島村卯月「マーキング」

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100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 01:04:14.50 ID:Oxw99VoL0
乙。無事を祈ってる
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 11:46:36.53 ID:h6n3JeX8o
何の印を刻むのか楽しみにしてる
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/30(火) 19:22:11.98 ID:Im+6Xg/jo

生きてくれ

卯月のコレも一種の長女シンドロームだったんだろうか
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 08:42:21.10 ID:MjO1zGnk0
「はぁ……」


レッスン終了後、ホテルの自室にへと戻った私はため息を吐きつつ、備え付けられたベッドの上にへと突っ伏しました。


戻ってきて直ぐの事ですので、着替えなんてしていません。


「今日も、疲れたなぁ……」


そう呟くと、私は仰向けになって部屋の天井を見上げました。


見上げた先には、何かがある訳ではありません。


ましてや、私が最も話したい相手の顔がある訳でも無いのです。


そんな風に考えていると、私の脳裏には昼間にあった一幕の光景が蘇ってきました。


「……羨ましいなぁ」


思わず私はそう口にしていました。


あの休憩中に、凛ちゃんとそのプロデューサーさんとの一連のやり取りを見てしまったせいか、そう思う様になってしまったのです。


「私だって……同じ事をしたいのに……」


けど、願ってもそれは叶わない。


プロデューサーさんは割りと几帳面なのか、そんな所を見かけた試しは無いですし、いない人のネクタイを直すなんて、更に無理ですから。


104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/10(土) 08:43:05.51 ID:MjO1zGnk0
「せめて……お話ぐらいは、したいな」


私が天井に向かってそう吐き捨てた、その時でした。


唐突に、どこからか軽快な音楽の音が鳴り、私の耳にへと届きました。


体を起こさずに、顔だけを音のする方向にへ向けると、部屋に隅に置かれた机の上で、チカチカと私の携帯が光を放っている。


音の発生源はそこから……つまり、着信が入った事を、私に知らせているのでした。


「誰からだろう……」


凛ちゃんか、未央ちゃんでしょうか……そう思ってから私は起き上がり、携帯にへと向かってのそのそと歩いていく。


机の上の携帯を手に取り、煌々と輝くディスプレイに表示された名前を見た時、私はカッと目を見開きました。


「プロデューサーさんだ!」


思わず大声を上げてしまった私。けれども、それ程に嬉しかったんです。


プロデューサーさんも美穂ちゃんや響子ちゃんの付き添い、更に自分の仕事もあって忙しいというのにも関わらず、こうして電話を掛けてくれたから。


そして私は慌てながらも電話が切れてしまわない様に、急いで電話に出るのでした。


「もしもしっ! 卯月ですっ!」


『おぉ、卯月。久しぶりだが、随分と元気だな』


携帯越しに聞こえてくる、私が待ち望んでいた声音。


他の誰でも無く、私のプロデューサーさんの声でした。


それを聞くだけで、胸の鼓動が高鳴り、心はときめいてしまう。


さっきまでの憂鬱な気持ちなんて、いつの間にかどこかにへと吹っ飛んでいました。


105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 08:43:35.75 ID:MjO1zGnk0
「はいっ! 島村卯月はいつも元気です」


『うん、それなら良かったよ。実は少し、心配だったからな』


「心配、ですか?」


『あぁ、渋谷さんのプロデューサーから卯月の調子が悪そうだと聞いていたからな。けど、この感じだと、大丈夫そうだな』


調子が悪い……私は凛ちゃんのプロデューサーさんに、そんな事は言った覚えは無い。


という事は、感付かれたかもしくは、凛ちゃんが私の様子を危惧して、伝えたのでしょう。


余計な真似を……なんて、そんな事は思ったりはしません。


寧ろ、ナイスな判断だと思います。


それがあったからこそ、こうしてプロデューサーさんが電話を掛けてくれたのだから。


『それで、どうだ? ライブの方は順調か?』


「はい。凛ちゃんや未央ちゃん……それに、スタッフの皆さんのお陰で、何とか頑張れてます」


『そうか……しかし、ごめんな』


「えっ?」


『本来なら俺も卯月の傍にいてフォローすべきなんだろうが、一緒にいれなくて、本当にすまない』


「い、いえ、仕方がありませんから。プロデューサーさんも、お仕事でお忙しいですし……」


目の前にはいないプロデューサーさんへそうでは無いのだと、私は空いている手を振りながらそう言いました。


「でも……こうして電話してくれたのは、嬉しかったです。私もちょっぴり、不安だったので……プロデューサーさんの声を聞けて、会話ができて、それも解消されました」


『……ふっ、そんな大袈裟な』


「そんな事はありませんよ、本当の事です」


鼻で笑うプロデューサーさんに、私はそう言って返しました。


プロデューサーさんは分かってないけど、私にとって、あなたはそれぐらいに特別な人なんですよ。


少し話しただけで不安が消し飛んでしまう様な、そんな特別な人。


106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 08:46:42.17 ID:MjO1zGnk0
お久しぶりです、何とか帰ってこれました

一週間程、上海に研修に行ってましたが、帰国後に高熱を出して今まで更新できませんでした

またこれから再開していこうと思いますが、その前に明日は特別な日なので

何か別のものを考えれたらなと思っています

実現できたのなら、明日にでも投下すると思います

それでは、短いですが今から出勤なので今回はここまでで

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 10:38:36.31 ID:+5U+DP5C0
一旦乙
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 11:37:29.20 ID:8HWoGq3fo
おつ、無理せず自分の体調に合わせて早く書け(無茶苦茶)
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/20(火) 08:45:33.57 ID:g/h+z7u80
「所で、プロデューサーさんの方はどうですか? 美穂ちゃんや響子ちゃんとしっかりやれてますか?」


『あぁ、その辺は大丈夫だ。二人共しっかりとしてるから、心配しなくても良さそうなぐらいだ』


「……なら、良かったです」


『それなら……早く二人から離れて、私の傍に来て下さい』


『私はポンコツで、しっかりなんてしてませんから、心配して下さい』


プロデューサーさんの言葉に反応して、心の奥底からそんな声が込み上げてくる。


私はそれをグッと我慢して、口に出さない様に、また奥底にへと呑み込む。


本当は言いたいけど、言ってはダメなんです。


我が儘な娘だと思われて、敬遠されるのは嫌だから。


『二人も卯月に会えなくて寂しい……って、言ってたぞ。渋谷さんといい、本田さんといい、卯月は友人に恵まれてるな』


「えぇ、本当にその通りだと思います。私も、早く帰って……二人と、お話したいです」


『あの二人なんかより、もっとプロデューサーさんとお話がしたい』


『私が会えなくて寂しいのは、プロデューサーさんだけ』


『それ以外の有象無象なんて、どうだっていいんです』


一瞬の頭痛の後、目の前の景色が歪んだ様に見えました。


心の奥底で声が響く時はいつも頭痛だけが響いたけれども、この時には目眩もしました。


時に揺れる様な、ぐにゃりとした曲がりくねった世界。


110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/20(火) 08:46:20.67 ID:g/h+z7u80
時に揺れる様な、ぐにゃりとした曲がりくねった世界。


目が回る様な光景に、気持ち悪くなりそうだった……けど、これにも私は何とか頑張って耐えました。


こんな事なんかで、せっかくのプロデューサーさんとの会話を、止めたくはない。


「だから、今の話……プロデューサーさんから、二人に伝えてくれませんか……?」


『ん? 別にいいが……でも、それだったら直接……』


「私からよりも、プロデューサーさんが伝えてくれた方が、二人に伝わりますから」


『あ、あぁ、そうか。なら、分かったよ』


「はい、よろしく、お願いしますね」


困った様にそう言うプロデューサーさんですが、今頃は、怪訝そうな表情をしているでしょう。


私が言った言葉の意味を、把握できないで、納得していないから。


私が美穂ちゃんと響子ちゃん、二人に直接電話をするのは別に構いません。


けど、今の私が二人と会話をしたら、何を言ってしまうか、分からない。


伝える事を伝えられずに、私の悪意を撒くだけ撒き散らして、それで終わるだけ。


それでしたら、プロデューサーさんを介した方が、問題は起きません。


頭の回らない今の状態でも、それだけは分かって、理解はしています。


111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:00:37.73 ID:Plqn2Zsn0
だからこそ、こういった話は直ぐに切りにしてしまわないと。


私にとっては、さっきのは話の切り出しでしかありません。


二人の話を聞くよりも、プロデューサーさんには、私の話を聞いて欲しい。


ここしばらくは話せていなかったから、別に、いいよね。


誤って何かを言ってしまう前に、早く、話題を変えてしまいましょう。


『まぁ、二人にはそう伝えておく事にして……引き続き、卯月は卯月で頑張ってくれ』


「あっ、はい。大丈夫です。頑張ります」


『うん、頼むな。……さて、それじゃあ伝える事は伝えたから、そろそろ切るぞ』


『「……えっ?」』


プロデューサーさんが最後に放った一言。


何を言ったのかが分からず、私は咄嗟に、そう聞き返していました。


『いや、そろそろ切らないと、明日に響くからな』


正直、最初は私の聞き間違いかと思いました。


112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:01:24.90 ID:Plqn2Zsn0
けれども、そうでは無い。違いました。


話題が途切れた所で、別の話を挟もうとした矢先……プロデューサーさんはそう宣言してきたのでした。


私の言葉も聞かず、私の了承も得ずに、一方的に。


『あまり遅くなると、卯月に迷惑が掛かるしな』


『遅くなる』と、言われて私は反射的に時計を見ました。


まだ時刻は夜の九時を指す前。全然と遅くは無い時間帯。


それなのに、電話を切ろうとするなんて、あんまりじゃないですか。


『レッスンとかで疲れていると思うし、今日はもう、ゆっくりと休んでくれ』


「あ、あの……」


だから、ちょっと待って欲しい。まだ終わりにはして欲しくは無い。


まだ私は何も伝えられてはいない。


今日起きた事や昨日の事、それからライブでの詳しい話。


私がどう感じて、どう考えて、どう耐えて、どんな風に頑張ったのか。


プロデューサーさんに聞いて欲しい事は、幾らでもある。


だから、だから、だから……、


113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:02:29.94 ID:Plqn2Zsn0
『それじゃ、明日も頼ん……』


『「待って下さいっ!」』


プロデューサーさんが私との会話を締め括ろうとして何かを言いかけた時。


私は叫ぶ様にしてそう言って、プロデューサーさんの言葉を遮りました。


『う、卯月……?』


電話越しからでも分かる、プロデューサーさんの困惑する声。


驚きましたか? びっくりしましたか?


普段の会話の中では、こんな風に大声なんて出した事はありませんからね。


あなたに対して、声を張り上げた事なんて、一度もありませんから。


でも、そうでもしなかったら、電話を切られそうでしたから……ごめんなさい。


『「……まだ、いいですよね?」』


『え、えっ?』


『「もう少し……続けませんか? 私との……お話」』


114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:03:08.59 ID:Plqn2Zsn0
『あ、いや、その……』


『「プロデューサーさんには、聞いて欲しい事がたくさんあるんです。なのに、切ろうとするなんて、あんまりじゃないですか」』


すらすらと、言葉が淀みなく流れる様にして、口から紡がれる。


まるで、今まで遠慮して抑圧していたものが、堰を切って出てくる様に。


私が何かを考える前に、勝手に自由にと口は動いているのでした。


『けど、卯月も疲れてるんじゃ……』


『「私もプロですから、体調管理は万全です。疲れてませんから、大丈夫ですよ」』


『しかし、だな……』


『「それとも、嫌なんですか? 私と、お話をするのは……」』


『べ、別に、そんな事は言ってない……』


『「なら、いいですよね。私との、お話♪ ふふふっ♪」』


『あ、あぁ……』


プロデューサーさんに対して、こんな我が儘を言うのは、初めてでした。


ずっと、ずっと……私は耐えて、忍んで……迷惑を掛けない様にと、何も言わなかった。


でも、私は遂に言ってしまった。


自分の為の、プロデューサーさんにとって得にはならない、そんな我が儘を。


115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:03:42.89 ID:Plqn2Zsn0
『まぁ、でも……あまり長くはならない様に、ほどほどでだからな』


『「はい、分かってます。プロデューサーさん」』


以前の私なら、こんな事を言えば罪悪感を感じ、心の中はあの人に対する申し訳無さでいっぱいになっていたかもしれません。


だけど、今の私の心の中には、そんなものは一切無かった。


いつもの曇天模様の心境では無く、清々しいまでの雲一つ無い晴れ空。


嬉しさと興奮からか、不安や寂しさなんて全てが吹き飛んでいました。


『「あっ……それと、もう一つ……いいですか?」』


『ん? どうしたんだ?』


『「こうして電話をするの……今日だけじゃなくて、明日も、明後日も……して、いいですか?」』


『……メールやSNSじゃ、駄目なのか?』


『「駄目です」』


私の要求に妥協案を提示してきたプロデューサーさんに対して、私ははっきりとそう告げて拒否をしました。


というよりも……そんなもの、駄目に決まってるじゃないですか。


私はそんな、文章での言葉のやり取りを求めたいとは思っていません。


私が求めているのは、プロデューサーさんとの会話、それだけです。


それ以外の妥協案だなんて、受け入れられないですから。


1
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/24(土) 01:04:26.56 ID:Plqn2Zsn0
なんて思いながら、私はプロデューサーさんからの返事を待った。


悩んでいるのか、数秒程考え込み、そして……、


『……分かった、分かったよ』


『「……!!」』


『卯月がそこまで言うのなら……俺としては、構わないぞ』


そう言って、プロデューサーさんは私の要求をそのまま受け入れてくれた。


嬉しさのあまり、胸が弾んで、心が躍る。


『「はいっ、ありがとうございますっ!」』


『ただし、あまり遅くはならない様にな。お互い、忙しくはある事だしな』


だけれども、釘を刺す所はしっかりと刺す。


そこは当然といいますか、プロデューサーとしての責務でしょうか。


でも、何だろうと構いません。


プロデューサーさんとお話ができるのなら、それでいいですから。


『「分かりました。それじゃ、まず……今日の事なんですが……」』


私はそう言った後、手始めに今日起きた事を話し始める。


大事な事も、何でもない様な事も含めて全部を。


その結果、伝えたい事が多過ぎて、通話は数分では終わらずに、数時間も掛かる始末でした。


流石に長過ぎて、プロデューサーさんには苦笑されてしまいました……けど、良かったです。


不安や寂しさのほとんどが、プロデューサーさんとの会話で払拭されましたから。


……貴重な、私とプロデューサーさんの、お互いの睡眠時間を削って、ね。


117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 20:12:54.27 ID:AP+RG1lDO
マダカナー
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:48:33.52 ID:IQGbnOTy0
……………


………





「――――まむー、しまむーってば!」


「え、えっ?」


そう声を掛けられながら横から肩を揺すられて、私はハッと目を覚ましました。


「あ、あれ……?」


二度、三度とまばたきをした後、周りを見渡す。


目の前に広がるのは、主に灰色が目立つ、大型ワゴンの殺風景な車内の光景。


それから左側にある、窓の外にへと視線を向けると、体育館の様な大きな建物が見えました。


この建物が何なのかは、前日に調べてはあったので、はっきりと分かります。


ここは今いる都市でもかなりの規模の多目的ホールで、今日の私達が活動する現場でもありました。


「え、えっと……もう、着いたんですか……?」


寝惚け眼をこすりつつ、まだはっきりとしない意識の中で、私はそう言いました。


119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:49:37.04 ID:IQGbnOTy0
私が覚えているのは、移動中の高速道路での風景。


そこまでは覚えているけれども、それ以降はさっぱりと記憶に無い。


どうやら、その辺りからここに至るまで、私はずっと眠っていた様でした。


「もうちょっと……掛かると思いましたけど……」


「いやいや……ホテルを出てから、それなりには時間は経ってるからね」


私の言葉に、そう言って反応してくれた声。


その方向に視線を向けると、そこには苦笑した表情の未央ちゃんが待っていました。


「おはよう、しまむー」


「あっ、はい……おはようございます」


おはようと言われたので、私は未央ちゃんに当たらない角度で頭を下げて、おはようと返しました。


出掛ける前にも未央ちゃんとは一度は挨拶は交わしているので、これで二回目の挨拶になります。


120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:50:18.86 ID:IQGbnOTy0
「でもさ、しまむー。本当に良く寝てたね」


「えっ、そ、そうですか? そんなには、寝ていないとは思いますけど……」


「ううん、ぐっすりと熟睡してたよ。どれだけ呼び掛けても、全然反応が無かったから。肩を揺すった所で、ようやく目を覚ましたって感じだね」


「うっ……それは、すみません……」


「けど、どうしたの? それだけぐっすりと眠ってたという事は、昨日は寝れてないとか?」


「え、えっと……」


未央ちゃんからの素朴な疑問による問い掛け。


普通なら答えられるはずの、何でも無い質問。


でも、私はそれを聞いて、何も返す事ができない。


口を一文字に閉じたまま、視線をあちこちにへと泳がせるだけでした。


「あれっ? しまむー?」


返事が無い事を見兼ねて、未央ちゃんは不思議そうに顔を覗かせてくる。


聞いているのに相手が答えないのだから、当然の反応とも言えます。


121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:51:03.65 ID:IQGbnOTy0
「……ははーん、なるほど」


けど、未央ちゃんはしばらくすると何やら得心してか、納得をした表情で私から離れていきました。


「そういう事ね、何となく分かっちゃった」


「分かった……ですか?」


「多分だけど、しまむーの事だから……夜遅くまで長電話をしてたとか? それで寝る時間が短くなったんじゃない?」


「そ、それは、その……ははは」


「……うん、その反応を見ると、図星って所だね」


私の空笑いを見て聞いてか、未央ちゃんはうんうんと首を縦に振ってそう言った。


普通なら『何をやってるの』とか、非難されるかもしれなかった。


仕事を前にして、体調管理を考えない行動をしていれば。


けど、未央ちゃんの口から叱責の言葉は飛んではこない。


ただその表情を緩めて、愉快そうに笑みを浮かべていました。


122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:51:36.09 ID:IQGbnOTy0
「まぁ、でも、私も実は同じ事をしてたから、人の事は言えないんだけどね」


「えっ? 未央ちゃんも……ですか?」


「うん、そうだよ。あーちゃんと夜遅くまで話し込んでたんだ」


未央ちゃんの言うあーちゃんとは、同じ事務所のアイドルの高森藍子ちゃんの事です。


ゆったりと落ち着いた雰囲気を持つ女の子で、頻繁にではありませんが、私も何度か会って話した事があります。


「ちょっと相談事があって、ついつい長くなって……という訳」


「な、なるほど、そうだったんですね」


「それで、しまむーは誰と話してたの? みほちー? それともきょーちゃん?」


美穂ちゃんに響子ちゃん。


未央ちゃんが予想で上げた話し相手は、私と同じユニットの二人。


けど、違います。そうではありません。


二日、三日前であれば、話し相手はその二人で合ってます。


私が昨日話していたのは……、


123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:52:16.08 ID:IQGbnOTy0
「えっと、秘密……です」


私は唇の前でバツ印を両手の人差し指で作り、申し訳無さそうにそう言いました。


「えー、何でさ」


私の『秘密』という言葉を耳にして、未央ちゃんは苦笑しつつも苦情の声を上げます。


「別にいいじゃん、教えてくれてもさ」


「だ、駄目です。こればかりは、教えられません」


どんなに懇願されようとも、私は口にするつもりはありません。


昨日の話し相手が、プロデューサーさんだという事を。


それに、少しでも口を割れば、余計な事まで話してしまいそうですから、言わないんです。


例えば、先週にプロデューサーさんから電話を貰って以降、毎日電話を掛けているとか。


「もう、仕方ないなぁ。しまむーがそこまで言うなら、聞かないでおいてあげる」


「う、うん、ありがとう。ごめんね、未央ちゃん」


「でも、あれだからね。長電話のし過ぎで、体調を崩すとかは無しだよ」


124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:53:08.05 ID:IQGbnOTy0
「わ、分かってますよ、それぐらい」


未央ちゃんからの追及に、私は反論する様にしてそう言いました。


心配してそう言ってくれているのでしょうけど、大丈夫です。


眠気に関しては言い訳できませんが、体調に関しては問題はありません。すこぶる調子が良いです。


以前は頻繁に起きた頭痛も吐き気も、最近は起こらなくなってますから。


これも、プロデューサーさんと話せる様になったからかな。


不安や寂しさ、ストレスが解消されて、万全の状態になれているのだと思います。


「おーい、二人共」


と、そんな風に考えていると、前の方から私達を呼ぶ声が聞こえてきました。


顔を上げて視線を向けると、そこには未央ちゃんのプロデューサーさんが顔を覗かせていました。


「そろそろ降りてくれると、助かるんだが」


「ごめんごめん。今出るから」


「す、すみません」


私達は謝りながら頭を下げると、自分の荷物を持ち、ワゴン車の外に向かって移動を始める。


125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:53:45.94 ID:IQGbnOTy0
「全く、しっかりしてくれよ、未央」


「だから、ごめんって。この後にしっかりと汚名挽回はするからさ」


「汚名は挽回じゃなくて、返上な」


「はいはい、分かってますよ」


通り過ぎようとする未央ちゃんに対して、未央ちゃんのプロデューサーさんはそう言いました。


更に、任せたとばかりに擦れ違い様にポンッと肩を叩き、見送ったのでした。


それを後ろで見つつ、私も降りて出ようとその横を通り抜けようとする。


「卯月ちゃんも、頑張ってくれよ」


すると、未央ちゃんに続き、未央ちゃんのプロデューサーさんは私にもそう言ってくる。


それから同じ様に通り過ぎようとする私に対して、肩を叩こうとその手を挙げました。


振り上げられたその手は、真っ直ぐ、ゆっくりと私の肩に降り立つ。


軽く触れただけですので、当然痛みは無く、ちょっとした衝撃が走るだけ。


でも、何でだろう。


126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 05:55:10.50 ID:IQGbnOTy0
「……っ!?」


未央ちゃんのプロデューサーさんの手が私の肩に触れた瞬間、ゾクッとした悪寒が背筋を走る。


それと同時に、何故だか腕には鳥肌まで立っていました。


突発的に起きた症状に、私は思わず立ち止まってしまいます。


「……? 卯月ちゃん?」


私が立ち止まったのを不思議に思ってか、未央ちゃんのプロデューサーさんは怪訝そうな表情で私を見ていました。


「えっと、何かあったのかい?」


「な、何でもありません、大丈夫です」


私は首を横に振りながらそう言うと、そそくさとその場から離れていきました。


「……?? 何だったんだろう」


「ん? プロデューサー、どうかしたの?」


「いや、未央と同じ様に卯月ちゃんの肩を叩いたら、何か様子がおかしく……」


「……もしかして、プロデューサー。しまむーにセクハラでもしたんじゃ……」


「いやいや、そんな事してないって!」


後ろから二人のそんな会話が聞こえてきますが、頭には入ってこない。


会話の内容よりも、今の私には何で悪寒なんて走ったのかが気になって仕方がありません。


風邪でも引いたのか……いえ、体調は万全ですから、それとは違います。


なら、一体……何で急にそんな事が?


答えを探ろうと考えてみても、何も思いは浮かばない。


その原因について頭を悩ませつつ、私は会場の中にへと足を踏み入れていくのでした。 


127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/04(火) 06:08:27.37 ID:IQGbnOTy0
最近、全く更新が出来ていなかった件

というのも、先月末で会社を辞めたので、その引継ぎやら何やらで忙しく、更新できませんでした

まぁ、言い訳なんですがね、そんな事

今は以前に比べたら比較的に落ち着いているので、今月中には完結を目指していきます

そういえば、交流会とかやってるみたいですけど、あれってどうなんでしょう

参加できれば、参加してみたいですね(←こんな事ばかりしてるから、更新が遅れる)

それではまた書き溜めたら投下していきます

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/04(火) 06:16:10.38 ID:EEbvIe1l0
お疲れ様です
ゆっくりと待ってるよ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/04(火) 07:55:39.60 ID:+5xKOmWyo

今更だけどこのシリーズ美波以外のアインフェリア、Masque:Radeも李衣菜除いて全員出てるのか
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 03:02:54.72 ID:ciD1yO2bo
お疲れ様です、色々と
交流会の方は7月からの完全新作だそうで
締切14日までなんで、やるなら今から書き始めないと厳しいですかねー
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/06(木) 07:29:37.36 ID:LQD6ol260
乙、まずは自分の生活を最優先してくれ
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 14:25:38.43 ID:E9baXYTG0
イベントホールに入ってから数十分ぐらい経った頃。


着替えやメイクといったこの後の仕事に必要な準備を済ませて、凛ちゃんと未央ちゃん、それと私の三人は楽屋で出番が来るの待ってました。


いつもならここでみんなとお話とかをしたりして、緊張を和らげたり、気合を入れたりする場。


でも、私は楽屋にいるのが落ち着かなくて「外の空気を吸ってくる」と、言って二人を置いて一人楽屋から抜け出す。


それから少し離れた場所にある、通路に置かれたベンチの上で休んでいました。


「ねぇ、卯月。本当に大丈夫なの?」


そんな私の下に、同じく楽屋から出てきた凛ちゃんがやって来て、そう声を掛けてきました。


133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/17(月) 14:26:09.23 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 14:26:24.60 ID:E9baXYTG0
「えっ? えっと、その……何が、ですか?」


「何って……卯月の体調の事だよ」


『何で分からないの』とばかりに、凛ちゃんは少し強めの口調で訴える。


「先週にも言ったけど、今の卯月はどうも……様子がおかしいからさ」


「そ、そんな事は無いですよ。私は……」


そう、そんな事は無いと思います。それこそ、凛ちゃんの思い過ごしじゃないかと。


体調は万全の状態であって、精神的にも比較的に落ち着いている。


これだけしっかりとしていれば、問題という事は無いはずです。


それなのに、凛ちゃんは何がおかしいのだと言うのでしょうか。


135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 14:27:04.59 ID:E9baXYTG0
「今の私は、元気が有り余ってますので、大丈夫ですよ」


「……それ、本気で言ってる?」


「えっ?」


私がそう言うと、凛ちゃんは訝しむ様な目で私を見つめてきました。


まるで、私が言っている事が間違いだと告げる様にして。


「私の目にはとてもじゃないけど、卯月が元気そうだなんて見えないよ」


元気そうに見えない? ……何で? 何でそんな事を言うのだろう。


別に、今の私はいつもと変わらない、いつもの島村卯月なのに。


私のどこを……一体、何を見てそう判断をしているんですか。


136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 14:27:34.08 ID:E9baXYTG0
「移動中はずっと寝てるし、未央のプロデューサーもどこかおかしいって言ってたし……これのどこが元気なの?」


「さ、流石に、疑い過ぎじゃないですか。私は、どこも……」


「……どこも?」


「どこも……おかしくなんて、無い。多分、凛ちゃんの気のせいだと思います」


「……そう、分かった」


凛ちゃんはそう言うと、私の側からゆっくりと離れていく。また楽屋にへと戻る為に。


でも、途中で一度足を止めると、振り返って再び私を見つめる。


「でも、これだけは言わせて。絶対に、無理だけはしないで」


「わ、分かってますよ、それぐらい」


「ううん、分かってない。分かってないから、こうやって言ってるの」


凛ちゃんは首を横に振って、またも私の言葉を否定する。


137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/17(月) 14:27:35.87 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/17(月) 14:27:59.65 ID:E9baXYTG0
「みんな卯月の事を心配してるの。私や私のプロデューサー……未央や未央のプロデューサーだってそう思ってる」


「……」


「それだけは、忘れないでね」


それだけを言うと、今度こそ凛ちゃんは立ち去っていった。


一人残った私は目の前にある殺風景な通路の壁を見つつ、考える。


私は果たして、無理をしているかという事を。


凛ちゃんは私が分かっていない、無理をしているという風に言った。


けど、そんな事は絶対に無い。私はただ、自分にできる事をやっているだけ。


頑張って、頑張って……自分の仕事をこなしているだけに過ぎないんです。


「そうだよ……私は、頑張ってるだけだから」


私は立ち上がると、凛ちゃんと同じ様に楽屋に戻ろうとして歩き出す。


楽屋に戻れば二人からまた何かを言われるかもしれないけど、構いません。


だって、二人が何を言おうと……私の体調は万全なんですから。


139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/17(月) 14:28:00.91 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/17(月) 14:28:54.29 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/17(月) 14:29:34.56 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/17(月) 14:30:35.78 ID:+oBT0wSu0
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:33:06.24 ID:HWaFrKsf0




……………


………





「それでは島村さん。そろそろ始まりますで、準備の方をよろしくお願いします」


「はい、分かりました。こちらこそ、よろしくお願いします」


開始の報告をする為に声を掛けてきたイベントのスタッフさんに、私はそう言ってから頭を下げました。


それを確認すると、スタッフさんは直ぐに私の下から離れていく。


次は凛ちゃんの下に向かうのか、それとも未央ちゃんの下か。


それとも、自分の持ち場に戻ったのでしょうか……いえ、こんな事を考えても何にもなりませんね。


私は自分の……これからの仕事に向けて、集中するだけですから。


今日のお仕事はファンの皆さんの前で歌ったり踊ったりするライブではありません。


私達、ニュージェネレーションのメンバー一人一人と交流を深める握手会。


ファンの人達と間近で直接触れ合える、又と無い機会です。


144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:33:36.09 ID:HWaFrKsf0
「はぁ……やっぱり、緊張するなぁ」


少しでも緊張を和らげようと、私は二度、三度と深呼吸をして心を落ち着かせる。


これまでに握手会の経験が無い訳ではありません。


アイドルとしてデビューした直後に、ユニットの宣伝とCDの販促でみんなと初めて参加しました。


それ以外にも何度か……今のライブツアー中にもと、経験はそれなりには積んでます。


だけど、それでも……何度も経験を積んでも、不安からの緊張は絶対に起きます。


「……でも、頑張らなくちゃ。うん」


けど、それだからといって、沸き起こる不安に負ける訳にはいきません。


私達に会う為に……せっかく来てくれているファンの皆さんに、不安な表情なんて見せられない。


そんな表情で出迎えられでもしたら、失礼ですからね。アイドルとして失格です。


それにファンの人達の声を直接聞けるのは、こうしたイベントの時でしか無い。


だからこそ、私は最高の笑顔で皆さんを出迎えたいと思います。


そしてそんな風に思っていると、外からの騒めきが強まった様に感じました。


145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:34:03.48 ID:HWaFrKsf0
列が進みだしたのかな……と、そう思うのと同時に、私の前に一人目のファンの方が現れる。


見た所は二十代ぐらいの痩せぎす男性で、Tシャツやらリストバンド等と、随所に私達のグッズを身に着けている人でした。


この人も緊張しているのか、表情は強張っていて引き攣っている様に見えました。


「こんにちは! 島村卯月です!」


けど、私が笑顔でそう言うと、強張っていた表情が緩んで自然体に近づく。


あぁ、良かった。私の笑顔を見て緊張が和らいだのだったら、嬉しい限りです。


「う、卯月ちゃん。い、いつも、応援してるよ」


男性はそう言うと、私に向けて右手を差し出しました。


握手会なのですから、握手を求めてくるのは当然の事です。


「はいっ、ありがとうございます!」


私はそれに応えるべく、両手で男性の手を包み込む様にして、がっちりと手を握って握手を交わす。


これまでの私のアイドル人生、又は十七年の人生の中で何十、何百以上としてきた行動。


何でも無い……そう、何でも無い普通の行動。それなのに、


「……っ!?」


男性の手に触れた瞬間、何故だかまた、ゾクッと背筋に悪寒が走る。


会場に入る前、未央ちゃんのプロデューサーさんに触られた時と同じ症状が、再び起きたのです。


また、何で?


不可解な出来事にまた直面してか、私は思わず笑顔を崩してしまう。


146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:34:32.83 ID:HWaFrKsf0
「……? 卯月ちゃん?」


そんな私の様子を不審に思ってか、男性は覗き込む様に私の顔を見てからそう声を掛けてきました。


どうかしたのだろうか……と、怪訝そうに私の顔を見つめる男性。


それを見た時、『しまった』と思った私は直ぐに元の笑顔に戻る、戻そうとして、


「ご、ごめんなさい。何でも、無いんです」


取り繕う様に、弁明を言う様にして私は男性にそう告げた。


「え、えっと、これからも、私達をよろしくお願いしますね」


「あ、あっ、うん。卯月ちゃんも、頑張ってね」


「はいっ、頑張りますっ!」


取り繕う事に成功したのか、はたまた男性が気を遣ってくれたのかは分からない。


けど、これ以上の事を追及する事はしてきませんでした。


「今度のライブ、楽しみにしてるね」と、言って男性は私の下から去っていく。


その後ろ姿を「ありがとうございました」と、言いつつ手を振って、私は見送りました。


147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:35:19.06 ID:HWaFrKsf0
男性が離れて、いなくなったタイミングを見計らって、私は目の前で両手を広げてそれをジッと見つめる。


「……何で、だろう」


何でまた、悪寒なんて走ったのか。


その謎を解こうにも、幾ら考えた所で答えは出てこない。


考えれば考える程、袋小路に迷い込む様なものでした。


そうしている内に、次のファンの人が私の目の前にへと現れる。


私は落としていた視線を元に戻し、気を取り直して笑顔でその人を出迎えました。


「やぁ、卯月ちゃん。今日も頑張ってるね」


さっきの人と違って今度はピンク色の法被を羽織って、頭に鉢巻を巻いた男性。


奇抜な恰好をしていますが、以前にも何度か会った事があって、私も見覚えはありました。


ニュージェネレーション……というよりも、私が出るイベントに毎回の様に現れる、常連さんと言ってもいい人です。


「あっ、はい。今回のイベントも来てくれたんですね。いつもありがとうございます!」


「ははっ、卯月ちゃんの現れる所なら、僕はどこにだって駆けつけるさ」


その言葉通り、本当にどこにだって駆けつけてくれているんです。


このライブツアー中にも最前列で応援している姿を見掛けていますし……こういう人を、ファンの鑑と呼ぶのでしょうか。


私を応援する為だけにそこまでしてくれて……アイドルとして、嬉しく思ってしまいます。


そしてこの人もさっきの男性と同じく、握手を求めて自分の手を私に向けて差し出しました。


148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:35:49.73 ID:HWaFrKsf0
「今度のライブも期待してるから、頑張ってね、卯月ちゃん」


「はいっ! 島村卯月、頑張りますっ!」


私はそう言うと、数分前と同じ行動をまたしてみせる。


両手を前に差し出して、男性の手を包み込む様にして握手を交わす。


今度こそは、何も起こらないだろう……と、そう思いながら。


だけど……


「……っ!?」


また、だ。またも男性に手が触れた途端、背筋に悪寒が走り、全身が寒さに包まれる。


以前にもこの男性とは握手を交わした経験はあった。そしてその時には何も起きなかった。


なのに、それなのに、不可思議な症状が再発してしまった。一体、どうして……?


訳の分からない出来事に、思考が止まってしまいそうでした。


でも、私は戸惑いながらも心配されない様に、表情を崩してしまわない様にと、笑顔だけは維持し続ける。


その甲斐があって、男性は私の異変に気づかないまま「またライブで」と、言って満足気に去っていきました。


そして手が離れ、男性がいなくなれば寒さは消えてしまう。まるで何事も無かった様にすっきりと。


そのままの状態が続いてくれれば良かった。でも、そうはいかなかった。


149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:36:24.99 ID:HWaFrKsf0
「卯月ちゃん」


「ありがとう、卯月ちゃん」


「頑張ってね」


「今日も可愛いよ」


「卯月ちゃんと話せて良かったよ」


何人、何十人と何回も握手を交わす。その度に悪寒が走り、私を蝕んでいった。


しかも、症状はそれだけに止まらなかった。


回数を重ねていく内に、声を聞くだけで頭痛がして、吐き気が込み上げて、症状はますます悪化していく。


正直な所、その場に立っているのもやっとなぐらいでした。できる事なら、一度この場から抜けて休憩を取りたいぐらい。


でも、握手会が始まってからしばらく経ってるし、会場を見渡せばまだまだ大勢のファンの人達が控えている。


それなのに……体調不良なんかで、そんな理由で抜ける事なんてできません。休みたいなんて、我が儘を言っている場合じゃありません。


「今日は、来てくれてありがとうございます」


声が震えそうになるのを何とか抑えて、荒れていく呼吸を必死に落ち着かせて、表情が歪みそうになるのを笑顔の仮面で隠して。


平然であるのを装い、体調が悪い事を悟られない様にと懸命に立ち回りましたが、うまく隠せていたかは分かりません。


自分ではどう見えているかなんて確認しようが無いので当然ですが、それでも何も言われなかったという事は、隠せていたのでしょう。


『私の目にはとてもじゃないけど、卯月が元気そうだなんて見えないよ』


言い表せない辛さが増していく中、イベント前の凛ちゃんが放った言葉を私は思い出す。


気のせいだと、勘違いだろうと言われた時にはそう思った。けど、実際には違った。


今の私の状態から鑑みれば、凛ちゃんの言葉が正しかったのは明らかでした。


150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:36:55.42 ID:HWaFrKsf0
だけど、あの時の私の体調は確かに万全の状態だったはず。


今の様に悪寒も、頭痛も、吐き気も無い……


「あっ……」


それを思い返した時、私は『もしかして……』と、ある答えにへと辿り着いた。


何で人の手に触れただけで悪寒が走るのか。


何で声を聞くだけで頭痛や吐き気が起こるのか。


考えてみれば、体調不良が原因でそんな事が起きる訳が無かった。


その原因は……私の心の奥底、もう一人の私にありました。


『何で、こんな事をしないといけないんですか?』


『私が触れたり話したりしたい相手は、あなたなんかじゃないです』


『やだ……』


『嫌です……』


『嫌だ……嫌だっ!』


奥底から響き渡る、恨みや怒りの籠った魂からの慟哭


心の中の私が、プロデューサーさん以外の人に接する事を拒否していた。


それを私に伝える為、訴える為に拒絶の意思が症状となって表れていたのでした。


そもそもこの症状が起こるのも、初めての事ではありませんでした。


仕事帰りに事務所に立ち寄った際、プロデューサーさんと美穂ちゃんが楽しそうに話をしていた時。


プロデューサーさんからツアーに同伴できないと言われた時。


電話中に私以外の話題が出て、それを話す時。


私が寂しく思ったり、不満を感じると必ずといって症状は起きている。


151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:37:42.99 ID:HWaFrKsf0
『……あぁ、そういう事なのか』と、私は心の中で人知れず一人で納得した。


あれだけ我慢する、頑張ってみせると何度も吐いていたのに、実際にはちっともできていなかったのでした。


『絶対に、無理だけはしないで』


それだから凛ちゃんに見透かされて、詰問されたという訳ですか。


……はははっ、私の方が凛ちゃんよりも年上なのに……全然駄目ですね。


『ねぇ……何で、我慢なんかするんですか?』


そんな風に思っていると、心の中の声が私にそう語り掛けてきた。


我慢する、理由……?


だって……私の我が儘を通したら、みんなに迷惑が……。


『みんなって……誰の事?』


誰って……それは私に関わってくる人達。特に美穂ちゃんや響子ちゃん、プロデューサーさん。


私が我慢をするだけで……みんな上手くいくのなら、私……、


152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:38:11.67 ID:HWaFrKsf0
『でも、相手の我が儘は通して……自分は迷惑しているのに、それでいいんですか?』


……私はプロデューサーさんに頼まれたから、任されたから。


なら、プロデューサーさんの期待に応える為にも、私は頑張らないと……。


『我慢して……頑張って……それで、あなたは楽しい?』


楽、しい……?


『楽しくないですよね? 自分自身が楽しくない……幸せじゃないのに誰かを笑顔にできるだなんて、本気で思ってますか?』


『昔は今よりももっと楽しかったですよね? あの頃はまだプロデューサーさんは私に付きっ切りでしたから』


『いつまでも我慢してないで、そろそろ正直になりませんか?』


…………


『頑張り続けたって、疲れるだけで何にもなりませんよ?』


『私はあなた、あなたは私。どっちも島村卯月なんですよ。私のしたい事は、あなたのしたい事なんです』


私、は……


『だから、さ……いい加減……』



153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/03(木) 12:38:48.27 ID:HWaFrKsf0






『 私 と 向 き 合 い ま し ょ う 』






154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 21:30:21.67 ID:0GQGo/XDo
吐き気に耐える島村卯月いいよね……
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/03(木) 22:43:17.34 ID:ZTaoGbaY0
特訓で自分自身と向き合おう!()
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/04(金) 01:36:18.47 ID:gpbhbMUU0
未央含めて、伏線で未央Pに邪悪な一面でもあるのかと思ったらそういう…
これまでの話を2文字で表すなら、智絵里の共有に始まりまゆが愛情ありすが理解文香が変化(錯覚)藍子が管理凛が追跡で、今回は独占だろか
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 06:58:46.03 ID:Eo9YkfFV0
むき、あう……そっか、自分と向き合う……。


そういえば……しばらくできてなかったな、そんな事。


自分に嘘ついて……誰かの為だと言い訳して……私という存在を偽り続けてきた。


だけど、もう……もう、いいんだよね?


私の……自分の心に、正直になってもいいんだよね?


『はい、その通りですよ』


私の言葉に、心の中の私が頷いてそう答えました。


実体は無い彼女なのに、何故だか笑っている様に私は感じる。それも、満面の笑みで。


それはきっと……仮面の様に張り付いた笑顔と違い、ごくごく自然な……以前の私が浮かべていた笑顔。


心からの衝動をそのまま表情に浮かべた、私のできる最高の笑み。


158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 06:59:32.32 ID:Eo9YkfFV0
……あぁ、それです。今までずっと……ずっと、忘れてました。


笑顔は私の魅力の一つなのに……何で、忘れていたんでしょう。


でも、これからは……


「……卯月?」


不意に私を呼ぶ声が横から聞こえてきて、その方向にへと私は顔を向ける。


顔を向けた先、そこには別の場所にいるはずの凛ちゃんが何故か立っていました。


まだ握手会の最中なのに、こっちにやって来るなんてどうしたのでしょう。


そう思って辺りを見回すと、あれだけいたファンの姿は消えていて、周辺には一人としていません。


残っているのは運営スタッフの皆さんや私達の様な関係者のみ。


私があれこれと考えている中、無意識の内にファンの人達と交流を済ませ、握手会を終わらせていたのでした。


159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 07:00:16.84 ID:Eo9YkfFV0
「あっ……っ!?」


その事に気付いた瞬間、脳天を鈍器で殴られた様な痛みと衝撃が私を襲った。


今まで蓄積されていた分が一気にきたせいか、その強さは今までで一番のものでした。


「わ、た……し……」


凛ちゃんに何かを言おうとするけれども、口が上手く動かなくて、言葉にならない。


やがて、私の身体は支えを失った人形の如く、がくりと崩れ落ちていく。


どうにか抗おうとしても、身体も精神もとうに限界を超えていて無理でした。


体勢を立て直せなかった私はどさりと音を立てて、床の上に崩れ落ちてしまった。


「卯月っ!?」


視界が徐々に闇に落ちていく中、凛ちゃんの驚愕の声が耳に響いてきました。


でも、私はどうする事も出来ない。大丈夫だとも、もう言えない。


そして、私の意識は完全に闇の中にへと沈んだのでした。



160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 07:01:27.16 ID:Eo9YkfFV0




……………


………





「ん……」


どれだけ眠っていたのでしょうか。重たい瞼をグッと開いて、私は目を覚ましました。


「……いたっ」


意識が覚醒すると同時に、ずきっとした痛みが頭に走る。


意識を失った時に比べれば微弱な痛みですけど、それでも辛いものは辛い。


身体も重たくて、目覚めとしては最悪な部類でした。


「ここ、は……」


私は何とかして上半身を起こすと、ここがどこなのかを確認しようと、周囲を見回す。


寝起きの少しだけ霞がかった世界に映るのは、辺り一面は白色の景色で包まれていて、広々とした室内。


私が寝ているベット以外にはテレビや花の活けられた花瓶、パイプ椅子と置いてある物は少ない。


どう考えても、ここはホテルの一室とは違います。病院の個室でした。


161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 07:02:16.24 ID:Eo9YkfFV0
視線を下に向けてみれば、服装も握手会の時のステージ衣装から、私が良く着るパジャマにへと変わっていました。


「私……倒れて、ここに……」


あれから一体、どうなったのでしょうか。


私は意識を失っていたので詳細な事は当然分かりませんが、きっと……大変な騒ぎになったのだと思います。


イベントの主役、アイドルの私が握手会終了直後に倒れたのですから。


唐突にそんな事態が起これば、そうなるのも不思議ではありません。


凛ちゃんや未央ちゃん。二人のプロデューサーさん達。会場のスタッフの皆さん。


両手の指では数えきれないぐらいの、大勢の人達に迷惑を掛けた事でしょう。


そして……ここにはいない、私のプロデューサーさんにも。


「……はっ」


申し訳ないという気持ちは強くありました。


自分を偽って目を背けて、突き進み続けた結果が今回の事態です。


関係者全員に謝った所で、許されるかどうかも分かりません。


だからこそ……今の私の心の中では、その気持ちがかなりの割合を占めていました。


162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/18(金) 07:02:44.22 ID:Eo9YkfFV0
「……ははっ」


だけど……だけど、それなのに……、


「あはっ、あははっ……」


笑いが込み上げてきてしまうのは、何ででしょう。


こういった結果を、心の中の私が望んだからなのか。


……いいえ。多分、違います。この笑いは、そういう気持ちでは無いのです。


謝罪よりも、後悔という自責の念よりも、勝ってしまっているのです。


もう我慢をしなくても良いという、解放感の方が。


「私……もう、駄目ですね……」


そう、もう駄目です。前の私には、二度と戻れません。


「アイドルとして……みんなのアイドルとして、失格です……」


そう、失格。堕ちてしまった以上、当然の事でした。


けど、私は決めたのだから。正直になるって、もう我慢はしないって。


だから、これからは……


「私は私らしく生きて、私の自身の歌を歌っていくんです」


163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 07:53:39.73 ID:+dXgFTT0o
久しぶりの更新ヒャッホーウ
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 09:07:41.39 ID:uh60T5eQ0
あぁ、そうだ。そうしましょう。


誰かの為に自分を犠牲にするんじゃなくて、自分の好きに、自由に行動する。


もう遠慮をする事もしなくたっていい。人に対する気遣いなんて必要はありません。


「うふふっ、あはははっ! 楽しみだなぁ……そんな生活を送れる事が」


考えただけでも、ワクワクとドキドキが止まらない。


こんな気持ちはしばらく感じた事が無かったです。


最後に感じたのはいつの事だったか……まぁ、そんな些細な事はもうどうでもいいですね。


「あぁ、会いたいなぁ……一刻も早く、あの人に会いたい……」


今のありのままの自分を見せたくて、素直な自分を伝えたいから。


こんな病室なんて抜け出して、直ぐにでも会いに行きたい。


165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 09:09:03.25 ID:uh60T5eQ0
ライブツアーがどうなったのかも分かりませんけど、それすらも投げ出して駆けつけてしまいたい。


そんな風に思いを馳せていると、病室に備え付けられた扉が不意にガラッと音を立てて開きました。


そして空いた隙間から、病室内にへと入り込む影が一つ……何でしょう。一体、誰が来たのでしょう。


医師や看護師といった病院関係者か。もしくはうちの事務所の関係者か。


私が視線を向けて確認すると、当てはまった答えは後者の方。


それも、私にしたら喜ばしいぐらいの人物でした。


「……卯月」


扉を開けながら入り口に佇むのは、先程まで会いたいと願ってやまなかった男性。


今の私が最も必要としている人物、私達の……いえ、私のプロデューサーさんでした。


本当なら今頃は東京で仕事をしているはずなのに……。


まさか、私の為にここまで駆けつけて来てくれたのでしょうか。


だとしたら、私はとっても嬉しく思います。倒れて正解だったかな。


166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 09:09:55.97 ID:uh60T5eQ0
「プロデューサーさん……」


「……卯月。あぁ、良かった。目を覚ましたんだな」


プロデューサーさんはそう言うと、私の傍にへと駆け寄ってきました。


久しぶりに見るプロデューサーさんの表情は安堵の色を浮かべていました。


きっと私が目覚めた事に対して、安心しての事のなのでしょう。


「その……どうして、ここに……? 東京でのお仕事は大丈夫なんですか……?」


「そんなものは全部投げ出してきた。企画作成とか付き添いの仕事よりも、卯月の方が大事だからな」


……あぁ、嬉しい。凄く嬉しいなぁ。


やっぱりプロデューサーさんは、私の為に駆けつけてきてくれたんですね。


うふふ……ごめんね、美穂ちゃんに響子ちゃん。


プロデューサーさんは二人に付き添うよりも、私の方が大事なんだって。


二人と違って、私は仕事以上の存在なんだって言ってくれましたよ。あははっ。


「気分の方はどうだ? 辛い所は無いか?」


「えっと、まだ色々と……頭痛とかも酷くて」


「そうか……倒れてからまだ一日ぐらいだし、無理もないか」


167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 09:10:52.30 ID:uh60T5eQ0
一日……あれからそれだけの時間が経っていたのですか。


その間ずっと眠っていた私からすれば、それ程時間が経ったとは感じませんが。


「まぁ、今は安静にしていてくれ。無理は良くないからな」


「はい、ありがとうございます」


「でも、驚いたよ。卯月が倒れたと聞いた時には本当に肝を冷やした」


「……ごめんなさい」


「卯月は謝らなくていい。悪いのは、俺の方だからな」


謝る私に向けて、プロデューサーさんは「本当にすまなかった」と、言って頭を下げました。


「……医者が言うには、今回の原因は過度なストレスによるものだと聞いた」


「……そう、ですか」


ストレス……まぁ、不満によるものもあるから、あながち間違いではありませんね。


本当の原因はもっと複雑で、怨念めいたものですけど……ここは何も言わないでおきましょう。


168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 09:11:42.51 ID:uh60T5eQ0
「それ以外にも日頃の疲れだとか、ツアーに対するプレッシャーとか……要因になるものは幾らでも考えられる」


「……はい」


「だけど俺が傍にいて、それらに気付けていれば卯月が倒れる事もなかった」


「……」


「思えば俺は……卯月に依存し過ぎていたのかもしれない。頼りになるからと任せっきりで、何とかなると過信して……その結果がこれだ。本当に、ごめんな」


そう言うとプロデューサーさんは再び頭を下げました。


今度は深々と下げたまま頭を上げず、長い長い時間を掛けて謝ったのでした。


……そっか、プロデューサーさんもようやく分かってくれたんですね。


でも、いいんですよ。プロデューサーさんが間違っていた様に、私だって間違っていましたから。


「……プロデューサーさん、頭を上げて下さい」


私がそう言うと、プロデューサーさんは指示に従ってくれて頭を上げてくれました。


「プロデューサーさんも謝らなくていいですよ。悪いのは……私だって同じでしたから」


「卯月……」


「本当は、体調が良くないのは分かってました。それでも見ないふりをして、我慢し続けてきたから……悪化しまって、みんなに迷惑を掛けて……だから、私も同罪なんです」


169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/25(金) 09:13:08.42 ID:uh60T5eQ0
「同罪だなんて、そんな……悪いのは全部俺の……」


「そうじゃありません。私だって、悪いんですから」


そう言った後、私はプロデューサーさんの手を取り、ギュッと握りました。


私の様に細くは無くて、ゴツゴツとした感じの男の人らしい素敵な手。


いつまでも握って、触れたままでいたいけど、今はそんな場合ではありません。


「だから今回は『どっちも悪かった』という事にしませんか?」


「いや、それだと……」


「その代わり、プロデューサーさん。一つだけ……約束して下さい」


「……約束?」


「はい。今回の様な間違いを二度と起こさない……って、誓ってくれますか? そうすれば私……これからも頑張り続けられます」



170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/25(金) 17:03:34.00 ID:Ug9XviBEo
いよいよ佳境だな…ワクワクテカテカ
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/25(金) 17:29:55.04 ID:3CS0MXmGo
PCSでこれなら美穂、卯月、智絵里のユニットなら死人が出るな
美穂も響子もCuヤンデレ9人衆に入ってたな
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/25(金) 17:36:32.23 ID:jZTGEQn8O
今回のような間違い
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/08(金) 03:23:38.80 ID:srSD36GM0
そう、間違いを間違いにしたままだから、今までの様にどんどんとおかしくなっていく。


間違いを正しいと言い張って、その矛盾に首を絞められて苦しみ、そして私は最終的に壊れてしまった。


そうならない様にする為にも、こういった約束は必要だと思います。


私の事を大事だと思ってくれているのなら、きっと誓ってくれる……そうですよね、プロデューサーさん?


「どう、ですか? こんな私なんかの我が儘……聞いてくれますか?」


「……そう、だな」


「……」


「……分かった。俺は卯月のプロデューサーだからな。その誓い……守ってみせるよ」


174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/08(金) 03:24:42.75 ID:srSD36GM0
……あははっ、良かった。本当に、良かった。


また今度と時間を空けたり、曖昧な言葉ではぐらかしたり、もっと躊躇ったりとか。


そんな風に躱されてもおかしく無かったですけど……まさかほぼ即答で誓ってくれるなんて。


私が言った事なんて、所詮は面倒で身勝手な子供の我が儘ぐらいにしか思われない言葉。


普通の人なら、どうでもいいとばかりに受け流されてしまうかもしれない。


けど、そんな事を目の前で誓ってくれるプロデューサーさんは、期待以上の素敵な人です。


「本当? 本当ですかっ!?」


「どこまで卯月の希望通りに添えるかは分からないが……とにかく、頑張ってみせるさ」


「えへへっ♪ ありがとうございます、プロデューサーさん」


私が喜びのあまりに笑顔を浮かべると、目の前のプロデューサーさんも表情を綻ばせました。


175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/08(金) 03:25:19.69 ID:srSD36GM0
……あぁ、これです。久しぶりに見る、この人の笑顔。


最近は難しい表情ばかりしていたから見れてなかったけど、私はこれが見たかったんです。


「でも、もしも約束を破ったら……その時はまた倒れるかもしれませんから、気を付けて下さいね」


「おいおい……それは勘弁してくれ」


「じゃあ、ほら、プロデューサーさん。約束の印に……」


私はそう言った後、右手を少しだけ上げて握りこぶしを作る。


それから小指だけを立て、それをプロデューサーさんにへと向けて……
 

「指切りしましょう。指切り♪」


求める様に小指を動かしながらそう言いました。


「指切り……って、いや、もう俺はそんな歳じゃ……」


「……駄目、ですか?」


176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/08(金) 03:26:03.73 ID:srSD36GM0
「うっ……あぁ、分かったよ。ほら、やればいいんだろ」


哀願する様に私が言うと、仕方ないなとばかりにプロデューサーさんも小指を差し出しました。


あまり乗り気で無いのに受けてくれるのは、さっきの約束を誓った手前、断り難いからでしょう。


でも、それでいいんです。そうでなくては困ります。


さっきのだけで終わってしまうと、それではただの口約束程度にしかならない。


証拠も無く、後で何とでも訂正できる様な中身の無い取り決め。


それじゃあ駄目です。そんな軽々しい絆なんて、私は望んでなんかいない。


私が求めるのはもっと強固な……どんな障害があろうとも断ち切れない様な、強靭な繋がり。


だからこそ、これは第一段階。


プロデューサーさんを私の傍に縫い止める為の楔となるのです。


そして私は差し出されたプロデューサーさんの小指に自分の小指を絡めていく。


その後はギュッと力を入れ、解けてしまわない様に結びつきました。


177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/08(金) 03:26:48.23 ID:srSD36GM0
「それじゃあ、プロデューサーさん。いきますよ?」


「あ、あぁ」


「「ゆーびきりげーんまん、うそついたらはーりせんぼんのーます」」


「「『ゆーびきったっ!』」」


その掛け声と共に、繋がっていた小指同士を私は離しました。


この時を以てして、誓いはしっかりと結ばれたのです。


プロデューサーさんは私に対して、二度と間違いを犯さないという誓いが。


そして……私とプロデューサーさんとの、新たな歩みの一歩目でもありました。


「えへへっ♪ ねぇ、プロデューサーさん?」


「ん? どうした?」


「約束したからには、私をもっと素敵なアイドルにして下さいね」


「……あぁ、分かった」


『……あと、それから……』


178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/08(金) 03:27:27.04 ID:srSD36GM0






『もっと私を幸せに……笑顔にさせて下さいね、プロデューサーさん♪』






179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/08(金) 03:31:17.70 ID:srSD36GM0
どうも、お久しぶりです

最近仕事が11連勤だったり、ウィルスに掛かって寝込んだりとほぼ死んでました

あともう少しで終わりが見えてきたので、今月こそ、今月のうちに何とか終わらせられる様に頑張ろうと思います

それではまた、書き溜めたら投下していきます

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/08(金) 10:50:05.01 ID:MRRwGIr3o
11連勤とは一体ウゴゴ...
乙です、ゆっくり書いてください...
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/08(金) 16:39:57.37 ID:Zs1DZSuao
11連勤って死にそう…
PCS不仲説思い出した…響子でなく智絵里を入れたピンキーキュートもあったな

藍子や文香のCuバージョンな行動してるな卯月
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 03:16:52.09 ID:QyDCxRoO0
今月過ぎたけど終わらせるどころか更新なかっただと…(絶望
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 00:23:20.41 ID:DO4bXzlh0
ね、年内には…
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:16:56.03 ID:k+EUzKyZ0
……………


………





「お疲れ様でしたっ!」


撮影のお仕事終了後。私は現場にいるスタッフさん達に向けて元気良くそう声を掛けました。


その声に反応してか「お疲れ様です」と、みなさんから返事が返ってくる。


それを聞き終えると、帰ろうとして外に出ようとしましたが、こっちに向かって近づいてくる人影に気づき、私は足を止める。


近づいてきた人物は恰幅が良く、頭に帽子を被ったここの撮影所の監督さん。


さっきまで私に向けてあれこれと指示を飛ばしていた人でした。


「お疲れ様、卯月ちゃん。今日も輝いていて、凄く良かったよ」


「あっ、はい。ありがとうございます」


ニコニコと機嫌の良さそうな笑みを浮かべている監督さんに向けて、私はぺこりと会釈をしつつそう言いました。


185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:17:42.12 ID:k+EUzKyZ0
「それにしても……最近の卯月ちゃんは凄いね。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いって感じじゃないかな」


「そ、そんな……私なんてまだまだ……」


「いやいや、謙遜する事は無いよ。それぐらい今の卯月ちゃんは凄いんだって」


まるで私の事を理解しているかの如くの発言。


歯の浮く様な言葉に不快感が露わになってしまいそうでしたが、心の内に抑えて表には出さない。


何を知った上でそんな事を言ってるのか分かりませんが……とりあえず、何も言わないで話を聞いておく事にしました。


「あのライブの後から人気爆上げだし、このままいけばトップアイドルも夢じゃないと思うんだ」


トップアイドル。私の憧れだった称号。少し前までは、届くかどうか分からなかった高みの位置。


それが今、私の手の届きそうな距離にまで近づいている。


中間辺りの位置でフラフラとしていた私なんかの手に。


現状での私の人気を考えると、あともう少し頑張れば辿り着けそうにも思えました。


けど、今の私にとって……トップアイドルなんてものはどうでも良かった。


言ってしまえば、勝手に付いてくるおまけみたいなもの。


そんな称号を手にした所で、何の価値があるというのでしょうか。


それよりももっと……もっと大切で大事なものがあるというのに。


186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:18:09.99 ID:k+EUzKyZ0
「僕も応援してるから、頑張ってね、卯月ちゃん」


「はいっ! 島村卯月頑張りますっ!」


私はそう言った後「次の仕事があるので……」と、監督さんに告げて撮影所から早々に出ていきました。


次の仕事があるのは事実ですが、ここにあまり長居した所で時間の無駄にしかなりませんからね。


撮影所のあるビルの階段を一気に駆け下り、外に出る為の大きな玄関口を通り抜ける。


そして外に出た私を待ち受けていたは、黒塗りの一台の車。


良く見慣れたデザインのその車は、私達の事務所が所有する商業車の内の一つ。


私は特に躊躇いもせずに助手席側の扉を開けて、その車にへと乗り込んでいきました。


「お迎え、ありがとうございます」


乗り込んでから間髪入れず、私は運転席に座る相手に向けて労いの言葉を掛ける。


もちろん、その相手とは私のプロデューサーさん。


彼は優しく微笑むと「お帰り、卯月」と、言って私を出迎えてくれました。


この笑顔を見てるだけで、撮影での疲れが吹き飛んでしまいそうでした。


187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:18:38.16 ID:k+EUzKyZ0
「仕事の方はどうだった? しっかりとできたか?」


「ばっちりです。監督さんも『凄く良かった』って、褒めてくれました」


「凄く良かった、か。流石は卯月だな」


「そ、そんな……えへへ」


流石と褒められて、自然と頬が緩んでにやけてしまう。


そんな言葉を掛けられてしまえば、嬉しくなってしまうのは当然の事でした。


だって、先程の監督さんの言葉と比べ、何万倍もの価値のある言葉なんですから。


それから私がシートベルトを締め、移動の準備が整うと、私達を乗せた車は次の現場を目指して進み始める。


ここからそこまでの距離はそこそこ遠く、時間にも余裕があったので、プロデューサーさんはゆったりとしたドライブ気分で車を走らせていきました。


その道中、プロデューサーさんは運転しながら私にへと声を掛けてきました。


188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:19:04.90 ID:k+EUzKyZ0
「そういえば……最近は体調の方は問題無いか?」


「あっ、はい。問題はありません。寧ろ、元気一杯です」


「……そうか。なら、安心したよ」


私の受け答えに安堵してか、彼は前を向きつつホッと息を吐く。


「正直言うと、まだ不安でな。また卯月が倒れてしまうかもしれない……なんて思ってしまってな」


プロデューサーさんの脳裏には、きっとあの時の私の姿が映っているのでしょう。


ストレスや不安を抱え込み、挙句に倒れてしまって弱った私の姿が。


けど、今の私には無縁のもの。あの頃の弱い自分は、もういません。


「大丈夫ですよ。今は体調管理もしっかりとできてるので、倒れるなんて事はもうありません」


そう、私にはプロデューサーさんがいてくれるから。


私の隣に必ずいてくれて、常に支えてくれるから、問題が無い。


彼がいる限り、私の体調は常に万全の状態。だからこそ、倒れる心配はいらないのです。


189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:19:45.27 ID:k+EUzKyZ0
「だから、プロデューサーさんも安心して仕事に取り組んでください」


「……そうだな。ありがとう、卯月。本当はこっちが励ます側なのに……」


「気にしなくていいですよ。これからも二人で頑張っていきましょう」


そう、二人で頑張っていくのだ。私と彼の二人で。二人だけで。


それ以外にはもう必要は無い。いや、もういないと言うべきでしょうか。


だって……プロデューサーさんが直接担当するのは、私だけになったのですから。


プロデューサーさんがあの二人……美穂ちゃんと響子ちゃんを担当するのは、今も変わってはいない。


けど、彼女達にはそれぞれ専属のマネージャーが付く事になったのです。


プロデューサーさんの負担が少なくなる様に、私だけを専任できる様にと。


事務所側からそういった指示が出て、今の体制にへとなっているのでした。


……まぁ、こうなったのも私が事務所を脅……お願いしたからなんですが、プロデューサーさんには内緒にしているので、彼がそれを知る事は無いでしょう。


そういった経緯もあって、今は彼を独占する事ができている。頑張った甲斐があったというものですね。


でも、本当は担当からも外してしまいたかったですけど、そればかりは叶いませんでした。


あまり高望みが過ぎると、手に入れたものを手放しかねないので、関わる機会が減っただけでも良しとしましょう。


うふふっ、本当にごめんね二人共。二人からプロデューサーさんを奪ってしまって。


こうなった理由を知る事も無く、新しく付いた人達とせいぜい仲良く頑張ってね、あははっ。


190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:20:18.44 ID:k+EUzKyZ0
「私……信じてますからね、プロデューサーさん。約束をしっかりと守ってくれる事を」


「あぁ、分かってる。指切りまでしたんだから、破ったりはしないさ」


「えへへ、ありがとうございます」


……あぁ、でも。まだちょっと足りません。


やっぱり今の状態は、独占したと言うにはまだ遠すぎます。何かまた……別の手段を考えておかないと。


もっとプロデューサーさんに私だけを見て、私だけの言葉を聞いて貰いたいから。


その為にも……島村卯月、全力で頑張ってみせます。


だから……その日が来るまで、待ってて下さいね、プロデューサーさん♪ うふふっ♪






終わり


191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 07:16:09.76 ID:k+EUzKyZ0
お久しぶりです

大分期間が空いてしまいましたが、何とか卯月編は終わりにへと辿り着くことができました

本当に亀更新で申し訳ありません

書き始めが4月だったのに、終わりが10月とか……

たった5万字未満の内容に半年もかけるとか、遅筆ってレベルじゃない

192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 07:23:39.97 ID:k+EUzKyZ0
一応、卯月編は終わりましたが、全体的な話の流れで言うとまだ終わりじゃありません

元々は全部で4部構成で考えてたのですが、執筆が遅すぎてそこまで辿り着けるか分からなくなってきている現状

やる気と執筆できる暇ができれば今後、続卯月編、美穂編、響子編と投稿していけれたらなぁ……なんて思ってます

まぁ、次回は別のアイドルで考えているんですがね

プロットばかりはできるのに、肝心の内容が書けないのは問題だと思う

193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 07:28:14.01 ID:k+EUzKyZ0
今回のシナリオを書いてて思ったのが、自分は一人称で書くのがとにかく駄目だという事が分かりました

何度もそれで躓く事もあったので、次回以降からは三人称で書いていこうと考えてます

凛編、卯月編と一人称で書いてた話はどちらも終わりまでに長くなってるので、苦手だというのは確定的に明らかですし

また次回の話も終わりまでに長くなりそうですが、何とか頑張りたいと思います

それでは依頼を出してきます

ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました

194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 07:53:31.29 ID:j8z7PfAjo
お疲れ様です!
4月から書いてたんですっけ....、続編待ってます
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 08:15:57.68 ID:K8YBF1exo

卯月愛が重いな、まゆ、智絵里以上に黒い策略考えやがる
ドロドロPCS良いな、Cuヤンデレ6人衆で未登場なの幸子と志希だけか

美穂は元からヤバイのとあの2人との出会いで策に気づいて楽しいことになるんだろうな
闇堕ち卯月ってこんなにも魅力的なのか
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 16:45:04.05 ID:qgOAQp9H0

締め方にこれで終わり…?って文香編以上に肩透かし感あったから続編の予定聞けただけでもうれしい
美穂響子の依存の対象はマネージャーかプロデューサーか果たして…
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 20:03:05.96 ID:K8YBF1exo
美穂はPから引き離されて禁断症状が出てそう、クマのぬいぐるみPの名前付けるし程だし
同郷の蘭子のマーキングは難易度高いだろうな

CuPは複数のアイドルを担当するハメになるのか
ちひろが不遇に思える、鬼悪魔ちひろなのに
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/06(金) 00:02:11.57 ID:Bv3/16Edo
アイドルだけがマーキングするとは限らない
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 18:59:26.27 ID:SzlVNOfzO

次作も楽しみ
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