('A`)はベルリンの雨に打たれるようです

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49 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/09(火) 14:09:55.44 ID:B042YGid0
更新第3波完了。第4波深夜になります

ご静聴ありがとうございました
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 15:48:37.70 ID:pDjhVfSA0
おつおつ
イヨウ有能だし、主人公が着々と英雄として覚醒してるw
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 16:43:08.79 ID:zpgHAe3mO
乙、ドックンかっこいい
52 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/10(水) 00:28:47.50 ID:/QEg56gn0
『────!!!?』

『!?』

『!?!!?』

市街地から撃ち上げられた何百条という火線。先陣を切っていた十何機かが真正面から貫かれて空中で爆散し、それを皮切りに群れをなして押し寄せてきたHelmが次々と対空射撃を受けて火を噴き、落ちていく。

爆弾の投擲音は、未だに一発も聞こえない。

「敵機撃墜、敵機撃墜!!」

「よし、一機落としたぞ!」

「口を動かす暇は一秒残らず手を動かす時間に費やせ馬鹿野郎!!撃て、撃て、撃て!!!」

400マイルで空を飛び回り、現代戦闘機の装甲でも十分貫ける威力の機銃を放ち、その小ささ故に空対空ミサイルによるロックオンはほぼ不可能。

“ワンショットライター”と揶揄される脆さを加味しても、本来なら人類が艦娘抜きで太刀打ちするのは難しい。

アルカンタラマールで迎撃ができたのも、向こうが“損耗を極端に嫌った”という戦略的要因があってこそだ。他に日本で近代戦闘機がHelmの大群体を完封した事例があるが、アレは練度の高い艦娘ありきの作戦になる。

故に、本来なら俺たちは高高度から一方的に爆弾と機銃掃射の雨に晒されるだけの「狩られる獲物」でしかなかった。

天候さえ、まともなら。
53 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/10(水) 00:30:51.74 ID:/QEg56gn0
「リロードします!」

「弾幕絶やすな!常に撃ち続けろ!!」

《レオパルト、配置転換します!》

ξ゚听)ξ「解った、後続する!!」

深海棲艦機の“小ささ”は、決して利点ばかりを持っているわけではない。鹵獲された奴等の機体は非常に軽く、非武装の状態なら大人が片手で軽々と担げる。搭載される爆弾に至っては3〜7インチとポケットに入れて持ち運べるお手軽サイズだ。

(=#゚ω゚)ノ《補充班、とにかく弾薬補給の手は止めるなよぅ!!要請があるまで動かないんじゃなく、自分たちで不足する場所を予測して運搬するんだよぅ!!》

軽く、小さく、そのくせ威力は従来の爆弾と遜色なし。オーバーテクノロジーの極みだが、故に奴等の航空攻撃は天候の影響を強烈に受ける。例えば今日のように強い風雨がある時は、まともに狙いを定めようとすれば必然的に高度をギリギリまで下げなければ狙った箇所に効果的な損害を与えることは難しくなる。

「弾が切れた!リロードする、カバーを!!」

「一機撃墜した!!」

「敵機の投弾、未だ見られず!!」

ではここで、奴等の爆撃経路がなるべく収束されるように───決まったコースにHelmが殺到するように戦力を展開すれば、どうなるか。

「撃墜四機目!!」

「当方損害、未だ無し!!」

(#'A`)「上空10時方向より新手来るぞ!射線合わせ!!」

その答えが、この光景。

(#'A`)「Feuer!!」

   ターキー・シュート
───七面鳥撃ちだ。
54 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/10(水) 00:37:23.52 ID:/QEg56gn0
(#'A`)「状況知らせ!!」

「防衛線全域において未だ敵機の投弾・損害発生報告無し!」

「墜落機の直撃を受けて家屋が一部倒壊も影響ありません!敵航空隊、大損害を受けて攻勢が鈍化しています!」

雲霞のごとき大編隊に襲われているとは到底思えない、あまりにも順調な戦況推移。だが、そこで手放しで喜ぶような間抜けな真似はしない。

此方にとっての優勢は、敵にとっての苦境。俺たち人間がそうであるように、深海棲艦も「現状を覆すにはどうするべきか」を考えるはずだ。

('A`)「……っ」

深海棲艦の立場になって考える。上方からの攻撃は悪天候の影響もあってまんまと誘い込まれた形になり、対空射撃によって攻撃の体さえほとんど為していない。この状況をどう打破するか。

数を更に増やすか?いや、無意味とまではいかないが効果的じゃない。

そう、俺なら。

『────ォオオオオオオオオォオオオッ!!!!!』

「高層観測班より報告!!トレプトゥ=ケーペニック区で非ヒト型深海棲艦の出現を確認!!

艦種は軽巡ホ級が三体、内1体はflagshipです!!」

俺なら、攻撃面を一つ増やす。
55 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/10(水) 00:41:26.00 ID:/QEg56gn0

深海棲艦の非ヒト型に共通する、あの耳障りな叫び声が聞こえてきた方向を振り向く。

立ち並ぶ建物の間に、巨体が屹立している。

砲台の中から這い出そうとしているような、或いは巨大な口に今にも食いちぎられそうになっているような、そんな何度見てもおぞましさを拭えない紛れもない“化け物”。

そんなただでさえ気色の悪い存在が、途方もない大きさで此方に迫ってきていた。BGMにアキラ=イフクベの音楽でも流せば、そのままモンスター映画の一幕として使える素材になるだろう。

非ヒト型のflagshipクラスは、平均して30Mという巨体を誇る。当然耐久力も通常種から跳ね上がっており、陸上戦力なら相応の火力が無ければ対抗することは難しい。

('A`)「プーマ戦闘車隊、ホ級flagshipを射程圏内におさめている車両は?」

《此方2号車、射程に捉えてます!!》

《5号車、射撃可能!いつでも撃てます!》

ただし。

('A`)「Go, Missile!!」

《《Jawohl!!》》

相応の火力が備わっている場合、ただのデカい的だが。
56 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/10(水) 00:43:53.18 ID:/QEg56gn0
『───ア゛ッ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!?』

プーマ二台の砲塔から放たれたスパイクLR対戦車ミサイルが、相次いでホ級flagshipの巨体に直撃する。
片方は頭、片方は砲塔。

轟音が響き、破片が飛び散り、ホ級は苦悶の声と共に着弾箇所をのたうちまわる。

指の隙間からは、血の代わりに凄まじい量の黒煙が吹き出した。

《だーんちゃーーーく!!どーだいこの威力!》

《落ち着け5号車!少尉、続けて撃ちます、いいですか?!》

('A`)「許可する!第ニ射は頭部集中、間髪入れずにトドメを刺せ!!」

《《Jawohl!!》》

深海棲艦は、艦娘同様“歩く戦艦”だ。例え第4世代戦車や最新鋭の歩兵戦闘車が雁首を揃えても、闇雲に攻撃をするだけなら駆逐イ級すら一隻仕留めるのに膨大な犠牲が必要となる。

ただ、同時に奴等は“生ける戦艦”でもある。生き物は、戦艦や戦車よりも“効率的に殺す手段”が圧倒的に多い。

《────弾着、今!!!》

『ア゛ッ………ア゛ァ゛ッ…………』

700mmという高い貫通能力を持つミサイルは、傷口を覆っていたホ級の手の甲を引きちぎり、その下の頭を抉り取る。

その傷口に2発目が飛び込み、炸裂し、吹き飛ばす。

頭を失ったホ級flagshipは、びくびくとニ、三度痙攣した後家屋を巻き込みながら地面に倒れ込んで“絶命”した。
57 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/10(水) 00:45:56.74 ID:/QEg56gn0
「観測班より報告!ホ級通常種、此方への進行を停止!反転し後退していくとのことです!」

「おい見ろ!Helmの奴等が逃げていくぞ!!」

非ヒト型とはいえ、【flagship】の瞬殺は奴等にとって流石に少し想定外だったらしい。
それまで膨大な撃墜機を出してもどこぞの島国宜しくkamikazeを繰り返していた深海棲艦機が、潮が引くように空へと舞い戻っていく。

ホ級の進撃が止まったという報告が流れたこともあって、一瞬弛緩と安堵が入り交じった空気が流れた。だが、それはあくまで一瞬に過ぎない。

(=#゚ω゚)ノ《今のうちに各区画は物資を補給、それから戦力の再編を急ぐよぅ!!それと市民の避難を更に急がせるんだよぅ!!》

無線越しのイヨウ中佐の声に、弾かれたように全員が活動を再開する。避難誘導の声が今まで以上に大きく響き、負傷者の確認や弾薬の点検のための点呼が飛び交う。此方の影響下にあるベルリン東部以外で、通信が繋がらないかどうかを試みる声も聞こえてくる。

('A`)「………」

イヨウ中佐を初め、誰もが理解している。今の攻撃は跳ね返したが、それはとりもなおさず奴等に俺たちの力を見せつけたということだ。

奴等は俺たちが、艦娘がいなくても十分に抵抗し得る戦闘能力を持っていると理解した。理解した以上、もう“ターキー・シュート”は起こらない。

次の攻撃は、より本格的に此方を叩きつぶすために動いてくる。
58 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/10(水) 00:47:21.43 ID:/QEg56gn0
ξ゚听)ξ「…………“無理ゲー”、まだまだ続きそうね」

('A`)「……あぁ」

いつの間にかそばに来ていたツンの呟きに、頷く。そもそもさっきの防衛にしても、圧倒的だったのは“たまたま俺の読みが全て当たったから”だ。もし深海棲艦戦闘機の動きが予測から外れていたら、もしホ級の出現に動揺して指示が遅れていたら、今頃俺は2階級特進の権利を手にしていた。

('A`)「…………マンドクセ」

一瞬、このまま敵の攻勢が止まってくれることを期待したが、下らない願望だとすぐに頭を振って追い出す。

あり得るはずがない。ここまで大規模な攻撃をかけてきた深海棲艦の攻めが、この程度で終わるなど。









(;'A`)「………」

何より、あのリ級eliteが。

この程度で“お楽しみ”をやめるはずが、ない。
59 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/10(水) 00:49:16.61 ID:/QEg56gn0







かつてブランデンブルク門と呼ばれていた瓦礫の山の上に、二つの人影。血の臭い、焼けた人体の臭い、蒸発した油の臭いが充満して噎せ返るほどだが、二人はまるで気にする素振りを見せない。

片方は、腰に手を添え、朱い眼を細め、額に右手を当ててわざとらしく遠くを眺める素振りをする。先ほどまで着ていた黒の革ジャケットは脱ぎ捨てられ、今は水着のような露出の高い服装と蝋や漆喰のように白い肌、腕や足の艤装が剥き出しになっている。

もう片方は、瓦礫の上にあぐらをかき、ぱたぱたと足を上下させ、少し前のめりになってある方角に興味深げな視線を向けている。目深に被ったフードの奥から、めいっぱいに見開かれた金の双眸が垣間見えた。

彼女たちは、深海棲艦とは思えぬほどに自然で柔らかい、満面の笑みを浮かべていた。
60 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/10(水) 00:57:47.34 ID:/QEg56gn0
“全の意思”を通じて、この戦いを指揮している“棲姫”の怒りの声が同胞達に届けられている。順調極まりなかった今回の入念な作戦にあって、小さいとはいえ敗北の傷がついたことは彼女の高いプライドに泥を塗ったらしい。
棲姫は艦載機を飛ばした空母達と、一撃でなぎ倒された軽巡を口汚く罵倒している。

だが、そんなことは瓦礫の上で佇むリ級ともう一人にとってはどうでもいいことであった。

リ級は、確信していた。今し方眼にした、東部での同胞達の敗北は、“あの男”によるものだと。さっきこの門を破壊したときに、多くの人間と共に見逃しておいた『あいつ』がやったのだと。

('A`)

彼女は満面の笑みを浮かべ、街の東を眺める。見えるはずがないと解っていても、あの陰気な顔つきの優男に向かって愛おしげに両手を広げる。

ヤッパリダ。

アノ時、君ヲ見テ思ッタ事ハ正シカッタ。

君ト遊ブノハ、心底楽シイ。

彼女の眼は、まるで恋人に出会った乙女のように輝いていた。
61 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/10(水) 01:07:03.03 ID:/QEg56gn0

.

本当ニ、楽シソウダナ。

隣であぐらをかいている少女が、クツクツと肩を震わせる。

デモ、楽シイ奴ダロウ?

リ級eliteは、口元を緩ませながら紅い双眸を隣に向ける。

マァ、人間デモ強クテ賢イ奴ト戦ウノハ楽シイナ。

少女はその視線を受けて、頷く。

私ハソロソロイクケド、君ハドウスル?

─────ソウダナ。

少女は、リ級に続いて立ち上がる。

その笑みが、無邪気な殺意で歪む。

ソロソロ、私モ遊ボウカナ。

尻尾が、瓦礫を撥ねのけながら獲物を見定める蛇のように彼女の後ろで屹立する。

その先端から、魚雷と砲塔が飛び出した。
62 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/10(水) 01:08:29.86 ID:/QEg56gn0
第4波投下完了。
ご静聴ありがとうございました。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 01:34:02.07 ID:Wh3v3YbA0
おつです
会心の一撃のはずなのに、建ったプラグが最悪すぎるw
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 01:34:48.92 ID:n7zeNQ1A0
乙 続き期待
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 10:11:34.51 ID:oNDrLjg/o

リ級の歪んだ愛を感じる
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/10(水) 17:29:32.80 ID:7wKMczr0o

すごいなー。ドクオ、モテモテだー
67 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/10(水) 17:38:08.35 ID:PFrSjBIhO
《France?24よりお送りします。先ほどフランス政府より、東部における深海棲艦の封じ込めに失敗したと正式に発表がありました。

既に本土での深海棲艦の展開数は50を越えており、フランス軍は防衛線の後退と再構築を行っています。ナンシー市以東にお住まいの全国民は、速やかに避難を開始してください》

《ドイツ西部トリール近郊に出現した深海棲艦の大群が、一部ルクセンブルクに侵入しました。ルクセンブルク陸軍は全戦力でこれを迎撃していますが、戦況は絶望的です》

《国境線を突破した深海棲艦の大群はマルメディに向けて侵攻中です!ベルギー陸空軍による迎撃は全く効果がありません!!あぁ、神様!!》

《ヘルダーラント州の複数の都市において深海棲艦艦載機による空爆が行われ、民間人に多数の死傷者が出た模様です。

一部の暴徒はドイツは人類を裏切り深海棲艦を引き入れた主張して民衆を扇動。オランダ国内のドイツ関連企業や在オランダドイツ人が襲撃を受けています》

《深海棲艦のフランスにおける動向でSNSを中心に様々な情報が錯綜し、スペイン国内が動揺しています。。マドリードでは生活用品や食料品の買いだめをしようとスーパーや小売店に人々が殺到し、空港には海外避難を求め全便欠航にもかかわらず在留外国人や富俗層が詰めかけています》

《コペンハーゲンからのライブ中継です!皆様見えますでしょうか!?深海棲艦の戦闘機が、まるで黒雲のように───嗚呼、街が……街が……!!》

《オーストリア、スロバキア、チェコ、スロベニアなどドイツ付近の幾つかの国は深海棲艦の侵入が行われた場合のトルコへの国民亡命を打診していますが、トルコ政府は経済的・安全保障的観点から難色を示しています》

《BBCより、政府方針を国民の皆様にお伝えします。

先ほどイギリス政府により、英国全土に特別戒厳令が布告されました。解除されるまで、外出は緊急時を除き絶対に控えて下さい。

また、今時騒乱におけるSNS等を用いた不確かな情報の流布も法律により禁じられています。以後、無責任な情報のやりとりを全て停止し、政府発表のみを受け取るよう徹底して下さい》
68 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/10(水) 17:39:34.15 ID:PFrSjBIhO
現状報告1
ドイツ北部、並びに近郊での深海棲艦による襲撃状況

図1:襲撃前


赤マーク:ドイツ空軍基地
黄☆:軍民共用或いは民間空港

図2:襲撃後


×印:機能停止、壊滅
矢印:深海棲艦による近隣国への侵攻ルート
○:ミルナ、ベルら待機地点
69 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/10(水) 17:41:30.66 ID:PFrSjBIhO







何度か、「自分はいったい何者なのか」と考えたことがある。

私と同じ名を冠する存在は、現在ドイツ国内に29人いる。彼女たちは名前だけでなく、容姿も、髪型も、服装も、声も、身長も私と同じだ。まるで工場で作られたおもちゃの兵隊のように、“私”は規格に則って“生産”された。

私に個別の名前はなく、配備No.09が他の個体と区別するために付与された。私は母の胎内ではなく、艦娘の“核”を展開できる特殊な液体プールの中で目覚めた。

もし私が死んだとしても、多少貴重と言うだけで代わりがいないわけではない。

一方で、29人の「私」は全員が別々に喜怒哀楽を有し、別々のタイミングで感情を発露する。

好きなものも、嫌いなものも、嬉しいと感じることも、悲しいと感じることも、29人全員がそれぞれ違った形で持っている。

私たちは全ての個体が別々に、嬉しいと、ムカつくと、哀しいと、楽しいと感じる。

整備士と愛を育む“私”もいれば、提督と恋に落ちる“私”もきっといる。かく言う私は同じ鎮守府に勤めるビスマルクお姉様一すzゴホンッ、ゴホンッ!!

結局私たちは、
兵器なのか。
人間なのか。

夜寝ようとする時に、平穏な海をただ眺めるだけの退屈な哨戒任務の時に、無心でお昼ご飯を口に運んでいる時に、この哲学的な思考はしばしば私の思考の隙間に沸いて出た。当て所ない考察が脳内を埋め尽くし、最終的に結論の出ない堂々巡りへと落ち込んでいく。
70 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/10(水) 17:45:06.93 ID:PFrSjBIhO

この哲学的な迷宮に迷い込んだとき、私は大抵自分が“艦娘”だと定義して無理やり結論づける。

兵器でも人間でもない、その合間の存在。

ハーケンクロイツの下では果たせなかった「ドイツに住まう人々を護る」という使命を、もう一度与えられた存在。

人間でも兵器でもいい、私は“艦娘”としての使命を果たすだけだ。そう言い聞かせて、答えのない問いに蓋をする。

何より、それは私の本心でもあった。自身が「モノ」と「ヒト」の狭間に揺れる曖昧な存在であっても、課せられた使命が崇高であることは変わらない。

この使命のためなら、“兵器”として命を捨てることも厭わない。




────そう、本気で思っていたはずなのに。

  _
(#゚∀゚)「ユーロファイター部隊より通達!爆撃実行、なれど敵損害極めて軽微!敵は未だ強固な抵抗力を有するとのこと!!」

(#゚д゚?)「ハナから期待はしてないさ!!

プリンツ、レーベレヒト!市街地に突入するぞ、後続しろ!」

「Jawohl!!」

「っ、や、Jawohl!!」

今の私───Prinz Eugen-09の胸の内にあるのはそんな高尚な使命感ではなく。

「死にたくない」という、無様な願望だけだった。
71 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/10(水) 17:46:18.78 ID:PFrSjBIhO
第五波投下完了。時間遅れた上大変短くなりまして申し訳ありません。
本日深夜第六波投下予定です
72 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/11(木) 00:50:58.90 ID:Tww0axjQ0







その知らせは、確かに待ち望んだ内容だ。だから、故に俺たちはすぐには信じられなかった。

(=;゚ω゚)ノ「………増援?」

「はいっ、高層観測班よりの報告です!」

目を丸くして問いただすイヨウ中佐に、テントに駆け込んできた下士官は興奮気味に頷く。飛び込んできた当初は「ドイツ語でぉK」状態だったので、これでもまだ落ち着いている。

(;'A`)「誤報や見間違いじゃないのか?」

「いえ、間違いありません!V-22 オスプレイの編隊が、ベルリン南西の複数区画に降下中です!それから、ユーロf

台詞の末尾は、近づいてくる超高音にかき消される。

ジェリコのラッパなんて目じゃない、音速を悠々と超えていく最新鋭戦闘機のエンジンだけが奏でる甲高い雄叫び。

('A`)「っ」

テントから飛び出すのとほとんど同時に、南の方で連続的に幾つかの火柱が立ち上る。

頭上を、突風を地上に残しながらカナード・デルタの特徴的な機影が駆け抜けていった。

ユーロファイター・タイフーン。EUが世界に誇る、マルチロール戦闘機。

ドイツ空軍のものであれ他のEU加盟国のものであれ、確かに味方機であることは間違いない。
73 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/11(木) 00:52:02.87 ID:Tww0axjQ0
「味方だ!味方の戦闘機だ!!」

「援軍だ、助けが来たんだ!!やった、やったぁああああ!!!!」

周りでは、予期せぬ“白馬の王子様”の登場で誰もが歓声を上げている。感極まって泣き出している奴も少なくない。

空の方でも、俺たちの存在に気づいたらしい。わざとらしく旋回して俺たちの真上で宙返りをしてみせると、ユーロファイターは再び悠々と南へ戻っていった。

周りの奴等はその姿を見ながら、なおも歓声や指笛を贈っている。

『オオアアアアアアアアアアッ!!!』

そして、ユーロファイターが帰還した後も南での戦闘音は止まらない。砲声、爆発音、非ヒト型の咆哮や断末魔が途切れることなく上がり続け、大規模な攻防戦が発生していることを示唆した。

('A`)「………」

観測班の見間違いではない、どれほど少なく見積もっても連隊規模の味方増援軍がベルリン南に展開を開始している。

俺はそこまで確認すると、再びテントへと駆け戻った。
74 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/11(木) 00:54:06.96 ID:Tww0axjQ0

ξ゚听)ξ「どうだった?」

指揮所に戻るや否や問いかけてきたツンに、地図を取り出しながら頷いてみせる。

('A`)「そいつと観測班の報告内容は正しい。確かに味方の援軍だ、それも最低で連隊規模。南の方で大激戦の真っ最中らしい」

「………うわぁああ!!!」

俺の言葉を受けて、報告者の下士官はディズニー映画のキャラクターのように跳び上がって叫ぶ。同じくテントの中にいた通信兵や将校達も互いに抱き合ったり脱力して座り込んだり、思い思いのやり方で喜びと安堵を露わにした。

まぁ、孤立無援と思われたところに友軍、それも空軍まで生き残っていたことが判明したんだ。この喜びようは無理もない。

本当なら、俺だって手放しで歓喜の輪に加わりたいところだ。

俺はペンを握りながら下士官の肩を叩く。

('A`)「V-22の降下した区画はどこか解るか?」

「……は?こ、高層観測班からはテンペルホーフ=シェーネベルク区、それからノイケルン区と聞いていますが」

('A`)「降下していたV-22に対して攻撃は?」

「ほ、ほぼありませんでした。事前にユーロファイターによる爆撃が相当規模で行われていたので、おそらくそのせいかと」

('A`)「おっ、そうだな」

下士官の言葉に適当に相づちを打ち、報告内容にあった区画に印を付ける。次いで、そのままドイツ全体の地図をその上から広げた。

('A`)「イヨウ中佐、オスプレイの配備基地は?」

(=゚ω゚)「僕らドイツ軍が正式に配備している機体はないよぅ。ただ、深海棲艦との戦争に合わせて“借用”の名目で利用権利がある機体はビューヒェルとレヒフェルトにそれぞれ数十機ずつあるよぅ」

('A`)「………ビューヒェル、B-61弾頭の事も考えれば騒動初期段階で間違いなく南に全力で逃げてるな」

(=゚ω゚)「大隊規模の増援が出せる戦力の収容、かつユーロファイターが未だ投入可能となれば間違いなく増援は南から来てるよぅ」

('A`)「でしょうねっと」

地図上にペンを走らせ、ビューヒェルとレヒフェルト、そしてレヒフェルトとベルリンを線で結ぶ。

………あぁ、やっぱりか。

書き込みを終えた地図を見て、疑念は確信に変わる。

('A`)「罠だ」

ξ゚听)ξ「罠ね」

(=゚ω゚)「罠だよぅ」
75 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/11(木) 00:58:48.21 ID:Tww0axjQ0
「なっ……」

下士官が絶句し、他の面々も静まりかえる。

だが、俺とツン、そしてイヨウ中佐の見解は見事に一致してしまった。

(=゚ω゚)ノ「どう考えてもこの2区画に無抵抗に友軍の降下を許すのはあり得ないよぅ。特にノイケルン(Neuk?lln)区は」



ξ゚听)ξ「深海棲艦がこっち側へ攻め込む主要経路が横っ面を張られる形になるわね、下手したら奴等の前線が縦に分断されるわ」

加えて肝になるのは、降下した味方の数が“たかが大隊規模でしかない”という点だ。

('A`)「一応聞くがV-22に装甲戦力を空輸していた機体は?」

「………確認する限りでは、見られませんでした」

('A`)「となると、増援に間違いなく艦娘が含まれてるな」

南から増援を寄越した指揮官が脳みその代わりに牛糞が頭につまってでもいない限り、“たった1000人強の歩兵”を深海棲艦はびこる市街地に投入などただの集団自殺と変わらない事は理解できるだろう。

ただし、ベルリンがこの有様にも関わらず今までどこからも艦娘が来ていないことを考えると、ヴェルヘルム=スハーフェンの司令府を初め北部の主要な艦娘駐屯地は動きを封じられたか壊滅している。自然、南に逃げ延びて友軍と合流し、かつそのまま奪還作戦に参加できる艦娘となれば自然と数は大きく制約される。

('A`)「投入された艦娘は10隻あるかないか、しかも現段階ではこれが最大戦力と見て間違いないな」
76 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/11(木) 01:09:26.51 ID:Tww0axjQ0


ここまで考えれば、自ずと深海棲艦の狙いも見えてくる。

奴等は既に、ベルリンの“陥落後”を見据えている。

ξ゚听)ξ「首都防衛餌にして唯一の脅威である艦娘の残存部隊つり出して殲滅、しかる後各個撃破ってところかしら?

えげつない戦法とるわねあいつら」

('A`)「この作戦を考えた奴が相当性格悪いのは間違いないな、少なくとも」

だが、お生憎様だ。

(=゚ω゚)「────さて、それじゃ。敵の狙いも解ったことだし」

性格の悪さと狡賢さに関しては、年期が違う。

(=゚ω゚)ノ「そろそろ、ペイバックタイムとしゃれ込むよぅ」

ξ゚听)ξ「「了解!」」('A`)

さぁ、反撃開始だ。
77 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/11(木) 01:10:40.79 ID:Tww0axjQ0
第6波投下完了。
二波合わせて今までの1波くらいの長さになってしまいました。
明日から4連休なので、また長さも戻る予定です

ご静聴ありがとうございました。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/11(木) 01:50:16.80 ID:Dd+nAVKu0
乙です。

顔文字がここまで効果的なSSって初めてだ。
すげぇ。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/11(木) 13:04:29.68 ID:w/SjFl/mo
乙です 作者様軍事系詳しい人なん?
>>78顔文字っていうよりブーン系という一ジャンルやで
良かったら検索してみて
80 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/12(金) 01:37:48.02 ID:cHXotTvn0





雨と共に降り注いでくる敵の砲弾が、そこかしこに突き刺さって炸裂する。

火柱が吹き出し、建物が崩れ落ち、地面が揺れる。

街に立ちこめる、硝煙と土煙の匂い。

それらはとりもなおさず、今私が「戦場にいる」ということを実感させた。

(;><)「敵艦砲射撃、来たんです!!」

(#゚д゚ )「足を止めるな!!行け行け行け!!」

頭上をまた1発、砲弾が飛び去っていく。背後で上がった大きな爆発音に竦みかけた足を、歯を食いしばって無理やり動かす。

『オオアアアアアアアアアアッ!!!』

唐突に、150メートル程向こうで古びたアパートが一つ崩れ落ちた。瓦礫を踏みしめながら現れたのは、オタマジャクシの足に無理やり深海魚の身体をひっつけたような、黒光りする歪な化け物。

『アァアアアアアアアッ!!!』

駆逐イ級は、此方を見てサイズだけなら列車砲ほどもある大きな図体を震わし、威嚇するように咆哮した。

「っ」

その耳障りな声に、私の足は再び棒になる。

( <●><●>)「正面、駆逐イ級後期型1体。砲塔はまだ格納中」

(#゚д゚ )「出すまで待ってやる必要はない!パンツァーファウスト!!」

  _
(#゚∀゚)「Jawohl!!」

先頭を行く妙に目力が強い分隊長───ミルナ=コンツィ陸軍中尉の叫び声に応じて、対戦車携行砲を構えた二人が隊列から躍り出た。
  _
(#゚∀゚)「Feuer!!」

『ウォオオオオオオオンッ!!!?』

イ級の鼻っ面に、2発のロケット弾がほとんど同時に直撃。イ級はガラスを引っ掻いたような音の叫び声を上げて仰け反る。
  _
(#゚∀゚)「レーベ、行け!!」

「Jawohl!!」
81 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/12(金) 01:40:09.34 ID:cHXotTvn0
怯んだイ級に向かって飛び出したのは、私と同じ警備府に所属するZ1───駆逐艦娘のレーベレヒト=マースだった。

彼女は12.7cm連装砲を胸の高さに構えつつ、姿勢を低くしてイ級に向けて弾丸のように突っ込んでいく。

「Feuer!!」

『ア゛ア゛!!?』

150メートルの距離を更に半分まで詰めての砲撃。私たち艦娘からすれば目をつぶってでも当てなきゃいけない超至近距離だ。砲弾は先ほどジョルジュ少尉達が攻撃した箇所に寸分違わず命中。

火花が散り、イ級の強固な外殻が砕けて白くぶよぶよした肉繊維が黒煙と共に露出した。

( <●><●>)「Los Los Los」

(#><)「Weiter Feuer!! Weiter Feuer!!」

『アアアァアア………』

大きな損傷を負ったイ級に、間髪を入れず今度はアサルトライフルによる弾幕射撃が浴びせられる。

勿論幾ら中破状態とはいえ、深海棲艦の装甲や耐久に対して歩兵の小銃でトドメを刺すなんて不可能だ。

ただし、火線は悉く眼の付近に集中し、イ級の視界を奪いにかかる。

『オォ、アァアアァァァ………』

ミルナ中尉達の巧みな連携に反撃すらままならないイ級は、どうやら“戦略的撤退”を試みたらしい。

遭遇当初の威勢の良さはどこに行ったのか、弱々しい鳴き声を上げて黒煙が吹き出す身体を引きずりながらきびすを返す。

当然、その動きは遅すぎる。

「───Feuer!!」

レーベは既に、ティーマス軍曹とビロード軍曹の牽制射撃の合間に、距離を残り10メートル足らずまで詰めている。彼女は右手の連装砲と、背負っている艤装の両端に備え付けられた10cm高角砲を同時に起動した。

『オァ゛ア゛ア゛ッ!!?』

間近から放たれた“艦砲射撃”。巨体が爆圧で浮き上がり、まるでクリケットのボールのように飛翔する。

ぐしゃりと音を立てて、道脇の家屋に叩きつけられる。

崩れ落ちた瓦礫の下敷きになったイ級は、そのまま二度と起き上がらなかった。
82 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/12(金) 01:42:20.02 ID:cHXotTvn0
「っ!!」

敵の撃破に、歓声を上げる暇なんてない。レーベはすぐに表情を険しくすると、その場から後ろに飛び下がる。

先ほどまで彼女が立っていた位置に、巨大な拳が叩きつけられた。
  _
(;゚∀゚)「レーベ!!」

「大丈夫、避けました!!損傷ありません────っと!!」

今度は砲撃。再び彼女は跳び、爆風による衝撃を着地ざまに地面に転がって逃がす。

私たちの足下まで転がってきたレーベを、ティーマス軍曹が手早く助け起こした。

( <●><●>)「損傷状況を」

「深刻な損傷はない!まだ戦えます!」
  _
(#゚∀゚)「そいつぁ上等だ────お客さんのお出ましだぞ!!」

ジョルジュ少尉の注意喚起の声に応じるように、新たな敵は右手───さっきイ級が現れたのと反対方向の家屋を突き崩して私たちの前に立ち塞がる。

まず眼を引くのは、大きさも形もてんでんばらばらな三つの頭。首から下には胴体や足がなく、太くて白い、ぬらぬらと気持ちの悪い光沢を放つ図太い腕が二本伸びて頭部を地面から持ち上げている。
どの頭部にも眼はついておらず、代わりにおおよそ8メートルほどの高さから私たちをにらみ据えるのは頭頂に備え付けられた連装砲とあごの横に盛り上がった魚雷発射管だ。

『ウゥオオオオオ………』

出来損ないのケルベロスのような形をした深海棲艦、軽巡ト級は本当に犬が威嚇するように私たちに向かって低く唸る。

なんとなく、仲間のイ級が轟沈したことに対する、怒りと悲しみを露わにしているようにも見えた。
83 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/12(金) 01:47:21.81 ID:cHXotTvn0
  _
(#゚∀゚)「Feuer!!」

『ォオオオォオオオ』

私たちを吹き飛ばすべく発射態勢に入った砲塔に、ジョルジュ少尉たちが放ったロケット弾が3発相次いで命中する。大きなダメージこそ与えられなかったようだけど、暴発や照準のぶれを嫌ったのかト級は砲撃を取りやめて爆発から逃れようとするように身をよじる。当然のことながら、その動きは大きな隙を生む。
  _
(#゚∀゚)「プリンツ!!」

「ふ、Feuer!!」

合図に合わせて艤装の上側、SKC 20.3cm連装砲2門を起動。ト級の中央頭部めがけて放つ。

『グォウッ!?』

「くっ……」

右舷の砲撃は外れ、すぐ傍の民家の屋根を吹き飛ばす。左舷の砲撃は命中し、奴は衝撃でよろめき蹈鞴を踏んだ。

だけど、明らかに浅い。損傷具合で言えば、小破に行くか行かないか。

( <●><●>)「ト級、損害有りもなお健在、未だ戦闘能力を有しているの解ってます」

(#゚д゚ )「ジョルジュ、もう1発お見舞いしてやれ!!」
  _
(#゚∀゚)「言われずとも!! Feuer!!」

(#><)「小銃一斉射、奴の腕に火線を集中!動きをせめて封じるんです!!」

『オオォオオオッ!!!』

三回目のロケット弾は向かって左手の頭部に命中。間を置かずアサルトライフルの弾丸もト級の腕で弾ける。ト級は鬱陶しげに頭を振りうなり声を上げるけれど、効いているようには見えない。

(;><)「ターゲット、効果的なダメージは見られず!行動抑制効果も薄いんです!!」
  _
(;゚∀゚)「やっぱ戦車がないとキツいかクソ………おぉっ!?」

『ガァアアアアアアッ!!?』

“真下”から撃ち上げられた砲撃が、突然ト級の頭部を跳ね上げる。完全に予想していなかった箇所から攻撃を受けたト級は、後ろに大きくよろめいた。バランスを崩し手をもつれさせて、家屋を巻き込みながら地響きと共に転倒する。
84 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/12(金) 01:48:44.91 ID:cHXotTvn0

「よし、どうだ!!」
  _
(*゚∀゚)「ッヒュゥー!やるねぇレーベちゃあん!!」

前のめりに倒れ込んできたト級の巨体を避けながら、いつの間にか再び隊列から飛び出していたレーベは小さくガッツポーズをしている。手に持っている連装砲が小さく煙を上げているところを見ると、今の一撃はト級の懐に飛び込んだ彼女によるものなのだろう。

「プリンツ、今だ!!」

「う、うん!!」

レーベの合図に併せて全ての砲塔をト級に向ける。

至近距離、転倒して身動きがとっさに取れない相手、地上のため足場も安定。

これで外したら、私は恥ずかしさと情けなさのあまりBismarck姉様の胸に顔を押しつけて窒息死する事を選ぶ。

「Feuer!!」

『ガッ………』

4門、一斉射。砲撃は起き上がりかけていたト級の中央の頭を跡形もなく吹き飛ばし、両側ニ頭の凡そ半分ほどの面積を抉り取る。

ズンッ、と重い音を立てて再び崩れ落ちたト級は、そのまま完全に機能を停止した。

(;><)「敵艦の機能停止を確認───敵艦砲射撃、再び来るんです!!」

(;゚д゚ )「伏せろぉお!!」

……立て続けに2隻の敵艦を撃沈したっていうのに、深海棲艦の奴等は私たちに余韻に浸る僅かな暇すら与えてくれない。

ぬかるむ地面に身を伏せた私たちの前後、それぞれ20メートルも離れていない位置に飛翔音と共に砲弾が突き刺さる。

巨大な爆発。
降り注ぐ泥。
地面から身体に這い上ってくる震動。

………私の歯がやたらかちかち鳴っているのは、きっと地面が砲撃で揺れたせいだ、そうに違いない。
85 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/12(金) 01:51:54.50 ID:cHXotTvn0
(#゚д゚ )「損害、損傷報告!!」

( <●><●>)「全員無事です。分隊に欠員なし」

「レーベレヒト=マース、損傷無し!」

「プリュ、プリ、プリンツ=オイゲン、損傷ありません!!」

(#゚д゚ )「HQに現状を報告したい!ジョルジュ、通信を繋げろ!」
  _
(#゚∀゚)「もう無理ですよ中尉!!既に五分ほど前からベルリン市外への通信は全部隊が通じていない模様です!深海棲艦の妨害区域に入ってます!!」

眉g、ジョルジュ少尉はそれだけいうと罵倒を吐き出しながら地面を蹴った。近くにいたレーベが、びくりと一瞬肩を震わせる。
  _
(#゚∀゚)「あのクソッタレの鷲鼻野郎!!何が“この区画に突入すれば事態が好転する”だよ!!このままだと全滅を待つだけだぞ!!」

(#゚д゚ )「落ち着けジョルジュ!!ラインフェルト大佐の命令はお考えがアッテのことだ!!」
  _
(#゚∀゚)「あぁそうだな!!21世紀のマンシュタイン様にはさぞや大層な深謀遠慮があるんだろうよ!!

ところでその深謀遠慮の結果俺たちは現在進行形で死にかけてるわけですがね中尉!!」

(;゚д゚ )「っ……」

……あまり学があるとは言えない私でも、ジョルジュ少尉が私とレーベをミルナ中尉の部隊に配属したあの鷲鼻の陸軍大佐の作戦に怒っているのは理解できた。

そして、はっきり言うと私も同じ気持ちだった。
  _
(#゚∀゚)「機甲師団なし、空軍の支援は効果希薄、東部に展開しているであろう友軍は正確な規模不明!!この上本部とは通信が繋がらねえ状況下で待ち伏せていた敵の十字砲火に晒されてると来た!どんな深謀遠慮だか、楽しみすぎて涙が出てくるよ!!」
86 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/12(金) 01:54:35.23 ID:cHXotTvn0
深海棲艦の神出鬼没ぶりに対抗するためアメリカから大量に輸入されたという、最新鋭の高速輸送機に乗せられて私たちはベルリン南部に空から突入した。

戦力は、私とレーベを含め戦闘能力を残した状態で南に逃れることができた艦娘8人。そして、ミルナ中尉ら陸軍歩兵1200余名。

深海棲艦は、私たちが南部に完全に展開しきるのを待ち構えてから区画を包囲封鎖。前衛攻撃・足止めとして非ヒト型のホ級やイ級、ト級を投入しつつ周辺から壮絶な艦砲射撃を開始した。

“艦娘が八人”とは言っても、その中にはBismarckお姉様もグラーフさんも1隻もいない。重巡プリンツ=オイゲンですら、私一人だけ。

他の艦娘は、レーベレヒト=マースが3隻とマックス=シュルツが4隻。

ル級やタ級といった“戦艦”に包囲されている現状を打破するには、火力も数も足りない。

この状態が続けば、多分私たちはまともな反撃ができないまま1隻残らず全滅する。肉薄して至近での砲撃戦に持ち込もうにも、非ヒト型が間断なく投入されてくる現状だと仮にたどり着いたとして弾薬も燃料も残らない。

少なくとも私には、あの大佐さんが立てた“作戦”はただの手の込んだ自沈命令にしか見えなかった。

( <●><●>)「今は、言い争っている場合ではないことは解ってます」

今にもつかみ合いをはじめそうなミルナ中尉とジョルジュ少尉の間に、ティーマス軍曹がそっと割って入る。軍曹は二人を引きはがしながら、私の方をちらりと見た。

( <●><●>)「中尉、少尉。正直な話、貴方方が言い争いをしている間に敵の砲撃が私たちを吹き飛ばさなかったのは奇跡です。すぐに移動しましょう」

( ゚д゚ )「……そうだな。総員、一先ず西に移動しろ!敵に位置を把握されている可能性が高い、砲弾の飛翔音に気をつけろ!」

( <●><●>)「プリンツ=オイゲン、貴女が水偵を装備しているのは解ってます。退却であれ進撃であれ、敵の現状を確認しなければなりません。

可能ならば飛ばしていただけませんか?」
87 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/12(金) 02:05:52.98 ID:cHXotTvn0
「あっ、はっ、はい!!」

ティーマス軍曹に声をかけられ、私は我に返る。ミルナ中尉達に小走りでついて行きながら、懐からAr-196改を取り出して左手の艤装に装着。【Helm】や【Ball】の機影がないことを確認して、空へと向ける。

「お仕事だよ、お願いね!」

機内の妖精さんに軽く声をかけ、機体を空へ放った。

「………あの、軍曹、お手数なんですけれどしばらく手を握って私を先導していただければと」

( <●><●>)「えぇ、かしこまりました」

「Danke、では────」

ティーマス軍曹に手を引かれながら目をつぶり、私の「意識」をAr-196に乗る妖精さんの「意識」に重ねる。

途端、瞼の裏しか見えない状態の筈の私の眼は、空へと駆け上がっていくAr-196のコックピットからの景色を映しだした。

(………やっぱり、酷い有様だ。街が、こんなに滅茶苦茶に)

空から見たベルリンは、“無事なところ”を探す方が遙かに難しかった。瓦礫の山と化した区画、無数の炎が飲み込んでいる区画、黒煙に包まれて何も見えない区画…………そして、たくさんの死体が積み重なっている区画。どこもかしこも、見られるのは深海棲艦による“破壊”の跡だけだ。

(………っんぷ)

一瞬こみ上げてきた吐き気を、無理やり喉から押し返す。

今は吐いている暇はない。まず敵の状態を偵察、逃げ道か打開策か、とにかく何か見つけないと────





.
88 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/12(金) 02:23:28.73 ID:cHXotTvn0
「……………ミルナ中尉!!!!」

(;゚д゚ )そ「うおっ!?」
  _
(;゚∀゚)そ「わぁこっち見んな!?」

自分でもびっくりするほどの大声が、喉から迸った。私はティーマス軍曹から手を放すと、一目散にミルナ中尉の下に駆け寄……ろうとして、足がもつれて転び頭から水たまりに突っ込んだ。

………おかしいな、私巷じゃ船だった時代のせいもあって幸運艦なんて呼ばれてるんだけど。

「ちょっ、プリンツ大丈夫?」

思い切り鼻の頭をぶつけた痛みで立ち上がれない私に、ミルナ中尉とレーベが呆れた様子で駆け寄ってくる音が聞こえる。

( ゚д゚ )「……」

その足音は。

「………」

遠くから聞こえてきた“砲声”によって、止まった。
  _
( ゚∀゚)「………」

深海棲艦の、ル級やタ級が放つ“艦砲射撃”とは明らかに異質な、少し“軽い”と感じる響き。

(;><)「………」

キャタピラーが瓦礫を踏みしめながら道を進んでいく音を同時にこだまさせつつ、確実に此方へ近づいてくる幾つもの轟音。

「────中尉!!!」

ようやく鼻の痛みから復活できた私は、地面から身を起こして中尉の袖を掴み、叫ぶ。







「市街地東部にて大量の戦車隊を有する友軍部隊が突貫!!深海棲艦の包囲網に対して攻撃を開始しています!!」
89 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/12(金) 02:24:08.95 ID:cHXotTvn0
第七波ここまで。
ご静聴ありがとうございました。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/12(金) 10:04:56.53 ID:2w4OLa5mO
なんでドックンまだ少尉なんや……

乙です。めっちゃおもろい
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/12(金) 12:20:26.58 ID:t9rKSQ9A0
おつおつ
ちょいちょいはっちゃけてるプリンツがw
絶望的な状況でも、折れない精神で部隊を引っ張れるミルナ中尉も凄いなあ…

>90
異例の二階級特進を蹴ったから、エルファシルの英雄として祭り上げられたヤン・ウェンディみたく政治利用されない自由もあると言うか
92 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/12(金) 15:54:51.54 ID:cHXotTvn0




(`∠´)「士官学校時代の私は、とんだクソガキでね。

“連邦軍始まって以来の神童”なんて周りから煽てられた結果、鼻持ちならない自信家になって全ての人間を見下していた」

ベル=ラインフェルトは椅子に深く腰掛けながら、唐突にそんなことを語り出した。

彼の眼前には、北部の混乱からなんとか逃げ延びレヒフェルト基地に集った三軍の将校達が集まっている。

ベルの立案した「無謀な作戦」に物申すために司令室に詰めかけた彼らは、誰もが唖然として椅子に座り懐かしげに微笑む彼を見つめている。あまりに絶望的な状況にとうとう気が狂ったのではないかと、本気で訝しんでいる者も少なくない。

(`∠´)「そういえば、以前の同期達とは今すっかり会わなくなってしまったな。この騒動が終わった暁には、是非彼らと酒でも酌み交わして」

「大佐ァ!!」

あまりに場違いな物言いに、遂に一人が声を荒げて机を殴りつけた。ペン立てが震動でひっくり返り、中身をぶちまける。ベルはその光景に、小さく眉をひそめた。

(`∠´)「落ち着きたまえ君、物が壊れたらどうしてくれるんだ。

君もドイツ連邦陸軍の少佐として、もう少し思慮を深く持ちなさい」

「何を落ち着けと言うんですか!!」

食い気味に反駁した海軍少佐は、北方沿岸部の警備府で提督をやっていた。深海棲艦と前線で渡り合った経験もある若く有能な人材だったが、利権争いに明け暮れる上層部と衝突した結果辺境に左遷されたというなかなか激しい経歴の持ち主だ。

彼から見れば、今この瞬間目の前に悠然と座っている鷲鼻の陸軍大佐は何者よりも許しがたい悪徳に他ならない。
93 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/12(金) 15:56:38.82 ID:cHXotTvn0
「市内に突入した友軍から、電波妨害圏内に入る直前深海棲艦による待ち伏せ攻撃を受けたとの報告がありました!!

現在強襲部隊は包囲下で全滅の危機にあると思われます!!一刻も早ぐ……う゛っ……」

提督の言葉は、後半涙に呑まれてまともな声にならずかき消える。

ドイツ領の端の端に勤務していた彼に部下として配備されていた艦娘は、Z3 マックス=シュルツただ1隻。苦楽を共にした彼女は今、ベルの命令により首都強襲部隊の一角に編入され深海棲艦による十字砲火の直中にいる。

ベルへの怒りと安否不明となった部下に対する思いは、最早彼の許容量を超えていた。

「大佐、何度も申し上げました通りやはりこの作戦は無謀だったのです」

机にすがりつくようにして泣く提督の後を、空軍中佐が引き継ぐ。彼はベルから聞かされた作戦概要を見たときに、最後まで強硬な反対を続けている。

「レヒフェルトからベルリンまでの凡そ500km、敵からの強襲がないわけがない。

仮に強襲・対空迎撃がなかったとすれば、それは間違いなく向こうの罠だ………正直、大佐ほどの方が解らないはずがないと信じていました」

彼の口調は静かだが、語尾に走る震えが内に秘めた怒りの大きさを表している。

「大佐……私は貴方の名声と実績を信じて最終的に作戦を託した2時間前の自分を射殺したい気持ちです」

(`∠´)「………」

「1200人の優秀な陸軍士官と8人の艦娘を、希望的観測ありきの死地に追いやる………これが、今の我々にとって、否、世界にとってどれほど背信的な行為かおわかりですか?」
94 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/12(金) 16:00:56.07 ID:cHXotTvn0
50機近いV-22を動員した大規模空挺強襲……言葉だけを聞けば威勢が良いが、内実は1200人の歩兵を化け物に制圧された市街地に降下させたに過ぎない。

深海棲艦に対抗し得る戦力である“艦娘”にしても、僅か八人、しかも戦艦も空母もいない。

もし海の上ならば、駆逐艦と重巡にも魚雷攻撃という一撃必殺の切り札があった。だが、今回は内陸に敵の侵攻を許した上での陸上戦闘だ。主砲の火力差は、そのまま彼我の戦力差に直結する。

はっきり言って、道中で襲撃を受けて追い返されたり激烈な対空砲火によって市街地への着陸がならず帰投したという話になれば寧ろドイツ軍にとってマシだった。
少なくとも通信もままならない市内に引き込まれての包囲殲滅という考え得る限り最悪の、それも比較的容易に想像がつく事態よりはよほど収拾も立て直しも効く。

そして、ベルがそれらの不利を覆し作戦を強攻する理由として挙げたのは、根拠不明の「ベルリン市街地の残存友軍戦力の存在」だった。

「旅団規模の友軍が市街地東部を占拠し防衛線を展開している可能性が高く、おそらく機甲戦力も有しているこの友軍と連携すれば十二分にベルリンを奪還できる………こんな、こんな荒唐無稽な推測を“ベル=ラインフェルトが言うことだから”と最終的に真に受けた私がバカだった!!!」

最早空軍中佐も、感情の昂ぶりを抑えきれずに激昂する。

確かに、ベルリン以南への南下速度が極端に遅い理由を「中枢たるベルリンが未だ制圧できていないから」と考えること自体は論理的だ。戦車道博覧会の警備を行うために機甲戦力が駐屯しているのは事実なので、もしかしたら戦車や戦闘車両も生き残っているかも知れない。

だが、仮に警備隊や機甲戦力が生き残っていたとしてそれが“ベルが言うとおりの規模”だという確実な証拠はどこにもない。また万歩譲って旅団規模の味方とやらが奇跡的に生き残っていたとして、彼らが突入部隊と連携できるとも限らない。

何せ、ベルリンは敵の電子戦によって通信途絶中だ。援軍の存在すら事前に知らせていない中で、瞬時に状況を把握して即応できる人材がベルリンにいるとは到底思えなかった。
95 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/12(金) 16:10:56.34 ID:cHXotTvn0
「大佐、今からでも遅くはありません。ユーロファイターを総動員して爆撃を敢行すれば、包囲網を崩すとまでは行かなくても強襲部隊への十字砲火を鈍化させることは十分に可能です!その間にV-22で再び彼らを回収すれば、最低限貴重な艦娘戦力の損失は避けられます!!」

空軍中佐は身を乗り出し、眼を見開いてベルに詰め寄る。

彼の視線には、軍の垣根を越えて一刻も早く死地にいる友軍を救いたいという強い思いしか宿っていなかった。

「大佐、首都を救いたいというお気持ちは解ります!!しかしこればかりはどうか、どうか今すぐに中止を!!」

(`∠´)「………」

形振り構わず、額が机に着きそうな勢いで中佐は頭を下げる。

ベルは、眼を細めて彼をしばらく見つめ………

「………っ!!」

机を開けると、爪切りを取り出して手の爪を削り始めた。

「大佐、大佐!!貴官……正気かお前はぁ!!!」

「落ち着け!!………大佐、今はふざけているときではないのです!いい加減友軍の救援を!!」

腰の拳銃に手をかけた提督を抑えながら、陸軍少佐がもう一度声を上げる。

提督を止めてはいたが、彼も最早我慢の限界が近いことは明白だ。彼の右手も今にも腰のホルスターに手を伸ばしかねない姿勢で痙攣しており、あと一つ何かきっかけがあればベル=ラインフェルト陸軍大佐は味方の「誤射」によって命を落とすことになるだろう。

(`∠´)「さっきの話に戻るが、私は士官学校時代完全な天狗だった。

図上演習では特に本当に敵無しでね。視察に来た将軍方をお相手したときは、わざわざ自軍に不利な場面設定をした上で叩きのめし面と向かって皮肉を浴びせてしまったほどだ」

だが、彼はそんな空気を意に介さずに昔話を再開した。
いよいよ激怒した将校達を眼で制しながら、訥々と語り続ける。
96 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/12(金) 16:27:25.42 ID:cHXotTvn0

(`∠´)「そんな私を、一人だけ負かした奴がいてね。

いやぁ、アレは本当に苦い薬だったよ。何せ今私が将軍方に対して行った設定と同じ内容で、しかも私が優勢側で戦って負けたんだ。

手も足も出ない完封だった」

当時の悔しさを思い出したのか、ベルの視線がすっと細まる。

口元が不満げに尖っているのを見ると、未だに「苦味」は残っているようだ。

(`∠´)「その後何度も新しい作戦を考案し、何度もあらゆるシチュエーションで演習を挑んだ。だがその都度、私は手もなく捻られてね。

ふん、アイツのすました顔は今でもたまに悪夢に見るよ。今この瞬間も、奴さんは神経質な早口で部下に捲し立ててるんだろうさ」

「……ラインフェルト大佐、その話が今の我々の現状と何の関係が」

(`∠´)「その、唯一私の鼻っ柱をへし折った男は今、ベルリンにいる」

「………は?」

唐突に放たれた一言に、更に詰め寄ろうとした陸軍少佐の動きが止まる。

ベルは、机の上に一冊の冊子を置き、あるページを開いて指さした。

ベルリン戦車道博覧会のパンフレットの最後のページ。そこには、当日の会場警備を担当する陸軍将校の名が書かれている。

(`∠´)「君らの言っていることは、本来正論だ。

ベルリンに旅団規模の残存戦力がある、希望的観測だ。

東側は友軍が確保している、そんな保証はない。

我々の意図をくみ取り残存友軍は動いてくれる、作戦というのも烏滸がましい下らない言い草だ。

だが、彼がいるなら話は別だ」





(`∠´)「───イヨウ=ゲリッケが指揮を執っているなら、全ての事情が変わる。

間違いなく在ベルリンドイツ軍は私の予想通りの形で戦力を残し、間違いなく彼はこの罠の最中に飛び込んだ増援の意図を読み取って動く。

これは希望的観測でも楽天的妄想でもない、【イヨウ=ゲリッケ】という存在に基づいた明確な“事実”だ」
97 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/12(金) 16:28:17.72 ID:cHXotTvn0
第八波ここまで。
第九波は深夜投稿予定
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/12(金) 16:30:38.82 ID:OHo8f9ikO
なんだこの戦場英雄しかいねぇ。

99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/12(金) 19:28:37.15 ID:kbN0yqeHO
フリードリヒ1世「祖国の危機と聞いた。ワシも加勢するぞい」
100 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/13(土) 00:49:26.54 ID:pE2iAJdj0





《パンコウ区、全部隊の再編成完了。

車両、全て問題なく稼働。いつでも戦闘に移れます》

《トレプトゥ=ケーペニック区、ポイントK-1より指揮車。戦闘編成を完了。迫撃砲も設置しました》

《リッテンベルグ、後方支援班。現在把握している避難市民の地下施設への収容を完了。ただし、依然ベルリン市外・ドイツ国外との通信は不能。市外への避難誘導は不可能です》

《高層観測班より前線指揮車、強襲部隊は引き続き深海棲艦の包囲下で十字砲火に晒されている。長くは持ちそうもない。

また、他の区画における非ヒト型に大きな動きなし。位置情報の更新はない、オーバー》

('A`)「前線指揮車より高所観測班。情報提供を感謝する。引き続き敵の動向を注視せよ、オーバー」

《了解、監視に戻る。アウト》

一連のやりとりを終えた俺は、エノク上部の機銃座でもう一度ベルリン市街の地図を広げる。

イヨウ中佐のように軍事キチガi明晰な頭脳を持っていない俺は、考えた作戦を丸ごと頭に入れるなんて人外行為はできない。たった20分の作戦会議の中で、地図はメモ書きと矢印で隙間無く埋め尽くされている。

('A`)「………本当に、無理ゲー三昧だな今日は」

味方増援部隊に向かって放たれる艦砲射撃の轟音を聞きながら、俺は今日何度目か解らない深いため息をついた。

………どうでもいいけど、ベルリン大聖堂はちゃんと破壊しろよあの深海魚共。
101 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/13(土) 00:53:02.47 ID:pE2iAJdj0
(=゚ω゚)ノ《CPより前線指揮車、現状を知らせるよぅ》

('A`)「指揮車よりCP、全区画攻勢部隊の編成を完了。また、当区画においても戦闘態勢は万端、後は作戦開始を待つのみです。戦車隊、状況は?」

ξ゚听)ξ《いつでもいけるわ。全車両、状況オールグリーン》

《プーマ戦闘車、1号車から6号車まで異常なし。システムオールグリーン、戦闘に支障ありません!》

入ってきた報告に、少しだけ、本当に小指の先ほどだが気持ちが軽くなった。

プーマとレオパルト1はどちらもこの作戦の肝であり、そうでなくとも俺たちが深海棲艦に損害を与えられる数少ない保有兵器の一つだ。機器の不調で一両が機能を落とすだけでも、とてつもない痛手になる。

こんな換算がクソの極みであることを理解した上であえて言うなら、歩兵と警官隊が1000人吹き飛ばされるよりもプーマが一両破壊される方が俺たちにとっては遙かに大きな痛手になる。

('A`)(………ウツダシノウ)

ξ゚听)ξ《…………あの、ドク?》

(;'A`)そ「ひやぅっ!?」

机の上でコマと数字を動かして戦争をした気になっている、上層部のクソ野郎共みたいな思考が過ぎった自分への自己嫌悪に思わず気分が沈み込む。
どの自決方法が一番苦しまずにすむかと真剣に考えてしまった結果、無線から飛び込んできたツンの問いかけに年端もいかない小娘のような悲鳴が喉から飛び出した。

「…………クップププ」

(*;'A`)「………あー、ツン、どうした?」

「あ痛っ!?」

赤面と共に無線を手に取りながら、運転席を蹴飛ばす。エノクの運転手が恨めしげに此方を睨んできたが、無視。上官侮辱罪じゃ上官侮辱罪。射殺されなかっただけありがたく思え。

('A`)「………まさかと思うけど故障が発覚したとかやめてくれよ。もしそうならすぐにも作戦の変更を」

ξ;゚听)ξ《そこは安心して頂戴、例え急ピッチのチェックでもフランス戦車道の名にかけてどんな異常も見逃さないから。

そうじゃなくて、戦車隊の指揮は本当に私でいいの?私フランス人なのよ?》
102 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/13(土) 00:57:14.62 ID:pE2iAJdj0
('A`)「は?……あぁ、なるほど」

一瞬質問の意味を理解しかねたが、ついさっきの作戦会議(といえるような内容は時間の問題でできていないが)の様子を思い出して納得する。

俺とイヨウ中佐はおろか、他の部隊指揮官やレオパルト1の乗組員達まで満場一致で戦車隊の指揮官代理を任されたことに戸惑っているようだ。まぁ、本来の指揮官まで手放しで喜びハグまでやってたのは俺も少し驚いたが。
それにしても、派閥争いの誘いを突っぱねて国外に飛ばされる程度には図太い神経のくせに変なところで気が小さいな。

思わず漏れた笑いが無線に入らないように、慌てて咳払いで誤魔化した。

(=゚ω゚)ノ《もっと自信を持って欲しいよぅ。これは君の実力を正当に評価した上での配置だから、誰も君のことを悪く思うことはあり得ないよぅ》

イヨウ中佐が、彼にしては静かな口調でツンを諭す。語尾が僅かに震えているのを聞くに、彼もツンの自己過小評価におかしみを覚えたのかも知れない。

(=゚ω゚)ノ《リスボンでの君の戦車乗りとしての手際は、マントイフェル少尉の作戦指揮同様僕たちの間でも高く評価されてるよぅ。

ましてや、ベルリンに配備されていたレオパルト隊はほとんどが新兵。寧ろ、君の深海棲艦との戦闘経験は戦車隊の運用に無くてはならないものだよぅ》

ξ゚听)ξ《……》

《そうですよ中尉!!もう少し自信を持って下さい!!》

ξ;゚听)ξ《わっ》

中佐の台詞の後に続いて、戦車隊の乗り手の一人が声を上げた。
そしてそれを皮切りに、彼女たちは次々にツンに向かって思いの丈をぶちまける。

《私たちはドイツ軍人ですけれど、同時に中尉と同じ戦車乗りでもあるんです!中尉が優れた戦車乗りであることを、私たちはよく知っています!》

《祖国を、戦友を、国民を護るためには下らないプライドなんか必要ないです!中尉、私たちを勝利に導いて下さい!》

《ドイツ戦車道の団結力をお見せ致しましょう!私たちは、皆中尉のいかなる命令にも従います!!》

ξ*゚听)ξ《……皆》

《例え抱かれろと命令されても、私たちは喜んd……謹んでお受け致します!!》

ξ゚听)ξ

………ん?
103 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/13(土) 00:59:24.17 ID:pE2iAJdj0
《おい1号車ふざけんな!お姉様と同じ車両だからって抜け駆けすんなや!!》

《はっはっはっざまぁwwww!ゲリッケ中佐に“一番練度が高い”って評価受けた結果だぜwwww!?文句は自分の腕前に言うんだなぁ!!》

《3号車より指揮車!1号車に砲撃許可を、砲撃許可をぉおおおおお!!!》

《ざっけんな3号車お姉様にも傷つくだろうが!!》

えっ、何思いの丈ってそういう方向?待て、この戦車隊って全員ソッチの趣味?

《ツンお姉様hshs!!ツンお姉様hshs!!》

《ツンLove!!ツンLove!!》

《私、この作戦で生き延びたらお姉様に抱いて貰うんだ………》

('A`)「これは酷い」

(=゚ω゚)ノ《これは酷い》

やだ………ドイツの戦車道終わってる………

ξ゚听)ξ

ξ゚听)ξ《前線指揮車並びにCP、至急ツン=デレ中尉の配置転換を具申します》

('A`)「……クソッ、深海棲艦のジャミングか!?ツンの声がまるで聞こえないぞ!!」

(=゚ω゚)ノ《なんてことだ、レオパルト1の1号車だけ通信が途絶えたよぅ!!奴等なんて高度な電子戦を行うんだよぅ!!》

ξ;゚听)ξ《いやぁああああ!!!!》

………ツン、強く生きろ。

あと、安心しろ。だいたいの男はそういうの嫌いじゃないから。
104 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/13(土) 01:16:00.60 ID:pE2iAJdj0
《────高層観測班より指揮車並びにCP、深海棲艦主力部隊が南方の友軍増援部隊を完全に包囲!!敵主力艦隊の集中展開完了を確認!!》

('A`)「………!」

ξ;゚听)ξ《っ》

(=゚ω゚)ノ《………いよいよかよぅ》

和気藹々とした(約一名除く)、戦場に似つかわしくないやりとりがその報告を聞いて終わりを告げる。

敵主力部隊の展開。それは、俺たちの作戦が遂行されるための最後の材料が揃ったということだ。

空気が、張り詰める。眼前の味方を一刻も早く助けたいという信念と、死にたくないという生への執着。恐怖と勇気とがない交ぜになって、誰もが表情を硬くする。

(=゚ω゚)ノ《───Achtung!!》

張り詰めた空気の中で、イヨウ中佐の声が無線越しに響く。

(=゚ω゚)ノ《東街区に展開する、全ての部隊に伝達!これより我々は、友軍増援部隊の救援とベルリン市の奪還を目指して反転攻勢へと移る!

敵は強大であり、この作戦はきっと困難を極める、多くの犠牲者も出る!!そしてはっきり言って、成功するという確実な保証もない!》

中佐の声からは、再び震えもどもりも消えていた。決して大きな声ではないけれど、朗々と、はっきりとした口調で俺たちに語りかける。

(=゚ω゚)ノ《僕は、君たちに「死んでこい」と今から命じるクソ野郎だ!だが優秀な兵士であり、警官であり、人間である君たちは、クソ野郎な僕の命令に従う必要は微塵も無い!

名誉なんて必要ない、誇りなんてかなぐり捨てろ!そして何としても生き残り、僕に向かって中指を突き立てて眉間に風穴でも開けてやれ!!》

張り詰めた空気が熱される。語られる言葉に誰もが高揚し、武器を握る手に自然と力がこもる。

(=#゚ω゚)ノ《名誉の死も、英雄的な働きも、奇跡的な生存も、僕は君たちに求めない!!ただ君たちが、最後まで“人間”としての責務と生を全うすることだけを望む!!》

(=#゚ω゚)ノ《君たちの任務はただ一つ!!

化け物共に、目に物見せてやれ!!》

《《《Jawohl!!》》》
105 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/13(土) 01:20:14.76 ID:pE2iAJdj0
(=#゚ω゚)ノ《────Angriff!!》

イヨウ中佐の号令が、無線を通じて全ての部隊に伝わる。

それを、合図として。

ξ#゚听)ξ《Panzer vor!!》

(#'A`)「Los Los Los!!」

4000人の“人間”が、“化け物”に向かって攻撃を開始した。
106 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/13(土) 01:51:05.82 ID:pE2iAJdj0

《アルジャジーラの取材に対して中東主要国の外交部は、深海棲艦がヨーロッパから流入してくる可能性について国の枠組みを超えた対策が必要だと共通の認識を表明しています》

《イタリア政府は先ほど、ドイツ領南方のレヒフェルト空軍基地と連絡がついたと発表。現在艦娘戦力を含めた増援部隊の派遣に向けて軍の編成を開始しているとのことです》

《ロシア連邦政府は、ヨーロッパ全域の失陥を防ぐためには熱核攻撃も辞すべきではないと談話を発表。常任理事国のアメリカ、イギリスは反対の意と併せて強い不快感を示していますが、中国政府はロシアの地政学的な事情を考慮すべきだと二国を牽制しました》

《フランス政府首脳は深海棲艦のパリ到達を防げなかった場合に備えて、政府機能の移転先を模索中です。また、国土全域が陥落した場合の亡命先も選定を開始したとの噂がTwitterに流れ、フランス国内は各地で暴動と混乱が相次いでいます》

《現在デンマークはほぼ全土が深海棲艦の襲撃を受け、通信が完全に途絶した状態になっています》

《イギリス国防省は、ドイツ・フランスの失陥による深海棲艦の総攻撃に備えて近隣海域を封鎖したと発表しました。イギリス海峡には現在クイーン・エリザベスを旗艦とした空母機動艦隊と艦娘のウォースパイトが展開し、厳戒態勢を敷いています》

《茂名官房長官は先ほど緊急記者会見を開き、ヨーロッパにおける在留邦人の保護とポルトガル政府からの要請を理由とした欧州特派部隊の編成に入ったと発表しました。

この部隊は赤城、大和ら艦娘を中核とした戦力になる予定ですが、韓国、中国、北朝鮮は帝国主義の復活であると日本のこの動きに反発を見せています》

《ホワイトハウスより第六艦隊とヨーロッパ各空軍基地、更に艦娘サラトガによるドイツ本土への共同攻撃作戦を発動したと公式発表がありました。既にイギリス・レイクンヒース空軍基地よりF-15E並びにF-15C/Dが発進、間もなく北部ノルデンを中心に第一次攻撃が行われる模様です》
107 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/13(土) 01:52:25.04 ID:pE2iAJdj0
第九波投下完了。
第十波はお昼頃。

ようやく折り返しになります。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 02:03:45.82 ID:fswy4AZRO
乙。

今気づいたけどミルナ中尉が当たり前のように中尉でワロタ
ミルナも昇進蹴ったんやな。上司の鑑
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 02:12:51.18 ID:SWGa9P4vo

こんな状況でも政治ゲームやってる人類ってやっぱ糞だわ
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 02:15:35.75 ID:JRRBCFFA0
おつおつ
あんまりにも酷いけどちょっと和んだw

やっぱ死地の中で活路を見いだしたり、名声に劣らない活躍を見せつけられれば、現場に立つ身として心強いよなあ…
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 02:34:53.96 ID:JRRBCFFA0
>>109
生きるか死ぬかの存亡をかけた局面だからこそ、政治を中心に国が一丸とならないと悲惨な目に合うから、国と国民が最優先な立場では間違いでは無いかと
ただでさえ手に負えない敵戦力に加え、祖国をズタズタにされて散り散りに逃げる避難民まで…なんて状況次第だし

ただし私怨に近い露と、頓珍漢な特亜は論外w
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 03:26:12.29 ID:d86RLKd/0
オットー大帝「乙じゃ」

フリードリヒ大王「大儀である」

ビスマルク首相「おつおつ」

テオドール・ホイス大統領「その調子」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2017/05/13(土) 07:10:25.69 ID:ewjSMP4A0
乙ですよぅ(イヨウ風)
ブーン系おもしれー
ただドクの休暇、消えてね?


これ片付いたら、休暇倍になったりしてwww

114 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/13(土) 16:38:22.59 ID:pE2iAJdj0








《空中管制機【Angel-Ring】より全機、状況を報告せよ》

《Dragon-01よりAngel-Ring、当編隊は全機オールグリーン。戦闘に問題なし》

《此方Boxer-01、全機問題なく飛行中。腹に子供を抱えてるんでね、しっかりエスコートを頼むぜ》

《Witch-01よりBoxer-01、あんたのそれは妊婦じゃなくて悪性腫瘍だろ?》

《おい、口を慎めマーニー》

《慎むのは二人共だ、私語をやめろ。

Falcon-01よりAngel-Ring、全機異常なし》

《よし、Angel-Ringより全機に伝達。我々はこれより、ドイツ北部沿岸奪還作戦の一環としてルール地方への爆撃を敢行する。

我々の目標は、ドイツ連邦軍の管理下にあった艦娘艤装製造工場の破壊だ》

《BoxerよりAngel-Ring、そんな真似をしたらドイツだけじゃなくフランスやイギリスも黙ってないんじゃないか?ドイツの艤装製造技術は図抜けてる、コマンダン=テストやウォースパイトにも必須の筈だが》

《南方のドイツ残存軍司令から、イタリアを経由して既に正式に依頼が為されている。

通信途絶から10時間が経過し、最早製造工場は間違いなく占拠されている状態のようだ。敵になんらかの形で利用される可能性も否定できない以上、破壊するのが得策という判断らしい》

《ついでに言うと合衆国政府の判断とも一致している、と?》

《あぁ、既にトソン大統領は攻撃命令に署名済みだ。ジェントルマン諸君、人間様を嘗め腐った化け物共に存分に爆弾の雨をプレゼントしてやれ》

《《《Yes sir!!》》》

.
115 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/13(土) 16:40:02.43 ID:pE2iAJdj0
《大佐、第六艦隊より通信!サラトガ-05、サラトガ-07が艦載機隊を発艦、レイクンヒースの航空隊と連携してノルデン地方への攻撃を開始したとのことです!》

《サラトガ-06よりルール地方制空部隊が発艦、問題なく該当空域に侵入したとのことです。

深海棲艦艦載機と接敵、交戦中の模様》

《よし、これで深海棲艦の艦載機・護衛機はある程度抑え込める。全機、あと5分で作戦空域だ。心してかかれ》

《Dragon-01, Roger.

しかし深海棲艦の奴等、何が楽しくて陸なんかに上がってくるんだ?》

《Witch-01 Roger.

聞いた話だと、深海棲艦共は艦娘同様ヒト型は女を模した奴しか確認されていないらしい。セックスでもしに来たんじゃないのか?》

《Boxer-01, Roger.

はっ、海の中だが男日照りってか?なんなら俺のレミントンでヒーヒー言わせてやりたいぜ》

《Falcon-01, Roger.

………マーニー、ジェイムス、お前らがよく女に振られる理由が今よくわかったよ》

《おいFalcon-01、先にお前を撃ち落としてやろうか?》

《対地攻撃機で制空機にドッグファイト挑む気かバカ。あと四分だ、そろそろ見える頃か?》

《此方Dragon-01、目標地点を視認した────おい、Angel-Ring、本当に地点座標はここであってるのか?》

《………。そのはずだ》

《一体何だありゃ?黒い………あぁ、クソ、何て言えばいい?とりあえずろくでもない代物なのは確かだが》



《───要塞、か?》
116 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/13(土) 16:41:43.63 ID:pE2iAJdj0

《地表、物体周辺に膨大な数の非ヒト型深海棲艦を確認。また、ヒト型も多数展開している模様です。

少なくとも深海棲艦の拠点であることは間違いありません》

《通信途絶から10時間しか経ってないはずだよな!?一体何が起きたんだ!?》

《とにかく今は我々の仕事をこなすだけだ。全機、攻撃態勢を────》

《………おい、何か上がってきてるぞ?》

《黒い……鳥………?》

《────レーダーに反応!所属不明の機影が接近!迎げk

《!? Angel-Ring、応答しろ!Angel-Ring!!》

《Negative!! Angel-Ring down!! I repeat, Angel-Ring down!!》

《Enemy attack coming!! All unit, Break!! Break!!》
117 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/13(土) 16:47:58.99 ID:pE2iAJdj0
《クソッタレ、なんだこいつら!?》 《Ahhhhhhh!!?》
   《Doragon-3, one hit!!》
《Falcon-04、回り込め!援護しろ!》    《後ろに着かれた、振り切れない!》
  《Fox-2! FOX-2!》      《撃ってきやがった!!》
《Falcon-03 Lost!!》
  《Mayday Mayday Mayday》《何なんだよこいつら、速いぞ!!》
《八時方向から新手だ!!》《爆撃隊、退避しろ!!》
《Shit, Boxer-01 down!!》    《Falcon-01, Bogy behind you!! Break!! Break!!》
  《Help me…!!》
118 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/13(土) 16:48:42.52 ID:pE2iAJdj0




《Jesus………!!》



.
119 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/13(土) 16:57:53.04 ID:pE2iAJdj0







.
120 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/13(土) 17:04:31.55 ID:pE2iAJdj0







.
121 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/13(土) 17:05:18.72 ID:pE2iAJdj0






「生き残る種とは、

最も強いものではない。

最も知的なものでもない。

それは、変化に最もよく

適応したものである」

「チャールズ・ダーウィンの有名な言葉だ」

「これは、我々人類の歴史そのものを表した言葉と言っても過言ではない。

我々は常に進化と進歩を続け、他の種族に対して圧倒的優勢を作り出すことによって栄華を極めてきた」

「だが、進化とは人類の特権的な存在ではない。

全ての生物は、常に進化を続けている。人間は単に、その速度が少しだけ速かったに過ぎない」

「そう、“我々だけの特権”ではないのだ。

いつから錯覚していた?敵は進化をすることがないと。

いつから勘違いしていた?この戦争は代理戦争であり、標的は狩られるだけの存在でしかないと」





( ФωФ)「深海棲艦は進化している、我々人間との“生存戦争”に勝利するために。

このことにいち早く気づき、同じように“進化”を始めることができた国家だけが、この戦争に勝利するのである」
122 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/13(土) 17:06:06.99 ID:pE2iAJdj0
第十波投下完了。
次の投下は深夜に
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 19:51:51.74 ID:Sl8DliJA0
おつ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 23:46:29.73 ID:WxxJCFMio
一見快進撃に見えて何一つ好転してない戦いは見てて面白いね
125 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/14(日) 02:09:16.09 ID:uN3uvxTa0











OM642?270?6気筒ディーゼルエンジンが咆哮し、車体は身震いするように揺れ続ける。降りしきる雨が、猛スピードで疾走する車体を濡らし続ける。

狸(Enok)なんて可憐な相性とは裏腹な、獰猛極まりない排気音をまき散らしながら四台のLAPV軽装甲車は瓦礫だらけのベルリンの街を駆けていく。

(;'A`)「……っ」

優雅なドライブ……なんて言うにはほど遠い乗り心地だ。
上層部に半ば押しつけられたものとはいえ、バカンス中に味わいたいものではない。

いや、そもそもバカンス中とかは関係なく。

『────ォオオオオオオオオ!!!!』

(;'A`)「右手に非ヒト型確認!回避行動!!」

「Jawohl!!」

おぞましい化け物を相手取った命がけのカーチェイスなんて、いつどんなときだって御免被る。
126 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 02:10:26.40 ID:uN3uvxTa0
ほんの100メートルほど先にこんもりと小山のように盛り上がった、黒い巨大な塊。立ち並ぶ家の隙間から赤い眼がぎょろりと此方を睨み、塊はおもむろに周りの建物を突き崩しながら身体を起こした。

角張った頭部にくっついている丸みを帯びた白い胴からは、用途不明のケーブルのようなものが伸びて尾まで繋がっている。見るからに怪物然とした巨躯とは不釣り合いな、ちょこんと張り付いた飾りのような脚がかえって奴の姿をより醜悪に仕立て上げる。

イ級と違って剥き出しの、僅かに端が上がった口はまるで俺たち人間を嘲笑っているかのようだ。

《駆逐ロ級後期型、eliteを視認!》

(#'A`)「そのまま走行を続けろ!射撃を開始する!!」

運転席に向かってそう叫びながら、銃座を回転させ照準を奴の鼻っ柱に向ける。

(#'A`)「Feuer!!」

引き金を引く。ラインメタルMG3が火を噴き、7.62mm?NATO弾が凄まじい勢いで銃口から吐き出された。

『オオオオオオンッ!!!』

毎秒19発という頻度で放たれる機銃弾の雨は、しかしながら生ける戦艦の皮膚を貫くには役者不足にも程がある。

表皮で弾ける火花は奴さんに痒みすら与えていないらしく、ロ級は無機質な眼で此方を見据えながら口を開いた。

主砲が、顔を覗かせる。

('A`#)「右に曲がれ!!」

《了解!!》

『ウオオオオンッ!!!』

俺の叫び声、エノクのタイヤが雨に濡れた路上を滑る音、ロ級の吠え声、そして主砲の発射音が順に響く。間一髪で右手の路地に飛び込んだ俺たちのほんの5メートル後ろで、砲弾が炸裂してコンクリート片が舞い上がった。
127 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 02:14:43.11 ID:uN3uvxTa0
《うっひぃ、スリル満点!!》

そのまま路地を疾走する俺たちに向かって、2発、3発とロ級の追撃の砲火が降り注ぐ。そこかしこで炸裂して破片をまき散らす砲弾に、運転席からは恐怖と(理解しがたいことに)歓喜が入り交じった声が聞こえてきた。

《いいねぇいいねぇ滾ってくるねぇ!!人類を滅ぼそうとしてくる化け物達と、祖国の存亡を巡ったカーチェイス!最ッ高だね、まるでハリウッドの超大作映画だ!!あっひゃひゃひゃ!!!》

('A`;)「おい運転手!その神経の図太さは頼もしい限りだが興奮のあまりハンドル操作ミスなんて勘弁してくれよ!!よりによって指揮車両が作戦開始早々にアボンなんて洒落にならんぞ!!」

《おぅおぅ、だーれに物言ってんだい少尉殿!!このあたしがそんなヘマするわけないだろっての!!》

あからさまに箍が外れた口調での返答と共に、運転席から此方に向かって中指を立てた右手が突き出された。

ふざっけんなこの状況下で片手運転なんて冗談じゃねえぞ!!

(*゚∀゚)《ドイツ陸軍一の美少女走り屋、ツー=アハッツ様のハンドル捌きィ!!深海棲艦ごときに捉えられるかっての!!あひゃひゃひゃひゃぁ!!!》

(;'A`)「美少女まるで関係ない───うぉおおおっ!!?」

ツーがひときわ激しくハンドルを切り、雨に濡れた路上でエノクがコマのように一回転して進路を真逆に転換する。

予想進路に放たれていた何十発目かの砲弾がアスファルトに突き刺さり、爆発で車体が少し浮き上がった。
128 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 02:16:22.30 ID:uN3uvxTa0
(*゚∀゚)《あっひゃひゃーーい!!》

《オオオオオォッ!!!》

そのままツーは再びアクセルを踏み込み、エノクは先ほどまでと逆方向に疾走する。此方の動きを予想していなかったらしいロ級は苛立たしげに叫んだ後、もう一度此方の予想進路へと照準を合わせ始めた。

完全に、隙だらけの動きだ。

('A`#)「停車!!総員展開!!」

(*゚∀゚)《あいあいさー!!!》

「「「Jawohl!!」」」

軽いドリフト共に急停車したエノクの車内から、同乗していた四人が転げ落ちるようにして路上に飛び出す。

彼らは素早く起き上がると、ロ級eliteに背負っていた筒を向けた。

('A`#)「Feuer!!」

『オア゛ッ!?』

4発のロケット弾がロ級めがけて飛翔し、間抜けに開らかれた大口にその内3発が飛び込む。

『ア゛

上がりかけた断末魔を掻き消し、閃光と轟音が迸る。

ロ級の巨躯が、内側から爆炎に貫かれて砕け散った。

「ロ級elite、轟沈を確認!!」

「よっしゃぁ!!ざまぁみろ深海魚野郎!!」

('A`)「喜んでる暇ないぞ、死にたくなかったら乗り込め!!」

今にもハイタッチでも始めそうな兵士達を、水を差す形にはなるがとっととエレクの中に引き戻す。

無論、俺も高揚を覚えていないわけではない。注意を引きつけられれば万々歳の攻撃だっただけに、内蔵弾薬への誘爆に伴う轟沈は“最高の計算外”だ。

だが、当然のことながらこの大戦果は、

《高層観測班より前線指揮車、其方に向かってホ級通常種三体と駆逐イ級通常種一体、elite二体、それからへ級一体が進撃中!!》

('A`;)「情報提供感謝、移動を急ぐ!」

良くも悪くも、奴等の目を引くことになる。
129 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 02:20:30.54 ID:uN3uvxTa0
《総員搭乗完了!》

(;'A`)「よしツー、発進を………おっふ!?」

(*゚∀゚)《あっひょ!!》

左手20メートルほどのところに、砲弾が落下した。つーか運転席うるせぇ。何なの今の気が抜ける奇声。

『ウォオオオオオオンッ!!!』

('A`;)「お早いデリバリーだなクソがっ!!」

姿こそ立ち並ぶまだ無事な建物や瓦礫の山に隠れて見えないが、割と近くから例の胸くそ悪い咆哮が聞こえてくる。
単に俺たち人間に対する威嚇なのか或いは仲間がやられた怒りと悲しみなのか、まぁとりあえず俺たちにとってあまり喜ばしくないものが含まれていそうな響きだ。

爆発の小ささから考えて今の砲撃はイ級通常種だろうか。とにかく一秒でも早く移動した方がいい。

(#'A`)「予定通り作戦を続行する!このまま西進しろ!」

(*;゚∀゚)《あいよ、おおおおっとおおお!!?》

('A`;)「ウボァッ」

発進した直後に頭上から迫る車大の瓦礫塊。崩れてきた4階建ての小ビルから逃れるためにハンドルが左に切られ、俺の身体は不快なGに圧迫され潰れた蛙のような声を出す羽目になった。

『アアアアアアアアッ!!!』

(#;'A`)「っ、いい加減見飽きたぜてめえのツラはよぉ!!」

ビルの残骸を押しつぶしながら此方に迫る、軽巡ホ級。こみ上げてきた吐き気を無理やり嚥下し、頭部と砲塔に向かって機銃を掃射する。

『ヲォオオオオオオッ!!!』

ダメージはどうせ全くないだろうが、それでも砲塔への攻撃はあまり心地の良いものじゃなかったようだ。

ホ級は鬱陶しげに機銃掃射を左手で防ぎつつ、右手を握り込み俺たちに向かって振り下ろす。

(#'A`)「行け!!」

(*゚∀゚)《はいなぁ!!》

エンジンが唸り、車体が加速する。

迫る拳を潜り抜け、狸は再び駆けだした。
130 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 02:23:32.73 ID:uN3uvxTa0
『オオォ────アアアァッ!!?』

走り出した此方に向かって、背中の砲を向けるホ級。だがその真上から、弧を描いて飛んできた砲弾が突き刺さる。

『ア゛ア゛ッ!?ア゛ア゛ア゛ッ!?』

砲撃は1発では終わらない。2発、3発、4発と途切れることなくホ級を襲う。砲塔、頭部、腕、また砲塔といった具合に、身体のあちこちが爆炎に焼かれる。

『オア゛ッ』

砲撃の飛来箇所を確かめようとでもしたのか、不用意に振り向いたホ級の左肩に120mm迫撃砲弾が突き刺さり、半ばまで埋まった後に炸裂する。

『グア゛ッ……』

腕が千切れ飛び、ぶよぶよとした肉片がそこら中に散乱した。ホ級は道路に投げ出されるようにして倒れ伏し、そのままぐったりと動かなくなった。

《迫撃砲陣地より前線指揮車、支援砲火を敢行した。効果の程を求む》

('A`)「前線指揮車より砲兵隊、敵艦は機能を停止したと思われる。支援を感謝する、引き続き前衛を援護されたし。オーバー」

《了解した、アウト》

('A`)「……さて」

最早二度と此方に砲を向けてくることはなくなったホ級の屍から眼を離し、南側の様子を伺う。

腹の底に響くような砲撃の嵐は、激しさを増し続けている。おそらく、増援部隊の展開区画は地獄の様相だろう。

一方イヨウ中佐達が展開する東側に対しては、全くといっていいほど攻撃は向けられていない。曲がりなりにも機甲戦力と火砲を保有している部隊なワケだが、深海棲艦はどうやら艦娘つぶしに全身全霊を傾ける腹づもりらしい。

それだけ、深海棲艦にとって艦娘とは脅威であり逆に人間はとるに足らない存在というわけだ。

('A`)(まだまだこっちを振り向いてくれないか、つれないね。

だがまぁ、それなら振り向いてくれるまでアプローチをするだけだ)

俺は、イヨウ中佐に通信を繋ぐ。
131 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/14(日) 02:33:57.68 ID:uN3uvxTa0



.
('A`)「前線指揮車よりCP、他の軽装甲車隊による陽動の進捗を伝えられたし」

(=゚ω゚)ノ《CPより前線指揮車、現在全車両が未だ健在。各区画にて非ヒト型深海棲艦の挑発誘導に成功しているよぅ》

イヨウ中佐の淡々とした戦況報告。それは俺たちの作戦が現状順調であるという何よりの証になる。

(=゚ω゚)ノ《我々東部軍への抑えとして展開していた非ヒト型は、続々と我々の対峙地点から引きはがされている状態だよぅ。

それと、君たちが撃破したものも含めて現時点で5隻の深海棲艦を撃沈、或いは戦闘能力喪失に追いやったよぅ》

('A`)「なるほど、現時点では中佐の読み通りに状況は推移していると」

(=゚ω゚)ノ《即ち、君の予想通りでもあるってことだよぅ》

………ミルナ中尉といいイヨウ中佐といい、過大評価はマンドクセェのでやめてほしいものだ。

('A`)「前線指揮車よりCP、此方は引き続き陽動にかかる。戦車隊の」

(*;゚∀゚)《────っ!!!》

('A`;)「機動攻勢準備を……うぅおおっ!?」

唐突に、ツーがハンドルを切る。車体が激しく右に流れ、振り落とされそうになった俺は慌てて銃座にしがみついた。

疾走する車体の真横を、機銃掃射が駆け抜けていく。

(;'A`)「っ!」

ハッとして空を見上げると、まさに俺たちの直上を風切り音を残して飛び去っていく影が三つ。

(;'A`)「避けろ!!」

(*;゚∀゚)《仰せのままにぃ!!》

三機の【Helm】は、猛り狂ったスズメバチのように下部の機銃を此方に向けながら猛然と降下してきた。

(*#゚∀゚)《せいっ!!》

火線が走った瞬間、ツーは急ブレーキを踏みながらエレクの車体を横に向ける。そのまま走っていれば運転席を貫くはずだった機銃掃射は、僅かに車体に届かない。

(#'A`)「逃がすかよ!!」

そのまま飛び去ろうとした編隊の背後に照準を重ね、MG3 ラインメタルの引き金を引く。

編隊最後尾の機体が火だるまになり、そのまま空中で四散した。
132 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 02:43:45.98 ID:uN3uvxTa0
(=;゚ω゚)ノ《CPより前線指揮車、どうしたよぅ!?》

(#'A`)「前線指揮車よりCP、深海棲艦艦載機部隊の襲撃を受けている!!」

ツーが再びエレクを発進させる中、俺はなおも空に向かって弾幕を放つ。攻撃態勢に入っていた残りの2機は一度散開して射線を交わしつつも、方向を変えて再度此方に向かってくる。

いや、奴等だけじゃない。他に右手と正面からもレシプロエンジンの音が近づいてくる。少なく見積もっても20機ほどが、俺たちに狙いを定めているようだ。

(;'A`)「前線指揮車よりCP!」

奴等が迫ってくる音を聞きながら、俺は……

(;'∀`)「陽動作戦、着実に成功中!!」

俺は、口元が綻ぶのを抑えきれなかった。

(*゚∀゚)《笑顔キモっ》

(=゚ω゚)ノ《笑顔キモっ》

('A`)「ここでその反応はおかしいだろ」

あと中佐はなんで見えてんだよ。
133 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/14(日) 02:59:28.01 ID:uN3uvxTa0
(;'A`)「っと、ふさげてる場合じゃねえ!!九時方向から敵機、回避運動!!」

(*#゚∀゚)《Jawohl!!》

不快な摩擦音を残してタイヤが濡れた路上をスリップし、殺到してきたHelmの銃火を躱す。横っ面に反撃の対空射撃を食らわせると、蜂の巣にされた一機が錐揉みしながら墜落し道脇の一軒家に突っ込んだ。

(=゚ω゚)ノ《CPより前線指揮車、陽動作戦中のエレク各車両から同様の報告多数!深海棲艦による航空攻撃が陽動部隊に行われているよぅ!!》

(#'A`)「前線指揮車よりCP、了解!」

イヨウ中佐からの報告を聞いて、群がるHelmを弾幕で振り払いつつ俺の胸は更に高鳴った。

未だに、主力艦隊は増援のみに火力を割いており此方への本格的な攻撃はない。

しかしながら、序盤の空襲失敗で大損害を受けているはずの航空部隊を出さなければ無視が続けられない程度には、奴等は俺たちを意識し始めている。

(#'A`)「前線指揮車よりレオパルト1並びにプーマ全車2通達!!」

ならばそろそろ、強引に此方を振り向かせるときだ。






(#'A`)「作戦をフェイズ2に移行、全車両深海棲艦主力艦隊への総攻撃を開始しろ!!」
134 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 03:00:41.68 ID:uN3uvxTa0
今回分ここまで。
次回投下は15:00〜16:00ぐらいに

ご静聴ありがとうございました。
また、数多の乙いつもありがとうございます。
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/14(日) 03:54:41.54 ID:RnDpdW75o

しかしなんだ前の話でも艦娘じゃなくて人類に手痛い攻撃をくらったのに深海棲艦はいまだ人類を舐めてるんだな
まあ舐められてるほうがドクオには都合が良いんだろうが
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/14(日) 12:44:25.43 ID:lupL9AmA0
おつおつ
トリガーハッピーに続いて極限状態に適した人材がw
それにしても指揮官先頭で戦果も稼いでる英雄なのに、ツン以上に自己評価が低いよな…野郎にもてはやされるのはごめんだろうけどw
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/14(日) 14:20:29.42 ID:lupL9AmA0
>>135
結局いつ・どこから・何を目的として、侵略者がどうやって仕掛けてくるか…ってのを人類側には未然に防げないからねえ
人類側も「いつも万全の状況で応戦できる」状態でなら互角以上に戦えても、無防備な所を完全な不意打ち・態勢の整わない状況で被害拡大…なんて事を繰り返せば深海側も成果があるわけだし

それに前回でも対応できなかった司令部に、前線を見捨てられて壊滅・戦力の消失により人類側の敗勢なんて局面すらあった訳だし(ドクの機転でギリギリ
結局「精強な軍隊」を持っていても「指揮する側」が無能だと持て余すどころか被害を増やすし、「有能な指揮官」が辣腕を振るっても「現場で動く側」が答えきれないと最良の結果にはならないし
そういう意味でも今の状況が奇跡的な上で、それでも後手に回ってる人類が絶望的でもある無理ゲーというw
138 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/14(日) 17:36:02.52 ID:uN3uvxTa0







“彼女”は、人間達に戦艦ル級という呼び名が付けられている種族の一人であった。

無論、そのことを彼女は知らない。そもそも彼女たちは個体はおろか種族を識別するような名前を持たず、また特に持つ必要も無かった。
彼女たちに“個人”が存在しないわけではない。だが彼女たちは、『全の意志』に全てを委ねることによってこの海の世に存在する全ての同胞達と解り合うことができた。そのため、“個”と“全”を区別する為のあらゆる事象を必要としなかったのである。

一応、『個の意志』を通して語ることで、特定の個体同士“のみ”での精神共有も可能ではあったが、そのような行為は彼女からすれば極めて非効率だった。

彼女が人間を殺すにあたっても、彼女自身には何の動機もない。
ただ、『全なる意志』が陸に上がる人間の廃滅を望んでいるためその意志に従事しているに過ぎない。そして、彼女自身はそうでなくても『全なる意志』は人間への強い憎悪を抱いていたため、自然彼女も人間を憎悪し、その抹殺を徹底する。

『全なる意志』がそれを望むのなら、彼女もまたそれを望み実行することが自然かつ効率的だからだ。
139 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 17:38:13.50 ID:uN3uvxTa0

一方で、『全の意志』から離れた“彼女個人”の見解を述べるなら、彼女は人間に対して何の感情も抱いてはいない。

“彼女”にとって、そして彼女以外の全ての同胞にとって、『全の意志』が人間と呼び抹殺対象に選んだ種族は脆弱に過ぎた。下級個体以外にとって人間の武器は彼女たちの脅威とはなり得ず、今は同様に抹殺対象にカウントされている【艦娘】が出現するまで彼女たちは人類に対して圧倒的に優勢だった。

彼女たちが艦娘ではなく人類の兵器と戦うときの心境は、言うなれば虫けらを見たときの人間とよく似ている。

害にはならないが、見ていても不快だ。だから、叩きつぶす。それだけの話。







『…………』

────だから、人間が操る鉄の砲車が瓦礫を蹴散らして眼前に現れたときも。

ξ#゚听)ξ「Feuer!!」

、、、、、、
その時点では。

彼女は単に、“全の意志”に基づく不快感と憎悪を露わにしただけだった。
140 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 17:39:12.99 ID:uN3uvxTa0
現状報告2

ベルリンにおける彼我の戦力展開状況




オレンジ太線:深海棲艦による増援部隊包囲陣

青線:在ベルリンドイツ残存戦力による防衛線

青矢印:ドクオ、ツンらの大まかな進撃路。北側がドクオ、南側がツン

赤矢印:深海棲艦側の攻撃方向
141 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 17:43:17.40 ID:uN3uvxTa0




放たれた砲弾は、寸分違わぬ狙いでその“人影”に直撃する。105mm滑空砲によるAPFSDS(対装甲貫通弾)なんて普通の生身の人間が食らえば生々しい断裂音と共に飛散してしまう代物だが、響いてきたのは分厚い金属の板にぶち当たったような、生々しさとはほど遠い高い音。

そいつの周囲に張り巡らされた、戦艦丸ごと1隻とほぼ同級の耐久力を持つと言われる不可視の障壁に砲弾がはじき飛ばされる。

ξ゚听)ξ「………流石に固いわね、カルシウム取り過ぎじゃない?」

ゆっくりと此方を振り向く戦艦ル級に向けて、私は苦笑いと共にそう呟いて見せた。

長く滑らかだが、化学繊維のような不自然な光沢を放つ黒髪。顔立ちも人間基準で見て普通に“美人”といって差し支えないけれど、ピクリとも動きやしない口元やヒト型のこいつらに共通した蝋のように白い肌のせいで作り物のマネキンにしか見えない。
此方をじっと見つめる青い眼も、まるでガラス玉のように無機質で不気味だ。

ただしそのあまり人間性が感じられない雰囲気故に、身体にぴったりとフィットして線を浮き立たせた黒い服はかえって妙な艶めかしさを感じさせる。
 _,
ξ゚听)ξ

………おい待て何だあの胸の膨らみ。あれ私より明らかにあるんだけど。どれだけ低く見積もってもDはかたいぞ。
おい化け物がしていいパイオツじゃないぞふざけるなその肉塊私に寄越せ。

ξ;;)ξ「フゥグッ!!!」

《隊長!?》

『!?』

25歳にしてAカップブラな自身の境遇に、思わず涙が吹き出る。

なんとなくだけど、ル級が少しだけ戸惑った気がした。
142 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 17:45:13.32 ID:uN3uvxTa0
ξ#;;)ξ「うぉおおお世界中の巨乳死ねぇえええええ!!!第二射ァあああ!!!」

『ッ!!』

八つ当たりの絶叫。レオパルト1の主砲が火を噴く。弾種は引き続きAPFSDS。

弾丸は再び障壁に弾かれ、まるで上から踏みつぶしたアルミ缶のようにぺしゃんこに潰れて地面に落下する。

大きなダメージを負った様子はないけれど、その攻撃で我に返ったように此方をにらみつけながら両腕の艤装を向けてくる。

ξ;゚听)ξ「全速後退!!」

《Jawohl!!》

水平射撃された砲弾が、斜め後ろに下がって射線を空けた私たちの眼前をすさまじい勢いで飛び過ぎる。

2、3キロほど彼方で、巨大な火柱が立ち上った。
143 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 17:56:08.81 ID:uN3uvxTa0
ξ#゚听)ξ「Feuer!!」

まさに「戦艦」の名にふさわしい圧倒的な攻撃力だが、ビビれば死ぬのは私たちだ。即座に砲塔を旋回させ、三発目を叩き込む。

ル級はこれを直立不動で平然と受けながら、再び艤装の狙いを定めてきた。

ξ;゚听)ξ「っ!!」

咄嗟に、機銃の引き金を引いて奴の顔面付近に弾幕を集中。戦車砲で貫けないものに7.62mm弾なんて撃ち込んだところで、当然ダメージなんて蚊に刺されたほども与えられないだろう。

『……!?』

だけど、障壁にぶち当たった弾幕は無数の火花を散らす。顔の周りに集中した射撃と激しくまき散らされる弾着の火花に視界を奪われたル級が、機銃掃射を避けるために艤装で射線を塞ぎにかかった。

ξ#゚听)ξ「前進!併せて砲撃!!」

《了解っと!

Feuer!!》

操縦手がアクセルを踏み込み、エンジンを唸らせながら私たちはル級に肉薄。20メートルもない至近距離から砲弾を叩き込む。

『────ッ!!』

ξ゚听)ξ凸「はっ、ようやくちょっといい顔したわね!」

ダメージ自体は大したことなくても、流石に超近距離から叩き込まれた戦車砲弾による衝撃は完全に殺しきれなかったらしい。

後ろに少しだけ仰け反ったル級は、態勢を立て直すと機銃座の私を睨んでくる。私は中指を突き立ててそれに応じた。

とはいえ、今姿勢を崩したのはあくまで着弾の衝撃によるもの。断じて効果的な損害を与えたわけではないだろうし、実際奴の動きには微塵もダメージは感じられない。

だけど、砲撃によるダメージは“極めて小さい”ものではあっても“皆無”じゃない。

APFSDSの貫通可能な装甲厚は、700mm。単純なスペック上の貫通能力だけで言えば、かの名高きバトルシップ・ヤマトの砲盾すら撃ち抜ける。

そう、実際にやろうとすればどれだけ気の遠くなるような時間がかかるとしても、私たちが“アンタ達を沈める力は持っている”。何発か攻撃受けて、あんたもその辺りは理解したでしょ?

流石に、カスダメとはいえ損害与えてくる相手がすぐ傍にいるのに悠長に援軍なんて相手にしてる場合じゃないわよね?
144 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/14(日) 17:58:41.68 ID:uN3uvxTa0


.

────さぁ。

『……………!!!』

《ル級、再び此方に照準!!》

ξ#゚听)ξ「発砲しつつ回避運動!

Feuer!!」

“艦娘”ばっかり気にかけてないで、たまには“人間”の方も見なさいな!!
145 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/14(日) 18:16:59.83 ID:uN3uvxTa0






(`∠´)「…………この報告は、間違いのないものか?」

「……………。あくまで、脅しの可能性はあります、100%とは言えません。

しかしながら、実際に政府談話も発表されている以上“可能性が極めて高い”と見るべき事象なのは確かです」

(`∠´)「…………」

「あの国が過激とはいえ、いくら何でもこんな馬鹿げた真似をするなんてあり得るか……!?

流石に信じられん、デマに決まっている!国際社会からも袋だたきに遭うぞ!絶対に、あり得ない!!」

(`∠´)「………あり得ないと言うことは、あり得ない」

「大佐……?」

(`∠´)「戦時において、“常識”、“秩序”、“良心”などという言葉は全て無意味だ。

そもそも考えて見たまえ、君たちは六年前のあの日まで、“海の底から現れた正体不明の化け物”と戦うことを一度でも想定したか?それこそ、六年前の君たちはそんなことを言われれば鼻で笑って肩を竦めたはずだ。

“常識的に考えてあり得ない”と」

「………」

(`∠´)「現在通信が繋がっている、国内外の全ての軍組織・政府組織に連絡を取れ。アメリカへのリーク許可は事後承諾で構わん、事は一刻を争う」

「はっ!内容は如何します!?」

(`∠´)「当然、一言一句違えずアメリカからの情報をそのまま、だ」






「『ロシア政府が、非公式にアメリカ合衆国へ以下の内容を通達した。

36時間以内に欧州における深海棲艦の制圧が為されない場合、ロシア軍は国家安全保障的観点からルール地方への戦略核兵器の使用を独断で実行する』とな」
146 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/14(日) 18:17:38.65 ID:uN3uvxTa0
投下完了。次はまた本日深夜〜明日未明予定です
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/14(日) 19:15:47.97 ID:RnDpdW75o

ただでさえ無理ゲーなのにタイムリミットまで増えるとは……
148 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/15(月) 02:37:40.22 ID:LXRvfH1A0





2011年10月、ソロモンアイランズ領ガダルカナル島近海で、オーストラリア海軍によって深海棲艦の【ヒト型】が初めて確認される。太平洋上で奴等と人類の本格的な「戦争」が始まってから、おおよそ二ヶ月が経過していた。

記録に残っている限りでは、彼らが遭遇したのは今日重巡リ級と呼ばれる存在2隻。何故文頭のような注釈が着くのかというと、報告到達から17分後に遭遇部隊は全艦船が通信途絶となり、交戦した敵艦隊の全容が判明しなかったためだ。

この重巡リ級の出現を皮切りに世界中の海洋で【ヒト型】が確認されるようになり、私たち人類は日本、アメリカ、イギリス、ロシアの4ヶ国を除いて一時的に世界規模で制海権を喪失した。全保有艦艇の95%が撃沈されたオーストラリア、空母遼寧を失った中国を筆頭に、文字通り海軍が「全滅」した国も決して少なくない。

《回避成功!車体運動に未だ支障なし!!》

ξ;゚听)ξ「とにかく砲撃は当て続けて! Feuer!!」

《Jawohl!! Feuer!!》

何故、これほどヒト型が人類を一方的に駆逐できたのか?

理由は当然幾つもある。単なる“潜水”だけなら戦艦や空母でも可能で、海とあればどこにでも出現することができる神出鬼没性。

イージス艦の薄い装甲など容易く粉砕する火力。

時として私たちの裏をかくこともある高い知力。

人間程度しかない大きさ故と、未だに正体が解析できていない特殊な電磁波の影響が相まってミサイルによるロックオンが不可能という技術的な事情。

主立ったものを数え上げていくだけでもこれだけのものが上げられる。

『ッ、ッッ!!』

《よし、直撃弾!!射線がぶれてます、ル級砲撃動作解除!!》

ξ#゚听)ξ「続けて撃て!! Feuer!!」

だけど、これらを備えた上でヒト型の最も厄介な点を述べるとすれば。

『…………』

《………ル級未だ健在》

ξ;゚听)ξ「……ほんっと、いやになるくらいタフねあんたたちって」

間違いなくそれは、戦艦と同等の【耐久力】だ。
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