真姫「アイリスのはなことば」

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102 :>>101 訂正 [saga sage]:2017/06/25(日) 06:08:32.54 ID:Sez8j5keo

―― 理事長室


理事長「えぇ、かまいませんよ」

穂乃果「あれ……あっさり……」

理事長「それで西木野さんの居場所を守れるなら、それが最善策なのでしょう」

穂乃果「居場所……」

理事長「それが目的なのではありませんか?」

穂乃果「そこまで考えていませんでした……」

理事長「無意識にそうしたいと思っていたのだと思いますよ」

穂乃果「……」

理事長「お母さんから話は聞いています」

穂乃果「!」

理事長「朝早くにいらして、今、あなた達が置かれている状況を説明してくださいました」

穂乃果「……」

理事長「ですから、あっさり決めたわけでもありませんよ」

穂乃果「そうだったんだ…………お母さん……」

理事長「生徒たちは西木野さんへの待遇に違和感を感じられると思います」

穂乃果「……はい」

理事長「事情を知らない生徒もいますから、その点はあなた達がしっかりとフォローするのですよ?」

穂乃果「わ、分かりました!」

理事長「地域とも連携を取って、安全に過ごせるよう努めます。
     ですから、学園内では安心してもらって結構ですよ」

穂乃果「はい、ありがとうございます!」

理事長「礼には及びません。自分の子供に危険が迫っているかもしれない……。
     そんなことは絶対に見過ごせませんから――」


……


103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:11:12.95 ID:Sez8j5keo

―― 放課後:アイドル研究部


絵里「――それで、明日から穂乃果と一緒に授業を受けるのね」

穂乃果「うん! 帰りのホームルームでみんなにちゃんと伝えたよ!」

希「反応はどうだった?」

穂乃果「キョトンとしてた!」

絵里「……でしょうね」

希「海未ちゃんとことりちゃんは?」

穂乃果「同じくキョトンとしてた!」

絵里「話してなかったの?」

穂乃果「ちゃんとしたよー」

海未「決まってからじゃ遅いんです! 話を進める前に……!」

穂乃果「どうすればいいかって、職員室に行く前に相談したでしょ?」

海未「それはそうですが……」

穂乃果「なら問題ないよね」

海未「…………」

穂乃果「真姫のこと、全学年に伝えた方がいいのかな……?」

絵里「そうした方が真姫のことを理解してくれるから助かることは助かるけど……」

海未「伝える手段が難しいですね」

希「そうやね……。重く受け止めるんじゃなく、知っていて欲しいだけやから……」

穂乃果「各クラス、回ろうかな?」

絵里「そうするなら、3年は一緒に回るわよ?」

穂乃果「ありがとう、絵里ちゃん!」

絵里「それじゃ、明日の朝にしましょう」

穂乃果「うん!」


「みんなー、早く早くぅ〜!」

「真姫ちゃんも待ってるよっ」

「はやく遊ぶにゃー!」


穂乃果「もうちょっとだけ待っててー、調べ物があるから」



―― 校庭


凛「じゃあ、もう一度真姫ちゃんと勝負にゃ〜」

にこ「いい加減、代わりなさいよ!」

花陽「真姫ちゃんは休憩だね」

真姫「……」

花陽「穂乃果ちゃんは調べものだって」

真姫「……うん」

にこ「さっき負けた借りを返してあげるわ、凛」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:14:59.94 ID:Sez8j5keo

海未「……はぁ」

真姫「どうしたの?」

海未「いえ……」

凛「海未ちゃん、バドミントン勝負しよ〜」

海未「今はそういう気分では……」

にこ「ちょっと凛、私との勝負が先でしょ?」

凛「海未ちゃんに勝ってからその勝負は受けるにゃ〜」

にこ「分かったわ。ほら、立ちなさい海未!」

海未「……」

にこ「にこアタックVをお見舞いしてあげるわ」

花陽「Uは……?」

真姫「うみちゃん……?」

海未「……わかりました、受けて立ちましょう」


―― 部室


絵里「ねぇ、穂乃果……海未たちにはまだ話さないの?」

穂乃果「なにを?」

絵里「手紙のこと。ことりにも話していないでしょ?」

穂乃果「あぁ……、うん」

希「みんなにもまだ話してないし……どうするん?」

穂乃果「私、結構動揺しちゃったから……みんなも動揺しちゃうと思う」

絵里「……そうね」

希「うちもエリちも……そうやった」

穂乃果「そうなったら……真姫を不安にさせちゃうかなって……」

絵里「……先生方は?」

穂乃果「理事長だけ知ってる。他の先生には手紙のことはまだって。
     でも、なんとなく状況は知ってるみたいだった」

希「ふぅむ……職員会議はなんやったんやろ?」

絵里「私たちも内容は知らないわね……」

穂乃果「学校周辺の警戒態勢を地域と連携して取っていくって話だと思う。多分……」

希「それやったら、少なくとも学校内は安全やね」

絵里「えぇ。地域の人たちの目もあれば、安心もできるわ」

穂乃果「私もそれを聞いて安心できたよ」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:16:01.93 ID:Sez8j5keo

絵里「それはそうと、穂乃果の調べたいことって?」

穂乃果「真姫が持ってる人形のこと。あれってなんだろう?」

希「多分、ウーパールーパーやと思う。うちもよくは分からないんやけど」

絵里「ちょうどパソコンもあるし、ネットで調べてみましょ」


穂乃果「よし。にこちゃーん!」


にこ「え?」

スカッ


にこ「あぁーー!?」

海未「よしっ!」グッ



穂乃果「パソコン借りるねー!」


……


106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:17:29.34 ID:Sez8j5keo

―― 同時刻:大通り



「……」



伏見「南……さんでよかったかしら」

ことり「え?」

伏見「あ、失礼しました。私は、こういうものです」

ことり「……警察……の人?」

伏見「急に声をかけてごめんなさい。ひょっとして、と思って」

ことり「はぁ……」

伏見「特に用事はないんですけど、どこへ行くのかなって」

ことり「バイトです。すぐそこの喫茶店で働いてて」

伏見「そうですか。ところで……学校で何か聞いてますか?」

ことり「なにかって……?」

伏見「注意事項とか、受けませんでしたか?」

ことり「えっと……登校下校と学校が休みの日は人目の多いところを歩きましょう。
    って話……ですか?」

伏見「そうですそうです。……ん?」


「……」

スタスタスタ......


ことり「?」

伏見「いえ、なんでもありません。誰かに見られてた気がして」

ことり「え……」

伏見「あぁ、きっと南さんがスクールアイドルだからかなぁ?」

ことり「えー、そんなことないですよぉ〜」

伏見「でもアイドルやってるだけあって、少し他の人と違うね。
    こんなに人がいるのにちょっと違うなって思ったもん」

ことり「えぇ〜、ちょっと恥ずかしいです。にこちゃんなら喜びそうだけど……」



「……」


……


107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:18:48.46 ID:Sez8j5keo

―― ロッカールーム


「他にもあの学校の生徒がいたのに、わざわざ南ことりに声をかけるなんて」


「やっぱり警戒されてる」


「……」


「フフ」


「手紙、届けてくれたんだね、アリス」


「……」


「私には天使が憑いてる」


「だからこの地に安全な場所は無いのかもしれない」


「なんてね」


「……」


「もう一つ、あのナイフが欲しいけど」


「止めておいた方がいい?」


……。


「……」


コンコン


「はい」


ガチャ


「あのさぁ」


「おはようございます、店長」


店長「あ、あぁ、おはよう。これから俺、銀行に行ってくるから店番よろしく」


「はい、わかりました」


店長「それじゃ」


バタン


「……」


「急いで、計画を立てよう」


……


108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:21:22.43 ID:Sez8j5keo

―― 同時刻:公園


『今忙しいんですけどー?』


男「セーブ出来ないのか?」


『できるかボケ! ネトゲじゃぞ、リアルタイムじゃぞ!』


男「じゃあ、芙蓉に電話代わってくれ」


『今買い出しに行ってておらん』


男「ちょっとだけでいいから、手を止めて聞いてくれないか?」


『それは無理! 超レアアイテムをかけての狩りをしとるんじゃ、5時間を捨てろというのか?!』


男「……大事な話なんだが」


『わかったわかった。聞いてるから、言うてみ?』


男「俺がここに着いた日の夕方、警官が刺されたんだ」


『うむ、それは知っておる。全国ニュースに取り上げられておったからな』


男「その犯行に使われた凶器から犯人を絞り出そうとしたんだが、上手くいっていない」


『ほう……日本の警察がか』


男「店は特定できたらしいんだけど、
  監視カメラが先日から壊れてて犯人の詳細が分からないんだ」


『……』


男「店番をしていた人に話を聞いたが、相手の性別すら判断つかないと」


『それはありえんじゃろ』


男「深夜の来客で、その時猛烈な眠気があったと話しているらしい」


『……』


男「そして、そのナイフで警官を刺す前に――」


『あぁー!? なにやってんの薔薇男戦士! 今のチャンスだったのにぃー!!』


男「……」


『おっ! ライムさんナイッス! いいぞいいぞー! ひょっひょっひょ!』


男「……」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:26:14.77 ID:Sez8j5keo

『話の続き、はよせい』


男「しづらいわ。……本当に聞いてるのか?」


『聞いとる聞いとる。警官を刺す前になんじゃ?』


男「刺す前に……、チンピラの腕を切り裂いてる」


『……』


男「そのチンピラが交番に駆け込んで、犯人のことを説明したらしいんだ」


『らしいとはどういうことじゃ。記録ぐらい残っておるじゃろうに』


男「推測でしかないんだが……。
  その事情を聴いた警官はチンピラ同士のいざこざだと思ったのかもしれない」


『相手にされなかったということか……』


男「その時交番に居たのは一人。
  念のため、犯人が近くにいるかもしれないと、付近をパトロールした」


『そして犯人らしき人物を見つけ、事情聴取しようとしたところ……刺された』


男「……あぁ」


『それで、その時の状況は?』


男「無線で警察の本部に連絡しようとしたらしいんだが、途絶えてしまったんだ」


『その時か、刺されたのは』


男「そうだと思う」


『ふむ……。じゃが、その犯人について、チンピラからもう一度聞き出せばよかろう』


男「そのチンピラはその日の夜、
  峠を車で暴走していたらしく……崖から転落して死亡している」


『なに……!?』


男「警察の見解では、居眠り運転による事故だそうだ」


『……』


男「梓さんが言っていたんだが……そのチンピラ、何度も深夜に走っていたらしい」


『なるほど。深夜に何度も暴走を行うものが、
 運転中に居眠りなどするのか……ということじゃな』


男「梓さんも同じところにひかかかってるみたいだった。
  だけど、現場にブレーキ痕がないことから警察は居眠り運転と判断したらしい」


『これは……きな臭いのう』
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:29:23.33 ID:Sez8j5keo

男「そして、ここらが本題なんだが」


『うむ?』


男「昨日の夕方……犯人から手紙が届いた」


『どこに?』


男「事件の目撃者がお世話になっている家にだ」


『……』


男「投函時刻は、昼から夕方にかけて。人通りがある場所だけど、目撃者は無し」


『……』


男「そして手紙から犯人につながる情報は得られていない」


『手紙の内容は?』


男「その目撃者の子には仲間がいるんだけど、その仲間を危険に晒すかのような内容だ」


『脅迫か……』


男「だけど、その目撃者の子……事件のショックで精神が幼いころに戻っているんだ」


『……ふむ』


男「仲間は全員同じ学校に通う高校生。もちろん今はこの地域、警戒態勢に入っている」


『……意味がないかもしれん』


男「どういうことだ?」


『っしゃー! 倒したー! わほーい!』


男「……」


『はぁ〜……疲れたぁ〜。よっし、アイテムもドロップしたし、これで満足じゃ!』


男「……おい」


『怒るな怒るな。……で、その犯人な、おそらくじゃが――』


男「?」


『――憑かれておるな』


男「どうして……?」


『話が全てフワフワしておるが、
 ソレの存在がありえない状況を生み出しておると確信できる』


男「……」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:31:41.00 ID:Sez8j5keo

『わたしの対なる者か、あるいはその類の者……じゃろうな』


男「……マジか」


『思ってる以上に悪い状況かもしれん。用心に用心を重ねておかねばならんぞ』


男「犯人逮捕は難しいか?」


『いや、証拠品の手紙があるのじゃろう?』


男「そうだ……だから、電話したんだ」


『葵か……。しかし、一人でそこまで行くのは……』


男「無理だな。だから、芙蓉と一緒に来てほしかったんだが……」


『ふぅむ……。芙蓉も芙蓉で、この土地から離れたことないからのう……。
 主であるお前となら出ることは可能かもしれんが……』


男「やっぱり、俺が一度帰らないといけないのか……」


『そうじゃな。証拠品を管轄外へ持ち出すのは論外じゃろうし』


男「あぁ、それは梓さんも言ってる」


『ならば急いで戻ってこい。今、犯人に対抗できるのは、お主の力しかないかもしれんのだからな』


男「わかった」


『あ、待て。今って秋葉におるんじゃろ?」


男「そうだけど?」


『ついでにパソコンのパーツ買ってきてくれんか? やっすくて性能のいい――』


プツッ


男「ふぅ……。全部俺たちの思い過ごしであればそれが一番いいんだが」


……。


男「あぁ、今すぐ帰る。梓さんにも連絡しておくけど……」


……。


男「多分、明日には戻ってこれると思う」


……。


男「友達を守るんだ、アイリス」



……


112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:33:13.73 ID:Sez8j5keo

―― アイドル部研究室


希「これが……」

絵里「ウーパールーパー……」

穂乃果「かわいいかなこれ……」

希「真姫ちゃんって、この生物のこと知ってるのかな?」

絵里「知っていないと、あの名前を付けられないでしょう?」

希「そうなんやけど……」

穂乃果「その名前がルーパなんだけど……」

絵里「?」

穂乃果「どうしてウーパじゃないと思う?」

希「どういうこと?」

穂乃果「真姫が言ってたんだよ。『お揃い』だって」

絵里「お揃い……ということは、もう一つその人形があって」

希「その名前がウーパなんやない?」

穂乃果「そうだよねぇ」

絵里「そのもう一つの人形を持つ人物に心当たりは?」

穂乃果「無いんだよね……。その辺の話になると、『ひみつ』っていうし」

希「……」

絵里「子供のころの記憶に、そういう子が友達にいるのかもしれないわね」

穂乃果「うん……やっぱりそうだよね」

絵里「そうは思ってなさそうね。無理やり納得しようとしてるみたいだけど……?」

穂乃果「それしかないと思うんだけど、すっきりしないなぁって」

希「……」

絵里「さっきから黙ったままだけど、どうしたの希?」

希「別に……なんでもないよ」スッ

カチカチッ

穂乃果「……?」

絵里「ウッ――!?」

穂乃果「……え?」

希「見てしまったんやね、エリち」

絵里「……ッ」

穂乃果「な、なにを?」

絵里「ナンデモナイワ」

穂乃果「でも、さっき『ウッ――!?』って唸って」

絵里「ナンデモナイノヨ、ナンデモ」

希「さぁ、みんなと遊ぼう♪」

穂乃果「不審すぎるよふたりとも!?」

絵里「いいから、ほら」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:34:43.08 ID:Sez8j5keo

穂乃果「ウーパールーパーの画像開いてたよね、なにか見たんだよね?」

希「そこまで気付いてしまっては……」

絵里「そうね……家に帰って自分で調べてしまいそうだし……」

希「話すしかなさそうやね……」

穂乃果「な、なに……なにを見たの……?」ゴクリ

絵里「……唐揚げ」

穂乃果「?」

希「それ以上は言えない……」

穂乃果「えっと……ウーパールーパーの並んだ画像を見てて……唐揚げ……?」


絵里「……」

希「……」


穂乃果「……あっ」


絵里「ダメよ!」ガシッ

穂乃果「っ!?」

絵里「想像してはダメ。いいわね?」

穂乃果「う、うん……!」

希「うちらも、はよ忘れよ、エリち」

絵里「そうね……」

穂乃果「そ、それより気になってるんだけど」

絵里「こ、今度はなに?」

穂乃果「ほら、これ……」

希「うちもさっきから気になってたんよ」

絵里「……?」


『 極秘資料 』


絵里「なによこのフォルダ?」

希「うちら3人が知らないってことは、海未ちゃんや凛ちゃん達も知らなさそうやな」

穂乃果「ということは、にこちゃん?」

絵里「なにかしら、極秘って」

カチカチ

穂乃果「あぁっ、絵里ちゃん勝手にっ」


『パスワードを入力してください』


絵里「鍵が掛かってる……」

希「ふぅむ、気になるなぁ〜」

穂乃果「中身はなにが入ってるんだろ……」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:35:58.09 ID:Sez8j5keo

絵里「……」

カタカタ


[ nico ]


カチッ


絵里「あ、開けたわ。やっぱりにこだったのね」

希「なんて入力したん?」

絵里「本人の名前」

希「ふぅん……」

穂乃果「画像ファイル……だね」

絵里「なにかしら」

カチカチ

穂乃果「……これは」

希「……」

絵里「……」

カチカチ

絵里「これも……」

カチカチ

絵里「これも、本人ね」

穂乃果「これって、ブログに載せる画像だよね……」

希「そうやな。自分がどの角度で映るのがいいか、研究しとるわけやな」

絵里「全部、にこの画像ね」

穂乃果「……」

希「おぉ〜、これなんてええやん」

絵里「希、大体分かってたんじゃないの? このフォルダの中身……」

希「極秘という割にデスクトップに置いてあるし、
  パスワードは本人のやし、見てくれって言ってるようなものやん」

穂乃果「た、確かに……」

希「あれ? この『etc』フォルダは?」

絵里「開いてみるわ」

カチカチ

穂乃果「また画像……?」

絵里「……」

カチカチ

 カチカチ

希「うちらの画やね」

絵里「『エトセトラ』扱いなわけね」

穂乃果「ふぅん」

希「なるほどなるほど」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:38:00.79 ID:Sez8j5keo

真姫「ほのかちゃん……まだ?」


穂乃果「あ、あぁ、うん……今行く〜」

絵里「ウッ――」

希「人形見たらダメやエリち!」

絵里「そ、そうね……!」


真姫「ぇ……っ」


希「ち、違うんよ、真姫ちゃん」

絵里「別に、その人形が嫌ってわけじゃないのっ」


凛「海未ちゃんの勝利〜!」

海未「相手になりませんね」

にこ「接戦でしょ!?」

穂乃果「うみちゃん、代わってくれる?」

海未「はい、どうぞ」

にこ「私も疲れたから、休憩〜。ほら、花陽」

花陽「うん」

穂乃果「さぁ、にこちゃん! 勝負!」

にこ「だから〜、疲れたって言ってるでしょ〜」

穂乃果「そっか……アイドル選手権、バドミントン編はにこちゃん棄権と」

にこ「……なによそれ」

穂乃果「今度のブログに載せようと思って」

にこ「……」

穂乃果「楽しい雰囲気の写真を貼るけど、にこちゃんは名前だけになるかな」

にこ「む……」

穂乃果「さぁ、花陽ちゃん、一位を目指して勝負しよ」

花陽「う、うん」

凛「何か知らないけど、楽しそう〜! 凛もやる!」

にこ「ちょっと待ちなさいよ」

穂乃果「なんですか、不戦敗のにこちゃん?」

にこ「かちーん」


海未「やたらと煽りますね……」

真姫「しゃしん……とるの?」

希「ううん、撮らないよ」

絵里「『今』を残してはおけないものね……」

真姫「?」


……


116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:39:31.10 ID:Sez8j5keo

穂乃果「やった!」


にこ「くぅ……っ」

絵里「……ふぅ」


穂乃果「ふふん」


にこ「もぅ、くやしいぃ〜」

絵里「次は希、やる?」

希「そうやね、『エトセトラ』の底力を見せてあげないとね」


穂乃果「どうだ、思い知ったかー!」

にこ「なんであんたがしたり顔なのよ」

海未「勝ったのは絵里です。あなたは負けたのですよ穂乃果」

穂乃果「そうだったね……」


希「ほら、にこっち」


にこ「えぇ〜、また〜?」

穂乃果「あれ、真姫は?」

海未「あっちで凛たちと遊んでますよ」


花陽「ころんだっ!」


凛「……!」ピタッ

真姫「……っ」ピタッ
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:40:07.43 ID:Sez8j5keo

花陽「だーるまさんが――」


凛「そろぉりそろぉり」

真姫「そろーり」


花陽「ころんだっ!」


凛「……」ピタッ

真姫「……」ピタッ


花陽「じー……」


凛「……」

真姫「……っっ」


花陽「じぃーー……」


凛「……」

真姫「……んっ」グラグラ


花陽「はい、真姫ちゃん動いた〜」


ドテッ

真姫「はなちゃんずるい〜」

花陽「ふふ、無理な姿勢取ってたから」

凛「じゃあ、次は真姫ちゃんの番だよ」



穂乃果「古典的な遊びだね」

海未「……」


……


118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:53:19.60 ID:Sez8j5keo

―― 逢魔が時:帰り道


にこ「はぁ〜……」

真姫「どうしたの?」

にこ「にこってば、可愛いから意地悪なライバルたちの厳しいシゴキにもあっちゃうのよぉ」

真姫「そうなんだ……たいへんだね」

希「真姫ちゃん、にこっちの言うことは話半分で聞いてええんよ」

にこ「ひどいっ、まだ意地悪は続くのねっ」

真姫「のぞみちゃんもにこちゃんがすきなんだ?」

希「そういうこと〜」ニコニコ

にこ「本心が見えない笑顔なんですけど」

絵里「誰が意地悪なライバルよ……」


凛「少し喉乾いちゃった」

花陽「おうちまで我慢できる?」

凛「うーん……」


穂乃果「明日からことりちゃん、しばらくバイト休めるっていうからいっぱい遊べるね」

海未「……そうですね」

穂乃果「なにして遊ぼうかな〜」

海未「……あの、穂乃果聞きたいことが――」

絵里「?」


にこ「それじゃっ、ここでバイバイにこ☆」

希「うちもここで。みんな、また明日ね」

真姫「……うん」

希「そんな顔しないで、真姫ちゃん」

にこ「穂乃果と一緒なんだから寂しくないでしょ?」

真姫「うん」

にこ「じゃ、おやすみ」

希「バイバイ〜」フリフリ

真姫「バイバイ……」フリフリ

凛「また明日にゃ〜」

穂乃果「ばいばーい。……って、さっき何か聞きかけたよね、うみちゃん?」

海未「え、えっと……話しにくいのなら、話さなくてもいいのですが」

穂乃果「うん……?」

絵里「……」

凛「真姫ちゃん、凛と一緒にジュース飲も?」

真姫「ジュース?」

凛「そう、あっちの公園の側に販売機あるから、真姫ちゃんが選んで」

真姫「いいの?」

凛「うん、行こ行こ!」グイッ

真姫「あっ……」

タッタッタ
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:55:08.13 ID:Sez8j5keo

花陽「凛ちゃんっ、そんなに引っ張っちゃ危ないよっ!」


「凛がいるからへーきへーき!」

「り、りんちゃんっ」


花陽「ま、待ってっ!」


絵里「気をつけなさいよー?」


「大丈夫だにゃー!」


絵里「……危なっかしいんだから」

穂乃果「あはは、すっかり仲良しさんだね」

海未「……」

穂乃果「それで、うみちゃ――」


キィィィィイイイン


穂乃果「まただ……っ」

海未「穂乃果……?」

絵里「どうしたの?」

穂乃果「あはは……また、耳鳴りが」


「あぁーーッッ!」


絵里「凛……?」


キィィイイイン


穂乃果「うぅ……もうっ、なにこれっ!」


「犯人がいたーー!」


海未「えっ!?」



―― 公園



『店員には全員、アリバイはあるから……通行人の可能性が高くて』

男「それなんですけど、家のネトゲ廃人が言うには――」


凛「あぁーーッッ!」


男「……?」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 06:57:16.65 ID:Sez8j5keo

凛「犯人がいたーー!」


男「犯人……!?」


『どうしたの、真君?』

真「いえ、近くにいる女子高生が犯人がいたって大声上げているんです」

『えっ!?』

真「なにかの遊びかな……?」


凛「かよちん、真姫ちゃんを守ってて!」

真姫「……っ」ブルッ

花陽「う、うんっ」


ぞわぞわ

花陽「〜〜っ!?」



……。


真「え……、俺が犯人……?」


凛「誰か―ッ! 誰か助けて――ッ!!」


真「本当だ、あの子ッ、俺を見て叫んでる!?」


……。


真「あ、あぁそうだな、電車の時間もあるし!」

『その声が聞こえてるけど……真君どうなってるの?』

真「すいません梓さんっ! またあとで電話しますから!」

『ちょっと――』

プツッ


真「ここで時間を食ってはいられないって」ダッ

タッタッタ



凛「あっ、逃げた!」

花陽「まき……ちゃん?」

真姫「……はん……にん?」ブルブル

凛「真姫ちゃんをこんなに怖がらせて……絶対に許さないッ!」ダッ

タッタッタ


花陽「凛ちゃんッ!?」


絵里「まって、凛!」

海未「追ってはいけません!!」

穂乃果「凛ちゃんッ」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:00:37.60 ID:Sez8j5keo

凛「待て――――」


……――!


凛「――!」


キィィイイイイィィイイイイイイイン


穂乃果「あぅッ!?」

海未「穂乃果!?」



ビリビリ

凛「ア――ぅ――」

 ビリ
  ビリ ビリ


凛「――うご――け――――な―――ッ―」


……。



花陽「凛ちゃん!?」

絵里「凛――!!」

真姫「だめ……っ」


ビリビリ

凛「――」


真姫「だめーーっ!!」


……。


真姫「りんちゃんにひどいことしないでっ!!」


……。


凛「――――ぅっ!」ガクッ


凛「ふ…ぅ……はぁ……はぁっ」


花陽「凛ちゃんっ、りんちゃん!」

凛「かよ……ちん……」

花陽「〜〜っ」

絵里「大丈夫、凛?」

凛「だ、大丈夫……」

絵里「何があったの?」

凛「か、体が動かなくて……それしか分からない……ふぅ……はぁ」

花陽「りんちゃん〜〜っ」ボロボロ
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:01:52.85 ID:Sez8j5keo

凛「どうして……かよちん……泣いてるの……?」

花陽「だって、だってぇ……」ボロボロ

絵里「走り出したと思ったら急に止まって……固まって動かないんだもの……」

凛「そ、そうだったんだ……」

絵里「犯人を追うなんて……なんて危ないことするの」

凛「だって……真姫ちゃんが……」

絵里「私ですら怖かったのよ。花陽はもっと怖かったはず」

花陽「ぐすっ……」

凛「……ごめんね、かよちん」


真姫「…………」


海未「ほのかっ、穂乃果!」

穂乃果「ぅぅ……だ、大丈夫……」


穂乃果「今までで一番酷かった……っ」


……


123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:04:06.67 ID:Sez8j5keo

―― 夜:公園


伏見「そう……。絢瀬さんは二人を送ったのね」

海未「……はい」

真姫「ほのかちゃん……」

穂乃果「だ、大丈夫大丈夫……もう治ったから」

伏見「酷い耳鳴りがしたって言ってたけど……」

穂乃果「そうなんです……いつもは軽く鳴るんですけど……さっきはひどくて」

伏見「…………」

海未「あの、あなたは……?」

伏見「あぁ、園田さんとは初対面だっけ。私は……こういう者です」

海未「警察……?」

伏見「地元は離れた所なんだけど、今は調査の為にここへ来たの」

海未「……」

伏見「だから土地勘がなくて……此処へ来るのに遅れました」

海未「いえ、不審に思っているわけではないのですが……」

伏見「?」


pipipipi


穂乃果「……あ……お母さんだ」


プツッ


『もしもし?』

穂乃果「ごめんね、お母さん。今帰るから」

『それならいいけど。真姫は?』

穂乃果「一緒だよ」

『お父さんも心配してるから、早く帰って来てね』

穂乃果「はーい」

プツッ


伏見「それじゃ、送るから帰りましょう」

穂乃果「はい。お願いします」

真姫「……」

海未「……」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:05:26.02 ID:Sez8j5keo

穂乃果「あの、聞きたいことがあるんですけど」

伏見「いいよ、なに?」

穂乃果「け、拳銃って持ってるんですか……?」ゴクリ

伏見「あはは、ないない。命令が出れば別だけどね」

穂乃果「そうですよね……」

伏見「もしかして、ガッカリしてる?」

穂乃果「いいえ〜」

伏見「携帯してたとしても見せません」

穂乃果「あはは、ですよね」

真姫「……」


海未「無理に明るく振舞おうとして……」


……




―― 高坂邸玄関前


母「あ、穂乃果」


穂乃果「お母さん……?」


母「あら、刑事さんも……?」


伏見「偶然そこで出会いまして、せっかくだからとここまで同行させてもらいました」

母「そうですか……。ありがとうございます」

伏見「いえいえ。これも仕事の内です」


海未「……」


母「さ、中に入りなさい二人とも」

穂乃果「うん。……それじゃあね、うみちゃん」

真姫「……」

海未「……」

穂乃果「うみちゃんをお願いします」

伏見「うん。任せて」

海未「あの、穂乃果……」

穂乃果「……」

海未「聞きたいことがあります」

穂乃果「……うん、分かった。真姫は先に入ってて」

真姫「……うん」


母「どうしたの、真姫は?」

穂乃果「いろいろあったから、疲れちゃったんだと思う……」

母「……そう」

スタスタスタ......
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:07:57.47 ID:Sez8j5keo

穂乃果「……話って?」

海未「穂乃果、なにか隠していますよね」

穂乃果「……それは」

伏見「大事な話みたいなので、少し離れてるね」

海未「いえ、今回の事件のことなので聞いていてください」

伏見「……?」

穂乃果「事件……?」

海未「真姫を中心に、ナニカが起こっているのは、さっきの絵里の反応でも分かりました」

穂乃果「……」

海未「絵里はまるで、本当の危険がそこまで迫っているかのような声で凛を止めました」

穂乃果「それは、犯人を追っかけたらそうなるよ。うみちゃんだってそうでしょ?」

海未「私は、凛が無事だったのを知って安心しましたが……絵里はそうではなかった」


伏見「……」


海未「まるで……――犯人が近くまで迫ってるかのような焦燥感を」

穂乃果「――!」

海未「やはり、そうなのですか?」

穂乃果「そ、それは……」

海未「推測だけで言いましたが……的を射たようですね……」

穂乃果「……っ」


伏見「……」


海未「真姫に対する穂乃果の対応を見ていれば分かります。
   一人にさせたくないような言動……それは危険がすぐそこまで来ているかのようでした」

穂乃果「……」

海未「私たちはどれだけの時間を共に過ごしてきたと思っているのですか?」

穂乃果「……」

海未「現状を話してください、穂乃果」

穂乃果「…………わかった」

海未「……」

穂乃果「伏見さん、あの画像を見せてもらってもいいですか?」

海未「画像……?」

伏見「はい、どうぞ」

穂乃果「ありがとうございます」

海未「……?」

穂乃果「私のデータは削除したから、転送した伏見さんしか持ってないんだ」

海未「……それは?」

穂乃果「犯人からの手紙」

海未「え――」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:10:17.57 ID:Sez8j5keo

『 こんにちは。

  突然の手紙を不審に感じられるでしょうが、
  私の顔に覚えがないようなのでこうして筆を執りました。

  今日は商店街へ行きましたね。
  西木野真姫さんとは目を合わせたのですが、私には気付かなかったようです。

  運がいいですよ。

  9人のお名前、簡単に知ることができました。

  あなた方はスクールアイドルをやっているのですね。

  それでは、また。 』


海未「――!」


穂乃果「多分、うみちゃんが今感じてることを私と絵里ちゃんは感じたんだよ」

海未「『それでは、また』って……」

伏見「もう一度接触してくる意思を表しているね」

海未「い、悪戯の可能性は……」

伏見「低いかな。人を刺した犯人がわざわざ手紙を送ってくること自体が異常だから。
   その異常性は、犯人になにかしらの意図を持ってるのかもしれない」

穂乃果「……」

伏見「だから今、この地域は警戒を強めてるの。高坂さんも同じくらいにね」

海未「こんなことが……っ」

穂乃果「真姫を不安にさせたくないから黙ってた。
    絵里ちゃんと希ちゃんは知ってるけど他のみんなはこの手紙のこと知らない」

海未「……」

穂乃果「みんなには普通に接してほしいから。今日、理事長と話をしてて思ったんだけどね」

海未「……?」

穂乃果「真姫は……居場所が無いって感じてるんじゃないかなって」

海未「居場所……?」

穂乃果「自分がどういう状況に置かれているのか、なにも分からない。
    小さいころから今までの記憶に空白があるから、現在の姿形に理解が追い付いてなくて」

海未「……」

穂乃果「怖くて不安で逃げ出したいけど、それはどこへ行っても同じだから……」


穂乃果「恐怖心だけがまとわりついてくるから」


穂乃果「だから、すぐに遠慮して……えっと、なんだっけ」

海未「それ、絵里と希が辿り着いた答えですね」

穂乃果「う、うん……3人で話してそうなんじゃないかって……。よく分かったね……」

海未「穂乃果には似合わない言葉が出てきたから、そうじゃないかと……」


pipipipi

伏見「おっと……失礼」

プツッ

伏見「はい、伏見です」

127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:12:21.45 ID:Sez8j5keo

穂乃果「……私たちで、居場所を作ってあげたいから。
     『真姫の居場所』があるって知ってもらいたいから」

海未「それは、もう実感してると思いますよ」

穂乃果「そうかな……」

海未「楽しそうにしていますから。みんなと一緒に」

穂乃果「うん、そうだと嬉しいな」


伏見「話は落ち着いたかな?」


海未「……はい」

穂乃果「それじゃ、うみちゃんのことお願いします」

伏見「はい、任せてください。いろいろとね、不安になるようなこと言ったけど」

海未「……?」

伏見「私たちが守ってみせますので、安心してください」

海未「はい、わかりました」

穂乃果「また明日ね」

海未「はい、おやすみなさい」

伏見「あ、ちょっといいかな、高坂さん」

穂乃果「はい?」

伏見「高坂さんの、耳鳴り……説明できる人がいるんだけど、会ってみる?」

穂乃果「え?」

海未「どういうことですか?」

伏見「私はとある調査の為にここへ、相棒と一緒に来たのね。
    その相棒が特殊な家柄の人で、いろいろと私たち十三課に協力してもらってるの」

穂乃果「はぁ……」

海未「協力……ということは、警察の人ではないのですか?」

伏見「そうよ。一般人ってところ。それに、誤解も解いておきたいし」

穂乃果「誤解?」

伏見「夕方にあの公園でみた人物は犯人じゃないのよ」

海未「え……?」

伏見「その人こそが私の相棒ってわけ」

穂乃果「……その人が、耳鳴りの説明をしてくれるんですか?」

伏見「そういうこと。時間があったらでいいんだけど」

海未「待ってください。犯人じゃないなら、どうして逃げたのですか?」

伏見「電車に乗る時間に間に合いそうになかったからね。……結局乗り損ねたみたいだけど」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:13:40.42 ID:Sez8j5keo

穂乃果「……うぅん」

海未「どうしますか、穂乃果?」

穂乃果「もうこんな時間だし……」

伏見「それもそうだね。
   ただ、明日の朝には一度帰っちゃうから、話をするなら早めにと思ってね」

穂乃果「うぅん……どうしよ?」

海未「お母さんに相談してみては?」

穂乃果「そうだね……ちょっと待っててください」

伏見「うん」

穂乃果「すいませんっ」

タッタッタ


海未「伏見さんは説明できないのですか? 穂乃果の耳鳴りについて」

伏見「できることはできるんだけど……。
   私が言っても説得力ないし、証明もできないからね」

海未「……そうですか」

伏見「園田さんもお家の人に連絡した?」

海未「はい。先ほど」

伏見「もう一度連絡した方がいいかもね」

海未「そうですね……」


穂乃果「あ、あのっ」

伏見「?」

穂乃果「せっかくですけど、行けなくなりました……すいません」

伏見「いいっていいって。耳鳴りの件は、高坂さんの体調に大きな変化は与えないし、
   重要なのは、その人が犯人じゃないって知ってほしかっただけだから」

穂乃果「わ、わかりました。……凛ちゃんにもそう伝えておきます」

伏見「うん、よろしくね。……それじゃ、行こうか園田さん」

海未「は、はい」

穂乃果「それじゃ、また明日〜」

海未「はい、おやすみなさい、穂乃果」


……


129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:15:05.58 ID:Sez8j5keo

―― 高坂邸:居間


母「そろそろ時間ね」

雪穂「見たいテレビでもあるの?」

真姫「……」

穂乃果「雪穂、真姫と一緒に部屋に行っててくれないかな」

雪穂「え? お姉ちゃんは?」

穂乃果「お客さんが来るから、話をするの」

雪穂「こんな時間に?」

母「そうよ、大事な話だから」

雪穂「……わかった…。それじゃ、行こっか、真姫ちゃん」

真姫「……」

穂乃果「すぐに行くから」

真姫「……うん」

穂乃果「先に寝ててもいいよ」

真姫「ううん……おきてる」

トテトテトテ......


雪穂「ご飯もあまり食べてなかったけど……」

穂乃果「……うん。……元気づけてあげて?」

雪穂「どうやって?」

穂乃果「それは……あの人形を抱っこさせて?」

雪穂「どの人形?」

穂乃果「ルーパちゃんだけど。あれ、そういえば……?」

母「あの人形、持ってなかったわよ?」

穂乃果「うっそ!?」

母「あなた達が戻ってきたとき、持ってなかったけど」

穂乃果「あぁー! あの公園で落としたんだ!」

雪穂「……今頃気付いたのぉ?」

穂乃果「い、色々あったからっ! 今から取ってくる!」ガタッ

母「待ちなさい!」

穂乃果「だって……!」


ピンポーン


穂乃果「あ……」

母「お父さんに取りに行ってもらうから」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:18:51.48 ID:Sez8j5keo

真姫「……ゆきちゃん?」


雪「あ、あぁ……今行く〜」


穂乃果「で、でも……」

母「大事な話なんだから、穂乃果も居なきゃ駄目でしょ」

穂乃果「う、うん……」

母「ほら、迎えに行くわよ」




―― 厨房


穂乃果「お父さんお父さん〜! 一生のお願い〜!」


父「……?」




―― 玄関



真姫母「こんばんは」


母「いらっしゃいませ。どうぞ、中にお入りください〜」



……


131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:21:25.98 ID:Sez8j5keo

―― 公園


『あっひゃっひゃっひゃ!』

『ザザッ……――ザッ……ザザ』

『もう、二人とも笑いすぎです』


真「……」


『まっ、まこちゃんがっ、犯人っ! ぶふーっ! 笑わずにいられるかっ! ひゃっひゃ』

『――ザッ……ジッ……ザザ』

『申し訳ありません。真様……』


真「いや、いいよ。芙蓉が謝ることじゃない……」


『だっ、ダメッ……腹がっハラがねじれるっ、笑い死ぬっ』

『ザッ――……ジジッ――ザッ……』

『では、明日のお昼頃にこちらに戻られるということでよろしいでしょうか?』


真「あぁ、それくらいには着くと思う」


『その時刻に、駅までお迎えに参ります』


真「別にいいんだけど……」


『いえ、お迎えに参ります』


真「わ、わかった」


『アイリスも一緒に帰られるのでしょうか』


真「いや、アイリスは」


『ザザッ……ザ……ザザザッジザザザッ』

『あっ、ちょっと姉さん!』


真「なんかノイズがひどくなったけど……葵か?」


『え、えぇ……葵姉さんが……気を付けて帰ってきてください、と』


真「……うん、わかった」


『それでは、失礼しま――』

『違うぞ真、葵が言うたのはなぁ』


真「言うな。どうせ下らないこと言ったんだろう。芙蓉の気遣いを無駄にするな」


『ほう、さすがじゃのう。主は何でも知っておるのか』
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:23:49.65 ID:Sez8j5keo

真「じゃあ、切るぞ」


『ザザザッ……ザッザザ――』

『捕まっても逃がしてあげるから、大丈夫って』


真「やかましい」


プツッ


真「なんで俺が犯人前提なんだよ。…はぁ……なんだか、余計な疲れが……」


……。


真「あぁ、うん。大丈夫だ」


伏見「お待たせ。はい、どうぞ。コーヒーでよかったかな」


真「お、ありがとうございます」

伏見「アイリスちゃんも。オレンジジュース」


……。


伏見「いえいえ、協力してもらってるから……。人形、二つも持ってた……?」


……。


真「すぐそこで拾ったんです。……あの子が落としたみたいで」

伏見「あの子?」

真「西木野真姫さん。さっき電話した時です」

伏見「あぁ、あの時……」

真「俺は家を知らないので……どうしようかと」

伏見「私が返してあげようか?」


……。


伏見「うん、いいよ。お安い御用です」

真「いや……やっぱり」

伏見「?」

真「仲直りのために、自分で渡して来たらどうだ?」


……。


真「それは、会ってみないと分からないだろ?」

伏見「喧嘩でもしたの……って、『視える』の、西木野さん……?」

真「そうみたいです。あの子、小さいころそういう体質だったのかも」
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:26:10.12 ID:Sez8j5keo

伏見「へぇ……気付かなかったな」

真「そういうことだから。がんばれ」


……。


伏見「それで……あの時、なにを言いかけたの?」

真「犯人のことなんですけど」

伏見「うん。……ごくごく」

真「家のネトゲ廃人が言うには、憑りつかれてるらしいです」

伏見「その憑りついている方は……人間の命令を聞いたりするの?」

真「無いこともないんじゃないかな、と。……俺のような人種もいますから」

伏見「問題なのは……憑りつかれている犯人が、
   ソレを意識して利用しているのか、無意識に利用されてるのか……だね」

真「……前例はあるのか、家に帰って聞いてみます」

伏見「お願いします。相談役にはあとで、詳しく話を伺いたいので、よろしくと」

真「分かりました」

伏見「はぁ……嫌な予感はしてたんだよなぁ……。
   そっち系は完全に真君頼みになっちゃうじゃん……」

真「学校側のことで何かわかったことありますか?」

伏見「うん……。学校に犯人は居ないって裏付けは取れたことと、あとは……」

真「……」

伏見「去年、2年生が置き引きにあってるね。……あとは、特になし」

真「裏付け?」

伏見「バイト先と、あの日あの場所ですれ違った学校の生徒はいないってこと」

真「結構人通り多いですよね」

伏見「西木野さんと目が合うくらいの距離だから、学校の生徒だったら他の子も気付くと思う。
   1年、2年、3年とあのグループには揃ってるからね」

真「それでも……人を判別するのは難しいのでは……?」

伏見「音ノ木坂学院は、生徒数の減少で全校生徒が少なくてね」

真「なるほど……」

伏見「犯人が近くにいるかもしれないって可能性を少なくとも学校内の人間は排除できた」

真「でも、犯人はあの子に近づこうと思ったらいつでも近づけるわけ…か……」

伏見「そういうことだね。聞くまでもないけど、あの子たち……窮地に立たされてる?」

真「……そう考えて動いた方がいいと思います」

伏見「……わかった」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:27:28.07 ID:Sez8j5keo

真「でも……葵の力で、事件は一気に解決に向かうはずです」

伏見「うん、頼りにしてる。こっちも動けるだけ動くから」

真「はい。……あ、そういえば……刺された警官はどうなりました?」

伏見「まだ目覚めていないけど、入院先を変えたから手は出せないと思う」

真「それならよかった。……ですけど」

伏見「犯人の情報を持つもう一人の人物だから、それを放置しているってことは」

真「近いうちになにか行動を起こすかもしれないですね」

伏見「だね。……あの子たち9人を見守っていれば必ず姿を現すでしょう」

真「その中でも鍵なのは――」


……。


真「……え?」

伏見「あ、本当だ……高坂さんのお父さん」


父「……」キョロキョロ


真「なにか探しているみたいだ……」

伏見「……その人形かも。渡してあげようか?」


……。


伏見「……うん、分かった。じゃあ、そう伝えておく」

真「先回りしないといけないぞ」


……。


真「わかった、ここで待ってるよ」


伏見「あのぉ、高坂穂乃果さんのお父さんですよね?」

父「……?」


……



135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:28:28.33 ID:Sez8j5keo

―― 高坂邸:玄関


真姫母「それでは、娘をよろしくお願いします」


母「はい。また何かあれば、いつでもどうぞ」


真姫母「ありがとうございます。それでは失礼します」


穂乃果「……おやすみなさい」


ガラガラガラ

 ピシャッ


穂乃果「……」

母「穂乃果……大丈夫?」

穂乃果「明日、みんなに話すから……大丈夫」

母「……」

穂乃果「これはみんなで受け止めなきゃいけないことだから」

母「こんな時、なんて言えばいいのか分からないけど……」

穂乃果「……」

母「いつでも私たち親は、あなた達、子どものことを見守っているから」

穂乃果「うん。やれることを精一杯やるよ」

母「その意気よ」

穂乃果「よし、それじゃ、真姫と話してくるね!」

母「えぇ」

136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:29:31.22 ID:Sez8j5keo

―― 穂乃果の部屋


穂乃果「話終わったよ〜」


雪穂「お姉ちゃん……」

真姫「……」


穂乃果「?」


雪穂「真姫ちゃん、ケンカしちゃったって……」

穂乃果「ケンカ……?」

真姫「うん……。きらわれちゃった……」

穂乃果「……どうして?」

真姫「まきが、おこったから……」

穂乃果「……」

雪穂「真姫ちゃんが怒る人って……?」

穂乃果「……私には思い当たる人がいない」

雪穂「???」

穂乃果「ねえ、真姫」

真姫「……?」

穂乃果「そのケンカをしたお友達って……いつ知り合ったの?」

真姫「ほのかちゃんと出逢ったあと……」


穂乃果「…………」


真姫「……」



キィィィィイイイ


穂乃果「ぅ――また――?」


ィィィィィイイイン


雪穂「おねえ…ちゃん……?」



ヒラヒラ


真姫「あ……!」スクッ


雪穂「真姫ちゃん?」


真姫「……」

テッテッテ
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:31:46.20 ID:Sez8j5keo

雪穂「あ、ちょっ、どこ行くの!?」


キィィィイイイイン

穂乃果「あ、あとを追うよっ」


雪穂「う、うんっ。お姉ちゃん大丈夫?」


穂乃果「み、耳鳴りがしてるだけだからっ」




―― 高坂邸:玄関


ドタドタドタ


真姫「……っ」


 ガラガラガラ


母「なんの騒ぎ……?」


雪穂「わかんない!」


母「分かんないって……」


穂乃果「……耳鳴りが止まった…」



真姫「……よかった」

ぎゅううう


雪穂「あれ、人形が……」

母「お父さんが持ってきてくれたのね」

雪穂「でも、いないよ?」

母「?」

雪穂「あ、戻ってきた」

母「あら? ということは……刑事さんが持ってきてくれたのかしら?」


父「……?」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:33:05.95 ID:Sez8j5keo

穂乃果「……」

ピッピップ

trrrrrr


プツッ


『どうしました、穂乃果?』

穂乃果「うみちゃん、聞きたいことがあるんだけど、いいかな」

『なんですか?』

穂乃果「伏見さん……じゃなくて、刑事さん……うみちゃんを送ったよね?」

『そうですよ。うちの前まで』

穂乃果「そこから……公園へ行って、お父さんより先に人形を持ってくるなんてありえない」

『はい……?』

穂乃果「……ううん。なんでもない。それとね、真姫のことで明日話があるから」

『……話、ですか』

穂乃果「うん。真姫のお母さんと話をしたから、みんなにも聞いてもらいたい」

『分かりました。それでは明日』

穂乃果「おやすみ」

プツッ


穂乃果「……」


真姫「……ありがとう……あいちゃんっ」

ぎゅううう


……


139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:34:09.46 ID:Sez8j5keo

―― 朝:登校中


穂乃果「……」

真姫「……」


海未「なんだかフラフラしていますね、二人とも……」

ことり「夜更かししてたのかな……?」


真姫「ほの……ちゃん……」フラッ

ギュッ

穂乃果「あ……ちょっと……持たれちゃダメだよ……真姫……」

真姫「すぅ……すぅ……」

穂乃果「寝ないで……」


海未「また夜遅くまでお喋りしていたのですか?」


穂乃果「せいかい〜。……うみ……ちゃん」フラッ

ギュッ

海未「ちょ、ちょっとほのか!」

穂乃果「すぅ……すぅ」

真姫「すぅ……すぅ……」

海未「二人分!?」

ことり「規則正しいリズムだね」

海未「おっ、重たいっ!」


……


140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:36:08.10 ID:Sez8j5keo

―― 音ノ木坂学院:校門


海未「……」フラフラ


絵里「海未の足元がふらついているわね……」

にこ「珍しく夜更かしでもしてたんじゃない?」

絵里「ダメよ、海未? 不規則な生活はお肌の敵よ」

海未「そ、そういうわけでは……」

にこ「深夜の通販番組ってつい見ちゃうのよね〜」

海未「違います!」

絵里「それもそうよね。海未に限ってそれはないわね」

ことり「ここまで二人を支えて歩いてきたから……」


穂乃果「もうここでいいや……」

真姫「すぅ……すぅ……」

穂乃果「おやす…み……」

絵里「ダメよ、こんなところで寝ては……」

穂乃果「あと十分……」

絵里「授業が始まっちゃうでしょ」

真姫「すぅ……すぅ」

絵里「真姫も、起きて」

真姫「……すぅ」


にこ「全力で寝てるわね」

海未「穂乃果は半分起きていましたが、真姫は本当に寝ていて……
   ここまで引きずって来るの……大変でした……っ」グスッ

ことり「うん、頑張ったね、海未ちゃん」


希「ベンチを囲んで何をしてるのかと思えば、真姫ちゃんが寝てるんやね」

真姫「すぅ……すぅ……」

にこ「保健室に連れて行ったら?」

絵里「そうね、そうしましょう」


凛「みんな、何してるの〜?」

花陽「どうしたの……?」


真姫「ん……ん……」

穂乃果「んん……むにゃむにゃ」

海未「いけません。穂乃果が本格的に寝る体勢に入っています」

花陽「チャイム鳴っちゃうよ……」

絵里「起きなさい穂乃果!」

穂乃果「もう……すこし……お母さん……」ムニャムニャ

絵里「お、おか……」ガーン

希「ショック受けてる場合ちゃうんよ、エリち」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:37:38.54 ID:Sez8j5keo

ことり「まどろみの中ってとっても気持ちいいんだよね」

にこ「覚めたら体がだるくて最悪だけどね」

凛「もう朝だよ〜、起きるにゃ〜」

真姫「りん…ちゃん……?」

凛「おはよう、真姫ちゃん」

真姫「……」

凛「?」

真姫「ごめんね、りんちゃん……」

凛「どうして謝るの?」

真姫「きのう、こわいことあったから……」

凛「……真姫ちゃんのせいじゃないよ」

真姫「…………」

凛「凛は大丈夫にゃ♪」

真姫「……うん!」

海未「……ほら、真姫はもう目が覚めていますよ」

穂乃果「ぅぃ……」

にこ「……なにかあったの?」

絵里「ちょっとね。……後で話すわ」

希「……」

穂乃果「ほけんしつ……つれてって……うみちゃん……おねがい……」

海未「ダメです」

穂乃果「ことりちゃん……」

ことり「ご、ごめんね……」

絵里「もう行きましょう」

希「そうやね。起きたようやし」

凛「かよちん、凛たちも行こ」

花陽「うん。みんなあとでね」

真姫「うん……バイバイ」

穂乃果「だれか……だれか……ほのかを……ほけんしつにぃ」


ヒデコ「なにやってんの、穂乃果?」


穂乃果「ちょうどいいところに……ほけんしつへつれてってぇ」


フミコ「どこか体でも悪いの?」


穂乃果「ねぶそくでぇ」


ミカ「それはダメでしょ」


真姫「ふぁぁ……ぁ」


……


142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:38:42.56 ID:Sez8j5keo

―― 2年生の教室


担任「それじゃあ、しばらくは高坂を一番後ろにして、
   南と二人で西木野を挟んで授業を受けてくれ」

ことり「は〜い」

穂乃果「わかりました〜」

真姫「……」


担任「みんなも事情は昨日聞いた通りだから、協力してやってくれ」


クラス「「「 はーい 」」」


ことり「真姫ちゃんは自由にしてていいんだって」

真姫「うん……」ガサゴソ

ことり「らくがき帳……?」

穂乃果「一番後ろなんてラッキー♪」

海未「寝る権利を与えられたわけではありませんよ」

穂乃果「ぎくっ」


……


143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:39:56.24 ID:Sez8j5keo

―― 休み時間:廊下


絵里「二人とも寝てるわね……」

ことり「授業の途中で、真姫ちゃんはやることなくなって……。
    穂乃果ちゃんの真似して寝ちゃったんだ……」

希「まぁ、それでも、教室から出ていかなくてよかったやん」

海未「そうですね……。少し心配していましたが、なんとかやっていけそうです」

にこ「それで、昨日なにがあったのよ」

希「うちも気になってる」

海未「それは……」

ことり「昨日……?」

海未「結論から言えば終わった話なので、気になるなら凛のところに行きましょう」

ことり「それなら、私は聞かなくてもいいかな……?」

海未「はい、それでいいです」

にこ「それじゃ、私もパス。終わった話なら別にいいわ」

希「うちは聞いておこうかな」

海未「それでは、行きましょう」

絵里「凛たちは次の授業体育よね。校庭に行きましょ」

海未「絵里は、穂乃果から真姫の話をいつするのか聞いておいてください」

絵里「話?」

海未「真姫のお母さんと話をしたそうです。それをみんなに話したいと言っていました」

絵里「わかったわ」


……


144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:41:10.88 ID:Sez8j5keo

―― 校庭


海未「凛!」


凛「にゃ?」


海未「少し話があるのですが」

凛「うん、なぁに?」

希「話は聞いたよ。不審な人を追いかけようとしたって」

凛「……うん」

希「そんな真似はもう二度としないで」

凛「…………はい」

海未「昨日、絵里も言っていましたが本当に危険な相手だったら……」

凛「……」ションボリ

海未「……希にまで強く言われては深く反省するしかないですね」

凛「……」

海未「どうしてそんなことを?」

凛「あの時、真姫ちゃんが震えてて……許さないって思って……」

希「真姫ちゃんを想っての行動やから、そこは素直に感心するかな」

凛「でも、かよちんが泣いちゃって……絵里ちゃんも不安そうな顔してて……」

海未「……」

凛「だから……もうしません」

希「うん……」

海未「それと、あの男の人ですが」

凛「?」

海未「どうやら犯人ではないようです。刑事さんの協力者だそうですよ」

凛「えっ、そうなの?」

希「警察に協力……?」

海未「一般人だと言っていましたが……どうやって協力するのかは分かりません」

凛「なぁんだ〜。凛の早とちりだったんだね〜」

希「……」

凛「それじゃ、追いかけても意味はなかったんだ〜」

海未「凛……」

希「反省の色が薄くなってるようやね……」ワキワキ

凛「あ、でも……あの金縛りは一体――」

希「わしっ」

ワシッ

凛「にゃぁぁああああ!!!」


……


145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:47:07.17 ID:Sez8j5keo

―― 昼休み:アイドル研究部


ことり「ここを通すの」

真姫「……こう?」

ことり「そうそう」


凛「なにやってるの?」

ことり「リリアンだよ」

にこ「なにそれ」

ことり「この道具を使って編み物するの」

真姫「……」クルクル

ことり「真姫ちゃん、上手上手〜♪」

にこ「面白いの?」

真姫「……ん」クルクル

凛「細かい作業……」

花陽「器用だね……さすが真姫ちゃん」

にこ「没収!」

真姫「あっ」

ことり「にこちゃん!」

にこ「みんなで集まってるのに、なに地味な遊びしてんのよ!」

真姫「……むぅ」

にこ「なによ……。後でしなさい、こんなの」

真姫「すぐいじわるする」

にこ「はいはい。そんなことより、外で遊びましょ。影踏みよ影踏み」

凛「外で遊ぶのは賛成〜! だけど、太陽が真上にあるから影が短いよー?」

にこ「だからいいんじゃない、行くわよ〜。よいしょっと」


絵里「あ、こら! 窓から出ない!」


にこ「いいじゃないの。回って出るの面倒だし」

ピョン


凛「よいしょー!」

ピョン

花陽「凛ちゃんまで……」


真姫「よいしょ」

ことり「ダメっ!」ガシッ

真姫「……?」

ことり「私たちは回ってこよう、ね?」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:52:05.37 ID:Sez8j5keo

穂乃果「真姫はなんでも真似するようになったね。……危ないなぁ」

海未「あなたも悪い影響を与えていますよ」

穂乃果「そんなはずはないよ」

海未「なぜ言い切るのですか」

穂乃果「だって、しっかりしようと心掛けているんだもん!」

海未「ふぅ……。それで、話とは?」

穂乃果「溜息で話題変えた……!」

希「話しはうちら4人だけでいいの?」

穂乃果「うぅん……どうしよう。『真姫ちゃん』の問題だから……」

絵里「とりあえず、聞かせて」

海未「『真姫』ではなく『真姫ちゃん』ですか……」

穂乃果「うん。その『真姫ちゃん』に戻ったことがあるかどうか聞きたいんだけど……」

希「穂乃果ちゃんが一緒にいるんやから、それが全てやと思うよ?」

穂乃果「でも、ずっとってわけでもなかったから」

絵里「そうね……。私の見た限りではそんな素振りは見られなかったわ」

海未「私もです。それに、その反応があったとしたら、凛たちも言っているはずですから」

穂乃果「そっか……そうだよね」

絵里「本来の真姫に戻ったかどうか、それを聞いた理由は?」

穂乃果「精神が『真姫ちゃん』に戻る兆候が見られたら、病院に連れてきてほしいって言われて……」

希「……」

穂乃果「その時、ふと思ったこと聞いたんだけど……戻らなかったらどうなるのかって」

海未「なんて言ったのですか……?」

穂乃果「記憶が『真姫』のまま上書きされて、
     『真姫ちゃん』の精神は……眠ったままになるって」

絵里「眠ったまま……」

希「でも、真姫ちゃんが目覚めることはあるんやない?」

穂乃果「うん……。でも、『真姫』と『真姫ちゃん』が繰り返し目覚めていたら
     どっちの精神にも負担がかかりすぎて良くないって」

希「……そっか」

海未「ということは、どちらかが眠ったままに――……いえ、本来の真姫の姿が正しいのですよね」

穂乃果「……そうだね」

絵里「……」

希「本来の真姫ちゃんの姿……」



「痛いにゃ! 足踏んだよにこちゃん!?」

「凛踏んじゃった♪」

「ネコ踏んじゃったのリズム……!」


「ふぅ、汗かいてきちゃった……」

「こっち、涼しいよことぃちゃん」

「木の下かぁ……それなら影踏まれないね♪」

「……のぞみちゃんがこっちみてる」フリフリ
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:55:53.27 ID:Sez8j5keo

希「ふふ、無邪気やなぁ」フリフリ

海未「本来の姿に戻るにはどうしたらいいのでしょう?」

穂乃果「お医者さんが言うには、その時と同じショックを受けるくらいじゃないかって……」

絵里「同じ……」


「かよちん、木の下に逃げるにゃ!」

「うん!」

「反則よ反則ーー!」


そよそよ

「はぁ〜、気持ちいい〜♪」

「本当だ〜」

「いいよね、こんなそよ風……」

「……うん、いいよね」


「ごー、よん、さん……」


「なんかカウントしてるにゃ」


「時間制限があるに決まってるでしょ。……にー、いち」


「「「 わー! 」」」

「わ、わー!」

タッタッタ

「反応が遅れた真姫!」

「やーーっ!」


きゃっきゃ

 きゃっきゃ


穂乃果「それじゃ、私も行ってくるね」

海未「話は終わりですか?」

穂乃果「うん、終わりっ」

ピョン
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 07:57:39.18 ID:Sez8j5keo

―― 校庭


にこ「これじゃ影踏みにならないわね」

凛「だから言ったにゃ」

真姫「だからいったみゃん」

にこ「……」

ことり「だから言ったわんっ」

花陽「だから言った……チュウ」

にこ「ねずみって、それでいいの……?」

花陽「は、ハムスターだから……」

にこ「あ、そう。というか、なによこの流れ」

凛「にゃーにゃー」

真姫「みゃんみゃん」

ことり「わんわんっ」

花陽「チューチュー」

にこ「にこにこ♪」

穂乃果「この中に一人仲間はずれがいます。それは誰かな〜?」

凛真姫ことり花陽「「「「 にこちゃん! 」」」」

にこ「大正解〜。にこにーだけ、可愛いアイドルでした〜☆」

穂乃果「ブーブー」

にこ「それはブタさんだよね? ブーイングじゃないよね〜?」

凛「缶蹴りしよー!」

真姫「かんけり?」

凛「こうやって、缶を蹴る!」

カーン

穂乃果「それっ、隠れろー!」

ことり「わー!」

凛「わーい!」

花陽「こっち来て、真姫ちゃんっ」

真姫「う、うんっ」

テッテッテ


にこ「え……」


ぽつーん


にこ「また私から鬼で始まるの!?」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 08:03:26.98 ID:Sez8j5keo

―― アイドル研究部


海未「幼稚園児たちが遊んでいますね」

希「穂乃果ちゃん、色々と背負ってるみたいで、心配やね……」

絵里「大丈夫よ。私たちにも話してるし……、そうでしょ海未?」

海未「それでも無理はしてると思いますが……。今のところは絵里の言う通り大丈夫だと思います」

希「そっか……」

絵里「前に、穂乃果が言ってたけど」

希「ん?」

絵里「真姫の精神が戻ったのは防衛反応だって」

海未「そうですね……」

絵里「それって、どういう意味なのかしら」

希「……犯人の顔を忘れたほうが安全やってことやない?」

絵里「でも、覚えていたら、警察に協力して犯人逮捕は時間の問題だったわけでしょ?」

海未「……はい」

希「なにか意味があるって、エリちは考えてるん?」

絵里「そうじゃないけど……。いえ、そうね……なにか意味が、理由があるような気がして」

希「ふぅむ……理由、か……」

海未「絵里は、犯人からの手紙を見ましたよね」

絵里「……えぇ。その件について、穂乃果から聞いたのね」

海未「はい。……手紙の一文に怖い箇所がありました」

希「……そうやね。運がいいですよ、って」

海未「それを見て、もし、を考えてしまって……とても怖くなりました」

絵里「……」

海未「でも、刑事さんに、大丈夫だからって声をかけてもらえて……少し安心してもいるんです」

希「伏見さん……やね」

絵里「同性なのに、不思議と安心できるのよね」

海未「多分、穂乃果もそう思っているはず……」

希「だから、多少の無理を見守っていようと思ってるんやね」

海未「……そういうことです」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 08:04:06.39 ID:Sez8j5keo

絵里「ふふ、意外と素直なのね」

海未「真姫の影響ですね……」


「はい、凛見つけた〜」

「あー、しまったにゃー」

「なにその棒読み」


「「 真姫ちゃん〜!! 」」

「行けー!」


タッタッタ


「え!?」


「えいっ!」

カーン



絵里「意味と理由……」



……


151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:22:43.39 ID:Sez8j5keo

―― 夕暮れ時:公園


ことり「ぱ、い、な、つ、ぷ、る」

絵里「はい、じゃんけん」

花陽「ポン」

凛「勝ったにゃ。……ち、よ、こ、れ、い、と。っと」

真姫「じゃーんけん」

にこ「ポン」

真姫「勝ったみゃん。……えっと」

ことり「グーで勝ったらグリコだよ」

真姫「ぐ、り、こ」


海未「一周したら勝ちと言いますが、中々ゴールに近づきませんね……」

穂乃果「もうすぐ日が暮れちゃうね」

希「みんな童心に戻ってるようやな〜」


海未「陽が暮れる前に帰りますよ」

ことり「もうちょっと待って〜」

真姫「まって〜」

海未「……しょうがないですね」


穂乃果「希ちゃんに聞きたいことがあるんだけど、いいかな」

希「うん?」

穂乃果「希ちゃんって、目に見えない力って信じる?」

希「それは……スピリチュアルパワーのこと?」

穂乃果「うーん……そんな感じかなぁ」

希「うちは信じてるよ。人と人を繋げる力とか、人の想いが及ぼす力とか」

穂乃果「希ちゃんらしいね」

希「それがどうかした?」

穂乃果「真姫なんだけど、『視える』体質なのかなって」

希「ん?」

穂乃果「たまにね、ずっと一緒に居る私でも理解できないこと言ったりしてて」

希「……」

穂乃果「昨日、この場所で……真姫は友達とケンカしたって言って……落ち込んでたの」

希「うん……」

穂乃果「あの人形、ルーパちゃんのことでも辻褄が合わないことがあって……」

希「真姫ちゃんは小さいころ、そういう体質だった……のかな?」

穂乃果「昨日、真姫のお母さんにそのこと聞いたけど、そんな言動はなかったって」

希「……」

穂乃果「それって、小さいころの記憶にある友達とは違うと思うから」

希「ふぅむ……だから、『視えている』ってことなんやな」

穂乃果「……うん」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:25:12.87 ID:Sez8j5keo

希「真姫ちゃんはその存在について、どう言ってるの?」

穂乃果「怖いとかは思ってないみたい。むしろ親しんでるようだよ」

希「……なら、心配はいらないんやない?」

穂乃果「そうかなぁ……」

希「真姫ちゃんを言葉巧みに騙すような存在なら、穂乃果ちゃんはすぐ不安になるはずや」

穂乃果「……」

希「まぁ、今までがそうだから、これからもそうだとは限らないけど」

穂乃果「……うん。それが怖いよ」

希「大丈夫。うちらもしっかり見てるし、なによりそれを感じたらすぐ教えてくれればいいから」

穂乃果「対処法はあるの?」

希「うちのバイト先、知ってるやろ」

穂乃果「おぉ……!」

希「今の真姫ちゃんを見ていれば、その存在について悪意はみられないかな」

穂乃果「……そうだね! うん、ありがとう希ちゃん!」

希「いいよ、これくらい」

穂乃果「はぁ〜、安心したらお腹すいてきちゃった」

希「ふふ」

穂乃果「まだ遊びは終わらなさそうだねぇ……」


希「……でも、どうして『視える』ようになったんやろ。……何か、意味がある……?」


絵里「チ、ョ、コ、レ、イ、ト」

ことり「じゃーんけん、ポン」

にこ「勝ったにこ♪ ……に、こ、にー、は、か、わ、い、く、て、に、ん、き、も、の、で」

ピョン
 ピョン


にこ「み、ん、な、の、し、せ、ん、を、ひ、と、り、じ、め」

ピョン
 ピョン
  ピョン


絵里「……どこまで行くのかしら」


「だ、れ、も、が、あ、こ、が、れ、る、う、ちゅ、う、い、ち、の、あ、い、ど、る、で――」


花陽「そのまま帰ってしまいそうな勢い……」

真姫「ちょきはチョコレートだよね」

ことり「……うん」

真姫「にこちゃん、まちがえてる」

凛「いつも間違えてるよね」

希「どこで止まるか付いて行ってみようか」

穂乃果「信号で止まるんじゃないかな」


……


153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:28:48.17 ID:Sez8j5keo

―― 夜:希の部屋


希「ふぅ……」


ペラ

 ペラ


希「うちらはまだ、窮地に立たされているんやろか……」


ペラ

 ペラッ


希「占いは所詮占いやけど……」


ペラッ


希「――え」


希「……――死神」



……


154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:29:43.02 ID:Sez8j5keo

―― 深夜:穂乃果の部屋


穂乃果「ん……んん……」

真姫「すぅ……すぅ……」

穂乃果「……んん?」

真姫「すぅ……」

ギュウウ

穂乃果「……あつい」


穂乃果「ちょっと……離れて……ね」グイグイ


真姫「……ん……ん」


穂乃果「……ふぅ」


真姫「すぅ……すぅ……」


穂乃果「……すぅ」


真姫「ん……ん……?」


穂乃果「くぅ……すぅ……」

真姫「……」モゾモゾ

ギュウウ

真姫「すぅ……」

穂乃果「ん……ん……」

真姫「すぅすぅ……」

穂乃果「……ん?」

真姫「すー……すぅ」

ギュウウ


穂乃果「……」

真姫「……すぅ……すぅ」

穂乃果「……あつい」


……


155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:30:55.41 ID:Sez8j5keo

―― 朝:登校途中


穂乃果「……おは……よう」


海未「また夜更かしですか……?」

ことり「真姫ちゃんは元気そうだね」

真姫「うん、元気みゃん」

海未「その語尾、気に入ったみたいですね」

ことり「かわいいわんっ」

海未「穂乃果も真姫を見習って元気良く行きましょう」


穂乃果「……」


穂乃果「しくしく」



……


156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:31:50.64 ID:Sez8j5keo


―― 授業中:2年生の教室


穂乃果「すやすや」

真姫「……」カキカキ

ことり「……?」

真姫「ことりちゃん、いろえんぴつかしてください」

ことり「……うん、どうぞ」

真姫「ありがとう」

ことり「……どういたしまして」

穂乃果「すぅ……すぅ……むにゃむにゃ」

真姫「……」カキカキ

ことり「……ゴスロリ?」


……


157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:34:14.47 ID:Sez8j5keo

―― 昼休み:中庭


花陽「いただきまーす……はむっ」

真姫「はむっ」

花陽「うぅーん! やっぱりおいしいよ〜!」

真姫「おいしいよ」

穂乃果「そっか。絵里ちゃんとうみちゃんが普通だと言った試食品の饅頭、
     花陽ちゃんには大好物になったみたいだね」

絵里「き、期待が大きすぎたのよ」

海未「そ、そうです。嫌な言い方をしないでください」

凛「もぐもぐ……。うーん……凛もそれほどじゃないかも?」

穂乃果「そうなんだ……。絵里ちゃんたちにはハードルが高くなっちゃったのかなぁ?」

凛「でも美味しいよ。もぐもぐ」

ことり「にこちゃん、大丈夫かな……」

絵里「そうね……。まさかあのまま止まらずに進んでいくなんて……」

海未「あの方角なら、今は……金沢でしょうか……」

希「……」

穂乃果「にこちゃん、早く帰ってきて……みんな待ってるよ……!」


にこ「ここにいるわよ」


穂乃果「はい、希ちゃんもどうぞ〜」

希「うん、ありがとう」


にこ「昨日のあれは、みんなが遊ぶのを止めないから強制的に終わらせてあげたの!」


真姫「はなちゃん、あんこついてる」

花陽「えっと……どこかな?」

真姫「とってあげるね」

花陽「ありがとう〜」


にこ「日が暮れるのに全然進まないんだから、
   にこの機転にありがたく思いなさいよね!」


凛「海未ちゃん、半分食べる〜?」

海未「ありがとうございます、いただきます」

絵里「今日もいい天気ね」


にこ「無、視、す、る、なー!」


穂乃果「あはは、それ新しいね」


……


158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:35:55.61 ID:Sez8j5keo

―― 放課後:音楽室


真姫「〜♪」


たらったらんらん たらったらん♪


穂乃果「ゆ、指の動きが……!」

希「はやい……」ゴクリ

にこ「この曲は……?」

花陽「ゴリウォーグのケークウォーク……だよ」

ことり「ピアノの演奏は……その頃から完ぺきだった……!?」

海未「天才ですか……!?」

絵里「ハラショー……」

凛「おぉー……」


たんたららったん たん♪


穂乃果「すごいっ、すごいよ真姫!」

凛「真姫ちゃん、すごーい!」

花陽「す、素敵だった!」

パチパチ
  パチパチ


真姫「えへへ」


にこ「な、なかなかやるじゃない」


真姫「にこちゃんも、ひけるの?」


にこ「あ、アタリマエデショー」

ポン

にこ「?」

海未「……やめましょう。見栄を張るのは」

絵里「そうよ。素直になることも人生には必要なの」

にこ「弾けるわよ!」


真姫「にこちゃん、こっち」

ポンポン

にこ「……?」


穂乃果「一緒に演奏しようってことじゃない?」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:37:01.77 ID:Sez8j5keo

真姫「すわって?」

ポンポン

にこ「う……」


希「もう後には引けないやん……」

ことり「真姫ちゃん、嬉しそうだよ……」


真姫「いっしょに」

にこ「わ、わかったわよ……」


凛「か、簡単なのがいいんじゃないかな?」

花陽「う、うん。ネコ踏んじゃったとか聞きたいな……!」


にこ「え、えっと……」

真姫「……」


たららんったったん♪


にこ「あーぁー、そうそう。思い出したー」


海未「本当に弾けるのでしょうか……」

穂乃果「……」


にこ「り、りん踏んじゃったー」


凛「不謹慎にゃー!」

絵里「誤魔化さないでちゃんとやってね」


にこ「うぅ……」

真姫「にこちゃん、こう……」


たららんたんたんたんったんっ


にこ「……」


たん たん たんたん たんたんたん

たららんったったん


にこ「こう……ね」

真姫「……うんっ」



花陽「……楽しそうに演奏するね、真姫ちゃん」

穂乃果「いつもそうだったよ。真姫ちゃんはいつも楽しそうに演奏してた」


たんたらららーたん たんっ たんっ ♪


……


160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:39:10.82 ID:Sez8j5keo

―― 夕暮れ時:商店街


真姫「ペロペロ」

にこ「そんなに慌てて食べないの」

真姫「だって、とけちゃうから」

にこ「ゆっくり舐めて大丈夫だから」

真姫「……うん」

にこ「ほっぺに付いちゃったじゃない」

真姫「……?」

にこ「動かないで、拭いてあげるから」

真姫「ん……」

フキフキ

真姫「と、とけちゃうっ」ペロペロ

にこ「あー、もう……こんどは鼻に……」


穂乃果「みんなで買い食いするアイスは最高だね!」

絵里「そうね、たまにはいいわね」


花陽「おいしいぃ〜」

ことり「こっちも美味しいよ。一口食べてみる?」

花陽「いいの?」

ことり「うん♪」

花陽「じゃあ……いただきます」

パクッ

ことり「どう?」

花陽「おいしぃ〜♪」


希「幸せそうやね」

凛「む、あれは……」


花陽「はぁ、なんでこんなにおいしいんだろう〜」


凛「今のかよちんには気付かないね」

希「そうやね。アイスに夢中みたいやし」


花陽「真姫ちゃん、こっちのアイスも食べてみてっ」

真姫「うんっ」

パクッ

花陽「おいしいでしょ〜。…………あれ?」チラッ

真姫「うん、おいしぃ〜」

花陽「ふふ」


花陽「え?」チラッ
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:39:50.06 ID:Sez8j5keo

花陽「あぁーー!!」


真姫「……っ!?」ビクッ


花陽「きょ、今日発売だったんだ……!?」

にこ「あー、あの伝説的アイドルの――」

花陽「わ、忘れてたぁぁああ!!」

真姫「は、はなちゃん……?」ビクビク

凛「かよちん、真姫ちゃんが怯えてる」


穂乃果「教科書に載りそうなくらい、見事な二度見だったね」

海未「なんですかそれは……」

ことり「海未ちゃんのいただきまーす」

パクッ


……

162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:40:52.05 ID:Sez8j5keo

―― 夜:高坂邸


穂乃果「いただきまーす」

真姫雪穂「「 いただきます 」」

母「はい、召し上がれ」

父「……」モグモグ

穂乃果「うまっ」

雪穂「寄り道したって聞いたけど、食べられる?」

真姫「うん。……うま」

雪穂「ダメだから! お姉ちゃんの真似しちゃダメ!」

真姫「う、うん……?」


母「ふふ、すっかり馴染んだみたいね」

父「……」


……


163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:42:04.69 ID:Sez8j5keo

―― 深夜:穂乃果の部屋


穂乃果「それじゃ、電気消すよー」

真姫「うん」

パチッ

穂乃果「ふぅ……」

真姫「ね、ほのかちゃん」

穂乃果「うん?」

真姫「また、おはなしきかせて?」

穂乃果「そうだなぁ……」

真姫「……」

穂乃果「今日は、真姫のこと聞かせてよ」

真姫「……?」

穂乃果「学校、楽しい?」

真姫「うん、たのしい」

穂乃果「そっか」

真姫「ほのかちゃんといっしょだから」

穂乃果「ふふ、そっかぁ」

真姫「あと……うみちゃん、ことりちゃん」


真姫「りんちゃん、はなちゃん」


真姫「えりちゃん、のぞみちゃん……いじわるするけど、にこちゃんも」


真姫「みんな、だいすきだから」


穂乃果「そっか、そっかぁ」

ぎゅううう

真姫「ほ、ほのかちゃん……?」

穂乃果「とっても嬉しいから、ぎゅーってするの」

真姫「うれしいの?」

穂乃果「うん、うれしい」

真姫「じゃあ……ぎゅーってする」

ぎゅううう

穂乃果「くるしいよ〜」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:42:40.55 ID:Sez8j5keo

真姫「ずっと……みんなといっしょにいたい」


穂乃果「……ずっといっしょだよ」


真姫「うん、うれしい」

ぎゅううう


穂乃果「……」


真姫「……ん」


穂乃果「眠たい?」


真姫「うん……」


穂乃果「おやすみ、まき」


真姫「うん……おやすみ……なさ……い」


穂乃果「……」


真姫「……すぅ……すぅ」


穂乃果「遊び疲れちゃったんだね……」


真姫「くぅ……すぅ……」


穂乃果「……」


穂乃果「ずっと一緒だからね、真姫……ちゃん」


真姫「すぅ……すぅ」


……


165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:43:10.72 ID:Sez8j5keo

―― 朝:高坂邸玄関前


穂乃果雪穂「「 行ってきまーす! 」」

真姫「行ってきまーす」


母「はい、行ってらっしゃい。気を付けてねー」


「「「 はーい 」」」


母「さて、今日も一日頑張りましょう」


……


166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:43:48.89 ID:Sez8j5keo

―― 登校途中


真姫「おはよう」

ことり「うん、おはよう〜♪

海未「今日は寝不足ではなさそうですね」

穂乃果「うん、しっかり寝たからね!」

真姫「きょうもいっしょにあそんでくれる……?」

ことり「もちろん♪」

海未「まだまだ遊ぶレパートリーはありますからね」

穂乃果「そうだね。今日も一日楽しもう〜♪」

ことり「お〜♪」

真姫「おーっ」

海未「ふふ、しょうがないですね」

穂乃果「今日も楽しくなるよ、絶対!」

真姫「うん……っ!」

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/25(日) 10:45:20.34 ID:Sez8j5keo



 ―― 4人の少女が今日という一日を期待で満たしていた ――



 ―― そのとき、空が嗤った ――



168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 15:40:45.15 ID:D8Pn9Zy20
元ネタあるのかわからんが続き楽しみ
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 11:43:24.19 ID:iVlOUhKto

……




―― 昼:高坂邸玄関前


パカッ


母「あら、穂乃果宛に手紙……差出人は、小学校の友達だったような?」


母「同窓会のお報せ……にしてはまだ早いわよね」


母「……ピザのチラシが二枚も。……たまにはいいかも」


伏見「こんにちは」


母「あら、刑事さん」

伏見「なにか変わりはありませんか?」

母「えぇ、お陰様で。刑事さんはパトロールですか?」

伏見「そうです。私は車を与えられてないので、歩きながら……免許はあるんですけどね」

母「ふふ、大変ですね。そうだ、冷たい麦茶でもいかがです?」

伏見「いえいえ、そんな」

母「一杯くらいいいじゃないですか。ちょっと待っててくださいね〜」

テッテッテ


伏見「あー……、参ったなぁ……。催促したみたいになってしまった」

pipipi

プツッ

伏見「……はい、伏見です」

『もしもし、俺です』

伏見「どうしたの、真君?」

『すいません、今日中に戻るつもりだったんですけど……』

伏見「どうかしたの?」

『教授につかまってしまって……。戻るの明日になるかもしれません』

伏見「そっかぁ……」

『すいません』

伏見「ううん。今年卒業だからいろいろと忙しいよね」

『そっちの様子はどうですか?』

伏見「昨日、一昨日と……静かなものだね」


母「……どうぞ」


伏見「あ、すいません……」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 11:45:58.05 ID:iVlOUhKto

『ということは、手紙以来……?』

伏見「そういうこと」

『真君……?』

『あ……』

伏見「ん? その声は……由美ちゃん?」

『あ、はいそうです』


母「……」ニヤニヤ

伏見「ごくごく……?」

母「お父さんから聞きましたよ。
  公園で若い男の人と二人で……」

伏見「ブフッ!」


『ど、どうしたんですか!?』

伏見「んふっ、ごほっ……な、なんでもない……。違いますってっ」

母「ふふふ」


『ん……?』

伏見「えっと……とにかく、なにか分かったことないかな」

『そうだ……。あの子たちに厄払いのお守りを持たせてください』

伏見「あぁ、相談役が言ってた……?」

『そうです、相手にはそれが効くかも――』

prrrrrr

伏見「あ、ごめん! 着信が入った!」

『は、はい。えっと、それじゃ』

伏見「また後でね!」

プツッ

母「隅に置けないのね〜。でも当たり前よね、美人さんなんだから〜」

伏見「ち が い ま すぅ!」

プツッ

伏見「はい、伏見です」

『おう、俺だ。今どこにいる』

伏見「えっと……高坂家の前ですが?」

『至急、駅に向かえ』

伏見「どういうことですか、警部……?」

『爆破予告があった』

伏見「え――」

『俺もすぐに向かう。ブツを見つけ次第、人を避難させろ』

伏見「わ、わかりました!」

プツッ

母「……?」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 11:47:30.69 ID:iVlOUhKto

伏見「ごちそうさまでした!」

母「い、いえ……」

伏見「あ、そうだ……! 見張りの人……!」


見張り「……?」


伏見「絶対にそこを離れないで!」


見張り「……お、おう?」


伏見「走ってはきついなぁ……ッ」

タッタッタ


母「……なにかあったのかしら」


母「……」


母「……」ペコリ


見張り「……」ペコリ


母「さて、と……仕事に戻りましょう」


コトン


母「?」


母「……なにかしら」


母「もしかして……虫……?」


パカッ


母「手紙……?」


母「さっきは無かった――」

ペラッ


母「――……」



見張り「?」



母「そ、そんな――――穂乃果ッ!」



……


172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 11:49:15.08 ID:iVlOUhKto

―― 駅前


ザワザワ


「夜、暇っしょー?」


「あー、マジだりぃ……」


「なんだ、あのバイト! また連絡つかねえ……!」


「これはこれは、薔薇男戦士殿……!」

「おぉ、そなたがライムさんですか……! リアルでは初めまして!」


「今夜は夜までパーリナイッしょー!?」

「朝までにしようよー」


「さっきの音なんだったのかな?」

「誰かふざけて爆竹に火点けたんじゃない? たまにいるんだよね非常識なバカが」


伏見「はぁっ、はぁッ……」


駅員「早く、早くきてくれ……」


伏見「ふぅ……はぁ……。あの、警察です」

駅員「あっ、やっときた……っ」

伏見「それで、状況を説明してくれますか?」

駅員「は、はいっ。さっき、大きな音がしたんです」

伏見「……」

駅員「その音がした場所に……これが……」

伏見「拝見します」


『 今度は更に大きな音を披露する。この駅のどこかに爆弾をしかけた。 』


伏見「……」

駅員「ど、どうしましょうっ」

伏見「その音が出た場所を案内してください」

駅員「こっちですっ」


ファンファン

 ファンファン


「なになに、警察!?」

「なにかあったのー?」


ザワザワ


警部「おい、急げ!」

後輩「はいッ!」

タッタッタ
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 11:52:11.17 ID:iVlOUhKto

―― コインロッカー


伏見「……」

駅員「そこのゴミ箱が一つ壊されてしまってっ」


警部「ここか、現場は」


伏見「そのようですね。あと、爆破予告の紙がこれです」

警部「……ふむ」

後輩「先輩ッ!」

警部「ここは監視カメラがあるな」

駅員「は、はい、あります。あそこに!」

警部「ならそれを今すぐ」

後輩「先輩!!」

警部「なんだ」

後輩「きょ、脅迫状――じゃなくて、殺害予告です!」

警部「は……?」

伏見「え?」

後輩「さ、さっき本部から連絡が来てッ――高坂家に殺害予告がッ!」

伏見「――!?」

警部「……」

後輩「ど、どうしますか!?」

警部「おい、伏見」

伏見「さ、殺害……!?」

警部「お前はもう一度高坂宅に向かえ!」

伏見「は、はいッ」

後輩「あ、車使っていいから!」

伏見「わ、分かった」

タッタッタ


警部「くそ、なんだってんだ……」



……


174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 11:54:07.79 ID:iVlOUhKto

―― 高坂邸


ブオオオオオン


見張り「あ……!」


ガチャ


伏見「いつ届いたの!?」

見張り「分からない!」

伏見「分からないわけないでしょ!?」

見張り「俺もずっと見てたんだよ!」

伏見「……っ」

見張り「奥さんが郵便受けから紙を取り出して、読んで膝をついた」

伏見「……いつ」

見張り「あんたが俺に忠告して直ぐ後だ!」


伏見「…………」


見張り「ありえない……。奥さんは一度郵便受けから全部出して、一つ一つ目を通してた」


見張り「そしてあんたが来て、走り去って……それからだ」


見張り「その間、俺はずっと見ていたんだ!」


伏見「ふぅ……わかった」


見張り「信じてくれ!」


伏見「分かったって。疑ってないよ」


見張り「なんだよ、これ……意味が分からないっ」


伏見「……やっぱり、ナニカが」

スタスタスタ


ガラガラ


伏見「失礼します」


……


175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 11:57:45.61 ID:iVlOUhKto

―― 同時刻:駅監視室


ザザッ――ザッ――


警部「おい、どういうことだ」

室長「見ての通り、ノイズが走って犯人の姿は映っていないようです」

警部「周辺のカメラもあるだろ。それをチェックしろ」

室長「利用者の多いこの駅のカメラをですか?」

警部「そうだ」

室長「……わかりました」


捜査員「警部! 不審物を北側のロッカーから発見しました!」


警部「すぐに周辺を封鎖しろ! 爆発物処理班を呼べ!」


捜査員「はい!」


後輩「先輩! 本部からの連絡です!」


警部「なんだ」


後輩「また殺害予告が!」


警部「なに……!?」


……


176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:01:52.90 ID:iVlOUhKto

―― 高坂邸


『 高坂穂乃果を殺します 』


伏見「――ッ」


母「ほのか……穂乃果……っ」

父「……」

ギュッ


伏見「私たちが必ず犯人を止めます」


母「刑事…さん……」


伏見「そのまま横に、安静になさっていてください」


母「娘を……穂乃果をお願いします……」


伏見「――はい」



……


177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:03:46.93 ID:iVlOUhKto

―― 車内


ガガッ

『伏見、応答しろ』


伏見「はい」


『小泉宅にも殺害予告が届いた』


伏見「小泉……え――!? 花陽ちゃんですか!?」


『あぁそうだ。名指しで殺すと明確に記されている』


伏見「……こっちも同じ内容です」


『ただちに――』


伏見「いえ、警部。私は園田さんと南さんの家へ向かいます」


『……9人全員に予告が出されたということか?』


伏見「はい、その可能性が」


『分かった。それじゃあ、残りの5人はこっちで確認させる』


伏見「お願いします……」


『どうした』


伏見「娘の殺害予告をみた親に……どう説明すれば……」


『しっかりしろ』


伏見「……っ!」


『まずは学校に連絡を取って、9人の安全確保だ』


伏見「は、はい――」


『おい、待て警部』


伏見「?」


『なんですか、警視』

『十三課に勝手に動いてもらっては困る。
 研修の身でもあるんだ、大人しくさせていろ』


伏見「こんなときに……っ」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:05:39.43 ID:iVlOUhKto

『お言葉ですが』

『……なんだ』

『今は爆破予告で状況が混乱しています。現場に近い伏見が――』

『経験の浅い新米刑事に務まる事件ではない』

『…………』

『我々一課に任せていろ、いいな』


伏見「……」


『おい、伏見』


伏見「はい」


『爆破予告と殺害予告、繋がっていると思うか?』


伏見「それは……分かりません」


『監視カメラに爆破予告を出した犯人の姿が映っていない、と聞いてもか?』


伏見「やっぱり……この地に……ナニカが……」


『おい、聞いているのか、警部』

『警視、我々――……警察の悲願のはずです』

『なんのことだ』

『事件を未然に防ぐことが、です』


伏見「…………」


『そんなものは理想にすぎん。事件が起こらないと我々は動けないだろう』

『だから――、起こる前に防ごうって言ってるんだ』

『誰に向かって――』

『分かったら邪魔するんじゃねえ!』


伏見「おぅ……」


『おい、伏見!』


伏見「は、はい!」


『とっとと動け! 犯人が止まってくれる保証はねえぞ!』


伏見「了解です!」


ガチャ

 ブルルルルン


伏見「そうだ、まだ事件は起こっていない――」


……


179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:07:15.81 ID:iVlOUhKto

―― 同時刻:3年生の教室


キーンコーン
 カーンコーン


先生「はい、それじゃ授業はここまで」



希「……」

絵里「……希?」

希「……ん?」

絵里「なんだか顔色が悪いみたいだけど、大丈夫?」

希「……ちょっと、昨日寝付けなくて」

絵里「考え事?」

希「うん……そんなとこ」


にこ「ちょっといい?」


希「どうしたん?」

にこ「今日の放課後なんだけど、久しぶりに練習しない?」

絵里「練習って言ったって……真姫はどうするの?」

にこ「ピアノの演奏はできるんだから、歌の練習をするのよ」

希「そうやね。……発声練習ならできるかな」

絵里「さっき、穂乃果たちは遊ぶ気でいたけど」

にこ「1時間くらい練習して、それから遊べばいいじゃない」

希「いいと思うよ。うちは賛成」

絵里「そうね、私も。それじゃみんなに伝えておいてね」

にこ「オッケー」


ファンファン

 ファンファン


希「パトカー……?」

絵里「珍しいわね、学校の近くを走るなんて」

にこ「はっ、まさか……!」

希「にこっちが可愛いすぎて罪になるから逮捕しにきたんと違う?」

にこ「にこが可愛――……やっぱりソウヨネー……」

絵里「どうでもいいけど、そのギャグを私たちにやっても無意味よ?」

にこ「ギャグってなによ! 何気に酷いわよね絵里は……」


……


180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:08:40.49 ID:iVlOUhKto

―― 同時刻:1年生の教室


凛「色鬼、高鬼、氷鬼……あとは……」

花陽「抱きつき鬼とか」

凛「うんうん」

花陽「他に鬼遊びは……」

凛「……?」


―― 廊下


先生「小泉さん、星空さんの2人はちゃんと教室に居る」

教師「3年の絢瀬、東條、矢澤も確認しました」

先生「それじゃ、2年生のところへ行きましょう」

教師「はい」


―― 1年生の教室


凛「先生たち、何の話してたんだろ?」

花陽「なんだか、変だったね……」

凛「えっとまだやってない遊びは……」

花陽「カードゲームがいいんじゃないかな?」

凛「凛は体動かしたいな〜。最近、踊りの練習もしてないから体が鈍ってるにゃ」

花陽「ふふ。それじゃ、次の休み時間に穂乃果ちゃんのところ行こう?」

凛「そうだね」


キーンコーン
 カーンコーン


凛「はやく放課後にならないかなー……」

花陽「もう、ちゃんと授業受けなきゃだめだよ?」

凛「分かってるってー」

花陽「あっ、先生来ちゃった」


先生「みなさん、悪いのですがこの時間、自習していてください」


凛花陽「「 ? 」」


生徒A「また自習……?」

生徒B「さっきパトカーが走ってたけどなにか関係あるのかな?」

生徒C「やめてよ、そういうこと言うの……」


ザワザワ


……


181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:10:45.42 ID:iVlOUhKto

―― 南邸前


伏見「忙しいところ、急にお呼び出しして申し訳ありません」

理事長「い、いえ……。それで要件というのは……」

伏見「郵便物の確認をさせてください」

理事長「は、はい……」

伏見「……」

理事長「…………」


パカッ


理事長「……?」

伏見「――!」

理事長「これは――……」


『 南ことりを殺します 』


理事長「え――」

伏見「……ッ」

理事長「ことり……」フラッ

伏見「だ、大丈夫ですかっ!?」

理事長「そんな……どうして……ことりが……っ」

伏見「ここに、座ってください」

理事長「なにかの……悪戯……ですよね……」

伏見「……」

理事長「そうよ……ことりが……誰かに恨まれるなんて……そんなこと」

伏見「ここで待っていてください」

理事長「……なんで……どうして……――ことりっ」


伏見「……」


ピピップ

trrrrr

プツッ


『なんだ』

伏見「警部、園田さんと南さんにも予告が出されました」

『こっちも確認した。星空宅、矢澤宅……それと、東條希の部屋だ』

伏見「……西木野さんは?」

『そっちは確認できていない』

伏見「……」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:13:18.76 ID:iVlOUhKto

『この殺害予告、複数犯が出したものだと思うか?』

伏見「どういうことですか?」

『証言によれば、ほぼ同時刻に投函されていることになる』

伏見「……」

『同一犯というのはありえないんだよ』

伏見「……」

『お前たち十三課ではそれを理屈抜きで理解できるのか?』

伏見「……はい、可能性に過ぎませんが」

『……そうか』

伏見「警部、学校側の対応をどうしましょう」

『待て』

伏見「……?」

『お前が考えろ』

伏見「え……?」

『最善策をお前が考えろと言ってるんだ』

伏見「ちょ、ちょっと待ってください、そんなこと!」

『常に犯人の行動は悪運によって守られている。
 俺たちの捜査はそれで足止めを食らってるんだ』

伏見「だけど私はまだ刑事としての……!」

『いいか、よく聞け』

伏見「……!」

『今、この時間に、この場所で、あの子たちを守れる可能性が一番高いのは恐らくお前だ』

伏見「――!」

『組織のしがらみは俺がなんとかしてやる。だから、考えろ。いいな?』

伏見「け、警部、悪戯の可能性も捨てきれないんですよ?」

『ナニカが起こっていることくらい俺にもわかる。だが理解できるのはお前だけだ』

伏見「……わ…わかり……ました……!」

『これから二人で行動しろ』

伏見「二人……?」


後輩「伏見さん!」


伏見「……分かりました」

『それで、これからどうする』

伏見「少し時間をください。とりあえず学校に向かいます」

『分かった。着く前に指示を出せ』

プツッ

伏見「ふぅ……はぁぁ……」


理事長「――……」


後輩「あの学校の理事長……? 顔色が悪すぎる……」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:18:31.91 ID:iVlOUhKto

伏見「理事長、車に乗ってください」

理事長「え……」

伏見「学校に戻りましょう」

理事長「は、はい……」


伏見「……そうだ、学校だ」


後輩「?」

伏見「後輩君、運転して」

後輩「いやいや、俺は君より先輩ですけど!?」

伏見「いいからはやく!」

後輩「わ、わかったよ!」


バタン


伏見「えっと、無線は……」

後輩「これだ」

伏見「サンキュ」

後輩「だから、俺は先輩だって――」

ガガッ

伏見「警部、応答してください」

『俺じゃなくて、本部に伝えろ』

伏見「えっ!?」

『話はしてある』

後輩「マジっすか、先輩……」

伏見「え、えっと……本部」

『はい、こちら本部です』

伏見「音ノ木坂学院の下校時刻を普段通りにしてください」

『え……?』

後輩「爆破予告が出てるから早期下校の対応じゃないと……!」

伏見「知ってる。……それでいいですか、理事長」

理事長「……で、ですが、今、職員会議で早期下校の趣旨を伝えているはずです」

伏見「生徒の安全はそれで守られるでしょうが、あの子たちは違う」

理事長「…………」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:21:54.29 ID:iVlOUhKto

ガガッ

『伏見、爆破予告と殺害予告の犯人は同一人物なのか?』

伏見「それは分かりません。……けど、学校が安全であることは変わりありません」

理事長「……わかりました、刑事さん。普段通りに」

伏見「理事長からの許可も取りましたので。周辺の学校はお任せします」

『理由を聞かせろ、伏見刑事』

後輩「うわ……警視……」

伏見「時間稼ぎの意味があります」

『その間に俺たち一課に動けと言っているのか?』

伏見「そう取ってもらっても構いません」

『いいだろう。では、音ノ木坂学院の警備を強化する』

伏見「了解しました」

後輩「おぉ、先輩が啖呵切った影響だ……」

伏見「理事長、生徒たちにはまだ爆破予告のことは伏せておいてください」

理事長「はい……わかりました」

伏見「先生方には私が詳しく話します」

理事長「……お願いします」


伏見「……これで守りは鉄壁のはず」


……


185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:23:26.73 ID:iVlOUhKto

―― 同時刻:2年生の教室


穂乃果「――!」ビクンッ


真姫「……?」

ことり「穂乃果……ちゃん?」


穂乃果「……ほ……ほぁ……ビックリした」

真姫「どうしたの?」

穂乃果「高いところから落ちた夢見ちゃった……あはは」

海未「しっかり寝たはずでは?」

穂乃果「ここのところ睡眠不足だったから」

海未「授業中にその不足分を補っていたようですが」

穂乃果「む……ああ言えばこう言う……」

海未「それはあなたです」

ことり「まぁまぁ」

真姫「ケンカはだめだよ」

穂乃果「そうだけど、うみちゃんが」

海未「穂乃果がいけないんです」


ヒデコ「あのやり取りを見てると平和だなって思うわ」

ミカ「ほんとほんと」

フミコ「……また自習ってどうしたんだろ」

ヒデコ「そういや、前の自習も説明無かったよね」

ミカ「うんうん」

フミコ「ミカ、漫画読みながら相打ちするの良くないよ」

ミカ「ほんと、そうだよね」

ヒデコ「話、まったく聞いてないよね」

ミカ「そうそう、その通りだと思う」


……


186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:26:11.12 ID:iVlOUhKto

―― 帰りのホームルーム


担任「さて、今日はこれで終わりだが――」


穂乃果「あー、終わったー」

真姫「おわったぁ」

ことり「真姫ちゃんも疲れたみたいだね」

海未「……」


担任「大事な話があるんだが――」


穂乃果「今日はどこ寄って行こうか?」

真姫「こうえんにいきたい」

穂乃果「うーん……それもいいけど」

ことり「ちょっと穂乃果ちゃん、先生の話が終わってないよっ」


担任「大事な話があるんだが、なぁ、高坂」


穂乃果「……はい、どうぞ」


担任「今日の昼頃、みんながよく利用する駅に爆破予告が出された」


海未「え――!」

ヒデコ「嘘……」

ミカ「ば、ばくはっ!?」

真姫「……?」

ことり「…………」

穂乃果「……」

フミコ「昼のサイレンってそれだったんだ……」


ザワザワ


担任「みんな静かに。駅は一時封鎖されたけど、
   いたずらと判明されたので見合わせていた電車は今は通常通り運行している」


海未「……ホッ」

ヒデコ「はぁ、びっくりした」


担任「悪戯と判断されたが警察は警戒しているらしい。
   だから今日は早く帰るように。遅くなるようなら必ず家に電話するんだぞー」


ミカ「はーい」

フミコ「爆破なんて、テレビの中の話だけだと思ってた」

生徒D「ねー。ニュースでは見てたけどまさか近所でなんて」
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:28:16.93 ID:iVlOUhKto

担任「はい、それじゃ今日はこれで終わり。気を付けて帰るんだぞ」


穂乃果「今日も天気が良かったから、遊びたかったのになぁ」

ことり「今日はしょうがないよ。にこちゃんが練習しようって言ってたけど」

穂乃果「練習?」

真姫「れんしゅう?」

ことり「うん、発声練習しようって」


担任「そうか、それはちょうど良かった」


穂乃果「?」

担任「高坂たちの部活の取材がしたいって相談があってな」

穂乃果「取材?」

海未「部活とは……私たちもですか……」

真姫「おなかすいた……」

ことり「部室にお菓子あるから、もうちょっと我慢してね」


ヒデコ「明日の休み、どこ行こうか」

ミカ「海に、行きたいな」

フミコ「なんで急に海なの……?」

ミカ「私を呼んでいる気がする」

ヒデコ「気のせいだって」

フミコ「海に呼ばれるって怖くない……?」

ミカ「……確かに」


真姫「うみちゃん、こわくないのに」

海未「いえ、私ではありませんよ」


担任「あぁ、そこの3人も協力してくれ」


ヒデコフミコミカ「「「 ? 」」」



……


188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:30:47.84 ID:iVlOUhKto

―― 同時刻:音ノ木坂学院周辺


伏見「……」


後輩「しかし、あの爆破予告がハッタリだったとは……犯人は何考えてんスかね」

警部「俺が知るか。それより、あの予告に使われた紙からなにか分かったか」

後輩「バッチリッス」

警部「報告しろ。……おい、伏見、何を見ている」


伏見「え、いえ……なんでも」


後輩「屋上になにが……?」


伏見「はやく報告を」


後輩「だから、俺の方が先輩だっての。……えっとですね、
   みんな、文面に注目していたようですが、紙の裏に花が描かれてるんですよ」

警部「花……?」

後輩「そうです。調べたところ、薔薇、デイジー、パンジー、スミレ、
   チューリップ、オニユリ、朝顔、ダンディライオン、スイートピー」

伏見「……花…」

後輩「そして、アイリスの計10枚分ですね」

警部「ふむ」

後輩「はい」

警部「……?」

後輩「以上です」

警部「それだけか?」

後輩「……そうです」

警部「なにがバッチリだよお前……」

後輩「いや、手がかりこれしかなかったんですって!」

警部「その花から得られる共通点とかあるだろうが」

後輩「そうッスね。……セット販売とかあるかもしれないんで調べてみます」

伏見「もしかして……」

警部「何か分かるのか?」

伏見「小さい頃に読んだ記憶があって……。それと、花の名前に少しだけ知識があるんです」

後輩「読んだ……? 絵本とか童話……?」

伏見「うん……。確か、ナイフに文字が彫られてあったよね……?」

後輩「あ、あぁ……えっと……『vorpal sword』って」

伏見「アリス……」

警部「……は?」

伏見「気になって調べたんですその文字。
    それは鏡の国のアリスに出てくる剣。そして、さっきの花の名前……」

警部「それがあの児童小説がに共通してるってのか」

伏見「……はい、そうです」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:33:39.29 ID:iVlOUhKto

後輩「警官を刺したナイフ、犯行予告に使われた紙に描かれた花」

警部「それが同一人物が出したと証明しているっていうのか?」

伏見「爆破予告はハッタリでも殺害予告は本気……かもしれません」

後輩「どうします、先輩。本部はもう爆弾が偽物だったことで警戒を緩めてますけど……」

警部「俺がもう一度本部へ行って掛け合ってくる」

後輩「でも先輩、さっき啖呵切ったからっ」

警部「根拠は乏しいが……事が起こってからじゃ手遅れだ」

伏見「……」

警部「伏見、あの子らをいつまで学校に足止めしておくんだ?」

伏見「陽が暮れるまで。……それで犯人逮捕です」

警部「何を待ってるかは知らんが、本当だな」

伏見「はい。これだけ証拠を残してますから」

警部「よし。それじゃ、お前はこれから最善と思う行動をしろ。
   日が暮れるまで報告はいらん」


伏見「分かりました」


警部「お前はここで見張りだ。なにかあったら連絡しろ」


後輩「はい!」


警部「ったく、なんでこんな雲を掴むような事件を追ってんだ……」

タッタッタ......


後輩「……先輩にも子どもがいるんだよ」


伏見「……」


後輩「だから、親の気持ちが分かるんだろうな……」


伏見「うん。――あんな気持ちはしたくない。――させたくない」


後輩「じゃあ俺、見回りしてくるわ」

スタスタスタ


伏見「私は――――」


……


190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:35:24.24 ID:iVlOUhKto

―― 屋上



海未「はい、わん、つー、すりー」


にこ「こうやって、こう」

凛「こうやって……っ」

穂乃果「こうだね!」


真姫「……」


ミカ「いいねいいね、撮っちゃうよ」

パシャッ

にこ「にこっ♪」

絵里「ちょっとにこ、集中して」

にこ「してるわよ」

絵里「シャッター切る度にカメラ目線してるでしょ」

にこ「本能だからしょうがないの☆」

花陽「反対から同時に撮ったらどうなるのかな……」


希「真姫ちゃん、もうちょっとこっちに来て」

真姫「……うん」


ことり「あの、真姫ちゃんはNGでお願いね」

ヒデコ「どうしてだっけ?」

ことり「今の真姫ちゃんを残しておきたくないの」

ヒデコ「……」

ことり「本来の真姫ちゃんに戻った時、
    知らない自分の写真を見たらきっと混乱するから……」

ヒデコ「……うん、わかった」

ことり「その代わり、にこちゃん達をたくさん撮ってね」

ヒデコ「オッケー」


真姫「……」


海未「わん、つー、すりー」


ミカ「いいよ、みんな笑顔がとってもいい!」

パシャパシャ


絵里「なんだかプロっぽいわね……」


ミカ「どんどん撮っていくよ〜」

パシャパシャ
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:36:21.93 ID:iVlOUhKto

タンタタンタンッ

にこ「……っ」

凛「よっとっ」

穂乃果「くるくるくるくる〜」

タンッ

穂乃果「キメ!」


ミカ「ぬ……!」


穂乃果「どうしたの?」


ミカ「ごめんごめん、フィルムが……」


にこ「デジカメでしょそれ!」


ミカ「ごめんなさい! 変なボタン押しちゃってっ」

ヒデコ「どれどれ?」


にこ「せっかくのキメポーズが……」

凛「久しぶりに踊るの楽しいにゃ〜」

穂乃果「あはは、そうだね〜」


真姫「……」


絵里「どうしたの、真姫?」


真姫「ん……」


絵里「?」

花陽「いっしょに、踊りたいのかな……?」


穂乃果「そうなの?」

真姫「……うん」

穂乃果「そっか……。じゃ、一緒に踊ろうよ」

真姫「うんっ」

希「といっても、真姫ちゃんトレーニングウェア持ってきてるん?」

穂乃果「……ううん、持ってきてないね」

絵里「それじゃ、私の貸してあげるから……着替えてきましょ」

真姫「うん」

ことり「あ、私も〜」

テッテッテ
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:37:59.78 ID:iVlOUhKto

にこ「でも、久しぶりに踊ってみると……体が鈍ってて思うようにいかないわ……」

海未「毎日の練習は必須ですね……」

穂乃果「というか、歌の練習のはずだったのに」

ヒデコ「やっぱりさ、躍動感ってのが欲しいわけよ」

ミカ「うんうん。動きってのが必要なわけ」

にこ「さっき撮ったのみせて」

ミカ「……どうぞ」

にこ「ふむふむ……なるほど」

ミカ「これなんか、素早い動きを想像させますね」

穂乃果「ブレてるじゃんっ! これブレてるじゃん!!」

にこ「っていうか、全部ブレてるじゃない!」

ミカ「ご、ごめんなさい〜!」

ヒデコ「まぁまぁ。素人だし」

にこ「あんた、自信満々に綺麗に撮ってあげますよ〜って言ってたわよね」

ミカ「すいません……。私、普段は自然を相手に撮っていまして」

穂乃果「嘘だよね」

ミカ「すいません。写真は記念撮影くらいです」

にこ「……」

凛「喉乾いたにゃ〜」

ヒデコ「フミコがお礼の飲み物用意してるから、もうちょっと頑張って」

凛「やった〜!」

希「飲み物?」

ヒデコ「理事長からの差し入れって、紅茶と冷たいドリンクを用意しています」

穂乃果「ふぅん……珍しいね?」

希「そうやね……」

ヒデコ「私も理事長から直接じゃなくて、先輩からなんで……詳しくは知らないんですけどね」

穂乃果希「「 ? 」」

にこ「じゃあ、止まっていたら綺麗に撮れるわけ?」

ミカ「……多分」

にこ「今度は自信なさそうになったわね」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:38:51.45 ID:iVlOUhKto

凛「ふふ〜、凛はいい構図を思いついたよ!」

希「どういうの?」

凛「かよちん、向こうへ行って」

花陽「え、う、うん……?」

希「なるほど、夕陽をバックにするわけやね」

凛「そうだよ。かよちん、ストップ」


花陽「うん……」


ヒデコ「どうよ?」

ミカ「……よく分かんない」

にこ「なんで素人っぽくなってるのこの子……さっきまでのプロっぽい感じはどうしたの?」

穂乃果「にこちゃんが突っ込むからだよ」

希「お、ええやん〜。シルエットになってて」


花陽「そ、そう?」


ミカ「……」

パシャッ


海未「なにも言わずに押しましたね……」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:39:44.05 ID:iVlOUhKto

―― 廊下


真姫「……」

絵里「どう?」

真姫「……うん、だいじょうぶ」

ことり「うん、どこも変じゃないね」

真姫「ありがとう、ことりちゃん」

ことり「どういたしまして〜♪」


理事長「あ……ことり」


ことり「お母さん……?」


理事長「……」


ことり「……?」


理事長「……」


ことり「どうしたの?」


理事長「ううん、なんでもない……」

スッ

ことり「な、なに……?」

理事長「髪に糸くずが……」

ことり「あ、うん……ありがとう」

理事長「……それじゃ」

ことり「うん、また後でね」

理事長「必ず、帰ってきて」

ことり「うん。……うん?」

理事長「……」

スタスタスタ......


ことり「……」


真姫「どうしたの?」


絵里「……なんでも……ないわ」


ことり「どうしたのかな、お母さん……」


真姫「?」


絵里「……もうすぐ陽が暮れるわね」


……


195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 12:40:58.64 ID:iVlOUhKto

―― 家庭科室


「もうアイドル部たちの練習は終わったころかしら」

フミコ「はい、ヒデコからメール来てました」

「それじゃ持って行ってくれる?」

フミコ「分かりました」

「手伝ってくれてありがとう。とても助かったわ」

フミコ「いえ、これくらい」

「お茶請けはこれくらいでいいかしら」

フミコ「そうですね。あまり多すぎてもいけませんから」

「それじゃ、よろしくね」

フミコ「先輩は一緒に行かないんですか?」

先輩「私は他にすることがあるから。……あ、そうそう」

フミコ「?」

先輩「穂乃果さんと真姫さんを理事長室に呼んでくれって頼まれたの忘れてたわ」

フミコ「じゃあ、ついでに伝えておきますね」

先輩「ありがとう、助かるわ。できるだけ急いでもらってね」

フミコ「分かりました。それでは……よいしょっ」

先輩「一人で持てる?」

フミコ「だい……じょうぶです」

先輩「ごめんね、あなた達の分も用意するから、後でここに来てちょうだい」

フミコ「はい。ありがとうございます……でも、もう日が暮れるから……私たちは先に帰ります」

先輩「そうね、早く帰れって先生に言われてるからゆっくりはできないか……残念」

フミコ「どうして、アイドル部だけ残ってるんでしょう?」

先輩「さぁ……わからないわね」

フミコ「おっと……それじゃ、行ってきます」

先輩「行ってらっしゃい。ちゃんとみんなに飲んでもらってね。高級品だから」

フミコ「ふふ、は〜い」


先輩「……必ず」


「飲んでくれないと、困るから」



……


196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 13:28:17.31 ID:iVlOUhKto

―― 夕暮れ時:アイドル部


フミコ「お待たせしました〜。……よいしょっと」


にこ「なにそれ」

フミコ「高級な茶葉を使用してますよ」

花陽「わざわざティーポットに淹れてくれたんですか……?」

フミコ「香りと味を最大限に味わってほしいって」

にこ「ふぅん……」

凛「冷えてるって言ってたよ?」

フミコ「それは、このクーラーボックスに」

凛「なにがあるのかな〜? 
  あ、スポーツドリンクとオレンジ、アップルがある! 飲み放題?」

フミコ「ある分だけは、そうなんじゃないかな」

凛「やった〜!」

海未「そこまで用意してくれていたのですか?」

フミコ「取材のお礼だそうだから」

にこ「ふふ、ついに私の……にこにーの偉大なる一歩が新聞に載るのよ!」

希「学校のブログやけどな〜」

にこ「分かってないわね、希……この小さな」

希「この小さな記事がやがて大きな存在へと変貌したうちらの奇跡の一文になるんやね」

にこ「そ、そうよ。……分かってるじゃない」

花陽「それじゃ、並べますね」

フミコ「ありがとう」


ガチャ


ことり「ふぅ〜、着替えてきたよ〜」

絵里「これは一体……?」

真姫「おちゃかい?」

穂乃果「おぉっ、お茶会っ! セレブだ!」

絵里「……このティーポット……どこかで見たような」

ことり「あっ! これ、すっごく高いポットだよ!」

にこ凛「「 えっ!? 」」

ことり「わぁ〜……このティーカップも!?」

にこ「い、いくらくらい……?」ゴクリ

ことり「5桁か……6桁……」

花陽「う、うそー!?」

穂乃果「じゃ、じゃあ一生に一度しか味わえないお茶会だね!?」

希「というか、なぜそんなものが……」

フミコ「そ、そんなに高かったんだ……」
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 13:29:30.79 ID:iVlOUhKto

にこ「セレブっていうのわね、何事にも動じないものなの……ことり、ついでくれるかしら」

凛「自分で注ぎなよ〜」

にこ「ふふ、セレブにこにそんなことできなくってよ」

絵里「あなたは誰なのよ……」

海未「にこのイメージするセレブってこういうのなんですね……」

ことり「はい、どうぞ」

にこ「ありがとう。……くんくん」

花陽「セレブがあからさまに匂い嗅いでる……」

にこ「この匂いは……あれね、ターメリックね」

真姫「カレー」

にこ「?」

真姫「カレーのスパイスだよ」

にこ「そうそう、カレーのスパイス。彼にはスパイスが必要なの」

凛「なにを言ってるの?」

穂乃果「しかも親父ギャグ……」

にこ「い、韻を踏んだのっ! ラップよ、にこラップ!」

希「セレブには程遠いみたいやな」

にこ「と、とにかく、いただくザマス……ずずーっ」

海未「キャラが定まっていませんね……」

絵里「もう何が何だか……」

フミコ「あはは……」

ガチャ

ミカ「フミコー? 帰るよー?」

フミコ「あ、うん」

ヒデコ「それじゃ、私たち帰るね」

穂乃果「今日はありがとー」

ヒデコ「いえいえ。それじゃ」

フミコ「片付けは明日やるから、適当に置いといてね」

ことり「ううん、私がやるから」

フミコ「う〜ん……うん、わかった」

海未「ありがとうございました」

フミコヒデコミカ「「「 ばいばーい 」」」

バタン


穂乃果「さてっと、私もセレブになってみようかな〜」

絵里「せっかく淹れてくれたんだから、いただいてから帰りましょうか」

凛「凛にもちょうだい、かよちん!」

花陽「うん、ちょっと待っててね」

にこ「うえ……まっず」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 13:30:51.53 ID:iVlOUhKto

ガチャ


フミコ「ごめんごめん、伝言忘れてた」

海未「え?」

フミコ「穂乃果と真姫ちゃん、理事長室に急ぎで来てくれって」

ことり「お母さんが……?」

絵里「さっき出ていったように見えたけど……もう戻ってきたのかしら」

真姫「……?」

穂乃果「うん、わかったー」


フミコ「それじゃね」

バタン

穂乃果「せっかくだから、一口いただいてから……」

ことり「穂乃果ちゃん、お母さんさっき変だったから……なにか伝えたいことあるんだと思う」

穂乃果「え、そうなの?」

絵里「……そうね。すぐに行ったほうがいいかも」

穂乃果「わ、わかった」

海未「ちゃんとお菓子も残しておきますから安心してください」

穂乃果「そこまで欲張りじゃないよー」


にこ「ごくごく……、うぇ、やっぱりまずい」

希「口に合わない?」

にこ「そうみたい。凛、私にもスポドリとって」

凛「はいにゃっ」


穂乃果「じゃ、行こうか、真姫」

真姫「……うん」

穂乃果「チョコレート貰ってくね」

ことり「はい、どうぞ、真姫ちゃんも」

真姫「ありがとう、ことりちゃん」

ことり「いえいえ♪」


ガチャ


穂乃果「話ってなにかな……」

真姫「もぐもぐ」


バタン


花陽「こ、これが……セレブのティータイム」

絵里「そんな構えなくてもいいわよ。普通に飲めばそれで楽しめるわ」

花陽「さ、さすが絵里ちゃん、様になってる」

凛「ごくごく……にゃっまずい!」

希「あらら……凛ちゃんまで」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 13:32:05.15 ID:iVlOUhKto

にこ「…………」

ことり「海未ちゃんも、どうぞ」

海未「ありがとうございます。いただきます……」ズズーッ

絵里「……」

花陽「……う、うん?」

凛「どう、かよちん」

花陽「うぅん……こういう味なんだ……。もっと……爽やかになると思ってたのに」

海未「そうですね……濁ったような」

希「ん……本当だ……」

にこ「……ん……んん」

絵里「どうしたの、にこ?」

にこ「な……なんだか急に……眠気が……」

ことり「ん〜……本当だ、前に飲んだ茶葉の方が美味しいかな?」

凛「…………」

花陽「あ……あれ……?」

絵里「花陽……?」

花陽「うぅん……どうしたんだろ……」

希「え……エリち……ッ」


絵里「どうしたの、希?」


希「こ…れ……なにか……入ってる……ッ」


絵里「う……うそっ!」

ガチャーン


ことり「あ……あれぇ……」

海未「な……なんです……これは……っ」


凛「すぅ……すぅ……」

花陽「……すぅ」

にこ「くかー……」


絵里「まさか……睡眠薬……!?」


ことり「ん……ん…………」


海未「……まさか……そん…な……」


ことり「すぅ……」


希「エリち……はやく……逃げ……て……ッ」


絵里「わ……私ものんで……」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 13:33:27.54 ID:iVlOUhKto


希「いや……や……」


海未「く……ぅぅ……っ」


希「……うしない……たくな……い」


絵里「のぞ……みっ……だめ……寝ちゃ……だめっ」


希「……だれ……も……」


「うし……な……いた…く……な……い」


「のぞ……み……」


最後の抵抗として涙が零れ落ちた

東條希の涙

それをみた絢瀬絵里は微睡んでいく意識の中で先端の尖ったものを探す


「……っ……だ…め……」


それを手に刺して意識の回復を図ろうとした


だが見つからない


「……ほ……の……」


横たわり、出入り口のドアを薄れゆく意識の中、声に出す


危険が迫っているのだと


「に……げ…………」


校内に居ては駄目だと



「――……」


しかし声にならない声をこの部屋が飲み込んだ
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 13:35:00.58 ID:iVlOUhKto


「すぅ……すぅ」


机につっぷして眠る星空凛


「……くぅ……すぅ」


椅子に持たれて眠る小泉花陽


「くー……すぅ……」


不自然な姿勢で眠る矢澤にこ


「すぅ……」


海未に寄り添うように眠る南ことり


「…………」


ことりを守るように眠る園田海未



「…………」


静かに眠る東條希


「……――」


険しい顔で眠る絢瀬絵里


バチバチンと音を立てて照明が消えた


沈もうとする夕陽だけが室内を照らす


しかしそれも束の間


次第に光を失った薄暗い部屋は不穏な空気が漂い始める


ゆっくりと忍び寄る死の誘い


眠る7人の少女たちは

抗うすべもなくただその時が来るのを待つだけだった


そのとき、部屋を覗いた者が――


「ァハハ」


――嗤った

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