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王「我が娘が騎士になりたいと言ってるのだが……」女騎士「姫様が?」
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45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 21:09:27.86 ID:ecPDf4+eo
訂正
>>44
騎士(感情に流されるな……!! 私は陛下に仕える騎士だ。陛下から言われたことは、姫様の騎士になるのを断念させることだ……!!)
↓
騎士(感情に流されるな……!! 私は陛下に仕える騎士だ。陛下から言われたことは、姫様の騎士になる夢を断念させることだ……!!)
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 21:12:39.53 ID:ecPDf4+eo
衛兵「ぶっ……す……」
騎士「な、なにか、言いたいことでもあるのですか、貴方達」
衛兵「姫様、がんばってんじゃねえかよ……えぇ……」
「十日間も、休まず、毎日毎日、重たい木の剣をずっと、ずっと、握ってたんだぞ……」
「俺たちが止めても……せんせーに認められたいからっていって……健気によぉ……毎日握ってたんだよぉ……なのによぉ……」
騎士(し、しまった……!! いつの間にか囲まれている……!?)
衛兵「手だってさぁ、痛いはずなんだよなぁ……姫様は気丈に振る舞ってよぉ……えぇ……泣かせるじゃねえか……」
「俺は泣いたね」
騎士「だ、だから、なんだというのですか!!」
衛兵「お前にはよぉ、血も涙もないのかよぉ」
「こんな姫様を見ても、お前は逃げるのかよぉ」
「ざけんなよ、クソアマぁ。マジでぶっころすか」
衛兵「その立派な女の体をよぉ、有効に使ってやろうかぁ。あぁ?」
騎士「ぶ、無礼ですよ!! あと侮辱ですよ!! 侮辱!!」
衛兵「お前のほうがよっぽど無礼なんだよなぁ……」
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 21:18:56.18 ID:ecPDf4+eo
騎士「ひぃぃ……」
衛兵「どうするんだよ……姫様……涙目になってんじゃねえかよぉ……」
騎士「やめて……近づかないで……」
「おい、どうするかはっきりしろよぉ」
「俺たちに殺されるか、姫様のせんせーになるのかよぉ」
騎士「だ、だいたい、近づくなと言ったのは、あなたですよ!」
衛兵「あぁ、そうだよ。言ったよ。姫様を悲しませることになるなら、てめえは近づかない方がいいと思ったからよぉ」
騎士「だから、私は――」
衛兵「いやいやいや。姫様が悲しんでるじゃねえか。だったら、お前、考えを変えろよ」
騎士「はぁ!?」
衛兵「陛下が諦めさせようとしていることは死ぬ気で隠し、姫様の指導をしてやればいいだけだろうが。あぁ?」
騎士「め、めちゃくちゃですよぉ……」
衛兵「やるのか、やらねえのか」
姫「やめてぇ! せんせーをいじめないで!!」
騎士「ひ、ひめさまぁ」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 21:26:12.83 ID:ecPDf4+eo
姫「あっちいって!!」
衛兵「はっ!! 差し出がましい真似をしてしまい、申し訳ありませんでした!!!」
「「すみませんでした!!!」」
姫「もう、大丈夫だよ」
騎士「た、助かりました」
姫「ごめんなさい。せんせー」
騎士「はい?」
姫「私の我儘だもんね。無理をいって、ごめんなさい」
騎士「姫様……いや……そんな……」
姫「私は私のやり方で、騎士を目指します。色々、教えてくれてありがとうございますっ」
騎士「……」
姫「でも、これからもせんせーに憧れていてもいいですか?」
騎士「なっ……!?」
姫「ダメ……ですか……?」
騎士(私は……陛下とこの国に忠誠を誓い……騎士になったわけで……このまま姫様を指導しては……陛下を裏切ることになるかもしれないわけで……!!)
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 21:32:25.21 ID:ecPDf4+eo
姫「せんせー?」
騎士(いや、まて……このまま無茶な特訓を課せば姫様だって……耐えきれずに……)
騎士『では、準備運動から始めます。まずは城の周りを50周!!」
姫『はい!!!』ダダダッ
騎士『次ぃ!! 素振り1000回!!」
姫『はい!!!』ブンッブンッブンッ
騎士『中々やるではないですか。姫様』
姫『騎士になるためなら、いくらでもついていきます!』
騎士『頼もしい。必ず、立派な騎士になれるでしょう』
姫『ありがとうございます!!』
騎士(ダメだ!!! 姫様がご立派に騎士としてご活躍する未来しか浮かんでこない!!!)
騎士(こんなにも熱心な姫様が、多少苦しい特訓を課したところで膝を折るわけがない……!!)
騎士(特訓を続ければ、それだけ騎士として戦場を駆ける日が近づいていくだけではないか……!!)
姫「せんせー? すごい汗だよ?」
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/25(土) 21:33:31.81 ID:RtQ4vHTXo
第二のサファイア姫ができそう(^^)
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 21:42:00.06 ID:ecPDf4+eo
騎士(かといって、無視をしたら……)
衛兵「……」
騎士(姫様の護衛たちに何をされるか分からない……!!)
騎士(はっ……!! そうだ……もうこれしか……!!)
騎士「姫様」
姫「はいっ」
騎士「あくまでも騎士になることを願いますか」
姫「うんっ!」
騎士「女の身で騎士となれば、当然捕虜になったとき、辛い拷問が待っています」
騎士「騎士としての、いえ、女としての尊厳を壊されてしまうかもしれません」
姫「どんなことされるの?」
騎士「そんなの勿論……」
騎士「……」
騎士(そんなの勿論、言えるわけない!! 私のバカ!!)
姫「ねーねー? どんなことされちゃうの?」
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 21:46:46.47 ID:ecPDf4+eo
騎士「それは……あのですね……」
姫「うんうん」
騎士「一週間ご飯抜きとか、そんな感じです」
姫「そうなんだ……」
騎士「辛いでしょう?」
姫「服を脱がされて、乱暴なことされたりはしないの?」
騎士「ひめさまぁ!?」
姫「え? なになに?」
騎士「姫様が考えているようなことは、何一つ、起こり得ません。都市伝説です」
姫「そ、そうなの?」
騎士「そんな話、誰から聞いたのですか」
姫「あの人たち」
騎士「……!」キッ
衛兵「晩飯、どうする?」
「そうだなぁ。なににしようかなぁ」
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/25(土) 21:55:36.21 ID:ht5f4M6m0
衛兵が騎士に暴言吐くってこの国の身分制度はどうなってるんだ
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 21:56:11.18 ID:ecPDf4+eo
騎士「そこに直れ!!! 下郎ども!!」
衛兵「……」
「「……」」
騎士「お前たちは年端もいかぬ姫様になんてことを吹聴しているんだ!!! 恥を知れ!!!」
衛兵「俺たちも、姫様に騎士にはなってほしくはなくてさぁ……」
「そういえばあきらめてくれるかなぁって……えへへ……」
騎士「えへへではない!!! ふざけるな!!!」
衛兵「すみません」
騎士「謝って済む問題ではない!!! 姫様が騎士に対して抱いておられる印象を捻じ曲げてしまったんだぞ!!!」
騎士「女の騎士が捕虜になれば、淫猥は行為をされると思い込んでいらっしゃるんだぞ!!! あぁ!! 嘆かわしい!!! これだから男は不潔なんだ!!!」
「そんな不潔って。お前だって、男の一人や二人ぐらいとは付き合ったことあるだろ?」
騎士「黙れ!!! 色恋に割く時間などあるかぁ!!! 不愉快だ!!!」
衛兵「……!!」ビクッ
騎士「貴様たちの行為は万死に値するぞ!!! 分かっているのか!!! いいや!! わかっていない!!! この場でその首を刎ねてやりたい気分だ!!!」
姫「せんせぃ……こわいよぉ……」
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 22:01:27.44 ID:ecPDf4+eo
騎士「私の権限を持って通告する!!! お前たちは今後、姫様の護衛から外れてもらう!!!」
衛兵「な、なにぃ!?」
「お前にそんな権利があるのかよぉ!!」
騎士「ある!!! 即刻この場から立ち去れ!!!」
衛兵「あの、何卒、穏便に――」
騎士「去れ」
衛兵「はい」
騎士「まぁ……。全く」
姫「せんせー……」
騎士「お恥ずかしいところをお見せしました。申し訳ありません」
姫「ううん。それはいいんだけど」
騎士「陛下のところへ行きましょう」
姫「パパのところに?」
騎士「決めたことがありますので。一緒に来ていただけますか?」
姫「うんっ」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 22:07:18.35 ID:ecPDf4+eo
―謁見の間―
姫「パパー」
王「む? どうしたのだ」
姫「せんせーがね、お話したいって」
王「話?」
騎士「突然の謁見、お許しください」
王「何があったのだ」
騎士「誠に勝手ながら、姫様の護衛をしていた者たちの任を解きました」
王「なんだと?」
騎士「あの者たちは姫様によからぬことを吹き込んでいたです」
王「よからぬこと? 一体、なんだ」
騎士「それは……それは……。言えません」
王「なぜだ? 言ってくれなければ、事実確認ができないではないか」
騎士「言えないのです!!!」
王「お、おぉ、そこまでなのか……。うぅむ……」
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/25(土) 22:10:34.77 ID:DxQWeq2DO
姫の名前はアンジェリカかオリヴィアで
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 22:15:13.41 ID:ecPDf4+eo
騎士「身勝手なことをした責任をとります。姫様の護衛任務、私に任せてはもらえませんでしょうか」
姫「え?」
王「しかしだな、娘の護衛につくということは、城の外へは殆ど出られないということだぞ」
騎士「構いません。姫様の御傍にいることができるのなら」
姫「えっと……せんせー……ずっと一緒にいてくれるの……?」
騎士「はい」
姫「朝から、晩まで?」
騎士「ええ」
姫「えっと、えっと、ごはんも一緒?」
騎士「そうですね。許可さえいただければ、ご一緒にいただきます」
姫「寝るときは? お風呂は?」
騎士「お許しがいただけるのでしたら、ご一緒いたします」
姫「わぁぁ……。せんせー!! だーいすきー!!」ギュゥゥ
騎士「陛下。どうか、お許しを」
王「ここで不許可しようものなら、娘が一生口をきいてくれなくなるだろうなぁ。……お前に一任しよう」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 22:20:32.40 ID:ecPDf4+eo
姫「せんせー」ギュゥゥ
騎士「この身は、本国と陛下のために」
王「して、あの件は……?」
騎士「問題ありません」
王「ならばよい」
姫「あの件ってなに?」
騎士「気にしないでください」
姫「うんっ! しないっ!」スリスリ
騎士「それでは」
王「娘をよろしく頼む」
騎士「はっ」
姫「パパー、バイバーイ」
王「またあとでなー」
姫「せんせー、これからなにするのー?」
騎士「隊長に事情を話そうと思います」
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 22:25:01.34 ID:ecPDf4+eo
―宿舎―
騎士「ただいま戻りました」
隊長「おぉ。って、王族も一緒かよ」
姫「こんにちはー」
隊長「どうも、姫様」
騎士「隊長、明日より自分は姫様の護衛任務に就くことになりました」
隊長「護衛って……。近衛兵になるってのか」
騎士「はい」
隊長「騎士の仕事には含まれていないはずだがな」
騎士「陛下にも許可を頂きました」
隊長「姫様、ちょっとこいつを借りますね」
姫「すぐに返してくれる?」
隊長「そりゃあ、もう、約束します」
姫「なら、お貸しますっ」
隊長「ありがとうございます。……こっちこい」
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/25(土) 22:26:06.98 ID:Y5sB4Bx5O
衛兵がクソ過ぎてわろえぬ
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 22:31:44.95 ID:ecPDf4+eo
隊長「――なるほどね。いなくなった衛兵の代わりってことか」
騎士「あんな下種たちには任せておけません」
隊長「かっかすんなよ。気持ちは分かるがな」
騎士「男は不埒です」
隊長「はいはい。しかし、お前が四六時中傍にいるってなると、姫様は騎士に近づいていくことになるんじゃねえのか」
騎士「……」
隊長「陛下の望みとは真逆だよなぁ。それはいいのかい」
騎士「なるように、なります」
隊長「要するに勢いで言っちまったんだな」
騎士「だって! あんな兵を姫様の近くに置いておくわけにはいきませんし!!」
隊長「そいつらには然るべき処分を言い渡す。それでいいだろ」
騎士「お願いします」
隊長「ま、何か困ったことがあれば相談してくれ。長く生きてる分、助言できることもあるだろうからな」
騎士「隊長……すみません……」
隊長「何を頭さげることがあるんだ。しっかりな」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/25(土) 22:34:25.92 ID:Y5sB4Bx5O
すまんちゃんと最後まで見たら相応の罰を受けてて感心した
応援しとるで
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 22:35:59.38 ID:ecPDf4+eo
姫「終わったの?」
隊長「ええ、お返しします」
姫「せんせー」ギュゥゥ
騎士「それでは荷物をまとめてきます」
隊長「おう。寂しくなるな」
騎士「この城を離れるわけではありません」
隊長「でも、顔を合わせる機会は減るだろ」
騎士「……」
隊長「迷うなら、辞めちまえ」
騎士「とんでもありません。半端な覚悟で護衛を願い出たつもりはないですから」
隊長「それでいい」
姫「せんせー?」
騎士「姫様はここで待っていてください」
姫「ついてくっ」
騎士「いや、荷物をまとめるだけですので……」
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 22:43:09.57 ID:ecPDf4+eo
―騎士の自室―
姫「せんせーのお部屋だー」キャッキャッ
騎士「散らかっていて、お恥ずかしいのですが」
姫「えー? 全然、散らかってないよ?」
騎士「そう言っていただけるとありがたいです」
姫「どれもっていくの?」
騎士「そうですね……。服を数着と……それから読みかけの本を……」
姫「私が持ってもいい?」
騎士「え? いえいえ。姫様に持ってもらうことは……」
姫「持たせてくださいっ」
騎士「いけません、姫様」
姫「もちたいっ」
騎士「私にも立場があるのですが」
姫「せんせーのお手伝い……したいんです……」
騎士(姫様……何故、巧みに罪悪感を抱かせようとするのですか……!! 卑怯です……!!)
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/25(土) 22:43:35.23 ID:x4mAABBAo
これは期待
支援
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 22:55:54.07 ID:ecPDf4+eo
―廊下―
姫「えへへ」
騎士「はぁ……」
騎士(結局、持ってもらった……。陛下に仕える騎士として恥ずべき行いだ……)
姫「せんせーって本読むの好きなの?」
騎士「はい。書物から得られることはとても多くありますので」
姫「そうなんだ。それじゃあ、私も本をたくさん読んだほうがいい?」
騎士「読まれた方が将来、役に立つかと思います」
姫「よーしっ。今日からいっぱい読む!」
騎士「いい心がけです」
姫「たくさん読んだら、せんせーみたいな騎士になれる? これ、読めばせんせーに近づける?」
騎士「うっ……」
騎士(姫様は私の真似をすることで騎士になれると信じておられるのか……)
姫「せんせーの本、ちょっとむずかしいから、絵本からでもいいですか?」
騎士(くっ……ダメだ……応援したくなる……だが……騎士を目指すことは思い留まってもらわなければ……!!)
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/25(土) 23:50:09.38 ID:ecPDf4+eo
―姫の自室―
姫「せんせー、どうぞ」
騎士「失礼します」
姫「本、読みます!」
騎士「ど、どうぞ」
姫「ふんっ」キリッ
騎士(本当に絵本を読むのか)
姫「ふんっ、ふんっ」
騎士(さて、私も夕食の時間まで読書をしようか)
姫「せんせー」
騎士「はい?」
姫「読んだことがある絵本はダメですか?」
騎士「いえ、そんなことは。私も一度読み終えた本を再度読むことはあります」
姫「そうなんだ! よーし! ふんっ、ふんっ」
騎士(よく見たらあの絵本、痛みが結構あるな。かなり読み返されているのだろうか?)
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/26(日) 00:13:24.63 ID:v1QBb5k+O
これは長編の予定ですか?
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 00:14:28.89 ID:qrjnjYMBo
姫「ふんっ、ふんっ」
騎士(やはり、何度も読まれているな。破けているページもあるぐらいだ)
騎士「姫様、その絵本は何回ぐらい読んだのですか?」
姫「んー? わかんない。いっぱい読んだから」
騎士「大変、気に入っているのですね。どういったお話なのですか」
姫「綺麗なお姫様が悪い魔女を倒すお話っ」
騎士「へえ……」
騎士(って、もしや、姫様が騎士に拘る理由は……)
姫「みて、このお姫様、せんせーに似てるでしょ?」
騎士「そ、そうですか? こんなにも煌びやかなドレスはとても似合いませんよ」
姫「そうかなぁ……。馬にのって剣をもってるところなんて、そっくりだけど」
騎士「姫様は、その絵本の姫のようになりたいと思っているのでしょうか」
姫「うんっ。絵本のお姫様みたいになれたらなーって思っていたけど、でも、絵本の世界みたいに都合よくはいかないだろうなーってこともわかってたよ」
騎士(意外と現実的な思考をしていらっしゃる)
姫「そんなときにね、せんせーを見たの。絵本からでてきたみたいにかっこいいお姫様が現実にいたから、私でもなれるかもしれないって思えるようになって、それでユニコーンにのって、棒を振り始めたの」
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/26(日) 00:16:53.47 ID:XIdZZzhwo
かわいい
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/26(日) 03:45:15.88 ID:02wBGfNNo
この衛兵が逆に反逆者だろ…陛下の勅命を受けた相手にたいしての礼儀などがなってないでしょ。
騎士に対して失礼な態度をとる衛兵をみた陛下によって獄中だろ
73 :
以下、名無しにかわりまして衛兵がお送りします
[sage saga]:2017/03/26(日) 08:01:39.43 ID:8yBgVLT90
騎士と衛兵は募集形態(?)違うからじゃないかとほんのちょっとフォロー
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/26(日) 09:46:04.55 ID:siWwCj5sO
隊長の台詞から察するに内勤者は望まずして務めてるみたいだし
単にやさぐれてるか嫉妬から粗暴になってんじゃね
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/26(日) 10:05:25.62 ID:SKOdFEluO
老師の人か。相変わらずあんたのssは面白いな、奇態
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 20:14:59.19 ID:qrjnjYMBo
騎士(私のことをおとぎ話の主人公として見ていたのか)
姫「私、絶対に騎士になるっ。だから、本、読みますっ」
騎士(なら、簡単に挫折するわけがない。姫様にとっての理想の人物が、目の前にいる)
騎士(そして、その人物から手ほどきを受けることができる環境にいる)
騎士(誰だって、大きな希望を抱くに決まっている)
姫「ふんっ、ふんっ」
騎士(たとえ理不尽な特訓であろうとも、今の姫様はやり遂げようとする。いや、完遂するだろう。そんな姫様を見て、応援しないわけにはいかない)
騎士「くっ……」
姫「読み終わったっ! もういっかい、もういっかい!」キャッキャッ
騎士(私の負けだ。陛下、申し訳ありません。姫様は私をも超える、超一流の騎士になられてしまうことでしょう)
姫「ふんっ、ふんっ」
騎士(覚悟を決めるしかないか。考えてみれば、姫様と共に戦場を駆けるのも悪くは……)
姫「やっぱり騎士ってかっこいいね。どんなに強くて悪いやつも倒しちゃうんだもん」
騎士「……」
騎士(そうか。姫様が持つ騎士の印象は、絵本のお姫様のように悪者を倒し、世界を救うといった超人的な勇者のそれに近い。ならば厳しい鍛錬などを突きつけるのではなく……)
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 20:32:42.05 ID:qrjnjYMBo
騎士「姫様」
姫「はいっ」
騎士「普段、『騎士』が何をしているのかご存知でしょうか」
姫「え? んー? 特訓とか?」
騎士「ええ。確かに日々の鍛錬を欠かすことはできませんね。しかし、それだけではありません」
姫「悪い奴をやっつける!」
騎士「それも正解です。任務には遠方へ赴き、賊の討伐などがありますから」
姫「おぉー! 今までいなかったのも悪者やっつけてたからでしょ?」
騎士「そうですね。最近、大規模な野盗集団が町村などを襲っているらしいので、討伐任務が増えてきています」
姫「かっこいいー。私もそういうのしたいですっ」
騎士「ですが!! そんな任務はほんの一部でしかありません」
姫「どういうこと?」
騎士「明日、私と共に『騎士』の一日を体験してみますか?」
姫「いいの!? わーいっ。やった、やった。あ、よろしくお願いします、せんせー」
騎士(姫様。現実とは残酷なのですよ。『騎士』が常に輝いていると思ったら、大間違いなのです)
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 20:43:24.50 ID:qrjnjYMBo
―中庭―
王「ふぅー……」
隊長「国王陛下。こんな夜分に何をしているのですか。夜風は体に毒ですよ」
王「心配ない。煙草の煙のほうが猛毒だ」
隊長「いつまでそんな安物に火を付けているんですか」
王「大金を燃やす趣味はない。いくら国王でもな」
隊長「ご一緒しても?」
王「今更畏まることもない」
隊長「それじゃ、失礼して」
王「して、どうだったのだ」
隊長「ええ。うちの部下の言っていた通りです。姫様の護衛任務にあたっていた衛兵5名全員、クロ。姫様にあることないこと吹き込んでいたようですよ」
王「そうか……」
隊長「奴らにとって、姫様は偶像みたいなもんだったし、騎士にさせたくない気持ちは、ある意味陛下よりも強かったようですね。やり方を間違えちまったわけですが」
王「関わった者たちを、明日にでも私の前に連れてきてくれ」
隊長「御意」
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 21:08:42.36 ID:qrjnjYMBo
王「すまんな。くだらぬことを頼んで」
隊長「気にしないでください。この身は、本国と陛下のために」
王「お前には似合わぬ台詞だ」
隊長「陛下も俺の部下をもう少し信用してくれませんかね」
王「此度の騒動は娘に取り入った結果、ではないのか?」
隊長「いやぁ。あいつは何も考えてませんよ」
王「尚更、保険は必要になる」
隊長「ま、失敗しないとは言えませんがね」
王「我が娘は、妻によく似て強情だ。ミイラ取りがミイラになることも十分にありえる」
王「そんな強情さが妻の魅力ではあったがな」
隊長(陛下にとっては、まだまだ過去のことではないよなぁ)
姫「パパー! ごはんはー!?」
王「おー! 一緒にたべようではないかー!!」
姫「せんせーも一緒でいいー!?」
王「よいぞー!!」
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 21:21:40.79 ID:qrjnjYMBo
―食事室―
王「ほう。明日は騎士の一日を体験するのか」
姫「うんっ。せんせーがしたほうがいいって」
騎士「陛下、よろしいでしょうか」
王「構わぬ。一任したのだから、好きにしてくれ」
騎士「はっ!」
王「それはそうと、手が止まっておるぞ。口に合わぬか」
騎士「決してそのようなことは!」
王「遠慮するでない」
姫「たべて、せんせっ」
騎士「はい。いただきます」
騎士(こんなにも豪華な料理を、私なんかが口にしていいのだろうか)
騎士「はむっ」
姫「せんせー、おいしい?」
騎士「はいっ! とっても!」
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 21:34:50.17 ID:qrjnjYMBo
姫「ごちそうさまでしたっ」
騎士「身に余るご厚意、なんと言えばいいか……」
王「娘専属の騎士となった今、遠慮はいらぬ。お前も王族みたいなものだ」
騎士「と、とんでもありません!! 私はただの騎士に過ぎません。それに元は平民です。こうして同じ場所で食を共にすることも憚られる身分」
王「真面目だな。噂通りだ」
騎士「も、申し訳ありません」
姫「でもでも、せんせーは私のせんせーなんだし、気にすることないよっ」
騎士「ありがとうございます、姫様。しかし、他の者の目もありますから」
姫「せんせーの悪口いうひとは、私が木の剣で叩いてあげるから、ねっ」
騎士(時折、抱きしめてしまいたくなる)
王「はっはっは。それは恐ろしいなぁ」
姫「パパもせんせーの悪口いったら、叩くからっ」
王「気を付けよう」
姫「これで安心でしょ、せんせー?」
騎士「はい。心強いです」
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/26(日) 21:44:54.04 ID:05yvYW6s0
すき
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/26(日) 21:57:34.04 ID:XIdZZzhwo
とてもよい……
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 22:22:05.70 ID:qrjnjYMBo
王「さて、部屋に戻るとするか」
騎士「名誉の食事となりました。陛下」
王「いちいち仰々しいな。はっはっは」
姫「せんせー、お風呂はいろっ」
騎士「ええと……」
王「私の顔色を窺う必要はない。娘の湯浴みも手伝ってくれ」
騎士「はっ」
姫「せんせーとおっふろー!」キャッキャッ
騎士「普段は姫様、御一人で?」
王「いや。給仕が洗っているはずだ」
騎士「それならば私と入浴しないほうがよろしいのでは?」
姫「え……」
騎士「あ!? いえ、その、給仕の役目を奪うことになれば、それはそれで問題があるような気もするので……!!」
姫「せんせーとおふろ……はいりたいです……」
騎士「くっ……! は、入りましょう!! 入りましょうとも!!」
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 22:34:34.57 ID:qrjnjYMBo
―浴場 更衣室―
姫「せんせー、はやくー!」
騎士「広い……! ここが王族の浴室なのか……! 初めて入った……」
メイド「姫様。お召し物をこちらに」
姫「はぁーい」
騎士「貴方が姫様の給仕を担当しているのですか」
メイド「はい。姫様の食事の用意、入浴時のお手伝い、衣類の洗濯はわたくしの役目です」
騎士「では、先ほどの食事も?」
メイド「いえいえ、作ったのは料理長です。わたくしは運んだだけですから」
騎士「それは分かっています」
姫「ぬいだーっ」
メイド「よくできました。どうぞ、お進みください」
姫「わー」テテテッ
騎士「姫様!! 走ると危ないですよ!! で、では失礼します」
メイド「お待ちになってください。騎士様」
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 22:44:43.07 ID:qrjnjYMBo
騎士「なんでしょうか」
メイド「……あの、わたくし……姫様の給仕として働き始めて、1年なのですが……」
騎士「は、はぁ」
メイド「なにか……何か……粗相をしてしまったでしょうか……」
騎士「はい?」
メイド「わたくし、解雇なのでしょう……?」
騎士「は?」
メイド「騎士様、何がいけなかったのでしょうか……わたくし……誠心誠意尽くしてきたつもりでしたのに……」
メイド「何故、何故、わたくしが解雇にならねばいけないのでしょうか!?」
メイド「両親はわたくしの仕送りをあてにして生活しているのです!! ここで職を失うわけにはいかないのです!!」
騎士「ま、待ってください。私はただ姫様の護衛であって、給仕になったわけではありませんから」
メイド「ほんとうですの……?」
騎士「これからは何かと顔を合わせることが多くなると思いますが、是非とも仲良くしてください」
メイド「わたくし、騎士様と仲良くなってもよろしいのですか!?」
騎士「姫様に最も近い場所にいるのは、私と貴女だ。手と手を取り合い、協力したほうが建設的ではないでしょうか」
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 22:52:35.49 ID:qrjnjYMBo
メイド「よかったです……。今までは護衛といえば男性ばかりで近寄り難くて……」
騎士(そもそも女性兵士は圧倒的に少ないし、常駐警護には任命されにくいからな)
メイド「騎士様が女性で助かりますわ」
騎士「私からも姫様のことで助言を頂くことがあるでしょうから、そのときはよろしくお願いいたします」
メイド「そんな! わたくしのほうこそ、騎士様を頼らせてください」
騎士「私でよければ、いつでも頼ってください」
メイド「はいっ」
姫「せんせー、まだー?」
騎士「今いきます! それでは」
メイド「はい。ごゆっくり」
姫「おそいー」
騎士「すみません。では、お背中を流します」
姫「せんせー、おっきいねー」
騎士「そうですか? 騎士としては小柄なほうですよ。男性にはやはり劣ります」
メイド「騎士様なら……」
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 23:02:56.31 ID:qrjnjYMBo
姫「私もせんせーみたいに大きくなれるかなぁ……」
騎士「すぐになれますよ」
姫「どうやったらなれるの!?」
騎士「規則正しい生活。これに限ります」
姫「はやね、はやおき!」
騎士「そうですね。あとは好き嫌いもせず、出された料理は全て平らげる。しかし、暴飲暴食はいけません」
姫「お菓子はだめですか?」
騎士「決められた間食ならば、問題ありません」
姫「お願いするのはダメですか?」
騎士「お願い?」
姫「朝でもお昼でも夜でも、お願いしたらお菓子くれるんだけど……」
騎士「……誰がくれるのですか?」
姫「さっきのお手伝いさんっ」
騎士「良い情報を聞けましたね……ふふ……」
姫「せんせーの浮くんだね……すっごーい……」
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 23:13:49.31 ID:qrjnjYMBo
―更衣室―
メイド「……」
騎士「いいですか。姫様の願いだからといって、何でも聞いてしまってはダメです。大体、過剰な摂取は余分な贅肉を腹に巻いてしまうだけです」
メイド「しかし、姫様に上目遣いにお願いされたら……」
騎士「気持ちは痛いほど分かります。ですが、そこは心を鬼にするのです」
メイド「すみません……」
姫「せんせー、また怒ってる」
騎士「今後、姫様を甘やかせる行為を見かけたときは、相応の罰があると考えていてください」
メイド「そんなぁ……減給だけは……」
騎士「いいですね?」
メイド「わかりましたわ……」
騎士「全く。給仕がそんなことでは困ります」
姫「せんせー、その人、何か悪いことしたの?」
騎士「悪いこと、とは強く言えないかもしれませんが」
姫「だったら、怒らないであげて。いつも私のお世話してくれる人だし」
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 23:19:34.39 ID:qrjnjYMBo
騎士「私は姫様のことを想って……」
姫「おねがいしますっ」
騎士「くっ……。ま、まぁ、今回はこれぐらいでいいでしょう」
メイド「……」
騎士「なにか?」
メイド「姫様には甘いのですね、騎士様」
騎士「だ、黙りなさい!」
メイド「仕方ありませんわね。姫様に厳しくできる人がこの世にいるわけがありませんもの」
騎士「私は、違います」
メイド「同じですわっ」
騎士「違うと言っている!!」
姫「せんせー?」
騎士「うっ……。すみません。部屋にいきましょうか」
姫「はいっ。また明日ねー」
メイド「おやすみなさい、姫様」
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 23:24:43.72 ID:qrjnjYMBo
―姫の部屋―
姫「ふわぁぁ……」
騎士「姫様。大きく口を開けないでください。はしたないですから」
姫「せんせー、一緒に寝てくれるの?」
騎士「私は用意された部屋に行きます」
姫「一緒がいい」
騎士「我儘を言わないでください」
姫「……」
騎士「では、おやすみなさい」
姫「……」ギュゥゥ
騎士「姫様っ」
姫「一緒にねてくださいっ!」
騎士「いけません!」
姫「せんせーといっしょがいいのー!」
騎士「姫様。いくら私でも怒りますよ」
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/26(日) 23:40:33.90 ID:qrjnjYMBo
姫「えへへー、せんせー、すきー」ギュゥゥ
騎士「くっ……」
騎士(結局、姫様のベッドの中に入ってしまった。これでは給仕に偉そうにいう資格など私にはないじゃないか……。不覚! だれか、殺してくれ……)
姫「せんせー」スリスリ
騎士(いや。明日からは姫様には『騎士』の全貌をお教えすることになる。こうして無邪気にほほ笑んでいられるのも今の内だけだ)
騎士(故に、今日だけ、今宵だけは好きにさせてもいいかもしれない)
騎士「はぁ……」
騎士(などと言い訳をする自分が情けない。もう給仕に強く言うのはやめよう)
姫「せんせーが初めて」
騎士「はじめて?」
姫「いっしょに……ねてくれるの……」
騎士「そうなのですか? 給仕のかたは?」
姫「すぅ……すぅ……」
騎士(はじめて……。陛下はこうして添い寝をしたことがないのか? あんなに溺愛しているのに?)
騎士(寝るときはいつも独りだったのだろうか?)
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/28(火) 01:45:46.36 ID:BtfOdxUbO
こんなくっころ初めてやで
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/28(火) 04:04:36.34 ID:IbD4GCT9O
姫様いくつなの
少女って言ってたけど幼すぎないか
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/28(火) 20:51:35.00 ID:oQACj8i2o
―翌日―
姫「すぅ……すぅ……」
騎士「姫様、起きてください」
姫「ん……」
騎士「着替えてください」
姫「あれ……? まだ、外暗いよ……?」
騎士「本日は『騎士』の一日を体験するのでなかったのですか」
姫「そーだけどぉ」
騎士「では、支度をしてください。『騎士』の一日は既に始まっています」
姫「わかったぁ」モゾモゾ
騎士(素直だ。もう少しごねるかと思ったが)
姫「んーしょ……んー……んー……?」
騎士(着替えが覚束ない様子。いつも給仕の方に手伝ってもらっていたのだろうか?)
姫「んー!!」ジタバタ
騎士「お、お手伝いします」
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/28(火) 21:01:19.89 ID:oQACj8i2o
―訓練場―
姫「うー……あー……」
騎士「姫様、しっかりしてください」
姫「ねむいぃ」
騎士(こればかりは仕方ないか)
「でやぁぁぁぁ!!!」
「はぁぁぁ!!!」
姫「おぉ!?」ビクッ
騎士「我々騎士隊及び騎士候補生たちの殆どは、早朝にここで何かしらの特訓をしています」
姫「おー……」
騎士「決して義務ではありませんが、皆の意識は高く、こうして剣を振ったり、走り込みをしたりと自主的に基礎訓練を行っています」
姫「せんせーもするの?」
騎士「勿論です。とはいえ、今日は軽めに訓練場の周りを走るだけにしておきます」
姫「あ! 私も一緒に走りたいですっ」
騎士「構いませんよ。ふふっ」
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/28(火) 21:06:53.99 ID:oQACj8i2o
―1周目―
騎士「いっち、に。いっち、に」
姫「いっち、に! いっち、に!」テテテッ
騎士「その調子です」
姫「はいっ!」
―2周目―
騎士「いっち、に。いっち、に」
姫「いっち、にぃ。いっち、にぃ」
騎士「疲れていませんか?」
姫「ぜんぜん平気ですっ」
―3周目―
騎士「いっち、に。いっち、に」
姫「ひぃ……はぁ……せ、んせー……あと……なんしゅう……?」
騎士「17周です」
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/28(火) 21:15:17.91 ID:oQACj8i2o
―数十分後―
騎士「ふぅ……。終わりっ」
「やっぱ、かっこいいよなぁ」
「女騎士ってだけでもすげーのに、気品もあるっつーか」
「でも、怖いって話は本当みたいだな。姫様にも容赦ないぞ、あの人」
騎士(候補生たちの視線が刺さる……)
姫「おかえり」
騎士「ただいま戻りました」
姫「せんせーって、すごいね。あんなに走っても平気な顔してる」
騎士「慣れているだけです」
姫「私も毎日走るっ」キリッ
騎士「走り、素振りをするだけで『騎士』にはなれませんよ」
姫「へ?」
騎士「今のは早朝の訓練です。まだ一日は始まったばかりです」
姫「ど、どんな訓練をするのぉ……」
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/28(火) 21:23:40.08 ID:oQACj8i2o
―大食堂―
姫「おぉぉぉ!!! 人がいっぱいいるー!!」
騎士「全兵が利用する大食堂です。朝昼晩と利用者は多くいます。『騎士』が大食堂を利用することはあまりないのですが、候補生は別ですね」
ざわざわ……ざわざわ……
「あれって、姫様だよなぁ?」
「なんでこんなところに?」
姫「こんなにたくさんいたらごはんも楽しーねっ」
騎士「私はあまり良い印象がありませんが」
姫「どうして?」
騎士「候補生はここで第二の鍛錬をしなければいけないからです」
姫「ここで?」
騎士「見ていてください」
コック「お! 久しぶりですねー。今日はどうしたんです?」
騎士「訓練用朝食を二人前ください」
コック「え? いいのかい?」
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/28(火) 21:40:32.72 ID:oQACj8i2o
コック「はい、どうぞ」
騎士「ありがとうございます」
姫「え? え?」
騎士「どうぞ、姫様」ドーンッ
姫「こ、これ……なに……? え? パンがこんなに……お肉もある……」
騎士「この量を食べきらなくてはいけません」
姫「これ全部!? すっごいよ!! パンいっぱいあるよ!!」
騎士「きちんと適正量を摂取しなければ午後からの訓練で倒れてしまうことになります」
姫「これ食べなきゃ、騎士になれなんですか……」
騎士「言ったはずです。出された料理は全て平らげなければいけないと」
姫「……がんばるっ」
騎士「まぁ、今日は姫様にこれをみてもらいたかっただけなので、全部食べ切ることはない――」
姫「はむっ……はむっ……!」
騎士「ひ、姫様、無理はされないほうが」
姫「はむっ!!」
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/28(火) 21:52:35.33 ID:oQACj8i2o
―騎士隊室―
騎士「失礼します」
隊長「よぉ。どうした? 休暇を与えたはずだが」
騎士「姫様をお連れしました」
隊長「おっ。そりゃあ一大事だな。お前ら、整列!」
「「はっ」」ザッ
隊長「んで、姫様は?」
騎士「……こちらに」
姫「うぅ……」
隊長「具合が悪そうだな」
騎士「訓練用朝食を一割ほど食べたので……」
隊長「あれをか。あんなの大の男でも半分食えたらいい方だぞ」
騎士「申し訳ありません。姫様があそこまで食べるとは夢にも思わず……」
姫「……やっぱり、トイレ、いってもいいですか?」
騎士「是非とも行ってきてください」
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/28(火) 22:04:11.46 ID:oQACj8i2o
隊長「そもそもあの朝食は早朝に訓練して、午前と午後にきつい訓練を課せられる候補生に食わせるようだぞ」
騎士「一度、お見せしておくのも良いかと考えたのです」
隊長「本気で姫騎士にでもさせるのか」
騎士「いいえ。今日は姫様に騎士の全貌を見せたいのです。候補生は何をしているのか。そして騎士となったら何をするのか」
隊長「そういう作戦かぁ」
騎士「姫様は良くも悪くも『騎士』を童話の世界に出てくる勇者や英雄と同一視している節がありますから」
隊長「ふぅん。ま、だろうな」
姫「すっきりしました」
騎士「お帰りなさい。けれど、その報告は不要です」
姫「そうなの?」
隊長「改めまして。ようこそ姫様。この汗臭い場所へ」
姫「お邪魔してます。せんせー、ここではなにするの?」
騎士「ここは騎士隊に所属する者たちが集う場所。他の兵や候補生憧れの一室とも言えるでしょう。かくいう私も強い憧れがあり、いつかここで働きたいと毎日願っていたものです」
隊長「願いがかなってよかったなぁ」
姫「それなら私も毎日おねがいする!」
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/28(火) 22:58:44.84 ID:oQACj8i2o
騎士「ここでは歴戦の騎士たちが切磋琢磨し、毎日、毎晩のように熱い作戦会議なるものをしていると思っていましたが」
騎士「やることといえば、報告書や始末書の作成が主ですからね」
隊長「作戦会議なんてのは現場でやるもんだ。ここは事後処理をする以外に使い道なんてねえよ」
騎士「任務がない日も提出しなければいけない書類が多いのもかなり面喰いましたが」
隊長「はっはっは。俺たちは王国最強の部隊であると同時に、この国に仕える一兵士でしかない。地味な反復訓練と手が攣りそうになるほど書類整理に追われるのは当然だな」
姫「お仕事なくても何か書くの?」
騎士「休暇は流石に除きますが、日報の提出が義務化されています。『騎士』は国を代表する兵でありことから、日々の行動にも気を付けなければいけません」
騎士「他の者の規範となるように、民にとって理想の兵士であるように。騎士隊一人一人が心がけていなくてはなりません」
隊長「つっても、遠征から帰ってきたあとは、山のように報告書は書かなくちゃいけねえからなぁ。始末書なんかも毎回数人が書いてる」
姫「せんせーも始末書、かくの?」
騎士「無論、書く時もあります。今回は書かなくてもいいですけど」
隊長「一度遠出すりゃあ、物損なんかは必ずと言っていいほどあるからな。無い方が珍しいぐらいだ」
騎士「そうだ。折角ですから報告書の作成を行います。姫様も見学されますか」
姫「しますっ」
隊長(『騎士』としての日常を見せるか。気合入りまくってる候補生どもをがっかりさせるには効果的だろうが、姫様にはどう映るんだろうなぁ)
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/28(火) 23:08:21.10 ID:oQACj8i2o
騎士「……」カキカキ
姫「……」
騎士「よし。これで完成です」
姫「みてもいいの?」
騎士「どうぞ」
姫「わーいっ」
騎士「さて、次だ」
姫「ええと……。うーん……? んー……?」
騎士「……」カキカキ
姫「せんせー、よんでっ」
騎士「今、報告書を書いていますので後ほどでよろしいですか」
姫「何枚書くの?」
騎士「十日分の報告書ですから10枚以上にはなるかと」
姫「そんなに!?」
騎士「はい。騎士の義務ですので」
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/28(火) 23:24:37.90 ID:oQACj8i2o
姫「木の剣は振らないの?」
騎士「それは早朝の訓練時か自主訓練のときだけですね」
姫「自主訓練はいつするの?」
騎士「夕方か夜になります」
姫「それまではずっと報告書、書いてるの?」
騎士「ずっとではありませんが、午前と午後は剣を振る時間よりこうしているほうが多いですね」
姫「悪者やっつけにいかないの」
騎士「悪者はそう簡単に見つかりませんし、見えるところにたくさんいるわけでもありませんから」
姫「そうなんだ……」
騎士「はい」
姫「馬に乗って、剣を振ってるのみたことあるけど、それはいつするの」
騎士「それは騎士隊の定期合同訓練日にすることです。月に一度だけですね」
隊長「乗馬訓練は候補生のときに飽きるほどやらされるんです。『騎士』になるころには一流でなくちゃいけませんからね」
姫「馬に乗るところも、あんまり見れないんだ」
騎士「騎士隊候補生が何をしているのかも、後で見に行きましょう。騎士に成る上では避けては通れない道ですので」
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/29(水) 00:04:28.59 ID:HpKYQc8go
姫「みますっ! そこは剣でキンッキンッってやったり、馬に乗ったりしてるんでしょ!?」
騎士「そうした訓練の時間に立ち会えれば見ることもできますが、必ずしも候補生が剣術や馬術を磨いているとは限りません」
姫「どうして? 騎士になるなら、たくさん剣を振らなきゃいけないんじゃないの?」
騎士「戦闘能力が高いだけで『騎士』になれるのなら、私は恐らくここには入れていないでしょう」
姫「どうして……? よくわからないけど」
隊長「そんな難しいことを言っても理解できるわけないだろ」
騎士「すみません、姫様。ですが、知っておいてほしいのです」
姫「なにを?」
騎士「私はただの兵士。『騎士』という称号を運よく掴むことができただけなんです」
騎士「姫様が思い描くような勇者ではありません」
姫「……」
隊長「それが難しいってんだよ」
騎士「そ、そうですか」
姫「やっぱり、わかんない。ごめんなさい」
騎士「いえ。私もどう説明したらいいのか……。申し訳ありません」
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/29(水) 20:07:50.31 ID:IM5XM2iUO
面白い
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/30(木) 00:11:13.12 ID:0pbUDn0tO
隊長すき
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/06(木) 19:05:59.88 ID:GhX+5VOio
待ってる
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/03(水) 01:59:28.80 ID:4Rm0FB6Xo
ほ
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/29(月) 16:53:48.53 ID:X515PZofO
面白かったのに
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/07/12(水) 17:33:20.02 ID:FO/WkdNt0
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