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【ポケモン】しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」その2【クレしん】
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5 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:13:38.39 ID:31e3ztue0
更新……の前にちょっと修正
前スレ
>>914
さらわれこと→さらわれたこと
前スレ
>>920
月の素材は→月の笛の素材は
うーむちゃんと推敲しなきゃダメですね
6 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:15:23.11 ID:31e3ztue0
メレメレ島(ひろし&ハウ)
ひろしとハウがメレメレ島に近付いてまず気がついたのは、島のあちらこちらから黒煙が上がっていることだった。接近するにつれて、ハウオリシティの建物から火の手が出ている事実を2人に突きつけた。
船着場に着いたところで、2人は街の惨状と事態の重さを改めて実感した。
ハウ「これ……みんなビーストがやったのー……?」
ひろし「ひでぇ……最初に来た時とはえらい違いだ……」
ハウ「うんー……みんな、無事だといいけどー」
すると、遠くからハウの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
???「ハウくん!」
ひろし&ハウ「!」
ハウ「イリマさんー!」
現れたイリマは、相変わらずの爽やかな表情ではあるものの、鮮やかなピンク色の髪やトレーナーズスクールの制服が、ところどころ煤で汚れていたり、破れている。
イリマ「はい! キャプテンのイリマです! あなたがたが船でやってくるのが見えたので、駆けつけてきました! どうなさったんですか?」
7 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:27:46.43 ID:31e3ztue0
ハウ「おれたちーじーちゃんを探しに来たんだー。今、じーちゃんはどこにいるのー?」
イリマ「ハラさんですか? ハラさんはリリィタウンで、巨大ポケモンから逃げてきた人たちの保護に当たっています。なにかあったのですか?」
ハウ「実は月の笛を直すのに、カプのかがやく石が必要でー……」
…… …… ……
ハウとひろしはイリマにこれまでのことを説明した。
…… …… ……
イリマ「なるほど……あれはビーストと言うのですね。では僕がハラさんのところまでご案内いたします!」
ひろし「その前に、俺たちは博士の研究所に行って、ポケモンを保護しに行かなくっちゃいけないんだ。一番道路のところで待ち合わせ……ということには出来ないかな?」
イリマ「そうですね……今はビーストの攻撃も収まっていますし。分かりました。では1番道路に向かうよう、ハラさんに伝えておきますね!」
ひろし「よし、なら俺たちも急いで研究所に向かおう。研究所のポケモンを、急いで保護しなくっちゃな!」
ハウ「うんー、イリマさん、お願いー!」
イリマ「任せてください!」
8 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:30:12.47 ID:31e3ztue0
1番道路 博士の研究所前
ひろし「くそっ、ビーストの奴ら、俺たちの新しい家まで……!」
ひろしは、ハウオリシティはずれにある自宅の焼かれていた姿を思い出して、ビーストとルザミーネに対して怒りに震えていた。
ハウ「おじさん……」
ひろし「……ああ、ごめんなハウくん。今は怒ってる場合じゃないな。早いとこ博士のポケモンを見つけなきゃ」
ハウ「そうだねー……とりあえず、研究所は無事みたいだけどー」
ガチャ
ひろし「博士のポケモンはみんなボールの中に入ってるって言ってたよな」
ハウ「うんー博士が留守にするときは水槽の中のポケモン以外はボールに入れてあるんだー。じゃないと脱走しちゃったりするしー」
ひろしは水槽を覗くと、サニーゴやラブカスと目を合わせた。どちらとも、今何が起きているのか、本能で分かっているのか不安そうな視線を送っている。
ラブカス「ラブゥ……」
サニーゴ「サニーゴ……」
9 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:31:01.42 ID:31e3ztue0
ハウ「よしよしーみんなボールに戻って博士のところにいこー!」
ひろし「俺は地下の方を探してみるよ」
ひろしは水槽のすぐそばにある階段を降りて、地下室へと降りていった。電気は止められているのか、あたりは真っ暗で、持っていたスマートフォンのライト機能を明かりにして探し回る。
ひろし「……あった!」
博士の机の上にいくつものモンスターボールが置かれているのをひろしは見つけた。それらを回収しようと手を伸ばした時だった。
ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!
ひろし「!」
10 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:45:24.62 ID:31e3ztue0
ハウ「おじさんっ! ビーストが近くに来てるよー!」
ひろし「ああ、わかってる!」
ひろしは急いでモンスターボールを回収すると階段を駆け上って、ハウと研究所を飛び出した。
ドカァァァン!!
ひろし&ハウ「!」
ハウ「研究所がー!」
何者かの攻撃を受けて炎上する研究所。
炎の向こうに、巨大な影が現れたことにハウとひろしは気付いて身構える。
テッカグヤ「フゥー……」ゴゴゴ
ひろし「でけぇ……! ポニ島で見たやつより倍はあるぞ!」
ハウ「おじさん離れててー!」スッ!
ハウ「行くよー! ガオガエン!」ヒョイッ
ガオガエン「ガオォォォッ!」ポンッ
ハウ「ガオガエン、DDラリアットー!」
ガオガエン「オオオッ!」ギュルルンッ!
11 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:47:34.49 ID:31e3ztue0
ガオガエンは両手に闇の力が宿った炎を纏うと、両腕を広げてテッカグヤに突進した! テッカグヤは2つの噴射口から銀色に輝く弾丸を発射するが、ひるまずテッカグヤにタックルを食らわせた。
ガオガエン「ガォオォォッ!」
ズズンッ!
テッカグヤ「フゥー……?!」グラリ
ひろし「効いたか?」
ハウ「……」
テッカグヤは傾いた身体を持ち直すと、なんと身体の下部と両腕の噴射口が点火して空へ飛び始めた。その衝撃と熱で、ガオガエンはおろか、ひろしとハウが吹っ飛ばされる。
ハウ「うわっ……!」
ひろし「ハウくん、大丈夫か?!」
ハウ「平気ー!」
ハウは吹っ飛ばされてもなお、テッカグヤへと視線を向けていた。テッカグヤは空高く上昇していた。そのままどこかへ飛び去っていくのかと思いきや、大きく旋回して身体の先端をこっちに向けて落下し始めた。
12 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:49:17.84 ID:31e3ztue0
キィィィィン!
ひろし「おいおいおい! こっちに落ちてくるぞ!」
ハウ「ガオガエン! 逃げてー!」
ガオガエン「ガォォォッ!」ダッ
2人と1匹が草むらの中を走り出してきた頃、上空からテッカグヤの落下音が轟いた。そして大音量の破壊音と衝撃が背中を襲い、再びひろしとハウ、そしてガオガエンは吹き飛ばされた。
ゴゴゴゴ……
ハウ「ガオガエン、おじさん、だいじょーぶ?」
ひろし「く、ううっ……今のはヘビーボンバーか……?! あんな巨体が落ちてくるなんて……」
ガオガエン「ガオオ……」
テッカグヤ「フー……」
落下地点とおぼしきクレーターから、テッカグヤが起き上がって、こちらへ顔を覗かせてていた。
13 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:50:26.66 ID:31e3ztue0
ひろし「ハウくん……悔しいが今は逃げよう! こいつとまともにやりあって勝つのは無理だ……!」
ハウ「ううー……。ガオガエン戻ってー」
ハウがガオガエンをボールに戻そうとした時だった。テッカグヤが噴射口をこちらへと向けてきた。
ひろし&ハウ「!」
テッカグヤ「フー……」キィィン
ひろし「やばっ……!」
ハウ「おじさん……!」
噴射口が熱を帯びて光りだす! それが何を意味するのか、2人はすぐに理解したと同時に死を覚悟した。その時だった。
「カ プ ゥ ー コ ッ コ ォ ー ッ ! !」
14 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:52:00.75 ID:31e3ztue0
バチチチッ!!
テッカグヤ「フー……!??」
ひろし&ハウ「!?」
テッカグヤに雷が落ちてきたかと思うと、電気を帯びながらそのままぐらりと再び傾き、今度こそ倒れてしまった。噴射口から、爆炎が出る気配もない。
ズシンッ
テッカグヤ「……」
ひろし「今のは……?」
ハウ「この声……!」
「カプゥー!」ギュンッ!
バチバチと電気を帯びながらふたりの前に現れたのはメレメレの守り神、カプ・コケコだった。外殻を外して、ひろしとハウを静かに見つめている。
ハウ「わー! カプ・コケコだー!」
ひろし「このポケモンが、カプ・コケコなのか!」
ドタドタドタッ
ケンタロス「モォォォッ!」
???「お二人方! ご無事ですかな?」
15 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:53:03.56 ID:31e3ztue0
ハウ「じーちゃん!」
ひろし「ハラさん!」
ハラ「カプ・コケコを追って来てみれば、ハウとひろしさん……危ないところでしたな」
ひろし「ハラさん、ありがとうございます」
ハラ「礼なら私よりカプ・コケコに……」
ハウ「じーちゃん、実は……」
ハラ「うむ、話はイリマより聞いております。……ですが、かがやく石はそれぞれのカプがしまキングに渡す特別なもの。まずはカプ・コケコに判断を委ねましょうぞ」
ハウ「お願い、じーちゃんー……」
ハラ「ハウ、いつもの元気はどうしましたかな?」
ハウ「じーちゃん……。ごめん、おれ、ビーストに壊された街を見て、すごいショックを受けちゃってー……。こんなことになるなんて、思わなかったからー……」
ハラ「……しまキングの孫のハウよ。気を強く持ちなさい。お前は島巡りを経て心も身体も強くなったはずですぞ」
ハラ「街のことは心配めさるな。事態が収まったあとで、みなで復興すればいいのですから。ですが、ハウが折れてしまってはそれすら出来なくなってしまいますぞ!」
ハウ「うん、じーちゃん……」
16 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:53:54.93 ID:31e3ztue0
ハラはハウの頭をなでると、カプ・コケコへと近づいた。
ハラ「今の話……お聞きになりましたかな?」
カプ・コケコ「……」
ハラ「カプ・コケコよ。お頼み申します。これは、アローラにとっても未曾有の危機なのです。どうぞ、孫たちに未来を与えてくだされ……!」
ハウ「お願いー! カプ・コケコー!」
ひろし「俺からも、頼む!」
カプ・コケコ「……」
カプ・コケコは燃える博士の研究所をバックに、ひろしとハウ、そしてハラを試すように見つめている……。
17 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:55:53.76 ID:31e3ztue0
カプ・コケコ「カプゥー! コッコォー!」バチチチッ!!
カプ・コケコは電気を再びまとい始めると、ハウオリシティの方角へと飛んでいってしまった。
ひろし「……ダメだったか」ガックリ
終わった。自分たちの願いは、カプに届かなかったのか。落胆するひろしだが、ハラは首を横に振った。
ハラ「いえ……カプ・コケコは、『後は任せたぞ』とおっしゃられてました。その証拠に――」
そう言って、ハラは草むらに落ちている、かがやく石をひろしたちに見せた。
ハウ「それってー……!」
ひろし「かがやく石だ!」
ハラ「……持って行きなされ。そして頼みましたぞ! アローラの存亡は、あなた方にかかっています!」つ かがやく石
ハウ「うんー! ありがとーじーちゃん! カプ・コケコー!」
ひろし「よし、それじゃあ次はハプウちゃんのところだ!」
18 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:57:39.46 ID:31e3ztue0
カンタイシティに着いたククイ博士は、ビーストとの戦いで疲弊したマオとスイレンの代わりに、ウルトラビーストたちの相手をしていた。
ククイ博士の相手をしているのは、マッシブーンとは逆に華奢で細身の身体付きをし、髪のように伸びた羽を持つ白いウルトラビースト、フェローチェ。それが3匹、ククイ博士の前に立ちふさがっている。
対するククイ博士は、まひるのすがたのルガルガン1匹のみ。数の差で不利と思われたが……。
ククイ博士「よーしルガルガン! いわなだれだ!」
ルガルガン「ウォーーンッ!」
ルガルガンはジャンプし、フェローチェたちに向けて粉々にした岩を雨あられのごとく投げつけた!
フェローチェたち「フェロッ……!?」
ククイ博士「そして、ビーストたちにアクセルロックだ!」
ルガルガンは高速で飛び出すと、いわなだれで怯んだフェローチェたちに突っ込み、次々と跳ね飛ばしていく! そのままフェローチェたちはバタバタと道路に倒れ伏していった。
ククイ博士「ジャスト4ターン。予言通りだったろ?」
19 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 18:58:32.30 ID:31e3ztue0
スイレン「いわなだれで敵を怯ませつつ、アクセルロックで素早く仕留める……さすがです!」
カキ「さすがバトルロイヤルの伝道師、ロイヤルマスク! 不謹慎だが、燃える戦いだ!」
バーネット「えっ? ククイ君がロイヤルマスクなの?」
ククイ博士「日夜技の研究をしているからね。もちろん複数の相手を倒せる技も把握しているから、このくらいお手の物さ!」
ククイ博士「そしてカキ、僕はククイ博士であって、ロイヤルマスクではない!」
バーネット「あぁ、びっくりした。そうよね、体格も戦い方もロイヤルマスクに似ているけれども、ククイ君の方が魅力的だもの」
ククイ博士「う、うーん……なんか微妙な気分」
ククイ博士「ところでバーネット、ウルトラホールの状況はどうだい?」
バーネット「今のところ、カンタイ周辺にウルトラホールが開く気配はないみたい。空間も安定しているし、ここの住民を安全な場所へ避難させるなら、今が一番かもね」
ククイ博士「わかった! それじゃあカキ! スイレン! 君たちは引き続きアーカラ各地にいる、避難している人たちの保護を頼むよ!」
カキ「わかった、おれはロイヤルアベニュー周辺に向かう。スイレンはオハナタウンを頼む」
スイレン「はい!」
20 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:00:26.95 ID:31e3ztue0
カキはライドポケモンのリザードンに乗って空を飛んでロイヤルアベニューへ、スイレンはケンタロスにまたがってオハナタウンへと向かっていった。
バーネット「後はライチさんとマオがうまくやってくれるといいのだけれども……」
ククイ博士「うまく行くさ。さっきハウとしんのすけのお父さんから、メレメレでかがやく石を手に入れたっていう連絡が来たよ。今2人はポニ島に向かってるそうだ」
バーネット「カプ・コケコは協力的ってことね。残りのかがやく石はここを含めて3つ……。でも、きっと他のカプも手を貸してくれるわよね」
ククイ博士「ああ!」
ライチ&マオ「博士!」
ククイ博士「!」
ディグダトンネルから、ライチとマオが出てきてククイ博士たちに手を振った。ククイ博士が二人のもとへ走り寄る。
ククイ博士「どうだったかな? カプ・テテフは……」
21 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:03:00.51 ID:31e3ztue0
ライチとマオは顔を合わせると、示し合わせたように頷いた。
ライチ「カプ・テテフもできる限り協力すると言っていたよ。もともと、カプ・テテフもビーストが襲来してきたとき、怪我した人とポケモンたちを積極的に治していったからね。……やり過ぎないよう注意しているけどさ」
マオ「これがカプ・テテフからいただいたかがやく石でっす!」
マオの手には、かがやく石が握られていた。それをククイ博士へと手渡す。
ククイ博士「よし、これでかがやく石は残り2つだ!」
ライチ「ん、メレメレかウラウラのどちらかが石を貰えたのかい?」
ククイ博士「ああ、メレメレでカプ・コケコから石を貰えたって連絡が入ってきてね。今、ハウとしんのすけのお父さんがポニ島に向かっているよ」
ライチ「となると、ウラウラとポニか。クチナシとしまキングの孫のハプウ……だったね。2人がうまくカプに取り計らってくれるといいけれども」
ククイ博士「大丈夫。きっとうまくいくさ!」
ライチ「それにしても、財団の代表……ルザミーネだっけねぇ。このアローラにビーストを解き放つだけじゃなくて、大試練を終えて疲弊したしんのすけに手を出して、ビーストの世界にさらうなんて、許せないね」
マオ(初対面でしんのすけ君をお持ち帰りしようとしたのにそれ言うんですか……)
ライチ「リーリエは、しんのすけと母親を取り戻しにビーストの行く世界に行くつもりなんだろ? なにか母に対して深い事情でもあるんだろうね。できることなら、手伝ってやりたいけどさ」
ククイ博士「それはリーリエ自身が解決しなきゃいけない問題だよ。僕らが深入りしていいことじゃない。僕らがするのは、この世界を守ることだよ」
ライチ「そうだね……」
22 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:03:47.29 ID:31e3ztue0
ククイ博士「……ライチさん。いや、マオにも訊いてみようかな」
マオ「はい?」
ククイ博士「君たちはビーストと戦ってみて、他のポケモンと比べてなにか感じるものはあったかい?」
ライチ「ビーストと戦って感じるもの、ねぇ」
マオ「あたしは正直、早く街の人たちを避難させなきゃって思っていたので……そういうことを考えている余裕がありませんでした。強いて言うなら……なんとなくですけど、ぬしポケモンのラランテスと同じオーラをまとっていたのを見たくらいです」
ライチ「そうだね……あたしは特に何も感じなかった、かな」
マオ「えっ……?」
ライチ「確かにビーストたちと一戦交えてみると、そこらのポケモンとは比べ物にならない戦闘力を持っているよ。ひょっとしたら、1匹1匹が伝説のポケモンに肉薄するくらい強いかもね」
ライチ「だけど、それ以上だね。ビーストたちは強いポケモンだけど、後は草むらから飛び出してくる野生のポケモンとそう変わらない気がする」
23 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:04:43.18 ID:31e3ztue0
ククイ博士「僕も同じ感情を抱いたんだ。さっき、白いビースト3匹と戦ってみたけれどもね……繰り出してくる技は、僕が知っているかくとうやむしタイプの技ばかりだったんだ」
ククイ博士「戦闘力は桁違いだし、その凶暴性もさることながら……だけど、ビーストもまた、ポケモンということかもね」
ライチ「そうだね……ビースト自身もひょっとすれば、他のポケモンと同じように心が通じ合えるかもしれないね」
ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!
全員「……!!」
ククイ博士「ビーストの反応……!」
バーネット「周りの空間に歪みは見られないから、どこか近くにビーストがいるっていうことかしら?」
マオ「ライチさん! あそこです!」
マオが空を指すと、遠くにマッシブーンとフェローチェの群れがこちらに向かって飛んできたではないか!
数え切れないほどのマッシブーンとフェローチェが羽音を立ててククイ博士たちの上空を通り過ぎていくが、そのうちの数匹がククイ博士たちの存在に気付いて、降り立ってきた!
マッシブーンたち「ブゥーーンッ!」フロントダブルセップス!
フェローチェたち「ローッ……!」ビシッ
24 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:05:42.45 ID:31e3ztue0
ライチ「行くよ、マオ!」スッ
マオ「はい、ライチさん!」スッ
ククイ博士「僕も加勢する――」
ライチ「博士、あんたは船に乗ってエーテルパラダイスに戻るんだ! この島を守るより、やるべきことがあるんだろ!」
ククイ博士「!」
ライチ「さ、ここはあたしらに任せて、早く行きな。それで、絶対にしんのすけのこと、取り戻すんだよ。あの子はライチさんを初めてナンパしてくれたからねえ。その想いに応えてあげないと」ニヤッ
マオ「ライチさん……」ジローッ
ライチ「ふふふ……ジョークはともかくとして、アローラのこと、アンタたちに託したからね」
ククイ博士「ああ、任せてくれ! バーネット、行くよ!」
バーネット「ええ!」
2人が船着場へと走り出したところで、ライチとマオは一斉に各々のボールを投げつける。
ライチ「頼んだよ、ダイノーズ!」ヒョイッ
マオ「行くよ! アママイコ!」ヒョイッ
ダイノーズ「ダノノー!!」ポンッ
アママイコ「アッマーイ!!」ポンッ
25 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:06:36.35 ID:31e3ztue0
ライチ「ダイノーズ、いわなだれ!」
マオ「アママイコ、ふみつけ!」
ダイノーズ「ノズズッ!」ズズズッ
アママイコ「アマッ!」ダッ
ダイノーズが無数の岩をマッシブーンとフェローチェに向かって落としていき、アママイコは1匹のフェローチェに向けて頭上へジャンプし、踏み潰すように足を勢いよく振り下ろした!
マッシブーンA「ブーンッ!」グッ!
フェローチェA「フェロッ!」フッ!
しかしフェローチェは一瞬にして姿を消して回避し、マッシブーンはいわおとしを両手で受け止める。
更に、着地したアママイコを狙いすましたように、別のフェローチェがとびひざげりを放ち、ダイノーズにフェローチェと同様別個体のマッシブーンがアームハンマーを繰り出した!
ドゴッ!
ドガッ!
ダイノーズ「ダノッ!?」
アママイコ「アマィッ!」
マオ「アママイコ!」
ライチ「ダメだ、数が多いね!」
26 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:10:52.32 ID:31e3ztue0
更にダメ押し、と次々とマッシブーンとフェローチェたちがダイノーズとアママイコ、更にはトレーナーのライチとマオに襲いかかってくる!
マッシブーンたち「ブゥゥゥンッ!」ドドドド!!
フェローチェたち「フェロォォッ!」ドドドド!!
ライチ「くっ……!」
マオ「ライチさん!」
???「ゴルバット! エアスラッシュ!」
???「ラランテス! ソーラーブレード!」
ゴルバット「ゴルルッ!」バサバサッ!
ラランテス「ラランッ!」ブンッ!
マッシブーンB&フェローチェB「!」
27 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:11:46.26 ID:31e3ztue0
ゴルバットの空気の刃がマッシブーンたちの筋肉の身体を次々と切り裂いてその身を怯ませ、太陽の力を得た光の刃が、フェローチェたちを吹き飛ばしていく!
マッシブーンB「ブ、ブンッ!」ザクザクッ
フェローチェB「フェローッ!?」ザンッ
マオ「い、今のは……?」
ザッ
???「ビーストにダメージを与えたよスッチー!」
???「やったねスカりん!」
スッチー&スカりん「ふたりの愛の力は、ビーストにだって負けない!」
ライチ「……あんたたちは!」
マオ「スカル団?!」
マッシブーンB「ブンブーンッ!」グワッ!
フェローチェB「フェロォォ!」フシューッ!
スッチーとスカりんに倒されたマッシブーンとフェローチェが起き上がり、4人に襲いかかる!
スッチー「ひええ! こっちに来たーっ!」
スカりん「やっぱ戦わなきゃよかった怖いよスッチー!」
28 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:15:21.10 ID:31e3ztue0
ライチ「くっ……!」
助けに行こうとも、ダイノーズは傷ついて動けない。このままじゃ大変なことになる――。その時だった。
「カ プ ゥ ー フ フ ! !」
カッ!!
ドンドンドンッ!!
マッシブーンたち「ブッ……!?」ドッ!
フェローチェたち「ロォッ?!」ドッ!
ライチ「……!」
咆哮と供に不思議な光弾がマッシブーンとフェローチェたちへ落下したかと思うと、次々とビーストたちが倒れていく!
その直後、今度はキラキラと光る鱗粉がライチたちの前に降り注ぎ、傷ついたダイノーズとアママイコの傷が塞がっていく。
29 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:15:58.13 ID:31e3ztue0
ダイノーズ「ノズズッ!」ギラッ
アママイコ「アッマーイ!」シャキーン!
マオ「ムーンフォースに鱗粉……ライチさん、これって!」
ライチ「ああ……」
空を見上げると、桃色の光がコニコシティの方角に向かって消えていくのが見えた。
ライチ(……ありがとう、カプ・テテフ)
スカりん「なんだか知らないけど助かったよスッチー!」ギュッ
スッチー「私たちの愛の力ね、スカりん!」ギュッ
ライチ「……」イラッ
30 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:30:19.29 ID:31e3ztue0
その頃、ウルトラスペースでは――。
気が付くと、ルザミーネや彼女の手持ちのウルトラビーストの姿が消えており、しんのすけは優しく地面に下ろされた。
しんのすけはきょとんとしていると、他の個体より小さなフェローチェが、しんのすけの顔を覗いていた。
フェローチェ『お怪我はありませんでしたか? しんのすけ様……いえ、しん様』
しんのすけ「あんた誰? なんでオラの名前知ってんの?」
フェローチェ『覚えていませんの……。でも、わたくしはあなたに助けられたこと、忘れていませんわん』
しんのすけ「そうだっけ? てゆうか、どっかで聞いたことあると思ったら、あいちゃんみたいな声してるね」
フェローチェ『あいちゃん……とは存じませんが、どなたでしょうか?』
しんのすけ「カスカベ地方にいる、オラのお知り合いの1人。とってもお金持ちで、いつもオラに付きまとってマサオくんをこき使ってるの」
フェローチェ『それに似ていると?』
しんのすけ「そーそー、声もカザマくんたちのように似てるし、しん様って呼ぶの、まんまあいちゃんだし」
フェローチェ『まぁ、しん様のお知り合いに似ているなんて、光栄ですわ。なんなら、そのままあいと呼んでくださいませ。なにせ、人間に呼ばれる名前が無いので』
しんのすけ「じゃああいちゃん、なんでオラのこと知ってるの?」
フェローチェ(酢乙女あい)『以前、あなた方に助けていただいたからです。あなた方がアローラ地方と呼ぶ世界のアーカラ島で……』
しんのすけ「あーっ!」
31 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:31:46.22 ID:31e3ztue0
フェローチェ『思い出していただけましたか?』
しんのすけ「……なんだっけ?」
フェローチェ「」ガクッ
しんのすけ「オラ、アーカラ島っていうと、ライチおねいさんとカキくんの乳首しか印象に残ってないからー」
フェローチェ『は、はぁ……』
フェローチェ(なんてマイペースで変わった子なのかしら……初めて見るタイプの人間ですわ)
突然、しんのすけのリュックがもぞもぞと揺れ始めた。
ゴソゴソ
しんのすけ「お?」
ロトム図鑑「ふぅーっ、やっと起動できた」
ロトム図鑑「まったく……変なエネルギーが身体中に流れ込んで強制的にシャットダウンしたかと思ったら、ここはどこだ?」
しんのすけ「あれ? ぶりぶりざえもん、いつのまに?」
32 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:35:22.30 ID:31e3ztue0
フェローチェ『あなたは確か……?』
ロトム図鑑『ふん、忘れたのか。ならもう一度名乗ってやる。その耳かっぽじってよく聞くがよい』
ロトム図鑑「私はアローラ地方のアイドルにしてもりのようかんのゆるキャラ! その名もレオナルド・ロトブリオ。もしくはアレッサンドロトム・フランチェスカ・デ・ニコラと呼ぶが良い」
しんのすけ「ぶりぶりざえもんっていうの」
フェローチェ『まぁ、変わったお名前。ぶりぶりざえもんさん。わたくしはあいですわん』
ロトム図鑑「おいっ! 間違って覚えられたじゃねぇか! どーしてくれる!」
しんのすけ「だって事実だし」
しんのすけ「ねぇ、ひょっとしてあいちゃんってウルトラビーストなの?」
フェローチェ『ウルトラビースト……? そういえば、あの生き物と合体していた人間の女は、あい達をそんなふうに呼んでいましたわん』
ロトム図鑑「なに? お前がウルトラビーストなのか?」
フェローチェ『それより、しん様には確か、カザマくんとマサオくんという方が一緒にいたような気がしたのですが……』
33 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:38:21.87 ID:31e3ztue0
しんのすけ「あーカザマくんもマサオくんも、みんな向こうの世界にはぐれちゃったみたいで。いやぁ全く参りましたな、もう」
フェローチェ『むしろ、あなたがこっちに来てしまったと思うのですが……』
しんのすけ「そうともゆー」
しんのすけ「てゆうか、ここってどこなの?」
ロトム図鑑「GPS機能を使っても、表示されないどころかここは電波も通っていないとは。ここはどこか辺境の地かどこかなのか?」
フェローチェ『あいにも、はっきりとは分かりませんわ。ただ、ここはしんのすけくんにもあいにとっても異なる別の世界で、簡単に言うなら世界の狭間のようなものでは……』
しんのすけ「んー……オラにはさっぱりだけど、ここから元の世界に帰ることって出来る?」
フェローチェ「はい! 『穴』が開いていれば、ですけれども」
しんのすけ「穴?」
34 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:39:16.04 ID:31e3ztue0
フェローチェ『この世界には、いろんな世界へ通じる穴が、時折開かれることがありますわ。ですから、あなたがたがウルトラビーストと呼ぶ、様々な世界からやってきた生き物も、多くここに生息していますの』
フェローチェ『ですから、しん様とぶりぶりざえもんさんのいた世界への穴が開いて、それを見つけることができれば、帰れますわ』
ロトム図鑑「ホントか?」
しんのすけ「じゃあ穴探しに行きますか。ほっとくとかーちゃんとリーリエちゃんがうるさいし、お腹もすいたし」テクテク
フェローチェ『ああ、お待ちになって。あいもお伴いたしますわ! 助けてくれたお礼に、しん様達を元の世界へ送り届けますわ!』
しんのすけ「じゃ、ひとつよろしく頼むねー」
ロトム図鑑「ほんとに頼むぞ。こっちは命かかってるんだからな」
35 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:47:20.64 ID:31e3ztue0
ビーストの世界をさまよい歩くしんのすけたち。あたりには野生のウツロイドがたゆたっており、空には時折フェローチェやテッカグヤが飛んでいる。
かと言って地上は安全かと思ったらそうでもなく、マッシブーンたちがポーズを見せて肉体美を自慢していたり、デンジュモクが闊歩しており、中にはアクジキングが岩壁や植物を口の中に放り込んでいた。
ビーストたちの目をかいくぐりながら、しんのすけたちは元の世界へ通じるウルトラホールを探し歩いていた。
しんのすけ「なかなか穴が見つからないね」
フェローチェ『いつ、どこで向こうの世界に通じる穴が開かれるか分かりませんから……』
ロトム図鑑「くそっ、インターネットが接続できる場所なら救難信号なりGPSが使えたものを。まったくルザミーネめ、面倒なところに連れてきおって。今度会ったらたたでは済まないからな!」
しんのすけ「ぶりぶりざえもんが役に立たないのはいつものことだけどね」
ロトム図鑑「やかましい! だいたいお前もポケモンを図鑑登録しないからだろボケ!」
しんのすけ「だってめんどくさいんだもーん」
36 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:47:59.59 ID:31e3ztue0
ロトム図鑑「ケッ! しょせんちっさいインドぞうさん坊主にトレーナーなど務まらんのだ」
しんのすけ「なんだとー! ぶりぶりざえもんにちっさいインドぞうさんなんて言われたくないもん! インドぞうさんないクセに!」
ロトム図鑑「言ったな貴様! 図鑑に入ってるから見えないだけで、私のインドぞうさんこそ最強だ!」
しんのすけ「オラのインドぞうさんの方が最強だもん!」
ロトム図鑑「いいや私のインドぞうさんこそアローラ1だ!」
しんのすけ「なにおー! オラのインドぞうさんの方が宇宙一だもん!」
フェローチェ(インドぞうさんとはどういう意味なのか知りませんが、なんだかすごく恥ずかしくなってきましたわ……)
しんのすけ「フンだ!」プイッ
ロトム図鑑「フンッ!」プイッ
37 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:50:18.49 ID:31e3ztue0
しんのすけとロトム図鑑は互いに目を合わせないように体ごと逸らしながら進んでいくと、前方に、紙人形のような形をした小さなウルトラビースト――カミツルギが舞い降りてきた。
カミツルギ「……」フワフワ
しんのすけ「なにこれ?」
フェローチェ『この方もきっと、しん様のおっしゃっていた、ウルトラビーストでしょう』
ロトム図鑑「こんな紙っペラがウルトラビースト? はっ、紙飛行機にして吹き飛ばしてやるぜ! 喰らえラスターパージ!!」
意気揚々とロトム図鑑が飛び出す!
するとロトム図鑑の敵意に反応したかのように、カミツルギが動き出した。両手であたかも手刀を打つように、ぶりぶりざえもんへと襲いかかった!
カミツルギ「カミッ!!」ブンッ!
ロトム図鑑「ブヒッ!?」サッ
ザンッ!!
ぶりぶりざえもんが文字通り紙一重で回避した瞬間、彼の背後にある岩と植物が唐竹に割れて、粉々に砕け散った!
しんのすけ「すげー」
カミツルギ「カミーッ!」
38 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:52:30.24 ID:31e3ztue0
カミツルギは敵とみなしたぶりぶりざえもんに対して、何度も斬りかかってくる! その度に周りの岩や植物が切断されていく。
ロトム図鑑「わ゛ーっ! 早くなんとかしろー!」
しんのすけ「やれやれ……あいちゃん、お願い」
フェローチェ『お任せ下さいませ!』バッ
しんのすけのそばに立っていたあいが、一瞬で200キロ近くの速度でカミツルギに突っ込むと、とびひざげりを放った!
あいの不意打ちを受けたカミツルギは回避することもできず、そのまま岩壁に叩きつけられる。
ドゴッ!!
カミツルギ「ヅルッ!」ズズンッ!
しんのすけ「おー早い早い!」パチパチ
あいは2歩分後退すると、カミツルギが斬りかかってくるが次の瞬間にはあいが背後に回り込み、トリプルキックを放った!
ドカドカドカッ!!
カミツルギ「か、カミッ!?」
背中から音速のスピードによる蹴りを3発も受け、カミツルギは一度地面に転がると、相手が悪いと察したのか、奥へと引っ込んでいった。
カミツルギ「カ……カミィ〜」フラフラ
39 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 19:53:13.83 ID:31e3ztue0
ロトム図鑑「ふぅ、口ほどにもなかったぜ」
しんのすけ「あんた何もやってないでしょ」
フェローチェ『これがあいの実力ですわ。お手伝いする分には差し支えないと思いますが……お気に召したでしょうか』
しんのすけ「すごいスピードだったねえ。鼻にも止まらぬ速さですな」
ロトム図鑑「それを言うなら、目にも止まらぬ速さだ」
フェローチェ『まぁ、そう言ってくだされば、あいも戦った甲斐がありましたわ』
???「騒がしいと思って来てみりゃ、まさかお前がいるとはよ」
しんのすけ&フェローチェ&ロトム図鑑「!」
40 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:05:36.59 ID:31e3ztue0
ウラウラ島 マリエシティ(グラジオ)
エーテルパラダイスから離れて、マリエシティに降り立ったグラジオは、クチナシを――それでなくても彼の居場所を知っているキャプテンたちの姿を探していた。
マリエシティもまた、他の島同様、ビーストが暴れて目を覆いたくなるような光景へ変わり果ててしまっていた。
ジョウト地方の趣が残っていた建物のほとんどが崩れ、ひどいものでは、潰れてガレキの山と化したものまで様々だ。
名所であるマリエ庭園に至っては整備された草が焼け焦げ、橋は残骸がギャラドス型の池に沈み、茶屋の建物も火事になって煙を上げていた。
グラジオ「…………」
遠くを見ると、金箔の貼られた五重塔が、あたかも巨大な刃物で袈裟斬りにされたように切断されていた。これもまた、ビーストの仕業なのか。
グラジオ(母上……こうすることが、あなたの本当の望みだったのですか)
グラジオはここが危険というを理解しながらも目を閉じた。まぶたの裏には、いなくなってしまった一人の『家族』のために奮闘するルザミーネの姿が、そして次に部屋の一室でウツロイドと対面するルザミーネの光景が蘇る。
グラジオ(あの時から……母上は母上で無くなってたのかもしれない。だが、オレもリーリエも、アンタを――)
ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!
グラジオ「……!」ピクッ
41 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:06:31.92 ID:31e3ztue0
グラジオの持っているウルトラホールみっけマーク3がシグナルを鳴らし、震えだした。すぐにタイプ:ヌルを出して身構える。
ヌル「オオォォッ!」
グラジオ「どこから……来る!?」
すると、グラジオの眼前、マリエ庭園の中央部にウルトラホールが開き始めた。
ウルトラホールから現れたのは、テッカグヤに次いで巨大な体格と、身体の大半が大きな口を持つウルトラビースト、アクジキングだ。
アクジキング「グモォォォォッ!」
アクジキングが姿を現したとたん、すぐに2枚の舌を動かして、マリエ庭園の地面や建物の残骸、水を口の中に放り込んでいく。
グラジオ「……オレ達は眼中に入ってないと言いたげだな。行くぞ、ヌル! アイアンヘッドだ!」
ヌル「オオォォォッ!」ダッ!
ヌルは走り出すとジャンプし、アクジキングの頭部に向けて鋼鉄の兜を突き出して、頭突きを放つ!
42 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:07:07.09 ID:31e3ztue0
しかしアクジキングは、初めからヌルの攻撃など気にしていないというふうに、ガレキを口に入れて咀嚼する。
グラジオ「こんなことでは動じない……か。ヌル、あのでかい口にトライアタックを撃ちこめ!」
ヌル「オオオォッ……!」ブゥゥゥンッ!
ヌルが念じると、頭上に火・雷・氷の力を秘めた三つのエネルギーの球体が真っ直ぐにアクジキングの規格外な大口の中に放り込まれていく。と、アクジキングの口内に炎が巻き起こり、凍りつき、電撃が走った!
アクジキング「グモォォッ!?」
グラジオ「フッ、さすがにこれには堪え……!?」
アクジキング「グモォォォッ!」ブンッ!
43 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:07:46.21 ID:31e3ztue0
いきなり、アクジキングがその巨体を回転させて、尻尾をグラジオとヌルに向けて振り回した。グラジオはすぐに屈んで伏せることができたが、ヌルがにドラゴンテールが直撃して庭園の木に激突してしまう!
ドゴッ!
グラジオ「ヌル!」
ヌル「オオ……オオオ!」グググッ
アクジキング「グモォォ!」バグバグッ!
アクジキングは知ってか知らずか、ヌルの周りの地面に手を伸ばし、口の中へ入れていく。更にヌルのそばの木を引っこ抜いて口に入れると、その舌をヌルに向けて伸ばし始めた。
ヌル「オォォッ……!」
グラジオ「ヌル! 逃げろ!」
アクジキング「グモォォォッ!」
???「ガバイト! ドラゴンクローだ!」
突然、青い影がヌルの前に飛び出してきた!
ガバイト「グァァァッ!」ブンッ
アクジキング「グモォォォォッ?!」ザクッ!
44 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:10:24.16 ID:31e3ztue0
痛みでじたばた暴れるアクジキングから退避させるように、ビブラーバがやってくると、ヌルを持ち上げてグラジオの前に下ろした。そしてグラジオとヌルの前を、コモルーが守るように仁王立ちする。
ビブラーバ「ガガガッ!」
コモルー「オオオ……」
グラジオ「こいつらは……?」
???「いじっぱりのドラコ!」カーン!
???「れいせいのおキン!」カーン!
???「ひかえめのマミ!」カーン!
3人「三人合わせて、『スカル団黒ガバイト隊』!」バァーーーン!!!
グラジオ「」ポカン
アクジキング「」ムシャムシャ
おキン「……リーダー、あたいらもうスカル団じゃないんですよ。改名したほうがいいんじゃないスか?」
ドラコ「あ、あぁ、言われてみればそうだな……」
マミ「普通に『アローラ黒ガバイト隊』でいいんじゃないスか?」
ドラコ「それじゃベタすぎるだろ! もっとこう、ドカーンとインパクトのある名前をだな……」
プルメリ「……あんたら、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ」ザッ
45 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:11:20.63 ID:31e3ztue0
ドラコ「姉御!」
グラジオ「オマエら……なぜここにいる?」
プルメリ「そりゃこっちのセリフだよ。グラジオこそどうしてここにいるんだい?」
ドラコ「あたいらは姉御からの命令でウルトラビーストを追い払ってるんだよ」
おキン「そうだよ、それでたまたま危ない目に遭ってるアンタがいたってわけさ」
グラジオ「よせ……あれはお前たちが勝てる相手じゃない」
マミ「グラジオだって1人で挑んでヌルが食われそうになってたじゃねぇか」
ドラコ「そう、あたいら3人の力を合わせれば奴を倒せる! おキン、マミ、行くぞ!」
おキン&マミ「ウス!」
プルメリ「待ちな! グラジオの言うとおり、うかつに手を出しちゃ――!」
ドラコ「ガバイト! げきりん!」
おキン「ビブラーバ! むしのさざめき!」
マミ「コモルー! りゅうのいぶき!」
46 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:13:06.78 ID:31e3ztue0
ガバイト「ガァァァッ!」ブンッ!
ビブラーバ「ガガガッ!」ザザザザッ!!
コモルー「オォォォッ」ゴウッ!
3体のドラゴンポケモンによる一斉砲火がアクジキングへ向かっていく! ビブラーバのむしのざざめきで動きを止めつつ、コモルーのりゅうのいぶきで援護射撃を受けながら。ガバイトの怒涛の攻撃でアクジキングに多大なダメージを与える。
アクジキング「グモ……グモオォォォ!」ブンッ!
アクジキングがダメージを受けて身を悶えさせながら暴れまわる。しかしガバイトたちはそれを回避しつつ、再び攻撃を繰り返す。
するとアクジキングはガバイトたちに向き直ると、その口を大きく開いて息を吸い込むと……。
アクジキング「ヴ ェ ェ ェ ェ ェ ェ ッ ! !」
ドドドドド!!!
ガバイト&ビブラーバ&コモルー「!?」
グラジオ「なっ!?」
プルメリ「!!」
アクジキングの放った逸脱したゲップが一種の衝撃波となって、ガバイトたちを吹き飛ばしていく!
ドゴォォォッ!!
おキン「な、なにぃ!?」
マミ「コモルー!」
47 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:14:03.74 ID:31e3ztue0
プルメリ「今のはゲップか……。あんな隠し玉、持ってたとはね」
ドラコ「くぅっ! こんなやられ方、屈辱的すぎじゃねぇか! おい!」
ザッ
???「今日は厄日だね……」
5人「!」
クチナシ「……こいつと、こんなところで鉢合わせしちまうとはよ」
グラジオ「クチナシさん!」
プルメリ「おっさん!」
クチナシ「グラジオのあんちゃん、元スカル団のねえちゃんたち、あいつはビーストの中でも相当タフな奴なんだわ。下手に数撃っても、食われちまうのがオチだよ」
グラジオ「クチナシさん……アイツを知っているのか?!」
クチナシ「……ま、昔ね」
クチナシ「誰か、フェアリータイプのポケモンを持ってる奴いるかい」
ドラコ「いや……あたいら全員、ドラゴンタイプのポケモン持つってのが黒ガバイト隊のルールだからよ」
プルメリ「あたいも、今のところどくタイプしかいないね」
48 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:17:43.37 ID:31e3ztue0
クチナシ「そうかい。なら、こうするしかねぇか」
クチナシ「アブソル、あいつにれいとうビームだ」
アブソル「ガウッ!」
そばで控えていたアブソルが飛び出すと、アクジキングの大口にひるまず近づくと、青白い光線を放った!
アブソル「オォォッ!」ズピーーッ!!
アクジキング「グモ……!?」ピキキキッ
アブソルのれいとうビームを受けたアクジキングは見る見るうちに氷に覆われていき、次第に動きが鈍くなっていく。
クチナシ「――プルメリの嬢ちゃん、奴を凍らせるよ」
プルメリ「わかったよおっさん、ドヒドイデ! れいとうビーム!」
ドヒドイデ「ドヒドヒッ!」キィーン!
アブソルに続いて、プルメリのそばで控えていたドヒドイデもれいとうビームを発射する!
すると、さらにアクジキングの動きが緩やかになってゆく。
アクジキング「グ……モ……ッ!」ビキビキッ!
ピキッ!
そして、アクジキングの全身が完全に凍結し、動かなくなった。
49 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:18:36.14 ID:31e3ztue0
おキン「おおっ! 凍らせた!」
マミ「こっから巻き返すんですね!」
クチナシ「いや、あのウルトラホールの中に押し戻すよ」
グラジオ「倒すんじゃないのか?」
クチナシ「さっきも言ったがよ、あいつはとんでもなくタフな奴なんだよ。ここにいる戦力だけだと、あいつを倒せても誰かが犠牲になるのは間違いないぜ」
ドラコ「そんなに恐ろしい相手……なのか?」
プルメリ「見てわかるだろ? もうちょっと慎重さっていうの覚えな」
クチナシ「……それより、早くやらないと目覚めちまうよ。ポケモンたちの力を借りて、あいつを元の場所に戻してやんなきゃな」
グラジオ「わかった。それに、アンタに話もあるしな……」
50 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:23:43.82 ID:31e3ztue0
カプの村 モーテル
クチナシ「なるほど……月の笛、ね。それで、この事件の親玉をどうにかするってわけかい」
プルメリ「そんなことが……まさかあの子が代表に狙われるなんてね……」
グラジオ「ああ、そのためにカプ・ブルルからかがやく石を貰えないだろうか」
クチナシ「……正直なところ、あいつが素直に首を縦に振るとは思えねぇけどな」
グラジオ「なぜだ?」
クチナシ「昔一度、この村の奴らがカプ・ブルルの怒りを買う真似をしたからだよ。それ以降、人間不信とまではいかねぇがよ、人に対して警戒しているっていうのはあるね」
マミ「リーダー、こいつら何話してるんすかね?」ヒソヒソ
おキン「カプのことが話題に出てますけど……」ヒソヒソ
ドラコ「さぁな……」ヒソヒソ
クチナシ「俺もしまキングだけど、あいつの姿……しまキングになったときの一度しか見たことねぇんだわ。なにせ、今回の大量発生前、この島の上空にウルトラホールが開かれた時も、カプ・ブルルは静観してたからな」
グラジオ「今は非常事態だ……。月の笛を完成させなければ、このアローラがビーストによって壊滅してしまう」
クチナシ「それもまた、ひとつの定めって奴じゃないのかい? 永遠に続くもんなんてありゃしないんだよ。アローラもまた、こうやって滅ぶ運命なのかもしれないぜ」
グラジオ「そんなものを受け入れられるほど、オレ達は自分の運命を悟ってなんかない。オレ達は最後までビーストたちに抗って、戦い抜く! ヌルと供に!」
51 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:24:48.83 ID:31e3ztue0
グラジオ「そういうクチナシさんこそ、もし諦めているなら、なぜオレたちを助ける? 本当はどこかで、アローラを救いたいという気持ちがあるんじゃないのか?」
クチナシ「……まいったねえ」フッ
コンコンッ
ガララッ
グラジオ「!」
マーレイン「すまないね、思ったより『LIGHTNING』の数が多くて、手間取ってしまったよ」
クチナシ「ま……ちょっとプルメリのねえちゃんとマーレインのあんちゃんと話してな。おれは外の様子、見てくるからよ」
マーレイン「お気をつけて、クチナシさん」
ガララッ ピシャッ!
グラジオ「……そういえば、なぜお前たちがここにいるんだ? さっき解散したといつていたが、スカル団はどうなったたんだ?」
プルメリ「……グラジオの言うとおり、スカル団は解散したのさ、一応ね」
52 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:26:08.60 ID:31e3ztue0
※修正
グラジオ「そういうクチナシさんこそ、もし諦めているなら、なぜオレたちを助ける? 本当はどこかで、アローラを救いたいという気持ちがあるんじゃないのか?」
クチナシ「……まいったねえ」フッ
コンコンッ
ガララッ
グラジオ「!」
マーレイン「すまないね、思ったより『LIGHTNING』の数が多くて、手間取ってしまったよ」
クチナシ「ま……ちょっとプルメリのねえちゃんとマーレインのあんちゃんと話してな。おれは外の様子、見てくるからよ」
マーレイン「お気をつけて、クチナシさん」
ガララッ ピシャッ!
グラジオ「……そういえば、なぜお前たちがここにいるんだ? さっき解散したと言ってたが、スカル団はどうなったんだ?」
プルメリ「……グラジオの言うとおり、スカル団は解散したのさ、一応ね」
53 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:29:27.63 ID:31e3ztue0
グラジオ「なに?」
プルメリ「この島とポニ島でね、まぁ色々あったのさ。グズマのことを、しんのすけとリーリエに頼んで、そのままあたいらはこの島に戻ったんだ」
プルメリ「だけど、その矢先にこれだよ。かわいい部下たちをビーストたちの手にかからせたくなかったし、グズマを探そうなんていうムチャもさせたくなかったからね。そのまま、解散したんだよ」
プルメリ「それでも、まだグズマに未練があるのか……それともこのアローラがやっぱり好きなのか、団員のほとんどが戻ってきてね、「自分たちにできることはないか」ってあたいに相談してきたんだよ」
プルメリ「だからあたいは、『グズマが帰ってきたら、みんなでアローラにしでかしたことを償わなきゃいけない。そのためにこのアローラを守りな』って言ってやったのさ」
プルメリ「それをどこで聞きつけたのか……クチナシとマーレインのおっさんコンビに言いくるめられて、こいつらと一緒にアローラの島を巡って、街の人たちの避難の活動と、ビーストの討伐をしていたのさ」
マーレイン「彼女らに償う意識があるなら、それをもっと多くの人に知ってもらうべきと思っただけだよ。それに、プルメリ自身戦力として申し分ないからね」
プルメリ「ありがとよ。それより……しんのすけが代表に連れ去られて、月の笛を直すために、ここへねぇ」
グラジオ「さっき連絡が入ったが……メレメレとアーカラのカプから、かがやく石は貰えたそうだ。残りはこことポニだけだ」
マーレイン「カプ・ブルルは温厚な分、ものぐさなところがあると聞くからね。Zリングを作る目的以外で、かがやく石を人間に渡すことに抵抗があるかもしれない」
グラジオ「どれかひとつでも石が欠けてしまえば、その時点で月の笛は直すことができない。……ビーストが現れたと同時にウルトラホールに飛び込むという案も考えたが、その先がどこに繋がっているかわからないからな……最悪、戻ってこれなくなるかもしれない」
マーレイン「そうだね……たぶん、月の笛を修復するうえでここが一番の山場だと思うよ」
グラジオ「ともかく今は……クチナシさんを説得して、なんとかカプ・ブルルに会わせてもらわなければ何も始まらないがな」
54 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:31:22.55 ID:31e3ztue0
プルメリ「グラジオ、ちょっといいかい?」
グラジオ「……なんだ?」
プルメリ「もしも、その月の笛とやらを直して、代表のもとへ向かうんなら、あたいも連れて行って欲しいんだ」
グラジオ「……本気か? そもそも、グズマを助けるのはしんのすけとリーリエに任せたんじゃなかったのか?」
プルメリ「最初はそうするつもりだった。弱いあたいらが出しゃばるより、2人に任せちまおうって考えてたよ」
プルメリ「でもね、しんのすけに「一緒に助けに行こう」「弱いなら強くなればいい。大事な人なんでしょ」って言われたよ」
プルメリ「悔しいけどね、あんな小さな子供の言葉でもズシンと来るものがあったよ。素直な気持ちに嘘をつき続ける自分がヤになっちゃうね」
プルメリ「グズマはホントバカ! だからね……あたいが引っ張ってでも、あいつは取り戻さなくちゃいけないんだ」
ドラコ「姉御! だったらあたいらも……」
プルメリ「アンタはここでマーレインとクチナシのおっさんの手伝いをしてな。心配すんな、アンタらの気持ちを背負ってグズマを迎えに行ってくるからさ!」
ドラコ「姉御……わかりました!」
グラジオ「もう一度言うが……本当にいいのか? ビーストの世界に行って、命の保証はないんだぜ。たとえあんたでもな」
プルメリ「くどいよ。女に二言はないってね。あいつはあたいが助けに行かなくちゃ」
55 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:32:28.57 ID:31e3ztue0
ガラララッ
クチナシ「グラジオのあんちゃん、いるかい?」
グラジオ「クチナシさん……」
クチナシ「……来なよ、カプ・ブルルに会いたいんだろ? あいつは今、実りの遺跡にいるみたいだからよ」
グラジオ「会わせてくれるのか?」
クチナシ「ああ……だが、プルメリの嬢ちゃん。そっちもついてきな」
プルメリ「あたいもかい? どうして?」
クチナシ「……案外、説得するのに役に立つかもしれないからな」ニヤッ
グラジオ&プルメリ「????」
56 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:35:34.08 ID:31e3ztue0
実りの遺跡
グラジオ「ここが実りの遺跡……」
プルメリ「カプの遺跡の中に入ったのは生まれて初めてだよ……なんだか重苦しい雰囲気だね」
グラジオ「だが……肝心のカプ・ブルルはどこにいるんだ?」
クチナシ「……」テクテク
クチナシは祭壇に上がると、石像にそっと右手を伸ばして触れた。
クチナシ「……聞こえるかい」
グラジオ&プルメリ「!」
クチナシ「ずいぶん久しぶりだね。……こうして語りかけるのはしまキングになって以来だよな」
グラジオ(カプ・ブルルに語りかけているのか?)
クチナシ「わかってるだろ? 外が今、どうなっているのか」
クチナシ「ビーストがわんさかだよ。これまで見てきたもんとは比べ物になんねぇ程にな」
クチナシ「キャプテンも出ずっぱりさ。アセロラに至っては、月の笛を直しているからねぇ」
クチナシ「……そうさ、月の笛、壊されちまったのよ。ビーストを従えてる奴の仕業さ。おかげで向こうにいる親玉をどうにかしようとしても、肝心の伝説のポケモンが呼べないんだわ」
57 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:37:15.34 ID:31e3ztue0
クチナシ「言いたいこと、わかるだろ? お前さんの力、借りたいんだよ」
プルメリ「……」
クチナシ「月の笛を直すために、かがやく石が必要なんだとよ。お前さんなら知ってるんじゃないのかい」
クチナシ「……お前さんが人間に抱く気持ち、わからんでもねぇんだ」
クチナシ「あそこにいる嬢ちゃん。元スカル団の幹部なんだとよ。今はアローラを救うために、スカル団を解散させて、命懸けでビーストと戦ってるぜ」
プルメリ「!」
クチナシ「別に例の件で許しを請うなんて気持ち、これっぽちもないんだわ。だけどよ、今はアローラの危機なんだ。善も悪も関係なしに、みんなが一丸となってビーストの驚異と戦っているんだ」
クチナシ「それでもお前さんは、ここでじっとしているつもりかい? このまま、滅びの運命を受け入れるつもりかい?」
クチナシ「……言いたいことは、それだけだよ。あとは、お前さんの判断に任せるぜ」
そしてクチナシは石像から手を離すと、祭壇から降りてグラジオたちと向き合った。
58 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:38:28.70 ID:31e3ztue0
グラジオ「……クチナシさん。カプ・ブルルは――」
クチナシは肩をすくめた。
クチナシ「……どうだかね。ただ、向こうには向こうなりの考えってものがあるからさ」
プルメリ「おっさん、あたいは……」
チリンチリン!
グラジオ「なんだ……?」
プルメリ「鈴の音?」
――カ プ ゥ ブ ル ル !
祭壇内にカプ・ブルルの咆哮が轟く! 一瞬、グラジオたちが反射的に身構えるが、クチナシが手を上げてグラジオたちを制する。
クチナシ「……やっと、動いてくれたか」ニッ
グラジオ「?」
59 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:38:56.83 ID:31e3ztue0
再びクチナシは祭壇に上がると、一度身をかがめて立ち上がった。その手には、光り輝く石が握られていた。
グラジオ「それは――!」
プルメリ「カプ・ブルルは……認めてくれたのかね」
クチナシ「どうだかね。だけど、嬢ちゃんたちの活躍、カプ・ブルルはちゃんと見てるみたいだぜ? だからこそ、考えを変えたのかもな」
プルメリ「……!」
クチナシ「ほら、かがやく石だ。持って行きな」つ かがやく石
グラジオ「クチナシさん――すまないな」
クチナシ「……頼んだぜ」
グラジオ&プルメリ「ああ!」
60 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:40:34.14 ID:31e3ztue0
ポニ島 海の民の村(ひろし&ハウ)
メレメレ島でカプ・コケコからかがやく石を貰えたひろしとハウは、カプ・レヒレからかがやく石を貰うために、ポニ島へと船を走らせていた。
遠くから見たポニ島は、メレメレ島と比べてみると被害が少ないように見えた。しかし、島に近づいてみると、ビーストによる被害があらわになった。
桟橋が入り組んでいた海の民の村には、停泊しているほとんどの船が姿を消していた。桟橋もところどころが壊れてしまっていて、そのまま岸に船を止めてしまったほうが安全に降りれるという有様だ。
ひろし「よし、まずはハプウちゃんのところへ行ってみようぜ」
???「待ちや!」
ひろし&ハウ「!」
海の民の団長「君ら、何しに来たん? どこの島も今、ビーストっちゅうのがぎょうさん溢れて危険やぞ」
ハウ「おれたちーハプウさんに会いに来たんだー。カプ・レヒレから、かがやく石を貰うためにー」
61 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:41:28.15 ID:31e3ztue0
団長「ハプウちゃんにか? それに島の守り神にも用があるとは……」
ひろし「ハプウちゃんは今、どこに居るんですか?」
団長「今はたぶん、ポニの古道にある家で休んでるはずや。なんでも、戦闘中に怪我してしもうたとか言ってたが……」
ハウ「怪我ー?! だいじょぶなのかなー?」
ひろし「ともかく、まずはハプウちゃんの家に行こう。俺たちは今かがやく石が必要なことだけは話しておかないと」
団長「気を付けなはれや。この村も安全じゃあないし。島を歩けば、とんでもなく強いビーストに襲われてしまうで」
団長「わしも、この島にいるトレーナーさんたちを全員避難させたら、すぐによそへ逃げるつもりや。お前さんらも長居はせん方がええで!」
ひろし「俺たちも、今は一刻を争っている事態です。教えてくれてありがとうございます」
団長「いやいや、礼には及ばん」
ハウ「じゃー急ごー! ハプウさんの怪我も気になるしー」
ひろし「ああ!」
62 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:42:05.22 ID:31e3ztue0
ポニの古道
ひろし「確か……ここらへんだったよな? 島に家がひとつしかなくって、そこにハプウちゃんが住んでるって聞いたが……」
ハウ「あー! バンバドロだー!」
ハウが呼びかけると、畑の近くにいたバンバドロが2人の存在に気付いて、声を上げるとのっしのっしと重い足取りで近づいてきた。よく見るとあちらこちらに小さな傷跡が残っており、幾重にも渡るビーストとの戦いを乗り越えたことを物語っている。
バンバドロ「ムヒイウン!」
ひろし「このポケモン、確かハプウちゃんが連れていたポケモンだよな。ってことは、あの家がハプウちゃんの家か」
ハウ「そうだねー……」
ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!
ひろし「うおっ!?」
ハウ「わーわー! ビースト?!」アタフタ
63 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:43:16.43 ID:31e3ztue0
ひろし「どこだ? どこに現れるんだ?」
ハプウ「なんじゃ、外が騒がしいのう」ガチャ
家のドアが開くと、頭に包帯を巻いたハプウが出てきた。
ハプウ「おお! ハウとひろしか! 無事でなによりじゃ!」
ハウ「その前にこの近くにビーストがいるよー! 早く見つけて倒さないとー!」
ハプウ「ん? ビースト? ……ああ、あいつのことかもしれんな」
ひろし「あいつ?」
ハプウ「そう慌てるな。まずは家に上がれ。エーテルパラダイスに避難した後の話をゆっくり聞かせてもらおうかの」
64 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:44:21.44 ID:31e3ztue0
ハプウの家
ひろしとハウは、ポニ島から避難してエーテルパラダイスで月の笛の修復にかがやく石が必要なことが判明し、カプ・レヒレから石を貰いに来たことを話した。
ハプウ「なるほどなぁ……決してアセロラを侮っていたわけではないが、王朝の知識は脈々と受け継がれておるということか」
ハウ「ところでその頭はー?」
ハプウ「ん? これのことか? いや、実は情けない話じゃが、ビーストと戦っている時に……」
ひろし「戦いの巻き添えを食っちまったのか……?」
ハプウ「いや、ビーストの猛攻にびっくりしてバンバドロから落馬してのう! そのまま頭をぶつけてしまったんじゃ! いやぁ、わしとしたことが、間抜けなことで怪我してしもうたわ! 頭の皮擦りむいただけで幸いじゃ」
ハウ「……」
ひろし「ま、まぁ、無事でなによりだ……」
ハプウ「それにしても、2人はカプ・コケコから石が貰えてなによりじゃな」
ひろし「家に来る前、博士からカプ・テテフから石が手に入ったって連絡が入った。後はウラウラ島とここだけだ」
ハウ「ウラウラ島は今グラジオが行ってるからーおれたちがここに来たのー」
ハプウ「ふむう……」
65 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:45:00.93 ID:31e3ztue0
ハウ「だからハプウさんからカプ・レヒレに石を頂けるかどうか、お願いできないかなー?」
ハプウ「もちろん、お主たちのすることに協力を惜しまないつもりじゃ。ただ……」
ひろし「ただ……?」
ハプウ「カプ・レヒレはおそらく、お前たち2人――あるいはどちらかに試練を課すじゃろうな」
ハウ「試練ー? キャプテンがするようなヤツのことー?」
ハプウ「ま、そうじゃな。試練達成で手に入るのがZクリスタルではなく、かがやく石と言ったところかの」
ひろし「どうしてカプ・レヒレは俺たちに試練を?」
ハプウ「カプ・レヒレは、心身を癒せる特別な水を作り出せる能力をもっておる。かつてポニ島に住んでいた者は、その恩恵を受けていたのじゃ」
ハプウ「だがな、そのためには、カプ・レヒレが作り上げる霧の試練を受けねばならないのだ。その試練を乗り越えた者だけが、水の恩恵に預かることができるのじゃ」
ひろし「つまり、水を手に入れる人たちと同じように、俺たちがかがやく石を持つに値する人間かどうか、カプ・レヒレは試したいわけだな」
ハプウ「その通りじゃ」
66 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:46:10.52 ID:31e3ztue0
ひろし「しんのすけを取り戻せるなら、どんな試練だってこなしてみせるさ。具体的に、何をすりゃいいんだ?」
ハプウ「それはカプ・レヒレが決めることじゃ。まずば彼岸の遺跡に行かねばな」
コンコンッ
全員「!」
???「マツリカ、ただいま戻りましたー。エンドケイプ周辺は異常なしですよー」
ハプウ「おお、そうか。ご苦労じゃったな」
マツリカ「おー? お客さんですか?」
ひろし「誰だ?」
ハウ「キャプテンの証つけてるー」
ハプウ「このふたりがさっき話した人たちじゃ。こちらが島巡りしているハウ、そしてこちらがしんのすけの父のひろしじゃ」
マツリカ「あー、あたしマツリカ。ポニのキャプテンやってます! といっても、普段は絵を描くためフラフラしてて、あたしの試練はないんだけど……」
ハウ「試練が無いキャプテンってなんか新鮮ー」
67 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:48:52.61 ID:31e3ztue0
ハプウ「こんな性格だが絵とポケモントレーナーとしての腕前は確かじゃ。あのデカいビーストも、マツリカが追い払ったでな」
ひろし「あいつをか!?」
ハウ「すごいキャプテンなんだねー!」
マツリカ「いやーたまたまですよ! 相手がフェアリーに弱かっただけで」
ハウ「フェアリータイプのキャプテンなのかー」
ハプウ「弱点を突くだけで倒せるのなら、苦労はいらん。後はもそっとキャプテンである自覚を持てば言うことはないのだがな」
マツリカ「うーん。ハプウさんの言葉は耳が痛いですねー」
マツリカ「アローラも大変なことになっちゃいましたからねー。みんなの力を1つにして、この危機を乗り越えていきましょう!」
ハウ「うんー!」
68 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:49:30.06 ID:31e3ztue0
マツリカ「あ、そうでした! お近づきの印に、フェアリーZをどうぞ!」つフェアリーZ
ハウ「エー! いいのー?」
ひろし「……普通試練を達成してもらうもんなのに、いいのかな」
ハプウ「貰っておけ。しんのすけが帰ってきた時渡してやれ」
マツリカ「おーゼンリョク! ゼンリョク! 遠慮なくどーぞ。そもそもやる試練ないですしね」
ハプウ「マツリカ、わしはこの者たちを連れて彼岸の遺跡に行ってくる。その間、この家の留守を頼んだぞ」
マツリカ「分かりましたー! みなさんお気をつけてー!」
69 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:50:15.64 ID:31e3ztue0
ポニの古道
ハプウの家を出て歩き出すと、再びウルトラホールみっけマーク3のシグナルが鳴り響いた!
ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!
ハウ「わー! まただー!」
ハプウ「さっきもそれが鳴ってたのう。それはウルトラビーストを見つける装置かなにかなのか?」
ひろし「ああ、ウラウラのキャプテンが作ったらしいけど……ビーストはどこにいるんだ?」
ハプウ「それなら、あそこじゃ」
ハプウはのんびりと自分の畑を指さした。
彼女が耕している畑の上には、ウルトラビースト――カミツルギがふわふわと浮いていた。
ハウ「あれがウルトラビーストー?」
ひろし「今まで見てきた奴らと比べると、ずいぶんちっせぇなぁ」
ハプウ「甘く見るでないぞ。あのビーストの全身は、まさしく魔剣そのものじゃ。なにせ、一太刀でバンバドロの身体に深い切り傷を負わせたからの」
70 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:52:20.13 ID:31e3ztue0
ハウ「ほんとー? しんのすけの群れたマサオのアクアテールも受け止められたのにー?」
ひろし「だったら、早いとこ倒しちまった方が――」
ハプウ「いや、手を出す必要はなかろう。なにせ、あやつはこっち側が仕掛けなければ、攻撃してこないからの。放っておけば大人しくて可愛げのあるやつじゃ」
ハウ「そうなのー? おれ、ビーストってみんな凶暴なものって思ってたからー」
ハプウ「わしもこやつを見るまで同じことを思った。だが、あのビーストのように決して人間と敵対したり破壊活動をするような輩ばかりではないと認識を改めたのじゃ」
ひろし「住む世界が違っても、いろんなビーストがいる――ビーストはそこらのポケモンと変わらないってところか。結局こいつらも、ルザミーネに利用されてるってことだな」
ハウ「おれ……ずっとポケモンって人に使われて変わるものって思ってたー。いい人ならいいポケモンになって、悪い人なら悪いポケモンになるってー……。だけど、ビーストが街を壊しているのを見て、ポケモンってなんなのかわからなくってー……」
ハプウ「その考えも間違っておらん。だが、ポケモンにもビーストにも、人間と同じようにそれぞれ意志があり、性格もあるのじゃ。だからこそ、この世界は成り立ってると言えよう」
ひろし「もしかしたら、ビーストだって、街を壊したいヤツがいるかもしれないし、ただ単にこっちに来て、どうすればいいのか分からないまま慌てているヤツがいるかもしれない」
ハウ「そうかなー? うー……」
71 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:54:57.99 ID:31e3ztue0
ハプウ「ま、どちらにせよ、ビーストは別世界のポケモンだからか、ボールがポケモンと認識してくれないみたいだがの。今は普通のポケモンのように捕まえて意思疎通を図る、というやり方は出来ん」
ひろし「だけどアイツは……」
ハプウ「……うむ、ルザミーネはウツロイドを捕獲しておった。だから近い未来、ビーストとポケモンの境界線が無くなる時が来るかもしれんな」
ハウ「ビーストとも仲良くなれるかなー?」
ひろし「ハウくん自身もビーストと仲良くなれるって思いながら動けば、ひょっとすれば、その心がビーストに届くかもな。あいつらもポケモンなんだからな」
ハウ「……そうだねー! よーし、それじゃあかがやく石を貰って、しんのすけを助けたらビーストたちと友達になってみよー!」
ハプウ「その勢いじゃぞ、ハウ!」
72 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:55:44.89 ID:31e3ztue0
彼岸の遺跡前
ひろしとハウはハプウに連れられて彼岸の遺跡前にやってくると、「まずはそなたらが話したことを、カプ・レヒレに伝えてくる」とハプウ一人だけが遺跡の中へと入っていった。
そして、ハプウが遺跡に入って30分が過ぎた頃、ハプウが遺跡から出てきた。
ハプウ「戻ったぞ」
ハウ「どうだったー?」
ハプウ「案の定というべきか……試練を受けてそれを乗り越えられたら、かがやく石を渡そうとカプ・レヒレは仰っていた」
ハウ「じゃあおれが行くよー! ガオガエンたちと島巡りでたくさん試練をこなしてたから、きっと達成できるってー!」
ハプウ「いや――行くのはお主ではない」
ひろしじゃ、とハプウは指さした。それでもひろしは動じず、むしろ表情に真摯さが出てくる。
ハウ「おじさんがー?」
ひろし「俺が行けばいいんだな?」
ハプウ「カプ・レヒレは、おぬしが試練を達成できたとき、かがやく石を手渡すそうじゃ」
ひろし「試練の内容は?」
ハプウ「遺跡の中を散歩してくればそれでよい。時間で言うなら、10分前後というところかの。そのあいだに、カプ・レヒレはおぬしに石を渡すべきか否か見るそうじゃ」
ハウ「ポケモンとか飛び出してきたりはしないよねー? おじさん、トレーナーじゃないんだよー」
73 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:58:14.74 ID:31e3ztue0
ハプウ「カプの遺跡に野生のポケモンが入るということはないな。その心配は無用じゃ」
ハプウ「ひろしよ、カプ・レヒレがおぬしに課す試練は、霧と幻惑の試練じゃ」
ひろし「霧と幻惑?」
ハプウ「カプ・レヒレは霧を作って幻を作り、相手を自滅させるという戦い方をするのじゃ。その能力を、人を試すためにも使っておるそうじゃ。つまり、どれだけひろしがカプ・レヒレの幻に囚われないか、これが試練の要となるじゃろう」
ひろし「上等だ! 試練を達成して、必ずしんのすけを取り戻してやる!」
ハプウ「では、遺跡の中に入るがよい。一歩足を踏み入れた時点から試練開始じゃ」
ハウ「おじさんー頑張ってー! かがやく石を手に入れて、しんのすけを助けに行こうよー!」
ひろし「ああ、すぐに終わらせてくるぜ!」
74 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:58:54.47 ID:31e3ztue0
彼岸の遺跡
ハプウの言った通り、遺跡の中に一歩足を踏み入れると、奥から青白い霧が立ち込めていた。かろうじて背後にある出入り口に光が差し込んであるのが見えるくらいだ。
遺跡の中は不気味な静寂に包まれており、ハウが不安視していた野生のポケモンが出てくる気配なんて微塵もない。
ひろし「はは……これが試練か。これならお化け屋敷を歩くほうが、よっぽど試練になるぜ」
ひろしは強気な言葉を口に出して不安を紛らわせ、靴が石の床を踏む音を耳にしながらひとまず奥へと進んでいった。
すると、霧の中に、ぼんやりとたくさんの人たちがひろしの前に現れた。
ひろし「こ、これは……?!」
霧が晴れると、ひろしはハウオリシティの砂浜に立っていた。そしてひろしの目の前に立っていた人たちの正体は――。
ビキニのおねえさんA「ひろしさんようこそ、アローラ地方へ!」
ビキニのおねえさんB「お仕事、お疲れでしょう?」
ビキニのおねえさんC「アローラの海、ゆっくり楽しんでいってね!」
「「「アローラー!!!」」」
ひろし「ふおおおおーっ!??」
75 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 20:59:52.04 ID:31e3ztue0
ひろし「な、な、どうなってんだ? 夢でも見ているのか?!」
ビキニのおねえさんD「さぁさぁ、ひろしさん、そんな暑苦しそうな服なんて脱ぎ捨てて!」
ビキニのおねえさんE「海に入って私たちと遊びましょ」
ひろし「き、君たち、やめなさい」デレーッ
ビキニのおねえさんF「なあにデレデレしちゃって、かわいー!」
ひろし「うひひひ! じゃあ脱いじゃおっかなー!」
ひろし「……ハッ!」ピクッ
ひろし(いかんいかん、これはカプ・レヒレの見せている幻なんだ! こんなものに囚われちゃいかん! できるならずっと囚われたいけど)
76 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:00:36.20 ID:31e3ztue0
ひろし「いや、遠慮しておくよ。私は先を急いでいるんで、それじゃ!」
ビキニのおねえさんA「え? ひろしさん、待ってよぉ」
ビキニのおねえさんB「私たちと一緒に遊んでいこうよ!」
ひろし「くぅ〜カプ・レヒレめ……結構エグいことするんだな……」
ひろしは目をつぶってビキニのおねえさん達を振り切って歩き出すと、今度は大勢の人たちが練り歩く足音が聞こえた。目を開けると、今度は普段着から背広姿で繁華街に立っていた。
川口「先輩」
後ろから声をかけてきたのは、ひろしが転勤前、フタバカンパニーに勤めていた後輩の川口だった。
ひろし「川口? お前、なんでこんなところに?」
川口「えぇ? なに言ってるんスか。先輩が誘ってきたんでしょう?」
ひろし「え? そうだっけか?」
川口「さ、早く行きましょう。取引先の人、もう先に入ってますよ」
ひろし「先に入ってる……?」
77 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:01:38.32 ID:31e3ztue0
ひろしが顔を上げると、目の前にはかつて取引先と行き慣れたキャバクラの看板が。先に川口が歩き出して、ひろしに手招きする。
川口「先輩、急ぎましょうよ。遅刻すると取引先にも女の子にも怒られちゃいますよ」
ひろし「あ、あぁ」
ひろし(そうだなぁ……ここでうまくいけば、今後もフタバカンパニーとの関係が良くなるし、業績もアップする。それに、この店のマチコちゃんも可愛いんだよなぁ……)デレーッ
ひろし「……ハッ!」ピクッ
ひろし「……いや、俺はいい」
川口「え?」
ひろし「今は取引先とか、女とかに構っている暇がないんだ。お前にもな」ダッ
川口「えっ? ちょっと先輩! せんぱーい!」
川口の呼び声にも一切無視して、道行く人たちをかき分けるように、繁華街のど真ん中を走っていく。
ひろし(こんな下らない幻を見せて俺を試しているっていうのか! こんなものを見せたって俺の気持ちは変わんねぇ! ルザミーネからしんのすけを取り返して、家族を元通りにしなくちゃいけねぇんだ!)
ひろし「いい加減にし――ッ!?」
気が付くと、ひろしは繁華街から見慣れた住宅街へと移動していた。鞄を握った背広姿も変わっていない。繁華街のけたたましさも消えており、時折夜行性のポケモンの鳴き声が聞こえるのみだ。
ひろし「ここは……カスカベ地方か?」
78 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:03:41.36 ID:31e3ztue0
ひろしは鞄を手に、懐かしいアクションタウンの住宅街を歩き出すと、すぐ近くに懐かしささえ感じる、赤い色の屋根と白い壁の一軒家がひろしの前に現れた。
表札には、ひろし以下、家族の名前が書かれている。
ひろし「……!」
1階の家の窓には明かりがついている。中で聴き慣れた楽しげな声が聞こえてくる。ひろしは無視して通り過ぎようとした。
だけど足は、自然と玄関へと向けていた。チャイムを押すと、すぐに玄関に明かりがついて、足音が聞こえる。
そして、鍵が開く音がすると、ドアが開かれた。
みさえ「おかえりなさい、あなた」
ひろし「みさえ……」
79 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:04:26.76 ID:31e3ztue0
みさえ「どうしたの? そんなところでぼーっとつっ立っちゃって。早く入りなさいよ」
ひろし「あ、あぁ」
みさえに促されるまま、家の中へ入るひろし。
ひろし(嘘だ。これは幻だ。俺たちの家は今、アローラのメレメレ島に……それももう燃えちまってるはずだ)
ひまわり「た!」
ひろし「ひまわり……」
ひろしのスーツを引っ張って、抱っこするようせがんでいる。ひろしはひまわりを優しく抱きかかえると、確かにひまわりに触れているような感触がした。
ひまわり「きゃきゃ〜い♪」
みさえ「あなた、晩ご飯の準備できてるわよ。早く洗濯機に入れて、みんなでご飯にしましょ」
ひろし「みんなで……?」
みさえ「ところでしんのすけー! パパにおかえり言ったー?」
ひろし「……しんのすけ?!」
すると家の奥から、まだあれから半日と少し過ぎただけなのに、もう長いあいだ聞いていない気さえする声が聞こえてきた。
「あとでねー」
ひろし「――!」
80 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:05:17.02 ID:31e3ztue0
みさえ「今おかえり言いなさい! ひょっとしたら、おみやげがあるかも……」
「えっ? ホントホント!?」
ドタドタドタと聞こえてくる足音、そして廊下にあらわれたのは、
しんのすけ「とーちゃん! おみやげあるってホント?」
ひろし「しんのすけ!」
ひまわりとカバンを下ろすと、なりふり構わずしんのすけに駆け寄って、両肩を掴んだ。
ひろし「大丈夫か? 怪我は? ルザミーネとビーストになにかされなかったか?」
しんのすけ「ルミザーネ? ビースト? なにそれ?」キョトン
ひろし「え……?」
みさえ「やだ、あなたったら。いきなりごっこ遊びしようとしても、しんのすけだってびっくりしちゃうわよ」
しんのすけ「おおっ! アクション仮面LMS! メガルカリオとセットだ! とーちゃんありがとー!」
みさえ「こらっ! パパのカバン勝手に開けちゃダメでしょ!」
しんのすけ「ワッハハハハ! アクション仮面&ルカリオ参上! とおっ!」ドタドタドタ
81 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:06:13.30 ID:31e3ztue0
みさえ「……ったくもう、高かったでしょ?」
ひろし「あ、あぁ……」
みさえ「さ、あなた。服、洗濯機に入れてきて。その間にご飯並べちゃうから」
ひろし「……」
ひろしは言われるがまま、着ていた背広とワイシャツを洗濯機に入れて普段着に着替えると、居間へと向かった。
居間の真ん中にあるテーブルには、みさえの作った肉じゃがや野菜炒めといったオカズ、ひろしの座る位置にはビールと枝豆が置いてあった。
ひろし(そういえば、最近こうやって家族とテーブルを囲んで、飯食ってなかった気がするなぁ)
ひろしがいつも晩御飯を食べるときに座っている位置に腰を下ろすと、しんのすけが顔を紅潮させながら近寄ってきた。
しんのすけ「とーちゃん、お礼に肩揉んだげる」
ひろし「おっ、いいのか?」
しんのすけ「うん、アクション仮面買ってくれたお礼」
ひろし「じゃあ頼むよ」
しんのすけ「うん……」
82 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:06:51.67 ID:31e3ztue0
モミモミ
ひろし「おおっ、こりゃいい……ってどこ揉んでるんだ!」
しんのすけ「男の人はここ揉むと気持ちいいってとーちゃんの本読んで……」
ひろし「ば、バカっ! そんな本お前が読むな!」
げ ん
こ つ
しんのすけ&ひろし「」
みさえ「パパの本勝手に見ちゃダメでしょ! あなたもしんのすけの手が届くようなところにふしだらな本を置かないで!」
ひろし「は、はい……」ピクピクッ
ひろし(……この痛みも、幻なのか?)
83 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:07:52.45 ID:31e3ztue0
みさえのげんこつを受けながらも、晩御飯を囲むひろしたち。みさえは今日も家事が忙しかったことと、しんのすけが化粧品で落書きしたことを話していく。
みさえ「まったく、どうしていつもママの化粧品にいたずらするの?」
しんのすけ「だって面白いんだもーん」
ひろし「ダメじゃないか、勝手にかーちゃんのものをいたずらに使っちゃ」
ひまわり「たーい」
何気なく続いていく、家族たちの会話。
ひろし(そうだ……俺は……ここで)
ひろし(これで良いんだ……家族がみんな揃って……これで……)
84 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:08:43.09 ID:31e3ztue0
今日はここまで。
次回の更新はいつものように明日の夜です。
じゃ、そゆことで〜
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/13(火) 21:09:31.59 ID:pHeRlmR6O
気になるとこで区切りますなぁ…おつ
86 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:11:22.20 ID:31e3ztue0
【おまけ】
〜もしもしんのすけがマツリカと出会ったら〜
しんのすけ「みーてみたいーなーチラ見するチラーミィー♪」
マツリカ「おー、ナイスモチーフ!」
しんのすけ「ほほー?」
マツリカ「絵に描くとしたら、ポニの小さな旅人、ですねー!」
しんのすけ「おねいさん、誰?」
マツリカ「あーあたし、マツリカ。キャプテンやってます!」
しんのすけ「それはそれは、ご苦労さんですなぁ。その顔の刺青を見る限りカタギの人ではありませんな」
マツリカ「刺青じゃないですよ。ただのペイントですよー」
しんのすけ「てゆうか、キャプテンなら試練とかやるの?」
マツリカ「あー……今は絵を描くため、フラフラしててあたしの試練はないんだよね……」
しんのすけ「ほうほう、ニートですな」
マツリカ「うわぁーっ! マツリカ小さな子供にグサリと刺さるようなこと言われたー!」
87 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:12:29.25 ID:31e3ztue0
しんのすけ「あはあはあは、面白いおねいさんだね」
マツリカ「君はしんのすけくん、ですよねー? イリマくんから聞いてますよー。カスカベ地方から来たんですよね?」
マツリカ「アローラってとっても開放的でワンダーですよね! 特にポニの大峡谷って一層そう思うのですよね」
しんのすけ「おねいさんはとってもヘンダーな人だけどね」
マツリカ「うまいこと言うねーキミ」
マツリカ「あ、そうでしたそうでした! お近づきの印に、フェアリーZ、あげちゃいますね!」
しんのすけは フェアリーZを 手に入れた!
しんのすけ「え? 貰っちゃっていいの? なんかあっさりー」
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/13(火) 21:12:50.80 ID:0QhIDrqT0
おつ
大人帝国的な精神攻撃だな
89 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/13(火) 21:13:34.11 ID:31e3ztue0
マツリカ「フェアリーのZワザは、こうしてこうすればいいですからねー」
バッ! バッ! キューン ピカー!
しんのすけ「ほうほう、こうすればいいのですな」
バッ! バッ! プリプリ ピカー!
マツリカ「……!」ピクッ
しんのすけ「……おねいさん?」
マツリカ「おおっ、これは最高にナイスなモチーフ! 絵に描くとしたらポニのダブルマウンテンってところですね! 観察させてもらいますねー」カキカキサラサラ
しんのすけ「い、いやああああん! オラのおしり描かないでえっちい!! けだもの〜!!」ダッ!
マツリカ「わっ、ちょっとストップ! そのお尻のラインだけでもスケッチさせてよー!」ダダダ
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/13(火) 21:23:32.57 ID:hGEiMga00
乙
ハプゥの出会ったカミツルギはおまたのおじさんの生まれ変わりかな
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/13(火) 21:44:23.98 ID:2Q2pESf60
>>90
畑でぼんやり青空を見上げていたら、もしかしたら…。
92 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:00:42.76 ID:Y7xDIbbj0
???「騒がしいと思って来てみりゃ、まさかお前がいるとはよ」
しんのすけ&フェローチェ&ロトム図鑑「!」
しんのすけたちが一斉に声のした方向へ振り返ると、奇妙な形の木の枝に、グズマが座っていた。
グズマ「なんにも恐れない、むしろ恐れさせてなんぼのスカル団ボス、いわゆるグズマさまだがよ……言わせてもらうぜ、おまえらバカだな」
しんのすけ「くさやのおじさん、そこにお引越ししたの? 家賃いくら?」
グズマ「グズマだと言ってるだろうが。それに、引っ越したわけじゃねぇ」
グズマは木の枝から降りると、しんのすけたちに心底呆れるような表情で近づいてきた。
フェローチェ『しん様と同じ人間……。お知り合いですの?』
しんのすけ「スケスケおパンツ団のボスのくさやっていうおじさん」
ロトム図鑑「下着ドロ集団のボスだ」
グズマ「また何ぶつくさしゃべってやがる。そこにいるビーストとでも仲良くなったつもりかよ」
しんのすけ「まーね、あいちゃんに似てたもんですから」
93 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:01:49.91 ID:Y7xDIbbj0
グズマ「一体全体どんな手段を使ったのかさっぱり想像つかねえが、こんなところに来やがって……。つーか、なんで下半身丸出しなんだ」
しんのすけ「オラたち、妖怪メノクラゲオババに連れてこられちゃったの。で、あいちゃんに助けてもらいながら、元の世界に帰る道を探してるところー」
グズマ「妖怪メノクラゲオババ? お前……代表に連れてこられたのか?」
しんのすけ「だからそうだって言ってるじゃん」
グズマ「よく生きていられたな。ああ……あの人はもうヤバい、ヤバすぎる!」
グズマ「ウルトラビーストにすっかり夢中……もう誰の言葉も想いも届かねえ!!」
グズマ「俺もあいつを捕まえようとしたんだよ。けど、あいつにとりつかれてよ……」
グズマは宙に浮かんでいるウツロイドの1匹を指さした。
グズマ「するとよお! 体も! 心も! 勝手に目覚めてしまってよ!」
グズマ「自分が自分じゃなくなるようで、怖くなっちまうんだよお……!!」ガタガタ
94 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:02:38.03 ID:Y7xDIbbj0
グズマは目を見開きながら、息を乱し、髪を掻き、身体を震わせた。
自分がウツロイドに襲われて攻撃を受けたときの瞬間、訪れた力強くてどす黒い感覚と、ウツロイドと合体してマザービーストと化し、狂ったように笑いながらビーストに囲まれるルザミーネの姿に、おびえているのだ。
しんのすけ「……で?」
グズマ「は?」
しんのすけ「くさやのおじさんはこれからどうすんの?」
グズマ「どうするって……なにもしようがねえだろうが。こんなどんよりとした……よくわからん、ビーストだけの世界で……なにが出来るって言うんだ」
しんのすけ「じゃあ、オラたちと一緒に元の世界に帰ろうよ。どうせ暇なら」
グズマ「……本当にバカだな、お前」
しんのすけ「いやぁ、照れますなぁ。おバカなんて、しょっちゅう言われてますから」
グズマ「褒めちゃいねえよ」
グズマ「本気でこの世界から帰れると思ってんのか? あんなバケモンみてぇなビーストに、狂っちまった代表! この世界にはそれしかねぇんだ!」
しんのすけ「でもオラ、まだ島巡り終わってないし、かーちゃんもとーちゃんも、リーリエちゃんもみんなオラのこと待ってるだろうし」
グズマ「いいか、代表は既に、多くのビーストを手に入れて、アローラに穴を開ける力を得た! 今頃アローラはビーストで溢れかえって、地獄になっているだろうぜ……」
グズマ「そんな世界に帰ったところでなんになるってんだ。だったらこのまま、何もしねぇでじっとしてるほうがいい。行くも地獄、行かぬも地獄なら、わざわざ帰る意味なんてねぇよ。島巡りなんてする意味もねぇ」
95 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:03:26.11 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「んー困りましたなあ」
――……スカル団にいる奴らみんなそうなんだ。グズマのように、誰にも認められず、島巡りを脱落していった子たちばっかなんだよ
――スカル団のみんなは、人々に認められない辛さっていうものを分かっているのさ。特にグズマは痛いほどにね。だからみんな慕っているのさ。グズマが代表を慕っているように
しんのすけ「……!」
しんのすけ「でもおじさんも、おじさんのこと待ってる人がいるんじゃない?」
グズマ「俺を待ってる人だと? くだらねぇ……」
グズマ「俺にとっちゃ、代表が全てだったんだよ。だけど、代表がああなっちまった以上、もうどこにも行ったって意味ねぇだろ……」
しんのすけ「嘘つけ、スケスケおパンツ団の人たちがいるクセに」
グズマ「……!」
グズマ「……そいつらが、今更なんだって言うんだ。どうせ、まとめてビーストの餌食になっちまってるさ」
グズマ「いいか、この世界から絶対に出られねぇ。このグズマ様が言うんだから間違いねぇ! たとえ出られても、お前が島巡りしてきたアローラも、見知った人間ももういねえんだよ!」
しんのすけ「ぜぇったい出る! オラが無理でも、とーちゃんとかーちゃん、ひまにシロ、ハウくんにリーリエちゃん、ハカセにクジラくん、カザマくんにマサオくん、ネネちゃんボーちゃんがお迎えに来てくれるもん!」
96 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:04:21.00 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「おじさんも、スケスケおパンツ団の人とか、プルメリのおねいさんが迎えに来るもん!」
グズマ「ビーストにも勝てない連中が、こっちに来れるわけねえだろうが! それこそ、代表が招き入れない限りはな!」
しんのすけ「もー頭きた! おじさんのニートっぷり、もうママ知らないんだから! ずっと下着ドロでもしてなさいよ!」プンプン!
グズマ「ちょっと待て、誰がニートだ! それに下着ドロじゃねぇっつってんだろ!」
しんのすけ「さ、行こ! あいちゃん、ぶりぶりざえもん!」
テクテク
グズマ「……なんなんだ、あのじゃがいも小僧」
97 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:41:14.13 ID:Y7xDIbbj0
その頃――。
ひろしは彼岸の遺跡の中で、偽りの家族たちと供に晩ご飯を食べながら、テレビを眺めていた。
『……タワーにて、ミツル選手がなんと前人未到の100連勝を達成! 期待のホープである彼を止められるものはいないのか!』
みさえ「すごいものねぇ、ミツルくん。ホウエン出身の私からしてみたら誇りよ〜」
しんのすけ「そーいや、今日、マサオくんがね、風間くんとのポケモン勝負で負けて泣いちゃったの」
みさえ「あらまぁ、本当? でも風間くん、本当にポケモン強いからねー。将来はカスカベ地方のチャンピオンかしら?」
しんのすけ「ねぇねぇ、とーちゃんも昔トレーナーだつたんだよね?」
ひろし「ああ、とーちゃんが11歳の頃、シンオウ地方を旅してたんだ。じーちゃんちに行ったことあるだろ? あそこのすぐ近くがシンオウ地方なんだ。雪なんかいつも積もってるぞぉ」
98 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:42:23.27 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「シンオウ地方って言ったら、やっぱシロナおねいさんだよねー。あの金色に輝く髪、アバンティー感じる黒い衣装! 一度耳掃除されたいなぁ〜」
ひろし「それを言うならアダルティーな」
しんのすけ「じーちゃんちにいるあのおさるさん、元気にしてるかな? また行きたいなー」
ひまわり「たい!」
ひろし「しんのすけもひまも、ゴウカザルのことすごい気に入ってたもんなぁ。また会いに行こうな」
みさえ「またトレーナーになってチャンピオン目指してみたら?」
ひろし「よしてくれよぉ、こんな歳でジムなんて挑戦できる余裕なんてないって」
しんのすけ「かーちゃん、オラもポケモン欲しいー! とーちゃんや風間くんみたいにトレーナーなりたい」
ひろし(ポケモン……トレーナー)ピクリ
99 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:43:24.78 ID:Y7xDIbbj0
――オラだって、オラのお友達とゼンリョクでハプウちゃんに勝つ!
――マサオくんっ! ファイヤーーーッ!!
ひろし「……」
みさえ「だーめ。アンタ、シロの世話だってロクにできてないんだから」
しんのすけ「え〜んお願いいたしますお母様〜」
みさえ「アンタが10歳になったらね」
しんのすけ「……妖怪ケチケチオババ」ボソッ
みさえ「なんですってぇ!」
ひろし「……」スッ
みさえ「あなた?」
しんのすけ「どうしたの? とーちゃん? いぼ痔でも悪化した?」
ひろし「ごめん……しんのすけ、みさえ、ひま、シロ。俺がいるべき場所は、ここじゃないみたいだ」
100 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:44:40.32 ID:Y7xDIbbj0
ひろしはみさえの幻たちに笑いかけると、困惑したようにみさえとしんのすけがひろしの顔を覗く。
みさえ「どういうこと?」
ひろし「俺は、やらなくちゃいけないことがあるんだ。だから、ここに留まってるわけにはいかないんだ」
みさえ「やらなくちゃいけないことって、なに?」
ひろし「いなくなっちまった家族を、取り戻すことだ」
みさえ「 私たちはここにいるじゃない。あなたは何が不満なの?」
しんのすけ「とーちゃん。ひょっとして、オラたちのこと、捨てちゃうの?」
ひまわり「えっ……えっ……!」
みさえとしんのすけの言葉が、ひろしの胸に深々と突き刺さる。ひまわりと外にいるシロも、どこか泣きそうな顔でこっちを見てくる。
みさえ「おかしなこと言わないで。私たちはここにいるじゃない。それとも、別の家族がいるって言うの?」
しんのすけ「おおっ、とーちゃん不倫!」
みさえ「私たち家族とずっと一緒にいる――それが、あなたにとっての望みでしょ? それを捨てちゃうつもり?」
101 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:45:28.96 ID:Y7xDIbbj0
ひろしは少し苦笑いを浮かべた。やっぱり、幻だ。
こんなごく当然のことを、みさえはいちいち口になんて出したりしない。こんなふうに責め立てたりせず、真剣にひろしの言葉を聞いてくれるはずだ。
これは、カプ・レヒレからの問いかけなのだ。
ひろし「ああ、確かに俺が望んでるものさ。だけど、こんな形で手に入れるものじゃない」
ひろし「みさえとひまわり、シロはエーテルパラダイスで俺たちの帰りを待っている! そしてしんのすけは、ウルトラホールの先で俺たちの助けを待っているんだ!」
ひろし「俺は紛い物の幻想が欲しくてここに来たわけじゃない! 俺は、俺たち家族がもう一度揃うためにかがやく石を求めてここに来たんだ!」
ひろし「そして、しんのすけをとりもどして、この幻を現実のものにしてみせる! これが俺の望みだ!」
みさえ「あなた……」
ひまわり「たい……」
しんのすけ「とーちゃん……」
しばらくの沈黙。しんのすけもみさえもひまわりもシロも、じっとひろしを見ている。不安な表情は消え去り、ひたむきな面持ちでひろしを見据えている。
102 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:47:51.53 ID:Y7xDIbbj0
みさえが笑みを浮かべながら、沈黙を破った。
みさえ「……あなたの覚悟と願い、『私』に伝わってきたわ」
しんのすけ「とーちゃんは家族思いなんだね」
しんのすけたちの言葉を聞いて、ひろしも釣られて表情が緩む。
ひろし「ああ、こうやって息子の姿で面向かって言われると、ちょっと照れるけどな」
しんのすけ「ほい、とーちゃん!」
しんのすけが一歩前へ出て、ほんのりと光を放つ、かがやく石を差し出した。
ひろし「これは……!」
みさえ「それで月の笛を直して、ルナアーラを呼びなさい。あなた達は『星の繭』と一緒にいるから、必ずルナアーラが現れてくれるはずよ」
ひろし「星の繭?」
しんのすけ「だいじょーぶ、すぐに分かりますからー」
みさえ「あなた、頑張って! 絶対にしんのすけを取り戻すのよ!」
しんのすけ「『オラ』、手伝ってあげられないけど、応援するからー!」
ひまわり「たい!」
シロ「アンっ!」
103 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:49:03.64 ID:Y7xDIbbj0
ひろし「……ありがとな、カプ・レヒレ!」
ひろしはしんのすけ達の幻に一礼をすると、かがやく石を握って踵を返した。気が付けば、霧は消え失せており、出口が目の前にあった。
そのまま彼岸の遺跡を出て行くと、既に結果を知っているのか満足気な表情のハプウとハウが出迎えた。
ハプウ「うまくいったようじゃな。カプ・レヒレも「久方ぶりに芯の通った人が来た」満足そうじゃった」
ハウ「やったねー! おじさんさすがだよー!」
ひろし「幻だけど、俺がなんのために戦おうとしているのか、改めて思い出すことができたよ。カプ・レヒレには感謝しなくっちゃな」
ハプウ「うむ!」ニッ
ハウ「よーし! これで後はウラウラ島のグラジオたちだけだねー! 早くエーテルパラダイスに戻ろー!」
ひろし「おう、早くみんなを安心させないとな!」
104 :
超超ゴルーグロボ
◆g/SXBgh1y6
[saga]:2017/06/14(水) 19:50:00.27 ID:Y7xDIbbj0
※修正
ひろし「……ありがとな、カプ・レヒレ!」
ひろしはしんのすけ達の幻に一礼をすると、かがやく石を握って踵を返した。気が付けば、霧は消え失せており、出口が目の前にあった。
そのまま彼岸の遺跡を出て行くと、既に結果を知っているのか満足気な表情のハプウとハウが出迎えた。
ハプウ「うまくいったようじゃな。カプ・レヒレも「久方ぶりに芯の通った人が来た」と満足そうじゃった」
ハウ「やったねー! おじさんさすがだよー!」
ひろし「幻だけど、俺がなんのために戦おうとしているのか、改めて思い出すことができたよ。カプ・レヒレには感謝しなくっちゃな」
ハプウ「うむ!」ニッ
ハウ「よーし! これで後はウラウラ島のグラジオたちだけだねー! 早くエーテルパラダイスに戻ろー!」
ひろし「おう、早くみんなを安心させないとな!」
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