【ガンダムSEED DESTINY】シン「フリーダムは敵じゃない」

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146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 16:44:49.75 ID:HwUcXWz4o
>>145
俺も思い出したわ、あれは楽しめた良作だった
147 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:32:56.56 ID:B8pEosju0
短いですが投下します。
148 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:35:40.31 ID:B8pEosju0
ミネルバへとストライクフリーダムを着艦させ、コクピットから降りるレイ。
英雄の凱旋を出迎えたのは、僚友たちの拍手と歓声だった。

メイリン「おかえりなさい!大活躍だったね!」

ヴィーノ「すげえ!すげえよレイ!」

ヨウラン「よっ!ミネルバのスーパーエース!」

レイ「ああ、ありがとう」

レイ「…ルナマリアの姿がないようだが?」

メイリン「あ、うん…またいつもの場所だと思う」

レイ「そうか…」

メイリン「お姉ちゃん、あの日からずっとあの調子で…心配になっちゃう」

レイ「少し様子を見てこよう」
149 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:38:31.65 ID:B8pEosju0
艦内のシュミレータールームへと向かう。
ドアを開くと、バトルシュミレーターにかじりつくルナマリアの姿があった。

レイ「フッ…メイリンの言った通りだな」

ルナマリア「レイ…お疲れ様。討ったのね、ロゴスを」

レイ「ああ、呆気ないものだった。お前が出るまでもなかったな」

ルナマリア「ロゴスを討った。でも…」

レイ「ああ、まだ終わってはいない」

レイ「シンとアスランは、議長の理想を否定してザフトを抜けた。
そして、彼らが向かったのは間違いなく…」

ルナマリア「アークエンジェル…!」

レイ「そうだ。奴らとは、必ずぶつかることになる」
150 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:40:31.03 ID:B8pEosju0
ルナマリア「…それまでに、新しい私の機体、必ずものにしてみせるわ」

ルナマリア「それで、あいつを…シンを一発ぶん殴って、
目を覚まさせて、連れて帰るのよ。ミネルバに」

レイ「ルナマリア…」

シンに裏切られたあの日、レイは絶望し、彼を許さないと誓った。
だが、目の前の彼女は言うのだ。彼を諦めないと。
自分達の正しさを示し、彼を取り戻すのだと。

レイ「フ…その意気だ、ルナマリア」

レイは、バトルシュミレーターの座席に腰を下ろし、
操縦桿を握る。

ルナマリア「レイ…?」

レイ「訓練、まだ続けるなら付き合おう。データが相手では歯ごたえがないだろう」

ルナマリア「え?でもさっき出撃したばかりじゃない。無理しないで休んで」

レイ「心配するな。言ったろう?呆気ないものだった、とな」

ルナマリア「もう…手加減なしだからね!」

レイ「当然だ。簡単にやられてくれるなよ?」

ルナマリア「その余裕、いつまでもつかしらっ!」
151 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:44:14.55 ID:B8pEosju0
ミネルバに着任してすぐの頃、レイはデュランダルに、ある質問をした。

デュランダル『着任おめでとう、レイ。これで君も一人前のパイロットだな』

レイ『ギル…ひとつお聞きしてもよろしいですか?』

デュランダル『なんだね?』

レイ『なぜ、彼に…』

デュランダル『ああ…インパルスのことか』

デュランダル『彼の資質を見込んでの決定だよ』

デュランダル『真の平和を実現するためには、いずれ彼の力が必要となるはずだからね』

レイ(ギルの言うことは正しかった。再び起きた戦乱の中で、
シンは目覚ましい活躍を見せ、幾度もミネルバの窮地を救った)

レイ(芽生えた嫉妬心は、日に日に薄らいでいった。
あいつなら、世界を変えてくれる。本気でそう思った)
152 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:46:14.26 ID:B8pEosju0
ルナマリア「あーっ!負けたー!もう一回お願い!」

レイ「ああ、気が済むまで付き合おう」

レイ(シン…俺はお前を許さない。そのことに変わりはない)

レイ(だが、お前にも見せてやりたいんだ。議長の下に築かれる、
平和な世界、戦争の無い世界、誰もが幸せを享受できる世界)

レイ(だから、シン。俺たちで、お前を取り戻す…!)

新たな決意と共に、レイは再び操縦桿を握りしめた。
153 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:48:45.65 ID:B8pEosju0
オーブへと戻ったカガリとアークエンジェル。
ロゴスとの繋がりが明るみに出たセイラン家は、
五大氏族から追放、国家反逆罪で拘束され、
カガリは再び国家元首の座に就くこととなった。
その後、正式にオーブ所属艦となったアークエンジェルは、
カガリから黄金のMS"アカツキ"を託され、
宇宙へと上がり、エターナルと合流したのだった。

キラ「ラクス、バルトフェルドさん、無事でよかった…」

バルトフェルド「だが、虎の子の新型を奪われちまった」

ラクス「仕方ありませんわ…エターナルが守れただけでもよしといたしましょう」

シン(この人が本物のラクス・クライン…議長と一緒にいた人とは、随分雰囲気が違うな…)
154 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:50:33.94 ID:B8pEosju0
ラクス「キラ、そちらの方は…?」

キラ「紹介するよ、僕たちの新しい仲間」

シン「シン・アスカです」

ラクス「ラクス・クラインですわ」

バルトフェルド「アンドリュー・バルトフェルドだ」

バルトフェルド「その制服、ザフトレッドか…なにか縁を感じるねえ」

シン「縁…?」

バルトフェルド「いやなに、こちらの話さ」

バルトフェルド(元地球連合の艦に、こうもザフトにいた人間が集まってくるというのは、
なんとも奇妙で、面白くもある…)

バルトフェルド「新しい仲間に、歓迎の一杯でも淹れてやりたいんだがね。
まずは状況を確認したい」
155 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:54:23.05 ID:B8pEosju0
バルトフェルド「ファクトリーを襲撃した奴らの正体だが…
ザフト、或いはそれと繋がりのある組織の可能性が高い」

シン「え…」

バルトフェルド「ヘブンズベースで行われたロゴス討伐作戦、
偵察していたキサカから届いた映像で確認したが…」

バルトフェルド「ミネルバから発進したMS、あれは奪われた新型に間違いない」

キラ「やっぱり、議長…」

バルトフェルド「ニュースはもうひとつだ。
奪われたものは大きいが、収穫もあってな」

バルトフェルド「デュランダルの計画…その尻尾、ようやく掴めた」
156 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 17:57:20.05 ID:B8pEosju0
シン「メンデルを調査していたんですよね?」

バルトフェルド「デュランダルは遺伝子研究のエキスパート。
ならば、メンデルとも関わりがあると考えたわけよ」

アスラン「コロニーメンデル…そこに一体なにが?」

ラクス「わたくしたちがメンデルで見つけたものは、この一冊のノートです」

ラクス「議長の、かつての同僚が記していたものと思われます」

アスランはノートを受け取り、ページをめくっていく。

アスラン「デスティニー・プラン…?」
157 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:01:11.06 ID:B8pEosju0
ラクス「アスラン、なにか思い当たることは?」

アスラン「…ある。これは、議長は言っていたことと一致する内容だ」

アスラン「彼は言っていた…人間は自らの能力を知り、
その役割を果たして生きることこそが幸福なのだと」

アスラン「そんな世界なら、戦争は起こらないと」

マリュー「能力を知るというのは、やっぱり彼の専門分野である、
遺伝子で、ということかしら?」

アスラン「ええ、恐らくは」

アスラン「このデスティニー・プランが、そんな世界を実現する手段だということか…」
158 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:03:38.09 ID:B8pEosju0
キラ「…できるから、その能力があるから、そう生きる」

キラ「それって、本当に幸せなのかな…?」

アスラン「俺はそうは思わない。だが…」

『私はラクスなの!ラクスがいい!』

ミーアの言葉が脳裏をよぎる。

アスラン「そう思う人間も、いるのかもしれない…」

シン「アスラン…?」

バルトフェルド「ヘブンズベースの陥落、ジブリールの拘束により、
ロゴスは事実上の解体…デュランダルの言う"世界の敵"はもういない」

バルトフェルド「奴め…これからどう動く?」

それから数日後、デュランダルはデスティニー・プランの導入実行を宣言。
その傍らには、ミーア・キャンベルの姿もあった。
159 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:05:59.30 ID:B8pEosju0
シン「デスティニー・プラン…突然こんなこと言われたって、世界は困惑するだけなんじゃ…」

マリュー「いいえ、シンくん。それがそうとも限らないのよ」

シン「どういうことです?」

マリュー「地球の各国は、戦争とロゴス狩りの混乱による傷も癒えていない。
誰もが平穏な生活を渇望している…そんな中で、ロゴスを討ち、
今や世界のリーダーとなった議長が提唱する、平和のためのプラン…抗い難いでしょうね」

バルトフェルド「加えてラクス・クラインというカリスマにそれを支持させる…この上なく有効な戦略だ」

キラ「こっちが本物のラクスです、って名乗り上げれば早いんだろうけどね」

ラクス「それはできませんわ…今わたくしが表に出ては、
きっとミーアさんを傷つけることになってしまいます」

アスラン「ああ。そして議長は、そんなラクスの考えまで織り込み済みで、
臆面もなく彼女を表舞台に立たせているんだ…」

バルトフェルド「ふむ、やはりあの男…世界のリーダーを気取るには、
悪辣な手段をとりすぎる」

アスラン「ミーアのこと…無理矢理にでも連れてくるべきだった…」

アスラン「議長の元にいたのでは、いいように利用されるだけだ!」
160 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:07:45.80 ID:B8pEosju0
シン「議長と直接、話ができればいいんですけどね…」

キラ「カガリが何度も会談の要請をしてるんだけど、拒否されてるみたい」

シン「そんな…話し合いの余地はないってことですか…?」

キラ「プランの導入、もし力押しでこられたら…」

シン「…戦闘になるかもしれないってことですよね。覚悟はできてます」

キラ「シン、無理に戦う必要はないよ。向こうには、君の知ってる人もたくさんいるんだろ?」

キラ「友達と戦う辛さは、僕にはよくわかるんだ、だから…」
161 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:09:12.31 ID:B8pEosju0
シン「大丈夫ですよ。殺し合いをするんじゃない…」

シン「止めるための戦いです」

キラ「それは…」

シン「そうでしょ?キラさんの受け売りですけどね」

キラ「シン…」

アスラン「キラ、シンなら大丈夫さ」

アスラン「それに、ミネルバは強い。シンとデスティニーを欠いては、
止めることはできないかもしれない」

キラ「…そうだね。わかった」

キラ「頼りにさせてもらうよ、シン!」

シン「ええ、お互いに!」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 18:10:28.47 ID:one98i5A0
ストフリにキラが乗らなくて敵なのが凄く受け入れられないほどの違和感が…
163 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:17:51.19 ID:B8pEosju0
今回はここまでです。
エンジェルダウン作戦もオーブ侵攻作戦も無いのであっという間に最終決戦目前です。
164 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/04(日) 18:20:27.21 ID:B8pEosju0
現時点でのキャラクターの状況まとめ

・シン
ステラが生存し、アスランとメイリンを討ってないので、精神的に安定。
レイやルナマリアに対して後ろめたさを感じてはいるが、彼らを止めるための戦いを決意。

・レイ
このSSではストライクフリーダムのパイロットに。
シンとアスランの脱走後に猛特訓し、パイロットとして大幅なレベルアップを遂げ、
ストライクフリーダムの性能を最大限にまで発揮させている。

・ルナマリア
シンのことは信じているものの、アスランに対しては、
彼がAAクルーと密会していたところを直接見ていたため、
最初からそのつもりだったのでは、と考えている。
レイと同様、猛特訓でメキメキと実力を伸ばしている。

・メイリン
アスランの脱走には関与せず、ミネルバに残留。
暇さえあればシュミレーターに向かうルナマリアを心配している。

・ムウ
描写ないですが生存。機体の爆発で海に投げ出され、そのまま泳いで戦闘区域から脱出。
ネオ・ロアノーク時代にしたことの贖罪を求め、徘徊中。

・アビー
原作ではメイリンの抜けた穴を埋めたが、
このSSで出番があるかは未定。
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 18:27:11.07 ID:/VT9X14eo
異能生存体ムウ
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 18:47:03.66 ID:npcE9IW/O
キラがレジェンドに乗ってレイと機体交換というW的展開……はないか
サイの件考えると個人認証ありそうやし
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 20:34:28.53 ID:xC1sf5/q0
ほんっといつまでたってもガンダムのセキュリティの甘さ変わらんな
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 21:02:55.66 ID:cmMy3s2Mo
ナチュラルがストライクフリーダムを最大限にまで……!
スーパーコーディネーター(笑)
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 21:14:25.25 ID:ErkvBqsJ0
スレタイのフリーダムは敵じゃないってそういう意味か
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 21:18:07.31 ID:L6UWQuCqo
>>168
ナチュラルがコーディネイターを上回る話はノイマンが良い例だな
彼の腕無くしてアークエンジェルは生き残れなかった
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 22:47:47.09 ID:zZhvmJICo
ド、ドラグーンはムウ一族のが適性高いし……
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 03:24:54.65 ID:SBZckyhto
ノイマンって誰だっけ?
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 07:07:07.94 ID:hSTaMyvko
大気圏内でアークエンジェルをバレルロールさせたり
回避って言われてから回避行動してホントに回避する化け物操舵手やぞ
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 10:57:55.48 ID:SBZckyhto
はい!・・・いいえぇ!!!の人か思い出した
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 11:35:54.36 ID:EwHRsQCeo
マリュー「回避ィ!」ノイマン「もうやってます!」とかもある
176 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:27:02.30 ID:RehrFbjw0
投下します。
177 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:29:07.04 ID:RehrFbjw0
デスティニー・プランの発表から程なくして、
オーブとスカンジナビア王国はこれを明確に拒否。
それに呼応し、地球連合軍のアルザッヘル基地が軍事行動に出る。
対するザフト側は、宇宙要塞メサイアを起動させ迎撃。
メサイアから放たれたネオ・ジェネシスの一撃によって、アルザッヘル基地は壊滅。
ネオ・ジェネシスの存在を放置できないと考えたオーブは、
これを排除すべく、アークエンジェルとエターナルを向かわせるのだった。

デュランダル「オーブめ…この期に及んでまだ争うことを止めぬとは」

デュランダル「私は言ったはずだがな。これは人類存亡を懸けた、最後の防衛策だと」

デュランダル「なのに敵対するというのなら、それは"世界の敵"ということだ…!」
178 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:31:19.70 ID:RehrFbjw0
キラ「ねえ、アスラン」

格納庫、フリーダムの機体調整を見直しつつ、
キラはアスランに向けて問いかける。

キラ「アスランの乗っていたあの機体って…」

アスラン「ああ、レジェンドのことか。あれが気になるのか?」

キラ「…うん。ヤキンの戦いで、ラウ・ル・クルーゼが乗っていた機体にそっくりだ」
179 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:33:23.91 ID:RehrFbjw0
アスラン「隊長…いや、クルーゼが…」

キラ「人は、滅ぶべくして滅ぶ…そう言った彼に、僕はこう返したんだ」

キラ「それでも、守りたい世界があるんだ…って」

アスラン「……」

キラ「でも僕は、フレイを失った悲しみの大きさに耐えられなくて、立ち止まってしまった」

アスラン「キラ…」

キラ「ラクスも、僕のために表舞台から姿を消して、傍にいてくれた。
それを、議長に利用されたんだ」

キラ「そしてラクスが殺されそうになって、僕はまたMSに乗った」

キラ「カガリが望まない相手と結婚させられそうになって、
そんなのは僕も嫌だって、カガリを連れて逃げて」

キラ「前の戦争のあと、僕はカガリのためになにもしてあげられていなかった。
だから、彼女のためにできることはないかって…僕は焦ったんだ」

キラ「そして、やり方を間違えた」
180 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:34:51.57 ID:RehrFbjw0
アスラン「……」

キラ「まだ、ちゃんと謝ってなかったよね。あのときのこと」

キラ「必死に止めようとしてくれていた君を、僕は…」

アスラン「…焦って、間違えたのは、俺も同じさ」

アスラン「オーブにいても、自分にできることは何もないんだと、
勝手に思い込んで、カガリにロクに相談もせずにプラントに行って…」

アスラン「あいつを…カガリを誰より追い詰めていたのは、きっと俺だ…」

キラ「アスラン…」
181 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:37:19.37 ID:RehrFbjw0
アスラン「キラ…俺たちは、これからも間違えると思う。
人間である以上、それは避けられないことだ」

キラ「うん…」

アスラン「それでも…恐れずに選ぶんだ。自分の道を。
きっとその先に、答えはある」

キラ「うん。もう立ち止まるわけにはいかない」

キラ「…議長も、僕たちと同じなのかもしれないね」

アスラン「彼もまた、焦っているのか…争い続ける世界に」

アスラン「ジェネシスを…あんな悪夢の兵器を、再び持ち出さなければならないほどに…」

キラ「…話そう、議長と。そして伝えよう、僕たちの思いを!」

アスラン「ああ!」
182 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:40:16.82 ID:RehrFbjw0
バルトフェルド「パーッと歓迎会でも催してやりたいところだが、状況が状況だからな。
代わりといってはなんだが、自慢のブレンドを振舞ってやる。来たまえ」

バルトフェルドの私室へ招かれたシンは、彼の淹れたコーヒーの芳香に、
戦いによって擦り減った心が安らいでいくのを感じていた。

バルトフェルド「さあ、飲んでみたまえ」

シン「それじゃあ、いただきます」

シン「…美味い!」

バルトフェルド「フッ…気に入ってもらえて、なによりだ」
183 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:41:36.20 ID:RehrFbjw0
バルトフェルド「少しばかり、肩に力が入りすぎているように見えたんでね。
この一杯でリラックスしてもらえればと思ったのさ」

シン「それは…ありがとうございます」

バルトフェルド「なに…目的の半分は、新調合のブレンドの実験がしたかっただけだ。礼には及ばんよ」

シン「実験!?」

バルトフェルド「はっはっは!」

面食らうシンを見て、バルトフェルドは楽しそうに笑った。
184 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:43:31.51 ID:RehrFbjw0
シン「まあ、こんなに美味いコーヒーが飲めるんなら、いくらでも付き合いますけどね」

バルトフェルド「ほう…嬉しいことを言ってくれるじゃないの」

バルトフェルド「この戦いが無事に終われば、実験抜きに好きなだけ淹れてやるさ」

シン「そういえば…バルトフェルドさんは、例の金色に乗るんですよね?」

バルトフェルド「うむ。だが、オーブの守護神たるアカツキ…
あの機体、乗り込むのが俺では、役者不足に思えるがねえ」
185 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:44:54.79 ID:RehrFbjw0
シン「たった一人でエターナルを守り抜いた人の言うセリフですか?」

バルトフェルド「腕の問題じゃあないのさ。あれはオーブを守るために、
ウズミがカガリへと遺したものだ」

シン「ウズミ…」

バルトフェルド「ああ、ウズミ・ナラ・アスハ。オーブの前国家元首さ」

シン「そのぐらいは知ってますよ」

バルトフェルド「まあ、知らない人間の方が珍しいか。こりゃ失礼」
186 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:46:24.63 ID:RehrFbjw0
シン「…俺、元々オーブの出身なんです」

バルトフェルド「ほう…それが、なぜプラントに?」

シン「前の戦争で、オノゴロが攻撃を受けて…家族を失ったんです」

シン「避難してる途中で、流れ弾を受けて、それで…
たまたま離れた場所にいた俺だけが生き残って」

バルトフェルド「そうか…」

シン「あのときオーブは、その理念を守り通したかもしれない。
だけど、俺の家族は守ってくれなかった」

シン「身寄りのない俺は、そのままプラントに行きました。
オーブには、戻りたくなかったから…」
187 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:48:07.83 ID:RehrFbjw0
バルトフェルド「…だが、君は戻ってきた。自らの意思で」

シン「キラさんやカガリと話して、思ったんです。
今のオーブならきっと、二度と国を灼いたりしない」

シン「そして…俺が絶対、そんなことにはさせない!」

バルトフェルド(…変わったのは、きっとオーブだけではないな)

バルトフェルド「無論だ。オーブは守り抜く、俺たちでな」

バルトフェルド「さて、そろそろ出撃だ」

シン「アカツキの操縦、やれそうですか?」

バルトフェルド「ああ…こんなときに、大人がいつまでも弱気ではいられまい」

バルトフェルド「任された以上は、やってみるさ!」
188 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:51:15.27 ID:RehrFbjw0
キラ「ラクス…本当に一緒に乗るつもり…?」

ラクス「ええ。元々そのためにお願いして、複座式にしていただいたんですもの」

ラクス「議長とは、わたくしも直接お話しなければなりません。
それにミーアさんとも一度、お話してみたいですわ」

キラ「でも…」

ラクス「大丈夫、キラのフリーダムは無敵ですもの」

キラ「…わかった。観念するよ」

キラ「一緒に議長を止めよう、ラクス!」

ラクス「はい!」

ダコスタ『ザフト軍第一防衛ラインまで、距離200!光学映像、出ます!』

エターナルからは、ミーティアと接続されたフリーダムとレジェンドが、
アークエンジェルからは、オオワシアカツキとデスティニーが、それぞれ発進する。
その後ろには、クサナギを旗艦とするオーブ艦隊が控えている。

二機のミーティアを先行させて道を作り、メサイアまで一直線に主力隊を向かわせ、
ネオ・ジェネシスを破壊し、議長を止める。
それがラクスにより発案されたミッションプランだった。
189 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:54:13.86 ID:RehrFbjw0
ラクス『我々はこれより、その無用な大量破壊兵器の排除を開始します!』

ラクス『その兵器は、人が守らねばならないものでも、
戦うために必要なものでもないはずです!道を空けてください!』

全周波の回線を通し、戦場に涼やかな声が響き渡る。
あくまでラクス・クラインの名は明かさぬまま、
彼女はザフトの将兵達に呼びかける。

ラクス『ザフトがその力と誇りを懸けて守るべきものは、
そんな兵器では断じてないはずです!』

彼女の呼びかけも虚しく、ザフトのMS達は銃を向ける。

キラ「…ラクス、駄目だ。簡単には通してくれそうにない」

ラクス「やはり、戦いは避けられないのですね…」

アスラン「ここで時間を食って、ジェネシスの二射目を討たせるわけにはいかない!」

アスラン「ミーティアを使うッ!!」

レジェンドに接続されたミーティアの砲門が一斉に開き、
アスランがトリガーを引くと同時に、数百もの炎の花が咲き乱れる。
190 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:56:52.50 ID:RehrFbjw0
しかし、それでケリがつくほど、ザフトの軍勢は甘くはない。

バルトフェルド「ミーティアの威力を目にしても、まだ向かってくるか…」

アスラン「ええい…!出てくるなッ!!」

再びアスランがトリガーに指を掛けた直後、レジェンドのコクピットに警告音が鳴り響く。

アスラン「くっ!?」

シン「アスラン!!」

アスランが反応するよりも速く、ミーティアは灼熱の光輝に撃ち抜かれ、炎を噴き上げながら爆散した。
191 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 20:59:17.95 ID:RehrFbjw0
アスラン「ミーティアを一撃で粉砕するほどの、圧倒的な火力…まさか!」

辛うじてミーティアをパージし、離脱したレジェンドのレーダー映し出されたのは、
急速に接近する二機のMS。その反応はエネミーを示している。

バルトフェルド「おいおいおい…こんなに早くラスボスのご登場かい?」

キラ「ストライクフリーダム…!それだけじゃない!」

ラクス「やはり、投入して来ましたわね…インフィニットジャスティス…!」

インフィニットジャスティス。
ストライクフリーダムと共に、ファクトリーから強奪されたもう一機が、
ついに戦場に姿を現した。

バルトフェルド「なるほどね…」

ミーティアの殲滅力を前に、ザフト軍が怯まないその理由を、
バルトフェルドはようやく理解するに至った。
フリーダムとジャスティス、前大戦の伝説たる二機が、自軍に味方している。
その事実が、将兵達の戦意を高揚させているのだ。

ルナマリア「お久しぶり。シン、アスラン…!」

アスラン「ジャスティスに乗っているのは…ルナマリアなのか!?」

レイ「ここから先へ通すわけにはいかない」

レイ「あと少しなんだ…あと少しで、新世界への扉が開く…」

シン「レイ…ルナ…!」

レイ「その邪魔は…させないッ!!」

人類の運命を懸けた戦いが今、始まる。
192 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 21:00:55.90 ID:RehrFbjw0
今回はここまでとなります。
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 21:02:32.78 ID:81CI2RSA0
隠者はルナが乗ってるのかな。
ムゥがいないから戦力的にヤバそうな気配。
194 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/05(月) 21:13:29.91 ID:RehrFbjw0
状況の追記

・ジブリール
ヘブンズベース戦であっさり確保されている。
よってオーブ侵攻作戦もダイダロス基地戦もなし。

・レクイエムの存在
このSSでは無いものとして書いてます。

シン、キラ、アスラン
アークエンジェル視点では彼ら三人を主人公にしています。
シンはデスティニー、キラはフリーダム、アスランはレジェンドが乗機。
複座式に改造されたフリーダムの後部座席にはラクスが同乗。

・レイ
シン、キラ、アスランが組んだらもう止められるキャラおらんやん…
ということで大幅にパワーアップしてストフリまでゲットした、ザフト視点の主人公。

・ルナマリア
このSSではインフィニットジャスティスのパイロットに。
インジャの存在はここまでぼかして来ましたが、ストフリと同時にザフトに奪取されてます。
射撃が苦手な彼女にとって近接武装が充実したインジャは相性がいいような。
機体の色も赤系統だし。

・バルトフェルド
このSSではムウがAAに参入していないため、彼がアカツキのパイロットに。
ドラグーンが使えないため装備はオオワシとなっています。
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 21:51:19.23 ID:zde5nEnB0
キラだけ機体がショボいな
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 22:07:29.35 ID:Xs7DSGxRo
バルトフェルド も強いことは強いんだがアカツキだとムウと比べるとやっぱ落ちるよなあ
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 22:56:42.20 ID:fp34ablJo
むしろ不知火装備のアカツキをキラに使わせればよかったと思う
いうてもカガリの弟だし、バルドフェルドよりもカガリがオーブの意志を託すに値するだろ

まぁ複座には出来ないだろうからその点で自由にしたんだろうけど
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 22:57:57.36 ID:JjFy/fIA0
暁ならストフリ相手には強く出れるんだろうけど、決定打がないからなぁ
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 23:18:41.88 ID:fp34ablJo
でもアカツキもCE.73年製なんだよなぁ・・・
いくらチョコチョコ改修されてるとはいえ、開発思想とか能力とかもう完全にスーパーロボット
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 23:50:52.29 ID:Xs7DSGxRo
キラはドラグーン適性がよく分からん……
ストフリのは改良型のスーパードラグーンだったから適正の低いキラでも使えた的な設定だった頃しか知らないからなあ
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 23:57:35.01 ID:DyR5p3fyO
キラはスーパーコーディネーターだから空間認識能力も遺伝子情報としてちゃんと保持してるよ
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 11:04:05.68 ID:2N3SXWGro
おつです

熱い展開いいよいいよー
レイとルナのコンビも中々強そうだ
どうなるか楽しみ
203 : ◆BRRGNconG6 [sage]:2017/06/06(火) 23:17:26.59 ID:1+WwXUoE0
今日中の投下は無理そうです。
3割ぐらい書けているので明日か明後日あたりになりそうです。
204 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:04:12.65 ID:9DGPBiv70
投下します。
205 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:05:56.57 ID:9DGPBiv70
レイ「まずは貴様からだ…裏切り者のアスラン・ザラッ!!」

ストライクフリーダムの翼から放たれた八基のドラグーンが、
一瞬のうちにレジェンドを取り囲み、その砲塔から光の矢を放つ。
光の矢は交差し、蜘蛛の巣の如く、搦めとるもの全てを斬り刻む死の網を形成する。

アスラン「ええいっ!」

ブースターを噴射させ、強引にそれを回避するレジェンド。
強烈なGがアスランの身体をシートに押し付け、打ちひしぐ。

アスラン「ぐうっ…!」

キラ「アスランッ!!」

尚も追撃をかけるレイを、キラのフリーダムが遮った。

レイ「邪魔をするか…キラ・ヤマト!!」

キラ「僕の名を知っている…!?」

レイ「だが…無駄だ」

レイ「"貴様のフリーダム"と"俺のフリーダム"…どちらが強いのか、知らないはずはないだろう?」

キラ「くっ…!」

嘲るように嗤うレイに、キラは歯噛みする。
インパルスやセイバーを凌ぐ性能を誇るフリーダムは、間違いなく強力な機体である。
だが目の前にいるのは、そのフリーダムですら足元にも及ばない、圧倒的な存在。
それは、ストライクフリーダムの開発に携わったキラ自身が、誰より理解していたことだった。
206 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:08:25.68 ID:9DGPBiv70
レジェンドが体制を整えたのを確認し、シンが呼びかける。

シン「ここは俺とアスランが引き受けます!キラさんとバルトフェルドさんは、
アークエンジェルとエターナルの援護に!」

キラ「シン!?」

アスラン「ああ!キラ達は、艦隊を率いてジェネシスに向かってくれ!」

バルトフェルド「……」

バルトフェルドは惟る。
ビーム兵器を反射することのできる装甲"ヤタノカガミ"を持つアカツキ。
この機体のデータは、まだ敵に知られてはいないはず。
ならば、自分が応戦した方が有利に立ち回れるのではないか?
いや、初見殺しが通用するほど、甘い相手ではなさそうだ。

それに、ストライクフリーダムにはアカツキを突破できる武装が積まれている。
腰に携えたレール砲と、翼のドラグーンに搭載されたビームソードがそれだ。
近接戦において無敵を誇るインフィニットジャスティスに至っては、
刃状に固定されたビームを防げないアカツキにとって、正に天敵と言ってもいい。
ヤタノカガミの特性を見抜かれれば、マシンの性能差に圧倒されるのがオチだろう。
207 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:11:12.94 ID:9DGPBiv70
バルトフェルド「…了解した!この場は彼らに任せるぞ、キラ!」

キラ「けど!」

ラクス「行きましょう、キラ。彼らなら大丈夫ですわ」

キラ「くっ…アスラン!シンも、どうか無事で!」

ルナマリア「いかせるかっ!」

レイ「いや、追わなくていい」

ルナマリア「レイ!?」

離脱する二機を追おうと前に出たルナマリアに、レイが待ったをかける。

レイ「俺たちの任務は、敵の主力…デスティニーとレジェンドを釘付けにすることだ。
後方にはミネルバやジュール隊も控えている。
敵の数もこちらに比べて遥かに少ない。問題は無い」

ルナマリア「…了解よ」

状況を静観していたザフト軍のMS達が、次々と距離取った。
デスティニー、レジェンド、ストライクフリーダム、インフィニットジャスティス。
最強の四機が集うこの場に、他者の入り込む余地が無いことは明白だった。
208 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:13:47.69 ID:9DGPBiv70
アスラン「レイ!ルナマリアも!…こんなやり方が、本当に正しいと思っているのか!?」

レイ「こんなやり方?お前達のやり方と、どう違う?」

ルナマリア「そうよ…私やあなた達の乗ってるMSとあの兵器に、どんな違いがあるっていうの!?」

アスラン「それは…!」

レイとルナマリアの言葉に、アスランは唇を噛み締めた。
デュランダルは、従わねば撃つと、ジェネシスの銃口を突きつける。
だが自分にしてもたった今、ミーティアの巨大な力で、ラクスの言葉に従わぬものを撃ったのだ。
209 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:18:47.50 ID:9DGPBiv70
シン「違うッ!!」

シン「MSには、人が乗ってるんだ!そこには…自分の手を汚してでも、何かを守ろうとする意志がある!」

シン「でもジェネシスは…あの兵器は、簡単に人の命を奪いすぎる…!」

シン「あれが生み出すのは平和じゃない!戦争よりも酷い、殺戮だ!!」

アスラン「シン…!」

デスティニー・プランを強行するためにジェネシスを突きつけるデュランダルと
それを止めるべく戦う自分達は違うものだと、真っ向から否定するシンを見て、アスランは闘志を取り戻す。
そうだ、何を迷うことがある。自らが選んだ道なら、今は進むしかないのだ。
210 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:20:58.80 ID:9DGPBiv70
レイ「ふん…だが所詮、それはお前達の理屈だよ」

レイ「それが正しいと言うのなら、俺達に勝ってみせることだッ!!」

アスラン「来るぞ、シン!」

シン「勝ってみせるさ…俺とデスティニーなら、やれる!!」
211 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:22:06.98 ID:9DGPBiv70
レイ「ルナマリア、お前はシンを止めろ!俺はアスランを討つ!!」

レイ「この裏切り者は、俺の手で叩き潰さなければ気が済まない!!」

アスラン「悪いが、そう簡単に堕とされる気はない…!」

再びドラグーンを射出するストライクフリーダム。
呼応するように、レジェンドもそれらを解き放つ。

十数基のビーム砲塔が、切り結ぶ二機の周囲を縦横無尽に駆け巡り、ビームを射交わす。
その度、暗いグレーに彩られたドラグーンが一基、また一基と数を減らしていく。

アスラン「くッ!ドラグーンの扱いにこうまで差が出るとは…!」

レイ「人にはそれぞれ、適正というものがある」

レイ「空間認識能力において、俺は貴様より優れている…それだけのこと!」

レイ「そしてデスティニー・プランは、そんな人の才能を見出し、
最大限に活かすことのできる場所を用意する、道標となる!」

アスラン「くうっ!」

ビームサーベルを引き抜き、斬りかかるストライクフリーダム。
レジェンドも、脚部のウェポンラックからビームジャベリンを取り出し、迎え撃つ。
212 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:24:44.42 ID:9DGPBiv70
レイ「議長を否定して、お前達は一体どうするつもりだ!混沌の闇へと沈む、この世界を!」

アスラン「俺達は知っている!人は間違えても、それを認めて、変わっていけることを!」

アスラン「レイ…!お前も、もっと人を信じてみろ!!」

レイ「裏切り者の言うことかッ!!」

肉薄した状態から、ストライクフリーダムの腰部レール砲が火を噴き、
レジェンドのコクピットを激甚な衝撃が襲う。

アスラン「ぐあぁっ!!」
213 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:28:29.90 ID:9DGPBiv70
レイ「変わる…信じる…実にくだらない、漠然とした回答だ!」

レイ「結局お前達は、結論も出さずに…ただ耳障りの良い言葉で、惑わせているだけではないのか!」

レイ「デスティニー・プランこそ、議長がこの世界に導きだした、完全な答えだ!!」

アスラン「たった一人の人間が導き出した答えが、完全なものだなどと!!」

レイ「ならば貴様らの理想で、世界はいつ変わる!?いつ平和になる!?」

レイ「十年後か!二十年後か!!」

レイ「俺は…一日でも早く平和が欲しいんだ!!」

それは、自らの運命を悟った少年の、悲痛な叫びだった。
214 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:32:32.57 ID:9DGPBiv70
ルナマリア「一対一の戦いでは、私のジャスティスが最強なのよ!!」

シン「くっ…!」

インフィニットジャスティス本体と、そこから分離した機動飛翔体"ファトゥム"による波状攻撃。
実質的に、デスティニーは二対一の状況に追い込まれていた。

ルナマリア「シン!早く目を覚まして、私達のところに戻って来てよ!
アスランがあなたを唆したんでしょ!?」

シン「違うよルナ!俺は俺の意思でここにいる!
ルナの方こそ、なんであんなものを守って戦うんだよ!?」

ルナマリア「私達は兵士なの!兵士が命令に従って戦うのは当たり前のことじゃない!
その兵士に、私もシンも望んでなったんじゃなかったの!?」

シン「役割を選んで、それで終わりなわけがないだろ!
人は何度だって選択を迫られる!その度に答えを選び続けなきゃならないんだ!」

ルナマリア「だったら…これが私の答え!」

インフィニットジャスティスのシールドに接続された、大型ビームサーベル"シャイニングエッジ"。
その刃が、運命を断ち切るべく光を放つ。

シン「ルナ…本気なのか…!?」
215 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:35:58.71 ID:9DGPBiv70
ルナマリア「あなたに勝つわ。そして終わらせる!」

ルナマリア「私の選んだ答えの方が正しいって言わせてみせる!」

シン「俺だって、半端な覚悟でここに立っているわけじゃない!」

シン「止めてみせる…ルナも、レイも、議長も!!」

デスティニーは、背部のウェポンラックから対艦刀"アロンダイト"を引き抜き、それを真正面に構える。
本来対MAを想定したその武装は、威力こそ凄まじいものの取り回しに難があり、MS同士の白兵戦には向かないものだった。
しかし今、この状況を打開できるとしたら、この武装しか無いのだとシンは確信していた。

ルナマリア「わからない?接近戦で私のジャスティスに勝てるMSなんていないのよ!」

シン「それでも…勝つッ!!」
216 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:37:33.75 ID:9DGPBiv70
デスティニーは光の翼を限界まで稼働させ、アロンダイトを構えたまま一直線に突っ込む。
小細工は一切無用。ミラージュコロイドによる幻惑効果など、今のルナマリアには通じまい。

ルナマリア「ヤケクソってわけ!?」

シン「ちゃんと考えてるさ!!この距離なら、リフターは使えないだろ!!」

肉薄し、振り下ろされるアロンダイト。
戦艦すらも一刀の下に葬り去るその一撃は、インフィニットジャスティスのビームシールドごと、その左腕を粉砕する。

ルナマリア「なんて破壊力なの…!?でも、甘いのよッ!」

インフィニットジャスティスの脛に、あらゆるものを切り裂く光刃が形成される。
この武装こそ、ルナマリアが自らの愛機を接近戦において最強と誇る所以だった。
217 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:40:00.05 ID:9DGPBiv70
シン「くっ!」

その脚が蹴り上げられるのと、デスティニーが身を翻したのは、ほぼ同時だった。

ルナマリア「今のを避けるの!?」

シン「そういう武器なら…こっちにもある!!」

デスティニーの掌から放たれる眩い光が、ルナマリアの視界を奪う。
その一瞬の隙が、勝負の分かれ目となった。

ルナマリアが視界を取り戻したとき、モニターにはデスティニーの姿は既になく、
もはや迎撃も回避も不可能な一撃が、インフィニットジャスティスの頭部を吹き飛ばす。
メインカメラを潰され、インフィニットジャスティスの動きは停滞、
制御を失ったファトゥムは、デスティニーの高エネルギー砲が放つ朱い槍に貫かれ、火花を散らしながら四散した。

シン「勝負あり、だな」

ルナマリア「……はぁ…」

ルナマリア「……降参よ」
218 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:41:36.55 ID:9DGPBiv70
ルナマリア「負けたんだ…私。こんなにアッサリと」

ルナマリア「あなた達がいなくなってから…私、必死に強くなろうとしたのに」

シン「ルナが本気だったら、どうなってたかわからないよ」

ルナマリア「私が手加減したって?ないない。本気も本気よ」

シン「でも一瞬、迷いがみえた。…本当は分かってたんだろ?議長のやり方は違うって」

ルナマリア「……ジェネシスを撃ったのは、ね。そりゃ反発されるなって」

ルナマリア「デスティニー・プランには、半分賛成。半分反対」

ルナマリア「遺伝子で未来が決まっちゃうのは少し怖いけど、
戦争を終わらせられるっていうんだから…絶対悪いって言いきれるものじゃないと思う」

シン「うん…」
219 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:43:28.00 ID:9DGPBiv70
ルナマリア「でもそれ以上に、意地になってた。私を置いて出て行った人達になんか、
絶対負けてたまるもんですか!…ってね」

ルナマリア「…レイもね、きっとそうだと思う。
大好きな人に否定されて、見捨てられたような気持ちになったのよ」

シン「ごめん…」

ルナマリア「…しょうがないな。そんな顔されたら、もう怒れないよ」

シン「ルナ…」

ルナマリア「でも、すっっっっっごく傷ついたんだからね!」

ルナマリア「目の前で裏切られたレイは、私よりもっと辛かったと思う。
すっごく怒ってるし、謝っても許してくれないかも」

シン「そう…だよな」

ルナマリア「それでも、行ってあげて。レイのところに」

ルナマリア「今のレイに言葉を届けられるのは、きっとシンだけだから」
220 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:44:44.19 ID:9DGPBiv70
シン「ああ…俺、いくよ。レイのところに。それで自分の気持ちを全部ぶつけて、
あいつの気持ちも全部受け止めて、一緒に帰るんだ…俺達の、本当の居場所へ!」

ルナマリア「うん。それでまた、三人で一緒に笑おう!」

シン「約束だ!」

自らの選択と、その結果を背負い、運命は再び飛翔する。
約束を果たし、望む明日をその掌に掴み取るために。
221 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/07(水) 17:46:10.99 ID:9DGPBiv70
今回はここまでとなります。
最終決戦だからすぐ終わるだろうと思ったんですが、もうちょいかかりそうです。
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 18:03:36.97 ID:xWdo47K0O

監督に嫁さえいなけりゃこうなってたかもしれないのに・・・
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 18:48:11.06 ID:PIS/qyrZ0
期待
224 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 22:40:21.88 ID:H+kf6ni20
投下します。
225 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 22:42:38.47 ID:H+kf6ni20
レジェンドのシグナルは既にロスト。
それでも、シンが動じることはなかった。
レイはアスランを殺さない。そこに根拠は無く、それでも確信していた。
やがて、デスティニーのモニターに映し出されたのは、黄金色のフレームを輝かせる、白き鋼鉄の天使。

レイ「来たか、シン」

シン「レイ…討ったのか?アスランを」

レイ「いいや」

レイ「奴には、認めさせる必要がある。議長の導き出した答えが正しく、自らの選択は誤りだったとな」

レイ「殺してしまっては、意味がない」

シン「…そっか」

レイ「お前こそ、ルナマリアに勝ったのか。強かったろ、彼女は」

シン「ああ…」

レイ「ルナマリアを強くしたのは、お前達だ。そして…強くなったのは彼女だけではない」

シン「わかってるさ…」

ストライクフリーダムに、損傷は一切見受けられない。
全MSの頂点に位置する鋼鉄の天使がその搭乗者にもたらすのは、完全なる勝利。
死の商人ロゴスの全戦力であろうと、英雄と讃えられたアスラン・ザラであろうと、
その機体に僅かな傷を負わせることすら叶わない。
226 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 22:44:28.17 ID:H+kf6ni20
だが、それでも勝たねばならないのだ。
揺るがぬ信念が、操縦桿を握るシンの指に力を込める。

シン「レイ!ここでお前を止める!俺とデスティニーで!!」

レイ「俺と"このフリーダム"の力で終わらせる…この腐りきった世界を!!」

デスティニーがウイングユニットを展開すると、内部のスラスターから褪紅色に煌く粒子が迸り、
兵器と呼ぶにはあまりに美しい"光の翼"が形を成す。
それと同時に、ストライクフリーダムのドラグーンが四方に射出され、
一瞬のうちにデスティニーを取り囲む。その先端から放たれた光の矢が真空の闇を裂き、奔った。

シン「当たるかっ!!」

驟雨のように浴びせられるビームの中を、デスティニーは稲妻の如きスピードで駆け巡り、回避する。

レイ「素早いっ…!」

ドラグーンによる一斉掃射は間断なく、次第に激しさを増していく。
それは、一向にデスティニーを捕らえきれない、レイの焦りの表れでもあった。
デスティニーは変幻自在の動きで躱して躱して躱し尽くし、
その左手に握ったビームライフルで、一基、また一基とドラグーンを撃ち堕としていく。

レイ「これは…!?」

その常軌を逸した光景に、レイはデュランダルの言葉を思い出していた。
人類を進化へと導く因子、"SEED"。それを目覚めさせたものは、
常人ならざる反射神経と智慧を獲得し、最強の戦士として君臨するのだと。
レイは確信する。目の前にいるシンがそれなのだ。
彼は今、SEEDを覚醒させ、最強のパイロットとしてレイの前に立ちはだかっている。
しかしその事実に、レイは怖気づくどころか、喜悦すらも感じていた。

レイ「やはり、ギルの眼に狂いはなかった…!!」
227 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 22:46:27.73 ID:H+kf6ni20
最後のドラグーンが堕とされたと同時、ストライクフリーダムの翼から蒼白い焔が噴き出し、
それは瞬く間に"光の翼"へと変貌する。

ストライクフリーダムのコクピットに警告音が鳴り響き、敵機の接近を告げる。
迫りくるデスティニーの右手には、インフィニットジャスティスから借り受けたシャニングエッジが握られている。

シン「はぁぁぁぁッ!!」

レイ「来いッ!!」

加速し、落雷の如く突撃をかけるデスティニー。それを、ストライクフリーダムは真っ向から受けて立つ。
激突した二機は、次の瞬間には距離を離し、呼応するように再び刃をぶつけ合う。
二度、三度とそれを繰り返し、吹き荒れる破壊的な力の奔流が、互いの装甲を削り取っていく。

シン「負けるかぁぁぁーッ!!」

レイ「いいぞシン!!もっとお前の力を見せてみろォッ!!」

マシンを介したからこそ可能となる、ジェット噴流でも帯びたかの如き超高速の剣戟は、
もはや両者とも、それを眼で追い切れてはいなかった。
戦いの中で培った感覚と本能を頼りに、ひたすらに刃を打ち据える。
228 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 22:49:10.94 ID:H+kf6ni20
デスティニーとストライクフリーダム、究極のMS同士による攻防は、
互いに一歩も譲らず、徐々に停滞していく。
決め手となる一撃を繰り出すために、両者は再び距離をとった。

シン「くっ…!」

レイ「ははは…素晴らしいぞ、シン!」

シン「レイ…?」

レイ「お前がその力を見せれば見せるほど、議長の…ギルの正しさが証明されていく!!」

レイ「ギルはお前に戦士としての才能を見出し、そしてインパルスとデスティニーを与えた!」

レイ「わかるだろう、この意味が!!」

シン「レイ…どうしてそこまでデスティニー・プランに拘るんだ!?」

レイ「俺は一日でも早く平和が欲しい…!デスティニー・プランが実行されれば、明日にでも平和が手に入る!」

シン「平和になるのは早い方がいいけど…だからって!」
229 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 22:51:23.65 ID:H+kf6ni20
レイ「……俺は、ある人間のクローンとして生み出された」

シン「え…?」

レイ「クローンの肉体は、人より早く老化する。俺の命も、そう遠くなく死に至る」

シン「……そんな、嘘だろ…!?」

レイ「…俺にはかつて、兄のような存在がいた。名を、ラウ・ル・クルーゼ。俺と同じクローンだ」

レイ「彼は、その運命を呪い…全てを壊そうと戦って…死んだ」

シン「……」

レイ「だが誰が悪い?…誰が悪かったんだ?」

レイ「悪いのは、不完全で不幸な…この世界だ!」

レイ「だから変える、全てを!俺の命が尽きぬうちに…!!」

シン「レイ……!」

レイ「さあ、俺に勝ってみせろッ!!そして証明するんだ…デスティニー・プランの有用性を!!」

シン「俺は……お前に勝つッ!!その上で、デスティニー・プランを否定する!!」

シン「お前が運命に囚われているっていうのなら、俺がそれを断ち切ってやる!!」
230 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 22:54:27.05 ID:H+kf6ni20
朱き翼の悪魔、熾火の如き輝きを放つその双眸の先には、蒼き翼の天使が、超然と佇んでいる。
神話の再演であるかのような闘いは、第二ラウンドへと突入した。

先に仕掛けたのは、デスティニー。
右手のシャイニングエッジと、肩部のビームブーメラン"フラッシュエッジ2"を連続して投げ放つ。
飛来する三つの刃を、ストライクフリーダムのビームサーベルが難なく打ち払う。
だが、レイがビームブーメランへの対応に意識を向けた一瞬のうちに、デスティニーはモニターからその姿を消していた。

レイ「ええいっ…!」

レーダーが補足するより早く、持ち前の空間認識能力を駆使し、デスティニーの位置を感じ取るレイ。

レイ「後ろかッ!!」

しかし既に、コズミック・イラ最速を誇る悪魔の掌が、天使の両翼を捕らえていた。
231 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 22:55:54.24 ID:H+kf6ni20
シン「うおぉぉぉぉッ!!」

"パルマ・フィオキーナ"。デスティニーの掌から放たれるその閃光が、
ストライクフリーダムのウイングユニットを一瞬のうちに焼き尽くす。

レイ「ぐっ…!!」

コクピットまで伝わる衝撃に、レイが呻く。
これが、二機の闘いにおける、初めての致命傷であった。

レイ「負けるのか…俺は…?」

機動力の要を奪われ、圧倒的不利に立たされたレイ。

レイ「そうか…俺は…!」

そこまで追い詰められて、彼はようやく自分の中に芽生えていた願望を自覚した。

レイ「申し訳ありません、ギル…!今このときだけ、俺はあなたを否定する!!」

ストライクフリーダムは、素早くその身を反転させ、体勢を立て直す。

レイ「俺は…シンに勝ちたいッ!!」

翼をもがれ、"ヒト"に顛落したにも関わらず、ストライクフリーダムから放たれる気迫は、俄然勢いを増していた。

シン「来いよレイ!!俺が、お前の全てを受け止める!!」

デスティニーは、その最大の武器であるアロンダイトを引き抜く。
それに応えるように、ストライクフリーダムはビームサーベルを連結させ、巨大なスピアを形成する。

両者は理解した。
きっとこれが、最後の一撃だと。

シン「絶対に!!」

レイ「俺はお前に!!」

シン・レイ「「勝つッ!!!」」
232 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 22:58:42.60 ID:H+kf6ni20
時を同じくして、ジュール隊の協力を得てジェネシスを破壊したキラとラクスは、メサイアの内部へと潜入。
バルトフェルドに警戒を任せ、最奥部でデュランダルと対峙していた。

デュランダル「やはり来たか…キラ・ヤマト、そしてラクス・クライン」

キラ「議長…!」

この男こそ、ギルバート・デュランダル。
プラント最高評議会議長にして、世界を影で動かしてきた存在。
その傍らには、ミーア・キャンベルが驚愕の表情を浮かべて立ち尽くしていた。

ミーア「ラクス…様…?」

ラクス「……」

デュランダル「初めまして…というべきなのかな?君達のデータは、山ほど見ているがね」

ラクス「デュランダル議長!何故こんなやり方で、プランを強行したのですか!」

デュランダル「世界平和の実現。そのために手段は選んでいられまい」

キラ「あなたのやろうとしていることは、世界平和の実現なんかじゃない!」

キラ「ただの世界征服だ!!」

デュランダル「フッ…それの何が悪い?何故悪い?」

デュランダル「この世界から戦争を無くす…それ以上に重要なことがあるのかね?」

キラ「議長…!」
233 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:00:01.35 ID:H+kf6ni20
デュランダル「私には、かつて友がいた…名を、ラウ・ル・クルーゼ」

キラ「クルーゼ…!?」

デュランダル「彼と私は、ある賭けをした。その賭けとは…」

デュランダル「この世界が平和になるか、ならないか」

キラ「そんな…」

デュランダル「彼がどんな人間か、君はよく知っているだろう?」

デュランダル「当然、彼は平和にならない方に賭けた」

ラクス「あなたは…世界を賭け事の道具にして、その賭けに勝つために偽りの平和を築こうというのですか!?」

デュランダル「私は、ラウのような人間を、二度と見たくないのだよ」

デュランダル「彼は一体何のために生まれ、なんのために生きたのだ?」

デュランダル「絶望しか知らず、憎しみのままに戦って死ぬなど……」

デュランダル「私はラウに勝つ。そして、この世界から絶望を根絶する」

デュランダル「……ほんの少しの、諦めと共にね」

デュランダル「そのために、デスティニー・プランが必要なのだ」
234 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:01:10.53 ID:H+kf6ni20
キラ「でも違う…!こんな…人の意思を無理矢理押さえつけるようなやり方!」

キラ「あなたは、焦りすぎているんだ!だから−−」

デュランダル「焦るさ」

キラの言葉を遮り、デュランダルは冷ややかに言い放つ。

デュランダル「君達の理想を実現させるのは、決して簡単なことではない。膨大な労力と時間を要するはずだ」

デュランダル「その間にまた戦争が起き、多くの命が失われるかもしれない。君達は、それを肯定するのかね?」

キラ「それは…!」

ラクス「そうかもしれません」

キラ「ラクス!?」

ラクス「ですが、あなたのやり方で、本当に争いを無くせるとお思いですか?」

デュランダル「なにが言いたい…?」
235 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:02:38.73 ID:H+kf6ni20
ラクス「先程、キラが言った通りです。無理矢理押さえつけられれば、人はそれに抗うもの…
わたくし達以外にも、必ず反発する者達が出てくるはずです」

ラクス「あなたはそれを、全て討つとおっしゃるのですか?」

デュランダル「すぐに収まるさ。君達が私に力を貸してくれればね」

キラ「だったら…どうしてラクスを襲わせて、その命を奪おうとしたんだ!!」

キラ「あなたが必要としているのは、ラクスという人間じゃない!
自分にとって都合のいい駒だ!だから…」

そこまで言いかけて、キラは口を噤む。
デュランダルの隣で所在無げに瞳を彷徨わせるミーアが、あまりにも哀れに見えたからだった。

ラクス「ミーアさん」

ミーア「は、はい!?」

ラクス「戦後から今まで、プラントの人々を癒し、勇気づけてきたのは、わたくしではなく貴女なのです」

ラクス「名前と姿は、わたくしのものだったかもしれません。ですが、その思いは本物…
他の誰でもない、貴女自身のものだったはずでしょう?」

ラクス「胸を張ってよいのです。
わたくしは、自分の感情を素直に歌に乗せることができる貴女を、素敵だと思いますわ」

ミーア「ラクス…様…」
236 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:04:17.16 ID:H+kf6ni20
デュランダル「ミーア・キャンベルは、ラクス・クラインの代役という役割を演じた。
その結果、人々は癒され、彼女は人々に愛された」

ラクス「いいえ議長。彼女がただの操り人形であったなら、あれほど人々を惹きつけることなどできません」

デュランダル「人々を動かしたのは"ラクス"ではなく、"ミーア"の力だと?」

ラクス「あなたの心には、届いていないのですね。ミーアさんの歌が」

デュランダル「ならば彼女の才能を見出し、歌う役割を与えたのは私だ。
デスティニー・プランとはそういうものだよ」

キラ「役割だとか、誰かの代わりだとか…そんな風にしか人を見ていないから、人の心がわからなくなるんだ!
だからアスランも、シンも、あなたを否定した!」

ラクス「ジュール隊の皆さんも、わたくし達に力を貸してくださいました」

デュランダル「だが、私を信じて戦ってくれている者達もいる。今この戦闘を仕掛け、彼らを討ったのは君達だよ?」
237 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:05:37.37 ID:H+kf6ni20
キラ「……」

デュランダル「……もう、止めにしようか。こんな不毛なやり取りは」

キラとデュランダルは、どちらともなく銃を向け合う。

デュランダル「フッ…結局こうなるのだな。人間とは、つくづく悲しい生き物だ」

キラ「投降してください。もう、ジェネシスは堕ちました。あなたの負けです!」

デュランダルは答える代わりに、引き金にかけた指に力を込めた。
238 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:07:19.35 ID:H+kf6ni20
一発の銃声が響く。

デュランダル「くっ…!」

デュランダルの肩口に、赤黒い染みが広がっていく。

キラ「議長!」

倒れ込むデュランダルを、キラの身体が支えた。

デュランダル「正直、思っていなかったよ…君に、生身の人間を撃つ覚悟があるとはな」

キラ「…戦うと、決めましたから」

デュランダル「…そうか…」

ミーア「議長…」

ラクス「キラ、ミーアさんも、脱出を急ぎましょう。議長の傷の手当てもあります」

キラ「うん!」
239 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:08:36.51 ID:H+kf6ni20
戦闘の停止を告げる信号弾が次々と打ちあがり、まるで花火のように漆黒の闇を照らし出す。
フェイズシフトをダウンさせ、鉄灰色に静まった機体が二機、力なく宙に漂っていた。

シン「…デスティニーは、もう動きそうにないや」

レイ「…こちらもだ」

シン「…勝ったのって、どっちになるんだ?」

レイ「引き分け、だろう…」

シン「そっか…」

シン「ははっ…あれだけ大見得切って、引き分けかよ」

レイ「フッ…」

シン「……終わったんだな」

レイ「……ああ」
240 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:09:43.61 ID:H+kf6ni20
デュランダル「……ここは……」

タリア「目が覚めた?」

デュランダル「タリア…?では、此処はミネルバか?」

タリア「いいえ…アークエンジェルの医務室よ」

デュランダル「アーク…エンジェル…?」

デュランダル「そうか…負けたのだったな、私は…」

デュランダル「……レイは、どうなった?」

タリア「無事よ。呼んできましょうか?」

デュランダル「いや…無事ならそれでいい」

デュランダル「今の私には、彼に合わせる顔などないよ」

デュランダル「見せてやりたかった…あの子の命が尽きる前に…新しい世界を」
241 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:11:22.18 ID:H+kf6ni20
タリア「ギルバート…未来は、若い世代が作っていくものだわ」

タリア「私達大人はただ、それを手助けすればいいのよ」

デュランダル「だがレイには、時間がない」

タリア「大丈夫よ…あの子はもう、自分の運命を乗り越えたわ」

デュランダル「どういうことだ…?」

タリア「シンと戦って、負けなかったのよ、レイは」

タリア「引き分けだった、って…悔しそうな顔してね」

デュランダル「……!」

シン・アスカ。障害となるキラ・ヤマトを葬るために、デュランダルが見出した最強の戦士。SEEDを持つもの。
SEEDを持たぬレイが、それを相手に引き分けたというのか?

タリア「ふふ、なんて顔してるのよ」

デュランダル「……」
242 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:13:43.80 ID:H+kf6ni20
その時ドアが開き、シンとレイが姿を見せた。

レイ「ギル!」

デュランダル「レイ、無事でなによりだ。シン、久しぶりだね」

シン「議長…」

レイ「ギル、ごめんなさい…俺は…」

デュランダル「謝る必要はないよレイ。これで良かったんだ」

レイ「え…?」

デュランダル「君に教えられたよ。人の可能性は、遺伝子では測れぬということを」

デュランダル「ありがとう…よく頑張ったな、レイ」

レイ「ギル…!」

シン「……」

シンは、そっと部屋を出た。
あの三人は、きっと家族なのだろう。
そこに、血の繋がりなど無くとも。
243 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:15:49.96 ID:H+kf6ni20
コズミック・イラ74、プラントとオーブは終戦に向けて協議に入った。
ここに、ひとつの戦いが終わりを告げた。

シンは、オーブの慰霊碑の前に来ていた。

シン「いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす…」

シンはポケットからピンク色の携帯を取り出した。
ミネルバにあったシンの私物は処分されてしまったが、
これだけはレイが取っておいてくれたのだ。

シン「それでも、俺は戦う。望む明日を手に入れるために」

シン「ステラが教えてくれた。人が人の役割を決めるなんてことは、あっちゃいけないってことを」

シン「レイが教えてくれた。人の可能性に、限界は無いってことを」

シン「アスランが教えてくれた。力は、自分が本当に正しいと思えることに使うべきだってことを」

シン「キラさんが教えてくれた。誰かを守るために戦う人は、強いってことを」

シン「だからマユ、父さん、母さん…俺はもう大丈夫だよ」

シンは、再びプラントへと戻ることに決めていた。
しばらく会いに来られないことを謝罪し、天国の家族へと祈りを捧げた。
244 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:17:17.13 ID:H+kf6ni20
『シーン!』

シン「あ……」

自分を呼ぶ声に振り返ると、そこには、
柔らかな金髪を揺らして、笑顔で走り寄ってくる少女の姿があった。

ステラ「ステラ、シンに会いに来た!」

シン「良かった…ステラ…!」

約束は、果たされた。
心から守りたいと思った少女を、もう一度この腕に抱きしめられる日が来たことに、シンは感謝した。

シン「マユ、父さん、母さん、見ていてくれ。俺は俺のやり方で、この世界を守っていくから…」

自分にはステラがいる。心強い仲間達がいる。一人ではない。
きっと、大丈夫だ。

少年は歩き出す。運命の、その先へ。
245 : ◆BRRGNconG6 [saga]:2017/06/09(金) 23:19:09.80 ID:H+kf6ni20
完結です。
色々穴だらけだったと思いますが、お付き合いいただきありがとうございました。
また何かガンダムのSS書けたらいいなあと思います。
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