勇者「集え!我らアリアハン高校野球部!」

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445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 19:25:05.33 ID:Haep8ENwo
続き…
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/27(金) 21:32:39.20 ID:sTGtY0d1O
実況『なんとピッチャーの夢爺選手、ファウルフライを捕りにウェポンズベンチへ飛び込んでしまいました』

解説『ヤドヤ選手は見切って捕りに行かなかったんですが、彼の方は判断を誤りましたね』

実況『ここからはよく見えないんですが大丈夫でしょうか。アウトが宣告されたのでキャッチはしたようですが……インズの選手も集まってきました』



\え……何あれ大丈夫だよね?/

\死んだ?/

\ヤドヤに任せればよかったのに張り切るから/

\死んだ?/



商人「お客さんドン引きじゃん!やり過ぎだよ!」

ヤドヤ「……」

大烏「夢爺さん!」

一角兎「しっかり!」

スライム「うわああん」

勇者「おい、おっさん!」ペチペチ

魔法使い「そんな無茶な起こし方まずいって!」

夢爺「ん……」パチリ

勇者「お、気がついたぞ」

魔法使い「嘘……でもよかった」
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/27(金) 21:51:10.46 ID:sTGtY0d1O
大烏「夢爺さん!大丈夫ですか!」

一角兎「わかりますか!?」

スライム「ひっく……ひっく」

夢爺「……ああ。少し打ちつけただけだ。どれくらい眠っていた?」

勇者「1、2分ってとこだな」

夢爺「そうか。中断させて悪かった。再開しよう」

大烏「でも……」

夢爺「大事にするな。大勢の人間が見ている」

ヤドヤ「無理しない方がいいんじゃないの」

夢爺「お前に言われる筋合いはない」

ヤドヤ「そんな減らず口を叩けるなら大丈夫そうだな」

夢爺「ふん……」

勇者「本当に大丈夫か?結構派手にいったぜ」

夢爺「敵の心配より自分の心配をしたらどうだ。本気で勝つ気があるのか?」

勇者「それとこれとは……」

夢爺「ただでさえレベルの低い試合を見せているのにこのままでは事故のような空気になるぞ。こんなものは野球ではよくあるプレーだ」

勇者「……」

商人「大丈夫って言ってるならいいじゃん。一人欠けたら中止なんだから派手な演出でも怪我はやめてよね」

夢爺「悪かったな。試合再開だ」
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/27(金) 22:15:07.49 ID:sTGtY0d1O
───

実況『どうやら大丈夫そうですね』

解説『ショニーズ野球リーグではあまり見られない出来事だったので大袈裟になりましたな』

実況『捕球後にボールデッドとなりランナーそれぞれ進塁します。ツーアウトですが2、3塁になってここで4番商人選手です』



商人「ヤドヤ、また真ん中に投げさせちゃいなよ」

ヤドヤ「いやあ……あいつもう俺のサインは無視すると思います」

商人「なんで!?頭でも打っておかしくなっちゃったの?」

ヤドヤ「まあ……そういう感じですかね」

商人「なんだよそれ。だったらピッチャー代えちゃってよ」

ヤドヤ「若なら実力で打てますって」

商人「え?本当?」

夢爺「お喋りとは余裕だな。二人で俺を打ち崩す相談か?」

商人「うるさいな。言うこと聞かないやつなんか給料減俸だ」

夢爺「そろそろ投げるぞ」

商人「どの辺に投げそうかな?変化球あるのかな?」

ヤドヤ「もう来ますよ。構えた方が」

夢爺「ふう」スッ

ズキッ

夢爺「うっ」ピュッ

夢爺「しまっ……!」

商人「え?」

ドゴッ

商人「ぐええ……」

ヤドヤ「若!」

アンパイア「デッボー」

夢爺「……」
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 22:18:54.03 ID:DRrvx0kkO
勇者「うわ、やりやがった」

遊び人「今なんかフォームおかしかったね」

戦士「さっきどこか痛めたんじゃない?」


ヤドヤ「若!大丈夫ですか」

商人「うう……痛いよ」

ヤドヤ「右手が腫れている。骨折かもしれない」

商人「なんだよ……あいつなんでぶつけたの?」

ヤドヤ「わざとじゃないと思いますが」

夢爺「すまない。故意ではないが野球とはこういうもの」

ヤドヤ「俺たちの野球は客を楽しませてナンボだ。本気のデッドボールはまずいんだよ」

夢爺「……」

武闘家「お前のやり方は客を楽しませているか?」

ヤドヤ「ああ?」

武闘家「元を辿れば誰の怠慢プレーが引き起こした?」

ヤドヤ「……」

武闘家「お前のやっていることは客ではなく、商人を喜ばせているだけじゃないのか?」

ヤドヤ「……なんだと?」

夢爺「当てたのは俺だ。ヤドヤは関係ない」

ヤドヤ「……」
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 22:34:30.16 ID:DRrvx0kkO
商人「ちょっと、俺を無視して揉めないでよ。救急車呼んで」

ブキヤ「……若」

商人「ブキヤ、早く救急車」

ブキヤ「しかし若がこのまま退場となれば、試合中止ということになります」

商人「だって骨折れちゃってるよ」

僧侶「見せてみろ」ガシッ

商人「折れてるよ!触らないでよ!」

僧侶「ふむ、これなら大丈夫だ。ただの打撲だ」

勇者「なんだ。よかったな」

商人「素人の意見なんて参考にならないよ!すごく痛いんだよ!」

武闘家「僧侶はその辺の医療従事者よりは当てになる」

魔法使い「なんで!?」

僧侶「そういう宗派に生まれ育ったからな」

魔法使い「どういう!?」

僧侶「打撲に対して医者ができることはさほどない。精々薬を処方するだけ。ならば素人でもやることは同じ」スッ

魔法使い「それは?」

僧侶「うちの寺に代々伝わる秘伝の薬草だ。そこらの湿布よりは効くぞ。わはは」

魔法使い「う、胡散臭い……」
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 22:53:13.67 ID:DRrvx0kkO
ヌリヌリ

商人「あれ?ちょっと痛みがなくなってきた」

魔法使い「嘘でしょ!?」

僧侶「完全に治ったわけではない。あまり動かすな」

魔法使い(この人何者なんだろう)

商人「くっそー……なんでこんなことに」

武闘家「あんなの避けられない方が悪い。お前が敵のキャッチャーと話をしているから避けられなかっただけだろう」

商人「なんで当てられた俺が責められるの」

武闘家「いつまでもこんなことをしていたら不穏な空気になる。観客にアピールしてやれ」

商人「なんで……」フリフリ


ヤドヤ「意外だね。お前も俺を責めるかと思ったが」

夢爺「事実を言ったまで。それに……いや、なんでもない」

ヤドヤ「……なんだよ」
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 23:10:27.68 ID:DRrvx0kkO
実況『観客席に手を振って一塁に向かっていますね。どうやら大丈夫のようです』

解説『ほっ……』

実況『これでツーアウトながら満塁になり、バッターは5番ブキヤ選手です』



夢爺「一人当てたからといって遠慮はせん。今まで通りに投球する」

ブキヤ「あれでは若が活躍することはもう不可能……」

ヤドヤ「本当厄介な連中を巻き込んじまったな。どうすんだ?」

ブキヤ「若が打てないなら自分も打つわけにはいかない」

ヤドヤ「いいんじゃないの。もう若も試合どころじゃないし」

ブキヤ「お前はどうする?」

ヤドヤ「どうもしないよ。今まで通りだ」

ブキヤ「……自分は純粋に彼らを勝たせてやりたいと思っている」

ヤドヤ「情が沸いたか。俺は全くだね」

ブキヤ「だが」

バシィ

バシィ

バシィ

アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!チェンッ!」

ブキヤ「勝負にけりをつけるのは彼らだ」

ヤドヤ「そっか」

ブキヤ「彼が言ったことは気にするな」

ヤドヤ「うん?」

ブキヤ「我々には我々の信念がある。お前は間違っていない。自分を貫き通せ」

ヤドヤ「わかってる」
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 23:28:44.28 ID:DRrvx0kkO
───商人ウェポンズベンチ

僧侶「さて我々の守りだが、ピッチャー交代だ」

商人「は?代わるの?」

僧侶「そりゃそうだ。重傷ではないがそれでは球は握れまい」

商人「せっかく我慢して出てんだから活躍しないと意味ないよ。向こうのやつらに全部三振させちゃえばいいよ」

武闘家「無理だ。ストライクどころかキャッチャーに届くかもわからん球を振らせれば、どんな客だろうと八百長と気づくぞ」

商人「うう……」

魔法使い(そもそもそんな指示向こうはヤドヤさん以外聞かないもんね)

勇者「後は任せておけって」

商人「ウェポンズのピッチャーは俺だけなのに……」

ブキヤ「若……」

魔法使い「商人君の守備はどうするの?」

僧侶「できそうなところはファーストか」

商人「ファーストなんてやったことないよ」

僧侶「常に塁上にいてくれれば守備は放棄していい。俺たちが投げたボールくらいは捕れるだろう?」

商人「そんなのなんの見せ場もないじゃん」

武闘家「試合を成立させることを第一に考えろ。大体負担は俺たちにかかるんだ」
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 23:40:38.91 ID:DRrvx0kkO
魔法使い「じゃあピッチャー頑張って勇者」

勇者「よっしゃ。いよいよ俺の出番」

僧侶「いや」

勇者「え?」

僧侶「ただでさえ内野守備が緩くなり、商人とほぼ同じ実力・球種の勇者ではおそらく打たれる」

武闘家「そういうことだ。俺に任せるんだな」

僧侶「いや」

武闘家「なに?」

僧侶「お前も変化球持っていないだろう。なぜ出てきた」

勇者「でも他にピッチャーは……」

遊び人「やれやれ仕方ない。僕が」

僧侶「魔法使い」

魔法使い「ん?」

僧侶「お前が投げろ」

魔法使い「……は?」
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/28(土) 23:41:43.87 ID:DRrvx0kkO
つづく
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/28(土) 23:55:24.19 ID:RgLPSYXiO
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/29(日) 22:41:04.90 ID:z/uoFdXnO
勇者「魔法使いだって……?」

僧侶「違うタイプのピッチャーなら向こうもすぐには対応できまい」

魔法使い「いやいや待ってよ。僕ピッチャーじゃないし」

僧侶「お前には独特の球筋がある。あれは変化球のようなものだ。十分武器になる」

魔法使い「僕の球が……?」

勇者「なんでそんなのわかるんだ」

僧侶「先ほど魔法使いが盗塁を刺そうとしたとき、俺は捕球できなかった」

魔法使い「そういえば……あれって僕が捕り辛いところに投げたからじゃ?」

僧侶「いや、いい球だった。ただ予測した軌道とズレがあったんだ」

魔法使い「そうなの?」

僧侶「自信を持て。お前のストレートは生まれ持ったものだ。真似しようと思っても誰もできん」

魔法使い「僕がピッチャー……」

勇者「……」
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/29(日) 22:56:21.08 ID:z/uoFdXnO
魔法使い「だったらキャッチャーはどうするの?」

僧侶「それなのだが……」

魔法使い「経験のある人いないよ。まさかブキヤさんに頼るの?」

ブキヤ「自分もキャッチャーの経験はない」

魔法使い「ですよね」

ブキヤ「だがどうしても試合が成り立たなくなるというのなら……」

勇者「俺がやるよ」

魔法使い「え?」

勇者「僧侶でも捕れなかったんだろ。俺はいつも魔法使いとキャッチボールしてたから慣れてるし」

魔法使い「キャッチャー舐めないでよ。素人がそんなすぐできるもんじゃないんだよ。キャッチボールとは違うんだよ。一番大事なポジションなんだよ。ねえ?」

武闘家「だが俺か僧侶がやるとしても内野に穴が空きすぎる。代われない」

魔法使い「君ピッチャーのときは真っ先に代わろうとしたよね!?」

僧侶「俺も勇者に懸けようと思っていた。野球経験のない勇者なら本来の球筋と違っても惑わされにくい」

勇者「ああ、やってやるよ」

魔法使い「ちょっと皆本気なの?」

勇者「お前の投球、じっくり見させてもらうからな」

魔法使い「いやいや……」
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/29(日) 23:12:03.59 ID:z/uoFdXnO
───4回表

ウェポンズ 0-0 インズ


実況『ピッチャー交代ですね。商人選手、やはりデッドボールの影響か』

解説『あわわ……坊っちゃんに何かあったら社長になんて言われるか』

実況『リリーフは先ほどまでキャッチャーだった魔法使い選手のようです。どうなりますかね』

解説『知るか!どうでもいいわ!』

実況『キャッチャーは勇者選手、ファーストは商人選手に代わりました』

解説『何やらせてんだよ!病院連れてけよ!』

実況『投球練習が終わり、バッターは2番大烏選手からです』



魔法使い「なんでこんなことに……」

勇者「……」

武闘家「……大丈夫なのか本当に」

僧侶「やはり投球練習で勇者は捕ることができた。あとは打者を立たせてどうなるか」

武闘家「それはいいんだが、投球練習を見ている限り……」

僧侶「二人には試合中にいつもと違うポジションに慣れていってもらうしかない」

武闘家「打ちごろの球にしか見えん。本当に変化しているのか……?」
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/29(日) 23:29:11.28 ID:z/uoFdXnO
大烏「カッカッカ、さっきのやつより遅いぞ。あれなら俺でも打てるかも」

勇者「じゃあお手並み拝見といくぜ」スッ

魔法使い(ど真ん中!?何そのリード!?)

勇者「……」コクッ

魔法使い(……まずストライクが入るかだもんね。あの辺に投げればど真ん中じゃなくていい具合に散らばるかも……そういうことだよね!?)

勇者「ここだぞ。しっかり投げろ」

魔法使い(何も考えてなさそう……)

魔法使い「もうやるしかない。いくよ」ゴクリ

勇者「来い」

魔法使い「えいっ!」ピュッ

大烏「カァーッ!」ブン

パシッ

アンパイア「アアァイッ!」

大烏「あれ?」

勇者「おお……やっぱりバッターがいると怖いけど捕れたぜ」

魔法使い「よかった……」

僧侶「ふむ。初体験なのにバットを振られても捕れるか。あの勇気とセンスは見事だな」

武闘家「問題は魔法使いだ。初球はたまたま空振りにできたが、あれではいずれ打たれる」

僧侶「まあ見ていろ」
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/29(日) 23:43:29.34 ID:z/uoFdXnO
魔法使い「えいっ!」ピュッ

大烏「カァーッ!」ブン

パシッ

アンパイア「アアァイッ!」

勇者「いいぞ。二球続けて空振りだ」

魔法使い「ほっ……」

大烏「あ、あれ?」

魔法使い「えいっ!」ピュッ

大烏「カァーッ!」ブン

パシッ

アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!」

勇者「すげえ!いきなり三振だ!」

魔法使い「や、やった!」

武闘家「どういうことだ……なぜあんな球で」

僧侶「上々だ。とはいえ今のは素人。ここからが本番だ」


夢爺「……」

大烏「くそっ」

夢爺「ただのストレート……というわけではなさそうだな」

大烏「俺が油断したカラッスよ。でも意外と速かったかも。前のピッチャーと同じくらい」

夢爺「……ほう」
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 23:44:49.03 ID:z/uoFdXnO
つづく
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/31(火) 16:15:27.36 ID:Gam8Wahgo
ほう
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 22:36:04.23 ID:XPyAWgBjO
魔法使い「次は夢爺さんか……」

夢爺「なかなか興味深いピッチャーだ」

勇者「へへ。腰抜かしたら怪我して退場、なんてやめてくれよ」

夢爺「遠目で見るのと体感速度が違うのだろう。それだけわかっていれば打席で驚くことはない」

勇者「そうなのか。たしかに速いと思ったけど」

夢爺(こいつもあのストレートの秘密がわかっていないのか。では……)

魔法使い「三振は無理でも打たせてとれれば」ピュッ

勇者「いっ!?」

バスッ

アンパイア「ボール」

勇者「いってー……ワンバンだけど装備のない足に当たった」

夢爺「……」

勇者「おいおい、構えたところと全然違うぞ。あれ捕るのは難しいって」

魔法使い「ゴ、ゴメン」

僧侶「やはり球が荒れるといくら勇者でも捕球は難しいか」

武闘家「ランナーがいなくてよかったが、あれでは」

僧侶「それでも後ろに逸らせていない。勇者を信じろ」

武闘家「さっきから勇者のことじゃない。不安なのは魔法使いだ」
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 22:50:04.32 ID:XPyAWgBjO
魔法使い「いけない。夢爺さんの威圧感にやられちゃう」

勇者「ここだぞ」

魔法使い「えいっ!」ピュッ

バスッ

アンパイア「ボール」

勇者「いてて……またかよ」

魔法使い「うう……ゴメン」

夢爺「やはり急造ピッチャーか」

勇者「うげ、バレてら」

夢爺「ならばこの打席はじっくり観察させてもらおうか」

魔法使い「えいっ!」ピュッ

パシッ

魔法使い「えいっ!」ピュッ

パシッ

アンパイア「ボールフォア」

夢爺「……」

勇者「今の2球お前手抜いたろ」

魔法使い「そ、そんなこと」

勇者「俺なら大丈夫だ。本気で投げろよ。お前本当はコントロール悪くないんだしさ」

魔法使い「う、うん」

僧侶「想定内だ。振ってくれなければ急造ピッチャーにストライクはなかなか難しい」

武闘家「とはいえストレートの四球はまずいだろう。惨事になる前に代えるべきだ。俺に」

僧侶「慌てるな。今のは魔法使いが相手に萎縮していたせいもある」
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 23:04:42.25 ID:XPyAWgBjO
実況『代わったピッチャーの魔法使い選手、ストレートのフォアボールを出してしまいました。ワンナウト1塁で続くバッターは4番ヤドヤ選手です』



夢爺「ヤドヤは自動アウトとして、あのピッチャーの調子で次からどうなるか」

商人「……」

夢爺「連続四球で押し出しでは塩試合にも程がある。そう思わんか」

商人「うるさい。ユーのせいだろ」

夢爺「ふっ、嫌われたものだ。それで負けるようならお前たちに見込みはない」

商人「なんだよ偉そうに。何様だ」


カキィン


夢爺「ん?」



実況『ヤドヤ選手打ったー!これは大きい!』



夢爺「なに……?」

ヤドヤ「……」
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/02(木) 23:17:31.83 ID:XPyAWgBjO
盗賊「くっ」タッタッタッ

ヒューン

ガン



実況『フェンス直撃!長打になるぞ!』



魔法使い「そんな……」

勇者「やべえ!」

武闘家「おい打たれたぞ!」

僧侶「しかし不幸中の幸いか。打球はセンター方向だ」


盗賊「くそ!油断したぜ。まさかあいつが打ってくるとは」パシッ

ブキヤ「ヤドヤ……」


夢爺「ホームは少し難しいか」タッタッタッ

遊び人「ん?三塁で止まるのかい?ホームまで行けそうな当たりと思ったけど」

夢爺(ついスタートが遅れた)

夢爺「それにしてもあいつ……」
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 23:18:08.41 ID:XPyAWgBjO
つづく
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 23:03:47.55 ID:ocVwd5q2O
実況『ヤドヤ選手あわやホームランというバッティングでした。しかし一塁で止まってしまいましたね。ツーベースは行けそうな当たりでしたが』

解説『一塁走者も三塁止まりかよ。スタートも足も遅すぎだろうがよ』



魔法使い「ゴメン……打たれちゃった」

武闘家「やつめ、商人が代わった途端本気を見せてきたか。こちらもすぐに本気を出すべきだ。ピッチャー俺に」

魔法使い「やっぱり僕じゃ……」

僧侶「大丈夫だ。大した問題じゃない」

魔法使い「でも……」

僧侶「おそらくヤドヤは打つ気がなかった。本人も今のは予想外だったはずだ」

魔法使い「え?」

僧侶「ツーベースの当たりなのに一塁で止まった。これ以上チャンスを広げないためと商人に弁明するためだろう。見てみろ」


商人「ピッチャー俺じゃないから打ちにいったの?」

ヤドヤ「いや……」

商人「別にいいけどね。こんな試合」

ヤドヤ「空振ったつもりだったんすが」


魔法使い「あのヤドヤさんが焦った表情を……」

武闘家「どういうことだ」

僧侶「やつも魔法使いの球に対応できなかった」

魔法使い「……」

勇者「訳わかんねえぜ。打とうと思っても打てなくて、打つ気がないのに打てるのか」

武闘家「……そういう変化をしている?」

僧侶「詳しくはわからない。だがあれは変化球とは違う」

魔法使い「……」

僧侶「向こうのレベルではお前の球は対応できない。自信を持て」

魔法使い「う、うん」
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 23:16:00.69 ID:ocVwd5q2O
実況『ヤドヤ選手のヒットでチャンスが広がります。ワンナウト一塁三塁。バッターは5番フロッガー選手』



フロッガー「ゲッゲッゲ。犠牲フライでもランナーカエル状況じゃねーの」

僧侶「ランナーは気にするな。打者を打ち取ることだけ考えろ」

魔法使い「うん。大丈夫」

勇者「よし来い」スッ

魔法使い「えいっ!」ピュッ

フロッガー「おら!」ブン

パシッ

アンパイア「アアァイッ!」

フロッガー「あれ?」

勇者「いいぞ。いい球だ」

魔法使い「えいっ!」ピュッ

フロッガー「うおお!」ブン

パシッ

アンパイア「アアァイッ!」

フロッガー「あれれ?」

魔法使い「えいっ!」ピュッ

フロッガー「せめて外野フライ……!」ブン

パシッ

アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!」

勇者「よっしゃ!」

フロッガー「なんで……」

武闘家「……」

僧侶「魔法使いを少しは信じる気になったか?」

武闘家「わからん。もう何を見ているのかもわからん」

僧侶「わはは。素直な感想だ。俺もわからん」
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 23:28:16.57 ID:ocVwd5q2O
───

人面蝶「うおりゃあ!」ブン

パシッ

アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!チェンッ!」



実況『魔法使い選手、6番人面蝶選手も抑え、ピンチを切り抜けた。また三振です』

解説『締まらん試合だなあ。大した球投げてないし』ホジホジ



勇者「やったな。お前すげえよ」

魔法使い「勇者君も素人キャッチャーには見えなかった」

勇者「へへ。頭空っぽにしてボール捕ることしか考えてなかったよ」

魔法使い「それはそれでダメなキャッチャーだよね……」

勇者「お前を信じていたからな。絶対打たれないって」

魔法使い「なんか、普通に打ち取るよりヤドヤさんに打たれたことで自信がついたよ」

勇者「変な話だな」

魔法使い「はは。そうだね。おかしいね」

僧侶「どうだ?ピッチャーの感想は」

魔法使い「ちょっと面白いかもって思った。でもプレッシャーすごいしあれだけでクタクタ。僕にはやっぱり向いてないよ」

僧侶「そうか。よく動じないと思っていたが、周りを見る余裕がなかったか」

魔法使い「え?」

僧侶「見てみろ」



\ピッチャーいいぞー/

\三振すごーい/

\誰だか知らないけど格好いいぞー/



魔法使い「……」

僧侶「客は素直だ。思ったことを言ってくれる。なのにせっかくの主役がそんな感想ではつまらんぞ」

魔法使い「……僕、エースになるよ」

勇者(うわあ)
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 23:45:26.17 ID:ocVwd5q2O
───イケメンインズベンチ

ヤドヤ「せっかくチャンスを演出してやったのにまた無得点。残念だったな」

夢爺「……」

ヤドヤ「あいつらも振らなきゃ四球の可能性があったのに。なまじチャンスだったから色気出しちゃったかな」

夢爺「……」

ヤドヤ「もしかして俺、打たない方がよかった?」

夢爺「あの球、どうやって打った?」

ヤドヤ「さあ。覚えてない」

夢爺「そうか」

ヤドヤ「役立たずですんませんね」

夢爺「いや、見ていて大体わかった。あれは俺には真似できん投球だな」

ヤドヤ「やっぱ秘密があんのか」

夢爺「もう一打席見てみれば確信できる」

ヤドヤ「そっか。わかったら教えてくれ」

夢爺「お前に教える気はない。もしかしたらまた空振りするつもりで打ってくれるかもしれんからな」

ヤドヤ「なんだ。わかってたんじゃねえか」
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 23:47:08.76 ID:ocVwd5q2O
つづく
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 07:01:21.43 ID:HfavX4E2O
きたい
1試合で1スレ消費しそうな濃密展開いいゾ〜コレ
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 11:33:05.03 ID:d3teAyNeO
個人的にはもう少し薄めでもいい
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:52:42.95 ID:qkeuyMXRO
───4回裏

ウェポンズ 0-0 インズ


実況『この回はキャッチャーとして見事なリードを見せた6番勇者選手から始まります』



勇者「よーし打撃だ。投げられない鬱憤はここで晴らすぜ」

夢爺「ふん」ピュッ

バシィ

アンパイア「ボール」

勇者「やっぱいい球だな。魔法使いとも違う感じだ」

夢爺「おや?お前は何も考えずに振ってくるかと思ったが」

勇者「人それぞれの投球があるもんな。じっくり球見た方が対策しやすいし」

夢爺「キャッチャーの経験も糧にするか」

勇者「あんたの打席からも学ばせてもらった」

夢爺「ふん」ピュッ

勇者「……よっ」ブン

カキィン

勇者「当たった!」

アンパイア「ファール」

夢爺「カットされたか。少々甘かったかな」

勇者「今の感じでいけそうだ」
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 21:04:24.75 ID:qkeuyMXRO
夢爺「調子に乗るな」

勇者「俺なら……」

夢爺「打たせん」ピュッ

勇者「打てる!」ブン

カキィン

夢爺「!?」

勇者「やった!今度は前に飛んだ!」

ヒューン

夢爺「詰まっているぞ!レフト!」

ヒューン

一角兎「うぐぐ」タッタッタッ

ヒューン

一角兎「無理……」タッタッタッ

ポトッ

一角兎「くそ、追いつけなかったピョン」パシッ

勇者「よっしゃ!初ヒット!」


魔法使い「やった。捉えたよ」

盗賊「いい当たりじゃねえが、先頭バッターが出られたのは大きいぜ」

武闘家「いい流れだ。守備でリズムが作れたか」

僧侶「無失点で抑えられる自信がついたことで余裕が生まれたな」

遊び人「じゃあ僕もこの流れに乗せてもらおうかな」
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 21:17:59.83 ID:qkeuyMXRO
実況『先頭バッター勇者選手ヒットで出塁。続くは7番遊び人選手。前の打席では敬遠で歩かされましたが、この打席はどう動くか』



遊び人「バント?しないよ。わざわざ向いてきたツキを逃すことはしない」

夢爺(こいつか……ここで逃げては完全に向こうのペースだ。勝負してみるか)

遊び人「送ったところで後ろが不安だしね」

夢爺「ふん」ピュッ

遊び人「はっ!」ブン

バシィ

アンパイア「アアァイッ!」

遊び人「……あれえ?」

夢爺(いける)ピュッ

遊び人「このっ!」ブン

バシィ

アンパイア「アアァイッ!」

夢爺(そうか。こいつが超人的なのは守備だけだったのか)ピュッ

遊び人「だあああ!」ブン

バシィ

アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!」

遊び人「うそぉ……」クルンクルン

ドシーン

遊び人「僕が打つ流れじゃないの……?」
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 21:36:54.59 ID:qkeuyMXRO
盗賊「空振りして尻もちまでつかされてんじゃねえか。格好悪」

戦士「ピエロメイクといい、イケメンとは程遠い姿だね」

武闘家「ふっ、これはさすがにやつのファンも減ったに違いない」

魔法使い(密かに妬んでたんだ……)

僧侶「いや、待て」



\あはは。今の面白かった/

\コミカルなピエロになりきってる。うまーい/

\遊び人君ユーモアのセンスも抜群だね/



武闘家「なんだと!?」ガタッ

魔法使い「なんか今までで一番声援すごくない?」

盗賊「むしろアクシデント続きで会場の空気は重くなっていた。それを笑いで一新させやがった」

戦士「アウトなのに全然悲観的にならないね」

僧侶「プレーだけが流れを生むわけじゃない。一つ勉強になったな」

ブキヤ(ショニーズ向きだ)
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 21:49:04.95 ID:qkeuyMXRO
遊び人「これはもしや……」

遊び人「活躍しなくても……」テクテク

遊び人「!?」ツルッ

ステーン

遊び人「てへへ」ポリポリ



\あはは。もう何やってんの。うける/

\お茶目すぎる。可愛いー/



遊び人「この路線もいける。ラッキー」


魔法使い「新境地を見つけたみたいだね……」

戦士「あんなメイクするから」

武闘家「なぜやつばかり必ずいい方向へ転がるんだ」

僧侶「持って生まれたものが違う。真似しようとなんて思うな」

盗賊「それはいいんだが、あれにハマって野球は役立たずなんてことにならなきゃいいが」

魔法使い「あり得そうで怖い……」
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 22:10:23.43 ID:qkeuyMXRO
───観客席

?「……ふっ」

??「あれ?今笑いました?」

?「……」

??「さっきまでムスーってしてたのに。今のそんなに面白かったですかあ?」

?「……」

??「それとも生徒たちの活躍が嬉しかっただけだったりして」

?「……」チョイチョイ

??「わかってますって。売店でこのメモに書いてあるの買ってくればいいんでしょ」

?「……」

??「面白くなってきたから私だって見たいのに」

?「……」シッシッ

??「邪魔者扱いしないで下さいよ。性格歪んでますよ」

?「……」ギロッ

??「うう、怖いよお……字はこんなに可愛いのに」
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 22:11:16.87 ID:qkeuyMXRO
つづく
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 16:00:27.09 ID:gd6TC+HXo
まだか
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/17(金) 22:38:01.49 ID:QdvtWnEHO
───

実況『その後も打線が続かず8番魔法使い選手内野フライ、9番戦士選手見逃し三振でチェンジです』



魔法使い「……」ズーン

戦士「……」ズーン

魔法使い「見せ場なし……」

戦士「せっかく盛り上がっていたのに振るなと言われた……」

魔法使い「所詮僕らは下位打線……」

戦士「ピッチングで見せ場あるだけいいじゃん……」

魔法使い「そうだったね」

戦士「え?」

魔法使い「僕ピッチャーだしバッティングはしょうがないよね」

戦士「う、うん。俺は……」

魔法使い「よし、気を取り直して頑張るぞ」

戦士「次は俺を励ます番だよ!早くして」

魔法使い「そっちには打たせないようにするからね」

戦士「……」
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/17(金) 23:00:57.91 ID:QdvtWnEHO
───5回表

ウェポンズ 0-0 インズ


アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!チェンッ!」



実況『7、8、9番を空振り三振に仕留め三振凡退!魔法使い選手完璧なピッチングです!』



僧侶「四球の心配はしばらくしなくていいな」

武闘家「なぜあんな球で……やつらもそう思っているから手が出てしまう」

僧侶「打てそうで打てない。一番厄介かもしれんな」

魔法使い「ふう」

勇者「ここまでアウト全部三振とか、お前何者だよ」

魔法使い「今は全然打たれる気がしないんだ」

勇者「貫禄ついてきたな」

魔法使い「まだまだ。この後だってかすらせもしないよ」

勇者「おお、強豪っぽい貫禄だ」

魔法使い「肩冷やさないようウインドブレーカー着なきゃ」

勇者「ケアも忘れない。すげえ貫禄だ」

魔法使い「タオルとドリンクある?」

勇者「貫禄……ならしょうがない。ほらよ」

魔法使い「あ、ちょっとどいてくれるかな。ファンの子たちに手振るから」

勇者「貫禄つきすぎてもいいことないぞ」
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/17(金) 23:12:03.45 ID:QdvtWnEHO
───5回裏

ウェポンズ 0-0 インズ


実況『1番から始まる好打順。難攻不落の夢爺選手を打ち崩せるか』



盗賊「おらっ!」ブン

カキィン

コンッコロッ

夢爺「セカンド!」

大蟻食い「ほいほいっと」パシッ

盗賊「くそっ、内野正面のゴロかよ。間に合うか」ダッ

大蟻食い「いくら素早くてもそれは無理」ピュッ

フロッガー「ナイスボール」パシッ

塁審「アウッ!」

大蟻食い「なまじいい当たりだと逆に守りやすいんだよなあ」

盗賊「ちっ」
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/17(金) 23:31:37.63 ID:QdvtWnEHO
───

僧侶「くっ」ブン

キィン

ヒューン

僧侶「うぐう」

夢爺「内野フライか。任せたぞ」

大蟻食い「ピッチャー寄りのセカンドフライ……いやショート任せた」

人面蝶「俺ね。オーライ」タッタッタッ

ヒューン

人面蝶「はいな」パシッ

塁審「アウッ!」

僧侶「うーむ。また流れが停滞してしまったか」

武闘家「俺たちのレベルでは流れが来たとしても、ものにできていないのが現状」

僧侶「そういう意味では打線にはならない。我慢のときか」

武闘家「だが突破口はどこにでもあるものだ」

僧侶「何か見つけたか?」

武闘家「……ああ」
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/17(金) 23:32:23.25 ID:QdvtWnEHO
つづく
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/19(日) 18:28:42.72 ID:92Mgxvt6O
実況『ツーアウトランナーなしで3番武闘家選手です』



夢爺「普通なら何もプレッシャーを感じる場面じゃないが」

武闘家「さあ来てみろ」

夢爺「何を仕掛けてくるか読めんやつは面倒だ」

武闘家「俺を恐れているのか。大口を叩く余裕はなくなったのか?」

夢爺「お前のペースには引き込まれんよ」ピュッ

バシィ

アンパイア「ボール」

武闘家「……」

夢爺「ふん」ピュッ

バシィ

アンパイア「ボール」

武闘家(前の打席程の球威、コントロールはない。皆バットに当たるようにはなった。遊び人以外)

武闘家(ピッチャーフライも以前ならやつ自身が捕っていたはず。やはりあのとき、動くだけで痛みが出る程の怪我をしていたか……だが)

武闘家(情けをかける程俺は甘くない。チャンスと受け取り全力で潰しにいく)
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/19(日) 18:50:44.28 ID:92Mgxvt6O
武闘家「どうした。バテてきたか?」

夢爺「ほざけ」ピュッ

武闘家「ここだ!」ブン

カキィン

夢爺「!?」ガッ



僧侶「ピッチャー返し!グラブを弾いた!」

勇者「さすが武闘家。止められはしたけど十分ヒットコースだぜ」

盗賊「ちっ、あのバットコントロールは認めざるを得ねえ」

魔法使い「夢爺さんも反応したけど捕れなかったね。弾いたボールを追いかけようともしない」

戦士「まあどうせ追いかけても間に合わないし」



コロコロ

夢爺「サード!」

バブルスライム「えっ俺?」タッタッタッ

武闘家「遅い。余裕でセーフだ」タッタッタッ

バブルスライム「でしょうね」パシッ

夢爺「ちっ」

武闘家「お前のピッチングは攻略できた。もう俺の思い通りだな」

夢爺「……そう簡単にはいかせん」

武闘家(やつが気丈に振る舞うため、他の連中は怪我だとは思わないだろう)

武闘家(知ってしまったら情けをかけるはず。やつもそう思っているから隠している)

武闘家(お前がどうしようが勝手だが、おそらくこの試合はもたないだろうな)
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/19(日) 18:58:06.60 ID:92Mgxvt6O
実況『武闘家選手内野安打で出塁。ここで4番商人選手に回りました』

解説『ブーブー!坊っちゃんはお前のせいで怪我してんだぞー。本気で投げるなんて汚い真似すんなよー』



夢爺「同情できるものならしてなりたいがね」ピュッ

バシィ

アンパイア「アアァイッ!」

夢爺「ふう」

商人「はあ。面倒くさ。打席に立つ意味ないのに」

ヤドヤ「打たないんですか?」

商人「嫌み?こんな手でまともに打てるわけないじゃん」

ヤドヤ「案外打てるかもしれませんよ」

商人「うるさいな。もうこの試合はいいの。さっさと終わらせちゃいなよ」

ヤドヤ「……へーい」
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/19(日) 19:13:10.96 ID:92Mgxvt6O
───

実況『商人選手バットを振らずに三振。やはり怪我をしていたか』

解説『で、でも試合に出てるってことは大した怪我じゃないよね?ね?』

実況『またも残塁でチェンジ。歯がゆい展開が続きます』



勇者「今のあいつはダメだな。完全にやる気を無くしている」

盗賊「仕方ねえよ。元々計算に入れてなかったしどうでもいい」

僧侶「しかし打線にならなければいくら個人が頑張っても点は入らないか」

遊び人「ホームラン狙って打つなんて兄貴でもないと無理だしねえ」

武闘家「4番商人、5番ブキヤの並びは捨てるとしても」

戦士「……」

魔法使い「僕ら下位打線がストップしちゃうのか……」
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/19(日) 19:13:51.87 ID:92Mgxvt6O
つづく
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/19(日) 20:03:30.99 ID:wLQdWHpto
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/19(日) 22:20:46.31 ID:sSfZQDp4O
解説仕事しろ
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/21(火) 22:04:00.30 ID:tWvtfw+zO
───6回表

ウェポンズ 0-0 インズ


実況『この回インズは1番からの攻撃になります。圧倒的なパフォーマンスを見せる魔法使い選手を攻略できるか』



一角兎「皆なんであんな球打てないんだ?もしかしてあれが大したことないように見える俺がすごいのかピョン?」

魔法使い「えい!」ピュッ

一角兎「どりゃ!」ブン

パシッ

アンパイア「アアァイッ!」

一角兎「……あれ?」

勇者「このパターンは見飽きたぜ」

パシッ

パシッ

アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!」

一角兎「打席で見ると全然違う……」
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/21(火) 22:19:29.85 ID:tWvtfw+zO
───

大烏「カァーッ!」ブン

パシッ

アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!」

大烏「でしょうね……」



実況『なんと7者連続三振!魔法使い選手もう止まらない!』

解説『坊っちゃんのが球速いからすごいもん!』

実況『次は前の打席でストレートのフォアボールを選んだ夢爺選手です。ここは一つポイントになりますかね?』

解説『こんな試合やだ!もう見ない!』プイッ



夢爺「一巡してヒットはヤドヤのまぐれ当たりだけか」

勇者「出来すぎて怖くなってくるぜ」

夢爺「敵の俺はそれ以上に怖いのだがな」

勇者「皆振ってくれるからだよ。四球だけ不安だったけど、あんたみたいに様子見ることもしないし」

夢爺「俺が全員に指示した。空振りするつもりで振れ、と」

勇者「え、そうだったのか」

夢爺「だがそれで打てる程甘くはない。うちの連中もまだレベルが低い」
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/21(火) 22:29:19.44 ID:tWvtfw+zO
魔法使い「えい!」ピュッ

パシッ

アンパイア「ボール」

夢爺「……」

魔法使い「う、夢爺さんはやっぱり振ってくれない……」

勇者「大丈夫だ。今まで通り投げろよ」

魔法使い「う、うん」

夢爺「お前はあのボールの秘密にそろそろ気づいたのか?」

勇者「あんたの球とどこか違う……とはわかるんだけどな」

夢爺「ああ。俺の棒球とは質が違う」

勇者「質?」

夢爺「まず球の回転数」

勇者「回転数……」

魔法使い「えい!」ピュッ

ギュルルルル

パシッ

アンパイア「アアァイッ!」

勇者「たしかに……ものすごい回転している」

夢爺「ふっ、見切るか。なかなかの動体視力だ」
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/21(火) 22:37:46.36 ID:tWvtfw+zO
勇者「あとは何が違うだ?」

夢爺「全てが違う。球の握りから下半身、肩、手首や指の動き。そこから自然に放られる回転軸の向き」

魔法使い「えい!」ピュッ

ギュルルルル

パシッ

アンパイア「アアァイッ!」

勇者「歪んでいない。真っ直ぐな縦回転だ」

夢爺「この魔球に最適なフォームだ」

勇者「魔法使いのフォーム……」

夢爺「勿論さらにスピードがつけば効果は上がるが、あの身体では少々酷かな」

勇者「……」ジッ

魔法使い「えい!」ピュッ

バスッ

勇者「いて!」

魔法使い「あ、ゴメン!また夢爺さんの打席でパスボールだ……」

勇者「だ、大丈夫だ」

夢爺「ピッチャーを見過ぎだ。それでキャッチャーの仕事が務まるのか」

勇者「いてて……そうだった」
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/21(火) 22:51:35.22 ID:tWvtfw+zO
夢爺「垂直な縦回転による浮力で本来重力で沈むはずのボールが落ちてこない。それにより打者は浮き上がってくるように錯覚する」

勇者「浮き上がって……そうか。それで皆空振りを」

夢爺「浮力を得たボールは重力分をこちらに向かってくる力に」

勇者「それで体感スピードが上がった……」

夢爺「終速はメラメラと火がつき加速したように感じる。それゆえあのボールはこう呼ばれている」

魔法使い「えい!」ピュッ

ギュルルルル

夢爺「火の玉ストレート、と」

パシッ

アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!チェンッ!」

夢爺「ふっ、いかんいかん。お喋りに夢中で三振か。てっきりまた四球を出してくれるかと思ったが、あいつも試合中に成長していたか」

勇者「火の玉ストレート……」
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/21(火) 22:52:22.22 ID:tWvtfw+zO
つづく
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 23:19:57.43 ID:Z8ma8cvDO
メラとかいう最強呪文
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/22(水) 00:09:39.49 ID:fOh5+S7SO
ひょっとしなくても普通に勇者すごい
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/24(金) 16:46:23.07 ID:DH5Y8ndmo
うまいこと話作るやな乙
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/25(土) 22:02:41.38 ID:bpd9b1kJO
───6回裏

ウェポンズ 0-0 インズ


バシィ

アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!」

ブキヤ「……」

夢爺「ふう」



実況『ブキヤ選手またも三振でワンナウト。今日はいいところがありませんね』

解説『知らない!』

実況『次のバッターは前の打席でヒットを打ちました6番勇者選手』

解説『まぐれまぐれ!』



勇者「火の玉ストレートか……」

夢爺「……」スッ

勇者「たしかに魔法使いのフォームとは全然違う」

夢爺「ふん」ピュッ

バシィ

アンパイア「アアァイッ!」

勇者「でもあの投げ方だったら……」

ヤドヤ「……」
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/25(土) 22:14:41.38 ID:bpd9b1kJO
夢爺「ふん」ピュッ

バシィ

アンパイア「アアァイッ!」

勇者「そうなる……か」

ヤドヤ「……」

夢爺「ふん」ピュッ

勇者「うーん」

ヤドヤ「考え事か。打席に集中しろよ」

勇者「おお、やべえ」ブン

カキィン

夢爺「なに!三遊間!」

バブルスライム「無理!頼む」

人面蝶「おりゃ!」バッ

パシッ

バブルスライム「おお、よく止めた」

人面蝶「でも投げるのは間に合わない。ちくしょう」

勇者「よし、内野安打!今度は綺麗に当たったぜ」タッタッタッ

ヤドヤ「……急でも対応しやがった。普通に打てるようになってんじゃねえの」

夢爺「……一段階レベルが上がったか」
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/25(土) 22:24:09.75 ID:bpd9b1kJO
遊び人「さてさて、もう僕の番か」

夢爺「ふん」ピュッ

バシィ

アンパイア「ボール」

遊び人「アウトになろうがなるまいが」

バシィ

アンパイア「ボール」

遊び人「僕としてはどっちでもいい方に転ぶからなあ」

バシィ

アンパイア「ボール」

遊び人「どうしようかなあ……って」

バシィ

アンパイア「ボールフォア」

遊び人「また四球。ラッキー」

夢爺「ちっ」
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/25(土) 22:38:25.92 ID:bpd9b1kJO
実況『おおっと、ストレートのフォアボールを出してしまいました』

解説『ノーコン!ノーコン!』

実況『ワンナウト12塁のチャンスで8番魔法使い選手です』



魔法使い「またチャンス……また僕らで潰すことになったら……」

夢爺「ふん」ピュッ

バシィ

アンパイア「ボール」

魔法使い「外れた……でも打てる気がしない」

夢爺「ふん」ピュッ

バシィ

アンパイア「ボール」

魔法使い「おかしいな。あんなに制球よかった夢爺さんが……僕を警戒するはずないし、やっぱり怪我」

ヤドヤ「お前も考え事か。集中しろって」

魔法使い「あ、はい」ブン

カキィン

魔法使い「あ……」

ヒューン

夢爺「内野フライ。任せたぞ」

人面蝶「よっと」パシッ

塁審「アウッ!」

魔法使い「やっぱり僕程度じゃ相手の調子どうこうのレベルじゃないよね……」

夢爺「2アウトか……ふう」

ヤドヤ「……」
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/25(土) 23:00:03.70 ID:bpd9b1kJO
───


\なんか退屈だね/

\全然試合変わらないしあんまり面白くないね/

\せめて贔屓の選手がいたらなあ/



ブキヤ「……」

武闘家「ふん。こっちだって望んでこんな展開にしたわけじゃない」

僧侶「武闘家、ちょっといいか。守備連携の確認だが」

武闘家「ああ」

戦士「……」

僧侶「お前の守備位置、レフトをケアしようとかなり深めに守っていたが」

武闘家「ああ。だが外野に飛ぶどころか全て三振だからな。通常に変更するか」

僧侶「そうしてくれ。俺も少し一塁側に寄りたい」

武闘家「するとああなった場合……」ペチャクチャ

僧侶「それをそうして……」ペチャクチャ

戦士「……」

武闘家「あーだこーだ」ペチャクチャ

僧侶「斯く斯く然々」ペチャクチャ

戦士「……」

戦士「……」キラーン
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/25(土) 23:13:20.82 ID:bpd9b1kJO
───

実況『まだチャンスは続きますがここで9番戦士選手。エラーに2三振と全くいいところがありません』



\ブーブー!/

\さっさと三振しろー/

\ブーイングするの結構楽しい/



戦士「……」

夢爺「こいつも振る気がないやつだったな」

戦士「……」

夢爺「振ってくれた方が有難かったが」ピュッ

戦士「うおおお!」ブルン

夢爺「!?」



魔法使い「戦士君の野郎武闘家君が目を離した隙に振りやがった!?」



バシィ

アンパイア「アアァイッ!」

夢爺「な……」

ヤドヤ「なんてスイングだ……」

戦士「うう……全然当たらない……おや?」
511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/25(土) 23:24:32.21 ID:bpd9b1kJO
一角兎「暇だピョンねえ。外野に飛んでくることなんて滅多にないし」

一角兎「バッターはあののろまだし、余裕過ぎて昼寝でもしたい気分だピョン」

一角兎「むにゃ……」


ワーワー


一角兎「ん?皆俺を見てるピョン。観客の女の子も……もしかして俺人気者?」

大烏「避けろ!バットが飛んで来たぞ!」

一角兎「え?ぐごっ」ボゴッ



実況『な……なんてパワーだ戦士選手!すっぽ抜けたバットがレフトの一角兎選手を直撃しました!』



大烏「カァー……よそ見してっから」

一角兎「」ピクピク
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/25(土) 23:25:31.70 ID:bpd9b1kJO
つづく
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/27(月) 19:45:16.66 ID:nB1RQsi4o
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 21:50:08.70 ID:iDIvFp9mO
勇者「おいおい……」

魔法使い「なんてことを……」

盗賊「いい気味だ……とはさすがに思えねえ」

僧侶「あいつは本当に危険だな」

武闘家「くそ、やつめ勝手な真似を」

遊び人「しかしちゃんと人に当てちゃうもんだね」

武闘家「だから振らせたくなかったんだ!」

魔法使い「済んだことはしょうがないんだし落ち着いてよ」

武闘家「落ち着いていられるか!俺はあれで以前殺されかけた!死人が出てからじゃ遅いんだ!」

商人「え……何あれ。怖いんだけど」

武闘家「演出だ」

魔法使い「!?」

武闘家「ヒールのインズを懲らしめるための演出に決まっているだろう」

魔法使い「!?」

商人「あ、そうなの?でも外野のあいつ大丈夫?」

武闘家「あのバットは軽くて柔らかい素材でできている」

商人「普段俺たちが使っているバットに見えたけど」

武闘家「でなきゃあそこまで飛ぶはずないだろう」

商人「そうだね。リアルに痛がってるように見えたから驚いたよ」

武闘家「痛がる演技も習得済みだ」

魔法使い(よくそんなペラペラと嘘が……)
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 21:58:51.52 ID:iDIvFp9mO
ザワザワ

\死んだ?/

\すごいの見ちゃった/

\死んだ?/



実況『大丈夫でしょうか……本日の登録選手は両チームとも9人。交代枠はありません』



一角兎「うぎぎ……」

大烏「大丈夫カァ?」

一角兎「い、痛いピョン……」

大烏「息があるなら大丈夫だな」

一角兎「は、薄情な」



実況『あ、今入った情報によりますと演出みたいです。大丈夫のようですね』



一角兎「ウサォ!?」
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 22:10:07.83 ID:iDIvFp9mO
───

戦士「えい!」スカッ

アンパイア「アアァイッ!」

戦士「どりゃ!」スカッ

アンパイア「アアァイッ!バッターアウッ!チェンッ!」


戦士「あはは……ゴメン。やっぱり三球三振だ」

盗賊「それは計算通りだが……」



大烏「」ピクピク

スライム「」ピクピク



勇者「まさか三回とも外野殺すとは」
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 22:40:36.94 ID:iDIvFp9mO
ザワザワ

\死んだ?/

\あ、起き上がった/

\辛そうすぎて演出に見えない/



商人「やっぱりやりすぎじゃないの!?皆ドン引いてるよ!」

魔法使い「なぜ一度で学習しなかった……」

戦士「ゴメンなさい。でもこんな試合どうでもいいんじゃなかった?」

商人「それはそれ!興行なんだから事故みたいにするのはダメに決まってんでしょ!」

勇者「お前も怪我我慢したもんな」

商人「まずいよー。なんとか空気変えないと」ウロウロ

僧侶「一人ならまだしも三人もじゃ誤魔化しにくいな」

武闘家「くっ……」

僧侶「仕方ない。気休め程度だが俺の薬草を与えてくるか」

ブキヤ「待ってくれ」

僧侶「む?」

ブキヤ「そんな場面を見られたら本当の事故だとわかる。演出では通らなくなる」ヒソヒソ

僧侶「しかしあれでは」

ブキヤ「若やお客様に悟られないよう済ます。自分に任せてくれ」ヒソヒソ

僧侶「……?」

ブキヤ「若」

商人「なに?」

ブキヤ「ご相談が」
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 22:48:26.22 ID:Q6SR3SiOO
出塁したはずの勇者と遊び人がベンチにいるのはミスなのか?
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 22:52:34.62 ID:iDIvFp9mO
───イケメンインズベンチ

夢爺「大丈夫か?」

一角兎「うぎぎ……」フラフラ

大烏「もう嫌……」バタッ

スライム「ひでえよ……ひでえよ」ヒックヒック

ヤドヤ「この様じゃ続行は無理だな」

夢爺「棄権……するか」

一角兎「だ……大丈夫ピョン」

大烏「夢爺さんは気にせず投げてください……」

スライム「ひっく……ひっく」

夢爺「お前たち……」

ヤドヤ「……なんでそこまでして」

夢爺「一つの試合に懸ける意気込み。お前にもわかるはずだ」

ヤドヤ「……」
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 23:07:29.58 ID:iDIvFp9mO
ヤドヤ「……はあ。しょうがないな」

ブキヤ「ヤドヤ」

ヤドヤ「お?」

ブキヤ「話がある」

ヤドヤ「丁度いいところに来たな。俺も話したかった」

ブキヤ「そう……だろうな」チラッ

スライム「ひっく……ひっく」フラフラ

大烏「ひい……ひい……」フラフラ

一角兎「ふう……」フラフラ

ヤドヤ「できそうなのか?」

ブキヤ「ああ。というよりやるしかない。また客席の空気が怪しくなってきた」

ヤドヤ「……若は?」

ブキヤ「了承してくれた。お前もいいな?」

ヤドヤ「こんな状況だ。俺にはありがたいねえ」

夢爺「なんの相談だ?」

ヤドヤ「お前はこっち。ついてこい」

夢爺「……」

ヤドヤ「じゃあちょっと抜けるから頼むわ」

ブキヤ「了解だ。早く連れて行ってやれ」

夢爺「……」
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/05(火) 23:27:04.06 ID:iDIvFp9mO
───イケメンインズ控室

夢爺「こんなところまで……なんのつもりだ」

ヤドヤ「いいから」

大烏「俺たち歩くのもしんどいんだぜ……」

夢爺「大体次はお前の打順だろう。こんなところで油を売っていて」

ヤドヤ「黙ってこの中に入れ」パカッ

夢爺「なんだこれは」

ヤドヤ「怪我人用の酸素カプセル。うちのチームの持ち物だ」

スライム「さんそかぷせる?」

ヤドヤ「この中で眠ってりゃ怪我も多少は回復する。4つあるから丁度定員だ」

一角兎「俺たちが使っていいのか?」

ヤドヤ「おお。滅多に使うことなかったから、こいつもしばらくぶりのお客だ。嬉しいねえ」

夢爺「……」

ヤドヤ「勘違いするなよ。お前らがいないと試合が中止になって困る。それだけ」

夢爺「……なぜ俺も連れてきた?」

ヤドヤ「怪我してんのが見え見えなんだよ。クソみたいな球しか投げないし、バットは振らないし、守備しないし、走塁はてんで遅いし」

夢爺「……お前には言われたくなかったな」

一角兎「そうだったんですか?」

大烏「全然わからなかった……」

夢爺「言うほどのものじゃない」

ヤドヤ「いーや。あのままじゃ打たれるどころか試合中にぶっ倒れていただろうね」

夢爺「……」

ヤドヤ「本当は一晩寝りゃ完全回復といったところだが、そんなに待ってくれる人はいない」

夢爺「当然だ。次の攻撃を終えたらすぐ守備につく。寝ている暇はない」

ヤドヤ「40分。そんだけ寝てりゃこの試合くらいは乗り越えられる」

夢爺「40分?俺たちの一回の攻撃がそんなにかかるはずがない。誰もあのピッチャーを打てていないんだぞ」

ヤドヤ「いいから寝てろ。40分だぞ。経ったら熟睡してても叩き起こすからな」

大烏「助かる……」

一角兎「お先に……」スヤァ

スライム「ありがてえ……ありがてえ」

夢爺「……」
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 23:30:53.21 ID:iDIvFp9mO
つづく

>>518
すみません。ミスです。設定忘れてました
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 17:53:31.09 ID:T+WNxseB0
忘れないために投稿ペース上げよう(提案)
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/07(木) 09:17:54.23 ID:+E0tksKA0
まあよっぽどの初心者で無い限りは、ナジミの塔宿屋使用より飛び降りて勇者実家で休むのが節約になるんだが。
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 21:21:58.08 ID:t9qAKjiVO
───

解説『遅い。誰も守備につかないで何してんだよ』

実況『ただいま入った情報によりますと、どうやらあれが始まるようです』

解説『あ、あれが!?』



勇者「何が始まるんだ?」

ブキヤ「ショニーズ野球ではイニングの合間に何度かファンサービスが入る」

勇者「へえ。そんなのあるのか」

ブキヤ「今日は事情が事情なだけにできないと思っていた。マネージャーや事務所の人間に相談したいところだったが、謎の食中毒に倒れてしまった」

武闘家「……」

魔法使い「そっちにも手を出してたの!?」

ブキヤ「しかしせっかく来てくれたお客様を退屈させて帰らせたくない。君たちも協力してほしい」

戦士「まあこんな退屈な試合しちゃっている以上責任感じるしね」

魔法使い「いやそもそも僕らのせいだから」

武闘家「空気を変えるためにも必要か」

僧侶「なるほど。そして怪我人の治療の時間も稼げる一石二鳥というわけか」

遊び人「なになに?何やるの?」

ブキヤ「一番簡単なパターンだ。サインボールを客席に投げ入れてプレゼントする」

魔法使い「ええ……」

勇者「それなら俺たちでもできそうだな」

魔法使い「でもショニーズを見に来たお客さん、僕らのサインボールなんか欲しがるかな」

遊び人「いいじゃん。やろうよ」
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 21:35:25.14 ID:t9qAKjiVO
魔法使い「遊び人君は受け入れられそうだけど……」

ブキヤ「試合も大事だが、お客様もそれ以上に大切だ」

魔法使い「それはわかるんですけどね」

ブキヤ「試合の後にはお客様の投票でMVPが決まる」

魔法使い「え?」

ブキヤ「ここでサービスしておけば株も上がる。若やヤドヤ、それに自分が活躍できていない今、君たちにはチャンスだ」

勇者「MVPって何かもらえるのか?」

ブキヤ「教えたらそれ目的になってしまうから言いたくなかったが、仕方ない」

魔法使い「え……そんなにすごいものが?」

ブキヤ「MVP受賞者には……」

魔法使い「……」ゴクリ

ブキヤ「その選手のグッズが作られる」

魔法使い「しょうもねえ!」
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 21:44:20.78 ID:t9qAKjiVO
ブキヤ「し、しょうもない……?」

魔法使い「ファンサービスって全員参加しなきゃいけないんですか?」

ブキヤ「強制ではないが……え?まさかMVPを諦めるのか?」

魔法使い「いやグッズとか作られても僕らショニーズじゃないから意味ないし」

勇者「行かないのか?」

魔法使い「怖いし僕は遠慮させてもらうよ」

勇者「でもお前にだって声援くれた客いるだろ。応えてやろうぜ」

魔法使い「うん……でも……いいや」

勇者「そうか。俺は行くぜ」
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 21:54:25.12 ID:t9qAKjiVO
───

ブキヤ「受け取ってくれ」ポイッ

\キャーキャーブキヤー!/



商人「アリアハンの女子生徒いるはずだし、いい顔見せておかなきゃ」ポイッ

\商人君怪我に負けないでー/



盗賊「ふん。くだらねえ。が、しょうがないから付き合ってやるか」ポイッ

\盗賊君の欲しーい/



勇者「おりゃ」ポイッ

武闘家「やれやれ」ポイッ

僧侶「サインなど初めて書いたぞ。わはは」ポイッ

\まあいいか。もらっとこ。今後に期待/



戦士「はいどうぞ」ポイッ

\いるかボケ/ポイッ
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 22:06:41.38 ID:t9qAKjiVO
\キャーキャー/



勇者「ん?なんかあっち盛り上がってんな。誰だ?」チラッ



\遊び人くーんボールちょうだーい/




勇者「遊び人か。何やってんだあいつ」

僧侶「注目を集めているな」

盗賊「あ、あれは……!」



遊び人「ダンス部に体験入部して得たタップダンス」タッタタッタ

遊び人「さらに……」

遊び人「ジャグリング部に体験入部して得たこの技をご覧あれ」シャシャシャシャ



\すごーい。サーカスみたい/



戦士「アドリブでなんかやってる!?」

武闘家「あのピエロ……タップダンスしながらいくつものボールをお手玉している」

僧侶「あの器用さを野球に役立ててもらいたいものだ」

勇者「女目当ての数撃ち体験入部がこんなところで役に立つとは……」

盗賊「これも女目当てには変わらないけどな」
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 22:20:27.52 ID:t9qAKjiVO
遊び人「はい。これ全部僕のサインボールでしたー」ポイッポイッポイッ



\キャー欲しーい/



勇者「馴染みすぎだろあいつ……」

ブキヤ「ファンサービスにおいて彼ほど心強い者はいない」

勇者「なんかこのままショニーズに入っちゃいそうな勢いだな」

ブキヤ「さて、自分の分は投げ終わった。皆も終わったようだな」

戦士「喜んでもらえたか微妙だなー」

盗賊「そ、そうだな……」

武闘家(戦士……)

勇者「いいじゃねえの。今はあれだけど、野球部で全国優勝して俺たちのサインボールをプレミアものにしてやろうぜ」

僧侶「わはは。それはいいな」

ブキヤ「これでまた会場の空気も良く……」



\うう……ブキヤのボールもらえなかった/

\あんたブキヤの熱狂的ファンだもんね。戦士のボール転がってきたけどいる?/

\そんなのいらない。せっかく見に来れたのに……グスン/



ブキヤ「……」
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 22:36:32.90 ID:t9qAKjiVO
───

魔法使い「はあ……」

魔法使い「残酷なほど一目で人気があるかわかるよ」

魔法使い「MVPとかいっても所詮人気投票だろうし、どうせ元々人気のあるブキヤさんか、商人君は……微妙か」

魔法使い「ショニーズ勢に対抗できるとしたら、ここまで株上げまくった遊び人君」

魔法使い「大穴でちょっと活躍して割とイケメンの盗賊君」

魔法使い「勇者君と武闘家君と僧侶君も顔面偏差値は悪くないけど、さすがに試合で目立ってないし無理だ」

魔法使い「あとはヤドヤさんか……」

魔法使い「ヤドヤさん、勝ちにはこだわってなさそうだしMVPは貰う気ないんだろうな」

魔法使い「そもそも向こうのチームはファンサービスに参加してないし、ってかヤドヤさんベンチにもいないし」

魔法使い「でも僕たちが負けちゃったらどうせヤドヤさんで決まりでしょ」

魔法使い「……」

魔法使い「負けること考えてちゃダメだ。こんなにたくさんの人たちが僕らを応援してくれているんだから」
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 22:49:41.04 ID:t9qAKjiVO
───イケメンインズベンチ

ヤドヤ「ただいま。お、やってるな。サインボールプレゼントか。まあ今日はそんなとこだろ」

フロッガー「おろおろ」

人面蝶「あたふた」

ヤドヤ「ってお前らはボール投げに行かないのか?」

大蟻食い「何がなんだか……」

バブルスライム「俺たちがやってもいいのか?」

ヤドヤ「それもそうだな。お前らのサインボール欲しがる人間なんかいないから、このファンサービスは無視していいよ」

フロッガー「なんだと」

人面蝶「でも事実だし……仕方ない」

大蟻食い「お前だけでも行けよう。グスン」

ヤドヤ「俺もお前らのチームメイトだ。付き合うよ」

バブルスライム「え?大事なファンサービスだろ。やんないのか?」

ヤドヤ「悪役は悪役らしくしていようぜ」

人面蝶「お前……」

ヤドヤ「あれが終わって大体20分……まだ足りないな」
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/08(金) 22:50:39.66 ID:t9qAKjiVO
つづく
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:19:21.52 ID:GqlK6Y2QO
───七回表

ウェポンズ 0-0 インズ


実況『ボールをもらえた人、もらえなかった人、もらえたけど捨てた人、様々な反応が見られた時間でした』

解説『坊っちゃんのボールをもらえた人は幸運ですなあ』

実況『あの反応で決まるといっても過言ではありません。そろそろMVPの行方も気になるところです』

解説『坊っちゃんが有力でしょう』

実況『そしてこのファンサービスを嘲笑うかのように傍観していたインズの攻撃。4番ヤドヤ選手から始まります』



\ヤドヤの欲しかった……/



ヤドヤ「悪かったねー」

勇者「あれ結構楽しかったぜ」

ヤドヤ「そっか。まあ協力には感謝しとく」

勇者「なんであんたやらなかったんだ?」

ヤドヤ「別に関係ないだろ。もう頭切り替えろよ」

勇者「はいはい。わかってるって」
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:28:38.02 ID:GqlK6Y2QO
魔法使い「えい!」ピュッ

パシッ

勇者「ん……?」

アンパイア「ボール」

ヤドヤ「……」

勇者「振らないのか?」

ヤドヤ「振ってほしかったら空振りしやすいところに投げさせろ」

勇者「難しいこと言うなよ」

魔法使い「えい!」ピュッ

パシッ

アンパイア「ボール」

勇者「う、またわかりやすいボール球……」

魔法使い「えい!」ピュッ

パシッ

アンパイア「ボール」

勇者「まずいな。間隔空けちゃったから集中切れたか?」
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:40:36.58 ID:GqlK6Y2QO
魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「……」ブン

キィン

アンパイア「ファール」

魔法使い「あ……」

勇者「当てられた」

ヤドヤ「……」

勇者「打とうとしたのか?それとも空振り狙い?」

ヤドヤ「……やっぱりな」

勇者「何が?」

魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「……」ブン

キィン

アンパイア「ファール」

勇者「またかよ。でも追い詰めたぜ」

ヤドヤ「お前、気づいてるのか?」

勇者「あの球の秘密?さっき夢爺のおっさんから聞いた」

ヤドヤ「……あの野郎。自分も敵に塩送ってんじゃねえかよ」

勇者「まあそれを教えてもらえたところでって感じだけど」

ヤドヤ「ってそうじゃないよ。あいつあの球何球投げた?」

勇者「さあ……どうだったっけな」

ヤドヤ「キャッチャーだったらそれくらい把握しとけ」

勇者「そういうもんなのか」

ヤドヤ「そろそろあいつ危ないぜ」

勇者「え?」
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:47:31.17 ID:GqlK6Y2QO
魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「ほら」ブン

キィン

アンパイア「ファール」

勇者「また……どういうことだ」

ヤドヤ「あんな球をいつまでも投げられると思うな」

勇者「!?」

ヤドヤ「そっちのチーム、さっきあいつだけ参加していなかったよな」

勇者「まさか……」

ヤドヤ「よりによってボールを投げるファンサービスときたもんだ」

勇者「手を休めていた……?」


魔法使い「はあ……はあ……」
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 23:03:02.88 ID:GqlK6Y2QO
ヤドヤ「残念だが限界だ」

勇者「限界って……もう投げられなくなるのか?」

ヤドヤ「少なくともあの魔球はな。疲れでフォームがバラバラ。そして何より握力がなくなっている」

勇者「確かにさっきとは違う球だった。でもそんなに投げてないぞ」

ヤドヤ「それだけ握力を消耗するんだろ。元々体力もなさそうだし」

魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「棒球なら俺でも対応できる」ブン

キィン

アンパイア「ファール」

勇者「まさかわざとカットしてんのか?」

ヤドヤ「いい時間稼ぎになるもんでね」

勇者「なんのことだ?」

ヤドヤ「ただいつまでもやってたら、今度はあいつが潰れちゃうな」

勇者「よくわかんねえけど、ファウルで粘って魔法使いを消耗させる作戦か?」

ヤドヤ「警笛鳴らしてやってんの。あれはすでに棒球だ。あんなの投げてりゃ他のやつに打たれる」

勇者「三振は厳しいってだけだろ。打たれても守備陣がいる」

ヤドヤ「もうそんな次元の話じゃないんだよ」

勇者「なに?」

魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「……」ブン

カキィン



実況『打ったー!大きい!大きい!』



勇者「い!?」



実況『入るか入るか……切れましたファウル。しかし惜しい当たりでした』
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 23:16:42.38 ID:GqlK6Y2QO
勇者「あ、危ねえ……」

ヤドヤ「あんな球じゃ簡単に運べる」

勇者「い……今のもわざと?」

ヤドヤ「言っただろ。警笛」

勇者「……」

魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「交代しろよ」ブン

勇者「え?」

キィン

アンパイア「ファール」

ヤドヤ「お前ピッチャーなんだろ?ずっとうちのピッチャー観察してやがって」

勇者「……」

魔法使い「えい!」ピュッ

ヤドヤ「実力は知らないが、今のあいつよりはマシなはずだ」ブン

キィン

アンパイア「ファール」

勇者「なんでそんな助言してくれるんだ?」

ヤドヤ「なんでもいいだろ」

勇者「でももう商人投げてないし、あんたが加勢する意味ないだろ」

ヤドヤ「交代しないなら打つぞ。今度はバックスクリーン狙ってみるか」

勇者「……」
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 23:24:41.45 ID:GqlK6Y2QO
実況『ヤドヤ選手粘ります。魔法使い選手はそろそろ苦しいか。肩で息をするようになりました』

解説『あんなに粘られたんじゃピッチャーは精神的にきついでしょうなあ』



魔法使い「はあ……はあ……」



実況『ちょっと心配ですがブルペンには誰もいません』



勇者「……」ピュッ

魔法使い「あ……」ポロッ

勇者「!?」

ヤドヤ「ほらな。もうキャッチすら危ういじゃねえか」

勇者「……タイム」

アンパイア「ターイ!」
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 23:25:14.50 ID:GqlK6Y2QO
つづく
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/10(日) 13:37:32.87 ID:WQxnB32iO
杉内かな?
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/10(日) 15:33:04.14 ID:IbfeHgKeO
トゥールールットゥットゥールー♪
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 21:31:06.89 ID:mv/3GhVmO
───

勇者「お前、限界だったのか」

魔法使い「……ゴメン」

武闘家「3イニングか。やはり荷が重かったのだな」

魔法使い「……ゴメン」

僧侶「慣れないことを急にやったんだ。それでも想像以上によくやってくれた」

魔法使い「……うん」

遊び人「胸を張りなよ。あんなに女の子に注目されるなんて滅多にないよ」

魔法使い「う、うん……」

僧侶「交代だ。勇者、準備はいいな」

勇者「……」

僧侶「どうした?」

勇者「投げたくない」

僧侶「なに?」
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 21:40:39.73 ID:mv/3GhVmO
遊び人「なんで?あんなに楽しみにしていたでしょ」

武闘家「わかっている。後は俺に任せておけ」

勇者「そうじゃなくてさ」

武闘家「なに?」

勇者「悔しかったよ俺は」

僧侶「どういうことだ?」

勇者「あいつ俺に言ったんだ。交代しないならホームラン打つって脅してきた」

魔法使い「……」

勇者「敵に手助けしてもらってさ、ヒット打つ気がないのにファウルで遊ばれているみたいで」

魔法使い「……」

勇者「悔しくないか?」

僧侶「それは悔しくないと言えば嘘になる。だが」

勇者「……」

武闘家「ではどうする?」

勇者「ヤドヤとは魔法使い、お前がそのまま勝負しろよ」

魔法使い「え……」
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 21:53:00.03 ID:mv/3GhVmO
勇者「初めて本気でやってくれるかもしれないんだ。だったら勝負に乗っかってみようぜ」

魔法使い「でも今の僕じゃ」

勇者「俺が投げてわざと三振されるなんてもっと嫌だ。本気の勝負にならないなら負けた方がマシだ」

遊び人「意地ってやつかい?」

武闘家「プライドをゴミとまで言っていたお前がな」

勇者「プライドが邪魔ならいつでも捨てるよ。でもあいつに打たれたからって負けるわけじゃないし、そもそも打たれるって決まっていることなのか?」

魔法使い「……」

勇者「それにこの試合って盗賊には悪いけど……野球部にとっては勝ちが一番の目的じゃない気がする」

僧侶「公式戦ではないからと言いたいのか?」

勇者「意地だけで言っているんじゃない。ギリギリの勝負ってやつを経験しなくちゃ先に進めない。世界の見え方が変わらない」

魔法使い「……」

勇者「俺はここが、その一番大事な局面だと思う」

武闘家「……」

遊び人「……」

僧侶「……どうする?魔法使い」

魔法使い「……」
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 22:02:39.39 ID:mv/3GhVmO
───

ヤドヤ「ちょっと待て……」

勇者「さあ勝負だ」

ヤドヤ「なんでだよ。警告しただろ」

勇者「別に。抑えられると思ったからあいつが投げるだけだぞ」

ヤドヤ「んなわけないだろ。最後まであいつを使う気か?」

勇者「代えてほしかったら打ってみろよ」

ヤドヤ「……本当に痛い目見なきゃわかんないみたいだな」


魔法使い(多分、一球)

魔法使い(次の一球が僕の最後の投球)

魔法使い(集中しろ)グッ

魔法使い(やっぱりちゃんと握れない。でも……)

魔法使い(ここだけは投げきらなきゃ)
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 22:10:50.83 ID:mv/3GhVmO
魔法使い「これが僕の……」スッ

ヤドヤ「やっぱりフォームも戻っていない。確実に棒球じゃねえか」

勇者「来い!」

魔法使い「最後の球だ!」ピュッ

ヤドヤ「ん?」

スゥー

ヤドヤ(これは……ストレートじゃない)

スゥー

ヤドヤ(こんな奥の手取っておいたのか。タイミングが……)グググ


武闘家「なんだと」

僧侶「先ほどまでと全く違う球筋!」

遊び人「こりゃひょっとしたらひょっとするかも」

勇者「やったか!?」


ヤドヤ「……だが」ブン

カキィン
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 22:18:14.67 ID:mv/3GhVmO
魔法使い「あ……」

勇者「……」

武闘家「……」

僧侶「……」

遊び人「これは……」



実況『打ったー!今度は確実にフェアゾーン!打球は綺麗にセンターへ!』



盗賊「おいおい……」タッタッタッ

盗賊「……」タッタッ

盗賊「……」ピタッ

盗賊「……マジかよ」


ガン


実況『入ったー!バックスクリーン直撃!ヤドヤ選手のホームランでついに、ついに試合が動きました!』



ヤドヤ「一時の感情で試合を壊しやがって……若いんだよ」
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/16(土) 22:18:53.93 ID:mv/3GhVmO
つづく
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/16(土) 22:33:52.68 ID:a4QY9U4uO
宿屋に攻撃されるとか、サマルトリアの王子以来かな
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/17(日) 12:37:22.99 ID:lxC6M/CSo
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/17(日) 13:43:19.58 ID:k3yHSxfA0
>>551
初代でも、ローラ姫と泊まってお楽しみでしたねと嫌み攻撃されてる
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/05(金) 00:52:09.53 ID:+0ydT0eNo
エタったか
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 20:31:21.94 ID:0XFzuiYOO
ヤドヤ「……」タッタッタッ

商人「また空振りするつもりで打っちゃった?」

ヤドヤ「いや。世間知らずの若者に勝負の厳しさを教えてやりました」タッタッタッ

商人「ふーん。ま、いいけどね。相対的に俺がすごいってことになるし。ファンサービスに参加しなかったヤドヤは印象良くないだろうしね」

ヤドヤ「……そっすね」タッタッタッ



実況『ヤドヤ選手ゆっくり回ってホームイン。ようやく待ちに待った先制点が入りました』

解説『坊っちゃんが投げていればあり得ない得点ですがね』



勇者「ナイスバッティング」

ヤドヤ「これが現実だ。わかったら代われ」

勇者「ああ。そうさせてもらう。勝負してくれてありがとうな」

ヤドヤ「……」
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 20:47:37.96 ID:0XFzuiYOO
───

遊び人「大事な大事な先制点。本当に重要な局面になっちゃったね」

武闘家「公式戦ではこんな我が儘は許さんからな」

勇者「悪かったって。でもこれで心置きなく代われるな」

魔法使い「もう。打たれた僕は置いてきた気分だよ」

遊び人「それにしてはスッキリした顔だよね」

魔法使い「そう?ピッチャーの重圧から解放されるからだよきっと」

僧侶「わはは。何事も経験だ。これが後の糧となることを祈ろう」

魔法使い「うん。僕次第だよね」

武闘家「そういえば最後に投げたあの球はなんだったんだ」

勇者「そうだよ。あんなのあるなら言っておいてくれないと俺捕れなかったぜ」

魔法使い「え?何か変わっていた?」

武闘家「気づいていなかったのか?」

魔法使い「う、うん」

僧侶「球種はわからんが、おそらく変化球だった」

魔法使い「僕が変化球を……?」

遊び人「偶然投げられたの?それはまた……」

勇者「どこか投げ方変えたのか?」

魔法使い「前みたいな握り方できなかったから、ちょっと握りを変えてみたんだ。あとは必死で覚えてないよ」

僧侶「あれを磨けばまた武器が増えるかもしれん」

武闘家「雨降って地固まるか。無駄な失点にならずに済みそうだな」
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 21:05:54.60 ID:0XFzuiYOO
勇者「でも、ヤドヤだって初めて見たはずなのに……それでも打たれちゃったのかよ」

僧侶「自分の間を持っているんだ。やつは相当な実力者だぞ」

武闘家「ショニーズなど道楽で野球をやっていると思ったが、あんな男もいたとはな」

勇者「すげえな。俺もあいつと本気の勝負してみたかったな」

武闘家「やめておけ。結果は見えている。まずは目の前のことに集中しろ」

遊び人「そうそう。のんびり相手を賞賛している場合じゃないよ」

勇者「別にまだ負けたわけじゃないぞ。取り返せばいいんだ」

僧侶「その前にこの一失点で留める方が先だ」

勇者「ああ」

武闘家「正直なところ、お前が投げることで魔法使いの投球時より楽はできないと思っている」

勇者「俺だって初めて試合してみて思ったよ。俺はまだまだ弱い。知らないことも多すぎる。だから……」クルッ
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 21:17:20.84 ID:0XFzuiYOO
勇者「外野陣も聞いてくれ!」



戦士「ん?」

盗賊「なんだよ」

ブキヤ「……」



勇者「俺これから投げるけど、打たれるかもしれないからよろしく頼むな!」



盗賊「な……」

戦士「ええ……?」 

ブキヤ「……」



僧侶「なんともはや……」

武闘家「まったく。敵にも聞こえる声で弱気な宣言をするな」

魔法使い「はは……勇者君らしいや」

遊び人「野球ってそういうものさ。一人じゃできない。だから支えてくれる仲間や応援してくれる人が力になって、そんな皆とチームの勝利のために頑張れる」

勇者「お前が締めるのかよ」
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 21:24:54.76 ID:0XFzuiYOO
───イケメンインズベンチ

ヤドヤ「……やっちまった」ズーン

人面蝶「なんで項垂れてんだよ。ホームランだぞ。チョウ凄えよ。喜べって」

ヤドヤ「……」

バブルスライム「伏兵のお前が先制点取るなんてブルったが、よくやったぜ?」

ヤドヤ「……」

フロッガー「ピッチャー消耗してたんだろ。カエルみたいだ」

ヤドヤ「……」

大蟻食い「アリがてえ。あいつが代わればチャンスだ」

ヤドヤ「はあ……」

フロッガー「他の連中どこ連れてったんだ?向こうピッチャーカエルならこの回打順回ってくるかもしれんぜ」

ヤドヤ「……そうだな。そろそろ起こしてくるか」
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 21:25:33.42 ID:0XFzuiYOO
つづく
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 21:30:03.53 ID:szAizcUmO
いちいち駄洒落入れんなやwww
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 13:34:20.05 ID:97oWo4sXo
まだかな
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/04(日) 10:33:30.85 ID:d8yNsB0Yo
待ってる
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/12/29(水) 01:56:17.71 ID:G/gNiSU1o
勇者プラス野球か
期待してる
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