【モバマス×龍虎の拳外伝】不破・茜「うおおおおおおおおお!!」

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179 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 21:30:52.47 ID:aehGRKYJ0
リョウ「恐らく日野さんにとってはあんたが勝っていようが負けていようが些末事だろう」

リョウ「大事なのはあんたが生きて、自分に会いに来てくれる事……この一点に尽きるんじゃないか」

不破「……」

リョウ「まぁ、どうしても合わす面が無いってんなら、手を貸さんこともないが……」
ゴソゴソ

不破「……む?」
180 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 21:38:27.96 ID:aehGRKYJ0
墓地

影二「……先代、影二、ただいま戻りました」

影二「申し訳ございません……不破は仕留められませんでした……」

影二「……先代が亡くなられて以来、拙者は愛も情も捨て、ただ如月流の最強を証明するために闘ってきた」

影二「しかし……不破が見せたあの強さ……」

影二「……」
181 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 21:44:23.92 ID:aehGRKYJ0
忍「総帥……」
シュザ

影二「お主は……如月流の一門か」

忍「はい……先代が亡くなられたあの日に総帥が里を出て以来、ここに来られるののをお待ちしておりました」

影二「なに?」

忍「先代の遺言です……ご自身が死した後、総帥にこれを渡すようにと」

影二「これは……文と、……古い書状?」
ピラ
182 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 21:53:03.07 ID:aehGRKYJ0
影二へ

思えばお主を次期総帥に推薦してからというもの、お主は気負うあまりに技への、強さへの探求のみに没頭するようになった。

そう教えてきたのは儂だった……捨て子であったお主を拾い、忍として育てると決めたあの日から。

しかし、最強への道を追求するあまり、それ以外のものを顧みなくなっていくお主を見ていて、儂は後悔していた。


影二(……なにを仰います。最強への飽くなき執念……それこそが如月流の命題ではありませぬか)
183 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 21:59:41.66 ID:aehGRKYJ0
影二、お前に話をしなければならなかった事がある。

本当ならば儂が直接お主に話さねばならなかった事だが、このような形になってしまい、申し訳ない。

如月流の開祖、斬鉄についてだ。

我らが使う如月流……その源流は遥か昔に遡るとされるが、これを流派として確立したのが幕末に生きた忍、斬鉄。

その技と最強の称号を求め続ける志……これは初代から連綿と受け継がれ続けている。

記録にも残る通り、斬鉄はその敵対する相手を悉く斬り、その生涯を閉じる寸前まで闘っていたという。


影二(そう……その初代斬鉄の志こそが正に如月流の志そのものではありませぬか)
184 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 22:04:16.19 ID:aehGRKYJ0
だが初代は決して愛や情を持たなかった訳ではない。

影二「なに……?」

初代には一人の娘と、孫がいた。

初代は行方不明になる直前……その技を自身の孫に伝えている。

その孫こそ二代目斬鉄……この孫を初代は溺愛していたようで、そういった書状もこうしていくつか残っている

そして、娘宛てに残されていた手紙も。

影二「……」
ピラッ
185 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 22:09:16.45 ID:aehGRKYJ0
影二「……!」
ハッ

影二「……この娘の、名……!」

忍「……大変ご無礼とは存じながら、我ら如月流一門、総帥が里を出られた後もその動きを追わせて頂いておりました」

忍「当然、総帥がアイドルをプロデュースしていたことも、その名も」

影二「……」
186 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 22:13:35.14 ID:aehGRKYJ0
忍「まぁ単なる偶然ですが、縁があるとは思いませぬか」

忍「如月流初代斬鉄の一人娘にして、二代目斬鉄の母親……如月流の歴史を語るにおいて、決して欠かせぬその女子の名は……あやめ」

影二「……あやめ……!」



守るべき、愛すべき存在というのは確かに、時に足枷になる時もある。

だが、それ以上の力を、そして覚悟を与えてくれる存在であると、儂は思っている。

儂にとってのお主がそうであったように。
187 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 22:19:11.96 ID:aehGRKYJ0
影二「……先代」

影二、守るべき存在によってまだまだお主は強くなれる。或いはあの初代斬鉄よりも……。

影二「……」

影二「……遺言状、確かに受け取り申した」

忍「……総帥、往かれるのですか」
188 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 22:27:26.51 ID:aehGRKYJ0
影二「お主らには悪いと思っている。今まで散々一門の事を放っておいて、さらに今から拙者がやろうとしていることは……強さのみを信じて鍛錬してきたお主たちにはあまりに酷かもしれぬ」

忍「いえ、総帥。往ってください。今の如月流の総帥は貴殿だ。何をしようとも文句は言いませぬ」

影二「……かたじけない。では」
シュザッ

忍び(……先代はこうなる事を予測されていたのか?……いや、まさかな……)

189 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 22:34:19.10 ID:aehGRKYJ0
商店街

茜「うおおおおおお!!!」
ドドドドドドド


肉まん屋のおばちゃん「おや、茜ちゃんじゃないかい。今日も元気だねぇ」

茜「あっ、肉まん屋さん!!はい!!元気が私の取柄ですから!!」

おばちゃん「もし良かったら肉まん食べてくかい?」

茜「え!!良いんですか!!?ありがとうございまーーーす!!!」
190 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 22:40:29.51 ID:aehGRKYJ0
街中

茜「うおおおおおおおおお!!」
ドドドドドドドド


ファン「あっ、アイドルの茜ちゃんだ!」

ファン2「ファンなんです!握手してください!」

茜「もちろんいいですとも!!」
ガシッ
ブンブン

ファン「パ……パワフル……!」
191 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 22:46:49.50 ID:aehGRKYJ0
河川敷

茜「うおおおおおお!!」
ドドドドドドドドド

茜(……この河川敷は……)
ドドドドドドドド

茜「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ドドドドドドドドドドドド

――――――待たれよ

茜「……!?」
ドドドドドドド
192 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 22:53:24.60 ID:aehGRKYJ0
「 そ こ な 娘 ! ! ! 待 た れ よ ! ! ! ! 」
ビリビリビリビリ

茜「……!!!」
ピタッ

茜(……ああ……この声は―――――――)

???「……我が名は忍者仮面……む?」

茜「ターーーーーックル!!!!」
ズドゴン
193 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 22:57:15.48 ID:aehGRKYJ0
不破「ぐおわぁ!!!」
ドサァ



不破「あ、茜……いきなりなにを」

茜「……」
ギュッ

不破「……茜」

茜「……お帰りなさい……不破プロデューサー……!」

不破「……ああ。今戻った、茜」
194 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 23:08:54.79 ID:aehGRKYJ0
珠美「……あやめ殿、もう元気を出してください」

あやめ「……ははは、珠美殿、何を言われます……あやめはこの通り元気な忍ドルですぞ!」

珠美「あやめ殿……」

翠「……あら?あそこに立っているのは……」

あやめ「……!」
195 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 23:13:22.66 ID:aehGRKYJ0
影二「……」

珠美「あ、貴方は……!い、今さらなんですか!」

翠「そうです……あやめさんが一体どんな気持ちで……あっ、あやめさん……!」

あやめ「……」
ダッ

影二「……あやめ」

あやめ「……」
196 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 23:15:43.87 ID:aehGRKYJ0
影二「……すまぬ」

あやめ「……うっ」

あやめ「うわーーーーーーーん!!」



珠美「……これで良いんでしょうか?」

翠「それは……あのお二人にしかわかりませんね」
197 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 23:19:53.19 ID:aehGRKYJ0
後日

ロバート「……結局、茜ちゃんは不破のところに戻ったか……いやあ、こういっちゃなんやけど惜しかったな〜……是非ウチに欲しかったな」

リョウ「まぁ、そう言うな。彼女はやはり不破と一緒にいる時が一番輝けるだろう」

加蓮「そうそう。こないだ茜に会ったんだけどさ、前にも増して元気だったよ」

拓海「へっ、良かったじゃねえか」

悠貴「やっぱり茜さんは元気なのが一番ですよねっ!」

加蓮(……本当に、良かったね、茜)
198 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 23:24:02.78 ID:aehGRKYJ0
ロバート「……ん?」
ペラ

リョウ「どうした?ロバート」

ロバート「……いや、リョウ、これ見てくれ」

リョウ「どれどれ……」



美城プロダクション
中途入社のお知らせ

如月 影二
199 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 23:26:38.63 ID:aehGRKYJ0


茜「いやあ、不破プロデューサー!!今回のお仕事の出来はどうだったでしょうか!!!」

不破「無論、素晴らしかったぞ茜!!お前は……すごい漢だ」
グッ

茜「本当ですか!!ありがとうございます!!!」


不破「ふふふ……お前は着々とアイドルの頂点を目指し進んでいる……」

不破「ならば拙もそれに恥じぬ、最強の格闘家を目指し、再び邁進せねばなるまい!!」

200 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 23:33:16.55 ID:aehGRKYJ0
茜「不破プロデューサーならきっと出来ます!!だって不破プロデューサーなんですから!!!」

不破「……茜!!!」

茜「はい!!!不破プロデューサー!!!」

不破・茜「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」





もとい
201 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/22(木) 23:36:26.45 ID:aehGRKYJ0
今日はここまで
不破外伝はこれで終わりです
あと短編が幾つかあるのであともうちょっとだけ続くんじゃ
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/22(木) 23:38:01.82 ID:7cMfKXpH0
漢www
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 23:41:51.34 ID:hADh9yF4o
すごい漢だ…
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/23(金) 03:51:55.41 ID:TZtN8SvV0
しかしよくよく考えるとこの世界線、地獄門まだ残ってるんだよな…
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/23(金) 05:32:39.99 ID:slLO+CxNO
漢ってのはもはや概念なのさ
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/23(金) 08:00:23.70 ID:fJ3/CRxR0
なぜか影二はきちんとしたスーツ姿のプロデューサーになりそうな気がする
師範は天狗面にネクタイどまりかな?
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/24(土) 01:05:03.03 ID:IJVlgcPA0
影二のガチ正装をイメージすると、どうしてもタークスになってしまう件
KOFライバルチーム仲間のビリーもスーツ姿ガチだし、仕方ないね
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/24(土) 01:05:32.50 ID:vhxhRz8po
師範はKOFでTV出演した時でもいつもの格好だったから…
すごい漢だ…
209 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 11:47:15.09 ID:X5BKklAG0
外伝
エージェント・カーマン・コール



私は最高のエージェントだ。
何故なら、常に最高の仕事をするからだ。
己の仕事に全力を尽くすのはプロとして当然である。
だが、全力の仕事と最高の仕事とはイコールではない。
全力かどうかは己が決めることで、最高の仕事かどうかは、己以外が決めることだからだ。
210 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 11:50:13.34 ID:X5BKklAG0
好きこそものの上手なれという諺が日本にはある。

それはそうだろう。人は好きなものには他人に言われずとも熱中し、その錬度を高めようとする。
結果、上達は早くなる。

しかしその一方で、下手の横好き、という言葉もあるように、いくら好んでいても、上達が望めないケースもある。
それは多くの人間が直面する、『才能』という壁だ。

この壁がある故に、この世の人間全て、万人が己の好きな事を職業にすることが出来ないのである。
211 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 11:53:40.86 ID:X5BKklAG0
ならば、最高の仕事をするにはどうすればいいか?

それは、己の仕事に誇りを持つことである。
誇りがあるから人はベストを尽くし、最高を求めようとするのである。

誇りが持てないのであれば、その仕事も、また、それに捧げる人生もただただ虚しいだけだ。


しかし、時に人はその虚しさを自覚しながらも、それを抱えて仕事に従事しなければならない。
立場故か、生活の為か、はたまたそれ以外か。
212 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 11:57:49.42 ID:X5BKklAG0
かくいう私もそうだ。

いや、そうだった。

私はロバート・ガルシアの直属の部下で、彼に忠誠を誓ってはいるが、毎日毎日することは少女たちの送迎である。

そもそも彼が『日本でアイドルの事務所を作る』などと言った時、ガルシア財団の重役達は一斉に反対した。

彼の実の父、ガルシア財団の会長、アルバート・ガルシアもそうで、彼を社員たちの面前で阿呆と怒鳴りつけた。
213 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 11:59:54.67 ID:X5BKklAG0
当時の私も同意見だった。
何故イタリア・ミラノに本拠を置き、世界中に傘下の会社を持つ有数の財団がこんな極東の島国で、こんな不確かな事業をしなければならないのだ。

だがはねっ返りのロバート坊やにこの対応は不味かった。

案の定彼は反発、独力で事務所を作ると言い放ち、会議室を後にした。
214 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:04:12.06 ID:X5BKklAG0
重役たちの嘲笑や失笑が会議室に充満する中で、会長の目だけは笑わずに私の方を見ていた。

私の現在の肩書はロバート・ガルシア個人付けである。
つまり、彼が行くところにはどこであろうと付いていかなければならない。
例えそれが極東の島国であろうと、中東の砂漠であろうと。

―――――カーマン、アイツを頼んだ。

言われずとも聞こえる声に、私はただ頷くしか出来なかった。
215 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:11:52.40 ID:X5BKklAG0
日本に来てからの私は、日々疑問を抱える毎日だった。

何せ日本で初めてロバートから下ってきた指令は『秘蔵のワインを急いで事務所に持って来い』である。
そしてその次が夜間のアイドルの送迎である。

無論、手は抜かない。
常に最高の仕事をするのが私だからだ。

だから私はこの仕事内容にではなく、「ロバート・ガルシア個人付け」という肩書に誇りを持つことでモチベーションを必死に維持していた。
216 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:17:14.75 ID:X5BKklAG0
ロバートの事は幼少の頃より知っている。

少々自分勝手で強情だが、ガルシア財団次期後継者としてこれ以上の男はいないと確信している。

かつてただワガママだった坊やが極限流空手と出会って人間としても大きく成長したように、本人が言い出したこのアイドル事業もまた彼を大きく成長させるものだと信じて。

この一介のお雇い運転手のような仕事も、そう思う事でなんとかやっていた。


代わりに、喫煙量が増えたが。
217 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:23:54.62 ID:X5BKklAG0
車中
加蓮「ねえねえ、カーマンさんって結婚してるの?」

カーマン「……いや?何故そんなことを聞くんだい、ミス・カレン」

加蓮「いや、カーマンさんって渋くてダンディだからモテそうだなって思って。そうなんだ、結婚してないんだ。意外〜」

加蓮「あっ、じゃあ本国の方に恋人とかは?イタリアだっけ?」

カーマン「いや、今のところ結婚を考えるような相手はいないな。……それと私はイタリア人ではない。ドイツ人だ」
218 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:27:48.41 ID:X5BKklAG0
加蓮「あっ、そうなんだ。社長がイタリアの人だって聞いてたからカーマンさんもそうなのかと思ってた」

カーマン「ガルシア財団の影響力は世界に及ぶ。それこそ社員も世界中にいる」

カーマン「それより……君もアイドルになって、どうだ?男どもからアプローチを受けているんじゃないか?」

加蓮「ん〜……確かに声を掛けられることは多くなったけど……言い寄られたりとかはあんまりないよ」

カーマン「なんだ、日本の男たちは随分と臆病だな。君のような可憐なレディに気の利いたセリフひとつ吐けんとは」
219 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:31:19.63 ID:X5BKklAG0
加蓮「ふふ……ありがと。けど、普段一緒にいるプロデューサーを見たら、ね」

カーマン「……フッ、そうだな。そういえば君たちにはあの龍虎が付いているのだったな。それでは並みの男なら足も竦むか」

加蓮「あはは……」

カーマン(……この少女も随分変わったものだ。初めて送った時は愛想笑いひとつせず、他者を寄せ付けない雰囲気を出していたものだが)

カーマン(今ではこんな軽口を叩けるようになっている。余裕が出てきたのだろう、この姿が本来の彼女なのかもしれない)
220 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:35:58.16 ID:X5BKklAG0
また別の日
車中

拓海「おう、カーマンのおっさん、いつもありがとうな!」

カーマン「……仕事だからな」

拓海「しっかしあんたいつみてもお堅いよなぁ。はっちゃけたりすることねえのか?」

カーマン「多少羽目を外すことはあっても君たちにそれを見せることはない。公私は弁えている」

拓海「おお……堅え……けど、羽目を外したらどうなるんだ?首都高を車でぶっ飛ばしたりすんのか?」
221 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:41:50.02 ID:X5BKklAG0
カーマン「……そんなに私も若くない。多少酒量が増えるくらいだ」

拓海「へえ〜……ん?そういえばあんた今いくつなんだ?」

カーマン「32だが」

拓海「……はあ!?32!?」

拓海「み、見えねえ!嘘だろ!?」

拓海(30前半の貫禄じゃねえだろ!)

カーマン「……褒め言葉として受け取っておくよ、ミス。」
222 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:44:50.49 ID:X5BKklAG0
また別の日

有香「あっ、カーマンさん!すみません、今日もよろしくお願いします!」

カーマン「ああ。だがいつも車の前で礼を取らなくていい」

有香「いえ!本当にいつもお世話になっていますので!」

カーマン「……」

223 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:50:32.92 ID:X5BKklAG0
有香「あの、カーマンさん、ひとつお聞きしてもよろしいですか?」

カーマン「なにかね」

有香「はい、以前Mr.BIGという悪漢が私たちを襲ってきた時……カーマンさんは実に鮮やかにあたしたちを助けてくださいました」

カーマン「そういうこともあったな」

有香「その時のご手腕からもカーマンさんが達人なのは疑いようもないと思うのですが……あれは何の格闘技なのですか?極限流空手とは全く別物に見えましたが」

カーマン「私は極限流の門弟ではないからな。私のスタイルは格闘技……というほどのものでは無いが……いわゆる護身術だ。相手を倒すというよりは制する技だ」
224 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:54:23.05 ID:X5BKklAG0
有香「な、なるほど……確かにあの時も瞬く間に相手を無力化していました……」

カーマン「どちらかと言えば防御主体だ。攻撃的な技を求める若い時分の君には退屈かもしれんがな」

有香「い、いえ!そんなことありません、技はすぐには無理かもしれませんが、立ち合いの際の心構えなど教えていただければ……!」

カーマン「……勤勉だな、君は……」

カーマン(思い返せば、そうだ。この娘たちが私によく話しかけてくるようになったのは件のMr.BIGとやらの襲撃事件からか)

カーマン(保安部の私はあちらの方が本来の任務には近いのだが……しかしあんな目に遭ったというのにタフな娘たちだ)
225 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 12:58:59.38 ID:X5BKklAG0
また別の日

美波「カーマンさん、すみません……今日もお車出していただいてありがとうございます」

悠貴「よろしく……おねがい……」

カーマン「……だいぶ疲れているみたいだな」
226 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 13:02:14.60 ID:X5BKklAG0
車中
悠貴「すぅ……すぅ……」

美波「……悠貴ちゃん、眠っちゃいましたね……カーマンさんが静かに運転してくれてるおかげですね」

カーマン「車中で眠ってしまうのは久しぶりだな……以前の、クイーン・オブ・ザ・アイドルズ……アレの特訓をしていた時は毎日皆眠りこけていたものだが」

美波「あはは……確かにあれ以来、体力的にあそこまで追い込まれることはないですけど、悠貴ちゃんは夜遅くなってくると、眠くなっちゃうみたいなんです。まだ13歳ですしね」

227 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 13:07:18.34 ID:X5BKklAG0
カーマン「フッ、そうか……とは言え、あのQOI以来、君たちは劇的に成長したといえるだろう。実際の仕事量もそうだが、皆自信に満ちている。良い表情だ」

美波「ありがとうございます。でもそう言ってもらえるのも坂崎さんやロバート社長……ちひろさんにトレーナーさん……もちろんカーマンさんも、皆さんに支えてもらっているからですよ」

カーマン「私はただの護衛に過ぎん。君たちの育成にはノータッチだ」

美波「いえ、本当にみんな、感謝してるんです……あの、これ、もし良ければ」
スッ

カーマン「……これは……もしや私への贈り物か?」
228 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 13:12:46.33 ID:X5BKklAG0
美波「はい、本当は5人揃ってる時にお渡ししたかったんですけど、最近はみんな忙しくてなかなか揃う機会が無くて。だから代表で、私が渡すことになったんです」

カーマン「……開けて見ても?」

美波「はい」

カーマン「……ネクタイか。……良いデザインだ」

美波「気に入って貰えたのなら良かったです。みんなで相談して、出来るだけ実用性のあるものが良いかなって」

カーマン「せっかく選んでもらったんだ、有り難く頂こう。……だが、君たちは別に私に恩や義理を感じる必要はないぞ?これは仕事だから……」

美波「ええ、ですけどこれは私たちが勝手にやりたいと思ってやったことですから。カーマンさんもそんな肩肘張らずに受け取って貰えれば」
229 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 13:19:17.86 ID:X5BKklAG0
カーマン「……わかった。ありがとう」

悠貴「……んん……あれ、私、眠っちゃってたんですか……っ」

美波「あ、ごめんね悠貴ちゃん、起こしちゃったね」

悠貴「……あっ、カーマンさん、ネクタイっ!受け取ってくれたんですねっ!」
パァッ

カーマン「ああ。素晴らしいプレゼントをありがとう」

悠貴「美波さんっ!やりましたねっ!」
スッ

美波「うん、これでみんなにもいい報告ができるね」
パシッ

カーマン「……」

230 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/25(日) 13:20:38.69 ID:X5BKklAG0
今日はここまで
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 13:39:08.40 ID:Xndb/KVDO
カーマン?あの脱衣KOできない紳士の中の紳士か?
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 13:54:01.00 ID:b0wfay7FO
https://imgur.com/a/8jUpO
この人やな
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 14:02:56.15 ID:27r2Moo+0
仕事が完璧なうえにハンサムで紳士
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 14:19:06.03 ID:VZ+N0TeA0
コミカライズでは主役を務めたエージェント
ちょっと優等生すぎるせいで影が薄いタイプやね
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 17:39:37.71 ID:+laZDeF/0
……渋い漢だ
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/25(日) 19:00:37.47 ID:UEeISNWd0
龍虎コンビの社長とプロデューサー、運転手のカーマン、近場には不破と影ニ。
そしてかつてはギース。冷静に考えれば世界最上位レベルの戦闘の達人が集う街と化しておる…
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 01:02:21.68 ID:rOSoM17Eo
カーマン・コールさんの名前を美波に連呼してほしい
238 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 20:06:45.64 ID:eb58AR/20
ロバート「ん?カーマン、そのネクタイどないしたんや?」

カーマン「アイドル達から贈られた。送迎の礼だそうだ」

ロバート「へ〜、良かったやん。なかなかいい趣味のネクタイやな」

カーマン「全く義理堅い娘たちだ。私はただプロとして仕事をこなしているだけだというのに」

ロバート「ハハハ……まぁそういう性格やから、わいらもあの娘たちの為に頑張ろうと思えるんや。それに応えてくれるしな」
239 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 20:16:20.66 ID:eb58AR/20
カーマン「……確かに彼女たちは想像以上の成果を挙げている。本社に報告をしている身としても、社内の空気が変わっているのを感じるよ」

ロバート「おっ、ホンマか?初めボロクソに言うてくれた重役たちも少しは見返せたか」

カーマン「……だが、未だ懐疑的な者もいるようだ。財団の事業の一つにするには規模が小さすぎると」

ロバート「ハッ、今さら頼み込まれたってこの事業を財団に渡すつもりは更々ないっちゅー話やねん。これはわいの個人事業や。最初から最後までな」
240 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 20:24:08.96 ID:eb58AR/20
ロバート「……ただ、規模というか、アイドルの数に関してはわいも考えとったところや。極娘のみんなに関してはもう安定軌道に入ったけど、それに続くアイドル達をウチから出していきたい」

ロバート「事務所を作ったばかりの手探り状態の頃とは違って、今はもう常駐のトレーナーもおるし、ある程度のノウハウもわかった。ここいらで2、3人新しい娘を入れたいけどなぁ」

カーマン「またスカウトを始めればいいだろう」

ロバート「ただ、わいもリョウも最近完成した極限流日本支部の道場も交代で見とるから余裕がないんや。かといって、スカウトに関してはこの目で直に見るか、信用できる奴に任せたいからあんまり外部から雇いたくないんや」
241 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 20:29:25.58 ID:eb58AR/20
カーマン「全く、ワガママ放題だな。言っておくが私はそこまでは手伝わんぞ」

ロバート「チェッ、あんたの目利きなら間違いないと思って内心期待しとったのに……まぁスカウトに関しても考えんとな……」

カーマン「ああ、そうしろ。……ところでロバート、私は明日は非番でいいのか?リョウは出張中だろう。人手は足りるのか?」

ロバート「ああ、明日は珍しくロケの仕事一本だけやしわい一人で大丈夫や」

242 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 20:34:55.43 ID:eb58AR/20
今日は久々の非番だ。
かといって羽目を外しすぎる事はない。いついかなる時にエマージェンシーコールが入ってくるとも限らない。プロとはそういうものだ。

ただ、折角貰った心の籠った贈り物を身に着け、久しく走らせていなかった愛車を転がす……それくらいの休息は許されるだろう。




カーマン「日本の道はどうにも狭く入り組んでいるが、海岸沿いまでくればそれなりに快適にドライブできるものだな……」


ガガガガ

カーマン「む……?」
243 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 20:42:41.29 ID:eb58AR/20
カーマン「全く……こんなところでエンストとは、少し乗らな過ぎたか」
スッ

カーマン(……近くに整備できそうなところも無い。まいったな)

ブルル

女性「あれれー?どうしたのー?エンストー?」

カーマン「ん?ああ、そのようだ」

女性「どれどれ……わあ……赤いポルシェ……かっこいい!」
244 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 20:49:10.60 ID:eb58AR/20


女性「……うーん、これはレッカーかな……」

カーマン「やはりそうかね……仕方あるまい」
スッ

女性「……あっ、待って!ねえ、もし急いでなかったら私この子の事ちょっと診てもいい?」

カーマン「診る?君がか」

女性「うん、私これでも整備士なんだ!ほら、工具一式も持ち歩いてるし!」
245 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 20:58:35.29 ID:eb58AR/20
カーマン「……驚いたな。だが見ず知らずの君にそこまで頼む義理は……」

女性「……原田美世」

カーマン「……ん?」

美世「私の名前だよ。あなたは?」

カーマン「……カーマン・コールだ」
246 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:01:07.04 ID:eb58AR/20
美世「カーマンさんね。はい、これでお互いもう見ず知らずの仲じゃないってことで……ダメ、かな?」

カーマン「……好きにしてくれ」

美世「やったあ!まさかこんな珍しい子をいじれるなんて!」
ウキウキ

カーマン「……」
247 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:05:29.98 ID:eb58AR/20
カチャカチャ
美世「へぇ〜、こんな風になってるんだ……やっぱ外車は国産とは違うなぁ」

カーマン(……熱中している)

美世「おお〜、凄い……けど、確かここは実習で見たやつに似てるから……」
カチャカチャ

カーマン(こんな年頃の娘が整備士など、俄かには信じられなかったが……)
248 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:09:52.57 ID:eb58AR/20
美世「あ〜、なるほど……カムギアが取れちゃってる……病巣はボルトのあたりかな……?」

カーマン(どうやら腕は間違いないようだ。だが……車をいじる彼女の姿は……)

チンピラ「おい、そこの外国人」

カーマン「……私のことかね?」


チンピラB「おう、日本語話せるのか。アンタどこのモンだ」
249 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:14:35.45 ID:eb58AR/20
カーマン「……私はこういうものだ」
ピッ

チンピラ「……寝男地男工業、課長、ハンス・ミューラー?」

チンピラB「聞いた事ねえ会社だな」

カーマン「小さな会社でね」

カーマン(全てダミーだが)
250 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:19:36.44 ID:eb58AR/20
チンピラ「小さな会社の課長程度がこんないい車に乗れるもんかい?」

カーマン「車好きでね。給料全てを注ぎ込んでる。……それで、何か御用かね」

チンピラB「ああ、こんな所に赤いポルシェが止まってりゃ目立つからな。おっさん、金置いてけや」

チンピラ「ああ、金が無いんだったらその車でも良いぜ。売りゃ良い金になるだろ」

チンピラB「ん?ちょっと待て、あの車の下に潜り込んでるの、女じゃねえか?」

カーマン(……ふう)
251 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:23:48.00 ID:eb58AR/20
カーマン「……せっかく美しいものを見ていたのに台無しだ。この代償は安くないぞ、ヤパーナー?」
スッ

チンピラ「やる気か?こっちは二人で……」

カーマン「これ以上君たちを視界に入れている時間が惜しい。良いから早く来い」

チンピラB「てめえ!」
バッ

パシッ
グイッ
252 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:28:40.41 ID:eb58AR/20

ブンッ
チンピラB「ぐはっ!」
ドサッ

カーマン「ふんっ!」
ズドッ

チンピラB「」
ガクッ

チンピラ「な、なに……!?」

カーマン「さて、お前には2つ選択肢がある。伸びた仲間を連れて消えるか、誰かが通報してくれるまでここで二人仲良く野晒しになるかだ」
253 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:32:21.95 ID:eb58AR/20
チンピラ「な、な、なめんじゃねえ!この野郎!これでエグッてやる!」
スチャ


カーマン「……ふん、それだけか?」

チンピラ「……なに?」

カーマン「ナイフ程度で良いのかと聞いてる。拳銃でも日本刀でも、なんなら機関銃でも構わんぞ」

チンピラ「ふざ、ふざけんなああああ!!」
254 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:38:10.64 ID:eb58AR/20
チンピラ「」

カーマン「出直して来い。素人が」
パッパッ

カーマン(さて、彼女は……)

美世「……」

美世「う〜んと……あとはここを組めば……」
カチャカチャ
255 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:42:38.93 ID:eb58AR/20
美世「よし!これでどう!?動くんじゃない?」
バッ
カーマン「……これを」
スッ
美世「え、ハンカチ?……あ、もしかして」

カーマン「ああ。顔に……」

美世「えへへ……熱中しちゃうと、ついね……こんなの女の子っぽくないよね」
フキフキ
256 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:43:45.53 ID:eb58AR/20
カーマン「……確かに女性の身だしなみとしてはそうかもしれん」

カーマン「だが、車に触れる君には、顔についた油でさえ最高の化粧だった」

美世「えっ?」

カーマン「いいや、何でもない」
257 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:48:30.09 ID:eb58AR/20
カーマン「……」
ブルルン ブルルン

美世「あっ!良かった〜!かかった〜!」

カーマン「すまないな、助かった。修理代は幾らになるかね?レディ」

美世「えっ!?お、お金なんて良いよ!私が好きでやったことだし、ポルシェいじれて満足だし!」

カーマン「そうは言うが、こちらも車を直して貰った上、良いモノも見せてもらった。良い仕事にはそれに応じた報酬が与えられなければならない」
258 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:51:24.30 ID:eb58AR/20
美世「え?良いモノって?」

カーマン「とても美しいものさ」

美世「ええ〜……よくわからないけど……あ、じゃあ、いっこお願いしていい?」

カーマン「構わんよ」
259 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:54:44.73 ID:eb58AR/20
美世「……いや〜、乗るのは初めてなんだけどホントにポルシェって全然違うんだね。ちょっとアクセル踏んだだけなのに回転数が凄いよ」

カーマン「だが、もう慣れてきたようだな。下手なクラッチ操作ではこうはいかん。整備も運転も、良い腕だ」

美世「えへへ……そうかな?車はいじるのも見るのも乗るのも、全部好きだから」

美世「……ねえ、えっと、カーマンさん?」

カーマン「なにかね?」
260 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 21:58:39.91 ID:eb58AR/20
美世「実はね、さっき車直してる時……ホントは気づいてたんだ。怖い人たちが因縁つけてきてたの」

カーマン「……!」

美世「それで怖くて車の下から出てこれなくて……けどカーマンさんあっという間にふたりともやっつけちゃって」

カーマン「……」

美世「あなたは何者なの?よくわかんないけど、なんか海外のすごいFBI?みたいな人なの?」
261 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 22:04:11.21 ID:eb58AR/20
カーマン「……そんな大層な身分ではない。今の私はただの運転手だ……アイドル事務所付きのな」

美世「アイドル……?」

カーマン「もし興味があるなら、来るかね?もしかすれば、君が車と同じくらい夢中になれるものがあるかも知れん」

美世「それって、勧誘?見かけによらず、面白い人だね。でも……見てみたいな。あなたのいるアイドル事務所」

262 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 22:04:37.42 ID:eb58AR/20
カーマン「疑わんのかね?」

美世「疑わないよ。助けてもらったし、それに……」

カーマン「それに?」

美世「赤いスポーツカーに乗ってる人に悪い人はいないもんねっ!」
263 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 22:10:33.66 ID:eb58AR/20
後日

ロバート「おう、カーマン、あんたが連れてきてくれた美世ちゃん、正式に契約決まったで」

カーマン「そうか」

ロバート「いや〜、あれはエエ娘や。ウチの事務所は車乗りもバイク乗りもおるから本人もかなり喜んでたわ。そしてもちろんわいらも大助かりや」

カーマン「ふむ」

ロバート「それにしてもどういう風の吹き回しや?あんな私は手伝わん、みたいなことを言うとったのに、あんたが事務所に連れて来たときにはあの娘かなり乗り気やったで。どんな口説き方したんや?」
264 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 22:15:17.25 ID:eb58AR/20
カーマン「別に口説いちゃいない。私はただ連れてきただけだ」

カーマン「だが、アイドルを始めたとして、ここから先はお前たちの仕事だ。あの娘をシンデレラに出来るか、灰かぶりのままにしておくかはな」

ロバート「それはそうやな。せやけど、あんたがそれだけ見込んだって事は……あんたにはもうそのシンデレラの片鱗を見せたんやろ?」

カーマン「フン……」
265 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 22:19:00.72 ID:eb58AR/20
人は、誰でも幸福を捜している。

しかしその形は一定ではない。

時には死す時までその形が分からない者もいるだろう。

幸福とは実に様々に姿を変え、私たちを惑わせる。

富に、愛に、権力に……

私にとっては、誇りがそうだ。

最高の仕事をしているという、誇り。
266 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 22:28:02.72 ID:eb58AR/20
彼女が、彼女たちが光り輝く瞬間。

私は、その時確かに誇りを感じた。

すなわち、幸福を。

今は彼女たちを見守るのが最高の仕事なのだと思う。

今の私はそう思える。

そう思わせてくれた者たちがいたのだから。


外伝
エージェント・カーマン・コール
267 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/06/28(水) 22:30:33.06 ID:eb58AR/20
今日はここまで

>>232のカーマンの漫画すっごい出来が良いからぜひ読んでみてね(不破師範は脳筋扱いだけど)
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/28(水) 22:41:07.24 ID:4py2LSdSo
天獅子さんの漫画は渋いキャラ書かせると実にいい
若いころのタクマとロバートの執事の話なんかもよかった
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/28(水) 23:20:40.02 ID:LNeJHWGtO
これは漫画版買いたくなるスレ
いや、前回も名作だったけど、今回も良い
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/29(木) 20:50:24.27 ID:010Sn/gDO

龍虎は掘り下げたらまだまだ伸びしろのあるコンテンツなんだがな…
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 22:03:40.53 ID:F1By+4XM0
天獅子漫画って龍虎1・2版は昔立ち読みしたけど外伝版って実物見たことないから本当にあったことすら最近まで知らなかったわ
272 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/01(土) 11:00:21.01 ID:bVTGWxfw0
ロバート「キャンプ?」

リョウ「ああ、新しいメンバーも入ったことだし、親睦を深める意味こ込めてな」

ロバート「それやったら別に食事会とかでエエやろ。何でわざわざキャンプなんや?」

リョウ「俺も良く山に籠るからわかるが、自然の中での不便さってのは、人と人が向き合うのに最適だ」

リョウ「何もない故に協力しあい、何もない故に飾りの無い、心の触れ合いがある」
273 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/01(土) 11:05:04.81 ID:bVTGWxfw0
ロバート「へぇ〜……まぁ新しい娘らが早く打ち解けられるならそれに越したことはないけどな」

リョウ「……それに、それだけじゃない。山の方なら、都会に比べて星が多いからな……」

ロバート「星?」





外伝
北の大地から来た少女


リョウ(『彼女』が事務所に来たのはほんの少し前。出会ったのは、ここ東京よりもずっと寒い。秋に差し掛かった頃だった)
274 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/01(土) 11:08:57.47 ID:bVTGWxfw0
北海道・小樽市内

リョウ「……ロケの現場の下見とは言え……流石に一人で来るもんじゃな無かったな。地理が全然わからん」

リョウ「ええっと……一応ここは小樽市内なんだよな?で、小樽運河ってのが港の方だから……ううむ……」

リョウ(人に聞いた方がはやいなこりゃあ)


リョウ「あ、そこの人、すみません」

通行人「ひっ、す、すみません、急いでますので」
タタッ
275 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/01(土) 11:15:17.28 ID:bVTGWxfw0
リョウ「……見た目で怖がられるのも久しぶりだな」

リョウ(まぁ馴染みのない土地だから仕方ないか……他に人は…)

リョウ(おっ、前に人が歩いてるな……銀髪?外国人か?)


リョウ「……あー、コホン」

リョウ「Hello, excuse me.」

少女「……シトー?」
クルッ
276 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/01(土) 11:21:47.98 ID:bVTGWxfw0
リョウ「……ッ!?」

リョウ「……ああ、ロシア語……か?参ったな、ロシア語はわからん……」

少女「アー……日本語、わかりますよ。英語も、わかりますけど」

リョウ「あ、そうなのか。それは助かる……運河の方に行きたいんだが、道はわかるかい?」

少女「カナール……運河の方はですね、えーと……ここを、まっすぐに……」

277 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/01(土) 11:30:05.72 ID:bVTGWxfw0

リョウ「……なるほど、わかったよ……君が日本語が上手で助かった」

少女「……私を外国の人と思いましたか?ちがいます、日本人よ」

アーニャ「ミニャー ザヴート アナスターシャ……アー、名前は……アナスタシア。日本とロシアの、ハーフです」

リョウ「……これは失礼だった。俺はリョウ・サカザキ。東京で空手の師範とアイドルのプロデューサーをやってる」
スッ

アナスタシア「アー……どうも……」
278 : ◆z4l4K/HkZ2 :2017/07/01(土) 11:34:33.23 ID:bVTGWxfw0
リョウ「……」

リョウ「……なぁ、アナスタシアさん。いきなりこんな事を言われても困るかもしれないが……アイドルに興味はないか?」


アナスタシア「アイドル?……イズヴィニーチェ……ごめん、なさい、あまり、詳しくありません」

リョウ「そうか……テレビで見たことないか?」

アナスタシア「……何度か、見たことはあります。けど、なにをするのですか?ピヴィーツァ?バリリーナ?歌とか、踊りですか?」

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