【安価】探偵剣士「一目惚れをしたら冒険が始まった」

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399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/18(土) 17:02:41.18 ID:gPui3oPA0
自警団のリーダーのジャック(≫290)が「手伝ってくれた礼がしたい」と尋ねてくる。
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/18(土) 17:11:01.78 ID:AmkH+ZfmO
今のうちに情報屋を探しておこうと裏通りへ
そのなかで腐れ縁の情報屋(>>34)と出逢い情報交換することに
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/18(土) 17:16:03.40 ID:983I8Omw0
個人的には>>1には書かれたキャラ全員使わなくていいと思う。使えるキャラだけ選んで
402 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/20(月) 09:51:10.31 ID:IYSwyNE70
〜宿〜

一騒ぎ終え、僕たちは適当に夕食を取り宿に戻った
まだ暖かい季節なので、日が落ちるまでにはもう少し猶予がある

僕は、メモ帳とペンを片手に考え事をしていた

ロット(ふむ、『ヤスクワルト収容所』と…これで関係図はまとまったかな?収容所については詳細を調べるとして…そういえばエルヴィンが気になることを言ってたような)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
>>388
ロット「いえ、少し聞き込みを。それにしても驚きました」
エルヴィン「ん?ああ、俺たちが騎士団と上手くやってる事か?あの収容所の連中は話がわかるから今だけ休戦してるんだ」
ロット「お互いよくその気になれましたね?」
エルヴィン「まあ、ある差し金があったからな」
ロット「差し金?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ロット(差し金とは一体…?)

キリュウ「ロト坊、考え事なら口に出さずにやれヨ。うるせーヨ」

ロット「キリュウ、襲撃の時その要素を遠くからずっと見てた奴とかいなかったかい?」

キリュウ「たくさんいたヨ、戦えねえくせに様子は気になる野次馬なのか、単に心配で眺めてるのか」

ロット「ああ、そうかたくさんいるかぁ」

キリュウ「…んで?謎解きの時間かヨ」

キリュウが僕の考えを知りたい時は決まってこう聞いてくる

ロット「いや、まだ何もさ。強いて言うなら、何度もこの街を襲撃させて、その要素を観察」

ロット「この体制の穴を見つけた本命の盗賊団のご登場。とかだろうかね」

キリュウ「でもしっくり来ねえのかヨ」

ロット「まあ無理だと思うから、参加してみてわかったけど、ここの防衛力は凄まじいよ、役割分担もしっかりしてる。穴があったとしても、並の盗賊団じゃ戦力が足りないさ」

ロット「仮にツカーテ自警団が全員休んだって、常に多くいるこの街にやってきた滞在者(戦士たち)だけで事足りるよ」


403 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/20(月) 10:32:59.07 ID:IYSwyNE70
>>402
訂正:
要素→様子
404 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/20(月) 10:46:23.64 ID:IYSwyNE70
ロット「問題なのは滞在者の方だよ。この街にいる人は1日で目まぐるしく変化する。当然戦い方もひとによって様々だ」

キリュウ「例えば?」

ロット「大きな得物を担いで大声を上げながら軍勢を蹴散らしていく戦闘狂のような輩もいれば。僕みたいに誤魔化すのが得意な人もいる」

キリュウ「いやお前みたいのは、他にはいないと思うんだがヨ」

ロット「静かにしたまえ。何人かでパーティを組んでここに訪れている人達だって当然いるんだ。その全体の性質は日によって違うから、そもそも攻略法を立てることが現実的じゃない」

ロット「……まあ、まだ何も分からないんだけどさ」

キリュウ「へー」

ロット(相変わらず問うてきた割には、興味なさそうに聞くなぁ…)

キリュウは僕の話を聞きながら、砥石爪の手入れをしていた
爪でシャキン!と引っ掻いたりとかしない癖に

コン…コン

話がひと段落したいいタイミングで、部屋のドアからノック音

ロット「どちら様ですか?」

イヴ「私です。イヴです」

僕はそれを聞くや否や、少し早足でドアを開けた
405 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/20(月) 14:34:09.28 ID:Y5Rm7HNX0
ロット「や、やぁごきげんよう!」

イヴ「こんばんわ…ひょっとして間が悪かったでしょうか?」

ロット「とんでもない!いつでも歓迎さ」

自分の家でもないくせに歓迎してどうする

ロット「それで、どうしたんだい?」

イヴ「よろしければ、少しお出かけしませんか?」

お出かけ?
正直予想もしていなかった

ロット「構わないけれど、もう日が落ちるところだよ?」

イヴ「ええ、でも部屋に引きこもるにも少し早いかと思いまして。夕食も済んでいますし…その、まだ街のお店もやっていますし、見て回りたいと言いますか…」

確かにそれはある。普段の僕なら、この時間はまだうろついているものだ

つまるところ…暇なのだろう
無理もない、彼女はそこそこ好奇心のある方だと見えるし

ロット「うん、わかったよ。キリュウはどうす…ん?」

さてキリュウはというと窓を開けて外に出ようとしていた

ロット「行かないのかい?」

キリュウ「ワレ様はいけ好かねえモグラに会ってくるヨ、勝手に二人でいけヨ」

そう言ってピョイっと外に出て行った
だから何者なんだそのモグラ

イヴ「昨夜のモグラの方に会っていたみたいですが」

ロット「たまにいるんだよ、変な友達が」
406 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/20(月) 15:43:16.78 ID:Y5Rm7HNX0
〜街中〜

まだ比較的明るい商店街を、僕の探偵としての経験を話しながら歩いた

ロット「ああ、それでそのお爺さんの隠し財産の場所が突き止めることができたんだよ。結局教えなかったんだけどね」

イヴ「ふふ、色んな事件があるんですね」

ロット「何しろ穏やかな世の中じゃないらしくてね。皇帝と愉快な仲間達のお考えはよく分からないし、騎士団にも妙な奴らがいるみたいだし、王国の方から悪い人達が密入してるとかいう噂もあるし」

うーん、そう考えると悪情勢はもうじきピークを迎えそうな気がする

イヴ「………ロットさん」

ロット「何だい?気になるお店でもあったのかね?」

気軽に振り向きながらそう聞くと
立ち止まったイヴは、話を楽しんで聞いてくれていたさっきの雰囲気を一転させていた

至極真剣な顔をしている
やはり美人…ゔぉっほん!!凛々しい表情だ!!

イヴ「あの、ロットさんはなぜ探t…「「おい、あんちゃん!」」

しかしその真剣な声は、不愉快な大声で遮られた

???「おい、あんちゃん。兄ちゃん。お前さんだよお前さん」

繰り返しそう呼びながら、おっさんがだいぶ遠くから上機嫌で駆け寄ってきた

ロット「……やっぱり僕の事ですか」

???「他に誰がいるってんだ」

ロット「たくさんいると思いますが…」

大声だったものだから、すっかり注目を浴びてしまっている
そして話を遮られたイヴは少々むくれている

???「まあ細けえこたぁいいじゃん」

良くない

???「ちょっと面貸してくれや」

できるなら貸したくないが
何もかもを御構い無しに肩を組んでくる

ロット(酒くさ!!)

???「お、嬢ちゃんお連れさんかい?どうだ、嬢ちゃんも一杯やらねえか?」

イヴ「いえ、あの…その…困ってしまいます」


ロット「ええぃ!どちら様ですか!!?というか、本当に僕が誰だかわかって近寄って来たんですか??」

この酔っ払いようだと、僕を友人か何かと勘違いしていてもおかしくはない
当然僕は知らない
407 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/20(月) 20:01:21.67 ID:+9kMQT2z0
???「あぁん?探偵ってのはお前だろぉ?違わねえ筈だぞ?」

残念彼は知っていた
悪寒がする

ロット「どうして知ってるのさ……」

イヴ「お、お知り合いですかロットさん?」

ロット「いや、そんなはずは…」

???「ふぃ、親方がそう言ってたんだよ」

イヴ「親方さん?」

ロット「なるほど、グランさんだ」

合点が行く
僕は余りの酒臭さから、軽い頭痛を憶え
顔に手を当てながらそう言った

どうやらここの住人はみんなグランさんの事を親方と呼ぶらしい事が判明

この酔っ払いは僕達が去った、いや追い出された後にそこ(鍛冶屋)にお邪魔したのだろう
そこで僕の話をするグランさんはビールを飲んでいたはず
で、流れで飲みまくったと…

イヴ「という事はあの鍛冶屋さんの、お弟子さんでしょうか?」

親方と呼ぶくらいだからそう考えるのは当然だ
でも…

ロット「いや、違う。多分グランさんの事を親方と呼ぶ人は他にもたくさんいる筈だよ。非常に信じ難い事だけどこの人…」

僕は空いた手の指を彼の袖に向けた
その指の先には立派な腕章が付いている

ロット「わかるかい?」

イヴ「これ自警団の人達が付けていたものと……いえ、似てるでしょうか??」

イヴは若干離れた場所からその腕章を確認していた

ロット「うん、戦っている時に気づいたんだけど、この腕章、二つの種類に分かれているみたいなんだ」

ロット「一つはここの住民でもある団員、そしてもう一つが短期間雇われた外からの団員、旅人とかだね」

この二つは区別できるようにしてあったのだ

ロット「だけどこの人の腕章はそのどっちとも違う、つまり……!?」

???「ヒック」

この人どんどん体重かけてきてるような…重い!

ロット「はぁ…つまりこの人多分、リーダーなんだよ。自警団の」

イヴ「えぇ!?」
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 23:18:05.70 ID:8vm4JjEM0
更新乙です。
409 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/21(火) 15:16:09.48 ID:5t5bVmGl0
さてこの呑んだくれはジャック・テンペルという方らしい
なぜ「らしい」なんて曖昧な表現を使うかというと

ジャック「ZZZzzZz……」

ロット「重い…」

僕に肩を預けたまま睡魔に打ち負けたおじさんが誰だか、どこに住んでるかは通りがかりの親切な方が教えてくれたからだ

イヴ「書いてくれた地図通りだとすると、ここがジャックさんのお宅、という事になりますわ」

ロット「う、うん」

リーダーという事だから水準以上の住処を構えているもの…なんて偏見があるが
そうではないにしても、お世辞にも綺麗とは言えない
口には出せないが年季の入ったボロっちい家だった

まあ僕の事務所も似たり寄ったりなんだけれど…

ロット「さて、どうするかな。ジャックさんに起きてもらえれば……」

そんな事を考えているところで、イヴが行動を起こしていた

コン…コン!

イヴ「ごめんくださいませ、どなたかいらっしゃいませんか?」

ロット「イ、イヴ?」

イヴ「あ、申し訳ありません勝手に…でも、起こさずに済むのでしたら、そうしてあげたいですわ」

確かにぐっすりと眠っているし、泥酔していた事も考えると
相当荒々しく起こす事になりそうではあった

ロット「うん、わかったよ」

彼女の気遣いに、僕は素直に感心した
…そろそろ肩が限界だけれど
410 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/21(火) 16:10:41.91 ID:5t5bVmGl0
キィィ…

イヴ「あら、突然すみません。ジャック・テンペル様のお宅はこちらでしょうか?」

???「こんばんはです。はい、確かにここなんですが、リーダーにご用事でしたら、いま不在で……」

中から出て来たのは小さな女の子だった
しかし、来客の対応には慣れているのか、この時間の突然の来訪者相手にも特に物怖じする様子はない

ロット「あ、そのリーダーなんだけど、この人かね?」

ジャック「ZZZ」

???「………ごめんなさい、すぐ戻ります」
と、状況を理解したのか、奥に入っていった
30秒くらいでまた急ぎ足で戻ってくる

???「はぁ…」

ため息を吐きながら戻ってきた彼女の手にはフライ返し

そのまま僕に前まで来ると、そのフライ返しを振り上げた

ロット「え…?いや、ちょ!?」


ベシーーーーン!!!
411 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/21(火) 17:55:42.01 ID:5t5bVmGl0
〜ジャックの家〜

ジャック「痛ってぇ、酔いが覚めちまった」

ミルカ「毎日毎日飽きもせず酔いどれるリーダーがいる??」

ジャック「んなこと言ったら、食いもん扱う道具で大人の事ぶっ叩くガキだっていやしねえよ」

ミルカ「ガキじゃありませんもん」

ジャック「ガキだよガキ、そう見えるとかじゃなくて10歳ぽっちだろうがテメェ」

ミルカ「そう決めてるだけで、本当は12か13ぐらいかもしれないじゃない!」

ジャック「……てぇして変わりゃしねえじゃねえか」

ジャックさんを叩き起こした、その娘ミルカは僕たちの事を家に招き入れてくれた
着々とお茶の準備を進めるミルカさんと、少し小さめなちゃぶ台を挟み、僕達の正面に座るジャックさんはずっとこの調子だ

ロット「あ、あの……」

ジャック「ん、ああ悪ぃな。あんちゃん賊退治に加わってくれたんだろ?礼がしたくてな」

少なくとも僕に用事があった事は確かなようだ

ロット「いえ、それには及びませんよ。僕が無力化したのなんて3人だけですし」

ジャック「3人??何言ってんだ?」

ロット「へ?」
412 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/21(火) 19:24:19.48 ID:5t5bVmGl0
ジャック「お前さんが賊の一人を立派な氷細工に変えたもんだから、それを見たバカな賊の何人かが戦意喪失したんだよ。敵さんの士気に多大な影響を与えたってこった。考えたな兄ちゃん」

ロット(うわ、偶然…あと呼び方統一してくれないかな)

ロット「でもあの程度、魔法都市シュトルベルンとその周辺では日常茶飯事ではないですか。賊に魔法の知識がある人いなかったんですか」

ジャック「ああ、誰もいなかった。今回の襲撃は脳筋ばっかりだったよ」

ミルカ「おとうさんもそうじゃない」

ジャック「う、うるせぇ!」

ミルカ「それにしてもお兄さん魔法使えるんですね!いいなぁ、私も剣とか斧とかは使えないけど、魔法があれば自警団員として戦えるのに……」

413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 22:05:55.79 ID:FTgkdiLK0

明日もくればいいな
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 22:37:19.91 ID:qQeIZeXK0
乙です
415 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/22(水) 10:00:28.52 ID:LE2xJgeI0
ジャック「……」

ジャックさんは、娘のその言葉を聞くと少し複雑な表情を浮かべた
危険を犯してまで戦って欲しくないのか
別の意図があるのかは分からない

あと横にいるイヴが(魔法…魔法ですか)と微かに呟くのが聞こえてきた

ミルカ「もしよければ、魔法を使う上での心得みたいなものを教えてくれませんか?いつか絶対覚えようとは思ってるんですけど、何からやればいいのか分からなくて…」

ロット「ううん、僕、魔法使えないんだよ」

ミルカ「え?」

ジャック「なんだ、じゃあありゃ手品か何かか?」

ロット「えっとジャックさん。あれは僕の…仲間の魔法の力で、実は僕自身は魔法はからっきしダメなんですよ」

ジャック「そういうもんなのか。この町にも魔法なんかを使う奴はそう多くねえから、よく知らなかった」

ロット「ええ、それに魔法を使えてもそれだけで戦っていくには相当極めた人でないと難しいと聞きます」

僕はミルカの方へ視線を移しながら続けた

ロット「魔法を使うっていうのは、武器を振るう事とは違う形で体力と精神力を消耗する。無理をするとそれ以上に体に負担がかかるらしい。極めるのは剣なんかよりも断然難しい」

イヴ「そうなんですか??」

ロット「うん、そして素質も大きく関わってくる。ちょっと見てて?えーと…」

僕は、鞄から小さな石を取り出す

イヴ「そちらは?」

ロット「ソーダライトっていう鉱石さ、キリュウがぶら下げてるラピスラズリの関係者……もう残り少ないな…」




416 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/22(水) 16:28:49.81 ID:FwuYTeNQ0
僕はそれを持った手を突き出し、一回深呼吸した

ロット(よし…)

ロット『凍てつく氷の盾よ!我が身を守…』

バチィィン!!

ミルカ「!?」
イヴ「きゃ!」
ジャック「おっと!」

僕の詠唱は途切れ、代わりに何かが僕の手で弾ける音が響く
3人の驚く声が重なった


ロット「痛てててて……全部言わせてすらしてくれないのか……」

イヴ「お怪我はありませんか!?」

ロット「うん、大丈夫だよ。でもこのソーダライトは…」

ジャック「粉々だな」

ミルカ「それに…さっきまで綺麗な青色だったのに、ただの石になっちゃったみたい」
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/22(水) 21:54:57.65 ID:S7ZVJ3J20
乙でした
418 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/23(木) 18:18:58.73 ID:4T7XpFYXo
ロット「一般的に魔法を使うって言うのは、魔力をこういった鉱石や宝石、人の手で作ったものだと、色々書いた魔導書などという『媒体』に一度蓄積させ、それを放つという事らしいです」

ロット「魔法を使えない人が使おうとするとこうなる。僕のソーダライトもただの石ころと化しました。これでは磨いて飾りにすることすらできません」

ジャック「分かっちゃいたが、あれってただ口上を覚えりゃいいってわけじゃないんだな」

ロット「はい、それこそ素質が関わる要素で、こうやって詠唱をしつつ、頭の中で、あらゆることを処理し、計算し、意識し、集中し、…僕らにはよくわからない感覚をつかむ必要があるらしいです」

ロット「素質のある人はその感覚を自然に身に着け、訓練した人では、詠唱なんかしなくても発動できる人だっています」


僕もスタット街で痛い目に合っている


ミルカ「…さっき、お兄さんが使おうとしてた魔法はどんな魔法なんですか?」

ロット「僕が唱えてた魔法は、氷の板を正面に展開して、敵の攻撃から身を守る『アイスシールド』、氷魔法を使う人なら基本中の基本らしい」

イヴ「じゃあ、キリュウさんは使えるのですか?」

ロット「キリュウに至ってはもっとすごい守る手段を何回も使えるから、もはや『アイスシールド』に用事はないよ」

イヴ「そ、そうなのですか」


ミルカ「…でも、努力すれば使えるようになるんですか?」

ロット「もちろん、僕なんかは少しだけしか練習してないからね。努力して覚えた人も数えきれないほどいるよ」

少しだけミルカさんの表情が明るくなるのに気づいた

何年か前に、魔法と言うものに憧れを持ったのは僕だって同じだ
文句を言いつつも付き合ってくれたキリュウを裏切るように
3日で投げだしたのを覚えている

ロット「でも、どれだけかかるかは分からない。シュトルベルンにある学校に通って、結局習得できなかったなんて例もあるからね」

ミルカ「そうですか……」
イヴ「そうですか…」

419 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/23(木) 18:40:13.80 ID:4T7XpFYXo
ロット「イヴ?」

イヴ「あ、いえ、なんでもございませんわ!もしよろしければ私もキリュウさんに教えを乞おうなどとは…」//

多分、奴は教えてくれないだろうけど…


ロット「いいかい二人とも?僕が話したかったのは魔法習得の難しさじゃない」

「二人」と聞いたイヴが少し恥ずかしそうにしている。

ジャック「ああ、そうだなロットン」

ロット「ロットとお呼びください」

ロット「最初に言ったけど、魔法は剣よりも体に負担がかかるものだ、限界が来れば初級魔術すら使えなくなるし、無理をすれば動けなくなってしまう事もある」

ロット「魔法が使えなくなってしまえば下がるしかなくなる、動けなくなってしまえば敵にとっては格好の的だしね」

ロット「過信は禁物なんだよ」


大切なのは魔法以外の攻撃手段を用意しておくことや、他人との連携ができるようになること
と言いたいところだけど

ロット「大切なことは自分にできることを全力でこなすことだよ、戦うこと以外にもたくさんあるんだからさ」

ミルカ「そう、ですね。リゼお姉さんみたいに戦ってみたいって少しは思ってたんですけど…私は今まで通り自警団のサポートを頑張ってみます」

イヴ「自警団のサポート?」

ミルカ「はい、こう見えて私色々…

ピィーーー!!


ジャック「おっと、やかんか…」

イヴ「いいよ、座っててお父さん」

ジャック「お、おう」
420 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/23(木) 20:19:36.24 ID:4T7XpFYX0
すいません明日はもうちょっと書きます
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 20:33:11.39 ID:1ctulIhWO
乙でした。
422 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/24(金) 11:12:49.57 ID:XpWjYrgY0
イヴ「あの子、見た目よりもずっと立派ですね」

ロット「ミルカさんって、娘さん…何ですか?」

ジャック「お、察しがいいな、どうしてそう思った?」

ロット「さっき10歳と決めてるだけだって、と言ってたので」

イヴ「はい、こちらでは歳を自分で決める文化でもあるのかと思いましたわ?」

ジャック「間違いなくそんな文化はねえが、なるほど、そりゃ変に思うわな」

ジャック「その通り、ミルカはどこのどいつが産んだのかすらわからねえ。そういう奴だよ」

ジャック「そもそも俺には嫁さんがいねえしな、ハッハッハ」

ロット・イヴ「……」

さっきまでの酔っぱらっていた状態のジャックさんを思い出す
まあとてもじゃないが女性は寄り付かなそうだ

ジャック「おい黙るなよ」

ロット「コホン、失礼しました」

ジャック「まあそんな事情もあり、俺が酒と女にだらしないせいか、苦労もかけちまってる。部下やギルド長にはよく、親子というより夫婦みてえだ。とからかわれる日々だ」

イヴ「でもそれだけ仲睦まじく見えてらっしゃるって事ですわよね?」

ジャック「さぁな…ま、これが続けばそれでもいいんだと思うけどな」

423 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/24(金) 11:32:17.07 ID:XpWjYrgY0
ジャック「そういう意味ではあんちゃん。アンタが話してくれた事はありがたかった。これでアイツが無茶な事をする心配が少しは減ったよ」

ロット「いえいえ、そんな」

ジャック「いや俺が言うより余所モンが言った方が聞くんだよこう言うモンはな。こりゃお礼は弾まねえと…な?」

そういえば元々そんな話だったような気もする…

ロット「あの今日の襲撃についてですが、本当にお礼なんてほどの事はしてませんよ?それに僕は自警団契約などしてませんから」

ジャック「だからこうやってわざわざ探し出したんじゃねえか。勝手に加勢するくらいなら、自警団に入っててくれてればもっと円滑に報酬を渡して終わりだったんだよ」

ああ…なるほど
でもそんな僕をわざわざ探し出す辺り、義理堅い組織である事は確かかもしれない

ロット「わざわざ探してくれただけで十分ですよ。ここはお気持ちだけと言う事で…」

ジャック「いいや、アンタにはこれからもっと厄介な事に首突っ込んでもらうんだ。何かしら渡しておかなきゃ気が済まねえ」

ロット「へ?…あの、一体どう言う?」

ジャック「とぼけたちゃいけねえよ。親方から聞いたんだ。よく言ってくれた。てぇしたもんだ」

話がイマイチ飲み込めないが、グランさんが何か言っていたとするなら

イヴ「あの、ひょっとして襲撃についての調査の事ではないでしょうか??」

ロット「うん、多分そうだね。ジャックさん」

ジャックさんは大きく頷く
424 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/24(金) 11:55:44.98 ID:XpWjYrgY0
なるほど、つまりは着手金を渡したいという事だろう
僕が途中で投げ出しにくくなるようにと…

ジャック「とりあえずはここに商店街の割引チケットやら商品チケットをたんまり用意しておいた、役立ててくれ。金が欲しいなら言ってくれればいくらか工面…」

ロット「いえ、結構です」

ジャック「おっと?」

ロット「問題が解決するまで報酬は一切受け取りません。それは僕が探偵として仕事をする上でのポリシーなんです」

ロット「心配しなくても、僕は受けると決めた以上、無責任に放ったらかして消えたりはしませんよ。もしも、本当に手に負えなくなってしまったらその事を正当な理由と共に、正直に打ち明けます」

ジャック「ほーう、なんか兄ちゃんが無責任じゃねえ根拠はあるのか」

ロット「僕、やりたい事しかやらない主義ですから」

ジャック「つまりこの問題に自分から突っ込んでいくってわけか。どうだ嬢ちゃん、こいつは信用に足る人物かい?」

イヴ「え、私の意見でしょうか?」

ジャック「おう」

イヴ「え、えっと…」

彼女は僕にチラッと視線を流す

ロット「好きなように答えてくれ、レディ」

イヴ「……はい、では僭越ながら」


イヴは少し呼吸を整え、そして満を持して切り出す!
425 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/24(金) 12:28:49.94 ID:XpWjYrgY0
イヴ「わかりません」

僕はちゃぶ台に突っ伏した

ミルカ「お茶持ってきましたよ〜。お、お兄さん大丈夫ですか!?」

ジャック「ハハハ、ズコーっていったな、ズコーって」

ロット「イヴさぁん…」

僕史上今世紀最大に情けない声が出る

イヴ「ごめんなさいロットさん、でも…」

ロット「ううん、分かってるよ。むしろ正解」

正直な感想としてはこれが当たり前だ
ただキッパリと言われると色々と来るものがある

ロット「実は僕たち一緒にいますけど、出会って間もなくて…」

ミルカ「そ、そうなんですか!?」

ジャック「全く面白い奴らだな。で、嬢ちゃん、話まだ途中だろ?」

イヴ「はい」

僕はミルカさんが出してきたお茶をずずっと啜りながら続きを聞く

イヴ「信用で言えば、むしろ私の方がそれに足らないと思うのです。私、事情があって素性をほぼ明かせない身でして…だから私の意見など当てになりませんわ」

凄いかわし方だ、嘘は言っていないし、それでいて自分の意見を述べることを巧みに避けている

イヴ「でも、私が彼の事とても頼りにしている事は確かですわ」

よし、もっと頑張ろう

ジャック「まあどこのどいつか分からねえ奴なんかこの町には山程いるから、全く問題にはならねえが。なんだ、アンタらも色々と込み入ってるらしいな」

426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/24(金) 23:27:07.61 ID:PRVlvYqk0
更新乙です。
427 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/27(月) 09:22:59.98 ID:kxXrhUxr0
すいません、どういうわけか
>>17
>>251
でロットンが「17歳」となっていますが、正しくは「15歳」です
おそらくレス番号(>>17)から何かの間違いが発生したものと思われます
訂正します
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/27(月) 09:32:46.32 ID:a8H9yrRa0
えっ…今更?17歳だと都合悪いことでも……?
てか、イヴよりも年下かよ!?
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/27(月) 10:38:59.80 ID:GtogCnD2O
この段階で修正か
この15歳に何かあるのか、それともただ単に>>1の拘りか気になる所
430 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/27(月) 15:15:35.42 ID:t9r16lAw0
ロット「ええ、まあ…あはは…」

ミルカ「お父さん、どうなの?」

ジャック「まあ主観になっちまうが悪いことする奴らには見えないな、他にお仲間さんは?」

ロット「あと猫が一匹います」

ジャック「ハハハ、いいねぇ。じゃ、改めてよろしく頼む。必要なら収容所の騎士にも話を付けとくが…」

ロット「それにも及びません。すでに収容所の隊長らしきキモンさんとはお話しましたので」

もちろん素性を隠してではあるが

ジャック「行動も速えと来たか、ガキのくせにうまくやるもんだ。ん、今いくつなんだ?」
431 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/27(月) 15:19:11.83 ID:t9r16lAw0
ロット「僕は15です。僕達を子供扱いするのは構いませんが、ジャックさんもお酒飲んでばかりいると老化の進行が早くなるのでご注意を」

ジャック「げっ」

ミルカ「言われちゃってる」

イヴ「ふふ…」

後はお茶を頂きながら、たわいもない話をし、お茶飲んでけから始まり、風呂ぐらい入ってけ、泊まっていけとエスカレートするお誘いをはねのけてお暇した。
僕達は宿に戻るため夜道を歩く。

ロット「結局お店はたいして回れなかったね」

イヴ「いえいえ、機会はまたありますわ。それに、代わりに貴重な経験もできました」

ロット「貴重な経験ってどんなところが?」
432 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/27(月) 15:21:27.53 ID:t9r16lAw0
イヴ「だって今日だけで、この街のギルドのトップ、元ギルドのトップで鍛冶屋の親方さん、それに自警団のリーダーさんまで、3人も凄いお方にお会いしたのですから」

ロット「…うん、たしかに。冷静に考えると凄いかもしれない」

3人とも会う機会自体はあるかもしれないが、一日でまとめてとなるとやっぱり珍しいというのも頷ける。

イヴ「それにしてもロットさん、私より一個下だったんですね。同い歳だと思っていましたわ」

ロット「え?それは…えっと、すみませんイヴさん」

確かに、なんとなく歳上ではないだろうかという疑問は持ちつつも、対等な話し方をしていた僕だが、はっきりしてしまうと少々バツが悪い。
言ってしまえば、むしろ2歳ほど歳上じゃないかと思っていたぐらいだ。
433 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/27(月) 15:23:59.37 ID:t9r16lAw0
イヴ「いえ、お気になさらず、どうか今まで通りお話しください。私は誰と話すときもこの話し方ですから」

ロット「えっと、じゃあ……うん。ここでの滞在期間は予定より長くなりそうだけど。付き合ってもらって悪いね。何か不都合はあるかな?」

接し方についてはイヴが良いと言うのだから気にせず行こう、今更だ。

イヴ「いえ、絶対解決させましょうね!この街にも子供が多く見受けられますし」

ロット「うん、全力を尽くすよ」


宿に戻るとキリュウは既に爆睡していたので、僕もそれに倣ってベッドに横になった。どちらかと言えば寝つきは悪い方だけど、今日はすぐに眠れそうだった。

434 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/27(月) 15:26:00.39 ID:t9r16lAw0
〜早朝 見張り台〜

「よぉ、見張りご苦労さん。交代だ」

雇われ自警団の男が一人見張り台に登ると、今まで見張りを務めていた男に声をかける。

「ん?あと二人はどうしたんだ?こっちの早朝見張りは3人だろ?」

「別に俺が早く来すぎただけだよ。二人もじきに来るだろう。上がっちまいなよ。集会所の婆ちゃんがコーヒー淹れてくれてるからよ」

「お、いいな。薄着しちまったから思ったより寒かったんだよ」

「じゃ、俺も上がらせてもらうわ。ふぁ〜寝みぃ」

「俺も今日中にベルマールに向けて出発するから、戻って旅支度だぜ…じゃ、あとよろしく」

三人は降りていく、時間にルーズな他の早朝見張り二人はまだ来ないまま、その男は一人になった。
435 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/27(月) 15:30:06.25 ID:t9r16lAw0
「お疲れさん…と、とりあえず一服するか」

男は巻きタバコに火を付ける。
見張り台から町の外を見渡し、遠くの方に魔物の群れがちっと見えるなぁなんて考えながら、一度吸い込んだ煙を吐き出した。

「ふぅ…ん?」

魔物が見えた反対側に視線をやった途端に彼は異変に気付く。

「な、なんだ!?あの大軍は!」

大軍、その言葉通り、いやそれ以上かもしれない。
子供だけでなく大人も多くがまだ寝静まっているような朝早くに、明らかに良識を持っていない柄の人間達がこの町に向かってきていた。

言わずもがな例の襲撃だが、その規模は今までと比べ物にならない。

「くそ、やべえ!他の二人はまだかよ!三人とも帰らせるんじゃなかった。早く鐘を……」

しかし、鐘が響くことはなかった。

「が、はぁ……!そん…な…矢が…!あん…な……遠く………がら……」

男は無念にも危険を住人や滞在者に知らせることもできないまま、息絶えた。


436 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/27(月) 15:36:00.55 ID:t9r16lAw0
一旦ここまで、

ところで設定(キャラ、舞台、その他諸々)の募集でスレがいっぱいになってしまう事を恐れて、一度募集を打ち切っていますが。
自分としても何かしら材料は欲しいものですし、設定を書きたい人もいると思います(いればいいなぁ)

なので、こことは別の場所、ツイッターの方で募集するというのはどうなのでしょうか?
賛同者がいればこのスレ用のアカウントを作ります。
こちらのままで良いという事であれば、また募集する機会を設けます。
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/27(月) 15:43:15.99 ID:Aga4JFQO0

現状でもデータ(特にキャラデータ)たくさんありますし無理に募る必要もないのでは?
個人的にはこのままで何か欲しい設定ができたときに募集する形でいいと思います。
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/27(月) 16:27:52.68 ID:a8H9yrRa0
>>437に決定。ノーソンのキャラが少ないから困ったら募集すれば?
(Twitterやったことがないからアカウントを作ってないというのは内緒)
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/27(月) 16:46:13.55 ID:Edyp/MU4O
キャラや設定に関しては別のスレ建てて募集したほうが人も集まると思うけどなぁ
あと自分は編集したことないから分かんないけど、ここのwiki使って設定をまとめたりするのはどう?
具体的な名前は出さないけど、こことは別のSSが設定をまとめるのに利用してたし
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/27(月) 18:03:33.04 ID:ns6Wm3M40
>>438
決定じゃなくて賛成だろ
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/27(月) 18:09:50.25 ID:a8H9yrRa0
>>440
スマン…素で間違えた
442 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/28(火) 20:16:22.61 ID:Psv+YpN+0
飛び起きた時にはもう既に、外が尋常じゃないほど騒がしくなっていた。
怒号や悲鳴、窓ガラスの割れる音や、銃声、爆発音。少なくともただ事ではない。

ロット「な、何が起きたんだ…?おい、キリュウ!起きてくれ!!」

堪らずキリュウを揺する。

キリュウ「…あぁ?なんだヨ…?」

我が相棒は目を覚ましてくれたものの、みょーんと体を伸ばし、呑気にあくびをかいてなんかいる。

ロット「ああもう!この騒ぎになんとも思わないのかい!?」

キリュウ「分かってるヨ…んでロト坊?なんでこうなったヨ?」

ロット「いや、分からない。また賊かなんかの襲撃なんだろうけど、それにしたって異常事態だ。一度宿の周り、ぐるりと様子を見てきてもらえるかい??」


ドンドンドン!!
443 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/28(火) 20:17:50.38 ID:Psv+YpN+0
あ、募集については今まで通りまた募集する機会を設けます。
ツイッターのアカウントも一応作りましたがまあいい活用法が見つかるまでは放置します(多分使いません)
444 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/28(火) 20:21:10.77 ID:Psv+YpN+0
部屋のドアから激しいノック音がした。僕は反射的に叫ぶ。

ロット「誰だ!!」

イヴ「私です!イヴです!!」

ロット「入って!鍵は開いてるから!」

イヴは部屋に入ると振り返りもせずにすぐにドアを閉めた。
バタン!!

ロット「ふぅ…」
イヴ「はぁ…」

二人とも大きくため息をつく

イヴ「おはようございますロットさん。何が起きているんです?」

イヴは顔を強張らせながらも挨拶を忘れない。
彼女の顔を無事見れたこともあって、僕はほんの少しだけ気が緩んでしまう
445 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/28(火) 20:23:41.88 ID:Psv+YpN+0
ロット「お、おはよう…じゃなくて!」

ロット(気を抜くな僕!)

一度自分の頬をピシャリと叩き気合いを入れる。

ロット「僕も気がついたらこの状況だったんだ。キリュウ!」

キリュウを掴み上げ窓を開ける、外には火の手すら見え始めていた。

キリュウ「オーケイオーケイ、行ってくるヨ。……ったく、とんだ目覚めだヨ…」

それを返事として受け取り、窓の外に放り投げた。

イヴ「ロットさん、どうされるのですか?」

ロット「さぁ、まだ何とも言えないけど……嫌な予感がする」

騒音は止む気配がない。
この短時間で様々な音を聞いたけれど、その中でも一番耳を劈いた音は、悲鳴でも怒号でも、物音でもない。

恐らく敵と思われる人の声だった。
446 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/28(火) 20:25:19.05 ID:Psv+YpN+0
ロット「じっとしてるわけにはいかないか、行こう」

イヴ「キリュウさんは!?」

ロット「大丈夫」
僕はバックから銀貨を一枚取り出した。

ロット「緊急時の合図でね、面はその場で待機、裏側は後で合流の意味なんだ」

窓の側に裏側を上に向けて置く、これでよし!

ロット「行こう!」

イヴの手を掴み駆け出した。

イヴ「は、はい!」
447 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/28(火) 20:27:22.49 ID:Psv+YpN+0
〜エントランス〜

玄関扉が軋む音がする。

給仕「あれま、どうしましょどうしましょ!」

ロット「給仕さん!宿にいた他の人達はどうしたんですか?」

給仕「みんな出て行っちまったよ、戦いに行ったのか逃げたのか知らないけど…」

ガタガタ!!

イヴ「ロットさん!玄関扉がもう壊れそうですわ!」

鍵はかかっているのだろうけど、いつ破られるか分かったもんじゃなかった。

ロット(くそぅ、レイピアもないのに!)

僕は仕方なく扉を抑える。

ロット「給仕さん、フライパンを火にかけてください!思いっきり強火で!」
448 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/28(火) 20:29:48.26 ID:Psv+YpN+0
給仕「え?フライパン?ええ?」

ロット「いいから早く!」

給仕「あ、あい分かったよ!」

給仕さんはアタフタしながら厨房へ走って行った。
灯油が無いとか言わないでくれて本当に良かった。

ガタガタ、ダンッ!ダンッ!

「「オラ、開けろオラァ!!」」
「往生際が悪ぃぞオイ!!!ウヒヒヒ」

イメージ通りの怒鳴り声、最後の下品な笑い声はなんだ。

ロット「開ける…わけ…ないだろ!」

イヴ「ロットさん!これを取っ手に!」

しめた!閂にちょうどいいモップを取ってきてくれた。

ロット「ありがとう、助かるよ!」

素早く取っ手にモップを通すと、抑えなくてもとりあえずは開かないらしい
449 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/11/28(火) 20:31:18.67 ID:Psv+YpN+0
が、この一本の木製の棒がいつまで持つかわからないのには変わりない。

ロット「よし、今のうちに……」



ミシミシ…バキ!

いよいよ扉が破られた。
斧を手に持つ屈強で悪そうな人が何人かなだれ込んで来きそうだ。

「ヒャッハー!ガキと女は来…」
ロット「大火傷にご注意くださーい!」

威勢の良い文言を言い終わるのなど待たずに、僕は火にかけてあったフライパンで思い切り殴りつけた。

ガーン!!スキンヘッドに命中

「痛!!!アチィィィイイ!!」
450 : ◆YwfwH67PRHMh [saga&]:2017/11/28(火) 20:31:47.54 ID:Psv+YpN+0
一旦ここまで
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/28(火) 20:36:27.45 ID:FOunb+DG0
乙。
452 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/02(土) 22:19:04.77 ID:ra8FGmy70
男は鈍い衝撃と、やけどに悶えている。痛そうだ…

ロット「うわ、ジューっていった…」

ならず者「テメェ舐めた真似しやがって!!」

奥にいる他のならず者が睨んできた。

ロット「最近こんな輩ばかりな気がするなぁ…みんな雰囲気が似てると言うか…」

ロット(それにしても、一人、二人、三、四、五…六七八…)

ロット「多いね!!?」

この宿を制圧するためだけに10を超える人間がここに来るのだから、外は相当酷いことになっていそうだ。

ならず者「よそ見してんなよ!!!うら!破岩撃!!」

ロット「おっと、危ない」

僕は床に亀裂が入るほど勢いよくふり降ろされた斧ををかわし、えぇい!とフライパンを振るう。
453 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/02(土) 22:20:30.65 ID:ra8FGmy70
ならず者「ちぃ!」

男は思わず手でフライパンを抑えてしまう。
当然これは刃物でもなければ、打撃武器ですらないただの調理道具なのだが。

ジュー…

ならず者「あああ熱いいいぃぃぃいいいい!!!!!」
まあこうなるわけで…

男は手を冷やせる場所を求めてだろうか?逃げていった。
我ながらえげつない武器だ。

ロット「ほらほら、道をあけないと。熱いよ?」

ロット(できればフライパンが冷める前になんとか突破したいけど…!!)






ジュ〜!ガン!ジュ!ジュ―!!ガーン!
454 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/02(土) 22:22:06.41 ID:ra8FGmy70
ならず者「ヒィイ!」
ならず者「痛ぇ!!」
ならず者「熱い!!」

攻撃を受けながらも、何人か撃退することに成功する。
フライパンは強い武器だ。

ロット「ゼェ…ゼェ……だいぶ人数は減ってきたけど…えい!」

また近くにいた男に振りかざす。が…

ならず者「よっと」

ロット「な?掴まれた!」

男の手には分厚いガントレットが、なるほどこれじゃいくらフライパンが熱くても影響ない

ならず者「ちょっと、調子に乗りすぎたみたいだなクソガキが!」
455 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/02(土) 22:24:41.02 ID:ra8FGmy70
僕は呆気なく組み伏せられ、フライパンも手を離れてしまった。

ロット「ぐっ…!!まずい!単純な力量差じゃ勝てっこない!!」

ならず者「そういうこった。じゃあ、まず手を潰すかなぁ、このあついあつーいフライパンでよぉ!」

するとその男はフライパンを慎重に手に取った。
どうもまだ冷めちゃいないらしい。



ロット「……でも、戦略では勝てるんだなこれが」

僕はきつい体制ながら視線をそのガントレット男に向けてニヤリと笑った。

ならず者「は?」

ロット「今だ!!玄関扉めがけて!!」

給仕「せぇぇい!!」

イヴ「はい!」

僕の声で給仕さんとイヴが、奥からなにかの粉が入った袋をいくつも投げ込んでくる、袋口が空いた状態で
ぶつけられたならず者たちはたちまち粉まみれになる。
456 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/02(土) 22:27:28.12 ID:ra8FGmy70
ならず者「ケホッ…なんだこりゃ…、小麦粉??」

分けも分からず、男は僕に組み付きからの脱出を許してしまうのだった。

ならず者「あ、テメ!」

ロット「忠告はしたからね!」
ポケットに入れてあったマッチを一本、火をつけて投げながら、玄関から離れる。

ロット「伏せて!!」
給仕さんとイヴを抱えて奥に伏せた。






ドッカァァァァァアアーン!!!



玄関が豪快に吹き飛んだ。

ロット「……ほらね、大火傷にご注意って言ったでしょ?二人ともケガはないかい?」

イヴ「ええ、わた…くしは大丈夫です」

イヴは立ち上がって、服をパッと払った。
457 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/02(土) 22:32:06.87 ID:ra8FGmy70
給仕「な、何が起きたの??」

給仕さんは腰が抜けたらしく、立ち上がれずにいる。

ロット「お手を」
給仕「あぁ、どうも…これ魔法なのかい?」

僕に引き起こされた給仕さんが聞いて来た。

イヴ「ロットさんやはり魔法を使えたのですか?」

ロット「ううん、昨日言った通り魔法はからっきしさ、これは魔法じゃないよ」

使えたとして、こんな爆破魔法なんて恐れ多くて扱おうなんて思わない。

ロット「聞いた事ないかい?『粉塵爆発』って言うんだ。」

給仕「フンジンバク…ハツ?」

ロット「はい、宙に舞った小麦粉の粉粒の一つ一つに次々と火が引火する事により爆発を引き起こす。僕が投げたマッチ一本が火種となってね」

イヴ「あ、聞いたことがありますわ!建物も吹き飛ばすという…」

ロット「まさかここまでうまく行くとは思わなかったけど…」

宿の立派な玄関は、扉だけでなく壁ごと吹き飛び、見るも無残な様子だ。
ならず者達も同様、生死についてはあまり考えたくはない。

ロット「あ、考えなしに玄関吹き飛ばしてごめんなさい。修理費については…」
458 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/02(土) 22:34:15.83 ID:ra8FGmy70
給仕「そんなもんまた後でいいよ、逃げましょ、ほら!」
ロット「すぐに出ないで!」

外に出ようとする給仕さんを引き戻し、ゆっくりと外の様子を伺った。

ロット「酷いな、これじゃまるでそこそこの規模の戦場じゃないか…避難する場所は決まってますか?」

敵の数が視界で捉えられるだけでも目に見えて多い、どっからこんな戦力が…

給仕「ええ、避難所があるよ。みんなそこに逃げ込んでるはずさね」

ロット「……いや、できるならここで隠れてた方がいいかも知れない」

給仕「ここに!?」

ロット「この中を一人で避難所まで行くのは現実的ではありません。外に出るなら僕の側を離れない事、その代わり僕は避難所には行きませんし、どんな戦闘に巻き込まれるか未知数です。だったらむしろここで倉庫か何かに隠れていた方が安全という事もあるかも」
459 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/02(土) 22:37:28.51 ID:ra8FGmy70
給仕「そんな事言われても……」

ロット「何より僕には避難所が安全であるか…もっと言えば無事であるかすら疑わしいです」

そう告げると、給仕さんは困った様子で黙り、考え込み始めた。

イヴ「ロットさん、ロットさん」

ロット「うん?」

イヴ「どこに向かうおつもり…でしょうか?」



ギルド本部に向かってみたいところだけど、鍛冶屋やジャックさんの家も心配だ。どこかにいるキリュウも探さなくちゃいけない。さてどうするか?


↓3までコンマが一番大きいもの(コンマ00は100とする)
1、ギルド本部
2、ジャックの家
3、鍛冶屋
4、その他(内容は後ほど自由安価)

460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/02(土) 22:39:17.08 ID:VJCp0Q810
3
もしかしたら武器をくれるかもしれないしね
さすがにこんな状態の街でロットンを素手のままにしないだろう……たぶん
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 22:39:33.61 ID:En5mJ1vj0
2
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 22:42:18.24 ID:PVV9zw1wO
1
武器持っても強い訳じゃないし
戦える人の近くでかき乱しつつ情報集めた方がいい気がする
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 22:44:25.18 ID:VJCp0Q810
ジャックの家かー
ジャックの強さによるけど、無事にギルドに連れてってくれるかもしれないからなー(家にジャックがいるとは限らない)
464 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 07:48:29.18 ID:kI984W8w0
ロット「ジャックさんの家に向かおう。単純に心配だ。あの人二日酔いかも知れないし」

イヴ「はい、ミルカちゃんも心配ですしね!」

イヴは両手で握りこぶしを作り、少し大きな声で賛同してくれる。

よし、方針は決まりだ。

〜外〜

給仕は結局倉庫の奥底に隠れる事にするという。

どうにか恐怖に打ち負けないで欲しいが、事が済んだら真っ先に様子を見に来るとしよう。

それはそうと……

ならず者「ぐへへへ」

ならず者「よう坊主、こんなとこで可愛子ちゃんとデートってか?」

ならず者「よくもまあやってくれたな、何人もてめーのせいで伸びちまってるよ」
465 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 07:50:05.26 ID:kI984W8w0
その他数名確認、全員こちらに敵意

ロット「イヴさん、一度戻ろうか…」

イヴ「は、はぁ…」

ならず者「おいおいそんな事が許されると思ってんのかよ?」

ならず者「冗談だよなぁ?」

ならず者「なぁおい?」

もう、なんでこう、ウジャウジャと…

ロット「……も、もうどうなっても知らないぞ!!」
466 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 08:09:34.03 ID:kI984W8w0
〜ジャックの家〜
敵「ぎゃ!」バタッ

悪い奴「こ、このオッサン強ぇ…」

ジャック「ったく、かったるい。何人いやがるんだ、あぁ?」

ミルカ「お父さーん、大丈夫ー??」

ジャック「あぁ、俺は平気だ。いいから引っ込んでろ〜」

ミルカ「でも、他の人達が心配で…なんとか本部に行かないと…」

盗賊「所詮マッチョはノロマだろうが!!うらぁ!!」
ジャック「うるせぇ!」ブン!
盗賊「あれぇ!!??」バタッ

ジャック「…確かにな、どうしたもんか」

ジャックさんは、息一つ上がった様子はないが、一人で長い時間戦っていたようだ。
467 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 08:10:45.18 ID:kI984W8w0
周りには彼が大剣で倒したと思われる悪者達が転がっている。

ロット「ジャックさん!!」

ジャック「お!あんちゃん、譲ちゃんも…」

ロット「ゼェ…ゼェ…だ、大丈夫ですか。こっちは…」

ジャック「なんだ、えれぇボロボロじゃねえか」

イヴ「ロットさん、かなり無理をなさってしまって…」

ジャック「…武器はフライパンだけか!??丸腰も同然じゃねえか、良くここまで来れたな」

ロット「えぇ、まぁ…。敵陣をフライパンと塩コショウとそこらの瓦礫とマッチとモップと柱時計とトイレットペーパーで潜り抜けてきたもので…ゼェ…」

ジャック(ああ…コイツなんでも使うタチか…)

ミルカ(塩コショウとか柱時計とか何に使ったんだろ…)
468 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 08:18:54.52 ID:kI984W8w0
ジャック「…とりあえず、これ飲め。消費期限ギリギリだけど、ポーションビタミンB+だ」

ビンの蓋を開けて手渡して来たので、遠慮なく頂く事にする

ロット「ありがたく!!…ゴクッ」

ジャック「お前さんもいるか?ベッピンさん」

イヴ「い、いえ…幸い私は無傷なので。どうぞジャックさんがお使いください」

ジャック「そうかぁ」

ジャック(……ん?この敵陣で大した武器もなしに、譲ちゃんを守り抜いたのか?)

ロット「ゴクゴク…プハァ!それで、どういう状況ですか?」

ジャック「ああ、おかげ様で俺が自警団の頭だって事は知られてるみたいでな。正直身動きは取れない状況だよ」

頭を抑えにきた…か

ロット「なるほど、確かにここは宿よりも敵が密集してる気はしますね…」

ジャック「なんとかミルカの奴を本部に連れてってやりたいんだがな、じゃねえとあいつも仕事ができねえ」
469 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 08:28:02.52 ID:kI984W8w0
自警団のサポート…、そういえば昨日そんな事を言っていた。

そこそこ重要な事らしい。

ロット「なんとか敵を減らすしかないでしょうね。僕も加勢します」

ジャック「いや、加勢って兄ちゃん武器…しゃあねぇ。ミルカ!!家の奥から適当に武器持ってこい!」

ミルカ「了解!!」

ロット「いいんですか?」

ジャック「どう考えたってその平べったいのよりぁマシだろ。なんか知らんが使いもしねえエモノが溜まってんだよ、気にすんな」

確かに、流石にフライパンでは心許ない。

ロット「イヴ、ジャックさんの家まで下がってくれ。ミルカさんと一緒にいてくれないかい?」

イヴ「はい、わかりました!」


ジャック「…なんでガキに『さん』付けなんだ?」

ロット「レディに対しての礼儀…というのは冗談で、昔からどうも呼び慣れてないと…」
470 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 08:38:18.08 ID:kI984W8w0
「「てめぇらぁ、いつまで無駄話吹かしてやがるんだおぉい!!?そんなに舐めてんのかおおおいい!!」」

前方からの大声だ。力を入れて叫んでいる表情でもないので、彼は普段からこんな話し方なのかもしれない。

ロット「血気盛んですねぇ…」

ジャック「ああ、ああはなりたくねえだろ若人」

ロット「愚問ですよ。えい!」

僕はフライパンを、ズガズガと近づいてくるその無駄に活力あふれた大声男に投げつけてみる。

大声男「アウ!!」ガーン!

ロット(えぇ、なんで避けないの…?)

大声男「……フフフ、そうかそうか、じゃあてめえから潰すぅぅぅぅ!」

するとその男は鎖鉄球を振り回し始めた。
471 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 09:09:07.01 ID:kI984W8w0
大声男「がぁああああああ!!!!」ドスドスドスドス!!!!

ズガズガ…からドスドス…と足音を大きくしながら向かってくる。そして意外と速い…

ロット「うわわわわ…!!」

僕はとりあえず背を向けていたほうへと走りだす。

大声男は腕の届く範囲に入ったジャックさんすら素通りして僕を追っかけてきた。

ジャック「……あいつ本当に大丈夫なのか??」

ロット(完全に僕狙いになったらしい、これ以上下がるとジャックさん家に近づいてしまう…)

ミルカ「お兄さん!!」

しかし、僕が走っていく方から僕を呼ぶ声が聞こえた。

ミルカ「お兄さんに合いそうな武器です!えぇい!」

イヴ「こちらもどうぞ!」
472 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 18:50:29.85 ID:qM6Xb1OH0
ロット(もう用意できたのか!)

僕はガシャガシャと音を立てながら投げ込まれた武器の中で一番近いものを手に取った。
とりあえず両手にあるのは、ゆるやかカーブした刃身を持つ、見慣れない剣だ。
短い物を左手に、長い物を右手で握る。

ロット(これはどっかで見たような…サーベルかな??いやでも…ちょっと違うような?)

大声男「しんねぇえええ!!!」

気が付くとすでに追いつかれていた。

ロット「くっ!」

二振りの剣をクロスして振り回された鉄球をなんとか受け止める。

大声男「凌いでんじゃねええええ!!!」
473 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 18:52:48.06 ID:qM6Xb1OH0
ロット「…双連斬!!」

受け止めた鉄球をそのまま流しつつ、二連撃を浴びせようとする……が。

大声男「ぬああああ!!!」

男は、僕が流した筈の鉄球を再度振り回し、そのまま今度は僕の攻撃を凌いだのだ。

ロット「凌がれた…!?」

大声男「ふんぬううう!!」

ロット「ぐっ…!!」

今度は鉄球攻撃をもろに食らい、吹っ飛ばされてしまった。
転げる僕とともに大きく砂煙が立つ。


ジャック「って、おいあんちゃん!」

ならず者「おっとおっさんの相手は俺たちだぜ???」

ジャック「ちっ!湯水のように湧いて出やがって…」



大声男「ざまぁねえなあああああ!!!……ああ?」
474 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 21:02:50.24 ID:qM6Xb1OH0
ロット「まだまだ…こんなものならね」

砂煙が止み、まだ立ち上がれる僕を見て、奴は顔をしかめた。

ロット(思い出した…この剣はカタナって言ったかな。意外と重い…、それに両刃じゃないから、少々扱いづらい)

僕はカタナを手放し、転げてる途中でつかんだもう一つめの武器。2個で1セットのチャクラムを構える。
前に見た、この武器を使って戦っていた人を思い出す。

ロット「これも初めて、見よう見まねだけど…デュアルスロウ!!!」シュ!

スナップを効かせながら、その男に向けて両方一緒にに投げた。

大声男「おおおう!!」

男はそれも避けた、そこそこ不意をついた遠距離攻撃だったはずだが

ロット(ただ大声出すだけじゃないみたいだね…、他の人達より戦い慣れはしてるみたいだ)

空を切ったチャクラムが手元に戻ってくる。

ロット「…それ!」
475 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 21:04:43.84 ID:qM6Xb1OH0
僕は戻って来るチャクラムをキャッチし、もう一度投げた。

大声男「舐めんじゃねえええ!!ふん!!!」

カキン、カキン!
今度は二つとも撃ち落とされた。

ロット「お見事」

しかし、そうなることは大体予想していたので、今度は驚くことはない。
奴がチャクラムを撃ち落とす隙に、こっちは「お目当てのもの」に手を伸ばす。

ロット「うん…やっぱりこれだね」

細身で、カタナよりかは軽い。
手になじむそれは普通の【ショートレイピア】だ。

ロット「準備万端だよ。かかっておいで?」

大声男「なぶり殺しにしてやるぅぅぅ!!!」
476 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 21:05:44.61 ID:qM6Xb1OH0
ロット(この人、攻撃の後の隙をカバーする芸当は持ち合わせてるらしい。流石にレイピア一本じゃあの鉄球をいなすのも無理があるだろう)

大声男「ぬがあああああああ!!!」

ロット(だったら…!)




男の鉄球は振り下ろされることなく決着がついた。
ロット「……月昇剣」

僕が出した結論は、重い鉄球の攻撃前の隙をに突き上げるだけだった。

大声男「がはっぁあ」バタッ

ロット「ふぅ……勝負あり、かな?」
477 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/06(水) 21:06:21.01 ID:qM6Xb1OH0
一旦ここまで
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 21:09:05.12 ID:uRwKiYol0

やっぱ武器は使いなれた物が一番なんやなって
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/06(水) 21:10:49.04 ID:nG7rb62N0

レイピアでも高いレイピア選んでおけば武器屋で追い出されずに済んだものも…
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 22:57:36.43 ID:l/Gn45V40
ロットンはレイピア以外も使えないわけではないのか
器用系なのかね
481 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/11(月) 21:53:36.95 ID:AUfmuumu0
ジャック「兄ちゃん、やるじゃねえか。大したケガもねえみてえだし」

ロット「ええ、まぁ…」
ロット(あばら骨が2本ほど折れるかと思った…)

ジャック「腕っ節ってよりかはあれだ。スマートって言えばいいか?」

ロット「お褒めに預かり光栄です。小細工が得意なだけですが……あれ?さっきの賊達は?」

ジャック「ん?ああ、そこに積み上げてあるけどどうした?」

ロット(人が山積みになってるぅぅぅ!!?)

おかしい、30人は居たはずだ。仮に僕が相手したのだけが、その中で強い方だったとしても。
あの量を一人で??
しかも撃退じゃなくてKO!!?

ジャック「ま、何はともあれだ。とりあえずギルドに行ってみるか。あっちは大丈夫だと思うけどよ。しっかしなんなんだこの軍勢は?どっかで見たような顔も居た気がーー」
482 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/11(月) 22:27:00.09 ID:AUfmuumu0
ジャックさんはそこで突然固まった。いや側から見れば、僕も同じような反応を示しているはずだ。

僕がここに来るまでに凌いで来た人数、ここで倒した人数、その他見かけた何人もの敵達。
それだけでも十分軍隊並みだった筈だ。

しかしそれと同等とも思える軍勢が、たった今町の門から入って来たのだ。

ジャック「おい、マジで、あとどんだけいるんだって……」

さっき…ジャックさんが言いかけた、いや、言っていた事が僕は激しく気にかかっていた。

ロット「……さっき、知った顔が居るようなって言っていましたよね?」

ジャック「ああ、なんか知らんがずっとそんな気がするんだよ。は、これもあれか?酒飲みすぎの影響なのかねえへへへ」

どうやら思い当たる節があるようだ。

ロット「ええ、それが飲み過ぎの影響ならいいんですけどね…」
483 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/11(月) 22:33:25.29 ID:AUfmuumu0
ジャック「??」



「おい、あいつだあいつ自警団のリーダーだ」
「あの時の借りを倍返ししてやるぜ」
「この人数がいれば八つ裂きに出来るだろ!一斉に行け!!」

ジャック「あの時の借りだぁ?何言ってーー」

ロット「ねえ君たち、一つ聞きたいんだけどね。ひょっとしてヤスクワルト収容所……」


僕は間を空けて言った。


ロット「陥落したのかい?」

ジャック「な!?兄ちゃんそりゃどういう?」

ロット「収容所は捕まえた襲撃者達で一杯一杯、騎士も酷く疲弊していたと聞きました。ありえない話ではないかと」
484 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/11(月) 22:45:54.86 ID:AUfmuumu0
「ああご名答だよ!!あそこの騎士さんたちは楽しい奴らだったなぁ」
「ほぼ全員ぶっ殺してやったよ!ヒャハハハ」



ジャック「ああそうかよ、騎士ってのは本当に肝心な時にーーあんちゃん、収容所から出てきた奴らが全部こっちに流れるってわけか?だいぶ狂った戦力になるぞ!!」

ロット「はい、マズイかもしれません」

相当戦える人ならなんとかなるかもしれないけど、向こうにだって何人か強敵は居るはず。
加えて戦力的アドバンテージ、僕達は一般市民を守りつつ戦わなきゃいけない。
さらに頭を抑えられてこの状況では自警団の統制も取れていない、みんなの状況も分からずじまい。
485 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/11(月) 22:50:28.83 ID:AUfmuumu0
そして…

ロット「考える時間すらない!!」

前方から何人もこちらに向かってくる。標的はジャックさんに定まっている様子だ。僕達が退けば、イヴやミルカさんにも危害が及ぶ可能性が…

ジャック「兄ちゃん構えろ!こうなった以上死ぬ気でやるしかねえぞ!」

ロット「はい!」





「おい人間どもヨォ、そこ、滑るから気をつけろヨ?」



「お、なんだ?足が滑って…!」
「止まらねえ!!」
「うぎゃあ!」

全員すっ転んだ。
486 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/11(月) 22:52:39.46 ID:AUfmuumu0
ジャック「……壮観だな」


これは氷魔法『ビルドスケートリンク』。
本来は氷魔法を強化するための陣地を形成する『ホワイトフィールド』に若干の性質変化を加えたオリジナル魔法!つまりは…

ロット「キリュウ!ナイスタイミング!最近調子いいじゃないか」

キリュウ「はぁ?我様はいつも絶好調だろがヨ」

キリュウ「つーか、お前どっか行く時はコインだけじゃなくて行先残してけヨ!」

ジャック(これが噂に聞く喋る動物とやらか…珍しいもん見たな)


ーーーーーーーーーーーーー
ミルカ「しゃ、喋ってる!?」

イヴ「ええ、あの猫さんが、昨日話していたキリュウさんです」

ミルカ「凄い……、あでも、猫でも魔法使えるんですね、私できないのに…」シュン

イヴ「あ、あはは……」
ーーーーーーーーーーーーー
487 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/11(月) 22:53:49.62 ID:AUfmuumu0
ジャック「つっても敵さんまだまだいるぞ!」

ジャックさんはそう言うと大剣を構え突撃する。
僕もそれに続かなくては

キリュウ「へ!腕がなるヨ。ロト坊、ワレ様は何すればいいヨ?」

ロット「よし、それじゃあイヴとミルカさんを頼んだ!あの家にいるから!」

僕は後ろに建つジャックさんの家を指差した。

キリュウ「よっしゃ!フルボッコにしてやる……え?」

ロット「じゃ、任せたよ!」




キリュウ「……なんだヨ、ワレ様、小娘達のお守りかヨ」
488 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/11(月) 23:09:12.44 ID:AUfmuumu0
ロット(出来る限り接近戦にはしたくない、とりあえず牽制しながら、あのチャクラムを拾うことを目標にしよう)

ロット「3連かまいたち!!」シュ!

「うぉ、こいつ小癪な攻撃ばかりしやがって!」

ロット「あいにくと、まともに戦ってたら誰にも勝てやしないんでね!」

「そいつはモーニングスターのカズを倒した奴だ。気をつけろ!」

ならず者の1人が、僕が先ほど倒した男を指差してそう言った。
あの鉄球モーニングスターっていう武器らしい。

ジャック「ほいっと」
「うぎゃ!」
ジャック「あらよっと」
「いぎぃ!」
ジャック「ふぅ…あのなぁ、ただ数を揃えただけじゃなぁ……ゼェ」

「そう言いつつ息上がり始めてるように見えるが??」

ジャック「っ!うるせえ!」

僕より遥かに多くの量の敵を相手にしてるジャックさんにも若干だが疲れが見え始めた。
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/11(月) 23:56:58.85 ID:PJVXhRTY0
490 : ◆YwfwH67PRHMh [saga]:2017/12/12(火) 00:18:59.15 ID:VGShGU+k0
奥にアーチャーらしき隊列が見えた。
おそらく敵側の人間だ。
なんだろう、妙に考えられてるような…

ロット「ジャックさん!弓です!!」

ジャック「わかってらぁ!隆起壁!!!」

ジャックさんが大剣を地面に叩きつけると、その衝撃で地面が割れ、僕達の前に壁のようにせり上がった。

ロット(うわぁ、凄い…)

僕達は2人でその壁の影に隠れると、かすかに矢が風を切る音が聞こえる。

ジャック「おお放ってんな〜」

ロット「回り込んでは…来ないようですね」

ジャック「壁はすぐ沈む、そう長くは持たないぞ」

ロット「はい、これが沈んだら、正面はチャクラムで牽制します」

ジャック「おうよ」

ズズズ……
壁になってくれた地面が元に戻っていく
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/26(火) 01:40:11.87 ID:yuTiUOKY0
続きはまだかなぁ……
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/26(火) 18:40:29.40 ID:sdTEqHUhO
待ってます
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 17:36:52.86 ID:HaB3qz2AO
待ってます
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/12(月) 11:44:49.77 ID:XTB9VKuE0
待ってます
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/02(金) 01:49:00.85 ID:wtXG5V6S0
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