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望月杏奈「秘密の口づけ」
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15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:09:13.33 ID:4W2TcWMi0
「こんにちわー。……って、杏奈、百合子ちゃんに何してるの?」
明るい声。振り返らなくても誰が訪れたのかはすぐに分かった。
プロデューサーさんじゃなかったんだね、意外だね…………。
ともかく、入室したのは未来だった。
「別に……百合子さんの前髪に、ゴミが付いてたから…………」
「そっかー。てっきりちゅーしてるのかな、なんて思ったよ」
ちゅー。
つまり、キス。
未来のことだからこれで誤魔化せると思ってたけど、無理があったかも…………。
「ありえないよ……」
「そうかなー」
なんて言ってはいるけど、未来が本気でそれを疑っているわけじゃなさそうだった。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:09:48.62 ID:4W2TcWMi0
当たり前だよね……。だって、キスは女の子同士ですることじゃないもん…………疑う方が変、だよ……。
杏奈がしていることはいけないこと。
でも、杏奈はこうでもしないと……きっと…………。
………………。
「……うっ、うーん。あれっ、未来。来てたんだ」
「うん。ちょうど今、来たところー」
なんてことを考えていると、ちょうど百合子さんが正気に戻ったようだった。
やっぱり、キスをされると苦しいのかも……まあ、急に呼吸の邪魔をされるわけだもんね…………。
うん……。
「百合子さん……おはよう。長い妄想だったね……」
「あはは。最近本当に長いよね、私の妄想」
今日も一時間くらいは妄想をしていて、側から見ると百合子さんは危ない人だった。
でも百合子さんが楽しそうならそれで良い…………うん、きっと良いはず……。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:10:18.61 ID:4W2TcWMi0
『杏奈ね……? もっと、構って欲しいってな、って…………』
だから、そんな言葉を口にしないで心の奥底に沈めておく。百合子さんはきっと重く感じるだろうから。
百合子さんの一番の友達で、……親友で。
それ以上でもそれ以下でもない、それが百合子さんにとっての杏奈だから。
仕方ない、から……。
「杏奈ちゃんの隣だと、私安心しちゃうの」
百合子さんは不意にそんなことを言った。
「杏奈ちゃんは私が妄想ばかりしても、愛想を無くしたりしないで一緒に居てくれる気がしちゃって。……つい、ね?」
…………きっと、百合子さんはその言葉を深い意味で言ってるわけじゃない。
でも、杏奈はそれでも嬉しくなって、笑みを隠せなくなってしまう。
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:10:44.76 ID:4W2TcWMi0
「あっ、杏奈照れてるー?」
「み、未来。うるさいっ……」
多分今の杏奈の顔は赤くなってて…………やっぱり、照れてるんだと思う……。
「あれ。もしかして今の私、結構恥ずかしいこと言った!?」
「いつものことでしょ」
「う、うん…………」
ひどいっ、と百合子さんが嘆く。いつも、そして特に最近は常に恥ずかしいことが口から漏れてるのに未だに恥ずかしがるのは少し不思議。
そんな百合子さんに、さっきの言葉への答えを返す。
「百合子さん……」
「あ、杏奈ちゃん」
動揺して変に思われないように声を出す。震えたり、恥ずかしがったり、頬を染めたりしないように。
自然に、百合子さんの親友として、言葉を放つ。
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:11:12.11 ID:4W2TcWMi0
「杏奈はね……? 百合子さんから離れたりしないよ……」
続ける。
「だから、百合子さんも杏奈から……離れないでね…………?」
自然だったかな……。少しでも油断したら、杏奈のこの気持ちが百合子さんに届いてしまいそうで、怖い。
そして、この気持ちを受け止めてくれはしない百合子さんの、その反応を想像するだけでも怖い。
だけど、それは杞憂のようだった。
「もちろんだよっ。杏奈ちゃん! ずっと一緒だよ!」
いつもと同じような笑顔で百合子さんはそう言う。
そう、杏奈の……この、胸の中をぐるぐるしてる汚い感情なんて無縁な、そんな笑顔。
そう笑う百合子さんに、杏奈は抱きついた。
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:11:44.00 ID:4W2TcWMi0
「わ、わっ。杏奈ちゃん」
「未来の、マネ…………」
ギュッ、と腕を回して抱きつく。
突然抱きついた杏奈を百合子さんは戸惑いつつ、けれどもしっかり受け止めてくれる。
だからついつい甘えたくなるけど、きっと全部がこう上手くいくわけじゃない。
だから……杏奈の、この感情を知られたら……きっと拒絶されちゃう…………。
百合子さんの瞳には……きっと、杏奈じゃない人が映ってるもん…………。
百合子さんはずっと一緒にいてくれて……離れていったりはしないだろうけど…………。
でも、近づいてくれは、しないんだよね……?
杏奈の元に来てくれることは……絶対に、ない…………。
なら……杏奈はそれで良い。
だから、その代わりに……あの時間だけは、杏奈が貰うから…………。
杏奈が唯一、百合子さんを自分だけのものに出来る、あの時間を…………。
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:12:14.01 ID:4W2TcWMi0
それからも百合子さんの妄想癖は治らなかった…………都合が良い、ね……。
妄想する百合子さんの近くに身を寄せて、誰かが来たら百合子さんの唇を奪った。
回数を重ねても、キスの気持ちよさは杏奈には分からなかった。人の肌に触れている、それ以上の感触は無い気がした。
その分、百合子さんの大切なものを何度も何度も独り占めして、汚している。そんな事実が杏奈を苦しめて……その何倍も、杏奈は満足していた。
でも、問題もあった。
全員が全員、未来みたいに誤魔化せるわけじゃなかった。亜利沙以外にも何人かには杏奈と百合子さんがキスしていたことを知られてしまっている。
だけど、秘密にして欲しいって頼めば、皆広めないでくれた。
それは皆の優しさもあるだろうけど、どちらかと言えば……、
「女の子同士で恋愛なんて……スキャンダル、だもんね…………」
そんなことが外に漏れれば、きっとアイドル活動にも影響する。
だからこそ、見なかったことにしてくれたんだと思う。
本当は恋愛なんかじゃなくて…………百合子さんが、同僚に汚されてるだけなのに、ね……。
可哀想な百合子さん……。
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:13:00.79 ID:4W2TcWMi0
でも、そんな日々が続くはずはなかった。
けれども、その終わり方は杏奈にとっては幸運な形をして表れた。
具体的に言えば、百合子さんは、妄想してトリップすることがなくなった。
だから、杏奈が百合子さんにキスをすることも無くなった。
…………杏奈が、百合子さんを自分だけのものに出来る機会も、無くなってしまった。
百合子さんが何も知らない間に、全部終わってしまったのだった。
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:13:26.71 ID:4W2TcWMi0
カチカチとゲーム機のボタンをリズミカルに叩く。すると、液晶に映るキャラクターはそれに応じて滑らかに動き、連続した攻撃を放つ。
放たれたその猛攻。隣から、うわっ、うへぇ、なんて声が漏れつつ……結局反撃はなく、ゲームセットを迎えた。
パーフェクトゲーム! という表示が画面に浮き出る。
「流石、杏奈ちゃん。全然敵わないや」
「ん……これ、最近やりこんでるから…………」
でも悔しいー、なんて隣の――百合子さんはそう嘆く。杏奈はそんな光景を見ながら、百合子さんとこうして過ごすのも久しぶりだと感じていた。
レッスン終わりの夕方、そして気だるい体。でも、こうやって、一緒のソファに座ってゲームをすると……疲れも吹き飛んじゃうかも…………。
最近は全然、こういうことしてなかったからね……。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:13:54.99 ID:4W2TcWMi0
百合子さんの酷い妄想癖は、急に始まって……そして、急に終わった。
全ては元に戻った……杏奈の、この心以外は、ね…………。
あとプロデューサーさんも最近忙しさの山場を越えたのか、事務所でもよく見かけるようになった。
百合子さんのあの、酷い顔を伴う妄想癖も杏奈のあの歪んだキスも全ては無かったことになってしまったようだ。
もしかしたら、全部杏奈の夢だったのかも…………。
なんて、ね……。
「これで良いんだよね……、うん……」
「杏奈ちゃん?」
なんでもない、と返す。そっかー、と百合子さん。
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:14:22.20 ID:4W2TcWMi0
つい、視線が百合子さんの唇に吸い寄せられる。瑞々しくて、少し前までは杏奈のものだった、それへ。
と、そう見つめていた時間は、杏奈が思っていたよりも長かったらしかった。
「……? 杏奈ちゃん、私の顔に何かついてる?」
「な、なんでもないよっ……」
慌てて視線を逸らす。不審そうな目を、百合子さんはしているかもしれない。
こういうのも、もうやめないとね…………。未練、なのかもだけど……。
杏奈のボーナスステージはもう終わっちゃった……。それを、自覚しないと…………。
そう、だけど。
この気持ちを抱いたまま過ごさなきゃいけないなんて、そんなの……辛過ぎる。
ずっとこのままなんて……。
何もかも隠さないといけないなんて、そんなのは――、
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:15:02.72 ID:4W2TcWMi0
「杏奈ちゃん? ボーッとしちゃって、大丈夫?」
「あっ、う、うん」
と、声をかけられて杏奈は黒い思考の沼から引き上げられる。
いけない、いけない……心配させちゃったね……。
「昨日もこのゲームやってたから……少し、眠いかも…………」
そんなことを言いつつ、百合子さんの肩に寄りかかる。ソファと、百合子さんに体が沈んでいきそう。
眠い、そう声に出すと本当に眠気が押し寄せてきて、心地いい。
そう言えば…………あの日も、こんな風に、百合子さんに甘えてたね……。
初めてキスをした、あの日…………。
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:15:36.36 ID:4W2TcWMi0
「ねえ、百合子さん…………」
「どうしたの?」
眠くて、どこか思考の歯止めが効いてないようだ。と、他人事のように感じながら口を開く。
これは未練で、それを断ち切るためだから…………。
「もう、妄想してボーッとすること…………ないの……?」
何を聞いているんだろう。そう、頭のマトモな部分が杏奈に言う。
仮に、百合子さんがまたああいう風になれば、自分はキスをするつもりなのか、と。
…………うん。
きっと、しちゃうよ……。
どうせ最後には誰かのものになっちゃうなら、手が届く内に、杏奈は…………。
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:16:04.12 ID:4W2TcWMi0
「…………うん。ないよ」
でも、そんな都合のいい答えは返ってこなかった。
そうだよね……。あんなことまでした杏奈に、これ以上良いことなんてあるわけないよ…………。
そう思うと余計に寂しくなる。だから、百合子さんに身を任せて目を閉じる。
すると、百合子さんは話し始めた。
「実はね。最近は、妄想する暇がないくらい、考えちゃうことがあってね」
「ん……。そうなんだ…………」
妄想大好きな百合子さん。
そんな百合子さんも、考え事で頭をいっぱいにすることがあるなんて、意外かも…………。
そんなに熱中できるなら、きっとプロデューサーさんのことだよね…………。
……妬いちゃうね。
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:16:31.95 ID:4W2TcWMi0
そんな時、部屋の外側から足音が聞こえてきた。
懐かしい……、というほど昔のことじゃないけど…………百合子さんを独り占めできたあの頃を思い出しちゃう……。
ドサドサと、そんな足音。今度こそプロデューサーさんかな…………。
百合子さんの好きな、プロデューサーさん。
それなら、杏奈、お邪魔かも……。帰ろうかな…………。
うん、そうする……。見ているのも、辛いから……。
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:17:32.77 ID:4W2TcWMi0
「百合子さん……。杏奈、そろそろ帰ろうかな…………」
百合子さんの身体から伝わる心地よさも名残惜しいけど、仕方ないと思い切ろう。
窓ガラスからはオレンジ色の光が差し込んでいて、どこか寂しさの混ざったその色は杏奈のことを隠してくれそうだった。
「あっ、でもその前に。杏奈ちゃん」
「ん……? 何、百合子さん」
立ち上がろうとした矢先、百合子さんにそう言われる。
足音は近づいてきていて、少しでも早くここを離れたかったけど、耳を傾けてる。
「ちょっと。こっち向いて欲しいなーって」
「…………? うん……」
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:18:02.16 ID:4W2TcWMi0
なんだろう。
杏奈の髪に……ゴミが付いてたりしてるのかな…………。
聞こえてくる足音は大きくなって、数秒もすればここに入ってくるみたいだ。
振り向いて、百合子さんに向き合う。すると、百合子さんは腕を杏奈の元へ伸ばす。
そして――――、
「んぅ――――――」
柔らかくて、火傷しそうなくらいの熱。
視界が覆われる。何も他に見えなくなって、支配されているようだった。
久しぶりの感触。
だけど似ていても、全然違う。
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:18:28.66 ID:4W2TcWMi0
「――――百合子。それに杏奈、まだ帰ってなかったのか、って……は?」
プロデューサーさんの声がする。見えないけど、きっと驚いてるみたい。
そして、どれくらいの時間を挟んだか、足音が続いた。さっきまでとは違って、ここから離れていくものだ。
離れて、離れて。
そして、杏奈と百合子さんだけが残された。
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:18:59.31 ID:4W2TcWMi0
「――――ぷはっ」
呼吸をすると、新鮮で冷たい空気が体に入ってくるようだった。それなのに、体はどんどんと熱を持っていく。
心臓は落ち着いてくれなくて、目の前の百合子さんにも聞こえそうなくらい騒がしい。
「ゆ、百合子、さん…………」
体が、自分のものじゃないみたいに落ち着かない。熱が体の奥から湧いてきて、杏奈はそれに冒されていく。
きっと、今の杏奈の顔よりは茹で蛸みたいに、真っ赤…………。
夢なんじゃないか、そう思った。
あまりに今が現実離れしていて、杏奈には何も納得することができない。
なんで、なんで…………。
「なんで、杏奈にキス、したの……?」
キス、それを言葉にするだけで杏奈の頭はくらくらする。さっきの数秒間を思い出して、悶えてしまいそうだ。
ちょっと声をかけられて、百合子さんの方を向いて、そしたら、強く体を抱かれて、口づけされた。
…………意味が、分からなかった。
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:19:28.71 ID:4W2TcWMi0
「プロデューサーさんに、見られちゃってたよ……? 追いかけて、説明しないと…………」
百合子さんは、プロデューサーさんのことが好きなんだから…………、と続けようとした言葉は断ち切られた。
「……ずるいよ。杏奈ちゃんは」
「えっ…………?」
百合子さんはそう、呟く。
部屋はオレンジ色に染まっていて、百合子さんの表情もそれに違わず照らされていた。
「何も言わずにキスして……何にもなかったみたいに振舞って……」
「それなのに、時折、辛そうな表情を浮かべたりするんだもん」
驚愕で一瞬だけ、頭が真っ白になって。
そして、杏奈は、自分のしたことが百合子さんにバレていたことを察した。
いつから、なんだろう…………。
でも、それはきっと……重要じゃないよね……。
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:20:04.13 ID:4W2TcWMi0
「…………ごめんなさい」
杏奈は、何かを話そうとして、見つけたのはそんな言葉だけだった。
何が起きてるかイマイチ飲み込めなくて、でも分かったことは百合子さんは杏奈の、アレに気づいていたこと。
もう手遅れなんだろうけれど、でも謝っておきたかった。
「本当は、杏奈なんかが奪っていいものじゃないのに…………」
「百合子さんは、プロデューサーさんのことが…………好きなのに……」
一度話し始めると……止まらなくて、杏奈は罪の告白をする…………。
きっと、これで杏奈と百合子さんの関係は終わるから…………そんな思いが、杏奈の後押しをしていた。
だけど、百合子さんはそんな杏奈の告白を否定も、肯定もしなかった。
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:20:35.21 ID:4W2TcWMi0
「杏奈ちゃん。私、ちょっと前までみたいに、深く妄想することができなくなっちゃったんだ」
百合子さんは代わりに、そんなことを言う。杏奈はそれに耳を傾けることしかできなかった。
百合子さんは言葉を少しずつ吐き出して、杏奈は、いつもより回転の遅い頭を回して、少しずつ言葉を飲み込んでいく。
「だって、頭の中がいっぱいなんだもん」
百合子さんは続ける。
「ずっと、ずっと、杏奈ちゃんのことばっかり考えちゃうんだもん」
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:21:01.83 ID:4W2TcWMi0
音が消え、時間が止まったのかと、そんなことを思ってしまった。時計の針の音すら聞き取れそうな、そんな沈黙。
その時、まだから差し込む夕日が雲に阻まれたのか、部屋を照らす橙色が薄くなった。
そして、気づいた。
「あ…………」
その時、百合子さんの表情を隠してくれていた夕陽が弱まって、そして、杏奈は見つける。
百合子さんもまた、ほおを紅潮させて、恥ずかしさに身を焦がしていたのだ。
「寝ても覚めても、杏奈ちゃんのことが頭から離れなくて…………私、変になっちゃったみたい」
嬉しいと、素直にそう思った。
百合子さんが、杏奈のことだけ考えてくれてる…………それを聞いて杏奈は自分が満たされていくのが、わかった。
杏奈の気持ちが、ただの一方通行じゃないんだと、そう思えたから。
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:21:31.37 ID:4W2TcWMi0
不意に、とんっ、と肩を押されて、杏奈はソファの上に仰向けに押し倒される。そして、百合子さんは逃さないように、杏奈に覆い被さった。
百合子さん……近いよ…………。
でも…………すぐにそんなの気にならなくなっちゃう……。
ドキドキして……今ある目の前のことだけに夢中になって…………。
杏奈の好きな、百合子さんの匂いが降り注いで、今という時間から現実味がなくなっていく。
百合子さんと目が合う。少し潤んでいて、でも、どこか暗い感情を押し込んでいるような瞳。
「杏奈ちゃん……」
頭上から声が降る。
杏奈はそれを、目を逸らさずに受け止めるだけ……。
「責任、とってね」
うん、と返す暇もなかった。
すぐに視界が狭まって、そして、二人の影が一つになる。
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:22:20.84 ID:4W2TcWMi0
「んっ………………」
今までの独りよがりなキスと全然違う。
重ねられた唇から、百合子さんの全てが伝わってくるみたい。熱も興奮も、全部杏奈の中に入ってきてしまう。
杏奈の体の奥底に炎があるみたいで、冷まそうと身をよじろうとするけど、百合子さんが杏奈のそれぞれの手に指を絡めていて、それも出来なかった。
動けない中で、感じるものは百合子さんだけで。
嬉しくて、苦しくて、熱くて、泣いてしまいそうな感情を煮詰めて。
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:22:47.75 ID:4W2TcWMi0
「…………ぷ、はっ」
呼吸が苦しくなって、一度離れる。だけど、そんな少しの間すら勿体無くて。
「もう一回…………」
そう言ったのは、杏奈……? 百合子さん……? 分からないけど、答えはお互いに決まってた。
「うん……」
今度は杏奈から。
百合子さんに手を伸ばして、そして唇を重ねた。
蕩けるような熱がまた、身体に染み込んでいく。
部屋の外からは誰の足音もしない。だから、この時間に終わりはない。
二人だけの世界。興奮と熱。それらに、ただ沈んでいく。
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:23:15.90 ID:4W2TcWMi0
おしり
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:24:49.26 ID:6+7wLp0so
乙
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:27:31.83 ID:X56vr4auO
乙
あんゆり尊い
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 01:50:00.00 ID:pizTlJQBO
乙
あんゆりは正義
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 02:14:04.89 ID:2P22q8mxo
あんゆり…いい……
46 :
◆NdBxVzEDf6
[sage]:2017/06/16(金) 02:48:06.28 ID:sLi3NuJM0
いけない雰囲気が素晴らしいっすな
乙です
>>1
七尾百合子(15)Vi/Pr
http://i.imgur.com/MeJaqUS.jpg
http://i.imgur.com/MaIDoUK.jpg
望月杏奈(14)Vo/An
http://i.imgur.com/471KyIG.jpg
http://i.imgur.com/bEyC9bz.jpg
永吉昴(15)Da/Fa
http://i.imgur.com/Lkm1UeN.jpg
http://i.imgur.com/nAIotcp.jpg
>>8
松田亜利沙(16)Vo/Pr
http://i.imgur.com/N7EyoGm.jpg
http://i.imgur.com/kfIu9dN.jpg
>>15
春日未来(14)Vo/Pr
http://i.imgur.com/ZpFI1nN.jpg
http://i.imgur.com/yiAsprq.jpg
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 11:01:32.57 ID:mBicX/V4O
ブラックコーヒーが欲しくなるくらい甘い話だった
百合子どの辺で気付いたんだろ
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 11:20:43.76 ID:l/A0MgyrO
これは見てるこっちがうへへってなるな…おつ
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 14:15:42.34 ID:quhZt61Bo
乙
あんゆりはいいなぁ…ウヘヘ
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 14:24:13.80 ID:QDfYnNBQO
Pはどうなったのだろう
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/16(金) 20:13:08.01 ID:AzvHsR6hO
Pをpにしてる
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/17(土) 00:39:15.62 ID:ONWe6LNuo
あんゆり甘い…
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/18(日) 19:25:20.89 ID:Pq4iSeoR0
おつおつ
いい・・・
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/02/16(土) 21:09:29.06 ID:ebksyS7L0
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