島村卯月「シンデレラクエスト」

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1 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/09(火) 23:03:21.08 ID:Xi0Aw7pG0

―――346王国 城


王様「よくぞ来た、勇者ウヅキよ」

卯月「……はい?」

卯月(え、なんですかこれ? 気が付いたら目の前に王様みたいな人がいるんですが……)

王様「お主も知っての通り、今世界は魔王の復活によって滅亡の危機に瀕している……」

卯月「魔王!? あの、私そんなの知りませ―――」

王様「世界を救えるのは、勇者であるお主だけだ!」

卯月「そもそも私、勇者なんかじゃないですよ!?」

王様「勇者はみなそう言うのだ!」

卯月「そうなんですか!?」

王様「どいつもこいつもやれ『私は勇者なんかじゃない』『身に覚えがない』『弁護士を呼べ』などと抜かしおって……もっと自分の運命を自覚せよ! そういうとこだぞ!」

卯月「うぇぇ!?」

王様「とにかく頼んだぞ、勇者ウヅキよ! なんかこう上手いこと魔王を倒して、世界に平和をもたらすのだ!」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1494338600
2 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/09(火) 23:04:13.20 ID:Xi0Aw7pG0

―――346王国 城下町


卯月「うぅ、どうしてこんなことに……私、勇者じゃなくてアイドルなのに……」

卯月(あのまま流されるような形で送り出されちゃったけど……そもそもここって一体? 世界観からして違うし……まるでゲームの世界みたい)

卯月「ゲーム……あ、もしかしてこれ……夢かな? じゃあほっぺたをつねれば」ムニッ

卯月「……いたたたたっ!? え、夢じゃないの!? じゃ、じゃあ私、異世界に来ちゃったってこと!?」

ちひろ「その通りです」

卯月「うぇ!? ち、ちひろさん!?……なんか小さいし、空飛んでるぅ―――っ!?」

ちひろ「ええ、手のひらサイズですし、空だって飛びますよ。私はちひろではなく、導きの妖精ちっひですから」

卯月「妖精!? ちっひ!?」

ちひろ「あ、でも呼び方変えるのも面倒でしょうから、ちひろのままで結構です」

卯月「あ、それはありがたいです」

3 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/09(火) 23:05:15.28 ID:Xi0Aw7pG0

ちひろ「卯月ちゃん。あなたはこの世界を救うために、元の世界から事後承諾で転移させられました」

卯月「せめて承諾取ってからにしてくれません!?」

ちひろ「元の世界に戻る方法はたった一つ、魔王を倒すことのみです」

卯月「そんな!? む、無理ですよ、そんなの!」

ちひろ「大丈夫です。何度死んでも教会で復活できますから」

卯月「あ、やっぱりゲームみたいなシステムなんですね」

ちひろ「まあ死ぬ度に超絶痛みを感じますが」

卯月「今すぐ元の世界に返してください! 痛いの嫌です!」

ちひろ「我慢してください」

卯月「対応が冷たいっ!」

ちひろ「それと、私も旅に同行し適度に横からアドバイスをしますが、戦闘能力は皆無なのでその辺は期待しないようにお願いします」

卯月「ほ、本当に魔王倒さなきゃ駄目なんですか?」

ちひろ「駄目です。大丈夫、なんとかなりますよ」

卯月「なんとかなる根拠を教えてほしいです……」

ちひろ「ではまずは酒場に行って仲間を増やしましょう。まず間違いなく卯月ちゃんだけでは瞬殺されますし」

卯月「勇者なのに滅茶苦茶弱いんですね、私!」
4 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/09(火) 23:05:49.37 ID:Xi0Aw7pG0

―――楓の酒場


楓「いらっしゃいませ」

卯月「楓さん!? ど、どうして楓さんが?」

ちひろ「卯月ちゃんだけではなく、346プロのアイドルのほとんどがこちらの世界に転移しているんですよ」

卯月「みんな来てるんですか!?」

ちひろ「ただ転移にちょっと失敗して、みんなこの世界のあちこちにバラバラに跳ばされちゃったんですが」

卯月「それみんな無事なんですか!?」

ちひろ「命の心配はありませんよ。……なんかさっきからいちいちリアクションがうるさいですね」

卯月「そんなこと言われても! この状況で驚かないなんて無理ですよ!」

ちひろ「慣れてください」

卯月「慣れたくないです……。で、でもどうして楓さんは酒場をしているんですか?」

楓「酒場で働けば、お酒が飲み放題だからよ」

卯月「そんな理由なんですか!? ていうか商品飲んじゃ駄目ですよ!」
5 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/09(火) 23:06:48.88 ID:Xi0Aw7pG0

楓「まあまあ。それより卯月ちゃん、酒場には何か用があって来たんじゃないの?」

卯月「あ、はい。実はかくかくしかじかで……」

楓「なるほど、仲間を探しに来たのね。ならちょうどいい子が―――」

未央「楓さん、ビール追加で!」

卯月「未央ちゃん!?」

未央「……しまむー? わ、しまむーだ! 会いたかったよ、しまむー!」

卯月「み、未央ちゃんも酒場で働いてたんだね」

未央「うん。楓さんに一緒に酒場で働かないかって誘われたんだ。私の力を貸してほしいって言われて」

楓「未央ちゃん、あなたはクビよ」

未央「唐突すぎる解雇通告!? な、なんでですか楓さん!? 私何もミスしてないですよ!? もう要らなくなったんですか私の力!?」

楓「そうじゃないわ。卯月ちゃんが魔王退治の旅の仲間を探しているそうなの。だから未央ちゃん、一緒に付いて行ってあげて」

未央「え、しまむー、魔王倒そうとしてるの?」

卯月「そうしないと元の世界に帰れないらしくて……」

未央「なるほど、帰るためには魔王倒せばよかったんだね。そういうことなら任せて! この未央ちゃんが力になるよ!」

卯月「ありがとう、未央ちゃん!」

ちひろ「未央ちゃんが仲間になりました」
6 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/09(火) 23:07:35.51 ID:Xi0Aw7pG0

―――ソノヘンノ森


未央「さあ冒険の始まりだよ、しまむー」

卯月「勢いで旅立っちゃったけど……私たち、本当に魔王なんて倒せるのかな?」

未央「大丈夫だって。どうせらんらんが魔王だとかいうオチだよ」

ちひろ「それはないですね。蘭子ちゃんはこの世界に転移していませんので」

卯月「え? でもさっき、みんな転移してきているって言っていましたよね?」

ちひろ「ほとんどと言ったはずですよ。蘭子ちゃんはこっちに来たら面倒なことになりそうなので、呼びませんでした」

未央「面倒って言い方はあんまりじゃない?」

ちひろ「蘭子ちゃんがこっちに来たら、自ら魔王を自称して近隣の町の傭兵に討伐されてしまうかもしれないんですよ?」

卯月「……お空に上がった時にそんな感じだったので、否定できないです」

未央「……それだと、確かに呼ばない方がいいかもね」
7 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/09(火) 23:08:52.98 ID:Xi0Aw7pG0

『きゅぴー』

卯月「きゅぴ?……な、何かいます!?」

未央「こいつは……魔物だよ!」

ちひろ「それはスライムですね。ザコなので、とっとと倒しちゃってください」

卯月「とっととって言われても……」

ちひろ「その腰に付けている剣で、ザシュッとやっちゃえばいいんですよ」

未央「これくらいの敵なら、しまむーだけでも倒せるよ。やっちゃえ!」

卯月「う、うん……」

スライム『きゅぴー』

卯月「ざ、ザシュッと…………」

スライム『きゅぴぃ〜』

卯月「…………」

スライム『きゅぴぃ〜……!』

卯月「無理です! 私には出来ませんっ!」

未央「なんで!? そいつ多分一撃で倒せるよ!?」
8 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/09(火) 23:09:47.68 ID:Xi0Aw7pG0

卯月「たとえ魔物でも、剣で斬るなんて残酷なこと……私には無理です!」

未央「え、えぇー……それを言ったらもうどうしようもないよ? 旅ここで終了だよ? まだ旅立ってから30分も経ってないのに」

ちひろ「大丈夫ですよ、卯月ちゃん。卯月ちゃんたちの武器には特別な魔法がかけられているので、魔物を傷つけることはありません」

卯月「特別な魔法?」

ちひろ「その武器で攻撃して魔物の体力が無くなると、魔物は魔界に送還されるんです。殺したりすることはありませんので、思いっきりやっちゃって大丈夫ですよ」

未央「だってさ、しまむー。随分都合がいい設定だけど、これなら戦えるよね?」

卯月「そ、そういうことなら……えいっ!」ザシュッ

スライム『きゅぴっ!?』シュワァァ

未央「あ、ホントだ。光に包まれて消えてくよ」
9 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/09(火) 23:10:17.27 ID:Xi0Aw7pG0

ちひろ「テレレレッテッテッテー♪」

未央「レベルアップ音!?」

ちひろ「今の戦闘で、卯月ちゃんのレベルが2に上がりました」

卯月「この世界観、本当にゲームなんですね……」

ちひろ「ちなみに、未央ちゃんは今レベル5です。酒場で働いていたおかげですね」

未央「戦闘以外でも経験値貰えるんだ」

ちひろ「そして、今の戦闘でチュートリアルは終了となります」

卯月「ここまでチュートリアルだったんですか!?」

ちひろ「ここからは本格的な冒険が始まります。元の世界に帰るために、頑張って魔王を倒してくださいね」

卯月「……で、出来るだけ、頑張ります」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 23:15:03.48 ID:Z45gngHo0
大魔王だと…!?何川ちひろなんだ…!?
11 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/09(火) 23:17:01.78 ID:Xi0Aw7pG0
書き溜め無しでテキトーに書いていきます

なので旅の途中で唐突に魔王戦に突入する可能性がありますが、ご了承ください
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 23:18:27.03 ID:MV15gSNB0
魔王は紅か蒼の乙女じゃないですかね?
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 23:54:26.65 ID:HAQBkjaE0
『ふわぁ〜……』
14 : :2017/05/10(水) 02:29:54.23 ID:JE7TQ9PM0
黒井社長か玲音じゃないの
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 03:45:25.31 ID:AlcfJDCxo
魔王なんて悪い存在ちひろ以外に居るわけ無いだろjk
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 07:33:49.82 ID:ccGLsCWko
>>14
ageんな[ピーーー]
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 08:30:20.71 ID:wgbbUVG5O
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 13:06:22.44 ID:mz9LvmYUO
>>16
こういう奴は減らないよな何様よ
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 16:53:59.56 ID:8jDh0mrho
ちっひは禍ツ神だから魔王は部下も同然じゃん
あれ?何で窓から緑色の光g(いjのjbcえqじょえんqんかふじこhqvwぢいおqjdくぇぴjcw
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 18:37:06.66 ID:IwlnEjjU0
Paは強い人多そう茜ちんとかニンジャとか
21 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:20:18.71 ID:O7+OKHs30

―――ヒトツメノ村


ちひろ「無事、最初の村に辿り着けましたね」

卯月「無事……って言えるんでしょうか、これは」



未央(どく)「…………」



ちひろ「死んではいないので、広義の意味では無事です」

卯月「まさかどく状態を与えてくる魔物が出るなんて……」

未央(どく)「……しまむー、私もうここから動けないから。あと一歩でも動いたらHP0になるから。お願い、急いでどくけし草手に入れてきて!」

卯月「わ、分かった!」

22 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:21:00.75 ID:O7+OKHs30

―――道具屋


卯月「すみません、どくけし草を―――」

亜子「売り切れでーす」

卯月「え、そんな―――って、亜子ちゃん!?」

亜子「あ、卯月ちゃん。こんなとこで何してるの?」

卯月「こっちの台詞だよ!? 亜子ちゃん、どうして道具屋やってるの!?」

亜子「儲かるからに決まってるじゃん」

卯月「単純明快!」

ちひろ「どうやら、こちらに転移してきた子たちはそれぞれたくましく生きているようですね」

亜子「で、どくけし草だっけ? 悪いけど今ないよ」

卯月「そ、そんな……未央ちゃんがどく状態になってるの! 早く治してあげないと……!」

亜子「え、今そんな危ない状況なの? でも無いものは無いし……あ、そういえばこの村には天才魔導士が住んでるんだよ」

卯月「天才魔導士?」

亜子「アタシは会ったことないけど、その人ならどくを消す魔法くらい使えるんじゃない? 家の場所は知ってるから教えてあげる」

卯月「あ、ありがとう!」
23 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:21:38.90 ID:O7+OKHs30

―――天才魔導士の家 前


卯月「ここが……すみませーん! 天才魔導士さん、いらっしゃいませんか!? お願いがあるんです!」

『はいはい、今行きますから』

卯月「……? 今の声どこかで聞いたような……」


《ガチャ―――》


ありす「この天才魔導士クールタチバナに何かご用―――」

卯月「……ありすちゃん?」

ありす「……」


《―――バタンッ!》


卯月「どうしてドア閉めるの!? ありすちゃん! ありすちゃんったら!」
24 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:22:10.37 ID:O7+OKHs30

ありす『あ、ありす? 人違いじゃないですか? 私はクールタチバナですよ?』

卯月「いや、ありすちゃんだよね!? お願い! 未央ちゃんがどく状態になっちゃって今にも死にそうなの! ありすちゃんの力を貸して!」

ありす『未央さんが?……仕方ないですね』


《ガチャ―――》


ありす「ありすではないですが、力を貸しましょう」

卯月「ありがとう!」

ちひろ「未央ちゃんのことを知ってる時点で、ありすちゃんと認めたもののような気がしますが……」

ありす「タチバナですっ!」
25 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:23:05.00 ID:O7+OKHs30

―――ヒトツメノ村 入口


未央(どく)「え、ありすちゃん?」

ありす「違います。私は天才魔導士のタチバナです。あなたのどくを治しに来てあげました」

未央(どく)「おぉ! 上から目線なのが若干気になるけど、治してもらえるならいいや! 早く治して!」

ありす「はいはい。では……クリアー!」シャーンッ

未央(どく)「これは……!? 体が光に包まれてく……!」

ありす「これでもう大丈夫です」

未央(どく)「ありがとう、ありすちゃん! これでようやく動けるよ!」

卯月「……あれ? 未央ちゃん、まだどくの表示が消えて―――」

未央(どく)「じゃあ私も村を見て回ろっかなー」《HP1→0》



棺桶「」チーン
26 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:23:30.58 ID:O7+OKHs30

卯月「未央ちゃん!?」

ちひろ「死にましたね」

卯月「ありすちゃん、未央ちゃん死んじゃったよ!?」

ありす「……あ、MPが切れてました」

卯月「『あ』じゃないよ!? うぅ……未央ちゃあーんっ!」

ちひろ「大丈夫ですよ。教会で生き返らせましょう」

ありす「そ、そうですそうです。すぐに生き返らせられますよ、これくらい」

卯月「……ゲームの世界観って、死の扱いこんなに軽いの?」
27 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:24:26.17 ID:O7+OKHs30

―――教会


クラリス「教会へようこそ」

卯月「これは予想出来てました」

ありす「クラリスさん。未央さんが死んでしまったので、生き返らせてください」

クラリス「はい、分かりました。……では、未央さんはレベル5ですから、500マニーの寄付をお願いいたします」

卯月「マニー?」

ちひろ「この世界の通貨です。卯月ちゃん、ポケットにICカードが入っているはずですよ」

卯月「ICカード?……あ、本当に入ってました」

ちひろ「魔物を倒したり物を売ったりすると、そのICカードに自動的にマニーが加算されます」

卯月「世界観にそぐわない近未来的なアイテムですね……というかクラリスさん、お金取るんですか!?」

クラリス「お金を取るわけではありませんよ。ただ、心ばかりの寄付を頂けたらと」

卯月「……もし寄付しなかったらどうなるんですか?」

クラリス「どうもしません。ただ、私も何もしないだけです」

卯月「やっぱりお金取ってますよね!?」
28 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:25:17.59 ID:O7+OKHs30

ありす「まあここは私が払いますよ。私にも少し責任がありますので」

卯月「……少し?」

ありす「どうぞ、500マニーです」

クラリス「善意の寄付をありがとうございます。では……未央さんカムバック!」


《ポンッ》


未央「……ふぇ?」

卯月「未央ちゃん! い、生き返って良かった……!」

未央「え、生き返ってって……まさか私死んでたの!? ちょっとありすちゃん!?」

ありす「未央さん、無事で何よりです」

未央「いや無事じゃなかったんだよね!? 死んでたんでしょ!?」
29 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:26:00.10 ID:O7+OKHs30

ありす「今、未央さんは生きている。それでいいじゃないですか」

未央「良くないよ! 思い出したけど、死んだ時体中に超絶痛みが襲ってきたんだからね!?」

卯月「ち、ちひろさんが前に言っていたこと、ホントだったんだ……」

ちひろ「HPが減ってもそれほど痛みを感じない代わりに、死んだ時は超絶痛みを感じるようになっているんです。まあ、仕様ですね」

卯月「嫌な仕様ですね!」

未央「ありすちゃんったら!」

ありす「過ぎたことをネチネチと……分かりました。お詫びに私も未央さんたちの旅に同行しますよ」

卯月「え、本当に?」

ありす「そろそろ元の世界に帰りたかったので、ちょうどいいです」

未央「……でもその前に私に言うことがあるよね?」

ありす「……すみませんでした」

未央「よろしい」

ちひろ「ありすちゃんが仲間になりました」
30 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:26:37.39 ID:O7+OKHs30

―――ソコイラの森


ありす「この天才魔導士クールタチバナが仲間になったからには、魔物なんて敵じゃないです」

卯月「うん、頼りにしてるね」

ありす「ところで、未央さんの武器はどんなものなんですか?」

未央「私? 私はこれだよ」

ありす「じ、銃ですか、それ?」

未央「そう。しまむーの剣と同じで、お空に上がった時のやつだね。これで魔物をバンバン撃っちゃうよー!」

『きゅぴー』

卯月「きゅぴ?……ま、またスライムです!」

未央「なんかスライムばっかりと遭遇してる気がするなぁ……まあいいや、ばきゅーんっ!」バキュン

『きゅぴ?』

未央「え、効いてない!?」
31 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:27:31.23 ID:O7+OKHs30

ちひろ「そのスライムはただのスライムではなく、物理攻撃が効かないタイプのやつですね。魔法しか通用しませんよ」

未央「こんな序盤でそんな面倒なの出てくるの!?」

卯月「魔法なら……ありすちゃん、お願い!」

ありす「やれやれ、もう出番ですか。では見せてあげましょう。……天才魔導士の力を!」

未央「あ、ありすちゃんの周囲に、魔力が集まって……!」

ちひろ「……あ、なんかまずそうなので離れたほうがいいですよ」

卯月「へ?」

ありす「迸れ、数多の雷よ!」



ありす「スパーキングサンダーノヴァ!」


《ズガガガガッ、ズガ―――――――――――ンッ!》


卯月・未央・スライム『きゃぁああああああああああああっ!?(ぴぎいっ!?)』

32 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/10(水) 22:29:18.97 ID:O7+OKHs30

ありす「……ふぅ、片付きましたね。どうですか、お2人とも? これが私の実力で―――」

棺桶×2「」チーン

ありす「す……」

ちひろ「2人とも巻き添えで死にましたよ」

ありす「……ちょっとやりすぎました」

ちひろ「仕方ないので、さっきの村の教会まで戻りましょう。ありすちゃん、天才魔導士なんですから、瞬間移動の魔法くらい使えますよね?」

ありす「使えますが……もうMPないです」

ちひろ「え、一回魔法使っただけでですか?」

ありす「私、天才なのでほとんどの魔法は使えるんですが……MPは魔法を一回使えるくらいしかなくて」

ちひろ「とんだ天才魔導士ですね……。では、教会まで歩いて戻りましょう。棺桶2つ、頑張って運んでくださいね」

ありす「うぅ、重そうです……」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/11(木) 02:39:22.32 ID:L8iOxo++0
しっかりしてくれよ橘さん……
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 21:42:52.79 ID:+buj1PhTo
ポテンシャル高いと信じる! C
http://imepic.jp/20170517/772340
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 22:53:57.69 ID:YSN8APjco
>>34
はえーすごい
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 23:51:13.38 ID:U6gZLdJKo
しのーじおひさ
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/18(木) 00:00:03.05 ID:71MxQ1a0O
>>34
妖精というか妖怪みたいなのがいますね
38 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 01:45:51.96 ID:tJf5meLV0
>>34
素晴らしいイラストを描いてくださり、ありがとうございます
心の底からメチャクチャ嬉しいです

ただ、話の内容のハードル、跳ね上がったような……きっと気のせいですね
前にも書いた通り、これからもテキトーに書いていきます

それとここからは、描写しやすいのでちょっとだけ地の文を書いてこうと思います
ちなみに地の文を入れたからといってシリアスな展開を期待されても、残念ながらその期待には応えられないと思います
39 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 01:47:31.58 ID:tJf5meLV0

―――フタツメノ村


ソコイラの森を抜けて、私たちはフタツメノ村に到着しました。


ありす「無事、フタツメノ村に到着できましたね」

未央「私としまむー、一回死んでるけどね」


未央ちゃんがそれこそ死んだような目で、そう呟きます。


卯月「そ、そのことはもう忘れよう? 思い出したくもないし……」

ちひろ「卯月ちゃんの言うとおりですよ。過去は振り返らずに、未来のことだけを考えて行きましょう」

40 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 01:48:31.54 ID:tJf5meLV0

未央「未来かー……魔王倒すまでに、あと何回死ぬことになるのかな?」

卯月「ネガティブ! み、未央ちゃん、いつものポジティブパッションはどうしたの!」

未央「この短期間に2回も死んだら、そりゃネガティブにもなると思うよ!?」

ありす「も、もうやめましょう、そんな暗い話は。それよりも、やっと村についたんです。まずは宿屋にでも行って休みませんか?」

卯月「そ、そうだね。未央ちゃん、きっと疲れてるんだよ。ゆっくり休も?」

未央「……うん、そーする」

41 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 01:49:56.11 ID:tJf5meLV0

―――宿屋


宿屋の一室にて。
もうベッドでは、未央ちゃんが幸せそうな顔をして眠っています。


未央「……むにゃ……まだ食べられるよ……」

卯月「部屋に着いた途端に眠っちゃった」

ありす「やっぱり大分疲れていたんですね」

ちひろ「ここまでの魔物との戦闘……少し未央ちゃんに頼りすぎていたかもしれませんね」


ちひろさんのその言葉は、確かに的を射ていました。
この村に来るまでの戦闘で魔物と戦っていたのは、ほとんど未央ちゃんだったからです。

42 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 01:50:58.39 ID:tJf5meLV0

卯月「……そうかもしれません」

ありす「私は一回魔法使ったら、お荷物ですし……」

ちひろ「未央ちゃんは一番レベルが高いですから、仕方ない所もありますが」

卯月「いえ、仕方なくなんてないです……」


そうやって頼り切っていたせいで、未央ちゃんはこんなにも消耗してしまったのだから。
……ごめんね、未央ちゃん。

43 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 01:51:34.12 ID:tJf5meLV0

卯月「ありすちゃん、これからは未央ちゃんの負担を減らすために、私たちももっと前に出て戦おう?」

ありす「はい、分かりました。魔法を使えなくなっても、杖でえいっと叩くくらいはやってみせます」

ちひろ「その意気です。旅は助け合いが大事ですよ」


じゃあさっそく、未央ちゃんの負担を減らすために行動を。


卯月「ねぇ、ありすちゃん。未央ちゃんが寝てる間に、私たちで魔王に関する情報を集めようよ」

ありす「了解です。村の人に聞き込みですね」

44 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 01:52:29.79 ID:tJf5meLV0

―――翌日


未央「んー、ぐっすり寝たーっ!」

卯月「おはよう、未央ちゃん」

ありす「疲れは取れましたか?」

未央「うん、バッチシ!」

ちひろ「元気満タンみたいですね。それでこそ未央ちゃんです」


一晩ぐっすりと眠って、未央ちゃんはもうすっかり元気になったみたいです。

45 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 01:52:57.61 ID:tJf5meLV0

卯月「未央ちゃん。私たち昨日、この村で魔王に関する情報を集めたんだ」

未央「え、しまむーたちだけで?」

ありす「未央さんはぐっすり寝ていたので、起こすのもどうかと思いまして」

未央「そういうことなら、起こしてくれて良かったのに……。ありがとね、2人とも」

卯月「ううん、こっちこそ。ありがとう、未央ちゃん」

ありす「ありがとうございます、未央さん」

未央「ほぇ? 私はお礼を言われるようなこと、何もしてないよ?」


未央ちゃんが不思議そうな顔をしています。

46 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 01:53:33.94 ID:tJf5meLV0

もちろん、今のはこれまでの戦闘へのお礼だったんですが……それを言うのは、私もありすちゃんも、ちょっぴり照れくさくて。


ちひろ「いいじゃないですか、未央ちゃん。感謝の言葉は、ありがたく受け取っておくものですよ」


私たちの気持ちを察してくれたのか、ちひろさんがフォローしてくれました。


未央「そ、そうかなぁ。じゃあ……どういたしまして?」

ありす「それでいいです。ありがたく受け取っておいてください」

未央「ありすちゃん、ちょいちょい上から目線になるね!」

47 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 01:54:06.93 ID:tJf5meLV0

卯月「ふふっ」


2人のやりとりを見ていたら、なんだかおかしくなっちゃいました。
つい、私の顔が綻びます。


未央「しまむーも、なんで笑ってるの?」

卯月「あはは、ごめんね」

未央「もう……それで、魔王の情報は集まったの?」

卯月「あ、うん」

ありす「村の人の話によると……この村の近くに、魔王の配下が支配している砦があるそうです」

48 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 02:06:43.27 ID:tJf5meLV0

―――砦


フタツメノ村近くの砦。その、ある一室において。


??「―――勇者がこの辺りに来てる? それで、この砦に来る可能性が高いんだ? ふーん……だいじょぶだいじょぶ、勇者なんてちょちょいのちょいにゃ」

49 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 02:11:04.26 ID:tJf5meLV0

―――砦前


私たちはフタツメノ村を出て、話に聞いた砦へとやって来ました。

……正確に言うと、砦が見えるくらいの位置にある茂みの中にいます。
隠れていないと、魔物に見つかってしまうので。


未央「いかにも、中ボスがいそうな砦だね」

ありす「その言い方はどうなんでしょうか」

卯月「どうやって中に入ればいいんでしょうか……やっぱり正面から?」

ちひろ「卯月ちゃん、そんな正々堂々と行く必要はないと思いますよ」

50 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 02:11:51.04 ID:tJf5meLV0

卯月「ちひろさん、何か考えがあるんですか?」


私が訊ねると、ちひろさんは妖精らしい素敵な笑顔で―――



ちひろ「どうせ相手は魔王の配下なんです。こっそりと忍び込んで闇討ちしましょう♪」



―――魔王もびっくりの作戦を唆してきました。


未央「きたなっ!?」

ありす「とても勇者のすることじゃないですね」

51 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 02:13:17.52 ID:tJf5meLV0

卯月「ち、ちひろさん、それは流石に……」


いくら相手が魔王の配下でも、その作戦は良心が咎めるというか……。


ちひろ「では正面から行って、わらわらと出てくる魔物と休む間もなく戦うんですか? 卯月ちゃんたちがそれでいいならいいですけど……多分、全滅すると思いますよ」

卯月・未央・ありす『…………』

ちひろ「どうするんですか?」

52 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 02:14:55.56 ID:tJf5meLV0

―――砦内


良心は生存本能には勝てませんでした。


あの後、私たちは砦の周囲をくまなく探索。

しかし忍び込めそうな場所が見つからず……ちひろさんの指示で、砦の壁をツルハシのように剣で掘削。
そして破壊。

壁に空いた大穴から、砦の中へと侵入しました。

53 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 02:15:45.20 ID:tJf5meLV0

ちひろ「みなさん、物音は立てないでくださいね。こっそりと、抜き足差し足忍び足、ですよ」

未央「……やってること、まるで盗賊だよね」

ありす「……平和のためです」

卯月「……でもすごい、罪悪感が」

ちひろ「無駄話はしないでください。魔物に見つかってもいいんですか?」

卯月・未央・ありす『……はーい』


ちひろさんに注意され、無言になる私たち。

54 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 02:16:48.89 ID:tJf5meLV0

ですが、ふと気になったことがあるので、私はちひろさんに話しかけました。


卯月「でもちひろさん、魔王の配下のいる場所、分かるんですか?」

ちひろ「どうせ砦の最深部にいますよ。中ボスなんですから」

未央「身もふたもないことを」

ちひろ「そして中ボスの所まで行ったら、気付かれないように後ろから全員で総攻撃です」
 
ありす「ゲスの極みですね」


さっきから、とても妖精とは思えない発言が続きます。
もしかして魔王って、ちひろさんなんじゃ……そ、そんなわけないですよね。

55 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 02:17:48.80 ID:tJf5meLV0

そんなおそらく見当違いなことを考えていると―――



『……れ、か……』



小さな声が、私の耳に入ってきました。


卯月「? 未央ちゃん、今何か言った?」

未央「何も言ってないよ?」

卯月「でも今、何か聞こえたような……ありすちゃん?」

ありす「私も何も言ってないです」

56 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 02:20:04.02 ID:tJf5meLV0

気のせいでしょうか……?

試しに目を閉じて、耳を澄ませてみます。


すると―――



『誰か……助けて…………っ!』



卯月「! 今、助けてって声が聞こえた!」

未央「え、ホント!?」

卯月「あっちから!」


私は、声のした方向へと駈け出しました。

57 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/18(木) 02:23:49.06 ID:tJf5meLV0

声を追って辿り着いた先は……牢屋。


そして、その中に居たのは―――



卯月「……加蓮ちゃん?」

加蓮「……卯月、なの?」


58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/18(木) 03:29:26.40 ID:psgYttS+O
中ボスがチョロそう…
チュートリアル並みにあっさり倒せそう…
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/05/18(木) 07:19:49.77 ID:DtG+99piO
ありすちゃん・・・どこの頭のおかしい爆裂魔法少女だよ
60 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:17:44.03 ID:/7YGYHzE0

私が加蓮ちゃんの元に辿り着くと、すぐに後ろから未央ちゃんたちが追いついてきました。


未央「しまむー、助けてっていったい―――かれん!?」

加蓮「未央? それにありすちゃんに……ちひろさん小さっ!」

ありす「加蓮さん、どうしてこんな所に?」

ちひろ「もしかして、中ボスに捕まったんですか?」

加蓮「中ボス?」

卯月「ま、魔王の配下に捕まったの?」

加蓮「あ、うん、そうなの。みんな、お願い。その辺に鍵あると思うから、それで牢屋から出してくれない?」

未央「オッケー、任せといて!」

61 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:18:15.21 ID:/7YGYHzE0

私たちはその辺を探して鍵を発見し、加蓮ちゃんを牢屋から解放しました。


加蓮「やっと出れたよ……」

卯月「加蓮ちゃん、どうしてこんな所に捕まってたの?」

加蓮「こっちの世界に来てすぐ、魔王の配下と出くわしちゃってさ。そのまま捕まって、ずっとここに閉じ込められてたの」

未央「そうだったんだ。ツイてないね、かれん」

加蓮「ホントだよ」

卯月「でも、無事で良かった」

ありす「加蓮さん。それでその中ボスって、どんな奴なんですか?」

加蓮「どんな奴って言うか……」

62 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:18:49.02 ID:/7YGYHzE0

―――砦 最深部 扉前


加蓮「あんなみく」


みく『勇者め、来るなら来るにゃ! にゃーにゃっにゃっにゃっにゃ!』


扉をちょっと開いて中を覗くと、みくちゃんが悪い顔で高笑いしていました。


未央「みくにゃんじゃん!」

ありす「え、魔王の配下ってみくさんなんですか!?」

加蓮「そうなんだよ……」

卯月「ど、どういうことですか、ちひろさん! なんでみくちゃんが魔王の配下に!?」

ちひろ「ちょ、ちょっと待ってください……ちひろアイ!」

未央「何それ!?」

63 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:19:26.48 ID:/7YGYHzE0

ちひろ「説明しましょう。ちひろアイとは、妖精ちっひだけが持つスペシャルなスキル。これを使って相手を見ると、その相手のステータスがまるっとお見通しなんです」

加蓮「え、そんなスキルあるんだ」

ちひろ「これのおかげで、卯月ちゃんたちのレベルが今どれくらいなのかも把握できるんですよ」

ありす「それのおかげだったんですね」

ちひろ「これを使ってみくちゃんを見れば…………あ、みくちゃん、魔王に操られてますね」

卯月「えぇ!?」

ちひろ「そのせいで、完全に魔王の配下になってるみたいです」

未央「ど、どうするの!? 相手がみくにゃんじゃ戦えないよ!」

ちひろ「いえ、みくちゃんを魔王の支配から解放するには、みくちゃんを倒すしかありません」

卯月「た、倒すって、そんなの……」

ちひろ「安心してください。みくちゃんを傷つけることはないですから」

卯月「え?」

64 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:20:00.57 ID:/7YGYHzE0

ちひろ「卯月ちゃんたちの武器には、特別な魔法がかけられていると前に言ったでしょう? あれは魔物に対してだけではないんです。その武器で人を攻撃して体力を0にした場合、その相手は深い眠りにつくんですよ」

ありす「眠るだけ、ですか?」

ちひろ「はい」

未央「でもちひろさん。私としまむー、ありすちゃんの魔法で死んでるんだけど」

ちひろ「残念なことに、パーティ内には適用されない仕様なので」

未央「むしろそこに適用されるべきじゃないの!?」

ちひろ「こほん。それで卯月ちゃんたちの攻撃によって深い眠りにつきますと……目が覚めた時には全ての状態異常が回復、HPは全快になっているんです」

ありす「ポケ○ンみたいですね」

ちひろ「ここで重要なのは、状態異常が回復するということです。言うなれば、魔王の支配も状態異常のようなもの。なので、眠れば元のみくちゃんに戻るでしょう。……多分」

未央「小声で多分って付け足したし!」

卯月「ほ、本当ですね、ちひろさん? 信じていいんですね?」

ちひろ「もちろんです。導きの妖精ちっひを信じてください」

未央「しまむー。果てしなく怪しいとこだけど、ここは信じるしかないよ」

ありす「そうですね。限りなく疑わしいですが、それしかないなら」

ちひろ「私の信用随分と低いですね!?」

卯月「……分かりました。みくちゃんと、戦いましょう!」

65 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:20:42.63 ID:/7YGYHzE0

―――砦 最深部


その頃みくは、中々やって来ない勇者に待ちくたびれていた。


みく「……遅いなー。勇者なんて全然来ないにゃ。あの話、眉唾なんじゃないの?」


《バキュンッ》


みく「にゃ!? な、何、今の!? なんか鈍い音が聞こえたと思ったら、体がチクってしたにゃ!」


《バキュンッ、バキュンッ》


みく「にゃにゃ!? 何!? 何なの!?」

66 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:21:51.02 ID:/7YGYHzE0

―――砦 最深部 扉前


加蓮「……ねえ。これはあまりにも……あんまりじゃない?」

ちひろ「仕方ないじゃないですか。みくちゃんがこの扉の方を向いているせいで、こっそり侵入して闇討ちすることが出来ないんです」

加蓮「まずその作戦からして、あんまりな気がするんだけど」

ちひろ「さあ未央ちゃん、もっとです。……扉の隙間から、みくちゃんを撃って撃って撃ちまくってください!」

未央「……はーい」


《バキュンッ、バキュンッ》


未央ちゃんが感情のない声で答え、みくちゃんに向かって銃を撃ち続けます。


みくちゃんと戦うにあたって、ちひろさんが立てた作戦。

それは―――みくちゃんにバレないように部屋の扉を少しだけ開き、その隙間からみくちゃんを銃で狙い撃つという姑息な手でした。

67 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:23:25.03 ID:/7YGYHzE0

ちひろ「この世界ではみくちゃんたちの痛覚は大分鈍くなってますから、まだ銃で撃たれていることにすら気付いていないでしょう。このままみくちゃんの体力が無くなるまでこれを続ければ、戦闘に入らずにみくちゃんを倒せますよ♪」

ありす「よく笑顔でそんなエグいこと言えますね」

加蓮「確かめたいんだけど……卯月たち、勇者なんだよね? 魔王の配下じゃないよね?」

卯月「違うよ! そんな疑いの眼差しで見ないで、加蓮ちゃん!」

ちひろ「あ、卯月ちゃん、しっ!」


みく『今の声は何にゃ!?』


卯月「あ」

未央「やばっ!? みくにゃんこっち来る!」


《バァ―――ンッ!》


勢いよく扉が開かれ、私たちとみくちゃんの目が合いました。


みく「…………」

卯月たち『…………』



みく「こんなとこで何してるにゃあ―――――――――――――――――――――っ!?」


68 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:24:03.93 ID:/7YGYHzE0

卯月「そ、それはそのぉ……」

みく「さっきからチクチクすると思ったら、未央チャンがここから銃で撃ってたの!?……あ、みくのHPメッチャ減ってるにゃ!? 姑息にもほどがあるよ!」

ありす「返す言葉もないです」

ちひろ「まずいですね……もうこうなったら、ちゃんと戦うしかありません」

未央「それが普通だと思うよ!?」

みく「卯月チャンたち、みくに何の用!? こんなことするなんて、この世界で暗殺者にでもなったの!?」

卯月「あ、暗殺者じゃなくて勇者だよ!」

みく「え、勇者? 卯月チャンたちが?」

卯月「う、うん、一応」

加蓮「そうらしいよ」

みく「あ、加蓮チャン! 牢屋から出てきたの!?」

加蓮「卯月たちに出してもらったんだ。みく、これまでのお返しをしに来たよ!」

みく「むむっ、生意気なことを!」

加蓮「じゃ、そういうわけで……みんな、私の分も頑張って!」

卯月・未央・ありす『……えっ?』

69 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:24:42.89 ID:/7YGYHzE0

加蓮「私はその辺に隠れてるね。……ファイトっ!」


そう言うと、加蓮ちゃんは驚きの速さでこの場から逃げていきます。


未央「ちょっとかれん!?」

ありす「一緒に戦ってくれるんじゃないんですか!?」

加蓮「だって私、戦うのとか無理だから―――っ!」

卯月「そんな!?」

ちひろ「……行っちゃいましたね」

みく「あーあ、加蓮チャンも魔王様の元に連れてって、心を支配してもらうつもりだったのに」

卯月「そ、そんなことを考えてたの?」

未央「みくにゃん、正気に戻ってよ! みくにゃんはそんなことする子じゃないでしょ!」

ありす「優しいみくさんに戻ってください!」

みく「うるさいにゃ! みくは魔王様の忠実なるしもべなり!」

ちひろ「完全に操られていますね……」

70 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:25:26.93 ID:/7YGYHzE0

みく「魔王様の命に従い、みくがこの辺り一帯を支配した暁には―――」



みく「全ての人間どもに、猫耳を付けさせるのにゃ!」



卯月たち『…………』

みく「ふっ……恐ろしくて言葉も出ないにゃ?」

未央「呆れて言葉も出ないよ」

ありす「くだらないことを……」

卯月「ちひろさん、魔王ってそんなことを企んでいるんですか?」

ちひろ「支配した後のことはみくちゃんの独断でしょう。心を操られていても、元の人格の影響があるようですね」

みく「勇者である卯月チャンたちを倒せば、猫耳ワールドにまた一歩近づくにゃ! さあ、かかってくるにゃ!」

71 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:26:06.72 ID:/7YGYHzE0

ちひろ「いよいよ中ボス戦です! みなさん、頑張ってください!」

卯月「は、はいっ!」

未央「ありすちゃんは切り札だから、下がってて! いよいよヤバそうになったら、魔法お願い!」

ありす「分かりました!」

卯月「いきますっ!」


先手必勝とばかりに、私は手に持った剣を振りかぶり、みくちゃんの体を斬りつけます。


みく「その程度の攻撃で!……こう、げき……で……」


どうしたことか、みくちゃんはだんだんと弱弱しい声になっていきながら……その場にゆっくりと倒れました。


卯月「? み、みくちゃん?」

みく「……ぐぅ」

未央「ぐぅ?」

ありす「……寝てます」

ちひろ「勝ちましたね」

卯月・未央・ありす『もう!?』

72 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:26:52.66 ID:/7YGYHzE0

ちひろ「さっきの未央ちゃんの銃撃で、みくちゃんのHPは風前の灯火でしたから。やはり私の作戦が功を奏しましたね」

未央「えぇー……」

ありす「なんでしょう……勝ったのに、すごく虚しいんですが」

ちひろ「その通り。戦いとはいつも虚しいものです」

卯月「意味が違う気がします……」


私たちが微妙な気分になっていると―――


加蓮「あ、終わったー?」


加蓮ちゃんが、ひょっこり戻ってきました。

73 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:28:14.76 ID:/7YGYHzE0

卯月「うん、終わったよ。加蓮ちゃん」

未央「かれん、一人だけ安全なとこ行ってー!」

加蓮「ごめんごめん」

ありす「まあ私も何もしてませんが」

加蓮「にしても、随分早く終わったよね。やっぱりさっきのあんまりな作戦のせい?」

ちひろ「巧妙な作戦と言ってください」

未央「どこが?」

加蓮「あ、ホントにみく寝ちゃってるし」

みく「……もう食べられないにゃ……」

加蓮「幸せそうな顔しちゃって。まったく、みくったら……」





加蓮「こんな簡単にやられないでよ」




74 : ◆mqlRkew9nI/5 [saga]:2017/05/19(金) 19:30:37.65 ID:/7YGYHzE0

ありす「……え」

未央「か、かれん……?」

加蓮「ホントはこのまま当分、卯月たちにくっついてくつもりだったんだけどなー。でも、みくは不甲斐ないし……それにちひろアイだっけ? そんなのあったら、どうせすぐ気付かれちゃうよね」

卯月「そ、それ、どういう……」

ちひろ「加蓮ちゃん、まさかあなた……!」

加蓮「ご自慢のちひろアイで見てみれば?」

ちひろ「……な!? か、加蓮ちゃんも……魔王に操られています!」

未央「嘘!?」

ありす「みくさんだけじゃなかったんですか!?」

卯月「か、加蓮ちゃんまで……?」

加蓮「ふふっ、それでさみんな。これじゃ不完全燃焼でしょ? だから……次は、私が相手をしてあげるね」

卯月「っ!」

加蓮「あ、せっかくだし、改めて自己紹介しとこうかな」



加蓮「一応、魔王様の側近をしてる―――魔導将、北条加蓮だよ。よろしくね♪」


75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/19(金) 20:25:57.48 ID:cyYEMVMyO
一体魔王は何者なんだー
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/19(金) 21:39:03.23 ID:vyo5dYo+o
魔王の側近の片割れは誰なんだ…ちひろは卑劣様か何か
卯月一行が外道過ぎて笑う、みくの目的しょぼすぎて草

加連は魔導将(物理かな)何人かいるんだよな
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/19(金) 23:19:59.80 ID:RWgUX3Vqo
みくにゃん弱くてワロタww 加蓮強そう。
ドラクエだけど特撮系女幹部っぽいキャラも似合ってるな〜
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 00:59:00.25 ID:rB0YGAwfo
加蓮の相方はちょろいに違いない
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