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勇者「集え!我らアリアハン高校野球部!」
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202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/15(月) 20:58:04.78 ID:JiDNNM3B0
ピエロなんだよなぁ
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/15(月) 21:25:27.63 ID:ehcThc9sO
遊び人だししゃーない
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/16(火) 19:04:41.66 ID:vDj/EPtMO
───グラウンド
ルイーダ「……この勝負は私は関係ないのよね」
魔法使い「当たり前だよ!もし遊び人君が難癖つけてきても僕が守るから」
賢者「それは大丈夫だと思うよ」
魔法使い「あれ?賢者君も見ていくの?」
賢者「ん……」
魔法使い「そういえば賢者君はどうして遊び人君と入れ替わっていることを僕たちに明かしたの?」
賢者「……」
魔法使い「……?」
勇者「そろそろ始めるぞ。キャッチャーについてくれ魔法使い」
魔法使い「あ……うん」タッタッタッ
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/16(火) 19:09:30.84 ID:vDj/EPtMO
ルイーダ「……この勝負のためでしょ」
賢者「……」
ルイーダ「この勝負の結末があなたの望みだから、あなたは彼らを連れてきた」
賢者「本当になんでもわかっているんだね」
ルイーダ「なんでもってわけじゃないわ。神様じゃあるまいし」
賢者「……ミステリアス」
ルイーダ「いいお兄さんよね。あなた」
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/16(火) 19:17:36.03 ID:vDj/EPtMO
勇者「いくぜ」
遊び人「ああ」スッ
勇者「おりゃ!」ピュッ
魔法使い「速い!これが勇者君の本気!?」
バシィ
遊び人「!?」
魔法使い「ストライクだよ」ピュッ
勇者「どうだ」パシッ
遊び人「……なるほど。大口を叩くだけある」
勇者「へへ。恐れ入ったか」
遊び人「だが打てない球じゃない」スッ
勇者「じゃあ打ってみろよ!」ピュッ
遊び人「はっ!」キィン
魔法使い「ファール。追い込んだ」
遊び人「くっ」
勇者「よっしゃ。三振狙うぜ」
遊び人「そんなダサい終わり方はごめんだ」スッ
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/16(火) 19:24:18.90 ID:vDj/EPtMO
勇者「おりゃ!」ピュッ
遊び人「はっ!」キィン
魔法使い「またファール……でもタイミングが合ってきている」
勇者「粘るねえ」
遊び人「ふふ……よし」
魔法使い(笑った?何か掴んだ……?)
勇者「おりゃ!」ピュッ
魔法使い「うっ、考えなしに何度も同じ球じゃ……!」
遊び人「はっ!」ブン
コン
コロッコロッ
魔法使い「打った!でも緩いピッチャーゴロだ。打ち取った!」
ルイーダ「純粋に勝負を楽しんでいた野球少年」
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/16(火) 19:30:53.37 ID:vDj/EPtMO
遊び人「いいや。僕の勝ちだね」
魔法使い「え?」
遊び人「グラウンドは荒れている。あれなら確実に、ボールが彼の元に届く前にイレギュラーするはず」
魔法使い「まさか最初からそれを狙って!?」
遊び人「ちゃんと整備されていないグラウンドでラッキーだ」
コロッコロコロッ
魔法使い「まずい。すでに不規則な動きだ。どこへ転がるんだ!?」
コロコロッコロッ
ルイーダ「厳しい環境の中で少年の心は揺れ、どこへ向かうのか迷い続けた」
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/16(火) 19:35:24.82 ID:vDj/EPtMO
タンッ
パシッ
遊び人「……え?」
勇者「おお、イレギュラーバウンドしたボールがちょうど俺の手の中に。ラッキー」
遊び人「嘘……」
勇者「ピッチャーゴロで俺の勝ちだよな。お前は魔法使いみたいな屁理屈言わないだろ」
魔法使い「あ、あれは君を助けたんじゃないか!?」
ルイーダ「そして行き着いた先は新たな場所」
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/16(火) 19:41:16.69 ID:vDj/EPtMO
遊び人「ツキが彼に向いていたのか……」
ルイーダ「ツキがどうのという話ならあなたに向いているんじゃないかしら」
遊び人「だって負けてしまったんだよ」
ルイーダ「彼の中にあなたの幸運がある。私はそう思う」
勇者「勝った勝った!初めて俺が勝ったんだ!」
魔法使い「どうなるかと思ったよまったく」
勇者「喜べよ。初めて実力で勝ったんだぞ」
魔法使い「運の要素が強かったよ。実際狙ったところに打たれたんだから」
勇者「勝ちは勝ちだろ!」
遊び人「……」
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/16(火) 19:47:56.55 ID:vDj/EPtMO
ルイーダ「偶然だと思う?」
遊び人「……」
ルイーダ「それを確かめられるのはあなた自身しかいない」
遊び人「……」
ルイーダ「まあ私は関係ないから。これで失礼するわ」テクテク
遊び人「……」
勇者「もう帰るのかよ。相変わらず冷めたやつだな」
魔法使い「でもそんなルイーダさんを勇者君も好きなんだよね……」
勇者「は?なんの話だ?」
魔法使い「だってさっき大切な人だって」
勇者「ああ、あいつはいずれ野球部のマネージャーにするからな。大切な戦力だろ」
魔法使い「え?それだけ?」
勇者「それだけだぞ」
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/16(火) 19:52:10.25 ID:vDj/EPtMO
賢者「僕も帰るよ」
勇者「おう。じゃあな」
遊び人「……兄貴、あの」
賢者「いい顔してたよ」
遊び人「!?」
賢者「久しぶりに見た」
遊び人「兄貴……ゴメン」
賢者「何も謝ることはしてないから大丈夫だよ」
遊び人「……」
賢者「じゃ」スタスタ
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/16(火) 19:57:33.48 ID:vDj/EPtMO
勇者「あいつ、お前の考えていたこと全部わかっていたんだろうな」
遊び人「……」
勇者「まああいつくらい頭が良ければ当然か」
魔法使い「その上で全部受け止めていてくれたんだね」
遊び人「……本当に敵わないよ」
魔法使い「遊び人君、それであの……勝負のことなんだけど」
遊び人「運という僕の得意分野でも負けた。完敗だと認めざるを得ない」
魔法使い「じゃあ」
遊び人「どうやら僕の幸運は野球部にあるらしい。入部させてくれ」
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/16(火) 19:58:12.31 ID:vDj/EPtMO
つづく
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/16(火) 20:07:31.38 ID:FQ8fd81WO
賢者は入らないん?
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/16(火) 20:32:26.24 ID:D+z8SC58o
乙
これギャグSSじゃなかったっけ?
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/16(火) 21:10:47.61 ID:ddbhQgd5o
そういや野球で運パラメータ強いって最強じゃね?
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/16(火) 23:15:28.10 ID:70KKG/dg0
賢者いれなきゃ9人にならない
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/17(水) 08:30:26.49 ID:Pcv3dg7eO
メソとキャシャリンも誘ってあげてキャシャリンは元エースだし
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/20(土) 14:54:23.51 ID:xRw/o5SnO
───部室
勇者「ようこそ野球部へ」
遊び人「……僕なんかを勧誘に来るなんておかしいと思っていたけど、人数が揃ってなかったんだね……」
勇者「賢者も一緒に入ってくれたらすげえ戦力になっただろうな」
魔法使い「今度誘ってみない?」
遊び人「僕は反対だよ。兄貴が入ってきたらまた惨めな思いをしなくちゃならない」
勇者「情けねえなあ。好きなことで負けたくないって気概はないのか」
遊び人「君たちはまだ兄貴のことを知らないからそんなこと言えるんだ。圧倒的な才能の差というものを」
魔法使い「たしかに……素人なのにいきなり初球でホームランなんてね」
遊び人「素人どころか僕だってホームランなんて打ったことないよ」
魔法使い「僕も……」
勇者「俺はうまけりゃ全然構わないけどな」
遊び人「兄弟がいなければわからない問題さ。兄貴に憎しみはないけど、さすがに同じチームではいられないよ」
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/20(土) 15:06:14.38 ID:xRw/o5SnO
勇者「あいつ自身はどう思ってんだろ」
遊び人「昔誘ったことあるけど面倒くさいって断られたよ」
勇者「本人がやりたくないならしょうがないか」
魔法使い「でも遊び人君のことはちゃんと応援してくれる」
勇者「みたいだな。自分を嫌っているやつを応援ってなかなかできないぜ」
遊び人「まあ、そういう人なんだよね。自分の小ささを思い知らされたよ」
魔法使い「僕なんとなくわかったけど、賢者君は遊び人君にもう一度野球をやってほしかったんだよね」
勇者「昔の遊び人に戻ってほしかったんだな」
魔法使い「妬まれている本人から昔の君に戻って、なんて言われても逆効果だったろうし」
遊び人「……」
魔法使い「心の底では野球が嫌いになりきれてなかった。それもわかっていたから」
勇者「俺たちに託した、か」
遊び人「僕だって今までの僕とは違う。兄貴の思いに応えるためにも、これから生まれ変わったNEW遊び人をお見せするよ」
勇者「そいつは楽しみだ」
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/20(土) 15:15:10.35 ID:xRw/o5SnO
ガチャ
武闘家「ん?皆揃っていたか」
盗賊「……」
勇者「おう盗賊」
魔法使い「おかえり」
盗賊「……ふん」
武闘家「そちらも遊び人を仲間にできたようだな」
遊び人「初めまして。話には聞いているよ。武闘家君?それからそっちが盗賊君かな」
武闘家「……俺は初めてではないが」
遊び人「え?ゴメン。覚えていない」
魔法使い「どうなってんのこの人の記憶力……」
勇者「幸先不安なNEW遊び人だぜ」
魔法使い「戦士君は?」
武闘家「監視が手間になるから家まで送り届けてきた」
遊び人「戦士……?」
勇者「さすがにそこは覚えておいてやれ」
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/20(土) 15:27:18.93 ID:xRw/o5SnO
武闘家「戦士の家に行って家族と少し話をしてきた」
勇者「へえ。どんな家庭だったんだ?」
武闘家「あの体型と性格からわかると思うが、かなり甘やかされて育ったようだ」
魔法使い「想像しやすいね……」
武闘家「あのままでは確実に望んだ分食料を与え、これまで絞らせてきた意味がなくなる。だから家を出させ、知り合いの寺に預けてきた」
勇者「そこまでやるか」
魔法使い「君そろそろ訴えられるんじゃないかな」
武闘家「家族には有難がられたぞ。やはりどこかで自制しなければと思っていたようだ。本人は抵抗したが」
勇者「なら問題ないか。寺なら摂生できるし戦士の精神面も鍛えられるだろ」
魔法使い「うーん、いいのかな」
勇者「お前らもそのまま帰ってよかったのに」
武闘家「ついでの報告があるから戻ってきた」
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/20(土) 15:38:44.18 ID:xRw/o5SnO
───
勇者「へえ。試合を取り決めてきたか。よくやった」
武闘家「俺にかかれば大したことではない」
盗賊「なんで得意気なんだ。たまたまそういう結果になっただけだ」
魔法使い「ついでどころじゃないじゃん!戦士君のことなんてこの際どうでもいいよ!」
勇者「初めての試合か。わくわくするぜ」
武闘家「実戦でしか得られない経験値もあるだろう」
勇者「今の俺たちのレベルじゃちょうどいい相手かもな」
盗賊「おい、俺たちは問題だらけって忘れんな」
勇者「再来週だろ。時間はあるしなんとかなるんじゃないか」
盗賊「絶対負けられないんだよ!」
遊び人「日時は決まっているのに場所はまだ決まってないの?うちのグラウンドじゃダメなのかい?」
武闘家「そうなれば理想だが……まだ決定する段階ではない」
勇者「また何か企んでんのか」
盗賊「……嫌な予感しかしないぜ」
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/20(土) 15:40:33.10 ID:xRw/o5SnO
つづく
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/21(日) 15:44:00.41 ID:xjo2jENFO
───次の日
戦士「おはよ……」グッタリ
勇者「なんかすでにくたびれてんな」
魔法使い「お寺でお世話になっているんでしょ?どうだった?」
戦士「……」
武闘家「ランニング始めるぞ」
戦士「ひ……」
魔法使い「ちょっと可哀想だね。学校でも帰っても休まるところがないなんて」
勇者「まあ無理矢理にでもないとあの性根は治りそうもないしな」
魔法使い「じゃあ僕たちはまた勧誘に行ってくるよ」
武闘家「……ああ。行ってくれ」
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/21(日) 15:59:15.04 ID:xjo2jENFO
───1年紫組
魔法使い「どんな人だろうね」
勇者「ああ。この組の僧侶ってやつは……お、あいつかな」
テクテク
僧侶「ん?お前たちか。俺を呼んだのは」
勇者「急に呼び出して悪かったな。俺たちは野球部だ」
僧侶「野球部……そうか。お前たちが例の」
魔法使い「え?僕らのこと知っていたの?」
僧侶「わはは。昨日武闘家がうちの寺に戦士とかいうのを預けに来たぞ。相変わらず強引なやつだった」
勇者「戦士預けた寺ってお前んちだったのか!?」
僧侶「聞いていないのか?」
勇者「知り合いの寺に預けたとしか……」
僧侶「わはは。そりゃそうか。あいつは俺が野球部に入れないことを知っているから」
魔法使い「野球部に入れない!?なんで!?」
僧侶「俺には寺の修行がある。部活動は禁じられているんだ」
魔法使い「そんな……」
僧侶「仕方ないさ。寺生まれ……だからな」
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/21(日) 16:23:13.37 ID:xjo2jENFO
───1年青組
勇者「お前僧侶と知り合いだったのか」
武闘家「ああ。幼い頃からやつの寺で共に修行した仲だ」
魔法使い「へえ。幼馴染なんだ」
武闘家「やつに野球を教えたのは俺だ。厳しい家のため、やつはチームに所属することを許されなかった。そこで俺と色々なチームの助っ人をして遊んだものだ」
勇者「なんでそれ最初に言わなかったんだよ。無駄骨じゃんかよ」
武闘家「やつはなかなか鋭い。俺の考えが見抜かれるわけにはいかなかった」
魔法使い「また何か考えていたの……?」
勇者「あいつを入部させる気か?」
武闘家「無論だ。昨日少し話して察したが、やつには野球への未練がある」
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/21(日) 16:43:43.91 ID:xjo2jENFO
魔法使い「……どうする気?」
武闘家「そこで戦士を預けた意味が生きてくる。あの怠惰を体現させたような男が野球のために懸命に取り組む姿を見たら、かつての情熱が掘り起こされるはず」
魔法使い「お寺を利用させてもらうと見せかけて戦士君を利用していたの……?恐ろしい」
武闘家「一石二鳥と言え。その後事情を知らないお前たちが純粋に野球に誘う。今かなり心が揺れているはずだ」
勇者「俺たちも利用されていたのか……」
武闘家「俺の目論見通りなら明日にでも決意を固めるはず」
勇者「そんなうまくいくかねえ。あいつの場合は本人の意思というより家の事情だろ」
武闘家「やつが本気ならそんなものどうにでもなる」
魔法使い「そんなものなの……」
武闘家「大船に乗ったつもりで待っていろ。では俺は戦士の監視に行ってくる」スタスタ
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/21(日) 17:25:04.52 ID:xjo2jENFO
魔法使い「相変わらず不安だ……」
勇者「じゃあ僧侶は保留にして俺たちはまた別の経験者勧誘に行くか」
魔法使い「あと残っている人って二年生だっけ?」
勇者「ああ。初めての上級生だな」
魔法使い「二年生の教室に行くのなんだか怖いなあ」
勇者「俺だって嫌だよ。でもしょうがないだろ」
遊び人「じゃあ魔法使い君の代わりに僕が一緒に行くよ」
魔法使い「!?」
勇者「おま……なんでうちのクラスにいるんだよ」
遊び人「ルイーダ嬢にデートの申し入れにね」
魔法使い「……は?」
勇者「お前懲りないな。脈なしだってわかってるだろ」
遊び人「僕じゃないよ。兄貴とさ」
魔法使い「……は?」
遊び人「どうもあれからルイーダ嬢のことが気になっているらしいんだ」
魔法使い「なんだと……?」
勇者「へえ。あいつがルイーダを……意外な感じだな」
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/21(日) 17:41:11.38 ID:xjo2jENFO
遊び人「でも兄貴は恋愛をしたことないからその感情がなんなのかわかっていない。僕が一肌脱いであげようと思って」
勇者「たしかに恋愛のイメージはないな」
遊び人「というわけなんだけどどうかな?」チラッ
ルイーダ「……」
勇者「お前いたのか!?」
ルイーダ「最初からいたわよ。あなたの後ろの席なんだから当たり前でしょ」
勇者「だったらなんか発しといてくれよ。お前の話なんだぞ」
ルイーダ「申し訳ないけど彼に特別な感情はないわ」
魔法使い「……」ニヤリ
遊び人「デートしてくれるだけでいい。なんなら振ってくれても構わない」
魔法使い「ええ?」
勇者「お前、振ってもいいって……まだ賢者のこと」
遊び人「誤解しないでよ。もうわだかまりはないよ」
魔法使い「だったらどうして?」
遊び人「兄貴に恋愛というものを経験させてあげたいんだ。恋愛には喜びも、当然挫折だって含まれる。兄貴は挫折なんかしたことないからその方がいいのかもしれない」
ルイーダ「……」
勇者「勝手だな。いくら身内でも首突っ込みすぎじゃないか?」
魔法使い「そ、そうだよ。そういうことは賢者君にも……」
ルイーダ「いいわ」
魔法使い「!?」
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/21(日) 17:48:25.83 ID:xjo2jENFO
遊び人「本当かい?」
勇者「お前……」
ルイーダ「好きにしていいんでしょ?あとはどうなっても知らないわよ」
遊び人「ああ。ありがとう」
勇者「お前も悪趣味だな。わざわざ振りに行くのかよ」
ルイーダ「頼まれたから行くだけよ」
勇者「嫌なら断ればいいだろ」
ルイーダ「あなたには関係ない」
勇者「……」
遊び人「じゃあ早速兄貴にも伝えてくるよ」
勇者「おい、お前はこれから俺と勧誘に行くんだよ」
遊び人「あ、そうだったっけ」
勇者「お前から言い出したのに忘れるなよー」
ルイーダ「いいわ。私が直接お誘いに行く。日にちは私が決めるわ。それでいい?」
遊び人「悪いね。よろしく頼むよ」
魔法使い「……」
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/21(日) 18:02:13.67 ID:xjo2jENFO
───2年教室
生徒「あの人なら……あれ?いないしー」
勇者「どこ行ったかわかります?」
生徒「さあ?休み時間はいつもいないし。部活もやってないっぽいからすぐ帰っちゃうしー」
勇者「そっか……でも部活やってないなら好都合だ。放課後また来よ……」
遊び人「はい。これ僕の連絡先です」スッ
生徒「やったー。放課後も来てくれるの?だったらそのまま遊びに行かない?」
遊び人「喜んで」ニコッ
勇者「……おい。NEW遊び人」
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/21(日) 18:05:58.50 ID:xjo2jENFO
───放課後・2年教室
勇者「もう帰った?」
生徒「うん」
勇者「来るのが遅かったか。結構早めに来たと思ったのにな」
魔法使い「仕方ないよ。また今度来よう」
生徒「ねえねえ、遊び人君はー?」
勇者「あいつなら二度と来ません」
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/21(日) 18:13:24.72 ID:xjo2jENFO
───部室
遊び人「ひどいじゃないか!僕を置いて行くなんて!」
勇者「うるせえ!お前は二度と連れて行かねえ!」
遊び人「そんな……ひどい」
魔法使い「これで土日に入るし勧誘はひとまず終わりだね」
勇者「ああ。でもグラウンド整備やるから明日も学校に来いよ」
戦士「き、休日なのに……?」
武闘家「お前は来なくていい」
戦士「え?」
武闘家「まともに動けるようになるまで部活に出なくてもいい。俺も監視は疲れる」
勇者「へえ。優しいじゃん」
武闘家「どうせ寺にいるなら一日中ぐうたらはできんからな」
戦士「……」
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/21(日) 18:14:14.11 ID:xjo2jENFO
つづく
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/21(日) 18:43:47.94 ID:mzGXXzH/0
乙
二年生が気になる
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/21(日) 21:19:03.97 ID:LMMkvXm5o
誰や
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/22(月) 20:51:30.34 ID:YXjvxvaJO
───土曜日・グラウンド
勇者「じゃあ今日中に終わらせるぞ」
武闘家「魔法使いはどうした?」
勇者「体調悪くて休むらしい。戦士もいないし今日は4人でやらなきゃな」
盗賊「面倒だからってサボりじゃねえのか」
武闘家「魔法使いは自分勝手な都合でサボる男ではない。俺の目に狂いはない」
遊び人「はあ……せっかくの休日にデートもできないなんて」
勇者「来ていきなり文句言うなよ」
遊び人「だってさ、今日は兄貴もデートだってのに」
勇者「え?ルイーダとのか?」
遊び人「うん。彼女が今日を指定してきたみたいなんだ」
勇者「昨日の今日じゃねえか。せっかちだな」
遊び人「これ終わったら様子見に行ってみない?」
勇者「やめとこうぜ。振られるのがわかってるんだし、さすがに野暮だわ」
240 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/22(月) 20:54:49.65 ID:Gf2BraF/o
あっ…(察し)
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/22(月) 20:55:09.94 ID:qhPxJ3CA0
武道家はわかってないな、魔法使いは、ルイーダのデート監視してるに決まってるのに。
242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/22(月) 21:03:35.94 ID:YXjvxvaJO
武闘家「皆、そのまま作業しながら聞け」
勇者「ん?」
遊び人「急にどうしたの?」
武闘家「頭は動かさず、目だけで校舎側を見ろ」
盗賊「なんだよ……」チラッ
僧侶「……」
勇者「あ、あれは……!」
遊び人「誰だい?」
武闘家「僧侶だ。どうやら気になって休日だというのにわざわざ見学に来たようだ」
勇者「マジか。正直お前の作戦期待していなかったんだけどな」
武闘家「ふっ、言っていろ。この後入部したいと言いに来る。自然に接しろ」
盗賊「そんなうまく……」
僧侶「おい」
勇者「本当に来た!?」
武闘家「おやおや?どうしたんだ僧侶。俺たちに何か大切な用か?」
勇者「お、俺たち草取りで忙しいんだけどなー」
僧侶「戦士はいないか……」
武闘家「やつなら寺だろう。それより俺たちに何か言いたいことがあるのではないか?さあ言ってみろ。にゅ?にゅ?」
僧侶「戦士が脱走した」
武闘家「……は?」
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/22(月) 21:09:30.64 ID:FvyrMPAbO
は?
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/22(月) 21:16:50.19 ID:YXjvxvaJO
僧侶「野球部にいると思ったが来てないのか」
武闘家「やつめ……俺の計画が」
勇者「まああいつなら逃げるって考えられそうなもんだけどな」
武闘家「勿論その可能性も考慮した。俺も昔、精神鍛練が耐えられず脱走を試みたことがある。だが坊主どもの厳重な見張りから逃れることはできなかった」
盗賊「牢獄かよ」
武闘家「それをあの戦士が……」
僧侶「わはは。すまん油断していた。どうやら綿密に脱出経路を練っていたらしい」
勇者「楽するためにそんな執念見せるなよ……」
僧侶「ここにいないとなると実家か。一応預かった身としては所在は確かめねば」
勇者「わざわざ悪かったな。あいつは俺たちが探すよ」
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/22(月) 21:28:06.14 ID:YXjvxvaJO
───部室
勇者「ん?開いてる。中に誰か……」ガチャ
戦士「やあ」
勇者「戦士!?」
武闘家「お前……何をしている」
戦士「野球部なんだから部室にいてもいいでしょ」
勇者「今からお前んちに行こうとしてたんだよ」
戦士「うちに?なんで?」
僧侶「お前が脱走したことを伝えたからだ」
戦士「ひっ!」
ドタドタドタ
サッ
盗賊「……俺の後ろに隠れるな。全然隠れられてねえぞ」
勇者「そんな動きができたのか……」
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/22(月) 21:36:54.52 ID:YXjvxvaJO
戦士「お、俺を連れ戻しに来たの!?」
僧侶「いや、勝手にいなくなるから心配しただけだ」
戦士「え?」
僧侶「寺が嫌なら別に俺は引き止めはしないよ」
戦士「ほんとお?」ヒョコ
僧侶「ああ。その旨親父に伝えておく」
戦士「よかったあ」
武闘家「よくない!俺がどんな思いでお前を預けたと思っている!」
戦士「もう嫌だよあんなとこ!ご飯は少ないし修行という名の雑用は厳しいし!」
武闘家「いいから戻れ。お前のためだ」
戦士「やだ!絶対戻らない!」プイッ
勇者「もういいんじゃないか。あの戦士がここまでやるなんて思わなかったし、努力を認めてやろうぜ」
武闘家「しかし……!」
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/22(月) 21:45:39.28 ID:YXjvxvaJO
僧侶「では俺は帰るよ」
武闘家「ま、待て」
僧侶「次からは正々堂々と誘いに来い」
武闘家「!?」
僧侶「わはは。お前の考えなんてお見通しだよ。何年の付き合いだと思っている」
武闘家「……」
勇者「じゃあ野球部に入ってくれ」
僧侶「わはは。考えておく。では邪魔したな」ガチャ
バタン
武闘家「……」
盗賊「お前の浅い考え程度お見通しだとよ」ニヤ
武闘家「くっ……」
戦士「考えってなあに?」
勇者「なんでもねえよ。お前を生け贄にして僧侶を引き入れようとしただけだ」
戦士「!?」
勇者「でも考えておくって。前とは明らかに反応が違ったぜ」
遊び人「ポジティブに捉えていいんじゃないかな。ツキはこちらに傾いている気がする」
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/22(月) 21:58:54.19 ID:YXjvxvaJO
勇者「そういやお前、なんで部室にいたんだ?家にいると思ったのに」
戦士「不本意だけど俺が自立するってなったとき、親は快く送り出してくれたんだ……期待を裏切りたくないモン」
遊び人「か、可愛くない……」
戦士「だからさ、俺は寺にいるってことにしておいて誰か泊めてくれない?」
盗賊「早速裏切ってんじゃねえか」
戦士「バレなきゃいいんだよ。ね、誰か」
勇者「じゃあ責任とって武闘家」
武闘家「なに?」
戦士「不束者ですがよろしくね」
武闘家「勝手に決めるな。俺は一人暮らしだ。部屋は狭くお前が入れる余地はない」
戦士「じゃあ……」チラッ
遊び人「僕は兄貴と祖父母の家に無理矢理転がり込んだんだ。これ以上迷惑かけたくないし君を養う余裕はないよ」
盗賊「俺は一匹狼。他人と暮らすなんて考えたくもない」
戦士「そんなあー」
勇者「仕方ないな。ならうち来いよ」
戦士「いいの?」
勇者「でもずっといられたら困るぞ。行く当てが見つからなかったら大人しく家に帰れよ」
戦士「うう……」
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/22(月) 21:59:28.88 ID:YXjvxvaJO
つづく
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/23(火) 20:50:21.43 ID:Whyc+0vKO
───グラウンド
勇者「おし。大分綺麗になったな」
武闘家「思ったより早く終わったな。昼は過ぎたが」
勇者「ああ。あとはローラーをかけ終われば」
遊び人「労力がのこのこ来てくれてラッキーだったね」
戦士「ひぃー、ひぃー、なんで俺だけ力仕事なの」ゴロゴロ
武闘家「お前が草取りや石拾いなどしても足腰を壊すだけ。必然だ」
戦士「終わったー」バタン
勇者「おうご苦労さん。やっぱ力だけはあるんだよな」
戦士「お腹すいたー。ご飯食べ行こうよ」
勇者「そうだな。皆で昼飯に行くか」
武闘家「食い過ぎないよう俺が見張ってやる」
遊び人「男だけで食事か……早くマネージャーも募集しようよ」
盗賊「俺は一匹狼だがたまには付き合ってやるか」
勇者「嬉しそうだなお前」
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/23(火) 20:58:10.15 ID:Whyc+0vKO
───某飲食店
ルイーダ「……」
賢者「……」
ルイーダ「……何か言うことはないの?」
賢者「ん……どうしてこんなことになっているのかな」
ルイーダ「迷惑だったかしら?」
賢者「そんなことないよ」
ルイーダ「そう」
賢者「ん……」
ルイーダ「……」
賢者「……」
ルイーダ「つまらないかしら?」
賢者「いや楽しいよ。こういうことは初めてで」
ルイーダ「なら良かったわ」
賢者「ん……」
ルイーダ「……私も良かったと思っている」
賢者「……」
ルイーダ「こんなつもりじゃなかったけど、あなたにはずっと一緒にいてほしくなっちゃった」
コソコソ
?「なんてこった……」
252 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/23(火) 21:10:52.69 ID:Whyc+0vKO
───
勇者「ふう、食った食った」
遊び人「たまには男だけのご飯もいいね。たまにはでいいけど」
盗賊「ふん。俺はもうごめんだ。飯は一人に限る」
勇者「嘘つけ。初めてのドリンクバー何度も嬉しそうに取りに行きやがって」
遊び人「得意気にブレンドジュース作って見せびらかしていたよね。一人であんな恥ずかしいことできるの?」
盗賊「……ちっ」
戦士「お腹すいたー」
勇者「お爺ちゃん、お昼食べたばっかりですよ」
ハハハ
武闘家「……」
勇者「どうしたんだ?さっきから静かだな」
武闘家「いや、飲食店で何かイベントが起こる気がしたのだが……気のせいだったか」
勇者「そんなホイホイ何かあってたまるかよ」
武闘家「それもそうだ」
勇者「じゃあ今日はこれで解散……おい」
遊び人「どうしたの?」
勇者「……あれ見ろ」
遊び人「あれ?」チラッ
武闘家「!?」
盗賊「あ、あれは……」
戦士「そんな……」
253 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/23(火) 21:32:52.37 ID:Whyc+0vKO
勇者「スポーツショップだ」
遊び人「そうだね。なんの変哲もないスポーツショップだね」
戦士「あのスポーツショップがどうしたの?」
勇者「お前らグローブないんだろ。ちょっと見ていかないか」
盗賊「マントマスクが用意してんじゃないのか」
勇者「だって相変わらずロッカーは開かないし、あんまり期待しすぎんのもな」
武闘家「たしかにグローブやスパイクなどは、各々のサイズやポジションに合ったものがすでに用意されているとは考えにくい」
遊び人「そもそもポジション決まってもないしね」
勇者「こればっかりは自分で用意しなくちゃいけないぜ」
戦士「でもお金ないよ。俺なんて家出ちゃったし」
遊び人「僕はお金はデート代につぎ込んじゃうから」
武闘家「俺も助っ人稼業を休止してからは……」
勇者「放課後の練習の時間削ってアルバイトでもするか」
盗賊「2週間後には試合だ。そんな余裕ねえだろ」
武闘家「では練習終わりの夜間になるか」
遊び人「うちの学校、夜のアルバイトは禁止のはずだよ」
戦士「どうしようもないね」
勇者「……やっぱマントマスク先生に懸けるしかないのか」
254 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/23(火) 21:48:53.80 ID:Whyc+0vKO
───勇者の家
勇者「ただいまー」
戦士「お邪魔しまーす」
母「おかえりなさい勇者」
勇者「母さん、少しの間こいつ泊めていい?」
母「ええ。疲れたでしょ?お友達もご一緒に、ゆっくり休むのですよ」
戦士「普通に違和感なく歓迎されたね」
勇者「うちはいつもあんな感じだ」
戦士「夕飯まだかなあ」
勇者「遠慮しろよ。それから夕飯前にやることあるだろ」
戦士「お風呂?やったあ」
勇者「素振り。俺の銅のバット貸してやるからお前もやれよ」
戦士「ええ……帰ってきてまでやるの?」
勇者「当たり前だろ。お前は初日だし……300回くらいでいいか」
戦士「それで優しさ見せたつもり!?」
勇者「俺の家にいる限り毎日だぞ」
戦士「やれやれ……面倒な家に来ちゃったな」
勇者「人んちを面倒とか言うな」
戦士「しかも初日だからってことはこれから増えるのか……」
勇者「スイング見てやるからさっさとやれよ」
戦士「はいはい……」グッ
勇者「お、銅のバットなかなか様になってるじゃん。新しいバット買ったらお下がりであげようか」
戦士「えい……って滑った!」ブルン
勇者「おま───」
ガシャーン
255 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/23(火) 21:49:42.49 ID:Whyc+0vKO
つづく
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/27(土) 13:31:32.75 ID:MzTsdhrZo
乙
257 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/27(土) 17:00:36.54 ID:F1MROqvvo
このペースだと全クリまで二、三年かかりそう
258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/27(土) 18:55:26.07 ID:72r6g9DJo
丁度リアルタイムの高校三年間で完結できるな!
ドラクエの日常系は新鮮だから長くやって欲しい
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/28(日) 22:19:52.25 ID:qbBonSPCO
───日曜日・部室
武闘家「近くに物がある場所でこいつに素振りさせる方が悪い」
戦士「そうだよ。嫌がる俺に無理矢理自分のバットを握らせて……」
勇者「でもまさか一回もできないなんて、たまげたよなあ」
盗賊「こいつものすごく危険なんじゃねえのか」
勇者「ともかくガラス代は弁償な」
戦士「トホホ……」
ガチャ
遊び人「大変だよ!」
勇者「なんだよ朝から騒がしいな」
遊び人「あ、兄貴が朝帰りしてきた……」
勇者「なに!?」
260 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/28(日) 22:31:12.48 ID:qbBonSPCO
遊び人「ルイーダ嬢とずっと一緒だったらしい……」
盗賊「ヒュー。やるじゃねえの」
勇者「あいつ振るつもりで行ったんじゃなかったのか?」
遊び人「朝帰りなんて僕もしたことないのに、これも兄貴に先を行かれるなんて……」
勇者「なんか帰れない事情があっただけかもしれないだろ」
遊び人「でも今日もデート行くんだってよ」
戦士「完全に付き合ってるね、それ」
勇者「……」
武闘家「……勇者」
勇者「ああ、俺も多分同じことがよぎった」
武闘家「やはりそういう女だったということだ」
遊び人「なに?そういう女って」
勇者「まだ賢者に対して本気かどうかもわからない。迂闊なことは言えねえよ」
遊び人「なんだよー。気になるよ」
勇者「ともかくこのことは魔法使いには言うな。あいつルイーダにホの字なんだ」
盗賊「ああいうタイプはキレたら何仕出かすかわかんねえもんな」
ガチャ
魔法使い「おはよ……」
勇者「!?」
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/28(日) 22:41:21.68 ID:qbBonSPCO
遊び人「なんてタイミング……」
勇者「た、体調はもういいのか?」
魔法使い「う、うん。心配かけてゴメン」
武闘家「あまり無理するな」
魔法使い「だ、大丈夫。身体を動かしたい気分だから……あれ?戦士君?お寺の修行はいいの?」
戦士「えっと……」
魔法使い「……逃げてきたんだ?」
戦士「なんでわかったの!?」
僧侶「そりゃわかるだろう」
戦士「え?」
僧侶「邪魔をする」スッ
勇者「僧侶!?」
武闘家「お前……何しに来た?」
僧侶「入部したい。野球部に入れてくれ」
勇者「え……」
262 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/28(日) 22:54:44.04 ID:qbBonSPCO
魔法使い「え?え?なんで?何があったの?」
武闘家「どういう魂胆だ?」
僧侶「脱走した戦士を見て思った。ああ、俺もこうすればよかったのだな、と」
戦士「え?俺?」
僧侶「野球への未練は残ったままだった。それを親父に伝えた。しかし答えは変わらなかった。そこで強行手段に出たというわけだ」
武闘家「家を出たのか?」
僧侶「そうするしかなかったからな」
勇者「おいおい。気持ちは嬉しいけど、お前の人生まで背負えないぜ俺たち」
僧侶「わはは。どうにでもなるだろう。勘当されたわけでも破門されたわけでもない。ただの家出だ」
魔法使い「だからって……」
盗賊「なんか……お前の思惑とは大分違うが、うまくいったみたいだな」
武闘家「……」
僧侶「それにこれは外を見るいい機会でもある。俺はこれまでずっと寺を継ぐものだと思っていた。それしか選択肢のない狭い世界にいたんだ」
魔法使い「え?他の選択肢も考えているの?」
僧侶「わはは。面白いではないか。一度の人生を楽しむこと。見聞を広げることで悟りの道も開けるというものだ」
勇者「結局寺での道を一番に考えてんじゃねえか。やっぱり坊主が天職に見えるぜ」
僧侶「わはは。というわけで行くところがない。誰か居候させてくれ」
勇者「お前もか……」
263 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/28(日) 22:56:21.51 ID:WZ2tYkkzO
僧侶わはは言いすぎw
264 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/28(日) 23:06:39.17 ID:qbBonSPCO
───グラウンド
勇者「始めて練習ができるな」
僧侶「練習メニューは決まっているのか?」
勇者「道具がボール数個とバットと俺のグローブしかないから、今日はそれ回しながら使ってノックだな」
僧侶「試合が近いのだろう?ただのノックでもポジションごとの練習ができれば効率がいい。お前たちポジションは?」
勇者「俺はピッチャー」
武闘家「俺もピッチャーで構わない」
魔法使い「僕はキャッチャーしかやったことないけどできれば他を……」
盗賊「俺は左利きだから外野かファーストしかできない」
遊び人「僕も外野がいい」
戦士「俺は動かなくていいならどこでも」
勇者「とまあ、まだこんな状況なんだ」
僧侶「ふむ。では近い試合までのとりあえずのポジションということになるが、俺がノックをして決めてみよう」
盗賊「新入りなのに偉そうだな」
武闘家「まあやつに任せておけば間違いはない」
勇者「そんなにすごいのか?」
武闘家「守備に関しては右に出る者はいない。チームを守る、守りのエキスパートだ」
265 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/28(日) 23:07:39.47 ID:qbBonSPCO
つづく
266 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/28(日) 23:35:49.55 ID:oC62pgaY0
僧侶=守備は上手いな
267 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/30(火) 22:55:13.33 ID:GH1qn8K3O
───
魔法使い「はあ、はあ。初めて野球部らしいことしたね」
勇者「ああ。これで大体決まったのか?」
僧侶「うむ。ピッチャーは勇者でいいだろう」
勇者「おう」
僧侶「武闘家はショート兼リリーフ」
武闘家「先発と間違えているぞ」
僧侶「お前は瞬発力も肩もある。守備の要なのだが……無理なら勇者に代わってもらうか」
武闘家「なんだと?守備の要の俺がショートくらいできるに決まっている!」
勇者(幼馴染みだな。扱い方がよくわかっている)
魔法使い「肩強いなら武闘家君がキャッチャーでもいいんじゃない?」
僧侶「キャッチャーはお前だ」
魔法使い「ええ!?無理だよ」
僧侶「今のところはこれがベストだ。ナジミ戦までは頑張ってくれ」
魔法使い「そんな……」
僧侶「相手は素人なのだろう?盗塁はさほど警戒しなくていい。それより捕球とリードは慣れた者でないと難しい」
魔法使い「でも経験があるといっても随分昔だし……」
勇者「心配するなって。俺が完全試合やってやるから」
魔法使い「どの口が言ってんの!?」
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/30(火) 23:02:24.52 ID:GH1qn8K3O
僧侶「センター盗賊」
勇者「足があるからな。素早さがあれば守備力も上がるし」
盗賊「ふん」
僧侶「ライト戦士」
武闘家「無理だ」
戦士「否定早すぎい!」
僧侶「素人なら外野まで飛んでくる機会はそれほどない」
勇者「なるほど。もしライト寄りに飛んできたとしても盗賊にカバーさせりゃいいもんな」
盗賊「!?」
僧侶「そのためのセンター盗賊だ。負担はかかるが頼むぞ」
盗賊「ちっ……」
269 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/30(火) 23:11:55.80 ID:GH1qn8K3O
僧侶「サード遊び人」
遊び人「ええ!?」
僧侶「そしてセカンドが俺。後から入ってくる者がどんな選手かわからないから後に変えるかもしれんが、とりあえずはこれでいこうと思う」
勇者「うん。いいんじゃないか」
遊び人「よくないよ!外野がいいって言ったじゃないか!」
僧侶「お前外野の経験は?」
遊び人「ないけど……」
勇者「え?じゃあなんで?」
遊び人「言ったろ。NEW遊び人として心機一転さ。昔の自分に決別して新しい気持ちで野球に取り組みたいんだ」
盗賊「試合には絶対勝たなきゃなんねえんだよ。そんな気持ちは後回しにしろよ」
勇者「いくら盗賊でも外野全部はカバーしきれないぞ」
僧侶「繰り返すがとりあえずのポジションだ。外野がいいならナジミ戦の後練習してくれ」
遊び人「はあ……仕方ない。わかったよ」
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/30(火) 23:19:34.75 ID:GH1qn8K3O
───勇者の家
勇者「ただいま」
戦士「今日もお邪魔しまーす」
僧侶「失礼する。うむ、趣があっていい家だ」
母「おかえりなさい勇者。疲れたでしょ。お友達もご一緒に、ゆっくり休むのですよ」
僧侶「普通に歓迎されたな。これならしばらく居ても問題ないか」
戦士「だね」
勇者「お前らなあ。ずっと居座る気じゃないだろうな」
僧侶「わはは。冗談だ」
僧侶(かといって行く当てもない……住み込みのバイトでも探すか)
戦士(行く当てなんてない……なんとかずっと居座る方法を考えなきゃ)
勇者「ふざけるなよ戦士」
戦士「なんで俺の考えてることわかったの!?」
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/30(火) 23:20:22.67 ID:GH1qn8K3O
つづく
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/31(水) 23:01:11.98 ID:dnu/YqFFO
───次の日・1年青組
勇者「やれやれ。居候が二人もいたんじゃやりたいこともままならねえぜ」
ルイーダ「男の子は大変ね」スッ
勇者「お前……」
ルイーダ「あら失礼。野暮だったわ」
勇者「お前、賢者と付き合うのか?」
ルイーダ「あなたも大概に野暮ね」
勇者「賢者には興味ないみたいなこと言ってたのにな」
ルイーダ「関係ないでしょ」
勇者「……」
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/31(水) 23:13:13.31 ID:dnu/YqFFO
───部室
遊び人「……兄貴が家を出ていった」
勇者「なに?」
遊び人「昨晩デートから帰ってきたらすぐ荷物をまとめて……ルイーダ嬢と一緒に暮らすらしい」
勇者「一緒にって、ルイーダの家族もか?」
遊び人「そんな状況あるわけないだろ。同棲だよ」
魔法使い「……」
勇者「あいつ一人暮らししてんのか?それとも二人でどこか部屋を借りて……?」
遊び人「知らないよ。兄貴そのことは黙秘してんだもん」
盗賊「浸りたいんだろ。もう放っておけよ」
遊び人「でも兄貴が心配だよ。いきなり同棲なんて……ルイーダ嬢もそこまで積極的な女の子だと思わなかったし」
武闘家「あのような場所で働いている女だ。貞操観念もさほどないのだろう」
魔法使い「違う……ルイーダさんはそんな女の子じゃない」
勇者「あ、魔法使いの前で話すなよ!」
遊び人「ゴメン。忘れてた」
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/05/31(水) 23:26:00.24 ID:dnu/YqFFO
勇者「えっと……これはだな」
魔法使い「いいよ気を遣ってくれなくても。ルイーダさんは君らが思っているような人じゃないから……」
武闘家「信じたくない気持ちはわかるが、世の中には己の力だけではどうしようもないことがある」
魔法使い「違うんだ」
勇者「何がだよ」
魔法使い「実は僕あの日、ルイーダさんと賢者君がデート……とにかく現場を見ちゃったんだ」
勇者「具合悪いって嘘だったのか?」
魔法使い「ゴメン。ルイーダさんが賢者君と約束したところを偶然聞いちゃって、いてもたってもいられなくなって……」
勇者(絶対)
遊び人(間違いなく)
盗賊(偶然じゃ)
武闘家(あるまい)
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/31(水) 23:30:32.07 ID:dnu/YqFFO
つづく
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/01(木) 22:57:55.39 ID:8wu/pnuoO
───街中
魔法使い「こっちだよ」
武闘家「ここは……」
勇者「俺たちがルイーダを尾行して見失った場所じゃんか」
戦士「ええ……こんなとこ来たの?」
僧侶「煩悩が溜まった……よくない雰囲気の店ばかりだな」
盗賊「聞いたことがある。夜の街、『いざない通り』だ。な、なかなか楽しそうな場所だ」ドキドキ
遊び人「い、誘われる……」スー
武闘家「一度入ったら多額の金をむしり取られるぞ」
遊び人「ひっ、危ない」
勇者「やっぱこの辺りで働いてんのかあいつ」
魔法使い「もうちょっと行った街はずれにルイーダさんの家がある」
勇者「え?」
魔法使い「ここってルイーダさんの通学路なんだ。エッチなお店で働いているわけじゃないんだよ」
勇者「なんだ……そうだったのか」
277 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/01(木) 23:02:57.87 ID:8wu/pnuoO
───街はずれ
戦士「ちょっと離れただけで閑散としたとこになっちゃったね」
僧侶「静かな方が落ち着けていいが」
魔法使い「あれだよ。あの小さいビル」
勇者「あれがルイーダの家?」
魔法使い「一階のお店の看板見て」
勇者「看板……?」
遊び人「あ、あれは……!」
武闘家「『ルイーダの居酒屋』だと?」
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/01(木) 23:11:48.24 ID:8wu/pnuoO
盗賊「まんまのネーミングじゃねえか」
戦士「わかりやすいね」
勇者「居酒屋を経営していたのか」
魔法使い「そう。一人でね」
勇者「なに?」
魔法使い「賢者君、あそこでバイトしているんだ」
遊び人「え?」
魔法使い「従業員がいなくて困っていたみたい。それで一昨日からお店を手伝うことになったんだ」
勇者「はあ?」
武闘家「なるほど。デートをうまく利用したものだ」
遊び人「せっかく僕がお膳立てしたデートを……でも結果同棲することになったようだけど」
魔法使い「それもちょっと違うみたい。賢者君はルイーダさんが好きとかじゃなくて、ルイーダさんっていう人間に興味を持ったみたい」
遊び人「そうなの?兄貴らしいっちゃらしいけど、じゃあ家を出たのは……」
魔法使い「住み込みだよ。ルイーダさんも最初は一日だけ手伝ってもらうつもりだったけど、賢者君優しいから事情を聞いて力になりたかったんじゃないかな」
遊び人「そうだったのか……」
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/01(木) 23:25:10.83 ID:8wu/pnuoO
魔法使い「あのビルの上が従業員用の部屋なんだ」
僧侶「窓の数から察するに、部屋の数は多そうだ」
盗賊「でも夜のバイトは禁止されているんだろ?いいのかよ」
魔法使い「これは友達の店を手伝っているだけだし、いいんじゃないかな」
武闘家「下宿先の店の手伝いという理由付けでも通るかもしれん」
勇者「それよりあいつ一人ってどういうことだよ。親は協力してくれないのか?」
魔法使い「ご両親は亡くされていたみたい」
勇者「え……」
僧侶「そうだったか。冥福を祈ろう」
魔法使い「ご両親がいた頃から働いていたルイーダさんも信頼していた人が最近辞めちゃって、経営が難しくなったみたい。でもルイーダさんは店を畳もうとしなかった」
勇者「なんだよそれ……無茶だろ。高校生が居酒屋経営なんて」
武闘家「すごいな……」
魔法使い「うん。知らないところでルイーダさんはこんなに頑張っていたんだ」
武闘家「いやお前がだ。よくそんなに調べたな。気持ち悪い」
魔法使い「!?」
僧侶「住み込みで金が稼げるか。なるほど」
戦士「どうしたの?」
僧侶「面白そうだ。入ってみようぞ」
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/01(木) 23:25:50.17 ID:8wu/pnuoO
つづく
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/01(木) 23:35:51.57 ID:Mf3/kaSC0
居酒屋ってw酒場でいいだろ
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/02(金) 01:01:35.83 ID:w5Z8nrsUo
風俗嬢じゃなかったんだね
283 :
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[saga]:2017/06/02(金) 20:17:14.73 ID:d2QdFWEmO
───店内
ガラッ
商人「ルイーダちゃん、来たよ!」
ルイーダ「また来たの?ここはあなたが来るような店じゃないのに」
商人「俺はルイーダちゃんの金づるだよ。一番売上に貢献してんだからいいじゃん!」
ルイーダ「はいはい。で、ご注文は?いつもの?」
商人「うん!一番高いメニューフルコースで!」
ルイーダ「じゃあ賢者君、お願いね」
賢者「ん……」
商人「あれ?ルイーダちゃんが作ってくれないの!?」
ルイーダ「私は色々忙しいの。それに彼が作った方が美味しいわよ」
商人「味なんてどうでもいいんだよ!ルイーダちゃんが作ってくれなきゃひっくり返してやる!」
戦士「じゃ、じゃあひっくり返したやつ俺がもらっていい?」
商人「!?」
僧侶「食事を粗末にするとは感心せんな」
商人「誰!?」
284 :
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[saga]:2017/06/02(金) 20:25:28.54 ID:d2QdFWEmO
ルイーダ「あなたたち……」
勇者「よっ」
ルイーダ「……なんの用?」
勇者「ふらっと飲食店に立ち寄っちゃ悪いのか?」
ルイーダ「誰の差し金かしら?」
賢者「僕は誰にも言っていない」
魔法使い「ゴメン。一昨日たまたまここでルイーダさんが賢者君に料理教えているのを目撃しちゃって……本当偶然」
ルイーダ「……はあ」
勇者(その嘘絶対バレているがここで言わないのが粋ってもんだぜ)
遊び人「そういうことだったんだね」
賢者「ん……」
遊び人「すっかり騙された。見損なうところだったよ」
賢者「黙っていてゴメン」
遊び人「いや、やっぱり兄貴には敵わないよ」
285 :
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[saga]:2017/06/02(金) 20:33:44.05 ID:d2QdFWEmO
勇者「隠すことないのに。恥ずかしかったのか?」
ルイーダ「関係ないでしょ。私は忙しいから注文なら賢者君にして」
僧侶「待ってくれ。その前に俺の頼みを聞いてほしい」
ルイーダ「何かしら?1年紫組の僧侶さん」
僧侶「噂通りの女子か。面白い。実は俺と戦士は家を出てしまってな。行くところがないのだ」
武闘家「お前……まさか」
僧侶「ここは住み込みで働けると聞いた。俺たちを雇ってほしい。後生だ」バッ
戦士「え……俺も?てか土下座?俺もしなくちゃだよね……お願いします」ノソッ
ルイーダ「……」
286 :
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[saga]:2017/06/02(金) 20:43:33.95 ID:d2QdFWEmO
商人「貧乏人は大変だねえ。冷めちゃった。帰ろ」
勇者「お前さ、なんでルイーダに構うんだ?お前なら女に不自由しないだろ」
商人「だってルイーダちゃんいくらお金積んでも落ちないんだもん。攻略したいじゃん」
勇者「そんな浅い理由かよ……」
遊び人「わかるよ。そういう女性を落とすのがたまらなく興奮する」
商人「でしょ?ユー話わかるしイケメンだしうちの事務所来ない?」
遊び人「なんだい事務所って?」
商人「今度うちのイベントやるからユーも参加しちゃいなよ」
遊び人「女の子いるの?」
商人「勿論だよ。あ、ルイーダちゃんはお客として来ちゃいなよ。フリーパスあげるからね」ピラッ
勇者「ここに変な絆が……」
武闘家「モテる男の恋愛というやつらしいな……わからない」
魔法使い「世の中ね、顔かお金かなのよ」
287 :
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[saga]:2017/06/02(金) 20:53:56.79 ID:d2QdFWEmO
僧侶「商人という男は帰ったようだ」ヒソヒソ
戦士「……俺たちこの間ずっと土下座してんだけど、いつまでやっていればいいの?」ヒソヒソ
僧侶「無論、了承してくれるまでだ」ヒソヒソ
ルイーダ「いいわよ」
僧侶「本当か!」
戦士「やったあ」
ルイーダ「ただしお客がいないとお給料は払えない。見ての通りそんなに期待できないわ」
僧侶「構わん。寝床が与えられれば十分だ」
戦士「部屋代はいいの?」
ルイーダ「ええ」
武闘家「勿体ないな。テナント募集して貸し出せばいいと思うが」
戦士「余計なこと言わないで!」
ルイーダ「こんな物件じゃ誰も寄って来ないわ」
戦士「ほっ……」
288 :
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[saga]:2017/06/02(金) 21:04:45.57 ID:d2QdFWEmO
勇者「良かったな。戦士にはあまり食わせないでくれよ」
戦士「ま、まかないは出るのかな?」
ルイーダ「全員同じ量しか出さない。つまみ食いしたらお給料から差し引くわ」
戦士「!?」
勇者「なんで驚いてんだよ。ってかお前料理も散々だったし物運ぶのすら怪しいし、ちゃんと仕事できんのか?」
戦士「……」
ルイーダ「彼に合った仕事を与えるわ」
勇者「戦士に合った仕事?どんな?」
ルイーダ「申し訳ありませんが詳細は従業員以外の方にお教えできません」
勇者「なんだよ。別にいいや。関係ねーし」
289 :
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[sage]:2017/06/02(金) 21:05:20.39 ID:d2QdFWEmO
つづく
290 :
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[sage]:2017/06/02(金) 21:10:26.67 ID:3knVIV06o
ルイーダの酒場で登録されてる人は従業員じゃない
291 :
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[saga]:2017/06/04(日) 22:09:30.72 ID:1Nof64hXO
魔法使い「じゃあせっかくだし食べていかない?」
戦士「賛成!」
僧侶「戦士、俺たちは従業員だ。もう客という扱いを受けるわけにはいかん」
戦士「そんな……」
ルイーダ「いいわ。今日のところはあなたたちもお客として還元して」
戦士「いいの!?」
ルイーダ「ええ。まず見て仕事を覚えて」
戦士「やったあ!」
僧侶「ふむ。それも大事な仕事か。ではお言葉に甘えるとしよう」
盗賊「俺は黙っていると見せかけてずっとメニューを観察していた。かなりバラエティに富んだ品々だ。定食屋としてもお洒落なカフェレストランとしても通用しそうなほどだ」
魔法使い「わ……すごい。お酒は飲めないしありがたいね」
勇者「えっ、本当にこの中からどれ選んでもいいのか?」
武闘家「ああ、どんどん頼め」
盗賊「ドリンクバーもあるぞ!」
292 :
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[saga]:2017/06/04(日) 22:19:07.78 ID:1Nof64hXO
戦士「カツ丼とコロッケとサンマと焼きそばと回鍋肉とラーメン」
盗賊「おい、勝手に俺たちのも注文すんな」
勇者「……一人分だろ?」
戦士「……うん」
武闘家「ふざけるな。量もそうだが油と塩分、炭水化物が多すぎる」
戦士「でも今日くらい……」
武闘家「まともに動けるようになってから言え。お前の分は俺が決める」
戦士「!?」
勇者「じゃあ俺今頼んだカツ丼でいいや」
遊び人「ラーメンは僕がもらうよ」
僧侶「では俺はサンマを定食で」
勇者「坊主が生臭食っていいのかよ」
僧侶「わはは。今どきそんな坊主は稀だぞ」
293 :
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[saga]:2017/06/04(日) 22:28:22.53 ID:1Nof64hXO
遊び人「あ、やっぱりラーメンやめて僕ツケメン」
盗賊「なら俺がラーメン。豚骨醤油だ」
武闘家「では俺は焼きそば。それからコロッケ定食も」
戦士「自分炭水化物ばっかやん……当てつけやんけ」
盗賊「やっぱり味噌にする」
勇者「俺のカツ丼大盛りなー」
魔法使い「僕は回鍋肉定食で。ピーマン抜いてほしいな。あとサラダも皆で食べようよ。シーザーとトマトでいい?」
遊び人「トマト苦手なんだ。バーニャカウダにしよう」
勇者「揚げ物も皆で一個頼むか。唐揚げとエビフライどっちにする?」
盗賊「エビフライだろうよ」
僧侶「やはりホッケにする。法華だけにな。わはは」
戦士「俺は……」
武闘家「サラダチキンだ」
戦士「!?」
武闘家「ソースなしでな」
戦士「!?」
盗賊「ドリンクバーも頼むよな!」
武闘家「戦士はプーアル茶だけでいい」
戦士「!?」
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/04(日) 22:33:46.54 ID:1Nof64hXO
魔法使い「ちょっと待って。一気に頼みすぎだよ!賢者君メモすらとれてないから!」
賢者「カツ丼大盛りと……」
魔法使い「え?」
賢者「つけ麺と味噌ラーメンとホッケ定食と焼きそばとコロッケ定食と回鍋肉定食ピーマン抜きとサラダチキンソース抜きとシーザーサラダとバーニャカウダとエビフライとドリンクバー6つとプーアル茶でいい?」
魔法使い「!?」
勇者「お、おう……」
盗賊「嘘だろ……覚えたのかよ」
武闘家「あのわかりにくくした注文を……」
僧侶「天才の片鱗を見た……というか一人で全部やるのか?」
295 :
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[saga]:2017/06/04(日) 22:43:41.23 ID:1Nof64hXO
───
勇者「しかも早くてうまい!」ガツガツ
武闘家「動きに全く無駄がなかった」
僧侶「キッチンとホールの二刀流で……これは3、4人分の仕事だぞ」
盗賊「しかも働き始めたの一昨日からだろ。この三日間で全部のレシピまで覚えたってのか」
遊び人「これが兄貴なんだよ……」
魔法使い「やっぱり賢者君すごすぎるよ……」
ルイーダ「ご苦労様」
賢者「ん……」
ルイーダ「あなたたちはどれくらいできるのか楽しみにしているわ」
僧侶「わはは……なんというハードルだ」
戦士「……」パクパク
ルイーダ「冗談よ。彼が特別なんだってわかっている」
賢者「……」
ルイーダ「料理の知識はほとんどないのに一昨日一晩かけて全部覚えてくれた。そんなことできる人他にいないわ」
魔法使い「ひ、一晩で!?」
ルイーダ「あなたがいてくれて本当に良かったわ。ありがとう」
賢者「ん……」
296 :
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[saga]:2017/06/04(日) 22:52:44.49 ID:1Nof64hXO
魔法使い「……」
盗賊「……おい、あの二人本当にいい感じなんじゃねえのか」
僧侶「互いの空気も違和感がない。お似合いとはこういうことをいうのかな」
戦士「美男美女で絵にもなるよね」
魔法使い「ルイーダさん!僕もここで働かせてくれない!?」
勇者「なに?」
ルイーダ「……」
魔法使い「君のお手伝いを僕にもさせてほしいんだ!」
遊び人「面白そうだ。だったら僕もお願いしようかな」
勇者「え?」
遊び人「兄貴は僕のお目付け役だろ。一緒にいてくれなきゃ」
賢者「……」
武闘家「夜働ける機会は他にあるまい。俺も頼む」
勇者「お前ら……」
ルイーダ「わかっていると思うけどお給料は」
魔法使い「僕はお金なんかいらないよ!」
武闘家「部屋代や食費がかからないならそれだけでプラスになる」
遊び人「なんなら僕がお客さんをキャッチしてきてもいいよ」
297 :
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[saga]:2017/06/04(日) 22:59:13.22 ID:1Nof64hXO
ルイーダ「……わかったわ。採用する」
武闘家「恩に着る」
遊び人「よろしくね」
魔法使い「……」ニヤリ
賢者「……」
ルイーダ「あなたたちはどうする?まだ部屋は空いているけど」
勇者「なんで俺に聞くんだよ。俺は家があるし金にも別に困ってねえよ」
盗賊「俺は一匹狼。他人と共同生活などあり得ない」
ルイーダ「そう」
戦士「皆一緒かあ。なんか楽しくなりそうだね」
僧侶「わはは。そうだな。寺にいてはこんな経験はできなかった」
勇者「……」
298 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/06/04(日) 23:06:14.78 ID:1Nof64hXO
───帰り道
勇者「なんだよあいつら。給料少ないのにどこがいいんだよ」
盗賊「……」
勇者「楽しいだけでやっていけるほど社会は甘くないんだ。多分な」
盗賊「……」
勇者「お前だけだよまともなのは。どうだ?これからうちに来て一緒に素振りでもやらないか?」
盗賊「……やっぱり」
勇者「ん?」
盗賊「やっぱり俺もあそこで働くー!」タッタッタッ
勇者「あ、おい……」
勇者「……」
勇者「いい加減一匹狼キャラ無理があるだろあいつ……」
299 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/04(日) 23:06:57.46 ID:1Nof64hXO
つづく
300 :
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[sage]:2017/06/04(日) 23:47:53.13 ID:SF01QVkj0
魔法使い風呂覗く展開あるで
301 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/05(月) 00:05:04.93 ID:Nb8a3WpfO
戦士「いやーん」
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