【ミリマス】「走れ麗花」

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121 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/16(日) 19:36:09.48 ID:lf3HgNKC0

 考えても理解できないことは、やはり考えない方がいい。
 ひなたは「したっけ」と呟いて、思考を切り替えることにした。

「出発しようか麗花さん」

「うん、いいよ!」

 今から二人が向かうのは、コテージから少し離れた場所にある渓流だ。

 ひなたの腕にはバスケットが一つ。
 中にはできたてのサンドイッチや飲み物が入った水筒が。

 彼女の着ている赤いフード付きの洋服とも相まって、
 その姿はあの有名な童話の主人公、赤ずきんを思い起こさせる。

「ところで、渓流までの道は分かる? 迷子になったりしないかな」

 麗花がふと浮かべた素朴な疑問に、ひなたは「勿論だべさ」と応えると。

「このコテージの管理人さんが、案内してくれる約束なんだわ」
122 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/16(日) 19:39:05.98 ID:lf3HgNKC0

 そうして彼女が指さした先。

 自分たちが登って来たのとははまた違う山道の入り口に、
 大きな影が立っていることに麗花は気づく。

「見た目はちぃとおっかないけど、親切で優しい人なんだぁ」

 だがしかし、ひなたの言うその人物はなんとも奇怪な見た目をしていた。
 恐らくは、そう、常識的にはあり得ない。

「ひなたちゃん、準備はできたみたいだね」

 ニタリ。笑うと白い歯がこぼれるのは、ある意味ナイスガイの条件だ。
 とはいえそれも、人を基準としてのこと。

 ゆっくりとこちらへ近づいて来るその生き物の姿はまるでそう……。

「どうも、コテージ管理人のオオカミです」

 大神? いや狼である。決して人狼などでもない。

 どこからどう見ても二足歩行で歩く獣。
 一般的な成人男性よりも高い身長の、見紛うことなき狼が、麗花たちの前まで来て立ち止まった。

 ひなたが目の前の巨大狼に、麗花のことを紹介する。
123 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/16(日) 19:40:40.76 ID:lf3HgNKC0

「オオカミさん。こっちは同じ事務所の……」

「き、北上麗花です。初めまして」

「ええ、ええ、もちろん存じてます。なにせ、わたくしアナタのファンですから」

 まさか自分に、狼のファンがいたなんて! 世界は広く、不思議だらけだ。

 麗花はオオカミが差し出した毛むくじゃらの手を握ると「ありがとうございます」とお礼を言う。
(ついでに彼女はオオカミの手についていた、肉球の感触を確かめることも忘れなかった)

「では、わたくしの後について来てください」

 見た目からは想像もつかない爽やかな声でオオカミは言うと、麗花たちの先に立って歩き出す。
 どうやらひなたが言うように、本当に害は無いらしい。

 ……どころか彼は山道を進みながら「途中、はぐれないように気をつけて。
 ココだけの話、この森には熊も出ますからね」なんて二人を気遣うほどだった。
124 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/16(日) 19:43:37.30 ID:lf3HgNKC0
とりあえずここまで。
全ての元凶は麗花さんの書いた日記なんだ……。
http://i.imgur.com/w0mr8cG.png
125 : ◆Jnlik0MEGA [sage]:2017/04/17(月) 01:03:47.35 ID:9R6v4DQ20
ホントだ....おおかみいる..ニホンオオカミかな?
陶芸するんだ、忘れてたよ.....
http://i.imgur.com/SOfcYG2.jpg
一旦乙です

>>120
木下ひなた(14) Vo
http://i.imgur.com/511O6tp.jpg
http://i.imgur.com/OHpuTej.jpg
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/17(月) 11:39:21.26 ID:XCqoczrWO
狼が二足歩行した記憶はないぞ(震え声)
案内人は熊かなと思った自分もすこし嫌になる
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/17(月) 12:54:47.58 ID:8mfqafxHO
狼じゃなくて犬かもしれないだろ(適当)
128 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:09:38.00 ID:t7R9m5Up0
===

 オオカミの後について歩く森の散策は、それはそれは楽しいものであり、貴重な体験だったと言えるだろう。

 彼は実に紳士的で、何より山に詳しかった。

 山道に生えた花の名前やこずえにとまる鳥の生態などを、
 三人が目的地に着くまでの間中、面白おかしく説明してくれるのである。

 そうして一行が渓流に着く頃には、麗花と彼は互いに「ウルフ」「レイカ」と呼び合うほどに打ち解けて……
 おっと、この話題はまた別の機会に語ることとしよう。

 なにせ彼女たちを満面の笑顔で出迎えた、小さな釣り人がいるからだ。
129 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:10:40.60 ID:t7R9m5Up0

「オオカミさんにひなたちゃん!」

 大きな岩が転がる河原。焚き火の為に用意されたと思われる薪の傍で、
 アウトドア用の小さな椅子に座っていた中谷育が三人の姿に立ち上がる。

「それに、麗花さんまで!」

「こんにちは、育ちゃん。お魚さんは釣れてるかな?」

 麗花が育の手に握られていた、釣り糸と針を見てそう訊いた。
 すると彼女は誇らしそうに胸を張ると。

「もちろんだよ! ほら見て、こんなにたくさん釣れたんだ!」

 そうして育が置いてあった、魚籠の中身を彼女らに見せた。
130 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:11:43.89 ID:t7R9m5Up0

「ホントだ! お魚さんが一杯♪」

「凄いねぇ……これ全部育ちゃんが釣ったんかい?」

「オオカミさんも手伝ってくれたけど……この一番大きいのはわたしだよ!」

 素晴らしい釣果に口を開け「はぁ〜……!」と感心するひなた。
 その横では麗花がオオカミに呼び出され、マッチをその手に渡されていた。

「レイカ、これで火をつけてはもらえませんか?」

「了解です♪ じゃあじゃあ背中をこっち向けて?」

「おっと、その手のジョークには乗りませんよ? わたくしの毛皮ではなくて、この積んである薪にです」

 受け取ったマッチを擦りながら、麗花が不思議そうな顔になる。

「ウルフはマッチ、つけれないの?」

「……お恥ずかしい話になりますが、わたくし火の類が苦手でして」

「なるほど!」
131 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:12:48.06 ID:t7R9m5Up0

 合点がいったと頷いて、麗花が薪に火をつけた。
 それから彼女は両手で何かを握るようなジェスチャーをとると。

「ふぁーってする竹はある? 私、アレ得意なんだよ」

「ブロアーならありますよ」

「う〜……そうじゃなくて。もっとちゃんとした棒がいいなぁ」

 オオカミが荷物の中から取り出した、小型の自動送風機に難色を示す。
 麗花は風の子元気な子。折角のアウトドアなのだから、なるべく天然物を使いたい。

「一応、自作できないことはありませんがね」

「材料がいる?」

「はい。ですが森の木々や植物は――」

 その時である。まるで二人に釘を刺すかのように、一発の銃声が山に木霊したのは。

「……わたくしの管轄外なので。例え野草の一つ取るだけでも事前に許可がいるんです」

「怒られちゃうんだ」

「その通り。今回の釣りに関しても、それはもう面倒な手続きが幾重にも……」
132 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:13:39.02 ID:t7R9m5Up0

 ここで麗花はやれやれと肩をすくめるオオカミが、
 その身に長話をする者特有のオーラを纏ったことに気がついた。

 何、このぐらいの気配の感じ分けなど彼女には容易いことであり、日頃の研鑽の成果でもある。

 何せ麗花は週に一度と言わず二度、三度。こういうオーラを向けられていた……主な相手は律子から。

 その理由を説明することはあえてしないが、
 これまで彼女の人となりを追って来た皆さんならば、簡単に想像がつくだろう。


「それでウルフ? この焚き火で何をするのかな」

 メラメラと燃え盛る火の塊へと視線を移し、流れるような話題転換。
 するとオオカミは川辺で戯れるひなたと育の方へと顔をやり、舌なめずりしながらこう言った。

「なに、料理を始めるんですよ。レイカもお腹、空きませんか?」
133 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:15:23.05 ID:t7R9m5Up0
===

 食事、それは生き物が生き物である証明。

 生きとし生けるモノは皆、
 これ無くして存在しえない程に大切な生命維持の必須事項。

「アカン、本格的に目ぇ回って来た……」

 堅苦しい事を抜きにすれば、腹が減っては戦は出来ぬと。
 つまりはそういう話であると、横山奈緒のキュートなお腹が知らせている。

 彼女は右も左も分からぬ森の中を、鳴りやまぬ腹の虫に辟易しつつ、
 かれこれ一時間以上はさ迷い続けていたのだった。
134 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:16:15.81 ID:t7R9m5Up0

「大体な、前提からすでにおかしい思わな。なんで私がこんな山中、うろつく羽目になっとんの」

 愚痴る彼女の右手には、それは立派なピストル一丁。
 六連発のリボルバーが、木々の木漏れ日によって鈍く光る。

「おまけに行けども行けども道はない。独り言も多なってるし」

「もうボケが始まってんのか? まだ若いのに苦労するね」

 奈緒が突然、その場でピタリと立ち止まった。
 そうして警戒するように、辺りをキョロキョロと見回すと。

「……またや。また幻聴が聞こえよる」

「さもなきゃ頭がイカれたか」

「私はそんな、オカシクなんかなっとらへん!!」

 叫びながら、奈緒は銃を握る手に力を込める。
135 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:16:48.83 ID:t7R9m5Up0

「さっきからホントなんなんもう! 誰っ!? 誰がそこにおるん!?」

「別に人がいるワケじゃあないんだぜぇ〜」

「やったら余計おかしいやろ!? こんなハッキリ、近くで声が聞こえるなんて……」

 その時彼女の耳元で、くっくと笑う声がした。奈緒が右手を高々と上げ。

「やかましい!」

 怒鳴ると同時に引き金を引く……静かな真昼の山中に、無機質な銃声が木霊した。
136 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:18:14.36 ID:t7R9m5Up0
===

「焦がさないように気をつけて……よいしょっと」

 パチパチと煙を上げる焚き火の傍に、育が棒刺しにした魚を突き立てるようにして並べていく。
 その横ではオオカミに教えられながら、魚を捌くひなたの姿。

「うん、中々スジが良いですよ」

「そ、そうかい? あんまし自信ないんだけども」

「いやいやいや、レイカに比べれば随分マシです」

 そうしてチラリとオオカミが、ひなたの隣へと視線をやる。

 そこでは鼻歌なんかを歌いながら、麗花が調理と言うよりも解剖と言った方が
 しっくりくる行為に夢中になっているところだった。

「ねぇねぇ見てみてひなたちゃん。お魚さんの中からこんな物が♪」

「うぷっ……」

 麗花が指先で摘まみ上げた、得体の知れない謎の物体
 ――まるで煮凝りのような見た目の何かだ――を見てひなたが思わず口を押さえる。
137 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:20:27.68 ID:t7R9m5Up0

「な、なんだいその……気味の悪いもん……」

「なんだろう……溶けかけた虫やミミズかな?」

 後悔したってもう遅い。わざわざ聞くんじゃなかったと改めて青ざめたひなたと入れ替わるように、
 魚を並べて戻った育が好奇心一杯といった表情で問いかける。

「麗花さん麗花さん! それなーに?」

「これはね、お魚さんのお腹に入ってた――」

「い、育ちゃんはこういうのも平気なんだねぇ……あたし、年上なのに情けないべさ……」

 しかしまぁ、全体的には楽しい調理風景だ。

 そのうち辺りには魚の身が焼けるなんとも香ばしい匂いも漂い始め、すっかり食事のムードである。

 焚き火の周りに転がっている丁度よい高さの岩を椅子にして、各々が好きな場所へと腰を降ろす。

「それじゃあ皆さん手を合わせて」

「いっただっきまーす!」

 育の号令に合わせる形で、賑やかな昼食が始まった。

 だがしかし、麗花よ。君は焼けたばかりの魚にかぶりつき
「んぅ〜♪ 美味しい!」なんて呑気に喜んでいる場合では無かったのだ。
138 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:21:31.69 ID:t7R9m5Up0
===

 突然、何の前触れもなく鳴り響く銃声。手元に走る強い衝撃。
 麗花の手から弾け飛んだ串焼きの岩魚が無残にも、河原の上に横たわる。

「危ない!」

 オオカミが吠える。第二撃。今度は彼女の近くの石が跳ね、チュインと甲高い音が響く。

「な、なんですか!?」

「銃撃です! こちらへ、早くっ!」

 言いながら、彼の行動は迅速だった。

 既にひなたと育の二人を自分の影へと移動させ、銃弾が飛んで来た方向を探している。

 その間にも、三発目、四発目の弾丸が麗花たちの傍を通り過ぎ、
 火薬特有の胸にくる臭いが麗花にだって感じ取れた。
139 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:22:46.90 ID:t7R9m5Up0

「な、何!? 何っ!?」

「だ、大丈夫! 大丈夫だよぉ……!」

 オオカミの巨体に隠れながら、ひなたが震える育を抱きしめる。
 と、オオカミの睨みつけていた方向にある藪をならし、姿を表す影が一つ。

「つぅ〜……なんで真っ直ぐ飛ばへんのやろ……」

 その襲撃者……とでも言うべきか。少女の姿を目の当たりにして、麗花が驚きの声を上げる。

「な、奈緒ちゃん!?」

「麗花? ……なんや、ひなたに育もおるやんか」

 だが、麗花たちの前に立つ奈緒の目はどこか虚ろで……右手に握る銃の存在が、
 増々彼女の異常性を際立たせているようにも見えた。
140 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:23:51.58 ID:t7R9m5Up0

「アカンで、そんな狼なんかと一緒におったら」

 一歩、彼女が前に出る。

「腹ペコ狼の話しらへんの? 丸々餌で太らせて……油断したところをペロリ一口」

 そうしてゆっくりと舌なめずり。銃口をオオカミの方へ向け、ニヤリと奈緒が顔を歪める。

「せやから私が助けたらな。動かんといてな……流れ弾が当たったら痛いでぇ……」

 彼女の目は正気を失っているが、その迫力だけは本気であった。

 一体全体この場に何が起きてるのか? 
 理解できないでいる麗花の後ろから、緊張した口調でオオカミが囁く。

「レイカ、アナタは足が早いですか?」

「逃げ足ってこと? ……一応、人並みには自信あるかな」

「結構。ならこちらの合図で走りだして……向こうの茂みに入ってください。
 そしてそのまま真っ直ぐに行けば、大きな道に出るハズです」
141 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:24:44.60 ID:t7R9m5Up0

 とはいえ、麗花も素直に頷けない。
 目の前の奈緒は明らかに普段と様子が違っていたし、何より銃を持っている。

 一体どうしてそんな物を持っているかはこの際置いておくとしても、
 自分だけ逃げるなんて……ひなたや育はどうなるのか?

 けれども、そんなことはオオカミだって承知の上の話である。
 彼はひなたたちに自分の背中へおぶさるよう指示を出すと。

「いいですか? 3、2、1……」

 咆哮。オオカミの本気の唸り声で威嚇され、奈緒が慌てたように銃を撃った! 

 すると麗花たちの遥か後ろ、水面に上がる水しぶき。
142 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:25:29.25 ID:t7R9m5Up0

「走って!」

 言われるままに走り出した麗花を追い越して、オオカミが先導するように駆けていく。
 その背中には振り落とされないよう必死に彼にしがみつく、ひなたと育の姿も見える。

「ま、待たんかーいっ!!」

 後ろからは奈緒の怒声が響き、そうして次の銃撃がすぐさま自分たちを襲ってくると麗花は覚悟を決めたのだが――
 幸い四人が茂みの中に飛び込むまでの間、新たな銃声が鳴ることは無く。

 麗花たちは木々の間をすり抜けながら、
 とにかく河原から距離を取るために、只々走り続けたのだ。
143 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:26:51.06 ID:t7R9m5Up0
===幕間「忍び寄る厄災とその末路」

 まさかまんまと逃げられるとは。獲物を取り逃した悔しさに、思わず唇を噛んで悔しがる。
 顔見知りの人間が相手なら油断して、労せず事を成せると思っていたというのにだ。

「ったく! どれだけ銃の扱いが下手なんだ! 肝心な時に弾切れなんて……」

 そして怒鳴った後に気がついた。アイツは一体どこへ行った? 
 今の今までは確かに目の前で、銃に弾を込めていたハズだが……。

「ほぉ〜……アンタが声の正体か」

 ギクリ、体が固まるとはこのことだろう。背後からかけられた声に振り向くと、奴はそこに立っていた。
 しかもご丁寧にも銃口を、ピタリとこちらへ合わせてだ。
144 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:27:33.66 ID:t7R9m5Up0

「お、お前ッ! どうして正気に……!?」

 言いかけてまた気づく。その左手に握られた、少々焦げた魚の串焼きに……ジーザス。
 腹が減ったから飯を食う、まるで欲望の権化じゃないか。

 人間ってのは意地汚い、全く持って意地汚い!

「なんやよう分からんけど、小腹が満ちたらハッキリ見えるようになってきたで。ついでに頭の方もスッキリや」

 そうしてこともなげに奴はそう言うと。

「ほな、しっかり説明してもらおうやない。一体何があったんか……でないと鉛弾喰らわすでぇ〜」

 まるで悪魔のような微笑みを浮かべて言ったのさ。
 そう、オレ様よりもよっぽど悪魔らしい微笑みだ。
145 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/22(土) 14:29:23.41 ID:t7R9m5Up0
とりあえずここまで。訛りはほんと難しい…
146 : ◆Jnlik0MEGA [sage]:2017/04/22(土) 14:42:19.17 ID:wdpSGhg/0
よかった、また炭が出来るとこだった
http://i.imgur.com/3tUfpFX.jpg
乙です

>>129
中谷育(10) Vi
http://i.imgur.com/rhoZm3h.jpg
http://i.imgur.com/CkhktZa.jpg

>>133
横山奈緒(17) Da
http://i.imgur.com/nbThsrf.jpg
http://i.imgur.com/w8WBkxh.jpg
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/22(土) 22:03:34.98 ID:N0StwDK6o
乙乙
あー、あの悪魔かw
148 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:21:11.90 ID:EdLzCxeD0
===「セカンドステージ:山その2」

 麗花は足に自信があった。
 見た目ではなく機能についての話だが。

 そのスラリと伸びた健脚は一蹴りで普通の人よりも前に出られたし、
 登山で鍛えた肺活量とスタミナは、彼女の化け物じみた体力を語るうえで外せない。

 ただ単純に「走る」という行為において麗花は自分が人よりも少しは優れていると、そういう自覚があったワケだ。
149 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:22:14.35 ID:EdLzCxeD0

 しかし彼女は今まさに、上には上がいるものだと改めて思い知らされていた。

 何を隠そう麗花の前を走り行くオオカミ――いや、大神環によってである。

「速いなぁ、環ちゃん」

 思わずそんな言葉を口にする程、麗花は驚いていたと言っていい。

 実際、この追いかけっことも呼べる競争が始まった時には麗花の方が先頭だった。

 街を過ぎ、山に入り、うねるように続く道路というのは多少の起伏があったものの、
 彼女にとっては平地を行くのと大差ない。……けれども、だ。
150 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:23:10.13 ID:EdLzCxeD0
>>149訂正
〇彼女にとっては平地を行くのと大差ない。……ところが、だ。
×彼女にとっては平地を行くのと大差ない。……けれども、だ。
151 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:24:51.92 ID:EdLzCxeD0

「ここから先は、たまきだって負けないぞー!」

 小さな彼女の宣言通り。舗装された道が途切れ、
 石や土が剥き出しにされた山道に入った途端、環の走りは格段に良くなった。

 岩から岩へ、高所から低所へ。

 まるで獣のように卓越したバランス感覚であちこちを飛び跳ねるように駆けていく環には、
 さしもの麗花も見失わないようについて行くだけで精一杯。

 それに何より彼女には、走りやすい場所を嗅ぎ分ける「勘」とでも言うべき物が備わっているようで……
 こればかりは一朝一夕で身に付く物でも、まして盗める物でもありはしない。
152 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:26:03.24 ID:EdLzCxeD0

 この辺りは山育ちだという彼女の生い立ちにも関係しているだろうが、それ以外にも……。

「うぅーん……私の名前にも、馬とか鹿とか入ってたら」

 もしかしてもしかすると、名前にも秘密があるのかも? 
 麗花は足の速そうな動物をいくつか浮かべ、自分の名前につけてみる。

 それは馬上麗花だったり鹿上麗花だったり……二つ並べて馬鹿麗花。

「……あぅ!」

 自分で立てた仮説によって、勝手に小さなダメージを受ける。環と二人でかけっこ勝負。
 森の中をビュビュンと駆け抜けながら、麗花はそんなことを考えるのだった。
153 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:27:24.63 ID:EdLzCxeD0
===

「で、二人はこんな馬鹿したって?」

 すんでのところで事故を回避し、山道と国道がちょうど交わる地点にて

 真新しいブレーキ痕を作った福田のり子はそう言うと、
 乗っていたバイクを道端に寄せて困ったものだと腕を組んだ。

 彼女にしては珍しい浴衣姿なのは、お祭りの帰りだからである。

「ふん! ほうはんは」

「はひっへはらふうへんへ!」

「ちょっと、食べながら返事するなー!」

 そんなのり子から貰った焼きトウモロコシを食べながら、麗花と環が揃って頷く。
 その際、ポロポロとコーンの粒が口からこぼれるのもご愛嬌。
154 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:29:30.93 ID:EdLzCxeD0

「ホント、麗花さんが気をつけてくれないと」

「うん、ごめんね?」

「……お願いしますよ。大人なんだから」

 とはいえ、素直に笑顔で謝られるとそれ以上何が言えようか。

 事故は起こらず、怪我人は無し。
 愛車の状態も少しは気になるが、それはまぁこの際置いておくとしてだ。

「ところで……麗花さんはなんでここに? アタシてっきり、街にいると思ってたんだけど」

 のり子はこの「山中飛び出し事件」に早々とピリオドを打つと、怪訝そうな顔で麗花に訊いた。

 すると麗花は首を傾げ。

「どうしてって……環ちゃんたちと競争を」

「ああ、いや、そうじゃなくて」

 麗花の答えに、のり子が頭を掻く。

 自分の中にある疑問を、どう説明しようか迷っているようでもある。
155 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:31:37.10 ID:EdLzCxeD0

「その……麗花さん聞いてないの? 突然やって来たヘンな生き物が、街でおにぎりを配ってる話」

 それは全く……なんとも突拍子の無い話だった。

 その証拠に聞かされた麗花たちも、キョトンとした顔でのり子のことを見つめている。

「今じゃどこも大騒ぎだよ。アタシの行ってたお祭りだって、この騒動で急遽中止になって……」

 けれども大変なことが起きたといった様子で語るのり子とは違い、麗花たちは呑気そのものだ。

 ……はて、それのどこが一大事なのか。
 ヘンな生き物が食べ物を配るくだりが妙だとでも?

「いいんじゃないかな、おにぎりくらい」

「だよね……たまきだってそう思うよ?」
156 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:32:18.31 ID:EdLzCxeD0

 この二人にとって怪生物の出現ニュースなど、新しいお友達が増える程度の認識でしかないらしい。
 だが、一般的な常識をわきまえたのり子にとっては大問題。

 今度は真剣な顔で二人に詰め寄り。

「よくないよ! 噂じゃ宇宙人の襲来だとかなんだとか、軍隊まで出動したって言ってるのに!」

「軍隊かぁ……アイドルフォースの撮影を思い出すね♪」

「ちっがーっう! 映画の撮影じゃないんだから!」

 そうして腕にさげていた巾着からスマートフォンを取り出すと、のり子はいくつかの写真を二人に見せた。

「ほら! これ見たら嘘じゃないって分かるでしょ?」

 向けられたスマホの画面を覗き込み、麗花が驚きの声を上げる。
157 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:33:37.26 ID:EdLzCxeD0

「瑞希ちゃんに……でんでんむす君!」

 彼女が驚いたのも無理はない。

 そこには自分の生み出したキャラクター「でんでんむす君」が、
 まるで軍人のような装備を身に付けた真壁瑞希と固く握手を交わす姿が写されていたのだから。

 他にも兵士と思われる屈強な男たちと共に、
 この奇妙な生物が人々に炊き出しを行っている様子なども収められている。

「あっ、これ天むすだ」

 環がでんでんむす君の手を指さし、持っているおにぎりの種類に言及した。

 確かに彼女の言う通り、その海苔で巻かれたおにぎりからは、
 ぴょこんとえび天の尻尾が飛び出しているじゃないか。
158 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:35:20.10 ID:EdLzCxeD0

「いいな〜……たまきもおにぎり、食べたくなっちゃう」

「いや、私が言いたいのはそこじゃ無いんだけど……」

 しかし、なぜこんな写真が撮られているのか?

 環の気の抜ける発言に思わず頭を掻くのり子を横目に、麗花は記憶の引き出しを開けていく。


 そもそもでんでんむす君は、天むすのイメージキャラとして作られた一介のぬいぐるみに過ぎず

 ――とはいえ麗花はこの奇妙な生き物を、世間に浸透させたいという大それた野望も抱いていたが――

 生みの親の麗花自身がその存在を忘れてしまっていたという、
 悲しい事件によって一般にはお披露目すらされていない物なのだ。

 にも関わらず、写真には幾体ものでんでんむす君が街中を闊歩している様子が写っていた。

 麗花に内緒で着ぐるみを作っていたなんてことも無いだろうし、
 大体そんな予算が事務所にあるとも思えない。

 だとすればのり子が言う通り、彼らは本当に宇宙からやって来たということなってしまうが……。
159 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:36:29.93 ID:EdLzCxeD0

 珍しく深刻な顔つきになった麗花に、のり子が言う。

「やっぱり、でんでんむす君だよね?」

「うん……間違いないよ」

「私、麗花さんが関わってるイベントか何かだ思ってたけど……その様子じゃ、麗花さんも知らなかったんだ」

 のり子の言葉に、麗花が「まさか!」と首を振る。

「だけど、ちょっと嬉しいな」

「嬉しい?」

「だって皆にでんでんむす君のこと、知ってもらえたってことだもの」

 野望はここに成就された。呆気にとられたのり子を他所に麗花は自分の携帯を取り出すと、
 この素晴らしい出来事を拡げるために軽やかに指を躍らせる。
160 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:39:20.86 ID:EdLzCxeD0

「これでよしっと♪」

 麗花がボタンをタッチして、満足そうに頷いた。

 すると三人が話し込んでいた道の向こうから、猛スピードで駆けて来る人影一つ。

 もうもうと土煙を上げながら、一昔前のポストマン風の恰好で
 颯爽と現れたその人物は麗花たちの前で立ち止まると。

「お待たせ麗花! 運ばなきゃダメな荷物は何? 全部私にまっかせてよ!!」

 持ち運べる物ならば何だって、何処へだって配達する手荷物専門配達人。
 弾ける笑顔と汗をキラめかせて高坂海美参上である。
161 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:41:32.43 ID:EdLzCxeD0
とりあえずここまで。海美は男装もできて可愛い服も似合って……完璧じゃない?
162 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/04/29(土) 23:44:46.42 ID:EdLzCxeD0
訂正 書いてる方は完璧じゃなかった……。
>>158
〇「いや、アタシが言いたいのはそこじゃ無いんだけど……」
×「いや、私が言いたいのはそこじゃ無いんだけど……」
>>159
〇「アタシ、麗花さんが関わってるイベントか何かだ思ってたけど……その様子じゃ、麗花さんも知らなかったんだ」
×「私、麗花さんが関わってるイベントか何かだ思ってたけど……その様子じゃ、麗花さんも知らなかったんだ」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/30(日) 01:09:44.54 ID:Nn1XT+nMO
うみみん速くて可愛くて最高だな
おつ
164 : ◆Jnlik0MEGA [sage]:2017/04/30(日) 01:40:58.82 ID:xEo3BaTg0
うみみだからな
乙です

>>151
大神環(12) Da
http://i.imgur.com/Mgm0RQg.jpg
http://i.imgur.com/tbXPtna.jpg

>>153
福田のり子(18) Da
http://i.imgur.com/ldY4G6G.jpg
http://i.imgur.com/ZA0tPip.jpg
http://i.imgur.com/3l1jJ2n.jpg

>>160
高坂海美(16) Da
http://i.imgur.com/JPItfX0.jpg
http://i.imgur.com/CldMQT4.jpg
165 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/04(木) 21:01:39.79 ID:UJ+jWkXE0
===

 バイクの後ろに環を乗せて「それじゃアタシ、環を送って帰るから」と言ったのり子と別れて海美は元気よく走り出す。

 山越え谷越え川を越え、そうしてもう一つおまけに山を越え。

 握った荷物の送り先、訪れた小さな山小屋の前で彼女のことを出迎えたのは、
 少し開けた地面に正座して、目を閉じ瞑想にふける金髪少女。

 着物に袴というこてこての和装を纏ったその少女は、海美が傍にやって来ると閉じていた瞼をそっと開け、
 手にしていた瓢箪を地面に置くとこう言った。

「こんにちは海美さん。本日は一体、どのような御用件でここまで参られたんですか?」

 彼女の名はエミリー・スチュアート。
 流暢な日本語を操るが、英国生まれの淑女である。
166 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/04(木) 21:03:11.44 ID:UJ+jWkXE0

 海美はそんなエミリーに笑いかけると、自分の持って来た荷物を差し出した。

「はいコレ、お届け物ね」

「お届けされた、麗花です♪」

「What!?」

 それは荷物というにはあまりにも大きすぎた。大きく、細身で、重さはそれなり。
 何より大雑把な性格を持ち、そもそも荷物と言うより人だった。

 麗花と繋いでいた手を離すと、海美は受け取り確認用の紙をバッグの中から探し出す。

「それじゃあここに、判子をお願い!」

「しょ、署名でもよろしいでしょうか……」

 受け取った紙に愛用の毛筆ペンで自分の名前を書き終えると、
 エミリーは改めてこの荷物……麗花の方へと向き直る。
167 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/04(木) 21:04:53.36 ID:UJ+jWkXE0

「それであの、麗花さんがお荷物と言うのは――」

 そこまで言ってエミリーは、突然ハッとしたような表情になると言葉を切った。
 彼女の敬愛する日本語には、確かこんな言い回しが存在する。

「こいつはウチのお荷物だ」……この場合のお荷物とは厄介だとか、役に立たないといった意味だ。

「どうかした? エミリーちゃん」

「わ、私はそんな風には思ってません。むしろ好き……いえ! お慕いしています!」

 そしてまた、日本語というのは難しいうえにややこしい。
 この場合のエミリーが言った「好き」は、決してお荷物でも厄介とも思っていないという意味だったのだが。

「お、女の子からの告白は、私もちょっと困っちゃうかな」

「そういうのはもっとさ、人目につかないトコで言うもんじゃない?」


 赤面して応える麗花と「少なくとも、私みたいな部外者がいない時に」なんて恥ずかしがる海美の反応に、
 エミリーも自分がしでかした失敗に気がついたようだ。

 慌ててたように両手をわたわたとさせながら「ち、違うんです!」と弁明する。
168 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/04(木) 21:06:44.32 ID:UJ+jWkXE0

「私が言いたかったのは、その、人として麗花さんを尊敬しているということで!」

 そうして「あ、穴があったら入りたい……」と、顔を赤らめる彼女の傍に、
 何処からともなく銀色に輝くスコップが飛んで来て――なんてことはもちろん起こりはしないのだが。

「顔から火が出るとは、まさにこんな状況を言うのですね……」

 消え入りそうな小さな声で呟いた後で、今度はキリッと真面目な表情で顔を上げると。

「そうです、今こそ挑戦する時です!」

 次の瞬間、エミリーはその場に再び正座すると置いてあった瓢箪の中身を自分の周囲にまき散らした。
169 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/04(木) 21:08:52.51 ID:UJ+jWkXE0

「な、何してるの!?」と驚く麗花たちは、その散らされた液体から漂う臭いに顔をしかめる……油だ!

「心頭滅却すれば火もまた涼し。今なら、火照るような身の今だからこそ! この修行に活路を開けるハズ……!」

 そうしてエミリーが、懐から取り出したマッチを擦る!

「ていっ! ていっ!」

 その数、なんと二本、三本! ……四本、五本。

 箱から取り出されるマッチたちは、エミリーの震える手でおっかなびっくりと擦られて次々に折れ散って行く。

 いつしか辺りには「マッチ棒だった物」が散乱し、ただただ油独特の臭いが包むのみ。

「……あの、何してるのかな?」

 困惑しているというよりは、気の毒そうな海美の問いかけに、
 空っぽになったマッチ箱を握りしめるエミリーが、泣き出しそうな目でこう答えた。
170 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/04(木) 21:10:22.61 ID:UJ+jWkXE0

「火が、つかないんです。これでは修行になりません……」

「修行? エミリーちゃん、修行してるの?」

 海美を背後から抱きかかえるようにして立っていた麗花が「なんでまた?」なんて顔をして彼女に訊いた。

 そうしてエミリーが語るところによると、彼女は現在武者修行中。

 体力づくりの一環として熱く燃え盛る炎の中にその身を置き、
 精神と持久力を鍛える荒行に挑戦しようとしていたのだとか。

「地獄の特訓とも言いますし、荒っぽいことをするのが修行では?」

 どうやらエミリーには稽古の前に、ちゃんとした師範が必要なようだ。
 それでもなお諦めきれない様子のエミリーは、麗花の背負っていたリュックに視線を移すと。
171 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/04(木) 21:12:27.17 ID:UJ+jWkXE0

「あの、麗花さんは着火具をお持ちだったりしませんか?」

「着火具……ライターとかかな?」

「はい!」

 だが、リュックの中身を確認した麗花は申し訳なさそうに首を振り。

「ごめんね、エミリーちゃん。……火吹き棒ならあるんだけど」

 リュックからお手頃サイズの竹筒を取り出した麗花を見て、
 海美が「……なんでそんなもの持ってるの?」と訝しそうな顔になる。

「そうですか……やはり、諦めるしかないですね」

「そんなことないよ。木の棒と、何か燃えるものがあればクルクル〜って」

「ちょっとちょっと麗花、焚きつけちゃダメだって」
172 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/04(木) 21:14:29.11 ID:UJ+jWkXE0
===

 海美が声を上げて注意するように、未成年の火遊びはとても危ない。
 それでなくとも山火事に繋がる恐れだってあるのだ。皆さんも重々気をつけて頂きたい。

 ……さもなくば、きっとこんなことになるだろう。

「ヤ、ヤバくないかな? これ……」

 冷や汗なんてものじゃない。

 確かな熱気でその額に汗を掻きながら、
 海美は轟々と広がる猛火の勢いにただ圧倒されてエミリーの傍へとにじり寄る。

 その隣では非常に困ったことになったぞと、
 眉をひそめる麗花が手にしていた木の棒をまじまじと見つめ。

「……どうもキリモミ式着火法には、改良の余地があるみたい」

「呑気っ!? それどころじゃないってば!」

「ですが木の棒と板だけで本当に火をつけてしまわれるなんて……さすが麗花さんです!」

「エミリーも感心してる場合ー!?」
173 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/04(木) 21:19:06.89 ID:UJ+jWkXE0

 今や炎は三人を包み、簡素な山小屋までも飲み込もうとしていたのだ。
 それどころかこのままでは、自分たちの命だって例外ではない……と、その時だ!

「はぁっ!」

 凛と響き渡る掛け声と共に、山小屋の扉を開けて外へと飛び出した者がいた。
 その人物は自分と麗花たちの間を隔てる炎の壁に走り寄ると。

「そこを動かないで、三人とも!」

 侍のような恰好のエミリーと対をなすように、忍び装束に身を包んだ最上静葉はそう言って自分の眼前で印を切る。

 すると彼女の乗っていた地面が波のように盛り上がり、広がる炎を覆い込んだのだ!

 まるでSFXの世界、大迫力のCG映像のような光景に麗花は「す、凄いすごーい!」と大興奮。

 今や辺りには焦げ臭さだけが残されて、火の気はどこにも見つからない。

 正確には、全ては土で蓋をされ、隠されてしまったというべきか。
 密閉された空間では、燃やすことのできる空気もいずれ無くなり、炎は自然と消えることだろう。
174 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/04(木) 21:20:11.36 ID:UJ+jWkXE0

 危機は去り、静香が胸を撫で下ろしながら三人に言う。

「皆さん、もう安心です」

「静香ちゃん、今のどうやったの? 私にもやり方を教えて欲しいな♪」

「ホントだよ。なんであんなことができるワケ?」

 危ない所を助けてもらった麗花たちが尋ねると、静香は小さく張った胸に手を当てて。

「だってそれは、忍者ですから」

 ……なるほど、忍者であるなら仕方がない。
 麗花は素直に納得し、うんうんと頷き返すのだった。
175 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/04(木) 21:21:32.04 ID:UJ+jWkXE0
同い年の星梨花がせりりんだからエミリンなのか、エミリーと呼び捨てなのかちゃん付けなのか。
謎は深まるもののとりあえずここまで。
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/04(木) 22:53:54.18 ID:XoBsSSXh0
アイドルって何だ(今更)
おつ
177 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:02:48.64 ID:sqUuJl7G0
===

 まるで時代劇のセットに出てくるような山小屋に麗花を招き入れた静香は、
 彼女からこれまでの経緯を聞かされると呆れた顔でこう言った。

「じゃあ麗花さんは、でんでんむす君の話をするためだけに山を登って来たのだと?」

 すると手に持っていた火かき棒で、物珍しそうに囲炉裏の灰をつつき回していた麗花は顔を上げると。

「うん。ギュギュっとまとめると、そうなるかな」

「そのうえエミリーの無茶苦茶な修行にまで手を貸して」

 静香の言葉に、麗花が大きな胸を張る。
178 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:04:21.19 ID:sqUuJl7G0

「困った人は、放っておけない私だから。えっへん♪」

「……別に、褒めたつもりは無いんですが」

 小さく肩をすくめると、静香は山小屋の窓へと視線を移す。
 外にはより健全な修行として、海美と一緒に走り込むエミリーの姿があった。

「そういえば――」言いながら、静香は何かを思い出したように立ち上がり。

「お二人はここまで、走って来たと言ってましたっけ」

「そうだよ。二つぐらい山向こうから」

「なら、喉も渇いてますよね? すみません、お茶の一つも出さないで」

 謝る彼女に、麗花が「そんな、気にしなくても大丈夫だって」と応える。
 そうして土間に降りた静香は「とりあえず、これを」と、冷たい水の入った湯呑を持って戻って来た。
179 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:06:06.45 ID:sqUuJl7G0

「なんでしたら、お腹も空いていませんか? 大した物は無い小屋ですが、うどんならすぐに用意できますよ」

 静香の申し出に、麗花は曖昧に笑いながら「本当?」と聞き返す。

「でも、うーん……今は遠慮しておこうかな」

「そうですか? ……美味しいのに」

 残念そうに呟く静香に、麗花が「ああ、でもでもお菓子とかなら」と続けて言った。

「お菓子ですか」

 再び土間に降りた静香が、やかんに水を張りながら周囲を見回す。
 そうして彼女がお盆に載せて持って来たのは、花の形をした和菓子。

 麗花が喰いつくように身を乗り出し、そのまま皿へと手を伸ばす。
180 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:08:44.30 ID:sqUuJl7G0

 ……が、静香は彼女の手が届く寸前で、サッとお盆を後ろに引いた。

「あらら」

 つんのめった体のバランスを器用に整え、
 麗花が「もう、いじわる!」とでも言いたそうな顔で静香を見る。

「慌てないでください麗花さん。まだお茶の準備ができてません」

「……お湯が沸くまでお預けってこと?」

 すると静香は「ふふっ」と笑い。

「一つ、私と勝負をしましょう」

「勝負?」

「はい。麗花さんが勝てば、この和菓子はアナタの物です。ただし、私が麗花さんに勝ったなら――」

 ゆっくりと、厳かな口調でこう続けた。


「熱々のうどん……食してもらいます!」

 対する麗花の反応は早かった。

 静香が最後まで言い終わらぬうちから
「絶対に負けないんだからっ!!」とやる気十分返事を返して身構える……

 こうして和菓子とうどんを賭けた、二人の勝負が幕を開けることとなったのだ。
181 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:10:46.37 ID:sqUuJl7G0
===

 ……とはいえ、単に「勝負する」というだけでは話は前に進まない。
 今の二人に必要なのは明確な勝敗の決し方、その手段である。

 只今両者は和菓子の盆を間に挟むようにして向かい合い、いかにして戦うかを論じていた。

「例えばですよ」

 静香が言う。

「純粋に二人の実力勝負、決闘なんてどうでしょう。古くから行われて来た実績のある勝負方法です」

 すると麗花が首を振り。

「ダメ、ハンデがあり過ぎるよ」

「……そうでしょうか?」

「だって静香ちゃん、忍術使えるじゃない」
182 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:12:16.03 ID:sqUuJl7G0

 そうして麗花は自分のリュックから一組のトランプを取り出すと。

「それよりも、トランプで勝負を決めない? 神経衰弱とかどうかな?」

「ダメです」

 今度は静香が首を振る。

「神経衰弱は時間がかかり過ぎますし……カードはイカサマができるじゃないですか」

「でもでも静香ちゃん、よく言うでしょ? イカサマを見破るのも実力の内――」

「認めませんからね? とにかく、ダメなものはダメです!」

 両者睨み合い、達した結論は一つだった。
 二人はどちらともなく相手に向けて拳を突き出し、殆ど同時にこう言った。
183 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:14:47.74 ID:sqUuJl7G0

「なら、ジャンケンで」

 ジャンケン――今さら説明する必要も無いだろう。

 給食で残ったプリンの所有権を賭けてだとか、
 アイドルグループで誰がCDに参加するか決めるとか、そういった時に行われるアレだ――

 さらにグー・チョキ・パーの三すくみによる攻防は一見単純そうに思えて奥が深く、
 本来ならば運の要素だって多分に絡む。

「それで、なんすくみでやるのかな?」

「えっ?」

 不思議そうな顔で聞き返す静香に、麗花が言う。

「だから、グーチョキパーの三すくみ以外にも五すくみ七すくみ十一すくみ……
 そうそう私ね、一度百一すくみのジャンケンもやってみたかったんだ!」

 だが、静香は揚々と続ける麗花に「ま、待って下さい」とストップをかけると。

「ルールは普通の三すくみ。三回勝負で、先に二勝した方が勝ちです」

「オッケー♪」

 親指を立てて了承した麗花が、ふと気がついたように呟いた。

「ところで、ダイナマイトは使っちゃダメ?」
184 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:16:06.43 ID:sqUuJl7G0
===

 さて、結論から言ってしまえばこのジャンケン勝負は麗花が勝った。

 互いに一勝一敗で迎えた三回戦。勝敗を分けたのは麗花の出した「無敵」である。

 開かれた親指と人差し指はチョキ、伸ばした中指を加えてパーとなり、
 残る折り畳まれた薬指と小指がグーを示すその必殺拳はだがしかし、静香の物言いにより無効になった。

「無いですから、無敵なんて手は!」

「えー? それってどこのローカルルール……」

「ローカルでも何でもありません。初めに三すくみだって言ったのに……反則負けにしてもいいんですよ?」
185 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:17:12.76 ID:sqUuJl7G0

 強めの口調で責める静香に、麗花が「じゃ、あいこでしょ」と掛け声をかける。

「あぁっ!?」

 そうして間髪入れずに繰り出された麗花のパーに、静香が出した手はグーだった。

「わーい、勝ったー♪」

「ひ、卑怯な……!」

「卑怯だなんてとんでもない。これが本当の戦いなら、静香ちゃんは今頃土の中だよ」

 ジャンケンに負けてしまうだけで、存在を屠られるとは一体どんな戦いだ? 静香は首を傾げて考える。

 それに謎の理論を持ち出して、翻弄するのも天然なのか故意なのか……
 とはいえ麗花の考えをはかり知ることはできないし、理解しようとするだけ無駄なのだ。

 どちらにせよ、彼女の言うことは一理ある。油断大敵、負けは負け。

 静香は諦めた様にため息をつくと、持っていたお盆を改めて麗花の前に差し出した。
186 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:22:49.26 ID:sqUuJl7G0

「それでは、どうぞ」

「うんうん、納得してくれたみたいで嬉しいな♪」

 正確に言えば、納得では無く屈服だ。

 そして何より静香は知らぬことだが、彼女には例えどんな過程を辿ったとしても、
 北上麗花という存在に屈せざるを得ない理由があった

 ――それはつまり、彼女の敗北は元々決まっていたということになるが――
 今はただ、スイートな勝利の味を堪能する麗花も存在している。それだけが静香の知り得る真実だった。
187 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:25:58.16 ID:sqUuJl7G0
===天の章「覚醒と予兆、又は新たなる冒険の幕開け」

 かつて、ある星を支配しようと企んだ者たちが居た。
 奴らは人々の心に巣くい、悪の限りを尽くさんとした。

 しかし、その野望を食い止めるために立ち上がった五人の担い手の活躍により、
 星を追われた悪しき者たちは長い旅の果てに別の世界、この星に辿り着く。


「――そして新天地に降り立った悪しき者たちは今、この世界を暗黒と混沌の坩堝に陥れようとしていたのだ」


 小さく口の中で呟きながら、私は構えていた剣を薙ぎ払った。

 一閃、襲い掛かって来た「悪しき者」――まるで虫歯菌を擬人化したような姿で、
 ちょっとばかり可愛いけれど――が、断末魔の悲鳴を上げて消滅する。
188 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:36:40.87 ID:sqUuJl7G0

 ここは遥かな空の果て、人々の記憶からは忘れられた雲の上の王国。
 星々と月の煌きの加護のもと、神聖なる風が力を添える狭間の国。

 激戦の跡を拭うように、通り過ぎて行く天つ風が告げる。

「そう……来たのね」

 手にしていた百合の紋章が入った剣を鞘に収めると、私はゆっくりと振り返った。

 そこには白色の大地を穿ち、天まで届こうかという巨大な木。
 正確には、豆の蔓の集まりだそうだけど……この際それは置いておいて。

 今重要なのは、その木の傍に立つ一人の人物。

「あれー? 百合子ちゃんだ!」

 見慣れた笑顔に聞き慣れた声。だけど厳密に言うと、二人にとってはこれが初めての出会いになる。

 私はコホンと軽く咳払いをすると、堂々とした態度で彼女に声かけた。

「ようやく会えましたね、麗花さん。……いえ、クラウンの担い手。マジカル・レイカ!」

 く、うぅ〜……っ!! 言った! とうとうこの台詞を言っちゃったっ! 
 この時を、この瞬間を私はどれほど待ったことか! 

 遂に私はリリィ・ナイトとして、心躍り胸逸る冒険へと旅立つのだ! 
 彼女の持つ「奇跡の星」に、マジカル・スターに導かれて!!
189 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/05/08(月) 13:38:31.77 ID:sqUuJl7G0
とりあえずここまでの、残り三十人。
190 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/05/08(月) 13:46:06.99 ID:sqUuJl7G0
>>86 訂正
〇今はただ、スイートな勝利の味を堪能する麗花が存在している。それだけが静香の知り得る真実だった。
×今はただ、スイートな勝利の味を堪能する麗花も存在している。それだけが静香の知り得る真実だった。
>>88
〇見慣れた笑顔に聞き慣れた声。だけど厳密に言えば、二人にとってはこれが初めての出会いになる。
×見慣れた笑顔に聞き慣れた声。だけど厳密に言うと、二人にとってはこれが初めての出会いになる。
191 : ◆Jnlik0MEGA [sage]:2017/05/10(水) 10:34:27.18 ID:YsRaTeHS0
マジカルクラウンだったか
http://i.imgur.com/MaLHU1B.jpg
http://i.imgur.com/WF2ffpq.jpg
凄く壮大な話になってきた....
一旦乙です

>>165
エミリー(13) Da
http://i.imgur.com/FFxcWoe.jpg
http://i.imgur.com/ILZiQFy.jpg

>>173
最上静香(14) Vo
http://i.imgur.com/Ql9D02f.jpg
http://i.imgur.com/elElgN9.jpg
192 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/05/29(月) 20:09:30.34 ID:hMmfh9+Mo

 いつまでも放置しとくのもアレなのでちょっと報告。

 色々と考えてたんですが、このまま日記の内容を元に話を続けても現状キャラを使い捨ててるように感じてしまう
 (麗花以外は登場して数百字で退場の繰り返し)のが辛いのと、ワザとぼかして書いてたせいで話の筋が分かりにくいので、改めて最初から書き直してます。

 大元の流れとオチは変わりませんが、「とある一日」をベースに闇鍋にしたような話になってるので、一見かなりアレな内容となってます。例えば――。

===

「それとも……不意打ちなんて効かないか」

 ニヤリ、少女が不敵に微笑んだ。その視線が捉えるのは、ガラリと雰囲気を変えた春香を含む麗花たち。
 鋭く、目つきも悪くなった春香……ハルシュタインが訊く。

「一体これはどういうつもり? ……海美」
「おお怖い! 流石はワルの大総統!」

 名前を呼ばれ、高坂海美……いや、マイティ・セーラー海美はおどけたように身を震わせた。
 その戦闘服とも言える超ミニセーラー服の純白は、正義の使者である印。胸元に輝くバッジもまた同じく、彼女がヒーローである証。

 ……しかし今、海美の様子はどこかおかしい。

「どうこう無いよ、ハルシュタイン。私はただ、ヒーローの仕事をしてるだけ」
「……仕事?」
「そっ、悪の芽を摘む正義のお仕事。我らアイドルヒーローズ! ……ってね♪」

 刹那、直立する海美の両腕から激しい雷光が迸る! 溢れたエネルギーの疾走で、弾ける電灯窓ガラス。
 壁際に並ぶ作品棚を穿ちながら、ソレは春香たちを襲う!

「危ないっ!」

 まさに秒の差で反応し、麗花が春香とひなたの二人を抱えて飛び上がった! 弾ける電撃瞬くスパーク。
「まっ、そー来ると思ったよ!」だがしかし、それは海美の狙い通り。空中で無防備になった三人に向け、矢のような追撃の一撃を放つ!

「あらら……!」

 一杯食わされたと悟り、麗花が衝撃に備えて目を細める。着弾! 雷鳴のような音を響かせながら、室内は激しい点滅に包まれて……。
 視界が安定した時には、麗花たちは床に崩れていた。とはいえ、やられてしまったワケではない。

 そう、そうだ! 我々は知っている。ここにはもう一人、頼れる"アイドル"が居ることを!

「これはまた……妙な力を使うようで」

 それはかつて、デストルドーの幹部としてヒーローズと対峙した悪のマイティ・セーラー志保。
 麗花たちを守るため、海美の前にシールドを張って立ち塞がった彼女のセーラーは真っ黒だ。

 ……だが、その目は今の海美ほど淀んだ輝きを秘めてはいない。

「どこで覚えて来たんです? そんな"力"の使い方」
「ふふん……知ってる癖に」

 志保の質問をはぐらかし、海美が両手を低く構える。
 途端、バチバチと音を立ててエネルギーをチャージし始めた敵の姿に、志保は「ちっ」と舌打ちをした。

 ……こんな狭い空間で、ああいった相手は分が悪い。
 アレは天井だろうが壁だろうがお構いなしに駆け巡り、こちらを狙ってくるだろう……ならば!
===

 ……とまぁ、チラッと見せただけで分かるように別物です。
 更新を待って下さっていた方には申し訳ないのですが、このスレはここで執筆中止にしたいと思います。勝手な話ですみません。
 普通の日常作品を期待していた方にも重ねてお詫びいたします。では、執筆の方に戻りますので。また、いずれ。
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 22:30:13.91 ID:iWQgTG4D0
そうか、残念だが
乙です
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 22:30:36.91 ID:iWQgTG4D0
そうか、残念だが
乙です
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 00:38:36.04 ID:5OWC+/2yO
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 00:39:27.14 ID:5OWC+/2yO
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 15:21:11.90 ID:ImFM9HNc0
>>2
428 :イラストに騙された名無しさん:2012/11/21(水) 20:56:10.89 ID:G8axBjTM
材木座のモデルの人は今毎日が日曜日で葉山のモデルの人は高校時代の彼女とゴールインだっけ?
作中でもその通りになるとは思ってないけどそう考えてみると感慨深い
じゃあ八幡は・・・

5 :以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/03/13(金) 22:09:37.95 ID:V+CCoqMQ0
>>2,3
雪ノ下と葉山のモデルは作者の高校時代にいた人物
高校の頃から二人は交際してて一緒に旧帝に進学
そして大学在学中に結婚した

38 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で@転載は禁止:2015/06/27(土) 02:36:22.15 ID:f4Jfvtiz0
>>34
とはいえ現実は雪乃モデルの人は葉山モデルの人と結婚したんだがな

43 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で@転載は禁止:2015/06/27(土) 02:49:04.05 ID:7kaILEqP0
>>38
これマジなの?
ガチだとしたらそれがある中八幡が雪乃と付き合うって展開になると

なんか作者が色々凄いな

46 :風の谷の名無しさん@実況は実況板で@転載は禁止:2015/06/27(土) 02:56:26.26 ID:f4Jfvtiz0
>>45
少なくとも雪乃と葉山に実在のモデルがいたのは作者のブログに書いてあったことだ
今は閉鎖されて見れないけど
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/23(月) 06:55:40.96 ID:V9/W1srq0
test
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