……なんでしょうか」
伏見「なんとも言えないかな」
凛「どうしてですか?」
伏見「犯人が現場の近くに行くのかなって思うんだよね」
絵里「あの、いいですか?」
伏見「いいよ、なに?」
絵里「昨日、注意を受けた人にはパトロールを強化していると聞きましたけど……」
伏見「うん、人通りが少ないところは特にね」
絵里「安心できるのと同時に、不安にもなるのですが……」
伏見「そうだね、制服姿の警官がうろうろしてちゃね……」
凛「ここにくるまでに何人か見たよね」
花陽「……うん」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 00:46:09.54 ID:WaUNN6Q5o
絵里「確かにあの事件はショックを受けましたけど……ここまでするのかなって」
伏見「やっぱり住民に不安を与えてるかぁ……。でも、この事件は特殊で――」
凛「とくしゅ?」
花陽「……っ」
伏見「あぁっと今の無し。忘れて忘れて」
絵里「……」
伏見「君たち学生は帰りにどの店で買い食いしようか、どこで遊ぼうかを考えてください」
凛「……」
花陽「……」
伏見「よし、今日はこんなものかな。また、何かあったら連絡よろしくってことで」
絵里「……はい」
伏見「大丈夫、私たちがもう事件を起こさせないから」
絵里「……」
伏見「他に、なにかある?」
凛「ううん。でも、大したこと言ってないから……せっかく来てくれたのに……ごめんなさい」
伏見「そんなこと、ないない〜。
事件解決の糸口になったりするから、どんな情報でも大事よ」
凛「……それならよかった」
伏見「何もなければ、私はこれで」
絵里「はい、さようなら」
……
…
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 00:47:11.86 ID:WaUNN6Q5o
―― 夕暮れ時:病室
にこ「できた!」
穂乃果「うわ、すごっ!」
希「おぉ〜」
真姫「……」
にこ「リンゴの皮むき、くるくる回して一度も途切れず!」
真姫「……」
にこ「凄いでしょ、ねぇ、凄いでしょ!」
真姫「……」
にこ「ほ、ほら、よく見なさい。
薄く切ってあるのよ、この辺りなんかヒヤヒヤものだったんだから」
希「はい、真姫ちゃんどうぞ」
真姫「……うん」
にこ「あ、ちょっと邪魔しないでよっ。っていうか、いつの間に切り分けたのよ」
穂乃果「にこちゃんが自慢している間にだよ」
真姫「……シャク、シャク」
希「おいしい?」
真姫「……うん」
希「ふふ、よかった」
にこ「切ったの私!」
穂乃果「選んだの私!」
希「買ったのはうち」
真姫「シャクシャク……」
にこ「あら、なにこれ? スケッチブック?」
希「らくがき帳……みたいやね」
穂乃果「なにが書いてあるのかな?」
真姫「だ、だめ……」
穂乃果「お絵かきしてるの?」
真姫「……うん」
穂乃果「ちょっと見せてほしいな〜」
真姫「だめ……ひみつ……」
穂乃果「そっか、それは残念」
にこ「……」
希「……」
穂乃果「そうだ、外に出てみようよ、真姫ちゃん」
真姫「そと……?」
穂乃果「そうだよ、きっと夕焼け空がきれいだと思うな」
真姫「……」
……
…
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 00:48:13.43 ID:WaUNN6Q5o
―― 同時刻:会議室
伏見「西木野真姫さんの様子は?」
医者「当初見られたパニック状態から、大分落ち着いてきました」
伏見「精神面は戻りそうにありませんか」
医者「午前中に来られた刑事の方にも言いましたが、これはデリケートな問題です。
本人を含め、友人方にも気を急かすようなことはしないでください」
伏見「……はい」
医者「あなたに言うことではないかもしれませんが、あの刑事さんたちには迷惑しましたから」
伏見「と、いうと……?」
医者「面会させろと言ってきかなかったんです。
見た目は高校生でも中身は幼い子供……恐怖を与えるようなことは避けてください」
伏見「はい……。上にはその件について、必ず報告します」
……
…
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 00:49:44.06 ID:WaUNN6Q5o
―― 逢魔が時:病院庭園
伏見「……ふぅ」
伏見「……」
伏見「それにしても、広い庭園ですこと」
ヒラヒラ
伏見「? これは……羽?」
ヒラヒラ
伏見「ということは……」
……。
伏見「やっぱり……。ちょっと待ってね」
伏見「うんいいよ。私はこうやったほうが自然と話ができるから」
伏見「あ、ちょっと待って」
希「伏見さん……?」
伏見「東條さん……だっけ」
希「はい、昨日はありがとうございました」
伏見「いえいえ、あれも仕事のうちです。礼には及びません」
希「今日は……?」
伏見「お医者さんにお叱りを受けまして」
希「?」
伏見「うちの捜査一課が迷惑をかけたみたいで」
希「……はい、その件は聞いてます」
伏見「二度と同じことがないように強く言っておくから」
希「お願いします。……真姫ちゃんを怖がらせるようなことは…」
伏見「ごめんね、心配かけちゃって」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 00:50:50.60 ID:WaUNN6Q5o
希「あ、電話中に話しかけてしまって……」
伏見「ううん、いいのいいの。それじゃね」
希「……はい」
伏見「あっちにいるのは……お友達?」
希「そうです」
にこ「どこ、どこよっ」
穂乃果「見えないよ、真姫ちゃん」
真姫「みえなくなっちゃった……」
伏見「それじゃ」
希「はい、さようなら」
伏見「あぁ、もしもし……ちょっと話をしてて、大丈夫大丈夫〜」
伏見「それで、君、昨日こっちに来たでしょ、見られてたよ〜」
伏見「そうだね、あまり来ない方がいいかも」
伏見「それと、今確認したよ」
伏見「西木野真姫さん、本人を――」
……
…
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 09:34:11.14 ID:WaUNN6Q5o
―― 夜:高坂邸
母「なに、話って……?」
雪穂「ドラマ始まるから早くして〜」
穂乃果「お父さんは?」
母「明日の仕込みだけど」
穂乃果「そっか……。お父さんにも聞いてほしいんだけどな」
母「後でお母さんから伝えるから、言ってみて」
雪穂「テレビ見ながらでもいい?」
穂乃果「ダメ。大事な話だよ」
雪穂「じゃあ、早く言ってよ」
穂乃果「うん、あのね……真姫ちゃんのことなんだけど」
母「……」
雪穂「精神が逆戻りしたって言ってたよね。どうなったの?」
穂乃果「あまり状況は変わってないけど……。でも少しずつ受け入れるようになったって」
母「受け入れる……?」
穂乃果「最初は自分の環境が激変してたから、混乱してたんだけど……」
母「そういうこと……」
穂乃果「真姫ちゃんのお母さんが言うには、私とにこちゃん……友達にだけ、
少しだけど心を開いているんだって」
雪穂「……」
母「……」
穂乃果「それでね、ここからが本題なんだけど」
母「真姫さんをうちで預かりたいと?」
穂乃果「えぇっ!? なんで分かったの!? おかーさんエスパー!?」
雪穂「私も話の流れでそう言うだろうなって思ったけど……。理由は?」
穂乃果「え?」
母「そうしたい理由があるんでしょ?」
穂乃果「うん……」
雪穂「……」
母「……」
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 09:35:09.55 ID:WaUNN6Q5o
穂乃果「刑事さんが来てね、真姫ちゃんが怖がっちゃったんだって……」
穂乃果「直接は会ってないけど、扉の向こうで看護師と言い合いしてたのを聞いて」
穂乃果「とても怖かったんだと思う」
母「……」
穂乃果「大切な仲間だから、友達だから、真姫ちゃんを守りたい」
雪穂「……」
穂乃果「ずっと一緒に居て、不安や恐怖を追い払いたいんだ」
母「わかった」
穂乃果「お母さん……」
母「色々と大変だと思うけど、今ある状況を少しでも改善できるなら、お母さんは協力するから」
穂乃果「ありがとう!!」
雪穂「学校は?」
穂乃果「え?」
雪穂「ずっと一緒に、って言ったけど、学校はどうするの?」
穂乃果「あ」
……
…
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 09:37:31.33 ID:WaUNN6Q5o
―― 朝:病室
穂乃果「おはよう、真姫ちゃん」
真姫「……うん」
穂乃果「ほのかの友達連れてきたよ〜」
海未「園田海未といいます」
ことり「南ことりです♪」
真姫「……」
海未「警戒されてますね……」
ことり「…こっち向いてくれないね……」
にこ「おはよー、にこにーだよ♪ 元気してるかな☆」
真姫「……?」
海未「関心を引いた……!?」
ことり「さ、さすがにこちゃん……!」
穂乃果「にこちゃんのあのキャラが気に入ってるみたい」
にこ「真姫ちゃん、リンゴ食べる? むいてあげるにこ♪」
真姫「ううん、いい……」
にこ「あ、そう……」
真姫「……」
にこ「でもでも、一日一個医者いらずっていうくらいリンゴは栄養満点なんだよ☆」
真姫「ううん、いい」
にこ「じゃ、じゃあ……ジュースにするから」
真姫「……うん」
にこ「よし」
海未「なぜそんなにリンゴを推すのですか?」
穂乃果「特技を披露したいんじゃないかな」
ことり「じゃあ、私も皮むきを手伝って」
にこ「私がやるから」
ことり「はい」
……
…
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 09:39:43.04 ID:WaUNN6Q5o
―― 昼:学校屋上
絵里「それで、放課後に迎えに行くのね」
穂乃果「うん。真姫ちゃんのお母さんにも話してある」
絵里「困ったことがあったらなんでも言ってね。私も協力するから」
穂乃果「うん!」
凛「学校はどうするの?」
穂乃果「それなんだけど……。真姫ちゃんと一緒に居たいから、休もうかなって」
絵里海未「「 ダメよ(です) 」」
穂乃果「って、思ってたんだけどぉ、お母さんにもダメって言われたからぁ、どうしようかなってぇ」
花陽「不貞腐れてる……」
穂乃果「お母さんみたいに即答しなくてもいいでしょー」
海未「当たり前です」
絵里「真姫をダシにして授業をさぼろうとしてるみたいよ?」
穂乃果「そんなことないよッ! それはちょっと思ったけど、でも8割くらいだもん!」
花陽「8割も!?」
海未「さて、本当に穂乃果に預けてもいいのか、再検討しましょう」
絵里「そうね」
凛「心配になってきたにゃ」
花陽「そ、そうかな……穂乃果ちゃんなら安心できるけど……」
穂乃果「よし、花陽ちゃんにはお父さんが作った試作品を贈呈しよう」
花陽「わ、わーい」
海未「ちょっと、試作品なんですから、娘が評価しなくてどうするんですか」
穂乃果「みんなにも食べてもらおうと思ったけど、やっぱりあげないよ!」
絵里「意地悪されたからってそんなこと言うなんて……まったく」
海未「子供ですか」
凛「子供にゃ」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 09:40:30.17 ID:WaUNN6Q5o
花陽「こ、これは……!」
穂乃果「どうだった?」
花陽「もっちりとした食感だけどとろけるような柔らかさ!
桜のようなふんわりとした風味だけど濃密な甘みが!
それでいて後味さわやかな感覚! ついつい二口、三口と進んでしまう〜!」
花陽「おいしい、おいしいよ ほのかちゃん!」
穂乃果「そ、そんなに……?」
花陽「ありがとう、ありがとう!」
海未「もらった時は少し困ってたのに、食べた後の反応がここまで違うなんて……」
絵里「き、気になるわね……」
凛「穂乃果ちゃん!」
穂乃果「あげないよ〜!」
海未「子供ですか!」
……
…
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 09:42:24.90 ID:WaUNN6Q5o
―― 放課後:病院
穂乃果「真姫ちゃん、朝言ったこと、考えてくれたかな?」
真姫「……」
穂乃果「友達の家にお泊りするって思ったらいいんだよ」
真姫「おとまり?」
穂乃果「そう、お泊り」
真姫「……」
穂乃果「真姫ちゃんと友達になってそんなに経ってないけどね、
私は真姫ちゃんのことよく知ってるから」
真姫「……」
穂乃果「こわくないよ」
真姫「……うん」
穂乃果「こわいことがあっても、必ずほのかが守ってあげるから」
真姫「うん」
穂乃果「楽しいから、ね?」
真姫「うん、おとまり……する」
……
…
―― 病院ロビー
真姫母「真姫のことよろしくお願いします」
穂乃果「はい」
真姫「……」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 09:43:32.57 ID:WaUNN6Q5o
―― 病院出口
にこ「そういえば、絵里」
絵里「なに?」
にこ「あんた、病室に行ったことないわよね」
絵里「……えぇ」
にこ「どうしてよ」
絵里「ちょっとね」
にこ「まさか……真姫と顔を合わせづらいってわけじゃ……」
絵里「……」
穂乃果「お待たせ、お待たせ〜」
真姫「……」
にこ「荷物、それだけ?」
絵里「……」
穂乃果「あとで、届けてくれるって」
真姫「……っ」
穂乃果「あらら、どうしたの真姫ちゃん?」
にこ「なんで隠れるのよ」
真姫「……あのひと」
穂乃果「あのひと?」
真姫「……っ」
穂乃果「どのひと?」
絵里「……」
真姫「こわい」
穂乃果「絵里ちゃんが?」
真姫「……」コクリ
にこ「どうしてよ」
真姫「……」
絵里「ふぅ……やっぱりね」
穂乃果「?」
絵里「にこと真姫は先に歩いてて。穂乃果と話するから」
……
…
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 09:44:59.81 ID:WaUNN6Q5o
―― 商店街
絵里「花陽も似たような反応だったでしょ?」
穂乃果「あぁ、そうだったね」
絵里「子供受けが悪いというか……ね」
穂乃果「それが気になってたから会えなかったの?」
絵里「……えぇ」
穂乃果「大丈夫だよ。話をすれば、絵里ちゃんを知れば、また対応も変わってくるよ」
絵里「どうしてそう断言できるの?」
穂乃果「だって、真姫ちゃんだし。にこちゃんとだって……ほら」
にこ「ちょっと、きょろきょろしないの。人にぶつかるわよ」
真姫「……ちがう。あれ、なかった」
にこ「あれ……って、あぁ、あの建物ね。去年建ったばかりだから」
真姫「あれは?」
にこ「メイド喫茶よ。ことりが働いてるところ」
穂乃果「ちがうよ! 適当なこと教えないでー!」
にこ「ことりが働いてそうなところだったわ」
真姫「あのお店、いきたい」
にこ「アイス? それはまた今度ね。お腹すいてんの?」
真姫「うん、おなかすいた」
にこ「もうちょっと我慢してなさい」
真姫「……あれは?」
にこ「ゲーセンよ」
穂乃果「観光客を案内してるみたいになってるけど、
にこちゃんが頑張って話かけたから気を許してくれてるんだよ」
絵里「……そうだったの。……私も怖がってちゃだめね」
「おーい、真姫ちゃ〜ん!」
真姫「……?」
にこ「あっちよ、凛と花陽と海未がいるでしょ」
真姫「……うん」
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 09:46:39.33 ID:WaUNN6Q5o
にこ「ほら、手を振り返してあげたら?」
真姫「……」フリフリ
「あ……! おーい、お〜い! 真姫ちゃ〜ん!」
「そんなに大声出さないでくださいっ!」
「そ、そうだよぉ、恥ずかしいよぉ」
穂乃果「あはは」
絵里「ふふ」
にこ「結構買ったわね〜」
海未「足りなくなっては困りますから、少し多めに買いました」
穂乃果「花陽ちゃん……そのずっしりと重そうなのは……」
花陽「お米だよっ!」
穂乃果「あ、やっぱり……」
絵里「このまま穂乃果のお家に向かうの?」
穂乃果「えっと、ことりちゃん迎えて、それから希ちゃんを」
絵里「わかったわ。それじゃ行きましょうか」
穂乃果「待って、絵里ちゃん」
絵里「……なに?」
穂乃果「ちゃんと自己紹介しなきゃ」
絵里「そうだったわね。……えっと、真姫?」
真姫「……?」
絵里「改めて自己紹介させてもらうわ。絢瀬絵里よ。これからよろしくね」
真姫「……うん」
穂乃果「挨拶されたんなら、ちゃんと自分も挨拶しなきゃダメだよ?」
真姫「……にしきの、まき…です」
凛「挨拶が済んだら、さっさと行くにゃ〜」
花陽「まだ時間はあるよ、凛ちゃん」
凛「ことりちゃんか希ちゃんの場所でゆっくりしよう〜?」
花陽「そうだね。あ、真姫ちゃんも行こう?」
真姫「う、うん……」
絵里「うーん、まだ萎縮しちゃってるわね」
海未「それはしょうがないですよ。真姫の中ではまだ面識は浅いのですから」
にこ「っていうか、この人数でおしかけて大丈夫なの?」
穂乃果「うん、多分!」
……
…
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 09:48:17.54 ID:WaUNN6Q5o
―― メイド喫茶
カランカラン
ことり「いらっしゃいま――……あ、真姫ちゃん〜♪」
真姫「えっ、……ことぃちゃん……?」
ことり「わぁ、来てくれたんだ〜♪」
穂乃果「ことりちゃん、もう上がれるの?」
ことり「ちょっと待ってて、店長に聞いてくる」
テッテッテ
穂乃果「びっくりした?」
真姫「……うん」
穂乃果「あの格好でここでアルバイトしてるんだよ。
ほら、この写真とか、ことりちゃんが働いてる様子がわかるでしょ?」
真姫「……」
穂乃果「そういえば、ことりちゃんってハッキリ呼べなかったね」
真姫「……っ」
穂乃果「恥ずかしがらなくてもいいよ〜。でも、次はちゃんと呼んでみてね。
誰も気にしないから」
真姫「……うん」
ことり「穂乃果ちゃん、ごめんねぇ。もう1時間くらいは出られないかも」
穂乃果「そっか。……じゃあ、希ちゃんのとこで待ってるから、そっちに来てくれる?」
ことり「ううん、待たないで先に行っててもいいよ?」
穂乃果「ダメだよ。人通りの少ない場所はなるべく二人以上でって言われてるでしょ?」
ことり「あ、そっか……」
穂乃果「私の家までそういう箇所いくつかあるから、ね」
ことり「うん、ごめんね」
穂乃果「いいよべつに。みんなと一緒に待ってたらすぐだよ」
ことり「うん、ありがとう〜」
穂乃果「それじゃ、またあとでね」
ことり「またあとで〜」
真姫「……」
ことり「真姫ちゃんも、あとでね」
真姫「うん……。おしごと、がんばってね……ことり…ちゃん」
ことり「うん! ありがと〜♪」
……
…
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:09:33.76 ID:WaUNN6Q5o
―― 神社
希「……」
希「なんやろ……この居心地の悪さ……」
「希〜!」
「希ちゃ〜ん!」
希「お、にこっちと凛ちゃんや」
「よーい、どーん!」
「うわっ、いきなり走り出したにゃ!」
「ちょっ、ずるいわよ穂乃果!」
「一位の人にはさっきの試食品が贈られま〜っす!」
希「試食品?」
ドドドドッ
「か、勝ちますっ!」
「負けられないわ!」
「もう一度、あの味をっ!」
「えっ!? なんで海未と絵里が本気出してんの!?」
「かよちんまで!? そんなに美味しかったのー!?」
「っていうか、私は別にいらないから本気出さなくてもいいや」
希「なんだかわからないけど、重要な勝負なんやな」
ドドドドドッ
希「さぁ、突然始まった階段駆け上がり勝負! 勝者は誰の手に〜?」
ドドドドッ
希「勝負を捨てた穂乃果選手! 試合に取り残された真姫選手とゆっくりあがってきます!」
ドドドドッ
希「にこっち選手、階段中央でなんだか白けた模様! 走るのを止めて歩いています!」
希「凛選手! 前の三人が並んでいて追い抜くことが出来ない〜!」
希「並ぶ三人! 海未選手速い速い! 絵里選手も負けじと駆け上がる! 大健闘の花陽選手!」
ドドドドドドッ
希「さぁ、謎の試食品を手に入れるのは誰か〜! ゴォール!」
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:10:53.80 ID:WaUNN6Q5o
海未「ぜぇはぁっ」
絵里「はぁはぁっ」
花陽「ふぅふぁっ」
希「勝者は〜、胸の差で花陽選手の勝利〜!」
海未「そんな……!」
絵里「なんてこと……」
花陽「やった!」
凛「凛が体力勝負で負けるなんて〜〜!!」
にこ「どうでもいいけどね、あんたたち」
海未「はぁはぁ……なにか……?」
絵里「なに……?」
花陽「?」
穂乃果「階段を全力で駆け上がったら……その……」
海未絵里花陽「「「 ??? 」」」
真姫「ぱんつ……」
海未絵里花陽「「「 〜〜〜ッッ!!! 」」」
にこ「今更抑えてもね……」
海未「破廉恥です!」
凛「真姫ちゃんたち以外に誰もいないからセーフにゃ」
にこ「ギリギリセーフよ。ギリセーフ」
真姫「ぎりせーふ」
絵里「そういう問題じゃないのよっ!」
花陽「あ……あぁ……」
穂乃果「あの、けしかけた私のせいです……ごめんなさい」
……
…
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:12:55.51 ID:WaUNN6Q5o
―― 夕暮れ時
真姫「み〜つけた」
凛「みつかったにゃ〜」
穂乃果「凛ちゃんで最後だね。じゃあ、最初に見つかった、うみちゃんの鬼!」
海未「それはいいですが、別の遊びにしませんか?」
花陽「飽きちゃった?」
海未「いえ、そういうわけでは……」
穂乃果「トラシカだよね、うみちゃん」
絵里「ウマでしょ」
真姫「とらうま?」
穂乃果「昔ね……今みたいにみんなでかくれんぼしてたんだけど……。
日が暮れるから最後にもう一回だけやって帰ろうってなったんだ……」
花陽「ほ、穂乃果ちゃん……話し方が怪談みたいだよっ」
穂乃果「あの時も、今みたいに、うみちゃんが鬼になってね……」
凛「ごくり……」
穂乃果「もうい〜かい〜? ま〜だだよ〜」
海未「……」
穂乃果「もうい〜かい〜? もうい〜よ〜」
真姫「……っ」
穂乃果「うみちゃんは閉じていた目を開いて……私たちを探し出した」
穂乃果「ここかな? いない。 ここだ! いない。 ここしかないはず。でもいない」
穂乃果「いない、いない、いない、いない。どこにもいない」
穂乃果「いないいない。だ〜れもいない」
穂乃果「みんな、私を置いて、帰っちゃったのかな? ひどいなぁ、かなしいな、さびしいなぁ」
穂乃果「そう、思って……。今みたいに暮れそうな夕陽をみつめたの」
花陽「……」
凛「……」
真姫「……っ」
海未「……」
穂乃果「そしたら、一つの影が立っていた」
穂乃果「ことりちゃんかな、ほのかちゃんかな。そう思ったうみちゃんは嬉しそうに声を上げるの」
穂乃果「み〜つけた〜!」
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:15:59.85 ID:WaUNN6Q5o
穂乃果「だけど、その声を聞いた影は動こうとしなかった」
穂乃果「夕陽がまぶしくてよくみえない」
穂乃果「うみちゃんはその影に近づいて顔を確認した。……だけどそれはありえない人だったの」
穂乃果「うみちゃんはとんでもないひとをみつけた……!」
花陽凛海未「「「 ごくり 」」」
穂乃果「なぜなら その 影は う み ちゃ 」
「 おまえだーーーッッ!!! 」
穂乃果花陽凛海未「「「「 キャァアアーーーー!! 」」」」
穂乃果「って、にこちゃん!!」
にこ「ふんっ」
穂乃果「なんでうみちゃんの視点で語ってるのに『おまえだー!』ってなっちゃうの!?
話がおかしくなるでしょ!!」
にこ「海未が聞き入ってること自体おかしいでしょ」
穂乃果「怖い話だからそこはいいの!
花陽ちゃんも凛ちゃんも突っ込まないで聞いてくれてたし!」
にこ「そんなことより、私はまだ見つけられてなかったんですけど!?」
穂乃果「あれ、そうだっけ?」
にこ「そうよ! ずっと隠れてたのにあんた達はなにか話してるし、
深刻な話かと聞きに来たら怖い話してるじゃない、バカじゃないの!?」
穂乃果「あー……ごめん」
にこ「見つけてくれる人がいないのにずっと隠れてる人の身にもなってほしいわ」
穂乃果「あれ、みんなは?」
にこ「四方八方に走っていったわよ」
穂乃果「ふふ、よっぽど私の話にのめり込んでいたんだね」
にこ「絵里は聞いてなかったみたいだけどね。離れてたし。
途中から真姫を連れてどこかへ行ったわ」
穂乃果「えぇ……」
にこ「えーっと……ほら、あっちで参拝してる」
穂乃果「本当だ……」
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:17:24.06 ID:WaUNN6Q5o
絵里「これでよし、と」
真姫「かみさまにおねがい?」
絵里「えぇそうよ。みんなが平穏無事にいられますようにってね」
真姫「……」
絵里「それとね、真姫?」
真姫「?」
絵里「穂乃果たちが今みたいに怖い話とかしてても、無理して聞くことないからね」
真姫「うん……」
希「ん〜? 何の話?」
絵里「なんでもないわ。仕事は終わったのね」
希「うん。事務の仕事がちょっと長引いちゃって」
絵里「気にしないで。こっちは遊んでいたんだから」
真姫「……」
穂乃果「はい、ターッチ!」
ことり「きゃっ」
穂乃果「わーい、にげろ〜!」
凛「鬼さんこちら〜」
にこ「手のなる方へ〜」
ことり「待て〜!」
海未「そう簡単には捕まりませんよ」
花陽「わっ、わわわっ」
穂乃果「こっちこっち〜♪」
ことり「あ〜ん、悔しい〜! あれ、デジャヴ……」
真姫「……」
絵里「行ってきていいわよ、真姫」
真姫「ううん、いい……」
希「みんな友達なんだから、遠慮は必要ないんよ」
真姫「……」
穂乃果「おーい、真姫ちゃんもおいで〜」
凛「おいで〜!」
絵里「ほら、行ってらっしゃい」
希「みんな待ってるよ」
真姫「……うん」
タッタッタ
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:18:55.97 ID:WaUNN6Q5o
絵里「……結構素直なのよね」
希「……」
絵里「ことりも合流したことだし、しばらくしたら移動しましょうか」
希「……そうやね」
絵里「どうかしたの?」
希「……ここって神聖な場所やから、いつもは精神的にも落ち着くんやけど」
絵里「……」
希「なぜか最近は落ち着かなくて、居心地が悪くなるんよ……」
絵里「不吉なこと言わないでよ……」
希「……」
にこ「捕まえてごらんなさ〜い」
真姫「えいっ」
にこ「えっ!?」
穂乃果「なに驚いてるの!? あっさり捕まってるけど!」
凛「遅……」
花陽「油断しすぎだね……」
ことり「タイムリミットは夕陽が沈むまで〜」
海未「その時鬼だった人は罰ゲームですよー」
にこ「よぉし、ギリギリまで粘って最後に捕まえてやるわ〜」
穂乃果「うわっ、姑息だ!」
海未「真姫、逃げてください!」
ことり「狙われてるよ!」
真姫「ん〜っ!!」
にこ「さぁさぁ、お逃げなさい〜」
凛「いやな鬼だにゃぁ」
花陽「あぁっ、捕まるっ」
穂乃果「そういえば、みんなで見るために伝伝伝を持ってきたんだった。
落とさないように気を付けないと……」
にこ「ちょっと!? 傷なんて付けたら絶対に許さないわよ!?」
穂乃果「大丈夫大丈夫〜」
にこ「待ちなさい! こらー!」
絵里「標的が変わったわね……」
希「……」
希「この地に、なにか禍が起きようとしている……?」
……
…
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:20:18.89 ID:WaUNN6Q5o
―― 高坂邸:玄関
穂乃果「ただいま〜」
母「おかえりなさい」
雪穂「おかえり〜」
穂乃果「お母さん、雪穂、紹介するね。真姫ちゃん」
真姫「……こんばん…わ」
母「はい、こんばんは」
雪穂「……」
穂乃果「真姫ちゃん、私のお母さんと、妹の雪穂」
真姫「……まき…です」
母「穂乃果の母をやっています。さ、上がって上がって」
真姫「……っ」
穂乃果「ほら、入って入って」
真姫「う、うん……」
雪穂「……」
穂乃果「どうしたの、雪穂?」
雪穂「あ、うん……。本当に雰囲気が違うから……」
穂乃果「不安だらけだと思うから、よろしくね」
雪穂「うん、わかった」
穂乃果「お父さんは?」
雪穂「晩御飯の支度してるよ。人数が人数だから」
……
…
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:21:56.24 ID:WaUNN6Q5o
―― 居間
にこ「みんな、ご飯届いてるー?」
凛「えっと……あ、希ちゃんとことりちゃんが無いにゃー」
にこ「おっけー、他は足りてるのねー」
穂乃果「にこちゃんお客さんなんだから座っててよ」
にこ「いいのいいの、これくらい手伝わなきゃ時間がかかるでしょ」
ことり「はい、どうぞ希ちゃん」
希「ありがと〜」
絵里「すいません……急におしかけてしまって……」
母「いいのよ、大した物用意してないんだから、気にしないで」
絵里「いえ……それでもかなり手の込んだ料理で……」
母「お父さんが張り切っちゃってね。
小学の時にやってた誕生日会以来で、少し楽しんでたみたいだから」
海未「そういえば、やってましたね、誕生日会」
ことり「あったあった♪」
穂乃果「懐かしいね……」
雪穂「今みたいにいろんな人来てたよね」
穂乃果「ヤマーダちゃん、元気にしてるかな?」
ことり海未「「 だれっ!? 」」
花陽「外国人……?」
雪穂「いえ、適当に言っただけですから」
穂乃果「せっかくだから、今日は誰かの誕生日を兼ねたパーティーにしようよ!」
海未「やめなさい。……また適当なことを」
ことり「みんなにちゃんと行き渡ってるかな……」
にこ「隣、いいかしら……?」
真姫「……」コクリ
にこ「失礼するわね……。って、前にも似たようなこと言ったような……」
穂乃果「じゃあ、にこちゃんの誕生日ってことで」
にこ「別にいいけど、ケーキは?」
花陽「いいの!?」
希「……」
にこ「どうしたの、希?」
希「うん?」
にこ「さっきからしずかだけど」
希「そんなことないよ。ただちょっと、賑やかで置いてけぼりなだけ」
にこ「ふぅん……」
凛「穂乃果ちゃん、はやく頂きますしよう〜?」
穂乃果「そうだね。じゃあ……」
絵里「お母さんたちは……?」
穂乃果「お店の方で過ごすって」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:23:21.71 ID:WaUNN6Q5o
花陽「真姫ちゃん、コップとって?」
真姫「……?」
花陽「ジュース、なにがいい?」
真姫「おれんじ……」
花陽「……はい、どうぞ」
トクトクトク
穂乃果「じゃあ、いただきますの挨拶は……主賓のにこちゃん」
にこ「はい?」
凛「しゅひんってなに?」
穂乃果「主役ってこと。誕生日だから」
海未「意味が違いますよ」
ことり「誕生日でもないよ〜」
穂乃果「?」
絵里「主賓っていうのは、お客さんの中で一番地位が高い人」
にこ「……」スッ
希「当然のごとく立ったね」
ことり「部長さんだから」
にこ「みんな、コップ持って」
凛「かよちん、凛もオレンジお願い〜」
花陽「うん」
にこ「今日はぁ、にこの為に集まってくれてぇ、とっても嬉しいですぅ」
真姫「……」
にこ「今日という日をぉ、にこは一生忘れませんっ」
穂乃果「……」
にこ「これからも辛いことや悲しいことがあるかもしれませんが、
みんな、にこのことを支えてくださいっ!」
にこ「代わりに、みんなが同じように苦しいときは、にこが支えてあげますっ。
勇気を出して一歩を踏み出せるように――」
穂乃果「反応に困るよ!!」
にこ「なによ」
穂乃果「良いこと言ってるけど、そのキャラで台無し!」
絵里「はぁ……」
希「真姫ちゃん」
真姫「……?」
希「ヒソヒソ」
真姫「……え?」
希「いいから、言って♪」
真姫「……」
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:25:07.55 ID:WaUNN6Q5o
凛「ご飯が冷めちゃうにゃ〜」
花陽「あったかいうちに食べなきゃ」
にこ「わぁかったわよ、簡潔にいうから」
海未「お腹すきましたから、それでお願いします」
にこ「穂乃果が邪魔しなければとっくに終わってたのよ。……こほん…」
穂乃果「……」
にこ「今日はぁ、にこの為に集まってくれてぇ、とっても嬉しいですぅ」
花陽「最初から!?」
真姫「い、いただき…まーす……!」
一同「「「 いただきまーす 」」」
にこ「ちょっとぉ! 名演説を聞かなくていいの!?」
穂乃果「というか、今日はにこちゃんの為に集まったわけじゃないし」
にこ「あんた……にこの誕生日ってあれだけ言っておいて……」
雪穂「今日のお姉ちゃん……適当すぎ……」
……
…
ことり「ごちそうさま〜」
凛「おなかいーっぱい」
真姫「ごちそうさま……です」
穂乃果「ねぇ、みんな……明日はどうするの?」
にこ「どうするのって?」
穂乃果「明日休みでしょ? どこか行きたいなーって」
雪穂「片付けますね」
絵里「ありがとう。私も手伝うわ」
ことり「私も手伝うね」
雪穂「いいえ〜、ゆっくりしててください」
穂乃果「雪穂、お茶〜」
雪穂「はいはい」
絵里「じー……」
穂乃果「な、なにかな?」
絵里「あまり、よそ様のお家のことをとやかく言いたくないんだけど……」
穂乃果「はい……なんでしょう」
絵里「ちゃんと手伝ってあげなきゃだめよ?」
穂乃果「い、いつもはちゃんと手伝ってるよ」
絵里「本当に?」
穂乃果「……はい」
絵里「ならいいけど」
穂乃果「……私にお姉ちゃんがいたらこんな感じなのかな」
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:27:02.39 ID:WaUNN6Q5o
海未「これからどうしますか?」
凛「なにかして遊びたいにゃ〜! ね、真姫ちゃん?」
真姫「うん……」
花陽「それでは、伝伝伝を」
にこ「なんでやねーん! って、本当に持ってきてたの!?」
希「それじゃ、トランプでもする?」
穂乃果「しようしよう。花陽ちゃん、リモコン」
花陽「ありがとう」
プツッ
花陽「あ……」
『先日起きました、警察官刺傷事件ですが、犯人は未だに――』
花陽「――!」
プツッ
海未「……」
ことり「……」
凛「……」
絵里「……」
真姫「……?」
穂乃果「ババ抜きでいいかな、真姫ちゃん?」
真姫「うん」
希「それじゃ、配るね」
母「みんな、今日は泊まっていくの?」
絵里「いえ、別々のところにお世話になろうと思っています」
希「エリちと花陽ちゃんはことりちゃんとこに、凛ちゃんとうちは海未ちゃんのところに」
母「もう遅いし、それがいいわね。ちゃんとお家にの人に連絡はしておいてね」
一同「「「 はーい 」」」
にこ「にこはぁ、どうしよっかなぁ?」
真姫「帰っちゃうの……?」
にこ「真姫ちゃんがそういうならぁ、にこは穂乃果ちゃんのとこにお世話になっちゃおう☆」
穂乃果「屋根上が空いてるからそっち使ってね」
にこ「せめて屋根裏にして!」
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:28:10.08 ID:WaUNN6Q5o
絵里「明日遊ぶにしても、一度帰るから……昼になるわね」
穂乃果「そうだね。後でどこに行こうか考えようね、真姫ちゃん」
真姫「……うん」
穂乃果「どうしたの?」
真姫「……といれ」
穂乃果「案内するね。ついてきて」
真姫「……」
スタスタスタ......
絵里「なんだか、最近の穂乃果ってしっかりしたお姉さんって感じね」
にこ「そお?」
海未「確かに、しっかりしようと張り切ってる部分は見えますね」
凛「真姫ちゃんも頼ってるみたいだね」
花陽「……」
ことり「どうしたの、花陽ちゃん?」
花陽「うん……。犯人ってまだ捕まらないんだね……」
希「……」
……
…
―― トイレ
ジャー
ガチャ
真姫「……」
ヒラヒラ
真姫「あ……」
……
…
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:28:58.60 ID:WaUNN6Q5o
―― 玄関
「――。」
雪穂「……?」
「――。」
雪穂「外に誰かいる……?」
「雪穂〜」
雪穂「あ、お姉ちゃん」
穂乃果「真姫ちゃん、知らない?」
雪穂「外……かな? 話し声が聞こえるけど」
穂乃果「外……?」
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:30:07.76 ID:WaUNN6Q5o
―― 高坂邸:前
真姫「……うん、バイバイ」
……。
真姫「……」
「真姫ちゃん?」
真姫「?」
穂乃果「誰かいたの?」
真姫「……」
穂乃果「電話……じゃないよね」
真姫「ひみつ」
穂乃果「……」
真姫「?」
穂乃果「ねぇ、真姫ちゃ――……ううん、真姫」
真姫「なに……?」
穂乃果「その秘密にしてることって、真姫にとって危険なことじゃないよね?」
真姫「きけん……?」
穂乃果「うーん、なんて言えばいいのかな……不安になったり怖くなったりすることじゃないってこと」
真姫「ひみつにしたらダメ……?」
穂乃果「ううん、ダメじゃないよ。それが大事だと思うならそうするべきだから」
真姫「……」
穂乃果「さ、中に入ろ」
真姫「うん」
穂乃果「……」
穂乃果「……ん?」
真姫「どうしたの?」
穂乃果「ううん、なんでもない」
……
…
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:31:26.80 ID:WaUNN6Q5o
―― 居間
にこ「はい、罰ゲームをどうぞ」
凛「じゃあ、ちょっと恥ずかしいけど……物マネをします!」
海未「それは期待ですね」
凛「にっこにっこにー♪」
ことり「凛ちゃんかわいい♪」
にこ「罰ゲームになってないんですけど!?」
花陽「む、むしろ……にこちゃんの罰ゲーム……になってたりして」
真姫「……」
希「真姫ちゃんも戻ってきたから、配りなおすよ〜」
穂乃果「絵里ちゃん、ちょっとこっち来て」
絵里「どうしたの……?」
穂乃果「さっき、外で視線を感じたんだけど……」
絵里「え……!」
穂乃果「警察の人が警護にあたってくれてるんだよね?」
絵里「え、えぇ……真姫はあの事件のカギだと思われてるから……」
穂乃果「その人と話してたのかな……」
絵里「どういうこと?」
穂乃果「真姫が外で誰かと話をしてて……あまり深くは聞かなかったんだけど」
絵里「……」
穂乃果「外に出てきた真姫に注意したのかな……」
絵里「呼び方、変わってるのね」
穂乃果「うん……さっきね、なんだか放っておいたらダメだって改めて思ったんだ」
絵里「……」
穂乃果「目を離したらすぐにどこか行っちゃいそうだと思って……」
絵里「……家族のように接しようと?」
穂乃果「うん、そういうこと……」
絵里「なるほどね。……それで、さっきの話だけど」
穂乃果「うん……?」
絵里「なるべく注意してみてて、真姫のこと」
穂乃果「わかった。……だけど、秘密だって言われてるから詮索するのもどうかなって」
絵里「適度に見守っててあげるのよ」
穂乃果「難しいけど……分かった」
……
…
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:32:47.46 ID:WaUNN6Q5o
―― 高坂邸:前
穂乃果「気を付けてね」
ことり「うん、それじゃ、また明日〜」
絵里「おやすみ」
花陽「ごちそうさまでした」
真姫「……バイバイ」
にこ「気をつけなさいよ〜」
スタスタスタ......
穂乃果「みんな帰っちゃうと少し寂しいね」
真姫「……うん」
にこ「真姫は、楽しかった?」
真姫「たのしかった。またみんなとあそびたい」
穂乃果「それは良かった」
にこ「明日も遊べるわよ」
穂乃果「それじゃ、お風呂入って寝ようか」
真姫「うん」
にこ「それにしても、穂乃果のうちにお泊りなんて考えもしなかったわ」
穂乃果「うみちゃん達とは中学まで何度かあったんだけど、高校入ってからはしなくなったなぁ」
真姫「ちゅうがく……?」
穂乃果「うみちゃんとことりちゃん、ずっと一緒にいるんだよ」
真姫「なかよしさんだった」
穂乃果「そうでしょ。分かり合ってる仲だから」
にこ「穂乃果ちゃん、にこのことも分かってくれてるよね?」
穂乃果「なにが?」
にこ「にこを屋根上なんかに寝かせたりしないよね、ね?」
穂乃果「あれは冗談だよ、決まってるでしょ〜?」
にこ「ベランダが空いてるとかも無しだからね?」
穂乃果「……」
にこ「沈黙やめて」
真姫「ふぁぁ……」
穂乃果「もうちょっと眠いの我慢してね。ほら、はやくお風呂入ろう〜」
……
…
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:33:24.07 ID:WaUNN6Q5o
―― 朝
チュンチュン
チュンチュン
穂乃果「ん……んん……」
真姫「すぅ……すぅ……」
にこ「くかー……」
穂乃果「ん?」
真姫「ん……すぅ……」
にこ「ん、んん……」
穂乃果「あ、そっか……二人ともお泊りしたんだった……」
穂乃果「二人がここで寝てるなんて……なんだか、変な気分……」
……
…
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 10:35:11.01 ID:WaUNN6Q5o
―― 昼:商店街
穂乃果「ねぇ、真姫は学校に行きたいって思う?」
真姫「がっこう……」
子供「ねぇ、おかーさん、あれ買って、あれ買って〜」
母親「あと8年経ったらね〜」
子供「そんなに待てな〜い〜!」
母親「じゃあ、今度のテストで92点取れたら考えてあげる」
子供「え、本当に〜! やったー!」
母親「いい、92点よ? 92点だからね?」
穂乃果「私たちと一緒の学校だよ」
真姫「……うん」
穂乃果「少し、考えてみて」
真姫「……」コクリ
絵里「穂乃果、真姫、お待たせ」
花陽「まだ二人だけ……?」
穂乃果「にこちゃんは一度戻ってから来るって」
絵里「それとね、海未は用事が出来たんだって」
穂乃果「そうなんだ……残念だね」
真姫「うん……」
花陽「あ、ことりちゃんが来たよ」
穂乃果「おーい、ことりちゃ〜ん!」
「あ、穂乃果ちゃ〜ん!」
絵里「あら、一人……?」
花陽「凛ちゃんと希ちゃんがいないね」
ことり「ごめんねぇ、待たせちゃって」
穂乃果「ううん、そんなに待ってないから大丈夫だよ」
真姫「……うん、だいじょうぶだよ。ぎりせーふ」
ことり「ふぅ……、よかった……。ぎりせーふ?」
穂乃果「にこちゃんが言ってたんだよ、それ……。変な言葉覚えちゃったね」
絵里「今日も人通りが多いわね……」
花陽「はぐれないようにしないとね」
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 13:04:15.10 ID:WaUNN6Q5o
ことり「ねぇ、絵里ちゃん」
絵里「?」
ことり「希ちゃん、昨日から少し様子がおかしかったよね……?」
絵里「そうね……。調子悪いのかと思って聞いたけど
『なんともない』って言ってたわ。……なにかあった?」
ことり「うん、昨日ね、帰ってからいろいろ話をしてたんだけど……
その時も『なんでもない』って言ってた……」
絵里「一体どうしたのかしら……?」
花陽「凛ちゃんは?」
ことり「凛ちゃん、お家の用事があるんだって」
花陽「そうなんだ……」
真姫「……」
穂乃果「にこちゃん、遅いなぁ……」
……
…
―― 希の部屋
ペラッ
ペラッ
希「……」
希「すぅ……ふぅ……」
希「占いは所詮、占い……」
希「出た結果を受け止めて、前向きに……進む……」
希「勇気を出して、一歩を踏み出す……」
ペラッ
希「……!」
希「……――悪魔」
……
…
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 13:09:47.41 ID:WaUNN6Q5o
―― 商店街
穂乃果「遅れるなら連絡くらいくれてもいいのに……」
真姫「じかん、まちがえたんじゃない……?」
穂乃果「えー? ちゃんと13時って言ったよね? それも3回くらい」
真姫「……うん、いってた」
ことり「3時と間違えてたりして……」
花陽「そんな、まさ……か…」
穂乃果「にこちゃんに限ってそんな間違い……ありえる!」
絵里「電話してみましょ」
穂乃果「……うん」
ポパピプペ
trrrrrrr
プツッ
『はい、もしもし〜?』
穂乃果「にこちゃん、いまどこ?」
『家だけど?』
穂乃果「集合時間、何時って言ったっけ?」
『3時でしょ?』
穂乃果「……」
花陽「あぁ……」
ことり「やっぱり……」
穂乃果「じゅう、さん、じ!」
『13時……? とっくに過ぎてるじゃない!』
穂乃果「そうだよ! どうするの、来るの?」
『い、行く、行くわよ! ちょっと待ってなさい!』
穂乃果「じゃあ、私たち、適当に過ごしてるから、着いたら連絡してね」
『わかった。……道理で遅すぎると思ったのよねぇ』
プツッ
絵里「真姫はどこか、行きたいところ、ある?」
真姫「あっち、あれにいきたい」
ことり「本屋さん?」
穂乃果「よし、行ってみよう」
花陽「そ、そういえば……今日は新刊の発売日……!」
……
…
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 13:11:14.03 ID:WaUNN6Q5o
―― 本屋
店員「いらっしゃいませ」
花陽「えっと、えっとぉ……!」
絵里「なにをそんなに真剣に探しているの?」
花陽「今日は毎月発売されるスクールアイドル雑誌の……あっちかな!?」
絵里「私は参考書を見てくるわね」
ことり「ファッションチェック〜♪」
穂乃果「みんな思い思いに進んで行くね……」
真姫「……」
穂乃果「真姫はなにか探してる本とかあるの?」
真姫「うん……」
テクテクテク......
穂乃果「よし、付いて行こう……」
真姫「……」
穂乃果「絵本……?」
真姫「……」スッ
穂乃果「『天使と悪魔』……」
真姫「どっちが天使なの?」
穂乃果「こっちじゃないかな、白い服着てるし、優しそうな表情してるし」
真姫「こっちは?」
穂乃果「悪魔……かな。無表情だから、多分そうだよ」
真姫「そうなんだ……」
穂乃果「……」
真姫「あくまって、こわい?」
穂乃果「うーん……会ったことないから分かんないけど……怖いんじゃないかな」
真姫「……」
穂乃果「人をね、悪い方に誘う魔物なんだよ。それは怖いよね」
真姫「……うん」
穂乃果「逆に、天使は天の使いの者だから清らかなんだよ」
真姫「こわくなかったけど……」
穂乃果「え?」
真姫「……」
ペラッ ペラッ
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 13:12:32.32 ID:WaUNN6Q5o
穂乃果「……」
店員「……」
穂乃果「う……店員さんに見られてる……」
真姫「……」
ペラペラッ
穂乃果「それ、面白い?」
真姫「うん……」
穂乃果「買う?」
真姫「ううん……」
穂乃果「……えっと、他にどんなのあるかな」
穂乃果「あ、懐かしい……小さいころに読んだよこの猫の本」
穂乃果「おぉ〜、木とヤギの……なんだか怖かったんだよねぇ」
ことり「ねぇねぇ、穂乃果ちゃん」
穂乃果「ん?」
ことり「この衣装のデザイン、かわいいよねっ」
穂乃果「あぁ、うん、かわいい〜」
ことり「ここのフリフリとかいいよね」
穂乃果「うみちゃんに着せてみたいよね〜」
真姫「……」
ことり「うん? どうかしたの、真姫ちゃん?」
真姫「これ……」
ことり「え、ゴスロリ?」
真姫「うん、かわいい」
穂乃果「……ふぅん」
ことり「ねぇ穂乃果ちゃん」
穂乃果「な、なに?」
ことり「真姫ちゃんって、ゴスロリに興味あったっけ?」
穂乃果「ううん、多分ない。私の知る限りないよ」
真姫「悪魔……じゃないみたい」
ことり穂乃果「「 ? 」」
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 13:13:49.79 ID:WaUNN6Q5o
店員「いらっしゃいませ」
にこ「……」
スタスタスタ
穂乃果「あ……」
にこ「あったあった……。えっとぉ……」
ことり「私たちに気づいてないよね……?」
穂乃果「だね……。しかも連絡くれてないし……」
にこ「どこぉ……どこにあるのぉ……?」
ペラペラペラッ
絵里「32ページ」
にこ「32……と。あったあった……小さッ!」
花陽「私たちの名前はないけど、記事になるなんて嬉しいよねぇ」
にこ「なにが期待の新人スクールアイドルよぉ……! もっと枠を大きく取り扱いなさいよね……!」
穂乃果「あの、ちょっといいですか?」
にこ「部長であるにこのこと全然触れられてないしっ!」
穂乃果「あのぉ、すいません」
にこ「え、あぁ……ごめんなさい」
スッ
穂乃果「いや、本を取りたいんじゃなくて……あなたに用があるんですよぉ」
にこ「悪いんだけど、いまプライベートだから……って、穂乃果?」
穂乃果「はい、私です」
にこ「どうしてここに……って、みんないるわね」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 13:14:48.97 ID:WaUNN6Q5o
穂乃果「私たちに連絡をくれず、脇目も触れずにここへまっすぐ来ましたね」
にこ「そ、それがなにか?」
穂乃果「人を待たせてるのに自分の記事を探すのが第一って……」
にこ「う……」
絵里「……」
ことり「……」
花陽「……」
真姫「……」
にこ「む、無言の圧力……」
穂乃果「なにか、言うことがあるんじゃないですか?」
にこ「え、えっと……そのぉ」
穂乃果「……」
にこ「に、にっこ」
絵里「誤魔化さない」
にこ「ごめんなさい」ペコリ
……
…
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/24(土) 13:15:42.51 ID:WaUNN6Q5o
―― ゲームセンター
にこ「あの人形のどこがいいのよぉ〜!」
穂乃果「真姫のご指名なんだから頑張って、にこちゃん!」
ことり「もうちょっと前だよ!」
花陽「あぁ、行き過ぎ!」
真姫「…おちちゃった……」
にこ「もぉ〜! 取れる気がしない〜!!」
『ほな、あとで……』
絵里「わかった、それじゃ」
プツッ
穂乃果「もう最終兵器だね、ことりちゃん!」
ことり「わかった、任せて!」
真姫「が、がんばって……!」
ことり「よぉ〜し!」
にこ「あの人形、ちょっとやそっとじゃ動かないわよ」
絵里「ねぇ、穂乃果」
穂乃果「うん?」
絵里「私はこれで失礼するわ」
穂乃果「あ、うん……わかった」
絵里「それじゃ、ね」
穂乃果「うん、バイバイ〜」
……
…
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:03:21.82 ID:Sez8j5keo
―― 逢魔が時:神社
絵里「もうこんな時間……」
絵里「楽しい時間はあっという間ね……」
「エリち」
絵里「あら、私服……?」
希「今日は、バイトじゃなく……私用できたんよ」
絵里「どうしたのよ、みんなで遊ぼうって話してたのに」
希「うん、ごめんね……遊んでいるときに急に呼び出して……」
絵里「それはいいけど……」
希「いろいろと考えてたんよ」
絵里「いろいろ?」
希「最近、うちの心が不安定で……落ち着かなかくて……」
絵里「そう、言ってたわね……」
希「ここ、神聖な場所にいるのに……それでも精神は揺れ動かされてるようで」
希「真姫ちゃんのこともあって、ショックを受けてるんやって思ってたんや」
絵里「……」
希「それでもみんなは、この非日常を真姫ちゃんと一緒に今までの日常へと戻していった」
希「うちもそれに倣って……いつもの風景に溶け込んでいきたかったんやけど……」
希「それが出来なかった」
絵里「……」
希「この不安定な状態を改善したくて……占ったんよ」
希「うちらの未来を……」
絵里「結果は……どうだったの?」
希「……これやった」
スッ
絵里「それは……」
希「『悪魔のカード』」
絵里「…………」
希「いま、うちらは窮地に立たされているみたいなんや――」
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:04:50.44 ID:Sez8j5keo
pipipipipi
絵里「――!」
希「……電話」
絵里「え、あ……えっと……穂乃果?」
プツッ
絵里「もしもし?」
『絵里ちゃん! どうしよう!!』
絵里「ど、どうしたの?」
『なんか、変なのが届いたんだよッ!』
絵里「変なのって……ちょっと、落ち着いて穂乃果」
『こ、これってもしかして犯人からの手紙なんじゃないかって!!』
絵里「え――」
『な、なんでこんな――!』
希「どうしたん……?」
絵里「犯人からの手紙……?」
希「え――!?」
『な、なんでうちのッ! 真姫のいる場所がッッ!!』
絵里「いま、どこなの穂乃果」
『どうしよう、どうしようっっ』
絵里「落ち着いて穂乃果!」
『――ッ!』
絵里「真姫と、一緒なんでしょ?」
『あ、うん……!』
絵里「真姫を不安がらせちゃダメよ。それを第一に考えて」
『う、うん……そうだね……ッ』
絵里「今から向かうわ。どこにいるの?」
『お、おうち。私の家だよ』
絵里「家、ね。わかった。……希」
希「うん、行こう……!」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:08:09.56 ID:Sez8j5keo
絵里「穂乃果、周りに誰かいる?」
『ううん……あ、歩いている人ならいるけど……』
絵里「その場を動かないでね、今向かってるから。それと一度電話を切るけど」
『え……!?』
絵里「しっかりしなさい。あなた、お姉ちゃんでしょ?」
『あ……うん!』
絵里「じゃあ、少しの間だけだから」
プツッ
希「どうするん?」
絵里「伏見さんに連絡するのよ」
希「手紙っていったい……?」
絵里「さっぱりわからないわ……」
ピッピップ
trrrrrrrr
プツッ
『はい、伏見です』
絵里「私です、絢瀬絵里ですっ」
『あぁ、絢瀬さん?』
絵里「あ、あのっ……えっと」
『どうしたの? 慌ててるみたいだけど』
絵里「穂乃果、高坂穂乃果を知っていますか?」
『え? こうさか……あぁ、うん』
絵里「あの、だから……真姫のいる場所がっ、穂乃果の家でッ!」
『えっと、ごめん、よく分からない……』
希「エリち、止まって。冷静に……」
絵里「止まってられないわよ、急がないと!」
希「エリちはお姉ちゃんやろ?」
絵里「――!」
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:09:20.69 ID:Sez8j5keo
希「重要な部分だけ話すんや」
絵里「……わかった」
『……』
絵里「伏見さん」
『はい』
絵里「真姫はいま、高坂穂乃果の家にいます」
『……』
絵里「その家に、犯人からの手紙が届いたようです」
『え――!?』
絵里「どうすれば、いいでしょうか」
『……』
絵里「……」
『高坂さんの電話番号を教えてくれる?』
絵里「わかりました――」
……
…
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:15:34.00 ID:Sez8j5keo
―― 高坂邸
真姫「ほの…ぁ……ちゃん……」
穂乃果「ご、ごめんね。ちょっと驚いたことがあって、あはは……」
真姫「……っ」
穂乃果「えぇっと……あ、その人形取れてよかったね!」
真姫「……」
穂乃果「さすがことりちゃんだよね、一発でとれちゃうなんて〜」
真姫「うん……」
穂乃果「でもこれ、なんて種類の人形――」
pipipipi
プツッ
穂乃果「は、はい、もしもし!」
『伏見といいます。警察の者です』
穂乃果「け、けいさつ……!?」
『絢瀬さんから聞きました』
穂乃果「絵里ちゃん……?」
『いま、その手紙は持っていますか?』
穂乃果「は、はい。持ってます」
『その手紙を、これから駆け付ける刑事に渡してください。
ちゃんと身分証を提示するので、安心してください』
穂乃果「わ、わかりました」
『それから、その手紙の文面を写真に撮ってほしいんだけど、出来るかな?』
穂乃果「しゃ、写真……?」
『携帯電話でパシャッと』
穂乃果「は、はい……」
『絢瀬さんもそっちに向かっててすぐ到着すると思う』
穂乃果「あ……はい」
『それじゃ、後で』
プツッ
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:16:38.74 ID:Sez8j5keo
穂乃果「……絵里ちゃん」
真姫「……ほの…かちゃん?」
穂乃果「ごめんね、変に心配かけちゃって……。もう大丈夫だから」
真姫「……うん」
穂乃果「あ、そうだ……写真を……」
ピロリン
「君たち……!」
穂乃果「は、はい」
「警察だ。いま、連絡を受けた」
穂乃果「……あ、あの」
警部「不審な人物は見たか?」
穂乃果「い、いえ……今帰ってきたばかりなので……」
警部「そうか……」
ガガッ
警部「おい、こっちに来い」
『なんスか、先輩?』
警部「事件の容疑者が接触してきたようだ」
穂乃果「……」
真姫「……」
警部「その紙がそうか?」
穂乃果「は、はい」
警部「こちらで預かろう」
穂乃果「……」
警部「ふむ――」
穂乃果「真姫……大丈夫だよ」
真姫「う、うん……っ」
警部「――なるほど」
「先輩!」
警部「これを鑑識に回す。あと、鑑識班も呼べ」
後輩「は、はいっ。入れる袋を持ってくるんスね!」
警部「おい、手袋を忘れるな」
後輩「は、はい〜」
穂乃果「……」
真姫「……っ」
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:18:23.09 ID:Sez8j5keo
警部「では、二三、質問させてもらおう」
穂乃果「ぅ……っ」
ガラガラ
母「……どうしたの?」
穂乃果「お母さん……っ」
母「……?」
警部「失礼、私はこういう者です」
母「はぁ……警察の……」
警部「この家に犯人と思われる者から手紙が届きました」
母「え――」
警部「内容を確認したいので、質問に答えてもらいます」
母「……」
警部「君、いいね?」
真姫「……ッ!」
警部「君は、この手紙に記されてることが事実なら犯人の顔を二度も見ていることになる」
真姫「は、はんにん……?」
警部「思い出せるはずだ。相手の顔を……!」
真姫「え、えっと……」
警部「この手紙が本物なら――」
穂乃果「ま、待ってください……!」
警部「……?」
穂乃果「ま、真姫は……忘れているんです、事件のあった時のこと……」
警部「……」
穂乃果「だ、だから……」
警部「思い出すチャンスじゃないか」
穂乃果「え……?」
警部「犯人の顔を思い出せば、今までの記憶もまた戻る。そうじゃないのか?」
穂乃果「そ、それは……わかりません」
警部「すべてを思い出すことが何よりも優先すべきだ」
穂乃果「で、でも……真姫が……!」
真姫「ぅぅ……っ」
母「こんなに震えて……。怖がらせてしまっては思い出せるのも思い出せないのでは?」
父「…………」
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:21:18.50 ID:Sez8j5keo
警部「……」
後輩「せ、先輩……」
警部「時間が経てば、また忘れてしまうかもしれない。
危険に晒されているのはここに書かれている通り、9人になっているのかもしれないんだ」
穂乃果「―――ッ!」
母「え……?」
父「……!」
真姫「ほのか……ちゃんが……きけん……?」
警部「だから、一刻も早く犯人を――」
「ちょっと待ってください!」
警部「……」
絵里「犯人逮捕のために、一般人を傷つけてもいいのですか!?」
警部「人聞きの悪い……。君たちは誤解している。私たち警察は協力が欲しいだけだ」
後輩「そ、そうだよ。犯人をこれ以上好き勝手にさせてはいけない。
悪運の強さに我々も手をこまねいてきたけど……もうそうはいかない!」
警部「余計なことを言うな、馬鹿野郎!」
後輩「す、すいません」
「それなら、私が事情を聴きましょう」
警部「あ……?」
伏見「私が得た情報は全部、そちらに回しているでしょう?」
警部「誰だ、おまえ……?」
後輩「ほ、ほら、あのオカルトの……!」
警部「あぁ、窓際部署の新米が研修に来たって……」
伏見「ち、が、い、ま、すぅ! 刑事十三課ですぅ! 正式な部署なんですぅ!」
警部「チッ……。もういい。俺たちは聞き込みだ」
後輩「は、はい!」
警部「必ず全部、こっちに回せよ」
伏見「言われるまでもなく」
警部「……」
スタスタスタ......
伏見「まったく、なぁにがオカルトよ、窓際よ、
こっちのおかげで解決した事件もあるってのに」
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:23:02.25 ID:Sez8j5keo
母「真姫、中に入って」
真姫「……ほの…」
穂乃果「大丈夫だよ」
真姫「……うん」
穂乃果「……」
父「……」コクリ
穂乃果「お母さん、お父さん……ありがと」
絵里「……」
希「……」
伏見「っと、愚痴ってる場合じゃない。えっと……穂乃果、さん?」
穂乃果「は、はい」
伏見「私は伏見といいます。絢瀬さんから番号を教えてもらって電話をしました」
穂乃果「……はい」
伏見「さっそくだけど、撮った写真を見せてくれるかな」
穂乃果「ちょ、ちょっと待っててください」
希「うちは、真姫ちゃんが気になるから中に入ってるね」
絵里「えぇ、お願いね」
穂乃果「え、えっと……」
絵里「……あの、写真って?」
伏見「証拠品だから、捜査一課に持っていかれると思って、高坂さんに撮ってもらってたの」
絵里「……」
穂乃果「……これ、です」
伏見「……」
『 こんにちは。
突然の手紙を不審に感じられるでしょうが、
私の顔に覚えがないようなのでこうして筆を執りました。
今日は商店街へ行きましたね。
西木野真姫さんとは目を合わせたのですが、私には気付かなかったようです。
運がいいですよ。
9人のお名前、簡単に知ることができました。
あなた方はスクールアイドルをやっているのですね。
それでは、また。 』
伏見「なるほど……警部の言った意味が分かった」
絵里「……なによ、これ」
穂乃果「……」
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:27:43.03 ID:Sez8j5keo
伏見「では、質問させてもらうけど、いい?」
穂乃果「はい……」
伏見「商店街に行ったのは何時?」
穂乃果「13時です」
伏見「ふむ……。それで、帰ってきたのがついさっき……と」
絵里「あの、一緒に考えてもいいですか?」
伏見「え?」
絵里「何が起こっているのか、知りたいですから」
伏見「……うん、そうだね。知恵を貸してくれると助かる」
絵里「邪魔なようなら言ってください」
伏見「わかった。……で、手紙の差出人が……って、ちょっと待ってね」
穂乃果「?」
伏見「手紙はどこにあったの?」
穂乃果「郵便受けです。……そこの」
伏見「これに触るのは誰?」
穂乃果「お父さんとお母さん、私と妹の雪穂……だけです」
伏見「西木野さんは?」
穂乃果「触っていません」
伏見「オッケー……、では失礼して」
絵里「……その白い手袋って本当にやるんですね」
伏見「まぁね〜。現場保存は基本だから」
パカッ
伏見「何もなし。……手紙と一緒に入ってたものって?」
穂乃果「ありません。あの手紙だけです」
伏見「そっか……」
絵里「……」
伏見「話を戻すけど、商店街ではどこへ?」
穂乃果「本屋とアイスショップ、洋服屋さん……最後にゲームセンター……かな?」
絵里「そうよ、それで合ってる」
伏見「結構回ったねぇ……。ここが重要なんだけど」
穂乃果「は、はい」
伏見「西木野さんが他人と目を合わす機会ってどれくらいあった?」
穂乃果「え、えっと……」
絵里「最後のゲームセンターは分からないけど、
前に挙げた3つの店は店員とも目を合わすタイミングがありました」
伏見「……なるほど」
絵里「でも……」
伏見「?」
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:30:03.51 ID:Sez8j5keo
絵里「真姫はあっちこっちとキョロキョロしてたから……」
穂乃果「うん……」
伏見「通行人の中にいたかもしれない……と」
絵里「……はい」
伏見「あとで店の場所を教えてもらうとして……」
穂乃果「……」
伏見「あの手紙は事件……警察官を刺した犯人が出したものだと思う?」
穂乃果「え……?」
絵里「どういうこと……ですか?」
伏見「思い込みって結構危険で、見えない物を見えたと錯覚させてしまうからね」
穂乃果「???」
絵里「あの、おっしゃる意味が……」
伏見「この手紙の主は、事件の犯人と西木野さん本人しかしらない情報を持っているんだよね」
穂乃果「えっと……それって……」
絵里「あ……!」
伏見「『犯人の顔を見ている』という事実」
絵里「わ、私たちは真姫が犯人の顔を見ている『かもしれない』ってだけ……!」
伏見「私たち警察も同じで、『かもしれない』ってだけだった。だけど手紙で事実が分かった」
穂乃果「……ど、どういうこと?」
絵里「今の真姫を含めて、私たち9人と真姫のご両親は犯人に繋がる情報は一切持っていないの」
伏見「逆に犯人は西木野さん本人の顔は覚えていた。だからこんな文章を書ける」
穂乃果「……」
絵里「……」
『 こんにちは。
突然の手紙を不審に感じられるでしょうが、
私の顔に覚えがないようなのでこうして筆を執りました。
今日は商店街へ行きましたね。
西木野真姫さんとは目を合わせたのですが、私には気付かなかったようです。
運がいいですよ。
9人のお名前、簡単に知ることができました。
あなた方はスクールアイドルをやっているのですね。
それでは、また。 』
伏見「この手紙を見て君たちは『犯人の顔を見たかもしれない』という疑いから、
『犯人の顔を見ている』と確信してしまったんじゃないかな」
穂乃果「あ……」
伏見「もう一度聞くけど、あの事件の犯人が出した手紙だと思う?」
穂乃果「それは……」
絵里「あの、伏見さん」
伏見「……?」
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:32:33.69 ID:Sez8j5keo
絵里「真姫の近くに犯人が……?」
穂乃果「え――」
絵里「穂乃果が電話で最初に言っていましたけど、
どうして真姫の居場所が分かったのか……気になっているんです」
伏見「そうだね……、それは重要なポイントだと思う。でも……」
穂乃果「……」
絵里「……」
伏見「私は……――いないと思う。警部たちの聞き込みでハッキリするだろうけど」
穂乃果「ほっ……」
絵里「どうしてですか?」
伏見「その次の文章を読めばわかると思う。
西木野さんの身に起きている状況を理解してない可能性が高い」
穂乃果「……?」
絵里「真姫の精神が逆戻りしているってことを……犯人は知らない……?」
伏見「そう、そのことは警察側は知っている。それに医者にも口止めしているから」
絵里「ふぅ……変な汗をかいちゃった……」
穂乃果「私も……」
伏見「だから顔見知りでもない、全くの赤の他人の可能性が強い」
穂乃果「……」
伏見「それで最初の質問に戻るけど……この手紙の主があの事件の犯人かどうか」
穂乃果「私は犯人だと思います」
伏見「どうして?」
穂乃果「『運が良かったですね』に悪意を感じました」
伏見「……」
穂乃果「もし運が悪ければどうなったのか……って思ったらとっても怖くなったんです」
伏見「なるほど、うん。わかりました。
この手紙の主を事件の犯人として捜査していきます」
穂乃果「……」
絵里「いいんですか? 穂乃果の直感が根拠で……」
伏見「充分だよ。それに、脅迫まがいの内容だから無視はできない」
絵里「……」
伏見「今回の件で犯人はかなり大胆な行動に出てる。
警護はこのままつけるけど、何か不審な点があったらすぐに連絡して」
穂乃果「……はい。よろしくお願いします」
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:33:44.62 ID:Sez8j5keo
絵里「あの、この家を見張っていた人はいなかったんですか?」
伏見「残念なことに……。張っていた人は君たちと一緒に商店街に行ったんでしょう」
絵里「……」
伏見「この点からいっても、犯人はありえない状況を作り出してるから。こっちも右往左往しちゃってね」
穂乃果「さっきの……悪運がどうとかって……」
伏見「そういうこと。ここまでくると運がどうこうってレベルじゃないんだけどね」
絵里「……」
伏見「それじゃ、ご両親にも詳しく話をしたいから、いいかな?」
穂乃果「は、はい。……どうぞ」
伏見「お邪魔します」
……
…
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:38:28.89 ID:Sez8j5keo
―― とあるマンションの一室
「ねぇ、アリス」
「去年のあの事件、全然話題になってないのはどうしてだろう」
「あれだけのインパクトのある事件、みんな忘れてしまったというの?」
「それともすでに飽きてしまったの?」
「そうね、そう思うよね」
「女子生徒バラバラ殺人事件」
「犯人の動機は伏せられてる。きっと親族への配慮なんだろう」
「……」
「だけど」
「犠牲になった女子生徒の子たちを忘れてはいけない」
「そして」
「半年前に送ったメールは、いまだに無視されてる」
「だから」
「私が彼女たちの犠牲を無になんかさせない」
「だって」
「三倍のインパクトが世間を、この国を駆け巡るんだから」
「必要なのは」
「9人の犠牲」
「それで、命の価値は高まっていくのだから」
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:39:11.43 ID:Sez8j5keo
「ねぇ、アリス教えて」
「私に、それができるかどうか」
……。
「フフ、ありがとう」
「そうね、もう後戻りできないから」
……。
「あの警察の人がきっかけをくれた」
「フフッ」
「フフフッ、アハハハハッ!!」
「素敵! あの時から世界が輝くようになった!」
「西木野真姫」
「ありがとう、あなたに出会えてよかった!」
……。
……
…
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:41:55.54 ID:Sez8j5keo
―― 高坂邸
伏見「それではこれで」
母「あの、娘たちに危険は……」
穂乃果「……」
伏見「それをほのめかす一文はありましたけど、気にしなくても大丈夫です」
絵里「……」
伏見「私たちが止めてみせますから、任せてください」
母「……」
穂乃果「はい、お願いします」
伏見「うん、それじゃ」
pipipipipi
プツッ
伏見「はい、伏見です」
『前の車に乗れ』
伏見「わかりました」
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:43:48.40 ID:Sez8j5keo
―― 車内
伏見「おつかれさまです」
後輩「お疲れさま」
警部「で、どうだった」
伏見「ご両親に説明しました」
後輩「彼女たちの身の危険が迫ってるって?」
伏見「まぁ、はい」
警部「手紙の内容を把握してるのか」
伏見「……連絡先を教えてもらってるので」
警部「信用されてねえな、俺たちは」
伏見「……」
後輩「なんだかやけに彼女たちと距離が近そうだから、妙だなと思ったんだよなぁ」
警部「出せ、署に戻るぞ」
後輩「了解ッス」
伏見「聞き込みの方は?」
警部「今のところ、目撃者無しだ」
伏見「そうですか……」
警部「鑑識班も成果なしだとよ」
後輩「白昼堂々と脅迫状を投函……ありえないッスね……」
警部「昼から夕方にかけて、あの辺りは人通りがないとは言えない場所だ」
伏見「……」
後輩「じゃあ、見張りを使った複数犯……?」
警部「どうだかな……」
伏見「あの証拠品の手紙、一日だけ借りられませんか?」
警部「それをどうするんだ?」
伏見「相談したい相手がいまして」
後輩「それは?」
伏見「所属してる部署の唯一の手段ってことで」
警部「……」
後輩「カモフラージュの物でも一緒に入れてくれればそこからも捜査進められたんスけどねぇ」
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:45:00.48 ID:Sez8j5keo
伏見「そういえば、あの子たち9人の名前……簡単に知ることが出来たってどういうことですか?」
後輩「あれ、知らないの、スクールアイドル」
伏見「そういえばそんな単語があった……」
後輩「彼女たち、そこそこ有名だから。調べればすぐだよ」
伏見「へぇ……知らなかった。アイドルかぁ……確かにみんな可愛いかった」
警部「おまえ、去年のあの事件を捜査してたんだってな」
伏見「え?」
後輩「あの事件……?」
警部「女子生徒バラバラ殺人事件のことだよ」
伏見「…………」
後輩「あぁ……あの……」
警部「課長からそれを追ってここへ来たと聞いた。
今回の事件と、その事件、繋がってんのか?」
伏見「さぁ、それを調べに来ただけですから」
後輩「む……なんだ、その態度」
警部「いいから。……悪かったな」
伏見「……いえ」
後輩「でも、もう終わったんじゃ……?」
警部「事件ってのはそう簡単じゃねえんだ」
伏見「……」
……
…
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:46:58.86 ID:Sez8j5keo
―― 穂乃果の部屋
キィィィィイイイ
穂乃果「う……」
ィィィィィイイイン
母「どうしたの?」
穂乃果「最近、ちょっと耳鳴りがしてて……」
母「病院に行く?」
穂乃果「大丈夫だと思う……。しばらく続くようだったら行ってみる」
母「……。それで、話を戻すけど」
穂乃果「うん。真姫ちゃんのお母さんはなんて……?」
母「娘の望む方を尊重するって」
穂乃果「……そっか」
母「穂乃果はどうしたい?」
穂乃果「一緒にいたい。犯人は……真姫のこと……狙ってるみたいだから」
母「……」
穂乃果「守って……あげなくちゃ……」
母「楽観できる状況じゃないのよ?」
穂乃果「……うん。でも、あの刑事さんが安心してって言ってくれてるし……」
母「……」
穂乃果「どうしたの?」
母「ううん、なんでもない。親は親同士で連絡とってみるけど、あなた達はどうするの?」
穂乃果「うん、絵里ちゃんと希ちゃんとも話したけど……明日、みんなに伝えてみる」
母「あまり考えすぎないようにね」
穂乃果「……うん」
「おねーちゃん〜」
コンコン
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:47:58.33 ID:Sez8j5keo
穂乃果「いいよ、入ってー」
スーッ
雪穂「真姫ちゃん、お風呂に入れたよ〜」
真姫「……」
穂乃果「うん、ありがと、雪穂」
真姫「ありがとう、ゆきちゃん……」
雪穂「えへへ〜、どういたしまして」
母「……」
雪穂「あれ、なんか大事な話? 邪魔しちゃった?」
母「ううん、それは終わったから。みんな早く寝なさい」
雪穂「はーい、それじゃおやすみ〜」
穂乃果「おやすみ〜」
真姫「おやすみなさい……」
……
…
―― 高坂邸:玄関前
母「雪穂は知らなくていいって、穂乃果は言ってたけど……本当にいいのかしら」
父「……」コクリ
母「その雪穂が、妹が出来たみたいに嬉しそうにしちゃってるの」
父「……」
母「穂乃果も、守らなきゃって言って強くあろうとしてるけど……少し震えてて」
父「……」
母「一人で背負おうとしてるのを見てると、なんだか切なくなってきちゃって」
父「……」
母「娘たち三人、守ってあげてね、お父さん」
父「……」コクリ
母「あの女性刑事さん、見た目若いのに……見た目以上の経験を積んでそうだったわ……」
……
…
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:52:01.20 ID:Sez8j5keo
―― 深夜:穂乃果の部屋
穂乃果「すぅ……すぅ……」
「ぐすっ……」
穂乃果「……ん…?」
「ぐすっ……っ」
穂乃果「まき……?」
真姫「……ぐすっ」
穂乃果「どうしたの……真姫……?」
真姫「て……」
穂乃果「あ……ごめんごめん。離しちゃってたね……」
真姫「……っ」
ギュッ
穂乃果「怖い夢でもみた?」
真姫「ううん……ぐすっ」
穂乃果「……」
真姫「なにもわからない……」
穂乃果「……?」
真姫「ほの…っ…かっ……ちゃん…の……こと……わからないっ……」
真姫「にこ…ちゃんっ……も……ぐすっ」
真姫「……そと…の……っ…ことも……わからないこと……ばっかり…っ」
穂乃果「……」
真姫「おとうさんも……おかあさんも……っ」
真姫「まきがおかしいから……みんな、やさしくしてくれるんだよね……?」
穂乃果「……真姫ちゃん」
真姫「ぐすっ……」
穂乃果「みんなが優しいのは、心配してるからだよ」
真姫「……ごめんなさい……っ」
穂乃果「え?」
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:53:12.12 ID:Sez8j5keo
真姫「めいわく……かけて……っ……ごめんなさい……ぐすっ」
穂乃果「あ、ち、違うよ」
真姫「ぅぅっ、うぅぅっ」
穂乃果「心配してるのは、みんな、真姫のことが好きだからだよ」
真姫「ぐすっ……?」
穂乃果「大切だから、大事に想ってるから、優しくしてるの」
真姫「……」
穂乃果「迷惑かけていいんだよ、心配かけていいんだよ」
穂乃果「だって、私たちはかけがえのない友達……仲間なんだから」
真姫「なか…ま……?」
穂乃果「そうだよ。辛いときに支えあったり、悲しいときに落ち込んだり」
穂乃果「一緒になってそれを乗り越えるの」
真姫「……」
穂乃果「みんなと一緒にいれば、楽しいことがもっと楽しくなる」
真姫「……」
穂乃果「今日だって、うみちゃんと凛ちゃん、希ちゃんが一緒になって遊んでくれれば……」
真姫「……うん、たのしかった」
穂乃果「え?」
真姫「かくれんぼして、おにごっこして……ごはんたべて……ゲームして」
穂乃果「……うん」
真姫「……」
穂乃果「心配かけてもいい、迷惑かけてもいい。
それでも、みんなは真姫と一緒にいたいんだから。真姫もそうでしょ?」
真姫「……うん」
穂乃果「一緒にいたいってことは、相手のことが好きってことだから」
真姫「うん」
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:54:57.25 ID:Sez8j5keo
穂乃果「だから、泣かないで」
ナデナデ
真姫「……うんっ」
穂乃果「あ、やっと笑った……」
真姫「?」
穂乃果「じゃあ、もう寝よっか。明日、学校だから」
真姫「……」
穂乃果「学校、こわい?」
真姫「……うん」
穂乃果「それでも行くよ。大丈夫……みんな一緒だから」
真姫「……」
穂乃果「怖く…ない……から……」
真姫「……」
穂乃果「……すぅ…」
真姫「おはなし……」
穂乃果「……ん、……ん?」
真姫「おはなし、して?」
穂乃果「えっと……何の話がいい?」
真姫「なんでもいいから」
穂乃果「じゃあ……穂乃果が迷惑をかけてる人のはなし」
真姫「……」
穂乃果「その人は、小さいころから一緒で……すぐ怒って、
ほのかが一緒に何かやろうって言っても『嫌です』ってすぐ断るの」
真姫「……うみちゃん」
穂乃果「正解、よくわかったね」
真姫「……ほかには?」
穂乃果「他……? えっと……ほのかに元気をくれる人のはなし」
真姫「……」
穂乃果「その人は元気いっぱいで、猫みたいに――」
真姫「りんちゃん」
穂乃果「はやいよ……もうちょっと話を聞いてくれても」
真姫「ほかには……?」
穂乃果「じゃあ、ほのかに、いつも厳しくしてる人のはなし」
真姫「うみちゃん」
穂乃果「うみちゃんはさっき言ったでしょ? もう少し話聞いてね」
真姫「……はい」
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:56:29.60 ID:Sez8j5keo
穂乃果「その人は、出会ったころ、私たちがやろうとしてることを否定してたのね」
真姫「ひてい?」
穂乃果「『認められないわ』って」
真姫「ふぅん……」
穂乃果「でもね、その人は……本当はとっても優しいの。
ほのかもそうなんだけど、前をまっすぐ見すぎてて周りがみえなくなっちゃって」
真姫「……」
穂乃果「でもね、その人にも大切に想ってくれてる人がいたから、
自分にも周りにも優しくすることができたの」
真姫「よく、わからない……」
穂乃果「そっか……そうだね、難しすぎたね」
真姫「もっと、きかせて」
穂乃果「……叱ってくれるのは、ほのかやみんなを見守っていてくれるからなんだよ」
真姫「……」
穂乃果「みんなのお姉ちゃん」
真姫「えり…ちゃん?」
穂乃果「正解〜」
真姫「うん、ほかには?」
穂乃果「そろそろ寝ようか……眠たくなっちゃった……」
真姫「さいご……だから」
穂乃果「……うん。それじゃあ……その人はね、かわいくて、マスコット的存在で」
真姫「ますかっと?」
穂乃果「マスコット。みんなのおもちゃ……じゃなくて、可愛がられる存在ってこと」
真姫「……」
穂乃果「私たちの中心人物で、みんなを引っ張ってて、頼れる人で……うん……」
真姫「……?」
穂乃果「偏った知識が豊富で……見栄っ張りで、でも寂しがり屋でツインテールで……」
真姫「はなちゃん」
穂乃果「全然違うよっ」
真姫「?」
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:57:01.32 ID:Sez8j5keo
穂乃果「ほぼ答えを出したのに……。えっと、ほら……意地悪してくる人」
真姫「にこちゃん」
穂乃果「はい、正解」
真姫「いじわるする、にこちゃん」
穂乃果「ふふふ、それはね」
真姫「……?」
穂乃果「真姫のことが好きなんだよ」
真姫「ううん、きらいなんだよ」
穂乃果「素直じゃない人はね、思ってることと逆のことをするんだよ」
真姫「……そうなんだ」
穂乃果「そうだよ、そうに違いないよ」
真姫「…………」
穂乃果「それじゃ、おやすみぃ」
……
…
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:58:26.29 ID:Sez8j5keo
―― 朝:通学路
穂乃果「うぅ……結局7人全員話してしまった……」
海未「朝からフラフラして……。それではいけませんよ、シャキッとなさい」
穂乃果「ふぇ〜い」
ことり「おはよう、穂乃果ちゃん」
穂乃果「おはよう! さぁ、今日も元気よく行くよ!」
海未「無理に元気を出さなくてもいいです」
穂乃果「もぉ、シャキッとしろって言ったのうみちゃんなのにぃ」
ことり「あれ、真姫ちゃんは?」
海未「メールで一緒に来ると言っていましたよね?」
穂乃果「……え?」
「……」
穂乃果「あんなとこに隠れてる!?」
タッタッタ
穂乃果「真姫!」
真姫「……!」ビクッ
穂乃果「ほら、行くよ」
真姫「でも……」
穂乃果「だいじょうーぶだってぇ、昨日、話したでしょ?」
真姫「……」
穂乃果「凛ちゃんも花陽ちゃんも一緒なんだから、平気平気〜」
真姫「ほのか…ちゃんは?」
穂乃果「私は……別だけど……」
サッ
「……」
穂乃果「ヤドカリかっ!」
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 03:59:30.50 ID:Sez8j5keo
海未「無理して連れて行かなくてもいいのでは……?」
ことり「うん……」
穂乃果「それはダメ。なにがあるか分からないもん」
海未「?」
ことり「……?」
穂乃果「う〜ん、隠れたまま出てこないよぉ……どうしよう、困ったなぁ」
「……」
穂乃果「ヤドカリって何が好きなの?」
海未「知りません。用事があるので先に行きます」
穂乃果「……うん、分かった」
海未「徐々にでいいと、私は思いますよ?」
スタスタスタ......
穂乃果「できればそうしたいけど……」
ことり「ヤドカニの好物は分からないけど……真姫ちゃんが好きな物はなにかな」
「……」
穂乃果「そうだなぁ……。昨日の夜、大事そうに抱いて寝てた……よし!」
ことり「どうしたの?」
穂乃果「忘れ物取りに行ってくる! ちょっと待ってて!」
タッタッタ
……
…
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 04:06:50.64 ID:Sez8j5keo
―― 音ノ木坂学院
「おはよー、穂乃果」
「おはよう、穂乃果ちゃん」
「おはよう」
穂乃果「あ、おはよう、ヒデコ、ミカ、フミコ」
真姫「……っ」
ヒデコ「あ、西木野さん、登校してきたんだ〜……ん?」
ミカ「……ん?」
フミコ「ん?」
真姫「……?」
ことり「えぇっとぉ、気にしないで〜」
ヒデコ「う、うん……」
ミカ「…それじゃ……」
フミコ「……教室で」
真姫「……」
穂乃果「やっぱ目立つよね……」
ことり「そうだね……」
真姫「……」
ことり「でも、真姫ちゃん気にしてなさそうだし……」
穂乃果「まぁ、いっか……」
「あ、真姫ちゃんだー!」
「本当だ……!」
真姫「……りんちゃん、はなちゃん」
凛「学校に来たんだ〜」
花陽「良かった……って、あれ?」
真姫「?」
凛「なぁに、その人形〜?」
花陽「昨日、ことりちゃんが取った人形だよね……?」
ことり「う、うん」
凛「変なにんぎょ――むぐっ」
穂乃果「ダメだからっ、大事にしてるからっ、お気に入りだからぁっ」
凛「むぐぐ」コクコク
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 04:08:42.77 ID:Sez8j5keo
真姫「ルーパちゃんっていうの」
花陽「そうなんだ……かわいい」
真姫「うん、かわいい」
「ププッ、かわいいのは人形じゃなくてあんたでしょっ」
穂乃果「……!」
にこ「真姫がまさか人形を抱いて登校してくるなんてっ、プププッ」
穂乃果「ちょっと、にこちゃん!」
にこ「ごめんごめん、予想外すぎて、おかしくて、名前まで付けちゃって……ププッ」
穂乃果「笑いすぎ!」
ことり「にこちゃん、意地悪だよぉ」
にこ「はいはい、ごめんなさ〜い☆」
穂乃果「反省してないね!」
真姫「……」
にこ「うーん……何度見ても可愛いとは思えないわこの人形……」
真姫「にこちゃん、まきのこと好きなの?」
にこ「……」
にこ「…………」
花陽「……!」
ことり「わ、わぁ……中々聞けないこと聞いたよ……」
にこ「は?」
真姫「ほのかちゃんがいってた。いじわるするのは好きだからって」
にこ「はぁ〜〜ッ!?」
穂乃果「だ、だって事実でしょ?」
にこ「私は小学生男子かー!?」
凛「似たようなもんだにゃ」
花陽「で、でも、間違ってないよねっ」
にこ「なによそれ、私がさっき笑ったことの仕返しってわけ?」
穂乃果「そうじゃないけど……」
真姫「……」
にこ「まったく……しょうがないわね」
絵里「あら、真姫……本当に登校したのね」
希「賑わってるみたいやね」
にこ「にこは〜、真姫ちゃんのこと、とっても大好きにこ♪」
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 04:09:49.95 ID:Sez8j5keo
真姫「はい」
にこ「え?」
真姫「だっこしてもいいよ」
にこ「わ、わーい……」
穂乃果「それ、真姫のお気に入りだからね。もっと喜ばなきゃ」
にこ「う、嬉しいにこ〜☆」
希「にこっち〜、はい、チーズ」
にこ「にこ♪」
パシャッ
希「おぉ……、カメラを向けられると自然にポーズをとるんやね」
絵里「さすがね……」
穂乃果「卒業アルバムに載せたらどうかな」
希「それは名案〜」
絵里「とてもいい表情してるから」
にこ「やめて!?」
凛「どうしてそんなにお気に入りなの?」
花陽「昨日のゲームセンターでずっと見てたよね……?」
真姫「うん、おそろい……だから」
凛「おそろい?」
花陽「二つ……取ったかな……?」
ことり「ううん、一つだけのはず……」
凛「誰とお揃いなの〜?」
真姫「ひみつ」
穂乃果「……」
……
…
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 04:11:39.99 ID:Sez8j5keo
―― 1時限目:2年生の教室
ヒデコ「朝から自習なんて珍しいね」
フミコ「職員室で会議してるみたいだよ」
ミカ「なにかあったのかなぁ?」
穂乃果「すぅ……すぅ……」
海未「よく寝ていますね……いつものことですが……」
ことり「昨日遅くまで真姫ちゃんとお喋りしてたんだって」
海未「何の話をしていたのやら……」
ことり「……朝から見てて思ったんだけどね」
海未「……?」
ことり「真姫ちゃんは、良い方に変わったと思う」
海未「……」
ことり「だけど、穂乃果ちゃんが……少し変だと思う。いつもと違う気がする」
海未「確かに……さっきも違和感が残ること言っていましたね」
ことり「真姫ちゃんが心配なのは分かるけど……」
海未「らしくありませんよね……」
「園田さーん」
海未「?」
「1年生のお客さんだよー」
海未「……1年生?」
ことり「あ……凛ちゃん!」
凛「……」
ことり「ど、どうしたの?」
海未「今授業中ですよ?」
凛「こっちも自習なんだね。凛たちのところもそうなんだよ」
海未「そうですか……」
ことり「全学年自習してるのかな……?」
凛「って、それどころじゃなくて、真姫ちゃんが大変なのっ」
……
…
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 05:52:43.60 ID:Sez8j5keo
―― 保健室
真姫「……」
保険医「困ったわね……」
花陽「す、すいません……」
保険医「あなたが謝ることじゃないけど……」
コンコン
ガラガラ
穂乃果「失礼します」
真姫「あ……!」
テッテッテ
真姫「ほの…かちゃん……っ」
穂乃果「真姫……」
ことり「……」
海未「……」
保険医「……」
花陽「真姫ちゃん……朝のホームルームが始まってすぐに……教室から出て行っちゃって……」
凛「凛たちが慌てて追いかけたの……」
穂乃果「……そうだったんだ」
真姫「……っ」
保険医「事情は聞いてる。だから、今日はもう帰宅した方がいいんじゃないかしら」
穂乃果「…………」
海未「そうですよ、穂乃果。今の真姫に無理をさせてもいい結果にはならないと思います」
ことり「学校に出てこられただけでも……」
穂乃果「それじゃ……ダメ…なんだよ……」
海未「……」
ことり「……」
穂乃果「な、なんとか……学校に居させてほしいんですけど……駄目ですか?」
保険医「それは、担任と話し合って決めてね。ここで過ごす選択肢もあるから」
穂乃果「……はい、分かりました」
……
…
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 05:54:31.84 ID:Sez8j5keo
―― 休み時間
絵里「そんなことがあったの……」
希「やっぱり、知らない人だらけだと不安なんやね……」
凛「真姫ちゃんが登校してきたから、教室のみんなも注目しちゃってて……」
にこ「人形も持ってるから尚更ね」
花陽「すごく居心地悪そうにしてた……」
絵里「そうでしょうね……」
穂乃果「真姫は、どうしたい?」
真姫「……わからない…」
穂乃果「……」
真姫「ごめ…なさ……い……」
穂乃果「ううん、謝らないで」
真姫「……っ」
絵里「担任の先生は、なんて言ってるの?」
海未「少しずつ慣れてくれれば、それでいいと。
できれば出席はしてほしいみたいです」
ことり「でも、無理はしないで欲しいとも言ってたの」
希「……そう」
にこ「この学校が怖い所だと思う前に、帰らせた方がいいと思うけど」
絵里「でも……」
海未「……?」
にこ「恐怖心って結構厄介よ。
みんなも小さいころ、怖い場所には近づきたくなかったでしょ」
ことり「うん……そうだね」
希「真姫ちゃん、この学校が……怖い?」
真姫「……」コクリ
にこ「私たちだって、知らない場所に放り込まれたら不安になるでしょ。
だから慣れるまで時間がかかるわよ」
穂乃果「凛ちゃんと花陽ちゃんが一緒だから、なんとかなると思ったんだけど……」
凛花陽「「 ごめんなさい 」」
穂乃果「せ、責めてる訳じゃないよ。ご、ごめんね」
絵里「とりあえず、休み時間が終わるから話は次ね」
希「真姫ちゃん、もう少しだけ保健室で待っててくれる?」
真姫「……めいわく」
にこ「?」
真姫「かけて……ごめん……なさい……」
海未「……!」
絵里「真姫……」
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 05:56:09.20 ID:Sez8j5keo
真姫「ぐすっ……」
花陽「真姫ちゃん……っ」
穂乃果「真姫、昨日も言ったけど――」
にこ「それは違うわよ」
真姫「ぐすっ……?」
にこ「真姫の問題はみんなの問題なの。
だからこれはみんなの問題になるからみんなで考える。それは当たり前のことよ」
真姫「……っ」
凛「にこちゃん……!」
ことり「そうだよ、だから……泣かないで?」フキフキ
真姫「うん……っ」
海未「なんて含蓄のある言葉でしょう……」
穂乃果「にこちゃんがっ、輝いて見える」
ピカーッ
にこ「ふふん」
希「いつものしたり顔にも後光が差さっているようや……!」
花陽「お、オーラが……!」
ピカーッ
にこ「今頃気付いたの〜? まぁ、いつも一緒に居るから慣れてしまってたのね〜」
穂乃果「今からにこ様と呼ぼう!」
絵里「ほら、遊んでないでさっさと戻りなさい」
穂乃果「そうだね。それじゃ、行こうか真姫」
真姫「……うん」
にこ「待って」
穂乃果「……?」
にこ「真姫の問題はみんなの問題だからね。
みんなの問題は、みんなで考える。それは当たり前のことなんだから」
絵里「それが分かったら、もう迷惑とか言っちゃダメよ?」
真姫「……うん」
穂乃果「さ、行こ行こ」
スタスタスタ...
にこ「……」
「……」
「なんで二回言うかなぁ……」
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 05:58:15.23 ID:Sez8j5keo
にこ「……あれ?」
希「いつものにこっちに戻ってしまったようや」
花陽「本当だ……」
凛「かよちん、凛たちも戻ろ」
絵里「それじゃ、後でね」
希「ほな」
ことり「私たちも行こう、海未ちゃん」
海未「待ってください、絵里」
絵里「え?」
希「?」
海未「絵里は、真姫を帰すことに反対なのですか?」
絵里「……どういうこと?」
海未「聞いたそのままの意味です」
絵里「……」
希「どうしてそういうこと聞いてるのかってことやない?」
海未「……」
にこ「あんた達、なんの話をしてるのよ?」
ことり「……」
絵里「もう時間よ。……その質問は、穂乃果にしてみて」
海未「……」
にこ「次も自習だったらいいのに〜」
スタスタ......
キーンコーンカーンコーン
ことり「行こう、海未ちゃん」
海未「……はい」
ことり「穂乃果ちゃん、なにか隠してるよね」
海未「私もそう思います。そして、それは絵里と希も知っている……と思います」
ことり「それを知りたいって、海未ちゃんは思う?」
海未「……それは……まぁ」
ことり「私は、穂乃果ちゃんが話してくれるまで待つ……かな」
海未「聞き出すのは間違いでしょうか……?」
ことり「今はまだ話さない方がいいって思ってるんじゃないかな……」
海未「……」
ことり「でも、海未ちゃんは力になれるかもしれないよ?」
海未「ですが、どうしたらいいのか、よく分かりません……」
ことり「海未ちゃんは海未ちゃんの考えでいいと思う」
海未「……分かりました」
……
…
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 05:59:55.24 ID:Sez8j5keo
―― 昼休み:職員室
担任「1年の西木野を同じクラスにしろ……って?」
穂乃果「いえ、してください!」
担任「言い方の問題じゃなくて」
穂乃果「みんなで話し合ったんですけど、それが一番じゃないかなって」
担任「1年の担任とも話したけど、少しずつでもいいって言ってたぞ」
穂乃果「話、してくれたんですか?」
担任「まぁな。朝の緊急会議でその話が出た」
穂乃果「……」
担任「この前起きた事件の犯人が捕まっていないから、
学校付近の警戒を強めるようにって警察からも連絡があってな」
穂乃果「……そうですか」
担任「『生徒に危険が迫っている可能性がある』とも言われた」
穂乃果「――!」
担任「それ以上は詳しく説明されてないが……西木野の置かれている状況はあまり良くないと思ってる」
穂乃果「……」
担任「話を戻すけど、高坂の提案はあたし一人で決められることじゃない」
穂乃果「それじゃあ、誰に相談したらいいでしょう?」
担任「とにかく状況が異例だからな……学園長に相談してくれ」
穂乃果「……分かりました」
担任「あたしは1年の担任と話をしておく。こっちは任せておけ」
穂乃果「え……それじゃあ……」
担任「その提案を受け入れるよ。許可が下りたらクラスのみんなにも伝えておくんだぞ」
穂乃果「は、はい!」
……
…
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2017/06/25(日) 06:01:33.58 ID:Sez8j5keo
―― 学園長室
学園長「えぇ、かまいませんよ」
穂乃果「あれ……あっさり……」
学園長「それで西木野さんの居場所を守れるなら、それが最善策なのでしょう」
穂乃果「居場所……」
学園長「それが目的なのではありませんか?」
穂乃果「そこまで考えていませんでした……」
学園長「無意識にそうしたいと思っていたのだと思いますよ」
穂乃果「……」
学園長「お母さんから話は聞いています」
穂乃果「!」
学園長「朝早くにいらして、今、あなた達が置かれている状況を説明してくださいました」
穂乃果「……」
学園長「ですから、あっさり決めたわけでもありませんよ」
穂乃果「そうだったんだ…………お母さん……」
学園長「生徒たちは西木野さんへの待遇に違和感を感じられると思います」
穂乃果「……はい」
学園長「事情を知らない生徒もいますから、その点はあなた達がしっかりとフォローするのですよ?」
穂乃果「わ、分かりました!」
学園長「地域とも連携を取って、安全に過ごせるよう努めます。
ですから、学園内では安心してもらって結構ですよ」
穂乃果「はい、ありがとうございます!」
学園長「礼には及びません。自分の子供に危険が迫っているかもしれない……。
そんなことは絶対に見過ごせませんから――」
……
…
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