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会長「音が紡ぐ笑顔の魔法」
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419 :
◆MOhabd2xa8mX
[saga]:2021/08/24(火) 05:25:24.42 ID:HbOh8YX2o
現在
作曲「……」
作曲先輩は俯いたままだ、正直なところこれ以上口を開くのかも怪しい。
男「これ以上は察しろと?」
俺は作曲先輩がこれ以上何を話したいかも分かっていた。
作曲「うん。喋るのに疲れた……」
男「……」
作曲先輩は幽霊部員の存在によってキーボードを諦めたのだ。持て囃されてきた秀才の自信と積み重ねはたった一人の天才によっていともたやすく崩れ去ったのだ。
男「どうして曲を作るようになったのかは教えてもらえますか?」
作曲「適材適所ってやつだよ」
重々しい口取りで言葉を連ねる。
作曲「やる人が居ないしこれ以上自分の居場所から逃げたくなかったから」
鉄の摩擦音が鳴り響く。かける言葉が思い浮かばない俺の心をまるで気遣うかのように電車が通りすぎた。
作曲「正直に言うとピアノよりもキーボードよりも死に物狂いで打ち込んだと思う……ほんの少し覚えがあるだけで好きでもないことに私は打ち込んでいた」
俺にとってのアイドルと同じだった。
作曲「馬鹿みたいだよね?自分で手放したくせにまた欲しがって……」
作曲先輩の場合、それは居場所だ。
この人は自由天文部に本当の居場所を見出していたのだ。
作曲「初めて作った曲を……」
作曲「幽霊部員は褒めてくれた……って信じられる?」
皮肉な話だ。
幽霊部員が褒めるという事は本当に良かったという事になる。あの人は音楽に関しての嘘をつくことがない。
俺自身も作曲先輩が作る曲には非凡なものを感じていた。
男「信じますよ、うん」
作曲「だからこそ今も曲を作り続けることができたと思う」
作曲「そうだ」
作曲「会長達とロックスターに向けての意見を交換したよ、恥ずかしげもなく話してくれた。喜怒哀楽のすべてを」
何を勝手に行動しているのかと訝しむが無理も無い事だった。
自由天文部の楽曲すべてを作曲先輩が担当しているから当然のことだろう。
各バンドが意見を言うことがあっても基本的には作曲先輩が形にする。作詞先輩の作詞も然りだ。
作曲「会長たちはロックスターに向けての曲作りがしたい。新曲を披露したいからって私に連絡してくれた」
恥ずかしいことに人を貶めてまで勝ちたいと思っていたのは俺だけだった。
遠回しに思い知らされた気分だった。俺は自分自身のことしか考えていなかったのだ。
愚直にやってきたつもりだった。競争を促して仮想敵を作り出すことによって奮起を促すことができればと考えていた。
作曲「とても良い曲ができたと思う。贔屓目なしにロックスターでの入賞も夢ではない……よ」
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