『らき☆すた』がスポ根作品だったら【私の血はバルサミコ酢の味がする】

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56 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 22:54:38.86 ID:7LSpuGbY0


つかさ「強くなるとか優勝するとか……。そういうテニスしたくないんだ」

つかさ「楽しくできればそれで十分」

つかさ「勝つために何かを犠牲にしちゃったり、誰かをひきずりおろしたりしたくないんだよ」

つかさ「そうやってギクシャクしたくない」

こなた「ふーん」

57 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 22:55:52.56 ID:7LSpuGbY0


みゆき「正直。私の目に柊さんは鶏群の一鶴に映ります」

黒井「つまりあんたは柊が、この学校には不釣り合いだと言いたいわけや」

みゆき「……」

みゆき「彼女は幸星学園に来るべき選手でした」

黒井「……」

みゆき「理想を掲げるのはたやすいです」

みゆき「ただ理想の追求を許された人間は少ない……」

みゆき「限りなくゼロに近いんですよ」

58 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 22:57:37.93 ID:7LSpuGbY0


黒井「悪かったな。遠くから来てもらったのに」

みゆき「いえ。こちらこそ突然伺ってしまい、申し訳ございませんでした」

黒井「……最後に1つだけ質問構わへんか?」

みゆき「はい」

黒井「今の段階で……。つまり2ヶ月後のインターハイ予選で。ウチの柊が高良に勝つ確率……」

黒井「どれくらいあるん?」

みゆき「…………」

みゆき「皆無です」ニコッ

59 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 23:02:09.39 ID:7LSpuGbY0


こなた「この星の1番になりないんじゃ!私は!」

こなた「世界チャンプ目指してるのだ!」

こなた「テニスの王子様ならぬお姫様!」

つかさ「うん。こなちゃん子どもの時から言ってるもんね」

こなた「つかさとは違うね。ここ」

つかさ「うん」

こなた「私は単純なんだよ」

60 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 23:04:00.99 ID:7LSpuGbY0


こなた「人がどうなったって敗北なんて楽しめないっ。とにかく勝てたらいいんだよぅ」

つかさ「カッコいいね、それ。応援する」

こなた「なら明日から部活出なよっ」

こなた「つかさがいないと練習にならないんだから」



ーーーー「皆無です……」

黒井「だってやんの」

黒井「クソガキがっ!!」

ドカッ!!



ーーーー「くしゅんっ」

みゆき「……?」

61 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 23:12:26.60 ID:7LSpuGbY0



ーーーー【真白高校】【テニコート】

バコンッ!! 

白石「ドライブ!」

あきら「!」パコンッ!!

白石「バック!」

あきら「とっ」パァン!!

白石「スマッシュ!」

あきら「どらっ!!」スパァン!!!


部員「すっご」

部員「あれって球種もコースも指定されてるんでしょ?サイボーグなのかなアイツ」

部員「でも小神さんって私たちと1回も打ってくれないじゃん」

部員「なめられてるのよ。私ら」

部員「レベルが違いすぎるのは確かだけど」

あきら「……ふっ」ポンッ!!

部員「あ、そういえば昨日のドラマ見た?」

部員「あー不倫のやつ?」

部員「え?そんなのやってたっけ?」

62 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 23:13:29.72 ID:7LSpuGbY0


あきら「うっさいわよ!!気が散る!!」

部員「あ」

部員「す、すみません……」

あきら「……はぁ」

白石「どうしました。あきら様?」

あきら「リボンのオールラウンダーは今日も休みなの?」

白石「あー君たち。大きなリボンをしたオールラウンダーの子、知らないかな?」

部員「いえ……。知りませんけど……」

あきら「……いいわよ。続けましょ練習」


あきら「はっ!」バコンッ!!

あきら (どこにいる……) バコンッ!!

あきら (あのリボンをはどこにいるのよっ!) 

バコンッ!!!!!

63 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 23:14:22.75 ID:7LSpuGbY0


ーーーー【幸星学園】

みゆき「陵桜高校ですっ!」

顧問「はぁ?何しにだ!?」

みゆき「気になる選手がいたので!」

顧問「強いのか!?」

みゆき「分かりません!!」

顧問「……」

顧問「と、とにかく。インハイが近い!お前が無断で休むようでは困る。高良!!」

みゆき「はいっ。申し訳ございませんでしたっ」

顧問「お前はウチのエースだ!その自覚を持て!!」

みゆき「はい!」

64 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 23:15:35.11 ID:7LSpuGbY0


顧問「他の者もいいな!自らが幸星テニス部員である誇りを忘れるな!!」

部員達「はいっ!!」


かがみ「……陵桜高校?」


ーーーー【陵桜高校】【テニスコート】


つかさ「く!!」パァン!!!

黒井「遅い!遅い!遅い!!もっと早く!!」ポンッ!!

黒井はかごの中の無数にあるボールを打ち出している。

黒井「止まるな!動け!!」ポンッ!!

つかさ「あぅ…!!」スパッ!


先輩部員「厳しいとこ出すなあ。黒井先生」

こなた「つかさもよく拾ってるよー」

65 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 23:16:46.00 ID:7LSpuGbY0


つかさ「うっ」コンッ!


先輩部員「しかし我らがお姫様がクズリだすのも時間の問題よ?」

こなた「んー」


黒井「どびつけ!!」

つかさ「あっ!」カツッ!!

黒井「遅いねん!!」

つかさ「うぅ……」ズザーッ

黒井「寝るな!!そこに布団ないやろ!!」ポンッ!!

コツン

つかさ「いてっ」
つかさの頭にテニスボールが当たる。

66 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 23:18:24.61 ID:7LSpuGbY0


つかさ「こ、こんなことしてどうなるんですか……」

黒井「強くなる」ポンッ!

つかさ「賞状やトロフィーがそんなに大切なんですか?」コツン

黒井「頂上に立たな見えへん風景もある」ポンッ!

つかさ「まるで見てきたような言いかたですね」パンッ!

黒井「……」

コツン
つかさの雑な返球が黒井の頭に当たる。

黒井「いたっ」

黒井「自分はそうやってすぐカラに閉じこもるな」

つかさ「私の生きかたです。先生には関係ありません……」


先輩部員「……」

こなた「……」


黒井「よしっ」

黒井「ほんなら試合を申し込む。柊」

67 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/20(火) 23:19:10.05 ID:7LSpuGbY0


黒井「もしあんたが勝てばウチはあんたから手を引く。今後一切関わらへんことを約束する」

柊「私が負けたら?」

黒井「ウチの犬になってもらうで。ワンワンワンっ」

黒井「絶対服従や」

柊「……」

68 : ◆yCfk8BuRZKUq [sage saga]:2017/06/20(火) 23:24:58.65 ID:7LSpuGbY0
今日はここまでなんです。
見てくれてる人がいるっぽくて
励まされた。ありがとうございま酢。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/21(水) 14:34:57.59 ID:2cEhblOLo
バルサミコ酢〜↑
70 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/21(水) 23:57:14.54 ID:3JDOEDbx0


先輩部員「ワンセットマッチプレイっ」

ポンポンポン

黒井「かつてバタフライセブンと呼ばれた選手を知っとるか?」

柊「いえ。知りません」

黒井「高校の全国大会上位に幾度となく入賞したことのある選手や」

蝶々が舞うみたいに
華麗なフォームでプレイする事から
そんなあだ名が付けられた

バタフライセブン。

黒井「驚くほど強かったわ。試合のマナーも素晴らしかった」

黒井「あんなにな、柊。よぉ似とる」

つかさ「そんなことより。例の約束守ってくださいね」

黒井「神に誓うで」

黒井「……けどあんたは負ける」

71 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 00:02:50.78 ID:Tuhf+srS0


こなた「黒井先生本気でつかさに勝つつもりかな」

部長「無理ね。ただでさえ相当なブランクがあるのに、先生運動不足だから途中で倒れないか心配」


黒井「……」

教えたるわ。柊。
あんたのテニスがどんだけ軟弱か。

教えたる……。

バタフライセブンの悲劇を。

つかさ「……?」

黒井「……」
黒井はサーブを打とうとしない。

つかさ「あの先生……?」
低くした体勢をつかさは元通りにした。

黒井「!!」パァン!!!!

つかさ「ちょっ!?」

カツンッ

黒井「ハッハァーン!!」

先輩部員「フィフティーン・ラブ!」

つかさ「……」

72 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 00:04:43.77 ID:Tuhf+srS0


部長「おとなげないですよー!先生ぇー!」

先輩部員「反則もいいところじゃん」

こなた「……強い」


黒井「……」ポンポンポン

怒るか?柊。

いや……ちゃうな。

あんたは萎縮する。

闘志を剥き出しにして挑む
相手に対しあんたは……

黒井「らぁ!!!」

怯えるっ!!

バコンッ!!!

つかさ「……!」カツッ!

黒井「シッ!!」スパァンッ!!

つかさ「うっ!」スカッ……

73 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 00:07:10.81 ID:Tuhf+srS0


部長「今のも反則ギリギリって感じね」

こなた「でも黒井先生よく知ってます」

こなた「つかさの嫌がる事」


つかさ「はっ」スパァン!!

読めるわ。

黒井「ほっ!!」バスンッ!!

あんたの考えてる事が
手に取るように分かるわ。柊。

その打球に対してあんたは必ず……

ストレートへ返球する!!

つかさ「ふっ!」パァン!!

そう!!ここやっ!!

つかさ「……っ!?」

黒井「ハッ!」スパァンッ!!

74 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 00:10:09.15 ID:Tuhf+srS0


つかさ「ふぅ……」

そうや。
あんたの見切りは極めて早い。
無駄な球は一切追わへん。

その潔さ……。
甘いわ。

ーー醜いプレイは嫌いか?バタフライセブンーー

教えたるわ。柊。

ーーだがそれでは勝つことは出来ないーー

あんたのテニスの軟弱と誤算。

ーー残念ながらそのプレイはプロに通用しないーー

ーーその薄い羽では海を渡る事は出来ないーー

75 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 00:14:59.43 ID:Tuhf+srS0


スパァンッ!!

敗北と挫折。

つかさ「うっ」コツッ

喪失と悲嘆。

部長「凄い……」

スパァンッ!!

孤立と混迷。

つかさ「あっ」コンッ!

苦悩と絶望。

パァン!!!!

虚無と堕落。

つかさ「……っ!」


先輩部員「ゲームカウント。4−0!」

76 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 00:29:15.45 ID:Tuhf+srS0


つかさ「くっ!」カッ!!

黒井「教えたるわ!!柊ぃ!!」

スパァンッ!!

先輩部員「15−0!!」

黒井「あんたの甘さとっ」パァンッ!!!

つかさ「……!」ポンッ!

黒井「バタフライセブンの悲劇を!!!」

スパァンッ!!!!!!

つかさ「はぁっはぁっ……」

77 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 16:45:35.68 ID:Tuhf+srS0


ーー遠くで電車の音が聞こえる。

ザザッ!

ーーここは静かで安全な場所。
ーーすごく落ち着く。

スパンッ!

ーー誰か来る!?

ーー大丈夫。私はここで平気!

スパァンッ!!

ーー私はここにいたいの。

ーー外へ出たらまた。

ーーまた……。


黒井「はっ!!」

スパァンッ!!

つかさ「……!」
完全につかさの表情は怯えたものになっていた。

先輩部員「40−15!」

黒井「ふぅー…ふぅー」

つかさ「はぁっ……」

78 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 16:46:55.24 ID:Tuhf+srS0


部長「ひょっとしたら、ひょっとする……?」

先輩部員「でも先生汗だくですよ……。もう限界近いんじゃ……」

こなた「……」



黒井「はぁはぁっ。追わないのは同情かいな。柊」

黒井「あんたの目にはオバハンが空元気だしてるようにしか見えへんか?勝つ気も失せるんか?」

つかさ「試合中の私語は控えてください。気が散ります……」

黒井「あんたはバタフライセブンによー似とる」

つかさ「……行きますよ」

79 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 16:47:41.09 ID:Tuhf+srS0


ザザッ!

黒井「ほっ」スパァンッ!!

つかさ「くっ」スパァンッ!!

ザザッ!

黒井「ワンパターンやなぁ!おいっ」

黒井「なめるな!!あほんだらぁ!!」

スパァンッ!!

つかさ「うぅ」カッ!

黒井「ウチの犬になる準備は出来たか!?」

スパァンッ!!

黒井「お手といったらお手をする!」

スパァンッ!!

黒井「3回廻ってワンと鳴く!!」

スパァンッ!!

黒井「やってもらうからなぁ!柊!!ウチはあんたの首に縄をつけて毎日欠かさず散歩をする!!」

80 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 16:48:42.48 ID:Tuhf+srS0


つかさ「くっ」

スパッ!!

どうして?

どうして私に構うの?

なにもしてないのに。
ただいるだけなのに。

ーー外に出たらまた……。

ーー違うよ。つかさーー

ーーバルサミコ酢の味がするんだよーー

ねぇ!知ってる?血ってバルサミコ酢みたいな味がするんだよぉ。

バルサミコ酢ぅ?何それぇ。

テニスしようよ!つかさ!
テニス!テニス!テニス!

ーー私が教えてあげるよ!!ーー

つかさ「はっ!!」

スパァンッ!!

黒井「……!」

81 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 16:49:48.03 ID:Tuhf+srS0


黒井「うっ」パンッ!

ピシッ!

先輩部員「ネットだ!」

部長「ギリギリ柊のコートに入るよ!」

黒井「はっ!」

ーー気合い入れろ!つかさぁ!ーー

ーーテニスはど根性ってね!!ーー

ダッ!

部長「あ……」

タッタッタッタッ!!

ーー吹っ飛ばすんだぁ!!ーー

つかさ「だぁ!!」
つかさはテニスボールに向かって飛び込む。

黒井「!?」ザザッ!

つかさ「……!!」

ポンポポン……

黒井「なっ……!」

つかさ「……はぁはぁ」


先輩部員「間に合った……」

部長「あれを返した……!」


先輩部員「ゲームカウント1−4!!」

82 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 16:51:28.02 ID:Tuhf+srS0


ーーースパァンッ!!!!

黒井「ぐっ!」カツンッ

つかさ「よしっ!」

先輩部員「ゲームカウント4−5!」

部長「黒井先生、万事休すだね」

先輩部員「そりゃ縺れたら辛いでしょ」


つかさ「……!」パンッッ!!!


こなた (つかさ……。いつの間に、そんな打ちかた。そんな攻撃的な……)


黒井「ひ!」コンッ

つかさ「とっ!!」

スパァンッ!!!!!!

黒井「くっ……はぁはぁ」

ズサッ……


部長「あらら。膝ついちゃったよ先生」

83 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 16:52:54.03 ID:Tuhf+srS0


つかさ「早く立ってください。先生」

つかさ「布団ないですよ。そこ」

黒井「目が眩む……。5分休ませてくれへん……?」

つかさ「審判、先生棄権する棄権するそうですよ」

黒井「ちょっ!待ちぃ!嘘や嘘!取り消すから!」

つかさ「……」

黒井「ははっ!ええやん!ええやん!!柊!めっちゃ!ええよ!!」


先輩部員「黒井先生やばくない?」

部長「廃品すんぜんって感じ……。ボロボロ……」

84 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 16:53:31.85 ID:Tuhf+srS0


つかさ「早く立ってください。先生」

つかさ「布団ないですよ。そこ」

黒井「目が眩む……。5分休ませてくれへん……?」

つかさ「審判、先生棄権するそうですよ」

黒井「ちょっ!待ちぃ!嘘や嘘!取り消すから!」

つかさ「……」

黒井「ははっ!ええやん!ええやん!!柊!めっちゃ!ええよ!!」


先輩部員「黒井先生やばくない?」

部長「廃品すんぜんって感じ……。ボロボロ……」

85 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 16:54:51.22 ID:Tuhf+srS0


黒井「はっ……!!」コツッ

分かるやろ。柊。

あんたが球を追うんやない。
球があんたを追うんや。

あんたは強くなる。

感じるやろ。柊。

球があんたを追うんを。

……さぁ見せてくれや。

黒井「ふっ」ザザッ!

あんたの性能を!!!!

つかさ「っ!」

あんたの真反対……。
逆クロスに打つっ!!

拾ってみぃやっ!!

黒井「らぁ!!!」スパンッ!!!!

86 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 16:57:01.25 ID:Tuhf+srS0


つかさ「……!」ダッ!


こなた「!!」


タッタッタッタッ!!!
つかさはコートの端から端まで走り抜ける。

こなた「…………」


黒井「はっ」

そうや。柊!!

つかさ「はあっ!!」
ボールの前で力強くテイクバックを完了させる。そして……

スッパァァンッッ!!!!!


こなた「…………!」


黒井「……」ニコニコ
球があんたを追う……。


つかさ「……」

ーーなれるかな?ーー

ーー私をこなちゃんみたいになれるかな?ーー

87 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 16:59:14.44 ID:Tuhf+srS0


部長「あ……」


黒井「ははっ」グラッ


つかさ「……」

ーー私をこなちゃんみたいになりたいんだ!ーー

ーーこなちゃんみたいに!!ーー


……ドサッ
黒井はボールが後ろへ撃ち抜かれると同時に倒れた。


部長「黒井先生!?」

先輩部員「まじで倒れたよ!ヤバイって!」

先輩部員「1年、保健室の先生呼んでこーい」

部長「でも黒井先生……笑ってる」

先輩部員「えぇっ?」

88 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/22(木) 17:00:38.08 ID:Tuhf+srS0



つかさ「…………」

つかさ「……私」

こなた「……?」

つかさ「私、先に行くね、こなちゃん」

こなた「えっ?」

つかさ「……」
89 : ◆yCfk8BuRZKUq [sage saga]:2017/06/22(木) 17:03:25.16 ID:Tuhf+srS0
今日はここまでなんです。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/23(金) 01:05:09.77 ID:9Iwcwqgso
アツいね
期待してます
91 : ◆yCfk8BuRZKUq [sage saga]:2017/06/23(金) 07:32:22.21 ID:0aXyusgm0

>>86 >>87

“私をこなちゃんみたいになれるかな?”
“私をこなちゃんみたいになりたいんだ!”

に、なっちゃってた。

正しくは“私も”

間違い多くてすみません。
92 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/24(土) 23:44:36.94 ID:IaRUZ8030


ーーーー【翌日】【黒井宅】

ピンポーン ガチャリ

黒井「はいはーい」

つかさ「こんにちわ。先生」

黒井「おおー!柊!」


黒井「よぅここが分かったな」

つかさ「教頭先生から教えてもらいました」

黒井「ほーん」

つかさ「1人暮らしですか?」

黒井「残念なことにな……」

黒井「犬でも飼おうかと思ったんやけど、目をつけた子犬がなかなかなついてくれへんねん」

つかさ「……」

黒井「ふふ」
93 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/24(土) 23:46:04.81 ID:IaRUZ8030


つかさ「黒井先生」

黒井「んー?」

つかさ「今日は私、バタフライセブンに会いに来たんですよ」

黒井「おう」


ーーーー【泉宅】

かなた「バタフライセブン?」

こなた「昔、活躍した選手らしいんだけど知ってる?」

かなた「勿論知ってるわよ」

かなた「黒井先生のことでしょう?」

こなた「むん。やはりか」

かなた「彼女がどうかしたの?」

こなた「いや気になってさ色々。そんで強かったの?黒井先生は」

かなた「強いなんてものじゃないわ。最強よ最強」

かなた「それにただ強いだけじゃない」

驚くほど綺麗だったの。

94 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/24(土) 23:47:14.00 ID:IaRUZ8030


黒井「当時、ウチに敵はいなかった。文字通りの無敵やった」

黒井「若かった……」

黒井「日本テニス界の新星とか言われてな」

プロ選手になるのが当然だと誰もがそう思とった。


ーーーー「けど黒井さんは幼馴染みに負けるの。全国大会の初戦で」

こなた「幼馴染み?」

かなた「物心ついた時から同じ台で打ってきた相手。その人も強い選手だったわ」

かなた「でも。実力は黒井さんが2枚も3枚も上手だった」

こなた「じゃあなんで……」

95 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/24(土) 23:48:05.51 ID:IaRUZ8030


黒井「右膝じん帯損傷。全治6ヶ月と診断された」

つかさ「棄権したんですか……?」

黒井「ウチならそうした」

つかさ「え?」

黒井「うん。膝を壊したのはウチやない」

周囲の説得も聞かず
あいつは試合に臨んだ。

右膝のサポーターが
やけに白く感じた。

つかさ「なのに負けたんですか……?」

黒井「あんたなら勝てたか?」

96 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/24(土) 23:49:02.62 ID:IaRUZ8030


つかさ「えと……。フォアに深く打って、バックに切り返せば簡単に沈むんじゃ」

黒井「あんたなら打てたか?」

つかさ「?」

黒井「親友の傷に釘を突き立てるような球を……」

黒井「選手生命を奪う危険なコースにや」

黒井「あんたなら打てたか?柊」


ーーーー「結局黒井さんはフォアに打球を集中させて自滅する形で負けたのよ」

かなた「そのせいで黒井さんは周囲から見放されて、プロ選手への道を絶たれた」

こなた「そうだったんだ……」


ーーーー「結局ウチは」

黒井「自分の甘さに負けたんや」

つかさ「……」

97 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/06/24(土) 23:49:52.70 ID:IaRUZ8030


かなた「それにしても黒井さんとつかさちゃんがねぇ」

かなた「ふーん」ニヤニヤ


ーーーー「体、大丈夫そうでよかったです」

つかさ「じゃあまた」

黒井「うん。おおきに」

黒井 (あの子はいずれ怪物に化ける)

インターハイ予選まで……

黒井 (ウチがそうしてみせる)

あと7日。

黒井「うんっ」

98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 11:13:36.41 ID:s28Nrja1O
つづきはよぉ!
99 : ◆yCfk8BuRZKUq [sage]:2017/07/02(日) 09:58:39.11 ID:LBRHb/Vb0


ーーーー【7日後】
【インターハイ予選会場】

あきら「はぁ……」

白石「どうしました?あきら様」

あきら「んー……」

白石「ホームシックですか?なんだかんだラッキーチャンネルの方が落ち着くとか」

あきら「ハッ」



ザワザワ

「あー。テス、テス、テス」

「あれ幸星じゃない?」

「あっほんとだ」

「黒いユニフォームだから目立つね」

「あれ?どこいったんや?柊のやつ」

100 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/07/02(日) 10:00:06.95 ID:LBRHb/Vb0


こなた「組み合せ、どうだったー?」

つかさ「最悪だよ〜。3回戦で小神あきらさんと当たるの」

こなた「あらら。それは御愁傷さま」

つかさ「こなちゃんは?」

こなた「んー。準々の相手がちょーっとうるさいんだけど、それ過ぎちゃえばベスト4残って全国出場かな」

つかさ「じゅんじゅん?」

こなた「あ」

こなた「来なすったよー。準々の相手がぁ」

つかさ「?」

101 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/07/02(日) 10:01:37.10 ID:LBRHb/Vb0


ザッ! ザッ!
その相手はズカズカと近寄ってくる。

つかさ「あっ」

ゴツン!!!
そしてこなたの頭に頭突きをした。

かがみ「おーおー。こなたじゃないの。小さくて眼中に入らなかったわ」

こなた「えー?じゃあかがみん眼鏡かけたら?似合わないと思うけどぉ」

つかさ「お姉ちゃん…」

かがみ「どうせポンコツ校で天狗になってるんでしょ?」

こなた「ブランド校で3年間球拾いするよりましじゃん」

かがみ「いーや。先鋒任されてるのよ?私」

こなた「ぬぁにぃ??」

つかさ「そうだったの?」

102 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/07/04(火) 00:34:54.35 ID:QOgG8k0Y0


顧問「おーい柊。ミーティングやるからバスに戻れー」

かがみ「あっはーい!」

かがみ「じゃあ私はこれで」

つかさ「バイバーイ」

こなた「無意味なミーティングにならないようにね〜」

かがみ「忠告感謝するわー」

103 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/07/04(火) 00:35:56.42 ID:QOgG8k0Y0


顧問「今のは知り合いか?」

かがみ「はい。友人と妹です」

顧問「強いのか?」

かがみ「1つ質問いいですか?」

顧問「ん?なんだ?」

かがみ「みゆきの姿が見えないんですけど、一体どこに?」

顧問「気にするな。奴ならトイレだ」

かがみ「トイレ?」

顧問「試合が近づくと必ず籠る」

104 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/07/04(火) 00:36:55.48 ID:QOgG8k0Y0


かがみ「みゆきは……便秘気味なんですか……?」

顧問「はは…、違うよ柊。それは違う」

顧問「お前もいつか、あの子の辛さが分かる」

かがみ「……」




つかさ「じゃあこなちゃん。試合頑張ってね」

こなた「つかさもね。健闘を祈る!」

105 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/07/04(火) 00:37:44.68 ID:QOgG8k0Y0


あきら「チッ」

あきら「お遊戯みたいなテニスやりやがって……」

あきら「こんな連中と打つくらいなら人間に生まれてこなけりゃよかったわね」

白石「そろそろ着替えてください。あきら様。出番ですよ」

あきら「白石が出たらぁ?優勝できんじゃない?」

白石「あのぉ……」

白石「お願いですから真面目にやってくださいよ」

あきら「ハイハイ」

106 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/07/04(火) 00:38:39.82 ID:QOgG8k0Y0


あきら「ん?」

あきらの目にある少女が映った。
そして彼女はすれ違い様に言う。

つかさ「こんにちわ」

あきら「……」

あきら「白石……」

白石「ええ。例の選手ですね。調べておきます。どこの生徒なのか、何回戦で当たるのか」

あきら「ははっ。不思議ね」

あきら「なんか救われた感じよ」

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 23:48:13.10 ID:QeZ25FaIo
おつおつ
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 02:51:44.23 ID:e1u0ILLno
まだか
109 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/02(水) 18:25:19.24 ID:RbINoEAB0

ーーーー【観客席】

つかさ「……」

「ねぇ。あれ小神あきらじゃない?」

「傭兵とうじょー」

みゆき「お隣、失礼してもよろしいですか?」

つかさ「幸星の人たちならミーティングにいきましたよ」

みゆき「あなたと話したいんです、つかささん。迷惑ですか?」


審判「レディ!」

あきら「……」


つかさ「そんなことないですけど……」

みゆき「ふふ。ありがとうございます」


あきら「ふっ!」

パコンッ!!

110 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/02(水) 18:26:46.48 ID:RbINoEAB0

あきら「とっ!!」

パコンッ!!

審判「0−15!」

審判「0−30!」

審判「0−45!」

審判「ゲームカウント0−1!小神!!」


「うわっ……城北の村田が1点も取れないよ」

「ラブゲームで決まっちゃうんじゃない……?」


みゆき「これだけ実力差があると、かえって小神さんの力が見極めづらいですね」

つかさ「やりすぎですよ……。あれは」

111 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/02(水) 18:27:37.79 ID:RbINoEAB0

つかさ「こんな大勢の前で、あんな負けかたしたら立ち直れない」

みゆき「優しいんですね。つかささんは」

つかさ「そういうわけじゃ……」

みゆき「なら余裕ですか?」


あきら「はっ!!」

パコンッ!!!


みゆき「小神さんは誰よりもテニスの怖さを知っているでしょう」

みゆき「ジュニアチームでの些細なミスから、弱小校の助っ人に降格されてしまった」

みゆき「ましてや。活躍が出来なければ物語にすら出してもらえない」

みゆき「私たちの想像を絶する深い挫折です」

112 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/02(水) 18:28:27.40 ID:RbINoEAB0

みゆき「もしも高校テニスを制することができれば、ジュニアチーム復帰の見通しも立つでしょう」

みゆき「でも負けたら……」

みゆき「ジュニアチーム復帰どころか、今後の二次創作に登場することも困難になります」

みゆき「私はですね、つかささん」

みゆき「あなたのプレイが嫌いです」

つかさ「……」


あきら「らぁ!」

パコンッ!!!
113 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/02(水) 18:32:30.77 ID:RbINoEAB0

みゆき「確かに技術は素晴らしい。評価もします」

みゆき「しかし相手の心情を考慮して打つあなたの球は、実に醜い。驕りが過ぎます」

みゆき「あなたにはラケットを握る資格などありません。私は嫌悪します」

つかさ「そうハッキリ言われると……さすがにヤな気持ちになりますね」

かがみ「みゆき」

かがみ「こんなところにいたの?早くしないと……」

みゆき「はい。今行きます」


審判「ゲームセット!!」

あきら「ふぅ」


「なんか帰りたくなるわ……」

「村田…10分もたなかったんじゃない?」

114 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 14:14:45.02 ID:xYtxQju00

ーーーー

黒井「頼むで、柊!手を抜いて打つのだけはやめろ。あんたの悪い癖や」

つかさ「大丈夫ですよ。先生」

つかさ「絶対勝ちますから」

黒井「……?」

黒井「何かあったんか?」

つかさ「勝ちたいだけですよー」

黒井「そーか。ええで!それ」

115 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 14:15:44.50 ID:xYtxQju00

かがみ「珍しいわね。みゆきがあんなにハッキリ言うのは」

みゆき「つかささんはかがみさんの妹でしたね」

かがみ「あいつにはいい薬よ。昔からああやって……」

みゆき「なんとかつかささんを幸星に呼べませんかね」

かがみ「え?」

みゆき「来年。私一枚じゃ危ないですし」

かがみ「……」
116 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 14:16:39.62 ID:xYtxQju00

みゆき「あっ」

あきら「ん?」

みゆき「こんにちわ」

あきら「……」
あきらはみゆきを素通りする。


白石「あきら様!今のが幸星の高良さんですよ!」

あきら「それが何よ。嫌いなの、あーいうタイプ」


かがみ「無視されちゃったわね」

みゆき「残念です」


つかさ「5分で片付ける!」

黒井「めっちゃええでぇ!!」

117 : ◆yCfk8BuRZKUq [sage]:2017/08/03(木) 17:47:37.53 ID:xYtxQju00

つかさ「んっ!!」

パコンッ!!!!

「なっ……!?」



白石「見えましたね。このゲーム」

あきら「……」



かがみ「リターンでノータッチって……」

みゆき「テニスじゃありませんね」



黒井「……」



審判「ゲームセット!」

118 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 17:49:05.49 ID:xYtxQju00

先輩部員「柊のやつあんなすごい速効隠し持ってたとはね……」

部長「10分かからなかったわね。今の試合」

先輩部員「黒井先生が追い回すのも分かるわ。格が違う、ホント」

こなた「……」



黒井「雑な速効や。相手間違っとたら、ふっ飛ばされるトコやで」

つかさ「気晴らしです」

黒井「別の方法を考えてくれへん?」

つかさ「気晴らしのテニス。気晴らしの速効です」

つかさは観客席を見上げる。


みゆき「!」


つかさ「テニスに人生を懸けるなんてあり得ません」

黒井「?」


つかさ「気味が悪い」


みゆき「ふふ」

119 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 17:50:01.83 ID:xYtxQju00

白石「柊つかさ。1年生ですね」

あきら「私はいつ、そいつと打てんの?」

白石「順当に行けば3回戦で当たりますよ」

あきら「次の次……ね」


ーーーー「ふん♪…ふふん♪」

こなた「鼻歌とはヨユーじゃん」

こなた「あんな速攻を使ったのもそのせいかね?」

つかさ「そうだよ。気に障ったかな?」

こなた「そりゃ速攻……というかああいう試合展開は私のオハコだしさぁ」

つかさ「だったら名前書いときなよ。見えやすいところに」

こなた「……」

つかさ「お姉ちゃんには気を付けた方がいいかも。たぶん昔とは違うから」

こなた「楽勝楽勝。任せてよー」

つかさ「……本気で言ってるの?」

こなた「ふぅ」

120 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 17:52:08.38 ID:xYtxQju00

こなた「カラむねぇ。やけに」

こなた「なにかあった?」

つかさ「こなちゃんはさ。ヒーローって信じる?」

こなた「……」

つかさ「ピンチのときには必ず現れて、助けに来てくれる」

こなた「いたらいいねぇ」

つかさ「信じない?」

こなた「マンガやアニメの話じゃん?」

つかさ「私は信じてたよ」

つかさ「もうずっとヒーローが来るのを待ってる」

ーーかんぜんむてきのテニスプレーヤーとはわたしのことだいっ。

ーー私の名前は……

こなた「とにかく戦型は変えないほうがいいよ。癖がつく」

ーー私の名前はぁ……!

つかさ「……うん」

121 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 17:52:55.48 ID:xYtxQju00
ーーーー。

かがみ「そろそろ小神とつかさが打つわよ。みゆき」

みゆき「はい」

かがみ「1つ聞いてもいい?」

みゆき「はい」

かがみ「つかさのこと気にしてるみたいだけど」

みゆき「はい」

かがみ「なんで?」

みゆき「その辺り少々複雑でして……。嫉妬もありますし、称賛もあります」

みゆき「なにしろ才能とは求める人のみに与えられる物ではないですからね」

かがみ「?」

122 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 17:54:47.83 ID:xYtxQju00

ーーーーテニスコート。

あきらとつかさの試合が始まった。

あきら「……」サッ

ボールが空中に浮かぶ。

あきら「っ!!」バコンッ!!!

キッ! 

つかさ「!」ガッ!!

キュ!

あきら「ふっ!」

ボコォッ!!!!

つかさ「くっ」

ポ ポポン

「15−0!!」

つかさ「ふぅ」

あきら「んー」

つかさ「……」

あきら (結局この程度、か)

123 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 17:56:36.34 ID:xYtxQju00

あんたには才能がある。

それな認める。

あきら「……」サッ

つかさ「……」

けど、それを育てる力がない。

あきら「だっ」バコンッ!!!

ガッ!! ボッ!!! カコッ!

つかさ「……」

「30−0!!」

好敵手も指導者も緊張もないっ!

その温室のような環境で、あんたの才能は錆びる!!

私は違う!

私には目指す場所がある!!

私の野望よっ!!

カッ! パスッ

「ファーストゲーム、小神!!」

124 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 17:58:11.28 ID:xYtxQju00

「ふん♪ふふん♪」

セカンドゲーム。

「ふん♪」

バコンッ!!!

キュ!!

つかさ「ふっ」

バコッ!!!  パスッ

あきら「よしっ!」

「0−30!」

つかさ「んんー♪ふふん♪」

あきら「……」

つかさ「ふん♪ふふん♪」サッ

つかさ「んっ!」バコンッ!!!

あきら「くっ」コンッ!

つかさ「んっ」ボンッ!!

あきら「なっ!」

「15−30!!」

あきら「……」

つかさ「んんー♪」


黒井「ええやん」


かがみ「小神は待ちをはずされるようになったわね」

みゆき「はい」

125 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 17:59:31.26 ID:xYtxQju00

白石「読まれてますよ!あきら様!変化をもっとつけてください!」


あきら「大声出すなよ。みっともないでしょ」

つかさ「ふん♪ふふん♪」サッ

つかさ「んんー♪」


みゆき「うん」


つかさ「とっ」バコンッ!!!!

あきら「くっ!」ボンッ!!


カッ!! ゴッ!! バシッ!! ゴッ!! バコンッ!!

キュ!!

ボコッ!! ガッ!!

ふん♪

バコンッ!!!

ふふん♪

ガッ!!

んんー♪

ドゴッ!!

ふん♪ふふん♪んんー♪んーんん♪

♪ ♪



♪♪

♪  ♪♪



ーーそういうプレイを続けると癖になるわよ。

ーー自分はそうやってすぐカラに閉じこもるな。

ーー 私は嫌悪します。


つかさ「……!」バコーンッ!!!!!

126 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/03(木) 18:00:59.74 ID:xYtxQju00

あきら「ぐっ」カコンッ!

ポポン…

あきら「はぁはぁ……」

「セカンドゲーム、柊!」

あきら「くそ!!」

つかさ「ふん♪ふふん♪」


みゆき「才能ですか……」


黒井「素晴らしいっ」


こなた「……」

127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/04(金) 02:52:48.64 ID:Mx4QU0+To
めっちゃワクワクする
128 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/09(水) 02:23:10.83 ID:5Red91zI0

「なんだか騒がしいね……。なになに?」

「負けそうだってよ。例のジュニアチームの子」


サードゲーム。


「相手は誰なの?高良?」

「いや、何でも陵桜の……」


♪ー ♪♪  ー♪  ♪


「1年だなありゃ」

「え、まじ?」


♪ ♪♪♪  ♪ ♪


「また凄いのがでてきたわね」

「これ予選の試合なの?」


ポンッ


つかさ「はっ!」

ドッ!!

あきら「うっ!」 カッ

「30−0!」

つかさ「んー♪んんー♪」

129 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/09(水) 02:23:56.73 ID:5Red91zI0

あきら「はぁはぁ……。動きが……」

あきら「あいつには私の動きが読めるっての…?」


みゆき「心の動揺がプレーを乱すのですよ。小神さん」


白石「あきら様……!」


こなた「ウソ……。勝つの……?」

130 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/09(水) 02:25:08.03 ID:5Red91zI0

ーーーバスッ

ネットにボールがかかる。

あきら「くそっ!」

「40−0!」


先輩部員「ずいぶんカッコいいことになってますね。柊のやつ」

部長「そうね……」


あきら「はぁ……」

つかさ「んー♪」ポンポンポンッ

白石「終わりだぞ!!!あきら様っ!!!」


つかさ「…!」

あきら「……」

白石「この試合に負けたら終わりなんだよ!!少しは自覚しろよ!!いつまで気取ったプレーするんじゃない!!!」

白石「返事!!」

あきら「分かってるわよ」


つかさ「……」


黒井「……」


つかさ「………………」

131 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/09(水) 02:27:13.58 ID:5Red91zI0

「ハァっ」 「ハァっ」

  「ハァっ」  「ハァっ」

 小神あきらの眼光が煌めく。
殺意にも似た雰囲気だ。

つかさ「ふっ」

バンッ!

あきら「……ぐっ!」

ガッ!!

つかさ「んっ」

コッ!


黒井「っ!!」 


あきら「……!!!」 バコッン!!!!

つかさ「うっ!」

「40−15!」

あきら「しゃあっ!!」


かがみ「あれじゃまるで、上から叩いてくれって頼んでるようなものじゃない…」

みゆき「んん……」

132 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/08/09(水) 02:30:17.10 ID:5Red91zI0


「どうなったー?例の試合」

「なんか結局、小神が勝つみたいよ」

ガッ!!

「防戦一方になりましね、1年の子……」

「ですね」

キュッ!!

「恐るべし、ジュニアチームのエリート」

「体力差でしょ。ようするに」

バコン!!!!

「ゲームセット!!小神あきら!!」

 そこには顔を俯かせ、拳を掲げる小神あきらの姿があった。


小神あきら 4回戦 進出


柊つかさ 3回戦 敗退

133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 06:28:55.76 ID:VfaceW8ao
まつぞ
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/02(土) 23:54:10.75 ID:Ynky+2Qyo
まだかー
135 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/18(月) 12:05:26.40 ID:GHHA1hhf0

ーーーパンッ!!

 黒井がつかさの頬を叩く。

先輩部員「なっ!」

部長「!!」

黒井「あのテの試合はな、関わる人間すべてが苦しむことになるんや!2度とするな!!」

つかさ「……」

先輩部員「柊を責めるのは酷ですよー。センセー」

部長「そうですよ。あの小神から1ゲーム取ったんだ」

黒井「たいして勝つ気もない奴が冷やかしで打つんやない!やめるか!?テニス!」

つかさ「……そうします」

黒井「そうしろ」

タッ

先輩部員「あっ。ちょ、柊ー!」

部長「待ちなさいよー」

黒井「放っとけ!!」

136 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/18(月) 12:06:22.28 ID:GHHA1hhf0

黒井「ったく!」

「思い出しますか?」

黒井「!」

かなた「高校時代の自分とかぶりますか」

黒井「おう。かなた…来とったんかい」

かなた「まぁ一応、娘やそのお友だちも出ていますので」

黒井「そうか……」

かなた「きっとビンタ張って言いなりになるほどやわな子じゃありませんよ。つかさちゃんは」

黒井「……せやな」

137 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/18(月) 12:07:52.15 ID:GHHA1hhf0

ーーーー控え室。

白石「次の高良さんとの試合が、事実上の決勝と考えて問題ないでしょう」

あきら「……」

白石「勝てばインターハイですよ」

白石「今までの雑なサービスで崩れるような相手ではありません。くれぐれも慎重に」

あきら「……流れは完全にあいつ…、柊にあった」

白石「またその話ですか…」

あきら「たぶんあいつはわざと……」

白石「もうやめましょう。あきら様。それは違います」

白石「それはありませんよ」

あきら「……」

138 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/18(月) 12:08:58.36 ID:GHHA1hhf0

「第6コート。準々決勝。 陵桜高校、泉こなた選手。幸星学園、柊かがみ選手。」

こなた「かがみんと打つのはひさしぶりだね。何年ぶりかな?」

かがみ「2年と3ヶ月よ。私の24勝92敗」

こなた「あいかわらず細かいなー」

かがみ「あんたには分からないでしょうよ」

こなた「んー?」

かがみ「私がどれだけこの日を待ったか……」

かがみ「あんたと高校で打てる時を待ち望んだか」

こなた「けなげなはなしですなぁ」

かがみ「そうよ」

139 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/18(月) 12:09:50.75 ID:GHHA1hhf0

かなた「こういう所に来ると思い出しますね」

かなた「それこそ死にもの狂いで戦いました」

黒井「かなたは可憐だったなぁ」

黒井「それでいて恐ろしく強かったわ」

かなた「勝つことが全ての時代でしたしね……。負けた選手は人格まで否定される」

黒井「……」

かなた「勝てば官軍。負ければ賊軍。そういう精神が生み出した挫折をたくさん見てきました」

140 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/18(月) 12:10:59.19 ID:GHHA1hhf0

こなた「たぁ!!」

バコッ!!!

「40−15!!」

こなた「どうしたのかな?かがみん?もっと激しく打ち合おうよー。昔みたいに、さ」

かがみ「ふっ…」


つかさ「……‥……」

つかさは二人の試合を見つめていた。

141 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/18(月) 12:11:50.28 ID:GHHA1hhf0

かなた「つかさちゃんを鍛えたところであなたの青春は戻ってきませんよ。バタフライセブン」

黒井「ウチはただ、柊を連れていってあげたいだけやで。次の段階へとな」

黒井「あいつだって自覚しとる」

黒井「自分のプレーが今の場所では窮屈になっとる事くらい……あの子も分かっとる」

黒井「ウチがそっと押せば、柊はうんと高く飛ぶ」

142 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/18(月) 12:13:44.03 ID:GHHA1hhf0

こなた「なっ!」

「アウト!」


つかさ「……」


こなた「はぁ、はぁっ……。」

こなた「くそう……。ツイストとかロブばっかりのセッコいテニスしちゃって…」

かがみ「……ふん」



黒井「あの才能に反応せな、指導者としてインポテンツに等しいわ」

かなた「お盛んなんですからっ」

かなた「まぁ確かに、頑張るのもいいかもしれませんね」


かがみ「それもテニスよ」


つかさ「……」


こなた「とっ!」バコッ!!

かがみ「ふっ」バッン!!


つかさ「へたっぴ……」

143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 11:53:09.40 ID:Li3CaJATO
くっそ面白いぞ
144 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/28(木) 10:53:05.44 ID:en0mEFvXO

いつだって、あんたが一番だった。

やる事なす事あか抜けしてて、いつもみんなの中心だった。

あんたはヒーローだった……。

私が半年かけて覚える技術も、あんたは一週間でモノにする。

あんたが右を向けば、みんな右を向く。あんたが笑えば、みんなが笑った。

おちゃらけてもバカやっても、決める所は確実に決める。

年上の相手だって簡単にぶっ飛ばす。

そんなあんたを私がどういう気持ちでみていたか……

私が何を感じていたか……


私が……


かがみ「ふっ!!」ガッ!!!

こなた「くっ!」

かがみ「しゃっ!!」

「40−15!」

145 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/28(木) 10:54:14.55 ID:en0mEFvXO

かがみ (怠慢と妥協にまみれたテニスを続けたあんたに何ができる、ヒーロー)

ポンッ

こなた「ハァっ……。ハァっ」

かがみ (何ができるのよ?)

かがみ「ふんっ!!」バコッ!!!

こなた「りゃ!!」ガッ!!

ボッ 「ネット!」

こなた「あ"ぁっ!!」

かがみ「ふふっ……」

こなた「かがみん"……!」


つかさ「はーーー………………」

先輩部員「いよいよラスボス登場ですね」

つかさ「……?」

部長「81連勝中らしいわよ。化け物よホントに」

つかさ「……」

部長「幸星って4回戦以下で負けたら即退部らしいわ」

先輩部員「ひえー!マジですか。テニスに命懸けちゃってるんですね……連中」

146 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/28(木) 10:56:39.16 ID:en0mEFvXO

「第8コート。準々決勝。真白高校、小神あきら選手。幸星学園、高良みゆき選手」


「高良ー!頑張って〜!」

「吹っ飛ばせー!」

「勝てー!高良ー!」


あきら「なるほどね。高校テニス界の英雄ってわけ」

白石「あのむn……、体格です。敏捷性には欠けるでしょう。先行逃げ切りでいきましょう」

あきら「簡単に言うわねぇ」

白石「とにかく自信を持って戦ってください。実力ならあきら様が上です」

あきら「ま、そういう事にしといてやるか」

みゆき「……」


「高良ー!!」

「高良さーん!!」


あきら「にぎやかな事ね」

147 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/28(木) 10:57:55.08 ID:en0mEFvXO

「レディー」

あきら「……」タッ!

みゆき「……」サッ!


「……」
「……」
「……」


つかさ「……」


 あきらはボールを宙に放った。

148 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/28(木) 10:59:06.32 ID:en0mEFvXO

あきら「……っ!」

ガゴンッ!!!!


白石「おおっ!!」


みゆき「シッ!」

ガッ!!!!

あきら「はっ!」

ゴンッ!!!


白石「うまいっ!!」
白石 (逆クロスギリギリっ!真反対!!あれは追いつけたとしても返せない!!)

タッタッタッタッタッ!!!!

あきら「!?」

みゆき「…………」


白石「はっ…はや」


みゆき「っ!!」

パコンッ!!!!!

あきら「だらあっ!」

カコッ!

みゆき「……ッ!!」

ドゴッ!!!!!

あきら「わうっ!!?」

コッ!!

「アウト!」


白石「し、信じられない……。何ていう反射速度、スピード、パワーだ……。高校に……こんな選手が……!?」


あきら「……強い………!!」

149 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/28(木) 11:01:06.01 ID:en0mEFvXO

「ゲームセット!!」

「勝者、海王学園」

「柊かがみ!!」

こなた「ハアッ、ハアッ、はぁ…」

かがみ「ひとついい事を教えて上げるわ、こなた」

かがみ「絶対に負けない方法よ」

こなた「はぁっ、ハアッ、はぁ…」

かがみは息を切らし膝をつくこなたの頭に手を置いた。

かがみ「勝つ事よ」

こなた「……んぐ」

かがみはコートを立ち去る。

かがみ「もしくは戦わない事。惰性で打つなら足洗いなさいよ。うろちょろされると目障りなのよね」

こなた「くそっ!!」


ドンッ!!

150 : ◆yCfk8BuRZKUq [saga]:2017/09/28(木) 11:03:20.98 ID:en0mEFvXO

あきら「ぐっ!」カッコン

「マッチポイント!高良!!」


白石「……」


あきら「はぁ、はぁっ……」

あきら「……」チラッ


白石「……」ニコ


あきら「……ふふっ」


あきら「らぁ!!」

バコッン!!!!
バコッ!!!
ガッ!!!!
バコッン!!!!
バンッ!!!!
カッ!!!



この日

小神あきらは高良みゆきに敗れ

インターハイ個人戦出場の権利を失う


高良みゆきは続く準決勝、決勝をストレートで勝ち上がり県予選優勝を果たす。

インターハイへ進む4名全てを、柊かがみ含む、幸星の選手で占めた。

幸星に対抗馬は存在しなかった。

あの小神あきらをもってしても……。

151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/01(日) 01:54:07.75 ID:DkQQmWryO
熱い
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/18(水) 02:11:09.43 ID:hAs48GXsO
まつ
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 00:04:39.73 ID:jfeDqnh9O
はよ
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/03(火) 21:40:28.99 ID:KMMAmIYIo
まだか
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/20(火) 06:16:34.12 ID:qQjummOwo
はよう!
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