男「余命1年?」女「……」

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65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/19(金) 22:56:14.48 ID:+aWnIZ77o
面白いならいんだよ、こまけえこたあ(松田鏡二
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/19(金) 23:39:22.03 ID:BbcYX/6HO
おもしろいから問題ない
67 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/19(金) 23:57:00.07 ID:wLksGJ8QO

男(一度は、払拭しかけていた彼女の第一印象だったけど)

男(これで、また振り出しだ)

男(彼女は……この世に自分の生きた証を残したいと、本気で思っているのだろうか)

男(本当に……この世に未練なんて、ないのだろうか)
68 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/19(金) 23:57:38.02 ID:wLksGJ8QO

男(本当に……この世に未練なんて、ないのだろうか)

編集長「なるほど……大体予想通りだ」

男「どうして……彼女は、出版を断ったんでしょう。私には……まるで理解できません」

編集長「なるほど。まあ、お前の言う事も分かる。どっちが正しいかと言われれば、世間一般ではお前だろうな」

男「だって、そんなの当たり前ですよ。自分の書いた本を、たくさんの人に読んでもらえるんです。
 自分の書いた本を、たくさんの人の手に取ってもらえるんです。そんなに嬉しい事が……他にありますか?」
69 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/19(金) 23:58:04.20 ID:wLksGJ8QO

編集長「男は、小説の応募経験があるんだったな」

男「……? はい、そうです。どれも、選考落ちでしたけど」

編集長「それなら……彼女の感情が、お前に理解できないのも仕方のないことだ」

男「女さんの……感情……」

編集長「男。作家が……人が、物書きをしたいと思う時は、一体どんな時だと思う?」

男「物書きを……? そんなの、本を出したい時に決まってるじゃないですか。誰かに読んでもらいたいからです」

編集長「まあ、そうだな。それもある。だが……その根本にあるものは、一体何だと思う?」
70 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/19(金) 23:58:36.15 ID:wLksGJ8QO

男「根本に……あるもの?」

男(人が文章を書く時なんて……自分を表現したいだとか、それで食っていくためだとか、そんな時じゃないのか?)

編集長「……分からないか。それなら、答え合わせだ」

編集長「人が物書きをする理由はな……誰かに、自分を認めて欲しいからだよ」

男「誰かに……認めて欲しいから?」

編集長「そうだ。世の中に自分の存在を認知されたい。もっと有名になりたい。自分の文章力を評価してほしい」

男「それが……根底にあるってことですか」
71 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/19(金) 23:59:10.65 ID:wLksGJ8QO

編集長「男もそうだろう。小説を投稿した時、そんな風に思ったことは無かったか?」

男「それは……」

男(小説を書かなくなってから、随分時間が経っている。
 あの時の自分が、一体何を考えていたのか。はっきりと思い出すことはできない)

男(ただ……少なからず、そんな気持ちがあったのだろう)

男(小説を投稿する理由は、作家になりたいから。たったそれだけでいい)
72 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/19(金) 23:59:49.30 ID:wLksGJ8QO

男「でも……だったら、なおさら彼女が断る理由なんて」

編集長「女さんは、他に何か言ってなかったか?」

男「他に……?」

女『この本は、あなたに……男さんに読んでもらうために書いたんです』

男「確かに……言ってました。あの原稿は……」

編集長「なら、それが彼女の本心だ。彼女は、そのために書いたのさ。
 ただ……その対象が、今回は少し狭かった。ただそれだけの事だ」

男(本当に……俺のために?)

男(ただそれだけのために……あの原稿を?)
73 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 00:00:26.94 ID:yXRXWGwnO

男(原稿……もう一回読んでみようかな)

男(……主人公が、ある男性と約束を交わす)

男(いつか、必ず二人で海を見に行こう)

男(足の動かない主人公は男性に連れられて、ようやく彼と海へ行ける算段が付いた)

男(だが……急激に薄れていく、主人公の意識)

男(聞こえるのは、もう彼の声だけで……)

男(主人公は車椅子に乗せられ、初めての海へ辿り着くが……既に、全身が動かない。目も見えない。
 あるのは、彼の声と、触れられた肌の感触だけ)
74 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 00:01:19.68 ID:yXRXWGwnO

男(そうして……初めての海で、主人公は息絶える)

男(やがて、天国に辿り着いた主人公は)

男(自分を追って天国までやってきた彼と、永遠の愛を誓うのだった……)

男「……ホント、これ以上ないくらいのバッドエンドだ……おもしろいけど」

男(女さんは……これを、俺のためだけに書いたのだろうか)

男「彼女が、俺に伝えたかった事……」
75 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 00:03:36.09 ID:yXRXWGwnO

男(まさか……もし自分が死んだら、追いかけてきて欲しいとか?)

男「ハハッ、まさかな」

男(そんなわけ……ないよな?)

男(……なんだか、無性に怖くなってきたんだが)

男「……直接、聞いてみるか」
76 : ◆PChhdNeYjM [sage saga]:2017/05/20(土) 00:05:44.45 ID:yXRXWGwnO
そろそろ眠気に負けそうなので、ここまで。なるはやで更新します。

>>65 >>66
ありがとうございます。ご期待に沿えるよう頑張らせていただきます。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 00:29:18.33 ID:0GCJFpxCo
天国で結ばれるならbad endではないと思う
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/20(土) 14:29:43.95 ID:yXh01y5sO
ゆっくりでいいからちゃんと完結して欲しい
79 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 22:39:37.57 ID:l8gu9FaAO
男(この公園で彼女を待つの、何だか慣れてきたな……)

女「お待たせ……しました」

男「ああ。大丈夫、そんなに待ってないよ」

女「それで……お話っていうのは?」

男「うん。ちょっと……この間の作品のことで、聞きたいことがあって」
80 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 22:40:29.22 ID:l8gu9FaAO
女「……!」

男(うわ……明らかに動揺してる)

男「その……俺に読んでもらうためって、結局どういう意味なのかな……って」

女「……本当に、分かりませんか?」

男「ああ、ごめん。俺には……」
81 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 22:41:17.12 ID:l8gu9FaAO
女「あの……あの小説はっ……私の……」

男「……?」

男(女さん……いつになく必死だ)

女「私のっ……想いの全てです」

男「想い……女さんの?」


女「はい……分かって、いただけましたか?」
82 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 22:41:56.84 ID:l8gu9FaAO
男「……えっと」

男(想いって……どういう事だよ)

女「で……ですから……////」

男(顔なんか真っ赤にしちゃって……真剣なのは伝わるんだけど)

男「えっと……つまり……」

女「っ……はい……」
83 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 22:42:26.64 ID:l8gu9FaAO
男(よく思い出せ……あの小説の内容を)

男(主人公は、何を求めていたのか)

男「つまり……君は」

男「君は……海に行きたいのかい?」

女「…………はい?」
84 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 22:49:37.94 ID:l8gu9FaAO
男「いやー、それなら早く言ってくれれば良かったのに。取材ならいつだって付き合うよ」

女「あの……どうして、そういう結論になるんです?」

男「え? 違うの?」

女「……ハア。男さん……失礼ですが、経験はお持ちですか?」

男「経験って……なんの?」

女「察しが悪すぎます。恋愛経験ですよ、恋愛!」

男(おおう……顔が近い! いい匂い!)
85 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 22:50:36.91 ID:l8gu9FaAO
男「えっと……その……」

女「なんなんですか、はっきりしてください!」

男「……くそっ、無いよ。不本意だけど……彼女いない歴が、そのまま年齢だ」

女「……でしょうね。そうだと思いましたよ……はあ」

男(何か、メッチャ呆れられてるぞ。俺、何かしたか? 全く身に覚えがないんだが)

男「その……何か気に障るようなことしちゃったかな?」

女「別に、何もされてません。ほんっとうに、言葉通り何もされてません」

男(……なんでそんなに不機嫌?)
86 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 22:53:39.76 ID:l8gu9FaAO
女「男さん」

男「はっ、はい何でしょう」

女「さっきの言葉、本当ですか?」

男「えっと……さっきの?」

女「しゅ・ざ・い!」

男「あ……ああ、海の話? 本当だよ、どこにだって連れていくさ。君の手伝いができるのなら」

女「……言質、取りました」
87 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 22:56:24.06 ID:l8gu9FaAO
男(ヤバい……何だか、メッチャ嫌な予感が……)

女「私を、旅行に連れて行ってください」

男「……へ? 旅行?」

女「はい。旅行です」

男「旅行って……ああ、日帰りでってことね」

女「……何言ってるんですか? 泊まりに決まってるじゃないですか」

男(ちょっと待ってちょっと待って女さん)
88 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 23:02:30.08 ID:l8gu9FaAO
男「泊まりって、ま、まさか……俺と!?」

女「たった今、そう言ったじゃないですか。ちなみに、断るのは許しません。さっき言いましたよね、取材ならいつでも付き合ってくれると」

男「う……うん。言った、よ」

男(女さん、いつになく強気だ。ホント、今日はどうしちゃったんだろう)

女「なら決まりです。取材ということで、海に旅行に行きましょう。それを新しい原稿のネタにします」
89 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/20(土) 23:03:03.79 ID:l8gu9FaAO
男「えっと……ほ、本当に俺とでいいの? もっと、違う誰かの方が……」

女「また信用を失いたいんですか?」

男「はいっ! 今すぐ予約させていただきます!」

男(くっそ……こんなんで担当外されたら立場がねえ。付き合うしかないのか……)

男(まあ……嫌では、ないけれど)
90 : ◆PChhdNeYjM [sage saga]:2017/05/20(土) 23:10:24.97 ID:l8gu9FaAO
短くて申し訳ないがここまで。次回は旅行から帰るところまで書きたいと思ってます。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 23:45:21.25 ID:yymrrvl9O
ニヤニヤしてる
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/21(日) 09:39:20.10 ID:jgvY1MlAO
なんか栞を思い出すわ〜
93 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:15:57.00 ID:4bLB48VvO
男(……遂にこの日がやってきてしまった)

女「お待たせしました、男さん。いつもすみません、待たせてしまって」

男(なんか、やたら荷物多いな……女の旅行ってこんな感じなわけ?)

男「いやいや、約束の時間には全然遅れてないよ。それじゃ、行こうか」

女「え……あ、はい」

男「……どうしたの? この間の強気な君はどこに行っちゃったわけ?」
94 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:16:36.05 ID:4bLB48VvO
女「だって……本当に連れて行ってくれるなんて、思ってなかったので」

男(何だよ……連れて行かないルートもあったのかよ)

男「いや、もう飛行機もホテルも取ってるし」

女「……! ありがとう……ございます」

男(ったく……可愛い顔してんな、ホント)

男「……それじゃ、行こうか」
95 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:18:50.86 ID:4bLB48VvO
男(さて……機内に乗り込んだんだけど)

女「フンフーン♪」

男(声量は小さいけど、真隣だから……さっきから気になって仕方がない)

男「やけに上機嫌だね。鼻歌なんか歌っちゃって」

女「あ、そう見えます? だって、海なんて私、初めてなんですよ」

女「しかも、南の島だなんて! 興奮しない方がおかしいです!」
96 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:19:40.13 ID:4bLB48VvO
男「そっか、じゃあ俺もおかしくないね」

女「……え?」

男「俺も、ちょっと楽しみなんだ。南の島なんて、修学旅行でも行ったことが無かったから」

女「……それなら、私とお揃いですね。私は、当時は丁度入院と重なってしまって、行けなかったんです」

男「うわ……それは残念だったね」
97 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:20:09.65 ID:4bLB48VvO
女「その分、楽しんじゃいますから!」

男「……そっか」

男(楽しめれば……いいんだけど。多分、女さんは泳ぐのも無理だろうし)

男(海を見て終わりとか、そんな悲しいことにならなければいいんだけど)
98 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:20:59.26 ID:4bLB48VvO
男(……何か、時間が経つのが妙に早い気がする。実家に帰る新幹線だと、3時間ですらクソみたいに疲れるのに)

男(気圧だって下がってるのに、妙に目が冴えて……眠れない)

女「……」ポテッ

男(うおっ!)

男(女さんの頭が……俺の肩に……!)

男「お……女さーん?」

男(……眠ってらっしゃる)
99 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:21:26.01 ID:4bLB48VvO
男(あーもう……仕方ないな)

女「スー……スー……」

男(何だか、こうして眠ってると……普通の女の子みたいだ)

男(いや、そりゃあ普通の女の子なんだけど)

男(あと1年後には……なんて、全然思えないくらい生き生きとしてて)

男(きめ細やかな肌や、艶やかな黒髪、長いまつ毛……潤った桜色の唇)

男(……ちょっと、信じられないな)
100 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:21:52.39 ID:4bLB48VvO
女「……男……さん」

男「っ!」

男(寝言か……あざといんだよ、全く)

男(うっかり……好きになるところだった)
101 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:22:20.26 ID:4bLB48VvO
女「男さん……」

男「ん? 何かな?」

女「あの起こし方は……ちょっと有り得ないです」

男「人に寄りかかって寝る方が悪い」

男(空港に到着して、俺からも少し呼びかけたけど……いつまで経っても女さんは起きなかったものだから)

男(彼女の頬を引っ張って、無理やり起こしてやった)
102 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:22:48.42 ID:4bLB48VvO
女「……ちょっと酷くないですか? 普通に起こせないんですか?」ムッスー

男(そしたら、この通り不機嫌になってしまったけど)

男「悪かったって、機嫌直してよ……ほら、見てみな」

女「えー……あ」

男(やっぱり、凄いよな)

男(言葉を失う時って、多分……こういうのを見た時なんだろう)
103 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:23:18.14 ID:4bLB48VvO
女「これが……海」

男「俺も、こんなに綺麗な海は初めて見た」

男(もうゴールデンウィークもとっくに過ぎたってのに、たくさんの人が泳いでる)

男(それだけ、人気のある観光地ってことか)
104 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:23:45.42 ID:4bLB48VvO
女「……いいなあ」

男「泳ぎたい?」

女「頷いたら、泳がせてくれるんですか?」

男「……無理、だね」

男(女さんにとっては、こんな光景も……蛇の生殺しでしかないんだよな)

男「ごめんね……全然、そこまで考えて……」
105 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:24:16.59 ID:4bLB48VvO
女「……ホテル」

男「え?」

女「どこにあるんですか、ホテル。早く荷物下ろしたいです」

男「あ……ああ、そうだね。この近くにあるんだ。海がとても綺麗に見渡せる場所だよ」

女「そうなんですか!? 楽しみです……えへへ」

男(良かった……元気が戻ったみたいだ)
106 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:24:48.32 ID:4bLB48VvO
女「すごーい!」

男「うわー……絶景だね」

男(窓から入る風が気持ちいい)

男「写真とは、全然違うな」

男(流石に、高いだけある)

男(俺がいつも泊まるような相場と、3倍は違うからね……)

女「ホント凄い……今日は、男さんにビックリさせられっぱなしですね」
107 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:25:18.24 ID:4bLB48VvO
男「さっきから凄い凄いって……いつもの表現力はどこに置いてきたんだよ?」

女「えー、だって違くないですか? 文章力があれば話すこともできるだなんて、編集者らしからぬ単純思考ですよ?」

男「そういうもんなのか……」

女「もー、しっかりしてくださいよ、男さん」

男(風が……女さんの髪がたなびいて……まるで映画のワンシーンみたいな)

男(いや……そんなのよりも、ずっと美しい)
108 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:26:42.50 ID:4bLB48VvO
女「……男さん? どうしたんですか、ボーッとして」

男「えっ……いや、何でもないよ、うん」

男(だから、あざといんだって……)

男(手すりに上半身を預けて、顔傾げてこっち見つめてくるなんて)

男(俺じゃなかったら、今絶対ヤバかったぞ)
109 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:27:30.32 ID:4bLB48VvO
女「変な人ですねー。まあ……予約した部屋を見た時から、おかしいって思ってましたけど」

男「え……何かおかしいかな?」

女「普通……こういう時って、2部屋取りません?」

男「あ…………ああっ!」

男(やっちまった……!)

男(旅行なんて、大学の友人と行って以来だから……そこまで頭が回らなかった!)
110 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:28:10.71 ID:4bLB48VvO
男「ごっ……ゴメン! でっ……でも、ほら、ベッド2つだし!」

女「そういう問題ですか?」

男「い、今からでも変えられるかなあ!? きっと、頼み込めば変更してもらえるんじゃ……」

女「男さん」

男「ひっ、ひゃいっ!」

男(やべ! 変な声でた!)
111 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:28:39.71 ID:4bLB48VvO
女「……構いませんよ、私」

男「……え?」

女「どうせこんな大きいホテルだと、当日変更は難しいでしょうし……それに」

男(そ、そんな見つめんなよ……今、恥ずかしさで顔真っ赤になってんだからさ……)

女「……きっと、男さんは何もしないじゃないですか」
112 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:29:06.35 ID:4bLB48VvO
男「え……と……」

男「否定は……できない」

女「フフ……だと思いました」

男(……なんで、そんな顔すんだよ)

男(そんな寂しそうな顔……君には似合わないよ)
113 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:30:28.40 ID:4bLB48VvO
男「……あの、さ」

女「はい?」

男「……海、見に行こうよ。泳がなくたって、きっと楽しいよ。……ほら、海だけじゃなくて、この近くにも色々店とかあるし!」

女「……そう……ですね。はい……行きたいです!」

男(良かった……いつもの笑顔だ)
114 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 17:33:41.19 ID:4bLB48VvO
女「……男さん」

男「ん? どうしたの?」

女「……私……男さんの、そういう……ところが……」

男(女さん……顔が)

男(耳まで、真っ赤に染まってる)

男「女……さん?」

女「っ……なんでも、ないです。ほらっ、早く行きましょう! 私、お腹空いちゃいました」

男「う、うん……それじゃ、行こうか」

男(何だったんだろう……まあ、気にしなくていいか)
115 : ◆PChhdNeYjM [sage saga]:2017/05/21(日) 17:37:34.62 ID:4bLB48VvO
続きは夜書きます
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/21(日) 18:01:04.15 ID:tRthmvTNo
おつ
待ってる
117 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 22:32:18.84 ID:hFj05+0SO
女「男さん! このタコライス、すっごく美味しいです!」

男「うん、俺も驚いた」

女「なんでも地元の方々に、キンタコの愛称で親しまれている店らしいです!」

男「へえー、キンタコねえ」

女「お持ち帰りもできるらしいです! 男さん、お願いしますね!」

男「え、まって。まだ食べるの?」

女「だって美味しいんですもん。食べなくちゃ勿体ないです!」

男「そうかー勿体ないか―、それなら仕方ないね」
118 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 22:32:49.06 ID:hFj05+0SO
女「男さんっ、ここのステーキ、美味しいらしいです!」

男「まってまって、さっき食べたばっかじゃん。それに、このパックのタコライス……」

女「是非入りましょう! 是非!」

男(そんなに目を輝かされたら……)

男「……仕方ないなあ」

男(断れないじゃん……)
119 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 22:33:15.99 ID:hFj05+0SO
女「ふー、美味しかったですねえ」

男「……うん、そうだね」

男(もう……大分苦しいんだけど)

女「あっ! ここ、この間テレビで特集されてた天ぷら屋さんですよ!」

男「え……へ、へえー、そうなんだ……」

男(まさか……いや、まさかな)
120 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 22:33:54.38 ID:hFj05+0SO
女「流石に……入れないですね」

男「はは、そうだよねー。流石にお腹いっぱ……」

女「こんなに食べてばかりだと、男さんのお財布が心配です」

男「よっしゃ上等だあ! 食えるもんなら食ってみろよ!」

女「え! いいんですか! それなら、喜んで!」
121 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 22:34:28.58 ID:hFj05+0SO
男「うっぷ、もう……食えね……」

女「男さん男さん、持ち帰りのタコライス食べましょう!」

男(マジで、ブラックホールみたいな食べっぷりだな……)

女「ふー……綺麗ですね」

男「……うん。まさか、こんなに綺麗な海を見ながらご飯を食べられるなんて。夢みたいだよ」

男(今食べてるのは、女さんだけだけど)
122 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 22:35:04.70 ID:hFj05+0SO
女「……もう皆さん、いなくなっちゃいましたね」

男「あー、だってもう7時だし。まだちょっと明るいけど、みんなご飯食べに行ってるんじゃないかな?」

女「そう……ですよね。なら……」

男「女……さん?」

男「な……なにしてるの?」

女「何って……決まってるじゃないですか」
123 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 22:35:30.60 ID:hFj05+0SO
男「ちょ……! こんな所で脱ぐなよ!」

女「え、だって、誰もいませんよ」

男「俺俺! 俺がいるから!」

女「大丈夫ですよ、だって……」

男(ああ! 最後の一枚が……)
124 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 22:36:16.56 ID:hFj05+0SO
男「……あれ? 女さん、それ……」

女「はい! この日のために選んだ、とっておきの水着です!」

男「水着って……」

女「どうです? 似合ってますか、男さん」

男「あっ……急に走っちゃ身体に悪いって!」

女「大丈夫ですようー! だって、薬飲んでますから!」

男「いや、でも……」
125 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 22:36:54.80 ID:hFj05+0SO
女「本当に大丈夫ですよ、だって……」

男「ちょ……女さん! それ以上は……」

女「キャッ……男さん、服……濡れちゃいますよ?」

男「もう……濡れちゃったよ」

男(靴の中に、海水が入り込んで……膝下までビッチョビチョだ)

女「だって男さん、水着じゃないのに……」
126 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 22:37:24.12 ID:hFj05+0SO
男「流石に、泳ぐのはマズいって。俺だって、ちゃんと調べたんだから」

女「……どうやって?」

男「それは……インターネットとか」

女「……フフ。男さんらしいですね」

女「でも、大丈夫です。自分の身体の事は、自分がよくわかってますから」

男「いや……だって」
127 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 22:37:55.13 ID:hFj05+0SO
女「泳げますよ」

男「……女……さん?」

女「……泳げますよ? ちゃんと……健康な人と、同じように」

男(女さん、腕が……微かに、震えてる)

男「……女さん」

女「……はい」

男「……帰ろう、ホテルに」
128 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:19:21.95 ID:hFj05+0SO
女「フンフーン♪」

男(シャワーの……水の音が……)

男(別に、やましい事してるわけでもないのに……)

女『男さんが先に入ってください! 服が濡れて、ビショビショなんですから。風邪引いちゃいますよ?』

男(そう言われて、先にシャワー浴びたけど)

男(なんか……待機してるみたいで)

男「……アホかっ、何もねえよ」
129 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:19:58.23 ID:hFj05+0SO
男(だって、この旅行は……ただの取材なんだから、さ)

女「ふー、気持ちよかったー」

男「そう? ただのシャワーじゃん」

女「シャワーのお湯も、何だか高級感に溢れてますよね!」

男「そ、そう?」

男(意味が分からん。お湯が高級ってどーいう事なんだよ)
130 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:20:29.30 ID:hFj05+0SO
女「……なんか、男さん。浴衣カッコいいですね」

男「えっ……そ、そうかな」

男(そんなこと言ったら、女さんの方がよっぽど……)

男(風呂上がりのシャンプーの匂いとか、濡れた黒髪とか)

男(浴衣のせいで……強調された、身体のラインとか)

女「……なんですか、そんなにジロジロ見て」

男「え!? いや……その……ごめん、そんなつもりじゃ」
131 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:21:02.22 ID:hFj05+0SO
女「……もう。やっぱり、男さんは男さんですね」

男「……何言ってんの?」

男(女さん、背中向けて……ドライヤーかな?)

男(……冷蔵庫?)

女「これ、さっき買ってきたんですよ」

男「それ……ワインじゃん」

女「男さんがシャワー浴びてる間に、下のコンビニで買ってきちゃいました」
132 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:21:30.17 ID:hFj05+0SO
男(そんな……舌なんか出して)

男「もう20歳なんでしょ? 悪いことじゃないよ」

女「そうはいっても、中々慣れなくて。一人じゃ買ったことも無かったんですよ」

男「お酒は強いの?」

女「んー、そうでもないのかな。大学の友達と飲みに行ったときは、そんなに酔わなかったです」

男「へー、あんまり飲まないんだ?」

女「あ、いえ。ジョッキ三杯と、ワイン二杯くらい、友達と。あ、あと温かいのも、おちょこで飲んだかも」

男(メッチャ飲んでるやん……)
133 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:22:09.73 ID:hFj05+0SO
男「ふ、ふーん……とりあえず、開けようか」

男(あれ……)

男「女さん……これ、いくら?」

男(これ……コンビニに置いてるなんて。やっぱり高級ホテルは違うな)

女「……秘密です」

男「お金渡すよ。流石に悪いから」

女「いえいえ、いいんですよ。飛行機代も、ホテル代も、食事だって、お世話になりっぱなしですから」

男「それはそれでしょ。学生と社会人なんだからさ」

女「元、ですけどね。もう、律儀だなあー」
134 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:22:47.82 ID:hFj05+0SO
男(あれ、女さん……既に酔ってらっしゃる?)

男(そういえば、さっき若干それっぽい匂いがしたような)

女「もー、男さんは細かい事を気にし過ぎなんですよー」

男(なんか、身振りもいつもより大げさだし……)

男「女さん……いつの間に……」

女「男さんもジャンジャン飲んでください! 折角私が買ってきたんですから!」

男「ちょ……!」

男(近い近いデカい近い近い何かいい匂い!)

男「……もう、仕方ないな」
135 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:23:27.74 ID:hFj05+0SO

男(あー、なんか、いい気分になってきた)

女「男さん」

男「……ん? なに?」

女「男さんはー……ホントはゲイなんですか?」

男「は!?」

男(いきなり何言い出すんだこの子は!)

男「そんなわけないだろ!」
136 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:24:02.32 ID:hFj05+0SO
女「だってー、私を見ても、全然そんな風に見てくれないし」

男「そんな風にって……君ね」

女「男さん、私より、編集長? と話してる時の方が楽しそうですよ」

男「そ、そんなわけっ……」

女「じゃあー……」

男(な……胸、当たってるって)

男「女さん……腕にっ……」

女「じゃあ、男さんはー」

男(ええい耳元で囁くなあっ!)
137 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:24:41.54 ID:hFj05+0SO
男「女……さん!」

女「男さんは……私と話してて、楽しいですか?」

男「そりゃ……あ、楽しい……よ」

女「どんな風に?」

男「どんなって……君みたいな可愛い子と話せたら、嬉しいよ、男としても」

女「だって……この間、男さん……年上がタイプって言ってたじゃないですか。あれはどーいうことなんですか?」

男「いや……だから、そんなの関係なく、君は可愛くて……魅力的だってことだよ」
138 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:25:17.08 ID:hFj05+0SO
男(何言ってんだ俺……こんな歯の浮くようなセリフ、素面じゃ絶対言わないだろうに……)

女「……本当、ですか?」

男「俺が嘘つくような男に見える?」

女「……半分くらい?」

男「凄い微妙だね、それ」

女「……フフッ、そっかあ」

男「ちょっ……女さん!?」

男(抱き着いてきたああああああ!)
139 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:26:05.87 ID:hFj05+0SO
男(腕が……背中に……!)

男(胸に……顔を押し付けんなって!)

男「女さん! 流石に、これは……」

男「……?」

女「……スー……スー……」

男「……えぇ」

男(……マジかよ)
140 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:45:31.89 ID:hFj05+0SO
男(女さん……軽かったな)

男(こんな小さな身体のどこに、あの量の食べ物が入るんだろう)

男(……あ、女さんのバッグ)

男(ホント、どうしてこんなに大きなバッグが必要なんだか)

男(ちょっと中身、見てみるか?)

男(……いやいやいや、いくら何でもそれはマズいだろ)
141 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:46:05.36 ID:hFj05+0SO
男(……)チラッ

女「……スー……スー」

男(……少しだけなら、いいよな)

男(……えーっと、着替えと……化粧品か? あとは……ん?)

男(なんだ、この紙袋……やたら大きいな)

男(中身は……え、これ)

男(……見間違いじゃない。これは……)
142 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/21(日) 23:47:03.55 ID:hFj05+0SO
女「……スー……スー」

女『お父さんは、私の事なんてどうだっていいんですよ。もうすぐ……いなくなるんですから』

男(……酔いなんて、吹き飛んだ)

男(どこかで……夢なんじゃないかって、思ってたんだ)

男(それか、女さんの悪い冗談なんだって)

男(だって、そう思ってしまうくらい、女さんは元気に見えたから)

男(もしくは、病院の診療ミスとか……ちょっと大げさに言ってるだけで、実はたいしたことありませんでした、とか)

男(心のどこかで期待してたんだ、俺)

男(何を今更……こんなに、動揺してんだよ)
143 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:31:44.83 ID:Aj5iH/DBO
男(あの後……結局一睡もできなかった)

男(……果てしなく眠い)

女「……どうしたんですか、男さん。眠れなかったんですか?」

男「ああ、ちょっとね。そういう女さんは、すごく元気だね。昨日はよく眠れたかい?」

女「はい! なんだか、すっごく安心して眠れたような感じです!」

女「正直、昨日はどうやってベッドに入ったのか、記憶に無いんですけど」

女「男さん、何か覚えてます?」
144 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:32:20.52 ID:Aj5iH/DBO
男「いや……全く」

男(嘘だけど。ホントはメッチャ覚えてるけど)

男(お姫さまだっこで女さんをベッドに寝かせたってことは……言わないでおこう)

女「そっかー、仕方ないですね。仕方ない!今日はとことん遊びましょう!」

男「いや、後はもう帰るだけだよ」

女「ええ! どうしてですか!?」

男「だって、あんまり遅くなると、ほら……お父さんが心配するでしょ?」
145 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:32:48.90 ID:Aj5iH/DBO
女「……」

男(やっべ、失言だったか?)

男「……お土産、どっかで買って帰ろうか」

女「え、お土産ですか? ……いいですね! 何買っていこうかな!」

男(なんとか……誤魔化せたかな)
146 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:33:19.29 ID:Aj5iH/DBO
女「やっぱり、沖縄っていったらちんすこうですよねー!」

女「あっ、サーターアンダギーも捨てがたい!」

女「うーん、迷っちゃうなあ!」

男「あはは……好きなだけ買いなよ。お金は心配しないで」

女「えっ、いいんですか!? じゃあ……お言葉に甘えて!」

男「抱えすぎて落とすなよー」

男(もう……はしゃいでるなあ)
147 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:33:53.48 ID:Aj5iH/DBO
男(考えてみると、彼女にとっては今更薬なんて、大したことじゃないのだろう)

男(薬を一目見ただけで、こんなに動揺してしまうなんて……なんて情けないんだろう)

男(自分自身、こんなに弱いとは思わなかった)

男(それに比べて……女さんは、強いな)

男(不条理な運命を背負って、それでもなお、あんなに輝かしい笑顔を浮かべられるんだから)
148 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:34:22.61 ID:Aj5iH/DBO
女「否定しないんですね? 言いましたね?」

女「じゃあ……もし私が作ったら、食べてくれますか?」

男「そりゃあ……まあ……作ってくれるなら、食べるけど」

女「やった! 嘘は駄目ですからね? 男に二言は?」

男「……無いよ。なんだその確認の取り方」

女「フッフッフ……期待してくれてもいいんですよ? 私、これでも料理は好きなんです!」

男(ここで得意って言わないあたり、妙に謙虚なんだよなあ。……酒さえ入ってなければ、ね)
149 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:35:05.11 ID:Aj5iH/DBO
女「……男さーん」

男「……うん……起きてるよ、まだ……」

男(ヤバい……滅茶苦茶眠い)

男(行きの飛行機ではあんなに眠れなかったのに……寝不足だからかな。帰りの飛行機は、全部寝て過ごしそうな勢いだ)

男(せっかく女さんが起きてるのに……俺だけ寝ちゃったら申し訳ないし)

女「男さん……目が半開きですけど。ホントに起きてます?」

男「ああ……起きて……る」

女「フフッ……可愛いなあ」
150 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:35:47.78 ID:Aj5iH/DBO
男「男は……可愛いって言われても……嬉しくないよ……」

女「……男さん……もし」

男「うん……なに?」

女「……もし、昨日のホテルでの出来事を……私が全部覚えてるって言ったら……どうします?」

男(……覚えて? ホテル……何か、あったっけ?)

男(ああ……眠い。ごめん、女さん。もう、起きてられなさそうだよ)

女「……あらら、寝ちゃった」

女「…………ばか」
151 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:36:31.47 ID:Aj5iH/DBO

男「ふあーあ……よく寝た」

女「ホント、ぐっすりでしたね。私が起こさなかったら、危ない所でしたよ」

男「いやいや、流石にスタッフさんが起こしてくれるでしょ」

女「もう、そこは素直にありがとうって言ったらどうなんです?」

男「そうだね……うん、ありがとう」

女「いーえ、どーいたしまして!」

男(ホント……眩しいくらいの笑顔だ)

女「……じゃあ、ここでお別れですね」

男「え、いいの? まだ公園だよ?」

女「いいんですよ。まだこんなに明るいですし」

男「……そっか。それじゃあ、また」
152 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:37:19.31 ID:Aj5iH/DBO
女「男さん」

男「……ん? なんだい?」

女「あの……ありがとうございました。本当に、楽しかったです」

男「えっ……何だよ、改まって」

女「今回は……いいえ、今回だけじゃない」

女「私、男さんと出会ってから……楽しくて仕方が無いんです」

男「……俺と出会ってからって……担当についてからってこと?」

女「はい。……私、それまで、何をしても楽しくなかったんです」
153 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:37:56.35 ID:Aj5iH/DBO
女「お父さんといても、友達といても、テレビを見ていても、何をしても」

女「心の底から、楽しいって思える瞬間なんて……多分、一度だってなかった」

女「それなのに……あなたと出会ってから、私の人生は変わったんです」

女「あなたと話していると……あなたと一緒に歩いていると……色んなものが、輝いて見えた。美しく見えた」

女「初めてなんです……こんな気持ち」

男「……女……さん」

女「私……知ってるんです。この感情が、どういうものなのか」
154 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:38:38.78 ID:Aj5iH/DBO
女「こんな……みんなと違って、生まれつきのハンデを背負っている私は、きっと人生を楽しむ資格なんか無いんだって、そう思ってました」

女「でも、そんな私が変われたのは、全部……あなたのおかげなんです」

男「……そっか、良かったよ」

女「男さん……」

男(その時の、女さんの顔は……多分、俺は一生忘れられないんだと思う)

女「男さん……大好きです。あなたの事が、この世で、一番……好きです」
155 : ◆PChhdNeYjM [sage saga]:2017/05/22(月) 00:39:52.52 ID:Aj5iH/DBO
ここで一旦区切りますが、まだ続きます。気長にお待ちくださると幸いです。
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/22(月) 00:42:08.17 ID:TG3CSDSk0
告白きたあああああああああああああああ
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/22(月) 00:42:53.37 ID:TG3CSDSk0
気長に待ちますよ!
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/22(月) 00:44:36.25 ID:MZ/d7M6G0

間黒男でも比良坂竜二でも大門未知子でも相良浩介でも誰でもいいから女さん治してやってくれや。
159 : ◆PChhdNeYjM [sage saga]:2017/05/22(月) 00:50:01.66 ID:Aj5iH/DBO
申し訳ないです、>>147>>148の間に入れ忘れました。↓に上げておきます。
160 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 00:50:36.95 ID:Aj5iH/DBO
女「男さん男さん! これ、タコライスの素ですって!」

男「……ごめん、流石にそれはもう要らない」

女「えー、つれないなあ」

男「逆に聞くけど、昨日の今日で、どうして、また食べようと思えるの?」

男「君の辞書には、飽きるっていう単語はないわけ?」

女「えー! 飽きちゃったんですか!? あんなにおいしかったのに!」

男「いや……それは否定しないけど」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/22(月) 02:05:15.29 ID:jnqGNfj+o
キンタコ懐かしいぜ
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/22(月) 02:14:52.45 ID:1xfG4leS0
ラストまで頼むぞ
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/22(月) 04:22:59.37 ID:nz33EWkdO
女さんの恋愛遍歴きになる
164 : ◆PChhdNeYjM [saga]:2017/05/22(月) 23:43:26.40 ID:3mGHJagbO
男「す……好きって……」

女「男さん」

男「はっ……はい」

女「返事は……まだ要らないです。きっと、男さんにも色々と考えるところがあるでしょうから……」

男「えっと……その……」

女「ですから……単純に、今の気持ちを伝えたかった。ただそれだけなんです……迷惑でしたか?」

男「めっ……迷惑だなんて……とんでもないよ」
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