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【オリジナル】「サキュバスといっしょ」【SS】
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1 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/04(日) 23:42:20.17 ID:H3iSw6ld0
神殿
(――最近は魔物が活発になっているので十分気をつけて、たまにはちゃんと休みをとってね、っと)カキカキ
「これでいいかな」
「それでは神父様、ちょっと手紙出してきますね」
「何かおつかいはありますか?」
神父「いえ、大丈夫ですよ。エリーさんが毎日良く働いてくれていますからね」
エリー「そんな……えへへ。それじゃ行ってきますね」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1496587339
2 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/04(日) 23:46:12.68 ID:H3iSw6ld0
漁村
エリー「―これでよしっと」カタンッ
エリー「お父さんもお母さんもたまには休んで山から下りてくればいいのに」
エリー「ま、今は魔物も多いし仕方ないか」
エリー「さてと、新しい本でも買って帰ろうかなぁ……あれ?」
「いよーしっ! 準備おっけい!」
エリー「アリサちゃん? どうしたの、そのかっこう」
アリサ「あっエリーお姉ちゃん! 何って海賊だよ海賊!」
アリサ「そうそう、この本返すね。すっごく面白かったよ!」
エリー「よかった。喜んでもらえて私も嬉しいよ」
エリー「あっ、この本海賊の話だったっけ。そうかそれで……」
エリー(アリサちゃん本当に影響受けやすいなぁ)
3 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/04(日) 23:50:16.75 ID:H3iSw6ld0
アリサ「海賊ってかっこいいね! あたしもまだ見ぬ世界の神秘、秘密の財宝を探す旅に出たいなぁ」キラキラ
アリサ「という訳で早速旅に出るよっ!お土産待っててね!」
エリー「ええっ!? や、やめなよ。今は魔物も多いんだし危ないよ」
アリサ「冒険に危険は付き物だよ!」
エリー(これはまずい……!)
エリー「それにほら! 海賊なら船が必要でしょ? アリサちゃんが乗って行っちゃったらおじさん困るんじゃないかな?」
アリサ「漁に使う船は借りないよ。お仕事できなくなっちゃうからね」
エリー「そうだよね。でもここには漁に使う船しかないし、残念だけど海賊は諦めた方がいいかなーって」
アリサ「ふっふっふ。抜かりはないよ!ここにはなくてもすぐ南に造船所もある港町があるじゃない」
アリサ「陸路スタートなのは微妙だけど、大冒険に必要なのはスタートの綺麗さじゃないよねっ♪」
エリー(どうしよう、すごく行き当たりばったりだよ……!)
エリー「と、とにかく危ないからダメ! お姉ちゃん許しません!」
アリサ「好奇心を止めることは誰にも出来ないよ! それじゃ、いってきまーす!」ズダダダダ
エリー「アリサちゃん!? ……行っちゃった。どうしよう……」
エリー(アリサちゃん足遅いし追いかける? でも私の力じゃ止められないし……)
エリー(おじさんになんて言おう……。いや、南の港町までは魔物も少ないし、まだ帰ってくる可能性も十分にある……はず)
エリー「……帰ろ」トボトボ
4 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/04(日) 23:54:12.37 ID:H3iSw6ld0
神殿
エリー(……礼拝堂のお掃除にも身が入らない)
エリー(貸した本がまずかったかなぁ。でも面白い本だったし)
エリー(ちょい役だったけど、私は勇者さんが特に好きだったな)
エリー(攻めてくる隣国、人々を苦しめ世界の支配を目論む魔王との戦いに挑み―)
エリー(―海賊となってしまった友の母国を守り続ける)
エリー(かっこいいなぁ。私もそんな風に人々を苦しめる魔物と戦ったりしちゃったりなんかして)
エリー「えいっ! たあっ!」ブンブン
エリー「えへへ。なんてね」
エリー「そりゃっ!……あ」ブン
ゴトン
エリー「ああっ! 女神像倒しちゃった……!」
エリー「どうしよ……いや、まずは起こさないと……!」
エリー「よい、しょっと」グッ…
エリー「ふう……壊れてなくてよかったぁ」
エリー「けが人もなし。誰もいなくてよかったよ〜」ホッ
????「あいたたたたたた……」
エリー「えっ……誰かいらっしゃいましたか!?」
5 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/04(日) 23:58:40.26 ID:H3iSw6ld0
破廉恥な美女「ちょおっと〜……起こし方乱暴じゃない〜?」
エリー「ご、ごめんなさい! 寝ている方がいるとは気づかなくて! お怪我はありませんか!? すぐ手当てしますから!」
破廉恥な美女「まあそれは大丈夫なんだけど」
破廉恥な美女「うふふ♪ 心配してくれてありがと。あなた良い子ね」
破廉恥な美女「ホント……女の子に優しくしてもらったのなんて始めてかも。なんだか泣けてきちゃう。ふあ〜」
エリー(あくび……)
エリー「えと……お怪我がないようで何よりです」
エリー(この人……どこにいたんだろう?)
エリー(綺麗な人……。女神像にそっくり……というより瓜二つ?)
エリー「あの……」
破廉恥な美女「ところであなた見ない顔だけど今日来たのかしら?」
エリー「ええっ!? いえ、もう十年ほど住み込みで働いていますが……」
破廉恥な美女「あらやだ、ここ新築よ。面白い子ね」
エリー(この神殿は500年も前に建てられたはずなんだけど……)
エリー(これはまさか……眠っていた神様が起きた的な展開!?)
エリー(そんな小説みたいなこと……でも、確かめてみたい)
エリー「あの、もしかして神様ですか?」
破廉恥な美女「それにしてもよく寝たわ〜。あら?今って春だったかしら。ああ、これが小春日和……」
エリー(返事がない……違うのかな?)
エリー(となるとあの角と翼は……はっ)
エリー「さては魔物!?」
破廉恥な美女「とんでもない。わたし神様よ? サキュバス神オリアナ」
6 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:00:18.24 ID:Ojrfyqeq0
神父「魔物ですと!?」ガチャッ
オリアナ「だから神様だって」
7 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:04:05.54 ID:Ojrfyqeq0
エリー「すみません。お伺いしたのですが反応がなかったので……」
オリアナ「気にしないで。ちょっと寝起きでぼーっとしてたわ」
オリアナ「それにしても、ちょっと寝るつもりが500年も経っていたなんて……」ズーン
エリー「あの、その……元気出して下さい」
エリー(そっか、知ってる人がもうみんないないんだよね。オリアナ様、かわいそう)
オリアナ「ま、気にしてもしょうがないか。あ〜あ」
エリー(……以外と大丈夫そう? ううん、きっと無理してるんだ)
エリー「オリアナ様、私でよければ何でも仰って下さいねっ」
8 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:05:27.91 ID:Ojrfyqeq0
神父「しかし、このような時にオリアナ様が目覚められるとは……運命じみた物を感じてしまいますな」
エリー「500年前、悪事の限りを尽くす魔物達を討伐し、人の世に平和をもたらし人々の信仰を集め精霊化したサキュバスなんですよね」
神父「ええ。そうしてオリアナ様を崇めるためこの神殿が建てられたのですが、当のオリアナ様は姿を消してしまい……」
神父「永く平和な時が続いた所為もあるでしょう。すっかり参拝者も減ってしまって……聖水作りだけではままならず……」
エリー「今ではすっかり漁師ですね、神父様」キャッキャッ
神父「はっはっは。今日はマグロですよ」
エリー「やった。私お寿司握りますね」ワーイ
オリアナ「……何かその、ごめんなさいね。楽しそうでなによりだけど」
9 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:15:26.97 ID:Ojrfyqeq0
オリアナ「それで……運命?また何か悪さする奴でも出たの?」
神父「はい。十数年ほど前に大陸の西海岸より強大な魔物が現れ、付近の町や村を全て破壊してしまったのです」
神父「抗戦し、辛うじて生き残った兵によると、その魔物の下に無数の魔物が集い軍隊となっており、その魔物は『魔王』と呼ばれていたとか」
神父「その後、魔王軍は大陸を二つに分ける大山脈まで進行し、そこに城を建て現在は沈黙を守っています」
神父「国の動きとしては大山脈東側すぐの町付近に砦が建て、守りを固めているといったところです。首都より何度か軍も出ております」
神父「魔王軍自体に動きは見られないのですが、どうも魔王出現以来魔物による被害が多く、中には本来一匹で行動するような魔物も徒党を組んで人を襲いだしたとか」
オリアナ「ふんふん」
村人「魔物だーっ!魔物が出たぞー!」
エリー「! 神父様!」
神父「大陸の北東にあるこの村にも遂に魔物が出ましたか……」
オリアナ「なかなか大変なことになっているみたいね。いいわ、わたしに任せなさい。案内して」
エリー「あ、はい!」
・・・
10 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:19:19.60 ID:Ojrfyqeq0
漁村
魔物「ぐまー」
魔物「ぐままー」
オリアナ「……なにあの生物」
エリー「何って魔物ですよ?スパークリングパンダ」
スパークリングパンダ「ぐまー」バリボリ
村人「やめろ! おらの大根食うなっ!」
オリアナ「……あれが?」
エリー「あ、そっか……500年の間に現れた新種なんですよ。草食で比較的温厚なんですけどたまに畑を荒らしているみたいです」
村人「うひゃひゃひゃひゃひゃ! 脇は! 脇は弱いんじゃ!」
エリー「あと、人の体液が好きみたいでたまに旅人がペロペロされます」
オリアナ「そう……」
オリアナ「とにかくペットってわけじゃないのね。じゃ、蹴散らすわね〜」
スパークリングパンダ「ぐま?」
バチバチバチバチバチ!!!
11 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:20:52.75 ID:Ojrfyqeq0
スパークリングパンダ「ぐまぁ……」シュゥゥー…
エリー「すごい……!みんな一瞬で……」
オリアナ「ん〜ちょっと鈍っちゃったかしら?」
エリー「あの威力で鈍っただなんて……!オリアナ様すごいです!」
オリアナ「うふふ♪ もっと褒めていいのよ」
エリー「オリアナ様ばんざーい!」
村人たち「ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!」
オリアナ「うふふふふふ♪ やっぱりいいわぁこういうの」ニコニコ
12 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:25:06.86 ID:Ojrfyqeq0
神殿
神父「いやはやお見事でしたオリアナ様」
オリアナ「まあわたしにかかればこんなものよ」
オリアナ「この調子で魔王とやらもサクッとやってくるわ」
エリー「オリアナ様頼もしいです」
オリアナ「悪党は見過ごせないし、わたしを祀っている神殿で貧乏暮らしをさせるのもなんだしね。信仰集めも兼ねて世直しの旅にいくわよ!わたしたちに任せなさい♪」
エリー「さすがですオリアナ様!……たち?」
オリアナ「一緒に行ってくれるわよね、エリーちゃん♪」
エリー「ええっ!? 私ですか!?」
エリー「無理です! 私戦ったことなんてないですよ?!」
エリー「そりゃ多少魔法の心得はありますけど家事ぐらいにしか使ったことないし……」
エリー「それにオリアナ様は一人でもあんなに強かったじゃないですか!私のサポートなんていりませんよ」
オリアナ「それなんだけどねぇ……信仰があんまりなかったせいかしら、魔力残量が全然ないのよ」
オリアナ「実体化もしんどいし、このままいくとすぐ枯渇しちゃうわねぇ。下手すると消滅しちゃうかも」
エリー「そんな、消滅!?」
オリアナ「精霊化の弊害ねぇ。無限の力と命の引き換えに信仰が必要だなんて」
オリアナ「ま、崇められるのは最高なんだけど♪ 神様になって正解だったわねぇ」
オリアナ「という訳で今は戦うべきじゃないのよねぇ」
オリアナ「そこでわたしは考えました。わたしのサキュバスである力を契約により移譲して代わりに戦ってもらって、わたしはサポートに徹するの」
エリー「私が戦う方ですか!? 無茶です無理です無謀です!」
オリアナ「なんでも言ってって言った〜」
エリー「うっ……!で、でもでも」
神父「いえ……いいかもしれませんね」
エリー「神父様!?」
13 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:28:40.15 ID:Ojrfyqeq0
神父「大山脈。大陸の半分までとはいえ世界を見てくることはいい経験になるでしょう」
神父「常々考えておりました。今後の神殿のこと……」
神父「私も随分と年を取りました。いずれはこの神殿を誰かにお任せしなくてはならなくなる……」
神父「この神殿には私とエリーさんしかいません。しかしエリーさんのことは本来お忙しいご両親からお預かりしているにすぎません」
神父「そんな貴女にこの寂れた神殿をお任せしなくてはならないかもしれないこと……忍びない思いでした」
エリー「そんな、神父様!ここはもう私の家も同然です!」
神父「ありがとうございます、エリーさん。しかし、やはり貴女には責任感ではなく自分のやりたいことで将来を決めて頂きたい」
神父「世界を回り、見聞を広めて頂きたいのです」
神父「オリアナ様のご助力があれば戦闘も可能でしょう。貴女の魔法には非凡なものを感じます」
神父「元々女性の方が魔法の資質があるとはいえ師である私をあっという間に抜いたことには正直驚きました」
神父「もちろん、見聞を広めた上で選んでくださるというのならば喜んでこの神殿をお任せしましょう」
エリー「神父様……」
オリアナ(……目の前でこんな話されちゃうあたり本当にわたしって信仰がないのね……)
オリアナ「まかせてエリーちゃん!わたしが誰が継いでも御布施だけで生活できちゃうくらいの活躍させちゃうんだから!」
エリー「オリアナ様……」
エリー「……分かりました。魔王討伐の旅路、お供しますオリアナ様!」
オリアナ「! ええ、よろしくねエリーちゃん」
神父「心許無いでしょうがアイテムを用意しましょう。少々出てきます」
ガチャ バタン
14 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:30:59.42 ID:Ojrfyqeq0
オリアナ「それじゃ、今のうちに契約済ませちゃいましょうか」
エリー「あ、はい。どうするんですか?」
オリアナ「とりあえず落ち着いた所に行きましょうか。エリーちゃんの自室に案内してくれる?」
エリー「私の部屋ですね。こちらです」
ガチャ
エリー「ここですよ。それでどうす―」
15 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:31:54.64 ID:Ojrfyqeq0
(割愛)
16 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:38:02.61 ID:Ojrfyqeq0
・・・
エリー「うう……こんな目にあうなんて」
オリアナ「まあまあ。それでサキュバスの力を説明するとねっ……」カァ…
エリー「オリアナ様が紅くならないで下さいよ!」
オリアナ「わたしにだって羞恥心くらいあるわよっ」
オリアナ「その……女の子相手は始めてだったし……」ゴニョゴニョ
エリー「もう……それで、今のでオリアナ様の力を私も使えるようになったと」
オリアナ「ええ。えっとね、どういう感じかっていうと〜―」ペラペラ
ペラペラ
エリー「ふむふむ」
ペラペラ
エリー(食肉植物……)
オリアナ「今なんか失礼なこと考えた?」
エリー「い、いいえ・・・?!」
ペラペラ ペラペラペラ
・・・
17 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:40:47.79 ID:Ojrfyqeq0
・・・
オリアナ「とりあえずこんなところね。転落とか事故死に気をつければほぼ不死身だから気楽にかまえなさい」
エリー「エッチなことするのに気楽になんて無理です……」
オリアナ「そんなこと言ってぇ〜エッチなこと好きでしょ?さっきだって――」
エリー「い、いい、いいです!ようは負けなければいいんです!」
神父「戻りました。エリーさん、少ないですがこちらをどうぞ」
エリー「ありがとうございます神父様、それでは行ってまいります。ほら行きますよオリアナ様!」グイッ
オリアナ「ちょ、ちょっと!」
ズダダダダ…
神父「おやおや、もうあんなに仲良く……。頑張ってくださいね、エリーさん」
18 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:43:03.03 ID:Ojrfyqeq0
小道
エリー「ふう……急いで出てきちゃった」
オリアナ「照れなくていいのに……わたしとエリーちゃんの仲なんだから」キャッ
エリー「でもどうしよう……私戦ったことなんてないし」
オリアナ「無視しないでよ〜エリーちゃん。お姉さん泣いちゃうわよ〜」
エリー「もう……いいですよ、オリアナ様。私もごめんなさい」
エリー「あと私のことはエリーでいいです。……それから、よろしければ私に戦い方を教えてください」
オリアナ「エリー……!いいわ、お姉さんに任せて!」
オリアナ「チュートリアルバトルいくわよ!」
19 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:43:39.97 ID:Ojrfyqeq0
(割愛)
20 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:48:19.85 ID:Ojrfyqeq0
オリアナ「ところで、これからの予定は決まってる?」
エリー「そうですねぇ、漠然と西に向かおうとは考えているのですが……」
エリー「あ、少し前に村を飛び出したアリサちゃんって女の子のことを探したいです。一人旅はやはり危ないと思うので」
エリー「南の港町に行くと言っていたのでまずはそこまでですね」
オリアナ「ふむふむ。地形とか変わって無ければ後は首都を通って西に向かって一本道のコースでもあるしいいんじゃないかしら」
オリアナ「あっ!でもちょっと寄り道させて」
エリー「どうされました?」
オリアナ「この近くに吸血鬼の集落があったんだけど、そこによらせてほしいの」
オリアナ「サキュバスが人の精力を糧とするように吸血鬼は人の血を糧として生きる存在」
オリアナ「人の窮地とあらばさすがに手助けしてくれると思うのよねぇ。どう?エリー1人じゃ不安そうだし万が一襲いかかってきたらわたしが蹴散らしてあげるから試しに」
エリー「ああ、それいいですね。行ってみましょうか」
オリアナ「え……即決?」
エリー「はい? いい考えだと思いますよ」
オリアナ「剛胆ねぇ……元魔物のわたしが言うのもなんだけど吸血鬼よ?」
エリー「ああ、そういうことですか。大丈夫ですよ。今吸血鬼と人は同じ社会で生きていますから」
オリアナ「……はいぃ?」
21 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:53:16.63 ID:Ojrfyqeq0
エリー「オリアナ様がきっかけですよ。人に味方した貴女がいたからお互いに歩み寄ることができたんです」
エリー「吸血鬼は人の血を必要としますから、先に滅びるか良くても人と共倒れする道しかなかったんです」
エリー「でも寄生するような生き方では衝突は避けられない。かねてから共生の道を模索していたみたいですよ?」
エリー「人としても強力な吸血鬼との戦闘は避けたかった。そんな中でオリアナ様が信仰され精霊化しましたからね」
エリー「人と魔物との共存に前例ができたことにより二つの種族は今日の共存へと至ることができた……私はそう習いました」
オリアナ「へえ〜何となくそんな気配はあったけどうまく行ったんだ」
エリー「今では主に俊敏性の高さや飛行能力を活かして夜間の間に国中に物を届ける物流の面で社会に貢献していますよ」
エリー「たぶんオリアナ様が行かれようとしている所はこうもりマークのヴァンパイア急便の本社があるところですね」
オリアナ「なじみ過ぎでしょ」
オリアナ「まあ、心配がないみたいだし行ってみましょ? わたしの顔見知りがいれば話も通しやすいだろうし、港町までの街道からそんなに離れてはないから時間は取らないわ」
エリー「はい。行ってみましょう」
22 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:57:10.25 ID:Ojrfyqeq0
・・・
テクテク…
エリー「あの……オリアナ様はどうしてそのような拘束具を着ているんですか? もしかして脱げないとか……はずしましょうか?」
オリアナ「大丈夫よ。自分で着けてるし一人で脱げるしね」
オリアナ「どう? 身動きできない女……そそらない?」
エリー「ししし知りませんそんなこと!」
オリアナ「いいものよ。気持ちいいことから逃げられない……どんなに感じてもやめてもらえない。自分の全てを支配される悦び……やだ、ちょっと興奮してきちゃった」
エリー「なに言ってるんですか!? やめてください!」
オリアナ「もうエリーったらかーわーいーいー♪」
・・・
23 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 00:59:59.93 ID:Ojrfyqeq0
・・・
オリアナ「エリーって修道服着てるけどシスターじゃないのよね?」
エリー「はい、いそがしい両親の代わりに神父様に面倒を見てもらっていただけなのでシスターっぽいなにか、ですね」
オリアナ「ぽいって」
オリアナ「いえね、シスターは神様と結婚するっていうところもあるらしいから、もしかしてエリーは私の奥さんなのかなって」
エリー「奥さんって、ええ!?そんなわけないじゃないですか!」
オリアナ「全力で否定しなくても……あ、むしろわたしのこと奥さんにしちゃう?」
エリー「〜!もう!からかわないで下さい!」
・・・
24 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:02:32.02 ID:Ojrfyqeq0
・・・
オリアナ「エリーのご両親ってなにをされているの?山に籠られているとか言ってたけど」
エリー「二人とも錬金術師です。綺麗な水が必要だとかで、こんな時代ですからずっとエリクサーを作っているそうですよ」
オリアナ「へえ〜エリクサー……エリクサー!?」
エリー「市場に出ているものはほとんど二人が生成したものだそうです。えへへ、家族の作ったものが世の中に出るってなんかいいですよね」
オリアナ「そんなレベルの話じゃ……しかも市場って、流通させられるほどの量を?ありえない……時代が違いすぎる……」
・・・
25 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:06:10.38 ID:Ojrfyqeq0
エリー「ふう……けっこう歩きましたね」
オリアナ「そろそろ終わりが見えてくるころかしら?」
エリー「はい。あ、オリアナ様。村が見えてきましたよ」
オリアナ「ようやくね。でも吸血鬼は夜行性だし良い頃合いではあるわね」
エリー「えへへ、途中魔物も倒したりしたし、さすがにお腹空いてきちゃいました」
オリアナ「……人間向けの食べ物あるのかしら?」
エリー「ええっ!?」
オリアナ「パンダ……仕留める?」
エリー「……それはちょっと」
・・・
26 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:09:08.70 ID:Ojrfyqeq0
吸血鬼村
エリー「やっと着いた……けど、お腹空いたなぁ……」
オリアナ「結局小道では食べ物見つからなかったわね。ほら、服装直して。埃も落とす。これからあいさつに行くんだから」パタパタ
エリー「お腹空いたぁ……食べる物がないかと思うと余計に」
エリー「よく考えれば神父様が釣ったマグロ食べ損ねたことを考えると余計に――」シクシク
オリアナ「ストップストーップ! 食べ物くらいあるわよ。大丈夫」
オリアナ(……たぶん)
27 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:10:39.40 ID:Ojrfyqeq0
吸血鬼「おや?人間のお客さんとは珍しい。ようこそ。ここは吸血鬼村だよ」
オリアナ「あらこんばんは。ねぇ、どこか食事がとれる場所ってないかしら」
吸血鬼「ん?ああ、それなら村長の家に行くといい。あそこなら人間の食べ物もあるはずだよ。正面の館だ」
オリアナ「ありがとう。さ、行くわよエリー。すぐそこだから頑張って、ね?」
エリー「は〜い……」
トボトボ…
吸血鬼「あの女性、オリアナ様にそっくりだったな」
吸血鬼「……しかしなんて破廉恥な格好なんだ」
吸血鬼「……久しぶりに妻を抱くか」
・・・
28 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:13:25.45 ID:Ojrfyqeq0
エリー「はぐはぐ。もぐもぐ」モッモッ
エリー「おいし〜!これ本当においひいでふよホヒハナはま」
オリアナ「ちょっとエリー!食べながら喋らないの!ごめんなさいね、この子ったら何も食べてなかったものだから」オホホ
村長「はっはっは、かまいませんぞ。若者は元気であるのが一番」
村長「むしろオリアナ様をお迎えしたというのに大したおもてなしもできず申し訳ない思いです……」
村長「人と吸血鬼の共存。我らの繁栄は貴女様あってのこと。だというのに信仰も足らず、貴女様にこのような苦労をさせることになり何と言って――」
オリアナ「はいはい気にしない気にしない。それよりどうかしら?聞くところによると物流で幅利かせているみたいだし、消耗品とか安く手に入らないかしら」
村長「それでしたらお任せ下され。宿代等旅の費用は私どもで負担致しましょう。消耗品、装備品については共に原価にてお買い求められますように手配するに留まりますが……」
オリアナ「十分よ。ありがとう」
村長「勿体ないお言葉です。腕の立つ者をお供にお貸ししたいところではありますが、何分我らは夜しか動くことができません故」
村長「人との間の子ならば太陽をものともせず活動できますが、こちらは幼子しかおらず――」
29 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:17:03.43 ID:Ojrfyqeq0
気品のある少女「おじい様。私も既に成人しております。いい加減子供扱いはおやめ下さい」
村長「何を言うかヴィクトリア。たかだか十数年、わしの二十分の一程度しか生きておらぬお前はまだまだ子供じゃ」
ヴィクトリア「300年生きていらっしゃるおじい様と比べないで下さい……」
オリアナ「この子がその?」
村長「ええ、私の娘の子、ヴィクトリアにございます」
ヴィクトリア「お会いできて光栄にございます、オリアナ様」
ヴィクトリア「エリーさん、おかわりをお持ちいたしました」ニコッ
エリー「ありがとうございます!もうどの料理も本当に美味しくて」
ヴィクトリア「うふふ、エリーさんは健啖家でいらっしゃるのですね」
エリー「あ……やだ私ったら、はしたなくて……すみません」
オリアナ「そうよ、もう」
30 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:19:33.07 ID:Ojrfyqeq0
ヴィクトリア「いいえ。それほどお気に召して頂けたのなら腕によりをかけた甲斐があったというものです」
ヴィクトリア「こういった食事はこの村では父と私しかとらないものですから、こうして振る舞うことができ私自身も喜ばしい想いでいっぱいです」
村長「本当に良き時代となりました。娘は婿殿と結ばれ子を授かり、ヴィクトリアも偏見や迫害を受けることなく過ごせている」
ヴィクトリア「吸血鬼と人の間に生まれたことに苦労などありませんでした。人と吸血鬼の絆はもはや盤石のもの。私自身がその証明」
ヴィクトリア「二つの血は私の誇りです」ニコッ
エリー「ヴィクトリアさん……なんて立派!」
オリアナ「眩しくて直視できない……!」
ヴィクトリア「あ、あの……」オロ…
31 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:22:50.54 ID:Ojrfyqeq0
エリー「ふう、ごちそうさまでした」
ヴィクトリア「ふふ、お粗末さまでした」
エリー「とっても美味しかったですヴィクトリアさん」
エリー「今度は私が御馳走しちゃいます。お寿司に舟盛り、海鮮丼は得意なんです!」
ヴィクトリア「まあ♪ 楽しみにしておりますわ」
オリアナ「さ、もう遅いわ。休みなさい、エリー」
ヴィクトリア「湯浴みの用意は出来ております。エリーさん、こちらへ」
エリー「はい。オリアナ様は?」
オリアナ「わたしはまだ起きてるわ。先に寝ちゃいなさい」
エリー「は〜い」
32 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:24:17.58 ID:Ojrfyqeq0
ガラッ
エリー「わぁ、ひろ〜い!」
ヴィクトリア「父が無類のお風呂好きでして……温泉まで掘ってしまい……」
エリー「こんなお風呂一人で入るなんてもったいないです!一緒に入りましょうヴィクトリアさん!」
ヴィクトリア「エリーさん? あのっ……」
・・・
33 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:32:55.09 ID:Ojrfyqeq0
カポーン
エリー「ああ、いい湯♪」ザブーン
ヴィクトリア「そうですね。んーっ。わたくしも日に何度も入ってしまったりしてしまいます……♪」ザブーン
エリー「あはは、こんなお風呂なら私もそうなっちゃいそう」
ヴィクトリア「お父様ったらこの上露天風呂まで作ろうとして……」
エリー「それは楽しみですね、ヴィクトリアさん」
ヴィクトリア「……ええ。うふふ♪」
エリー「ヴィクトリアさんの髪キレイだなぁ・・・銀髪」ポケー
ヴィクトリア「そんな・・・エリーさんの髪、ポニーテールを解くと私より長いのですね。よく手入れされて綺麗です。スタイルも……」テレッ・・・
エリー「えっ、い、いや〜そんな……えへへ」テレテレ
34 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:34:44.23 ID:Ojrfyqeq0
ヴィクトリア「あの、エリーさんはどうしてオリアナ様のお供に?」
エリー「そうですねぇ……迂闊に何でも言って下さいって言っちゃったりだとか、私自身が世の中を見てくるためだとか理由はあるんですけど」
エリー「オリアナ様、漁村に魔物が現れた時すぐ私に任せろって言ってくれたんです」
エリー「すごいですよね。私達人間は500年前にオリアナ様に助けてもらってからほとんど何も返せてないのに……」
エリー「まあ、そんなオリアナ様のために何かしてあげられないかなって……」
ヴィクトリア「エリーさんはお優しいのですね」
エリー「そんな、私なんてまだまだ……ヴィクトリアさんこそ、私より年下なのにすごくしっかりしてて」
エリー「見てるとなんだか自分が恥ずかしくなってきちゃいます」
ヴィクトリア「言うのとやるのでは重さが違います。実際に魔物と戦うエリーさんは十分素敵な女性だと私は思います」
エリー「あ、あはは……なんだかヴィクトリアさんに褒められるとすごく恥ずかしいです」
ヴィクトリア「お食事もとても豪快に――」
エリー「そ、それは忘れてください!」
ヴィクトリア「うふふ♪」
エリー「……えへへ♪」
・・・
35 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 01:37:19.01 ID:Ojrfyqeq0
・・・
オリアナ「――ありがとう。おかげでだいぶこの時代のことが分かったわ」
オリアナ「さすが大陸中を駆けていると情報量が違うわね」
村長「これからの旅の御助けとなれば幸いです」
オリアナ「でも悪いわね。エリーが寝てからの方が長いんじゃないかしら? もう夜が明けそう」
村長「そうですな。私も少々話し疲れてしまいました」
オリアナ「……一番驚いたわ。貴方程年老いた吸血鬼がたかだか300年しか生きていないなんて」
村長「人間との共存により我々は平穏と安定した生活を手にしました」
村長「しかし、人が死なぬ程度の吸血に抑えるため数が多ければ一人当たりが得られる血液量も限られてくる」
村長「それはそのまま老化、寿命にも影響してきます。随分と吸血鬼の寿命も短くなったものです。平均は上がっているのですが」
村長「ですが、これで良かったのでしょう。私も随分と前に人の友人達が逝くのを見送りました……」
村長「同じ時を過ごすことができないのは、とても寂しいことですからのう……」
オリアナ「……そうね」
36 :
◆h8PchLJM6BH7
[sage]:2017/06/05(月) 01:38:20.59 ID:Ojrfyqeq0
一旦ここまで
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/05(月) 16:14:51.01 ID:dFBm8ADI0
期待
オリSSは見た目のイメージが気になるところ
38 :
◆h8PchLJM6BH7
[sage]:2017/06/05(月) 21:50:14.07 ID:Ojrfyqeq0
※実はこんな同人ゲーム作れたらなぁと書き始めたのでパラメータとかの設定もあったりします・・・
・エリー
ゆるふわロングをポニーテールにした修道服の女の子
背はそこそこでスタイルはけっこういい方
主に魔法の弾丸を飛ばして戦う。瞬時にMPを全快させられる特技がある。
HP75
MP114
攻撃翌力69
防御力72
魔法攻撃114
魔法防御100
俊敏性104
属性・闇
・アリサ
金髪ストレートで今は自作の海賊服を着ている活発な女の子。エリーの年下の幼馴染。
背は低いがスタイルはなかなか。
使用武器は双剣。
HP70
MP65
攻撃翌力149
防御力140
魔法攻撃0
魔法防御100
俊敏性75
属性・光
・ヴィクトリア
銀色の美しく長い髪を肩から前に流している吸血鬼と人間のハーフ。
背丈は並みでスタイルもつつましい。ワンピースと肩にはストールを羽織っている。
魔法と爪で戦い身体能力が高い。
HP76
MP104
攻撃翌力104
防御力71
魔法攻撃104
魔法防御71
俊敏性108
属性・メタル
・オリアナ
かつて多くの魔物から人々を救い神となったサキュバス
肩までのボブ。頭にある角と背の翼はしまえる。
スタイルはとっても大人で、女性も見惚れる美貌。すごく破廉恥な格好をしている。
普段は霊体となってエリーのそばにいる。実体化するととても疲れる。
こんな感じです
39 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 21:55:09.29 ID:Ojrfyqeq0
ドォオオォン
オリアナ「! なにかしら」
ヴィクトリア「おじい様、何やら外が騒がしく……!」ガチャッ
オリアナ「ヴィクトリア、エリーを起こしてきてもらえるかしら」
ヴィクトリア「はい!」タッ
オリアナ「さて、一足先に行きますか」
40 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 22:01:19.29 ID:Ojrfyqeq0
ガチャッ
ヴィクトリア「エリーさん! エリーさん起きてください!」ユサユサ
エリー「ん〜……はえ? もう朝ですか……? ヴィクトリアさん」フワー
ヴィクトリア「何やら不穏な気配がするのです。すぐオリアナ様のもとへ」
エリー「え……は、はい!」スクッ
41 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 22:12:57.52 ID:Ojrfyqeq0
エリー「オリアナ様、いったい何が……?」
オリアナ「早かったわね。外が騒がしいの。見に行くわよ」
ガシャ・・・ ガシャ…
兵士?「グオオオオオオオー!」
ブォン! ドガァン! ガシャ・・・ ガシャ…
ゾロゾロ……
エリー「兵士が暴れている!? 数も多い……!」
オリアナ「いえ、あれはゾンビね。意思がない」
ヴィクトリア「そんな……! ゾンビというともう理性もないはずなのに、生物のように群れることだなんて……!」
42 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 22:16:27.48 ID:Ojrfyqeq0
ゾンビ兵士「グオオオオオオオオオー!」
ブォン ガキィン!
吸血鬼A「くそ、コイツ!」グググ…
吸血鬼B「! 下がれ!」グイッ
ジュ・・・!
吸血鬼A「!? くっ、もう朝日が……!」ヒリヒリ・・・
ゾンビ兵士「……」
ガシャ・・・ ガシャ…
ゾロゾロ……
吸血鬼B「なんだ?……一部の奴らを除いて襲いかかってこない?」
ゾンビ兵士「グオオオオオオオオー!」
ダァン! ダァン! ガララララ!
吸血鬼A「建物を破壊している……! ひ、日陰を無くす気なんだ!」
吸血鬼B「天幕を張れ! そこから魔法で攻撃しろ!」
43 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 22:25:18.89 ID:Ojrfyqeq0
オリアナ「統率がとれてる……誰かが操っているってところかしら」
オリアナ「朝日も出てきた……先にこっちを片付けた方がよさそうね。エリー!」
エリー「はい! 皆さんは下がっていてください!」
ヴィクトリア「エリーさん!」
ヴィクトリア「私も援護いたします」
エリー「ヴィクトリアさん」
ヴィクトリア「私なら太陽光を受けても問題ありありません」
エリー「ヴィクトリアさん……はい、お願いします!」
ゾンビ兵士「グオオオオオオオオオー!」
ヴィクトリア「! 来ます!」
エリー「交戦します!」チャキ タッーン
・・・
44 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 22:34:16.97 ID:Ojrfyqeq0
タッーン タタタタタ ガシャコン タタタタタ
ザシュッ ザシュッ
・・・
エリー「ふう、全部倒しましたね」
オリアナ「だいぶ日も出てきた。三人だけで黒幕を追うのは難しいわね」
エリー「私壊れた壁を塞ぐの手伝ってきます」
ヴィクトリア「私も行きます」
・・・
45 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 22:40:34.90 ID:Ojrfyqeq0
オリアナ「何人か人間の兵士を送ってもらった方が良さそうよ」
村長「……そうですな。我々は昼間自由に動くことができませんからのう」
ガチャッ
エリー「戻りました」
オリアナ「お疲れ様」
ヴィクトリア「オリアナ様、エリーさん。この度は本当にありがとうございました」
エリー「そんな、当然のことをしたまでです」
オリアナ「魔王の出現にそれ以降の事変……確かに世界に異変が起きているのかもしれないわね」
エリー「先を急いだ方がいいかもしれませんね」
ヴィクトリア「……少しよろしいでしょうか」
エリー「ヴィクトリアさん?」
ヴィクトリア「私をお二人の旅路に同行させて頂きたいのです」
エリー「ええっ!? でも……」
ヴィクトリア「世界に不穏な動きがあることは事実でしょう。そしてそれは人と吸血鬼の共通の脅威。私もお二人の力となりたいのです」
ヴィクトリア「両親には既に話しました。後はお二人とおじい様だけです」
46 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 22:44:06.20 ID:Ojrfyqeq0
村長「ふむ……いいじゃろう。お前にとっても良き経験となる。行ってお二人を手助けしてさしあげなさい」
オリアナ「わたしはいいわよ?」
ヴィクトリア「私もヴィクトリアさんと一緒に行けるのは嬉しいです! よろしくお願いします、ヴィクトリアさん」
ヴィクトリア「はい、こちらこそよろしくお願いします。エリーさん、オリアナ様」
47 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 22:50:25.16 ID:Ojrfyqeq0
オリアナ「さて、出発の前にヴィクトリアとも契約しておいた方がいいわね」
エリー「あれをヴィクトリアさんにするんですか!?」
ヴィクトリア「オリアナ様の持つ不死性の習得ですね。よろしくお願いします」
エリー「いや、あれはそんなもんじゃ……!」
オリアナ「じゃあちゃっちゃと済ませちゃうわね。はい、ほっぺにチュッ♡」チュッ
ヴィクトリア「まあ」
エリー「ちょ、オリアナ様! いくら誰もいないからって外でなんて……!」
オリアナ「契約は完了よ。能力の詳細は道中で話すわ」
エリー「今ので!?」
エリー「オリアナ様! 私にしたのはいったいなんだったんですか!」プンスカ
オリアナ「え、それはあれよ。こらから経験することだし慣れておかないとって……それに契約完了と言っても――」
エリー「オリアナ様! ちょっとお話があります!」チャキ
オリアナ「話をできる精神状態じゃないじゃない……!」
オリアナ「仕方ないわね……幸い誰もいないし落ち着くまで逃げようかしら」ビュン
エリー「どこへ行くんですか! 待ちなさいオリアナ様!」タァーン
ヴィクトリア「あ……行ってしまわれました」
ヴィクトリア「仕方ありません。村の入り口でお待ちいたしましょうか」
48 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 22:58:15.76 ID:Ojrfyqeq0
・・・
ヴィクトリア「はぁ……はぁ……」
ヴィクトリア(どうしたのでしょうか……脈が早くなり……呼吸も荒く……)
ヴィクトリア(身体も……熱い……)フゥ……
パカラッ パカラッ ガラガラガラ……
行商人「ふう……漁村までもう少しかな」
行商人「これからきっと魔王との戦いは激しくなる……武具だけじゃなく聖水もそろえておかないと」
行商人「でもさすがに疲れたな。一旦馬も休ませたいけど……」
行商人「失敗したな……吸血鬼村は朝の方が誰もいないんだっけ。宿も開いてないだろうし……」
行商人「仕方ない、荷車に布団敷いて――おや? 人がいる……」
ヴィクトリア「はぁ……はぁ……」
行商人「! どうかされましたか!?」
ヴィクトリア「あ……それが……」ハァ ハァ
行商人「ちょっと失礼します」ピトッ
ヴィクトリア「ひゃ……っ」ドキッ
行商人(足元がおぼつかず額も熱い……顔も紅潮して、瞳も潤んで……美しい――じゃなくて! 風邪かな?)
行商人「困ったな、吸血鬼村の医者が朝から起きているとは思えないし……」
行商人「荷車なら日陰だし少しはましか……さ、少し休んでいってください」
49 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 23:11:02.04 ID:Ojrfyqeq0
行商人「布団よし。さ、横になっていてください。水を汲んできます」バサッ
ヴィクトリア「はい……ありがとう、ございます……」フゥ…
ヴィクトリア(熱い……優しいお方……)
ヴィクトリア(どうしてしまったのでしょう……触れられた途端、ドクンとして……いっそう熱くなって……)
行商人「お待たせしました。もうちょっとの辛抱です」
ヴィクトリア(声を聞いているだけで胸が高鳴って……熱くて蕩けてしまいそう)ポー
ヴィクトリア(熱い……熱い……!)ハァ ハァ
ガサゴソ
行商人「これがいいかな? て、そうだ。僕は行商人です。薬も取り扱っていますからもう大丈夫――うわっ」ドンッ
行商人「あ、あの……?」
ヴィクトリア「はぁ……! はぁ……!」ジッ キィィン
行商人(潤んだ、熱い瞳……そらせない……)ボゥ……
ヴィクトリア(ああっ……! このまま、この方と……! どうにかなってしまいたい……!)
ガバッ…!
・・・
50 :
◆h8PchLJM6BH7
[saga]:2017/06/05(月) 23:11:52.27 ID:Ojrfyqeq0
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