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286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 06:42:50.67 ID:6bF8K+3I0
キューティーパンサーは部室に集う。混ざりに行けばいいのに足が重い。
三年組になったら真姫ちゃんが部室に来づらくなってしまうかもしれない。
それに、えりちに会いに行くのが怖くて。
ウチが彼女に好意を持っていることを知られた可能性もある。
彼女ノンケっぽいし。気持ち悪いと思われたら。
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 06:43:18.09 ID:6bF8K+3I0
お昼に一緒にいないだけ。それなのに、彼女に話しかける以前に戻ったようだ。
もう一度、小さな勇気を出してみようかな。
明日、昼食に誘おう。
にこっちにも一言お願いしておこ。
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 06:43:49.18 ID:6bF8K+3I0
終わり
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 07:10:56.96 ID:auMayUYb0
病んでる感じも良いっすね
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/01(月) 07:57:43.59 ID:6bF8K+3I0
『保健室』
291 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 07:58:12.92 ID:6bF8K+3I0
「保健室行くわよ。あとで先生には言っておいてあげるから。」
今日の希は具合が悪そう。時期的にも生理かしらね。
無理して頑張ってしまう子だから、あからさまに辛そうにはしないけれど。
生理の時は私が世話を焼いている。一番そばにいるし。
頼られるのは気分が良い。
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 07:58:43.59 ID:6bF8K+3I0
えーとかうーとか呻く彼女を立ち上がらせて連れて行く。
手を握って廊下を歩く。彼女はゆっくり進む。
この手に下心がないわけではない。これくらいの報酬があってもいいでしょう?
彼女がどんな顔をしているのか、わからないから後ろは振り向かない。抵抗しないならいいのよね。
293 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 07:59:09.90 ID:6bF8K+3I0
保健室までの道。いろんなことを考える。
彼女の手を握っていると頭の回転が速くなる。
大抵はどうでもいいことばかりだけれど。
今日は彼女に特製ボルシチ作ってあげようかしら。あったまるのよ。
材料は希の家に一度帰ってから買い出しに行きましょう。
また行くからちょっと多めに買おうかしら。おやつも買って彼女の家におこう。
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 07:59:35.54 ID:6bF8K+3I0
保健室に到着。先生に話を通してベットを借りる。
生徒会やっていると先生と親密になれるのよ。
授業前までここにいよう。
「ありがとな。えりち。」
好きでやっているのだからいいのよ。
295 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 08:00:06.85 ID:6bF8K+3I0
布団の下から手が出て来る。それを優しく両手でとる。
少し顔の青い彼女が満足そうにこちらを見る。
死に際に立ち会っているみたいになっちゃったわね。
外から見えないように医療用カーテンを閉める。
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 08:00:33.38 ID:6bF8K+3I0
生理中の彼女は私を頼る。というか甘えてくれる。
それが嬉しくてこの時期が好き。本人には言えないけど。
彼女の頭を撫でる。心地よさそうに目を閉じる。
寝てる人がいるとつい撫でたくなるのよねぇ。可愛い妹がいるせいかしら。
297 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 08:01:17.14 ID:6bF8K+3I0
スマホを確認。もうちょっとしたら行かなきゃ。
布団の上に頭ごと倒れかかる。彼女は何も言わない。
「私もここで寝て行っていい?」
「だめ。」
今度は私の頭が撫でられる。これって幸せな気持ちになれるのね。
298 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 08:01:51.99 ID:6bF8K+3I0
彼女と目があうと自然と笑みがこぼれる。嫁にこないかしら。冗談よ。
「そろそろ行かんと。ウチを遅刻の言い訳にしちゃダメだからね。」
動きたくないわね。頭をポンポン、急かされる。
思いを振り切るように勢いよく立ち上がる。
299 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 08:02:26.86 ID:6bF8K+3I0
「放課後迎えに来るから。」
「うん。」
先生に挨拶して保健室を出る。
早足で教室に戻る。素早く授業の用意をする。自分と彼女の帰り支度もしておく。
300 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 08:03:20.36 ID:6bF8K+3I0
あと2時間もあるのね。
301 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 08:03:47.78 ID:6bF8K+3I0
終わり
302 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 09:02:28.44 ID:bBbR3SWSO
>>300
?
303 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 09:16:33.97 ID:6bF8K+3I0
最後歯切れが悪いから土壇場で一文付け足しただけです。悪化してしまいましたが。
304 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/01(月) 17:30:58.72 ID:pmGLOisAO
もやもやしつつ希ちゃんの分もしっかりノートを取るえりちか
305 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 23:27:13.92 ID:hjdG9h0y0
『シルエット』
306 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 23:27:46.10 ID:hjdG9h0y0
暖かな日差しが心地いい。
一番窓側の席に座っている絢瀬さんが東條さんを手招きする。
日差しの強い日は教室のカーテンが閉められる。
彼女たちはその中で二人だけの時間を過ごす。
307 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 23:28:37.55 ID:hjdG9h0y0
この学校は生徒が少ないとは言え、人の目を気にしなくてすむ場所などない。
あったとしてもトイレくらい?
だからあのカーテンの中が彼女たちの花園。
シルエットが多少映るが角度や影の重なり具合、風によるはためきで何をやっているかはわからない。
308 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 23:29:04.69 ID:hjdG9h0y0
今は絢瀬さんの膝に東條さんが乗っている。
下半身はカーテンから出ている。
東條さんのスカートの上に絢瀬さんの手が置かれる。
シルエットが動く。おさげのある頭がに揺れる。
楽しそうに跳ねる。何の話をしているのだろう。
309 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 23:29:30.07 ID:hjdG9h0y0
ペチペチと絢瀬さんの手が東條さんの太ももでリズムをとる。
足でも彼女を上げては落としてリズムを作る。
ガタガタと揺らされる東條さんは怒ったようなそぶりをするが、楽しそうな声だ。
でもすぐに止まってしまう。あれ体力使いそうだもんね。
310 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 23:30:05.32 ID:hjdG9h0y0
東條さんが腕を後ろに回して絢瀬さんの首を捉えると、自身の頭に重なるように引きつける。
シルエットしか見えないけど、多分、自分のくちもとに絢瀬さんの耳が来るようにしたのね。
さっきまでの騒ぎようが嘘のように静かになる。
何を耳打ちしたのか。絢瀬さんの腕が東條さんを強く抱きしめる。
その体勢のまま、動かない。
緩急をつけて、ぎゅっとしたりふっと緩めたり。
時折どちらかの頭に微妙な動きがあるくらい。
311 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 23:30:41.18 ID:hjdG9h0y0
もうすぐ授業が始まってしまう。知らせた方が良いのかもしれない。
だけどもしかして、もしかするかもしれない。だから誰も忠告できない。
バッと一思いにカーテンをまくってやりたい。
あの中で何が起こっているのか気になって仕方がないのだ。
312 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 23:31:13.08 ID:hjdG9h0y0
キスとかしてたりしそうだもん。あの二人が。
あれだけ美人だとレズでもあまり嫌悪感を抱かないわね。
むしろ恋のライバルにはならないし安心。嫉妬することもない。
ちょっと引くけど。私には関係のない世界だし。
313 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 23:31:48.73 ID:hjdG9h0y0
授業開始のチャイムがなる。
彼女たちが花園を飛び出して自分の席に急ぐ。
窓際の席の主人は苦笑いで席に着く。あの席、勝手に使っていたんだ。
幸いなことに先生はまだ来ていない。
澄ました顔で教材を取り出す彼女たち。顔を見合わせて微笑み合う。
風ではためく二人の花園。
314 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 23:32:27.02 ID:hjdG9h0y0
終わり
315 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 23:39:21.50 ID:l5YA/p+UO
えりちはカーテンで隠せてると思ってて
のんたんは全部わかっててやってそう
316 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/03(水) 09:26:30.27 ID:5Ali7izl0
良いっす
あぁ良いっす
317 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 21:43:07.44 ID:gn5FMjDk0
『キスマーク』
318 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 21:43:38.91 ID:gn5FMjDk0
昨日のウチはイラついていた。
確かに彼女の顔は整っているし、女子校の中では恋愛感情を抱かれることもあるみたい。
えりちも真面目な態度で接してはいるが、得意げな表情で癪にさわる。
希、希!ってウチを呼んではモテる自慢を披露するのだ。
いつもウチがテキトーに相槌を打つだけなのに。
えりちがすごいのはわかったから。
週に一回は聞かされる。あまりにしつこいので鬱陶しくなった。
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 21:44:40.76 ID:gn5FMjDk0
もっとウチの機嫌を損ねたのは最近現れた積極的な後輩ちゃん。
どこからかえりちの連絡先を入手し、今度一緒に遊びに行くという。
えりちがペラペラ喋ってしまうから全部筒抜けなのだが、それが余計にウチを苦しませた。
放課後に待ち合わせて二人が校門から出て行くのを教室から見送った。
ちょびっと辛かった。
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 21:45:27.82 ID:gn5FMjDk0
昨日の夜にお風呂に浸かって考えた。
彼女がいなくなってしまったら、ウチの高校生活が終わってしまう。
今まで積み上げて来たものを明け渡したくない。
初めてできた親友を、あろうことか女の子に。
321 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 21:46:06.95 ID:gn5FMjDk0
ウチのアイデンティティのエセ関西弁も彼女のためのものなんだ。
彼女がいなくなれば、ウチは喋れなくなってしまう。
取り返してやることに決めた。
無意識に口につけていた、腕にキスマーク。肩にも。見せつけてやるつもりで。結構いっぱい。
322 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 21:47:02.97 ID:gn5FMjDk0
そして今日、μ’sのペアで行う柔軟中、わざと彼女にだけ見えるようにした。
嫉妬して、怒ってくれないかな。叱って欲しいな。ちょっとマゾっぽい?
でも、気づいてもらえなかったら、どうしよう。もし見て見ぬ振りをされたら。
帰りたくなって来た。今ならえりちの気持ちわかるよ。
準備体操なのに心臓がばくばく。彼女に届きはしないかな。
そうこうしている間に体操終わっちゃうよ。えりち。
ねぇ。終わっちゃうよ。
323 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 21:48:49.55 ID:gn5FMjDk0
「ウチ、ちょっとトイレ行ってくる。」
不安になって抜け出した。本当に帰ってしまおうかな。
でも、彼女が追って来てくれるかもしれない。
ゆっくりとお手洗いに向かう。少しでも時間を稼ぐ。
胸が裂けそう。昨日の決意はどうしたのか。
目頭が熱くなる。泣くことはない。
324 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 21:49:56.85 ID:gn5FMjDk0
取られる云々も自分の勝手な妄想だ。
彼女の友人が一人増えるだけかもしれない。ウチとも仲良くなるかも。
そんなわけない。
ただの友達でも第三者が入ってくれば、疎遠になるに決まってる。
特にその人の気持ちがどちらか一方に向いていれ場合。
いつかは別れが訪れる。けど、この一年は、彼女だけは。
325 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 21:51:13.39 ID:gn5FMjDk0
人には知ったようなアドバイスをするけど、ウチは聖人じゃない。暗い感情が湧き上がる。
後輩ちゃんをひっぱたいて、もう彼女に近づかないでと言ってやりたい。
彼女を連れて来て、思い切り言ってやりたい。ずっとウチのそばにいてって。
怒りと不甲斐なさで歯を食い縛る。
326 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 21:52:05.66 ID:gn5FMjDk0
後ろから急ぎ足で歩いてくる音が聞こえる。
ただ急いでる他の人かも。いや、彼女だ。ウチにはわかる。
そっか。全部いらぬ心配だったみたい。
無理やり作る勝利の微笑。自分を鼓舞する。
計画通りやん。やっぱりウチ、えりちの扱いは上手いんよ。
「待って、希。話があるの。トイレの後でいいから。私ここにいるわね。大事なこと。」
「うん。」
327 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 21:52:40.08 ID:gn5FMjDk0
短く返事をしてから、振り返らずに急いでトイレへ入る。
涙が出てくる。安心したせいかな。変に思われるから、泣き止まなくちゃ。
よかった。神様、ありがとうございます。
このチャンス無駄にはしません。今度はウチが勇気を出します。
深呼吸する。鏡で顔を確認。大丈夫そうかな。行こう。
「なぁに?どうしたん?」
328 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 21:53:05.56 ID:gn5FMjDk0
終わり
329 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 23:45:28.11 ID:UFazimrN0
いい ……
330 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/05(金) 21:21:57.79 ID:keDVCmA20
『原稿』
331 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/05(金) 21:22:43.85 ID:keDVCmA20
生徒会の仕事と言っても、学校の行事の準備や先生の手伝いがほとんど。
今やっているのは体育祭の挨拶で発表するスピーチ作り。
おきまりの文句を並べればいいようでいて、なかなか浮かばない。
補佐の副会長は怪しげにタロットカードをめくる。
何を占っているのかしらね。
332 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/05(金) 21:23:16.19 ID:keDVCmA20
頬杖をつきながら彼女を傍観する。見慣れた姿。
考えるふりをしているだけで頭の中は真っ白。
彼女は私の視線に気づいたのか大袈裟な動作でいちいちリアクションをとっている。
目を見開いたり、口を開けたり。
そろそろ真面目にこの仕事を片してしまいましょうか。
ペンを走らせる。
七割ほど書き終わる。もともと大した量でもないしね。
333 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/05(金) 21:23:48.48 ID:keDVCmA20
「どのくらい進んだん?」
唐突に声をかけられて体が跳ねる。
吊り橋効果?心臓が少し高鳴る。
頭の中では突然現れた戸惑いと、よく知る人の安心とで混乱する。
なぜ気づかなかったのかと思うくらい、近くに彼女の顔。
髪がちょっと当たる。甘い匂いもする。嗅ぎ慣れた、好きな香り。
334 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/05(金) 21:24:16.75 ID:keDVCmA20
私の肩から生えた頭がニヤついているのがわかる。
これほど至近距離にいると彼女の方を向くこともできない。
鼻の先を横目で見るくらい。まつ毛が長い。
凝視するのも恥ずかしいから目の前の原稿に視線を落とす。
335 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/05(金) 21:24:42.98 ID:keDVCmA20
「近いって、もう。」
精一杯の反抗。なぜかはっきり喋れない。
固まっている私を気にも留めないで、原稿を手に取る彼女。
彼女の可愛いイタズラでしょうけど、こういうのは控えめにしてほしいわ。
現に彼女のせいでちっとも仕事が進まない。
336 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/05(金) 21:25:08.38 ID:keDVCmA20
ふーん、うーむ、と唸る声が聞こえる。ちゃんと考えているのかしら。
「ええんやない?」
随分と短い感想なのね。
不服だけど、彼女の意見は大事にしている。他の誰より信用しているから。
そうして、ここまで二人でやって来た。
あのスキンシップには閉口しているけれど。
337 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/05(金) 21:26:08.03 ID:keDVCmA20
「希。仕上げるから向こう行ってて。」
思ってもいないのに突き放すような言葉が出る。
彼女が私の肩に手を置いて停止する。
どうしたのかと首を回したその時。
338 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/05(金) 21:26:43.35 ID:keDVCmA20
ちゅっ。耳元で音がなる。キスされたわけじゃない。
見れば、彼女がにんまり笑う。
彼女の唇を見つめてしまう。少し厚めの唇。気持ち良さそう。
堂々と自分の席に戻る背中を目で追う。
339 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/05(金) 21:27:10.52 ID:keDVCmA20
席に着いた彼女がこちらを見てまた笑顔を送る。
自分でも理由はわからないのに、スッと目線を下げて、顔を隠す。
彼女を意識しているみたいで嫌だから、すぐに顔を隠していた右手を下ろす。
集中できないままペンを持つ。本当にもう、困ったものね。
どういうわけか顔が火照る。
340 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/05(金) 21:28:02.04 ID:keDVCmA20
終わり
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/06(土) 21:49:05.49 ID:oBZED0uhO
青春だなぁ
342 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/06(土) 23:08:24.80 ID:rK5He1hk0
思った通りに書けないので少し間を挟みます。一応HTML化はしません。
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/07(日) 11:02:36.56 ID:7TJnnDgAo
待ってます
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/07(日) 13:38:12.59 ID:bkzG5y6mO
ゆっくりでも良いからずっと続いて
345 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/11(木) 04:51:48.32 ID:PZdOOfUko
ほ
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/13(土) 23:03:35.17 ID:Uae4hZF50
『香水』
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 23:04:08.67 ID:Uae4hZF50
華やかな香りがする。彼女から流れてくる。
隣に座る彼女はどこか憂いを帯びた表情で。
大人っぽい。香水をつけている。
明らかな変化だった。
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 23:04:47.47 ID:Uae4hZF50
どうして急にそんなものをつけ始めたの?
それは誰に嗅がせるの?反射的に疑問が浮かぶ。
μ’sの中ではそういうのに常日頃興味がありそうな子は少ない。
ことりちゃんとか真姫ちゃんあたりかな?
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 23:05:26.66 ID:Uae4hZF50
それとも、この学校の外の人かな。
ウチの片思いの相手が誰かに向けたこのアピール。
思索を巡らしてその誰かの影を追う。
見つけられるはずがない。そんなものがあれば既に気づいている。
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 23:06:03.97 ID:Uae4hZF50
隣を見やるとウチを置いて、彼女が大人になってしまったようで切なくなる。
今までのウチらには異質な感じ。誰かと成長が壁になってる。
自分が少し身構えているのがわかった。
「香水つけたん?」
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 23:06:38.77 ID:Uae4hZF50
「ええ。」
彼女は照れ臭そうに答える。
背伸びしているように思えて照れている。
まだ大人になりきれていないその反応にホッとする。
彼女はウチの知っているえりちのままだ。
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 23:07:08.53 ID:Uae4hZF50
「この匂いどうかしら?」
いい匂いだと思うよ。あなたにあってる。いいチョイス。
でも、そう言われて喜ぶあなたは見たくない。
ウチの助言で自信をつけて、デートにでもつけていくの?
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 23:07:44.30 ID:Uae4hZF50
「ええ匂いやん。」
わかっているのに目の前の、あなたの笑顔に勝てはしない。
気を良くしたのか揚々と魔法の瓶を見せつける。
元から自慢するつもりだったのね。
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 23:08:25.80 ID:Uae4hZF50
「ウチにもつけさせて。」
はいどうぞって、ちょっと考えた後に渡してくれた。
なんでためらうの?ウチがそれをつけたら嫌?
でも渡してくれたっていうことはいいってことだよね。
手につけたらつまらない。耳の後ろに軽く吹きかける。
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/13(土) 23:09:20.41 ID:Uae4hZF50
「えりち、嗅いでみて。」
彼女は一度、自分の頬に手を添えて戸惑いの声をあげる。
どうしたら良いのかわからないみたい。
何をそんなにためらっているのかと思ったとき。
正面から急接近。とっさに2センチ仰け反る。
彼女の顔は耳元に逸れて行った。
わざわざ正面から来なくても、そんなんだから勘違いする子が出るんだよ。
356 :
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[sage]:2017/05/13(土) 23:10:01.49 ID:Uae4hZF50
嗅ぎやすいように頭を若干傾ける。
彼女のシャンプーの匂いが少しする。
首に当たる鼻息がくすぐったい。
首にキスとかしてくれないかな。
すっと彼女が離れていく。ずっと嗅いでいてくれても良かったのに。
357 :
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[sage]:2017/05/13(土) 23:10:33.68 ID:Uae4hZF50
「私の鼻に狂いはないわね。」
満足そうなエリチカ。ちょっと美人な高校生。
彼女を意識していることがバカらしくなって友人に戻る時がある。
褒めて欲しがる彼女を見ると庇護欲がわく、そんな時に。
358 :
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[sage]:2017/05/13(土) 23:11:17.67 ID:Uae4hZF50
「ウチも香水欲しいかも。どこで買ったん?」
なんだか素直になってしまった。
誰へのアピールとか関係なく単純にチャーミングなアイテムが羨ましくなった。
女の子なら憧れるもんやん?
むしろつけていなかったのが自分でも不思議なくらい。
359 :
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[sage]:2017/05/13(土) 23:11:53.69 ID:Uae4hZF50
「教えないわ。」
「えー。教えてな。」
「希はそのままでいいわよ。」
ウチが駄々をこねてもウンと言わない。
きっちり生徒会長状態。瓶をしまってしまう。
ブランドくらい見ておけば良かった。
360 :
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[sage]:2017/05/13(土) 23:12:26.22 ID:Uae4hZF50
挙句には手で扇いでウチの香りを消そうとしてくる。逆に広がってるし。
彼女の手が耳たぶにピチピチ当たる。その手をつかもうと躍起になる。
ウチが香水を手に入れてやろうと彼女のカバンに手を伸ばす。
彼女が自分のカバンをひっつかんで立ち上がった。
「だーめ。部活いきましょ。」
361 :
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[sage]:2017/05/13(土) 23:12:53.00 ID:Uae4hZF50
終わり
362 :
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[sage]:2017/05/14(日) 04:39:16.80 ID:93J0MdDvo
待ってた
363 :
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[saga]:2017/05/14(日) 22:20:46.37 ID:IjapA/qL0
『夜の歩道で』
364 :
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[sage]:2017/05/14(日) 22:21:19.33 ID:IjapA/qL0
μ’sに生徒会で遅くなった帰り道。
体は疲れて頭も重い。
だけれども、不思議と気分は悪くない。
むしろ疲れのせいでテンションが上がっている。
365 :
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[sage]:2017/05/14(日) 22:22:00.47 ID:IjapA/qL0
街灯が一定の間隔をあけて立ち、歩道のタイルを照らす。
時刻は八時を回ったところ。
人がまばらになる時間帯。
夜風が疲れた体を爽やかに包み込む。
夜の匂いがする。
366 :
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[sage]:2017/05/14(日) 22:22:30.75 ID:IjapA/qL0
彼女と二人、寄り添うように歩く。腕が当たるが不快じゃない。
寄りかかったり、体重をかけられてふらついたり。
ボソボソと話せば可愛らしい笑い声が響く。
引きずるように二人でクスクス笑う。
367 :
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[sage]:2017/05/14(日) 22:22:59.65 ID:IjapA/qL0
大きく一息。
彼女が鼻歌を歌いだす。
まだ歌詞がつけられていない、真姫が作成中の曲。
足取り軽やかに数歩前へ躍り出る。
「希、バッグ持ってて。」
彼女にバッグをパスする。
368 :
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[sage]:2017/05/14(日) 22:23:37.00 ID:IjapA/qL0
街灯の明かりをスポットライトに、昔の記憶を頼りに。
革靴だけれど踊りだす。やり方は体が覚えている。
手を伸ばし、足を張る。緩急入れて飛び上がる。
滑るように光の下へ入り込む。
1、2、3、4。5、6、7、8。
リズムに乗って優雅に舞う。
369 :
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[sage]:2017/05/14(日) 22:24:57.82 ID:IjapA/qL0
無心に回転、後方にいる観客に見せつける。
鼻歌は消えてしまったけれど、頭の中で曲が流れている。
たくさん練習した。腕を縮めて咲くように開く。
真剣に、一切の妥協もなく全身で表現する。
370 :
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[sage]:2017/05/14(日) 22:25:26.82 ID:IjapA/qL0
彼女に周りを踊りながら周回する。もう終盤。
曲が終わる。指先からつま先までポーズを固める。
力を抜いて彼女に抱きつく。
強く飛び込んだせいでよろめく。
371 :
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[sage]:2017/05/14(日) 22:26:15.97 ID:IjapA/qL0
息を切らしながら彼女の匂いを嗅ぐ。
感情が高ぶってどうにかなってしまいそう。
ここまでいろんなことがあったわ。
「希。」
「なに?」
「私、今幸せよ。」
「うん。」
背中に手を回されてさすられる。
涙が溢れる。おかしいわね。泣くほどのことかしら。
静かに声を上げずに泣いた。夜が私たちを見守ってくれた。
372 :
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[sage]:2017/05/14(日) 22:26:42.55 ID:IjapA/qL0
無言で彼女の存在を感じる。
「帰ろっか。」
「そうね。」
腕を解いて歩きだす。涙を拭ってカバンを受け取る。
小恥ずかしくて顔は見れない。
373 :
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[sage]:2017/05/14(日) 22:27:35.15 ID:IjapA/qL0
虫の声もしない。静穏な帰り道。
「今日は私の家に泊まっていかない?」
「じゃあ、お邪魔しようかな。」
もうちょっと一緒にいましょう。
374 :
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[sage]:2017/05/14(日) 22:28:09.15 ID:IjapA/qL0
終わり
375 :
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[sage]:2017/05/15(月) 01:04:43.63 ID:Q9dsoj8X0
よき
376 :
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[sage]:2017/05/15(月) 01:06:54.46 ID:ZOD85mRlo
甘い
ひたすら甘い
377 :
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[sage]:2017/05/15(月) 01:30:15.83 ID:MpBbJBAjO
甘々最高
蕩けそう
378 :
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[saga]:2017/05/20(土) 22:18:02.65 ID:8DgURIdx0
『手紙』
379 :
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[sage]:2017/05/20(土) 22:19:06.65 ID:8DgURIdx0
ウチはあなたに色々送る。
朝にはおはようの挨拶とあくび。
ホームルームでは次の授業とその日の予定の指示。
一限目にはすこーしだけ眠そうなあなたへの視線。
休み時間に流行の話題の振り。
380 :
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[sage]:2017/05/20(土) 22:19:36.08 ID:8DgURIdx0
二限目にウチの妄想。
お昼休みにお弁当のおかずと占いの結果。
三限目にえりち実況ラジオ。
授業後にあなたの似顔絵を乗せた紙飛行機。
381 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 22:20:02.69 ID:8DgURIdx0
四限目に応援、ドリンク。
着替え中にタオルと制服のシャツ。
五限目に愛のLINEと投げキッス。
休み時間に謝罪の言葉。
382 :
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[sage]:2017/05/20(土) 22:20:56.27 ID:8DgURIdx0
六限目に懺悔と告白。
部活前に軽い冗談とお菓子。
練習中に恋の歌。
放課後にプレゼントと日頃の感謝。
一人の家からとりとめのないLINE。
ベットの中から私の気持ち。
383 :
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[sage]:2017/05/20(土) 22:21:21.19 ID:8DgURIdx0
毎日たくさん送っているのに、ほとんどが届いている様子が見られない。
でもたまに、ふとこちらを向いて微笑んでくれる。
届いていますか?良ければあなたも送ってください。
そろそろ寝ます。
おやすみなさい。
384 :
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[sage]:2017/05/20(土) 22:21:51.79 ID:8DgURIdx0
終わり
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 23:30:47.17 ID:kjXrnI0AO
切ないようなそれでいて幸せなような
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