('A`)はベルリンの雨に打たれるようです

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250 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/24(水) 00:26:13.86 ID:FI3x2H040
《深海棲艦の艦載機を、通常兵器でこんなに一方的に撃墜できるなんて……》

《Bismarckより前線指揮車………えーと、ドックン=メンドイフェルだっけ!?貴方海軍に来ない?きっとエーリヒ=レーダーも真っ青の提督になれるわよ!!》

('A`)「過剰極まりない評価をいただき痛み入るが面倒臭いので断る、それと人を勧誘する前にまず名前を正確に覚えて貰えると嬉しいね」

ひとまず、此方の突貫に“何らかの意図”を感じとり戦力を分散させてくれたのは大いに助かった。ミルナ中尉達を救援する際に、エノク部隊による攪乱が大きな戦果を挙げていたことがここで生きた。

たとえ全ての艦載機が殺到していたとしても撃退は容易かっただろうが、50機と80機とではやはり難度が大きく変わる。艤装温存の目的も平行しなければいけない以上、後方に温存している主力部隊の負担は爪一枚分でも減らせるなら減らす。

《Prinz Eugen、水上偵察機再度上げます!》

('A`)「了解した、頼む。

高層観測班、敵の動きを報告しろ!」

前段防御第一陣の早すぎる壊滅、全く損害を与えられぬまま失敗した空襲。

加えて、LAPV軽装甲車隊による電撃的な後方浸透の可能性の示唆。

軽巡棲姫が警戒するに足る材料はばらまいた。後は向こうが更なる安全策として、ここで防衛線を下げてくれると最高の展開になるが───

《高層観測班より前線指揮車に通達!敵前段防御艦隊、第二陣が一斉に東進を開始!此方に向かってきます!

更に第三陣、第四陣で発砲煙を複数視認!砲撃きます!!》

('A`;)「そりゃそう楽な相手じゃねえよなクソ!!全車曲がれ!!」

(*゚∀゚)《っひゅうう!!》

女の悲鳴のようなスリップ音と共にドリフトカーブを決めたツーが脇道に飛び込み、後続二台もこれに続く。俺たちが本来直進する予定だった経路に瞬く間に砲弾が殺到し、泥とアスファルトが十数メートルにわたって舞い上がった。

更に、砲弾の一部は俺たちの傍に着弾せず、頭上を飛び越えてより東へと飛翔する。

地鳴りのような爆発音が連なり、空気が震えた。
251 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/24(水) 00:27:50.81 ID:FI3x2H040
(;'A`)「前線指揮車より後方全戦隊・全拠点、被害状況知らせ!!」

《高層観測班より前線指揮車、命中弾無し!損害ありません!》

ξ;゚听)ξ《レオパルト並びにプーマ、全車損害無し!予備戦力てして待機中のLAPVも全て健在!》

《迫撃砲隊、全部隊移動完了していたため無事です!》

《Graf Zeppelinより前線指揮車、展開中の全艦娘点呼完了!損傷艦無し、損傷艦無し!》
  _
(#゚∀゚)《此方ジョルジュ=オッペル、部隊損害無しもベルリン大聖堂に直撃弾!ベルリン大聖堂は崩落した!》

凸 ('A`) 凸「や っ た ぜ」
  _
(;゚∀゚)《何故!?》

ξ;゚听)ξ《今そんな場合じゃねえだろ!!》

損害報告がないどころか、最高のGoodニュース付きだ。これが喜ばずにいられるか。

………という冗談はさておいて。

('A`;)(大きな損害が出なかったのは幸いだがいきなり至近弾多数か……!)

おそらく、先程の特攻に近い空襲で此方の位置情報を艦載機の犠牲と引き替えに掴んだのだろう。本来なら向こうも弾着観測射撃の為に常時偵察機でも上げておきたいのだろうが、深海棲艦側で水偵や艦載機を用いた観測情報を円滑に全艦船に伝えられる“知能”の持ち主は限られている。

下手に軽巡棲姫や他のヒト型が観測機を飛ばせば、離陸箇所や滞空域から正確な位置を割り出されてそれこそ“事故”に繋がる可能性が高まる。

そのため軽巡棲姫は、位置特定を防ぐためにわざわざ市外から艦載機を呼び出して“威力偵察”によって此方の戦力展開を確認した。

('A`;)(………となると、向こうの航空戦力もまだ余裕あるなこれは。もしくは奴らの空母機動艦隊が到着しつつあるか)

少なくないもののなんとも中途半端な空襲部隊の規模や此方の動きに伴ってあっさりと分散した点は確かに不可思議だったが、これで合点がいった。最初から壊滅ありきの偵察編隊だったのならある程度情報を取得できる“数”さえ確保できればどう動かそうが問題ない。

………そもそも、恐ろしく脆いとはいえ80機の戦闘機が“中途半端な数”に見えてしまう辺り、どうも俺の感性も順当に奴らの物量に狂わされている。
252 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/24(水) 00:44:29.42 ID:FI3x2H040


とにかく、先程の航空戦力の特攻によって得た情報から“お姫様”は少しだけ踏み込んだ戦略方針を立てたようだ。

《前進中の敵艦、駆逐14、軽巡4、内elite・flagshipは各2ずつ!このままいけば先鋒部隊は五分以内に全班が接敵します!》

即ち、東部街区への浸透強襲による艦娘戦力の強制的な消耗。

('A`)「前線指揮車より高層観測班、敵防衛線第二陣は“全て”攻勢に出ているか?」

《はっ、展開していた全艦隊戦力が進撃中です!!》

('A`)「そうか」

全戦力投入。つまり、棲姫は第三陣以西に俺たち先鋒が突出する可能性は考慮していないか、していたとして容易く潰せる存在という評価を俺たちに下している。

(//‰ ゚)《ま、要は俺たちの突撃が“半ばハッタリ”だとバレたわけだな》

ざっくりと言ってしまえば、サイ大尉の台詞が全て。実際俺たちが後方浸透したところで、艦娘戦力を車内に隠しているわけでも超強力な秘密の火砲を装備しているわけでもない。生身の戦艦からすれば、そこらの蟻を踏みつぶすより簡単に処理できる存在。

そう。所詮俺たちの突撃はハッタリだ。

(#'A`)「先遣機動部隊各班、速やかに敵第二陣の予想進撃経路に展開!遅滞戦術を敢行し奴らの動きを鈍らせろ!!

第二陣、状況を報告せよ!」

《フランス広場より前線指揮車、シュプレー川の渡河と橋頭堡の建設、戦力集結を全てのポイントで完了。いつでも行けます》

ただし、あくまでも“半ば”だ。

(#'A`)「前線指揮車より第二陣────強襲打撃部隊各位に伝達、前進開始!!」





( <●><●>)《そろそろ、その指示が出ることは解っていました》
253 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/24(水) 00:47:14.22 ID:FI3x2H040
本日ここまで。大スランプに陥り欠けましたが書きため丸消しで何とかなりました。ただ、一日一更新が途絶えまして申し訳ありません。
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 01:33:12.95 ID:2oduQlzA0
おつです…そしてやったぜw
それにしても混合軍強すぎワロタ
255 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/25(木) 11:43:57.86 ID:Rz3NgEnD0
第三陣以降による前衛艦隊への支援射撃はなおも続いている。俺たちの周囲に飛来する砲撃は散発的で、大半の砲弾は遙か頭上を飛び越えてベルリン東部に集中した。

味方の迫撃砲隊も果敢に撃ち返しているが、数十隻の「艦隊」と本格的な砲撃戦となれば手数も威力も圧倒的に足りない。

《トレプトゥ=ケーペニック区、敵の砲撃が激しさを増しています。120mm砲一門を直撃弾により損失しました》

《パンコゥ区、高層観測第6班待機所に敵艦砲射撃直撃!通信途絶!》

《プーマ六号車、至近弾多数!陣地転換急げ!!》

《フリードリヒスハイン区、敵艦砲射撃直撃により死傷者多数!衛生班を至急寄越してくれ!》

(;'A`)「……っ」

無線から次々と飛び込んでくる本格的な被害報告。だが、これはこっちにとって予想外でも異常なことでもない。

此方の優勢は、「艦娘戦力を早期に南から引きずり出したい」という向こうの思惑やそれを逆手に取った作戦、そして何よりもそれらが奇跡的にかみ合った運によって支えられてきたものだ。言うなれば、今までの極僅かな損害と優位な戦況こそ“異常”。

《第五高層観測班も敵艦砲射撃により沈黙!おそらく全滅!》

《視点が減ると戦況に支障が出るぞ!新手をビルに上がらせろ!!》

《機動警察の小隊待機地点に直撃弾!8名死亡、2名重体!!》

《こっちも二人やられた!一方的に撃たれている!》

今の状況は、深海棲艦と人間の本来の力関係に基づいた“正常”な光景だ。

《第2班より指揮車、敵前衛艦隊の一部を捕捉!これより攻撃を開始する!》

《第3班、交戦開始!!気をつけろ、ト級のflagship付きだ!!》

……そして、本当に、本当に吐き気がするような事実として。

《……Z1 Leberechtより前線指揮車、たくさん陸軍の人たちや警官隊が周りで、目の前でやられてる!僕らに援護射撃の許可を!!》

('A`;)「前線指揮車より艦隊各位に伝達、砲撃は許可できない」

俺の立場からすれば、シュプレー川の向こう岸で深海棲艦の砲撃で吹き飛び死んだ味方の存在を。

('A`#;)「現在、作戦は“順調に推移”している!Bismarck以下全艦引き続き弾薬の温存と敵砲撃の回避・防御に努めろ!繰り返す、全艦引き続き艤装の弾薬を温存せよ!」

《……そんn……っ、Jawohl!!》

敵が「計算通りの場所に食いついた証」として、喜ばなければならない。
256 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/25(木) 11:47:45.87 ID:Rz3NgEnD0
本当なら、今し方自分が放った言葉の意味について激しい罵詈雑言を吐きつつ腕にナイフの一つも突き立ててやりたい。

だが、今は作戦中だ。俺に我を失い嘆き狂う“権利”はない。

《2ブロック西に艦影を捕捉!!》

(#//‰ ゚)《こっちでも確認した!!気を引くぞ、撃て撃て撃て!!》

('A`#)「奴らの進路を塞ぐ!ツー、艦隊の真横から追い抜けるか!?」

(#*゚∀゚)《お安い御用ってね!!》

少なくともelite以上の個体であることを示す10M強の巨体に機銃掃射を浴びせながら、三台のエノクは猛然と角を曲がり敵と同じ道路に入り込む。そのまま挑発するように三隻の非ヒト型の真横を駆け抜けると、水飛沫をぶち上げながら横並びに奴らの正面に展開する。

『ォオオオオオ………』

('A`#)「……さっきも言ったよな、てめえの顔は見飽きたって」

ホ級elite、脇にはイ級通常種二体。この、ホ級+イ級の組み合わせは海上・陸上を問わず深海棲艦の最も数多く見られる戦闘形態だ。実際リスボンの時にも、全部が通常種だったが顔ぶれの艦隊と交戦した。

誰かが言った。RPGやアクションなら、奴らは間違いなく最初のステージから現れ続ける典型的な雑魚キャラパーティーのような立ち位置だと。

当初はジョークとして笑い話の種になったそれは、何百隻葬ろうが常に戦場に顔を出し続けその圧倒的な数で人類の屍を積み重ねるその姿への憎しみと共に語られるようになる。

いつしか、奴らは八つ当たりに近い侮蔑と畏怖、そして必ず狩り尽くしてやるという決意と憎悪を込めて各国の兵士達の間でこう呼ばれるようになった。

('A`#)「とっととくたばれ!!

Feuer, Feuer!!」

“1-1艦隊”と。
257 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/25(木) 11:50:41.38 ID:Rz3NgEnD0
『ギィヤァアアアアアッ!!!』

(#//‰ ゚)「Go go go go!!」

(#*゚∀゚)「イ級は眼をねらいな!視界を奪えば動きを制限できる!!」

機銃3挺と、15挺のアサルトライフルによる一斉射。今度はエノク各車の運転手も降りて、文字通り此方の全火力をつぎ込んでいる。

『ウォオオオオオオオッ!!!!』

「Target have No damage!!」

……まぁ、たとえ陸戦兵器でもある程度容易くなぎ倒せる耐久力とはいえ、流石に自動小銃と軽機関銃で軍艦の装甲にダメージを与えられるはずはない。

艦娘達にとってのクリボーは、今の俺たちからすれば立派なクッパ大王だ。

『オォアッ!!』

《Ups!?》

('A`;)「退避!!」

ホ級が艤装の一部を此方に向け、機銃掃射。他の二台に叫びつつ銃座から飛び出す。

主兵装である「5inch単装砲」による砲撃ではなかったことは幸いだが、7.62mm弾を食い止めるのがやっとのエノクの装甲で対空機銃の射撃は耐えられるはずもない。

車体が火花を散らしながら穴だらけになり、内一台がエンジン部分の辺りから小さな炎を吹き出した。

(;'A`)「───逃げろ!!」

(*;゚∀゚)「わわっ………あうっ!?」

弾かれたように立ち上がり、そこらの瓦礫や車の影へと転げ込む俺たち。背後で2号車が爆散し、一瞬反応が遅れたツーが爆風によって吹っ飛んでくる。

………俺の背中に向かって。

(*;x∀x)「あでっ!?」

(゚A゚)「ウボアッ!?」

衝撃が背中に走り、ツーのヘディングで俺は進路先の横転したトラックの影に無理やり押し込まれる。人体を幸運にもクッションとすることが出来たツーは、幸いにも大きな怪我を負わずに悶絶する俺の横に着地した。

(;*゚∀゚)「うっひぃ、死んだと思った………あんがとな少尉!」

::( A ;)::「ゴホッ…カヘッ……」
 _,
(*゚∀゚)「……おいおい、ドイツ陸軍屈指の美女に礼言われたんだからもうちょい嬉しくしろよ」

お前ちょっと黙ってろ。
258 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/25(木) 11:52:15.00 ID:Rz3NgEnD0

('A`;)「……ッホ、ゴホッ!!被害報告!!」

「ベーデカー軍曹以下3号車、全員無事です!負傷者も無し!!」

(;//‰ ゚)「2号車1名負傷だがかすり傷だ!まだやれる!」

なおも機銃掃射がそこかしこのアスファルトを削る中、声を張り上げて互いの状況を確認。よし、欠員無しならまだ行ける。

(#'A`)「よし、ベーデカー!俺と共にエノクの残骸までもう一度前進だ!サイ大尉、グレネードをホ級の頭部と砲塔に撃ち込んで援護を!!」

「Jawohl!!」

(#//‰ ゚)「Received order!!」

('A`#)「ツー、バルテン、フラッシュバン投擲だ!!イ級二体の眼をくらませろ!!」

(*#゚∀゚)「Ja!! 」

「Jawohl!!」

二人が腰から閃光弾を外し、ピンを取って遮蔽物越しに道路に投げ込む。

『『ァアアッ!!?』』

『───!? ア゛ア゛ッ!?』

(#//‰ ゚)「Grenade fire!! Grenade fire!!」

何束かの爆竹にまとめて火を付けたような連続的な爆音と瞬く光。イ級二体が驚きと混乱でふらつき、事態を飲み込めずにいたホ級にはすかさず海兵隊のM203グレネードランチャーが火を噴く。

『オ゛ォ゛ッ、ア゛ア゛ァ゛ッ!!』

(#'A`)「Los Los Los!!」

「Feuer!! Feuer!!」

正規の迫撃砲弾ならともかく、アサルトライフルの下部に備え付けられている40mm擲弾の威力など深海棲艦の装甲からすればたかが知れている。だが、効果が無くとも奴らの弱点部位への爆発攻撃はほどよい挑発にはなったようだ。

『アアアァァッッ!!!!』

(;//‰ ゚)「っと、伏せろ!!」

(#'A`)「前進止めるな!姿勢低くして突っ込め!!」

更に俺たちからも放たれていた顔面に向けての火線を振り払うように右手を震った後、再び機銃掃射を俺たちと海兵隊に向けて放つ。

ホ級eliteの注意は、こっちに全て向けられていた。

「────Panzer faust, Feuer!!」

『ウ゛ア゛ア゛ッ!!?』

当然、側面から突如飛来した新たな攻撃に対応できるはずがない。
259 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/25(木) 11:56:47.16 ID:Rz3NgEnD0
「パンツァーファウスト、ホ級eliteに全弾直撃!!」

( <●><●>)「ダメージがあるのは解ってます。総員、少尉達と合流しつつホ級砲塔部に集中砲火を。

また、イ級に関しては迅速に沈める必要があります。海兵隊も射撃を開始して下さい」

「「Jawohl!!」」

「「Yes sir!!」」

『アァアアッ!!!』

『ア゛ア゛ァっ、オァア゛ッ!!?』

ホ級の横っ面に叩き込まれた三発の対戦車ロケット弾。これを合図として、戦闘区画に飛び込んできた装甲車の一団から新たな部隊が路上に飛び出し次々と追撃を開始する。

即応警官隊───即ち“機動隊”が保有している装甲車だが、中に満載されていたのは増援のドイツ陸軍とアメリカ海兵隊の混成部隊。

それぞれ派遣に際し対深海棲艦の市街戦ということでパンツァーファウスト3、ジャベリン、ミラノ対戦車ミサイル、M72 LAW、果てには用途が変わりほとんど退役済に近かったはずのカールグスタフと、文字通りかき集められた重火力兵器が可能な限り配備されている素敵仕様部隊だ。

「Enemy Lock!! Fire!!」

『ォオオッ!!?』

「Go flank, Go flank!!」

ダイレクトアタックモード(直進軌道)で放たれたジャベリンミサイルがホ級の頭部に直撃する。怯んで機銃射撃が止んだ隙に、今度はLAWを構えた一団が俺たちの後ろを通って道の反対側へと駆け抜ける。

「Fire!!」

『ヴァッ────グァッ……!?』

四発の66mm HEAT弾が、向かって左側のイ級に突き刺さる。イ級の側面表皮が砕け散り、絶命こそしなかったが爆圧と激痛から苦悶の声を上げて路上に倒れ込んだ。

『オ゛オ゛ッ!!』

( <●><●>)「Los!!」

怒りの声を上げてホ級が艤装をアメリカ海兵隊の方に向けた隙に、ティーマスが数人のドイツ兵を率い俺達がいるエノクの残骸の影に滑り込む。奴さんが涼しい顔をして担ぐのは、カールグスタフM3。

('A`)「よぅ、そんな骨董品担いでどうしたよ。博物館にでも行く気かい?」

( <●><●>)「私なら少尉殿自体を持ち込みますね。そのお顔でしたら蘇った原人と伝えれば信じて貰えるはずです」

たまにはこっちから軽口をと思い突いてみたが、20倍で返される。

断言するが、俺がこいつに口で勝てることは永遠にない。
260 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/25(木) 12:21:16.52 ID:Rz3NgEnD0
( <●><●>)「カールグスタフ撃ちます。音量注意です」

('A`)「あいよ、因みに後方の安全は確保されてるぞ」

( <●><●>)「ありがとうございます。

Feuer」

『ッアアオァァッッ!!!!?』

バックブラストの熱が頬を撫でる。砲撃はホ級の左肩に直撃し、奴は肩口を押さえながらふらふらと後退った。

『アァ………アァァ……』

『────……』

随伴のイ級達の内、向かって左手の個体はあのまま事切れたらしい。海兵隊のLAWになぎ倒された状態のままぴくりとも動かなくなっている。

右手のイ級も、猛烈な砲撃を三方から受けて虫の息だ。

「Feuer!!」

『オ゛ォ゛ア゛っ!?』

( <●><●>)「ターゲットにダメージ有り。

各位、砲撃に“間”が出来ないよう撃ち続けて下さい。特にホ級の艤装部分には集中攻撃を、我々に照準できないよう常に射線をぶれさせなさい」

軽巡ホ級に関しては、流石にeliteということもあってまだ抵抗の余力はありそうだ。ただ、ティーマスが周到に張り巡らした火線を間断なく全身に浴び続けており、その余力はみるみる削られていく。

「頭部と砲塔を狙い続けろ!奴に反撃の間を与えるな!!」

「イ級は通常種の上もう大破している、脅威じゃない!牽制射撃で十分だ、ホ級に重点的に火力を振れ!!」

もう一つのプラス要素として、南部から送られてきた増援部隊の全体的な質の高さがある。特にミルナ中尉を初めとする中核部隊は、リスボンで深海棲艦と実際に交戦した経験を持つ精鋭だ。

ティーマスの的確な指揮に加えて、自主的に弱点部位に狙いを集中させたり攻撃動作を妨害するタイミングで砲撃を行うためホ級は反撃を完全に封じ込められ一方的な攻撃に晒される。

( <●><●>)「Feuer」

『オッ……アァアアアアアッ!!!!?』

十何発目かのカールグスタフの着弾。ティーマスが狙ったのは、ホ級の両脇から突き出る連装砲の内右側の一門。

轟音とホ級の断末魔が不愉快に混ざり合う中で、黒煙と炎を吹きだして直撃を受けた連装砲がはじけ飛んだ。
261 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/25(木) 12:48:55.13 ID:Rz3NgEnD0


( <●><●>)「追撃を………砲撃飛来!伏せなさい!!」

(*;゚∀゚)「ひゃあっ!?」

俺達が“1-1艦隊”と交戦する街角のT字路に、連続的に幾つかの砲弾が落下し炸裂する。2階建ての大手チェーン店レストランが崩落し、付近に止まっていた増援部隊の装甲車が一台押しつぶされた。

方角は西、深海棲艦のものだ。

('A`;)「損害報告!」

「装甲車一台が破壊されましたが死傷者は無しです!

───八時方向、またきます!!」

('A`;)「散開……あ?」

新手の砲撃は俺達の頭上を飛び越す。しかしながらイヨウ中佐達のいる方面に行くわけでもなく、俺達の交戦している地点から2ブロックほど先の、無人の十字路というなんとも感想に困る地点に着弾した。

違和感を覚えて耳を澄ませると、どうにも砲撃の統一性に乱れが感じられた。改めて冷静に周囲を見回すと、東側へと飛翔する砲弾の量が目に見えて減り、西部街区のあちこちに撃ち込まれる砲撃の割合が目に見えて増えている。

だが、その射線は統率の取れたものとは言い難い。放たれるタイミングがバラバラなら、着弾点も散らばっていていかにも狙いが定まっていない。

まるで、“急に現れた攻撃能力を持つ敵”に、慌てて無理やり照準を合わせ直そうとしているかのように。

('A`#)「─────迫撃砲隊、照準修整は終わっているか!?」
 、、、、 、、、、、
《手筈通り、ぬかりなく!!》

('A`#)「よし、残余全砲門敵前衛艦隊に集中!撃ち方ぁ始め!!」

《Jawohl!! Feuer, Feuer!!》

一瞬の間を置いて、東から美しい弧を描きながら幾十発にも及ぶ120mm砲弾が飛来する。

『オァア゛ッ、オォッ……アァアッ!!?』

頭部、砲塔、右腕、左腕、胴体………全身にくまなく叩き込まれる砲撃が、ホ級の装甲を砕き、艤装を貫き、肉を裂く。

左手が砲弾にもぎ取られ、腹の辺りに穴が空く。

『ア゛……ア゛ぁ゛………』

やがてホ級は、自身の艤装に押し潰されるような姿勢で前のめりに地面に倒れ込んだ。
262 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/25(木) 12:50:36.80 ID:Rz3NgEnD0
お昼の部ここまでです。ご静聴ありがとうございます
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2017/05/25(木) 13:39:17.58 ID:risR5xWA0


ドク、骨董品の75ミリでも役に立つかい?
多分5号(パンサー)も展示されてると思うが。

つうか重機関銃で弾幕の集中豪雨浴びせるのも手かもしれない。

唯一おめでとうとドクに言えるのが大聖堂崩壊だけと言うのが……

264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/25(木) 14:03:48.75 ID:3gp73OWI0
怪物か
265 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/26(金) 21:09:51.62 ID:vdGFfLwC0
本日リアルの仕事の都合で更新できません。

ここ数日亀更新が続き申し訳ありません
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/26(金) 23:55:42.31 ID:Ds5rY1oA0
リアル大事に。

待ってる。
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/27(土) 00:32:26.35 ID:Km1jVylA0
らじゃー、気長に待ってますw
268 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/30(火) 00:23:45.49 ID:oJKoS9010
『オォアア───グァッ!?』

「Enemy down!! Enemy down!!」

「Los, Los!!」

最後の一隻となったイ級が戦場から逃れようとするが、既に大破しているその身体で逃げられるはずもない。踵を返そうとしたところに横っ面から数発のミサイルとロケット弾が叩き込まれ、断末魔と共に倒れる。すぐさまイ級達“1-1艦隊”の周囲に、ドイツ兵と海兵隊が小銃を構えて群がる。

生死を確かめるために、頭部や砲塔、眼など奴らが敏感に反応する箇所に弾丸が撃ち込まれた。

「轟沈を確認! Street Clear!!」

(#//‰ ゚) 「負傷者の確認急げ!!重傷者は速やかに後方に下げろ!!」

('A`)「ベーデカー軍曹、他の部隊の状況は!?」

「ニ班〜四班も後続部隊との合流、戦力の再編を完了しています!」

('A`)「よし、各班に戦闘態勢を維持、指示があるまで待機するよう伝えろ!」

「Jawohl!!」

フランス広場を中心としたシュプレー川以西への橋頭堡の建設と戦力の集結は、深海棲艦側の主力艦隊もある程度は動きとして掴んでいたはずだ。しかしながら艦娘や戦車、プーマ戦闘車、迫撃砲などに動きがなく渡河したのはほぼ歩兵とまともな重火器を装備していない軽車両群とあって、奴らは案の定「即時の対処必要無し」とみなし此方の後衛に火力を集中させた。

結果、非ヒト型なら十分なダメージを与えうる対装甲火器が集中配備された打撃部隊をほぼ大きな損害無しで最前線まで引き込むことに成功している。

ここまでは、順調。作戦の第一段階はほぼ完全に成功した。

('A`)「………ツン、レオパルトとプーマ全車両の発進を準備させておいてくれ。

Prinz Eugen、水偵による上空警戒厳と為せ!ベルリン西部のあらゆる動きを見落とすな!」

ξ゚听)ξ《了解!》

《Jawohl!!》

問題は、ここからだ。
269 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/30(火) 00:25:29.98 ID:oJKoS9010
無線で後衛に指示を出しつつ、俺はちらりと西の空を見上げた。

('A`)(……やっぱりな)

脳裏を過ぎった違和感は気のせいではない。

軽巡棲姫は、状況打開のために次の手を打ってくる。

(//‰ ゚)「ドク、各隊は戦力の再編を終えてるぞ!」

サイ大尉が俺の元へ駆け寄ってきて声を荒げた。部隊の損害が軽微であるにも関わらず攻勢が止まったことに、疑問と軽い焦燥を感じているらしい。

(//‰ ゚)「とっとと強襲打撃部隊と連携して敵主力艦隊の元まで浸透を開始すべきだ!時間は奴らの利益にしかならない、それに艦砲射撃を一方的に食らうことになるぞ!!」

( <●><●>)「その艦砲射撃が、止んでいます」

(//‰ ゚)「………あ?」

ティーマスの指摘に、サイ大尉は一瞬呆けた表情を浮かべた後ハッとして空を見上げた。

完全に止んだわけではないが、ティーマスの言うとおり深海棲艦の砲撃は先程までに比べて極めて散発的なものに変わっている。着弾地点も分散しており、明らかに此方を撃破する意図が見られない。

( <●><●>)「シュプレー川以東の、本隊への砲火が再度増えた様子もありません。先程の強襲打撃部隊の突入時から混乱が尾を引いているという説も時間が経ちすぎていて考えづらい。

深海棲艦側の動きが不自然なのは解ってます」

優秀な相棒のおかげで、説明の手間が省けた。………ティーマスに少尉の地位譲って俺二等兵になっちゃダメかな、一先ずこの修羅場を生き延びたら上層部に提案してみよう。

( <●><●>)「………少尉、貴方がとても下らないことを考えているのは解ってます」

('A`)「ソ、ソンナコトナイヨー」

ホントに出来た部下兼昔馴染みで涙を禁じ得ない。

ともあれ、ティーマスが今説明したとおり、深海棲艦側が「何か」を考えているのは間違いないだろう。

《────Prinz Eugenよりマントイフェル少尉に通達!!》

当然奴らが、性悪の軽巡棲姫が考える「何か」が俺たちにとって愉快な内容であるはずがない。

《前線部隊展開ライン正面、5kmの地点で“道路の隆起”を複数確認!!時速30km程度で其方に向かっています!》
270 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/30(火) 00:27:09.81 ID:oJKoS9010
地面の隆起。

その言葉を聞いた瞬間思い出すのは、解囲作戦の折ツンたち機甲部隊を“地下から”襲撃した数隻の非ヒト型の存在。

どうやって地下に、何故水上と変わらない速度で移動できるのか、どこから現れたのか……沸いた疑問の数々は、頭がいい研究者の奴らに究明を任せることにする。

どんな理屈であれ、深海棲艦が「地下の移動」を可能とするなら対処するのが俺達の仕事だ。

(#'A`)「前線部隊各位、敵襲があと10分もせずに来るぞ!速やかに迎撃態勢に移れ!!」

( <●><●>)「パンツァーファウスト装備者は健在な建物の二階に上がって道路を撃ち下ろせるよう準備を。それから前方2ブロック先にC-4の設置もお願いします」

「「Jawohl!!」」

(//‰ ゚)「海兵隊総員射撃用意!!砲撃とC-4で焙り出された深海棲艦の身体を穴だらけにしてやれ!!」

「「Yes sir!!」」

指示が飛び交い、戦闘準備に移る各位。

だが、敵が打った手は一つではなかった。

《Graf Zeppelinより前線指揮車、新たな敵航空隊が北よりベルリン市空域に侵入!数は80〜100、全機が前衛に向かっている!!》

(;'A`)「……っ」

食いしばった歯の隙間から、思わず呻き声が漏れた。航空攻撃との連携となれば迎撃の難易度が大きく上がる。

それにしても、度重なる空襲の撃退で優に200は越える敵機を撃墜しているはずだ。確かに「まだ余裕を持っている」とは思っていたが、さっきの今でこの数を出してこれる深海棲艦の物量には舌を巻きざるを得ない。
271 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/30(火) 00:29:04.71 ID:oJKoS9010
(;'A`)「三時方向、各位対空警戒!!前衛各部隊、残ったエノクは全て艦載機の迎撃に回すんだ!!

Prinz Eugen、敵航空隊の侵入軌道知らせ!!」

《Prinz Eugenより前線指揮車、敵編隊低空軌道でベルリン市に突入!其方への到達まで180秒!!》

深海棲艦側の到着が、距離と時速から計算して10分程度。同時攻撃にならないのは不幸中の幸いだが、本当に気休め程度の「幸い」だ。

('A`;)「屋上の奴らは下手に攻撃をかけず身を隠せ!それと、エノク機銃座に二人つけ!路上の部隊は車両の残骸、深海棲艦の死骸、瓦礫に側溝、どこでもいいから隠れろ!!」

俺自身も、アサルトライフルを小脇に抱えホ級の死体の傍に滑り込む。

(*゚∀゚)「よっと!」

('A`)「ブッフハ」

ツー、ティーマス、ベーデカー軍曹と他何人かのドイツ兵も俺の傍に身を隠す。ツーはスライディングの際に泥と雨水を盛大に俺の顔面にぶちまけてきた。

何か怨みでもあるのかてめぇは。

(*゚∀゚)「あひゃっ、悪いな少尉!」

('A`)「絶対悪いって思ってないよねその感じ。

………各班、来るぞ!!」

“ジェリコのラッパ”とはまた違った恐怖を掻き立てる、低く規則的なレシプロエンジンの回転音。凶暴な獣が群れ迫ってくるような威圧感に、小銃を構えつつ俺は僅かに息を呑む。

《───敵機射程内に捕捉!!》

《撃ち方、始め!!》

やがて、戦闘が始まった。
272 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/30(火) 00:30:59.75 ID:oJKoS9010
遠くから微かに、無線からははっきりと聞こえてくるアサルトライフルの射撃音。そしてそれらを掻き消すような、敵機の飛翔音と機銃掃射の弾着音。

《2名負傷、2名負傷!!》

《エノクが一台破壊されたぞ!!》

《第三班交戦開始……ぐぁっ!?》

《1名やられた!!》

《負傷者を物陰に運べ!!》

深海棲艦機の撃墜を示す爆発の音は疎らで、代わりに無線を通して伝わるのは呻き声、悲鳴、鉄の弾丸が肉を引き裂く音。

容易く想像できる“向こう側”の惨状。だが、それらが頭に浮かぶ間すらなく。

(#//‰ ゚)「Enemy incoming!!」

('A`#)「Allemann flakfeuer!」

敵機が、襲いかかってきた。

「Keep fire───ups……」

「伍長が撃たれました!!」

「手を止めるな!止めるな!!」

「足が!俺の足がぁ!!」

初回の襲撃時と先程の被害ありきの威力偵察のように、“七面鳥”として正面から射線に飛び込んできてくれた敵機とはワケが違う。

街並みを掠めるように600km/hで飛び去りながら行われる超低空からの対地掃射は、さながら鉄の暴風だった。

次々と撃ち倒されていく味方に対し、此方の弾幕は空を切っていく。頼みの綱だったエノクは、接敵から5秒で二台とも射手を撃たれて沈黙する。

('A`;)「……クソッ!!」

撃墜できる敵機はほとんどない。せいぜい片手で足りる程度。速度を重視してか爆装機が見られない以上、正直隠れてやり過ごした方がよほど此方の損害は少ない。

それでも、無傷で通過させるわけには行かない。同様の軌道で本隊にも突入されれば、今度は艦娘にも被害が出るかも知れない。

時間にして、20秒に満たない襲撃。

(;'A`)「被害報告!!」

「負傷者搬送手配急げ!」

その20秒で、辺りには血の臭いが充満した。
273 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/30(火) 00:33:24.27 ID:oJKoS9010
《此方ニ班、エノクは全車両完全に破壊されました!死亡6、負傷5、内重篤2!!》

《五班、エノク3両中2両を損失。死亡4、負傷10》

《墜落した機体の巻き添えを受けて屋上班が丸ごとやられた!代わりの隊いけ!早く!!》

ベルリン市の南北の幅は直線距離で30km程度、Helmの最高速度なら3分もあれば飛び過ぎることが出来る。この内俺達前線部隊の襲撃に裂いた時間は、おそらく1分もない。

(;'A`)(……で、その一分でこのざまかよ)

低空域での空襲。家々やビルが建ち並び入り組む街中を高速で飛び回ることになるため、当然深海棲艦側にとってもリスキーな戦術ではある。

だが、俺達人類側は頭上を高速で飛び去っていく1m行くか行かないかの機影を正確に狙い撃たなければならなくなり、その命中率は大きく落ちる。

現実に、前衛部隊が受けた損害は今までとは比べものにならない。投入していたエノクのほぼ全てを失逸し、死傷者も相当数が出た。
こっちの撃墜機数は、おそらく20機程度だろう。

唯一の好材料は、それでも敵機がそのまま市街地を迂回するような動きで西へと飛び去っていったこと。

ただ、それ以上に最悪なことに敵襲はまだ終わっていない。

《Prinz Eugenより前線部隊各位、“隆起”はなおも前進中!!後150秒で各部隊展開地点に到達します!!》

(;'A`)「負傷者収容の速度を上げろ!!それと射線の再構築だ、急げ!!」

徐々に聞こえてきた地響きと、ボコリと突然持ち上がり傾いた十数ブロック先のビルを見て、俺の背筋に冷たいものが走る。

当たり前の話だが、雨で冷えたせいじゃない。

('A`;)「敵艦影視認!!各部隊、戦闘準備急げ、次が来るぞ!!」
274 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/30(火) 00:36:38.26 ID:oJKoS9010
バキバキとアスファルトを割り、揺れと破壊を周囲にもたらしながら此方に突っ込んでくる“隆起”。道路上に乗り捨てられていた何台かの車やバイクがけたたましい音を立てて盛り上がった街路や道脇のショウウインドウに転がり込む。

('A`#)「────Feuer!!」

その隆起の先端がC-4爆弾が並べられている地点まで差し掛かった瞬間、俺は声高に叫ぶ。海兵隊の一人が起爆スイッチを押し、幾つかの建物の屋上でパンツァーファウスト3が火を噴いた。

『グォオオオオオオオオオッ!!!?』

火柱と、轟音。地面を突き破り、ハ級の縦長な頭部が姿を現す。

「Feuer Feuer Feuer!!」

「Kill the enemy!!」

ジャベリンが、パンツァーファウストが、LAWが、カールグスタフが、唸りを上げてハ級の巨体を滅多打ちにする。

『オァッ、ア゛ア゛ア゛ッ?!』

苦悶の声と共にのたうち、なんとか地面から這い出て此方に攻撃しようとするハ級。かなり数を減らしたとはいえ、未だ多数が健在の火砲の前ではそれは叶わぬ夢だ。

全方位から待ち伏せの末猛射撃を食らい、たちまち全身から黒煙と青色の体液をまき散らしだした。

圧倒的優勢。だがそれは、俺達の区画が比較的空襲による損害が軽かったために得られた局所的なもの。

《此方五班、敵艦に前衛火線の突破を許した!隊列が内部から食い破られている、損害大!!》

《三班よりCP、イ級の襲撃を止められません!火力が絶対的に不足しています!!》

('A`;)「………ウツダシノウ」

全体的な面で言えば、戦況は最悪の状態に移行しつつある。

('A`;)「………こうなりゃやむを得ねえか。前線指揮車よりGraf Zeppelin、第二次支援空爆を」

《ぷ、ぷ、Prinz Eugenより在ベルリン全部隊!!緊急連絡!!》

本当に、最悪の状態に。

《前方、ベルリン西60km程の地点に、深海棲艦艦載機の大編隊を“視認”!!おそらく目標は、ベルリン全域の空襲です!!》
275 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/30(火) 00:43:40.44 ID:oJKoS9010
  _
( ゚∀゚)《………ジョルジュ=オッペルよりPrinz Eugen-09、そんな遠距離の深海棲艦機を“視認”だと?冗談言うな、幾ら妖精の眼がいいからってんなことあり得ねえぞ》

《一機一機を視認したわけではありません、AR-196妖精の視界が捉えたのは深海棲艦機の“編隊”です!!》
  _
( ゚∀゚)《》

( ゚д゚ )《………何てことだ》

報告の意味に気づき、ジョルジュが絶句する。ミルナ中尉の、打ちのめされたような呆然とした呟きが無線から漏れる。

受け入れたくない悪夢のような現実を、プリンツは震える語尾を抑えながら俺達の鼻先に突きつけた。

《敵の編隊規模が多すぎて、西の空で巨大な黒雲のようになっています!数は解りません、どれほど少なく見積もっても2000機を優に超えるとしか答えようが………。

空が三分に敵が七分、空が三分に敵が七分!!》

('A`)「………」

( <●><●>)「………少尉、何か策を」

('A`)「…………今、考えてる、けど」

こちらの予想規模を圧倒的に上回る、まさに雲霞の如くとしか形容が出来ない艦載機の接近。深海棲艦が意図していることはすぐに解った。

爆撃や機銃の狙いが低空突入しなければ定められないのなら、狙う必要が無いほどの膨大な火力を投入して全てを焼き払えばいいというある意味で単純明快な理論。

即ち、絨毯爆撃。

('A`)(どうやって、北部はまだ完全に制圧されたわけじゃ、フランスやイギリスへの対処も、ベルリンの艦娘潰しが奴らにとってそれだけ、いや、理由はいい、策を、あぁ、でも)

見えない。

打開する策が、見えない。
276 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/30(火) 01:00:11.09 ID:oJKoS9010
狙いを定める必要が無い圧倒的な物量が押し寄せてきている以上、定点爆撃どころか低空域への突入自体おそらく敵機はしない。つまり、こちらのアサルトライフルによる対空射撃は届かない。レオパルトの主砲撃なら或いは高度に届くかも知れないが、僅か九両では焼け石に水だ。

艦娘による対空砲火とGraf Zeppelinの全艦載機を形振り構わず投入しても、流石にここまで規格外の物量相手には弾薬も燃料も持つはずがない。

無理やりこちらに都合良く考えて「この大編隊が敵艦隊の限界ギリギリの戦力であり、多大な損失は避けたい存在である」と仮定する。その場合なら、“幾らかの損害”を与えれば退かせることは出来るかも知れない。
だが、殲滅の必要が無いにしてもこの編隊が後退を決意するほどの損害となれば、どのみちビスマルクもグラーフもプリンツも、駆逐艦達も余力が残るとは思えない。機甲部隊にも大きな損害が出るはずだ。

そうなれば、今度は健在している第三陣以降の敵防衛線も、主力艦隊も突破は出来ない。残る道はベルリンの放棄か、玉砕上等の突撃かの二択。

('A`)(待て、決め付けるな。何か、何か策が)

ゲームなら、スタートボタンを押せばポーズ画面が現れて時が止まり、幾らでも考える時間が生まれる。しかし、今俺がいる場所は現実の戦況。

《敵機、間もなく市街地に到達!!後150秒ほどと思われます!!》

《Graf Zeppelinより前線ならびにCP、レーダーでも機影を捉えた!!ダミーじゃない、正真正銘敵の編隊だ!!……クソッ、いったい何機投入してきたんだ奴らは!?》

時間は、思考する間にも無情に過ぎ去っている。

('A`;)(何か、何か、何か………あぁ、クソッタレ!!)

空回り、混乱する思考の中で、妙に冷静な自分がぽつりと呟いた。






こりゃ、詰みだ。
277 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/30(火) 01:02:26.66 ID:oJKoS9010





頭上を、風切り音が駆け抜けていった。




.
278 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/30(火) 01:20:56.36 ID:oJKoS9010

('A`;)「───────!!?」

顔を、上げる。

《Prinz EugenよりCP、高速飛翔体が東部よりベルリン上空を通過、敵編隊に着弾!!》

一瞬の静寂を切り裂き、西から響いてきた爆発音と雷鳴のように瞬く閃光。プリンツの口調は明らかに混乱しており、上擦り震えてかなり聞き取りづらい。

無理もない、それをよく知る俺ですら、驚愕で思考がまとまらない。

それは、深海棲艦の砲撃や艦載機のものでも、艦娘の放ったそれらでもない。軍人として聞き慣れていたが、しかしこの場では聞こえるはずがないと思っていたもの。

我らがドイツの“忌むべき過去”がその先駆を生み出した、人類の知恵と技術の結晶である近代兵器。

《高速飛翔体、更に2発が着弾!!深海棲艦編隊、爆炎に包まれ被害甚大!!隊列大きく乱します!!》

空対空ミサイルの、飛翔音。

《敵編隊、ベルリン上空への侵入を中断し散開───きゃあっ!?》

息継ぐ間もなく、甲高いジェット音と共に今度は銀色の機影が音速で空を飛び去っていく。4つの銀影の内一つが、新たに1発のミサイルを西に向かって撃ち放った。

('A`)「………F-16」

《高層観測班より全在ベルリン軍に伝達!!》

呆然と空を見上げていた俺の耳朶に、絶叫が突き刺さった。驚愕と歓喜に溢れた声で、観測班の一人が狂ったように叫んでいる。







《友軍機がベルリン上空に飛来!!

増援は、ポーランド空軍機です!!!》
279 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/30(火) 01:21:45.53 ID:oJKoS9010
お待たせしました。更新再開です。今回分はここまで。
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/30(火) 01:32:12.73 ID:IvwAC9CA0
おつです!
流石にすり潰せるだけの物量はエグい…
玉砕寸前とはいえ盤外からの一手が刺さって何より…やっぱあの人かなw
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/30(火) 02:03:32.25 ID:SGPwjDovO
おつ
エスコンのBGMが似合いそうだな
282 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/31(水) 01:19:12.28 ID:qbOhevfD0





《敵群体にミサイル全弾命中!!効果絶大、撃墜多数!!》

(‘ L’)《続けて撃つぞ!!全機照準!!》

炸裂したミサイルの爆炎に焼かれ、巨大な黒い“群れ”が揺れ蠢く。

まるで、一つの巨大な生物が苦しみ悶えているような光景。フィレンクト=クフィアトコフスカ空軍中佐は、目の前の“巨獣”になおも照準を合わせつつ編隊の先陣を切る形で肉薄する。

(‘ L’)《Czarny-01, FOX-2!!》

《Czarny-02, FOX-2!!》

《Czarny-03, FOX-2 FOX-2》

《Czarny-04 FOX-2》

ほんの100M、空対空戦においては目と鼻の先に等しい至近距離からのミサイル攻撃。加えて数千体規模の密集とあれば、当然ロックオンなど必要ない。

4発のミサイルが炸裂し、火の玉が幾つも咲き乱れた。“巨獣”はますます激しく身もだえし、みるみるうちに身体の形が崩れていく。

《Engage!!

Niebieski-01, FOX-2!!》

《Niebieski-02, FOX-2!!》

反転・迂回するフィレンクト達とすれ違う形で、新たに空域に突入してくるF-16の編隊。

息を継がせぬ波状攻撃、背後で新たな爆光が煌めいた。

(‘ L’)《Czarny-01よりHQ、【アオガシマ式戦術】の効果は絶大!敵編隊に大きな打撃!!》

《HQよりCzarny-01、了解した。残弾が尽きるまでは他の編隊と連携し引き続き敵爆撃隊へ反復攻撃を続けろ。情報によれば後続編隊の存在も示唆されている、奴らを絶対にベルリン市空域に侵入させるな》

(‘ L’)《了解!!》
283 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/31(水) 01:24:02.16 ID:qbOhevfD0
ぐいっと操縦桿を傾け、左旋回。全身にかかるGに歪む視界と軋む骨。

丹田に力を込めてこれらに耐え、再び深海棲艦機の大群体を視界におさめる。

立て続けに16発ものミサイルを叩き込まれれば相当な撃墜機が出たはずだが、群体は未だに発達した雷雲のように巨大だ。

元々攻撃を依頼した例のドイツ陸軍の大佐によれば、予測される編隊規模は日本で観測された過去最大のもの───2000機規模に匹敵するだろうとの話だった。だが、この様子を見るにおそらく記録は無事更新された。

(‘ L’)《3000……いや、それ以上いるか》

しかも、司令部曰く後続もまだまだ控えているのだという。尋常じゃない物量に、思わずフィレンクトはコックピットで舌を巻く。

(;‘ L’)《本当に……とんでもない奴らとの戦争になったものだ!!》

発射ボタンを押す。AIM-120空対空ミサイルが雨空を駆け抜け、眼前に広がる“漆黒”に直撃。オレンジ色の炎が、獣の身体から流れ出る血のように群体から突き出し空を焦がした。

(‘ L’)《HQ、地上部隊の現状を教えてくれ!!》

《HQよりCzarny-01、“騎兵隊”はベルリン市に随時突入中。まぁ電波妨害のせいで通信も続々途絶えてはいるが、レヒフェルトからの報告が正しければ問題なく在ベルリンドイツ軍並びにアメリカ海兵隊と合流しているはずだ》

(‘ L’)《それを聞いて安心したよ!!》

市内に展開しているドイツ陸軍の戦力の内、組織的な抵抗力を保持しているとされるのは凡そ2000程度。軍と連動して動いているベルリン市警や機動隊を数に入れても一個旅団を少し越えた程度の兵力にしかならない。加えて寄せられた情報によれば、機甲戦力は骨董品の第ニ世代戦車に雀の涙の装甲車だ。

艦娘が合流しているそうだが、戦艦、空母、重巡が各一隻ずつで残りは駆逐艦だという。

数も質も大きく上回り、しかもなお増え続けている深海棲艦を相手取れるような戦力ではない。というか、これでポーランド軍到着まで持ちこたえた時点でおそらくベルリンの防衛指揮官はとびきりの変態だとフィレンクト達は結論づけた。
284 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/31(水) 01:30:34.42 ID:qbOhevfD0

(‘ L’)《Gun gun gun》

《Good kill Good kill》

腹に抱えていた最後の1発を撃ち込み、更に群体の鼻先まで飛び込んでM61A1バルカン砲をお見舞いする。砕かれ貫かれた敵機がぼとぼとと落下していく中、友軍機がすれ違いざまに賞賛の声を送ってくる。

(‘ L’)(……それにしても、妬けてくるな)

群体に突っ込む直前で反転しベルリン上空を駆け戻りながら、市街地を眼下におさめたフィレンクトはふとそんなことを思った。

欧州全域の現状を的確に分析するどころかイタリアの出撃が遅れることまで見越し、早い段階でポーランドへの増援要請を開始していたレヒフェルト基地の陸軍大佐。

国防体制を理由に渋る政府に対して、南部を経由して交渉の場に乱入し艦娘の存在を外交カードにほとんど身一つで増援の確約を取った連邦共和国首相。

そして、その首相を救助して市外に逃し、質も数も劣る戦力で深海棲艦を迎撃し続けた在ベルリンドイツ軍の面々。

優秀なだけでなく、その優秀な人材が全てを賭して祖国を守ろうとする姿に、フィレンクトは少なからぬ羨望と感銘を覚えている。

そして、同時に。

(‘ L’)《────我々も、負けていられないな!!》

そんな彼らと肩を並べて戦える自分が、軍人として誇らしくもあった。
285 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/31(水) 01:40:33.37 ID:qbOhevfD0









便宜上【軽巡棲姫】と呼ばれている“彼女”は、初めて感じる得体の知れないものに戸惑っていた。

【全の意志】によって与えられる機械的な憎悪とは違う、「自分の身体の中」からせり上がってくるような奇妙な衝動。命令に忠実に、思い描いたとおりに人類に襲いかかる同胞達が、しかし彼女の思い描いた光景を造ることは出来ず跳ね返され、沈められていく様を目の当たりにしてわき上がってくる不快な感覚。

“彼女”は、脆弱なくせに頑強に抵抗する眼前の人間達の姿に、明らかに苛立っていた。

『………』

忌々シイ。

実際に言葉にこそしないが、眇められた彼女の眼がその“感情”を雄弁に語る。

言ってしまうなら非効率的な、しかし看過してしまうことが出来ない【個の意志】に基づく苛立ち。彼女は歯噛みし、地団駄を踏み、長く垂れた髪の奥から東の空を見上げる。

腹立タシイ。

無駄ナ足掻キヲ。

鬱陶シイ。

聞こえてくる同族のものでは無い砲声が、人間共が上げる歓喜と鼓舞の雄叫びが、空を飛び回る鉄の塊が。

全てが、“彼女”の精神を逆なでする。
286 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/05/31(水) 01:52:04.95 ID:qbOhevfD0
彼女の張り巡らした策は、今のところ上手くいっていた。艦娘達の目をかいくぐり、人間共が住まう陸の奥深くに同胞達と共に入り込み、奴らが「クニ」と呼んでいる活動領域を内部から食い破った。

目的の場所に「核」も据え、“彼女”の同胞達は猛烈な勢いで数を増やしつつある。西に居た人間と艦娘達は一方的に蹂躙され、海からやってきた新手も叩きつぶした。ほくそ笑んでしまうほど美しく、“彼女”の策は上手くいっていたのだ。

だが、今はどうか。南に逃げた人間共は戦力をまとめ上げると同胞達の南下を完全に食い止め、より東へと進むはずだった“彼女”たちは半ば廃墟と化した街で立ち往生している。

ようやく抵抗の芽を摘めるかと思えば、人間側にも新手が現れて彼女が呼び寄せた艦載機を根こそぎ焼き払った。

『…………』

“彼女”は、戦闘能力こそ高いが種族の中で極端にプライドが高いというわけではない。とはいえ全くないわけでもないし、「脆弱で愚かで取るに足らない存在」である陸の猿に、良いようにあしらわれても傷つかないほど低くもない。

今の“彼女”の中には、人類をどのようにいたぶり叩きつぶしてやろうかというどす黒い悪意が、“彼女自身”が抱いた悪意が渦巻いている。

『……………』

『─────』

“彼女”は、背後の同胞に目で準備ハイイカ?と問いかける。

赤い眼をした同胞は、任セテヨとでもいいたげに妙に自然な笑みを浮かべ────








ドルンッ、と。

跨がるそれのエンジンを、鳴らして見せた。
287 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/05/31(水) 01:53:24.17 ID:qbOhevfD0
今更新ここまで。ようやく終わりが見えてきた…
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 18:02:25.32 ID:ma7/7qHx0
しえん
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 20:46:26.20 ID:hcxKebAbo
とびきりの変態とはひどいほめ言葉だなww
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 18:47:44.91 ID:1faHENNK0
陸上で敵の戦闘艦がバイクに乗って現れる悪夢。
なにこれぇ(誉め言葉)
291 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/02(金) 00:17:05.12 ID:qucG80lV0







頭上で鳴り響く俺達への福音は、ミサイルと戦闘機だけでは終わらなかった。

《────前線各位、衝撃に備えろ!!

弾着、今!!》

観測班からのそんな声と共に、十何発もの砲弾が───迫撃砲などとは比べものにならない威力を誇る、152mm 36.6口径榴弾が豪快に唸りながら飛来する。

空気が、地面が、巨大な炸裂音と共に震えた。砲火を諸に受けた深海棲艦達の悲鳴や呻き声が一瞬響いたが、連続する爆発音に奴らの声すら飲み込まれていく。

《ケーペニック区よりCP並びに前線指揮車、ポーランド陸軍の自走砲隊が展開を完了!前線への支援砲撃を開始!!》

《こちらリヒテンバーグ区、レオパルト2PL並びにPT-91【トファルデ】が戦線に合流しました!このまま既存の装甲戦力との合流に移らせます!!》

《CPより前線各隊、攻撃ヘリ部隊が我々の上空を通過して其方に向かった。後数秒もせず攻撃が行われるはずだ、巻き込まれないよう注意しろ》

(;'A`)そ「おわっ!?」

(;//‰ ゚)「伏せろ、それと下がれ!! Go back!!」

オペレーターの台詞の途中から聞こえてきた、雷鳴を思わせるヘリコプター独特のローター回転音。低空を飛んできたポーランド軍保有のMi-24………所謂“ハインド”が滑るような動きで俺達の頭上に現れた。

『ォオオオオオオオオッ!!!?オォッ……オォォ………』

ホバリング飛行から放たれるチェーンガンと対戦車ミサイルによる猛攻。既に満身創痍になっている通常種の駆逐艦が耐えきれるはずもなく、ものの数秒の攻撃でハ級は息絶えぐたりと倒れて動きを止める。

「く、Clear!!」

海兵隊の一人が我に返って叫び、その声が俺達に「大規模な援軍の到着」という現実をようやく明確に認識させた。
292 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/02(金) 00:20:10.85 ID:qucG80lV0
「援軍………援軍だ!それも空軍や戦車まで!!」

「やった、やったぞ────!?」

歓声が上がりかけた瞬間を見計らったように、西側で上がる反撃の砲煙。戦闘ヘリの装甲が艦砲射撃に耐えられる道理はなく、直撃を受けたハインドが木っ端微塵になり、炎が発する熱が地上の俺達に吹き付けた。

('A`;)「逃げろぉ!!」

( <●><●>)「っ」

(*;゚∀゚)「ひゃあっ!?」

「Deckung!!」

ハインドの残骸が火の玉と化し、こちらへと墜落してきた。逃げ出した俺達の背後で残骸はホ級の屍に突き刺さり、一際巨大な爆発を起こす。

(;メ A )「コハッ────」

浮遊した身体が、近くの横倒しになった車に叩きつけられた。止まる呼吸と軋む骨、チカチカと視界に星が飛ぶ。

ξ;゚听)ξ《ドク!!貴方がいる区画でヘリが撃墜されたけど大丈夫!?応答してドク!!》

(メ;'A`)「ゴホッ……あー、何とか無事だ」

足下に転がった無線機ががなり立て、ツンの叫び声が朦朧とした意識を何とか繋ぎ止めてくれた。また気絶しようものならティーマスやジョルジュに何を言われていたか解ったものじゃない。

密かに感謝しながら腕に力を入れて身体を起こす。咳き込んだところ、何滴かの血が足下に飛散した。

ξ;゚听)ξ《無事なの!?本当に無事なのね!?》

(メ'A`)「繰り返すが無事だよ中尉殿。勿論最高の気分からはほど遠いがな」

ξ; )ξ《そ、そう……Je suis soulage》

最後の方は何を言っているのか解らない。ドイツ語でぉK。

(メ'A`)(しかしなんでここまで心配されて……あぁ)

生じかけた疑問は、幸い根付く前に氷解した。

前線指揮官が戦死となれば指揮系統が混乱しかねない、そりゃあ最優先の安否確認は当たり前だな。
293 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/02(金) 00:31:25.97 ID:qucG80lV0
(メメ<●><●>)「おや少尉、悪運強く生き残っていたようで何よりです」

(メ'A`)「あぁ全くな。死んでた方が永久休暇で楽だったかも解らん」

駆け寄ってきたティーマスの手を取り立ち上がりながら、自身の身体の状態を確認する。……幸い致命傷はや動けなくなるような怪我は負っていないが、呼吸が苦しく腕に断続的な鈍い痛みがある。さっきツンにはああ言ったものの、実際に「無事」なのは命だけといったところか。

('A`メ)「ベーデカーとツーは無事か?」

(メメ<●><●>)「軍曹は気絶していましたが軽傷です。建物の残骸に運び入れて安全を確保しました。

アハッツ伍長は……」

(*メ゚∀゚)「無事だ!!」

Σ('A`メ;)「うおっ!?」

予期せぬ場所から出た声にびくりと震える。見れば、ティーマスの右手に小柄な軍服姿の人影が抱えられていた。

(メ;'A`)「まぁ無事なのは何よりだ……サイ大尉、他の奴らは!?」

(メ//‰ ゚)「少なくとも今の爆発では欠員がない!軽傷者数名といったところだ!!」

('A`)「なら何とかなるな。各位速やかに隊列組み直して戦線の維持を!!このまま次の敵襲が来たら一溜まりもないぞ!!」

「「Jawohl!!」」

「「Yes sir!!」」

(メ#'A`)「前衛各班、状況速やかに報告せよ!!」

《ニ班より指揮車、Mi-24の支援射撃によりイ級の撃沈を完了!戦力再編完了しました!》

《こちら三班、深海棲艦の撃沈に成功も支援に入ったMi-24は敵の対空砲火により撃墜されました。乗組員は全滅です》

《四班、何とか立て直しました。Mi-24も健在!》

《五班同じく!》

崩壊寸前だった戦線は何とか立ち直ったらしいが、投入された戦闘ヘリは早くも二機撃墜されている。

敵の反撃が予想以上に迅速で、かつ激しい。流石に国外からの、それも艦娘戦力を保有していない国家からの陸空の援軍は向こうにとっても巨大な計算外の筈だ。が、こうもすぐ態勢を建て直されると少し辟易する。
294 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/02(金) 01:01:24.91 ID:qucG80lV0
中途半端かつ短くて申し訳ないのですが、書きためが消えてしまったので一度切ります。
重ね重ね申し訳ありません
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 01:09:20.78 ID:2hvaXsyA0
おつおつ、ドンマイです…
ツンの健気な様子は周囲にどんな風に見えてるのやらw
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/05(月) 00:39:32.49 ID:lkXpO44P0
追いついた、こりゃすげーや応援してるぜ
297 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:02:14.93 ID:MGWwwK4M0
《Feind Artillerie! In Deckung!》

今度の砲煙は眼前───西側から一斉に上がった。数十発の砲弾が芸術的な弧を描き、唸りを上げて俺達の頭上を飛び過ぎる。

(=;゚ω゚)ノ《CPより各区、被害を報告せよ!!》

《トレプトウ=ケーペニック、第一砲兵隊展開地点に複数発が着弾!!120mm砲4門を失逸、死傷者多数!!》

《リヒテンバーグ区よりCP、突入してきたレオパルト2が今の砲撃で1両破壊!!また、ベルリン市警の狙撃班が通信途絶!!》

ξ;゚听)ξ《敵艦砲射撃を被弾しMi-24が一機墜落、巻き添えを食らってプーマ戦闘車を1両ロスト!

繰り返す、プーマ戦闘車ロスト!!》

悲劇的な報告が数多無線から流れる中、敵味方の砲撃は空中で激しさを増しながら入り乱れる。ベルリンの東西双方で幾つもの爆炎が上がり、建物の崩落音や深海棲艦の悲鳴、怒号がそこに重なった。

「敵艦砲射撃、来ます!」

('A`;)「伏せろ!!」

何発かの砲弾は、俺達が展開している地点の周囲にも着弾する。地面が震え、泥と砂利が飛び散り降りかかる。

……弾量はまだ大したことはないが、至近弾な上着弾地点が収束している。先の通信を聞く限り、後衛部隊にもかなり大きな損害が出た。やはり、敵前段艦隊は完全に混乱から立ち直っている。

(メメ<●><●>)「援軍到着で華麗に逆転開始、とはなりませんね。なかなか」

(メ'A`)「ま、小説や映画みたいに単純じゃないさ現実は」

ティーマスのぼやきにそう返しながら、俺の口元には思わず苦笑いが浮かんだ。

('A`)「たとえ映画だったとしても、俺達はそういう感動の場面を演出して貰える立場にはなれないだろうよ」

(メメ<●><●>)「そんなことありません。テネシャンスD辺りでボーカル勤めてそうですよ少尉」

('A`)「誰がジャック=ブラックだ」

だいたい体格的には真逆の系統だろ俺。
298 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:08:56.02 ID:MGWwwK4M0
《パンコウ区オシエツキー通り、敵砲弾が直撃!機動警官隊と歩兵分隊に死傷者多数!!》

《高層観測班、既に拠点ビルの半数が崩落し通信途絶!!Prinz Eugen、水偵の高度は維持してくれ!!》

《Jawohl!!》

俺の容姿に関する諸々はともかくとして、援軍到着後も状況は引き続き芳しくない。第二陣まで殲滅されたとはいえ、前段艦隊の非ヒト型は未だ優に40隻を越える───最悪50隻に届く戦力を保有している。

加えて、後衛には軽巡棲姫ら中核艦隊も健在だ。大編隊による空襲も、F-16の波状攻撃で何とか防いでいるがいつまで持つかは解らない。

ただし、苦境であること自体は変わらないとしてもその「度合い」も不変というワケではない。

('A`#)「CP、ポーランド軍の自走砲隊に前段艦隊の展開地点からシュパンダウ区への砲撃目標変更を指示してくれ!!」

(=゚ω゚)ノ《CPよりフロントライン、シュパンダウ区のどの地点だよぅ!?》

(#'A`)「シュパンダウ区ならどこでもいい、ただなるべく自走砲は全車両での砲撃を行うよう手配を!!」

(=゚ω゚)ノ《解ったよぅ!!》

普通だとここで目標変更の理由付けや砲撃座標の明確な指定を求めてくるのだが、イヨウ中佐は二つ返事で引き受けてくれた。やはり、こういった急場で即断即決を下してくれる上官はありがたいものだとしみじみ実感する。

(=゚ω゚)ノ《〜〜〜〜。

砲撃開始10秒前!前線各位、衝撃に備えよ!!》

きっかり10秒後、とびきり巨大な風船を破裂させたような乾いた音が背後で幾つも響いた。

(=#゚ω゚)ノ《弾着まで10秒……5秒………弾着、今!!》

優に20発を越える榴弾は、前段艦隊すら遙かに飛び越えてベルリンの西端へ。中佐のカウントが終わると同時に、家々の隙間を縫って30km彼方より爆発音が連続的に聞こえてくる。

(;//‰ ゚)「……砲撃が!?」

そして束の間、前段艦隊による砲撃がピタリと止まった。

('A`#)「Bismarck、同区画に主砲射撃!!位置はどうでもいい、とにかく一発ぶち込め!!」

《Jawohl!!

Feuer!!》

瓦礫だらけのベルリンを、「戦艦」の砲声が震わせる。
299 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:17:43.80 ID:MGWwwK4M0
SKC/34型 38cm連装砲。史実で【戦艦ビスマルク】の建造をわざわざ遅らせてまで搭載された巨砲の威力は、現代においても健在だった。

深海棲艦の軽巡・駆逐共が放ってきた砲弾や自走砲隊の榴弾とは一線を画した、桁違いの一撃。かえって「轟音」以外の比喩表現が見当たらない凄まじい弾着音の後に、着弾点付近の建物が崩れ去る耳障りな騒音が続く。

《Prinz EugenよりCP、Bismarck zewiによる艦砲射撃の弾着を確認。なお、敵艦隊への損害は不明!》

《ちょっとドックン、命令があったから撃ったけどあんなところを攻撃して何か意味があったの?》

('A`)「まずいい加減人の名前を覚えてくれるとありがたいなお嬢さん」

とはいえ、ビスマルクが言わんとすることは解る。シュパンダウ区は敵前段艦隊の展開地点から離れていて、地図で見た限り街区の面積も狭くはない。38cm砲の巻き起こした爆発も、区画全体から見れば決して大きくはない。

一応襲撃開始直後に軽巡棲姫と護衛艦隊が目撃された区画ではあるが、「シュパンダウ区の中程で見た」という漠然とした情報のみであり明確な展開地点は不明のまま。そも、敵中核艦隊が未だにシュパンダウ区に展開しているという保障もなかった。

中核艦隊を本気で撃沈しようとするのなら、艦娘と自走砲を総動員してシュパンダウ区全域を更地にするほどの砲幕を張る必要がある。

『『『────ォオオオオオォオオオオオッ!!!!』』』

《Prinz Eugenより市内各区画に通達!》

尤も、俺は最初からそんなもん狙っちゃいないが。

《敵前段艦隊、砲撃を続行しつつ一斉に進撃を開始!!全艦がこちらに向かってきます!!》

(=゚ω゚)ノ《釣り出し成功、お見事だよぅ少尉》

さっすが中佐は話がわかる。
300 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:23:12.71 ID:MGWwwK4M0
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301 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:24:34.85 ID:MGWwwK4M0
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302 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:30:29.51 ID:MGWwwK4M0
《えっ、ちょっと待ちなさいよ。釣り出しってどういう意味───きゃあっ!?》

無線越しに砲弾がアスファルトを砕く音と、とてもドイツ海軍最強の艦娘が上げたとは思えない高い悲鳴が耳に飛び込んできた。次いで、高層観測班から敵砲火がビスマルクの待機地点に集中している旨が焦燥剥き出しの声で知らされる。

戦艦の居場所を晒したのだから、優先して潰そうと思うのは当然か。ともあれ、わざわざ追加の「裏付け」までくれるとは親切な話だ。

('A`)「ビスマルク、損害状況知らせ!」

《数え切れないほどの至近弾に、駆逐艦のものと思われる砲弾が一発直撃!

とはいえ小破にすら至ってないわ、艤装運用に問題なし!》

('A`)「解った、はっきりした損傷を受ける前に一度後退しろ!!」

《Jawohl!!》

深海棲艦は陸上における進行速度は俺達と大きく変わらないが、非ヒト型はその巨体と馬力を活かして建物を崩しながら市街地を“直進”する。狙い通りのこととはいえ、前段艦隊の到着まで時間は潤沢とは言い難い。

打てる手は、同時進行で打つ。

(#'A`)「ティーマス!」

( <●><●>)「Ich verstehe.

前衛部隊各位、路上に再びC-4の設置を急いで下さい。……それと、街路両脇で3階建て以上の建物があればその最上階壁にも取り付けるように。アサルトライフル並びに携行砲のメンテナンスも───」

目配せしただけで飛ばされる的確な指示。しかもこちらが出す予定だった内容とほぼ変わらないときた。

階級譲渡が無理なら佐官への特進を進言しようかと半ば本気で検討しつつ、手元の無線をツンの下に繋げる。

('A`)「ツン、ポーランド軍機甲部隊との合流は!?」

ξ;゚听)ξ《第一波との合流は完了、割り振りも無線合わせも済んでるけど……貴方いったい何したの!?どうして深海棲艦が突然前進なんか───》

('A`)「解説は後だ!レオパルト1とプーマを一両ずつ指揮所の防衛に残して、自走砲以外の全装甲戦力を渡河させろ!」

ξ゚听)ξ《───了解!!》

('A`)「総員に伝達!!間もなく再編された主力機甲部隊が前線に到着する、各部隊は現戦線を固守し主力到着まで耐え抜け!!」

ここで一瞬、サイ大尉やミルナ中尉のように洒落た演説の一つでも飛ばせないかと言葉が途切れた。

まぁ、学がない上コールガールすら口説いた事が無い俺に、あんな演説が思いつくはずもない。

ついでに言えば時間も無かったので、俺はドイツ人のステレオタイプらしく「仕事」の内容だけを伝えることにした。

(#'A`)「これより、深海棲艦の前段艦隊との決戦に移る!!ベルリン奪回への分水嶺だ、全火力を動員して迅速に殲滅しろ!!

化け物共に、艦娘以外にも敵がいると言うことを……」
303 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:31:43.31 ID:MGWwwK4M0
(#'A`)「俺達人間が、奴らの“敵”であるということを教えてやれ!!」

《「《「─────Jawohl!!!!」》」》
304 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:34:58.65 ID:MGWwwK4M0
深海棲艦側にとって最も避けたい事態は、当然のことながら旗艦である軽巡棲姫の撃沈。当然前線への配備はあり得ず、周辺をヒト型で固めた上で後衛待機が基本線となる。

本来なら向こうはそもそもベルリン市から遠く離れた位置に中核艦隊を据えたいはずだが、ここで問題となってくるのが非ヒト型の統率だ。

《Mi-24、第二波が前線に突入する!航空攻撃に巻き込まれるなよ!》

《ZSU-23-4【シルカ】六両が新たに到着しました!!》

(#'A`)「三両は前線に回してくれ!残り三両は艦娘達の護衛に付けろ!」

《Jawohl!!》

姫や鬼の恐ろしさは戦闘能力もさることながら、特筆すべきは“非ヒト型”の統率能力。リ級やル級に代表されるヒト型種が5、6隻のコントロールを限界としているのに対し、姫級は少なくとも100隻以上の非ヒト型を操れるのではとの説もある。

ただし、ポルトガルでの例を見れば解るとおり無制限で100隻を自在にコントロールできるわけではない。アルカンタラマールで交戦した“1-1艦隊”が断熱シートを戦車に被せただけの欺瞞すら見抜けなかったとき、装甲空母姫は打撃艦隊への備えとして遙か外洋に展開していた。

『ォオオオオ……』

《高層観測班より通達、イ級1体が自走砲隊の砲撃により沈黙!おそらく撃沈と思われます!》

('A`#)「中佐、ポーランド軍に攻撃をやり過ぎないよう注意して下さい!前進を辞められたらせっかくの釣り出しが無意味になる!」

(=#゚ω゚)ノ《了解だよぅ!!》
305 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 23:11:00.06 ID:MGWwwK4M0


姫級が非ヒト型を自在に操れる限界距離は、凡そ50kmされる。30km四方のベルリンに確実に指示を届かせかつ電波妨害まで行うとなれば、行動範囲は自然ベルリンに限られる。

後は具体的な位置をどうやって特定するかだが、ポーランド軍の到着がその問題を解決してくれた。

(#゚д゚ )《総員前進開始!!

Los Los Los!!》

《CPより前線、BM-21【グラート】が二十両新たに戦線に到達、砲撃準備完了!!》

('A`#)「ロケット砲は貴重だ、展開位置は分散しつつ合図があるまで待機!照準は敵前段艦隊に集中させるよう指示を!!」

152mm砲。口径のみで言えば第二次世界大戦時の軽巡洋艦主砲に匹敵し、射程と威力も申し分ない【戦場の女神】の一つ。無論“戦車砲よりは効果的”というだけでヒト型達からすれば大差の無い威力ではあるが、少なくとも20門以上が一斉に放たれれば威嚇効果としては決して低くない。

案の定、すぐ近くに飛んできた“脅威度が上がった攻撃”への動揺からか、前段艦隊への指揮が一瞬止まった。

《ポーランド陸軍、携行砲装備の歩兵隊が先行して其方に向かった!合流して防衛線の強化を急げ!!》

《高層観測班より前線各位、敵前段艦隊と接敵まで後30秒!!警戒を!!》

(#'A`)「総員構え、総員構え!!」

(#//‰ ゚)「気合い入れろ、敵は手強いぞ!!」

後は、ビスマルクによる正真正銘“一撃轟沈もあり得る攻撃”を加え、奴らの位置をこちらが把握していると教えてやればいい。

自然、“事故”を防ぐために奴らが取れる策は絞られる。

こちらの重火力部隊や艦娘の浸透を防ぎつつ、かつ向こうが艦娘の殲滅を狙うための手段、即ち。

『『ォオオオオォオオオオオオッ!!!!』』

「Enemy contact!!」

('A`#)「Feuer!!」

前段艦隊の集中運用による、決戦突撃。
306 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/05(月) 23:11:45.64 ID:MGWwwK4M0
今更新ここまで。いやもぅ大変お待たせしまして申し訳ありません。
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 00:46:23.43 ID:33lSIkHA0
おつです!
本当に起死回生と言うか、一手で戦況を転がすとか非凡な証だよなあw
308 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/06(火) 23:31:23.42 ID:7DWlqEE60
正面の道路をひしめきながらこちらに進んでくる深海棲艦達。奴らとの戦闘の口火を切ったのは米海兵隊のLAWとティーマス指揮下部隊のカールグスタフだった。

『オォアアアアッ!!?』

唸りを上げて飛んでいった10発近い対戦車弾頭が、先陣を切っていたハ級の鼻先に直撃する。黒い表皮が裂けて砕け、火花と爆炎、青色の体液が雨に混じってまき散らされた。

『ァアアアアア───ア゛ア゛ッ!?』

(#//‰ ゚)「撃たせるかよこのディープワンめ!!

Keep fire!!」

「「「Yes sir!!」」」

隣で射撃体勢に移ったロ級に対しても、サイ大尉以下海兵隊のジャベリンミサイルが降り注ぐ。

猛烈な勢いで叩き込まれる火線に、先鋒二隻の足が止まった。

('A`#)「とにかく射撃間隔を開けるな!!奴らに砲撃の間を与えないようにしろ!!」

( <●><●>)「上部からの砲撃も有効に活用して下さい。非ヒト型は総じて下半身が小さくバランスが取りづらい、衝撃を与え続ければ射線をブレさせ攻撃の手を止めることが出来ます」

彼我の距離は700Mほど。1キロに満たない距離など“軍艦”からすれば目をつぶっても当てられる至近距離だ。

故に此方は、前段艦隊を殲滅するためになるべく“撃たせない”事が重要になる。

(#'A`)「前衛各位、残弾や余力は一切気にするな!!確実に、一匹残らず奴らを仕留めろ!!」

「《「《Jawohl!!》」》」

止まないどころか勢いを増す雨の中で、砲煙と火薬の匂いが街路に満ちていく。
309 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/06(火) 23:38:00.51 ID:7DWlqEE60
『ウォオオオオ………』

「Enemy down!!」

('A`;)「よし、さい先が───うおっ!?」

(;//‰ ゚)「Ups?!」

既に自走砲隊の攻撃で十分な損害を受けていたのか、ハ級の方が早々に蹌踉めき道路に倒れ込む。

だが、喜ぶ間もなくその後から突き出された艤装が火を噴き、弾丸が低弾道で俺達の頭上スレスレを飛び過ぎた。

『キィアアアアアアアアアアアッ!!!!!』

('A`;)「っ」

砲撃を食らった装甲車数両の爆発音を掻き消すようにして、その艦は声高に叫ぶ。他の非ヒト型よりも1オクターブ高い鳴き声は不快感も増しており、耳を抑える手を止められない。

( <●><●>)「………相変わらず奇っ怪な外観ですね」

声の主の姿を目にし、ティーマスがぼそりと呟いた。

軽巡級の個体であるそいつは、ホ級やト級と同様に頭部と思わしき位置には眼球がない。

のっぺりと頭を覆う白い表皮は被り物のようで、世界的に有名な某ホラー映画の殺人鬼を連想させた。先ほども言った通り眼球はないが、人ならば眼に当たる位置に切り抜いたような穴が空いていることも余計にマスクのような印象を与えてくる。

ホ級やト級に比べるとやや人間に近い体付きといえる。だが胸から下を覆う嘲笑を浮かべたような形の大顎と完全に艤装と融合した右手、何よりもその顎の最下部から突き出した地上を移動するための蜘蛛のような八本の足が明確に“奴”を化け物としてカテゴライズさせた。

『キィアアアアアアアアアアアッ!!!』

奴────軽巡ヘ級が、右腕を此方に向けながらもう一度雄叫びを上げる。

('A`;)「散開!!」

2発目の砲弾が、新たに何両かの装甲車を吹き飛ばした。
310 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/06(火) 23:48:34.07 ID:7DWlqEE60
(;'A`)「点呼、負傷者がいたら報告しろ!!」

( <●><●>)「此方ティーマス、幸い負傷無し。他の兵も無事です」

(//‰ ゚)「アメリカ海兵隊をなめんなよ、あの程度なら避けられる!」

(*゚∀゚)「ツー=アハッツ、健在だぁ!!」

ベーデカー軍曹と共に瓦礫の影に飛び込みながら叫ぶと、幸いにして欠員が出た様子はなかった。なおも何発か砲弾が撃ち込まれる中ちらりと物陰から顔を出し、改めてヘ級を観察する。

全長は五メートル前後、隣のロ級と変わらない。

「……通常種で良かったですね」

('A`)「あぁ、本当にな」

ヘ級flagshipは他の非ヒト型に比べて一段高い戦闘能力を有しており、ヒト型を除くと軍内でも強くマークされる個体の一つだ。特に対潜能力は凶悪で、世界初となる艦娘の“轟沈”はヘ級flagshipと潜水艦娘が遭遇してしまったため発生している。

それも、質量共に他国を圧倒する日本の艦娘が犠牲になったため、当時は特に艦娘保有国を中心に世界中でヘ級の危険性が大々的に取り上げられることになった。

無論、あくまで“flagshipじゃない分マシ”という話であって“楽に片付けられる相手”には残念ながらならない。今の砲撃で隊列も乱され、攻撃は続いているものの敵の反撃も此方に届き始めている。

ましてや、今回の敵は二隻や三隻ではないから尚更厄介だ。

《Prinz Eugenより前衛各位、前段艦隊に動きあり!!

各班正面にて、敵艦隊は戦列を複縦陣に移行中!一斉砲撃を行おうとしている模様です!》
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/07(水) 00:09:27.65 ID:lDmHg5g00
乙、滅茶苦茶熱いわ、幾らでも待てる
312 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 00:30:14.70 ID:QJ8KbxUB0
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313 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 00:38:01.36 ID:QJ8KbxUB0
ガラガラと建物がくずれていく音と、立ち上る土煙。それはヘ級達に後続していた、後続の深海棲艦が前に出つつある印。言うなれば「T字不利」が取られているに近い状況を打破するための軽巡棲姫の差し金だろう。

予想される前段艦隊の残余戦力は50隻程度。此方の前衛部隊が展開している5カ所の拠点に均等に戦力が割り振られたとして、俺達前衛部隊は各所が10隻前後の軍艦と生身で交戦している計算になる。

正念場だ。

(#'A`)「CP、Mi-24があれば敵前段艦隊への攻撃に回してくれ!!自走砲隊には同時にシュパンダウ区への砲撃要請を!!」

(=゚ω゚)ノ《了解だよぅ!ちょうどヘリ部隊の第三波が突入する、全機を攻撃に回す!!》

直後に頭上を飛び越す砲弾と、その後を追って飛来するMi-24。新たな編隊は榴弾がシュパンダウ区へ着弾する瞬間に合わせる形で、一斉に前段艦隊めがけて突入する。

『オォアッ!?………グゥアアアッ!!!?』

『ルァアッ!?』

非ヒト型といえど、上位種の命令があればそれに従うだけで個々の感情や自我を全く持たないわけではない。“自分たちの本陣”に派手な攻撃があれば反応するのは当たり前だし、知能が低い分その反応はより動物的になる。

砲撃に釣られたヘ級達はほぼ全艦が後方に気を取られ、陣形転換も不十分なままヘリ部隊の突入を無防備なまま受ける形となった。

『アォオオオ………』

『グア……』

次々と上空から襲いかかるAT-6 スパイラルミサイルに、既に中破まで行っていたロ級が瞬く間に動きを止める。ビルの向こう側でも何か大きな物が倒れ込む音が聞こえ、すぐに高層観測班からの「ト級沈黙!!」の報告が無線から飛び込んできた。

『キィアアアア────アアアアアアッ!!?』

('A`#)「Los, Los!!」

(#//‰ ゚)「Guys, Go attack!!」

しぶとく生き残るヘ級が艤装をヘリに向けようとするが、当然させるわけがない。

陣形を立て直した俺達から放たれる、ロケットとミサイル。ジャベリンは艤装に、パンツァーファウストは頭部に、カールグスタフは脚部にそれぞれ直撃しヘ級のグロテスクな身体を撃ち抜く。

『ギッ、ギィイイイ……ッ!!』

とはいえこの頃にはヘリ部隊の方が兵装をほとんど撃ち尽くしたらしく、4機編隊のハウンドは12.7mm弾を牽制としてまき散らしながらゆっくりと後退を開始した。

空襲の圧力から解放されたヘ級が、苦悶の声を上げながらも右手を此方に向ける。

尤も、時既に遅しという奴だが。

《CPより前線各位、弾着間もなく。衝撃に備えろ》

『ギッ……ガァアアアアアアッ!!?』

BM-21グラートによる、ロケット弾の一斉投射。

文字通り“豪雨のように降り注いで”きた122mmロケット弾に、ヘ級の身体は断末魔と爆音の中でバラバラに引き裂かれた。
314 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 01:09:27.89 ID:QJ8KbxUB0
('A`)「各班、状況を報告しろ!!」

《第二班、交戦中の敵艦の内イ級elite、ヘ級をそれぞれ1隻ずつ撃沈!また、ホ級が大破状態で後退を開始!》

《第四班より前線指揮車、Mi-24の空襲でロ級2隻が轟沈。また、今のロケット弾投射によりホ級1、ト級elite1が沈黙しました》

《第五班、敵前段艦隊3隻の排除を確認、残余7!》

《此方第三班、交戦中の敵艦隊9隻の内2隻が沈黙!また、ト級eliteが大破状態に移行!》

交戦開始から機甲部隊の到着を待たずに、11隻もの敵艦を沈めることに成功した。はっきりいって、即席の陽動がここまでハマるとは思っていなかったため喜びよりも先に戸惑いが来る。

だが、望外の結果だった故に思考が冷静なままでいれられるのは寧ろありがたい。

('A`)「ロケット砲は再装填に時間がかかる、今のような大砲撃をもう一度行うには間が空く!

各班突出は避けて引き続き敵艦隊の打撃に勤めろ、機甲部隊到着まで此方から攻勢には出るな!」

《《《Jawohl!!》》》

指示を出し終えたところで聞こえてきたのは、新たな車両のエンジン音。といっても、戦車や装甲車のそれより遙かに馬力が低いエンジンが奏でるものだ。それが十何個か重なって、水飛沫の音と共にこの区画に近づいてくる。

( ’ t ’ ;)「※※※、※※※※!!」

深海棲艦への攻撃を続ける俺たちのすぐ傍に、金髪の男が乗る物を先頭として4台の軍用バイクが軽くドリフトしながら停車した。すぐ後に軍用トラックが一台続き、荷台の上に乗っていた武装兵十数人が金髪の男の指示に従って一斉に路上に飛び出す。

ライフルグレネード付きのPMK-PGN-60をほぼ全員が構え、内半数ほどはRPG-7かカールグスタフを背負っている。更にトラックの荷台には、SPG-9まで三脚で備え付けてあった。

先程無線でCPが伝えてきた、ポーランド陸軍の携行砲装備部隊の到着。はっきり言って最高のタイミングに、はっきり言って指揮官と思わしき金髪の男にキスの一つもかましたくなる。
315 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/07(水) 01:10:45.55 ID:QJ8KbxUB0
後半“ながら”だったので飛び飛びでしたが今更新ここまでです。誓って言いますがドク少尉はホモではありません
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 01:35:18.79 ID:sIcmpQ7A0
ワロタ
…やっぱ犠牲はかさむけど、開幕早々の一方的な蹂躙に比べればまだ凌げてるか

深海側からしてみれば、奇襲・強襲で人類側でも強大な地域をあわや陥落…とまで行ったのに、最前線で踏みとどまれる部隊一つでここまでなられちゃねえw
おまけに立て直した所から、戦線に釘付けになってる自分達に対して超火力の投げつけなんて状況は余計に焦りそう
317 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 23:31:51.40 ID:QJ8KbxUB0
( ’ t ’ )<ポーランド陸軍一等准尉、カルリナ=ヴォジニャックです!>

バイクから降りた男……というより青年は、背負ったカールグスタフが通常より大きく見えるほど背が低く華奢だった。英語でカルリナと名乗ったそいつは、俺の下まで駆け寄ると砲声に呑まれないよう声を張り上げる。

( ’ t ’ )<ドク=マントイフェル少尉ですね?これより我が分隊は指揮下に入ります!!>

('A`)<増援感謝する!しかしよく一目で俺のことが解ったな!!>

( ’ t ’ ;)<イヨウ中佐が特徴的な顔立ちなのですぐ解るだろうと……あ、いえ!何でもないです!!>

('A`)

無事作戦が終わった暁にはあの中佐と少し話し合う必要がありそうだ。

というかお前もオブラートに包めやイケメンに言われると二重に抉られるわ。

('A`)<……まず前段艦隊を殲滅する、全火力を正面の敵艦隊に投射してくれ!>

( ’ t ’ )<了解!

※※※※!!」

台詞の後半はおそらくポーランド語での指示だったのだろう。兵士の一人がトラックの荷台に駆け上がり、SPG-9の操作に移る。

残りの面々も、一斉に背負っていた携行砲やアサルトライフルを構え前段艦隊の方に向けた。

( ’ t ’ #)「Strzelac!!」
318 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 23:41:33.43 ID:QJ8KbxUB0
号令一過、新たに24の銃口・砲口が火を吹く。路地を満たす硝煙の濃度が更に増し、ポーランド軍による弾幕が深海棲艦に真っ向から叩きつけられる。

『ヴォオオアアッ!!?』

カルリナ達の攻撃は、バラバラにされたヘ級の遺骸を踏み越えて前進してきたイ級に全て直撃。 多数の砲撃の勢いに圧されたイ級の頭部が跳ね上がり、そのままひっくり返るようにして背中から仰向けに路上に倒れ込んだ。

《────弾着、今!!》

『ギィアッ!!!?……アァ……ァァァ………』

剥き出しになった腹に、タイミング良く迫撃砲弾が立て続けに何発か突き刺さった。

イ級は起き上がれない亀のようにじたじたと足を動かしていたが、声も挙動も弱々しくなっていき最後の一発であっさりと絶命する。

「イ級通常種の沈黙を確認!正面敵残余艦数残り7!!」

《此方五班敵艦隊半数を撃沈。戦闘を続行する》

《四班、ホ級を制圧した!あと少しだぞ、踏ん張れ!!》

敵前段艦隊の損害は、間断ない火砲投射と幾度かの空襲によって今や五割に達しつつある。陽動以外で艦娘の力を使わない中で半数の敵艦を撃破となれば、自分で言ってしまう形になるがこれは奇跡的な大戦果と言える。

此方にも損害は出ているものの、深海棲艦の最大目標である艦娘への攻撃は全くといっていいほど許していない。あくまでベルリンに限った話でいえば、戦況は圧倒的優勢だ。

(#'A`)<カルリナ、もしC-4を持ってきていたら幾つか健在な建物の内壁に仕掛けてきてくれ!>

( ’ t ’ #)<了解!

※※、※※、〜〜〜!!」

無論それは数字上の話であり、ここまでやってなお俺達の状況は微塵も予断を許さない。

('A`#)「ベーデカー、残余敵艦の内訳を報告しろ!!」

「ト級の通常種が一隻、それから“1-1艦隊”とヘ級、ロ級が二隻です!!

ト級以外は、全てelite!!ニ班〜五班においても、残存戦力の主力はeliteです!!」

カーテンコールの訪れは、まだまだ遠い。
319 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 23:56:58.24 ID:QJ8KbxUB0
五つの防衛線を構築する敵前段艦隊は、最後の線である第5陣のほぼ全てをeliteで固めるというかなり慎重で防衛的な展開をしていた。そのため俺達が第1陣、第2陣を一方的に殲滅しつつも、敵艦隊は非ヒト型の上位種戦力を自然な形で温存している。

攻勢にあたっても敵艦隊は極力通常種を前衛に集め、自走砲による砲撃や打撃部隊への盾となるように陣形を組んだ。此方もなるべく優先して上級個体を狙いはしたが、ニ班と四班で撃沈、三班で大破艦が確認できた程度で未だ20隻を超えるeliteが戦闘能力を有して前線部隊と対峙する状態。

火力の差は歴然であり、軽巡棲姫からすればベストとまでは言えずともベターな戦力比に持ち込めている筈だ。

……尤も、それは此方にも言える話であって。

ξ#゚听)ξ「─────Panzer vor!!」

敵戦力を減らしつつの“時間稼ぎ”は、もう十分過ぎるほど終わっている。

ξ#゚听)ξ「Feuer!!」

『ォオオオオオオアッ!!?』

ツンの叫びと共に、戦車隊の先陣を切っていたレオパルト1が105mm砲を撃ち鳴らす。ヒュンッ、という巨人の口笛のような飛翔音を残してAPFSDSが空間を駆け、最後の通常種であるト級の左頭部に突き刺さり装甲皮を貫く。

::(* A )::「ブフムッフフッ」

金髪巻き毛のフランス女がドイツ陸軍の戦車に乗って後方にポーランド軍の装甲部隊を率い、ドイツ語を叫びながら突入してくるというグローバル化の集大成のような光景に思わず変な笑いが口をついて飛び出した。

( <●><●>)「キモッ」

(*゚∀゚)「キモッ」

('A`)

ドイツ連邦陸軍少尉ですが部下が辛辣です。
320 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/08(木) 00:22:46.05 ID:k+hQ6MSy0

眼から流れてきた汗(比喩表現)を袖口で拭き取り、改めて区画に突入してきた友軍戦力を確認する。

ツンのレオパルト1を先頭に、真後ろにプーマ戦闘車と、もう一両のレオパルト1。最後尾には自走対空砲ZSU-23-4【シルカ】が後続。左側に並ぶのは、ポーランド陸軍の戦車であるレオパルト2A4とPT-91【トファルデ】が二両ずつ。

更に軍用トラック一台分ほどのスペースを空けて、トファルデとレオパルト2A4各2両にハンヴィー4両からなる第2陣が続いた。

敵艦砲射撃による混乱や損害もあって若干歪な編成ではあるものの、合計16両という強力な装甲戦力の到着は頼もしい。

一方で、強襲打撃班の搭乗していた車両やカルリナ達の到着によってかなり兵力が密集した形だ。敵艦砲射撃が直撃すれば、命中位置次第では駆逐艦の砲弾でも甚大な損害に繋がる。

まずは、こちらから再度攻勢に動く。

(#'A`)「ツン、装甲車隊を一部右手1ブロック先から迂回させろ!敵艦隊の側面を突く!」

ξ#゚听)ξ「了解! ※※※!!!」

指示を受けたツンが無線に向かってカルリナと同じ響きの言語で何ごとか叫ぶ。ポーランド語まで習得済みとは本当に頼れる才女様だ。

('A`)<カルリナ、一部歩兵を戦車隊に随伴させてくれ!敵の空襲があった場合はアサルトライフルの射撃で援護を!>

( ’ t ’ )<了解!>

('A`#)「サイ大尉、ベーデカー、ティーマス、前進するぞ!奴らの攻撃目標を分散させる!」

「Jawohl!!」

(//‰ ゚)「Roger that!!」

( <●><●>)「Ich verstehe」

('A`#)「ツー、お前も後続しろ!!

Los Los Los!!」

指示を終えた俺は、物陰から路上に飛び出すとアサルトライフルを構えて前段艦隊に向けて駆けだした。
321 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/08(木) 01:04:28.17 ID:k+hQ6MSy0
『ガァアッ!!!』

(*;゚∀゚)「………ひょおうっ!?」

道路に飛び出した瞬間、ト級が反撃の砲火を放つ。突風と熱を残して跳んできた砲弾に、ツーが奇声を上げながら身を竦めた。

爆発音。振り返れば、PGS-9が装備されていたトラックが燃えている。拉げた荷台の上では人の形をした何かが炎を纏い、やや離れた位置では今の攻撃に巻き込まれたらしいドイツ兵が上半身だけで転がっていた。

('A`;)「怯むな!いけ、いけ!!」

ξ#゚听)ξ「ドク達の援護を!!

Feuer!!」

『ウグアッ!?』

『ギイッ!!?……アアアッ!!!』

レオパルト1と、トファルデの主砲が立て続けに吠える。前者の弾丸は寸分違わぬ狙いで先程の着弾点をもう一度射抜き、後者の砲弾はその隣に進み出てきたロ級eliteに直撃する。

だがロ級の方は衝撃に踏みとどまり、艤装をゆっくりと此方に向けてきた。

「Fire!!」

『ガッ……!?』

その横っ面に、サイ大尉に後続していた海兵隊がLAWをぶち込む。踏ん張りきった直後で態勢が安定していないロ級の巨躯が揺れ、砲塔ががくりと下を向いた。

ξ#゚听)ξ「Go Missile!!」

《Jawohl!!》

『アゲァッ!?ア゛ア゛ッ……オォオ………』

ツンが叫び、プーマ戦闘車の砲塔からスパイクLR対戦車が二発連続で撃ち出される。

一発目が頭部を上から撃ち抜き、二発目は持ち上がり露わになったロ級の下あごを吹き飛ばし艤装に突き刺さる。

ロ級はぐらりぐらりと身体を揺らし、イ級の屍の上に折り重なるようにして倒れ込み息絶えた。

『ォオオオオッ!!!』

完全に左頭部を失ったト級の方は、しかしながらまだ生きていた。仲間の死に対する怒りからか一際高く咆哮すると、200mほど距離を詰めていた俺達に向かって機銃を放つ。

('A`#)「飛び込め!!」

(*゚∀゚)「うひぃっ!!」

咄嗟にツーの首根っこを掴みながら、陥没した道路の穴の中に飛び込む。アスファルトを弾丸が削り、すぐ傍を火線が走り抜けた。

道路はハ級による地下からの攻撃で、そこかしこがめくれ上がったり陥没している。幸い、隠れる場所には事欠かない。

敵を引きつけつつのゲリラ戦にはうってつけだ。
322 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/08(木) 01:05:48.35 ID:k+hQ6MSy0
細々とした亀更新になってしまっていますがここで一度。
ご清聴ありがとうございました。明日はお休みなので一気に進めたいと思います
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/08(木) 06:17:01.15 ID:j9LkdJL+o
324 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/08(木) 23:43:32.71 ID:k+hQ6MSy0
('A`)「ツー、行くぞ!」

(*゚∀゚)「あいよぉ!!」

『ォオオオッ!!!』

ツーと共に穴を駆け上がり、ト級に向けて銃撃。狙うはレオパルト1が穿った左頭部の貫通痕。

傷跡への攻撃はアサルトライフルの射撃でも幾らか効くのか、ト級は低い声で嫌がる素振りを見せるが身体の構造が祟って銃火を遮ることは出来ない。無理やり身体を捻って射線を躱そうとする。

「Fire!!」

『ォオアッ!?』

そこに撃ち込まれたのは海兵隊が構えるジャベリンミサイル。ただし、狙った先は頭部ではなく、ト級の腕。

ト級は胴体と足を持たず、陸上移動の際には中央頭部から直接生えた二本の大きな腕で「歩行」する。未発達で小ぶりな足しか持たない上に胴体の大きさに対して脚部の形状がアンバランスな駆逐艦よりマシだが、それでも地上での機動力は高くない。

ξ#゚听)ξ「Feuer!!」

『ウ゛ア゛ア゛ッ……』

回避運動のためにもつれていた腕に直撃するミサイル。ぐらりと傾き戦車砲の射線に晒されるト級の頭部艤装。

4両の戦車による一斉射撃は、吸い込まれるようにして頭頂から生えた砲塔に直撃。

グワリと音が鳴り、艤装が爆散。弾薬の誘爆によってト級の中央頭部が火の玉と化し、数秒間の制止を経てそのままト級は腕を折り斃れる。
325 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/08(木) 23:51:30.74 ID:k+hQ6MSy0
『キィアアアアッ!!!』

(;'A`)「止まるな!!」

そのまま足を止めず走り抜け、今度は路上に転がった黒焦げの市営バスの下へ。入れ替わりで前に出てきたヘ級eliteの機銃掃射が後ろから猛然と追いすがってくる。

命がけの鬼ごっこはかろうじて此方に軍配が上がり、ツーと俺が残骸の影に飛び込んだ直後弾丸が炭化した車体にめり込んだ。

『グェアッ!?』

『キィ………キィアアアアッ!!?』

同時に砲声。ヘ級の後ろで今度は単縦陣への移行運動をしていたイ級の横っ面で爆発が起きる。思わぬ方向からの一撃にふり向いたヘ級の腹にも、連続して二発の砲弾が突き刺さった。

『ウォオオッ!?』

『ゴォアッ!?』

ヘ級とイ級への砲火を皮切りに、奴らの右手から横殴りに叩き込まれる砲弾と銃弾の嵐。ホ級が砲塔を向けようとしたが即座に砲火が集中し、照準を絞る前に放たれた艦砲射撃はあらぬ方向へと飛翔する。

ξ#゚听)ξ「ドク、別働隊が敵艦隊側面に到達!攻撃を開始したわ!」

('A`#)「正面戦車隊並びに随伴歩兵隊、最大火力にて敵艦隊を打撃せよ!!とにかく撃って撃って撃ちまくれ!!」

ξ#゚听)ξ「Jawohl!!

※※※、※※※!」

( ’ t ’ #)「※※※※!!」

弾幕射撃が更に勢いを増して俺達を追い越し、ヘ級達に猛烈な勢いで襲いかかる。無数のマズルフラッシュと爆発光が、雨の中で途切れることなく煌めく。

『ォオオオオォオオッ!!!』

(;'A`)「………っ!」

次々と深海棲艦達の巨躯に吸い込まれていく火線。だが、全身に銃火を纏いつつもヘ級が右手の艤装を強引に持ち上げツン達の方へ───はっきりと、ツンが乗るレオパルト1へ向ける。

ξ;゚听)ξ「……ヤバ」

(;'A`)「ツン────!」

砲声。
326 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/08(木) 23:54:17.37 ID:k+hQ6MSy0
ξ;><)ξ「きゃあっ!?」

不幸中の幸いというべきかヘ級が放った砲弾は、苛烈な砲火の衝撃で軌道がぶれレオパルト1への直撃を免れる。

それでも、周囲を固めていた随伴歩兵の直中に飛び込んだ砲撃による損害は小さくない。海兵隊とドイツ兵それぞれ数人が武器を構えていた着弾箇所からは人影が消え、代わりに一掴みほど人体の残骸のみが残された。

(;'A`)「ツン、無事か!?」

ξ; 听)ξ「…っ、大丈夫!かすり傷すら負ってないわよ!

Feuer!!」

『イ゛ァ゛ッ?!』

こみ上げてきた何かを飲み下したような間が空いたあと、気丈な返事と共にすぐさま指揮を再開。

4両の戦車隊による一斉射撃。ヘ級の右手艤装が爆散し、艤装の破片が俺達の周りまで散らばってくる。

( <●><●>)「Feuer」

(//‰ ゚)「Fire!!」

『ギィッ───ヴガァアアアアッ!!!?』

傷口を抑えて蹲ったヘ級の胴体に、下から殴り上げるようにしてカールグスタフとパンツァーファウスト、そして最後の一門となったLAWが直撃。

無理やり起き上がらされた上半身を横合いから戦車隊と随伴歩兵隊の一斉砲火が殴りつける。下半身を覆う顎のような艤装が破砕され、肩口から引き裂かれた右腕がくるくると空に舞い上がり路上に落下した。

ξ#゚听)ξ「Feuer!!」

( ’ t ’ #)「Strzelac!!」

『ガッ、ギッ………』

カルリナとツンの号令は、同時。膨大な量の砲弾に加え、計ったようなタイミングで飛来した迫撃砲隊の支援射撃が加わりヘ級を滅多打ちにする。

爆圧によって脇のビルに押しつけられるような形になったヘ級はそのまま数秒にわたり無抵抗で撃たれ続け、やがて糸が切れた操り人形のように身体から力が抜け動かなくなった。
327 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 00:41:04.41 ID:89CTCDsC0
undefined
328 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 00:57:02.22 ID:89CTCDsC0
側面と正面の2方向から攻撃に晒される敵艦隊は、一方への反撃を計れば他方からの集中砲火でそれを妨害され今や反撃さえままならない状態となっている。

ただでさえ至近距離のところを更に肉薄し、背後から飛ぶ味方の射線にすら身を晒す形で実行した“釣り”。目の前をうろちょろと鬱陶しく動き回る俺達を潰すことに夢中になり、敵艦隊は側面への警戒を完全に怠った上ツン達正面戦車隊への攻撃すらろくに行えていない。

命懸けの餌役は無事狙い通りの釣果に繋がってくれた。もう一度やれと言われても死んでもゴメンだが。

(=#゚ω゚)ノ《前線衝撃に備えるよぅ!!

弾着、今!!》

遠くの方で榴弾の炸裂音がズンッと響き渡り、直後に何か重いものが地面に斃れる音が続く。俺達以外の前衛部隊も戦況は順調に推移しているらしく、無線からはなおも断続的に敵艦の撃沈や損害報告が流れてきている。

《CPより前線各位、敵前段艦隊の損耗率60%を突破。

また、敵爆撃編隊は未だ増強を継続もポーランド空軍の迎撃により打撃を受け続け前進には至っていない。市外から艦隊の増援が到着した様子も確認できず。

我々が優勢だ、オーバー》

勤めて平静を装いながらも、言葉の節々に驚愕と喜悦が浮かび上がったオペレーターの経過報告が耳に入った。まぁあの絶望的な状況から市街地中央まで戦線を押し返し、おまけに艦娘戦力はなおもほぼ完全な状態で健在と来ている。

確かに、俯瞰してみるとなかなか信じがたい巻き返しぶりだ。ポーランドからの増援といういい意味での計算外が発生したことも含めて、オペレーターの興奮は無理のないことかも知れない。

('A`)「………ツー」

だが、俺はまだオペレーターの歓喜に同調するつもりはない。

(*゚∀゚)「あん?」

('A`)「後退の用意しとけ。ティーマス達にもハンドサインで伝えろ」

作戦が終わっていないからと言うこともあるが、何よりも絶対に忘れるべきではないことが一つ。

“此方にとっての優勢は、敵にとっての苦境”だ。

(*;゚∀゚)「え、なんで?」

('A`)「いいからすぐに準備だ。合図があったら走れ」

《Graf Zeppelinより前線、レーダーに感あり!!》

向こうが、このまま無策で前段艦隊の壊滅を待つはずが無い。

《機影100余、ポーランド空軍と交戦中の主力部隊とは別に低空域で突入!

マントイフェル少尉、全機が貴方のところに向かっている!注意しろ!!》
329 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 01:15:24.73 ID:89CTCDsC0
グラーフからその報告が無線越しに伝えられた瞬間、俺はホ級elite等残った深海棲艦達に背を向けて走り出す。ツーが直ぐに続き、ティーマスやサイ大尉、ベーデカーも次々に物陰から立ち上がり踵を返す。

(;'A`)「ツン、援護を!!」

ξ#゚听)ξ「任せなさい!!

Feuer!! Feuer!! Feuer!!」

( ’ t ’ #)「※※※※!!」

『ギアガッ!?』

『ァアアァア……』

味方陣地へ疾走する俺達とすれ違い、砲弾が風を蒔いて敵艦隊を襲う。攻撃態勢に入ろうとしたロ級が側面と正面から同時に十数発の砲弾を受けて蜂の巣になった。

(=#゚ω゚)ノ《マントイフェル少尉、そっちに砲撃が行ったよう!!衝撃に備えて!!》

間髪を入れずCPからの報告。榴弾が雨空から降り注ぎ、炸裂。爆発音と着弾音、ホ級共が上げる断末魔が次々重なり、筆舌に尽くしがたい不協和音のオーケストラが開催される。

(;'A`)「っととと!?」

『アァ………ァァァァァ……』

十何発目かの弾着で引き起こされた揺れに足を取られ、俺は前のめりにすっ転びつつ味方部隊の展開地点まで何とかたどり着く。

背後では、弱々しい鳴き声と湿った地面に重い何かを横倒しにしたような音が響いた。

《イ級elite、沈黙!》

ξ#゚听)ξ「そのまま撃ち続けて!ドク、怪我は!?」

('A`)「おかげさまで五体満足だ!

ティーマス、欠員は!?」

( <●><●>)「ご安心を、全員無事なのは既に解っています」

('A`)「よし!間もなく敵機が来るぞ、総員対空警戒に移れ!!」

俺の叫びにまるで合わせたようなタイミングで、真正面……つまり西側から砲声に混じって微かに聞こえてくるレシプロエンジンの音。音源はぐんぐん近づいてきており、会敵が間もなくであることをご親切に俺達に教えてくれる。
330 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 01:37:29.02 ID:89CTCDsC0
ξ;゚听)ξ「ドク、別働隊はどうする?!退避させるなら直ぐに動かすけど……」

('A`)「いや、退避は必要ない。それと正面戦車隊も深海棲艦への攻撃は続行!ただ機銃の仰角は調整しておいてくれ!」

ξ゚听)ξ「解った!各機銃手、対空戦闘用意!!」

絨毯爆撃によるベルリン全域の焦土化を狙ったことからも解るとおり、深海棲艦側は既に悪天候化の急降下攻撃は最早効果がないことを“学習”した。

そして、大物量による無差別攻撃が“国外からの増援”という彼我どちらも想定していなかった事態で頓挫した以上、空襲方法は自然と先程俺達に対して大きな成果を上げたもう一つの方法────低空域での平面飛行から対地掃射に限られる。

加えて言うなら、敵機は前線の中央に布陣する俺達に戦力の全てを注ぎ込んできた。おそらく戦況の推移や増援戦力の流入の仕方を観察した結果、軽巡棲姫はここが人類側前衛の中枢だと見抜いたのだろう。

《接敵30秒前!!》

急速に近づいてくる艦載機の飛翔音を聞きながら、俺はつくづく思う。

《敵機、来襲!!》


('A`)「C-4、爆破!!」

敵が予想通りの動きをしてくれたのは、本当に幸運だった。
331 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 02:08:13.70 ID:89CTCDsC0
道路両脇に立ち並ぶ、幾つかのビルや家、或いはその残骸。

特に三階建て以上のものに重点的に仕掛けられていたありったけのC-4爆弾が、海兵隊の起爆スイッチによって一斉に炸裂する。

同時に、ダイレクトアタックモードで待機していた虎の子のジャベリン数門も火を噴き、次々と建物に着弾した。

『『『!!?!??』』』

道路に面する側の壁が吹き飛び、窓ガラスが粉砕され、屋根の一部が飛び散る。

敵艦隊と俺達の間に横たわる、700Mの空間。艦載機隊の突入コースでもあったその空間は、C-4爆弾の起爆によって飛散した礫の散弾に覆い尽くされた。

『────!!?』

『!!!?』

『───………』

時速六百キロで低空通過する戦闘機など、人間の動体視力で捉えるには限界がある。だが、艦娘達が使う“三式弾”の要領で「敵機の軌道そのもの」を攻撃すれば話は別だ。

同高度で飛散した礫は突入してきた【Helm】達を真横から撃ち抜き、軌道を遮って激突させ、上から降り注いで押し潰す。少し大きめの“瓦礫”が落下した時など、一気に七、八機が上から押し潰される形で粉砕される。

艦載機達に届かない、更に下側の“散弾”も敵機の入射角を妨害する。何より厄介なことにこれらは意図的に狙って放たれる弾丸ではない。軌道も速度も大きさもすべてがランダムであり、密集して突入してきた敵編隊は回避も攻撃もままならず撃ち抜かれ羽虫のように堕とされてく。

('A`#)「Flak Feuer!!」

(#<●>∀<●>)「フゥハハハハハーーーーー!!!!人類の敵は消毒だぁあ!ーーーーー!!!」

(*;゚∀゚)「ヒェッ」

ξ#゚听)ξ「全車両一斉射!!撃てぇえええ!!!」

散弾の飛散空域から逃れるべく上昇する敵機は、統率も取れていなければ速度も大きく落ちている。200前後のアサルトライフルによる一斉射や戦車隊の機銃掃射、何よりも、【シルカ】の対空弾幕を切り抜けられるはずがない。

( <●><●>)「───【Helm】、最後の一機を撃墜」

ξ#゚听)ξ「視認できる後続の敵影無し!頭上安全確保!!」

敵航空隊は、全滅した。
332 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 02:50:14.48 ID:89CTCDsC0
『ォオォォォォ………───』

「Enemy down!!」

散弾攻撃の間も、側面部隊による攻撃と迫撃砲隊の支援は当然継続している。

数を減らし、航空支援も不発に終わったホ級達に最早抵抗の術が残されていなかった。

航空隊の殲滅劇が終わる頃、正面でもう1体のイ級eliteが火達磨になりながら息絶える。

残るは、ホ級とロ級の2隻のみ。

《敵前段艦隊、戦力稼働率20%切りました!》

(=#゚ω゚)ノ《Graf Zeppelin以外の全ての艦娘部隊に通達!!速やかに戦闘態勢!!

ドク=マントイフェル少尉からの合図があり次第突入せよ!!》

《Jawohl!!

ようやく真打ち登場なのね、本当に待ちくたびれたわよ!!》

《此方Graf Zeppelin、共に前衛で戦えないのは残念だが艦載機の用意は出来ている!指示があればいつでも飛ばせるぞ!!》

《Prinz Eugenより全戦隊、敵艦隊の増援未だ無し!戦況我々に極めて優勢です!!》

《CPより前線各位、Mi-24の第4波が突入開始!!

どうやら我々の奮戦が伝わっているらしい、過去に類を見ない大編隊だ!巻き込まれるなよ!!》

飛び交う通信は、今や活気に満ちあふれ誰もが力強い声でやりとりをしている。まだ中核艦隊が残っていることは皆理解しているだろうが、此方にもBismarck zweiを筆頭に艦娘はいるのだ。

極めて軽微な損害で前段艦隊を殲滅しつつあり、続々到着する援軍のおかげもあって質量共に充実した装甲戦力も合わせれば戦力比でも完全に敵艦隊を逆転している。油断は出来ないが、俺達は「勝機」と十分にいえるものを手にした。

────だと、言うのに。

(;'A`)「…………」

( <●><●>)「………少尉?」

俺の脳裏を過ぎったのは、何故か“奴”の満面の笑みで。

《Mi-24第4波、後五秒で─────!?》

その予感を裏付けるように。

数機の【ハインド】が、弾丸に貫かれて火の玉に変わる。
333 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 03:14:33.93 ID:89CTCDsC0
新たに空を照らす、四つの炎の華。交わされていた無線が一瞬完全に沈黙し、何人かの息を呑む音が伝わってきた。

《………!? ゆ、友軍機、次々と被弾撃墜!!》

《墜落してくる、散開しろ!》

まるで呆けたように空中で一斉に動きを止めてホバリング状態になっていたMi-24の編隊は、五機目の犠牲が出たところで我に返り慌てて散開運動を開始。

だが、乱れた隊列に容赦なくその正確無比な砲撃は叩き込まれる。六つ、七つと落下する火の玉が増えていき、街のあちこちに突き刺さる。

幾つかの悲鳴が、爆発音と共にぷっつりと途切れた。

(=;゚ω゚)ノ《CPよりマントイフェル少尉、今のは敵前段艦隊の砲火か!?》

('A`;)「いや、違う!!それより遙かに遠くだ!!ベルリンの西………シュパンダウ区からの砲撃と思われる!!」

(=;゚ω゚)ノ《シュパンダウ区………》

ξ;゚听)ξ「冗談でしょ?それってつまり───」

《前線各位、此方Prinz Eugen!!西部街区から“艦影”が急速に接近!!

敵艦数は6、全て“ヒト型”です!!》

プリンツの絶叫に近い報告が、俺達の鼻先に改めて“絶望”を突きつける。

《おそらく中核艦隊の構成艦と思われます、後数十秒で接敵───何よこれ、あいつらどこでこんなものを………》

混乱の極みに達したプリンツの無線越しの声は、途中で遮られて聞こえなくなった。

その方角から聞こえるはずのない、複数の“エンジン”が奏でる駆動音と。

艦砲射撃による、轟音で。
334 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 03:42:46.13 ID:89CTCDsC0
( A ;)「…………っっっ!!」

まるで、思い切り頭を殴りつけられたような衝撃。

僅か数メートル背後で巻き起こった大爆発が発する熱と音量、そして閃光が五感を麻痺させ一瞬俺の意識を現実から切り離す。

飛びかけた意識を繋ぎ止めたのは、皮肉にも火達磨で落下してきたPT-91【トファルデ】が地面に叩きつけられる二度目の轟音だった。

('A`;)「……クソッ、被害報こk」

俺の隣で、「ぐしゃっ」というトマトが潰れたような生々しい音が鳴る。

首から上がぐちゃぐちゃのグロテスクな肉塊に変わったベーデカー軍曹の胴体をそのまま踏みつぶして、騒々しいガスの排気音をまき散らしながら一台のドデカイバイクが飛び込んできた様が、まるでスローモーションのように俺の視界に映し出された。

どう考えても正規品ではない、例えばアーノルド=シュワルツェネッガーやジェイソン=ステイサムが乗っている方が様になる化け物じみたデカさのソレが、そのまま100Mほど前進した後ドリフトしながら俺達が展開するT字路の丁度真ん中辺りで停車する。

『〜〜〜♪』

バイクに跨がっていた黒髪の女は、鼻歌交じりに右腕を近くのビルに向けた。

( ゚ t ゚ ;)「──────!!!?」

「艤装」が、腕周りに展開される。

「────重巡リ

主砲を向けられたドイツ兵の最後の叫びは、砲撃に飲み込まれ掻き消えた。
335 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/09(金) 03:44:02.84 ID:89CTCDsC0
どうにかこうにか目標の場面まで……ようやく本当に「あと少し」のところまでたどり着きました。

今更新ここまで、今しばらくお付き合いいただければ幸いです
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 08:01:22.11 ID:nW807Z8s0
とうとう名有りに死者が…
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 10:05:50.38 ID:tRvaf8uA0
乙です!
希望を鼻先にちらつかせつつ粉砕しにくる鬼畜と、それを予見しきれる主人公なんだから本当に凄い(なお実力差
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 12:44:23.72 ID:eRVENTReo
もうだめだあ…おしまいだあ…
339 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/09(金) 23:29:07.46 ID:89CTCDsC0
体調不良に付き更新お休みと致します。申し訳ございません。
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 17:05:31.73 ID:uN7VJoLPO
ヴィルヘルム2世「大儀である。ゆっくり休んでくれたまへ」
341 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/10(土) 23:33:20.01 ID:Ha2dbAED0
素人目にも違法な改造がたっぷり施されていると解る、派手な塗装に規格外の図体を持った世紀末仕様のバイク。

その上からひらりと舞い降りて傍に立ったソイツの────リ級eliteの紅い二つの瞳が俺を真正面から見据えた。

(;'A`)

『────』

視線が交わったのは、刹那。瞬き一度分の間にすらならない。

当然言葉など発せられていないし、発していたとしてそれが意思疎通を可能とする「音」にするには時間が足りない。そもそも、奴らが人語を俺達に解る形で実際に喋ることが出来るのかも甚だ疑問だ。

だが、俺はその時、奴の感情を確かに「聞いた」。

奴の言葉を確かに「感じた」。












サァ、私ト遊ボウ。
.
342 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/10(土) 23:42:17.62 ID:Ha2dbAED0
(;'A`)「全歩兵隊、目標を重巡リ級eliteに変更しろ!!」

ざわりと肌が粟立ち、背中に先程の何十倍も強い寒気が走る。ほとんど反射的に叫びつつ、G36Cを俺自身もリ級eliteに向ける。

(;'A`)「戦車隊への攻撃を絶対に許すな!倒せなくてもいい、とにかく攻撃を集中して足だけでも止めろ!!」

「「「Jawohl!!」」」

当然歩兵の携行火器などどれだけ寄せ集めても効果が無いとは解っているが、撃たずにはいられない。指示を出さずにはいられない。

一応言葉にしたとおり、ツン達装甲車隊を破壊させないという理由もあるにはある。残りたった2隻とはいえ前段艦隊は全滅には至っていない。ここで戦車を潰されてホ級達の雪崩れ込みまで受ければ、俺達の区画は全滅も十分視野に入る。最低限正面の敵艦隊を完全に沈黙させるまでは、別働隊との連携を維持して戦車隊に働いて貰う必要がある。

それでなくても向こうが撃ってくるのは重巡の主砲撃だ。密集した状態で直撃を受ければ、それだけでも損害は甚大になる。

だが、そう言った理屈や理論は全て建前に過ぎない。

割合として最も大きく、かつ単純な理由は、恐怖。

奴の感情を知ることで唐突にわき出た恐怖と嫌悪が、俺を攻撃に突き動かした。

(;'A`)「────Feuer!!」

全身に靄のように纏わり付く恐怖を振り払おうとするように、俺は声を限りに叫ぶ。

幾十の砲撃が、幾百の銃撃が、全方位から“化け物”に殺到する。
343 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/10(土) 23:52:14.01 ID:Ha2dbAED0
『……………』

仮に非ヒト型であればflagshipですら一息に沈められそうな、まさに“弾幕はパワー”を地で行く猛射撃。

息を継ぐ間すらなく注ぎ込まれる弾丸の群れが自身を守る障壁の上で弾けて火花を散らす様を、リ級eliteは腰に手を当てて立ち尽くしながら見つめている。

………ツンがル級と遭遇した際には、ミルナ中尉等歩兵隊の攻撃もダメージを与えた様子は無いもののル級の動きを封じる役には立っていたという。eliteとはいえあくまで重巡、耐久力や装甲値、馬力などは戦艦に劣るはずだ。

それらを考慮すれば、「重巡リ級eliteは俺達の猛攻に動きを縫い止められている」というのが本来導き出される自然な結論。

だが、銃火と爆光の合間から見える奴の視線がそれを真っ向から否定した。

『…………?』

(;'A`)(………あの時と同じだ、おちょくってやがる!)

タホ川で俺達の攻撃をわざわざスレスレで回避しながら見せた、戯ける子供のような表情。小首を傾げ、もう片方の手をこめかみに当て、此方の動きを観察しているような視線の動き。

弾幕の中で相変わらず立ち続ける姿は街角でくつろぐティーンエイジャーのようで、少なくともアレを「凄まじい攻撃の圧力のせいで動けない」状態に見えたとしたら俺は精神異常者だ。

薄ら笑いと共に細められた眼が、口より遙かに雄弁に奴の「言葉」を物語る。

マサカ、コレデ終ワリジャナイダロウネ?

モウ少シ、オモシロイモノ見セテヨ。

('A`)「………なら、お望み通りにあっと驚かしてやるよ」
344 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/11(日) 00:30:59.49 ID:JslRmT7e0
小銃の銃口を心持ち奴の眼の辺りに持っていきながら、一瞬近くにいた海兵隊の一人にハンドサインを送る。彼は即座に頷くと、さりげなく別の射撃を行っている兵士の影に隠れて腰に手をやり何かを取り外した。

ツンがル級と交戦した際に、“それ”は非常に大きな効果を発揮したという。考えてみれば当たり前のことだが、ヒト型の障壁は閃光や音といったものまで完全にシャットアウトしてくれるわけではないらしい。

別に、必ずしも攻撃だけが方法ではない。強烈な光と予期せぬ大音響は、時として銃口を突きつけるよりもよほど確実に敵の動きを止めてくれる。

「Flash Ban!!」

叫び声と共に投げられる閃光弾。正確なコントロールで飛ばされたそれは、ノーバウンドでリ級の足下まで到達する。

『────♪』

(;゚A゚)「………はっ!?」

かつん、かつんと、二回乾いた音がした。

地面を閃光弾が撥ねた音ではない。それは、リ級eliteがまるでブンデスリーガのような鮮やかな足捌きで閃光弾をトスし、そのまま背後に蹴り上げた音。

( ゜ t ゜ ;)「────!!?」

低いライナー性の弾道で更に飛距離を伸ばした閃光弾は、リ級eliteを背後から攻撃していた部隊────カルリナ達ポーランド兵とドイツ軍の混成部隊が敷く隊列の真っ只中で炸裂した。

(   t   ;)「……………ッッッ!!!」

「※※※※!?」

「※※※……※※……」

「な、何が………」

「クソッ、おいしっかりしろ!敵はまだ健在だぞ!!」

フラッシュと、殺傷力はほとんど無い爆発音が連なり鳴り響く。200メートル以上離れた此方にはほとんど影響がないが、問題は信じがたい奇襲でこれを至近距離から諸に受けたカルリナ達だ。

凡そ70名ほどの部隊は、前衛の約半数は完全に機能が停止していた。耳を抑えながら蹲るなどして咄嗟に回避したり閃光弾の効果が十分に行き届かない位置取りだった残りの半数も、味方の介抱や戦列の組み直しに追われて完全に攻撃の手が止まった。

途端、リ級が動く。
345 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/11(日) 01:11:23.76 ID:JslRmT7e0
undefined
346 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/11(日) 01:17:50.92 ID:JslRmT7e0
『─────!!!』

(;゚A゚)「伏せろ!!」

(;//‰ ゚)「Shit!!」

ξ;><)ξそ「きゃああ!?」

「※※※ッ!!?」

両手の艤装が同時に唸り、俺達と奴の右側面から攻撃をかけていた部隊に機銃掃射が襲いかかる。直ぐ後ろでホ級達への攻撃を継続していた戦車三両の装甲にも弾丸が降り注ぎ、レオパルト2A4の車上でポーランド兵が一人後頭部を撃ち抜かれてハッチの中に崩れ落ちた。

『─────!』

(;<●><●>)「リ級、後衛部隊に突貫!!」

珍しく動揺が露わになったティーマスの声を尻目に、少し芝居がかった動きでバイクを飛び越えながら疾走。砲撃する素振りは一切見せず、カルリナ達めがけて疾走していく。

「………なっ!?り、リ級接きn」

「総員白兵用i」

最初に気づいたドイツ兵二人が、進路を塞ごうと飛び出す。

振りかぶられる拳。生々しい破砕音と共に一人の頭がはじけ飛び、もう一人は動きの延長で繰り出された回し蹴りに四肢を飛散させながら胴体だけがビルの壁に叩きつけられた。

『───!!』

「く、来るな!!来るなぁ!!!?」

「※※※※※※※※!!!!」

何人かの後衛兵が半狂乱で小銃弾をばらまくが、当然そんなもの微塵の効果もない。

「ひっ」

『ッ!!』

上から抑え付けるようにして右手を振り下ろし、最前列にいた小太りの兵士が短い悲鳴を残して上からぐしゃりと潰される。

元は人間だった赤い肉塊を踏み越えて、リ級eliteは文字通り後衛部隊に“殴り込ん”だ。

(;*゚∀゚)「おいドク撃とうぜ!このままだと後衛が全滅だ、効かなくても気ぐらい引かねえと!!」

(;'A`)「バカか、あの乱戦状態にぶっ放したらいくら何でも味方撃ちは避けられねえぞ!!」

とはいえ、待っていたところで状況はどのみち悪化の一途だ。あの弾幕が動きの抑制効果すら得られていなかった以上どのみち限りなく絶望的であるにしろ、座して全滅を待ってやれるほど此方は潔い人間性ではない。

それに、同僚だけではなく核をぶっ放されるかもしれない国に外から増援に来てくれた奴らも“遊ばれて”いるのを見殺しにできるほど、【有能な軍人】でもない。

(#'A`)「ツン!戦車の稼働状況とホ級共の状態を!」

ξ;゚听)ξ「別働隊は全車両健在、私達も損失はさっき破壊されたトファルデのみ!機銃手が一人やられたけど継戦には問題ないわ!」

(#'A`)「引き続き前段艦隊への攻撃を続行、それと後続の“バイク”に気をつけろ!!

────総員、目標重巡リ級elite!

Los Los Los!!」
347 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/11(日) 01:19:09.37 ID:JslRmT7e0
今更新ここまで。今月中頃には終わるかなといったところです。
ご静聴ありがとうございます
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 01:46:24.19 ID:AeQid7eA0
おつです
流石に蹂躙されるが、ここまで破天荒な敵相手じゃ最大戦力でなんとか凌ぎつつ、更に何らかの有効打を…まじで無理ゲーだなw
349 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/11(日) 23:32:45.29 ID:JslRmT7e0
幾らかの随伴歩兵を戦車隊の周りに残して、響く砲声を背に後衛に向かって走る。

( ’ t ’ ;)「※※※、※※!!」

『………』

リ級は、更に前へ。何とかフラッシュバンの衝撃から立ち直ったカルリナ達が至近距離から弾幕を浴びせるが、それをものともせずに踏み込むと、低い姿勢から拳を固めて振り上げた。

「プヘッ」

ブチュリ。筋繊維と血管がまとめて引きちぎられる音がここまで聞こえてきて、拳を受けたポーランド兵の首が千切れて天に舞い上がる。

「お゛ぁっ!?」

やけくそに近い形で別方向から飛びかかった兵士の腹には、肘打ちが(まさしく)突き刺さった。血と内蔵が破れた肉の隙間からぼたぼたとこぼれ落ち、奴の腕を伝って足下に生臭い水溜まりができる。

(#'A`)「狙え、撃て!!」

( <●><●>)「Allemann sperrfeuer!!」

リ級が乗ってきたバイクを踏み越え蹴倒しつつ、暴れくるうリ級に背後から肉薄。残り50メートル程まで詰めたところで、俺とティーマスを含めた20人ばかりがリ級への射撃を再開した。

『─────』

「Oh !?」

リ級の反応は早かった。首無しポーランド兵の肩の辺りを鷲掴みにし、振り向き様に俺達の方へ投げつける。

全盛期ボリス=ベッカーの全力サーブを彷彿とさせる勢いでそれは飛来した。俺達に後続してきた海兵隊の一人に屍体の砲弾が直撃し、彼は低い呻き声と共に吹き飛ばされた。

『♪』

(*;゚∀゚)「来たぞおい!!」

(;'A`)「畜生が!!」

(;<●><●>)「っ」

そのまま、タックルをかますレスリング選手のような姿勢で突進してくるリ級elite。当然銃弾で止められる筈はなかったので、隣のティーマスを咄嗟に蹴り飛ばしつつ自身も真横に転がる。

俺とティーマスが直前まで立っていた場所に叩き込まれる拳。殴られた箇所を中心に、およそ1メートル四方の地面がひび割れ陥没した。
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